JP2008038305A - 複合紡糸口金及びその組立方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】数千の吐出孔を有し、複雑なセクションを有するフィラメントを吐出する場合にも、セクション異常を生じることのない、かつ比較的製作が容易な複合紡糸口金を提供する。
【解決手段】少なくとも2成分のポリマーを分配・移送するためのポリマー流路群が加工された分割口金板群を積層して一体化した口金から複合単繊維群を紡出するための複合紡糸口金において、前記分割口金板群を各分割接触面で互いに接合させる接合材を備えたことを特徴とする複合紡糸口金とその口金の組立方法とする。
【選択図】図2
【解決手段】少なくとも2成分のポリマーを分配・移送するためのポリマー流路群が加工された分割口金板群を積層して一体化した口金から複合単繊維群を紡出するための複合紡糸口金において、前記分割口金板群を各分割接触面で互いに接合させる接合材を備えたことを特徴とする複合紡糸口金とその口金の組立方法とする。
【選択図】図2
Description
本発明は、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性合成樹脂を原料とする複合繊維を溶融紡糸するための複合紡糸口金とその組立方法に関する。
近年、品位に優れた緻密できめ細かなタッチやドレープ性に優れた布帛が上市され、そのような布帛を得るために極細繊維が多用されている。このような極細繊維を得るための手段としては、一つの方法として、最初から細繊度を有する単繊維群(フィラメント群)を紡糸する方法がある。しかしながら、この方法では得られる極細繊維の下限繊度に限界がある。
そこで、他の方法として、成分の異なる2つの重合体からなる複合繊維を製造して、この複合繊維を異なる成分の貼り合せ面で分割したり、一方の成分を抽出して他方の成分だけを残したりすることによって細繊度化する方法がある。この方法は、先に述べた方法と比較すると、より細繊度の極細繊維を得ることができるという利点がある。また、この方法によって細繊度の複合繊維を製造し、これを布帛とした後に、複合繊維を前述の分割や抽出によって細繊度化することによって、工程の合理化や工程調子の向上を図ることができるという利点がある。
なお、ポリエステルは、機械的な特性や熱安定性などに優れているので、少なくとも1成分がポリエステルポリマーで構成された複合繊維が従来から用いられている。例えば、特許文献1(特開2004−270115号公報)などにおいて、このようなポリエステルをその成分として持つ複合繊維が提案されている。
このような利点を持つ複合繊維は、様々な方法により製造されてきた。また、最近においては、一つの紡糸口金パックを構成する一組の紡糸口金に数千個ものポリマー吐出孔群を穿設したスパンボンド設備などを使用して、極めて多数の複合単繊維群(複合フィラメント群)を一度に紡糸することが行われている。この場合、その紡糸設備は概して非常に大型となる。
また、数千のフィラメント群を同時に吐出し、しかも、紡糸口金パックの内部に複数種のポリマーを流すための複合紡糸口金においては、各ポリマーを適切にポリマー吐出孔にまで到達させるための流路構造が錯綜して非常に複雑な構造となる。例えば、このような複合紡糸口金として、特許文献2(特開2002−180321号公報)に見られるように、各ポリマーを効率的に移送するためのマニホールドシステムが提案されている。
このような従来から提案されている複合紡糸口金では、製造コストが高くなることを回避したり、ポリマーの流れる複雑な流路の加工を容易にしたりする必要がある。そのために、溝や孔加工などのポリマー移送流路を複数枚の口金板群を組み合わせて一群の積層口金板群からなる複合紡糸口金を構成することが提案されている。
しかしながら、この従来の複合紡糸口金では、より複雑な流路形状を実現できるなどの利点がある反面、複数枚の口金板群を積層して使用することとなる。このため、特に前述のように、数千本の複合フィラメント群を紡出するためのポリマー吐出孔群を有する場合には、孔加工時に各吐出孔の加工ピッチ精度が十分でないと、口金板群を積層して使用するときに孔ズレなどが生じる。
そこで、これらの口金板群を正確に位置決めするための位置決めピンを設けてこのような問題が発生することを防止するようにしている。ところが、長期間に渡って何度も紡糸を行うと位置決めピンが磨耗したりするため、このような磨耗が原因で各口金板間の位置合わせがうまく行かず、孔位置がずれてしまうという問題がおこる。そうすると、正常な複合単繊維を紡出することができずに、フィラメントのセクション異常が発生するという問題が起こる。
本発明は、前記従来技術が有する諸問題を解決することを目的としてなされたものであり、本発明が対象とするのは、数千個ものポリマー吐出孔が穿設され、しかも、複数種のポリマーがその内部を流れる複雑なポリマー流路を有する複合紡糸口金である。したがって、本発明が目的とするところは、前述のように大型化し、かつ複雑な構造を持つ複合紡糸口金において、口金を紡糸口金パックに組み込際の組立精度を常に安定に保つことができ、かつ紡出する複合フィラメント群の各セクションに異常を生じることがなく、その上、比較的製作が容易な複合紡糸口金とその組立方法を提供することにある。
前記課題に対して本発明者が鋭意検討した結果、前記課題を達成するための、以下の(1)〜(4)に記載の複合紡糸口金を見出した。
(1) 少なくとも2成分のポリマーを分配・移送するためのポリマー流路群が加工された分割口金板群を積層して一体化した口金から複合単繊維群を紡出するための複合紡糸口金において、前記分割口金板群を各分割接触面で互いに接合させる接合材を備えたことを特徴とする複合紡糸口金、
(2) 前記接合材が、前記ポリマー流路群が加工されていない口金板の外縁リム部の全面または一部に対して設けられた、シート状の形状を有する圧着材、熱接着材、あるいは粘着材であることを特徴とする(1) 記載の複合紡糸口金、
(3) 互いに接合させる口金板群のポリマーの流入面と流出面とに分割加工するポリマー流路の加工精度が高く要求される接合面に対して前記接合材を設けた(1)又は(2)に記載の複合紡糸口金、そして、
(4) 前記接合材が真空圧着法によって圧着された圧着材である(1)〜(3)のいずれかに記載の複合紡糸口金である。
(1) 少なくとも2成分のポリマーを分配・移送するためのポリマー流路群が加工された分割口金板群を積層して一体化した口金から複合単繊維群を紡出するための複合紡糸口金において、前記分割口金板群を各分割接触面で互いに接合させる接合材を備えたことを特徴とする複合紡糸口金、
(2) 前記接合材が、前記ポリマー流路群が加工されていない口金板の外縁リム部の全面または一部に対して設けられた、シート状の形状を有する圧着材、熱接着材、あるいは粘着材であることを特徴とする(1) 記載の複合紡糸口金、
(3) 互いに接合させる口金板群のポリマーの流入面と流出面とに分割加工するポリマー流路の加工精度が高く要求される接合面に対して前記接合材を設けた(1)又は(2)に記載の複合紡糸口金、そして、
(4) 前記接合材が真空圧着法によって圧着された圧着材である(1)〜(3)のいずれかに記載の複合紡糸口金である。
また、前記課題を解決するための複合紡糸口金の組立方法として「少なくとも2成分のポリマーを分配・移送するためのポリマー流路群が加工され、かつ複数に分割された口金板群を互いにその接合面を合わせて積層して一枚の複合紡糸口金として組み立てる複合紡糸口金の組立方法において、
ポリマー流路が加工されていない外縁リム部の接合面の全面又は一部に対して、圧着、粘着、又は熱接着て前記口金板群を接合し、接合した口金板群を締結手段によって締結し、一組の複合紡糸口金を組み立てることを特徴とする複合紡糸口金の組立方法。」が提供される。
その際、前記発明においては、「前記口金板群の接合面を真空圧着によって圧着させる複合紡糸口金の組立方法」とすることが好ましい。
ポリマー流路が加工されていない外縁リム部の接合面の全面又は一部に対して、圧着、粘着、又は熱接着て前記口金板群を接合し、接合した口金板群を締結手段によって締結し、一組の複合紡糸口金を組み立てることを特徴とする複合紡糸口金の組立方法。」が提供される。
その際、前記発明においては、「前記口金板群の接合面を真空圧着によって圧着させる複合紡糸口金の組立方法」とすることが好ましい。
以上に述べたように、本発明の複合紡糸口金によれば、従来の方法で発生する口金板同士の孔ずれの問題を解消し、数千を越える吐出孔を有する場合においてもセクション異常を持つ糸を発生させる可能性の低い設備を提供できる。また、これにより、細繊度繊維を安定して製造することが可能となり、品位に優れた緻密できめ細かなタッチやドレープ性に優れた布帛を提供することができる。
更に、本発明の複合紡糸口金により、設備の大幅な改造を実施することなく、最小限の投資でセクション異常を発生させる可能性を格段に低下させ、製糸生産性を向上させることができる。
以下、本発明の実施の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明において使用する「紡糸孔」という用語は、一本の単繊維(フィラメント)を紡出するために、一組の口金に設けられた一連の孔や溝などの流路を指すものとする。したがって、本発明によると、一組の複合紡糸口金に設けられた多数の紡糸孔群から複合単繊維群が紡出される。
図1は、本発明の複合紡糸口金を使用して紡糸できる複合単繊維の横断面形状の例を示した図である。この図1において、図1(a)は全体として中実円形断面を有し、かつ個々には異なる2種のポリマー(A)とポリマー(B)とからなる各ポリマーセグメントが扇形楔形を呈して交互に円周配列した複合単繊維の例である。また、図1(b)は、図1(a)に例示した中実断面を有する複合単繊維の中心部に中空を有する複合体繊維の例である。更に、図1(c)は横長の楕円断面を有する複合単繊維である。図に示したように、どのタイプの複合単繊維においても、互いに隣接する各ポリマーセグメント同士は異なる種類のポリマーで形成されている。
図2は、本発明に係る複合紡糸口金に係る分割口金板群の一部の実施形態例を模式的に示した説明図であって、図2(a)は正断面図、図2(b)は、図2(a)におけるX−X方向矢視図(平面図)である。なお、図2(b)におけるY−Y方向矢視図が、図2(a)の正断面図であって、この図では隣り合う二つの紡糸孔に関連する部分を太線で示し、それ以外の部分を細線で示している。
ここで、図2は、一枚の複合紡糸口金で多数の複合単繊維群を紡出するために、紡糸孔群が多数個穿設された口金であるが、図2(a)には、互いに隣接する2つの紡糸孔だけを示した。しかしながら、図2(b)に例示したように、実際には、例えば一組の口金板に対して多数個の紡糸孔群が方形格子状に配設されている。このように、本発明の複合紡糸口金では、多数個の紡糸孔群を設けることを一つの大きな特徴とし、例えば、一組の口金板に対して、100個以上(好ましくは500個以上)、場合によっては、10000個にも及ぶ紡糸孔群を穿設することができる複合紡糸口金の例である。
ただし、この例は、2種のポリマー(A)と(B)を用いた例であるが、もちろん、2種以上のポリマーを用いても良い。この例の複合紡糸口金では、図2に例示したように、第1口金板1、第2口金板2、…、第5口金板5は、下から順番に積層された状態で紡糸口金パック内に組み込まれて溶融紡糸に供される。なお、これらの口金板群1〜5などにポリマーが流れる様子に係る説明については後述する。
なお、実際には第5分配板5の上に複数枚の分配板を配置し、2成分以上のポリマーを効率的に移送する口金となっている。ただし、図2には、2種類のポリマー(A)とポリマー(B)をそれぞれ第5口金板5へ移送するための他の口金板については、特許文献2(特開2002−180321号公報)などを参照すれば容易に設計可能な事項であるので、口金の説明が錯綜して複雑化するのを回避するために、図示省略した。
以上に説明したように、多くの口金板群(例えば、前記の第1口金板1、第2口金板2、…、第5口金板5など)を積層して一組の複合紡糸口金を構成するのであるが、このとき、各口金板の積層の位置決めが正確でないと、ポリマーの流れが不良となって、品質が優れた複合繊維を得ることができないのは、言うまでもない。
ところが、従来の技術では、一組の口金板群を積層する時に行う位置決めは位置決めピンで行っている。このため、加工精度、位置決めピンの磨耗等の問題が生じると、どうしても対応する溝や孔の位置関係にずれを生じる。そうすると、このずれのために、繊維の横断面で見たときに、深刻な各ポリマーセグメントのセクション異常(断面形状の異常)を引き起こしていた。
そこで、本発明に係る口金板群では、従来、複数枚の口金板群によって形成されていた溝や孔などからなるポリマー流路を口金板のポリマー流入面と流出面に可能な限り加工して、その枚数を減らしている。このために、口金板群の組立時に、このような箇所では位置決めピンが不要となり、この点では、本質的にポリマー流路の位置合わせに係るポリマーの流れ不良は生じない。
ただし、このようにすれば、ポリマーの流入面と流出面とに加工するポリマー流路の対応付けを注意深く正確に行った上で、ポリマー流路を加工しなければならない。したがって、口金の製作精度が一段と要求されるので、口金の製作費用と制作期間は増加する。
また、複数の口金板群に加工する場合であれば、これらの加工を異なった場所で同時に進めることもできる。しかしながら、ポリマーの流入面と流出面の両面に複雑なポリマー流路を加工するとなると、どちらか一方の面を先に加工してから、その後に他方の面を加工しなければならず、両面を同時に加工できないという制約もある。
ところが、口金の加工の問題よりもより深刻となる問題は、製造する繊維の品質であり、この点で大きな利点を有するならば、製造コストと製作期間をある程度犠牲にしても前述のような加工方法を採らざるを得ない。その際、図1に例示したような横断面形状を有する複合単繊維群を数千本も同時に紡出する複合紡糸口金では、そのポリマー流路は複雑にならざるを得ない。そうすると、どうしても複数枚の口金板群に分割してポリマー流路を加工せざるを得ず、その結果、複数枚の口金板群を積層した複合紡糸口金を使用しなければならないという事態を回避することは困難である。
そこで、この問題を解決するために、本発明では、口金板の分割をできるだけ限り減らして、その使用枚数を少なくする一方で、どうしても加工精度を上げる必要があったり、ポリマー流路の加工コストが高くなり過ぎたり、あるいは、物理的に加工が不可能な理由があったりして分割せざるを得ない部分について口金板を分割する。しかしながら、本発明においては、従来のように、これら口金板群を一体に組み込む際に位置決めピンを使用しないことが大きな特徴である。
以下、この点について、図3を参照しながら説明する。なお、図3は、説明の便宜上、2つに分割した口金板を上下に積層する簡単なケースを例示しているが、もちろん、3つ以上に分割した口金板群を使用することができる。また、各口金板の形状は、図3では長方形としているが、このような形状に特に限定する理由はない。
一般に、図2のように2枚以上の複数枚の口金板群に分割した複合紡糸口金では、一群の口金板を位置決めピンで位置決めし、ボルトなどの結合手段によって、口金の外縁リム部においてこれらを固定するようにされている。なお、この点については、特開2003−138464号公報、米国特許第5562930号公報などに詳細に説明されているので、ここでは説明を省略する。
一般に、図2のように2枚以上の複数枚の口金板群に分割した複合紡糸口金では、一群の口金板を位置決めピンで位置決めし、ボルトなどの結合手段によって、口金の外縁リム部においてこれらを固定するようにされている。なお、この点については、特開2003−138464号公報、米国特許第5562930号公報などに詳細に説明されているので、ここでは説明を省略する。
このような複合紡糸口金では、口金板に組み込んだ位置決めピンで、一群の口金板の位置がずれないようにして、各ポリマー流路の相対位置がずれないようにその位置を正確に決定しながら、結合ボルトよって口金板群を締め付け固定するようになっている。しかしながら、このような口金板の組込み方法では、位置決めピンの遊びや磨耗などが発生すると、忽ちにして、ポリマー流路の相対位置がずれてしまって、正常なポリマー流を形成することができなくなる。
そこで、このような従来の方法に対して、本発明では、溶融紡糸時においても、そのまま組み込んだままの状態で使用するため、焼き付が起こったり、口金板の分解時に変形してしまったりするような現象を惹起する位置決めピンを用いない。
本発明では位置決めピンの代わりに、圧着材、熱接着材、あるいは粘着材などからなる接合材を使用して、口金板群の分割された接合面同士を圧着、熱接着、あるいは粘着する。つまり、図3に示したように、ポリマー流路が加工されていない口金板外縁のリム部の全面または一部に、シート状の形状を有する接合材を設ける。なお、場合によっては、液状の接合材を用いて、これをシート状に吹き付けてもよい。
ついで、このようにして接合材を設けた状態で分割した各口金板に加工されたポリマー流路同士がずれないように配慮しながら、位置決め治具を使用して口金板群の各分割接合面を接合する。ただし、この接合に当って使用する位置決め治具は、もちろん実際に溶融紡糸を行う際には取外されることはいうまでもない。したがって、ここで使用する位置決め治具は、分割された各口金板群を積層して組み立てる際の初期組立作業において、先ず各口金板に加工されたポリマー流路の対応付けを最初に行う役割を果している。
なお、本発明の接合材は、狙った通りの複合単繊維群を狙った通りに溶融紡糸するために、ポリマー流路が口金板群の接合面でずれないように、精確に対応付けるために使用するものである。したがって、ポリマー流路の加工に際して極めて高い精度が特に要求されるにもかかわらず、物理的に加工が困難であるとか、精度の高い加工が困難などの理由で口金板をどうしても分割して、その分割面にポリマー流路を加工しなければならないような箇所に位置ずれを防止することを目的として用いるのが非常に効果的である。
このような理由から、ポリマー流路のずれが少しでも生じると困るような箇所に選択的に本発明に係る接合材を用い、その他の高い加工精度が要求されないものについては、従来どおりの位置決めピンを使用するようにしても良い。そうすると、位置決め精度が極めてよい位置決めピンを使用しなくても、良好な複合単繊維群を紡出することができる。
このため、従来の位置決めピンでは、嵌合孔と嵌合軸との間の寸法公差が極めて厳しく設定しなければならないため、溶融紡糸に供した際に焼きつきが生じたり、分解及び組立時に位置決めピンを無理に嵌合させる作業などによって、想定外の力を位置決めピンに作用させてしまい位置決めピンに僅かな変形を与えてしまうということもなくなる。
このようにして口金板群の積層が完了すると、積層した口金板群の上下から口金板を圧縮する。そうすると、圧着材や粘着材を使用した場合には、この圧着材の作用によって、各口金板が固定結合される。また、熱接着材を使用する場合には、更に熱接着性を示す温度にまで加熱して熱接着させた後に、冷却して熱接着を完了する。このようにすると、位置決めピンを使用しなくても、口金板群が互いにずれないように位置合わせをすることができる。
なお、このような圧着、粘着、熱接着などの処理は、通常の大気中で行っても良いが、真空下で行うことがより好ましい。なお、このような真空下での接合処理をする場合には、各口金板の当接面を極めて滑らかな鏡面に仕上げ、その接合面に付着した汚れを洗浄し、更に、金属接触面に残留する空気を真空下での組立によって除去できる。そうすると、場合によっては、メタルタッチだけで口金板同士を接合できる。この場合、両口金板の隙間にエキシマレーザを照射し、口金板表面に付着した酸化物を除去して、活性化されたクリーンな口金板表面を露出させた直後に、圧接により金属板相互を接合することがより好ましい。
このようにして、先ず、口金板群を互いにその相対位置がずれないように簡易に接合しておけば、例え口金板群を移動させるようなことがあっても、既に位置決めしておいたポリマー流路が相互にずれることはない。したがって、このような状態で口金群を一体に組み込んでボルト群などの締結手段によって一体に締結すれば、必要な口金板群を流路ずれなく、しかも、位置決めピンも使用せずに精確に組み込むことができる。
このようにして組み込まれた口金板群を、一セットとして紡糸口金パックに装着すると、その内部には、位置決めピンが最早ないため、組立や分解を繰返し行っても、位置決めピンが変形したり、磨耗したり、焼付けを起したりするようなことが生じない。したがって、積層する口金板群は常に精度よく組み立てられる。
なお、口金板群の精確な位置決めに使用した圧着材、粘着材、熱接着材などの接合材は、口金の外縁リム部に設けられており、肝心のポリマーが流れる部分では口金板同士はメタルタッチで隙間なく接触している。このため、圧着材、粘着材、熱接着材などの接合材を取付けたまま口金板群を紡糸口金パックに装着して使用しても、これらの接合材は内部まで浸透することがないので、内部を流れるポリマーと干渉することがなく、何ら問題はない。
ただし、必要に応じて、ボルトなどの一群の締結手段で積層口金群を一体化した後、例えば所定の温度に加熱して、焼却除去したり、流動化させたりして吸着材によって吸着除去するようにしてもよい。また、溶剤を使用して溶解除去するようにしてもよい。さらには、これらの材を液状化させて流動化させることができない場合には、これらの材を炭化させたり、熱硬化させたりしても良い。要するに、使用条件によって、これらの条件を適宜最適化すればよい。
以下、複数の口金板群を積層して一体化した本発明に係る複合紡糸口金の実施形態例について、前掲の図2を参照しながら簡単に説明しておく。
図2に例示したように、ポリマー(A)とポリマー(B)とが第5口金板5へ流入する。このとき、先ず、第5口金板5に穿設されたポリマー(A)の導入孔群51とポリマー(B)の導入孔群52へポリマー(A)とポリマー(B)とがそれぞれ図示した方向から流入する。
図2に例示したように、ポリマー(A)とポリマー(B)とが第5口金板5へ流入する。このとき、先ず、第5口金板5に穿設されたポリマー(A)の導入孔群51とポリマー(B)の導入孔群52へポリマー(A)とポリマー(B)とがそれぞれ図示した方向から流入する。
ここで、一方のポリマー(A)は、導入孔群51から導入され、図2(b)に例示した分岐溝53によって、分岐溝群56で分岐させられて、複数の放射方向(図では「4つの放射方向」)へ均等に分配される。次いで、このようにして放射方向へ均等に分配させられた各ポリマー(A)流は、そのまま第4口金板4と第3口金板3とに上下に連接して穿設された複数の円周状配列貫通孔群41及びポリマー(A)の分配孔群31(図では、「それぞれ4個の孔群41及び31で構成されている」)をそのまま真直ぐに流下して、その下端開口から直ちに円形断面を有する合流孔21に流入する。
これに対して、他方のポリマー(B)流は、前記導入孔群52から導入され、この導入孔群52の直下に連接して、第4口金板4にそれぞれ穿設された導入孔群42から複数個の分岐溝群43(図では「4個の分岐溝群43」)によって複数の放射方向(図では「4つの放射方向」)へ分岐させられる。なお、分岐溝群43は、図2(a)と図2(b)には、それぞれ破線で示してある。このようにして放射状に複数方向(図では、「4方向」)へ均等に分岐した各ポリマー(B)流は、第3口金板3に穿設されたポリマー(B)の分配孔群32(破線で図示)へそれぞれ均等に分配される。そして、前記ポリマー(B)の分配孔群32をそれぞれ真直ぐに流下した後、その下端開口から直ちに合流孔21へ流入する。
以上に説明したように、ポリマー(A)の分配孔群31を流下してきた各ポリマー(A)流と、ポリマー(B)の分配孔群32を流下してきた各ポリマー(B)流とが、分配ポリマー合流孔21に交互に合流して、この合流孔21内で図4(a)に例示したポリマーセグメントのように、扇状楔形を有する複数個(図では8個)のポリマーセグメントが交互に貼り合わされる。なお、前記分配孔群31と分配孔群32とは、図2(b)に例示したように、これら孔群の各孔中心がそれぞれ一つの同心円Cの上に位置するように、好ましくは円周列を形成して交互に等配して配列されている。
したがって、分配孔群31と分配孔群32とからそれぞれ円形の合流孔21に流れ込んで合流した各ポリマー(A)流及び各ポリマー(B)流は、均等な流量と圧力が維持されているので、交互に扇状に楔の中心を繊維横断面の中心に向けた状態で円周配列する。このようにして、この合流ポリマー流は扇状楔形に交互に貼り合わされた断面形状を有する合流ポリマーとして、第1口金板1に穿設されたポリマー導入孔11を流下して、次第に縮流しながら引き続いてポリマー吐出孔12へ流入して、このポリマー吐出孔12から複合繊維として最終的に紡出される。
1 トッププレート
2 セカンドプレート
3 分配板群
4 下口金板
5 分配板
6 分配板
7 分配板
8 下口金板
2 セカンドプレート
3 分配板群
4 下口金板
5 分配板
6 分配板
7 分配板
8 下口金板
Claims (6)
- 少なくとも2成分のポリマーを分配・移送するためのポリマー流路群が加工された分割口金板群を積層して一体化した口金から複合単繊維群を紡出するための複合紡糸口金において、前記分割口金板群を各分割接触面で互いに接合させる接合材を備えたことを特徴とする複合紡糸口金。
- 前記接合材が、前記ポリマー流路群が加工されていない口金板の外縁リム部の全面または一部に対して設けられた、シート状の形状を有する圧着材、熱接着材、あるいは粘着材であることを特徴とする請求項1記載の複合紡糸口金。
- 互いに接合させる口金板群のポリマーの流入面と流出面とに分割加工するポリマー流路の加工精度が高く要求される接合面に対して前記接合材を設けた請求項1又は請求項2に記載の複合紡糸口金。
- 前記接合材が真空圧着法によって圧着された圧着材である請求項1〜3のいずれかに記載の複合紡糸口金。
- 少なくとも2成分のポリマーを分配・移送するためのポリマー流路群が加工され、かつ複数に分割された口金板群を互いにその接合面を合わせて積層して一枚の複合紡糸口金として組み立てる複合紡糸口金の組立方法において、
ポリマー流路が加工されていない外縁リム部の接合面の全面又は一部に対して、圧着、粘着、又は熱接着て前記口金板群を接合し、接合した口金板群を締結手段によって締結し、一組の複合紡糸口金を組み立てることを特徴とする複合紡糸口金の組立方法。 - 前記口金板群の接合面を真空圧着によって圧着させる請求項5に記載の複合紡糸口金の組立方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006216600A JP2008038305A (ja) | 2006-08-09 | 2006-08-09 | 複合紡糸口金及びその組立方法 |
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2006
- 2006-08-09 JP JP2006216600A patent/JP2008038305A/ja active Pending
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CN113481611A (zh) * | 2021-06-17 | 2021-10-08 | 广西德福莱医疗器械有限公司 | 喷丝板组件更换方法 |
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