以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る制御装置を搭載した車両について説明する。この車両は、FR(Front engine Rear drive)車両である。なお、FR以外の車両であってもよい。
車両は、エンジン1000と、オートマチックトランスミッション2000と、トルクコンバータ2100と、オートマチックトランスミッション2000の一部を構成するプラネタリギヤユニット3000と、オートマチックトランスミッション2000の一部を構成する油圧回路4000と、プロペラシャフト5000と、デファレンシャルギヤ6000と、後輪7000と、ECU(Electronic Control Unit)8000とを含む。本実施の形態に係る制御装置は、たとえばECU8000のROM(Read Only Memory)8002に記録されたプログラムを実行することにより実現される。
エンジン1000は、インジェクタ(図示せず)から噴射された燃料と空気との混合気を、シリンダの燃焼室内で燃焼させる内燃機関である。燃焼によりシリンダ内のピストンが押し下げられて、クランクシャフトが回転させられる。エンジン1000の駆動力により、オルタネータおよびエアコンディショナーなどの補機1004が駆動される。なお、エンジン1000の代わりにもしくは加えて、動力源にモータを用いるようにしてもよい。
オートマチックトランスミッション2000は、トルクコンバータ2100を介してエンジン1000に連結される。オートマチックトランスミッション2000は、所望のギヤ段を形成することにより、クランクシャフトの回転数を所望の回転数に変速する。
オートマチックトランスミッション2000から出力された駆動力は、プロペラシャフト5000およびデファレンシャルギヤ6000を介して、左右の後輪7000に伝達される。
ECU8000には、シフトレバー8004のポジションスイッチ8006と、アクセルペダル8008のアクセル開度センサ8010と、ブレーキペダル8012の踏力センサ8014と、電子スロットルバルブ8016のスロットル開度センサ8018と、エンジン回転数センサ8020と、入力軸回転数センサ8022と、出力軸回転数センサ8024と、油温センサ8026と、水温センサ8028とがハーネスなどを介して接続されている。
シフトレバー8004の位置(ポジション)は、ポジションスイッチ8006により検出され、検出結果を表す信号がECU8000に送信される。シフトレバー8004の位置に対応して、オートマチックトランスミッション2000のギヤ段が自動で形成される。また、運転者の操作に応じて、運転者が任意のギヤ段を選択できるマニュアルシフトモードを選択できるように構成してもよい。
アクセル開度センサ8010は、アクセルペダル8008の開度を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。踏力センサ8014は、ブレーキペダル8012の踏力(運転者がブレーキペダル8012を踏む力)を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。
スロットル開度センサ8018は、アクチュエータにより開度が調整される電子スロットルバルブ8016の開度を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。電子スロットルバルブ8016により、エンジン1000に吸入される空気量(エンジン1000の出力)が調整される。
なお、電子スロットルバルブ8016の代わりにもしくは加えて、吸気バルブ(図示せず)や排気バルブ(図示せず)のリフト量や開閉する位相を変更することにより、エンジン1000に吸入される空気量を調整するようにしてもよい。
エンジン回転数センサ8020は、エンジン1000の出力軸(クランクシャフト)の回転数を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。入力軸回転数センサ8022は、オートマチックトランスミッション2000の入力軸回転数NI(トルクコンバータ2100のタービン回転数NT)を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。出力軸回転数センサ8024は、オートマチックトランスミッション2000の出力軸回転数NOを検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。
油温センサ8026は、オートマチックトランスミッション2000の作動や潤滑に用いられるオイル(ATF:Automatic Transmission Fluid)の温度(油温)を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。
水温センサ8028は、エンジン1000の冷却水の温度(水温)を検出し、検出結果を表わす信号をECU8000に送信する。
ECU8000は、ポジションスイッチ8006、アクセル開度センサ8010、踏力センサ8014、スロットル開度センサ8018、エンジン回転数センサ8020、入力軸回転数センサ8022、出力軸回転数センサ8024、油温センサ8026、水温センサ8028などから送られてきた信号、ROM8002に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両が所望の走行状態となるように、機器類を制御する。
本実施の形態において、ECU8000は、シフトレバー8004がD(ドライブ)ポジションであることにより、オートマチックトランスミッション2000のシフトレンジにD(ドライブ)レンジが選択された場合、前進1速〜8速ギヤ段のうちのいずれかのギヤ段が形成されるように、オートマチックトランスミッション2000を制御する。前進1速〜8速ギヤ段のうちのいずれかのギヤ段が形成されることにより、オートマチックトランスミッション2000は後輪7000に駆動力を伝達し得る。なおDレンジにおいて、8速ギヤ段よりも高速のギヤ段を形成可能であるようにしてもよい。形成するギヤ段は、車速とアクセル開度とをパラメータとして実験等により予め作成された変速線図に基づいて決定される。
図1に示すように、ECU8000は、エンジン1000を制御するエンジンECU8100と、オートマチックトランスミッション2000を制御するECT(Electronic Controlled Transmission)_ECU8200とを含む。
エンジンECU8100とECT_ECU8200とは、互いに信号を送受信可能であるように構成される。本実施の形態においては、エンジンECU8100からECT_ECU8200に、アクセル開度およびエンジン1000の目標アイドル回転数を表わす信号が送信される。ECT_ECU8200からエンジンECU8100には、エンジン1000が出力すべきトルクとして定められるトルク要求量を表わす信号が送信される。
図2を参照して、プラネタリギヤユニット3000について説明する。プラネタリギヤユニット3000は、クランクシャフトに連結された入力軸2102を有するトルクコンバータ2100に接続されている。
プラネタリギヤユニット3000は、フロントプラネタリ3100と、リアプラネタリ3200と、C1クラッチ3301と、C2クラッチ3302と、C3クラッチ3303と、C4クラッチ3304と、B1ブレーキ3311と、B2ブレーキ3312と、ワンウェイクラッチ(F)3320とを含む。
フロントプラネタリ3100は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構である。フロントプラネタリ3100は、第1サンギヤ(S1)3102と、1対の第1ピニオンギヤ(P1)3104と、キャリア(CA)3106と、リングギヤ(R)3108とを含む。
第1ピニオンギヤ(P1)3104は、第1サンギヤ(S1)3102および第1リングギヤ(R)3108と噛合っている。第1キャリア(CA)3106は、第1ピニオンギヤ(P1)3104が公転および自転可能であるように支持している。
第1サンギヤ(S1)3102は、回転不能であるようにギヤケース3400に固定される。第1キャリア(CA)3106は、プラネタリギヤユニット3000の入力軸3002に連結される。
リアプラネタリ3200は、ラビニヨ型の遊星歯車機構である。リアプラネタリ3200は、第2サンギヤ(S2)3202と、第2ピニオンギヤ(P2)3204と、リアキャリア(RCA)3206と、リアリングギヤ(RR)3208と、第3サンギヤ(S3)3210と、第3ピニオンギヤ(P3)3212とを含む。
第2ピニオンギヤ(P2)3204は、第2サンギヤ(S2)3202、リアリングギヤ(RR)3208および第3ピニオンギヤ(P3)3212と噛合っている。第3ピニオンギヤ(P3)3212は、第2ピニオンギヤ(P2)3204に加えて、第3サンギヤ(S3)3210と噛合っている。
リアキャリア(RCA)3206は、第2ピニオンギヤ(P2)3204および第3ピニオンギヤ(P3)3212が公転および自転可能であるように支持している。リアキャリア(RCA)3206は、ワンウェイクラッチ(F)3320に連結される。リアキャリア(RCA)3206は、1速ギヤ段の駆動時に回転不能となる。リアリングギヤ(RR)3208は、プラネタリギヤユニット3000の出力軸3004に連結される。
ワンウェイクラッチ(F)3320は、B2ブレーキ3312と並列に設けられる。すなわち、ワンウェイクラッチ(F)3320のアウターレースはギヤケース3400に固定され、インナーレースはリアキャリア(RCA)3206に連結される。
図3に、各変速ギヤ段と、各クラッチおよび各ブレーキの作動状態との関係を表した作動表を示す。この作動表に示された組み合わせで各ブレーキおよび各クラッチを作動させることにより、前進1速〜8速のギヤ段と、後進1速および2速のギヤ段が形成される。
図4を参照して、油圧回路4000の要部について説明する。なお、油圧回路4000は、以下に説明するものに限られない。
油圧回路4000は、オイルポンプ4004と、プライマリレギュレータバルブ4006と、マニュアルバルブ4100と、ソレノイドモジュレータバルブ4200と、SL1リニアソレノイド(以下、SL(1)と記載する)4210と、SL2リニアソレノイド(以下、SL(2)と記載する)4220と、SL3リニアソレノイド(以下、SL(3)と記載する)4230と、SL4リニアソレノイド(以下、SL(4)と記載する)4240と、SL5リニアソレノイド(以下、SL(5)と記載する)4250と、SLTリニアソレノイド(以下、SLTと記載する)4300と、B2コントロールバルブ4500とを含む。
オイルポンプ4004は、エンジン1000のクランクシャフトに連結されている。クランクシャフトが回転することにより、オイルポンプ4004が駆動し、油圧を発生する。オイルポンプ4004で発生した油圧は、プライマリレギュレータバルブ4006により調圧され、ライン圧が生成される。
プライマリレギュレータバルブ4006は、SLT4300により調圧されたスロットル圧をパイロット圧として作動する。ライン圧は、ライン圧油路4010を介してマニュアルバルブ4100に供給される。
マニュアルバルブ4100は、ドレンポート4105を含む。ドレンポート4105から、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104の油圧が排出される。マニュアルバルブ4100のスプールがDポジションにある場合、ライン圧油路4010とDレンジ圧油路4102とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102に油圧が供給される。このとき、Rレンジ圧油路4104とドレンポート4105とが連通させられ、Rレンジ圧油路4104のRレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
マニュアルバルブ4100のスプールがRポジションにある場合、ライン圧油路4010とRレンジ圧油路4104とが連通させられ、Rレンジ圧油路4104に油圧が供給される。このとき、Dレンジ圧油路4102とドレンポート4105とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102のDレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
マニュアルバルブ4100のスプールがNポジションにある場合、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104の両方と、ドレンポート4105とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102のDレンジ圧およびRレンジ圧油路4104のRレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
Dレンジ圧油路4102に供給された油圧は、最終的には、C1クラッチ3301、C2クラッチ3302およびC3クラッチ3303に供給される。Rレンジ圧油路4104に供給された油圧は、最終的には、B2ブレーキ3312に供給される。
ソレノイドモジュレータバルブ4200は、ライン圧を元圧とし、SLT4300に供給する油圧(ソレノイドモジュレータ圧)を一定の圧力に調圧する。
SL(1)4210は、C1クラッチ3301に供給される油圧を調圧する。SL(2)4220は、C2クラッチ3302に供給される油圧を調圧する。SL(3)4230は、C3クラッチ3303に供給される油圧を調圧する。SL(4)4240は、C4クラッチ3304に供給される油圧を調圧する。SL(5)4250は、B1ブレーキ3311に供給される油圧を調圧する。
SLT4300は、アクセル開度センサ8010により検出されたアクセル開度に基づいたECU8000からの制御信号に応じて、ソレノイドモジュレータ圧を調圧し、スロットル圧を生成する。スロットル圧は、SLT油路4302を介して、プライマリレギュレータバルブ4006に供給される。スロットル圧は、プライマリレギュレータバルブ4006のパイロット圧として利用される。
SL(1)4210、SL(2)4220、SL(3)4230、SL(4)4240、SL(4)4250およびSLT4300は、ECU8000から送信される制御信号により制御される。
B2コントロールバルブ4500は、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104のいずれか一方からの油圧を選択的に、B2ブレーキ3312に供給する。B2コントロールバルブ4500に、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104が接続されている。B2コントロールバルブ4500は、SLUソレノイドバルブ(図示せず)から供給された油圧とスプリングの付勢力とにより制御される。
SLUソレノイドバルブがオンの場合、B2コントロールバルブ4500は、図4において左側の状態となる。この場合、B2ブレーキ3312には、SLUソレノイドバルブから供給された油圧をパイロット圧として、Dレンジ圧を調圧した油圧が供給される。
SLUソレノイドバルブがオフの場合、B2コントロールバルブ4500は、図4において右側の状態となる。この場合、B2ブレーキ3312には、Rレンジ圧が供給される。
図5を参照して、ECU8000についてさらに説明する。なお、以下に説明するECU8000の機能は、ハードウエアにより実現するようにしてもよく、ソフトウエアにより実現するようにしてもよい。
ECU8000のエンジンECU8100は、トルク制御部8110と、目標アイドル回転数設定部8120と、アイドル制御部8130を含む。
トルク制御部8110は、ECT_ECU8200から出力されるトルク要求量を受け、このトルク要求量に対応したトルクがエンジン1000から出力されるように、電子スロットルバルブ8016のスロットル開度およびイグニッションプラグによる点火時期などを制御する。
目標アイドル回転数設定部8120は、水温および補機1004の負荷などに基づいて、車両停止時かつアイドル時(アクセル開度が「0」である時)のエンジン回転数NEの目標値である目標アイドル回転数を設定する。目標アイドル回転数の設定方法については、周知の一般的な技術を利用すればよいため、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
アイドル制御部8130は、アクセル開度が「0」である場合などにおいて、エンジン回転数NEが目標アイドル回転数になるように、電子スロットルバルブ8016のスロットル開度およびイグニッションプラグによる点火時期などを制御する。
ECU8000のECT_ECU8200は、車速検出部8210と、変速判断部8220と、変速制御部8230と、アップ量設定部8250と、トルク要求部8260とを含む。
車速検出部8210は、オートマチックトランスミッション2000の出力軸回転数NOから車速を算出(検出)する。
変速判断部8220は、第1判断部8221と、第2判断部8222とを含む。第1判断部8221は、図6に示すように、車速およびアクセル開度をパラメータとした変速線図にしたがって、形成すべきギヤ段、すなわち、アップシフトまたはダウンシフトを行なうか否かを判断する。すなわち、第1判断部8221は、アップシフトまたはダウンシフトを行なう車速およびアクセル開度を判断する。変速線図においては、変速の種類(変速前のギヤ段と変速後のギヤ段の組合わせ)毎にアップシフト線およびダウンシフト線が設定される。
第2判断部8222は、コースト時(エンジン1000がアイドル状態での走行状態)においてダウンシフトを行なうか否かを車速に基づいて判断する。すなわち、第2判断部8222は、コースト時にダウンシフトする車速を判断する。
以下、コースト時にダウンシフトすることをコーストダウンとも記載する。コーストダウンする車速は、変速の種類毎に定められる。コーストダウンする車速は、図6に示すように、変速線図におけるアップシフト線よりアクセル開度が「0」である場合に定められる車速よりも高い車速に定められる。
たとえば、アクセル開度が「0」である場合に2速ギヤ段から3速ギヤ段へのアップシフト線によって定められる車速よりも、3速ギヤ段から2速ギヤ段へのコーストダウンを行なう車速が高くなるように定められる。
変速制御部8230は、アップシフトまたはダウンシフトを行なうと判断された場合に、アップシフトまたはダウンシフトを行なうようにプラネタリギヤユニット3000のクラッチおよびブレーキ(摩擦係合要素)に供給される油圧を制御する。
変速制御部8230は、ファーストフィル部3232と、第1制御部8241と、第2制御部8242と、第3制御部8243と、第4制御部8244とを含む。
ファーストフィル部3232、第1制御部8241〜第4制御部8244は、ダウンシフト時(コーストダウン時を含む)に、解放状態から係合状態にされる摩擦係合要素に供給される油圧を制御する。
ファーストフィル部3232は、ダウンシフトを行なうと判断された場合に、図7に示すように、時間T(1)において、予め定められた圧力P(1)までステップ的に増大し、その後予め定められた時間が経過した後の時間T(2)において、摩擦係合要素が係合力を発生しないような値に予め定められる圧力P(2)までステップ的に減少するように油圧を制御する。ファーストフィル部3232による油圧制御により、摩擦係合要素の油圧シリンダ内にATFが充填される。
第1制御部8241は、図7に示すように、圧力P(2)に予め定められた第1の時間だけ維持し、時間T(3)において、摩擦係合要素が係合力を発生するように予め定められるステップアップ量ΔP(1)だけわずかに増大し、そのまま予め定められた第2の時間だけ維持するように油圧を制御する。
第2制御部8242は、図7に示すように、時間T(4)において、後述する第1スイープアップ量設定部8252により設定されるスイープアップ量(勾配)で漸増するように油圧を制御する。後述するようにスイープアップ量は「0」に設定される場合がある。すなわち、油圧が漸増しない場合がある。以下、第2制御部8242により漸増された油圧の増大量をΔP(2)とも記載する。
第3制御部8243は、図7に示すように、タービン回転数NTと同期回転数との差が予め定められた値よりも小さくなった時間T(5)において、圧力P(2)に後述するステップアップ量設定部8253により設定されるステップアップ量(増大量)ΔP(3)を加えた目標油圧までステップ的に増大し、そのまま予め定められた時間だけ維持するように油圧を制御する。
ここで、同期回転数とは、ダウンシフト完了後のギヤ段のギヤ比とオートマチックトランスミッション2000の出力軸回転数NOとの積から算出される値をいう。ステップアップ量ΔP(3)は、図7に示すように、圧力P(2)からの油圧の増大量として設定される。
第3制御部8243は、第1制御部8241による油圧のステップアップ量ΔP(1)と第2制御部8242による油圧の増大量ΔP(2)との和よりも、ステップアップ量設定部8253により設定されるステップアップ量ΔP(3)が大きい場合、ステップ的に増大するように油圧を制御する。
第4制御部8244は、図7に示すように、時間T(6)において、後述する第2スイープアップ量設定部8254により設定されるスイープアップ量(勾配)で漸増するように油圧を制御する。
アップ量設定部8250は、第1スイープアップ量設定部8252と、ステップアップ量設定部8253と、第2スイープアップ量設定部8254とを含む。
第1スイープアップ量設定部8252は、図8に示すように、同期回転数とタービン回転数NT(入力軸回転数NI)との差(同期回転数−タービン回転数NT)および予め定められた時間当たりのタービン回転数NTの変化量dNTをパラメータとしてスイープアップ量を設定する。
同期回転数とタービン回転数NTとの差が大きい場合は小さい場合に比べて大きくなるようにスイープアップ量が設定される。タービン回転数NTの変化量dNTが小さい場合は大きい場合に比べて大きくなるようにスイープアップ量が設定される。タービン回転数NTの変化量dNTがdNT(0)より大きい場合は、スイープアップ量が「0」に設定される。タービン回転数NTが急変している状態で油圧を増大させると、摩擦係合要素の係合にともなうショックが大きくなるからである。
ステップアップ量設定部8253は、オートマチックトランスミッション2000の入力トルクに応じた基本量と、車両の減速度に応じた補正量との和として、ステップアップ量ΔP(3)を設定するとともに、圧力P(2)にステップアップ量ΔP(3)を加えた圧力を目標油圧として設定する。なお、入力トルクに応じた基本量を設定するのは、入力トルクが大きいほどより大きな係合力が必要であるからである。
減速度に応じた補正量を設定するのは、車速、すなわち出力軸回転数NOが低下すると、それだけ摩擦係合要素が係合する際に受ける反力が大きくなり、それだけ大きな係合力が必要になるからである。
ステップアップ量設定部8253は、図9に示すように、目標アイドル回転数およびオートマチックトランスミッション2000の出力軸回転数NOをパラメータとしてステップアップ量の基本量を設定する。
目標アイドル回転数はエンジン1000の出力軸回転数、すなわち出力トルクを表わすパラメータである。目標アイドル回転数が高い場合は低い場合に比べてオートマチックトランスミッション2000の入力トルクが大きいといえる。したがって、目標アイドル回転数が高い場合は低い場合に比べて大きくなるようにステップアップ量の基本量が設定される。
出力軸回転数NOは同期回転数、すなわち将来のタービン回転数NTを表わすパラメータである。出力軸回転数NOが高い場合は低い場合に比べて、オートマチックトランスミッション2000の入力トルクが小さいといえる。すなわち、タービン回転数NTが高い場合は低い場合に比べて、トルクコンバータ2100におけるトルクの増幅作用が小さく、オートマチックトランスミッション2000の入力トルクが小さいといえる。したがって、出力軸回転数NOが高い場合は低い場合に比べて小さくなるようにステップアップ量が設定される。
ステップアップ量設定部8253は、図10に示すように、出力軸回転数NOの変化量(低下量)dNOをパラメータとしてステップアップ量の補正量を設定する。本実施の形態において、補正量は正値である。
出力軸回転数NOの変化量dNOが大きい場合は小さい場合に比べて車両の減速度が大きいといえる。すなわち、出力軸回転数NOの変化量dNOが大きい場合は小さい場合に比べて摩擦係合要素が係合時に受ける反力が大きいといえる。したがって、出力軸回転数NOの変化量dNOが大きい場合は小さい場合に比べて大きくなるようにステップアップ量の補正量が設定される。
第2スイープアップ量設定部8254は、図11に示すように、同期回転数とタービン回転数NT(入力軸回転数NI)との差(同期回転数−タービン回転数)および同期回転数とタービン回転数NTとの差の変化量をパラメータとしてスイープアップ量を設定する。
同期回転数とタービン回転数NTとの差が小さい状態では、同期回転数とタービン回転数NTとの差の変化量が小さい場合(負である場合)は「0」である場合に比べて大きくなるようにスイープアップ量が設定される。同期回転数とタービン回転数NTとの差が小さい状態では、同期回転数とタービン回転数NTとの差の変化量が小さい場合、すなわちタービン回転数NTが同期回転数に近づいている場合であっても、摩擦係合要素の係合時に発生し得るショックが小さいからである。
同期回転数とタービン回転数NTとの差が小さい状態では、同期回転数とタービン回転数NTとの差の変化量が大きい場合(正である場合)は「0」である場合に比べて大きくなるようにスイープアップ量が設定される。同期回転数とタービン回転数NTとの差が広がっているため、摩擦係合要素の係合力が不足していると考えられるからである。
同期回転数とタービン回転数NTとの差が大きい状態では、同期回転数とタービン回転数NTとの差の変化量が大きい場合は小さい場合に比べて大きくなるようにスイープアップ量が設定される。
同期回転数とタービン回転数NTとの差が大きく、かつ同期回転数とタービン回転数NTとの差が広がっている状態では速やかに摩擦係合要素を係合させる必要があるからである。
トルク要求部8260は、アクセル開度などに基づいて、エンジン1000に要求するトルクであるトルク要求量を設定する。
図12および図13を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU8000が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、以下に説明するプログラムは、予め定められた周期で繰返し実行される。
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、ECU8000は、ダウンシフトを行なうか否かを判断する。ダウンシフトを行なうと判断すると(S100にてYES)、処理はS110に移される。もしそうでないと(S100にてNO)、この処理は終了する。
S110にて、ECU8000は、圧力P(1)までステップ的に増大し、その後予め定められた時間が経過した後に圧力P(2)までステップ的に減少するように油圧を制御する。
S120にて、ECU8000は、圧力P(2)に予め定められた第1の時間だけ維持した後に、ステップアップ量ΔP(1)だけ増大して、第2の時間だけ維持するように油圧を制御する。
S130にて、ECU8000は、同期回転数とタービン回転数NT(入力軸回転数NI)との差(同期回転数−タービン回転数NT)およびタービン回転数NTの変化量dNTをパラメータとしてスイープアップ量を設定する。S132にて、ECU8000は、設定されたスイープアップ量(勾配)で漸増するように油圧を制御する。
S140にて、ECU8000は、タービン回転数NTと同期回転数との差が予め定められた値よりも小さいか否か、または同期予測時間TSNCが予め定められた値より小さいか否かを判別する。
同期予測時間TSNCは、タービン回転数NTと同期回転数との差NTS4Xを、差NTS4Xの変化量dNTS4Xで除算することにより算出される。すなわち、同期予測時間TSNC=NTS4X/dNTS4Xである。
タービン回転数NTと同期回転数との差が予め定められた値よりも小さいと(S140にてYES)、処理はS150に移される。また、同期予測時間TSNCが予め定められた値より小さいと(S140にてYES)、処理はS150に移される。もしそうでないと(S140にてNO)、処理はS140に戻される。
S150にて、ECU8000は、目標アイドル回転数、オートマチックトランスミッション2000の出力軸回転数NOおよび出力軸回転数NOの変化量(低下量)dNOをパラメータとしてステップアップ量ΔP(3)を設定する。
S152にて、ECU8000は、ステップアップ量ΔP(3)が、ステップアップ量ΔP(1)と漸増された油圧の増大量ΔP(2)との和よりも大きいか否かを判別する。ステップアップ量ΔP(3)が、ステップアップ量ΔP(1)と漸増された油圧の増大量ΔP(2)との和よりも大きいと(S152にてYES)、処理はS154に移される。もしそうでないと(S152にてNO)、処理はS160に移される。
S154にて、ECU8000は、S110における圧力P(2)にステップアップ量ΔP(3)を加えた目標油圧までステップ的に増大し、予め定められた時間だけ維持するように油圧を制御する。
S160にて、ECU8000は、同期回転数とタービン回転数NTとの差(同期回転数−タービン回転数)および同期回転数とタービン回転数NTとの差の変化量をパラメータとしてスイープアップ量を設定する。S162にて、ECU8000は、設定されたスイープアップ量で漸増するように油圧を制御する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置であるECU8000の動作について説明する。
ダウンシフトを行なうと判断されると(S100にてYES)、図14に示すように、時間T(7)において摩擦係合要素の油圧サーボのシリンダ内に油圧を充填するために、圧力P(1)までステップ的に増大し、その後予め定められた時間が経過した後の時間T(8)において圧力P(2)までステップ的に減少するように油圧が制御される(S110)。
圧力P(2)に予め定められた第1の時間だけ維持した後の時間T(9)において、ステップアップ量ΔP(1)だけ増大して、第2の時間だけ維持するように油圧が制御される(S120)。
これにより、図14に示すように、時間T(9)以後において摩擦係合要素に実際に供給される油圧の変化を小さくすることができる。そのため、摩擦係合要素の係合初期における係合力を安定させることができる。
その後、同期回転数とタービン回転数NT(入力軸回転数NI)との差(同期回転数−タービン回転数NT)およびタービン回転数NTの変化量dNTをパラメータとしてスイープアップ量が設定される(S130)。図15に示すように、時間T(10)において、設定されたスイープアップ量(勾配)で漸増するように油圧が制御される(S132)。
図15の時間T(11)において、タービン回転数NTと同期回転数との差が予め定められた値よりも小さくなると(S140にてYES)、または、同期予測時間TSNCが予め定められた値よりも小さくなると(S140にてYES)、目標アイドル回転数、オートマチックトランスミッション2000の出力軸回転数NOおよび出力軸回転数NOの変化量dNOをパラメータとしてステップアップ量が設定される(S150)。
ここで、図15に示すように、エンジン回転数NEが低い場合には、タービン回転数NTが低くなる。そのため、同期回転数とタービン回転数NTとの差が大きくなる。この状態では、スイープアップ量が大きく設定される。
この場合、ステップアップ量ΔP(3)が、ステップアップ量ΔP(1)と漸増された油圧の増大量ΔP(2)との和よりも小さくなり得る。ステップアップ量ΔP(3)が、ステップアップ量ΔP(1)と漸増された油圧の増大量ΔP(2)との和よりも小さいと(S152にてNO)、これ以上油圧を増大させる必要はない。
したがって、油圧のステップ的な増大が行なわれることなく、時間T(12)において、同期回転数とタービン回転数NTとの差(同期回転数−タービン回転数)および同期回転数とタービン回転数NTとの差の変化量をパラメータとしてスイープアップ量が設定される(S160)。このスイープアップ量で漸増するように油圧が制御される(S162)。
一方、エンジン回転数NEが高い場合には、タービン回転数NTが高くなる。そのため、同期回転数とタービン回転数NTとの差が小さくなる。この状態では、スイープアップ量が小さく設定される。また、タービン回転数NTの変化量dNTがdNT(0)よりも大きいと、図16に示すように、ステップアップ量が「0」に設定される。
これらの場合、ステップアップ量ΔP(3)が、ステップアップ量ΔP(1)と漸増された油圧の増大量ΔP(2)との和よりも大きくなり得る。図16に示すように、ステップアップ量ΔP(3)が、ステップアップ量ΔP(1)と漸増された油圧の増大量ΔP(2)との和よりも大きいと(S152にてYES)、圧力P(2)にステップアップ量ΔP(3)を加えた目標油圧までステップ的に増大し、予め定められた時間だけ維持するように油圧が制御される(S154)。
その後、時間T(12)において、同期回転数とタービン回転数NTとの差(同期回転数−タービン回転数)および同期回転数とタービン回転数NTとの差の変化量をパラメータとしてスイープアップ量が設定される(S160)。このスイープアップ量で漸増するように油圧が制御される(S162)。
以上のように、本実施の形態に係る制御装置であるECUによれば、目標アイドル回転数およびオートマチックトランスミッション2000の出力軸回転数NOを用いて、オートマチックトランスミッション2000の入力トルクに応じたステップアップ量ΔP(3)が設定される。タービン回転数NTと同期回転数との差が予め定められた値よりも小さい状態において、または、同期予測時間TSNCが予め定められた値よりも小さい状態において、圧力P(2)にステップアップ量(増大量)ΔP(3)を加えた目標油圧までステップ的に増大するように油圧が制御される。これにより、摩擦係合要素の係合力を自動変速機の入力トルクに応じた値にすることができる。そのため、自動変速機の入力トルクに対して係合力が低くなったり、高くなったりすることを抑制することができる。その結果、変速中におけるエンジン回転数の吹き上がりおよびショックを抑制することができる。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1000 エンジン、2000 オートマチックトランスミッション、2100 トルクコンバータ、3000 プラネタリギヤユニット、4000 油圧回路、8000 ECU、8002 ROM、8004 シフトレバー、8006 ポジションスイッチ、8008 アクセルペダル、8010 アクセル開度センサ、8012 ブレーキペダル、8014 踏力センサ、8016 電子スロットルバルブ、8018 スロットル開度センサ、8020 エンジン回転数センサ、8022 入力軸回転数センサ、8024 出力軸回転数センサ、8026 油温センサ、8028 水温センサ、8100 エンジンECU、8110 トルク制御部、8120 目標アイドル回転数設定部、8200 ECT_ECU、8210 車速検出部、8220 変速判断部、8221 第1判断部、8222 第2判断部、8230 変速制御部、3231 ファーストフィル部、8241 第1制御部、8242 第2制御部、8243 第3制御部、8244 第4制御部、8250 アップ量設定部、8252 第1スイープアップ量設定部、8253 ステップアップ量設定部、8254 第2スイープアップ量設定部、8260 トルク要求部。