<A.実施の形態1>
まず、チャネルストップ注入層が活性領域に形成されることを防止する半導体装置の製造方法について、製造工程を順に示す断面図である図1〜図13を用いて説明する。
まず、図1に示すように、酸素イオン注入によって埋め込み酸化膜2(埋め込み絶縁膜)を形成するSIMOX法や、貼り合わせ法などにより、シリコン基板1、埋め込み酸化膜2およびSOI層3で構成されるSOI基板を準備する。なお、SOI基板は上記以外の方法で形成されたものであっても良い。
通常、SOI層3の膜厚は50〜200nm、埋め込み酸化膜2の膜厚は100〜500nmである。そして、SOI基板上に、CVD法(800℃程度の温度条件)あるいは熱酸化(800〜1000℃の温度条件)により厚さ10〜30nm(100〜300Å)のシリコン酸化膜(以後、酸化膜と呼称)4を形成する。
その後、酸化膜4上にCVD法により、厚さ10〜100nm(100〜1000Å)の多結晶シリコン膜(以後。ポリシリコン膜と呼称)5を形成する。
そして、ポリシリコン膜5上に、CVD法あるいは熱酸化により厚さ10〜200nm(100〜2000Å)の酸化膜6を形成し、酸化膜6上にCVD法により、厚さ10〜300nm(100〜3000Å)のポリシリコン膜7を形成する。
さらに、ポリシリコン膜7上に、CVD法(700℃程度の温度条件)により厚さ30〜200nm(300〜2000Å)のシリコン窒化膜(以後、窒化膜と呼称)8を形成する。なお、酸化膜4、ポリシリコン膜5、酸化膜6、ポリシリコン膜7および窒化膜8は後に形成されるトレンチ分離酸化膜形成のために補助的に機能するので補助膜と呼称することもある。
その後、窒化膜8上に、トレンチ分離酸化膜の形成位置に対応する部分が開口部となったレジストマスクをパターニングし、窒化膜8およびポリシリコン膜7をドライエッチングあるいはウエットエッチングにより選択的に除去する。
その後、図2に示すように、パターニングされた窒化膜8をエッチングマスクとして、酸化膜6、ポリシリコン膜5、酸化膜4を貫通するとともに、SOI層3を所定深さまでエッチングしてトレンチTR1を形成する。このエッチングにおいては、SOI層3を完全にエッチングして埋め込み酸化膜2を露出させるのではなく、トレンチの底部に所定厚さのSOI層3が残るようにエッチング条件を調整する。
なお、部分トレンチTR1は、所定の幅でシリコン基板1に対してほぼ垂直方向に延びて形成されるため、集積度を損ねることなく微細化を維持した素子分離を行うことができる。
次に、図3に示す工程において、トレンチTR1の内壁を酸化して酸化膜OX1を形成し、図4に示す工程においてトレンチTR1内に酸化膜OX2を埋め込む。
この酸化膜OX2は、例えばHDP(High-Density-Plasma)−CVD法で形成すれば良い。HDP−CVD法は一般的なプラズマCVDよりも1桁〜2桁高い密度のプラズマを使用し、スパッタリングとデポジションを同時に行いながら酸化膜を堆積するものであり、膜質の良好な酸化膜を得ることができる。
その後、酸化膜OX2上に、MOSトランジスタ等の半導体素子を形成する活性領域に対応する部分が開口部となったレジストマスクRM11をパターニングし、レジストマスクRM11の開口パターンに合わせて酸化膜OX2を所定深さまでエッチングした後、レジストマスクRM11を除去する。このような処理を行う理由は、後に行うCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理で酸化膜OX2を除去するが、その際に、酸化膜OX2が均一に除去されるようにするためである。
そして、CMPにより酸化膜OX2を除去して、トレンチTR1内にのみ酸化膜OX2を残した後、熱リン酸で窒化膜8を除去し、さらにポリシリコン膜7を除去することで、図5に示す部分分離酸化膜PT11を得る。ここで、ポリシリコン膜7の除去は、アルカリ液、例えばKOH(水酸化カリウム)溶液あるいはアンモニアと過酸化水素水との混合溶液を用いたウエットエッチングを用いても良いし、酸化膜との選択性のあるドライエッチングを用いても良い。
部分分離酸化膜PT11は、酸化膜6の主面から突出し、全体の厚さは600nm(6000Å)程度である。なお、SOI層3内での厚さを100nm程度とすれば、いわゆる分離段差は500nm程度となる。
次に、図6に示す工程において、PMOSトランジスタが形成される領域PRの上部が開口部となるようにレジストマスクRM12を形成する。そして、部分分離酸化膜PT11を通過してSOI層3内で不純物プロファイルのピークが形成されるエネルギーでチャネルストップ注入を行い、部分分離酸化膜PT11の下部のSOI層3内、すなわち分離領域にチャネルストップ層N1を形成する。
ここで、注入される不純物はN型の不純物であり、リン(P)を用いるならば、その注入エネルギーは、例えば60〜120keVとし、チャネルストップ層N1の濃度は1×1017〜1×1019/cm3とする。
このとき、活性領域ARに対応するSOI層3内では、チャネルストップ注入の不純物は停止せず、埋め込み酸化膜2やその下部のシリコン基板1内に注入されることになる。図6においては、シリコン基板1内に不純物層N11が形成された例を示している。
次に、図7に示す工程において、NMOSトランジスタが形成される領域NRの上部が開口部となるようにレジストマスクRM13を形成する。そして、部分分離酸化膜PT11を通過してSOI層3内で不純物プロファイルのピークが形成されるエネルギーでチャネルストップ注入を行い、部分分離酸化膜PT11の下部のSOI層3内、すなわち分離領域にチャネルストップ層P1を形成する。
ここで、注入される不純物はP型の不純物であり、ボロン(B)を用いるならば、その注入エネルギーは、例えば30〜60keVとし、チャネルストップ層P1の濃度は1×1017〜1×1019/cm3とする。
このとき、活性領域ARに対応するSOI層3内では、チャネルストップ注入の不純物は停止せず、埋め込み酸化膜2やその下部のシリコン基板1内に注入されることになる。図7においては、シリコン基板1内に不純物層P11が形成された例を示している。
このように、分離段差を利用してチャネルストップ注入を行うことにより、分離領域に自己整合的に高濃度のチャネルストップ層N1およびP1を形成することができる。
次に、図8に示す工程において、部分分離酸化膜PT11および内壁酸化膜OX1を、水(H2O)対フッ酸(HF)の比率が50対1の2%フッ酸溶液に100〜2000秒曝すフッ酸処理により部分分離酸化膜PT11および内壁酸化膜OX1をエッチングして、分離段差を低減した部分分離酸化膜PT1を形成する。
次に、図9に示す工程において、ウエットエッチングあるいは酸化膜との選択性のあるドライエッチングにより、酸化膜4上のポリシリコン膜5を除去する。
次に、図10に示す工程において、PMOSトランジスタが形成される領域PRの上部が開口部となるようにレジストマスクRM14を形成する。そして、チャネル注入としてN型不純物、例えばP(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)の何れかを注入して、トランジスタのしきい値電圧を設定する。
このときの注入条件の一例としては、リンを用いる場合には、注入エネルギー20〜100keVで、ドーズ量1×1010〜1×1014/cm2とする。
次に、図11に示す工程において、NMOSトランジスタが形成される領域NRの上部が開口部となるようにレジストマスクRM15を形成する。そして、チャネル注入としてP型不純物、例えばB(ボロン)あるいはIn(インジウム)を注入して、トランジスタのしきい値電圧を設定する。
このときの注入条件の一例としては、ボロンを用いる場合には、注入エネルギー5〜40keVで、ドーズ量1×1010〜1×1014/cm2とする。なお、しきい値電圧をより低くするのであればドーズ量を減らせば良い。
チャネル注入後、注入ダメージ回復を目的に短時間の熱処理を行う。
その後、酸化膜4をウエットエッチングにより除去し、代わりに、図12に示すように、SOI層3上に1〜4nm(10〜40Å)の厚さの絶縁膜11を形成する。これには、熱酸化法、Rapid Thermal Oxidation法、CVD法などが使用できる。さらに、絶縁膜11上に100〜400nm(1000〜4000Å)の厚さのポリシリコン膜12をCVD法により堆積する。
そして、図13に示すように、領域PRおよびNRにおいて、絶縁膜11およびポリシリコン膜12をパターニングしてゲート絶縁膜11およびゲート電極12とし、ゲート電極12を注入マスクとして不純物注入(LDD注入)を行うことで低ドープドレイン層(あるいはソース・ドレインエクステンション層)14を形成する。
その後、ゲート絶縁膜11およびゲート電極12の側壁に絶縁膜のスペーサ(サイドウォールスペーサ)13を形成し、ゲート電極12およびサイドウォールスペーサ13を注入マスクとして、ソース・ドレイン層形成のための不純物注入(ソース・ドレイン注入)を行うことでソース・ドレイン層15を形成する。
さらに、注入ダメージ回復および注入イオン活性化のために短時間の熱処理を行う。
その後、全面に渡ってCo(コバルト)などの高融点金属層をスパッタリング法で形成し、熱処理によりシリコンとのシリサイド反応を起こさせてシリサイド層を形成する。なお、当該シリサイド反応により、ゲート電極12の上部およびソース・ドレイン層15の上部に、それぞれシリサイド層16および17が形成され、未反応の高融点金属層を除去する。
その後、全面に渡って層間膜ZLを形成し、層間絶縁膜ZLを貫通してシリサイド層17に達するコンタクトプラグCPを設け、コンタクトプラグCPに配線層WLを接続することで、図13に示すSOIデバイス100が形成される。
以上説明した半導体装置の製造方法によれば、分離段差の大きな部分分離酸化膜PT11を形成し、部分分離酸化膜PT11を通してチャネルストップ注入を行うことにより、分離領域に自己整合的に高濃度のチャネルストップ層N1およびP1を形成することができる。そして、この場合には、活性領域ARに対応するSOI層3内には、チャネルストップ層は形成されないので、MOSトランジスタのしきい値調整を支障なく行うことができ、また、MOSトランジスタのソース・ドレイン層あるいはソース・ドレイン層のPN接合部の周囲に形成される空乏層を埋め込み酸化膜2にまで到達させることが可能となり、トランジスタ特性の低下を防止した半導体装置を得ることができる。
なお、部分分離酸化膜PT11は、チャネルストップ注入後に分離段差を小さくするようにエッチングして、最終的には分離段差が20nm以下の部分分離酸化膜PT1とするので、半導体装置の微細化に伴う不具合が生じることがない。
また、SOI層3上に、酸化膜4、ポリシリコン膜5、酸化膜6、ポリシリコン膜7および窒化膜8の5層膜を形成し、これらを貫通するトレンチTR1を用いて部分分離酸化膜PT11を形成するので、分離段差を大きくすることができる。さらに、窒化膜8はトレンチTR1のエッチングマスクとして機能し、ポリシリコン膜7は大きな分離段差を形成するための膜であり、酸化膜6はポリシリコン膜7の除去に際してのエッチングストッパとして機能し、ポリシリコン膜5は、エッチングにより部分分離酸化膜PT11の分離段差を小さくする際に、活性領域の保護膜として機能する。酸化膜4はパッド酸化膜とも呼称され、SOI層3への不純物注入に際してのダメージ低減や、上層の膜の除去に際してSOI層3の保護膜として機能する。
以上説明したチャネルストップ注入層が活性領域に形成されることを防止する半導体装置の製造方法としては、分離段差の大きな部分分離酸化膜を通してチャネルストップ注入を行う構成を示したが、以下製造工程を順に示す断面図である図14〜図20を用いて説明する方法によりチャネルストップ注入を行っても良い。なお、図1〜図13を用いて説明した半導体装置の製造方法と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
まず、図14に示すようにSOI基板を準備し、SOI基板上に酸化膜4を形成する。
次に、酸化膜4上にCVD法により、厚さ5〜300nm(50〜3000Å)のポリシリコン膜21を形成し、ポリシリコン膜21上に、CVD法により厚さ100〜200nm(1000〜2000Å)の窒化膜22を形成する。なお、酸化膜4、ポリシリコン膜21および窒化膜22は分離酸化膜形成のために補助的に機能するので補助膜と呼称することもある。
その後、レジストマスクを用いて窒化膜22およびポリシリコン膜21をドライエッチングあるいはウエットエッチングにより選択的に除去する。
そして、図15に示すように、パターニングされた窒化膜22をエッチングマスクとして、酸化膜4を貫通するとともに、SOI層3を所定深さまでエッチングしてトレンチTR2を形成する。このエッチングにおいては、SOI層3を完全にエッチングして埋め込み酸化膜2を露出させるのではなく、トレンチの底部に所定厚さのSOI層3が残るようにエッチング条件を調整する。
次に、図16に示す工程においてトレンチTR2の内壁を酸化して内壁酸化膜OX1を形成し、図17に示す工程においてトレンチTR2内に酸化膜OX2を埋め込む。
その後、酸化膜OX2上に、MOSトランジスタ等の半導体素子を形成する活性領域に対応する部分が開口部となったレジストマスクRM21をパターニングし、レジストマスクRM21の開口パターンに合わせて酸化膜OX2を所定深さまでエッチングした後、レジストマスクRM21を除去する。
そして、CMPにより窒化膜22上の酸化膜OX2を除去して、トレンチTR2内にのみ酸化膜OX2を残すことで、図18に示す部分分離酸化膜PT21を得る。
次に、図19に示す工程において、フッ酸(HF)処理により部分分離酸化膜PT21および内壁酸化膜OX1をエッチングして、分離段差を低減した部分分離酸化膜PT2を形成する。このとき、分離酸化膜PT2の厚みは100〜150nm(1000〜1500Å)とし、分離段差は20nm程度とする。
その後、PMOSトランジスタが形成される領域PRの上部が開口部となるようにレジストマスクRM22を形成する。そして、部分分離酸化膜PT2を通過してSOI層3内で不純物プロファイルのピークが形成されるエネルギーでチャネルストップ注入を行い、部分分離酸化膜PT2の下部のSOI層3内、すなわち分離領域にチャネルストップ層N1を形成する。
ここで、注入される不純物はN型の不純物であり、リン(P)を用いるならば、その注入エネルギーは、例えば100〜300keVとし、チャネルストップ層N1の濃度は1×1017〜1×1019/cm3とする。
このとき、活性領域ARに対応するSOI層3上にはポリシリコン膜21および窒化膜22が残っており、その厚さは約400nm(4000Å)であるので、上述したエネルギーではポリシリコン膜21および窒化膜22を通過できず、活性領域ARに対応するSOI層3内にはチャネルストップ注入の不純物は注入されない。
次に、図20に示す工程において、NMOSトランジスタが形成される領域NRの上部が開口部となるようにレジストマスクRM23を形成する。そして、部分分離酸化膜PT2を通過してSOI層3内で不純物プロファイルのピークが形成されるエネルギーでチャネルストップ注入を行い、部分分離酸化膜PT2の下部のSOI層3内、すなわち分離領域にチャネルストップ層P1を形成する。
ここで、注入される不純物はP型の不純物であり、ボロン(B)を用いるならば、その注入エネルギーは、例えば30〜100keVとし、チャネルストップ層P1の濃度は1×1017〜1×1019/cm3とする。
このとき、活性領域ARに対応するSOI層3内にはチャネルストップ注入の不純物は注入されない。
その後、熱リン酸で窒化膜22除去し、ウエットエッチングあるいは酸化膜との選択性のあるドライエッチングにより、ポリシリコン膜21を除去する。以後、図10〜図13を用いて説明した工程を経ることで、図13に示すSOIデバイス100を得る。
以上説明した製造方法によれば、活性領域AR上にはポリシリコン膜21および窒化膜22を残し、分離段差の小さな部分分離酸化膜PT2を通過してSOI層3内でチャネルストップ層が形成されるエネルギーでチャネルストップ注入を行うことにより、分離領域に自己整合的に高濃度のチャネルストップ層N1およびP1を形成することができる。そして、この場合には、活性領域ARに対応するSOI層3内には、チャネルストップ層は形成されないので、MOSトランジスタのしきい値調整を支障なく行うことができ、また、MOSトランジスタのソース・ドレイン層あるいはソース・ドレイン層のPN接合部の周囲に形成される空乏層を埋め込み酸化膜2にまで到達させることが可能となり、トランジスタ特性の低下を防止した半導体装置を得ることができる。
また、活性領域ARに対応するSOI層3上にはポリシリコン膜21および窒化膜22を残すことで、チャネルストップ注入に際しての不純物イオンは、ポリシリコン膜21および窒化膜22の一方または両方の内部に止まり、SOI層3に到達する可能性は小さいので、不純物イオンがSOI層3を通過することによるダメージを受けにくく、後にSOI層3上に形成されるゲート絶縁膜の信頼性を向上できる。
以上説明したチャネルストップ注入層が活性領域に形成されることを防止する半導体装置の製造方法においては、シリコン窒化膜(以後、窒化膜と呼称)をエッチングマスクとして、SOI層3内にトレンチ分離酸化膜形成のためのトレンチを形成する点で共通しているが、当該トレンチの形成においては、以下のような手法を採用することで、トレンチの深さを均一にすることができる。
<A−1.トレンチの深さを均一にする製造方法>
以下、本発明に係る実施の形態1としてトレンチの深さを均一にする製造方法について、図21〜図25を用いて説明する。なお、以下の説明においては、図14〜図20を用いて説明したチャネルストップ注入層が活性領域に形成されることを防止する半導体装置の製造方法に適用することを前提とし、図14〜図20を用いて説明した構成と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図21は、図14を用いて説明した製造工程をさらに詳細に説明する図であり、窒化膜22上のパターニングされたレジストマスクRM51を用いて、窒化膜22およびポリシリコン膜21をドライエッチングあるいはウエットエッチングにより選択的に除去する工程を示している。
窒化シリコン(SiN)のエッチングは、一般にポリシリコンや酸化シリコン(SiO2)との選択性が高くないので、ポリシリコン膜21だけでなくシリコン酸化膜(以後、酸化膜と呼称)4もエッチングされ、SOI層3までも若干エッチングされる可能性がある。
この段階でSOI層3がエッチングされ、その深さがロット(半導体装置の生産単位)間でばらつくと、SOI層3を所定深さまでエッチングしてトレンチTR2を形成する場合に、トレンチTR2の最終的な深さがロット間でばらつくことになる。
以下、図22に示すフローチャートを用いて、実施の形態1に係る製造方法について説明する。
n番のロットの処理を開始すると、まず、図21を用いて説明したように、ステップS1において、窒化膜22をパターニングする。このとき、先に説明したようにポリシリコン膜21だけでなく酸化膜4もエッチングされ、場合によってはSOI層3までもエッチングされる可能性がある。
そこで、窒化膜22のパターニング後に、SOI層3の厚さを測定し(ステップS2)、その結果を用いて、SOI層3のエッチング条件(エッチング時間等)を決定する(ステップS3)。なお、SOI層3の厚さ測定には、物体表面に直線偏光された光を照射し、物体表面で反射される楕円偏光を観測する分光エリプソメトリを使用すれば良い。
ここで、エッチング条件としてエッチング時間を決定する場合、以下のような処理を行う。すなわち、測定したSOI層3の厚さがXS1であり、SOI層3の当初の厚さをXSOI、目標とするトレンチ深さ(エッチング前のSOI層3の主面からの深さで定義)をXTRとするならば、エッチングレートがER1の場合には、エッチング時間ET1は、以下の数式(1)で決定される。
この決定されたエッチング条件を用いて、パターニングされた窒化膜22をエッチングマスクとしてトレンチTR2を形成する(ステップS4)。これを、ロット内での工程進行方向前方の工程の条件を補正するので、フィードフォワード処理(FF処理)と呼称する。
なお、このエッチングにおいては、トレンチの底部と埋め込み酸化膜2との間にSOI層3を残すことは言うまでもない。
次に、トレンチTR2のエッチングが終了した後、トレンチの底部に残るSOI層3の厚さを測定する(ステップS5)。そして、その結果を用いて、SOI層3の最新のエッチングレートを算出する(ステップS6)。
すなわち、測定したSOI層3の厚さがXS2であるならば、ステップS2での測定結果XS1と、エッチング時間ET1から、以下の数式(2)で最新のエッチングレートER2が算出できる。
ここで、「最新の」という呼称は、エッチングレートは僅かではあるがエッチング装置の状態により、エッチングごとに異なっていることが考えられ、SOI層3のエッチングレートと言っても、そのうちの1つの値、あるいは平均値であるので、更新された数値の意味で「最新の」という呼称を用いた。
この最新のエッチングレートER2は、次のn+1番目のロット処理に与えられ(ステップS7)、上述したステップS3においてSOI層3のエッチング時間の算出に使用される。すなわち、n番目のロット処理で用いた数式(1)のエッチングレートER1の代わりに、エッチングレートER2を用いて、SOI層3のエッチング時間を算出する。これにより、トレンチTR2の最終的な深さのロット間でのばらつきをさらに抑制することができる。
なお、この処理は、ロット内での工程進行方向後方の工程の条件を補正する処理であるので、フィードバック処理(FB処理)と呼称する。
以上説明したステップS1〜S7の処理を、n+2番目のロット、n+3番目のロットにおいても行う。
なお、FF処理は行わずに、FB処理だけを行うようにしても良い。図23には、FB処理だけを行う場合のフローチャートを示している。
図23のステップS11において、窒化膜22をパターニングする。その後、パターニングされた窒化膜22をエッチングマスクとしてトレンチTR2を形成する(ステップS12)。なお、トレンチTR2のエッチングにおいては、SOI層3の既知のエッチングレートを使用し、また、窒化膜22のパターニングではSOI層3はエッチングされていないものとしてエッチング時間を設定する。
次に、トレンチTR2のエッチングが終了した後、トレンチの底部に残るSOI層3の厚さを測定する(ステップS13)。そして、その結果を用いて、SOI層3の最新のエッチングレートを算出する(ステップS14)。
この最新のエッチングレートは、測定したトレンチの底部に残るSOI層3の厚さと、SOI層3の当初の厚さからトレンチ深さを算出し、その値をエッチング時間で割ることで得ることができる。
この最新のエッチングレートは、次のn+1番目のロット処理に与えられ(ステップS15)、上述したステップS12におけるSOI層3のエッチング時間の設定に際して、SOI層3の既知のエッチングレートの代わりに使用される。
なお、FB処理は行わずに、FF処理だけを行うようにしても良く、その場合には、図22に示すフローチャートにおいて、ステップS5〜S7を省略すれば良い。
<A−2.作用効果>
以上説明したように、実施の形態1の製造方法によれば、各ロットにおいて、窒化膜22のパターニング後に、少なくとも1回はSOI層3の厚さを測定し、その結果を用いて、SOI層3のエッチング条件を決定することで、トレンチTR2の最終的な深さをロット間で均一にできる。
また、トレンチTR2の形成後にもSOI層3の厚さを測定し、その結果を用いて最新のエッチングレートを算出し、その値を次のロットの処理のためにフィードバックするので、トレンチTR2の最終的な深さのロット間でのばらつきをさらに抑制することができる。
<A−3.変形例1>
以上説明した実施の形態1の製造方法においては、窒化膜22のパターニングにおいて、ポリシリコン膜21および酸化膜4もエッチングされ、SOI層3までエッチングが及ぶこと前提として説明したが、窒化膜22のエッチングの選択性を高めることができた場合や、ポリシリコン膜21が十分に厚く、エッチングがSOI層3に及ばない場合でも、SOI層3の厚さの測定結果には以下のような用途がある。
以下、SOI層3の厚さの測定結果の用途について図24に示すフローチャートを用いて説明する。
n番のロットの処理を開始すると、まず、図21を用いて説明したように、ステップS21において、窒化膜22をパターニングする。ここでは、窒化膜22のエッチングの選択性を高めることができた場合を想定し、窒化膜22だけがパターニングされるものとする。
次に、窒化膜22をエッチングマスクとし、ステップS22およびS23において、それぞれポリシリコン膜21および酸化膜4をパターニングする。
その後、窒化膜22をエッチングマスクとしてSOI層3に第1回目のエッチングを施す(ステップS24)。このエッチングにおいては、SOI層3の既知のエッチングレートを使用してエッチング時間を設定するが、エッチング深さはトレンチTR2の最終的な深さに及ばないように設定することは言うまでもない。
次に、SOI層3の厚さの第1回目の測定を行い(ステップS25)、その結果を用いて算出した第1回目のエッチングレートと共に、測定したSOI層3の厚さを参照して、ステップS26においてSOI層3の第2回目のエッチングのエッチング条件(エッチング時間等)を決定する(FF処理)。
この第1回目のエッチングレートは、測定したトレンチの底部に残るSOI層3の厚さと、SOI層3の当初の厚さからトレンチ深さを算出し、その値を1回目のエッチングのエッチング時間で割ることで得ることができる。
次に、ステップS26で決定したSOI層3の第2回目のエッチングの条件を用いて、エッチングを行う。このエッチングでは、トレンチTR2の最終的な深さに達するまでエッチングを行う(ステップS27)。
その後、SOI層3の厚さの第2回目の測定を行い(ステップS28)、その結果を用いて最新のエッチングレートを算出する(ステップS29)。
この最新のエッチングレートは、1回目に測定したトレンチの底部に残るSOI層3の厚さから、2回目に測定したトレンチの底部に残るSOI層3の厚さを差し引いて2回目のエッチングの深さを求め、その値を2回目のエッチングのエッチング時間で割ることで得ることができる。
この最新のエッチングレートは、ステップS30において次のn+1番目のロット処理に与えられ(FB処理)、上述したステップS24においてSOI層3の第1回目のエッチングのエッチング条件の算出に使用される。
このように、トレンチTR2の形成において、SOI層3のエッチングを2回に分けて行い、その都度エッチングレートを算出し、FF処理およびFB処理を行うので、トレンチTR2の最終的な深さをロット間で均一にできる。
<A−4.変形例2>
以上説明した変形例1においては、SOI層3のエッチングを2回に分けて行う例を示したが、図25にフローチャートで示すようにSOI層3のエッチングを1回で行っても良い。
すなわち、まず、ステップS31において、窒化膜22をパターニングする。ここでは、窒化膜22のエッチングの選択性を高めることができた場合を想定し、窒化膜22だけがパターニングされるものとする。
次に、窒化膜22をエッチングマスクとし、ステップS32およびS33において、それぞれポリシリコン膜21および酸化膜4をパターニングする。
その後、窒化膜22をエッチングマスクとしてSOI層3をエッチングしてトレンチTR2を形成する(ステップS34)。このエッチングにおいては、SOI層3の既知のエッチングレートを使用してエッチング時間を設定し、エッチング深さはトレンチTR2の最終的な深さとなるように設定する。
その後、SOI層3の厚さの測定を行い(ステップS35)、その結果を用いて最新のエッチングレートを算出する(ステップS36)。
この最新のエッチングレートは、測定したトレンチの底部に残るSOI層3の厚さと、SOI層3の当初の厚さからトレンチ深さを算出し、その値をエッチング時間で割ることで得ることができる。
この最新のエッチングレートは、ステップS37において次のn+1番目のロット処理に与えられ(FB処理)、上述したステップS34におけるエッチングに際してのエッチング条件の算出に使用される。
<A−5.モニターパターンについて>
以上説明した実施の形態1およびその変形例においては、トレンチの底部と埋め込み酸化膜2との間にSOI層3を残す、いわゆる部分分離酸化膜において、部分分離酸化膜形成のためのトレンチを正確に形成する製造方法について説明した。
トレンチの底部に残るSOI層3の厚さの測定には、実際には、SOIウェハの端縁部に設けたモニターパターンを使用する。具体的には、図26に示す、モニターパターンMPAを使用する。すなわち、モニターパターンMPAは単純な平面形状(例えば矩形)の部分分離酸化膜であり、分光エリプソメトリによる測定が可能なように十分な面積を有している。
このモニターパターンMPAの形成過程においてSOI層3の厚さを測定するが、モニターパターンMPAが完成した後は、基板全面を覆うように層間絶縁膜ZLが形成されるが、層間絶縁膜ZLにはコンタクトホールが設けられるので、コンタクトホールのオーバーエッチングを防止するため、層間絶縁膜ZLの正確な厚さの情報が必要となる。
そこで、層間絶縁膜ZLの厚さを分光エリプソメトリにより測定するが、その際にモニターパターンMPA上の層間絶縁膜ZLを測定すると、以下の理由により正確な結果が得られない可能性がある。
すなわち、シリコン基板1上の構成に着目した場合、モニターパターンMPA部分のシリコン基板1上には、埋め込み酸化膜2、SOI層3、モニターパターンMPAおよび層間絶縁膜ZLが存在しており、酸化膜とシリコン層の多層構造となっている。従って、分光エリプソメトリを行う場合、多層構造に基づいて測定結果の解析を行うことになり、解析が複雑になって層間絶縁膜ZLの正確な厚さを得ることが難しい。
そこで、層間絶縁膜ZLの厚さ測定のために、図26に示すモニターパターンMPBおよびMPCを設けるようすることが望ましい。
すなわち、モニターパターンMPBは、中央部分においてはSOI層3を貫通して埋め込み酸化膜2に達して完全分離構造(フルトレンチ分離構造)となり、端縁部においては、その下部にSOI層3を有して部分分離構造(パーシャルトレンチ分離構造)となり、部分分離酸化膜と完全分離酸化膜とが併合した併合分離酸化膜(combined isolation oxide film)の形状を有している。また、モニターパターンMPCは完全分離酸化膜である。
従って、シリコン基板1上の構成に着目した場合、モニターパターンMPBおよびMPC部分のシリコン基板1上は酸化膜のみの構造となり、分光エリプソメトリの測定結果の解析が容易となる。
<B.実施の形態2>
<B−1.基本構成>
図14〜図20を用いて説明したチャネルストップ注入層が活性領域に形成されることを防止する半導体装置の製造方法においては、図16を用いて説明したように、トレンチTR2内へのHDP酸化膜の埋め込みに先立って、トレンチTR2の内壁を酸化して内壁酸化膜OX1を形成する工程を有していたが、この酸化工程には、800〜1000℃の酸素(O2)雰囲気中でのファーネスアニールによるドライ酸化を利用することが、より望ましい。
図27にドライ酸化により形成された内壁酸化膜OX1の断面形状を示す。図27に示すようにドライ酸化を行うと、内壁酸化膜OX1の厚さが各部で均一にはならない。
すなわち、内壁酸化膜OX1のトレンチTR2の側壁部に形成される部分の厚さをJ1とし、トレンチTR2の底部側角部に形成される部分の厚さをJ2とし、トレンチTR2の底部に形成される部分の厚さをJ3とすると、厚さの大小関係はJ1>J3>J2となる。
<B−2.作用効果>
内壁酸化膜OX1が、このような構造となることで、ジャンクションリークの少ない構造を得ることができる。
その理由は、トレンチTR2の側壁部および底部が酸化されると、厚い酸化膜が形成されて体積が膨張するが、ドライ酸化の場合、トレンチTR2の底部側角部においては酸化の促進度合いが小さく、側壁部および底部の酸化膜が角部にまで及んだとしても、角部の酸化膜の厚さは側壁部および底部ほどは厚くならない。トレンチTR2の底部側角部に厚い酸化膜が形成されると、そこに応力が集中し、PN接合部が角部近傍に存在する場合にはジャンクションリークが発生するが、上述したようにドライ酸化では、角部の酸化膜の厚さが厚くなることが防止されるので、ジャンクションリークの発生を抑制できる。
<B−3.変形例1>
図27に示したトレンチTR2の断面形状は矩形ではなく、その底部の角部が開口部に向けて広がるように傾斜していた。これはトレンチエッチングに際して、角部ではエッチングの進行が遅いことに起因している。
このような構造になると、トレンチの底面の幅で規定される分離幅が狭くなり、分離耐圧が低下してトレンチ分離にとっては望ましくない。
そこで、トレンチエッチングに際して、オーバーエッチング気味になるようにエッチング条件を設定することで、図28に示すようなメサ状の断面形状を有するトレンチTR21を形成する。
トレンチTR21は、窒化膜22側から底部に向かうにつれて開口部が広がるように側壁が傾斜しており、その傾斜角度は95°〜110°程度となっている。このような形状のトレンチTR21において、例えばドライ酸化により内壁酸化膜OX1を形成した状態を図29に示す。
図29に示すように、内壁酸化膜OX1が形成され、角部が丸みを帯びて(ラウンドして)もトレンチTR21がメサ状の断面形状を有するため、分離幅W1(内壁酸化膜OX1形成後のトレンチの底面幅)は狭くならず、どちらかと言えば、トレンチ側壁が垂直に近い形状となり、分離耐圧の低下を防止できる。
なお、トレンチTR21形成のための窒化膜22のパターニングにおいては、トレンチTR21がメサ状の断面形状を有するので、窒化膜22に設ける開口部の幅W2を狭くすることができ、窒化膜22の開口間隔を狭めることで、トレンチ間隔をより狭くして、半導体装置の集積度を向上することも可能となる。
<B−4.変形例2>
以上説明した実施の形態2および変形例1においては、トレンチTR2およびTR21の内壁を熱酸化して内壁酸化膜OX1を形成することを前提としたが、トレンチ底部の角部をラウンドさせないという観点に立てば、熱酸化により形成した内壁酸化膜OX1の代わりに、CVD法により形成したCVD酸化膜を用いれば良い。
図30は、トレンチTR2の内壁にCVD法により内壁酸化膜OX10を形成した状態を示しており、トレンチ底部の角部のラウンドが抑制され、比較的広い分離幅W3が得られることが判る。なお、内壁酸化膜OX10は、窒化膜22の表面にも形成されている。
CVD法により酸化膜を形成する場合、熱酸化のように下地層(ここではSOI層3)が高温に曝されないので、下地層のトレンチエッチングのダメージが回復されない可能性がある。このため、CVD酸化膜と下地層との界面状態が良好とは言えない状態になる可能性があるが、CVD酸化膜形成後に若干の熱酸化を行うことで、下地層との界面状態を改質できる。
<C.実施の形態3>
以上説明した実施の形態1および2においては、トレンチ分離酸化膜として、部分分離酸化膜を用いることを前提として説明したが、実施の形態3以降においては完全分離酸化膜および併合分離酸化膜を用いる場合の発明について説明する。
半導体装置の製造には、エッチングマスクや注入マスクなど、複数のマスクが使用される。本発明に係る実施の形態3においては、半導体装置の製造時に使用される特定のマスクのマスクデータを、他のマスクデータを加工することで簡便に得る方法を開示するものである。
<C−1.装置構成>
図31に併合分離酸化膜を用いてMOSトランジスタの電気的分離を行う場合の平面構成を示す。
図31において、MOSトランジスタが形成される矩形の活性領域ARは、併合分離酸化膜BTによって規定されている。そして、矩形の活性領域ARを2分するようにゲート電極12が配設され、ゲート電極12の延長線上にはボディ固定用のボディコンタクト部BDが設けられている。なお、ボディコンタクト部BDの形成領域も併合分離酸化膜BTによって規定されている。
ここで、ボディ固定とは、部分分離酸化膜の下部に残るウエル領域を通じてチャネル形成領域の電位を固定することである。
併合分離酸化膜BTは完全分離酸化膜と部分分離酸化膜とを併合した構造を有しており、図31においては活性領域ARの外周に沿って配設された完全分離酸化膜FT(ハッチングで示す)を有している。なお、その他の領域は部分分離酸化膜となっている。
完全分離酸化膜FTは、ゲート電極12の近傍では途切れており、平面視形状が略C字形の2つの完全分離酸化膜FTが活性領域ARを囲む形状となっている。
図31におけるA−A線およびB−B線での矢視方向断面の構成を、それぞれ図32および図33に示す。なお、図32および図33に示すMOSトランジスタの構成は、図13に示す構成と同様であり、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、図32においては、空乏層DLの形成状態の一例を破線で示している。
図32に示すように、ゲート電極12のゲート長方向の活性領域AR外周には完全分離酸化膜FTが配設されて完全分離されており、また図33に示すように、ゲート電極12のゲート幅方向の活性領域AR外周には部分分離酸化膜PTが配設されて部分分離状態となっている。従って、活性領域ARは部分分離酸化膜PTの下部のSOI層3を通じてボディコンタクト部BDのボディ領域(不純物領域)BRに電気的に接続されており、活性領域ARの電位はボディコンタクト部BDの電位に固定(ボディ固定)されると共に、完全分離酸化膜FTによってPNジャンクション容量のフィールドエッジ成分を低減できるので、素子動作が安定し、また、高速動作、低消費電力を達成できる。
ここで、図31に示すような略C字形の2つの完全分離酸化膜FTを形成するには、専用のエッチングマスクが必要となるが、そのエッチングマスクの製作には労力を要していた。
そこで、本発明に係る実施の形態3として、完全分離酸化膜FT形成のためのエッチングマスクを簡便に得ることができる手法について以下に説明する。
<C−2.製造方法>
まず、エッチングマスクの作成方法の説明に先立って、図31に示すMOSトランジスタの製造工程を順に説明する。
まず、図34に示す工程において、活性領域ARを規定するレジストマスクRM71をSOI基板上に配設する。なお、以下の説明においては活性領域とは、基本的にソース・ドレイン層の形成領域を指す。従って、レジストマスクRM71を形成するためのデータをソース・ドレイン層のフィールドデータL31と呼称する。なお、ボディコンタクト部BDにもレジストマスクを配設するが、以下においては図示するに止め、説明は省略する。
図34におけるC−C線での矢視方向断面の構成を図35に示す。図35において、SOI基板を構成するSOI層3上には酸化膜4、ポリシリコン膜21および窒化膜22が積層されており、窒化膜22をパターニングするためのエッチングマスクがレジストマスクRM71となる。なお、図35においてはレジストマスクRM71を残した状態で部分分離酸化膜用のトレンチTR2が形成され、内壁酸化膜OX1が形成された状態を示しているが、実際には、酸化膜4、ポリシリコン膜21およびSOI層3のトレンチエッチングは、レジストマスクRM1を除去し、パターニングされた窒化膜22を用いることはこれまで説明した通りである。
次に、図36に示す工程において、完全分離酸化膜形成のためのレジストマスクRM72をSOI基板上に配設する。
レジストマスクRM72は、完全分離酸化膜の形成部分が略C字形の開口部FTOとなったマスクであり、2つの開口部FTOは活性領域ARの端縁部に一部が重なるように配設されている。このレジストマスクRM72を形成するためのデータを完全分離データF1と呼称する。
ここで、開口部FTOのうち、活性領域AR外に重なる部分は一定の幅αを有し、活性領域AR上に重なる部分は一定の幅βを有し、後に形成されるゲート電極12(破線部)と開口部FTOの両端部との間には距離γを有するものとする。
図36におけるD−D線での矢視方向断面の構成を図37に示す。図37に示すように、レジストマスクRM72の2つの開口部FTOは、何れも、幅αだけトレンチTR2上に重なり、幅βだけ活性領域AR上に重なるように配設されている。当該レジストマスクRM72を用いてSOI層3をエッチングした状態を図38に示す。
図38に示すように、トレンチTR2の幅αに相当する部分に埋め込み酸化膜2にまで到達するフルトレンチFTRが形成されている。なお、活性領域AR上の窒化膜22も幅βに対応する部分がエッチングされているが、窒化膜22は最終的には除去されるので何等問題はない。
図39には、トレンチTR2およびフルトレンチFTRをHDP酸化膜OX2で埋め込んだ状態を示している。この後、HDP酸化膜OX2を平坦化した後、窒化膜22、ポリシリコン膜21および酸化膜4を除去し、図40に示すような最終的な併合分離酸化膜BTを得る。なお、併合分離酸化膜BTで規定される活性領域AR上に絶縁膜11およびポリシリコン膜12をパターニングしてゲート絶縁膜11およびゲート電極12とする。
なお、併合分離酸化膜BTを形成した後、活性領域AR上にゲート絶縁膜11およびゲート電極12を選択的に形成するが、その際に使用されるエッチングマスクが図41に示すレジストマスクRM73である。レジストマスクRM73は、SOI基板の全面に形成された酸化膜やポリシリコン膜上に選択的に配設され、ゲート電極12の平面視形状に対応するパターンを有しており、上記酸化膜やポリシリコン膜をパターニングしてゲート絶縁膜11およびゲート電極12を形成する。このレジストマスクRM73を形成するためのデータをゲートデータL33と呼称する。
<C−3.完全分離データの作成方法>
以上説明したように、図31に示すMOSトランジスタの形成には、レジストマスクRM71〜73の少なくとも3枚のレジストマスクが必要であるが、以下の手法を採用することで、レジストマスクRM72形成のための完全分離データF1を簡便に得ることができる。
完全分離データF1の作成において、上述したソース・ドレイン層のフィールドデータL31、ゲートデータL33の他に、以下の定義を行う。
すなわち、データのアンダーサイズ処理を演算子UNで表す。
また、データのオーバーサイズ処理を演算子OVで表す。
また、データの引き算を演算子−で表す。
ここで、アンダーサイズ処理とは、対象となるデータを等方的に所定量だけ小さくする処理であり、例えば(L31 UN0.1μm)とすれば、当初のフィールドデータL31が矩形領域を規定する場合、4辺それぞれが0.1μmずつ内側に移動することを意味する。
逆に、オーバーサイズ処理とは、対象となるデータを等方的に所定量だけ大きくする処理であり、例えば(L31 OV0.1μm)とすれば、当初のフィールドデータL31が矩形領域を規定する場合、4辺それぞれが0.1μmずつ外側に移動することを意味する。
そして、先に説明した長さを示すα、βおよびγの値を各処理の係数として用いた下記の演算式(3)により、完全分離データF1を得ることができる。
ここで、係数α、βおよびγを0.15μmとすると、(L31 OV α)により、ソース・ドレイン層のフィールドデータL31で規定される矩形領域を0.15μm等方的に広げた矩形領域が得られ、そこから、(L31 UN β)により、ソース・ドレイン層のフィールドデータL31で規定される矩形領域を0.15μm等方的に小さくした矩形領域を差し引くことで、環状部の幅がα+β(=0.3μm)の矩形環状領域を得る。
さらに矩形環状領域から、(L33 OV γ)により、ゲートデータL33で規定されるゲート領域を0.15μm等方的に広げた領域を差し引くことで、図36に示すように、向かい合った2つのC字形状の開口部FTOを有するレジストマスクRM72を作成するための完全分離データF1を得ることができる。
<C−4.作用効果>
以上説明した、完全分離データの作成方法によれば、ソース・ドレイン層のフィールドデータL31およびゲートデータL33から完全分離データF1を得ることができるので、併合分離酸化膜BTの形成に際して必要となる、完全分離酸化膜FT形成用のエッチングマスクの製作が容易となり、半導体装置の製造コストを低減することができる。
<C−5.応用例1>
以上説明した手法を用いれば、以下のような応用も可能である。
図42は、2つのMOSトランジスタが隣接して配設された構成を示す平面図であり、両トランジスタのゲート電極12が並列するように配設されている。どちらのMOSトランジスタも、活性領域ARを囲む部分が完全分離酸化膜FTとなった併合分離酸化膜によって電気的に分離されている。
しかし、隣り合う活性領域AR間には完全分離酸化膜FTが形成されていない部分分離領域Xが存在している。ここには部分分離酸化膜が形成されており、部分分離酸化膜の下部にはSOI層が存在する。
このように、狭い部分分離領域が存在すると、エッチングマスクのパターンが複雑になり、製造コストの増加につながるので、できるだけ回避することが望ましい。このような場合にも、上述した完全分離データの作成方法が有効となる。
図43は、図42の構成を得るために、上述した演算式(3)に基づいて得られた完全分離データF1を図面化した図であり、隣り合う開口部FTO間の部分分離領域Xの幅は2δとなっている。
このデータに基づいて工程を進めると図42に示す構成が得られるが、本例では、下記の演算式(4)により、完全分離データF1をさらに加工して、完全分離データF2を得る。
ここで、部分分離領域Xの幅の半分に相当する長さδを、各処理における係数δとし、係数δを0.15μm程度とすると、((F1) OV δ)により、完全分離データF1で規定される開口部FTOが0.15μm等方的に広がることになる。なお、上記開口部FTOとは、正確には開口部FTOを形成するためのデータと言うべきであるが、簡略化のため開口部FTOと呼称する。以下に示すその他の開口部についても同様である。なお、隣り合う開口部FTO間の部分分離領域Xの幅でなく、隣り合う活性領域間の幅の半分を係数δとしても良い。要するに、隣り合うMOSトランジスタの配設間隔に基づいて決定され、隣り合う開口部FTOを確実に接触させることができる値であれば良い。
図44に開口部FTOをオーバーサイズ処理した状態を模式的に示す。図44においては、完全分離データF1をオーバーサイズ処理して得られた開口部FTO1およびFTO2を実線で示し、当初の開口部FTOを破線で示す。図44に示すように、完全分離データF1をオーバーサイズ処理することで、隣り合う開口部FTOどうしが接触し、平面視形状が略H字形(あるいはI字形)の開口部FTO1となる。なお、開口部FTO1の両側には開口部FTOの形状を維持した略C字形の開口部FTO2が形成される。
次に、(F1 OV δ)UN δにより、開口部FTO1およびFTO2をアンダーサイズ処理した状態を図45に模式的に示す。
図45に示すように、開口部FTO1およびFTO2が、それぞれ0.15μm等方的に縮小され、FTO11およびFTO12となっている。この結果、FTO12は、完全分離データF1における開口部FTOと実質的に同じになるが、FTO11は略H字形を維持して縮小される。
このような形状の開口部FTO11およびFTO12を有する完全分離データF2に基づいて形成されたエッチングマスクを用いて製造されたMOSトランジスタの平面図を図46に示す。
図46に示すように、隣接して配設された2つのMOSトランジスタの、隣り合う活性領域ARの端縁部および隣り合う活性領域AR間に、略H字形の完全分離酸化膜FT1が形成されている。なお、2つのMOSトランジスタのそれぞれにおいて、完全分離酸化膜FT1で囲まれた活性領域ARとは反対側の活性領域ARは、図42と同様に完全分離酸化膜FTで囲まれている。
以上説明したように、完全分離データを簡単な演算によって加工することで、隣接して配設された2つのMOSトランジスタの、隣り合う活性領域間に狭い部分分離領域が存在することが回避され、エッチングマスクのパターンを単純化して、製造コストを低減できる。
<C−6.応用例2>
以上の説明においては、併合分離酸化膜を構成する完全分離酸化膜の形成のためのマスクデータを、他のマスクデータを加工することで簡便に得る方法について言及したが、この方法を用いて、ソース・ドレイン層のフィールドデータL31を得ることもできる。
すなわち、データの足し算を演算子+で表し、データの重ね合わせ処理を演算子ANDで表す。そして、全てのフィールドデータを全フィールドデータL311、P型ウエルを形成するためのP型不純物注入領域を規定するデータをP型ウエルデータL24とし、N型ウエルを形成するためのN型不純物注入領域を規定するデータをN型ウエルデータL20とし、N型ソース・ドレイン層を形成するためのN型不純物注入領域を規定するデータをN型ソース・ドレインデータL18とし、P型ソース・ドレイン層を形成するためのP型不純物注入領域を規定するデータをP型ソース・ドレインデータL17とすることで、ソース・ドレイン層のフィールドデータL31を以下の演算式(5)に基づいて得ることができる。
<D.実施の形態4>
図1〜図20を用いて説明した半導体装置の製造方法においては、部分分離酸化膜の形成に際しては、部分トレンチを形成した後、部分トレンチ内に内壁酸化膜を形成する構成を示したが、完全分離酸化膜および併合分離酸化膜の形成においても、一旦、部分トレンチ(パーシャルトレンチ)を形成し、内壁酸化膜を形成した後に所望の完全トレンチ(フルトレンチ)を形成することで、以下に説明する効果が得られる。
<D−1.製造方法>
まず、製造工程を順に示す断面図である図47〜図51を用いて、本発明に係る実施の形態4の半導体装置の製造方法について説明する。
図47は、図16を用いて説明した工程に対応する図であり、トレンチTR2の内壁を酸化して内壁酸化膜OX1を形成した状態を示している。
次に、図48に示すように、完全トレンチを形成することを目的として、所定の開口パターンを有するレジストマスクRM81をSOI基板の全面に形成する。
ここで、所定の開口パターンは、図に向かって右側のトレンチTR2部分が全て開口部となり、また、図に向かって左側のトレンチTR2においては、活性領域ARの端縁部近傍部分がレジストで覆われ、それ以外の部分が開口部となったパターンである。
このようなレジストマスクRM81を用いて、埋め込み酸化膜2にまで到達するエッチング(フルトレンチエッチング)を行うことで、図49に示すように、活性領域ARの図に向かって右側には完全トレンチFTRが形成され、活性領域ARの図に向かって左側には完全トレンチFTRと部分トレンチPTRとを有した併合トレンチBTRが形成されることになる。
このとき、完全トレンチFTRにおいては、トレンチTR2の底面がエッチングにより除去されるので、SOI層3の側壁においては上部側だけに内壁酸化膜OX1が存在し、側壁下部側には内壁酸化膜OX1は存在していない。
また、併合トレンチBTRにおいては、部分トレンチPTRのみに内壁酸化膜OX1が存在し、完全トレンチFTRのSOI層3の側壁には内壁酸化膜OX1は存在していない。
このように、埋め込み酸化膜2とSOI層3との界面近傍に内壁酸化膜OX1が存在しないので、埋め込み酸化膜2とSOI層3との界面に内壁酸化膜OX1が浸入することがなく、SOI層3の形状が反り上がるように変形し、機械的ストレスが加わってジャンクションリークが発生することが防止される。
また、図49に示すH部のように、完全トレンチFTR側のSOI層3の側壁においては、内壁酸化膜OX1が徐々に薄くなる構成となるので、SOI層3に対する機械的ストレスの低減に寄与する。なお、図46に示すE−F−G−H線での矢視断面図は、図49に示すような構成となる。
工程の説明に戻ると、次に、完全トレンチFTRおよび併合トレンチBTRをHDP酸化膜で埋め込んで平坦化した後、図19を用いて説明したように、窒化膜22をエッチングマスクとしてフッ酸(HF)処理によりHDP酸化膜を所定厚さまでエッチングする。その後、窒化膜22およびポリシリコン膜21を除去し、さらに、酸化膜4を除去して、代わりにゲート絶縁膜11を形成し、その上にゲート電極12およびシリサイド層16を形成することで図50に示すように、活性領域ARの左右に、完全分離酸化膜FTおよび併合分離酸化膜BTを有した構成を得る。
また、上記においては、活性領域ARの左右に完全分離酸化膜FTおよび併合分離酸化膜BTを有した構成を得る方法について説明したが、図48を用いて説明したレジストマスクRM81の開口パターンを、左右のトレンチTR2部分が全て開口部となるようなパターンにすることで、活性領域ARの左右に完全トレンチを形成することができ、最終的に、図51に示すように、活性領域ARの左右に完全分離酸化膜FTを有した構成を得ることも容易にできる。また、図50の構成および図51の構成を共に備える場合もある。
<D−2.作用効果>
以上説明したように、実施の形態4の半導体装置の製造方法によれば、活性領域ARの左右に完全分離酸化膜FTおよび併合分離酸化膜BTを有した構成においても、また、活性領域ARの左右に完全分離酸化膜FTを有した構成においても、埋め込み酸化膜2とSOI層3との界面近傍に内壁酸化膜OX1が存在しないので、埋め込み酸化膜2とSOI層3との界面に内壁酸化膜OX1が浸入することがなく、SOI層3の形状が反り上がるように変形し、機械的ストレスが加わってジャンクションリークが発生することが防止される。
また、完全トレンチFTR側のSOI層3の側壁においては、領域Hに示すように、内壁酸化膜OX1が徐々に薄くなる構成となるので、SOI層3に対する機械的ストレスの低減に寄与する。
なお、従来は、完全分離酸化膜および併合分離酸化膜を形成する際に、完全トレンチを形成した後に内壁酸化を行っていたが、その場合には、埋め込み酸化膜とSOI層との界面に内壁酸化膜が浸入し、SOI層の形状が反り上がるように変形するので、これを防止するために以下のような手法を採る場合がある。
すなわち、SOI層に完全トレンチ形成する際に、内壁酸化膜の厚さ程度のSOI層が底面に残るようにトレンチを形成し、その後、熱酸化を行うことで、トレンチ側壁のSOI層を酸化するだけでなく、トレンチ底部のSOI層を完全に酸化して内壁酸化膜を形成するようにしていた。
この方法では、酸化剤(例えば酸素)が埋め込み酸化膜とSOI層との界面に浸入することをある程度は防止できるが、完全ではない。また、トレンチ底部に残すべきSOI層が、エッチングのばらつきにより予定外に厚くなり、完全に酸化されない場合はSOI層が部分的に残って、電流リークの原因になる場合があった。
しかし、上述した実施の形態4の半導体装置の製造方法によれば、埋め込み酸化膜2とSOI層3との界面に内壁酸化膜OX1が浸入することがなく、また、完全トレンチを形成する際にSOI層を残す必要がなく、十分なオーバーエッチングにより完全トレンチを形成できるので、エッチング制御が容易となるという利点もある。
<E.実施の形態5>
<E−1.装置構成>
これまでに説明したパーシャルトレンチ分離構造(PTI構造)は、部分分離酸化膜の下部に残るウエル領域を通じてチャネル形成領域の電位を固定するボディ固定を実現できる構造として着目されるが、半導体装置において必ずしも全ての部位をボディ固定する必要はなく、SOIデバイスの特徴を活かして、フローティング構造を採用した方が良い部位も存在する。
例えば、システムLSIにおいて、ランダムロジック部はPTI構造としてボディ固定し、SRAM部はFTI構造(フルトレンチ分離構造)としてフローティング構造とする場合が考えられる。
以下、本発明に係る実施の形態5として、ランダムロジック部はPTI構造とし、SRAM部はFTI構造とした半導体装置について説明する。
図52はPTI構造に囲まれたMOSトランジスタをボディ固定する場合の構成を示す断面図であり、活性領域領域ARは、部分分離酸化膜PTの下部のSOI層3(P型ウエル)を通じてボディコンタクト部BDの不純物領域(ボディ領域)BRに電気的に接続されており、活性領域ARの電位はボディコンタクト部BDの電位に固定(ボディ固定)される構成となっている。ボディコンタクト部BDは、SOI層4の表面内に形成されたP型不純物領域で構成され、P型不純物領域上にはシリサイド層17を有している。
従って、ボディコンタクト部BDに所定の電位を与えて、図52に示すMOSトランジスタのボディ固定をすることにより、基板浮遊効果による種々の問題が発生することを抑制できる。
なお、図52に示すMOSトランジスタはNチャネル型であり、ソース・ドレイン層15はN型不純物領域となっており、ゲート電極12下部のSOI層3はP型不純物領域となっている。なお、図52に示すMOSトランジスタは、図13に示すNMOSトランジスタと基本的には同じであり、同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
また、図52に示すMOSトランジスタはPD(Partially-Depleted)SOI−MOSトランジスタであり、通常動作時に、ゲート電極12直下の空乏層DLが、埋め込み酸化膜2まで達しない特徴を有している。この特徴のため、PDSOI−MOSトランジスタはしきい値電圧の制御性が優れている。
図53はFTI構造に囲まれたMOSトランジスタを示す断面図であり、活性領域領域ARは、完全分離酸化膜FTに囲まれており、NMOSトランジスタは電気的にフローティング状態となっている。
なお、図53に示すMOSトランジスタはFD(Fully-Depleted)SOI−MOSトランジスタであり、通常動作時に、ゲート電極12直下の空乏層が、埋め込み酸化膜2まで達しており、図52に示すPDSOI−MOSトランジスタのように、空乏層は図示されていない。
FDSOI−MOSトランジスタは、サブスレショルド特性が良好で、スイッチング動作に優れるという利点を有するとともに、寄生バイポーラ効果も小さいのでソフトエラー耐性が高いという利点も有する。
<E−2.作用効果>
従って、システムLSIにおいて、ランダムロジック部にはPTI構造を採用し、そのMOSトランジスタはPDSOI−MOSトランジスタとしてボディ固定することで、安定した動作が得られる。
また、SRAM部はFTI構造を採用し、そのMOSトランジスタはFDSOI−MOSトランジスタとすることで、スイッチング特性に優れ、かつソフトエラー耐性が高いMOSトランジスタを得ることができる。
図54に上記構成を有したシステムLSIの平面レイアウトを模式的に示す。図54に示すように、ランダムロジック部RPはボディコンタクト部BDを有するのに対し、SRAM部SPはボディコンタクト部BDを有していない。
また、SRAM部SPの周辺回路PPは、ランダムロジック部にはPTI構造を採用し、そのMOSトランジスタはPDSOI−MOSトランジスタとしてボディ固定される構成となっている。
なお、PDSOI−MOSトランジスタは、ボディ電位固定が強く要求されるI/O回路、アナログ回路(PLL、センスアンプ回路)、タイミング回路、ダイナミック回路などに適用すると、特に有効である。
<E−3.変形例>
以上の説明においては、システムLSIにおいて、ランダムロジック部はPTI構造としてボディ固定し、SRAM部はFTI構造としてフローティング構造とする構成を説明したが、この場合はSOI層の厚さはランダムロジック部でもSRAM部でも同じであった。
しかし、SOI層の厚さを、回路の種類に応じて適宜変更することで、PTI構造およびFTI構造の特性をさらに有効に活用することができる。
例えば、アナログ回路部をSOI層の厚い領域(厚膜領域)に形成して、PTI構造により電気的に分離し、デジタル回路部をSOI層の薄い領域(薄膜領域)に形成してFTI構造により電気的に分離した半導体集積回路を構成する。
以下、図55〜図61を用いて当該半導体集積回路の製造工程を説明する。
まず、図55に示す工程において、シリコン基板1、埋め込み酸化膜2およびSOI層3で構成されるSOI基板を準備し、SOI層3上に厚さ5〜30nmの酸化膜OX5を形成する。この酸化膜OX5はSOI層3の厚さを場所によって変えるための下敷き酸化膜である。
そして、SOI層3の薄膜化を行う部分が開口部となったパターンを有する厚さ100〜500nmの窒化膜マスクSN5を酸化膜OX5上に形成する。
次に、図56に示す工程において、LOCOS(Local Oxide of Silicon)酸化により、窒化膜SN5で覆われない部分の酸化膜OX5を成長させて、当該部分のSOI層3の厚さを薄くする。ここで、SOI層3の当初の厚さを10〜200nmとすると、薄膜化後のSOI層3厚さは10〜50nmとなる。
次に、図57に示す工程において、窒化膜SN5および酸化膜OX5を除去する。ここで、当初の厚さを維持する領域を厚膜領域R10、薄膜化された領域を薄膜領域R20と呼称する。
その後、図58に示す工程において、SOI層3上に、酸化膜4、ポリシリコン膜21および窒化膜22を順次形成する。このとき、酸化膜4、ポリシリコン膜21および窒化膜22はSOI層3の段差形状を反映して、段差を有して形成されることになる。なお、これらの膜は、図14〜図20を用いて説明した半導体装置の製造方法において説明しているので重複する説明は省略する。
次に、図59に示す工程において、厚膜領域R10と薄膜領域R20との境界に併合分離酸化膜を形成するために併合トレンチBTR1を形成する。併合トレンチBTR1は、厚膜領域R10側が部分トレンチ、薄膜領域R20側が完全トレンチとなっている。
次に、図60に示す工程において、併合トレンチBTR1内をHDP酸化膜で埋め込んだ後、HDP酸化膜を平坦化した後、窒化膜22、ポリシリコン膜21を除去し、最終的な併合分離酸化膜BT1を得る。
なお、図60に示すように、併合分離酸化膜BT1の形成と同時に、厚膜領域R10には部分分離酸化膜PTが形成され、併合分離酸化膜BT1と合わせて活性領域AR1を規定し、薄膜領域R20には完全分離酸化膜FTが形成され、併合分離酸化膜BT1と合わせて活性領域AR2を規定する。
その後、図61に示すように、厚膜領域R10の活性領域AR1には、ゲート絶縁膜111、ゲート電極121、サイドウォールスペーサ131、(N型)低ドープドレイン層141および(N型)ソース・ドレイン層151を形成してNMOSトランジスタNM10を形成し、薄膜領域R20の活性領域AR2には、ゲート絶縁膜112、ゲート電極122、サイドウォールスペーサ132、(N型)ソース・ドレイン層152を形成してNMOSトランジスタNM20を形成する。
なお、NMOSトランジスタNM10およびNM20は、何れもPD(Partially-Depleted)SOI−MOSトランジスタであり、ゲート電極直下の空乏層が、埋め込み酸化膜2まで達しない特徴を有している。この特徴のため、PDSOI−MOSトランジスタはしきい値電圧の制御性が優れている。
以上の工程を経て、SOI層の厚膜領域にアナログ回路部が形成され、PTI構造により電気的に分離され、ボディ固定が可能となる。また、SOI層の薄膜領域にデジタル回路部が形成されFTI構造により電気的に完全に分離された構成となる。
このような構成を採ることで、アナログ回路部では、MOSトランジスタの動作の安定性や、線形性が得られ、またノイズも少なくなる。デジタル回路部はSOI層の薄膜領域に形成されるので、寄生容量を小さくでき、より高速動作が可能で、低消費電力を実現できる。
なお、SOI層の厚膜領域にランダムロジック部を形成し、薄膜領域にSRAM部を形成することによっても、実施の形態5で示した効果を得ることができる。この場合、SRAM部のMOSトランジスタは完全分離のFDSOI−MOSトランジスタとすることで、スイッチング特性に優れ、かつソフトエラー耐性を高めることができるが、SOI層の厚膜領域にSRAM部を形成し、部分分離でボディ固定を行う場合には、SOI層の厚さを調整することで、ソフトエラー耐性を改善することができる。
図62に、ソフトエラーレートのSOI層の厚さ依存性を示す。図62において、横軸にSOI層の厚さ(nm)を示し、縦軸にソフトエラーレートを単位時間当たりのエラービットの数(bit/sec)で示す。
図62に示すように、PTI構造で活性領域がフローティング状態である場合は、SOI層が厚くなるとソフトエラーレートも増加し、SOI層の厚さ50nmを境にソフトエラーレートの増加率が高まるが、FTI構造で活性領域がボディ固定される場合には、SOI層の厚さ200nmの近傍で、最もソフトエラーレートが小さくなることが判る。
従って、SRAM部を形成するSOI層の厚さは、180〜220nmとしてボディ固定することで、ソフトエラー耐性を改善することができる。
<F.実施の形態6>
<F−1.装置構成>
実施の形態1〜5において説明したように、部分分離酸化膜を用いてMOSトランジスタを電気的に分離する場合、MOSトランジスタ間の部分分離酸化膜の下部にはSOI層が存在するので、そこに不純物が導入されて電気抵抗が低下すると、分離能力が低下する可能性がある。
例えば、図63に示すように、2つのMOSトランジスタが隣接して配設される構成において、両トランジスタの活性領域AR間の領域Gには、部分分離酸化膜が形成されているので、当該領域のSOI層にソース・ドレイン層を形成するための不純物が注入されると、電気抵抗が低下する。
そこで、不純物を注入すべき領域をCAD等で設計後、当該領域以外の領域を遮光部とした反マスクを作成し、それを用いてポジ型レジストを露光して開口優先マスクを形成することで、ソース・ドレイン不純物注入に際しては、2つのMOSトランジスタ間の領域Gにソース・ドレイン不純物が注入されることを防止できる。
図63には、開口優先マスクとしてレジストマスクRM91を設けた例を示しており、レジストマスクRM91の開口部OP10を通して、ソース・ドレイン不純物注入が行われる。なお、図63において、図31を用いて説明した構成と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
なお、開口優先マスクの作成方法としては、不純物を注入すべき領域をCAD等で設計後、当該領域をそのままマスク上の遮光部とした正マスクを作成し、それを用いネガ型レジストを露光するようにしても良い。
<F−2.作用効果>
以上説明したように、MOSトランジスタの不純物注入に際しては、開口優先マスクを用いることで、開口部以外の部分分離酸化膜の下部のSOI層に不純物が導入されることが防止され、SOI層の電気抵抗が低下することを防止して、分離能力を維持できる。
1 SOI層、4,6 酸化膜、5,7,21 ポリシリコン膜、8,22 窒化膜、TR1,TR2 トレンチ、N1,P1 チャネルストップ層、MPA,MPB,MPC モニターパターン、BT 併合分離酸化膜、PT 部分分離酸化膜、FT 完全分離酸化膜、BR ボディ領域。