JP2008029757A - 歯の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持担体の内部に、少なくともいずれか一方が歯胚由来である間葉系細胞及び上皮系細胞のいずれか一方のみから実質的になる第1の細胞集合体と、いずれか他方のみから実質的になる第2の細胞集合体とを接触させて配置する配置工程と、前記第1及び第2の細胞集合体を前記支持担体の内部で培養する培養工程とを含む歯の製造方法であって、前記上皮系細胞のみから実質的になる細胞集合体を、エナメル結節を構成する細胞領域を、目的とする歯の数と同一の数で含むものとする。
【選択図】図9
Description
歯は、胎児期の発生過程の誘導によって形成され、複数の細胞種によって構築された機能単位であり、器官や臓器と同じであると考えられている。そのため歯は、成体内の造血幹細胞や間葉系幹細胞のような幹細胞から細胞種が発生する幹細胞システムによって発生するのではなく、現在、再生医療によって進められている幹細胞の移入のみ(幹細胞移入療法)では歯を再生することができない。また、歯の発生過程で特異的に発現する遺伝子を同定し、歯胚を人為的に誘導することによる歯の再生も考えられているが、遺伝子を特定しただけでは、歯の再生を完全に誘導することができない。
そこで、近年、単離された歯胚細胞を用いて歯胚を再構成させて、この再構成歯胚を移植することによる歯の再生を中心とした検討が行われている。
また、非特許文献2には、継代された培養細胞による上皮−間葉相互作用が実現可能な系とし、コラーゲンゲルによる共培養が有効であると記載されている。
歯胚の再生方法としては、例えば、特許文献1には、歯胚細胞を、線維芽細胞増殖因子等の生理活性物質の存在下で培養することが記載されている。また、特許文献2には、歯胚細胞及びこれらの細胞に分化可能な細胞のうち少なくとも1種類を、フィブリンを含む担体と一緒に培養することが提案されており、ここでフィブリンを含む担体は、歯胚の目的形状のものを使用して、特有の形態を有する「歯」を形成すると記載されている。
一方、特許文献5には、骨の欠損又は損傷を有する患者を治療するための歯の再生方法を開示している。この方法によれば、ポリグリコール酸メッシュ担体に間葉系細胞を播種した後に、上皮系細胞をコラーゲンと共に重層する又は上皮細胞シートで包むことによって、骨が形成される。なお、特許文献5では、骨の形状を構築するために担体を用いている。
J. Dent. Res., 2002, Vol.81(10), pp.695-700 「歯および歯胚由来細胞を用いた再生医療とその可能性」、再生医療 日本再生医療学会雑誌、2005年、Vol.4(1), pp.79-83
要求される歯の数は状況により異なる。培養により歯を作製するには時間がかかるため、当初より目的とする数に対して過不足なく作製することが効率面から求められる。
(1) 支持担体の内部に、少なくともいずれか一方が歯胚由来である間葉系細胞及び上皮系細胞のいずれか一方のみから実質的になる第1の細胞集合体と、いずれか他方のみから実質的になる第2の細胞集合体とを接触させて配置する配置工程と、前記第1及び第2の細胞集合体を前記支持担体の内部で培養する培養工程とを含み、前記上皮系細胞のみから実質的になる細胞集合体が、エナメル結節を構成する細胞領域を、目的とする歯の数と同一の数で含むものである歯の製造方法である。
(2) 前記第1の細胞集合体を調製する第1の調製工程と、前記第2の細胞集合体を調製する第2の調製工程とを、前記配置工程の前に含むことを特徴とする前記(1)に記載の歯の製造方法である。
(3) 前記第1の細胞集合体及び前記第2の細胞集合体の少なくとも一方が単一細胞集合物であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の歯の製造方法である。
(4) 前記培養工程を他の動物細胞の存在下に行うことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の歯の製造方法である。
(5) 前記培養工程を、歯周組織が形成されるまで継続することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の歯の製造方法である。
(6) 前記上皮系細胞のみから実質的になる細胞集合体が、ソニックヘッジホッグ遺伝子(以下、Shhと略記する)発現細胞で構成されたShh発現領域を更に含むことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の歯の製造方法である。
(7) 前記ソニックヘッジホッグ遺伝子発現領域の数を、目的とする歯の形態に応じて決定することを特徴とする前記(6)に記載の歯の製造方法である。
(8) 前記ソニックヘッジホッグ遺伝子発現細胞が、上皮系細胞であることを特徴とする前記(6)又は(7)に記載の歯の製造方法である。
第1及び第2の細胞集合体の緊密な接触状態によって細胞間相互作用を効果的に再現することができ、内側に象牙質、外側にエナメル質、歯冠、歯根、歯髄、歯周組織など歯に特有の層構造を有する歯を製造することができる。
製造する歯の数を制御することができることにより、歯の製造を効率的に行うことができる。また、歯の製造に適した支持担体の大きさ、使用する間葉系細胞又は歯胚間葉組織に分化可能な細胞の細胞数等の選択が容易になる。
象牙質及びエナメル質は、当業者には、組織染色などによって形態的に容易に特定することができる。また、エナメル質は、エナメル芽細胞の存在によって特定することができ、エナメル芽細胞の存在は、アメロジェニン、あるいはその遺伝子の発現の有無によって確認することができる。一方、象牙質は、象牙芽細胞の存在によって特定することができ、象牙質芽細胞の存在は、デンチンシアロプロテイン、あるいはその遺伝子の発現の有無によって確認することができる。アメロジェニン及びデンチンシアロプロテインの確認はこの分野で周知の方法によって容易に実施することができ、例えば、in situ ハイブリダイゼーション、抗体染色等をあげることができる。
なお、本発明において「間葉系細胞」とは、間葉組織由来の細胞を意味し、「上皮系細胞」とは上皮組織由来の細胞を意味する。
歯胚は、図1に示されるように個体発生の過程で、蕾状期、帽状期、鐘状前期及び後期の各ステージを経て行われる。ここで、蕾状期では、上皮系細胞が間葉系細胞を包むように陥入し(図1(A)及び(B)参照)、鐘状前期及び鐘状後期に至ると、上皮系細胞部分が外側のエナメル質となり、間葉系細胞部分が内部に象牙質を形成するようになる(図1(C)及び(D)参照)。従って、上皮系細胞と間葉系細胞との細胞間相互作用によって歯胚が形成する。
本発明における間葉系細胞及び上皮系細胞は、歯胚を形成する又は形成する可能性がある上記蕾状期から鐘状後期までのもの(以下、単に「歯胚」という)であればよく、細胞の分化段階の幼若性と均質性の観点から蕾状期から帽状期からのものであることが好ましい。
上記配置工程では、上記第1及び第2の細胞集合体を、細胞の接触状態を保持可能な支持担体の内部に配置するので、それぞれの細胞集合体を構成する細胞が、他の細胞集合体を構成する細胞と混合することがない。このように上記配置工程では、各細胞集合体を混合することなく配置するので、細胞集合体の間に境界線が形成される。このような配置形態を、本明細書中では適宜「区画化」と表現する。
本製造方法で用いられる間葉系細胞及び上皮系細胞は、生体内での細胞配置を再現して特有の構造及び方向性を有する歯を効果的に形成するために、少なくともいずれか一方が歯胚に由来するものであればよいが、確実に歯を形成させるためには、間葉系細胞及び上皮系細胞のいずれもが共に歯胚由来であることが最も好ましい。
また、歯胚以外に由来する上皮系細胞としては、生体内の他の上皮系組織に由来する細胞であり、好ましくは、皮膚や口腔内の粘膜や歯肉の上皮系細胞、さらに好ましくは皮膚や粘膜などの分化した、例えば角化した、あるいは錯角化した上皮系細胞を生み出しうる未熟な上皮系前駆細胞、たとえば非角化上皮系細胞やその幹細胞等を挙げることができる。
このとき、歯胚組織は顕微鏡下で構造的に見分けることが可能であるため、解剖用ハサミやピンセット等で切断、あるいは引き剥がすことによって容易に分離することができる。また、歯胚組織からの歯胚間葉組織及び歯胚上皮組織の分離は、その形状に従って注射針、タングステンニードル、ピンセット等で切断、あるいは引き剥がすことにより容易に行うことができる。歯胚以外の組織においても歯胚組織と同様に行なうことができる。
好ましくは、周囲組織から歯胚細胞を容易に分離するため及び/又は歯胚組織から上皮組織及び間葉組織を分離するために、酵素を用いてもよい。このような用途に用いられる酵素としては、ディスパーゼ、コラーゲナーゼ、トリプシン等を挙げることができる。
また、本発明においては、前記Shh発現領域の数を、目的とする歯の形態に応じて決定することが好ましい。
本発明においては、Shh発現細胞の細胞凝集塊を構成する細胞の数は、大きさ及び作製する歯の数や形態によって異なるが、細胞集合体1個あたり、一般に1〜108個、好ましくは101〜105個とすることができる。
なお、ここで支持担体は、第1及び第2の細胞集合体が担体内部で成育することができる程度の厚みを有すればよく、目的とする組織の大きさ等によって適宜設定することができる。
高密度の状態とは、組織を構成する際の密度と同等程度であることをいい、例えば、細胞集合体の場合、細胞配置時で5×107〜1×109個/ml、細胞の活性を損なわずに確実に細胞相互作用させるため好ましくは1×108〜1×109個/ml、最も好ましくは2×108〜8×108個/mlの密度をいう。このような細胞密度に細胞集合体を調製するには、細胞を遠心によって凝集させ沈殿化することが細胞の活性を損なわずに簡便に高密度化できるため好ましい。このような遠心は、細胞の生存を損ねない300〜1200×g、好ましくは500〜1000×gの遠心力に該当する回転数で3〜10分間おこなえばよい。300×gよりも低い遠心では、細胞の沈殿が不十分となって細胞密度が低くなる場合があり、一方、1200×gよりも高い遠心では細胞が損傷を受ける場合があるため、それぞれ好ましくない。
培養工程は、支持担体によって第1の細胞集合体と第2の細胞集合体との接触状態が維持されて行われればよく、第1及び第2の細胞集合体を有する支持担体単独による培養であっても、他の動物細胞の存在下での培養であってもよい。
培養期間としては、支持担体内部に配置された細胞数及び細胞集合体の状態、更には培養工程の実施条件によって異なるが、一般に、1〜300日、エナメル質を外側に有し、象牙質を内側に有する歯を形成するためには、好ましくは1〜120日、迅速に提供可能とする観点からは、好ましくは1〜60日とすることができる。更に歯周組織を備えた歯とするためには、一般に1〜300日、好ましくは1〜60日とすることができる。
また、組織や細胞集合体のガス交換や栄養供給の観点から器官培養を用いることが好ましい。器官培養では、一般に、動物細胞の増殖に適した培地上に多孔性の膜をフロートさせ、その膜上に支持担体で包埋された細胞集合体を置いて培養を行う。ここで用いられる多孔性の膜は、0.3〜5μm程度の孔を多数有した膜であることが好ましく、具体的にはセルカルチャーインサート(商品名)、アイソポアフィルター(商品名)を挙げることができる。
この用途に利用可能な動物は、哺乳動物、例えばヒト、豚、マウス等を好ましく挙げることができ、歯胚組織と同一の種に由来するものであることが更に好ましい。ヒト歯胚組織を移植する場合には、ヒト、又は免疫不全に改変したヒト以外の他の哺乳動物を用いることが好ましい。このような生体内成育に好適な生体部位としては、動物細胞の器官や組織をできる限り正常に発生させるためには、腎臓皮膜下、腸間膜、皮下移植等が好ましい。
移植による成育期間としては、移植時の大きさと発生させる歯の大きさによって異なるが、一般に、3〜400日とすることができる。例えば、腎臓皮膜下への移植期間は移植する培養物の大きさと作製する歯の大きさによっても異なるが、歯の作製と移植先で発生させる歯の大きさの観点から7〜60日間であることが好ましい。
前培養の期間は短期であっても長期であってもよい。長期間、例えば3日以上、好ましくは7日以上とした場合には、歯胚から歯芽に段階移行させることができ、その結果、移植後に歯ができるまでの期間を短縮することもできるため好ましい。前培養の期間としては、例えば腎臓皮膜下へ移植を行う場合の器官培養として、好ましくは1〜7日とすることが効率よく歯を再生するために好ましい。
(歯胚間葉系細胞と歯胚上皮系細胞の調製)
歯の形成を行うために、歯胚の再構築を行った。この実験モデルとしてマウスを用いた。
C57BL/6Nマウス(日本クレアから購入)の胎齢14.5日、胚仔から下顎切歯歯胚組織を顕微鏡下で常法により摘出した。下顎切歯歯胚組織をCa2+,Mg2+不含リン酸緩衝液(PBS(−))で洗浄し、PBS(−)に最終濃度1.2U/mlのディスパーゼ II (Roche, Mannheim, Germany)を添加した酵素液で室温にて12.5分間処理した後、10%FCS(JRH Biosciences, Lenexa, KS)を添加したDMEM(Sigma, St. Louis, MO)で3回洗浄した。さらにDNase I溶液(Takara, Siga, Japan)を最終濃度70U/mlになるよう添加し歯胚組織を分散させ、25G注射針(Terumo, Tokyo, Japan)を用いて外科的に歯胚上皮組織と歯胚間葉組織を分離した。
シリコングリースを塗布した1.5mLマイクロチューブ(Eppendorf, Hamburg, Germany)に、10%FCS(JRH Biosciences) 添加DMEM(Sigma)で懸濁した歯胚上皮系細胞を入れ、遠心分離(580×g)により細胞を沈殿として回収した。遠心後の培養液の上清をできる限り除去し、再度遠心操作を行い、実体顕微鏡で観察しながら細胞の沈殿周囲に残存する培養液を GELoader Tip 0.5−20μL (eppendorf) を用いて完全に除去し、再構成歯胚作製に用いる細胞を準備した。
次に、上記で調製された歯胚上皮系細胞及び歯胚間葉系細胞を用いて、歯胚再構築を行った。
シリコングリースを塗布した1.5mLマイクロチューブ(Eppendorf, Hamburg, Germany)に、10%FCS(JRH Biosciences)添加DMEM(Sigma)で懸濁した歯胚上皮系細胞、あるいは歯胚間葉系細胞を入れ、遠心分離(580×g)により細胞を沈殿として回収した。遠心後の培養液の上清をできる限り除去し、再度遠心操作を行い、実体顕微鏡で観察しながら細胞の沈殿周囲に残存する培養液を GELoader Tip 0.5−20μL(eppendorf)を用いて完全に除去し、再構成歯胚作製に用いる細胞を準備した。
シリコングリースを塗布したペトリディッシュに、2.4mg/mlの濃度に上記培養液で調製したCellmatrix type I-A(Nitta gelatin, Osaka, Japan)を30μL滴下してコラーゲンゲル溶液のドロップ(ゲルドロップ)を作製した。この溶液に、歯胚間葉系細胞の遠心後の沈殿を、0.1−10μLのピペットチップ(Quality Scientific plastics)を用いて、0.2−0.3μLアプライして、細胞集合体としての細胞凝集塊を作製した。次いで、先に作製した歯胚間葉系細胞の細胞凝集塊に接するように、歯胚上皮系細胞を同様の方法によりアプライして細胞凝集塊を作製し、両者が互いに密接するようにして再構成歯胚を作製した。
ピペットチップ16で先にゲルドロップ10内に配置された細胞凝集塊12は、ゲルドロップ10内で球体を構成する(図2(B)参照)。この後に他方の細胞凝集塊14を押し込むことによって、球体の細胞凝集塊12がつぶされて、他方の細胞凝集塊14を包むようになることが多い(図2(C)参照)。その後にゲルドロップ10を固化させることにより、細胞間の結合が強固になる(図2(D)参照)。
ゲルドロップ中で作製した再構成歯胚は、CO2インキュベーターに10分間静置してCellmatrix type I-A (Nitta Gelatin)を固化し、10%FCS(JRH) 添加DMEM(Sigma)にセルカルチャーインサート(ポアサイズが0.4ミクロンのPETメンブレン;BD, Franklin Lakes, NJ)が接するようにセットした培養容器のセルカルチャーインサートの膜上に、細胞凝集塊を支持担体である周囲のゲルと共に移して、18−24時間、器官培養した。培養後、周囲のゲルごと8週齢C57BL/6の腎皮膜下に移植して異所的な歯の発生を進行させて、歯を作製した。
移植後10日目に周囲の腎組織ごと再構成歯胚を摘出し、4%パラホルムアルデヒド−リン酸緩衝液で6時間固定した後、4.5%のEDTA(pH7.2)で24時間脱灰し、常法によりパラフィン包埋して、10μmの厚さで切片化した。各切片について、組織学的解析のために常法に従い、ヘマトキシリン−エオジン染色を行った。結果を図3に示す。
(再構成歯胚の作製)
参考例と同様にして、調製した歯胚上皮組織及び歯胚間葉系細胞を用いて、1つの歯胚から分離した上皮組織(エナメル結節を1つ含む)と、他の1つの歯胚から分離した間葉系組織由来の細胞凝集塊とを用いて、参考例と同様にして歯胚再構築を行った。特に上皮組織の歯胚における組織境界面側を、タングステン針を用いて上記細胞凝集塊に密着させた。
参考例と同様にして再構成歯胚を培養し、組織学的解析を行った。組織学的解析では、全切片サンプルの全領域を撮影し、画像解析ソフトウェア(imaris、Zeiss社製)を用いて組織構造を立体的に再構築して観察した。結果を図4に示す。
再構成歯胚の作製において、エナメル結節を含む上皮組織を2つ用いて、それぞれの上皮組織を1つの間葉系細胞凝集塊に密着させた以外は、実施例1と同様にして歯を作製し、組織学的解析を行った。尚、各上皮組織は別々の歯胚から分離したものを用いた。結果を図5に示す。
再構成歯胚の作製において、歯胚から分離した上皮組織の代わりに、歯胚上皮組織からエナメル結節以外の周辺組織を取り除いた部分組織を2個用いた以外は、実施例1と同様にして歯を製造し、組織学的解析を行った。尚、上記2つの部分組織は、別々の歯胚組織から分離したエナメル結節を含む歯胚上皮組織から、それぞれ組織中心部の肥厚したエナメル結節以外の領域を外科的に取り除いて作製した。結果を図6に示す。
(Shh発現細胞塊の作製)
常法により、Mouse Shh cDNA clone(Mouse IMAGE cDNA Clones, EMM1002、Open Biosystemsから購入)を制限酵素(EcoRI及びNotI)で処理してShh全長を含むDNAフラグメント(配列番号1)を得た。これを同じ制限酵素で処理したpMXs-IG vector(参考文献; Exp. Hematol., 2003, Vol.31, pp.1007-1014)へとサブクローニングした。得られたベクターを、FuGENE(商品名、Roche社製)を用いて、メーカ指定の方法でPLAT-E細胞(参考文献; Exp. Hematol., 2003, Vol.31, pp.1007-1014)へと導入した。PLAT-Eを10%FCS添加DMEMに1μg/mLのPuromycin (Sigma)と10μg/mLのBlastcidine (Invitrogen)を添加した培地で培養した。PLAT-Eの培養上清を用いて、C57BL/6Nマウス(日本エスエルシーから購入)の胎齢18.5日、胚仔由来の臼歯歯胚上皮細胞から樹立された細胞株に、前記ベクターを導入した。ベクターを導入した細胞株から、セルソーターEPICS ALTRA(Beckman, Fullerton, CA, USA)を用いてShh発現細胞を取得した。
得られたShh発現細胞について、下記表1に示したShh特異的プライマーペア(センスプライマー:配列番号2、アンチセンスプライマー:配列番号3)を用いて、Shhを発現していることを確認した。
実施例1と同様にして作製したゲルドロップ中の細胞凝集塊(歯胚由来の間葉系細胞集合体)上に、上記Shh発現細胞塊を押し付けた。更にその上にShh発現細胞塊とエナメル結節が重ならないように、エナメル結節を含む上皮組織を1個だけゲルドロップ中に移した後、組織の歯胚における組織境界面側を、タングステン針を用いて上記細胞凝集塊に密着させて再構成歯胚を作製した。
実施例1における再構成歯胚の作製において、エナメル結節を含む上皮系細胞からなる部分組織の代わりに、エナメル結節を外科的に除去した歯胚由来の上皮系細胞からなる部分組織を2個用いて、それぞれの部分組織が接触しないように間葉系細胞凝集塊に密着させた以外は、実施例1と同様にして歯を作製し、組織学的解析を行った。結果を図8に示す。
エナメル結節を構成する細胞領域を含む1つの上皮組織と歯胚由来の間葉系細胞集合体から、1個の歯が形成される(図9(A)、実施例1)。また、エナメル結節を構成する細胞領域を含む上皮組織を2つ用いることで2個の歯が形成される(図9(B)、実施例2)。また、歯胚由来の上皮組織からエナメル結節を取り除くと、歯が形成されない(図9(C)、比較例1)。また、歯胚上皮組織からエナメル結節以外の周辺組織を取り除いた部分組織のみを2つ用いた場合も2個の歯が形成される(図9(D)、実施例3)。更に、エナメル結節を構成する細胞領域を含む1つの歯胚由来の上皮組織に加えて、Shh発現細胞集合体を用いることで、歯冠が2つ誘導された1個の歯が形成される(図9(E)、実施例4)。
12 細胞凝集塊(第1の細胞集合体)
14 細胞凝集塊(第2の細胞集合体)
16 ピペットチップ
Claims (8)
- 支持担体の内部に、少なくともいずれか一方が歯胚由来である間葉系細胞及び上皮系細胞のいずれか一方のみから実質的になる第1の細胞集合体と、いずれか他方のみから実質的になる第2の細胞集合体とを接触させて配置する配置工程と、
前記第1及び第2の細胞集合体を前記支持担体の内部で培養する培養工程とを含み、
前記上皮系細胞のみから実質的になる細胞集合体が、エナメル結節を構成する細胞領域を、目的とする歯の数と同一の数で含むものである歯の製造方法。 - 前記第1の細胞集合体を調製する第1の調製工程と、前記第2の細胞集合体を調製する第2の調製工程とを、前記配置工程の前に含むことを特徴とする請求項1に記載の歯の製造方法。
- 前記第1の細胞集合体及び前記第2の細胞集合体の少なくとも一方が単一細胞集合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯の製造方法。
- 前記培養工程を他の動物細胞の存在下に行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯の製造方法。
- 前記培養工程を、歯周組織が形成されるまで継続することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯の製造方法。
- 前記上皮系細胞のみから実質的になる細胞集合体が、ソニックヘッジホッグ遺伝子発現細胞で構成されたソニックヘッジホッグ遺伝子発現領域を更に含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯の製造方法。
- 前記ソニックヘッジホッグ遺伝子発現領域の数を、目的とする歯の形態に応じて決定することを特徴とする請求項6に記載の歯の製造方法。
- 前記ソニックヘッジホッグ遺伝子発現細胞が、上皮系細胞であることを特徴とする請求項6又は7記載の歯の製造方法。
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