JP2008038258A - 繊維製品の加工方法及び加工された繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】繊維に対し親油性保湿剤を効率よく付与し、かつ、高耐久性の加工方法を提供する。また、該加工方法を用いて加工された繊維を提供する。
【解決手段】二酸化炭素等の超臨界流体中で繊維にスクワラン、スクワレン、ミリスチン酸アルキルエステル、ミグリオール、パーセリン油、γーオキザノール,蜜蝋、セラミド、キトサン、ビタミンE等の親油性保湿剤(特にスクアラン)を付与する方法、及び該方法によりより得られる機能性繊維。
【選択図】図1

Description

本発明は、繊維製品を加工する技術に関する。
従来、繊維に親油性保湿剤等を用いて機能性を付与する機能加工において、繊維の染色と同時に機能剤を吸尽させる方法やバインダーを用いてパディングする方法が行われてきた(例えば、特許文献1〜3等)。
しかし、上記の方法では、地球環境への配慮から、加工後の廃液を高度に浄化することが必要となり、その浄化処理に要するケミカルコスト及び設備コストがかさむという問題があった。
ところで、特許文献4には、超臨界流体を循環させながら、繊維構造物にフッ素系化合物、ポリアルキレングリコール、シリコン等の機能付与剤を付着させる方法が記載されている。
特許第2968297号明細書 特開2005−350805号公報 特開2005−113304号公報 特開2002−212884号公報
本発明は、繊維に対し親油性保湿剤を効率よく付与し、かつ、高耐久性の加工方法を提供することを目的とする。また、該加工方法を用いて加工された繊維を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、超臨界流体(特に、超臨界二酸化炭素)中で、繊維と親油性保湿剤を処理することにより、効果的に繊維に親油性保湿剤を付与することができ、しかも高い耐久性が備わることを見出した。かかる知見に基づき、さらに研究を重ねて本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は下記の繊維の加工方法、該加工方法により得られる繊維を提供する。
項1. 超臨界流体中で繊維に親油性保湿剤を付与する方法。
項2. 親油性保湿剤がスクワラン、スクワレン、ミリスチン酸アルキルエステル、ミグリオール、パーセリン油、γ−オキザノール、蜜臘、ラノリン、馬油、セラミド、キトサン、β−カロテン及びビタミンEからなる群より選ばれる少なくとも1種である項1に記載の方法。
項3. 親油性保湿剤がスクアランである項1に記載の方法。
項4. 繊維がポリエステル系繊維である項1に記載の方法。
項5. 項1〜4のいずれかに記載の方法により得られる機能性繊維。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、超臨界流体中で繊維に親油性保湿剤を付与する方法である。
繊維
本発明に用いられる繊維は、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維等のどの繊維を使用してもよい。また、これらの繊維は、フィラメント(モノフィラメント、マルチフィラメント、異型断面糸、中空糸、複合糸等)、紡績糸、織物、編物、不織布等の繊維構造物として用いることができる。本明細書において、これらも繊維として含むものとする。
天然繊維としては、(1)綿、カポック、パンヤ等の種子毛繊維;麻、大麻、黄麻等のジン皮繊維;マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻等の葉脈繊維;ヤシ繊維;い草;麦わら等の植物繊維、(2)まゆ繊維;羊毛、山羊毛、カシミヤ等の獣毛繊維;羽毛繊維;クモ絹等の動物繊維が挙げられる。
再生繊維としては、セルロース系再生繊維のレーヨン(ビスコースレーヨン)、キュプラ(銅アンモニアレーヨン)、ポリノジック等が挙げられる。
半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックス等が挙げられる。
合成繊維としては、ナイロン、ポリエステル、アクリル、アラミド、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ビニリデン、ポリエチレン、ポリクラール、フッ素樹脂、生分解性樹脂等を挙げることができる。
これらの繊維は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。本発明では、上記の繊維の中でも、半合成繊維又は合成繊維を使用するのが好ましい。特に、高度な機能付与が求められる汎用繊維としてポリエステル繊維が最も実用面で重要であるため、ポリエステル繊維を含有するポリエステル系繊維構造物を用いることがより有効である。これらの繊維は、二酸化炭素を用いた超臨界流体中では、膨張しやすく繊維内部にまで親油性保湿剤が浸透しやすくなるからである。
親油性保湿剤
本発明で使用する親油性保湿剤とは、肌に近接して存在させた際に肌の角質水分率を低下させないものをいう。具体的には、スクワラン、スクワレン、ミリスチン酸アルキルエステル、ミグリオール、パーセリン油、γ−オキザノール、蜜臘、ラノリン、馬油、セラミド、キトサン、βカロテン、ビタミンE(トコフェロール)等が例示される。そのうち、分子構造、超臨界二酸化炭素中の溶解度の点から、スクワランが良好である。
超臨界流体
超臨界流体とは、臨界温度及び臨界圧力を超えた温度及び圧力下の流動体をいう。超臨界流体は、高い溶解性と高い拡散性を有しているので、例えば、微細な構造の細部にまで浸透しやすいという利点がある。また、超臨界流体は、圧力を下げる等すれば気体となり、それにより容易に溶解物を分離することができるという利点もある。
本発明では、繊維を親油性保湿剤で処理する際には、超臨界流体を使用する。また、本明細書中、超臨界流体とは、超臨界流体の状態だけでなく、亜臨界流体の状態、及びこれらに近い状態も含むものとする。
超臨界流体を形成する物質としては、水、二酸化炭素、窒素、アンモニア、炭化水素類、アルコール類等が挙げられる。炭化水素類としては、エタン、プロパン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ヘキサン等が挙げられ、アルコール類としては、メタノール、エタノール等が挙げられる。
このような物質は、臨界温度以上及び臨界圧力以上の条件下において超臨界流体となるので、使用する物質に応じて適宜条件を設定すればよい。上記物質の中でも、二酸化炭素を用いるのが好ましい。容易に超臨界流体になり、また、引火性、爆発性がなく安全だからである。さらに、二酸化炭素は、繊維に多量に吸尽されて、繊維を膨張させる効果(特に、非極性の疎水性素材で、その効果が大きい)を有する点においても有利である。二酸化炭素の臨界温度は、304.21 Kであり、臨界圧力は7.3825 MPaである。本発明における二酸化炭素の超臨界又は亜臨界とは、温度が20〜150℃程度、好ましくは25〜80℃程度、圧力が5〜35MPa程度、好ましくは7〜25MPa程度である。
上記物質は、一種を単独(通常、超臨界二酸化炭素)で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することできる。さらに、本発明の効果を損なわなければ、上記物質の他に一般に溶媒として使用されているものを共溶媒として使用することも可能である。共溶媒を使用する量は限定されず、例えば、溶解させる物質の種類、量等に応じて適宜選択することができる。
繊維の処理
本発明の繊維の処理方法では、超臨界流体中において、繊維を親油性保湿剤で処理する。具体的には、超臨界二酸化炭素流体中において、繊維を親油性保湿剤と接触させる。このときの処理条件は、繊維に対して親油性保湿剤の高い付着性、耐久性を付与する条件であれば特に限定されない。
本発明における好ましい処理方法の具体例の一つとしては、高圧容器に、繊維及び親油性保湿剤を入れておき、そこに超臨界流体をその臨界圧力以上になるように添加し、容器内の温度を臨界温度以上に設定する方法が挙げられる。容器内の温度は、超臨界流体を容器内に充填する前に臨界温度以上に設定することもできるし、超臨界流体を充填させながら又は充填させた後に臨界温度それ以上まで徐々に上昇させることも可能である。
超臨界流体中で、繊維への親油性保湿剤処理を行う際の圧力条件としては5〜35 MPa程度、好ましくは10〜25MPa、より好ましくは15〜25MPaを例示できる。圧力が低いと超臨界流体中への溶解度が小さくなり、逆に圧力が高いと超臨界流体への親油性保湿剤の溶解度は大きくなるものの、それ故繊維側への収着が十分でない場合があるからである。
温度条件としては、40〜140℃程度、好ましくは80〜140℃、より好ましくは120〜140℃である。
高圧容器の材質は、超臨界流体の臨界点以上の温度及び圧力に十分に耐え得るようなものであれば、限定されない。また、高圧容器のサイズについても限定されず、目的や条件の応じて適宜選択することができる。
使用する親油性保湿剤の量は、例えば、繊維1gあたり、0.005〜5g程度、好ましくは0.05〜3g程度用いることができる。この範囲の量を使用することにより、肌の保湿性を高め皮脂膜機能をサポートする繊維加工品が得られる。親油性保湿剤の量が繊維の量に対して過剰の場合、余った親油性保湿剤は再利用することができる。
また、生地の重量(g)に対する超臨界流体の体積(ml;反応容器の容積)(以下、「浴比」とも呼ぶ)は、通常、1:25以下、好ましくは1:20〜1:15である。
さらに、繊維を親油性保湿剤で処理する時間も、所望の繊維加工品が得られる限り限定されない。繊維の種類、繊維の量に対して用いる親油性保湿剤の量等に応じて適宜選択することができる。例えば、1〜120分程度、好ましくは5〜60分程度とすればよい。また、必要に応じて撹拌下に処理を行ってもよく、高圧容器を振盪してもよい。繊維を親油性保湿剤で処理した後、高圧容器中の溶媒物質を容器内から徐々に排出し、処理された繊維を取り出せばよい。
このようにして得られた繊維は、必要に応じて洗浄、乾燥、染色等の処理を行うこともできる。また、本発明で得られる繊維の性質を損なわない限り、柔軟剤、撥水剤、撥油剤、抗菌剤、防腐剤、香料、顔料、消臭剤等で処理することもできる。
上記のようにして得られた繊維製品は、肌に良好に保湿効果を付与することができる。
本発明の加工方法で処理された繊維製品は、各種親油性保湿剤を効率よく繊維に付与することができ、しかも繊維に付与された親油性保湿剤の耐久性が高いという特徴を有している。
以下に、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下の試験は、いずれも親油性保湿剤としてスクアラン(和光純薬工業株式会社)を、基布としてポリエステル平織布(JIS堅牢用白布)を用いた。また、二酸化炭素(液化炭酸ガス使用)を超臨界流体として用い、耐圧硝子工業社製 高圧反応装置(容器容量500ml)を用いた。
試験例1(温度条件の検討)
容器内に生地(JISポリエステル白布1g)をセットし120℃、20MPa、30minでブランク処理を行った。容器が完全に冷えたのを確認し、スクアラン100mg(10%owf;生地重量に対して10wt%の重量)を生地に触れないように容器内に添加した。図1に示す各温度(40℃、80℃、120℃)、各圧力(8MPa、20MPa)に設定して30min処理を行った。その後、一定時間後放冷し、徐々に脱気を行った後、繊維を取り出した。
その結果を図1に示す。図1より、温度が上昇するに従い付着量が増加した。また、圧力は20MPaの方が8MPaより付着量多いことが分かった。また、80℃から急激に増加している部分は、スクアランこの温度域で二酸化炭素に対する溶解度が上がった為と考えられる。
試験例2(機能剤濃度の検討)
容器内に生地(JISポリエステル白布1g)をセットし120℃、20MPa、30minでブランク処理を行った。容器が完全に冷えたのを確認し、スクアラン100mg、200mg、300mg、500mgを生地に触れないように容器内に添加した。図2に示す温度(120℃)、各圧力(8MPa、20MPa)に設定して30min処理を行った。その後、一定時間後放冷し、徐々に脱気を行った後、繊維を取り出した。
その結果を図2に示す。図2より、スクアランの添加濃度が増加するに従い付着量が増加した。また、圧力は20MPaの方が8MPaより付着量多いことが分かった。添加濃度増加に伴いヘンリー分配型の吸着になっている。20MPaの方が8MPaより吸着量が多いのは、スクアランがより二酸化炭素に溶解している為と考えられる。
試験例3(浴比条件の検討)
容器内に生地(JISポリエステル白布)を図3に示す浴比になるようにセットし120℃、20MPa、30minでブランク処理を行った。容器が完全に冷えたのを確認し、スクアラン100mg(10%owf;生地重量に対して10wt%の重量)を生地に触れないように容器内に添加した。温度(120℃)、圧力(20MPa)に設定して30min処理を行った。その後、一定時間後放冷し、徐々に脱気を行った後、繊維を取り出した。
その結果を図3に示す。図3より、浴比が小さい程付着量が増加した。なお、図3中の浴比は、生地の重量(g)に対する高圧反応装置の容器容量(500ml)を意味する。
試験例4(付着ムラの検証)
容器内に生地(JISポリエステル白布、0.5g/枚の布を40枚重ね合わせた生地)を浴比(1:25)になるようにセットし120℃、20MPa、30minでブランク処理を行った。容器が完全に冷えたのを確認し、スクアラン100mg(10%owf;生地重量に対して10wt%の重量)を生地に触れないように容器内に添加した。温度(120℃)、圧力(20MPa)に設定して30min処理を行った。その後、一定時間後放冷し、徐々に脱気を行った後、繊維を取り出した。
生地に残存する薬剤の分析は、次のようにして行った。生地5gを1cm角に切り円筒ろ紙(セルロース製:ADVANTEC THIMBLE FILTER No.84)に入れ、ソックスレー 脂肪抽出機(SIBATA製)を用い、抽出溶媒であるヘキサン100mlをいれ、80℃×4時間抽出した。その後放冷し、抽出液をヘキサンで200mlに希釈し測定液を得た。該測定液は、測定装置:GC-MS 島津 GC17A-QP5000、カラム:J&W DB-1(ジメチルポリシロキサン)122-1032(内径0.25mm、膜厚0.25μm、長さ30m、無極性)を用いて分析した。なお、スクアランをヘキサンで100ppm、500ppm、1000ppmの濃度で希釈し検量線用サンプルを作成し、上記条件で検量線を作成その後、抽出処理したサンプルを測定し、検量線より付着量を算出した。
その結果を表1に示す。
Figure 2008038258
表1より、生地の各層におけるスクアランの付着率はほぼ均一であった。上記実験条件で付着量にバラツキがないことから繊維の内部にまで薬剤が付与されている。これより表面付着のバインダー加工に比べ洗濯耐久性が高い加工になっている。
試験例5(洗濯耐久性試験)
(超臨界処理)
容器内に生地(JISポリエステル白布)を浴比(1:25)になるようにセットし120℃、20MPa、30minでブランク処理を行った。容器が完全に冷えたのを確認し、スクアラン10mg(1%owf;生地重量に対して1wt%の重量)を生地に触れないように容器内に添加した。温度(120℃)、圧力(20MPa)に設定して30min処理を行った。その後、一定時間後放冷し、徐々に脱気を行った後、繊維を取り出した。
(バインダー処理)
5wt%のシリコン系樹脂バインダー(例えば、TF3500:北広ケミカル製)を含む水溶液中に、スクアランを1wt%加え、液を調製した。この液中に繊維構造物(JISポリエステル白布)を0.5〜2秒程度接触させた後、パッダーを用いて絞り率100%程度で絞る。その後120℃程度、5分間程度で乾燥しスクアランが付着した生地を作成した。
上記超臨界処理した繊維とバインダー処理した繊維を、それぞれJIS L213 103法に従って洗濯耐久性試験を行った。その後、試験例4に従い生地残存薬剤分析を行い、付着量を測定した。その結果を表2に示す。なお、表2中、L0は洗濯前(洗濯0回)のサンプルを、L5は洗濯5回後のサンプルを意味する。
Figure 2008038258
表2より、超臨界処理した繊維では、バインダー処理した繊維に比べて、スクアランの残存率が極めて高いことが分かった。
試験例1における温度と付着量の関係を示すグラフである。 試験例2における機能剤の添加濃度と付着量の関係を示すグラフである。 試験例3における浴比と付着量の関係を示すグラフである。

Claims (5)

  1. 超臨界流体中で繊維に親油性保湿剤を付与する方法。
  2. 親油性保湿剤がスクワラン、スクワレン、ミリスチン酸アルキルエステル、ミグリオール、パーセリン油、γ−オキザノール、蜜臘、ラノリン、馬油、セラミド、キトサン、β−カロテン及びビタミンEからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の方法。
  3. 親油性保湿剤がスクアランである請求項1に記載の方法。
  4. 繊維がポリエステル系繊維である請求項1に記載の方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の方法により得られる機能性繊維。
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