JP2008031543A - ガリウム、インジウムを含有する化合物の処理方法 - Google Patents

ガリウム、インジウムを含有する化合物の処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ガリウム砒素、ガリウムリン、インジウムリンなどの原料化合物を効率よく低コストで処理する。
【解決手段】上記原料化合物をアルカリ溶液中で酸化反応させ浸出する。溶解したガリウムと砒素を含有するアルカリ浸出液は引続いて生石灰等のアルカリ土類金属化合物と反応させてアルカリ溶液を再生し、アルカリとガリウムが溶解した液とアルカリ土類金属と砒素の化合物を得る。
アルカリ土類金属と砒素の化合物は付着のアルカリ液を洗浄により除去して 純粋なアルカリ土類金属と砒素の化合物を得て、これを硫酸で溶解反応させて高純度で高濃度化したAs液と石膏等のアルカリ土類金属硫酸塩に分離する。
アルカリとガリウムが溶解した液は極微量の不純物を浄液した後、電解採取によってガリウムを採取し、電解採取後のアルカリ液は最初の工程である浸出においてアルカリ溶液として繰返し使用される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ガリウム砒素、ガリウムリン、インジウムリンなどの化合物の処理方法に関するものである。
ガリウム、インジウムなどは亜鉛製錬などの副産物として微量に得られる金属元素であって、主に化合物半導体に使用されている。化合物半導体はガリウム砒素(GaAs)、ガリウムリン(GaP)、インジウムリン(InP)などがあり、発光ダイオード、ICなどに利用されている。
従来、これらの半導体化合物の再生方法として、ガリウム又はインジウムと砒素又はリンとに分離するには浸出して分離濃縮する方法が一般的であり、イオン交換法、溶媒抽出法、酸−中和−アルカリ法などがある。
イオン交換法としては、例えば特開昭59−193230号公報において、ガリウムを含む溶液を適正なpHのもとでキレート性イオン交換樹脂に通してガリウムを選択的に吸着させて不純物と分離した後、鉱酸を用いてガリウムを溶離させ、最終的に電解法によってガリウムを回収する方法が開示されている。
一方、溶媒抽出法としては、例えば特開昭61−215214号公報に見られるように、有機溶媒にカルボン酸系又は燐酸系キレート抽出剤を含ませこれを有機相とし、水相のpHを調整し、前記有機相と激しく接触させることにより、水相中のガリウムを選択的に有機相にキレートとして抽出し、次いで鉱酸を用いて水相に逆抽出した後、電解法によりガリウムを回収する方法が知られている。
これらの方法では非常にコストが高いことが問題で、その点を改善するために例えば特開2000−226623号公報に開示されたような鉱酸で浸出し中和を経てアルカリ溶解し砒素とリンを同時に析出させる浄液によって濃縮分離しアルカリ液からガリウムを電解採取して回収する方法が知られている。
図2に示すこの従来技術の方法はイオン交換法、溶媒抽出法と比べると確かに低コスト化していると判断されるが、以下に挙げる多くの問題点がある。すなわち、
[問題点1]砒素、リンを同時に処理する必要があるが、砒素とリンの分離は考えられていない
[問題点2]硝酸等の酸浸出であるため酸性液の管理が十分に必要であること、さらにアルカリで中和しなければならず、常に酸とアルカリを消費して、原材料面でコスト高である
[問題点3]ガリウム砒素、ガリウムリンを酸性液中で酸化浸出反応させる場合、作業安全面、環境汚染面からさらに設備投資が必要になってコスト高となる問題がある
[問題点4]酸浸出工程、アルカリ中和工程などを有して工程が長く、且つ固液分離工程(図中においてS/Lで示す。)数が多く、工程面でもコスト高である
というものであった。
特開昭59−193230号公報 特開昭61−215214号公報 特開2000−226623号公報
上記の問題点の解消、すなわち、砒素又はリンも分離回収とすること、酸、アルカリの消費量を低減させること、作業安全面・環境汚染面で問題がなく新たな設備投資が抑制されること、中和工程が少なく処理工程がシンプルであることが必要である。
回収されるべきガリウムは、市場における有価金属となるためには99質量%(「質量%」を単に「%」で表す。)以上の純度が求められ、このため、電解採取等によりガリウム純度が高められている。しかし、ガリウムの電解採取用の液はアルカリ溶液であることが一般的であることから、電解用の溶液としてはアルカリ溶液であることが当然望まれる。従って、より低コストで、簡便な方法で、アルカリ液によるガリウム溶解液を得るプロセスが望まれていた。
本発明者はガリウム砒素化合物等の原料化合物を処理する研究を詳細に行なった結果、本発明に至ったものである。すなわち、本発明は第1に、ガリウムとV族元素(元素の周期表におけるV族元素をいう。)とを含有する原料化合物をアルカリ溶液中で酸化し加圧浸出してガリウムと該V族元素とを溶解する原料化合物の処理方法であり、第2に、ガリウムとV族元素とを含有する原料化合物をアルカリ溶液中で酸化し浸出してガリウムと該V族元素とを溶解したアルカリ浸出液を得た後、該アルカリ浸出液にアルカリ土類金属化合物を添加して固液分離を行なうことによりアルカリとガリウムを溶解した溶液と該V族元素とアルカリ土類金属の化合物の固体とに分離する原料化合物の処理方法であり、第3に、ガリウムとV族元素とを含有する原料化合物をアルカリ溶液中で酸化し浸出してガリウムと該V族元素とを溶解したアルカリ浸出液を得た後、該アルカリ浸出液にアルカリ土類金属化合物を反応させて固液分離を行なうことによりアルカリとガリウムを溶解した溶液と該V族元素とアルカリ土類金属の化合物の固体とに分離し、次いで該アルカリとガリウムを溶解した溶液を電解液として電解採取してガリウムを析出させて回収するとともに電解后液(電解液からガリウムを電解採取した残液をいう。)を前記アルカリ溶液として繰返し使用する原料化合物の処理方法であり、第4に、インジウムとV族元素とを含有する原料化合物をアルカリ溶液中で酸化し浸出して、固液分離を行なってインジウムを固体として回収するとともに該V族元素を溶解したアルカリ浸出液を得た後、該アルカリ浸出液にアルカリ土類金属化合物を反応させて固液分離を行なうことによりアルカリを溶解した溶液と該V族元素とアルカリ土類金属の化合物の固体とに分離する原料化合物の処理方法であり、第5に、インジウムとV族元素を含有する原料化合物をアルカリ溶液中で酸化し浸出して、固液分離を行なってインジウムを固体として回収するとともに該V族元素を溶解したアルカリ浸出液を得た後、該アルカリ浸出液にアルカリ土類金属化合物を反応させて固液分離を行なうことによりアルカリを溶解した溶液と該V族元素とアルカリ土類金属の化合物の固体とに分離し、次いで該アルカリを溶解した溶液を前記アルカリ溶液として繰返し使用する原料化合物の処理方法である。
なお、上記本発明においては、前記V族元素とアルカリ土類金属の化合物の固体を硫酸と反応させた後、該アルカリ土類金属の硫酸塩の固体と該V族元素の溶液とに固液分離することが好ましく、前記V族元素は砒素又はリンであることが好ましく、前記アルカリ土類金属化合物はCaOであることが好ましい。また、前記アルカリ溶液のアルカリ濃度がNaOH 50g/L(リットル)以上であることが好ましい。さらに、前記酸化は酸素加圧雰囲気内で行なわれることが好ましく、前記酸素加圧雰囲気は大気雰囲気に酸素を0.1MPa以上加圧した雰囲気であることが一層好ましい。
本発明によって、ガリウム砒素、ガリウムリン、インジウムリンなどの原料化合物から低コストで効率よくガリウム、インジウムを高純度で回収するとともに、砒素、リンも分離回収することができる。
本発明の実施の形態として処理フローの例を図1に示した。
図1のようにガリウム砒素化合物をアルカリ溶液中にて、酸化剤を加えて酸化浸出を行い、アルカリ溶液中にガリウム、砒素を溶解させアルカリ浸出液を得る。このアルカリ浸出液中に残渣がある場合には、固液分離(濾過)する。残渣は、ガリウム、砒素以外の原料化合物のスクラップに混入した他の物質である。この濾過によってまたは濾過をしないで得たアルカリ浸出液をアルカリ希土類金属であるCaの化合物と反応させ、次いで、濾過等により固液分離することによりアルカリとガリウムを溶解した溶液を得て、濾過時にフィルター上に残る固形物側に砒素を移行する。砒素はアルカリ希土類金属、例えばカルシウムと化合し砒化カルシウムと成り得る。ガリウムは液中にあるので、電解液またはその原液として十分に使用可能である。
原料化合物のガリウム砒素などは、上記のようにアルカリ溶液によって浸出される。アルカリの濃度としては投入するガリウム砒素の添加量、つまりパルプ濃度(表中などで「PD」と表す。)によって決定できる。浸出反応は以下のとおりである。
GaAs+2NaOH+2O2=NaGaO2+NaH2AsO4
GaAs+3NaOH+2O2=NaGaO2+Na2HAsO4+H2
GaAs+4NaOH+2O2=NaGaO2+Na3AsO4+2H2
なお、原料のガリウム砒素化合物は、粒状、板状、粉状などの形態は問わない。粉状であれば、ハンドリングや保管に特段の設備を要せず、さらにアルカリに溶解しやすい。
アルカリ濃度が高くなると砒素の浸出形態が少しずつ変化する。GaAsのパルプ濃度を100g/Lとすると必要とされるNaOH量は107〜214g/Lと算出される。しかし、アルカリと酸の塩類が混在する形でも存在する事が可能であればNaOH量はその半分の約50g/Lで良いことになる。研究の結果、ガリウム・砒素のアルカリ塩・酸塩の共存が可能であることを見出した。すなわち、
GaAs+NaOH+2O2+H2O=NaGaO2+H3AsO4
GaAs+NaOH+2O2+H2O=HGaO2+NaH2AsO4
ここで、GaAsは化合物であり、単純なガリウムと砒素の金属ではないので、酸化させるためには酸化力が強いことが必要で、さもなければ浸出反応が進行しない。大気圧下での酸化反応は酸化速度が非常に遅く、見かけ上ほとんど浸出されない。そのため今まではアルカリ側で酸化浸出がなされなかったものであり、一般的に、鉱酸と酸化剤、好ましくは硝酸で酸化浸出されてきたものである。
酸化剤として、酸素ガス、酸素含有ガス、空気、過マンガン酸カリウム(KMnO4)、過酸化水素、次亜塩素酸ソーダ、過硫酸ソーダなどを用いてアルカリ浸出することも可能である。また、O2ガス(酸素ガス)を吹き込む方法でも良い。このため、酸素加圧浸出を行なうのが更に好ましい。ガスの吹き込みによる酸化浸出反応では、吹き込むガスを圧力等で制御し易く、浸出の速度をより安全に制御可能である。
加圧浸出とは、大気圧よりも高い圧力を系内に負荷した、または負荷しながら浸出を行うものである。例えば酸素で加圧するには、加圧前の大気圧の大気雰囲気内に対して系外から圧縮された酸素ガスを吹き込んで、浸出雰囲気を、系外から吹き込まれた酸素ガスによる加圧(酸素加圧分圧といい、加圧後の浸出雰囲気のゲージ圧で示される。)で0.1MPa以上とすれば容易に酸化反応が進行する。さらに好ましくは酸素加圧分圧が0.2MPa以上であれば反応がおよそ1時間で進行し、反応をより短時間で可能とする。これ以上の酸素加圧分圧を上げることでの影響は特段無いがあまり高くしようとすると密閉容器の耐圧仕様を強化しなければならないので容器の製作コストが高くなるので実用上は、酸素加圧分圧は上限として1MPa以下が好ましい。
また、加圧浸出を行う反応容器は、密閉容器に限らず、例えば液深による圧力を利用して酸化力を高めることも可能である。
浸出時の反応温度であるアルカリ液温は、上記のような酸化剤の投入量と併せ設定される。酸化剤が多ければ低いアルカリ液温でも浸出可能であり、逆も同様である。反応温度は、高い方が浸出反応が進行するので好ましい。60〜100℃が好ましく、浸出速度を上げる観点から70〜100℃がさらに好ましい。
100℃以下では、O2制御により反応温度を制御すると良く、100℃を超えるところでO2ガスの吹き込みを制限し、反応温度の急激な上昇を防止すると良い。
この反応が発熱反応であるのはガリウム、砒素とも金属であり、酸化で発熱反応となるためであり、その発熱量は非常に高い。
浸出反応時間は、上記条件や、酸化浸出反応の進行度合いによって適宜設定する。条件により異なるが酸素加圧分圧が0.2MPa以上ではおよそ1時間で反応が完了する。酸素加圧分圧が0.1MPaでは反応時間は3〜4時間必要である。
アルカリ浸出した液は、ほとんど何も残らず全量溶解する。しかし、原料化合物の半導体材料のスクラップの中にカーボンやSiCなどが存在していた場合は、それが浸出残渣となる。これは、フィルタープレスなどで濾過することで分離可能である。濾過性は良好で、濾過時間は非常に短く、生産性への影響はない。残渣は燃料、研磨剤等として利用可能である。
固液分離は、フィルタープレス、遠心分離機、デカンター、ベルトフィルターなど一般的な濾過のどれであっても適応は可能である。濾過性・脱水性・洗浄性等を勘案して機器および条件が決定される。
なお、インジウムリンを酸化浸出した場合にはインジウムは溶解しないので残渣に残り、インジウム回収の原料となる。
固液分離後の浸出液は、アルカリ溶液であってガリウムと砒素を溶解したものとなる。ここで、ガリウムと砒素を分離するためにカルシウムなどのアルカリ土類金属元素の化合物と反応させて砒素をアルカリ土類金属と析出沈殿させる。アルカリ土類金属と砒素を反応させると、pHが10以上の高い領域(アルカリ性側)では溶解度が低くほぼ全量沈殿するが、ガリウムは沈殿しない。これによって、砒素とアルカリ、ガリウムを分離する。
ここで、最初のアルカリ浸出の際に、アルカリ量を極端に減らすと、反応は前述のとおり以下のようになる。すなわち、
GaAs+NaOH+2O2+H2O=HGaO2+NaH2AsO4
砒素は全量溶解するが、ガリウムがアルカリの液中であるにもかかわらず酸の形態しか取れないのでコロイドとなって析出する。しかし酸化は完全に行なわれており、アルカリさえ追加されれば直ちにその溶液中に溶解する。
このためアルカリ浸出で少ないアルカリ濃度でガリウムが完全に溶けない場合であっても、ガリウム砒素を完全に酸化反応させた後、アルカリ土類金属で置換反応させると砒素と化合していたアルカリが遊離して、ガリウムを溶解する反応になる。一連の操作を行なうと、より少ないアルカリ量で反応が進行する。すなわち、
2HGaO2+2NaH2AsO4+3CaO=2NaGaO2+Ca3(AsO42+3H2
この後、固液分離を行い、砒素化合物と液中にあるガリウム液とを分離する。
ガリウム溶液はガリウムが高濃度で存在するため、ガリウムを回収するための原料溶液として用いることが可能である。例えば、電解液として用いることが可能である。なお、極微量の不純物を含む場合は、浄液により除去する。主に銅などが溶解するので、硫化ナトリウム、水硫化ナトリウム、亜鉛末などを添加して硫化除去、置換除去することで浄液することができる。不純物の除去は、適宜な分離方法で可能である。
ガリウム溶液から金属のガリウムを採取するために、例えば電解採取法が適用可能である。好ましくは、電解液の液温は70℃とし、電流密度を700アンペア/m2とし、液中ガリウム濃度が10g/L以下になるまで電流効率が低下することなく良好に電解採取できる。ガリウム電解採取後の電解液(すなわち、電解后液)は、極少量の未採取のガリウムを溶解しているアルカリ溶液であるので、再び酸化浸出のアルカリ溶液として繰返し使用できる。このようにアルカリ溶液は基本的に消耗せずに再び前工程で利用可能であり、また、排水もほとんど生じない、さらにガリウムの回収率を向上することができる。
なお、前記固液分離されたアルカリ土類金属と砒素の化合物は、洗浄によって付着のアルカリ溶液を除去した後、硫酸と反応させてアルカリ土類金属硫酸塩(例えば、石膏。)と高純度化した砒素溶液に分離することができる。発生した石膏は、付着液を洗浄除去すると販売可能な純粋な石膏とすることが可能である。一方、高純度化した砒素溶液は、鉄塩と反応させて砒素が溶出しないScorodite(砒酸鉄)とするか、又は、SO2ガスなどによって還元して亜砒酸(As23)を生成することが可能である。このように本発明によって、ガリウムを回収可能とするほか、砒素等も回収可能となる。
以下に実施例及び比較例を説明する。ただし本発明の技術的範囲はこれらの記載によって限定されるものではないことは言うまでもない。
[実施例1] 出発原料として用いたガリウム砒素化合物はGaとAsが化学論的に1対1に化合した水系の切削くずのGaAsスラッジであり、粒度分布計(堀場製作所製、LA−500粒度分布計)で測定したところ平均粒径 4.69ミクロン(μm)の微細な粒子であった。また、組成分析の結果はガリウム48.2%、砒素51.7%で、鉄さび(Fe23)が0.1%であった。
これを用いてアルカリ溶液中で酸化浸出反応させた。反応条件は以下の通りである。先ずNaOH溶液としてNaOH濃度133g/Lの溶液を作成した。Na濃度は76.4g/Lとなる。この溶液を0.7L用いて反応させた。
GaAsの添加量はパルプ濃度(PD)で100g/Lになるように仕込んだ。つまり70gである。
このアルカリ溶液と原料のGaAsを金属製の1リットル密閉容器=オートクレーブ(第1種圧力容器、表中等で「AC」と表すことがある。)に入れて95℃に加熱した。撹拌は2段のパドルで500rpmで撹拌した。
パルプ温度が上昇すると密閉容器内においては当初の大気圧雰囲気が加圧雰囲気となるので、一旦密閉容器中のガスを開放して抜き容器内をゲージ圧で0MPaとする。
再度容器を密閉してから純度99%の酸素ガスを導入し密閉容器内に送り込んだ。圧力計(ゲージ圧)が0.3MPa(以下も同様に、酸素加圧分圧をゲージ圧で示す。)を示すように酸素ガスの流量をバルブにて適宜調整して密閉容器内を酸素加圧分圧0.3MPaとした。
この酸素を導入した時、密閉容器内に挿入した熱電対式の温度計が100℃を超えた。そのため外側から加熱して温度制御していた電熱ヒータを取外し密閉容器の外側より風を送ることで冷却し温度制御を試みた。
温度が更に上昇し105℃を超えたときには酸素ガスの供給を止めて温度が100℃以下になるまで圧力を0.3MPa以下で反応させた。
このように温度を95℃から105℃、酸素加圧分圧を0.3MPa以下で制御しながら浸出反応を行なった。
反応時間は4時間として途中で1時間ごとに20mlサンプリングして直ちに濾過してガリウム、砒素、ナトリウムの溶解濃度を分析した。その時の分析結果及びガリウムの浸出率を表1に示す。この結果からガリウムは、1時間を越えるところでほぼ全量浸出していると判断される。
ガリウムの浸出率は、2時間で90%を超え、最終的に92%以上となり、高浸出することができた。なお、目視観察において残渣がないことなどから、ガリウム、砒素とも100%近く浸出されている。
Figure 2008031543
[実施例2] 実施例1と同様にガリウム砒素をアルカリ溶液中で酸化浸出を行った。条件として酸素加圧分圧を0.2MPaとして実施した。その他の条件は実施例1と同様に実施した。
その時のガリウムの浸出率を表2に示す。この結果から酸素加圧分圧が0.2MPaであっても0.3MPaとほとんど同じように浸出することがわかる。ガリウムの浸出率は、2時間で90%を超え、最終的に93%以上となり、高浸出することができた。なお、目視観察において残渣がないことなどから、ガリウム、砒素とも100%近く浸出されている。
Figure 2008031543
[実施例3] 実施例1と同様にガリウム砒素をアルカリ溶液中で酸化浸出を行った。条件として酸素加圧分圧を0.1MPaとして実施した。この時95℃に温度制御し、初期の昇温以外は全てガリウム砒素の酸化反応による発熱によって賄われた。つまり、温度保持に対して外部の熱源無しにただ送風して冷却する操作のみを実施した。その他の条件は実施例1と同様に実施した。
その時のガリウムの浸出率を表3に示す。この結果から、加温しない条件と酸素加圧が0.1MPaと不利な条件であってもガリウム、砒素とも全て浸出することがわかる。ガリウムの浸出率は、4時間で90%を超え、最終的に93%以上となり、高浸出することができた。なお、目視観察において残渣がないことなどから、ガリウム、砒素とも100%近く浸出されている。
Figure 2008031543
[比較例1] 次に比較例として大気圧下(すなわちゲージ圧0MPa。)でのアルカリ浸出を行なった。条件としてガリウム砒素の原料は実施例1と同じものを用いた。また、NaOH液としてNaOH濃度=200g/Lの溶液を作成した。Na濃度は115g/Lとなる。この液を0.7L用いて反応させた。
原料投入量も実施例1と同じくパルプ濃度100g/Lとした。つまり70gである。これを2Lのガラス製のビーカに入れて2段のディスクタービン(ステンレス鋼:SUS304)で500rpmで撹拌した。
外部から電熱ヒータを用いて90〜95℃に加熱した。所定の温度に達したところで空気を流量で1L/min(分)になるようにして吹き込んだ。空気を吹き込みつつ大気開放下で加熱するので水が蒸発する。その蒸発分は逐次上から補充するようにして濃度を一定に保った。反応時間は4時間として途中で1時間ごとに20mlサンプリングし直ちに濾過してガリウムと砒素の溶解濃度を分析した。その時の分析結果及びガリウムの浸出率を表4に示す。
この結果からガリウム、砒素とも4時間でも10%程度しか浸出していないと判断される。酸素加圧分圧がないと反応が進行し難いことがわかる。
Figure 2008031543
[比較例2] 次に、比較例1と同様にアルカリ浸出を行なった。
条件として銅粉を10g/Lつまり7g添加する操作を加え、その他の条件は比較例1と同様に実施した。その時の結果、ガリウムの浸出率を表5に示す。
この結果から銅を少量添加するとそれが触媒作用のように働いて酸化作用を促進し浸出が進むが、ガリウム砒素をアルカリで浸出する際の効果としては 不充分であることがわかる。
Figure 2008031543
[比較例3] さらに比較例1と同様にアルカリ浸出を行なった。
条件として塩化ナトリウムを20g/Lつまり14g添加し、代わりにNaOHで加えるNa量を8g/L分減少させる。つまりNaOH濃度として192g/Lとする操作を加え、その他の条件は比較例1と同様に実施した。その時の結果、ガリウムの浸出率を表6に示す。
この結果から塩素というハロゲンを少量添加すると、それが触媒作用のように働いて酸化作用を促進し浸出が進むが、ガリウム砒素をアルカリで浸出する際の効果としては4時間で完了させる反応としては不充分であることがわかる。
もっともこの場合、浸出時間を8時間と延長すれば、浸出が完了する可能性を示している。温度保持にコストがかかるが大気開放系で行う際の触媒としては好ましい。反応槽の設計において液深を大きくして大気圧下浸出を行う際には有効である。
Figure 2008031543
[実施例4] 次に、ガリウム砒素原料をアルカリ浸出した液をアルカリ土類金属化合物を用いて液中にガリウムを残し、砒素をアルカリ土類金属と反応させて沈殿させる操作を実施した。
つまり実施例3(4時間)で発生したアルカリ浸出溶液を0.6L用意して、これを500rpmで撹拌させながら60℃に保温した。そして、アルカリ土類金属化合物としてNaをCaに置換反応するに足る量の1.2倍の工業用のCaO(生石灰)を添加した。つまり67gの生石灰を添加した。
(76.5÷22.99×56×1.2÷2×0.6)
生石灰の添加により液温は85℃まで上昇した。1時間撹拌した後、濾過を実施した。濾紙は孔径3ミクロン(μm)のPTFEメンブランフィルターで0.4MPa加圧で濾過した。濾過時間は30秒である。濾過速度は100L/min・m2である。
固液分離した液を組成分析した結果及びガリウムの液中での存在率を表7に示す。また、固液分離した固形物を洗浄及び乾燥したものを組成分析した結果を表8に示す。
この結果から、アルカリ、ガリウム、砒素が溶解している浸出溶液に生石灰を添加することで、砒素のみを沈殿させて液中にガリウム、ナトリウムを残すことが出来ていることがわかる。Asが1.6g/Lと極僅かに液中に砒素が残るが浄液によって除去可能である。
また固形分の方ではガリウムが固形分に存在していないことがわかる。ここで0.74%だけ存在しているような結果であるが洗浄不足による付着分による誤差と判断される。ナトリウムについても同様である。
Figure 2008031543
Figure 2008031543
[実施例5] 実施例1と同様にガリウム砒素化合物原料をアルカリ溶液中で酸化浸出を行った。条件として、ガリウム砒素の添加量をパルプ濃度で200g/L、つまり140g添加した。すなわち、実施例1と比べアルカリ量が少ない状態で実施した。その他の条件は実施例1と同様に実施した。その時の結果およびガリウムの浸出率を表9に示す。
この結果からパルプ濃度を増加させても、ガリウム、砒素を酸化浸出反応せしめて特に砒素を液中に溶解させることが可能であることが分かる。アルカリが少ないためにガリウムが酸化溶解した後に沈殿しているのがわかる。目視で観察してもミルクの様に白濁したコロイドが生成しているのが観察された。
Figure 2008031543
[実施例6] 実施例5(4時間)で発生したアルカリ浸出液をガリウムがコロイド状で析出しているまま固液分離をせずにアルカリ土類金属化合物(生石灰)による置換反応によって砒素を析出させ、併せてガリウムをアルカリ浸出液中に溶解させる操作を実施した。
つまり、アルカリ酸化浸出反応に引続いて、これを0.6Lとしてガラス製のビーカーに移し撹拌させて60℃に少し冷却し、そしてこれに生石灰を67g添加した。生石灰の添加により液温は80℃まで上昇した。1時間撹拌した後に濾過を実施した。濾過した液を組成分析した結果およびガリウムの液中での存在率を表10に示す。
Figure 2008031543
また、固液分離した固形物を洗浄、乾燥したものを組成分析した結果を表11に示す。
この結果から、アルカリ液中で砒素は溶解しているがガリウムはコロイドとなって析出している液に生石灰を添加することで砒素を沈殿させて同時に再生されたアルカリ分によって液中にガリウムを溶解することが出来ていることがわかる。
As1.5g/Lと極僅かに液中に砒素が残るが浄液によって除去可能である。また固形分の方では、ガリウムが固形分に存在していないことがわかる。ここで0.01%と実施例4よりも良好な結果である。ナトリウムについても同様である。
Figure 2008031543
[実施例7] 実施例1と同様にガリウム砒素化合物原料をアルカリ溶液中で酸化浸出を行った。条件として、アルカリのNaOH濃度で50g/Lに調整した液を用いた。その他の条件は実施例1と同様に実施した。その時の結果およびガリウムの浸出率を表12に示す。
この結果から、アルカリ濃度を減少させてもガリウム・砒素を酸化浸出反応せしめて特に砒素を液中に溶解させることが可能であるが、アルカリが少ないために浸出時間が3時間を超えると溶解できずにガリウムが酸化溶解した後に沈殿しているのがわかる。目視で観察してもミルクの様に白濁したコロイドが生成しているのが観察された。
Figure 2008031543
[実施例8] 実施例7(4時間)で発生したアルカリ浸出液をガリウムがコロイド状で析出しているまま固液分離をせずにアルカリ土類金属との置換反応によって砒素を析出させ併せてガリウムをアルカリ溶液中に溶解させる操作を実施した。
つまり、アルカリ酸化浸出反応に引続いてこれを0.6Lとして、これをガラス製のビーカーに移し撹拌させて60℃に少し冷却しそしてこれに生石灰を 25.2g(1.2当量)添加した。生石灰の添加により液温は80℃まで上昇した。
1時間撹拌した後、濾過を実施した。濾過した液を組成分析した結果およびガリウムの液中での存在率を表13に示す。また、固液分離した固形物を洗浄及び乾燥したものを組成分析した結果を表14に示す。
この結果から、アルカリ液中で砒素は溶解しているがガリウムはコロイドとなって析出している液に生石灰を添加することで砒素を沈殿させて同時に再生されたアルカリ分によって液中にガリウムを溶解することが出来ていることがわかる。As1.5g/Lと極僅かに液中に砒素が残るが浄液によって除去可能である。
Figure 2008031543
Figure 2008031543
[実施例9] 実施例6で実施したアルカリ土類金属化合物で置換した後のアルカリとガリウムを溶解した溶液に水硫化ナトリウムを添加し、析出物を濾過し、得られた浄液を電解液として電解採取を実施した。
電流密度700アンペア/m2で通電し、液中のガリウム濃度が10g/Lになるまで電解採取しガリウムの析出を実施した。電解槽においてアノードとカソードは共にステンレス鋼(SUS316)を使用し、印加電圧は20ボルト、電解時の電解液温度は72℃であった。この条件下のガリウムの電解採取速度は500g/時間・m2であった。
電解採取されたガリウムは採取時点では99%(すなわち2N)の品位であり、その後の既存のゾーンメルト法などの高純度化の操作によって、6〜7N(すなわち99.9999%〜99.99999%)に向上可能である。
上記実施例より、ガリウム砒素化合物原料からアルカリ溶液中にて酸化浸出することが可能であること、浸出したアルカリ液に生石灰等を加えて固液分離することでガリウムが高濃度に含まれる溶液を得ること、また得た溶液から高純度な金属ガリウムを回収可能であることが分かり、これらの方法は特段の制御、設備も要しない、効率的且つシンプルな方法である。
本発明方法の実施例を示した処理フローである。 従来技術を示した処理フローである。

Claims (11)

  1. ガリウムとV族元素とを含有する原料化合物をアルカリ溶液中で酸化し加圧浸出してガリウムと該V族元素とを溶解する原料化合物の処理方法。
  2. ガリウムとV族元素とを含有する原料化合物をアルカリ溶液中で酸化し浸出してガリウムと該V族元素とを溶解したアルカリ浸出液を得た後、該アルカリ浸出液にアルカリ土類金属化合物を添加して固液分離を行なうことによりアルカリとガリウムを溶解した溶液と該V族元素とアルカリ土類金属の化合物の固体とに分離する原料化合物の処理方法。
  3. ガリウムとV族元素とを含有する原料化合物をアルカリ溶液中で酸化し浸出してガリウムと該V族元素とを溶解したアルカリ浸出液を得た後、該アルカリ浸出液にアルカリ土類金属化合物を反応させて固液分離を行なうことによりアルカリとガリウムを溶解した溶液と該V族元素とアルカリ土類金属の化合物の固体とに分離し、次いで該アルカリとガリウムを溶解した溶液を電解採取してガリウムを析出させて回収するとともに電解后液を前記アルカリ溶液として繰返し使用する原料化合物の処理方法。
  4. インジウムとV族元素とを含有する原料化合物をアルカリ溶液中で酸化し浸出して、固液分離を行なってインジウムを固体として回収するとともに該V族元素を溶解したアルカリ浸出液を得た後、該アルカリ浸出液にアルカリ土類金属化合物を反応させて固液分離を行なうことによりアルカリを溶解した溶液と該V族元素とアルカリ土類金属の化合物の固体とに分離する原料化合物の処理方法。
  5. インジウムとV族元素とを含有する原料化合物をアルカリ溶液中で酸化し浸出して、固液分離を行なってインジウムを固体として回収するとともに該V族元素を溶解したアルカリ浸出液を得た後、該アルカリ浸出液にアルカリ土類金属化合物を反応させて固液分離を行なうことによりアルカリを溶解した溶液と該V族元素とアルカリ土類金属の化合物の固体とに分離し、次いで該アルカリを溶解した溶液を前記アルカリ溶液として繰返し使用する原料化合物の処理方法。
  6. 前記V族元素とアルカリ土類金属の化合物の固体を硫酸と反応させた後、該アルカリ土類金属の硫酸塩の固体と該V族元素の溶液とに固液分離する、請求項2〜5のいずれかに記載の原料化合物の処理方法。
  7. 前記V族元素は砒素又はリンである、請求項1〜6のいずれかに記載の原料化合物の処理方法。
  8. 前記アルカリ土類金属化合物はCaOである、請求項2〜7のいずれかに記載の原料化合物の処理方法。
  9. 前記アルカリ溶液のアルカリ濃度がNaOH 50g/L以上である、請求項1〜8のいずれかに記載の原料化合物の処理方法。
  10. 前記酸化は酸素加圧雰囲気内で行なわれる、請求項1〜9のいずれかに記載の原料化合物の処理方法。
  11. 前記酸素加圧雰囲気は大気雰囲気に酸素を0.1MPa以上加圧した雰囲気である、請求項10記載の原料化合物の処理方法。
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