本発明の光学補償層付偏光板において、前記第1の光学補償層の厚みは、例えば、0.5〜3μmの範囲である。
本発明の光学補償層付偏光板において、前記第2の光学補償層が、選択反射の波長域が350nm以下であるコレステリック配向固化層を含むという形態であってもよい。
本発明の光学補償層付偏光板において、前記第2の光学補償層の厚みは、例えば、1〜20μmの範囲である。
本発明の光学補償層付偏光板において、前記第2の光学補償層は、nx=ny>nzの関係を有し、光弾性係数の絶対値が2×10−11m2/N以下の樹脂を含むフィルムから形成された層と、選択反射の波長域が350nm以下であるコレステリック配向固化層とを含むという形態であってもよい。
本発明の光学補償層付偏光板において、前記第2の光学補償層が、非液晶性ポリマーにより形成された層であるという形態であってもよい。この場合、前記非液晶性ポリマーは、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドからなる群から選択される少なくとも一つのポリマーである。
本発明の液晶パネルにおいて、前記液晶セルは、VAモードまたはECBモードであることが好ましい。
(用語および記号の定義)
本発明における用語および記号の定義は下記の通りである:
(1)「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸に垂直な方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。また、例えば「nx=ny」若しくは「ny=nz」は、nxとny若しくはnyとnzとが厳密に等しい場合のみならず、nxとny若しくはnyとnzが実質的に等しい場合も包含する。本発明において「実質的に等しい」とは、光学補償層付偏光板の全体的な偏光特性に実用上の影響を与えない範囲でnxとny若しくはnyとnzとが異なる場合も包含する趣旨である。
(2)「面内位相差Re」は、例えば、23℃における波長590nmの光で測定したフィルム(層)面内の位相差値をいう。Reは、例えば、波長590nmにおけるフィルム(層)の遅相軸方向、進相軸方向の屈折率をそれぞれ、nx、nyとし、d(nm)をフィルム(層)の厚みとしたとき、式:Re=(nx−ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差Rthは、例えば、23℃における波長590nmの光で測定した厚み方向の位相差値をいう。Rthは、例えば、波長590nmにおけるフィルム(層)の遅相軸方向、厚み方向の屈折率をそれぞれ、nx、nzとし、d(nm)をフィルム(層)の厚みとしたとき、式:Rth=(nx−nz)×dによって求められる。
(4)本発明において使用される用語や記号に付される添え字の「1」は第1の光学補償層を表し、添え字の「2」は第2の光学補償層を表し、添え字の「C」はコレステリック配向固化層を表す。
(5)「λ/4板」とは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有するものをいう。λ/4板は、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、フィルム(層)の面内の位相差値が約1/4である。
(6)「λ/2板」とは、ある特定の振動方向を有する直線偏光を、前記直線偏光の振動方向とは直交する振動方向を有する直線偏光に変換したり、右円偏光を左円偏光に(または、左円偏光を右円偏光に)変換したりする機能を有するものをいう。λ/2板は、光の波長(通常、可視光領域)に対して、フィルム(層)面内の位相差値が約1/2である。
(7)「コレステリック配向固化層」とは、前記層の構成分子がらせん構造をとり、そのらせん軸が面方向にほぼ垂直に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。したがって、「コレステリック配向固化層」は、液晶化合物がコレステリック液晶相を呈している場合のみならず、非液晶化合物がコレステリック液晶相のような擬似的構造を有する場合を包含する。例えば、「コレステリック配向固化層」は、液晶化合物が液晶相を示す状態でカイラル剤によってねじりを付与してコレステリック構造(らせん構造)に配向させ、その状態で重合処理または架橋処理を施すことにより、前記液晶化合物の配向(コレステリック構造)を固定することにより形成され得る。
(8)「選択反射の波長域が350nm以下」とは、選択反射の波長域の中心波長λが350nm以下であることを意味する。例えば、コレステリック配向固化層が液晶モノマーを用いて形成されている場合には、選択反射の波長域の中心波長λは、下記式で表される:
λ=n×P
ここで、nは、液晶モノマーの平均屈折率を示し、Pはコレステリック配向固化層のらせんピッチ(nm)を示す。前記平均屈折率nは、(no+ne)/2で表され、通常、1.45〜1.65の範囲である。noは、液晶モノマーの常光屈折率を示し、neは液晶モノマーの異常光屈折率を示す。
(9)「カイラル剤」とは、液晶化合物(例えば、ネマティック液晶)をコレステリック構造となるように配向する機能を有する化合物をいう。
(10)「ねじり力」とは、カイラル剤が液晶化合物にねじれを与えてコレステリック構造(らせん構造)に配向させる能力のことを意味する。一般的には、ねじり力は、下記式で表される:
ねじり力=1/(P×W)
Pは、前記の通り、コレステリック配向固化層のらせんピッチ(nm)を示す。Wは、カイラル剤重量比を示す。カイラル剤重量比Wは、W=[X/(X+Y)]×100で表される。ここで、Xはカイラル剤の重量であり、Yは液晶化合物の重量である。
(11)「長尺フィルム」または「長尺基材フィルム」とは、搬送ベルトで搬送可能な程度の長さを持つフィルム(または基材フィルム)である。本発明における前記「長尺フィルム」または「長尺基材フィルム」とは、例えば、光学補償層付偏光板、偏光子、光学補償フィルムなどの当該技術分野で「長尺フィルム」または「長尺基材フィルム」と呼ばれているフィルムをいう。
A.光学補償層付偏光板
A−1.光学補償層付偏光板の全体構成
図1は、本発明の光学補償層付偏光板の一例を示す概略断面図である。図2は、図1の光学補償層付偏光板を構成する各層の光軸を説明する分解斜視図である。図1に示すように、この光学補償層付偏光板10は、偏光子11と第1の光学補償層12と第2の光学補償層13とが、この順序で積層されて構成されている。光学補償層付偏光板の各層は、任意の適切な粘着剤層または接着剤層(図示せず)を介して積層されている。実用的には、偏光子11の光学補償層が形成されない側には、任意の適切な保護フィルム(図示せず)が積層されている。さらに、必要に応じて、偏光子11と第1の光学補償層12との間に保護フィルム(図示せず)が設けられる。
前記第1の光学補償層12は、液晶化合物から形成されており、nx>ny=nzの関係を有し、かつ、その面内位相差Re1が100〜170nmの範囲である。前記第1の光学補償層において、その厚み方向位相差Rth1は、例えば、100〜170μmの範囲が好ましい。前記第2の光学補償層13は、nx=ny>nzの関係を有し、かつ、その厚み方向の位相差Rth2が30〜400nmの範囲である。前記第2の光学補償層において、その面内位相差Re2は、例えば、0〜20nmの範囲であり、好ましくは、0〜10nmの範囲であり、より好ましくは、0〜5nmの範囲である。第1の光学補償層、第2の光学補償層の詳細については、それぞれ、後述のA−2項、およびA−3項で説明する。
本発明においては、図2に示すように、前記第1の光学補償層12は、その遅相軸Bが偏光子11の吸収軸Aに対して所定の角度αを規定するようにして積層されている。角度αは、偏光子11の吸収軸Aに対して反時計回りが「+」であり、時計回りが「−」である。図2において、角度αは、偏光子11の吸収軸Aに対して反時計回りであるから、「+」である。前記角度αは、偏光子11の吸収軸Aに対して、+25〜+65度の範囲または−25〜−65度の範囲であり、好ましくは、+30〜+60度の範囲または−30〜−60度の範囲、より好ましくは、+35〜+55度の範囲または−35〜−55度の範囲である。さらに、前記第2の光学補償層13は、偏光子11の吸収軸Aに対して任意の適切な角度で積層されている。このような特定の位置関係で特定の光学特性を有する第1の光学補償層を積層することにより、例えば、VAモード等の液晶表示装置の黒表示における光漏れが顕著に防止され得る。
本発明の光学補償層付偏光板の全体厚みは、例えば、100〜250μmの範囲であり、好ましくは、110〜240μmの範囲であり、より好ましくは、120〜230μmの範囲である。本発明によれば、第1の光学補償層(λ/4板:後述)と第2の光学補償層(ネガティブCプレート:後述)のみで良好な光学補償を達成できる。その結果、本発明の光学補償層付偏光板は、例えば、最少で3層構造(偏光子と、第1の光学補償層と、第2の光学補償層)をとることができ、λ/2板を必要とする従来の光学補償層付偏光板よりも一層少なくすることができる。また、本発明の光学補償層付偏光板では、第1の光学補償層を液晶化合物から形成しているため、その層厚を薄くしても大きな面内位相差Re1を得ることができる。これらの結果、本発明の光学補償層付偏光板は、その全体厚みを薄くすることが可能である。これらに加え、第2の光学補償層を、例えば、液晶性モノマーとカイラル剤とを含む組成物若しくは非液晶性ポリマーから形成することにより、層厚を薄くしても厚み方向位相差Rth2を非常に大きくすることができる。その結果、第2の光学補償層を非常に薄くすることができる。例えば、従来の二軸延伸によるネガティブCプレートが60μm以上の厚みを有するのに対し、本発明に用いられる第2の光学補償層は、厚みを1μm程度まで薄くできる。このように第2の光学補償層の形成材料を適宜選択することによっても、結果として、本発明の光学補償層付偏光板の全体厚を、さらに薄くすることができる。これらの結果、軽量化・薄型化および熱ムラ防止という効果が得られ、本発明の光学補償層付偏光板により、画像表示装置の軽量化・薄型化および表示特性の向上に大きく貢献し得る。
A−2,第1の光学補償層
第1の光学補償層12は、λ/4板として機能し得る。第1の光学補償層がλ/4板として機能することにより、広い波長範囲で円偏光機能を発揮することができる。面内位相差Re1は、100〜170nmの範囲であり、好ましくは110〜165nmの範囲であり、さらに好ましくは120〜160nmの範囲である。さらに、前記のように第1の光学補償層12は、nx>ny=nzの屈折率分布を有する。
前記第1の光学補償層の厚みは、例えば、0.5〜3μmの範囲であり、好ましくは、0.7〜2.5μmの範囲であり、より好ましくは、1〜2μmの範囲である。
前記第1の光学補償層の形成材料は、前述のように、液晶化合物である。前記液晶化合物は、特に制限されないが、例えば、液晶相がネマチック相である液晶化合物(ネマチック液晶)が好ましい。前記液晶化合物としては、例えば、液晶モノマー、液晶ポリマーがある。液晶化合物の液晶性の発現機構は、リオトロピックでもよいし、サーモトロピックでもよい。液晶の配向状態は、特に制限されないが、ホモジニアス配向が好ましい。液晶モノマーおよび液晶ポリマーは、それぞれ単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
前記液晶モノマーは、例えば、重合性モノマーおよび架橋性モノマーの少なくとも一方であることが好ましい。これは、後述するように、前記液晶モノマーを重合若しくは架橋することによって、前記液晶モノマーの配向状態を固定できるためである。すなわち、液晶モノマーを配向させた後、例えば、液晶性モノマー同士を重合若しくは架橋させれば、前記液晶モノマーが連結した三次元網目構造が形成されることになるが、これらは非液晶性である。したがって、形成された第1の光学補償層は、例えば、液晶化合物に特有の温度変化による相変化、すなわち、液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起こることがない。その結果、第1の光学補償層は、温度変化に影響されない極めて安定なものとなる。
前記液晶モノマーとしては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、特表2002−533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker−Chem社の商品名LC−Sillicon−CC3767があげられる。
前記液晶モノマーとしては、例えば、ネマチック性液晶モノマーが好ましく、具体的には、特開2003−287623号公報0035段落から0046段落に記載の液晶モノマーがあげられる。液晶モノマーとして好ましいのは、下記の(1)から(16)の化学式で表される液晶モノマーである。これらは一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
前記液晶モノマーが液晶性を示す温度範囲は、その種類に応じて異なるが、例えば、40〜120℃の範囲であり、好ましくは50〜100℃の範囲であり、より好ましくは60〜90℃の範囲である。
つぎに、前記第1の光学補償層は、例えば、表面が配向処理された基材フィルムの前記表面に、前記液晶モノマーを塗工して配向させ、前記液晶モノマーを重合または架橋することにより前記配向状態を固定することにより、形成することができる。
前記基材フィルムは、特に制限されず、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)等のポリオレフィン、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース系プラスチック、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等から形成されたフィルムを挙げることができる。また、これらのフィルムに、一軸延伸等の延伸処理を施した複屈折性を有する延伸フィルム等を配向膜として積層した積層体も、基材フィルムとして使用することができる。基材フィルムの形態としては、長尺フィルムの形態が好ましい。なお、「長尺フィルム」とは、搬送ベルトで搬送可能な程度の長さを持つフィルムである。その長さは、特に制限されない。
前記基材フィルムに対する配向処理は、特に制限されず、例えば、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理があげられる。前記機械的な配向処理としては、例えば、ラビング処理、延伸処理があげられる。前記物理的な配向処理としては、例えば、磁場配向処理、電場配向処理があげられる。前記化学的配向処理としては、例えば、斜方蒸着処理、光配向処理があげられる。これらのなかで、好ましいのは、ラビング処理である。
前記配向処理における配向方向は、前述のように、本発明の光学補償層付偏光板において、前記第1の光学補償層の遅相軸の方向と前記偏光子の吸収軸の方向のなす角度が、+25〜+65度の範囲または−25〜−65度の範囲であることが好ましいことから、この条件を満たす配向方向が好ましい。偏光子は、通常、二色性物質で染色した長尺のポリマーフィルムを延伸して製造されているため、得られる偏光子も長尺フィルムの形態で得られる。前記偏光子の長尺フィルムの吸収軸は、延伸方向、すなわち、前記長尺フィルムの長手方向である。そして、本発明の光学補償層付偏光板の製造において、製造効率の観点から、前記長尺フィルムの偏光子に、長尺の第1の光学補償層を積層し、適宜のサイズにカットすることが好ましい。この場合、前記配向処理における配向方向は、基材フィルムが長尺フィルムの場合、その長手方向に対し、前記角度となるような斜め方向が好ましいことになる。ただし、後述のように、前記偏光子に第1の光学補償層を転写する場合は、前記第1の光学補償層の遅相軸の方向が、転写前後で逆転するので、これを考慮して配向方向を決定することが好ましい。
前記長尺基材フィルムを配向処理する方法としては、ロールにより前記基材フィルムを搬送しながら、ラビングロールにより連続的にラビング処理することが好ましい。前記ラビングロールを、前記基材フィルムの搬送方向に対し所定の方向に向けることで、配向方向を調整することができる。
ロールに基材フィルムを捲回し、これを搬送してラビング処理をする場合、ラビング処理を施す前のロールに巻回した状態の基材フィルムにブロッキング(基材同士が光学的に界面を有さずに密着する現象)が生じる場合がある。このような基材フィルムにおいては、ブロッキングが生じた部分の表面状態が変化するため、ラビング処理を施しても、ブロッキングが生じた部分とそれ以外の部分とでは配向特性が変化し、塗工した液晶化合物にドメインが発生することによって均一な配向状態(均一な光学特性)が得られない場合があるという問題がある。そこで、ブロッキングが生じるような基材フィルムを用いる場合であっても、低コストで均一な光学特性を有する光学補償層を形成するためには、前述のように、ラビング方法(A)よりラビング処理を実施することが好ましい。このラビング処理を実施することにより、均一な光学特性を有する第1の光学補償層を薄くかつ低コストで形成することができる。
すなわち、前記ラビング方法(A)は、長尺基材フィルムの表面をラビングロールによって擦るラビング処理工程において、金属表面を有する搬送ベルトによって前記長尺基材フィルムを支持して搬送すると共に、前記長尺基材フィルムを支持する搬送ベルトの下面を支持し前記ラビングロールに対向するように複数のバックアップロールを配設し、以下の式(1)で定義されるラビング強度RSを800mm以上に設定するという方法である。前記ラビング強度RSは、好ましくは850mm以上であり、より好ましくは1000mm以上であり、さらに好ましくは2200mm以上であり、最も好ましくは2600mm以上である。前記ラビング強度RSの上限値は、特に制限されないが、例えば21000mm以下、好ましくは18000mm以下、より好ましくは16000mm以下、さらに好ましくは15000mm以下である。前記ラビング強度RSが21000mm以下であれば、前記長尺基材フィルムの破損等の問題が生じ難い。この観点から、前記ラビング強度RSの上限値は、一層好ましくは10000mm以下、特に好ましくは5000mm以下である。
RS=N・M(1+2πr・nr/v)・・・(1)
ここで、Nはラビング回数(ラビングロールの個数)(無次元量)を、Mはラビングロールの押し込み量(mm)を、πは円周率を、rはラビングロールの半径(mm)を、nrはラビングロールの回転数(rpm)を、vは長尺基材フィルムの搬送速度(mm/sec)を意味する。
前記方法によれば、(1)ラビング処理を施す際に、長尺基材フィルムを支持して搬送する搬送ベルトの下面を支持する複数のバックアップロールを配設することにより、ラビングロールの押し込み量を大きくしたとしても、安定した状態でラビング処理を施すことが可能であること、(2)長尺基材フィルムにブロッキングが生じているような場合であっても、前記「ラビング強度」と称されるパラメータの値を所定値以上とすることにより、均一な配向特性(均一な光学特性)を得ることが可能であり、(3)ロール・ツー・ロール方式によって長尺基材フィルムに連続的にラビング処理を施すことが可能であるため低コストである。なお、前記方法における「ラビングロールの押し込み量」とは、前記長尺基材フィルム表面に対してラビングロールの位置を変動させた場合において、ラビングロールが最初に長尺基材フィルム表面に接した位置を原点(0点)とし、前記原点から長尺基材フィルムに向けてラビングロールを押し込んだ量(位置の変動量)を意味する。前記ラビングロールは起毛布を巻回したものが好ましい。起毛布を巻回したラビングロールの場合、前記「ラビングロールの半径」は、起毛布を含む半径であり、前記「ラビングロールの押し込み量」の原点は、起毛布が最初に長尺フィルム表面に接した位置をいう。
前記ラビング方法において、ラビング処理を施す際に、長尺基材フィルムを支持して搬送する搬送ベルトの下面を支持する複数の棒状のバックアップロールを互いに略平行に配設することにより、バックアップロールに支持される搬送ベルトの平坦度が高まり易い。この場合、隣接するバックアップロールの軸間距離を50mmよりも小さく設定する場合には、バックアップロールの外径を必然的に小さくする必要がある。この場合、長尺基材フィルムの搬送速度が一定であるとすると、バックアップロールの外径が大きい場合に比べて、ラビング処理時にバックアップロールが高速回転することになり、この際に発生する熱によって、搬送ベルトに支持された長尺基材フィルムが変形する等の問題が生じるおそれがある。一方、隣接するバックアップロールの軸間距離を90mmよりも大きく設定する場合には、搬送ベルトの平坦度が低下することにより、配向ムラが生じ外観不良が発生し易いという問題がある。従って、このような問題を回避するには、隣接するバックアップロールの軸間距離は、50mm以上90mm以下に設定することが好ましく、60mm以上80mm以下に設定することがより好ましい。この好ましい構成によれば、長尺基材フィルムに、より一層、均一な配向特性を付与することができ、ひいては、より一層、均一な光学特性を有する光学補償層を形成することが可能である。
前記バックアップロールの外径(直径)を30mmより小さく設定する場合には、長尺基材フィルムの搬送速度が一定であるとすると、バックアップロールの外径が大きい場合に比べて、ラビング処理時にバックアップロールが高速回転することになり、この際に発生する熱によって、搬送ベルトに支持された長尺基材フィルムが変形する等の問題が生じるおそれがある。一方、バックアップロールの外径を80mmよりも大きく設定する場合には、搬送ベルトの平坦度が低下することにより、配向ムラが生じ外観不良が発生し易いという問題がある。従って、前記バックアップロールの外径は、30mm以上80mm以下(より好ましくは40mm以上70mm以下)に設定することが好ましい。
前記ラビング方法は、前記基材フィルムが、TACフィルムである場合に特に有効である。また、前記TACフィルムは、ケン化処理されていることが好ましい。TACフィルムをケン化処理することにより、光学補償層が形成された基材フィルム(TACフィルム)をロール状に巻き取った際に、前記光学補償層が破壊される現象(いわゆるブロッキング)を防止することが可能である。
また、前記起毛布としては、例えば、レーヨン、コットン、ナイロン及びこれらの混合物の何れかを用いることが好ましい。
さらに、前記搬送ベルトの厚みとしては、容易に弛まないようにする一方で可撓性を付与するべく、好ましくは0.5〜2.0mmの範囲、より好ましくは0.7〜1.5mmの範囲である。
以下、図面を参照しつつ、前記ラビング方法の一例について説明する。
図7は、前記ラビング方法(A)を実施するためのラビング処理装置の概略構成を示す斜視図である。同図に示すように、前記ラビング処理装置は、駆動ロール1、2と、駆動ロール1、2間に架設され、長尺基材フィルムFを支持して搬送する無限軌道の搬送ベルト3と、搬送ベルト3の上方において上下方向に昇降可能に配設されたラビングロール4と、長尺基材フィルムFを支持する搬送ベルト3の下面を支持しラビングロール4に対向するように配設された複数(この例では5つ)の棒状のバックアップロール5とを備えている。なお、ラビング装置の前後には、必要に応じて適切な静電気除去装置や除塵装置等を設置しても良い。
搬送ベルト3は、長尺基材フィルムFを支持する側の表面が鏡面仕上げされた金属表面(搬送ベルト3全体を金属製としてもよい)とされている。このような金属としては、銅や鋼等の各種金属材料を用いることができるが、強度、硬度、耐久性の点よりステンレス鋼を用いることが好ましい。長尺基材フィルムFとの密着性を確保するため、鏡面仕上げの程度としては、算術平均表面粗さRa(JIS B 0601(1994年度版))を0.02μm以下とすることが好ましく、より好ましくは、Ra0.01μm以下である。また、長尺基材フィルムFの弛みを防止するには、これを支持する搬送ベルト3の弛みを防止する必要がある。搬送ベルト3の弛みを防止すると共に、駆動ロール1、2間に架設するために、ある程度の可撓性を付与する必要があることに鑑みれば、搬送ベルト3の厚みは、0.5〜2.0mmの範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.7〜1.5mmの範囲とされる。また、搬送ベルト3の弛みを防止すると共に、搬送ベルト3の張力強度を考慮すれば、搬送ベルト3に付与する張力は、0.5〜20kg重/mm2の範囲にすることが好ましく、より好ましくは、2〜15kg重/mm2の範囲にすることである。
ラビングロール4は、その外周面に起毛布が巻回されている。起毛布の材質や形状等は、ラビング処理を施される長尺基材フィルムFの材質に応じて適宜選択すればよい。一般的には、起毛布として、レーヨン、コットン、ナイロン又はこれらの混合物等を適用することができる。この例に係るラビングロール4の回転軸は、長尺基材フィルムFの搬送方向(図7の矢符で示す方向)に対して直角方向から傾斜(例えば、傾斜角度0度〜45度)させることができるように、すなわち、長尺基材フィルムFの長辺(長手方向)に対して任意の軸角度に設定できるように構成されている。また、ラビングロール4の回転方向は、ラビング処理の条件に応じて適宜選択可能である。
複数のバックアップロール5は、前述のように、長尺基材フィルムFを支持する搬送ベルト3の下面を支持しラビングロール4に対向するように配設されている。複数のバックアップロール5が配設されていることにより、ラビングロール4の回転軸を傾斜させた状態で押し込んだとしても、また、ラビングロール4の押し込み量を大きくしたとしても、安定した状態でラビング処理を施すことが可能である。
前記ラビング装置を用いて基材フィルムFにラビング処理を施すに際し、所定のロール(図示せず)に巻回した状態の長尺基材フィルムFが、複数の搬送ロール(図示せず)を経て搬送ベルト3上に供給される。そして、駆動ロール1、2を回転駆動させることにより、搬送ベルト3の上部が図7の矢符で示す方向に移動し、これに伴い長尺基材フィルムFも搬送ベルト3と共に搬送され、ラビングロール4によってラビング処理が施されることになる。
本例のラビング処理工程においては、以下の式(1)で定義されるラビング強度RSを800mm以上に設定している。
RS=N・M(1+2πr・nr/v)・・・(1)
図8は、図7に示すラビング処理装置を部分的に表す正面図であり、図8(a)はラビングロール4近傍の正面図を、図8(b)はラビングロール4と基材フィルムF表面との接触箇所近傍を拡大して示す正面図である。前述のように、前記式(1)において、Nはラビング回数(ラビングロール4の個数に相当し、この例では1)(無次元量)を、Mはラビングロール4の押し込み量(mm)を、πは円周率を、rはラビングロール4(起毛布4aを含む)の半径(mm)を、nrはラビングロールの回転数(rpm)を、vは基材フィルムFの搬送速度(mm/sec)を意味する。なお、ラビングロールの押し込み量Mとは、図8(b)に示すように、基材フィルムF表面に対してラビングロール4の位置を変動させた場合において、ラビングロール4に巻回した起毛布4aの毛先が最初に長尺基材フィルムF表面に接した位置(図8(b)において破線で示す位置)を原点(0点)とし、前記原点から長尺基材フィルムFに向けてラビングロール4を押し込んだ量(図8(b)において実線で示す位置まで押し込んだ量)を意味する。
前記のように、ラビング強度RSを800mm以上に設定することにより、たとえ、長尺基材フィルムFにブロッキングが生じていたとしても均一な配向特性を付与することができ、ひいては均一な光学特性を有する光学補償層を製造することが可能である。なお、本例に係るラビング処理の適用対象となる基材フィルムFとしては、その表面をラビング処理するか或いはその表面に形成した配向膜をラビング処理することにより、後述するように表面に塗布した液晶化合物を配向させることのできる機能が付与される限りにおいて、その材質に特に制限はなく、前述した基材フィルムが適用可能である。なお、前述のように、このラビング処理は、ブロッキングが生じやすいTACフィルム等に有効であり、前記TACフィルムとしては、ケン化処理したものが好ましいことは、前述のとおりである。
なお、ラビング強度RSを800mm以上に設定する限りにおいて、その他のラビング処理条件(各パラメータ)は、任意に選択可能であり、前記基材フィルムFの搬送速度vは、例えば、1〜50m/minの範囲、好ましくは1〜10m/minの範囲であり、ラビングロール4の回転数nrは、例えば、1〜3000rpmの範囲、好ましくは500〜2000rpmの範囲であり、ラビングロール4の押し込み量Mは、例えば、100〜2000μm、好ましくは100〜1000μmの範囲である。
なお、本例では、好ましい構成として、互いに略平行に配設された複数の棒状のバックアップロール5について、隣接する各バックアップロール5の軸間距離(図8のLl〜L4)が50mm以上90mm以下(より好ましくは、60mm以上80mm以下)に設定されている。このような構成により、バックアップロール5に支持される搬送ベルト3の平坦度が高まり易い。また、軸間距離Ll〜L4が50mm以上に設定されているため(これによりバックアップロールの外径が必然的にある程度大きくなる)、ラビング処理時にバックアップロール5が高速回転することがなく、この際に発生する熱によって、搬送ベルト3に支持された長尺基材フィルムFが変形する等の問題が生じ難い。さらには、軸間距離Ll〜L4が90mm以下に設定されているため、搬送ベルト3の平坦度が低下することもなく、長尺基材フィルムFに均一な配向特性を付与することができる。各バックアップロール5の外径は、好ましくは30mm以上80mm以下(より好ましくは40mm以上70mm以下)に設定される。バックアップロール5の外径を30mm以上に設定することにより、ラビング処理時にバックアップロール5が高速回転することがなく、この際に発生する熱によって、搬送ベルト3に支持された長尺基材フィルムFが変形する等の問題が生じ難い。また、バックアップロールの外径を80mm以下に設定することにより、搬送ベルト3の平坦度が低下することもなく、長尺基材フィルムFに均一な配向特性を付与することができる。なお、本例では、バックアップロール5が棒状ロールからなる場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、バックアップロールとして、複数の球状体を具備するプレート(ベアリングプレート)を適用することも可能である。
つぎに、このようにして得られた基材フィルムの配向処理面に、液晶モノマーを塗工する。前記塗工に際しては、液晶モノマーおよびその他の成分を溶剤に溶解ないし分散した塗工液を調製する。
前記塗工液には、好ましくは、重合開始剤や架橋剤が含まれる。これら重合開始剤及び架橋剤としては、特に制限されないが、例えば、以下のようなものが使用できる。前記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が使用でき、前記架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート架橋剤等が使用できる。これらはいずれか一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。また、前記塗工液には、その他に、添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、例えば、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等があげられる。前記老化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、フォスフィン系化合物等があげられる。前記変性剤としては、例えば、グリコール類、シリコーン類およびアルコール類等があげられる。前記界面活性剤は、例えば、光学補償層を平滑にするために用いられ、例えば、シリコーン系、アクリル系、フッ素系等の界面活性剤があげられる。
前記塗工液の前記溶媒としては、特に制限されないが、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、フェノール、p−クロロフェノール、o−クロロフェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾールなどのフェノール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピルなどのエステル系溶媒、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒、アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル系溶媒、あるいは二硫化炭素、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸エチルセロソルブ等が使用できる。これらの中でも好ましくは、トルエン、キシレン、メシチレン、MEK、MIBK、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸エチルセロソルブである。これらの溶剤は、例えば、一種類でもよいし、二種類以上を混合して使用してもよい。
前記塗工液における液晶モノマーの配合割合は、前記塗工液全体に対し、例えば、5〜50重量%の範囲、好ましくは、10〜40重量%の範囲、より好ましくは15〜30重量%の範囲である。
つぎに、前記塗工液を、前記基材フィルムの配向処理面に塗工する。前記塗工法は、特に制限されず、例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤバーコート法、ディップコート法、エクストルージョン法、カーテンコート法、スプレーコート法等が採用できる。この中でも、塗工率の点からスピンコート法、エクストルージョンコート法が好ましい。塗工量は、特に制限されないが、一例をあげると、前記塗工液中の液晶モノマーの濃度が20重量%の場合、前記基材フィルムの単位面積(100cm2)当たり、例えば、0.03〜0.17mLの範囲、好ましくは0.05〜0.15mLの範囲、より好ましくは0.08〜0.12mLの範囲である。
塗工後、前記基材フィルムの配向処理面上に形成された塗工膜を加熱する。前記加熱処理の温度条件は、例えば、用いる液晶モノマーの種類、具体的には液晶モノマーが液晶性を示す温度に応じて適宜決定できるが、例えば、40〜120℃の範囲であり、好ましくは50〜100℃の範囲であり、より好ましくは60〜90℃の範囲である。前記温度が40℃以上であれば、通常、十分に液晶モノマーを配向することができ、前記温度が120℃以下であれば、例えば、耐熱性の面において基材フィルムの選択肢が広がることになる。前記加熱処理時間は、例えば、30秒〜10分の範囲、好ましくは、1分〜8分の範囲、より好ましくは2分〜7分の範囲である。
前記乾燥処理の後、前記塗工膜に対し、重合処理および架橋処理のいずれかの処理若しくは双方の処理を行う。前記重合処理若しくは架橋処理によって、前記液晶モノマーが重合若しくは架橋すれば、前記液晶モノマー相互が連結して三次元網目構造が形成されて配向状態が固定される。このように配向状態が固定された場合、前記三次元網目構造は、「非液晶性」であり、液晶相、ガラス相および結晶相への相転移が生じることがない。前記重合処理および架橋処理の方法は、使用する重合開始剤や架橋剤の種類等により適宜決定され、例えば、光重合開始剤および光架橋剤を使用する場合は、前記塗工膜に光を照射すればよく、紫外線重合開始剤および紫外線架橋剤を使用する場合は、前記塗工膜に紫外線を照射すればよい。光または紫外線の照射時間、照射強度、照射量等の諸条件は、液晶モノマーの種類、量、重合開始剤、架橋剤等の種類等により適宜決定できる。
このようにして、基材フィルムの上に第1の光学補償層を形成することができる。図1に示すように、第1の光学補償層12は、前記基材フィルムと共に、若しくは前記基材フィルムから独立して、偏光子11と第2の光学補償層13との間に配置される。前記基材フィルムと共に前記第1の光学補償層12を配置する場合、前記基材フィルムは、前記偏光子11の保護層として機能することが好ましい。この場合、前記基材フィルム側を前記偏光子11側に位置するように、前記第1の光学補償層12を配置する。また、この観点から、前記基材フィルムは、保護層として機能し得るフィルムが好ましく、このようなフィルムは後述のものがあげられ、例えば、TACフィルムが好ましい。第1の光学補償層12を配置する方法としては、目的に応じて任意の適切な方法が採用され得る。代表的には、前記第1の光学補償層12は、その両面に粘着剤層(図示せず)を設け、偏光子11および第2の光学補償層13に接着させる。各層の隙間をこのように粘着剤層で満たすことによって、画像表示装置に組み込んだ際に、各層の光学軸の関係がずれることを防止したり、各層同士が擦れて傷ついたりすることを防ぐことができる。また、層間の界面反射を少なくし、画像表示装置に用いた際にコントラストを高くすることもできる。
前記粘着剤層の厚みは、使用目的や接着力などに応じて適宜設定され得る。具体的には、粘着剤層の厚みは、好ましくは1〜100μmの範囲、さらに好ましくは5〜50μmの範囲、最も好ましくは10〜30μmの範囲である。
前記粘着剤層を形成する粘着剤としては、任意の適切な粘着剤が採用され得る。具体例としては、溶剤型粘着剤、非水系エマルジョン型粘着剤、水系粘着剤、ホットメルト粘着剤等が挙げられる。アクリル系ポリマーをベースポリマーとする溶剤型粘着剤が好ましく用いられる。これは、前記偏光子および前記第1の光学補償層に対して適切な粘着特性(ぬれ性、凝集性および接着性)を示し、かつ、光学透明性、耐候性および耐熱性に優れるからである。
前記接着剤層を形成する接着剤としては、代表的には、硬化型接着剤が挙げられる。硬化型接着剤の代表例としては、エネルギー線硬化型接着剤、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、湿気硬化型接着剤、熱硬化型接着剤が挙げられる。熱硬化型接着剤の具体例としては、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂およびポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂系接着剤が挙げられる。湿気硬化型接着剤の具体例としては、イソシアネート樹脂系の湿気硬化型接着剤が挙げられる。湿気硬化型接着剤(特に、イソシアネート樹脂系の湿気硬化型接着剤)が好ましい。湿気硬化型接着剤は、空気中の水分や被着体表面の吸着水、水酸基やカルボキシル基等の活性水素基等と反応して硬化するので、接着剤を塗工後、貼り合わせて放置することによって自然に硬化させることができ、操作性に優れる。さらに、硬化のために加熱する必要がないので、第2の光学補償層が積層(接着)時に加熱されない。その結果、加熱収縮の心配がないので、本発明のように第2の光学補償層がきわめて薄い場合であっても、積層時の割れ等が顕著に防止され得る。加えて、硬化型接着剤は、硬化後に加熱されてもほとんど伸縮しない。したがって、第2の光学補償層がきわめて薄い場合であって、かつ、得られる偏光板を高温条件下で使用する場合であっても、第2の光学補償層の割れ等が顕著に防止され得る。なお、前記イソシアネート樹脂系接着剤とは、ポリイソシアネート系接着剤、ポリウレタン樹脂接着剤の総称である。
前記硬化型接着剤は、例えば、市販の接着剤を使用してもよく、前記の各種硬化型樹脂を溶媒に溶解または分散し、硬化型樹脂接着剤溶液(または分散液)として調製してもよい。溶液(または分散液)を調製する場合、前記溶液における硬化型樹脂の含有割合は、固形分重量として、好ましくは10〜80重量%であり、さらに好ましくは20〜65重量%であり、とりわけ好ましくは25〜65重量%であり、最も好ましくは30〜50重量%である。用いられる溶媒としては、硬化型樹脂の種類に応じて任意の適切な溶媒が採用され得る。具体例としては、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられ得る。
前記第1の光学補償層への接着剤の塗工量は、目的に応じて適宜設定され得る。例えば、塗工量は、第1の光学補償層の単位面積(cm2)あたり好ましくは0.3〜3mLであり、さらに好ましくは0.5〜2mLであり、最も好ましくは1〜2mLである。塗工後、必要に応じて、接着剤に含まれる溶媒は、自然乾燥や加熱乾燥によって揮発させられる。このようにして得られる接着剤層の厚みは、好ましくは0.1〜20μm、さらに好ましくは0.5〜15μm、最も好ましくは1〜10μmである。また、接着剤層の押し込み硬度(Microhardness)は、好ましくは0.1〜0.5GPaであり、さらに好ましくは0.2〜0.5GPaであり、最も好ましくは0.3〜0.4GPaである。なお、押し込み硬度は、ビッカーズ硬度との相関性が公知であるので、ビッカーズ硬度にも換算できる。押し込み硬度は、例えば、日本電気株式会社(NEC)製の薄膜硬度計(例えば、商品名MH4000、商品名MHA−400)を用いて、押し込み深さと押し込み荷重とから算出することができる。
A−3.第2の光学補償層
A−3−1.第2の光学補償層の全体構成
前記第2の光学補償層13は、nx=ny>nzの関係を有し、いわゆるネガティブCプレートとして機能し得る。第2の光学補償層がこのような屈折率分布を有することにより、特にVAモードの液晶セルの液晶層の複屈折性を良好に補償することができる。その結果、視野角特性が顕著に向上した液晶表示装置が得られ得る。前述のように、本発明においては「nx=ny」は、nxとnyとが厳密に等しい場合のみならず、実質的に等しい場合も包含するので、第2の光学補償層は面内位相差を有し得、また、遅相軸を有し得る。ネガティブCプレートとして実用的に許容可能な面内位相差Re2は、例えば、0〜20nmであり、好ましくは、0〜10nmであり、さらに好ましくは、0〜5nmである。
前記第2の光学補償層13の厚み方向の位相差Rth2は、30〜400nmであり、好ましくは60〜260nmであり、最も好ましくは100〜180nmである。このような厚み方向の位相差が得られ得る第2の光学補償層の厚みは、使用される材料等に応じて変化し得る。例えば、第2の光学補償層の厚みは、好ましくは1〜60μmであり、さらに好ましくは1〜55μmであり、最も好ましくは1〜50μmである。第2の光学補償層が後述のコレステリック配向固化層単独で構成される場合には、その厚みは、好ましくは1〜20μmであり、さらに好ましくは1〜15μmであり、最も好ましくは1〜5μmである。例えば、コレステリック配向固化層の厚みが約2μmの場合、厚み方向位相差Rthcは、約110〜120nmである。このように、コレステリック配向固化層単独で構成された第2の光学補償層の厚みは、二軸延伸によるネガティブCプレートの厚み(例えば、60μm以上)に比べて薄く、画像表示装置の薄型化に大きく貢献し得る。さらに、第2の光学補償層を非常に薄く形成することにより、熱ムラが顕著に防止され得る。さらに、このような非常に薄い光学補償層は、コレステリック配向の乱れや透過率低下の防止、選択反射性、着色防止、生産性等の観点からも好ましい。本発明における第2の光学補償層(ネガティブCプレート)は、前記のような厚みおよび光学特性が得られる限りにおいて任意の適切な材料から形成される。好ましくは、前記のような非常に薄いネガティブCプレートは、液晶化合物を用いてコレステリック配向を形成し、前記コレステリック配向を固定化することにより、すなわちコレステリック配向固化層を用いることにより実現される(コレステリック配向を形成する材料およびコレステリック配向の固定化方法の詳細については後述する)。また、第2の光学補償層は、ポリイミド等の非液晶性ポリマーにより形成することも好ましく、この場合も、厚みが薄くてもRth2を大きくすることができ、この結果、第2の光学補償層の厚みを薄くすることができる。ポリイミド等の非液晶性ポリマーから形成された第2の光学補償層の厚みは、例えば、0.5〜3μmの範囲であり、好ましくは、0.7〜2.5μmの範囲であり、より好ましくは、1〜2.5μmの範囲である。また、本発明の光学補償層付偏光板を、VAモードの液晶表示装置に使用する場合、第2の光学補償層は、ポリイミド等の非液晶性ポリマーから形成されたものであることが好ましい。ポリイミド等の非液晶性ポリマーから形成された第2の光学補償層を有する本発明の光学補償層付偏光板は、VAモードの液晶表示装置と、波長分散特性が良く合い、その結果、表示特性が特に優れるようになるからである。
前記第2の光学補償層13は、例えば、選択反射の波長域が350nm以下であるコレステリック配向固化層からなる。選択反射の波長域の上限は、さらに好ましくは320nm以下であり、最も好ましくは300nm以下である。一方、選択反射の波長域の下限は、好ましくは100nm以上であり、さらに好ましくは150nm以上である。選択反射の波長域が350nmを超えると、選択反射の波長域が可視光領域に入るので、例えば、着色や色抜けという問題が生じる場合がある。選択反射の波長域が100nmより小さいと、使用すべきカイラル剤(後述)の量が多くなりすぎるので、光学補償層形成時の温度制御をきわめて精密に行う必要がある。その結果、偏光板の製造が困難になる場合がある。
前記コレステリック配向固化層におけるらせんピッチは、好ましくは0.01〜0.25μmであり、さらに好ましくは0.03〜0.20μmであり、最も好ましくは0.05〜0.15μmである。らせんピッチが0.01μm以上であれば、例えば十分な配向性が得られる。らせんピッチが0.25μm以下であれば、例えば、可視光の短波長側における旋光性を十分に抑制できるので、光漏れ等を十分に回避できる。らせんピッチは、後述のカイラル剤の種類(ねじり力)および量を調整することにより制御され得る。らせんピッチを調整することにより、選択反射の波長域を所望の範囲に制御することができる。
あるいは、前記第2の光学補償層13は、前記コレステリック配向固化層と、nx=ny>nzの関係を有し、光弾性係数の絶対値が2×10−llm2/N以下の樹脂を含むフィルムからなる層(以下、「プラスチックフィルム層」とも称する)との積層構造を有していてもよい。前記プラスチックフィルム層を形成し得る材料(このような光弾性係数を満足し得る樹脂)の代表例としては、環状オレフィン系樹脂およびセルロース系樹脂が挙げられる。環状オレフィン系樹脂およびセルロース系樹脂の詳細については、下記のとおりである。セルロース系樹脂フィルム(代表的には、TACフィルム)は、nx=ny>nzの関係を有するフィルムである。
前記プラスチックフィルム層の光弾性係数の絶対値は、2×10−llm2/N以下である。光弾性係数が前記範囲であれば、加熱時の収縮応力が発生した場合に位相差変化が生じ難い。したがって、このような光弾性係数を示すプラスチックフィルム層であれば、得られる画像表示装置の熱ムラが防止される。前記光弾性係数は、好ましくは、2.0×10−13〜1.0×10−11m2/Nの範囲、より好ましくは、1.0×10−13〜1.0×10−11m2/Nの範囲である。
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報に記載されている樹脂があげられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンと、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンとの共重合体(代表的には、ランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト変性体、ならびに、それらの水素化物があげられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーがあげられる。
前記ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、およびそのアルキルおよびアルキリデン置換体、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等、これらのハロゲン等の極性基置換体;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキルおよびアルキレンの少なくとも一方の置換体、およびハロゲン等の極性基置換体、例えば、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等;シクロペンタジエンの3〜4量体、例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等があげられる。
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲内において、開環重合可能な他のシクロオレフィン類を併用することができる。このようなシクロオレフィンの具体例としては、例えば、シクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン等の反応性の二重結合を1個有する化合物があげられる。
前記環状オレフィン系樹脂は、トルエン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した数平均分子量(Mn)が、好ましくは、25000〜200000の範囲、さらに好ましくは、30000〜100000の範囲、最も好ましくは、40000〜80000の範囲である。数平均分子量が、前記の範囲であれば、機械的強度に優れ、溶解性、成形性、流延の操作性が良いものができる。
前記環状オレフィン系樹脂が、ノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加して得られるものである場合には、水素添加率は、好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、最も好ましくは99%以上である。このような範囲であれば、耐熱劣化性および耐光劣化性等に優れる。
前記環状オレフィン系樹脂は、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン社製の商品名「ゼオネックス」、商品名「ゼオノア」、JSR社製の商品名「アートン(Arton)」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学社製の商品名「APEL」があげられる。
前記セルロース系樹脂としては、任意の適切なセルロース系樹脂(代表的には、セルロースと酸のエステル)が採用され得る。好ましくは、セルロースと脂肪酸とのエステルである。このようなセルロース系樹脂としては、例えば、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース:TAC)、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネート等があげられる。このなかで、TACが好ましい。TACは、低複屈折率、高透過率であり、多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの面で有利だからである。
TACの市販品としては、例えば、富士写真フィルム社製の商品名「UV−50」、「UV−80」、「SH−50」、「SH−80」、「TD−80U」、「TD−TAC」、「UZ−TAC」、コニカ社製の商品名「KCシリーズ」、ロンザジャパン社製の商品名「三酢酸セルロース80μmシリーズ」等があげられる。これらの中でも、透過率および耐久性に優れるという点で、「TD−80U」が好ましい。「TD−80U」は、特に、TFTタイプの液晶表示装置に対し優れた適合性を示す。
前記プラスチックフィルム層は、前記環状オレフィン系樹脂または前記セルロース系樹脂をフィルム状に成形することにより製造できる。前記成形方法は、特に制限されず、例えば、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、注型(キャスティング)成形法等があり、このなかで、押出成形法および注型(キャスティング)成形法が好ましい。また、前記環状オレフィン系樹脂または前記セルロース系樹脂のフィルム成形品は、市販品が多数あるので、市販品を使用してもよい。
A−3−2.第2の光学補償層(コレステリック配向固化層)を形成する液晶組成物:液晶化合物
前記第2の光学補償層(コレステリック配向固化層)は、液晶化合物から形成され得る。液晶化合物としては、液晶相がネマチック相である液晶化合物(ネマチック液晶)が好ましい。このような液晶化合物としては、例えば、液晶ポリマーや液晶モノマーが使用可能である。液晶化合物の液晶性の発現機構は、リオトロピックでもサーモトロピックでもどちらでもよい。また、液晶の配向状態は、ホモジニアス配向であることが好ましい。後述のように、第2の光学補償層は、液晶化合物を含む液晶溶液(塗工液)を使用して形成するが、前記液晶溶液における液晶化合物の含有量は、好ましくは75〜95重量%であり、さらに好ましくは80〜90重量%である。液晶化合物の含有量が75重量%未満である場合には、液晶状態を十分に呈さず、結果として、コレステリック配向が十分に形成されない場合がある。液晶化合物の含有量が95重量%を超える場合には、カイラル剤の含有量が少なくなってしまい、ねじれが十分に付与されなくなるので、コレステリック配向が十分に形成されない場合がある。
前記液晶化合物は、液晶モノマー(例えば、重合性モノマーおよび架橋性モノマー)であることが好ましい。これは、前述のように、液晶モノマーを重合または架橋させることによって、液晶モノマーの配向状態を固定できるためである。液晶モノマーを配向させた後に、例えば、液晶モノマー同士を重合または架橋させれば、それによって前記配向状態を固定することができる。ここで、重合によりポリマーが形成され、架橋により3次元網目構造が形成されることとなるが、これらは非液晶性である。したがって、形成された第2の光学補償層は、例えば、液晶性化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。その結果、第2の光学補償層は、温度変化に影響されない、極めて安定性に優れた光学補償層となる。
前記液晶モノマーとしては、例えば、第1の光学補償層であげたものが使用でき、液晶モノマーが液晶性を示す温度も前述と同様である。
A−3−3.第2の光学補償層(コレステリック配向固化層)を形成する液晶組成物:カイラル剤
好ましくは、前記第2の光学補償層(コレステリック配向固化層)を形成し得る液晶溶液(液晶組成物)は、カイラル剤を含む。液晶組成物中のカイラル剤の含有量は、好ましくは5〜23重量%であり、さらに好ましくは8〜20重量%である。含有量が5重量%未満である場合には、ねじれが十分に付与されなくなるので、コレステリック配向が十分に形成されない場合がある。その結果、得られる光学補償層の選択反射の波長域を所望の帯域(低波長側)に制御するのが困難となる場合がある。含有量が23重量%を超える場合には、液晶化合物が液晶状態を呈する温度範囲が非常に狭くなるので、光学補償層形成時の温度制御をきわめて精密に行う必要がある。その結果、偏光板の製造が困難になる場合がある。なお、カイラル剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられ得る。
前記カイラル剤としては、液晶化合物を所望のコレステリック構造に配向し得る任意の適切な材料が採用され得る。例えば、このようなカイラル剤のねじり力は、好ましくは1×10−6nm−1・(wt%)−1以上であり、さらに好ましくは1×10−5nm−1・(wt%)−1〜1×10−2nm−1・(wt%)−1であり、最も好ましくは1×10−4nm−1・(wt%)−1〜1×10−3nm−1・(wt%)−1である。このようなねじり力を有するカイラル剤を用いることにより、コレステリック配向固化層のらせんピッチを所望の範囲に制御することができ、その結果、選択反射の波長域を所望の範囲に制御することができる。例えば、同じねじり力のカイラル剤を使用する場合、液晶組成物中のカイラル剤の含有量が多いほど、形成される光学補償層の選択反射の波長域は低波長側となる。また例えば、液晶組成物中のカイラル剤の含有量が同じであれば、カイラル剤のねじり力が大きいほど、形成される光学補償層の選択反射の波長域は低波長側となる。より具体的な例は以下の通りである。すなわち、形成される光学補償層の選択反射の波長域を200〜220nmの範囲に設定する場合には、例えば、ねじり力が5×10−4nm−1・(wt%)−1のカイラル剤を、液晶組成物中に11〜13重量%の割合で含有させればよい。形成される光学補償層の選択反射の波長域を290〜310nmの範囲に設定する場合には、例えば、ねじり力が5×10−4nm−1・(wt%)−1のカイラル剤を、液晶組成物中に7〜9重量%の割合で含有させればよい。
前記カイラル剤は、好ましくは重合性カイラル剤である。重合性カイラル剤の具体例としては、特開2003−287623号公報0048段落から0055段落に記載のものがある。前記カイラル剤としては、下記の(17)から(37)の化学式で表されるものが好ましい。下記式(17)から(37)の化学式で表されるカイラル剤のねじり力は、1×10−6nm−1・(wt%)−1以上である。前記カイラル剤は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
前記のようなカイラル化合物の他にも、例えば、RE−A4342280号およびドイツ国特許出願19520660.6号および19520704.1号に記載されるカイラル化合物が好ましく使用できる。
なお、前記液晶化合物と前記カイラル剤の組み合わせとしては、目的に応じて任意の適切な組み合わせが採用され得る。特に代表的な組み合わせとしては、前記式(7)の液晶モノマー/前記式(31)のカイラル剤の組み合わせ、前記式(8)の液晶モノマー/前記式(32)のカイラル剤の組み合わせ等が挙げられる。
A−3−4.第2の光学補償層(コレステリック配向固化層)を形成する液晶組成物:その他の添加剤
好ましくは、前記第2の光学補償層(コレステリック配向固化層)を形成し得る液晶組成物は、重合開始剤および架橋剤(硬化剤)の少なくとも一方をさらに含む。重合開始剤および/または架橋剤(硬化剤)を用いることにより、液晶化合物が液晶状態で形成したコレステリック構造(コレステリック配向)を固定化することができる。このような重合開始剤または架橋剤としては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な物質が採用され得る。重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)が挙げられる。架橋剤(硬化剤)としては、例えば、紫外線硬化剤、光硬化剤、熱硬化剤が挙げられる。より具体的には、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート架橋剤等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられ得る。液晶組成物中の重合開始剤または架橋剤の含有量は、好ましくは0.1〜10重量%であり、さらに好ましくは0.5〜8重量%であり、最も好ましくは1〜6重量%である。含有量が0.1重量%未満である場合には、コレステリック構造の固定化が不十分となる場合がある。含有量が10重量%を超えると、前記液晶化合物が液晶状態を示す温度範囲が狭くなるので、コレステリック構造を形成する際の温度制御が困難となる場合がある。
前記液晶組成物は、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。添加剤としては、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられ得る。より具体的には、前記老化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、ホスフィン系化合物が挙げられる。前記変性剤としては、例えば、グリコール類、シリコーン類やアルコール類が挙げられる。前記界面活性剤は、例えば、光学補償層の表面を平滑にするために添加され、例えば、シリコーン系、アクリル系、フッ素系の界面活性剤が使用でき、特にシリコーン系界面活性剤が好ましい。
A−3−5.第2の光学補償層(コレステリック配向固化層)の形成方法
前記第2の光学補償層(コレステリック配向固化層)の形成方法としては、所望のコレステリック配向固化層が得られる限りにおいて任意の適切な方法が採用され得る。第2の光学補償層(コレステリック配向固化層)の代表的な形成方法は、前記液晶組成物(塗工液)を基板上に展開して展開層(塗工膜)を形成する工程と;前記液晶組成物中の液晶化合物がコレステリック配向となるように、前記展開層に加熱処理を施す工程と;前記展開層に重合処理および架橋処理の少なくとも1つを施して、前記液晶化合物の配向を固定する工程と、基板上に形成されたコレステリック配向固化層を転写する工程とを含む。以下、この形成方法の具体的な手順を説明する。
まず、液晶化合物、カイラル剤、重合開始剤または架橋剤、ならびに、必要に応じて各種添加剤を溶媒に溶解または分散し、液晶塗工液(液晶組成物)を調製する。液晶化合物、カイラル剤、重合開始剤、架橋剤および添加剤は、前記で説明したとおりである。液晶塗工液に用いられる溶媒は、特に制限されない。具体例としては、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、フェノール、p−クロロフェノール、o−クロロフェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾールなどのフェノール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピルなどのエステル系溶媒、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロビレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒、アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル系溶疲、あるいは二硫化炭素、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等が挙げられる。これらの中でも好ましくは、トルエン、キシレン、メシチレン、MEK、MIBK、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸エチルセロソルブである。これらの溶媒は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられ得る。
前記液晶塗工液の粘度は、前記液晶化合物の含有量や温度に応じて変化し得る。例えば、ほぼ室温(20〜30℃)において液晶塗工液中の液晶化合物の濃度が、5〜70重量%である場合、前記塗工液の粘度は、好ましくは0.2〜20mPa・Sであり、さらに好ましくは0.5〜15mPa・Sであり、最も好ましくは1〜10mPa・Sである。より具体的には、液晶塗工液における液晶化合物の濃度が、30重量%である場合、前記塗工液の粘度は、好ましくは2〜5mPa・Sであり、さらに好ましくは3〜4mPa・Sである。塗工液の粘度が0.2mPa・S以上であれば、塗工液を走行することによる液流れの発生を非常に良好に防止することができる。また、塗工液の粘度が20mPa・S以下であれば、厚みムラがなく、非常に優れた表面平滑性を有する光学補償層が得られ、さらに、塗工性にも優れる。
次に、前記液晶塗工液を、基板上に塗工して展開層を形成する。展開層を形成する方法としては、任意の適切な方法(代表的には、塗工液を流動展開させる方法)が採用され得る。具体例としては、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、エクストルージョン法、カーテンコート法、スプレーコート法が挙げられる。中でも、塗布効率の観点からスピンコート法、エクストルージョンコート法が好ましい。
前記液晶塗工液の塗工量は、塗工液の濃度や目的とする層の厚み等に応じて適宜設定され得る。例えば、塗工液の液晶化合物濃度が20重量%である場合、塗工量は、基板の単位面積(100cm2)当たり、好ましくは0.03〜0.17mLであり、さらに好ましくは0.05〜0.15mLであり、最も好ましくは0.08〜0.12mLである。
前記基板としては、前記液晶材料を配向させることができる任意の適切な基板が採用され得る。
前記基板としては、例えば、各種プラスチック製の基材フィルムが挙げられる。プラスチックとしては、特に制限されないが、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)等のポリオレフィン、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース系プラスチック、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。また、アルミ、銅、鉄等の金属製基板、セラミック製基板、ガラス製基板等の表面に、前記のようなプラスチックフィルムやシートを配置したものも使用できる。また、前記基板あるいは前記プラスチックフィルムまたはシートの表面にSiO2斜方蒸着膜を形成したものも使用できる。基板の厚みは、好ましくは5〜500μmであり、さらに好ましくは10〜200μmであり、最も好ましくは15〜150μmである。このような厚みであれば、基板として十分な強度を有するので、例えば製造時に破断する等の問題の発生を防止できる。
次に、前記展開層に加熱処理を施すことによって、前記液晶化合物が液晶相を示す状態で配向させる。前記展開層には、前記液晶化合物と共にカイラル剤が含まれているので、前記液晶化合物が、液晶相を示す状態でねじりを付与されて配向する。その結果、展開層(を構成する液晶化合物)がコレステリック構造(らせん構造)を示す。
前記加熱処理の温度条件は、前記液晶化合物の種類(具体的には、液晶化合物が液晶性を示す温度)に応じて適宜設定され得る。より具体的には、加熱温度は、好ましくは40〜120℃であり、さらに好ましくは50〜100℃であり、最も好ましくは60〜90℃である。加熱温度が40℃以上であれば、通常、液晶化合物を十分に配向させることができる。加熱温度が120℃以下であれば、例えば耐熱性を考慮した場合に基板の選択の幅が広がるので、液晶化合物に応じた最適な基板を選択することができる。また、加熱時間は、好ましくは30秒以上であり、さらに好ましくは1分以上であり、特に好ましくは2分以上であり、最も好ましくは4分以上である。処理時間が30秒未満である場合には、液晶化合物が十分に液晶状態をとらない場合がある。一方、加熱時間は、好ましくは10分以下であり、さらに好ましくは8分以下であり、最も好ましくは7分以下である。処理時間が10分を超えると、添加剤が昇華するおそれがある。
次に、前記液晶化合物がコレステリック構造を示した状態で、展開層に重合処理または架橋処理を施すことにより、前記液晶化合物の配向(コレステリック構造)を固定する。より具体的には、重合処理を行うことにより、前記液晶化合物(例えば、重合性モノマー)および/またはカイラル剤(重合性カイラル剤)が重合し、重合性モノマーおよび/または重合性カイラル剤がポリマー分子の繰り返し単位として固定される。また、架橋処理を行うことにより、前記液晶化合物(架橋性モノマー)および/またはカイラル剤が3次元の網目構造を形成し、前記架橋性モノマーおよび/またはカイラル剤が架橋構造の一部として固定される。結果として、液晶化合物の配向状態が固定される。なお、液晶化合物が重合または架橋して形成されるポリマーまたは3次元網目構造は「非液晶性」であり、したがって、形成された第2の光学補償層においては、例えば、液晶化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。したがって、温度による配向変化が生じない。その結果、形成された第2の光学補償層は、温度に影響を受けることがない高性能の光学補償層として使用できる。さらに、前記第2の光学補償層は、選択反射の波長域が100nm〜320nmの範囲に最適化されているので、光もれ等を顕著に抑制できる。
前記重合処理または架橋処理の具体的手順は、使用する重合開始剤や架橋剤の種類によって適宜選択され得る。例えば、光重合開始剤または光架橋剤を使用する場合には光照射を行えばよく、紫外線重合開始剤または紫外線架橋剤を使用する場合には紫外線照射を行えばよく、熱による重合開始剤または架橋剤を使用する場合には加熱を行えばよい。光または紫外線の照射時間、照射強度、合計の照射量等は、液晶化合物の種類、基板の種類、第2の光学補償層に所望される特性等に応じて適宜設定され得る。同様に、加熱温度、加熱時間等も目的に応じて適宜設定され得る。
このようにして基板上に形成されたコレステリック配向固化層は、第1の光学補償層の表面に転写されて第2の光学補償層となる。第2の光学補償層がコレステリック配向固化層とプラスチックフィルム層との積層構造を有する場合には、プラスチックフィルム層が粘着剤層を介して第1の光学補償層に貼り合わせられ、前記プラスチックフィルム層にコレステリック配向固化層が転写されて第2の光学補償層となる。あるいは、基板に形成されたコレステリック配向固化層に接着剤層を介してプラスチックフィルム層を貼り合わせて積層体を形成し、前記積層体を、粘着剤層を介して第1の光学補償層の表面に貼り合わせてもよい。この接着剤層の厚みは、好ましくは1μm〜10μm、最も好ましくは1μm〜5μmである。転写は、基板を第2の光学補償層から剥離する工程をさらに含む。硬化型接着剤は、前記A−2項で説明したとおりである。プラスチックフィルム層は、前記A−3−1項で説明したとおりである。
第2の光学補償層の形成方法の前記のような代表例は、液晶化合物として液晶モノマー(例えば、重合性モノマーまたは架橋性モノマー)を使用しているが、本発明においては第2の光学補償層の形成方法はこのような方法に限定されず、液晶ポリマーを使用する方法であってもよい。ただし、前記のような液晶モノマーを用いる方法が好ましい。液晶モノマーを使用することにより、より優れた光学補償機能を有し、かつ、より薄い光学補償層が形成され得る。具体的には、液晶モノマーを使用すれば、選択反射の波長域をより一層制御し易い。さらに、塗工液の粘度等の設定が容易であるので、非常に薄い第2の光学補償層の形成が一層容易になり、かつ、取り扱い性にも非常に優れ、加えて、得られる光学補償層の表面平坦性がさらに優れたものとなる。
A−3−6.非液晶性ポリマーを用いた第2の光学補償層
前述のように、第2の光学補償層は、非液晶性ポリマーを用いて形成してもよい。このような第2の光学補償層は、基材フィルムの上に、非液晶性ポリマー溶液を塗布し、前記溶液中の溶媒を蒸発除去することにより形成することができる。
前記非液晶性ポリマーとしては、耐熱性、耐薬品性、透明性に優れ、剛性にも富むことから、前述のように、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーが好ましい。これらのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよいし、例えば、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドとの混合物のように、異なる官能基を持つ2種以上の混合物として使用してもよい。このようなポリマーの中でも、高透明性、高配向性、高延伸性であることから、ポリイミドが特に好ましい。
前記非液晶性ポリマーの分子量は、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が1000〜1000000の範囲であることが好ましく、より好ましくは2000〜500000の範囲である。
前記ポリイミドとしては、例えば、面内配向性が高く、有機溶剤に可溶なポリイミドが好ましい。具体的には、例えば、特表2000−511296号公報に開示された、9,9−ビス(アミノアリール)フルオレンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との縮合重合生成物を含み、下記式(A−1)に示す繰り返し単位を1つ以上含むポリマーが使用できる。
前記式(A−1)中、R3〜R6は、水素、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC1〜10アルキル基で置換されたフェニル基、およびC1〜10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。好ましくは、R3〜R6は、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC1〜10アルキル基で置換されたフェニル基、およびC1〜10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。
前記式(A−1)中、Zは、例えば、C6〜20の4価芳香族基であり、好ましくは、ピロメリット基、多環式芳香族基、多環式芳香族基の誘導体、または、下記式(A−2)で表される基である。
前記式(A−2)中、Z’は、例えば、共有結合、C(R7)2基、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(C2H5)2基、または、NR8基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。また、wは、1から10までの整数を表す。R7は、それぞれ独立に、水素またはC(R9)3である。R8は、水素、C1〜C20のアルキル基、またはC6〜20アリール基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。R9は、それぞれ独立に、水素、フッ素、または塩素である。
前記多環式芳香族基としては、例えば、ナフタレン、フルオレン、ベンゾフルオレンまたはアントラセンから誘導される4価の基があげられる。また、前記多環式芳香族基の置換誘導体としては、例えば、C1〜10のアルキル基、そのフッ素化誘導体、およびFやCl等のハロゲンからなる群から選択される少なくとも一つの基で置換された前記多環式芳香族基があげられる。
この他にも、例えば、特表平8−511812号公報に記載された、繰り返し単位が下記一般式(A−3)または(A−4)で示されるホモポリマーや、繰り返し単位が下記一般式(A−5)で示されるポリイミド等があげられる。なお、下記式(A−5)のポリイミドは、下記式(A−3)のホモポリマーの好ましい形態である。
前記一般式(A−3)〜(A−5)中、GおよびG’は、例えば、共有結合、CH2基、C(CH3)2基、C(CF3)2基、C(CX3)2基(ここで、Xは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(CH2CH3)2基、および、N(CH3)基からなる群から、それぞれ独立して選択される基を表し、それぞれ同一でも異なってもよい。
前記式(A−3)および式(A−5)中、Lは、置換基であり、dおよびeは、その置換数を表す。Lは、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、およびC1−3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。また、前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素があげられる。dは、0から2までの整数であり、eは、0から3までの整数である。
前記式(A−3)〜(A−5)中、Qは置換基であり、fはその置換数を表す。Qとしては、例えば、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、および置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子または基であって、Qが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。前記置換アルキル基としては、例えば、ハロゲン化アルキル基があげられる。また前記置換アリール基としては、例えば、ハロゲン化アリール基があげられる。fは、0から4までの整数であり、gおよびhは、それぞれ0から3および1から3までの整数である。また、gおよびhは、1より大きいことが好ましい。
前記式(A−4)中、R10およびR11は、水素、ハロゲン、フェニル基、置換フェニル基、アルキル基、および置換アルキル基からなる群から、それぞれ独立に選択される基である。その中でも、R10およびR11は、それぞれ独立に、ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
前記式(A−5)中、M1およびM2は、同一であるかまたは異なり、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基である。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。また、前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、およびC1−3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。
前記式(A−3)に示すポリイミドの具体例としては、例えば、下記式(A−6)で表されるもの等があげられる。下記式(A−6)中、nは、繰り返し単位である。nは、特に制限されない。
さらに、前記ポリイミドとしては、例えば、前述のような骨格(繰り返し単位)以外の酸二無水物やジアミンを、適宜共重合させたコポリマーがあげられる。
前記ポリエーテルとしては、例えば、特開2001−49110号公報に記載されたポリアリールエーテルケトンがあげられる。前記ポリアミドまたはポリエステルとしては、例えば、特表平10−508048号公報に記載されているポリアミドやポリエステルがあげられる。
前記基材フィルムは、例えば、プラスチックフィルムがあげられる。プラスチックとしては、特に制限されないが、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系プラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)等のポリオレフィン、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。基材フィルムとして好ましいのは、TACフィルムである。前記基材フィルムの厚みは、例えば、5〜500μm、好ましくは、10〜200μm、より好ましくは15〜150μmである。なお、非液晶性ポリマーにより第2の光学補償層を形成する場合、前記基材フィルム表面を配向処理する必要はない。
前述のように、前記基材フィルムに、前記非液晶ポリマーの溶液をフィルム状に塗工し、前記溶液中の溶媒を蒸発除去して第2の光学補償層を形成する。
前記塗工する溶液の溶媒は、特に制限されず、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;あるいは二硫化炭素、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等があげられる。これらの溶媒は、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
前記塗工溶液は、例えば、必要に応じて、さらに、安定剤、可塑剤、金属類等の種々の添加剤を配合してもよい。
また、前記塗工溶液は、異なる他の樹脂を含有してもよい。前記他の樹脂としては、例えば、各種汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等があげられる。
前記汎用樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ABS樹脂、およびAS樹脂等があげられる。前記エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセタール(POM)、ポリアセテート、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA:ナイロン(商品名))、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)等があげられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリイミド(PI)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、ポリアリレート(PAR)、および液晶ポリマー(LCP)等があげられる。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂等があげられる。
このように、前記他の樹脂等を前記塗工溶液に配合する場合、その配合量は、前記非液晶性ポリマーに対して、例えば、0〜50質量%であり、好ましくは、0〜30質量%である。
前記溶液の塗工方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等があげられる。また、塗工に際しては、必要に応じて、ポリマー層の重畳方式も採用できる。
塗工後、例えば、自然乾燥、風乾、加熱乾燥(例えば、60〜250℃)により、前記溶液中の溶媒を蒸発除去させ、第2の光学補償層を形成する。このように、前記非液晶性ポリマー溶液を塗工して溶媒を蒸発除去すれば、光学的に一軸の特性(nx=ny>nz)の層が形成される。
A−4.偏光子
前記偏光子11としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、1〜80μm程度である。
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸潰して水洗しても良い。
ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
A−5.保護フィルム
前記保護フィルムとしては、偏光板の保護フィルムとして使用できる任意の適切なフィルムが採用され得る。このようなフィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO0l/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合とを有する樹脂組成物が挙げられる。前記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であり得る。TAC、ポリイミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ガラス質系ポリマーが好ましく、TACがさらに好ましい。
前記保護フィルムは、透明で、色付きが無いことが好ましい。具体的には、厚み方向の位相差値が、好ましくは−90nm〜+90nmであり、さらに好ましくは−80nm〜+80nmであり、最も好ましくは−70nm〜+70nmである。
前記フィルムの厚みとしては、前記の好ましい厚み方向の位相差が得られる限りにおいて、任意の適切な厚みが採用され得る。具体的には、保護層の厚みは、好ましくは5mm以下であり、さらに好ましくは1mm以下であり、特に好ましくは1〜500μmであり、最も好ましくは1〜150μmである。
偏光子11の外側(光学補償層と反対側)に設けられる保護フィルムには、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等が施され得る。
A−6.偏光板のその他の構成要素
本発明の光学補償層付偏光板は、さらに他の光学層を備えていてもよい。このような他の光学層としては、目的や画像表示装置の種類に応じて任意の適切な光学層が採用され得る。具体例としては、液晶フィルム、光散乱フィルム、回折フィルム、さらに別の光学補償層(位相差フィルム)等が挙げられる。
本発明の光学補償層付偏光板は、少なくとも一方に最外層として粘着剤層または接着剤層をさらに有し得る。このように最外層として粘着剤層または接着剤層を有することにより、例えば、他の部材(例えば、液晶セル)との積層が容易になり、偏光板が他の部材から剥離するのを防止できる。前記粘着剤層の材料としては、任意の適切な材料が採用され得る。粘着剤の具体例としては、前記A−2項に記載のものが挙げられる。接着剤の具体例としては、前記A−2項に記載のものが挙げられる。好ましくは、吸湿性や耐熱性に優れる材料が用いられる。吸湿による発泡や剥離、熱膨張差等による光学特性の低下、液晶セルの反り等を防止できるからである。
実用的には、前記粘着剤層または接着剤層の表面は、偏光板が実際に使用されるまでの間、任意の適切なセパレータによってカバーされ、汚染が防止され得る。セパレータは、例えば、任意の適切なフィルムに、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤による剥離コートを設ける方法等によって形成され得る。
本発明の光学補償層付偏光板における各層は、例えば、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤による処理等によって、紫外線吸収能を付与したものであってもよい。
B.光学補償層付偏光板の製造方法
本発明の光学補償層付偏光板は、前記各層を前記のような接着剤層または粘着剤層を介して積層することにより作製され得る。積層手段としては、偏光子の吸収軸と第1の光学補償層がなす角度(前記角度α)が「+」または「−」25度〜65度となる限りにおいて任意の適切な手段が採用され得る。例えば、偏光子、第1の光学補償層、および第2の光学補償層を所定の大きさに打ち抜き、前記角度αが所望の範囲となるように方向を合わせて、粘着剤または接着剤を介してそれらを積層することができる。光学補償層付偏光板は、例えば、次のようにして製造する。
まず、偏光子に第1の光学補償層を貼着する。前記第1の光学補償層が基材フィルムの上に形成されている場合、前記第1の光学補償層を前記偏光子に貼着した後、前記基材フィルムを剥離・除去して転写してもよい。また、前記基材フィルムが、TACフィルム等の保護層となり得るものである場合、第1の光学補償層が形成された前記基材フィルムを偏光子に接着し、偏光子/基材フィルム(保護層)/第1の光学補償層という積層構造にしてもよい。つぎに、前記第1の光学補償層に第2の光学補償層を貼着する。前記第1の光学補償層と同様に、前記第2の光学補償層が基材フィルムの上に形成されている場合、前記第2の光学補償層を前記第1の光学補償層に貼着した後、前記基材フィルムを剥離・除去して転写してもよい。また、前記基材フィルムが、TACフィルム等であって除去しなくてもよい場合、第2の光学補償層が形成された前記基材フィルムを第1の光学補償層に貼着し、第1の光学補償層/基材フィルム/第2の光学補償層という積層構造にしてもよい。このようにして、本発明の光学補償層付偏光板が製造できる。
C.偏光板の用途
本発明の光学補償層付偏光板は、各種画像表示装置(例えば、液晶表示装置、自発光型表示装置)に好適に使用され得る。適用可能な画像表示装置の具体例としては、液晶表示装置、ELディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)が挙げられる。本発明の光学補償層付偏光板を液晶表示装置に用いる場合には、例えば、黒表示における光漏れ防止および視野角補償に有用である。本発明の光学補償層付偏光板は、VAモードの液晶表示装置に好適に用いられる。また、本発明の光学補償層付偏光板をELディスプレイに用いる場合には、例えば、電極反射防止に有用である。
D.画像表示装置
本発明の画像表示装置の一例として、液晶表示装置について説明する。ここでは、液晶表示装置に用いられる液晶パネルについて説明する。液晶表示装置のその他の構成については、目的に応じて任意の適切な構成が採用され得る。本発明においては、VAモードの液晶表示装置が好ましい。また、本発明の液晶表示装置は透過型、反射型、半透過型のいずれであってもよい。図3は、本発明の液晶パネルの一例の概略断面図である。ここでは、透過型の液晶表示装置用液晶パネルを説明する。液晶パネル100は、液晶セル20と、液晶セル20の両側に配置された位相差板30、30’と、それぞれの位相差板の外側に配置された偏光板10、10’とを備える。前記偏光板10、10’の少なくとも一方は、前記A項およびB項で説明した本発明の光学補償層付偏光板である。偏光板10、10’は、代表的には、その偏光子の吸収軸が直交するようにして配置されている。本発明の液晶表示装置(液晶パネル)においては、偏光板の一方に本発明の偏光板を用いる場合には、本発明の偏光板は視認側(上側)に配置されるのが好ましい。位相差板30、30’としては、目的および液晶セルの配向モードに応じて任意の適切な位相差板が採用され得る。目的および液晶セルの配向モードによっては、位相差板30、30’の一方または両方が省略され得る。また、偏光板として本発明の光学補償層付偏光板を用いる場合にも、位相差板30、30’の一方または両方が省略され得る。液晶セル20は、一対のガラス基板21、21’と、該基板間に配された表示媒体としての液晶層22とを有する。一方の基板(アクティブマトリクス基板)21’には、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的にはTFT)と、このアクティブ素子にゲート信号を与える走査線およびソース信号を与える信号線とが設けられている(いずれも図示せず)。他方のガラス基板(カラーフィルター基板)21には、カラーフィルター(図示せず)が設けられる。なお、カラーフィルターは、アクティブマトリクス基板21’に設けてもよい。基板21、21’の間隔(セルギャップ)は、スペーサー(図示せず)によって制御されている。基板21、21’の液晶層22と接する側には、例えばポリイミドからなる配向膜(図示せず)が設けられている。
図4は、本発明の液晶パネルのその他の例の概略断面図である。ここでは、反射型の液晶表示装置用液晶パネルを説明する。液晶パネル100’は、液晶セル20と、液晶セル20の上側に配置された位相差板30と、位相差板30の上側に配置された偏光板10とを備える。前記偏光板10は、前記A項およびB項で説明した本発明の光学補償層付偏光板である。位相差板30としては、目的および液晶セルの配向モードに応じて任意の適切な位相差板が採用され得る。目的および液晶セルの配向モードによっては、位相差板30が省略され得る。また、偏光板として本発明の光学補償層付偏光板を用いる場合にも、位相差板30が省略され得る。液晶セル20は、一対のガラス基板21、21’と、前記基板間に配された表示媒体としての液晶層22とを有する。下基板21’の液晶層22側には、反射電極23が設けられている。上基板21には、カラーフィルター(図示せず)が設けられている。基板21、21’の間隔(セルギャップ)は、スペーサー24によって制御されている。
以下に、VAモードの表示メカニズムについて説明する。図5は、VAモードにおける液晶分子の配向状態を説明する概略断面図である。図5(a)に示すように、電圧無印加時には、液晶分子は基板21、21’面に垂直に配向する。このような垂直配向は、垂直配向膜(図示せず)を形成した基板間に負の誘電率異方性を有するネマチック液晶を配することにより実現され得る。このような状態で、偏光板10’を通過した直線偏光の光を一方の基板21’の面から液晶層22に入射させると、前記入射光は垂直配向している液晶分子の長軸の方向に沿って進む。液晶分子の長軸方向には複屈折が生じないため入射光は偏光方位を変えずに進み、偏光板10’と直交する偏光軸を有する偏光板10で吸収される。これにより電圧無印加時において暗状態の表示が得られる(ノーマリブラックモード)。図5(b)に示すように、電極間に電圧が印加されると、液晶分子の長軸が基板面に平行に配向する。この状態の液晶層22に入射した直線偏光の光に対して液晶分子は複屈折性を示し、入射光の偏光状態は液晶分子の傾きに応じて変化する。所定の最大電圧印加時において液晶層22を通過する光は、例えばその偏光方位が90°回転させられた直線偏光となるので、偏光板10を透過して明状態の表示が得られる。再び電圧無印加状態にすると配向規制力により暗状態の表示に戻すことができる。また、印加電圧を変化させて液晶分子の傾きを制御して偏光板10からの透過光強度を変化させることにより階調表示が可能となる。