火花点火式エンジンの制御に於いては、点火時期を遅角させることにより、エンジンの出力を応答性よく低下させることができるので、車両の駆動力を応答性よく低下させることができ、また点火時期を遅角させる時間を制限することにより、点火時期の遅角に伴うエンジンの排気ガスの温度の上昇及びこれに起因する排気ガス浄化触媒の劣化を抑制することができる。
しかし点火時期の遅角によりエンジンの出力を低下させると、スロットルバルブの開度の低減による場合に比してエンジンの出力が急激に低下し、これによりエンジンより駆動系を経て駆動輪へ伝達される駆動力も急激に低下するため、車両の走行状況によっては駆動輪に回転振動が発生したり、駆動輪の回転振動状態が悪化したりする。
しかるに上記特許文献1に記載された駆動力制御装置に於いては、点火時期の遅角制御の実行時間について考慮されていないだけでなく、点火時期の遅角によりエンジンの出力を低下させると、駆動輪の回転振動状態が悪化される場合があることについても考慮されておらず、そのため車両の走行状況によっては点火時期の遅角によるエンジンの出力の低下により駆動輪の回転振動状態が悪化されるという問題がある。
尚上記特許文献2に記載された駆動力制御装置に於いては、点火時期の遅角制御の実行時間が制限されてはいるが、この駆動力制御装置に於いても点火時期の遅角によりエンジンの出力を低下させると、車両の走行状況によっては駆動輪の回転振動状態が悪化される場合があることについて考慮されておらず、上記特許文献1に記載された駆動力制御装置の場合と同様の問題がある。
またエンジンへの燃料供給量を低減することによっても、点火時期の遅角制御の場合と同様にスロットル開度の低減制御よりも応答性よくエンジンの出力を低下させることができるが、エンジンへの燃料供給量を低減する場合にも、点火時期の遅角制御の場合と同様にエンジンの排気ガスの温度上昇及びこれに起因する排気ガス浄化触媒の劣化が生じ易くなると共に、車両の走行状況によっては駆動輪の回転振動状態が悪化する。
本発明は、エンジンのスロットル開度の低減に加えて点火時期の遅角若しくは燃料供給量の低減によるエンジン出力の低減を行うことにより車両の駆動力を低減する場合に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、点火時期の遅角若しくは燃料供給量の低減により車両の駆動力を低減するに際し、駆動輪の回転振動状態が悪化する虞れを判定することにより、駆動輪の回転振動状態の悪化を防止しつつ車両の駆動力を効果的に低減することである。
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち少なくとも運転者の駆動操作量に基づいてエンジンのスロットル開度の制御を行うスロットル開度制御手段と、前記エンジンの点火時期の遅角若しくは前記エンジンへの燃料供給量の低減により前記エンジンの出力を低減するエンジン出力低減手段と、車両の走行状態に基づいて車両の駆動力の低減の必要度合を判定し、前記必要度合が高いときには少なくとも前記スロットル開度制御手段を制御することにより前記エンジンの出力を低下させる駆動力低減制御手段とを有し、前記駆動力低減制御手段は前記必要度合が第一の基準値以上であるときには前記スロットル開度制御手段により制御されるスロットル開度を低減し、前記必要度合が前記第一の基準値よりも大きい第二の基準値以上であるときには前記スロットル開度制御手段により制御されるスロットル開度の低減に加えて前記エンジン出力低減手段により前記エンジンの出力を低減するよう構成された車両の駆動力制御装置であって、前記駆動力低減制御手段は前記エンジン出力低減手段による前記エンジンの出力の低減によって駆動輪の回転振動状態を悪化させる虞れを判定する回転振動状態判定手段と、前記必要度合が前記第二の基準値以上であっても前記回転振動状態判定手段により前記駆動輪の回転振動状態を悪化させる虞れがあると判定されているときには前記エンジン出力低減手段による前記エンジンの出力の低減を禁止する禁止手段とを有することを特徴とする車両の駆動力制御装置によって達成される。
上記請求項1の構成によれば、車両の走行状態に基づいて車両の駆動力の低減の必要度合が判定され、必要度合が第一の基準値以上であるときにはスロットル制御手段により制御されるスロットル開度が低減され、必要度合が第一の基準値よりも大きい第二の基準値以上であるときにはスロットル開度制御手段により制御されるスロットル開度の低減に加えてエンジン出力低減手段によりエンジンの出力が低減されるので、車両の駆動力の低減の必要度合が第二の基準値以上であり非常に高い状況に於いてのみエンジン出力低減手段によるエンジン出力の低減を行わせることができる。
また上記請求項1の構成によれば、前記必要度合が第二の基準値以上であっても回転振動状態判定手段により駆動輪の回転振動状態を悪化させる虞れがあると判定されているときにはエンジン出力低減手段によるエンジンの出力の低減が禁止されるので、エンジン出力低減手段によるエンジン出力の低減により駆動輪の回転振動状態を悪化させる虞れがあるときにエンジン出力低減手段によるエンジン出力の低減が行われることを確実に防止することができる。
従って車両の駆動力の低減の必要度合が第一の基準値以上であるが第二の基準値未満であるときにはエンジン出力低減手段によりエンジン出力が低減されることを防止してエンジンの排気ガスの温度上昇及びこれに起因する排気ガス浄化触媒の劣化を防止することができ、また車両の駆動力の低減の必要度合が第二の基準値以上であり非常に高い状況に於いてはスロットル開度の低減に加えてエンジン出力低減手段によりエンジン出力を低減することにより、エンジンの出力を確実に且つ効果的に低下させることができ、これにより車両の駆動力を確実に且つ効果的に低下させることができ、更にはエンジン出力低減手段によるエンジン出力の低減に起因して駆動輪の回転振動状態が悪化することを確実に防止することができる。
尚、車両の駆動力の低減の必要度合が第二の基準値以上であるときにはスロットル開度の低減及びエンジン出力低減手段によるエンジン出力の低減の両者によりエンジン出力が低下され、これにより車両の駆動力が効率的に低下されるので、駆動力の低減の必要度合が速やかに低下し、従ってエンジン出力低減手段によるエンジン出力の低減が実行される時間が過剰に長くなることはない。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記回転振動状態判定手段は前記駆動輪の回転振動を検出する手段を含み、前記駆動輪の回転振動の度合が回転振動判定の基準値以上であるときに前記駆動輪の回転振動状態を悪化させる虞れがあると判定するよう構成される(請求項2の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記回転振動状態判定手段は左右の駆動輪に対応する路面の摩擦係数を検出する手段を含み、前記左右の駆動輪に対応する路面の摩擦係数の差がまたぎ路判定の基準値以上であるときに前記駆動輪の回転振動状態を悪化させる虞れがあると判定するよう構成される(請求項3の構成)。
エンジン出力低減手段によりエンジンの出力を低下させる場合に駆動輪の回転振動状態が悪化するのは、駆動輪に既にある程度の回転振動が発生している場合や左右の車輪に対応する路面の摩擦係数の差が大きい状況に於いて顕著であるので、駆動輪に既にある程度の回転振動が発生しているか否かの判定や左右の車輪に対応する路面の摩擦係数の差が大きいか否かの判定により、駆動輪の回転振動状態を悪化させる虞れがあるか否かを判定することができる。
上記請求項2の構成によれば、駆動輪の回転振動の度合が回転振動判定の基準値以上であるときに駆動輪の回転振動状態を悪化させる虞れがあると判定され、上記請求項3の構成によれば、左右の駆動輪に対応する路面の摩擦係数の差がまたぎ路判定の基準値以上であるときに駆動輪の回転振動状態を悪化させる虞れがあると判定されるので、エンジン出力低減手段によってエンジンの出力を低下させることにより駆動輪の回転振動状態が悪化するか否かを確実に判定することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至3の何れかの構成に於いて、前記駆動力制御装置は運転者の駆動操作量及び車両の走行状態に基づいて車両の目標駆動力を演算する手段を有し、前記駆動力低減制御手段は前記必要度合が前記第一の基準値以上になる前後に演算された二つの目標駆動力に基づいて、前記二つの目標駆動力の間の低下変化よりも穏やかに低下変化する前記スロットル開度制御手段の制御による目標駆動力と、前記二つの目標駆動力の間の低下変化よりも穏やかに低下変化し且つ前記スロットル開度制御手段の制御による目標駆動力の低下変化よりも速やかに低下変化する前記スロットル開度制御手段及び前記エンジン出力低減手段の制御による目標駆動力とを演算し、前記必要度合が前記第二の基準値以上であり且つ前記スロットル開度制御手段の制御による目標駆動力と前記スロットル開度制御手段及び前記エンジン出力低減手段の制御による目標駆動力との偏差が偏差判定基準値以上であるときに、前記エンジン出力低減手段により前記エンジンの出力を低減するよう構成されており、前記禁止手段は前記必要度合が前記第二の基準値以上であり且つ前記スロットル開度制御手段の制御による目標駆動力と前記スロットル開度制御手段及び前記エンジン出力低減手段の制御による目標駆動力との偏差が前記偏差判定基準値以上であっても、前記回転振動状態判定手段により前記駆動輪の回転振動状態を悪化させる虞れがあると判定されているときには前記エンジン出力低減手段による前記エンジンの出力の低減を禁止するよう構成される(請求項4の構成)。
上記請求項4の構成によれば、車両の駆動力の低減の必要度合が第一の基準値以上になる前後に演算された二つの目標駆動力の間の低下変化よりも穏やかに低下変化するスロットル開度制御手段の制御による目標駆動力と、二つの目標駆動力の間の低下変化よりも穏やかに低下変化し且つスロットル開度制御手段の制御による目標駆動力の低下変化よりも速やかに低下変化するスロットル開度制御手段及びエンジン出力低減手段の制御による目標駆動力とが演算され、前記必要度合が第二の基準値以上であり且つスロットル開度制御手段の制御による目標駆動力とスロットル開度制御手段及びエンジン出力低減手段の制御による目標駆動力との偏差が偏差判定基準値以上であるときに、エンジン出力低減手段によりエンジンの出力が低減される。
従って車両の目標駆動力の低下量が大きく、必要度合が第二の基準値以上であり且つ前記二つの目標駆動力の偏差が偏差判定基準値以上であるときには、スロットル開度の低減及びエンジン出力低減手段によるエンジン出力の低減によってエンジンの出力を確実に且つ効果的に低下させることができ、また必要度合が第二の基準値以上であるが前記二つの目標駆動力の偏差が偏差判定基準値未満であるときには、エンジン出力低減手段によるエンジン出力の低減が行われることを防止してスロットル開度の低減によるエンジン出力の低下のみを行い、これによりエンジン出力低減手段によるエンジン出力の低減に起因するエンジンの排気ガスの温度上昇及びこれに起因する排気ガス浄化触媒の劣化を確実に防止することができる。
また上記請求項4の構成によれば、必要度合が第二の基準値以上であり且つスロットル開度制御手段の制御による目標駆動力とスロットル開度制御手段及びエンジン出力低減手段の制御による目標駆動力との偏差が偏差判定基準値以上であっても、回転振動状態判定手段により駆動輪の回転振動状態を悪化させる虞れがあると判定されているときにはエンジン出力低減手段によるエンジンの出力の低減が禁止されるので、エンジン出力低減手段によるエンジンの出力の低減が必要であっても、駆動輪の回転振動状態を悪化させる虞れがあるときには、エンジン出力低減手段によりエンジンの出力が低減されること及びこれに起因して駆動輪の回転振動状態が悪化することを確実に防止することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項4の構成に於いて、前記偏差判定基準値は前記エンジンの回転数が低いときには前記エンジンの回転数が高いときに比して小さくなるよう、前記エンジンの回転数に応じて可変設定されるよう構成される(請求項5の構成)。
エンジンの回転数が低いときにはエンジンの回転数が高いときに比してエンジン内に於ける空気や混合ガス等の流速が低くなり、これに起因してスロットル開度が低減されることによるエンジン出力の低下速度が低くなるので、エンジン出力を効果的に低下させるためには、エンジンの回転数が低いときにはエンジンの回転数が高いときに比してエンジン出力低減手段によるエンジン出力の低減の必要性が高い。
上記請求項5の構成によれば、偏差判定基準値はエンジンの回転数が低いときにはエンジンの回転数が高いときに比して小さくなるよう、エンジンの回転数に応じて可変設定されるので、エンジンの回転数が低いときにはエンジンの回転数が高いときに比して前記二つの目標駆動力の偏差が偏差判定基準値以上であると判定され易くすることができ、これによりエンジン出力低減手段によるエンジン出力の低減を行わせ易くすることができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項4の構成に於いて、前記スロットル開度制御手段の制御による目標駆動力の低下変化の勾配は前記エンジンの回転数が低いときには前記エンジンの回転数が高いときに比して小さくなるよう、前記エンジンの回転数に応じて可変設定されるよう構成される(請求項6の構成)。
上記請求項6の構成によれば、スロットル開度制御手段の制御による目標駆動力の低下変化の勾配はエンジンの回転数が低いときにはエンジンの回転数が高いときに比して小さくなるよう、エンジンの回転数に応じて可変設定されるので、エンジンの回転数が低いときにはエンジンの回転数が高いときに比して前記二つの目標駆動力の偏差を大きくして前記二つの目標駆動力の偏差が偏差判定基準値以上になり易くすることができ、これによりエンジン出力低減手段によるエンジン出力の低減を行わせ易くすることができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項4乃至6の何れかの構成に於いて、前記必要度合が前記第一の基準値以上であるときには、前記スロットル開度制御手段は前記スロットル開度制御手段の制御による目標駆動力に基づいてスロットル開度を制御するよう構成される(請求項7の構成)。
上記請求項7の構成によれば、スロットル開度制御手段の制御による目標駆動力に基づいてスロットル開度が制御されるので、スロットル開度制御手段の制御による目標駆動力の低下変化に対応するようスロットル開度を低減制御することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2乃至7の何れかの構成に於いて、前記必要度合が前記第二の基準値以上であるときには、前記エンジン出力低減手段は前記スロットル開度制御手段の制御による目標駆動力と前記スロットル開度制御手段及び前記エンジン出力低減手段の制御による目標駆動力との偏差に基づいて前記エンジンの出力を低減するよう構成される(請求項8の構成)。
上記請求項8の構成によれば、スロットル開度制御手段の制御による目標駆動力とスロットル開度制御手段及びエンジン出力低減手段の制御による目標駆動力との偏差に基づいてエンジンの出力が低減されるので、スロットル制御手段の制御による目標駆動力の低下変化に対応するようスロットル開度を低減制御することができると共に、エンジン出力低減手段の制御による目標駆動力の低下変化に対応するようエンジン出力低減手段によりエンジン出力を低減することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至3の何れかの構成に於いて、前記駆動力低減制御手段は前記必要度合が前記第二の基準値以上であり且つ前記エンジンの回転数がエンジン回転数判定基準値以下であるときに、前記エンジン出力低減手段により前記エンジンの出力を低減するよう構成されており、前記禁止手段は前記必要度合が前記第二の基準値以上であり且つ前記エンジンの回転数が前記エンジン回転数判定基準値以下であっても、前記回転振動状態判定手段により前記駆動輪の回転振動状態を悪化させる虞れがあると判定されているときには前記エンジン出力低減手段による前記エンジンの出力の低減を禁止するよう構成される(請求項9の構成)。
上述の如く、エンジンの回転数が低いときにはエンジンの回転数が高いときに比してエンジン内に於ける空気や混合ガス等の流速が低くなり、これに起因してスロットル開度が低減されることによるエンジン出力の低下速度が低くなるので、エンジン出力を効果的に低下させるためには、エンジンの回転数が低いときにはエンジン出力低減手段によりエンジンの出力が確実に低減されることが好ましいが、駆動輪の回転振動状態を悪化させる虞れがあるときには、エンジンの回転数の如何に関係なく、エンジン出力低減手段によるエンジンの出力の低減が行われないことが好ましい。
上記請求項9の構成によれば、前記必要度合が第二の基準値以上であり且つエンジンの回転数がエンジン回転数判定基準値以下であるときに、エンジン出力低減手段によりエンジンの出力が低減されるので、エンジンの回転数が低いときにはエンジン出力低減手段によりエンジン出力を確実に低下させることができる。また必要度合が第二の基準値以上である状況に於いてエンジンの回転数がエンジン回転数判定基準値以下であれば、即座にエンジン出力低減手段によるエンジン出力の低減が開始されるので、上述の請求項4乃至8の構成の場合に比して早期にエンジン出力低減手段によるエンジン出力の低減を開始させることができ、これにより車両の駆動力を早期に低下させることができる。
上記請求項9の構成によれば、必要度合が第二の基準値以上であり且つエンジンの回転数がエンジン回転数判定基準値以下であっても、駆動輪の回転振動状態を悪化させる虞れがあると判定されているときにはエンジン出力低減手段によるエンジンの出力の低減が禁止されるので、上述の請求項4の構成の場合と同様、エンジン出力低減手段によるエンジンの出力の低減が必要であっても、駆動輪の回転振動状態を悪化させる虞れがあるときには、エンジン出力低減手段によりエンジンの出力が低減されること及びこれに起因して駆動輪の回転振動状態が悪化することを確実に防止することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項9の構成に於いて、前記駆動力制御装置は運転者の駆動操作量及び車両の走行状態に基づいて車両の目標駆動力を演算する手段を有し、前記駆動力低減制御手段は前記必要度合が前記第一の基準値以上になる前後に演算された二つの目標駆動力の差を基準目標駆動力差として、前記エンジン回転数判定基準値は前記基準目標駆動力差が大きいときには前記基準目標駆動力差が小さいときに比して大きくなるよう、前記基準目標駆動力差に応じて可変設定されるよう構成される(請求項10の構成)。
基準目標駆動力差が大きいときには基準目標駆動力差が小さいときに比して実際に低下されなければならない車両の駆動力の低下量も大きいので、エンジン出力の低下速度が高いことが好ましく、従って基準目標駆動力差が大きいときには基準目標駆動力差が小さいときに比してエンジン出力低減手段によるエンジン出力の低減の必要性が高い。
上記請求項10の構成によれば、エンジン回転数判定基準値は基準目標駆動力差が大きいときには基準目標駆動力差が小さいときに比して大きくなるよう、基準目標駆動力差に応じて可変設定されるので、基準目標駆動力差が大きいときには基準目標駆動力差が小さいときに比してエンジンの回転数がエンジン回転数判定基準値以下になり易くすることができ、これによりエンジン出力低減手段によるエンジン出力の低下を行わせ易くすることができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至10の何れかの構成に於いて、前記第二の基準値は路面の摩擦性状、車両の横加速度、車速の少なくとも何れかに基づいて可変設定されるよう構成される(請求項11の構成)。
上記請求項11の構成によれば、第二の基準値は路面の摩擦性状、車両の横加速度、車速の少なくとも何れかに基づいて可変設定されるので、第二の基準値が一定である場合に比して、車両の走行状態に応じて点火時期の遅角によるエンジン出力を低下を適確に行うことができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至11の何れかの構成に於いて、前記第二の基準値は前記エンジンの回転数が低いときには前記エンジンの回転数が高いときに比して小さくなるよう、前記エンジンの回転数に応じて可変設定されるよう構成される(請求項12の構成)。
上記請求項12の構成によれば、第二の基準値はエンジンの回転数が低いときにはエンジンの回転数が高いときに比して小さくなるよう、エンジンの回転数に応じて可変設定されるので、エンジンの回転数が低いときにはエンジンの回転数が高いときに比して前記必要度合が第二の基準値以上であると判定され易くすることができ、これによりエンジン出力低減手段によるエンジン出力の低減を行わせ易くすることができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至12の何れかの構成に於いて、前記駆動力低減制御手段は車両の走行運動状態に基づく車両の目標駆動力の低減要求量、駆動輪の駆動スリップの程度、路面の摩擦係数の少なくとも何れかに基づいて前記必要度合を判定するよう構成される(請求項13の構成)。
上記請求項13の構成によれば、車両の走行運動状態に基づく車両の目標駆動力の低減要求量、駆動輪の駆動スリップの程度、路面の摩擦係数の少なくとも何れかに基づいて車両の駆動力の低減の必要度合が判定されるので、駆動輪の駆動スリップの低減や車両の安定的な走行運動の確保が適正に達成されるよう車両の目標駆動力を過不足なく低減することができる。
〔課題解決手段の好ましい態様〕
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至13の何れかの構成に於いて、禁止手段は必要度合が第二の基準値以上であっても回転振動状態判定手段により少なくとも何れかの駆動輪の回転振動状態を悪化させる虞れがあると判定されているときにはエンジン出力低減手段によるエンジンの出力の低減を禁止するよう構成される(好ましい態様1)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項2又は4乃至13又は上記好ましい態様1の何れかの構成に於いて、駆動輪の回転振動を検出する手段は駆動輪の車輪速度を検出する手段を含み、駆動輪の車輪速度の周期的変動に基づいて駆動輪の回転振動を検出するよう構成される(好ましい態様2)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項3乃至13の何れかの構成に於いて、またぎ路判定の基準値は左右の駆動輪に対応する路面の摩擦係数のうち低い方の摩擦係数が低いときには前記低い方の摩擦係数が高いときに比して小さくなるよう、前記低い方の摩擦係数に応じて可変設定されるよう構成される(好ましい態様3)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項4乃至8の何れかの構成に於いて、駆動力低減制御手段は必要度合が第一の基準値以上になる前後に演算された二つの目標駆動力の間に於ける目標駆動力の低下変化に対し第一の時定数にてフィルタ処理の演算を行うことによりスロットル制御手段の制御による目標駆動力を演算すると共に、二つの目標駆動力の間に於ける目標駆動力の低下変化に対し第一の時定数よりも大きい第二の時定数にてフィルタ処理の演算を行うことによりスロットル制御手段及びエンジン出力低減手段の制御による目標駆動力を演算するよう構成される(好ましい態様4)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項9又は10の構成に於いて、駆動力制御装置は運転者の駆動操作量及び車両の走行状態に基づいて車両の目標駆動力を演算する手段を有し、駆動力低減制御手段は必要度合が第一の基準値以上になる前後に演算された二つの目標駆動力に基づいて、二つの目標駆動力の間の低下変化よりも穏やかに低下変化するスロットル制御手段の制御による目標駆動力と、二つの目標駆動力の間の低下変化よりも穏やかに低下変化し且つスロットル制御手段の制御による目標駆動力の低下変化よりも速やかに低下変化するスロットル制御手段及びエンジン出力低減手段の制御による目標駆動力とを演算し、必要度合が前記第一の基準値以上であるときには、スロットル開度制御手段はスロットル制御手段の制御による目標駆動力に基づいてスロットル開度を制御するよう構成される(好ましい態様5)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様5の構成に於いて、必要度合が第二の基準値以上であるときには、点火時期制御手段はスロットル制御手段の制御による目標駆動力とスロットル制御手段及びエンジン出力低減手段の制御による目標駆動力との偏差に基づいてエンジンの出力を低減するよう構成される(好ましい態様6)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項4乃至8又は上記好ましい態様5又は6の何れかの構成に於いて、エンジン出力低減手段は点火時期制御手段であり、駆動力低減制御手段は前記必要度合が第一の基準値以上になる前後に演算された二つの目標駆動力に基づいて、前記二つの目標駆動力の間の低下変化よりも穏やかに低下変化するスロットル開度制御手段の制御による目標駆動力と、前記二つの目標駆動力の間の低下変化よりも穏やかに低下変化し且つスロットル開度制御手段の制御による目標駆動力の低下変化よりも速やかに低下変化するスロットル開度制御手段及び点火時期制御手段の制御による目標駆動力とを演算し、前記必要度合が第二の基準値以上であり且つスロットル開度制御手段の制御による目標駆動力とスロットル開度制御手段及び点火時期制御手段の制御による目標駆動力との偏差が偏差判定基準値以上であるときに、点火時期制御手段により制御される点火時期を遅角させるよう構成される(好ましい態様7)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様7の構成に於いて、前記必要度合が第二の基準値以上であるときには、点火時期制御手段はスロットル開度制御手段の制御による目標駆動力とスロットル開度制御手段及び点火時期制御手段の制御による目標駆動力との偏差に基づいて点火時期を遅角補正するよう構成される(好ましい態様8)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項4乃至8又は上記好ましい態様5又は6の何れかの構成に於いて、エンジン出力低減手段は燃料供給量低減手段であり、駆動力低減制御手段は前記必要度合が第一の基準値以上になる前後に演算された二つの目標駆動力に基づいて、前記二つの目標駆動力の間の低下変化よりも穏やかに低下変化するスロットル開度制御手段の制御による目標駆動力と、前記二つの目標駆動力の間の低下変化よりも穏やかに低下変化し且つスロットル開度制御手段の制御による目標駆動力の低下変化よりも速やかに低下変化するスロットル開度制御手段及び燃料供給量低減手段の制御による目標駆動力とを演算し、前記必要度合が第二の基準値以上であり且つスロットル開度制御手段の制御による目標駆動力とスロットル開度制御手段及び燃料供給量低減手段の制御による目標駆動力との偏差が偏差判定基準値以上であるときに、燃料供給量低減手段によりエンジンへの燃料供給量を低減するよう構成される(好ましい態様9)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様9の構成に於いて、前記必要度合が第二の基準値以上であるときには、燃料供給量低減手段はスロットル開度制御手段の制御による目標駆動力とスロットル開度制御手段及び燃料供給量低減手段の制御による目標駆動力との偏差に基づいてエンジンへの燃料供給量を低減するよう構成される(好ましい態様10)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項11乃至13又は上記好ましい態様1乃至10の何れかの構成に於いて、第二の基準値は路面の摩擦係数が低いときには路面の摩擦係数が高いときに比して小さくなるよう、路面の摩擦係数に応じて可変設定されるよう構成される(好ましい態様11)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項11乃至13又は上記好ましい態様1乃至11の何れかの構成に於いて、第二の基準値は車両の横加速度の大きさが大きいときには車両の横加速度の大きさが小さいときに比して小さくなるよう、車両の横加速度の大きさに応じて可変設定されるよう構成される(好ましい態様12)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項11乃至13又は上記好ましい態様1乃至12の何れかの構成に於いて、第二の基準値は車速が高いときには車速が低いときに比して小さくなるよう、車速に応じて可変設定されるよう構成される(好ましい態様13)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項13又は上記好ましい態様1乃至13の何れかの構成に於いて、車両は車両若しくは車輪の制駆動力の制御により車両の走行運動を安定化させる走行運動制御装置を有し、走行運動制御装置による車両若しくは車輪の制駆動力の制御に伴う車両の目標駆動力の低減要求量に基づいて車両の駆動力の低減の必要度合を判定するよう構成される(好ましい態様14)。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施例について詳細に説明する。
[第一の実施例]
図1は後輪駆動車に適用された本発明による車両の駆動力制御装置の第一の実施例を示す概略構成図(A)及び制御系のブロック線図(B)である。
図1に於いて、駆動力制御装置10は車両12に搭載され、車両及び車輪の制駆動力を制御することにより車両の走行運動を制御する制駆動力制御装置14と、火花点火式エンジン16を制御するエンジン制御装置18とを有している。エンジン16の駆動力はトルクコンバータ20及びトランスミッション22を含む自動変速機24を介してプロペラシャフト26へ伝達される。プロペラシャフト26の駆動力はディファレンシャル28により左後輪車軸30L及び右後輪車軸30Rへ伝達され、これにより駆動輪である左右の後輪32RL及び32RRが回転駆動される。
一方左右の前輪32FL及び32FRは従動輪であると共に操舵輪であり、図1には示されていないが運転者によるステアリングホイールの操舵操作に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン式のパワーステアリング装置によりタイロッドを介して周知の要領にて操舵される。
エンジン16の吸入空気量は吸気通路34に設けられたスロットルバルブ36により制御され、スロットルバルブ36は電動機を含むスロットルアクチュエータ38により駆動される。スロットルバルブ36の開度、即ちスロットル開度はアクセルポジションセンサ40により検出されるアクセルペダル42の踏み込み量に応じてエンジン制御装置18によりスロットルアクチュエータ38を介して制御される。またエンジン16の吸気通路34の各気筒の給気ポートにはガソリンの如き燃料を噴射するインジェクタ44が設けられており、インジェクタ44による燃料噴射量、即ちエンジン16への燃料供給量は図1には示されていないエアフローメータにより検出される吸入空気量Raに応じてエンジン制御装置18により制御され、これによりエンジンの出力が増減制御される。
周知の如く、インジェクタ44により噴射された燃料は吸入空気と混合され、その混合気が図1には示されていないスパークプラグによって着火されることにより燃焼し、これによりエンジン16の駆動力が発生される。混合気の燃焼により生じた排気ガスは図1には示されていない排気マニホールドより排気管46へ排出され、排気管46に設けられた排気ガス浄化触媒48により浄化された後、図1には示されていないマフラーを経て大気中へ放出される。
エンジン制御装置18にはアクセルポジションセンサ(APセンサ)40よりアクセルペダル42の踏み込み量(アクセル開度Ap)を示す信号、スロットルポジションセンサ(TPセンサ)50よりスロットルバルブ36の開度φを示す信号、エンジン回転数センサ(Neセンサ)52よりエンジン回転数Neを示す信号が入力され、また図には示されていない他のセンサよりエンジンの制御に必要な他の情報を示す信号が入力される。
左右の前輪32FL、32FR及び左右の後輪32RL、32RRの制動力は制動装置54の油圧回路56により対応するホイールシリンダ58FL、58FR、58RL、58RRの制動圧が制御されることによって制御される。図には示されていないが、油圧回路56はリザーバ、オイルポンプ、種々の弁装置等を含み、各ホイールシリンダ内の圧力、即ち各車輪の制動圧は通常時には運転者によるブレーキペダル60の踏み込み操作に応じて駆動されるマスタシリンダ62内の圧力により制御され、また必要に応じて油圧回路56が制御されることによりマスタシリンダ62内の圧力よりも高い圧力に制御される。
図1(B)に示されている如く、制駆動力制御装置14には、横加速度センサ64より車両の横加速度Gyを示す信号、左右の車輪に対応して設けられた摩擦係数センサ66A及び66Bより路面の摩擦係数μA及びμBを示す信号、車輪速度センサ68i(i=FL、FR、RL、RR)より左右の前輪及び左右の後輪の車輪速度Vwi(i=FL、FR、RL、RR)を示す信号が入力される。また制駆動力制御装置14、エンジン制御装置18、自動変速機24の変速段の制御を行う変速制御装置70は必要に応じて相互に必要な信号の授受を行う。
尚制駆動力制御装置14、エンジン制御装置18、変速制御装置70は、実際にはそれぞれCPU、ROM、RAM、入出力ポート装置等を含み、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された周知の構成のマイクロコンピュータと駆動回路と含むものであってよい。また横加速度センサ64は車両の左旋回時を正として車両の横加速度Gyを検出する。
エンジン制御装置18はアクセル開度Ap等に基づき当技術分野に於いて公知の要領にて車両の基本目標駆動力Fxtaを演算し、車両の基本目標駆動力Fxtaを示す信号を制駆動力制御装置14へ出力する。制駆動力制御装置14は車両の走行状態、特に路面の摩擦係数、駆動輪の駆動スリップの状態、車両の走行運動状態に基づいて車両を安定的に走行させるために車両の駆動力を低減する必要があるか否かを判定し、車両の駆動力を低減する必要があると判定したときには、路面の摩擦係数、駆動輪の駆動スリップの状態、車両の走行運動状態に基づいて車両を安定的に走行させるための車両の目標駆動力Fxtを演算し、車両の目標駆動力Fxtを示す信号をエンジン制御装置18へ出力する。これに対し制駆動力制御装置14は車両の駆動力を低減する必要がないと判定したときには、車両の目標駆動力Fxtを基本目標駆動力Fxtaに設定し、車両の目標駆動力Fxtを示す信号をエンジン制御装置18へ出力する。
エンジン制御装置18は車両の目標駆動力Fxtに基づいて自動変速機24の目標変速段St及び目標スロットル開度φtを演算し、目標変速段Stを示す信号を変速制御装置70へ出力する。変速制御装置70は自動変速機24の変速段が目標変速段Stになるよう自動変速機24を制御する。またエンジン制御装置18は図1には示されていないエアフローメータにより検出された吸入空気量Ra及びエンジン回転数Neに基づき点火時期の目標進角度θtを演算する。
特に図示の第一の実施例に於いては、制駆動力制御装置14は車輪速度センサ68iにより検出される各車輪の車輪速度Vwiに基づき当技術分野に於いて公知の要領にて車体速度(車速)Vbを演算すると共に、左右後輪の車輪速度及び車体速度Vbに基づいて左右後輪の駆動スリップ量SArl、SArrを演算し、左右後輪の駆動スリップ量SArl、SArrの平均値SAaを車両の駆動力の低減の必要度合を示す指標値として演算する。
そして制駆動力制御装置14は、指標値SAaが第一の基準値SAa1(正の定数)以上であるか否かを判定し、指標値SAaが第一の基準値SAa1未満であるときには、スロットル開度低減要求フラグFthを0にセットし、スロットル開度低減要求フラグFthが0であることを示す信号をエンジン制御装置18へ出力する。
また制駆動力制御装置14は、指標値SAaが第一の基準値SAa1未満より第一の基準値SAa1以上になったときには、図5に示されている如く、目標駆動力Fxtの低下変化、即ち指標値SAaが第一の基準値SAa1以上になる直前に演算された車両の目標駆動力Fxt(Fxta)より指標値SAaが第一の基準値SAa1以上になった直後に演算された車両の目標駆動力Fxt(Fxtb)への低下変化よりも穏やかに低下変化する値として、例えば目標駆動力Fxtのフィルタ処理演算によりスロットル開度の低減制御による目標駆動力Fxt1を演算すると共に、目標駆動力Fxtの低下変化よりも穏やかに且つ目標駆動力Fxt1よりも速やかに低下変化する値として、例えば目標駆動力Fxtのフィルタ処理演算によりスロットル開度の低減制御及び点火時期の遅角制御による目標駆動力Fxt2を演算する。
この場合スロットル開度の低減制御による目標駆動力Fxt1を演算する際のフィルタ処理の時定数は、スロットルバルブ36の開度の低減による車両の駆動力の低下変化の応答性に応じて設定され、これによりスロットル開度の低減制御による目標駆動力Fxt1は、その低下変化がエンジン回転数Neが車両走行時の一般的な値であるときのスロットルバルブ36の開度の低減により達成される車両の駆動力の低下変化に対応するよう演算される。同様にスロットル開度の低減制御及び点火時期の遅角制御による目標駆動力Fxt2を演算する際のフィルタ処理の時定数は、スロットル開度の低減制御及び点火時期の遅角制御による車両の駆動力の低下変化の応答性に応じて設定され、これによりスロットル開度の低減制御及び点火時期の遅角制御による目標駆動力Fxt2は、その低下変化がエンジン回転数Neが車両走行時の一般的な値であるときのスロットル開度の低減制御及び点火時期の遅角制御により達成される車両の駆動力の低下変化に対応するよう演算される。
また制駆動力制御装置14は、指標値SAaが第一の基準値SAa1以上であるときには、スロットル開度の制御による目標駆動力Fxt1に基づいて目標スロットル開度φtbを演算すると共に、スロットル開度低減要求フラグFthを1にセットし、目標スロットル開度φtb及びスロットル開度低減要求フラグFthが1であることを示す信号をエンジン制御装置18へ出力する。
エンジン制御装置18は、制駆動力制御装置14よりスロットル開度低減要求フラグFthが0であることを示す信号を受信しているときには、スロットルバルブ36の開度が目標スロットル開度φtになるようスロットルアクチュエータ38を制御する。これに対しエンジン制御装置18は、制駆動力制御装置14より目標スロットル開度φtbを示す信号及びスロットル開度低減要求フラグFthが1であることを示す信号を受信しているときには、スロットルバルブ36の開度が目標スロットル開度φtbになるようスロットルアクチュエータ38を制御し、これによりエンジン16の出力を低減する。
また制駆動力制御装置14は、指標値SAaが第一の基準値SAa1よりも大きい第二の基準値SAa2(正の値)以上であるときには、スロットル開度の低減制御による目標駆動力Fxt1とスロットル開度の低減制御及び点火時期の遅角制御による目標駆動力Fxt2との偏差ΔFxt(=Fxt1−Fxt2)が偏差判定基準値Fxt3(正の定数)以上であるか否かを判定する。
また制駆動力制御装置14は、目標駆動力の偏差ΔFxtが偏差判定基準値Fxt3以上であると判定したときには、駆動輪である左右の後輪の車輪速度VwRL、VwRRに基づいて左右の後輪32RL及び32RRの回転振動の振幅AwRL、AwRRを演算し、振幅AwRL、AwRRが回転振動判定の基準値Awo(正の定数)以上であるか否かを判定する。
また制駆動力制御装置14は、振幅AwRL及びAwRRの何れも回転振動判定の基準値Awo未満であると判定したときには、路面の摩擦係数μA及びμBの差Δμを演算し、差Δμの絶対値がまたぎ路判定の基準値Δμo(正の定数)以上であるか否かを判定する。
そして制駆動力制御装置14は、目標駆動力の偏差ΔFxtが偏差判定基準値Fxt3以上でり且つ左右後輪の回転振動の振幅AwRL及びAwRRの何れも回転振動判定の基準値Awo未満であり且つ路面の摩擦係数μA及びμBの差Δμの絶対値がまたぎ路判定の基準値Δμo以下であるときには、目標駆動力の偏差ΔFxtに基づいて点火時期の遅角補正量θtbを演算すると共に、点火時期の遅角要求フラグFigを1にセットし、点火時期の遅角補正量θtb及び点火時期の遅角要求フラグFigが1であることを示す信号をエンジン制御装置18へ出力する。
これに対し制駆動力制御装置14は、指標値SAaが第一の基準値SAa1以上であるが第二の基準値SAa2未満であるとき、指標値SAaが第二の基準値SAa2以上であるが目標駆動力の偏差ΔFxtが偏差判定基準値Fxt3未満であるとき、指標値SAaが第二の基準値SAa2以上であり且つ目標駆動力の偏差ΔFxtが偏差判定基準値Fxt3以上であるが、左右後輪の回転振動の振幅AwRL及びAwRRの何れかが回転振動判定の基準値Awo以上であるか、路面の摩擦係数μA及びμBの差Δμの絶対値がまたぎ路判定の基準値Δμoよりも大きいときには、点火時期の遅角補正量θtbを0にリセットすると共に、点火時期の遅角要求フラグFigを0にリセットし、点火時期の遅角要求フラグFigが0であることを示す信号をエンジン制御装置18へ出力する。
エンジン制御装置18は、制駆動力制御装置14より点火時期の遅角要求フラグFigが0であることを示す信号を受信しているときには、補正前の目標進角度θtに基づきディストリビュータ72を制御することにより、点火時期、即ちディストリビュータ52より図1には示されていない各気筒のスパークプラグに対する着火電流の出力タイミングを制御する。これに対しエンジン制御装置18は、制駆動力制御装置14より点火時期の遅角要求フラグFigが1であることを示す信号を受信しているときには、点火時期の目標進角度θtを遅角補正量θtbだけ遅角側へ補正し、遅角補正後の目標進角度θta(=θt−θtb)に基づきディストリビュータ72を制御し、これにより点火時期を遅角させることによってエンジン16の出力を低減する。
次に図2に示されたフローチャートを参照して第一の実施例に於いて制駆動力制御装置14により達成される車両の目標駆動力演算ルーチンについて説明する。尚図2に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。またこのことは後述の図3及び図4に示されたフローチャートによる制御についても同様である。
まずステップ210に於いては車輪速度センサ68iにより検出された車輪速度Vwiを示す信号等の読み込みが行なわれ、ステップ220に於いては当技術分野に於いて公知の要領にて車両の走行挙動がスピン状態又はドリフトアウト状態の如く悪化しているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ250へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ220に於いて車両の走行挙動を安定化させるために必要な車両の目標駆動力Fxtが当技術分野に於いて公知の要領にて演算される。
ステップ225に於いては左右後輪の車輪速度VwRL、VwRR及び車体速度Vbに基づいて左右後輪の駆動スリップ量SArl、SArrが演算されると共に、左右後輪の駆動スリップ量SArl、SArrの平均値が車両の駆動力の低減の必要度合を示す指標値SAaとして演算される。
ステップ230に於いては指標値SAaが第一の基準値SAa1以上であるか否かの判別、即ちスロットル開度の制御によるエンジン16の出力トルクの低減制御が必要であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ240へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ235に於いて指標値SAaに基づいて左右後輪の駆動スリップを低減するために必要な車両の目標駆動力Fxtが当技術分野に於いて公知の要領にて演算される。
ステップ240に於いては摩擦係数センサ66により検出された路面の摩擦係数μが基準値μo(正の定数)以下であるか否かの判別、即ち左右後輪の駆動スリップが過大になる虞れがあるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ250へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ245に於いて路面の摩擦係数μに基づいて左右後輪の駆動スリップが過大になる虞れを低減するために必要な車両の目標駆動力Fxtが当技術分野に於いて公知の要領にて演算される。
ステップ250に於いては車両の目標駆動力Fxtが車両の基本目標駆動力Fxtaに設定され、ステップ255に於いてはステップ220、235、245、又は250に於いて演算された車両の目標駆動力Fxtがエンジン制御装置18へ出力される。
次に図3に示されたフローチャートを参照して第一の実施例に於いて制駆動力制御装置14により達成される車両の目標駆動力及び点火時期の補正制御ルーチンについて説明する。
まずステップ310に於いては図2に示された車両の目標駆動力演算ルーチンに於いて演算された指標値SAaを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ315に於いては指標値SAaが第一の基準値SAa1以上であるか否かの判別、即ちスロットル開度の制御によるエンジン16の出力トルクの低減制御が必要であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ325へ進み、否定判別が行われたときにはステップ320に於いてスロットル開度低減要求フラグFthが0にリセットされ、しかる後ステップ380へ進む。
ステップ325に於いては指標値SAaが第一の基準値SAa1以上になる直前に演算された車両の目標駆動力Fxtより指標値SAaが第一の基準値SAa1以上になった直後に演算された車両の目標駆動力Fxtまでの車両の目標駆動力Fxtの低下変化よりも穏やかに低下変化する値として、例えば目標駆動力Fxtのフィルタ処理演算によりスロットル開度の低減制御による目標駆動力Fxt1が演算されると共に、目標駆動力Fxtの低下変化よりも穏やかに且つ目標駆動力Fxt1よりも速やかに低下変化する値として、例えば目標駆動力Fxtのフィルタ処理演算により点火時期の遅角制御による目標駆動力Fxt2が演算される。
ステップ335に於いてはスロットル開度低減要求フラグFthが1にセットされると共に、スロットル開度の低減制御による目標駆動力Fxt1及び変速制御装置70より入力される自動変速機24の変速段の情報に基づいて車両の駆動力を目標駆動力Fxt1にするための目標スロットル開度φtbが演算され、ステップ340に於いては車速Vb、車両の横加速度Gy、路面の摩擦係数μ、エンジン回転数Neに基づいて図6に示されたマップより指標値SAaに関する第二の基準値SAa2が演算される。この場合第二の基準値SAa2は、図6に示されている如く、車速Vbが高いほど小さく、車両の横加速度Gyの絶対値が大きいほど小さく、路面の摩擦係数μが低いほど小さく、エンジン回転数Neが低いほど小さくなるよう演算される。
ステップ345に於いては指標値SAaが第二の基準値SAa2以上であるか否かの判別、即ち点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減制御が必要であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ380へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ350へ進む。
ステップ350に於いてはエンジン回転数Neが低いほど偏差判定基準値Fxt3が小さくなるよう、エンジン回転数Neに基づいて図7に示されたマップより偏差判定基準値Fxt3が演算される。
ステップ355に於いてはスロットル開度の制御による目標駆動力Fxt1と点火時期の遅角制御による目標駆動力Fxt2との偏差ΔFxtが偏差判定基準値Fxt3以上であるか否かの判別、即ち点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減制御が許容される状況であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ380へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ370へ進む。
ステップ370に於いては左右の後輪の車輪速度VwRL、VwRRに基づいて左右の後輪32RL及び32RRの回転振動の振幅AwRL及びAwRRが演算されると共に、振幅AwRL及びAwRRの少なくとも一方が回転振動判定の基準値Awo以上であるか否かの判別、即ち駆動輪である左右の後輪の少なくとも一方に回転振動が発生しているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ380へ進み、否定判別が行われたときにはステップ375へ進む。
この場合回転振動の振幅AwRL、AwRRは、当技術分野に於いて公知の任意の要領にて求められてよく、例えば左右の後輪の車輪速度VwRL、VwRRに対しバンドパスフィルタの処理を行うことによって車輪速度VwRL、VwRRの振動成分が抽出され、該振動成分の半周期分の振動波形について車輪速度の最大値と最小値との差が演算されることにより求められてよい。
ステップ375に於いては路面の摩擦係数μA及びμBの差Δμが演算されると共に、差Δμの絶対値がまたぎ路判定の基準値Δμo以上であるか否かの判別、即ち左右の駆動陸に対応する路面の摩擦係数の差が大きく、走行路が所謂またぎ路であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ385へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ380に於いて点火時期の遅角要求フラグFigがオフにリセットされると共に、点火時期の遅角補正量θtbが0に設定され、しかる後ステップ390へ進む。
ステップ385に於いては点火時期の遅角要求フラグFigが1にセットされると共に、点火時期の遅角制御による目標駆動力Fxt2が小さいほど点火時期の遅角補正量θtが大きくなるよう、点火時期の遅角制御による目標駆動力Fxt2に基づいて点火時期の遅角補正量θtが演算され、ステップ390に於いてはスロットル開度低減要求フラグFth、目標スロットル開度φstb、点火時期の遅角要求フラグFig、点火時期の遅角補正量θtを示す信号がエンジン制御装置18へ出力され、しかる後ステップ310へ戻る。
次に図4に示されたフローチャートを参照して第一の実施例に於いてエンジン制御装置18により達成されるスロットル開度及び点火時期の制御ルーチンについて説明する。
まずステップ410に於いては車両の目標駆動力Fxtを示す信号等の読み込みが行なわれ、ステップ415に於いては目標駆動力Fxtに基づいて当技術分野に於いて公知の要領にて自動変速機24の目標変速段Stが演算され、目標変速段Stを示す信号が変速制御装置70へ出力される。
ステップ420に於いては目標駆動力Fxtに基づいて当技術分野に於いて公知の要領にて目標スロットル開度φtが演算され、ステップ425に於いてはエアフローメータにより検出された吸入空気量Ra及びエンジン回転数Neに基づき点火時期の目標進角度θtが演算される。
ステップ430に於いてはスロットル開度低減要求フラグFthが1であるか否かの判別、即ちスロットル開度が低減されるべき状況であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ435に於いてスロットルバルブ36の開度が目標スロットル開度φtになるようスロットルアクチュエータ38が制御され、肯定判別が行われたときにはステップ440に於いてスロットルバルブ36の開度が低減された目標スロットル開度φtbになるようスロットルアクチュエータ38が制御される。
ステップ445に於いては点火時期の遅角要求フラグFigが1であるか否かの判別、即ち点火時期が遅角されるべき状況であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ445に於いて補正前の目標進角度θtに基づきディストリビュータ72が制御され、肯定判別が行われたときにはステップ450に於いて遅角補正後の目標進角度θta(=θt−θtb)に基づきディストリビュータ72が制御される。
かくして図示の第一の実施例によれば、図2に示された車両の目標駆動力演算ルーチンに於いて路面の摩擦係数、駆動輪の駆動スリップの状態、車両の走行運動状態に基づいて車両を安定的に走行させるために車両の駆動力を低減する必要がないと判定されたときには、車両の目標駆動力Fxtがアクセル開度Ap等に基づき演算される基本目標駆動力Fxtaに設定され、路面の摩擦係数、駆動輪の駆動スリップの状態、車両の走行運動状態に基づいて車両を安定的に走行させるために車両の駆動力を低減する必要があると判定されたときには、車両の目標駆動力Fxtが路面の摩擦係数、駆動輪の駆動スリップの状態、車両の走行運動状態に基づいて車両を安定的に走行させるための車両の目標駆動力Fxtが演算される。
また図3に示された車両の目標駆動力及び点火時期の補正制御ルーチンのステップ315に於いて車両の駆動力の低減の必要度合を示す指標値SAa、即ち左右後輪の駆動スリップ量SArl、SArrの平均値が第一の基準値SAa1以上であるか否かの判別により、スロットル開度の制御によるエンジン16の出力トルクの低減制御が必要であるか否かの判別が行われる。
そしてステップ315に於いて肯定判別が行われたときにはステップ330に於いて実際のスロットル開度の低減制御による車両の駆動力の低下の応答性に対応するよう目標駆動力Fxtの低下変化よりも穏やかに低下変化する値としてスロットル開度の低減制御による目標駆動力Fxt1が演算されると共に、実際のスロットル開度の低減制御及び実際の点火時期の遅角制御による車両の駆動力の低下の応答性に対応するよう目標駆動力Fxtの低下変化よりも穏やかに低下変化し且つ目標駆動力Fxt1よりも速やかに低下変化する値としてスロットル開度の低減制御及び点火時期の遅角制御による目標駆動力Fxt2が演算される。
またステップ345に於いて指標値SAaが第二の基準値SAa2以上であるか否かの判別により、点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減制御が必要であるか否かの判別が行われ、ステップ355に於いてスロットル開度の制御による目標駆動力Fxt1と点火時期の遅角制御による目標駆動力Fxt2との偏差ΔFxtが偏差判定基準値Fxt3以上であるか否かの判別が行われることにより、点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減制御が許容される状況であるか否かの判別が行われる。
更にステップ370に於いて左右の後輪の車輪速度VwRL、VwRRに基づいて左右の後輪の少なくとも一方に回転振動が発生しているか否かの判別が行われ、ステップ375に於いて走行路が所謂またぎ路であるか否かの判別が行われることにより、左右後輪の回転振動状態の悪化を防止するために点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減が禁止されるべき状況であるか否かの判別が行われる。
そしてステップ330、345、355に於いて肯定判別が行われ且つステップ370及び375に於いて否定判別が行われた場合には、ステップ335、385及び図4に示されたスロットル開度及び点火時期の制御ルーチンのステップ440及び450によりスロットル開度の低減制御によるエンジン16の出力トルクの低減制御及び点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減制御が実行される。
これに対しステップ330に於いて肯定判別が行われてもステップ345又は355に於いて否定判別が行われた場合や、ステップ330、345、355に於いて肯定判別が行われてもステップ370又は375に於いて肯定判別が行われた場合には、ステップ380及び図4に示されたスロットル開度及び点火時期の制御ルーチンのステップ440及び455によりスロットル開度の制御によるエンジン16の出力トルクの低減制御のみが実行され、点火時期は遅角されることなく通常通り制御される。
従ってこの第一の実施例によれば、指標値SAaが大きく、エンジン16の出力トルクの低減の必要度合が非常に高く、点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減が行われても左右後輪の回転振動状態の悪化を来たす虞れがない状況に於いてのみ、スロットル開度の低減制御によるエンジン16の出力トルクの低減制御に加えて点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減制御を行うことができ、よって車両の駆動力の低減が必要であるがその必要度合が非常に高くはない状況に於いては点火時期が遅角されることを防止してエンジンの排気ガスの温度上昇及びこれに起因する排気ガス浄化触媒48の劣化を防止することができ、また車両の駆動力の低減の必要度合が非常に高い状況に於いてはスロットル開度を低減すると共に点火時期を遅角させることによりエンジンの出力を確実に且つ効果的に低下させて車両の駆動力を確実に且つ効果的に低下させることができる。
またエンジン16の出力トルクの低減の必要度合が非常に高くても、点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減が行われると左右後輪の回転振動状態が悪化する虞れがあるときには、点火時期が遅角されることを防止し、これにより点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減によって左右後輪の回転振動状態が悪化されることを確実に防止することができる。
例えば指標値SAaが増減することにより、図8に示されている如く、ステップ315の判別が時点t1に於いて肯定判別になり、時点t10に於いて否定判別になり、ステップ345の判別が時点t1よりも後の時点t2に於いて肯定判別になり、時点t10よりも前の時点t6に於いて否定判別になったとする。またステップ355の判別が時点t2よりも後の時点t3に於いて肯定判別になり、時点t6よりも前の時点t4及びt5に於いてそれぞれ否定判別及び肯定判別になり、時点t6よりも後の時点t7に於いて否定判別になり、更に時点t10よりも前の時点t8及びt9に於いてそれぞれ肯定判別及び否定判別になったとする。
この状況に於いては、ステップ370又は375に於いて肯定判別が行われることにより点火時期の遅角が禁止されない限り、時点t1より時点t10までスロットル開度低減要求フラグFthが1になり、時点t3より時点t4まで及び時点t5より時点t6まで点火時期の遅角要求フラグFigが1になる。よって時点t1より時点t10までスロットル開度が低減されるが、点火時期が遅角されるのは時点t3より時点t4まで及び時点t5より時点t6までの時間である。
一般に、エンジン回転数Neが低いときにはエンジン回転数Neが高いときに比して、エンジン16内に於ける空気や混合ガス等の流速が低くなり、これに起因してスロットル開度が低減されることによるエンジン出力の低下速度が低くなるので、エンジン出力を効果的に低下させるためには、エンジン回転数Neが低いときにはエンジン回転数Neが高いときに比して点火時期が遅角される必要性が高い。
特に図示の第一の実施例によれば、ステップ350に於いて図7に示されたマップに基づいてエンジン回転数Neが低いほど偏差判定基準値Fxt3が小さくなるよう、エンジン回転数Neに応じて偏差判定基準値Fxt3が可変設定されるので、エンジン回転数Neが低いときにはエンジン回転数Neが高いときに比して目標駆動力の偏差ΔFxtが偏差判定基準値Fxt3以上であると判定され易くすることができ、従ってエンジン回転数Neが低く、スロットル開度が低減されることによるエンジン出力の低下速度が低い状況に於いても、点火時期の遅角によりエンジン出力を効果的に低下させ、これにより車両の駆動力を効果的に低下させることができる。
[第二の実施例]
図9は本発明による車両の駆動力制御装置の第二の実施例に於いて制駆動力制御装置14により達成される車両の目標駆動力及び点火時期の補正制御ルーチンを示すフローチャートである。尚図9に於いて図3に示されたステップと同一のステップには図3に於いて付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
この実施例に於いては、車両の目標駆動力演算ルーチン及びスロットル開度及び点火時期の制御ルーチンの各ステップは上述の第一の実施例の場合と同様に実行される。またこの実施例の車両の目標駆動力及び点火時期の補正制御ルーチンのステップ310乃至320、ステップ335乃至345、ステップ355乃至390も上述の第一の実施例の場合と同様に実行されるが、上述の第一の実施例に於けるステップ350に対応するステップは省略される。
図9に示されている如く、ステップ315に於いて肯定判別が行われると、ステップ330に於いて上述の第一の実施例の場合と同様にスロットル開度の低減制御による目標駆動力Fxt1及び点火時期の遅角制御による目標駆動力Fxt2が演算されるが、図10に示されている如く、エンジン回転数Neが低いほどスロットル開度の低減制御による目標駆動力Fxt1の低下勾配が小さくなるよう、指標値SAaが第一の基準値SAa1以上になった時点に於けるエンジン回転数Neに応じてスロットル開度の低減制御による目標駆動力Fxt1の低下勾配が可変設定される。尚この可変設定はエンジン回転数Neが低いほどスロットル開度の低減制御による車両の駆動力の低下勾配が小さくなることに対応するものである。
かくして図示の第二の実施例によれば、上述の第一の実施例の場合と同様、指標値SAaが大きく、エンジン16の出力トルクの低減の必要度合が非常に高く、点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減が行われても左右後輪の回転振動状態の悪化を来たす虞れがない状況に於いてのみ、スロットル開度の低減制御によるエンジン16の出力トルクの低減制御に加えて点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減制御を行うことができ、よって車両の駆動力の低減が必要であるがその必要度合が非常に高くはない状況に於いては点火時期が遅角されることを防止してエンジンの排気ガスの温度上昇及びこれに起因する排気ガス浄化触媒の劣化を防止することができ、また車両の駆動力の低減の必要度合が非常に高い状況に於いてはスロットル開度を低減すると共に点火時期を遅角させることによりエンジンの出力を確実に且つ効果的に低下させて車両の駆動力を確実に且つ効果的に低下させることができ、更には点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減によって左右後輪の回転振動状態が悪化されることを確実に防止することができる。
またこの第二の実施例によれば、エンジン回転数Neが低いほどスロットル開度の低減制御による目標駆動力Fxt1の低下勾配が小さくなるよう、指標値SAaが第一の基準値SAa1以上になった時点に於けるエンジン回転数Neに応じてスロットル開度の低減制御による目標駆動力Fxt1の低下勾配が可変設定される。従ってエンジン回転数Neが低いほど目標駆動力の偏差ΔFxtが大きくなり、これによりステップ355に於いて肯定判別が行われ易くなるので、上述の第一の実施例の場合と同様、エンジン回転数Neが低く、スロットル開度が低減されることによるエンジン出力の低下速度が低い状況に於いても、点火時期の遅角によりエンジン出力を効果的に低下させ、これにより車両の駆動力を効果的に低下させることができる。
[第三の実施例]
図11は本発明による車両の駆動力制御装置の第三の実施例に於いて制駆動力制御装置14により達成される車両の目標駆動力及び点火時期の補正制御ルーチンを示すフローチャートである。尚図11に於いて図3に示されたステップと同一のステップには図3に於いて付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
この実施例に於いても、車両の目標駆動力演算ルーチン及びスロットル開度及び点火時期の制御ルーチンの各ステップは上述の第一の実施例の場合と同様に実行される。またこの実施例の車両の目標駆動力及び点火時期の補正制御ルーチンのステップ310乃至345及びステップ370乃至390も上述の第一の実施例の場合と同様に実行されるが、上述の第一の実施例に於けるステップ350及び355に代えてそれぞれステップ360及び365が実行される。
ステップ360はステップ345に於いて肯定判別が行われたときに実行され、ステップ360に於いては指標値SAaが第一の基準値SAa1以上になる直前に演算された車両の目標駆動力Fxt(Fxta)と指標値SAaが第一の基準値SAa1以上になった直後に演算された車両の目標駆動力Fxt(Fxtb)との偏差ΔFxtが演算されると共に、目標駆動力の偏差ΔFxtに基づいて図12に示されたマップよりエンジン回転数Neに関する基準値Ne3が演算される。この場合基準値Ne3は、図12に示されている如く、目標駆動力の偏差ΔFxtが大きいほど大きくなるよう演算される。
ステップ365に於いてはエンジン回転数Neが基準値Ne3以下であるか否かの判別、即ち点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減制御が許容される状況であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ370へ進み、否定判別が行われたときにはステップ380へ進む。
かくして図示の第三の実施例によれば、上述の第一及び第二の実施例の場合と同様、指標値SAaが大きく、エンジン16の出力トルクの低減の必要度合が非常に高く、点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減が行われても左右後輪の回転振動状態の悪化を来たす虞れがない状況に於いてのみ、スロットル開度の低減制御によるエンジン16の出力トルクの低減制御に加えて点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減制御を行うことができる。
また図示の第三の実施例によれば、エンジン回転数Neが低く、スロットル開度が低減されることによるエンジン出力の低下速度が低いほど、点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減が行われ易くすることができるので、上述の第一及び第二の実施例の場合と同様、スロットル開度が低減されることによるエンジン出力の低下速度が低い状況に於いても、点火時期の遅角によりエンジン出力を効果的に低下させ、これにより車両の駆動力を効果的に低下させることができる。
また図示の第三の実施例によれば、指標値SAaが第二の基準値SAa2以上で、ステップ315及び345に於いて肯定判別が行われる状況に於いて、エンジン回転数Neが基準値Ne3以下であれば点火時期の遅角が開始されるので、上述の第一及び第二の実施例の場合よりも早期に点火時期の遅角を開始させてエンジン出力の低下及びこれによる車両の駆動力の低下を早期に達成することができる。
例えば図13はエンジン回転数Neが基準値Ne3以下の状況に於いて指標値SAaが図8の場合と同様に変化した場合に於けるフラグFth及びFigの変化の例を示している。図13に示されている如く、この第三の実施例の場合には、ステップ365の判別は時点t2に於いて肯定判別になり、ステップ370又は375に於いて肯定判別が行われることにより点火時期の遅角が禁止されない限り、フラグFigは時点t2に於いて1になるので、時点t3に於いてフラグFigが1になる上述の第一及び第二の実施例の場合よりも早期に点火時期の遅角を開始させことができる。尚図13に於いては点火時期の遅角の終了が図示されていないが、指標値SAaが第二の基準値SAa2未満になった場合又はエンジン回転数Neが基準値Ne3よりも大きくなった場合にフラグFigが0になり、点火時期の遅角が終了する。
特に図示の第三の実施例によれば、エンジン回転数Neに関する基準値Ne3は、図12に示されている如く、目標駆動力の偏差ΔFxtが大きいほど大きくなるよう演算されるので、目標駆動力の偏差ΔFxtが大きく、車両の駆動力の必要低減量が大きいほど点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減が行われ易くすることができ、基準値Ne3が一定の値である場合に比して車両の駆動力の必要低減量に応じて点火時期の遅角制御の実行の要否を適切に判定することができる。
尚、上述の各実施例によれば、ステップ370に於いて左右の後輪の車輪速度VwRL、VwRRに基づいて左右の後輪の少なくとも一方に回転振動が発生しているか否かの判別が行われ、ステップ375に於いて走行路が所謂またぎ路であるか否かの判別が行われることにより、左右後輪の回転振動状態が悪化する虞れがあるか否かの判別が行われるので、ステップ370又は375の一方の判別しか行われない場合に比して、点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減によって左右後輪の回転振動状態が悪化することを確実に且つ効果的に防止することができる。
また上述の各実施例によれば、点火時期の遅角制御によるエンジン16の出力トルクの低減制御は、車両の駆動力の低減制御開始時に限定されたり、その実行時間が車両の駆動力の低減制御開始後の一定の時間に限定されたりすることがないので、スロットル開度の制御及び点火時期の遅角制御によりエンジン16の出力トルクの低減制御が行われた後に再度駆動輪の駆動スリップが過大になっても、スロットル開度の制御及び点火時期の遅角制御によりエンジン16の出力トルクを確実に且つ効果的に低減し、駆動輪の駆動スリップを確実に且つ効果的に低減することができる。
また上述の各実施例に於いては、指標値SAaが第二の基準値SAa2以上であるときにはスロットル開度の低減及び点火時期の遅角の両者によりエンジン出力が低下され、これにより車両の駆動力が効率的に低下されるので、指標値SAaが速やかに低下し、従って点火時期の遅角が過剰に長く継続されることはない。
また上述の各実施例によれば、ステップ340に於いて第二の基準値SAa2は図6に示されている如く、車速Vbが高いほど小さく、車両の横加速度Gyの絶対値が大きいほど小さく、路面の摩擦係数μが低いほど小さくなるよう、車速Vb、車両の横加速度Gy、路面の摩擦係数μに応じて可変設定されるので、第二の基準値SAa2が一定の値である場合に比して、車速Vb、車両の横加速度Gy、路面の摩擦係数μに応じて、換言すれば車両の駆動力が過大であることに起因する車両の走行運動の不安定化の虞れに応じて点火時期の遅角制御の要否を適切に判定することができる。
また上述の各実施例によれば、ステップ340に於いて第二の基準値SAa2は図6に示されている如く、エンジン回転数Neが低いほど小さくなるようエンジン回転数Neに応じて可変設定されるので、エンジン回転数Neの高低に関係なく第二の基準値SAa2が一定の値である場合に比して、エンジン回転数Neが低くスロットル開度の低減によって速やかにエンジン出力を低下させることができない状況に於いても確実に速やかにエンジン出力を低下させることができ、逆にエンジン回転数Neが比較的高くスロットル開度の低減によっても比較的速やかにエンジン出力を低下させることができる状況に於いて、点火時期が不必要に遅角されることを防止することができ、これにより排気ガスの温度上昇及びこれに起因する排気ガス浄化触媒の劣化の虞れを確実に低減することができる。
また上述の各実施例によれば、ステップ325又は330に於いてスロットル開度の低減制御による目標駆動力Fxt1及び点火時期の遅角制御による目標駆動力Fxt2が演算され、スロットル開度が低減される場合にはステップ440に於いてスロットルバルブ36の開度が目標駆動力Fxt1に対応する目標スロットル開度φtbになるよう制御されるので、スロットルバルブ36の開度が過剰に早く低減されたり低減が遅くなり過ぎたりすることを確実に防止することができる。
同様に、点火時期が遅角される場合にはステップ450に於いてスロットル開度の低減制御による目標駆動力Fxt1とスロットル開度の低減制御及び点火時期の遅角制御による目標駆動力Fxt2との偏差ΔFxtに対応する遅角補正量にて遅角補正された点火時期になるよう点火時期が制御されるので、点火時期が過剰に早く遅角されたり遅角が遅くなり過ぎたりすることを確実に防止することができる。
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば上述の各実施例に於いては、若しくはエンジンへの燃料供給量の低減により前記エンジンの出力を低減するエンジン出力低減手段はエンジンの点火時期の遅角によりエンジンの出力を低減するようになっているが、エンジン出力低減手段はエンジンへの燃料供給量の低減によりエンジンの出力を低減するものであってもよく、また点火時期の遅角及び燃料供給量の低減の両者によりエンジンの出力を低減するものであってもよい。
特にエンジン出力低減手段がエンジンへの燃料供給量の低減によりエンジンの出力を低減するものである場合には、上述の各実施例に於ける目標駆動力Fxt2はスロットル開度の低減制御及び燃料供給量の低減制御による目標駆動力として演算され、燃料供給量の低減量は目標駆動力Fxt1と目標駆動力Fxt2との偏差ΔFxtに応じて制御される。
同様に、エンジン出力低減手段が点火時期の遅角及び燃料供給量の低減によりエンジンの出力を低減するものである場合には、上述の各実施例に於ける目標駆動力Fxt2はスロットル開度の低減制御、点火時期の遅角制御、燃料供給量の低減制御による目標駆動力として演算され、点火時期の遅角補正量及び燃料供給量の低減量は目標駆動力Fxt1と目標駆動力Fxt2との偏差ΔFxtに応じて制御される。
また上述の各実施例に於いては、ステップ370に於いて左右の後輪の車輪速度VwRL、VwRRに基づいて左右の後輪の少なくとも一方に回転振動が発生しているか否かの判別が行われ、ステップ375に於いて走行路が所謂またぎ路であるか否かの判別が行われるようになっているが、ステップ370又は375の何れかの判別が省略されてもよい。
また上述の各実施例に於いては、ステップ370に於ける判別の基準値Awo及びステップ375に於ける判別の基準値Δμoは定数であるが、例えば路面の摩擦係数が低いほど点火時期の遅角によるエンジン出力の低減により駆動輪の回転振動が発生され易くなるので、基準値Awoは路面の摩擦係数が低いときには路面の摩擦係数が高いときに比して小さくなるよう、路面の摩擦係数に応じて可変設定されるよう修正されてもよく、基準値Δμoは路面の摩擦係数μA及びμBのうちの低い方の値が低いときには該低い方の値が高いときに比して小さくなるよう、路面の摩擦係数μA及びμBのうちの低い方の値に応じて可変設定されるよう修正されてもよい。
また上述の各実施例に於いては、ステップ215、230、240の判別が行われ、車両の走行挙動が悪化している場合、指標値SAaが第一の基準値SAa1以上である場合、路面の摩擦係数μが基準値μo以下である場合に、左右後輪の駆動スリップが過大になる虞れを低減するために必要な車両の目標駆動力Fxtが演算されるようになっているが、ステップ215、230、240の何れかの判別が省略されてもよく、また車両の駆動力を低減する必要があるか否かの判別は他の車両の走行情報に基づいて判定されるよう修正されてもよい。
また上述の各実施例に於いては、ステップ230の判別の基準値SAa1はステップ315の判別の基準値SAa1と同一であるが、これらの判別の基準値は互いに異なる値であってもよい。またステップ230及び315の判別の基準値SAa1は定数であるが、ステップ230及び315の判別の基準値の少なくとも一方はエンジン回転数Neが低いほど小さくなるようエンジン回転数Neに応じて可変設定されるよう修正されてもよい。
また上述の各実施例に於いては、エンジン制御装置18により演算される基本目標駆動力Fxtとは別に駆動力制御装置14により車両の目標駆動力Fxtが演算され、目標駆動力Fxtに基づいて自動変速機24の目標変速段St及び目標スロットル開度φtが演算されるようになっているが、車両の駆動力を低減する必要がないときには、一般的な車両の場合と同様にアクセル開度Ap等に基づいてスロットル開度φが制御され、スロットル開度φ及び車速に基づいて自動変速機24の変速段が制御されるよう修正されてもよい。
また上述の各実施例に於いては、指標値SAaが第一の基準値SAa1以上であるときには、スロットル開度の低減制御による目標駆動力Fxt1が演算され、目標駆動力Fxt1に基づいて目標スロットル開度φtbが演算され、目標スロットル開度φtbに基づいてスロットル開度φが制御されるようになっているが、スロットル開度φは例えば指標値SAaに基づいて低減補正されるよう修正されてもよい。
同様に、指標値SAaが第二の基準値SAa2以上であるときには、スロットル開度の低減制御及び点火時期の遅角制御による目標駆動力Fxt2も演算され、目標駆動力Fxt1と目標駆動力Fxt2との偏差ΔFxtに基づいて点火時期の遅角補正量θtbが演算され、点火時期の遅角補正量θtbに基づいて点火時期が遅角されるようになっているが、点火時期も例えば指標値SAaに基づいて遅角されるよう修正されてもよい。
また上述の各実施例に於いては、ステップ345の判別に加えてステップ355又は365の判別が行われ、これらの判別結果が肯定判別である場合に点火時期が遅角されるようになっているが、ステップ355又は365の判別が省略され、ステップ345に於いて肯定判別が行われると点火時期が遅角されるよう修正されてもよい。
また上述の各実施例に於いては、ステップ340に於いて車速Vb、車両の横加速度Gy、路面の摩擦係数μに基づいて図6に示されたマップより指標値SAaに関する第二の基準値SAa2が演算されるようになっているが、車速Vb、車両の横加速度Gy、路面の摩擦係数μの何れかのパラメータが省略されてもよく、また第二の基準値SAa2が一定の値に設定されてもよい。
また上述の第一の実施例に於いては、ステップ350に於いてエンジン回転数Neが低いほど偏差判定基準値Fxt3が小さくなるよう、エンジン回転数Neに応じて偏差判定基準値Fxt3が可変設定されるようになっているが、ステップ350が省略され、偏差判定基準値Fxt3が一定の値に設定されてもよい。
同様に、上述の第三の実施例に於いては、ステップ360に於いて目標駆動力の偏差ΔFxtが大きいほど基準値Ne3が大きくなるよう、目標駆動力の偏差ΔFxtに応じて基準値Ne3が可変設定されるようになっているが、ステップ360が省略され、基準値Ne3が一定の値に設定されてもよい。
更に上述の各実施例に於いては、車両は後輪駆動車であるが、本発明が適用される車両は前輪駆動車や四輪駆動車であってもよく、また自動変速機24はトルクコンバータ20を備えた多段式の自動変速機であるが、本発明が適用される車両の変速機は無段変速機であってもよい。
10…駆動力制御装置、14…制駆動力制御装置、18…エンジン制御装置、16…エンジン、24…自動変速機、36…スロットルバルブ、42…アクセルペダル、52…エンジン回転数センサ、54…制動装置、64…横加速度センサ、66A、66B…摩擦係数センサ、68i…車輪速度センサ、70…変速制御装置、