JP2008044912A - ナガコンブ由来の抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 海藻類の抽出物からのフコイダンを有効成分とし、その生理活性を利用する抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤を提供すること。
【解決手段】本発明は、ナガコンブから得られたフコイダンを有効成分とする抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤を提供するものである。
このフコイダンは、ナガコンブを希塩酸水溶液により抽出して得られたものであり、更に具体的には、ナガコンブを希塩酸水溶液により抽出した後、塩化セチルピリジニウム複合体多糖とし、この塩化セチルピリジニウム複合体多糖をDEAE−セファロースカラムに付して得られる4個の画分のいずれか又はすべてである。
【選択図】図1
【解決手段】本発明は、ナガコンブから得られたフコイダンを有効成分とする抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤を提供するものである。
このフコイダンは、ナガコンブを希塩酸水溶液により抽出して得られたものであり、更に具体的には、ナガコンブを希塩酸水溶液により抽出した後、塩化セチルピリジニウム複合体多糖とし、この塩化セチルピリジニウム複合体多糖をDEAE−セファロースカラムに付して得られる4個の画分のいずれか又はすべてである。
【選択図】図1
Description
本発明は、ナガコンブから抽出したフコイダンを有効成分とする抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤またはアトピー性皮膚炎治療剤に関する。
沖縄地方は、わが国において歴史的に特異な衣食住の文化を創造してきており、この特異性が沖縄地方に住む人の長寿の大きな要因になっていると考えられている。これらのうちでも食文化について沖縄独特なものが多く見られ、特にコンブやモズクなどの海藻類を多く利用している点が特徴的である。
近年になってこれらの海藻類に含まれているフコイダンやその他の硫酸化多糖がさまざまな生理活性を有することがわかり、有用な生物資源として注目され、種々の研究が行われている。このフコイダンは、モズク、コンブ、ワカメ、ヒジキ等に多く含まれている硫酸化多糖類の1種であり、L−フコースに加え、D−ガラクトース、D−キシロースおよびD−グルクロン酸を構成糖とし、更にエステル結合した硫酸基を持つ多糖類である。
これまでフコイダンには、抗コレステロ−ル作用、抗血液凝固作用等の効果が見出されており、健康補助食品の素材としてすでに利用開発され、市場で販売されている。
これまでフコイダンには、抗コレステロ−ル作用、抗血液凝固作用等の効果が見出されており、健康補助食品の素材としてすでに利用開発され、市場で販売されている。
本発明者らは、海藻類に含まれる多糖類に焦点をあてて研究を行い、沖縄に自生する海藻類に含まれる多糖類から機能性多糖類を分離同定し、そのゲル化機構や腫瘍細胞に対するアポトーシス誘導効果を報告している(非特許文献1参照)。また、ナガコンブからのアルギン酸について、その化学特性を報告している(非特許文献2参照)。
更に、本発明者らは、オキナワモズク(Cladosiphon okamuranus TOKIDA)から分子量が500,000で、L−フコース、D−キシロース、D−グルクロン酸、酢酸および硫酸の構成比がそれぞれ3.0〜4.0、0.1〜0.3、0.8〜1.2、0.5〜1.0、0.8〜1.2であるアセチルフコイダンを見出し、既に特許を取得しており(特許文献1参照)、このアセチルフコイダンが優れた抗腫瘍活性を有することを見出し、特許出願を行っている(特許文献2参照)。
本発明者らは、海藻類の種々の医薬品への利用の可能性を調べるため、このような海藻類からの抽出物、特にフコイダンについて、その生理活性を幅広く検討した。
特許第3371124号
特願2005−236456号明細書
田幸正邦ら、「応用糖質科学」43、 143-148(1996)
田幸、中山、「日本応用糖質学会大会講演要旨集」30頁、鹿児島、(2004年)
即ち、本発明は、ある種の海藻類の抽出物からのフコイダンを有効成分とし、その生理活性を利用する種々の治療剤を提供することをその目的とするものである。
本発明者らは、種々の海藻類の抽出物の生理活性について鋭意研究を行ったところ、ナガコンブから抽出により得られるフコイダンが優れた生理活性を示すことを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、ナガコンブから得られたフコイダンを有効成分とすることを特徴とする、抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤を提供するものである。
また、本発明は、フコイダンが、ナガコンブを希塩酸水溶液により抽出して得られたものであることを特徴とする、抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤である。
また、本発明は、フコイダンが、ナガコンブを希塩酸水溶液により抽出した後、塩化セチルピリジニウム複合体多糖とし、この塩化セチルピリジニウム複合体多糖をDEAE−セファロースカラムに付して得られる4個の画分のいずれか又はすべてを含むものであることを特徴とする、抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤である。
更に、本発明は、上記抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤を含有することを特徴とする飲食品を提供するものである。
本発明のナガコンブから得られたフコイダンを有効成分とする抗腫瘍剤は優れた抗腫瘍活性を有し、同じくナガコンブから得られたフコイダンを有効成分とするヒアルロニダーゼ阻害剤は優れたヒアルロニダーゼ阻害活性を示し、更に、ナガコンブから得られたフコイダンを有効成分とするアトピー性皮膚炎治療剤は、アトピー性皮膚炎の症状を和らげ、アトピー性皮膚炎に対して優れた治療効果を示す。
従って、本発明のナガコンブから得られたフコイダンを有効成分とする抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤は、それぞれ優れた抗腫瘍活性、ヒアルロニダーゼ阻害活性を示すので、その作用を利用して腫瘍の治療、アトピー性皮膚炎の治療等に用いることができるとともに、日常的にこれらの治療剤を含む飲食品としてこれを摂取することにより、腫瘍の予防やアトピー性皮膚炎の発生を抑制することもできる。
本発明の抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤は、ナガコンブから得られた酸性多糖であるフコイダンを有効成分とするものであり、更に具体的には、ナガコンブを希塩酸水溶液により抽出して得られるフコイダンを有効成分とするものである。
原料となるナガコンブ(Laminaria angustata var. longissima)は、褐藻網コンブ目コンブ科に属する海藻の一種である。同じコンブ目コンブ科に属する海藻としては、ナガコンブのほかに、マコンブ、リシリコンブ、ホソメコンブなどがあるが、本発明の目的に使用できるものはこれらのうちのナガコンブである。生育する分布帯は、北海道の釧路港以東、厚岸、浜中、花咲を経て歯舞にいたる太平洋沿岸、歯舞諸島、国後島、択捉島である。ミツイシコンブの変種とされるが、ミツイシコンブに比べ葉が非常に長く、葉の長さが平均7〜8m、最大15〜20mと非常に長く生育する種である。形態的特徴は、葉が細くて長い帯状で、縁辺が緩やかに波打ち、中帯部が狭く、基部が丸みを帯びたくさび形である。
本発明の抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤は、このナガコンブを希塩酸等の酸性水溶液により抽出して得られる酸性多糖の一種であるフコイダンを有効成分とするものである。
更に具体的には、このナガコンブから得られるフコイダンは、ナガコンブを希塩酸等の酸性水溶液により抽出した後、塩化セチルピリジニウム複合体多糖として沈澱させたものを塩化カルシウム水溶液に溶解させ、脱セチルピリジニウム処理した後、DEAE−セファロースカラムに付して得られる4個の画分のいずれか又はすべてを含むものである。このナガコンブから得られるフコイダンは、L−フコースを主成分とし、硫酸を多量置換する新規なフコイダンであり、概ねL−フコース、D−ガラクトース、D−キシロース、D−グルクロン酸および硫酸から構成されており、L−フコースを4.0とした比率(質量比)で示すと、次の表1に示す通りの組成からなるものである。
更に具体的には、このナガコンブから得られるフコイダンは、ナガコンブを希塩酸等の酸性水溶液により抽出した後、塩化セチルピリジニウム複合体多糖として沈澱させたものを塩化カルシウム水溶液に溶解させ、脱セチルピリジニウム処理した後、DEAE−セファロースカラムに付して得られる4個の画分のいずれか又はすべてを含むものである。このナガコンブから得られるフコイダンは、L−フコースを主成分とし、硫酸を多量置換する新規なフコイダンであり、概ねL−フコース、D−ガラクトース、D−キシロース、D−グルクロン酸および硫酸から構成されており、L−フコースを4.0とした比率(質量比)で示すと、次の表1に示す通りの組成からなるものである。
具体的に、ナガコンブから本発明に使用するフコイダンを得る方法を示せば次の通りである。まず、ナガコンブの乾燥藻体を粉砕した後、塩酸水溶液に加えて数時間ないし一晩攪拌する。次に、これを濾過し、ろ液をセライト545層等のカラムに通して、得られた抽出液を塩化セチルピリジニウム(以下「CPC」という)で沈澱させ、CPC複合体の沈澱を得る。この部分精製酸性多糖であるCPC複合体の沈澱を塩化カルシウム溶液に溶解させ、DEAE−セファロースカラムに付すことによって、上記表1に示す組成からなるフコイダンの4個の画分(画分1〜画分4)を得ることができる。
本発明の抗腫瘍剤は、ナガコンブから得られるフコイダンをそのままあるいは公知の適当な医薬担体と組み合わせ、製剤化することにより製造することができる。本発明の抗腫瘍剤におけるナガコンブから得られるフコイダンの含有量は、抗腫瘍活性が発揮される量であれば特に制限されないが、例えばナガコンブから得られるフコイダンが20〜80質量%、好ましくは50〜80質量%である。
本発明の抗腫瘍剤は、白血病、リンパ腫、胃癌、肝臓癌、肺癌、乳ガン等の腫瘍に対して有効であり、これらの腫瘍に応じた投与方法、例えば、経口投与、局所投与等の投与方法を選択することができる。また、これら抗腫瘍剤の剤形も特に制限されず、上記投与方法に応じて、錠剤、粒剤、顆粒剤、粉剤、カプセル剤等の経口剤や、注射剤、点滴用剤等の非経口剤等とすることができる。更に、投与量や投与回数は通常の抗腫瘍剤に準じて定めればよい。
更に、本発明の抗腫瘍剤においては、更にその他の抗腫瘍剤を併用することで、より抗腫瘍活性を高めることができる。このような併用可能な他の抗腫瘍剤としては、一般名が、シタラビン、メルファラン、シクロホスファミド、メクロレタミン、カルムスチン、メトトレキサート、メルカプトプリン、フルオロウラシル、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、アドリアマイシン、イダルビシン、マイトマイシン、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、パクリタクセル、ドセタクセル、シグリタゾン、ピオグリタゾン、トログリタゾン、ロシグリタゾン、フルオロウラシル、アセグラトン、アクラルビシン、ファドロゾール、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルモフール、カルボコン、カルボプラチン、シタラビンオクホシファート、ダカルバジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、エピルビシン、エピチオスタノール、エトポシド、フルタミド、ゴセレリン、ヒドロキシカルバミド、メドロキシプロゲステロン、イリノテカン、イフォスファミド、クレスチン、リュープロレリン、メルファラン、メピチオスタン、メスタノロン、ミトキサントロン、ミトタン、ネオカルチノスタチン、ネダプラチン、ニムスチン、ナイトロジェン・マスタード、オキシメトロン、ピシバニール、ペントスタチン、ペプレオマイシン、ピラルビシン、プロカルバジン、ラニムスチン、ゾブゾキサン、タモキシフェン、チオテパ、テガフール、トレチノイン、トレミフェン、ベスタチン、テガフール・ウラシル、ビンデシン、ジノスタチン、デキサメタゾン、プレドニゾロン等のものが挙げられる。このうち、アドリアマイシン、マイトマイシン、エトポシド、ビンデシン、シクロホスファミド、シタラビン等と組み合わせた場合に、特に優れた効果を得ることができる。
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤も、ナガコンブから得られるフコイダンをそのままあるいは公知の適当な医薬担体と組み合わせ、製剤化することにより製造することができる。本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤におけるナガコンブから得られるフコイダンの含有量は、ヒアルロニダーゼ阻害活性やアレルギー抑制効果が発揮される量であれば特に制限されないが、例えばナガコンブから得られるフコイダンが20〜80質量%、好ましくは50〜80質量%である。
以上のように、ナガコンブから得られる硫酸化多糖であるフコイダンは、抗腫瘍活性及びヒアルロニダーゼ阻害活性を有するものであり、このような硫酸化多糖が食物因子としてアレルギー抑制作用や抗腫瘍作用を有する。従って、本発明の抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤は、通常の飲食品に含有せしめ、日常的に摂取することができる。このような飲食品の製造方法は本発明の抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤を飲食品の原料素材等に有効量添加すればよく、それ以外の点は、通常の飲食品の製造方法に準じればよい。
これら飲食品の例としては茶飲料、栄養補助飲料等の飲料、カプセル状、錠剤状、粉末状等の栄養補助食品等の食品が挙げられる。
次に、本発明を実施例によって更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例中の「%」及び「部」は、いずれも特に注記しない限り質量基準である。
(1)ナガコンブから部分精製硫酸化多糖の抽出
北海道産のナガコンブの乾燥藻体を10%となるように0.1M塩酸水溶液中で、室温で一晩撹拌し、遠心分離した後、上清を吸引ろ過した。ろ液を0.1M水酸化ナトリウムで中和後、濃縮し、沈殿をエタノールで洗浄し、脱水後減圧乾燥して粗多糖を得た。得られた粗多糖を蒸留水に溶解し、不溶物を遠心分離した後、セライト545層を通した。このろ液に対し等量の2%塩化セチルピリジニウム(CPC)を加えて、室温で一晩放置し、CPC複合体多糖の白色沈殿物を形成させた。この粗多糖の白色沈殿物を遠心分離した後、沈殿物を蒸留水で洗浄し、その10倍量の4M塩化カルシウム溶液を加えて40℃で完全に溶解させた。この溶液に4倍量のエタノールを加え、生成する沈殿物を遠心分離後、エタノールで数回洗浄し、蒸留水に溶解させた。透析を十分に行った後、凍結乾燥し部分精製硫酸化多糖を得た。
北海道産のナガコンブの乾燥藻体を10%となるように0.1M塩酸水溶液中で、室温で一晩撹拌し、遠心分離した後、上清を吸引ろ過した。ろ液を0.1M水酸化ナトリウムで中和後、濃縮し、沈殿をエタノールで洗浄し、脱水後減圧乾燥して粗多糖を得た。得られた粗多糖を蒸留水に溶解し、不溶物を遠心分離した後、セライト545層を通した。このろ液に対し等量の2%塩化セチルピリジニウム(CPC)を加えて、室温で一晩放置し、CPC複合体多糖の白色沈殿物を形成させた。この粗多糖の白色沈殿物を遠心分離した後、沈殿物を蒸留水で洗浄し、その10倍量の4M塩化カルシウム溶液を加えて40℃で完全に溶解させた。この溶液に4倍量のエタノールを加え、生成する沈殿物を遠心分離後、エタノールで数回洗浄し、蒸留水に溶解させた。透析を十分に行った後、凍結乾燥し部分精製硫酸化多糖を得た。
(2)精製硫酸化多糖(精製フコイダン)の製造
上記(1)で得られた部分精製硫酸化多糖を、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で平衡化したDEAE−セファロースFFカラム(Cl−型、Amersham Bioscience製)に供した。溶出は20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)と1.9MNaClを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)との直線勾配(終濃度1.7MNaCl)で行った。カラム流速は0.5mL/分で、5mLずつ分画し、フェノール硫酸法とカルバゾール硫酸法により糖を定量した。溶出液を濃縮、凍結乾燥した凍結乾燥物を蒸留水に溶解し、イオン交換樹脂(Bio-Gel P4)を通して脱塩し、カラムのボイドボリューム付近に検出される画分を透析後凍結乾燥し、4つの画分からなる精製硫酸化多糖(精製フコイダン)を得た。おのおのの画分を透析、凍結乾燥後,Bio−GelP4カラムにより脱塩し、凍結乾燥して精製多糖画分を得た。これらをそれぞれ画分1、画分2、画分3、及び画分4とした。これらの精製多糖画分の収率は、画分1、画分2、画分3、及び画分4がそれぞれ0.09%、0.18%、0.11%及び0.10%(乾燥藻体比)であった。
上記(1)で得られた部分精製硫酸化多糖を、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で平衡化したDEAE−セファロースFFカラム(Cl−型、Amersham Bioscience製)に供した。溶出は20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)と1.9MNaClを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)との直線勾配(終濃度1.7MNaCl)で行った。カラム流速は0.5mL/分で、5mLずつ分画し、フェノール硫酸法とカルバゾール硫酸法により糖を定量した。溶出液を濃縮、凍結乾燥した凍結乾燥物を蒸留水に溶解し、イオン交換樹脂(Bio-Gel P4)を通して脱塩し、カラムのボイドボリューム付近に検出される画分を透析後凍結乾燥し、4つの画分からなる精製硫酸化多糖(精製フコイダン)を得た。おのおのの画分を透析、凍結乾燥後,Bio−GelP4カラムにより脱塩し、凍結乾燥して精製多糖画分を得た。これらをそれぞれ画分1、画分2、画分3、及び画分4とした。これらの精製多糖画分の収率は、画分1、画分2、画分3、及び画分4がそれぞれ0.09%、0.18%、0.11%及び0.10%(乾燥藻体比)であった。
これらの精製多糖の各画分を液体クロマトグラフに付して、その液体クロマトグラムから化学組成を求めた。その結果、画分1は、L−フコース、D−ガラクトース及びD−キシロースの保持時間と一致し、その面積比から、その構成糖比はL−フコース:D−ガラクトース:D−キシロース=67.2:15.9:16.9であった。同様に画分2は、L−フコースとD−ガラクトースの保持時間と一致し、その構成糖比はL−フコース:D−ガラクトース=96.0:4.0であった。画分3は、L−フコースとD−ガラクトースの保持時間と一致し、構成糖比はL−フコース:D−ガラクトース=47.6:52.4であった。画分4は、同様に、その構成糖比はL−フコース:D−ガラクトース=26.6:73.4であった。
また、D−グルクロン酸を標品としてグルクロン酸量を測定したところ、画分1、画分2、画分3、及び画分4がそれぞれ21.5%、2.6%、4.3%及び4.8%であった。硫酸バリウムゼラチン法により硫酸含量を求めたところ、SO3Naに換算して、画分1、画分2、画分3、及び画分4がそれぞれ27.5%、45.6%、31.1%及び38.4%であった。
以上からグルクロン酸を除いた全糖量を各々の中性糖の構成糖比に割り当て、精製多糖の糖構成比(%)と硫酸含量比(%)を求めた。その結果を表2に示す。
(3)ヒアルロニダーゼ阻害活性の評価
上記(2)で得たナガコンブからの精製多糖の画分1、画分2、画分3及び画分4について、ヒアルロニダーゼ阻害活性を測定した。
0から50μg/mLまでの段階希釈した精製多糖の各画分とヒアルロニダーゼを室温で20分間プレインキュベートした。ヒアルロニダーゼは牛の精巣から分離したもの(シグマ社)を使用した。次に、この溶液にヒアルロニダーゼ活性化因子としてNaCl及び基質であるヒトのヘソ由来のヒアルロン酸(MP Biomedicals)を加えて、37℃で40分間反応させ、100℃に加熱した後、Mogan-Elson法により定量した。
上記(2)で得たナガコンブからの精製多糖の画分1、画分2、画分3及び画分4について、ヒアルロニダーゼ阻害活性を測定した。
0から50μg/mLまでの段階希釈した精製多糖の各画分とヒアルロニダーゼを室温で20分間プレインキュベートした。ヒアルロニダーゼは牛の精巣から分離したもの(シグマ社)を使用した。次に、この溶液にヒアルロニダーゼ活性化因子としてNaCl及び基質であるヒトのヘソ由来のヒアルロン酸(MP Biomedicals)を加えて、37℃で40分間反応させ、100℃に加熱した後、Mogan-Elson法により定量した。
それぞれの希釈濃度での各画分の阻害活性を図1に示す。画分1、画分2、画分3及び画分4のいずれの画分も濃度依存的にヒアルロニダーゼ阻害活性を示した。比較のために既にヒアルロニダーゼ阻害活性が見出されているヘパリン(Celsus Laboratory)を陽性対照として同様にして阻害試験を行った。その結果も併せて図1に示す。
この結果から、画分1は25〜50μg/mLで70%阻害し、その他の画分は25μg/mLでほぼ90%阻害した。
この結果から、画分1は25〜50μg/mLで70%阻害し、その他の画分は25μg/mLでほぼ90%阻害した。
次に、図1の結果から50%阻害濃度(IC50)を求め、その結果を図2に示す。画分1、画分2、画分3及び画分4のIC50は、それぞれ22μg/mL、12μg/mL、15.2μg/mLおよび15.2μg/mLであった。対照として使用したヘパリンのIC50は12.5μg/mLであった。画分2がヘパリンと同程度の活性阻害を示し、その他の画分もヘパリンと同程度の活性阻害を示した。
ナガコンブから得られたフコイダンの抗腫瘍活性の評価
(1)U937細胞増殖抑制効果の測定
実施例1の(2)で得られたナガコンブに由来する精製多糖(精製フコイダン)のうちの画分1、画分2及び画分3の3つの画分を用いて、ヒトリンパ腫単芽球様細胞(U937)の増殖抑制効果を調べた。
ヒトリンパ腫単芽球様細胞(U937)を、哺乳類細胞の培養に広く使用されている高栄養の液体培地であるRPM11640培地に分散させ、37℃の5%CO2気下で培養し、これを細胞懸濁液とした。96ウエルマイクロプレ−トに、先に培養した細胞懸濁液(90μL)を細胞密度1.0×106/mLになるように分注し、37℃、5%CO2気下で24時間培養し、前記画分1〜画分3の各画分を含む溶液を、その濃度がそれぞれ0、10、100及び1000μg/mLになるように添加して培養した。48時間後または72時間後に、WST−PMSを各ウエルに10μLずつ添加して、4時間、37℃で培養した。
(1)U937細胞増殖抑制効果の測定
実施例1の(2)で得られたナガコンブに由来する精製多糖(精製フコイダン)のうちの画分1、画分2及び画分3の3つの画分を用いて、ヒトリンパ腫単芽球様細胞(U937)の増殖抑制効果を調べた。
ヒトリンパ腫単芽球様細胞(U937)を、哺乳類細胞の培養に広く使用されている高栄養の液体培地であるRPM11640培地に分散させ、37℃の5%CO2気下で培養し、これを細胞懸濁液とした。96ウエルマイクロプレ−トに、先に培養した細胞懸濁液(90μL)を細胞密度1.0×106/mLになるように分注し、37℃、5%CO2気下で24時間培養し、前記画分1〜画分3の各画分を含む溶液を、その濃度がそれぞれ0、10、100及び1000μg/mLになるように添加して培養した。48時間後または72時間後に、WST−PMSを各ウエルに10μLずつ添加して、4時間、37℃で培養した。
ここで、テラゾリウム塩であるWST−1は細胞内のミトコンドリアの脱水素酵素の基質となり、生細胞によって還元されてWST−1ホルマザンを生ずる。この生細胞より放出されるWST-1ホルマザンの量は生細胞数とよく一致し、その培地に黄色の呈色を生ずる。この培地の吸光度を測定することによって生細胞数を測定することができる。1−メトキシPMSはWST−1の補助剤として働き、より高感度での測定が可能となる。従って、この測定法により、マイクロプレートリーダーによって各試料の吸光度(450nm)を測定して細胞生存率を求め、細胞増殖抑制効果を評価した。
このようにして得た画分1〜画分3の細胞生存率の結果を図3に示す。いずれの画分も100μg/mLの濃度で著しい阻害活性を示した。
このようにして得た画分1〜画分3の細胞生存率の結果を図3に示す。いずれの画分も100μg/mLの濃度で著しい阻害活性を示した。
(2)アポト−シス誘導効果の測定
アポト−シスの誘導効果を以下の方法で調べた。まず、60mmディッシュに細胞密度1.0×105細胞/mLになるように上記(1)で調製したU937細胞懸濁液(4.5mL)を分注し、37℃、5%CO2気下で24時間前培養を行い培養液とした。その後、実施例1で得られたナガコンブ由来の精製多糖(精製フコイダン)の画分2を20μg/mLになるように培養液(0.5mL)に添加した。48時間培養後、アポト−シス細胞の膜構造変化を指標としたアポト−シス細胞測定キット(APO Percentage Apotosis
assay:Biocolor Ltd.)を用いてアポト−シス細胞数を測定した。その測定結果を表3に示した。
アポト−シスの誘導効果を以下の方法で調べた。まず、60mmディッシュに細胞密度1.0×105細胞/mLになるように上記(1)で調製したU937細胞懸濁液(4.5mL)を分注し、37℃、5%CO2気下で24時間前培養を行い培養液とした。その後、実施例1で得られたナガコンブ由来の精製多糖(精製フコイダン)の画分2を20μg/mLになるように培養液(0.5mL)に添加した。48時間培養後、アポト−シス細胞の膜構造変化を指標としたアポト−シス細胞測定キット(APO Percentage Apotosis
assay:Biocolor Ltd.)を用いてアポト−シス細胞数を測定した。その測定結果を表3に示した。
添加した画分2のフコイダンの濃度に比例してアポトーシス細胞が増加した。これはフコイダンがU937細胞のアポトーシスを誘導していることを示している。
(3)他の抗腫瘍剤との併用効果の測定
抗がん剤としてその作用がよく知られているシステイン−β−D−アラビノフラノサイドを併用した場合の抗腫瘍作用を評価した。
96ウエルマイクロプレ−トに細胞密度1.0×106細胞/mLになるように、上記(1)で調製したU937細胞懸濁液(90μL)を分注し、37℃、5%CO2気下で24時間前培養を行い培養液とした。その後、この培養液に実施例1で得られたナガコンブ由来の精製多糖(精製フコイダン)の画分2を1μg/mLのみ、抗腫瘍剤であるシステイン−β−D−アラビノフラノサイドを0.01μM/mLのみ、そして同量の画分2を1μg/mLとシステイン−β−D−アラビノフラノサイドを0.01μM/mLとを添加した。これらの溶液を72時間37℃、5%CO2気下で培養した。培養後、細胞数測定キットを用いてU937細胞数を測定し、U937細胞の増殖抑制活性を調べた。
その測定結果を表4に示した。
抗がん剤としてその作用がよく知られているシステイン−β−D−アラビノフラノサイドを併用した場合の抗腫瘍作用を評価した。
96ウエルマイクロプレ−トに細胞密度1.0×106細胞/mLになるように、上記(1)で調製したU937細胞懸濁液(90μL)を分注し、37℃、5%CO2気下で24時間前培養を行い培養液とした。その後、この培養液に実施例1で得られたナガコンブ由来の精製多糖(精製フコイダン)の画分2を1μg/mLのみ、抗腫瘍剤であるシステイン−β−D−アラビノフラノサイドを0.01μM/mLのみ、そして同量の画分2を1μg/mLとシステイン−β−D−アラビノフラノサイドを0.01μM/mLとを添加した。これらの溶液を72時間37℃、5%CO2気下で培養した。培養後、細胞数測定キットを用いてU937細胞数を測定し、U937細胞の増殖抑制活性を調べた。
その測定結果を表4に示した。
ナガコンブから得られた精製多糖(精製フコイダン)のフラクションの一つである画分2は、それ単独でもシステイン−β−D−アラビノフラノサイドに近い細胞増殖抑制作用があるが、これを抗腫瘍剤であるシステイン−β−D−アラビノフラノサイドと併用すると、それぞれの単独で用いた場合よりも培養液の細胞生存率が大幅に小さく、単独の場合よりも大きな細胞増殖抑制作用を示すことがわかった。
本発明は、優れた抗腫瘍活性、ヒアルロニダーゼ阻害活性を有する抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤である。更に、抗腫瘍剤としては、従来から使用されてきた他の抗腫瘍剤と組み合わせることにより相乗的に抗腫瘍活性を高めることができる。
従って、本発明は抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤として有用であるとともに、これを各種飲食品に配合することにより優れた健康食品とすることができ、日常の飲食品として摂取することによって種々の腫瘍抑制やアトピー性皮膚炎を防止することが期待できる。
Claims (4)
- ナガコンブから得られたフコイダンを有効成分とすることを特徴とする、抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤。
- フコイダンが、ナガコンブを希塩酸水溶液により抽出して得られたものであることを特徴とする、請求項1記載の抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤。
- フコイダンが、ナガコンブを希塩酸水溶液により抽出した後、塩化セチルピリジニウム複合体多糖とし、この塩化セチルピリジニウム複合体多糖をDEAE−セファロースカラムに付して得られる4個の画分のいずれか又はすべてを含むものであることを特徴とする、請求項1又は2記載の抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤。
- 請求項1ないし3のいずれかの項に記載の抗腫瘍剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤又はアトピー性皮膚炎治療剤を含有することを特徴とする飲食品。
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- 2006-08-21 JP JP2006224005A patent/JP2008044912A/ja active Pending
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