JP2008031106A - クラゲ類からのコラーゲン回収方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 クラゲ類から有用物質であるコラーゲンを未変性の状態で効率的に可溶化し、回収する。
【解決手段】 クラゲ類自身が有する内因性酵素を活性化してクラゲ類の分解反応を開始させ、クラゲ類が有するコラーゲンを未変性の状態で可溶化して未変性のコラーゲンを含む中性塩溶液を生成するために、クラゲ類を低温で貯蔵する低温貯蔵工程と、中性塩溶液から未変性のコラーゲンを回収する回収工程とを有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、クラゲ類から有用物質であるコラーゲンを未変性の状態で効率的に可溶化し、回収する方法に関する。
海洋には漁獲対象とならない多様な生物種が分布しており、それらが海洋の生態系の保全に有用な働きをするほか、時には、単一種の異常発生で漁業その他の産業に多大の影響を与えることがある。近年、日本沿岸各地で、ミズクラゲやエチゼンクラゲが多量に発生し、漁業に多大の損害をもたらしている。また、工場や発電所の冷却水取水口には、漁業対象種のみならずミズクラゲやエチゼンクラゲ等の非漁業対象種を含め多様な海洋生物が多量に集まる。これら貴重な海洋生物資源が有効に利用されていないだけでなく、その除去・処理に多大のコストを必要としている。
そこで、取水口に集まるミズクラゲやエチゼンクラゲ等のクラゲ類を有効利用することが考えられている。クラゲ類を有効利用する方法として、クラゲからコラーゲンを抽出することが提案されている。主に畜産動物から製造されるコラーゲンは、食品、医薬品、工業製品への需要は極めて大きい。BSEの発生以来、コラーゲン原料を畜産動物のみに依存すること対しては原料供給や安全性の面で問題が生じている。そこで、クラゲ等の未利用海洋動物をコラーゲン原料として活用を図る試みが種々なされている。
クラゲからコラーゲンを抽出する技術としては、例えば、海中より回収したミズクラゲを−20℃で凍結解凍して、約4%の固形物とし、これより水溶性タンパク質を分離してコラーゲンとして利用する方法が考案されている(例えば特許文献1参照)。
また、クラゲを10mm角以下の大きさに細断して、pH6.0〜8.0の緩衝液中に入れ可溶化することによりコラーゲンを抽出し、緩衝液中に抽出したコラーゲンを塩析装置により析出させ、析出されたコラーゲンを脱水処理した後、凍結または乾燥する方法が考案されている(例えば特許文献2参照)。
また、クラゲを破砕・細断する第1の工程と、破砕・細断されたクラゲを分解・可溶化する第2の工程と、分解・可溶化されたクラゲから有用物質を粗精製する第3の工程とを具備することにより、クラゲ由来のプロテアーゼやコラーゲンを効率よく粗抽出する方法が考案されている(例えば特許文献3参照)。
また、ミズクラゲ組織を凍結後解凍させ、コラーゲンを可溶化し、得られたコラーゲンを回収する方法が考案されている(例えば非特許文献1参照)。
特開2003−321497号公報 特開2004−99513号公報 特開2001−178492号公報 福井県立大学海洋生物資源学科 第10回(2004年度)卒業論文発表会 要旨集
しかしながら、特許文献1の記載の方法により得られた水溶性タンパク質の性状については、当該文献中に記載がなく、コラーゲンとしていかなる純度を有するのか全く不明である。本来、未変性のコラーゲンは水に対して不溶であるため、回収されたコラーゲンは変性または低分子化を受けているものと推定される。このような方法によって回収された変性または低分子化を受けたコラーゲンを利用する際には、用途の選定が困難である。
また、特許文献2の方法では、ミズクラゲ1容量に対して5容量程度の緩衝液を加えて抽出を行うため、緩衝液の作製やコラーゲンの抽出を行うための広大なスペース及び緩衝液を作製するコストが必要となる。
特許文献3の方法では、第2の工程において処理温度は27℃〜37℃が好ましいとされており、この温度帯ではコラーゲンが変性している可能性が極めて高い。したがって、この条件にて酵素処理を行うと、コラーゲンが著しく低分子化しているものと想像されるが、回収されたコラーゲンの性状については当該文献中に記載がなく、コラーゲンとしていかなる純度を有するのかが全く不明である。さらに、抽出の際にはミズクラゲ1容量に対して5容量程度の水を加えるため、抽出を行うための広大なスペースが要求されるという課題が残されている。
また、非特許文献1の方法では、クラゲ類を凍結・解凍する必要があるため、冷凍設備が別途必要となり、コラーゲンの回収コストが上昇する。
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、クラゲ類から有用物質であるコラーゲンを未変性の状態で効率的に可溶化し、回収する方法を提供しようとするものである。
本発明のクラゲ類からのコラーゲン回収方法は、クラゲ類自身が有する内因性酵素を活性化してクラゲ類の体組織(細胞組織)の分解反応(酵素を触媒とする反応)を開始させ、クラゲ類が有するコラーゲンを未変性の状態で可溶化して未変性のコラーゲンを含む中性塩溶液を生成するために、クラゲ類を低温で貯蔵する低温貯蔵工程と、中性塩溶液から未変性のコラーゲンを回収する回収工程とを有することを特徴とする。
本発明のクラゲ類からのコラーゲン製造方法によれば、クラゲ自身が持つ内因性酵素を有効活用することにより、簡便な操作で未変性のコラーゲンを回収することが可能となる。
以下、本発明の実施形態であるクラゲ類からのコラーゲン回収方法について、図を参照して詳細に説明をする。
図1は、本発明の実施形態によるクラゲ類からのコラーゲン回収方法の各工程を説明する図である。
(低温貯蔵工程)
ステップ101(図中ではステップをSと略す。以下同じ。)では、クラゲ類をそのまま、または細断した後に、クラゲ類を所定の低温で貯蔵する工程である。
ステップ101では、クラゲ類が有するコラーゲンが未変性状態を維持できる所定の温度でクラゲ類を低温貯蔵する工程である。本低温貯蔵工程は、クラゲ類自身が有する内因性酵素を活性化して、クラゲ類の体組織(細胞組織)の分解反応(酵素を触媒とする反応)を開始させるものである。
本発明者らは鋭意研究の結果、クラゲの低温貯蔵時にコラーゲンを可溶化する酵素が働くことを見出した。
これは、本実施形態により得られた可溶化コラーゲンの電気泳動パターンに再現性があり、しかもマトリックスメタロプロテアーゼによって分解されたコラーゲンの電気泳動パターンと酷似していること、及び、メタロプロテアーゼの阻害剤(EDTA)の添加でコラーゲンの可溶化が抑制されること、などから可溶化の原因が酵素分解によることが明らかとなったからである。
本低温貯蔵工程においては、クラゲ類自身が有する内因性酵素が活性を有する温度で貯蔵を行う。貯蔵温度については、クラゲが凍結せず、かつコラーゲンが変性しない温度範囲、具体的には−2℃から25℃までの温度範囲とすることが好ましい。ただし、貯蔵時の腐敗を防ぐ観点から、4℃から10℃までの温度範囲とすることがさらに好ましい。
ここで、発明者らの評価の結果、特に4℃の温度において、クラゲ類自身が有する内因性酵素が優れた活性を有することが確認されたため、本低温貯蔵工程においては、4℃の温度で低温貯蔵を行うことが好ましい。
また、ステップ101では、クラゲ類を長時間低温貯蔵することにより、コラーゲンを未変性の状態で可溶化する。この低温貯蔵工程において、クラゲの体組織は内因性酵素による分解を受け、ほぼ完全に崩壊し、液状となる。クラゲの体液は海水に匹敵する塩分(約0.5mol/l)を含み、pHは7.4〜7.9である。このため、クラゲ類の体組織が液状化すると、緩衝液等を加えるまでもなく未変性のコラーゲンを含む中性塩溶液となる。
(撹拌工程)
ステップ102では、低温貯蔵したクラゲ類を撹拌することにより、クラゲの体組織を液状化させ、未変性のコラーゲンを含む中性塩溶液を生成する時間を短縮する工程である。
ミズクラゲの場合、低温(4℃)にて貯蔵して自然崩壊させるには約9日間を要するが、途中の段階で撹拌工程を入れることによって液状化するまでの時間を短縮させることが可能となる。
撹拌方法は、例えば、プロペラなどをクラゲ類を入れた容器に挿入してそれを回転させる、等の一般的な方法を用いればよい。また、撹拌時に気泡が生じない撹拌方法であることが好ましい。
撹拌工程は、クラゲ類が溶液状態になるまで、もしくは定常状態(ゴミや組織片などがまだ残っているがこれ以上変化しない状態)になるまで攪拌を行うものとする。撹拌工程時において、まだ溶解せずに残っている不溶物(ゴミ、組織片、その他混入物)が存在する場合には、ろ過や遠心分離によってそれらを除く工程を別途設けるのがよい。
また、本発明者らは鋭意研究の結果、クラゲ類が有するコラーゲンの変性温度は30〜34℃付近であり、20℃台後半から徐々に変性が始まることを見出した。
図7は、本発明の実施例により得られたコラーゲンの中性条件における変性温度を示す図である。
図に示すように、供試したすべてのコラーゲン分子が一度にその温度(中性条件では33.7℃)で変性するわけではなく、大体27〜30℃あたりから徐々に変性が始まり、変性温度にてピークを迎え、その後30℃台後半までにわたって未変性の分子数が減少していく、という山形の過程をたどることとなる。
図より、全く変性が起こっていないと考えてよい温度は、微妙な条件の違いによって若干変化する可能性があるため、かなり安全側をとって、25℃以下とすればよいことがわかる。
そこで、本撹拌工程では、上限温度として、20℃台後半、好ましくはコラーゲンの変性が起こらないことが確認された25℃以下の温度でクラゲ類の攪拌を行うものとする。これにより、コラーゲンが未変性の状態を維持することを可能としている。
また、上記低温貯蔵工程と同様に、コラーゲンの変性が生じない温度範囲内であり、かつ、クラゲ類自身が有する内因性酵素が活性を有する温度範囲内で行うことが好ましい。さらに好ましくは、本撹拌工程では、4℃から10℃までの温度範囲で撹拌を行うのがよい。
なお、クラゲ類を低温貯蔵する前に細断を行った場合は、細断後の組織片の大きさによっては、この撹拌工程を行うまでもなく中性塩溶液となる時間が短縮されるので、この工程を省略することが可能である。
また、未変性のコラーゲンを含む中性塩溶液が生成されるまで、低温貯蔵工程と撹拌工程とを交互に繰り返してもよい。
(回収工程)
ステップ103では、可溶化した未変性のコラーゲンを塩析法により回収する。塩析法は、コラーゲンに関しては未変性のものしか回収されず、簡易な精製も兼ねることが可能となるため、未変性のコラーゲンの回収に好適である。
未変性のコラーゲンは、終濃度4.4Mの塩化ナトリウムにより完全に沈殿するため、得られた中性塩溶液に4.4Mとなるように塩化ナトリウムを加えて、撹拌することにより効率よく未変性コラーゲンを回収することができる。
塩濃度に関しては、上記濃度に限られず、コラーゲンを回収するクラゲ類に応じて、未変性のコラーゲンが完全に沈殿する塩濃度となるように塩化ナトリウムを加えるものである。使用する塩については、塩化ナトリウムに限らず同じ機能を果たしうる塩(例えば、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムなど)が適用可能である。
なお、本実施形態においてはコラーゲンの回収を塩析法により行っているが、回収法は、これに限られず、例えば限外ろ過法やクロマトグラフィー法を用いることも可能である。また、一旦、限外ろ過法により中性塩溶液の濃縮を行った後に塩析することにより、塩の消費を抑えることが可能となる。
また、本回収工程においては、工程内の温度は、コラーゲンの変性が生じない温度範囲内で行うことが好ましい。さらに好ましくは、本回収工程では、4℃から10℃までの温度範囲で回収を行うのがよい。
以上説明したように、本実施形態のクラゲ類からのコラーゲン回収方法によれば、クラゲ類をそのまま、または細断した後、クラゲ類を低温で貯蔵し、撹拌することによりコラーゲンを未変性の状態で可溶化し、塩析法により回収することが可能となる。
本実施形態によるクラゲ類からのコラーゲン回収方法によれば、クラゲそのものの占めるスペース以外のスペースを必要とせず、緩衝液の作製に必要な試薬なども要しない。低温貯蔵により、クラゲの体組織は内因性酵素による分解を受け、ほぼ完全に崩壊し、液状となる。クラゲの体組織が液状化すると、未変性コラーゲンを含む中性塩溶液となる。
得られた中性塩溶液に4.4Mとなるように塩化ナトリウムを加えて、撹拌することにより効率よく、かつ、簡便な操作で未変性コラーゲンを回収することができる。また、中性条件下でクラゲ類の低温貯蔵をすることによって、分解が再現性よく起こり、中性条件下で塩沈殿を行うことにより、安定した性状を示すコラーゲンを得ることができる。
低温貯蔵により組織が崩壊する機構については、得られたコラーゲンの性状を生化学的手法により精査した結果、主にマトリクスメタロプロテアーゼ(金属要求性のコラーゲン分解酵素)による分解を受けていると考えられる。また、本発明の実施形態によるクラゲ類からのコラーゲン回収方法により得られるコラーゲンは、塩化ナトリウムに対する沈殿性や示差走査熱量分析により、三重らせん構造が保持された未変性コラーゲンであることが確認された。
本発明のクラゲ類からのコラーゲン回収方法の実施例について、以下に説明をする。ただし、本発明のクラゲ類からのコラーゲン回収方法は、以下の実施例に限定されるものではない。
(クラゲ類組織の低温貯蔵)
低温貯蔵工程におけるミズクラゲの組織の変化を明らかにするため、以下に示す[実験1]および[実験2]を行った。なお、これらの実験におけるミズクラゲの貯蔵条件を、実験1については表1、実験2については表2に示した。


[実験1]
本実験の概要を図2および図3に示す。ミズクラゲ組織について、4℃貯蔵下における組織崩壊の様態を観察・撮影した。また、ほぼ完全に組織崩壊したと判断された時点(9日後)で遠心分離に供し、回収した上清に終濃度4.4MになるようNaClを加えた。生じた沈殿を蒸留水に対して透析した後、凍結乾燥しSDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)に供した(実施例1,2)。
凍結・解凍し、ホモジナイズ後、2時間撹拌したミズクラゲ組織についても同様に操作し、比較対象とした(比較例1,2)。なお、この凍結・解凍による方法は、本発明者らにより、未変性コラーゲンを安定して回収可能であることが確認された方法である(例えば、非特許文献1参照)。
[実験2]
本実験の概要を図4に示す。ミズクラゲ1個体をミクロトーム刃を用いて6分割し、4℃貯蔵下で5日後まで観察して、それぞれ日数経過ごとに採取した試料の一部を凍結乾燥した。凍結乾燥試料はスピードカッターにて粉砕後、SDS-PAGEに供した。
(回収したコラーゲンのSDS-PAGE分析)
組織中のコラーゲンおよびタンパク質を確認するため、マイクロテストチューブに量りとった試料にサンプルバッファー(0.5M Tris-HCl、10% SDS、グリセロール、1% BPB)を加え、80℃、3分間加熱後7.5% ゲルを用いてSDS-PAGEに供した。泳動後のゲルはコマジーブリリアントブルー(CCB-R250)により染色した。分子量マーカーとして、Sharpline(登録商標) Broad range markers(TOYOBO)を用いた。
タンパク質組成として、ミオシンH鎖(227kDa)、β-ガラクトシダーゼ(116kDa)、フォスホリラーゼb(97.2kDa)、血清アルブミン(66.4kDa)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(55.6kDa)、オボアルブミン(45kDa)、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(35.7kDa)、プレステインドカルボニックアンヒドラーゼ(約31.3kDa)、カルボニックアンヒドラーゼ(29kDa)、トリプシンインヒビター(20.1kDa)、リゾチーム(14.3kDa)、アプロチニン(6.5kDa)が挙げられる。
(実験結果)
[実験1]
ミズクラゲの外観は、1日間の貯蔵ではほとんど変化が認められなかったが、2日後より肉眼的に組織崩壊が始まっていた。3日後あたりまで両個体ともかろうじて傘部の形態を保持していたが、個体No.1については4日以降は傘部の形態がかなり崩壊していた。
さらに両個体とも9日後においてはほぼ完全に形態が崩壊し、わずかに組織片が残っていたものの、ほとんどが液状となった。また、組織崩壊の進行速度にはかなりの個体差があることが分かった。両個体とも、5−7日後あたりから腐敗臭を発生しはじめ、9日後ではかなり腐敗が進行した状態であった。これらの結果は、ミズクラゲ組織を4℃という冷却条件に置いた場合、組織が完全に崩壊するのにほぼ9日程度の日数を要することを示している。
(回収したコラーゲンのSDS-PAGE分析)
凍結乾燥物またはクロマトグラフィーによって得られた画分について、SDS-PAGEを行うことにより、それらの性状を調べた。
図5は、個体番号1〜4からの回収物A、BのSDS-PAGEパターンを示す図である。図中の「M」はマーカーを示し、「1」は個体番号1からの回収物Aを示し、「2」は個体番号2からの回収物Aを示し、「3」は個体番号3からの回収物Bを示し、「4」は個体番号4からの回収物Bを示す。また、像の左側にマーカーの分子量(kDa)を示す。
回収物A,B(実施例1、2、比較例1、2)は、130−150K付近に2本の主要バンド(図中のα鎖)を示し、さらに97K付近に2本、50K付近に1本のバンド(図中の分解産物)を示すなど、マトリクスメタロプロテアーゼにより三重らせん領域の1箇所が分解されたコラーゲンが示す典型的なパターンを示した。
9日間貯蔵した試料より得た実施例1、2の回収物Aは、比較例1、2のミズクラゲの凍結・解凍法により得た回収物Bに類似したSDS-PAGEパターンを示し、本実施例の低温貯蔵によるコラーゲン回収方法の妥当性が証明された。
これらの結果は、腐敗した状態にあると考えられる試料からでもコラーゲンを回収することが可能であり、しかも、回収されたコラーゲンが比較例1、2の凍結・解凍法により得られる部分分解コラーゲンとほぼ同様の性状を維持していることを示唆するものである。
また、これらの結果は、自然界で起こると考えられるミズクラゲの自然消滅現象が、凍結・解凍時による組織崩壊と基本的に同じメカニズムによる、すなわち同じ鍵酵素によることを示唆するものである。
[実験2]
ミズクラゲ組織を4℃下で5日後まで貯蔵したところ、実験1と同様に崩壊が徐々に進行する様子が観察できた。コントロール試料および1日〜5日間低温貯蔵したミズクラゲ組織の凍結乾燥物のSDS-PAGEパターンを図6に示す。Mはマーカーであり、0〜5はそれぞれの経過日数を示している。また、像の左側にマーカーの分子量(kDa)を示す。コントロールを含むすべての貯蔵実験区おいて130-150K付近に2本のコラーゲン性の成分が認められたが、これらは凍結・解凍法によって得られる部分分解コラーゲンの主要成分に一致するものである。
つまり、これらの成分は3重らせん領域においてマトリクスメタロプロテアーゼによる分解を受けておらず、3重らせん領域が保持された状態のα鎖であると考えられる。一方、マトリクスメタロプロテアーゼによって3重らせん領域の分解を受けた結果として生ずると考えられる97K付近の成分については、実験1の場合と同様に2本認められるがそれらの比は一定していない。
しかしながら、いずれの貯蔵条件についても互いに類似したSDS-PAGEパターンを示したことからコラーゲンの性状自体には大きな変化がないものと考えられ、このことは実験1において得られた結果とも一致する。
本実施例では、ミズクラゲの自然消滅メカニズムを解明するためのモデル実験として、一定の温度条件下(4℃)にて貯蔵した場合にミズクラゲ組織がどのような変化をするかについて検討した。その結果、組織が当該条件にて崩壊するのに約9日の時間を要する点、崩壊の結果得られる溶液中には凍結・解凍法によって得られるコラーゲンとSDS-PAGEにおいて同等の性状を有する点、などが明らかとなり、凍結・解凍を行った場合の組織崩壊と基本的には同じメカニズムで組織崩壊が起こることが示唆された。
また、本実施例の結果から、本発明者らにより未変性コラーゲンを安定して回収可能であることが確認された方法である凍結・解凍のみならず低温貯蔵もミズクラゲのコラーゲンの可溶化法として取り入れることが可能であると思われる。原料としてのミズクラゲを漁獲した直後にコラーゲンの製造に移る必要がある場合は、凍結・解凍の過程を省略してそのまま低温下で貯蔵するだけで容易に部分分解コラーゲンを得ることができ、一方原料を長期間貯蔵する必要がある場合は凍結貯蔵しておき必要なときに解凍すればよいことになる。
本発明の実施形態によるクラゲ類からのコラーゲン回収方法の各工程を説明する図である。 本実施例の評価実験1に採用したクラゲ組織の低温貯蔵方法の概要を示す図である。 本実施例の評価実験1に採用したクラゲ組織の低温貯蔵方法の概要を示す図である。 本実施例の評価実験2に採用したクラゲ組織の低温貯蔵方法の概要を示す図である。 本実施例の評価実験1の個体番号1〜4からの回収物A、BのSDS-PAGEパターンを示す図である。 本実施例の評価実験2のコントロール試料および1日〜5日間低温貯蔵したミズクラゲ組織の凍結乾燥物のSDS-PAGEパターンを示す図である。 本発明の実施例により得られたコラーゲンの中性条件における変性温度を示す図である。

Claims (10)

  1. クラゲ類自身が有する内因性酵素を活性化してクラゲ類の分解反応を開始させ、クラゲ類が有するコラーゲンを未変性の状態で可溶化して前記未変性のコラーゲンを含む中性塩溶液を生成するために、クラゲ類を所定の低温で貯蔵する低温貯蔵工程と、
    前記中性塩溶液から前記未変性のコラーゲンを回収する回収工程と、
    を有することを特徴とするクラゲ類からのコラーゲン回収方法。
  2. 前記低温貯蔵工程は、
    前記クラゲ類が凍結せずかつ前記クラゲ類が有するコラーゲンが変性しない所定の温度範囲で行われることを特徴とする請求項1に記載のクラゲ類からのコラーゲン回収方法。
  3. 前記クラゲ類が凍結せずかつ前記クラゲ類が有するコラーゲンが変性しない所定の温度範囲は、−2℃から25℃までの温度範囲であることを特徴とする請求項2に記載のクラゲ類からのコラーゲン回収方法。
  4. 前記低温貯蔵したクラゲ類を撹拌する撹拌工程を、さらに含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のクラゲ類からのコラーゲン回収方法。
  5. 前記低温貯蔵工程を除く前記各工程は、
    クラゲ類が有するコラーゲンが未変性状態を維持できる所定の温度以下で行われることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のクラゲ類からのコラーゲン回収方法。
  6. 前記クラゲ類が有するコラーゲンが未変性状態を維持できる所定の温度は、25℃であることを特徴とする請求項5に記載のクラゲ類からのコラーゲン回収方法。
  7. 前記低温貯蔵工程を除く前記各工程は、
    クラゲ類自身が有する内因性酵素が活性を有する所定の温度以上で行われることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のクラゲ類からのコラーゲン回収方法。
  8. 前記クラゲ類自身が有する内因性酵素が活性を有する所定の温度は、4℃であることを特徴とする請求項7に記載のクラゲ類からのコラーゲン回収方法。
  9. 前記回収工程において、前記未変性のコラーゲンを塩析法により回収することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のクラゲ類からのコラーゲン回収方法。
  10. 前記内因性酵素には、メタロプロテアーゼが含まれることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のクラゲ類からのコラーゲン回収方法。
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