JP2008031543A - ガリウム、インジウムを含有する化合物の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上記原料化合物をアルカリ溶液中で酸化反応させ浸出する。溶解したガリウムと砒素を含有するアルカリ浸出液は引続いて生石灰等のアルカリ土類金属化合物と反応させてアルカリ溶液を再生し、アルカリとガリウムが溶解した液とアルカリ土類金属と砒素の化合物を得る。
アルカリ土類金属と砒素の化合物は付着のアルカリ液を洗浄により除去して 純粋なアルカリ土類金属と砒素の化合物を得て、これを硫酸で溶解反応させて高純度で高濃度化したAs液と石膏等のアルカリ土類金属硫酸塩に分離する。
アルカリとガリウムが溶解した液は極微量の不純物を浄液した後、電解採取によってガリウムを採取し、電解採取後のアルカリ液は最初の工程である浸出においてアルカリ溶液として繰返し使用される。
【選択図】 図1
Description
従来、これらの半導体化合物の再生方法として、ガリウム又はインジウムと砒素又はリンとに分離するには浸出して分離濃縮する方法が一般的であり、イオン交換法、溶媒抽出法、酸−中和−アルカリ法などがある。
一方、溶媒抽出法としては、例えば特開昭61−215214号公報に見られるように、有機溶媒にカルボン酸系又は燐酸系キレート抽出剤を含ませこれを有機相とし、水相のpHを調整し、前記有機相と激しく接触させることにより、水相中のガリウムを選択的に有機相にキレートとして抽出し、次いで鉱酸を用いて水相に逆抽出した後、電解法によりガリウムを回収する方法が知られている。
[問題点1]砒素、リンを同時に処理する必要があるが、砒素とリンの分離は考えられていない
[問題点2]硝酸等の酸浸出であるため酸性液の管理が十分に必要であること、さらにアルカリで中和しなければならず、常に酸とアルカリを消費して、原材料面でコスト高である
[問題点3]ガリウム砒素、ガリウムリンを酸性液中で酸化浸出反応させる場合、作業安全面、環境汚染面からさらに設備投資が必要になってコスト高となる問題がある
[問題点4]酸浸出工程、アルカリ中和工程などを有して工程が長く、且つ固液分離工程(図中においてS/Lで示す。)数が多く、工程面でもコスト高である
というものであった。
回収されるべきガリウムは、市場における有価金属となるためには99質量%(「質量%」を単に「%」で表す。)以上の純度が求められ、このため、電解採取等によりガリウム純度が高められている。しかし、ガリウムの電解採取用の液はアルカリ溶液であることが一般的であることから、電解用の溶液としてはアルカリ溶液であることが当然望まれる。従って、より低コストで、簡便な方法で、アルカリ液によるガリウム溶解液を得るプロセスが望まれていた。
図1のようにガリウム砒素化合物をアルカリ溶液中にて、酸化剤を加えて酸化浸出を行い、アルカリ溶液中にガリウム、砒素を溶解させアルカリ浸出液を得る。このアルカリ浸出液中に残渣がある場合には、固液分離(濾過)する。残渣は、ガリウム、砒素以外の原料化合物のスクラップに混入した他の物質である。この濾過によってまたは濾過をしないで得たアルカリ浸出液をアルカリ希土類金属であるCaの化合物と反応させ、次いで、濾過等により固液分離することによりアルカリとガリウムを溶解した溶液を得て、濾過時にフィルター上に残る固形物側に砒素を移行する。砒素はアルカリ希土類金属、例えばカルシウムと化合し砒化カルシウムと成り得る。ガリウムは液中にあるので、電解液またはその原液として十分に使用可能である。
GaAs+2NaOH+2O2=NaGaO2+NaH2AsO4
GaAs+3NaOH+2O2=NaGaO2+Na2HAsO4+H2O
GaAs+4NaOH+2O2=NaGaO2+Na3AsO4+2H2O
なお、原料のガリウム砒素化合物は、粒状、板状、粉状などの形態は問わない。粉状であれば、ハンドリングや保管に特段の設備を要せず、さらにアルカリに溶解しやすい。
GaAs+NaOH+2O2+H2O=NaGaO2+H3AsO4
GaAs+NaOH+2O2+H2O=HGaO2+NaH2AsO4
100℃以下では、O2制御により反応温度を制御すると良く、100℃を超えるところでO2ガスの吹き込みを制限し、反応温度の急激な上昇を防止すると良い。
この反応が発熱反応であるのはガリウム、砒素とも金属であり、酸化で発熱反応となるためであり、その発熱量は非常に高い。
固液分離は、フィルタープレス、遠心分離機、デカンター、ベルトフィルターなど一般的な濾過のどれであっても適応は可能である。濾過性・脱水性・洗浄性等を勘案して機器および条件が決定される。
なお、インジウムリンを酸化浸出した場合にはインジウムは溶解しないので残渣に残り、インジウム回収の原料となる。
GaAs+NaOH+2O2+H2O=HGaO2+NaH2AsO4
砒素は全量溶解するが、ガリウムがアルカリの液中であるにもかかわらず酸の形態しか取れないのでコロイドとなって析出する。しかし酸化は完全に行なわれており、アルカリさえ追加されれば直ちにその溶液中に溶解する。
このためアルカリ浸出で少ないアルカリ濃度でガリウムが完全に溶けない場合であっても、ガリウム砒素を完全に酸化反応させた後、アルカリ土類金属で置換反応させると砒素と化合していたアルカリが遊離して、ガリウムを溶解する反応になる。一連の操作を行なうと、より少ないアルカリ量で反応が進行する。すなわち、
2HGaO2+2NaH2AsO4+3CaO=2NaGaO2+Ca3(AsO4)2+3H2O
ガリウム溶液はガリウムが高濃度で存在するため、ガリウムを回収するための原料溶液として用いることが可能である。例えば、電解液として用いることが可能である。なお、極微量の不純物を含む場合は、浄液により除去する。主に銅などが溶解するので、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム、亜鉛末などを添加して硫化除去、置換除去することで浄液することができる。不純物の除去は、適宜な分離方法で可能である。
これを用いてアルカリ溶液中で酸化浸出反応させた。反応条件は以下の通りである。先ずNaOH溶液としてNaOH濃度133g/Lの溶液を作成した。Na濃度は76.4g/Lとなる。この溶液を0.7L用いて反応させた。
このアルカリ溶液と原料のGaAsを金属製の1リットル密閉容器=オートクレーブ(第1種圧力容器、表中等で「AC」と表すことがある。)に入れて95℃に加熱した。撹拌は2段のパドルで500rpmで撹拌した。
パルプ温度が上昇すると密閉容器内においては当初の大気圧雰囲気が加圧雰囲気となるので、一旦密閉容器中のガスを開放して抜き容器内をゲージ圧で0MPaとする。
再度容器を密閉してから純度99%の酸素ガスを導入し密閉容器内に送り込んだ。圧力計(ゲージ圧)が0.3MPa(以下も同様に、酸素加圧分圧をゲージ圧で示す。)を示すように酸素ガスの流量をバルブにて適宜調整して密閉容器内を酸素加圧分圧0.3MPaとした。
温度が更に上昇し105℃を超えたときには酸素ガスの供給を止めて温度が100℃以下になるまで圧力を0.3MPa以下で反応させた。
このように温度を95℃から105℃、酸素加圧分圧を0.3MPa以下で制御しながら浸出反応を行なった。
ガリウムの浸出率は、2時間で90%を超え、最終的に92%以上となり、高浸出することができた。なお、目視観察において残渣がないことなどから、ガリウム、砒素とも100%近く浸出されている。
その時のガリウムの浸出率を表2に示す。この結果から酸素加圧分圧が0.2MPaであっても0.3MPaとほとんど同じように浸出することがわかる。ガリウムの浸出率は、2時間で90%を超え、最終的に93%以上となり、高浸出することができた。なお、目視観察において残渣がないことなどから、ガリウム、砒素とも100%近く浸出されている。
その時のガリウムの浸出率を表3に示す。この結果から、加温しない条件と酸素加圧が0.1MPaと不利な条件であってもガリウム、砒素とも全て浸出することがわかる。ガリウムの浸出率は、4時間で90%を超え、最終的に93%以上となり、高浸出することができた。なお、目視観察において残渣がないことなどから、ガリウム、砒素とも100%近く浸出されている。
原料投入量も実施例1と同じくパルプ濃度100g/Lとした。つまり70gである。これを2Lのガラス製のビーカに入れて2段のディスクタービン(ステンレス鋼:SUS304)で500rpmで撹拌した。
この結果からガリウム、砒素とも4時間でも10%程度しか浸出していないと判断される。酸素加圧分圧がないと反応が進行し難いことがわかる。
条件として銅粉を10g/Lつまり7g添加する操作を加え、その他の条件は比較例1と同様に実施した。その時の結果、ガリウムの浸出率を表5に示す。
この結果から銅を少量添加するとそれが触媒作用のように働いて酸化作用を促進し浸出が進むが、ガリウム砒素をアルカリで浸出する際の効果としては 不充分であることがわかる。
条件として塩化ナトリウムを20g/Lつまり14g添加し、代わりにNaOHで加えるNa量を8g/L分減少させる。つまりNaOH濃度として192g/Lとする操作を加え、その他の条件は比較例1と同様に実施した。その時の結果、ガリウムの浸出率を表6に示す。
この結果から塩素というハロゲンを少量添加すると、それが触媒作用のように働いて酸化作用を促進し浸出が進むが、ガリウム砒素をアルカリで浸出する際の効果としては4時間で完了させる反応としては不充分であることがわかる。
もっともこの場合、浸出時間を8時間と延長すれば、浸出が完了する可能性を示している。温度保持にコストがかかるが大気開放系で行う際の触媒としては好ましい。反応槽の設計において液深を大きくして大気圧下浸出を行う際には有効である。
つまり実施例3(4時間)で発生したアルカリ浸出溶液を0.6L用意して、これを500rpmで撹拌させながら60℃に保温した。そして、アルカリ土類金属化合物としてNaをCaに置換反応するに足る量の1.2倍の工業用のCaO(生石灰)を添加した。つまり67gの生石灰を添加した。
(76.5÷22.99×56×1.2÷2×0.6)
生石灰の添加により液温は85℃まで上昇した。1時間撹拌した後、濾過を実施した。濾紙は孔径3ミクロン(μm)のPTFEメンブランフィルターで0.4MPa加圧で濾過した。濾過時間は30秒である。濾過速度は100L/min・m2である。
この結果から、アルカリ、ガリウム、砒素が溶解している浸出溶液に生石灰を添加することで、砒素のみを沈殿させて液中にガリウム、ナトリウムを残すことが出来ていることがわかる。Asが1.6g/Lと極僅かに液中に砒素が残るが浄液によって除去可能である。
また固形分の方ではガリウムが固形分に存在していないことがわかる。ここで0.74%だけ存在しているような結果であるが洗浄不足による付着分による誤差と判断される。ナトリウムについても同様である。
この結果からパルプ濃度を増加させても、ガリウム、砒素を酸化浸出反応せしめて特に砒素を液中に溶解させることが可能であることが分かる。アルカリが少ないためにガリウムが酸化溶解した後に沈殿しているのがわかる。目視で観察してもミルクの様に白濁したコロイドが生成しているのが観察された。
つまり、アルカリ酸化浸出反応に引続いて、これを0.6Lとしてガラス製のビーカーに移し撹拌させて60℃に少し冷却し、そしてこれに生石灰を67g添加した。生石灰の添加により液温は80℃まで上昇した。1時間撹拌した後に濾過を実施した。濾過した液を組成分析した結果およびガリウムの液中での存在率を表10に示す。
この結果から、アルカリ液中で砒素は溶解しているがガリウムはコロイドとなって析出している液に生石灰を添加することで砒素を沈殿させて同時に再生されたアルカリ分によって液中にガリウムを溶解することが出来ていることがわかる。
As1.5g/Lと極僅かに液中に砒素が残るが浄液によって除去可能である。また固形分の方では、ガリウムが固形分に存在していないことがわかる。ここで0.01%と実施例4よりも良好な結果である。ナトリウムについても同様である。
この結果から、アルカリ濃度を減少させてもガリウム・砒素を酸化浸出反応せしめて特に砒素を液中に溶解させることが可能であるが、アルカリが少ないために浸出時間が3時間を超えると溶解できずにガリウムが酸化溶解した後に沈殿しているのがわかる。目視で観察してもミルクの様に白濁したコロイドが生成しているのが観察された。
つまり、アルカリ酸化浸出反応に引続いてこれを0.6Lとして、これをガラス製のビーカーに移し撹拌させて60℃に少し冷却しそしてこれに生石灰を 25.2g(1.2当量)添加した。生石灰の添加により液温は80℃まで上昇した。
1時間撹拌した後、濾過を実施した。濾過した液を組成分析した結果およびガリウムの液中での存在率を表13に示す。また、固液分離した固形物を洗浄及び乾燥したものを組成分析した結果を表14に示す。
電流密度700アンペア/m2で通電し、液中のガリウム濃度が10g/Lになるまで電解採取しガリウムの析出を実施した。電解槽においてアノードとカソードは共にステンレス鋼(SUS316)を使用し、印加電圧は20ボルト、電解時の電解液温度は72℃であった。この条件下のガリウムの電解採取速度は500g/時間・m2であった。
電解採取されたガリウムは採取時点では99%(すなわち2N)の品位であり、その後の既存のゾーンメルト法などの高純度化の操作によって、6〜7N(すなわち99.9999%〜99.99999%)に向上可能である。
上記実施例より、ガリウム砒素化合物原料からアルカリ溶液中にて酸化浸出することが可能であること、浸出したアルカリ液に生石灰等を加えて固液分離することでガリウムが高濃度に含まれる溶液を得ること、また得た溶液から高純度な金属ガリウムを回収可能であることが分かり、これらの方法は特段の制御、設備も要しない、効率的且つシンプルな方法である。
Claims (11)
- ガリウムとV族元素とを含有する原料化合物をアルカリ溶液中で酸化し加圧浸出してガリウムと該V族元素とを溶解する原料化合物の処理方法。
- ガリウムとV族元素とを含有する原料化合物をアルカリ溶液中で酸化し浸出してガリウムと該V族元素とを溶解したアルカリ浸出液を得た後、該アルカリ浸出液にアルカリ土類金属化合物を添加して固液分離を行なうことによりアルカリとガリウムを溶解した溶液と該V族元素とアルカリ土類金属の化合物の固体とに分離する原料化合物の処理方法。
- ガリウムとV族元素とを含有する原料化合物をアルカリ溶液中で酸化し浸出してガリウムと該V族元素とを溶解したアルカリ浸出液を得た後、該アルカリ浸出液にアルカリ土類金属化合物を反応させて固液分離を行なうことによりアルカリとガリウムを溶解した溶液と該V族元素とアルカリ土類金属の化合物の固体とに分離し、次いで該アルカリとガリウムを溶解した溶液を電解採取してガリウムを析出させて回収するとともに電解后液を前記アルカリ溶液として繰返し使用する原料化合物の処理方法。
- インジウムとV族元素とを含有する原料化合物をアルカリ溶液中で酸化し浸出して、固液分離を行なってインジウムを固体として回収するとともに該V族元素を溶解したアルカリ浸出液を得た後、該アルカリ浸出液にアルカリ土類金属化合物を反応させて固液分離を行なうことによりアルカリを溶解した溶液と該V族元素とアルカリ土類金属の化合物の固体とに分離する原料化合物の処理方法。
- インジウムとV族元素とを含有する原料化合物をアルカリ溶液中で酸化し浸出して、固液分離を行なってインジウムを固体として回収するとともに該V族元素を溶解したアルカリ浸出液を得た後、該アルカリ浸出液にアルカリ土類金属化合物を反応させて固液分離を行なうことによりアルカリを溶解した溶液と該V族元素とアルカリ土類金属の化合物の固体とに分離し、次いで該アルカリを溶解した溶液を前記アルカリ溶液として繰返し使用する原料化合物の処理方法。
- 前記V族元素とアルカリ土類金属の化合物の固体を硫酸と反応させた後、該アルカリ土類金属の硫酸塩の固体と該V族元素の溶液とに固液分離する、請求項2〜5のいずれかに記載の原料化合物の処理方法。
- 前記V族元素は砒素又はリンである、請求項1〜6のいずれかに記載の原料化合物の処理方法。
- 前記アルカリ土類金属化合物はCaOである、請求項2〜7のいずれかに記載の原料化合物の処理方法。
- 前記アルカリ溶液のアルカリ濃度がNaOH 50g/L以上である、請求項1〜8のいずれかに記載の原料化合物の処理方法。
- 前記酸化は酸素加圧雰囲気内で行なわれる、請求項1〜9のいずれかに記載の原料化合物の処理方法。
- 前記酸素加圧雰囲気は大気雰囲気に酸素を0.1MPa以上加圧した雰囲気である、請求項10記載の原料化合物の処理方法。
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