本発明は、内燃機関の始動制御装置および燃料性状判定装置に係り、特に、内燃機関の始動時に始動制御を実行する内燃機関の始動制御装置、および、内燃機関に供給される燃料の性状を判定する燃料性状判定装置に関する。
従来、内燃機関に供給される燃料の性状に応じて燃料噴射量を補正する装置が知られている(例えば、非特許文献1参照)。内燃機関に供給される燃料には、揮発性の低い成分が多量に含まれる燃料(以下、重質燃料と称す)と、揮発性の高い成分が多量に含まれる燃料(以下、軽質燃料と称す)とがある。内燃機関への燃料が重質燃料である場合は、軽質燃料の場合に比して燃料が気化し難いため、内燃機関の安定した運転が得られないおそれがある。上記従来の装置においては、内燃機関の始動が開始された後、始動が完了するまでの始動時間を検出し、その始動時間に基づいて燃料性状が重質であるか否かを判別する。そして、判別された燃料性状に応じて内燃機関への燃料噴射量を補正する。従って、上記従来の装置によれば、燃料性状にかかわらず、内燃機関において安定した運転を確保することが可能となる。
トヨタ技術公開集−発行番号4139(発行日1991年3月29日)
上述の如く、上記従来の装置においては、内燃機関の始動が開始された後、始動が完了するまでの始動時間に基づいて燃料性状が判別される。すなわち、内燃機関の始動が完了しなければ、燃料性状が判別されることがない。従って、上記従来の装置では、燃料性状が重質である状況下で、内燃機関を始動すべく通常時と同様の始動制御が行われると、内燃機関の始動が長時間にわたって継続することとなり、内燃機関において優れた始動性を確保することができないおそれがある。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、燃料性状にかかわらず優れた始動性を確保することが可能な内燃機関の始動制御装置を提供することを第1の目的とし、かかる装置において燃料性状を適正に判定することが可能な燃料性状判定装置を提供することを第2の目的とする。
上記第1の目的は、請求項1に記載する如く、軽質燃料に対応した第1の始動制御と、重質燃料に対応した第2の始動制御とを実行し得る始動制御手段を備え、前記第1の始動制御による内燃機関の始動開始後、所定時間内に始動が完了しない場合に、前記第1の始動制御から前記第2の始動制御へ切り換える内燃機関の始動制御装置により達成される。
本発明において、軽質燃料に対応した第1の始動制御により内燃機関の始動が開始された後、所定時間内に始動が完了しない場合は、燃料性状が重質であることに起因して、内燃機関の始動が速やかに完了しないと判断できる。この場合、第1の始動制御から重質燃料に対応した第2の始動制御に始動制御が切り換えられる。従って、本発明によれば、燃料性状が重質である場合にも内燃機関を確実に始動させることができる。
請求項2に記載する如く、請求項1記載の内燃機関の始動制御装置において、前記始動制御手段は、内燃機関の前回の始動時における燃料性状に応じて前記第1又は第2の始動制御を実行すると共に、内燃機関を動力源にして発電する発電機と、前記第2の始動制御により内燃機関の始動が開始された場合に、始動が完了した後の前記発電機の発電量に基づいて燃料性状を判定する燃料性状判定手段と、を備える内燃機関の始動制御装置は、重質燃料に対応した第2の始動制御により始動が開始された場合に燃料性状を判定するうえで有効である。
本発明において、内燃機関の始動時、前回の始動時における燃料性状に応じて第1の始動制御又は第2の始動制御が実行される。第2の始動制御により内燃機関の始動が開始されると、今回の燃料性状が重質であっても、内燃機関の始動は短時間で完了する。このため、第2の始動制御により内燃機関の始動が開始された場合には、その後所定時間内に始動が完了したか否かに基づいて燃料性状を判定することは適切でない。これに対して、本発明においては、上記の場合に、内燃機関の始動が完了した後の、内燃機関を動力源にして発電する発電機の発電量に基づいて燃料性状が判定される。燃料性状が重質である場合は、内燃機関の始動完了後における回転数は小さくなり、発電機の発電量は小さくなる。従って、本発明によれば、重質燃料に対応した第2の始動制御により始動が開始された場合には、内燃機関を動力源にして発電する発電機の発電量を検出することで、燃料性状を判定することができる。
請求項3に記載する如く、請求項2記載の内燃機関の始動制御装置において、該内燃機関では、始動完了後に、出力トルクが制限されるトルク制限制御が実行され得ると共に、前記トルク制限制御が実行された場合に、前記燃料性状判定手段による燃料性状の判定のためのしきい値を、前記トルク制限制御が実行されない場合に対して変更するしきい値変更手段を備える内燃機関の始動制御装置は、トルク制限制御に起因して発電機の発電量が変動する場合に燃料性状の誤判定を防止するうえで有効である。
本発明において、内燃機関では始動が完了した後に出力トルクが制限されるトルク制限制御が実行され得る。トルク制限制御が行われた場合は、内燃機関の出力トルクが制限されるため、内燃機関を動力源にして発電する発電機の発電量に基づいて判定される燃料性状は誤判定されるおそれがある。本発明においては、トルク制限制御が実行された場合に、燃料性状を判定するための、発電機の発電量についてのしきい値が、トルク制限制御が実行されない場合に対して変更される。従って、本発明によれば、トルク制限制御に起因して発電機の発電量が変動する場合に、燃料性状の誤判定が防止される。
請求項4に記載する如く、請求項2記載の内燃機関の始動制御装置において、該内燃機関では、始動完了後に、出力トルクが制限されるトルク制限制御が実行され得ると共に、前記トルク制限制御が実行されている場合に、前記燃料性状判定手段による燃料性状の判定を禁止する性状判定禁止手段を備える内燃機関の始動制御装置は、トルク制限制御に起因して発電機の発電量が変動する場合に燃料性状の誤判定を防止するうえで有効である。
本発明において、トルク制限制御が実行されている場合は燃料性状の判定が禁止される。このため、本発明によれば、トルク制限制御に起因して発電機の発電量が変動する場合に、燃料性状の誤判定が防止される。
請求項5に記載する如く、請求項1または2記載の内燃機関の始動制御装置において、空燃比を目標値に向けてフィードバック制御する空燃比制御手段と、前記第2の始動制御が実行されたことにより内燃機関の始動が完了した後、前記フィードバック制御が開始されるまでに、前記第2の始動制御を終了させる始動制御終了手段と、を備える内燃機関の始動制御装置は、第2の始動制御が長期間実行されることに起因する不具合を抑制するうえで有効である。
本発明において、空燃比が目標値に向けてフィードバック制御される。第2の始動制御が実行されたことにより内燃機関の始動が完了した後、フィードバック制御が開始されるまでに、第2の始動制御が終了される。このため、本発明によれば、第2の始動制御が長期間にわたって行われることはなく、第2の始動制御により生じる燃料リッチに起因する燃費の低下が防止されると共に、排気エミッションの悪化が防止される。
ところで、第2の始動制御が複数実行された場合に、これら第2の始動制御が同時に終了すると、内燃機関の空燃比が著しくリーンとなり、内燃機関において失火が生ずるおそれがある。従って、請求項6に記載する如く、請求項1記載の内燃機関の始動制御装置において、前記第2の始動制御が複数実行された場合に、該複数の第2の始動制御を互いに時期をずらして終了させることにより、第2の始動制御が終了した後に空燃比が著しくリーンとなるのを防止することができ、内燃機関の失火を確実に回避することができる。
また、上記第1の目的は、請求項7に記載する如く、吸入空気量に応じた量の燃料噴射が行われる内燃機関の始動制御装置において、内燃機関の始動開始後、該始動が完了するまで、吸入空気量が増大するようにスロットル開度を変化させるスロットル開度増大手段を備える内燃機関の始動制御装置により達成される。
重質燃料に対応した始動制御として燃料噴射量が増量されると、排気エミッションが悪化してしまう。本発明においては、内燃機関の始動が開始された後、該始動が完了するまで、吸入空気量が増大すると共に、かかる吸入空気量に対して適正な燃料噴射が行われる。かかる手法によれば、燃料性状が重質である場合は、燃料の気化が促進されることとなり、内燃機関は速やかに始動することとなる。この際、燃料噴射量は、吸入空気量に対して常に適量に維持される。従って、本発明によれば、燃料性状が重質である場合にも、排気エミッションの悪化を招くことなく、内燃機関を確実に始動させることが可能となっている。
上記第2の目的は、請求項8に記載する如く、内燃機関の始動が完了した後に、出力トルクが制限されるトルク制限制御が実行され得る内燃機関の燃料性状判定装置において、該内燃機関の燃料性状は、始動完了後の出力トルクに応じたパラメータに基づいて判定されると共に、前記トルク制限制御が実行された場合に、燃料性状の判定のためのしきい値を、前記トルク制限制御が実行されない場合に対して変更するしきい値変更手段を備える燃料性状判定装置により達成される。
本発明において、内燃機関では始動が完了した後に出力トルクが制限されるトルク制限制御が実行され得ると共に、内燃機関の始動完了後の出力トルクに応じたパラメータに基づいて燃料性状が判定される。トルク制限制御が行われた場合は、出力トルクが制限されるため、かかる出力トルクに応じたパラメータに基づいて判定される燃料性状が誤判定されるおそれがある。本発明においては、トルク制限制御が実行された場合に、燃料性状の判定のためのしきい値が、トルク制限制御が実行される場合に対して変更される。このように、燃料性状を判定するためのしきい値が、出力トルクが制限されるのに従って変更されれば、パラメータがトルク制限制御に起因して変動する状況下において燃料性状が誤判定されるのを防止することが可能となる。
また、上記第2の目的は、請求項9に記載する如く、内燃機関の始動が完了した後に、出力トルクが制限されるトルク制限制御が実行され得る内燃機関の燃料性状判定装置において、該内燃機関の燃料性状は、始動完了後の出力トルクに応じたパラメータに基づいて判定されると共に、前記トルク制限制御が実行されている場合は燃料性状の判定を禁止する性状判定禁止手段を備える燃料性状判定装置により達成される。
本発明において、トルク制限制御が行われている場合は燃料性状の判定が禁止される。このため、本発明によれば、燃料性状を判定するためのパラメータがトルク制限制御に起因して変動する場合に、燃料性状の誤判定を防止することが可能となる。
請求項1記載の発明によれば、燃料性状に対応した適正な始動制御を実行することで、燃料性状が重質である場合にも内燃機関を確実に始動させることができる。
請求項2記載の発明によれば、重質燃料に対応した第2の始動制御により内燃機関の始動が開始された場合に燃料性状を判定することができる。
請求項3および4記載の発明によれば、重質燃料に対応した第2の始動制御により内燃機関の始動が開始された状況下、燃料性状の判定に用いられる発電機の発電量がトルク制限制御に起因して変動する場合に、燃料性状の誤判定を防止することができる。
請求項5記載の発明によれば、第2の始動制御が長期間継続して行われることがないので、燃料リッチに起因する燃費の低下を防止できると共に、排気エミッションの悪化を防止することができる。
請求項6記載の発明によれば、第2の始動制御が終了した後に空燃比が著しくリーンとなるのを防止することができ、内燃機関の失火を確実に回避することができる。
請求項7記載の発明によれば、燃料性状にかかわらず、排気エミッションを良好に維持しつつ内燃機関を確実に始動させることができる。
また、請求項8および9記載の発明によれば、燃料性状を判定するためのパラメータがトルク制限制御に起因して変動する状況下において、燃料性状の誤判定を防止することができる。
以下、図面を用いて、本発明の具体的な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施例である内燃機関10が搭載される車両の駆動機構を模式的に表した図を示す。また、図2は、内燃機関10の構成図を示す。本実施例のシステムは、電子制御ユニット(以下、ECUと称す)12を備えており、ECU12により制御される。
ECU12には、車両の始動・停止を切り替えるためのイグニションスイッチ(以下、IGスイッチ)13が接続されている。IGスイッチ13には、アクセサリスイッチ、オンスイッチ、および、スタータスイッチが内蔵されている。ECU12は、IGスイッチ13の出力信号に基づいてスタータスイッチがオン状態であるか否かを判別する。
ECU12には、また、変速機のシフト位置に応じた信号を出力するシフトポジションセンサ14、および、ブレーキペダルが操作されることによりオン信号を出力するブレーキスイッチ15が接続されている。ECU12は、シフトポジションセンサ14の出力信号に基づいてシフト位置がパーキングレンジ(Pレンジ)であるか否かを判別すると共に、ブレーキスイッチ15の出力信号に基づいてブレーキペダルが操作されているか否かを判別する。
本実施例において、車両は、シフト位置がPレンジであり、かつ、ブレーキペダルが操作されている状況下で、スタータスイッチがオン状態となった時点で始動状態となる。内燃機関10は、始動が開始された後、その暖機が完了するまで運転状態とされ、暖機が完了した場合に停止状態とされる。
図1に示す如く、車両の左車輪FLと右車輪FRとは、車軸16を介して連結されている。車軸16には、減速機18が取付けられている。減速機18には、ギヤ19を介して遊星歯車機構20が係合している。車両には、駆動源として、内燃機関10と共に、ジェネレータ22および補助モータ24が搭載されている。遊星歯車機構20は、内燃機関10の出力軸に連結するプラネタリキャリヤ、ジェネレータ22の出力軸に連結するサンギヤ、および、補助モータ24の出力軸に連結するリングギヤを備えている。ジェネレータ22および補助モータ24は、インバータ26を介してバッテリ28に電気的に接続されている。インバータ26とバッテリ28との間には、メインリレー29が設けられている。メインリレー29は、ECU12に駆動されることによりバッテリ28からインバータ26への電源回路を導通又は遮断する機能を有している。
インバータ26は、バッテリ28とジェネレータ22との間およびバッテリ28と補助モータ24との間において、それぞれ、複数のパワートランジスタで構成された3相ブリッジ回路により直流電流と3相交流電流とを変換する機能を有している。ジェネレータ22および補助モータ24は、それぞれ、インバータ26内のパワートランジスタがECU12により適当に駆動されることにより、交流電流の周波数に応じた回転数に制御されると共に、その電流の大きさに応じたトルクを発生する。
ジェネレータ22は、内燃機関10の始動が完了していない場合にバッテリ28からインバータ26を介して電力が供給されることにより内燃機関10を始動させるスタータモータとしての機能を有すると共に、内燃機関10の始動が完了した後にその内燃機関10の出力によってインバータ26を介してバッテリ28または補助モータ24に対して電力を供給する発電機としての機能を有している。また、補助モータ24は、通常走行中に適宜電力が供給されることにより内燃機関10の出力を補助するためのトルクを車軸16に対して付与する電動機としての機能を有すると共に、車両制動時に車軸16の回転によってインバータ26を介してバッテリ28に対して電力を供給する発電機としての機能を有している。
上記の構成によれば、内燃機関10の運動エネルギの一部をジェネレータ22により発電される電力に変換して、また、減速時における運動エネルギの一部を補助モータ24により発電される電力に変換してバッテリ28に回収することができ、これにより、バッテリ28の外部に別途に充電機を設けることなく、バッテリ28を充電することができる。
インバータ26内には、ジェネレータ22に供給される電流値を検出する電流検出回路、および、ジェネレータ22に印加される電圧値を検出する電圧検出回路が内蔵されていると共に、補助モータ24への電流値を検出する電流検出回路、および、補助モータ24への電圧値を検出する電圧検出回路が内蔵されている。それらの電流値および電圧値の出力信号は、両者ともECU12に供給されている。ECU12は、それらの出力信号に基づいてジェネレータ22および補助モータ24への電流値および電圧値を検出すると共に、それらの値に基づいてジェネレータ22および補助モータ24の出力トルクを検出する。以下、ジェネレータ22が電動機として機能する際の出力トルクSTGの向きを正の方向とし、発電機として機能する際の出力トルクSTGの向きを負の値とする。尚、ジェネレータ22の出力トルクSTGは、正負を逆転させることによりその発電量に換算される。
このように本実施例において、車両は、内燃機関10と補助モータ24との2つの動力源を適宜組み合わせて走行するハイブリッド車両を構成している。すなわち、本実施例において、ECU10は、発進時や低速走行時等のエンジン効率が低い状況下で、内燃機関10を停止状態に維持すると共に、バッテリ28から補助モータ24に対してインバータ26を介して電力を供給することにより、補助モータ24に車両を走行させるためのトルクを発生させる。また、ECU12は、アクセル操作量および車速に基づいて車両に必要な要求駆動力を演算し、その駆動力に対して内燃機関10を効率のよい運転領域で作動させつつ内燃機関10と補助モータ24との車軸16に対するトルク比率を制御する。
次に、本実施例の内燃機関10の構造を説明する。
図2に示す如く、内燃機関10は、シリンダブロック30を備えている。シリンダブロック30の壁中には、ウォータジャケット32が形成されている。シリンダブロック30には、先端部がウォータジャケット32内に露出するように水温センサ34が配設されている。水温センサ34は、ウォータジャケット32内を流通する冷却水の温度に応じた信号をECU12に向けて出力する。ECU12は、水温センサ34の出力信号に基づいて、内燃機関10の冷却水の水温THWを検出する。
シリンダブロック30の内部には、気筒数と同数だけ設けられたピストン36が収納されている。ピストン36には、コンロッド38を介してクランクシャフト40が連結されている。シリンダブロック30の内部には、先端部がクランクシャフト40の表面に対向するようにクランク角センサ26が配設されている。クランク角センサ42は、クランクシャフト40の回転角が基準回転角に達する毎に基準信号を発生すると共に、クランクシャフト40が所定回転角(例えば30゜CA)回転する毎にパルス信号を出力する。ECU12は、クランク角センサ42の出力信号に基づいて、機関回転数NEおよび内燃機関10のクランク角CAを検出する。
シリンダブロック30の上端には、シリンダヘッド44が固定されている。シリンダブロック30、シリンダヘッド44、および、ピストン36に囲まれる部位には、燃焼室46が形成されている。シリンダヘッド44には、燃焼室46に連通する吸気ポート48および排気ポート50が形成されている。また、シリンダヘッド44には、吸気ポート48と燃焼室46とを導通または遮断する吸気弁52、排気ポート50と燃焼室46とを導通または遮断する排気弁54、および、先端部を燃焼室46に露出させた点火プラグ56が組み込まれている。吸気弁52、排気弁54、および点火プラグ56は、それぞれ、内燃機関10の各気筒に対応して設けられている。吸気弁52および排気弁54は、それぞれ、カム機構(図示せず)によってクランクシャフト40の回転と同期して所定のタイミングで開閉されるように構成されている。尚、本実施例において、吸気弁52側のカム機構は、その位相が所定角度だけ進角側および遅角側に可変できるように構成されている。
吸気ポート48には、吸気マニホールド58が連通している。吸気マニホールド58には、インジェクタ60が配設されている。インジェクタ60には、図示しない燃料パイプを介して燃料ポンプが接続されている。インジェクタ60には、ECU12が電気的に接続されている。ECU12は、内燃機関10の運転状態に応じた燃料噴射が行われるようにインジェクタ60に対して駆動信号を供給する。インジェクタ60は、ECU12からの駆動信号に従って適当なタイミングで適当な量の燃料を吸気マニホールド58に対して噴射する。
吸気マニホールド58には、サージタンク62を介して吸気通路64が連通している。吸気通路64の内部には、アクセルペダル(図示せず)と連動して開閉するスロットルバルブ66が配設されている。スロットルバルブ66は、ECU12に電気的に接続されているスロットルモータ67を動力源として開閉する。スロットルモータ67は、ECU12からの駆動信号に従ってスロットルバルブ66を開閉する機能を有している。
スロットルバルブ66の近傍には、スロットルポジションセンサ68が配設されている。スロットルポジションセンサ68は、スロットルバルブ66の開度に応じた信号をECU12に向けて出力する。ECU12は、スロットルポジションセンサ68の出力信号に基づいて、スロットル開度θを検出する。
吸気通路64の内部には、また、エアフロメータ70および吸気温センサ72が配設されている。エアフロメータ70は、吸気通路64を流通する空気の吸入空気量に応じた信号をECU12に向けて出力する。また、吸気温センサ72は、吸気通路64を流通する空気の温度に応じた信号をECU12に向けて出力する。ECU12は、エアフロメータ70の出力信号および吸気温センサ72の出力信号に基づいて、内燃機関10に流入した空気の吸入空気量VAおよび吸気温THAを検出する。
内燃機関10の排気ポート50には、排気マニホールド74が連通している。排気マニホールド74には、O2 センサ76が配設されている。O2 センサ76は、排気ガス中の酸素濃度に応じた信号を出力する。排気ガス中の酸素濃度は、内燃機関10に供給される混合気の空燃比A/Fが燃料リッチであるほど希薄となり、また、混合気の空燃比A/Fが燃料リーンであるほど濃厚となる。O2 センサ76は、内燃機関10に供給される混合気の空燃比A/Fが、後述する触媒コンバータが有効に機能すると判断される目標空燃比に比して燃料リッチである場合に0.9V程度のハイ信号を、一方、その空燃比A/Fが目標空燃比に比して燃料リーンである場合に0.1V程度のロー信号をECU12に向けて出力する。
ECU12は、O2 センサ76の出力信号に基づいて、内燃機関10に供給される混合気の空燃比A/Fが燃料リッチであるか、或いは、燃料リーンであるか否かを判別する。排気マニホールド74には、三元触媒を用いて排気ガスを浄化する触媒コンバータ78が連通している。内燃機関10から排出された排気ガスは、触媒コンバータ78内に流入することにより浄化された後、大気中へ放出される。
内燃機関10は、各気筒ごとに、イグナイタ80およびイグニションコイル82を備えている。イグナイタ80は、それぞれECU12に電気的に接続されており、自己の気筒で点火を行うべき時期にECU12から点火信号が供給されることにより、その点火信号と同期してイグニションコイル82に対して一次電流を供給する。イグニションコイル82に一次電流が供給されると、イグニションコイル82の2次側には高圧の点火信号が生成される。イグニションコイル82の2次側には、上述した点火プラグ56が接続されている。点火プラグ56は、イグニションコイル82から高圧の点火信号が供給された際に燃焼室46の内部で火花を発生させる。
本実施例のシステムにおいては、スタータスイッチがオン状態となった時点で内燃機関10の始動が開始される。内燃機関10の始動が開始されると、ジェネレータ22が通電されることにより内燃機関10のクランキングを開始し、所定のタイミングで所定量の燃料を内燃機関10に対して噴射し、かつ、所定のタイミングで点火プラグ56から火花を発生させる。そして、内燃機関10の始動が完了した後は、空燃比が目標空燃比となるように、内燃機関10の運転状態に基づいて演算された燃料噴射量を補正し、補正された燃料噴射量に従って燃料噴射を行う。以下、空燃比が目標空燃比となるように燃料噴射量を補正する制御を空燃比フィードバック制御(空燃比F/B制御)と称す。
ところで、内燃機関10に供給される燃料には、気化し難い重質燃料から気化し易い軽質燃料まで様々な性状の燃料が存在する。燃料性状が重質である場合に燃料性状を考慮することなく内燃機関10に対して燃料噴射が行われると、内燃機関の安定した運転が得られないおそれがある。特に、内燃機関10の始動時に燃料性状が軽質である場合と同様の始動制御が実行されると、燃料が十分に気化されず、内燃機関10の始動が速やかに完了しない場合がある。従って、内燃機関10の始動を速やかに完了させるためには、始動時の燃料性状を正確に検出し、初期の始動制御をその燃料性状に対応した適正な始動制御に変更することが適切である。
燃料性状を検出する手法としては、内燃機関10の始動が開始された後、始動が完了するまでの始動時間に基づいて燃料性状を検出することが考えられる。しかし、かかる手法では、内燃機関10の始動が完了しなければ燃料性状が検出されないので、燃料性状が重質であるにもかかわらず重質燃料に対応した始動制御が行われていない場合には、始動が完了しないことにより燃料性状を検出することができない事態が生じ得る。このため、上記の手法では、燃料性状に対応した適正な始動制御を実行することができず、内燃機関10を始動させることができないおそれがある。
これに対して、本実施例のシステムにおいては、内燃機関10の始動が開始された後の所定時間内に始動が完了したか否かに基づいて、内燃機関10に供給されている燃料の性状が重質であるか否かを判別する。そして、上記所定時間内に内燃機関10の始動が完了せず、燃料性状が重質であると判別された場合には、内燃機関10を速やかに始動すべく、(1)通常時に比して吸気弁52の開閉タイミングを最進角にすることで吸気弁52と排気弁54とのバルブオーバーラップを増大させる処理(以下、開弁時期進角制御と称す)、(2)燃料噴射を吸気弁52の開弁時に行う処理(以下、吸気同期噴射制御と称す)、および、(3)通常時に比して燃料噴射量を増量させる処理(以下、噴射量増量制御と称す)が実行される。以下、上記(1)〜(3)の処理を重質燃料用始動制御と総称し、上記(1)〜(3)の処理を行わない場合の制御を通常始動制御と称す。
上記のシステムによれば、内燃機関10が始動される毎に確実に燃料性状を検出することができると共に、燃料性状が重質である場合に通常始動制御に代えて重質燃料用始動制御を実行することができる。重質燃料用始動制御が実行されると、通常始動制御時に比して、燃料の気化が生じ易くなることで、内燃機関10は速やかに始動することになる。
ところで、内燃機関10の前回始動時における燃料性状が重質である場合には、その後に車両に対して新たに燃料供給を行わない限り、燃料性状は重質のまま維持される。そこで、本実施例のシステムでは、内燃機関10の始動を速やかに完了させるべく、内燃機関10の前回始動時における燃料性状を記憶すると共に、その燃料性状が重質である場合は内燃機関10の始動が開始された直後から重質燃料用始動制御を実行することとしている。
内燃機関10の始動開始直後から重質燃料用始動制御が行われた場合においても、始動時の燃料性状を正確に検出する必要がある。しかし、内燃機関10の始動開始直後から重質燃料用始動制御が行われた場合には、燃料性状にかかわらず内燃機関10の始動が速やかに完了してしまうため、燃料性状が重質であるか否かの判別を、上記の如く内燃機関10の始動が開始された後の所定時間内に始動が完了したか否かに基づいて行うことは適切ではない。
内燃機関10の回転は、燃料性状が重質であるほど不安定になり易い。上述の如く、本実施例においては、内燃機関10の出力によって発電するジェネレータ22が設けられている。このため、本実施例では、燃料性状が重質である場合は内燃機関10の始動完了後におけるジェネレータ22の発電量が小さくなり、燃料性状が軽質である場合はジェネレータ22の発電量が大きくなる。
そこで、本実施例のシステムでは、内燃機関10の始動開始直後から重質燃料用始動制御が行われた場合は、燃料性状の検出を、始動開始後の所定時間内での内燃機関10の始動完了の有無に代えてジェネレータ22の発電量に基づいて行うこととしている。尚、仮に、通常始動制御が行われた場合にもジェネレータ22の発電量に基づいて燃料性状が検出されるものとすると、実際の燃料性状が重質である場合には、内燃機関10の始動が完了しない、すなわち、ジェネレータ22が発電しないおそれがあるので、本実施例のシステムでは、通常始動制御が行われた場合は、ジェネレータ22の発電量に基づいて燃料性状が検出されることはなく、上記の如く始動開始後の所定時間内に内燃機関10の始動が完了したか否かに基づいて燃料性状が検出されることになる。
以下、図3乃至図5を参照して、本実施例の特徴部について説明する。
図3は、本実施例において用いられる燃料性状の検出手法を模式的に表した図を示す。尚、図3(A)においては内燃機関10の前回始動時における燃料性状が軽質である場合を、また、図3(B)においては前回始動時における燃料性状が重質である場合を、それぞれ示している。
図3(A)に示す如く、前回始動時における燃料性状が軽質であった場合は、通常始動制御により内燃機関10の始動が開始される(TST=0)。そして、内燃機関10の始動が所定時間(TST=T1)内に完了した場合は、今回の燃料性状が軽質であると判断される。一方、内燃機関10の始動が所定時間内に完了しない場合は、今回の燃料性状が重質であると判断されると共に、内燃機関10の始動を速やかに完了すべく、通常始動制御に代えて重質燃料用始動制御が実行される。
また、図3(B)に示す如く、前回始動時における燃料性状が重質であった場合は、重質燃料用始動制御により内燃機関10の始動が開始される(TST=0)。上述の如く、ジェネレータ22の発電量は、出力トルクSTGの正負を逆転させることにより求められる。内燃機関10の始動が完了した際のジェネレータ22の出力トルクSTGが所定値Aより小さい場合は、今回の燃料性状が軽質であると判断される。一方、内燃機関10の始動が完了した際のジェネレータ22の出力トルクSTGが所定値A以上である場合は、今回の燃料性状が重質であると判断される。
図4は、内燃機関10を始動すべく、本実施例においてECU12が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図4に示すルーチンは、その処理が終了するごとに繰り返し起動されるルーチンである。図4に示すルーチンが起動されると、まずステップ100の処理が実行される。
ステップ100では、内燃機関10の始動開始の条件が成立しているか否か、具体的には、シフトレバーがPレンジであり、かつ、ブレーキペダルが踏み込まれた状況下で、IGスイッチ13に内蔵されるスタータスイッチがオン状態であるか否かが判別される。本ステップ100の処理は、上記の条件が成立すると判別されるまで繰り返し起動される。その結果、上記の条件が成立したと判別されると、次にステップ102の処理が実行される。
ステップ102では、内燃機関10についての始動完了フラグXSTをリセットする処理が実行される。尚、始動完了フラグXSTは、内燃機関10の始動が完了したか否かを表示するためのフラグである。本ステップ102の処理が終了すると、次にステップ104の処理が実行される。
ステップ104では、内燃機関10に供給される燃料の性状についての重質フラグXHDがセットされているか否かが判別される。尚、重質フラグXHDは、燃料性状が重質であるか否かを表示するためのフラグである。上記の処理の結果、重質フラグXHDがセットされていないと判別された場合は、次にステップ106の処理が実行される。
ステップ106では、インバータ26に内蔵されたジェネレータ22についての電流検出回路および電圧検出回路の出力信号に基づいて、ジェネレータ22において発電が開始されたか否かが判別される。具体的には、ジェネレータ22がスタータモータとしてバッテリ28により通電される状態から、内燃機関10の始動が完了したことにより発電機として発電する状態に切り替わり、すなわち、ジェネレータ22の出力トルクSTGが正の値から負の値に変化し、その状態が所定時間(例えば0.4秒)継続しているか否かが判別される。その結果、ジェネレータ22が発電していないと判別された場合は、次にステップ108の処理が実行される。
ステップ108では、上記ステップ100において内燃機関10の始動開始の条件が成立した後の時間TSTが所定時間T1 に達したか否かが判別される。尚、所定時間T1 は、燃料性状が軽質であると判断できる、内燃機関10の始動開始の条件が成立した後、始動が完了するまでの時間の最大値である。上記の処理の結果、TST>T1 が成立しない場合は、内燃機関10に対して重質燃料用始動制御を実行する必要はない。従って、かかる判別がなされる場合は、次にステップ110の処理が実行される。
ステップ110では、内燃機関10に対して通常どおりの始動制御を開始する処理が実行される。本ステップ110の処理が行われた後、上記ステップ106の処理が繰り返し実行される。
一方、上記ステップ108においてTST>T1 が成立する場合は、内燃機関に供給された燃料の性状が重質であると判断でき、通常どおりの始動制御を実行するのみでは内燃機関10の始動を完了させることができないと判断できる。かかる場合は、内燃機関10に対して重質燃料用始動制御を実行することが適切である。従って、上記ステップ108においてTST>T1 が成立すると判別された場合は、次にステップ112の処理が実行される。
ステップ112では、重質フラグXHDをセットする処理が実行される。本ステップ112の処理が終了すると、次にステップ114の処理が実行される。
ステップ114では、上記ステップ100において内燃機関10の始動開始の条件が成立した後の時間TSTが所定時間T2 に達したか否かが判別される。尚、所定時間T2 は、バッテリ28の電力が過大に消費されてしまうと判断できる、内燃機関10の始動の開始条件が成立した後、始動が完了するまでの時間の最小値である。上記の処理の結果、TST>T2 が成立しない場合は、内燃機関10に対して重質燃料用始動制御を実行することが適切である。従って、かかる判別がなされる場合は、次にステップ116の処理が実行される。一方、TST>T2 が成立する場合は、内燃機関10に何らかの不具合が生じていると判断できる。この場合は、内燃機関10の始動を速やかに中止することが適切である。従って、TST>T2 が成立すると判別された場合は、次にステップ118の処理が実行される。
ステップ116では、内燃機関10に対して重質燃料用始動制御を開始する処理が実行される。具体的には、上記ステップ110における通常始動制御を実行する場合に比して、(1)吸気弁52の開閉タイミングを最進角にすることで吸気弁52と排気弁54とのバルブオーバーラップを増大させ、(2)燃料噴射を吸気弁52の開弁時に行い、かつ、(3)燃料噴射量を増量させる処理が行われる。本ステップ116の処理が終了すると、上記ステップ106の処理が繰り返し実行される。
ステップ118では、内燃機関10の始動制御を中止する処理が実行される。本ステップ118が終了すると、今回のルーチンは終了される。
上記ステップ106においてジェネレータ22が発電している場合は、ジェネレータ22がバッテリ28から通電されることなく内燃機関10の運転に伴って回転していると判断できる。この場合は、内燃機関10の始動が完了したと判断できる。従って、上記ステップ106においてかかる判別がなされた場合は、次にステップ120の処理が実行される。
ステップ120では、内燃機関10についての始動完了フラグXSTをセットする処理が実行される。本ステップ120の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
上記ステップ104において重質フラグXHDがセットされていると判別された場合は、次にステップ122の処理が実行される。
ステップ122では、上記ステップ116と同様に、内燃機関10に対して重質燃料用始動制御を開始する処理が実行される。本ステップ122の処理が実行されると、次にステップ124の処理が実行される。
ステップ124では、上記ステップ106と同様に、ジェネレータ22において発電が開始されたか否かが判別される。その結果、ジェネレータ22が発電していないと判別された場合は、次にステップ126の処理が実行される。一方、ジェネレータ22が発電していると判別された場合は、次にステップ128の処理が実行される。
ステップ126では、上記ステップ114と同様に、内燃機関10の始動開始の条件が成立した後の時間TSTが所定時間T2 に達したか否かが判別される。その結果、TST>T2 が成立しないと判別された場合は、上記ステップ122において重質燃料用始動制御が継続して行われる。一方、TST>T2 が成立すると判別された場合は、上記ステップ118において内燃機関10の始動制御が中止された後、今回のルーチンが終了される。
ステップ128では、内燃機関10についての始動完了フラグXSTをセットする処理が実行される。本ステップ128の処理が終了すると、次にステップ130の処理が実行される。
ステップ130では、ジェネレータ22の出力トルクSTGが所定値Aに比して小さいか否かが判別される。尚、所定値Aは、重質燃料用始動制御が実行された場合に燃料性状が重質であると判断できる出力トルクSTGの最小値(発電量の最大値)であり、予め負の値に設定されている。上記の処理の結果、STG<Aが成立しない、すなわち、STG≧Aが成立すると判別された場合は、次にステップ132の処理が実行される。
ステップ132では、上記ステップ128において始動完了フラグXSTがセットされた後の時間tが所定時間t0 を経過したか否かが判別される。その結果、t≧t0 が成立しないと判別された場合は、上記ステップ130の処理が繰り返し実行される。一方、t≧t0 が成立する場合は、所定時間t0 内にジェネレータ22の発電量が大きくなることがなく、燃料性状が重質であると判断できる。従って、かかる判別がなされた場合は、今回のルーチンが終了される。
上記ステップ130においてSTG<Aが成立する場合は、ジェネエータ22の発電量が大きく、燃料性状が軽質であると判断できる。従って、かかる判別がなされた場合は、次にステップ134の処理が実行される。
ステップ134では、重質フラグXHDをリセットする処理が実行される。本ステップ134の処理が終了すると、今回のルーチンが終了される。
上記の処理によれば、内燃機関10の始動時に、内燃機関10の前回始動時における燃料性状に対応した始動制御を実行することができる。すなわち、燃料性状が軽質であった場合には通常始動制御により内燃機関10の始動が開始され、一方、燃料性状が重質であった場合には重質燃料用始動制御により内燃機関10の始動が開始される。このため、本実施例によれば、内燃機関10の前回始動時における燃料性状が重質であった場合には始動開始直後から重質燃料用始動制御が実行されることにより、内燃機関10の始動を速やかに完了させることが可能となる。
また、上記の処理によれば、通常始動制御により内燃機関10の始動が開始された場合は、その後の所定時間T1 内に内燃機関10の始動が完了したか否かに基づいて燃料性状が重質であるか否かを判別することができ、始動開始後に所定時間T1 が経過するまでは通常始動制御の実行を継続する一方、所定時間T1 内に内燃機関10の始動が完了しなかった場合は、燃料性状が重質であるとして、通常始動制御に代えて重質燃料用始動制御を実行することができる。すなわち、本実施例によれば、内燃機関10の前回始動時における燃料性状が軽質であったとして通常始動制御により内燃機関10の始動が開始された状況下で、実際の燃料性状が重質である場合には、その燃料性状に対応した適正な始動制御に変更することができる。従って、本実施例のシステムによれば、燃料性状が重質である場合にも内燃機関10の始動を確実にかつ速やかに完了させることが可能となり、燃料性状にかかわらず内燃機関10において優れた始動性を確保することが可能となる。
更に、上記の処理によれば、重質燃料用始動制御により内燃機関10の始動が開始された場合は、始動完了時のジェネレータ22の出力トルク、すなわち、発電量に基づいて燃料性状が重質であるか否かを判別することができる。このため、本実施例によれば、重質燃料用始動制御により内燃機関10の始動が開始された場合に、今回の燃料性状が検出不能になることが回避され、燃料性状を正確に検出することができる。従って、本実施例のシステムによれば、内燃機関10の次回始動時においても燃料性状に対応した適正な始動制御を実行することが可能となっている。
本実施例においては、通常始動制御または重質燃料用始動制御により内燃機関10の始動が開始された後、所定時間T2 内に始動が完了しない場合に、内燃機関10の不調として、上記の始動制御を中止することとしている。このため、本実施例によれば、内燃機関10の不調に起因してバッテリ28の電力が過大に消費されるのを防止することが可能となっている。
図5は、内燃機関10の始動制御から空燃比F/B制御に切り替えるべく、本実施例においてECU12が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図5に示すルーチンは、その処理が終了するごとに繰り返し起動されるルーチンである。図5に示すルーチンが起動されると、まずステップ140の処理が実行される。
ステップ140では、図4に示すルーチンを処理した結果、内燃機関10についての始動完了フラグXSTがセットされているか否かが判別される。本ステップ140の処理は、始動完了フラグXSTがセットされていると判別されるまで繰り返し実行される。その結果、始動完了フラグXSTがセットされていると判別された場合は、次にステップ142の処理が実行される。
ステップ142では、空燃比F/B制御の開始条件が成立するか否かが判別される。具体的には、内燃機関10の始動が完了した後、内燃機関10内を流通する冷却水の水温THWが所定以上の温度であり、かつ、内燃機関10の空燃比が目標空燃比に比して燃料リッチ又は燃料リーンであるか否かが判別される。本ステップ142の処理は、空燃比F/B制御の開始条件が成立するまで繰り返し実行される。その結果、上記の条件が成立すると判別された場合は、次にステップ144の処理が実行される。
ステップ144では、図4に示すルーチンを処理した結果、内燃機関10に供給される燃料の性状が重質であるか否かが判別される。その結果、燃料性状が重質でないと判別された場合は、次にステップ146の処理が実行される。一方、燃料性状が重質であると判別された場合は、次にステップ148の処理が実行される。
ステップ146では、通常始動制御を終了させる処理が実行される。
ステップ148では、重質燃料用始動制御を終了させる処理が実行される。
ステップ150では、空燃比F/B制御を開始させる処理が実行される。本ステップ150の処理が実行されると、以後、内燃機関10において、空燃比が目標空燃比となるように燃料噴射が制御される。本ステップ150の処理が終了すると、今回のルーチンが終了される。
上記の処理によれば、内燃機関10の始動が完了した後、空燃比F/B制御の開始条件が成立した場合に、内燃機関10の始動制御を終了すると共に、その後に空燃比F/B制御を開始することができる。このため、本実施例によれば、重質燃料用始動制御が長期間にわたって実行されることが防止される。従って、本実施例のシステムによれば、重質燃料用始動制御の実行に起因して空燃比が燃料リッチになることが抑制されることで、内燃機関10の燃費の低下を防止することができると共に、排気エミッションの悪化を防止することができる。
次に、図6乃至図8を参照して、本発明の第2実施例について説明する。本実施例のシステムは、上記図1および図2に示す内燃機関10において、ECU12が図8に示すルーチンを実行することにより実現される。
図6(A)は、重質燃料用始動制御の終了時に、(1)開弁時期進角制御、(2)吸気同期噴射制御、および、(3)噴射量増量制御をすべて同時に終了させる場合の、吸気弁52の進角度evt、燃料噴射の終了時期角度einjend、および、燃料噴射量の増量率efmwstの時間変化の一例をそれぞれ示す。また、図6(B)は、図6(A)に示す如く進角度evt、終了時期角度einjend、および、増量率efmwstを変化させた場合に得られる内燃機関10の空燃比A/Fの時間変化を示す。
図6(A)に示す如く、時間t=0において内燃機関10の始動が開始された後に、時間t=8近傍において重質燃料用始動制御の開始条件が成立した場合は、吸気弁52の進角度evtが大きくされ、燃料噴射の終了時期角度einjendが遅角され、かつ、燃料噴射量の増量率efmwstが大きくされる。この場合、吸気弁52と排気弁54とのバルブオーバーラップが増大し、燃料噴射が吸気弁52の開弁時に行われ、かつ、燃料噴射量が増量されることで、内燃機関10の始動が速やかに完了することになる。そして、その後、重質燃料用始動制御の終了条件が成立すると、上記(1)〜(3)の処理が同時に終了され、内燃機関10の始動制御が重質燃料用始動制御から通常始動制御に切り替わる。
ところで、重質燃料用始動制御において行われる上記(1)〜(3)の処理が終了すると、すなわち、増大されているバルブオーバーラップを減少させる処理、吸気弁52の開弁時に行っている燃料噴射を通常どおり吸気弁52の閉弁時に行う処理、または、増量されている燃料噴射量を減量させる処理が行われると、内燃機関10において空燃比が燃料リーン側に移行することになる。このため、図6(A)に示す如く、重質燃料用始動制御を終了させるべく上記(1)〜(3)の処理を同時に終了させる(t=18近傍)と、その直後に、図6(B)に示す如く、内燃機関10において空燃比A/Fが著しく燃料リーンになってしまい、内燃機関10に供給される混合気が燃焼しない現象、すなわち、失火が生じ得る。
従って、重質燃料用始動制御を終了させる状況下で内燃機関10において失火の発生を防止するためには、上記(1)〜(3)の処理を同時に終了させることは適切ではない。そこで、本実施例においては、重質燃料用始動制御を終了させて通常始動制御へ復帰させる場合に、上記(1)〜(3)の処理を互いに時期をずらして終了させることとしている。
図7(A)は、重質燃料用始動制御の終了時に、上記(1)〜(3)の処理を互いに時期をずらして終了させる場合の、吸気弁52の進角度evt、燃料噴射の終了時期角度einjend、および、燃料噴射量の増量率efmwstの時間変化の一例をそれぞれ示す。また、図7(B)は、図7(A)に示す如く吸気弁52の進角度evt、燃料噴射の終了時期角度einjend、および、燃料噴射量の増量率efmwstを変化させた場合に得られる内燃機関10に供給される混合気の空燃比A/Fの時間変化を示す。
図7(A)に示す如く、重質燃料用始動制御を終了させるべく上記(1)〜(3)の処理を互いに時期をずらして終了させた場合は、上記(1)〜(3)の処理の終了に起因して空燃比A/Fが燃料リーンになる度合いは上記(1)〜(3)の各処理単独では小さいため、空燃比A/Fが著しく燃料リーンになる事態は生じない。従って、上記の手法によれば、重質燃料用始動制御の終了時に、内燃機関10において失火が生じるのを防止することが可能となる。
図8は、上記の機能を実現すべく、本実施例において、重質燃料用始動制御を終了させる際にECU12が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図8に示すルーチンは、その処理が終了する毎に繰り返し起動されるルーチンである。図8に示すルーチンが起動されると、まずステップ160の処理が実行される。
ステップ160では、重質燃料用始動制御の終了条件が成立するか否か、具体的には、上記図7に示すルーチン中のステップ148の処理が実行されるか否かが判別される。本ステップ160の処理は、上記の条件が成立すると判別されるまで繰り返し実行される。そして、重質燃料用始動制御の終了条件が成立すると判別された場合は、次にステップ162の処理が実行される。
ステップ162では、機関回転数NEの単位時間当たりの変化量ΔNEが所定値ΔNE0 以下であるか否かが判別される。本ステップ162の処理は、ΔNE≦ΔNE0 が成立すると判別されるまで繰り返し実行される。ΔNE≦ΔNE0が成立する場合は、内燃機関10の始動が完了した後、内燃機関10の運転状態が安定していると判断できる。かかる状況下において重質燃料用始動制御の上記(1)〜(3)の処理が終了されても、かかる処理の終了に起因する影響は小さく抑えられる。
また、重質燃料用始動制御の上記(1)〜(3)の処理が終了されると、内燃機関10に供給される混合気の空燃比A/Fは燃料リーンになるので、機関回転数NEの変化量ΔNEは一時的に大きくなる。このため、重質燃料用始動制御の上記(1)〜(3)の各処理を終了させるためのしきい値ΔNE0 が一つに設定されていても、機関回転数NEの変化量ΔNEがしきい値ΔNE0 以下になる積算回数を計数することとすれば、重質燃料用始動制御の各処理を時期をずらして終了させることが可能となる。
本実施例においては、重質燃料用始動制御の終了条件が成立した後に、機関回転数NEの変化量ΔNEが所定値ΔNE0 以下になる積算回数をカウントし、その積算回数がカウントされる毎に重質燃料用始動制御の各処理を順番に終了させることとしている。
従って、上記ステップ162においてΔNE≦ΔNE0 が成立すると判別された場合は、次にステップ164の処理が実行される。
ステップ164では、積算カウンタCNTの計数値が“0”であるか否かが判別される。尚、積算カウンタCNTは、重質燃料用始動制御の終了条件が成立した後、上記ステップ162の条件が成立すると判定された積算回数を計数するためのカウンタである。CNT=0が成立している場合は、重質燃料用始動制御の終了条件が成立した後に上記(1)〜(3)の各処理がいずれも終了していないと判断できる。従って、CNT=0が成立していると判別された場合は、(1)開弁時期進角制御を終了させるべく、次にステップ166の処理が実行される。一方、CNT=0が成立していないと判別された場合は、次に、ステップ170の処理が実行される。
ステップ166では、積算カウンタCNTをインクリメントする処理が実行される。本ステップ166の処理が実行されると、以後、積算カウンタCNTの計数値が“1”となる。本ステップ166の処理が終了すると、次にステップ168の処理が実行される。
ステップ168では、進角側に移行していた吸気弁52の開閉タイミングを通常どおりのタイミングに戻す処理が実行される。この場合、増大されていた吸気弁52と排気弁54とのバルブオーバーラップが減少する。本ステップ168の処理が終了すると、今回のルーチンが終了される。
ステップ170では、積算カウンタCNTの計数値が“1”であるか否かが判別される。CNT=1が成立している場合は、重質燃料用始動制御の終了条件が成立した後、(1)開弁時期進角制御のみが終了していると判断できる。従って、かかる判別がなされた場合は、次に、(2)吸気同期噴射制御を終了させるべく、ステップ172の処理が実行される。
ステップ172では、積算カウンタCNTをインクリメントする処理が実行される。本ステップ172の処理が実行されると、以後、積算カウンタCNTの計数値が“2”となる。本ステップ172の処理が終了すると、次にステップ174の処理が実行される。
ステップ174では、吸気弁52の開弁時に行われていた燃料噴射を通常どおりの時期に戻す処理が実行される。本ステップ174の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
一方、上記ステップ170においてCNT=1が成立していない場合は、CNT=2が成立すると判断でき、重質燃料用始動制御の終了条件が成立した後、(1)開弁時期進角制御、および、(2)吸気同期噴射制御が終了していると判断できる。従って、かかる判別がなされた場合は、次に、(3)噴射量増量制御を終了させるべく、ステップ176の処理が実行される。
ステップ176では、増量されていた燃料噴射量を通常どおりの量に戻す処理が実行される。本ステップ176の処理が実行されると、上記(1)〜(3)の処理がすべて終了されることとなり、内燃機関10の始動制御が重質燃料用始動制御から通常始動制御に切り替わる。本ステップ176の処理が終了すると、次にステップ178の処理が実行される。
ステップ178では、積算カウンタCNTを“0”にリセットする処理が実行される。本ステップ178の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
上記の処理によれば、重質燃料用始動制御の終了条件が成立した後、機関回転数NEの変化量ΔNEが所定値以下になる毎に、重質燃料用始動制御の(1)開弁時期進角制御、(2)吸気同期噴射制御、および、(3)噴射量増量制御をその順序で終了させることができる。このため、本実施例によれば、重質燃料用始動制御の終了時に、(1)開弁時期進角制御、(2)吸気同期噴射制御、および、(3)噴射量増量制御を同時に終了させることがなくなり、内燃機関10に供給される混合気の空燃比A/Fが著しく燃料リーンになることが防止される。従って、本実施例のシステムによれば、重質燃料用始動制御が終了されることに起因して内燃機関10に失火が生じるのを確実に回避することができる。
ところで、上記の第2実施例においては、機関回転数NEの単位時間当たりの変化量ΔNEが所定値ΔNE0 以下であるか否かに応じて重質燃料用始動制御の上記(1)〜(3)の各処理を終了させることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、排気ガス中の空燃比を検出し、検出された空燃比に応じて重質燃料用始動制御の各処理を終了させることとしてもよいし、あるいは、積算吸入空気量や積算燃料消費量または内燃機関10のトルク変化量に応じて重質燃料用始動制御の各処理を終了させることとしてもよい。
また、上記の第2実施例においては、重質燃料用始動制御の終了条件が成立した後、機関回転数NEの単位時間当たりの変化量ΔNEが所定値ΔNE0 以下になる毎に、重質燃料用始動制御の各処理を予め定められた順序で終了させることとしているが、各処理を終了させるためのしきい値は1つに限定されるものではなく、3つのしきい値を設けて、段階的に各処理を終了させることとしてもよい。
更に、上記の第2実施例においては、重質燃料用始動制御の終了時に、重質燃料用始動制御の上記(1)〜(3)の各処理をその順序で終了させることとしているが、上記(1)〜(3)の処理を終了させる順序はこれに限定されるものではなく、他の順序で終了させることとしてもよい。
次に、図9および図10を参照して、本発明の第3実施例について説明する。本実施例のシステムは、上記図1および図2に示す内燃機関10において、ECU12が上記図4に示すルーチンに代えて図10に示すルーチンを実行することにより実現される。
上記第1および2実施例の如く、燃料性状が重質であると判定された場合に、重質燃料に対応した重質燃料用始動制御として噴射量増量制御が実行されると、燃料噴射量が増大することにより、燃費が著しく低下すると共に排気ガスのエミッションが悪化するおそれがある。従って、かかる不都合を回避するうえでは、燃料性状が重質であると判定された場合に燃料噴射量を増大させることは適切ではない。
内燃機関10において、燃料噴射が、吸入空気量に応じた適正な燃料噴射量が確保されるように行われる場合には、吸入空気量が増大されると、すなわち、スロットルバルブ66の開度が増大されると、それに伴って、燃料噴射量が増大する。かかる内燃機関10において軽質燃料が使用されている状況下では、スロットルバルブ66の開度が比較的小さくても、すなわち、吸入空気量および燃料噴射量が共に少量であっても、内燃機関10の始動は速やかに完了する。また、燃料性状が重質である状況下では、吸入空気量および燃料噴射量が共に少量である場合は内燃機関10の始動は完了し難くなり、一方、吸入空気量および燃料噴射量が共に多量になるに従って始動が完了し易くなる。
そこで、本実施例においては、内燃機関10の始動が開始された後、始動が完了するまで、スロットルバルブ66の開度を、軽質燃料使用時に内燃機関10が速やかに始動できる最小角度から増大させることにより、内燃機関10への吸入空気量を増大させると共に、吸入空気量に応じて燃料噴射量も適正に増大させることとしている。かかる手法によれば、燃料噴射量が吸入空気量の増大に従って増大されることにより、燃料性状が重質である場合にも、排気ガスのエミッションを良好に維持しつつ、内燃機関10を確実に始動させることが可能となる。
図9は、本実施例において実現される内燃機関10の始動開始後におけるスロットルバルブ66の動作を説明するためのタイムチャートを示す。尚、図9には、燃料性状が重質である状況下で実現されるスロットル開度θを太線で、燃料性状が軽質である状況下で実現されるスロットル開度θを細線でそれぞれ示していると共に、本実施例における燃料性状の判定のためのしきい値を破線で示している。
本実施例において、スロットルバルブ66は、通常時には上述の如くアクセルペダルと連動して開閉すると共に、内燃機関10の始動が開始された後、完了するまで、図9に示す如く所定の比率でスロットル開度θが増大するように作動する。また、インジェクタ60は、スロットルバルブ66の開度に応じた適正な量の燃料噴射を行う。かかる構成において、内燃機関10の始動が完了した時点におけるスロットル開度θが比較的小さい場合は、燃料性状が軽質であると判断できる。一方、始動完了時におけるスロットル開度θが比較的大きい場合は、燃料性状が重質であると判断できる。
図10は、上記の機能を実現すべく、本実施例においてECU12が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図10に示すルーチンは、その処理が終了するごとに繰り返し起動されるルーチンである。図10に示すルーチンが起動されると、まずステップ200の処理が実行される。
ステップ200では、上記したステップ100と同様に、内燃機関10の始動開始の条件が成立しているか否かが判別される。その結果、内燃機関10の始動開始の条件が成立したと判別された場合は、次にステップ202の処理が実行される。
ステップ202では、スロットルバルブ66の開度θを、初期値θ0 に上記ステップ200で内燃機関10の始動開始条件が成立した後の時間tに応じて変化する関数f(t)を加算して得た値にする処理が実行される。尚、初期値θ0 は、燃料性状が軽質である場合に内燃機関10が速やかに始動すると予想されるスロットル開度θの最小値に設定されており、また、関数f(t)は、内燃機関10の始動開始条件の成立後の時間tが大きくなるほど大きくなるような関数である。本ステップ202の処理が実行されると、スロットルバルブ66の開度が時間の経過に従って大きくなり、内燃機関10に吸入される空気の量VAが増大する。
ステップ203では、吸入空気量VAおよび機関回転数NEに基づいて、内燃機関10に供給する燃料噴射量Qが演算される。本実施例においては、内燃機関10に供給される燃料噴射量は、吸入空気量に応じた適正な値に設定される。そして、演算された燃料噴射量Qが確保されるようにインジェクタ60に対して駆動信号が供給される。本ステップ203の処理が実行されると、吸入空気量の増大と共に燃料噴射量も増大することとなる。
ステップ204では、ジェネレータ22において発電が開始されたか否かが判別される。具体的には、ジェネレータ22の出力トルクSTGが正の値から負の値に変化し、その状態が所定時間(例えば0.4秒)継続しているか否かが判別される。その結果、ジェネレータ22において発電が開始されていないと判別された場合は、上記ステップ202の処理が実行される。一方、ジェネレータ22において発電が開始された場合は、ジェネレータ22は内燃機関10を動力源として発電するので、内燃機関10の始動が完了したと判断できる。本ステップ204においてかかる判別がなされた場合は、次にステップ206の処理が実行される。
ステップ206では、スロットル開度θがしきい値θSH以上であるか否かが判別される。尚、しきい値θSHは、燃料性状が重質であると判断されるスロットル開度の最小値である。その結果、θ≧θSHが成立しない場合は、内燃機関10において吸入空気量および燃料噴射量が比較的少ない状況下でも始動が完了したと判断でき、燃料性状が軽質であると判断できる。従って、かかる判別がなされた場合は、次にステップ210の処理が実行される。一方、θ≧θSHが成立する場合は、内燃機関10の始動を完了させるのに比較的多くの吸入空気量および燃料噴射量が必要となったと判断でき、燃料性状が重質であると判断できる。従って、かかる判別がなされた場合は、次にステップ208の処理が実行される。
ステップ208では、重質フラグXHDをセットする処理が実行される。本ステップ208の処理が終了すると、今回のルーチンが終了される。
ステップ210では、重質フラグXHDをリセットする処理が実行される。本ステップ210の処理が終了すると、今回のルーチンが終了される。
上記の処理によれば、内燃機関10の始動開始条件の成立後、該始動が完了するまでに要する時間に応じてスロットル開度θを大きくすることができると共に、燃料噴射量Qを吸入空気量VAに基づいて適正な値にすることができる。この場合、内燃機関10に吸入される吸入空気量が増大すると共に、その吸入空気量に応じて燃料噴射量が増大することにより、燃料性状が重質であっても、確実に内燃機関10の始動を完了させることが可能となる。また、本実施例においては、燃料噴射量は吸入空気量に応じた適正な値に設定されるため、排気ガスのエミッションは常に良好に維持される。従って、本実施例のシステムによれば、燃料性状が重質である場合にも、排気ガスのエミッションを良好に維持しつつ、内燃機関10を確実に始動させることが可能となっている。
本実施例において、吸入空気量および燃料噴射量は共に、始動開始後の時間の経過に伴って増大する。このため、本実施例によれば、燃料性状が重質である場合に、上記第1実施例の如く始動開始後、所定時間が経過した後に重質燃料用始動制御を開始する場合に比して、内燃機関10を速やかに始動させることができる。従って、本実施例のシステムによれば、内燃機関10の始動が開始された後、始動が完了するまでの時間を短縮させることが可能となる。
また、本実施例においては、上述の如く、内燃機関10の始動完了時におけるスロットル開度を所定のしきい値と比較することにより、燃料性状が判定される。すなわち、始動完了時のスロットル開度が所定のしきい値に比して小さい場合は燃料性状が軽質であると判断され、一方、始動完了時のスロットル開度が所定のしきい値に比して大きい場合は燃料性状が重質であると判断される。しかし、上記の手法により燃料性状が重質であると判断された場合は、スロットル開度が大きくなっていることで、始動完了後に、内燃機関10に供給される混合気の空燃比がリーンになるおそれがある。そこで、内燃機関10の始動完了後、上記の如く判定された燃料性状に応じて、点火時期や燃料噴射量等に補正を加えることとすれば、空燃比がリーンになるのを回避でき、内燃機関10において失火が生じるのを防止することが可能となる。
ところで、上記の実施例においては、内燃機関10の始動が開始された後、スロットル開度θを、図9に示す如く時間的に直線状に増大させることとしているが、階段状や放物状に増大させることとしてもよい。
次に、図11および図12を参照して、本発明の第4実施例について説明する。本実施例のシステムは、上記図1および図2に示す内燃機関10において、ECU12が図12に示すルーチンを実行することにより実現される。
内燃機関10においては、始動完了後に、エミッションの低減や触媒の暖機向上を図るべく、点火プラグ56から火花を発生させる時期(以下、点火時期(Ignition Timing ;IT)と称す)を遅角させる制御(以下、点火遅角制御と称す)が行われる場合がある。かかる点火遅角制御が実行されると、内燃機関10の出力トルクが低下すると共に、排気ガスの温度が上昇することにより、暖機中のエミッションが低減され、触媒が昇温される。
車両に内燃機関10を動力源にして発電するジェネレータ22が設けられている場合に、上記の点火遅角制御により点火プラグ56の点火時期が遅角されると、内燃機関10の出力トルクが小さく制限されるため、燃料性状にかかわらず、ジェネレータ22の発電量も小さく抑制される。すなわち、ジェネレータ22の発電量は、点火時期が遅角するのに応じて小さくなる。このため、上記の第1実施例の如く、始動完了時におけるジェネレータ22の発電量に基づいて燃料性状の判定が行われ、かつ、燃料性状の判定に用いられるしきい値が所定値に維持されている場合には、点火遅角制御が実行されると、燃料性状が実際には軽質であるにもかかわらず、ジェネレータ22の発電量がしきい値を上回らずに、燃料性状が重質であると誤判定されてしまうおそれがある。
従って、燃料性状の判定が始動完了時におけるジェネレータ22の発電量に基づいて行われる状況下で、点火遅角制御が実行された場合にも燃料性状を正確に判定するためには、燃料性状の判定のためのしきい値を一定の値に維持することは適切ではない。そこで、本実施例においては、点火遅角制御が実行された場合に、燃料性状の判定のためのしきい値を、点火時期の遅角量に応じた値に小さく抑制することとしている。
図11(A)は、内燃機関10において始動完了後に点火遅角制御が実行される場合の点火時期の進角・遅角量の時間変化を示す。また、図11(B)は、図11(A)に示す如く点火時期を変化させる状況下での、ジェネレータ22の発電量の時間変化を示す。尚、図11(B)には、燃料性状が重質である場合のジェネレータ22の発電量を太実線で、燃料性状が軽質である場合のジェネレータ22の発電量を細実線でそれぞれ示していると共に、本実施例における燃料性状を判定するためのしきい値を破線で示している。
図11(A)に示す如く、内燃機関10の始動開始の条件が成立した(t=0)後、t=3近傍において始動が完了すると、その後、エミッションの低減や触媒の暖機向上を図るべく、点火遅角制御が実行される。点火遅角制御が実行されれば、内燃機関10の出力トルクが低下すると共に、排気ガスの温度が上昇することにより、暖機中のエミッションが低減され、触媒の昇温が図られる。
内燃機関10を動力源にして発電するジェネレータ22の発電量は、内燃機関10の出力トルクが低下するのに応じて小さくなる。従って、点火遅角制御により点火時期が遅角されるほど、内燃機関10の出力トルクが低下し、図11(B)に示す如く、t=5.0近傍以降に、内燃機関10に供給されている燃料の性状にかかわらず、ジェネレータ22の発電量が小さくなる。
本実施例においては、図11(B)に破線で示す如く、点火遅角制御が開始された後、かかる点火遅角制御に起因してジェネレータ22の発電量が変動すると予想される遅延時間の経過後に、燃料性状の判定のためのしきい値を、点火時期の遅角量に応じた値に小さく変更する。
図12は、上記の機能を実現すべく、本実施例においてECU12が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図12に示すルーチンは、その処理が終了するごとに繰り返し起動されるルーチンである。図12に示すルーチンが起動されると、まずステップ220の処理が実行される。
ステップ220では、ジェネレータ22において発電が開始されたか否かが判別される。具体的には、ジェネレータ22の出力トルクSTGが正の値から負の値に変化し、その状態が所定時間(例えば0.4秒)継続しているか否かが判別される。本ステップ220の処理は、ジェネレータ22が発電したと判別されるまで繰り返し実行される。その結果、ジェネレータ22において発電が開始された場合は、内燃機関10の始動が完了したと判断できる。本ステップ220においてかかる判別がなされた場合は、次にステップ222の処理が実行される。
ステップ222では、内燃機関10の各種センサの出力信号に基づいて、点火遅角制御の実行条件が成立しているか否かが判別される。その結果、上記の実行条件が成立していると判別された場合は、次にステップ224の処理が実行される。
ステップ224では、点火プラグの火花が内燃機関10の遅角側で生じるように点火時期を遅らせる点火遅角制御が実行される。
ステップ226では、点火遅角制御が実行された後の時間tが所定時間t10を経過したか否かが判別される。尚、所定時間t10は、点火遅角制御により点火時期が遅角され始めた後において、かかる点火時期の遅角に起因して現実にジェネレータ22の発電量が小さくなる、すなわち、ジェネレータ22の出力トルクSTGが大きくなると判断できる最小時間である。本ステップ226の処理は、t≧t10が成立すると判別されるまで繰り返し実行される。その結果、t≧t10が成立すると判別された場合は、ジェネレータ22の発電量(出力トルクSTG)が点火遅角制御に起因して変化していると判断できる、この場合は、次にステップ228の処理が実行される。
ステップ228では、燃料性状を判定するための、ジェネレータ22の出力トルクSTGについてのしきい値Aを、初期値A0 に点火時期ITの遅角量に応じた値f(IT)を加算した値にする処理が実行される。尚、初期値A0 は、点火遅角制御が実行されない場合に燃料性状を判定するためのしきい値であり、また、関数f(IT)は、点火時期ITの遅角量が大きくなるに従って大きくなるような関数である。本ステップ228の処理が実行されると、燃料性状の判定のためのしきい値が初期値から変更されることになる。本ステップ228の処理が終了すると、次にステップ232の処理が実行される。
一方、上記ステップ222において内燃機関10の始動開始後に点火遅角制御の実行条件が成立しない場合は、かかる制御の実行の必要がないと判断できる。この場合は、燃料性状の判定のためのしきい値を変更する必要はない。従って、上記ステップ222において点火遅角制御の実行条件が成立しないと判別された場合は、次にステップ230の処理が実行される。
ステップ230では、燃料性状を判定するためのしきい値Aを初期値A0 にする処理が実行される。本ステップ230の処理が終了すると、次にステップ232の処理が実行される。
ステップ232では、現時点が燃料性状の判定時期であるか否かが判別される。具体的には、内燃機関10の始動が完了した後、一定の時間が経過したか否かが判別される。本ステップ232の処理は、上記条件が成立すると判別されるまで繰り返し実行される。その結果、燃料性状の判定時期に達したと判別された場合には、次にステップ234の処理が実行される。
ステップ234では、インバータ26に内蔵された電流検出回路および電圧検出回路の出力信号に基づいて、ジェネレータ22の出力トルクSTGが検出される。
ステップ236では、上記ステップ234で検出されたジェネレータ22の出力トルクSTGが、上記ステップ228または230で設定されたしきい値Aに比して小さいか否かが判別される。その結果、STG<Aが成立しないと判別された場合は、次にステップ238の処理が実行され、一方、STG<Aが成立すると判別された場合は、次にステップ240の処理が実行される。
ステップ238では、重質フラグXHDをセットする処理が実行される。本ステップ238の処理が終了すると、今回のルーチンが終了される。
ステップ240では、重質フラグXHDをリセットする処理が実行される。本ステップ240の処理が終了すると、今回のルーチンが終了される。
上記の処理によれば、内燃機関10の始動が開始された後、点火遅角制御が実行されない場合は、燃料性状の判定のためのしきい値を一定値に維持し、一方、点火遅角制御が実行された場合は、かかるしきい値を点火時期の遅角量に応じた値に変更することができる。このため、本実施例によれば、点火遅角制御により点火時期が遅角されることに起因して始動開始後のジェネレータ22の発電量に変動が生じる場合でも、内燃機関10に供給される燃料の性状を、ジェネレータ22の発電量に基づいて正確に判定することができる。従って、本実施例によれば、燃料性状の判定後に、燃料性状に応じて燃料噴射量や点火時期等に補正を加える場合にも、適正な補正を実行することが可能となる。
一般に、内燃機関10は、始動完了直後、不安定な運転状態となっている。このため、燃料性状が、内燃機関10を動力源にして発電するジェネレータ22の発電量に基づいて判定される構成では、内燃機関10の始動完了直後に燃料性状を判定することは適切でない。また、点火遅角制御が実行されると、上述の如く、その制御の開始後、遅延時間が経過した後に、点火時期が遅角されることに起因してジェネレータ22の発電量が変動する。このため、燃料性状が始動開始後のジェネレータ22の発電量に基づいて判定され、かつ、燃料性状の判定のためのしきい値が一定値に維持されている構成では、点火遅角制御の開始後遅延時間が経過した後に燃料性状を判定することは適切ではない。従って、このような構成では、燃料性状を正確に判定できる時間が短期間となってしまう。
これに対して、本実施例においては、点火遅角制御の開始後一定の時間が経過した後に、燃料性状の判定のためのしきい値を、点火時期の遅角量に合わせて変更することとしている。この場合、点火遅角制御により点火時期が遅角されることに起因して始動開始後のジェネレータ22の発電量が変動しても、燃料性状を正確に判定することが可能となる。従って、本実施例によれば、内燃機関10の始動完了後に燃料性状を正確に判定できる時間が長期間となり、燃料性状を判定する際の精度の向上を図ることが可能となっている。
尚、上記の第4実施例においては、ジェネレータ22の出力トルクSTGが特許請求の範囲に記載された「パラメータ」に、点火遅角制御が特許請求の範囲に記載された「トルク制限制御」に、それぞれ相当していると共に、ECU12が、上記ステップ228の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載された「しきい値変更手段」が実現されている。
ところで、上記の第4実施例においては、燃料性状を判定するために用いられるしきい値を、触媒の暖機の向上を図るべく点火時期遅角制御が実行された場合に変更することにより、燃料性状の誤判定を防止することとしているが、燃料性状の誤判定を防止する手法はこれに限定されるものではなく、点火時期遅角制御が実行されている場合に燃料性状の判定を禁止することにより実現することとしてもよい。この場合、ECU12が、トルク制限制御が実行されている場合に燃料性状の判定を禁止することにより、特許請求の範囲に記載された「性状判定禁止手段」が実現される。
また、上記の第4実施例においては、内燃機関10の出力トルクが小さく制限される点火遅角制御が実行された場合に、燃料性状の判定のためのしきい値を変更することとしているが、内燃機関10の出力トルクが小さく制限される制御であれば、点火遅角制御以外の制御により上記しきい値を変更することとしてもよい。
ところで、上記の第1乃至4実施例においては、ジェネレータ22の発電が開始されたか否かに基づいて、内燃機関10の始動が完了したか否かを判別することとしているが、機関回転数NE等の、内燃機関10の出力に基づいて始動が完了したか否かを判別することとしてもよい。
本発明の第1実施例である内燃機関が搭載される車両の駆動機構を模式的に表した図である。
本実施例において用いられる内燃機関の構成図である。
内燃機関に供給される燃料の性状を検出する検出手法を模式的に表した図である。
本実施例において、内燃機関を始動すべく実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
本実施例において、内燃機関の始動制御から空燃比フィードバック制御に切り替えるべく実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
(A)は重質燃料用始動制御の終了時に行われる各処理をすべて同時に終了させる場合の、吸気弁の進角度evt、燃料噴射の終了時期角度einjend、および、燃料噴射量の増量率efmwstの時間変化の一例をそれぞれ示す図であり、また、(B)は(A)に示す如く進角度evt、終了時期角度einjend、および、増量率efmwstを変化させた場合に得られる内燃機関の空燃比A/Fの時間変化を示す図である。
(A)は重質燃料用始動制御の終了時に行われる各処理を互いに時期をずらして終了させる場合の、吸気弁の進角度evt、燃料噴射の終了時期角度einjend、および、燃料噴射量の増量率efmwstの時間変化の一例をそれぞれ示す図であり、また、(B)は(A)に示す如く進角度evt、終了時期角度einjend、および、増量率efmwstを変化させた場合に得られる内燃機関の空燃比A/Fの時間変化を示す図である。
本発明の第2実施例において、重質燃料に対応した第2の始動制御を終了する際に実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
本発明の第3実施例において実現される、内燃機関の始動開始後におけるスロットル開度の時間変化を示す図である。
本実施例において、燃料性状を判定すべく実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
(A)は内燃機関において始動完了後に点火遅角制御が実行される場合の点火時期の進角・遅角量の時間変化を示す図であり、また、(B)は(A)に示す如く点火時期を変化させる状況下での、ジェネレータの発電量の時間変化を示す図である。
本発明の第4実施例において、燃料性状を判定すべく実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
符号の説明
10 内燃機関
12 電子制御ユニット(ECU)
22 ジェネレータ
60 インジェクタ
66 スロットルバルブ