〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1〜9に基づいて説明すれば、以下の通りである。図1は、本実施の形態の増幅回路10の基本構成を示す回路図である。なお、増幅回路10は、本発明のバイアス回路を好適に説明するための一例として構成されている基本的な回路を示すものである。
最初に、本実施の形態のバイアス回路を有する増幅回路10の基本構成、および基本動作について説明し、その後、詳細な実施例について説明する。
本実施の形態の増幅回路10(エミッタ接地増幅回路)は、信号を増幅するための信号増幅用エミッタ接地バイポーラトランジスタQ1(第1のトランジスタ)、バイアスを供給するためのバイアス用バイポーラトランジスタQ2(第2のトランジスタ)、基準電圧を発生するための基準電圧発生用バイポーラトランジスタQ3(第3のトランジスタ)、基準電圧を発生するための基準電圧発生用バイポーラトランジスタQ4(第4のトランジスタ)、コンデンサC1(第1の容量)、負荷抵抗R1、入力または整合回路の直流電圧と増幅用トランジスタQ2のベース電圧とを分離するためのコンデンサCin、入力部11、出力部12、入力整合回路(MNin)13、出力整合回路(MNout)14、および電流Irefを発生する電流源15を備えている。
なお、入力整合回路(MNin)や外部の回路で直流電圧が分離されている場合には、コンデンサCinは不要である。また、出力整合回路(MNout)により出力部12と負荷抵抗R1の直流電圧とが分離されず、問題が発生する場合には、出力部にも直流分離用のコンデンサをつけるとよい。
なお、説明の便宜上、以下では、信号増幅用エミッタ接地バイポーラトランジスタQ1を増幅用トランジスタQ1、バイアス用バイポーラトランジスタQ2をバイアス用トランジスタQ2、基準電圧発生用バイポーラトランジスタQ3,4をそれぞれ基準電圧発生用トランジスタQ3,4とする。
本実施の形態のバイアス回路は、バイアス用トランジスタQ2、基準電圧発生用トランジスタQ3,4、コンデンサC1、および電流源15で構成される部分であり、バイアス用トランジスタQ2のエミッタ電流Ie2をバイアス電流として、増幅用トランジスタQ1のベースに供給している。
増幅回路10では、図1に示すように、入力部11から入力された高周波入力信号が、入力整合回路13、およびコンデンサCinを通過して、増幅用トランジスタQ1に入力される。そして、高周波入力信号は、増幅用トランジスタQ1において増幅され、出力整合回路14を通過して、出力部12から高周波出力信号として出力される。
入力整合回路13および出力整合回路14は、入出力での信号の反射を防ぐため入出力部側に設けられている回路である。負荷抵抗R1は、増幅用トランジスタQ1のコレクタの負荷として設けられている。
増幅用トランジスタQ1は、ベースが入力部11側、詳細には、コンデンサCinに接続されており、コレクタが出力部12側および電源側、詳細には、出力整合回路14と負荷抵抗R1とに接続されており、エミッタが接地されている。
ここで、増幅用トランジスタQ1のベースには、バイアス回路、詳細には、バイアス用トランジスタQ2のエミッタも接続されている。
バイアス用トランジスタQ2は、ベースが基準電圧発生用トランジスタQ3のベース、コンデンサC1、および電流源15に接続されており、コレクタが電源に接続されている。また、エミッタが増幅用トランジスタQ1のベースに接続されているので、エミッタ電流Ie2が増幅用トランジスタQ1のベースに供給される。よって、バイアス用トランジスタQ2は、増幅用トランジスタQ1のベースを駆動させるベース駆動用トランジスタとも言える。
基準電圧発生用トランジスタQ3は、ベースがバイアス用トランジスタQ2のベース、コンデンサC1、および電流源15に接続されており、コレクタが電源に接続されており、エミッタが基準電圧発生用トランジスタQ4のベースに接続されている。
基準電圧発生用トランジスタQ4は、ベースが基準電圧発生用トランジスタQ3のエミッタに接続されており、コレクタがバイアス用トランジスタQ2、および電流源15に接続されており、エミッタが接地されている。
また、増幅用トランジスタQ1とバイアス用トランジスタQ2とからなる二段積みのトランジスタ回路と、基準電圧発生用トランジスタQ3およびQ4からなる二段積みのトランジスタ回路とがミラー回路を構成している。さらに、基準電圧発生用トランジスタQ4は、基準電圧発生用トランジスタQ3とともに、電流源15から供給される電流Irefにより基準電圧を発生する部分となっている。
コンデンサC1は、一方の電極がバイアス用トランジスタQ2のベース、基準電圧発生用トランジスタQ3のベース、電流源15に接続されており、他方の電極が接地されている。
電流源15は、バイアス用トランジスタQ2に電流を流し込まなければならない。安定したバイアス電流を設定するためにはバンドギャップを用い、電流を流し出すことが可能な電流源を用いるとよい。
また、バイアス用トランジスタQ2のベースの電位は、増幅用トランジスタQ1のベース/エミッタ電圧とバイアス用トランジスタQ2のベース/エミッタ電圧との和となるため、シリコンバイポーラトランジスタを用いた場合には、1.6V程度になる。
電源電圧が3V程度の場合、出力電圧が1.6Vに対応できるバンドギャップ基準電源を作ることが難しい場合には、電流を吸い込むバンドギャップ基準電源を作成し、P型電界効果トランジスタを用いたカレントミラー回路などを用いて電流の向きを変えることが望ましい。また、それほど精度が要求されない場合には、単純な抵抗を電源とバイアス用トランジスタQ2のベースとの間に接続してもよい。
以上の構成により、増幅用トランジスタQ1のベースに入力される高周波入力信号は、バイアス回路が備えるバイアス条件が与えられる状態で増幅され、高周波出力信号として出力される。
詳細には、入力される高周波信号が小さいときには、増幅用トランジスタQ1のベースに入力される高周波入力信号は、バイアス用トランジスタQ2のエミッタ電流Ie2がバイアス電流として、増幅用トランジスタQ1のベースに供給されている状態(すなわち、ミラー回路が構成されていることにより、基準電圧発生用トランジスタQ4のコレクタに供給される電流によって、増幅用トランジスタQ1のコレクタ電流が決定されている状態)で増幅され、高周波出力信号として出力される。
一方、入力される高周波電流が大きくなってくると、後述するように、バイアス用トランジスタQ2のベース/エミッタ間の等価抵抗が小さくなり、増幅用トランジスタQ1のコレクタ電流が増加する。
なお、図1において、電源端子はすべて共通の電源に接続されている。電源系統が共通化されることにより回路が単純になる。また、負荷抵抗R1が接続されている電源からは大きな高周波電流が流れるため、電源インピーダンスが十分に低くなければ電圧が高周波電流に応じて変動する。そのような場合にすべての電源端子を共通化すると、電源端子を経由して高周波信号が漏洩し、回路に悪影響を及ぼすことがある。
上記の場合には、電源端子を分離するとよい。特に負荷抵抗が接続されている電源端子と、それ以外のバイアス回路用の電源端子とは分離することが望ましい。バイアス用トランジスタQ2および基準電圧発生用トランジスタQ3のコレクタが接続されている電源端子の電圧が若干変動しても、それほど大きな影響は出ない。
しかしながら、基準電流源の周波数応答、許容出力電圧範囲などの諸特性によっては、基準電流源が接続されている電源端子に漏洩した高周波信号が悪影響を及ぼすことがあるため、できるだけ雑音が少ない電源に接続することが望ましい。バイアス回路用の電源のみを共通化し、負荷が接続されている電源端子を分離すれば、雑音の影響を受けにくくなり、かつ、回路があまり複雑にならない。
次に、上記バイアス回路を有する増幅回路10の構成および機能を備えた、小信号の高周波信号を増幅する増幅回路(小信号増幅回路)20の実施例について、図2〜8を参照しながら説明する。なお、説明の便宜上、上記増幅回路10の図面(図1)で示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
まず、小信号増幅回路20の構成を説明し、その後、小信号増幅回路20の特性に対する測定結果について説明する。図2は、本実施の形態の小信号増幅回路20の一構成例を示す回路図である。
小信号増幅回路20(エミッタ接地増幅回路)は、図2に示すように、入力整合回路13および出力整合回路14を除いた増幅回路10の構成に加え、抵抗R21、抵抗R22(第1の抵抗)、電界効果トランジスタQ23、電圧Vrefを発生する基準電源24、およびコンデンサC25をさらに備えており、小信号を受信する受信機搭載用に設計された構成を有している。
トランジスタQ1〜Q4は、SiGeのNPN型バイポーラトランジスタであり、電流増幅率は約100である。増幅用トランジスタQ1およびバイアス用トランジスタQ2の総エミッタ面積は30(μm2)であり、基準電圧発生用トランジスタQ3およびQ4の総エミッタ面積は1(μm2)である。
ここで、小信号増幅回路20では、基準電圧発生用トランジスタQ3およびQ4のエミッタ面積は、増幅用トランジスタQ1およびバイアス用トランジスタQ2の1/30のエミッタ面積とすると共に、抵抗R21を基準電圧発生用トランジスタQ4のエミッタに接続していることにより、できるだけ消費電力を削減している。抵抗R21は、基準電圧オフセット用の抵抗であり、その抵抗値は105(Ω)である。
本実施例では基準電圧生成部の消費電流を小さくするために、トランジスタサイズを小さくすると共に基準電圧発生用トランジスタQ4のエミッタに抵抗R21を加えているが、それらの片側のみを使用するなど、一般的なカレントミラーで基準電圧生成部の電流を減らすいろいろな方法を用いることができる。
また、入力される高周波電力が大きくなるに従い、増幅用トランジスタQ1に供給されるベース電流が増加する。すなわち、それを駆動するバイアス用トランジスタQ2のベース電流も増加できなければならない。そのためには、バイアス用トランジスタQ2に流れるベース電流は、基準電圧生成回路に供給される基準電流の1/10以下程度が必要となり、できれば1/100が望ましい。なお、本実施例の回路構成では、基準電流としては、60μAが供給されており、バイアス用トランジスタQ2のベースには、小信号入力時には、0.2μAの電流が入力されている。この電流は、基準電流の1/300以下の電流となっている。
コンデンサC1は、歪み補償用に備えられているコンデンサである。その大きさは、再現性を損なわない適当な大きさにするため、8(pF)の容量を用いている。但し、8(pF)は最適な歪補償を得るためにはやや大きい容量のため、歪補償度合いを抑圧するために、抵抗R22を歪補償用のコンデンサC1と接地との間に直列に接続している。なお、抵抗R22は、歪補償用のコンデンサC1とバイアス用トランジスタQ2との間に直列に接続してもよい。抵抗R22の抵抗値は400(Ω)である。
なお、コンデンサC1に蓄積される電荷の量の調整(コンデンサC1によるインピーダンスを調整)するためには、コンデンサC1の容量値を調整することによっても可能である。ところが、実際に使用している容量値は、周波数や増幅回路の形式によっても異なるが、例えば2(pF)などと非常に小さな値となる。このような小さな容量値を安定して作ることは困難である。
また、この容量値により、後述するように、出力レベルの増加による利得抑圧量と、バイアス用トランジスタQ2のベース/エミッタ間のダイオード特性により引き起こされるバイアス電流増加に伴う利得増加量とが、打ち消しあうように調整しなければならないため、高い設定精度が要求される。
したがって、コンデンサC1の容量値は十分な精度で作成できる大きさに保ったまま、抵抗R22を付加することにより、コンデンサC1に蓄積される電荷の量の度合いをより高い精度で調整することが可能となる。
また、歪補償の度合いを調整するためには、コンデンサC1の調整、そのコンデンサC1と直列に抵抗R22を入れる以外に、バイアス用トランジスタQ2のエミッタと増幅用トランジスタQ1のベースとの間に抵抗を入れるなど、または、増幅用トランジスタQ1のベースからバイアス用トランジスタQ2のエミッタ、バイアス用トランジスタQ2のベース、コンデンサC1、接地という高周波パス(高周波信号が流れる経路)の中の適当な場所に抵抗を入れるなど、様々な方法を好適に用いることが可能である。
また、バイアス用トランジスタQ2のベースからコンデンサC1,抵抗R22,接地までで構成される回路を、歪補償回路とする。但し、抵抗R22は好適に備えてもよいし、備えなくてもよい。
電流源15は、環境温度の上昇による順方向伝達特性(gm)の劣化が抑えられるように、温度に比例して電流が増加する電流源であり、増幅用トランジスタQ1に流れる電流の基準となる電流Irefを発生する。電流Irefは、標準条件では60(μA)が流れるように設計されている。これにより、増幅用トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1は2.3(mA)程度となる。
電界効果トランジスタQ23は、Nチャネルの電界効果トランジスタであり、ゲートが基準電源24を介して接地されており、ドレインが出力部12側および電源側、詳細には、DC成分を分離して出力するための分離用出力容量であるコンデンサC25と負荷抵抗R1とに接続されており、ソースが増幅用トランジスタQ1のコレクタに接続されており、カスコード接続となっている。
また、電界効果トランジスタQ23は、高周波特性改善のため、増幅用トランジスタQ1のコレクタに接続して、カスコード接続とすることにより、増幅用トランジスタQ1のベース/コレクタ間の容量による利得抑圧の効果が、ミラー効果により増大することを抑制することが可能となる。
なお、カスコード接続されるトランジスタはベース接地のバイポーラトランジスタでも良いが、電界効果トランジスタの方がゲートに電流が流れないためバイアス回路が簡単になることや、電界効果トランジスタのゲート/ドレイン間電圧が低くなっても増幅回路の特性に与える悪影響の度合いがバイポーラトランジスタより低いなどの利点がある。
ここで、小信号増幅回路20では、コンデンサC1を除く回路において、増幅用トランジスタQ1およびバイアス用トランジスタQ2と、基準電圧発生用トランジスタQ3およびQ4とが、2段積みしたバイポーラトランジスタに対するミラー回路となっている。
具体的には、入力部11に高いレベルの高周波信号が入っていない状況では、増幅用トランジスタQ1とバイアス用トランジスタQ2とからなる二段積みバイポーラトランジスタ回路と、基準電圧発生用トランジスタQ3およびQ4からなる二段積みのバイポーラトランジスタ回路とによって、ミラー回路が構成されている。
これにより、増幅用トランジスタQ1のベース/エミッタ間電圧とバイアス用トランジスタQ2のベース/エミッタ間電圧との和と、基準電圧発生用トランジスタQ4のベース/エミッタ間電圧と基準電圧発生用トランジスタQ3のベース/エミッタ間電圧との和は等しくなる。
よって、バイアス用トランジスタQ2のベース、および基準電圧発生用トランジスタQ3のベースに流れるベース電流Ib2およびIb3は同じとなる。ここで、全てのトランジスタサイズが同じであれば、電流設定のための電流源15から流れる電流Irefからベース電流Ib2およびIb3を引いた電流が、増幅用トランジスタQ1に流れる。
したがって、電流Irefの電流値に比べ、ベース電流Ib2およびIb3が十分に小さい時には、環境温度変化やトランジスタの特性がウエハごとに変動しても、増幅用トランジスタQ1の電流と電流Irefとは一致する。それゆえ、増幅用トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1の電流値が、製造ばらつきによる素子ばらつきや環境温度変化による影響を受けず、ばらつかないことが可能となる。
本実施例では、基準電圧生成回路の消費電流を削減するため、基準電圧生成回路のトランジスタのサイズが小さくなっており、また、抵抗R21が追加されている。この回路構成により本来のミラー回路からは若干特性がずれることになる。この回路形式における増幅用トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1について、電流増幅率と環境温度を変化させて測定して結果を、それぞれ図3および4に示す。
図3は、増幅用トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1と相対電流増幅率との関係を示すグラフであり、縦軸の左はコレクタ電流Ic1(mA)、縦軸の右は変動率(%)、横軸は相対電流増幅率を示している。
図4は、増幅用トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1と環境温度との関係を示すグラフであり、縦軸の左はコレクタ電流Ic1(mA)、縦軸の右は変動率(%)、横軸は環境温度(度)を示している。
変化させる前の増幅用トランジスタQ1は、コレクタ電流Ic1が2.3(mA)程度となっており、電流増幅率は100である。そこで、増幅用トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1の電流増幅率依存性を確認するために、トランジスタQ1〜Q4の電流増幅率をそれぞれ50〜200%と大きく変化させる。電流増幅率とは、バイポーラトランジスタが有する特性であり、最も大きくばらつく特性であることが知られている。
しかしながら、電流増幅率を50〜200%と大きく変化させたときの増幅用トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1を確認すると、その電流の変動率は±1%以内の変動に抑えられており、極めて安定した電流を保っていることがわかる。
また、増幅用トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1の温度依存性を確認するために、環境温度を−30〜95度と大きく変化させる。しかしながら、増幅用トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1は、その電流の変動率を確認すると±3%以内の変動に抑えられていることがわかる。
よって、本実施の形態のバイアス回路は、増幅用トランジスタQ1およびバイアス用トランジスタQ2と、基準電圧発生用トランジスタQ3およびQ4とが、2段積みしたバイポーラトランジスタに対するミラー回路を構成していることにより、基準電圧発生用トランジスタQ4に流れる電流が、増幅用トランジスタQ1に流れることになる。
したがって、基準電圧発生用トランジスタQ4に流れる電流を設定すれば、増幅用トランジスタQ1に流れる電流を設定することが可能となるので、トランジスタの製造ばらつきによる素子ばらつきや環境温度変化による影響を抑制し、バイアス条件が変動せず、安定したバイアス条件を保つことが可能となる。したがって、増幅用トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1の電流値をばらつかせないことが可能となる。
一方、入力部11からコンデンサCinを通過して、増幅用トランジスタQ1のベースに入力される高周波信号として与えられる高周波電流の一部は、バイアス用トランジスタQ2のエミッタを経由して、コンデンサC1に流れ込む。これにより、高周波信号の入力レベルが高くなるにしたがって、バイアス用トランジスタQ2のベース/エミッタ間を流れる高周波電流が大きくなる。
すると、トランジスタのベース/エミッタ間は、ダイオード特性をもっているので、高周波電流は整流されるとともに、高周波電流の増大に伴い、バイアス用トランジスタQ2のベース/エミッタ間の等価抵抗が徐々に小さくなる。
高周波電流が小さい場合には、増幅用トランジスタQ1およびバイアス用トランジスタQ2と、基準電圧発生用トランジスタQ4および基準電圧発生用トランジスタQ3とがミラー回路を構成し、基準電圧発生用トランジスタQ4に流れる電流に応じた電流が増幅用トランジスタQ1に流れるが、高周波電流の増加に伴い、バイアス用トランジスタQ2のベース/エミッタ間の等価抵抗が小さくなる。それゆえ、電流源15から供給される電流Irefが、より高い割合で、バイアス用トランジスタQ2のベースに供給されるようになり、増幅用トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1が増大する。
これにより、基準電圧発生用トランジスタQ4に流れる電流が少し減少し、そのコレクタ電圧が若干低下する。しかしながら、基準電圧発生用トランジスタQ4に流れる電流に対するバイアス用トランジスタQ2のベースに流れている電流の割合は極めて小さいため、コレクタ電圧の低下の度合いは非常に小さい。
したがって、入力部11に入力される高周波信号の入力レベルの増大に伴い、基準電圧発生用トランジスタQ3のベースに供給される電流よりも、より多くの電流がバイアス用トランジスタQ2のベースに供給されることにより、入力レベルの増大に応じたバイアス電流が増幅用トランジスタQ1のベースに供給される。それゆえ、小信号(低入力レベル)に対応するように増幅回路を構成していると、強い入力レベルの信号が入力された場合、増幅するトランジスタが対応しきれず、増幅した信号に大きな歪みが現れる。しかしながら、高周波信号を増幅する増幅用トランジスタQ1は、入力レベルの増大に応じながら高周波信号を増幅するので、増大しても歪みを低減させたコレクタ電流Ic1を出力することが可能となる。
ここで、増幅用トランジスタQ1、バイアス用トランジスタQ2、および基準電圧発生用トランジスタQ4のバイアス点の入力電力依存性を測定した結果を、それぞれ図5および6に示す。
図5は、バイアス用トランジスタQ2のベース電流Ib2と入力電力との関係、および基準電圧発生用トランジスタQ4のコレクタ電流Ic4と入力電力との関係を示すグラフであり、縦軸の左はベース電流Ib2(μA)、縦軸の右はコレクタ電流Ic4(μA)、横軸は入力電力(dBuV)を示している。また、参考データとして、小信号増幅回路20において、歪補償用のコンデンサC1がない場合、すなわち歪補償回路がない場合の特性を破線で示す。
図6は、増幅用トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1と入力電力との関係を示すグラフであり、縦軸はコレクタ電流Ic1(mA)、横軸は入力電力(dBuV)を示している。また、参考データとして、歪補償回路がない場合の特性を破線で示す。
図5のグラフに示すように、歪補償用のコンデンサC1の有無にかかわらず、基準電圧発生用トランジスタQ4のコレクタ電流Ic4は、入力電力が増大するにつれて、入力電力が約85(dBuV)付近から減少し、その分だけバイアス用トランジスタQ2のベース電流Ib2が増加している。
また、一定電圧の生成回路すなわち電流源15と基準電圧発生用トランジスタQ4とを構成する回路には約60(μA)流れている。ベース駆動用回路すなわちバイアス用トランジスタQ2と増幅用トランジスタQ1とを構成する回路には、入力信号が本アプリケーションでの最大ピーク電力である100(dBμV)のときに、6(μA)が流れている。この最大入力電力時の電流比を大きくするほど歪補償特性が強くなるが、バイアス回路での消費電流が大きくなるため、一般的には5〜20倍程度の電流比が用いられる。
また、バイアス用トランジスタQ2のベース電流Ib2が増加することにより、図6に示すように、増幅用トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1が増加することがわかる。これらのトランジスタの電流増幅率は約100なので、増幅用トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1は入力電力が低い場合には2.3(mA)程度を示し、入力電力が高くなることにより、コレクタ電流Ic1は5(mA)程度まで増加することがわかる。
ところで、通常、増幅回路では、出力レベルが増加するにしたがって出力が飽和し、利得が低下する。一方、増幅するトランジスタのコレクタ電流が増加するとトランジスタの順方向伝達特性(gm)が増加し、利得が増加する。
そこで、本実施の形態の小信号増幅回路20では、歪補償回路を加えることにより、コレクタ電流の増加による利得増加が出力飽和による利得低下をキャンセルする(打ち消す)ため、線形性が改善する。これについて、利得を測定した結果を図7に示す。
図7は、利得と入力電力との関係、および相対利得と入力電力との関係を示すグラフであり、縦軸の左は利得(dB)、縦軸の右は相対利得(dB)、横軸は入力電力(dBuV)を示している。また、参考データとして、歪補償回路がない場合の特性を破線で示す。
歪補償回路を加えた結果、歪補償回路がない利得については、入力電力が70(dBuV)程度から利得が徐々に劣化しているのに対し、歪補償回路が付加された利得は、入力電力が80(dBuV)程度まで、利得がほとんど劣化していないことがわかる。
また、線形性の指標となる3次入力インターセプトポイント(IIP3;Third Order Input Intercept Point)を測定した結果を図8に示す。図8は、IIP3と入力電力との関係を示すグラフであり、縦軸はIIP3(dBuV)、横軸は入力電力(dBuV)を示している。また、参考データとして、歪補償回路がない場合の特性を破線で示す。
歪補償回路を加えた結果、歪補償回路がない場合に比べ、IIP3が5(dB)程度改善していることがわかる。通常、IIP3を4(dB)上げるためには、電流を5(dB)に相当する3倍流すことが必要である。しかしながら、本実施の形態の小信号増幅回路20では、低消費電流を保ちながら、電流を増加させなくても、歪補償回路を付加することにより、線形性を改善していることがわかる。
よって、本実施の形態のバイアス回路では、バイアス用トランジスタQ2のベースがコンデンサC1により高周波的に接地されるため、入力部11に入力されてくる高周波電圧が、バイアス用トランジスタQ2のベース/エミッタ間に直接印加されることになる。入力部11に入力される高周波電圧が大きくなると、バイアス用トランジスタQ2のベース/エミッタ間に印加される電圧振幅が大きくなるため、バイアス用トランジスタQ2のベース/エミッタ間のダイオード特性により、バイアス用トランジスタQ2のベース/エミッタ間の等価抵抗が小さくなる。
これにより、電流源15から供給される電流Irefが、バイアス用トランジスタQ2のベースと基準電圧発生用トランジスタQ3のベースとに分けられる比率が変化し、バイアス用トランジスタQ2のベースに、より多くの電流が供給されるようになる。よって、入力レベルに応じてバイアス電流を増加することが可能となる。
また、小信号増幅回路20では、入力部11に大きい信号が入力されると、出力レベルが増加するにしたがって出力が飽和し、利得が低下する。一方で、小信号増幅回路20では、利得はバイアス電流に比例する。
よって、出力レベルが増加するに従い、本来であれば利得は抑圧されるが、本実施の形態のバイアス回路では、入力レベルが大きくなるに従い、バイアス電流が増加するため、そのバイアス電流の増加により発生する利得の増加が、出力レベルの増加に伴い発生する利得の抑圧を打ち消す。したがって、入力レベルに応じた最適なバイアス条件で、線形性を改善することが可能となる。
また、従来のバイアス回路はA級バイアスが基本となっており、入力レベルに伴いバイアス電流を変化させる必要がない。よって、バイアス回路のインピーダンスが高くても大きな問題がなかった。しかしながら、AB級バイアスやB級バイアスを用いる場合には、入力レベルの増加に伴い、バイアス電流が増加していく。
一方で、入力レベルの増加により増幅する増幅用トランジスタQ1のベース電圧はわずかしか下がらない。よって、バイアス回路としては、電圧源的な動作、つまり出力インピーダンスを低く保たなければならない。従来のバイアス回路のように、高周波信号がバイアス回路に流れ込まないように抵抗などがバイアス回路の出力部に備えられていると、出力インピーダンスが高くなるので、AB級バイアスやB級バイアスの増幅回路に用いることができない。
よって、本実施の形態のバイアス回路は、ミラー回路により電圧を設定する、すなわち、電圧源として構成されているため、AB級バイアスやB級バイアスの増幅回路に用いることが可能となる。
したがって、本実施の形態のバイアス回路は、AB級バイアスやB級バイアスを用いることにより、消費電力を低減することが可能となる。
以上により、本実施の形態のバイアス回路は、入力信号に応じて安定した最適なバイアス条件を保ちながら、低消費電力で線形性を向上することが可能となる。また、バイアス回路は、簡単な構成であるので、小型化することが可能となり、また、小信号増幅回路20も小型化することが可能となる。
また、上述したように、小信号増幅回路20において、基準電流である電流Irefの一部がバイアス用トランジスタQ2のベースおよび基準電圧発生用トランジスタQ3のベースに流れ込むため、実際に増幅用トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1を決める電流は、基準電流Irefからベース電流Ib2・Ib3を減じた電流値となる。
このため、低い電流増幅率のトランジスタを用いた場合、基準電流Irefの電流値が設定よりも若干ずれると、電流増幅率の変化に伴い、ベース電流Ib2・Ib3の電流値が大きく変化するため、増幅用トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1も変化してしまう。
そこで、図9に示すように、バイアス用トランジスタQ2のベースおよび基準電圧発生用トランジスタQ3のベースに、ベース電流を供給するためのベース電流供給用バイポーラトランジスタQ35を追加する。図9は、本実施の形態の増幅回路30の一構成例を示す回路図である。
増幅回路30(エミッタ接地増幅回路)は、図9に示すように、図1に示す増幅回路10の構成に加え、ベース電流供給用バイポーラトランジスタQ35(第5のトランジスタ)を備えている。なお、増幅回路30は、増幅回路10の構成に追加させる構成としているが、これに限らず、図2に示す小信号増幅回路20の構成にベース電流供給用バイポーラトランジスタQ35を追加させる構成としてもよい。
ベース電流供給用バイポーラトランジスタQ35は、ベースが電流源15に接続されており、コレクタが電源に接続されており、エミッタがバイアス用トランジスタQ2のベース、および基準電圧発生用トランジスタQ3のベースに接続されている。
増幅回路30では、ベース電流供給用バイポーラトランジスタQ35を備えることにより、基準電流Irefからは、バイアス用トランジスタQ2および基準電圧発生用トランジスタQ3のベース電流Ib2およびIb3として、ベース電流供給用バイポーラトランジスタQ35の電流増幅率で割った電流が減じられるだけとなる。
したがって、基準電流Irefから減じられる電流値は極めて小さくなり、低い電流増幅率のトランジスタを用いた場合、基準電流Irefの電流値が設定よりも若干ずれると、電流増幅率の変化に伴い、ベース電流Ib2・Ib3の電流値が大きく変化するため、増幅用トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1も変化してしまう現象を、大幅に抑圧することが可能となる。
なお、ベース電流供給用バイポーラトランジスタQ35は、電界効果トランジスタを使用することも可能である。このトランジスタはミラー回路の基準電圧生成に寄与していないため、バイポーラである必要は無い。電界効果トランジスタにすることにより、基準電流源15に接続される箇所が電界効果トランジスタのゲートとなるため、電流が全く流れない。そのため、基準電流のすべてが基準電圧発生用トランジスタQ4に流れ込むことになるため、より正確な電流設定を行うことが可能となる。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図10〜12に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。図10は、本実施の形態の高周波電力増幅回路40の一構成例を示す回路図である。
高周波電力増幅回路40(エミッタ接地増幅回路)は、図10に示すように、前記実施の形態1の、抵抗R21および電流源15を除いた増幅回路10の構成に加えて、ベースバラスト抵抗R45、抵抗R46、制御回路47、電流制限抵抗R48、およびインダクタL1をさらに備えている。なお、トランジスタQ41〜Q45は、増幅回路10におけるトランジスタQ1〜Q4にそれぞれ対応し、同様の接続構成を有しているが、後述するように、使用しているトランジスタの種類が異なるため、新たな符号を付けている。
トランジスタQ41〜Q44は、GaAsを用いたNPN型ヘテロジャンクションバイポーラトランジスタ(HBT;Heterojunction Bipolar Transistor)である。増幅用トランジスタQ41の総エミッタ面積は360(μm2)であり、バイアス用トランジスタQ42の総エミッタ面積は120(μm2)であり、基準電圧発生用トランジスタQ33およびQ34の総エミッタ面積は60(μm2)である。
ベースバラスト抵抗R45は、増幅用トランジスタQ41が熱によって大電流が流れるようになる熱暴走を防ぐために、バイアス用トランジスタQ42のエミッタと増幅用トランジスタQ41との間に直列に接続されている。
また、ベースバラスト抵抗R45とバイアス回路のバランスを取るために、抵抗R46が、基準電圧発生用トランジスタQ44のエミッタと接地との間に直列に接続されている。なお、ベースバラスト抵抗R45が入ることにより、歪補償の度合いが若干小さくなるため、そのことを考慮した上で歪補償用の容量値などを調整している。
制御回路47は、高周波電力増幅回路40において、出力部12の出力レベルに応じて、消費電流が制御できるような基準電流を供給している。制御回路47は、電流発生方向側が、制御回路47から出力される電流を制限する電流制限抵抗R48を介して、バイアス用トランジスタQ42のベース、基準電圧発生用トランジスタQ43のベース、および基準電圧発生用トランジスタQ44のコレクタに接続されている。
インダクタL1は、前記実施の形態1に示した受信機に設けられる増幅回路に負荷として備えられる抵抗とは異なり、出力される高周波信号を損失しないための出力側の負荷として用いられている。また、増幅用トランジスタQ41のコレクタに対してバイアスするためのインダクタである。インダクタL1は、一方の電極が増幅用トランジスタQ41のコレクタ、および、出力部12側、詳細には出力整合回路14に接続されており、他方の電極が電源に接続されている。
なお、本実施の形態の高周波電力増幅回路40では、出力の効率が重視されるため、カスコード接続は用いていない。
ここで、制御回路47からの最大電圧は2.9(V)であり、電流制限抵抗R48は125(Ω)、ベースバラスト抵抗R45は15(Ω)、抵抗R46は10(Ω)となっている。また、増幅用トランジスタQ41のアイドル時のコレクタ電流Ic41は34(mA)となっており、AB級バイアスとなっている。さらに、入力電力が、20(dBm)出力時には、コレクタ電流Ic41は180(mA)程度となる。
次に、高周波電力増幅回路40において、入力電力を変化させたときの利得を測定した結果を図11に示す。図11は、利得と入力電力との関係を示すグラフであり、縦軸は利得(dB)、横軸は入力電力(dBm)を示している。また、参考データとして、歪補償回路がない場合の特性を破線で示す。
歪補償回路なしの利得においても、入力電力が−5(dBm)以上ではトランジスタの電流増幅率の電流依存性や寄生容量などにより若干の利得伸張が発生しているが、−5(dBm)以下の領域では利得の抑圧が発生していることがわかる。一方、歪補償回路付の利得の場合には、利得伸張が発生していることが認められ、利得の抑圧が抑えられていることがわかる。
また、線形性の指標となる3次入力インターセプトポイント(IIP3)を測定した結果を図12に示す。図12は、IIP3と出力電力との関係を示すグラフであり、縦軸はIIP3(dBm)、横軸は入力電力(dBm)を示している。また、参考データとして、歪補償回路がない場合の特性を破線で示す。
歪補償回路を加えた結果、歪補償回路がない場合に比べ、IIP3が、出力電力が15(dBm)以上の高出力領域において、2(dB)程度改善していることがわかる。よって、高周波電力増幅回路40では、線形性を改善していることがわかる。
以上により、本実施の形態の高周波電力増幅回路40では、AB級バイアス、かつ、制御回路47により基準電流が制御できるようになっているので、消費電力を低減させることが可能となる。また、比較的大きな電流を扱う高周波電力増幅回路であっても、本実施の形態の高周波電力増幅回路40であれば、各部品の値を適宜設定し、カレントミラー型のバイアス回路に歪補償機能を付加することにより、線形性を向上させることが可能となる。
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施の形態について図13に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1および2と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1および2の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。図13は、本実施の形態の携帯端末50の一構成例を示すブロック図である。
携帯端末50は、図13に示すように、アンテナ51、バンドパスフィルタ(BPF;Band Pass Filter)52、高周波信号用の小信号増幅器(LNA)53、ミキサ(MIX)54、電圧制御発信器(VCO)55、および復調回路(DEMOD)56を備えている。
ここで、小信号増幅器53は、上述した本発明のバイアス回路を有する小信号増幅回路20を、小信号の高周波信号を増幅する小信号増幅器として構成したものである。但し、これに限らず、増幅回路30で構成してもよいし、本発明のバイアス回路を有する小信号用の高周波増幅器であればよい。
携帯端末50では、アンテナ51に受信された高周波信号が、バンドパスフィルタ52において、設定されている帯域の高周波信号のみが通過するようにフィルタにかけられる。そして、通過した高周波信号は、小信号増幅器53にて増幅される。次いで、増幅された高周波信号は、ミキサ54において、電圧制御発信器55から発生される信号と混合され、復調回路56にて復調される。
よって、携帯端末50は、小型で、線形性を向上することが可能な本発明のバイアス回路を有する小信号増幅器53を備えることにより、増幅時における線形性が向上するので、小信号増幅器53の入力側に接続されるバンドパスフィルタ52の遮断特性に対する要求仕様を緩めること、または、バンドパスフィルタ52自身を取り去ることが可能となる。これにより、バンドパスフィルタ52部分におけるフィルタ機能のロスが低減され、受信感度を向上させることが可能となる。したがって、本実施の形態の携帯端末50は、小型で、かつ、高感度な機能を有することが可能となる。
また、携帯端末50は、温度などが異なる様々な環境で使用されることが想定される。しかしながら、本発明のバイアス回路を備えることにより、環境温度による増幅器の特性変動を十分に抑制させることが可能となるので、携帯端末50で要求される温度範囲においても、安定した小信号増幅器53の特性を実現することが可能となる。
さらに、本発明のバイアス回路では、通信システムの特性に応じて利得と消費電流との関係を最適化することが可能なため、低消費電力で、長時間の使用が可能な携帯端末50を実現することが可能となる。
なお、携帯端末50は、無線通信に好適に用いられるが、これに限らず、必要に応じて有線通信に用いてもよい。
〔実施の形態4〕
本発明の他の実施の形態について図14に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1〜3と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1〜3の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。図14は、本実施の形態の携帯端末60の一構成例を示すブロック図である。
携帯端末60は、図14に示すように、アンテナ51、バンドパスフィルタ(BPF)52、電力増幅器(PA)63、ミキサ(MIX)54、電圧制御発信器(VCO)55、および変調回路(MOD)66を備えている。
ここで、電力増幅器63は、上述した本発明のバイアス回路を有する高周波電力増幅回路40を、高周波信号の電力を増幅する電力増幅器として構成したものである。但し、これに限らず、本発明のバイアス回路を有する高出力用の高周波電力増幅器であればよい。
携帯端末60では、変調回路66において変調された高周波信号が、ミキサ54において、電圧制御発信器55から発生される信号と混合され、電力増幅器63に出力される。次いで、混合された高周波信号は、電力増幅器63にて増幅され、バンドパスフィルタ52において、設定されている帯域の高周波信号のみが通過するようにフィルタにかけられる。そして、通過した高周波信号は、アンテナ51から通信相手側に送信される。
電力増幅器は比較的高出力であるので、一般的に携帯端末では、携帯端末の中で電力増幅器が占める消費電力がかなり大きい。しかしながら、携帯端末60は、小型で、低消費電力で線形性を向上することができる本発明のバイアス回路を有する電力増幅器63を備えることにより、電力増幅器が占める消費電力を効率化するので、携帯端末60の低消費電力化が可能となる。よって、この低消費電力化により、バッテリー駆動時間が長くなるので、連続通信時間を長くしたり、小型バッテリーによる駆動を行ったりすることが可能となる。したがって、本実施の形態の携帯端末60は、小型で、かつ、長時間使用可能な機能を有することが可能となる。
近年は、CDMAやOFDMなどの高い線形性を要求される変調方式が一般的となってきている。よって、低消費電力を保ちながら高い線形性を実現することが非常に重要となっている。これに対して、携帯端末60は、上記変調方式においても対応させることが可能となる。
また、携帯端末60は、温度などが異なる様々な環境で使用されることが想定される。しかしながら、本発明のバイアス回路を備えることにより、環境温度による増幅器の特性変動を十分に抑制させることが可能となり、携帯端末60で要求される温度範囲においても、安定した電力増幅器63の特性を実現することが可能となる。
さらに、本発明のバイアス回路では、通信システムの特性に応じて利得と消費電流との関係を最適化することが可能なため、低消費電力で、長時間の使用が可能な携帯端末60を実現することが可能となる。
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。