JP2008025036A - 制電性を有する特殊複合仮撚加工糸及びその製造方法 - Google Patents

制電性を有する特殊複合仮撚加工糸及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】非常に良好な嵩高性、スパン感を有するとともに、制電性能にも優れたスパンライクなポリエステル布帛を得ることができるポリエステル複合仮撚加工糸及び該複合仮撚加工糸を安定して製造する方法を提供する。
【解決手段】芯部糸条としてのポリオキシアルキレン系ポリエーテル及びポリエステルと実質的に非反応性の有機イオン性化合物を含有する制電性ポリエステルマルチフィラメントの未延伸糸条と、鞘部糸条としてのポリメチルメタアクリレート系ポリマー及び/又はポリスチレン系ポリマーを含有するポリエステルの未延伸糸条とを交絡させ、特定の条件で延伸同時仮撚加工することで、毛羽がなく、非常に良好な嵩高性、スパン感を有するとともに、耐久性に優れた制電性を有する複合仮撚加工糸を高速で安定して製造する。この加工糸は、学生服、ユニフォーム、防塵衣、等の静電気を抑える用途に特に有用である。
【選択図】図1

Description

本発明は、制電性を有するポリエステル複合仮撚加工糸及びその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、嵩高性、スパン感を有し、特に、耐久性に優れた制電性を有するポリエステル複合仮撚加工糸並びに該複合仮撚加工糸を高速で安定して得られる方法に関するものである。
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、は多くの優れた特性を有しているために、繊維、フィルム、シート等の成形用材料として広く使用されている。しかしながら、ポリエステルは疎水性であるため、制電性が要求される分野での使用は制限されている。
従来より、ポリエチレンテレフタレート系のポリエステル(以下、PET系ポリエステルということがアル)に親水性を付与して制電性を発現させようとする試みが行われており、これまでに数多くの提案がなされている。例えば、PET系ポリエステルにポリオキシアルキレン系ポリエーテル化合物を配合せしめる方法(下記特許文献1参照)、並びに、PET系ポリエステルに実質的に非相溶性のポリオキシアルキレン系ポリエーテル化合物と有機・無機のイオン性化合物とを配合せしめる方法(下記特許文献2〜7等参照)が知られている。これらの方法によれば、通常の延伸糸(FOY)においては、制電性を有するものの、仮撚加工糸においては、撚り変形により、毛羽が発生するため、実用化されたものの中に制電性を有する製品が見られないのが、実情であった。
一方、従来、伸度差を有する2種以上のポリエステルフィラメント糸を引き揃えて交絡処理し、引き続いて仮撚加工することにより得られた、嵩高性、スパン感の良好な2層構造の複合仮撚加工糸が知られている(例えば、下記特許文献8参照)。
しかしながら、近年、織編物の風合い、肌触り、外観等に関する要求がますます高まってきており、従来の複合仮撚加工糸を用いて製編織された布帛では、一応の嵩高性やスパン感は得られるものの、パチパチする静電気を抑えるといった制電性を有する布帛は皆無に等しいといっていいほどで、未だ十分な制電性を有するものは見られなかった。特に、学生服、ユニフォーム、防塵衣等の静電気を抑える必要性の大きい用途、あるいは、肌に直接触れることの多いブラウスやシャツ等の用途においても、満足できる制電性を有する実用的な布帛は、未だ提供されていないのが現状である。
特公昭39−5214号公報 特公昭44−31828号公報 特公昭60−11944号公報 特開昭53−80497号公報 特開昭53−149247号公報 特開昭60−39413号公報 特開平3−139556号公報 特公昭61−19733号公報
本発明の目的は、上述したところから明らかなように、非常に良好な嵩高性、スパン感を有するとともに、制電性能にも優れたスパンライクなポリエステル布帛とすることができる新規なポリエステル複合仮撚加工糸及び該複合仮撚加工糸を安定して製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、ポリエステル系複合仮撚加工糸において、芯部糸条を特定の制電剤を特定割合で含有するポリエステル糸条で構成するととともに、鞘部糸条をポリメチルメタアクリレート系ポリマー又はポリスチレン系ポリマーを特定割合で含有するポリエステル糸条で構成し、上記の芯部糸条用未延伸糸と鞘部糸条用未延伸糸とを引き揃えて、特定の条件下で延伸同時仮撚加工すれば、制電性の芯部糸条を鞘部糸条が糸長方向に均一に包み込む効果により、非常に良好な嵩高性とスパン感を有するとともに、制電性能にも優れたスパンライクなポリエステル布帛となし得るポリエステル複合仮撚加工糸を、飛躍的に向上した工程安定性にて、生産性よく製造することができることを見出し、本発明に到達した。
かくして本発明によれば、実質的に芯部糸条(A)の周囲を鞘部糸条(B)が覆っている複合仮撚加工糸であって、芯部糸条(A)が、ポリオキシアルキレン系ポリエーテルとポリエステルとは実質的に非反応性の有機イオン性化合物とを含有してなる制電性ポリエステルマルチフィラメントかであって、鞘部糸条(B)が、ポリエステルにポリメチルメタアクリレート系ポリマー及び/又はポリスチレン系ポリマーを重量基準で0.5〜3.0重量%配合したポリエステルマルチフィラメントからなる特殊複合仮撚加工糸であって、該複合仮撚加糸の帯電摩擦圧が2000V以下、捲縮率が2〜8%であり、かつ該糸条群(B)の平均糸長が該糸条群(A)の平均糸長より10〜20%長いことを特徴とする制電性特殊複合仮撚加工糸が提供される。
本発明の制電性特殊複合仮撚加工糸においては、上記の芯部糸条(A)が、芳香族ポリエステル100重量部に対して、制電剤として(a)ポリオキシアルキレン系ポリエーテル0.2〜30重量部及び(b)該ポリエステルと実質的に非反応性の有機イオン性化合物0.05〜10重量部を含有してなる制電性ポリエステルマルチフィラメントで構成されることが好ましい。
また、本発明の制電性特殊複合仮撚加工糸において、上記の芯部糸条(A)及び鞘部糸条(B)を構成する芳香族ポリエステルが、繰り返し単位の75モル%以上がエチレンテレフタレートであるPET系ポリエステルであることが好ましい。
さらに、本発明によれば、上記の如き制電性特殊複合仮撚加工糸を安定かつ効率的に製造する方法として、ポリエステルマルチフィラメントを延伸仮撚加工するに際し、加工用原糸として(a)ポリオキシアルキレン系ポリエーテル及び該ポリエステルと(b)実質的に非反応性の有機イオン性化合物とを含有する制電性未延伸ポリエステルマルチフィラメント(A’)と、ポリエステルに対しポリメチルメタアクリレート系ポリマー及び/又はポリスチレン系ポリマーを0.5〜3.0重量%含有する未延伸ポリエステルマルチフィラメント(B’)とを合糸し、下記(1)〜(4)の条件;
(1)仮撚直前に空気交絡処理を施し、30個以上/mの交絡を付与すること、
(2)仮撚具として、3軸フリクションディスクタイプの仮撚具であって、解撚部に位置する最下段のデイスとして、ディスク材質がセラミック製で、該ディスクと走行糸条との接触長が2.5〜0.5mmであり、かつ、該ディスクの直径が直上のディスクの直径の90〜98%であるものを使用すること、
(3)仮撚温度を、170℃〜300℃とすること、及び、
(4)仮撚数(T/m)を、仮撚加工糸の繊度(Y dtex)に対して、15000/Y1/2≦T≦35000/Y1/2とすること、
を全て満足するようにして延伸同時仮撚加工することを特徴とする特殊ポリエステル複合仮撚加工糸の製造方法が提供される。
かかる本発明方法においては、未延伸の制電性ポリエステルマルチフィラメント(A’)が、芳香族ポリエステル100重量部に対して、(a)ポリオキシアルキレン系ポリエーテル0.2〜30重量部及び(b)該芳香族ポリエステルと実質的に非反応性の有機イオン性化合物0.05〜10重量部を配合した芳香族ポリエステル組成物からなる制電性ポリエステルマルチフィラメントであることが好ましい。
なお、かかる本発明方法においても、上記芳香族ポリエステルが、繰り返し単位の75モル%以上がエチレンテレフタレートであるPET系ポリエステルであることが好ましい。
本発明のポリエステル複合仮撚加工糸は、芯部糸条(A)に上記のような2種の制電剤(a)及び(b)を含有しているため、優れた制電性が発現する。すなわち、複合仮撚加工糸において、かかる芯部糸条(A)を含む芯鞘構造が糸長方向に安定して形成されるため、該加工糸にあっては予想外に制電性が発揮される。この効果は、織物とした場合、撚りの影響を受けないので、特に顕著に現れる。また、制電性を発揮する芯部糸条(A)(以下、単に「芯糸」という)が上記鞘部糸条(B)(以下、単に「鞘糸」という)で包み込まれているので、仮撚加工時には制電成分を包み込み、変形を少なくすることで加工時に毛羽を出ないようにしており、このことが良好な制電性の維持、仮撚加工での毛羽発生の減少、生産性向上、さらには、織物とした場合における洗濯耐久性に優れる要因となる。その結果、本発明では、特に、学生服、ユニフォーム、防塵衣等の静電気を抑える必要の高い用途向けとして、非常に良好な嵩高性、スパン感を有するとともに、優れた制電性にも優れたスパンライクなポリエステル布帛とすることができ、しかも、後工程での取り扱い性にもすぐれた、ポリエステル複合仮撚加工糸が提供される。
また、本発明の方法によれば、このような多くの利点をもつポリエステル複合仮撚加工糸を安定して効率的に製造することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の複合仮撚加工糸は、既に述べたように制電性の芯糸の外周を実質的に鞘糸が覆っている複合構造をもつ複合仮撚加工糸であるが、芯糸及び鞘糸は、それぞれ下記の如き芳香族ポリエステルを主成分とする組成物で形成されるポリエステルマルチフィラメントからなる。
本発明でいう芳香族ポリエステルは、芳香環を重合体の連鎖単位に有する芳香族ポリエステルであって、二官能性芳香族カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体との反応により得られる重合体を対象とする。
ここでいう二官能性芳香族カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5‐ナフタレンジカルボン酸、2,5‐ナフタレンジカルボン酸、2,6‐ナフタレンジカルボン酸、4,4′‐ビフェニルジカルボン酸、3,3′‐ビフェニルジカルボン酸、4,4′‐ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′‐ビフェニルメタンジカルボン酸、4,4′‐ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4′‐ビフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2‐ビス(フェノキシ)エタン‐4,4′‐ジカルボン酸、2,5‐アントラセンジカルボン酸、2,6‐アントラセンジカルボン酸、4,4′‐p‐フェニレンジカルボン酸、2,5‐ピリジンジカルボン酸、β‐ヒドロキシエトキシ安息香酸、p‐オキシ安息香酸等をあげることができ、これらの中でも、特にテレフタル酸が好ましい。
これらの二官能性芳香族カルボン酸は2種以上併用してもよい。なお、少量であればこれらの二官能性芳香族カルボン酸とともにアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸の如き二官能性脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸の如き二官能性脂環族カルボン酸、5‐ナトリウムスルホイソフタル酸等を1種又は2種以上併用することができる。
一方、好ましいジオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2‐メチル―1,3‐プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコールの如き脂肪族ジオール、1,4‐シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール等及びそれらの混合物等をあげることができる。これらの中でも、特にエチレングリコールが好ましい。
また、少量であればこれらのジオール化合物と共に両末端又は片末端が未封鎖のポリオキシアルキレングリコールを共重合することができる。
さらに、ポリエステルが実質的に線状である範囲で、トリメリット酸、ピロメリット酸の如きポリカルボン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの如きポリオールを使用することもできる。
好ましい芳香族ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレン‐1,2‐ビス(フェノキシ)エタン‐4,4′‐ジカルボキシレート等のほか、ポリエチレンイソフタレート・テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート・イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート・デカンジカルボキシレート等のような共重合ポリエステルをあげることができる。中でも機械的性質、溶融紡糸性等のバランスのとれたポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はそれを主成分とする共重合ポリエステルがよく、中でも繰り返し単位の75モル%以上、特に85〜100モル%、がエチレンテレフタレートであるPET系ポリエステルが好ましい。
かかる芳香族ポリエステルは任意の方法によって合成される。例えばポリエチレンテレフタレートついて説明すれば、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルの如きテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかして、テレフタル酸のグリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させる第1段反応、次いでその生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第2段の反応とによって容易に製造される。
<芯糸について>
本発明の複合仮撚加工糸を構成する芯糸は、上述の如き芳香族ポリエステルを主成分とし、これに、特定の2種の制電剤、具体的には、上記の如きポリオキシアルキレン系ポリエーテル(a)及び有機イオン性化合物(b)、を配合した組成物からなるマルチフィラメントからなる。
芯糸中に第1の制電剤として含有するポリオキシアルキレン系ポリエーテル(a)は、ポリエステルに実質的に不溶性のものであれば、単一のオキシアルキレン単位からなるポリオキシアルキレングリコールであっても、2種以上のオキシアルキレン単位からなる共重合ポリオキシアルキレングリコールであってもよく、また、下記一般式(I)で表わされるポリオキシエチレン系ポリエーテルであってもよい。
Figure 2008025036
上記式(I)中、Zは1〜6個の活性水素原子を有する有機化合物残基、Rは炭素原子数6以上のアルキレン基又は置換アルキレン基、Rは水素原子、炭素原子数1〜40の一価の炭化水素基、炭素原子数2〜40の一価のヒドロキシ炭化水素又は炭素原子数2〜40の一価のアシル基、kは1〜6の整数、nはn≧70/kを満足する整数、mは1以上の整数である。
かかるポリオキシアルキレン系ポリエーテルの具体例としては、分子量が4000以上のポリオキシエチレングリコール、分子量が1000以上のポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、分子量が2000以上のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド共重合体、分子量4000以上のトリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物、分子量3000以上のノニルフェノールエチレンオキサイド付加物、並びに、これらの末端OH基に炭素数が6以上の置換エチレンオキサイドが付加した化合物があげられ、中でも分子量が10000〜100000のポリオキシエチレングコール及び分子量が5000〜16000の、ポリオキシエチレングリコールの両末端に炭素数が8〜40のアルキル基置換エチレンオキサイドが付加した化合物が好ましい。
かかるポリオキシアルキレン系ポリエーテル化合物(a)の配合量は、上記芳香族ポリエステル100重量部に対して0.2〜30重量部の範囲が適当である。0.2重量部より少ないときは親水性が不足して充分な制電性を呈することができない。一方、30重量部より多くしても最早制電性の向上効果は認められず、かえって得られる組成物の機械的性質を損なうようになる上、該ポリエーテル化合物がブリードアウトしやすくなるため、溶融紡糸時チップのルーダーへのかみこみ性が低下して、溶融紡糸性も悪化するようになる。
本発明では、芯糸の制電性を特段に向上させるため、芯糸にはさらに第2の制電剤として有機イオン性化合物(b)を含有する。ここで使用される有機イオン性化合物(b)としては、例えば下記一般式(II)で示されるスルホン酸金属塩及び一般式(III)で示されるスルホン酸第4級ホスホニウム塩を好ましいものとしてあげることができる。
Figure 2008025036

上記式(II)中、Rは炭素原子数3〜30のアルキル基又は炭素原子数6〜40のアリール基、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を示す。上記式(II)においてRがアルキル基のときはアルキル基は直鎖状であってもよく、分岐した側鎖を有していてもよい。Mは、Na,K,Li等のアルカリ金属又はMg,Ca等のアルカリ土類金属であり、中でもLi,Na,Kが好ましい。かかるスルホン酸金属塩は1種のみを単独で用いても、2種以上を混合して使用してもよい。好ましいスルホン酸金属塩の具体例としては、ステアリルスルホン酸ナトリウム、オクチルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、アルキル基の炭素原子数の平均が14であるアルキルスルホン酸ナトリウム混合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム混合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ハード型、ソフト型)、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム(ハード型、ソフト型)、ドデシルベンゼンスルホン酸マグネシウム(ハード型、ソフト型)等をあげることができる。
Figure 2008025036
上記式(III)中、R,R,R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数3〜30のアルキル基又は炭素原子数6〜40のアリール基を示す。これらのR,R,R及びRはそれぞれ炭素原子数が5〜15の低級アルキル基、フェニル基又はベンジル基が好ましい。また、これらR,R,R及びR の炭素数の総合計は60以下が好ましい。
好ましいスルホン酸第4級ホスホニウム塩の具体例としては、アルキル基の炭素原子数の平均が14であるアルキルスルホン酸テトラブチルホスホニウム、アルキル基の炭素原子数の平均が14であるアルキルスルホン酸テトラフェニルホスホニウム、アルキル基の炭素原子数の平均が14であるアルキルスルホン酸ブチルトリフェニルホスホニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム(ハード型、ソフト型)、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム(ハード型、ソフト型)、ドデシルベンゼンスルホン酸ベンジルトリフェニルホスホニウム(ハード型、ソフト型)等をあげることができる。かかるスルホン酸第4級ホスホニウム塩は1種のみを単独で用いても2種以上を混合して使用してもよい。
かかる有機のイオン性化合物(スルホン酸金属塩及びスルホン酸第4級ホスホニウム塩)は、1種のみ単独使用してもよく、2種以上併用してもよいが、いずれの場合も、その合計配合量は、芳香族ポリエステル100重量部に対して0.05〜10重量部の範囲とする。配合量が0.05重量部未満では制電性向上の効果が小さく、10重量部を超えると組成物の機械的性質を損なうようになる上、該イオン性化合物もブリードアウトしやすくなるため、溶融紡糸時のチップのルーダーかみこみ性が低下して、紡糸安定性も悪化するようになる。
なお、芯糸を形成するポリエステル組成物には、必要に応じて、本発明の目的を阻害しない範囲で、公知の添加剤、例えば、顔料、染料、艶消し剤、防汚剤、蛍光増白剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤等を配合してもよい。
<鞘糸について>
一方、本発明の複合仮撚加工糸を構成する鞘糸は、上記の如き芳香族ポリエステルに、ポリメチルメタアクリレート系ポリマー及び/又はポリスチレン系ポリマーを配合したものからなる。ここで、芳香族ポリエステルとしては、全繰り返し単位の75モル%以上、特に85モル%以上がエチレンテレフタレートからなり、その固有粘度(オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定)が0.7以下、特に0.55〜0.70のものが好ましい。なお、この芳香族ポリエステルは芯糸を構成する芳香族ポリエステルと同じ組成であってもよく、異なる組成であってもよい。
また、これらのポリエステルには、公知の添加剤、例えば、顔料、染料、艶消し剤、防汚剤、蛍光増白剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤を含んでもよい。
鞘糸を構成する芳香族ポリエステルに配合するポリメチルメタアクリレート系ポリマー、ポリスチレン系ポリマーは、アタクチック構造又はシンジオタクチック構造の非晶性ポリマーであってもよく、アイソタクチック構造の結晶性ポリマーであってもよい。また、本発明の目的を阻害しない範囲内で共重合成分を含有するものであっても構わない。
これらポリマーの分子量はあまりに小さいと、後述する本発明の効果が低下する傾向にあるので、その重量平均分子量にして2000以上、特に5000〜20万の範囲が好ましい。具体的には、重量平均分子量が8000〜20万、メルトインデックスA(ASTM−D1238準拠、温度230℃、荷重3.8kgfで測定)が10〜30g/10分であるポリメチルメタクリレート系共重合体又はアイソタクチックポリスチレン系重合体、あるいは、重量平均分子量が8000〜20万、メルトインデックスB(ASTM‐D1238準拠、温度300℃、荷重2.16kgfで測定)が6〜50g/10分のシンジオタクチックポリスチレン系重合体等を特に好ましい例としてあげることができる。これらの重合体は、上記ポリエステルに溶融混合して溶融紡糸する際、その熱安定性と分散状態の安定性に優れているので好ましい。
かかるポリメチルメタアクリレート系ポリマー及び/又はポリスチレン系ポリマーのポリエステルへの混合により、該繊維の表面に微細な凸部が形成されるためと推定されるが、結果的に繊維間摩擦抵抗が低下して滑りやすくなり、これによりソフトで滑らかな表面タッチの風合いの織編物が実現される一方、染色時の光沢は未添加と同等のレベルが維持されるという効果が発現される。かかる効果を発現させるため上記ポリマーの含有量は、ポリエステル重量を基準として、合計で0.5〜3.0重量%する必要があり、1.0〜2.0重量%とするのが好ましい。含有量が0.5重量%未満の場合には、繊維・繊維間の摩擦低下が不十分で、得られる布帛の風合いが硬いものとなるので好ましくない。一方、3.0重量%を超える場合には、かかるポリマー添加の効果が飽和するのみならず、繊維の紡糸、延伸工程での安定性が低下して、断糸が多くなるので好ましくない。なお、ポリメチルメタアクリレート系ポリマーとポリスチレン系ポリマーとを併用することも可能であるが、この場合は両者の合計の重量%が上記含有量の範囲内になるようにする。
本発明において、鞘糸をこのような組成にしたことで、上述のように複合糸表面の感触などを改善する効果もあるが、最も重要なのは、鞘糸にポリメチルメタアクリレート系ポリマーやポリスチレン系ポリマーをブレンドすると、同紡速の未ブレンド糸よりも伸度が高くなるため、これらを複合仮撚加工した場合、該ブレンド糸が複合糸の鞘部に配されやすくなり、逆に複合する相手方の制電糸条が芯部に配されやすくなるという効果が得られることである。
なお、鞘糸を形成する上記ポリエステル組成物にも、必要に応じ、本発明の目的を阻害しない範囲で、公知の添加剤、例えば、顔料、染料、艶消し剤、防汚剤、蛍光増白剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤等を配合して差し支えない。
<複合仮撚加工糸の構成及び特性について>
本発明の仮撚加工糸では、芯糸の糸条群Aと鞘糸の糸条群Bとは、その糸長に差があることが必要で、特に糸条群Bの方が糸条群Aより10〜20%、より好ましくは12〜18%の範囲で長い方が好ましい。その際、糸条群Aが主として複合仮撚加工糸の芯部に配され、糸条群Bが主として鞘部に配されている芯鞘構造を形成している。このような糸長差とすることにより、糸長方向に安定して制電性のある芯糸を鞘糸で包み込むことが、制電性を高く維持することにつながり、洗濯耐久性が良い結果となる。また、鞘糸のより繊細さが加工糸及びそれからなる織編物のソフトな風合いを発現する。また、織編物工程での取り扱い性が向上し、高品質のものが得られる。
本発明においては、上記のような糸条群Aと糸条群Bとから構成される複合仮撚加工糸の捲縮率は2〜8%の範囲、特に3〜7%の範囲の捲縮を有していることが必要である。捲縮率をこの範囲とすることにより、ソフトな風合に優れる織編物が得られる。これに対し、捲縮率が2.0%未満の場合には、織編物とした際の糸条間空隙が多くなりすぎ、染色時に必要以上に染料が入りやすくなり、染斑を発現しやすくなるので好ましくない。一方、8.0%を超える場合には、得られる織編物の表面の杢が白けた色調となり、かつ、フカツキ感を呈するようになるので好ましくない。
なお、複合仮撚加工糸を構成する糸条群A又は糸条群Bから、夫々の糸条を取出して夫々単独で測定した時の捲縮率は、お互いに同じであっても相異なっていてもよいが、糸条群Bの方が捲縮率が大きい場合、該糸条Bが主として複合仮撚加工糸の鞘部に配されやすくなるので、織編物にしたとき、ソフトで滑らかな表面タッチの風合いが向上するので好ましい。
本発明の複合仮撚加工糸は、さらに、帯電摩擦圧が2000V以下、好ましくは500V〜1500Vの範囲内にある。帯電摩擦圧は、複合仮撚加工糸を筒編みし染色し、調湿後、制電性能をJIS L 1094帯電性試験方法B法(摩擦帯電圧測定法)により測定される値であって、摩擦帯電圧が、約2000V以下(好ましくは1500V以下)であれば、制電効果がありと評価できる。
本発明の複合仮撚加工糸は、織編物とした場合の織密度を適正な範囲に調整しやすくするため、その総繊度は100〜300dtex(デシテックス)、好ましくは130〜270dtexの範囲とするのが適当である。総繊度が100dtex未満の場合には、張り腰が弱く、かつ、充分に密集した織編地を得ることが困難となるので好ましくない。一方、300dtexを越える場合には、織編物の目付が大きくなりすぎるため織編用としては好ましくなくなる。なお、糸条群Aと糸条群Bとの総繊度比は、前者/後者で40/60〜60/40、特に45/55〜55/45の範囲が、より微細さ発現させる上で好ましい。
一方、糸条群Aと糸条群Bの単繊維繊度は、同一であっても異なっていてもよいが、その平均単繊維繊度は1.0〜5.0dtex、好ましくは1.2〜4.0dtexの範囲であることが必要である。平均の単繊維繊度が1.0dtex未満の場合には、糸条群Aと糸条群Bとの混ざり合いが進みすぎるため、得られる織編物表面が発現し難くなるので好ましくない。一方、平均単繊維繊度が5.0dtexを超える場合には、得られる織編物の風合いが粗硬化し、表面が不快な触感を与えるようになるので好ましくない。なお、芯糸と鞘糸Bの単繊維繊度が異なる場合には、複合仮撚加工糸のより芯部に配されやすい糸条群の方が、その単繊維繊度は大きい方が好ましい。しかし、あまりに大きくなりすぎると風合いが粗硬なものとなりやすいので5.5dtex以下とするのが好ましい。
<複合仮撚加工糸の製造方法について>
以上に説明した本発明の織編物用ポリエステル複合仮撚加工糸は、例えば以下の方法により製造することができる。すなわち、ポリエステルマルチフィラメントを延伸仮撚加工するに際して、加工用のポリエステル原糸として、上記のポリオキシアルキレングリコール(a)とイオン性帯電防止剤(b)とが配合されているポリエステル未延伸糸(A’)と上記のポリメチルメタアクリレート系ポリマー及び/又はポリスチレン系ポリマーをブレンドしたポリエステル未延伸糸(B’)とを用い、これらを合糸して、下記(1)〜(4)を同時に満足する条件で延伸同時仮撚加工することで製造される。
(1)合糸した糸条に、仮撚直前に空気交絡処理を施し、交絡度30個以上/mとする。
(2)仮撚具として、3軸フリクションディスクタイプで、解撚部に位置する最下段のディスク材質がセラミックで、該ディスクと走行糸条との接触長が2.5〜0.5mmであり、かつ、該ディスク径が直上のディスクの直径よりも90〜98%のものを使用する。
(3)仮撚温度を170〜300℃とする。
(4)仮撚数(T/m)を、複合仮撚加工糸の繊度(Y dtex)に応じて、15000/Y1/2≦T≦35000/Y1/2の範囲とする。
ここで、芯糸となる低伸度側未延伸糸(A’)と鞘糸となる高伸度側未延伸糸(B’)との間に伸度差があり、未延伸糸B’の方が70〜150%、特に90〜130%の範囲で大きい場合、得られる複合仮撚加工糸は、その鞘部に主として糸条群Bが配されるようになるため、得られる織編物の風合いがよりソフトでしなやかものとなるので好ましい。なお、伸度差が150%を超える場合には、風合いとしてフカツキ感を呈し、かつ、延伸仮撚加工工程で張力変動が発生しやすくなるため、それに起因する断糸頻度が増加して安定に加工することができなくなる。
また、低伸度側未延伸糸(A’)と高伸度側未延伸糸(B’)は、夫々別々に紡糸して巻き取った後、これらを合糸して延伸仮撚加工に供しても、異なる紡糸口金から夫々のポリマーを同時に溶融吐出し、夫々の糸条群を冷却後に合糸して巻き取り、延伸仮撚加工に供してもよいが、後者の方法において、紡糸速度2500〜4000m/分、特に3000〜3500m/分の範囲で溶融紡糸すると、ポリメチルメタアクリレート系ポリマー及び/又はポリスチレン系ポリマーを0.5〜3.0重量%含有するポリエステルは、ポリエステルを同速度で溶融紡糸して得られる未延伸糸よりも伸度が70〜150%、特に90〜130%大きいものが容易にかつ効率よく得られるので好ましい。
一般に、制電剤を含む糸条はフィブリル化しやすく仮撚加工において毛羽が発生しやすいが、本発明においては制電糸条を芯部に配し、鞘部の糸条で芯部を包み込んで加工時の変形を少なくすることにより、基本的に加工時に毛羽が出にくくしている。したがって、延伸仮撚加工においても毛羽の発生は殆ど見られない。
本発明方法においては、まず上記の如き低伸度側未延伸糸(A’)と高伸度側未延伸糸(B’)とを合糸ないし紡糸混繊してなる未延伸糸条に空気交絡処理を施す必要がある。空気交絡処理は延伸仮撚加工と別の工程で行ってもよいが、図1に示すように、延伸仮撚加工装置にインターレースノズル(4)を設置して延伸仮撚加工直前に施すのが好ましい。このことにより、伸度差によるネップ発生を抑制し、取り扱い性に好影響をもたらす。さらに、さらに、別のインターレースノズル(図示せず)により仮撚付与下に熱セットした糸条にも空気交絡を施すことで混繊交絡を完全に均一化させ、糸長方向に芯糸を鞘糸が均一に包み込む効果から、耐久性のある制電性能を有しかつ高級感を発現させることができる。
インターレースノズルによる空気交絡の度合いは、少なすぎると延伸仮撚加工中に低伸度側糸条群Aと高伸度側糸条群Bとが分離して織編物にした際の織物表面が不均一なものとなりやすく、特に未延伸糸A’とB’との間の伸度差が30%以上となる場合に多くなるので、得られる複合仮撚加工糸で測定した交絡度が30個/m以上、特に40個/m以上となるように施すのが好ましい。一方、インターレースノズルにより付与する交絡度が大きくなりすぎると、単糸同士の絡み合いが強くなりすぎ、織編物にした際の風合いが粗硬なものとなりやすいので、80個/m以下とするのが好ましい。
次に、交絡処理が施された未延伸糸は、例えば、図1に示すような2段式ヒーターを備えた延伸仮撚加工機に掛けて、捲縮を有するポリエステル仮撚加工糸とする。図1の例では、前述の如き2種のポリエステル組成物を同時に紡糸して引き揃えた未延伸糸(1)は、2対のフィードローラー(3、3’)の間に設置されたインターレースノズル(4)により空気交絡処理が施される。ここで所定の交絡が付与された未延伸糸は、フィードローラー(3’)と第1デリベリーローラー(8)との間で延伸されながら、仮撚具(7)のディスクとの摩擦により加撚される。この間、加撚状態で第1段ヒーター(5)にて熱処理され、冷却プレート(6)で冷却された後、仮撚具(7)を通過し解撚される。さらに、走行糸条は第1デリベリーローラー(8)と第2デリベリーローラー(10)との間に設置された第2段ヒーター(9)で、必要に応じ、再熱処理され、さらに、熱セットした仮撚後糸条に空気交絡を施した後、巻取ローラー(11)でチーズ状パッケージ(12)として巻き取られ、目的とする制電性ポリエステル複合仮撚加工糸が製造される。
この際、高速での延伸仮撚加工を考慮し、第1段ヒーター(5)及び第2段ヒーター(9)は非接触式とするのが好ましい。特に第2段ヒーター(9)は、SW−OFFする(該ヒーターを使用しない)ことが多いが、加工糸に求められる風合等の必要に応じて、使用してもかまわない。
本発明方法においては、仮撚具(7)が、図2に示すような3軸フリクションディスクタイプで解撚部に位置する最下段のディスク材質がセラミックであり、かつ、走行糸条と該ディスクとの接触長を2.5〜0.5mmとし、さらに、該ディスクが、そのすぐ上流のディスクの直径90〜98%の直径を有することが肝要である。
すなわち、図2に例示する仮撚具(7)は、3本の回転軸(15)にそれぞれ2個ずつ仮撚ディスク(13)が取り付けられた3軸フリクションディスクタイプのものであって、各回転軸(15)は駆動ベルト(17)で駆動されるタイミングベルト(16)により所定速度で回転し、それぞれの仮撚ディスク(13)を回転させるようにしている。本発明方法では、仮撚ディスク(13)のうち少なくとも解撚部に位置する最下段のディスク(図2の例では左側の回転軸に取り付けた下方のディスク)をセラミック製とし、かつ、そのディスクの直径がすぐ上流側のディスク(図2の例では中央の回転軸に取り付けた下方のディスク)の直径の90〜98%であるものを使用する。そして、該セラミック製ディスクと走行糸条との接触長は2.5〜0.5mmとする。
この際、最下段のディスク材質はセラミックが耐摩耗の観点から好ましい。本発明者らの研究によれば、本発明による複合仮撚加工においては、走行糸条と該ディスクとの接触長を2.5〜0.5mmとすることで、加撚が終了して捲縮状態の糸条が最後の解撚部に入る際の接触面積を極力少なく、抵抗を少なくすることができ、その結果、毛羽が著しく減少すること、そして、該ディスクの径を直上のディスク径よりも90〜98%の範囲にすることが、糸導を次のステップ(具体的には熱セット)へ移動する際の、抵抗値が少なくなりスムースに移動する上で効果的であること、等が判明した。中でも、行糸条と上記ディスクとの接触長を2.5〜0.5mmとすることが加工毛羽を著しく減少する上で特に有効であることが確認された。
本発明方法では、このような諸条件の組み合わせにより、加工毛羽の発生を著しく低減することが可能となる。しかるに、この範囲を外れると、加工毛羽が発生して、市場での、製織性、解舒性、織物製品での品質に悪影響を及ぼす要因となる。
本発明における仮撚加工温度は170〜300℃とすることが必要である。この温度が170℃未満では、捲縮性能が低く、風合いが硬く、300℃を超える場合は、極端に、加工糸の扁平が進み、加工毛羽が発生するようになるので、好ましくない。仮撚加工機として非接触式のヒーターを備えた装置を使用する場合は、第1段非接触式ヒーターの設定温度を170〜300℃として熱処理するのが好ましい。なお、ここでいう適正ヒーター温度は、市販の仮撚加工機(帝人製機製216錘建HTS−15V)によるもので、非接触式の1.0〜1.5m長のもの、糸速として800m/分〜などの仕様のものを想定しており、従って、特殊なヒーターを用いたり、超高速度で加工する場合などは設定温度を適宜調整すべきは、もちろんのことである。
ここで加撚領域の第1ヒーターは、未延伸糸条の延伸性及び仮撚加工性(撚り掛け性)を向上させるためのものであり、この温度が、非接触ヒーターの場合では170℃未満の温度では、撚り掛け性が低下して本発明の目的とする捲縮を付与することができなくなり、織編物にした際の風合がペーパーライクとなる。また、延伸仮撚加工時の断糸及び毛羽の発生が多くなり、捲縮斑や染色時の染色斑も発生しやすくなるので好ましくない。一方、300℃を超えると、延伸仮撚加工時、単糸切れが発生しやすくなり、特に高伸度側の未延伸糸条(B‘)に単糸切れが発生しやすく、得られるポリエステル複合仮撚加工糸は毛羽の多いものとなるので好ましくない。なお、延伸仮撚加工機のタイプによっては、第1段ヒーターが前半部と後半部に分割されている場合があるが、本発明方法においては第1段ヒーターの前半部と後半部とは同一温度に設定すればよい。
なお、第1段ヒーターにおける糸条の熱処理時間は、ヒーターの種類、その長さ及びその温度等により適宜設定すればよいが、熱処理時間が短すぎると捲縮率が不十分なものとなりやすく、また、張力変動に起因する延伸仮撚断糸、仮撚加工糸の毛羽、織編物での染斑が発生しやすくなり、一方、長すぎると捲縮率が大きくなりすぎる傾向にある。このため非接触式ヒーターで熱処理する場合は、通常、0.04〜0.12秒の範囲、特に0.06〜0.10秒の範囲が適当である。
さらに、加工時の延伸倍率についても、1.4〜1.7が最適ゾーンであり、この領域を外れると、低倍率側では、サージング、発生、糸揺れによる熱セット斑、高倍率側では、加工糸の扁平が進み、加工毛羽が発生するようになるので、好ましくない。
仮撚数は、複合仮撚加工糸の繊度をY(dtex)としたとき、[(15000〜35000)/Y1/2] 回/m、より好ましくは[(20000〜30000)/Y1/2] 回/m、の範囲に設定する。仮撚数が15000/Y1/2回/m未満の場合には、微細で強固な捲縮を付与するのが難しくなって得られる布帛がペーパーライクになり、風合が硬くなる。仮撚数が35000/Y1/2回/mを超える場合は、断糸及び毛羽の発生が多くなる。
本発明では、先ず、延伸仮撚装置に供給されるポリエステル未延伸糸に予め空気交絡を施す必要がある。空気交絡は延伸仮撚処理とは別個に行ってもよいが、図1のように延伸仮撚装置にインターレースノズルを設置して延伸仮撚直前に糸条に空気交絡処理をする方法が好ましい。空気交絡の度合いはポリエステル仮撚加工糸で測定した交絡度が30〜80個/m、より好ましくは50〜70個/mとなるように施す。交絡度が30個/m未満の場合はポリエステル未延伸糸を構成する糸条同士の混ざり合いが悪く、延伸仮撚工程での解舒不良による断糸及び加撚・解撚時の単糸切れ発生等が多くなり好ましくない。一方、交絡度が80個/mを超える場合はポリエステル仮撚加工糸を構成する単糸同士の絡み合いが強くなり過ぎて、糸が固まった状態となり好ましくない。
仮撚具のディスク寸法は特に限定されないが、直径が40〜70mmのディスク、好ましくは直径45〜62mmのディスクが好ましい。例えば図2に示すような、ディスク各2枚を3軸に配置した仮撚ユニットとして組み立てて使用する。ディスク直径が40mm未満では、糸条群A’の、ディスクによる摩擦損傷が増加して断糸及び毛羽の発生が多くなりやすい。一方、70mmを超えるに場合は、ディスクによる撚り掛け力が低下して十分な捲縮を付与することが困難になる。
該ディスクを通過する糸条の走行角(ディスク回転軸とディスクの外周上を接触走行する糸条とがなす角度)は、30〜48度、特に32〜45度の範囲とすることが好ましい。かくすることにより、ディスクによる撚り掛け力を低下させることなく、糸送り作用を高め、安定した状態で加撚・解撚を施すことができる。
一般に、制電剤を含む糸条はフィブリル化しやすく仮撚加工において毛羽が発生しやすいが、本発明においては、制電糸条を芯部に配し、鞘部糸条で芯部を包み込んで加工時の変形を少なくすることによって加工時に毛羽が出にくくしており、かつ上記の如き仮撚加工条件を選定するため、両方相まって毛羽発生が極めて少ない非常に良好な複合仮撚加工糸が得られるのである。
このようにして得られる本発明の複合仮撚加工糸は、例えば、無撚、無糊でウォータージェットルーム等により織物とすることができ、この際、製織性は良好で、断糸等も無く円滑に製織することができる。そして、本発明のポリエステル複合仮撚加工糸からなる布帛は良好な制電性を有し、また、官能評価でも、非常に深みのある、かつ高級感を有し、ソフトでかつ良好なふくらみを呈したスパンライク風合のものとなる。
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。また、例中の「部」は特に断らない限り重量部を意味する。
(1)溶融粘度(MVPM、MVPS、MVPEs)
ポリメチルメタアクリレート系重合体、ポリスチレン系重合体及びポリエステルの溶融粘度(MVPM、MVPS及びMVPEs)は、島津製作所製の島津フローテスターを使用し、吐出径0.5φmmx孔長1mmのオリフィスを使用し、シリンダー温度295℃、20KG荷重下で測定した。その時の押出圧力を検出し、粘度式に外挿され求められた値である。測定された基質ポリエステルの溶融粘度MVPEsは1400ポイズであった。この値に対し測定されたポリメチルメタアクリレート重合体あるいはポリスチレン重合体の溶融粘度の比率を計算した。
(2)ポリエステルの固有粘度
オルソ−クロルフェノールに溶解し、ウベローデ粘度管を用い、35℃で測定した。
(3)メルトインデックス
ポリメチルメタアクリレート系重合体、ポリスチレン系重合体のメルトインデックスは、ASTMD−1238に従って測定した。
(4)紡糸断糸
複合紡糸設備で1週間溶融紡糸を行い断糸した回数を記録し、1日1錘当りの紡糸断糸回数を紡糸断糸とした。ただし、人為的あるいは機械的要因による断糸は断糸回数から除外した。
(5)伸度差
未延伸糸試料を気温25℃、湿度60%の恒温恒湿に保たれた部屋に1昼夜放置した後、サンプル長さ100mmを(株)島津製作所製の引張試験機テンシロンにセットし、200mm/分の速度にて引張し荷伸曲線を記録した。記録したチャートから2群の構成糸条の荷伸曲線を特定し、各々の破断時の伸度を読み取り、その差を未延伸糸条群A’と未延伸糸条群B’との伸度差とした。
また、糸条群(A)及び糸条群(B)の伸度差の測定に当っては、テンシロン引張試験器を用いて得られた荷伸曲線から各糸条群の破断時の伸度を測定した。糸条群(A)の伸度(Ea%)と非晶性ポリマーであるポリスチレン重合体又はポリメチルメタアクリレート重合体を含む糸条群(B)の伸度(Eb%)との差の絶対値を取り(Eb)−(Ea)で伸度差とした。なお、本発明では、混繊原糸の該糸条群Aと該糸条群Bとが交絡されているので、伸度の測定は該糸条群A、Bを別個にサンプリングし、別個に測定を行うのが好ましいが、交絡された混繊糸状態で測定しても得られた荷伸曲線から該糸条群A、Bの破断伸度が識別可能であるため、ここでは混繊糸の状態で直接伸長測定実施した。なお、混繊された後のサンプル糸条での伸度の測定値は別個にサンプリングした糸条での測定値より10−20%低い傾向が認められたが、伸度差は同等である。
(6)糸条群Aと糸条群Bとの糸長差
50cmの複合仮撚加工糸の一端に0.176cN/dtex(0.2g/de)の荷重を掛け、垂直に吊し、正確に5cm間隔のマーキングを行った。荷重を外し、マーキング部分を正確に切りとって10本の試料とした。該試料より、鞘部分のフィラメント及び芯部のフィラメントを各々10本取出し、各々の単糸に0.03cN/dtex(1/30g/de)の加重を掛けて、垂直に吊るし、各々の長さを測定する。10本の試料について上記の測定を行い、各々の平均値をLb(鞘糸長)及びLa(芯糸長)とし、下記式で糸長差を計算した。
Figure 2008025036
(7)交絡度
約1.2mのポリエステル複合仮撚加工糸の糸端に0.2cN/dtexの荷重をかけて、衝立上部に取り付けられた固定点から垂直にたらし、0.1cN/dtexの荷重に相当する重量の釣り針型のフックを用い、上部固定点より、該釣り針型フックを挿入し、フックが自然落下し止まるのを待って取り外した。次いで、停止点から2mm下の位置にフックを再び挿入し同様の操作を行った。これを糸長1mにわたって繰り返し、その間でフックの止まった回数を交絡度(個/m)とした。
(8)走行角
仮撚ディスク上を走行している糸条を写真撮影し、各仮撚ディスク円盤上の糸条の走行角度θを写真の上で実測して、それらの測定値の平均値を走行角とした。
(9)延伸仮撚断糸
帝人製機製216錘建HTS−15V(2ヒーター仮撚加工機で非接触式ヒーター仕様)にて、延伸仮撚加工を1週間連続実施し、延伸仮撚機1台・1日当たりの断糸回数を延伸仮撚断糸とした。ただし、糸繋ぎ前後による断糸(ノット断糸)あるいは自動切替え時の断糸等、人為的あるいは機械的要因による断糸は断糸回数から除外した。
(10)捲縮率
ポリエステル複合仮撚加工糸サンプルに0.044cN/dtexの張力を掛けてカセ枠に巻き取り、約3300dtexのカセを作成した。該カセの一端に、0.0177cN/dtex及び0.177cN/dtexの2個の荷重を負荷し、1分間経過後の長さS0(cm)を測定した。次いで、0.177cN/dtexの荷重を除去した状態で、100℃の沸水中にて20分間処理した。沸水処理後0.0177cN/dtexの荷重を除去し、24時間自由な状態で自然乾燥し、再び0.0177cN/dtex及び0.177cN/dtexの荷重を負荷し、1分間経過後の長さS1(cm)を測定した。次いで、0.177cN/dtexの荷重を除去し、1分間経過後の長さS2(cm)を求め、次の算式で捲縮率を算出し、10回の測定値の平均値で表した。
Figure 2008025036
(11)複合仮撚加工糸の強度、伸度
JIS L 1013‐75に準じて複合仮撚加工糸の破断時の強度及び伸度を測定した。
(12)毛羽個数
東レ(株)製DT‐104型毛羽カウンター装置を用いて、ポリエステル仮撚加工糸サンプルを500m/分の速度で20分間連続測定して発生毛羽数を計測し、サンプル長1万m当たりの個数で表した。
(13)風合い
専門家による官能検査で以下のとおりレベル1〜3にランク分けした。
(ソフト感)
レベル1:ソフトでしなやかな感触がある
レベル2:ややソフト感が乏しいが反撥性は感じられる
レベル3:カサカサした触感あるいは硬い触感である。
(スパン感)
レベル1:極めてバルキーでスパン感に富んでいる。
レベル2:ややスパン感が乏しい。
レベル3:フラットヤーンライクの触感あるいは硬い触感である。
(14)帯電性試験方法
A法(半減期測定法)
本発明の複合仮撚加工糸を、筒編みし、染色し、調湿した試験片について、該試験片をコロナ放電場で帯電させた後、この帯電圧が1/2に減衰するまでの時間(秒)をスタテイック・オネストメータで測定した。時間(秒)の短い方が制電性能に優れていると評価できる。
B法(摩擦帯電圧測定法)
試験片を回転させながら摩擦布で摩擦し、発生した帯電圧を。JIS‐L‐1094帯電性試験方法B法(摩擦帯電圧測定法)に準拠して測定した。摩擦帯電圧が、約2000V以下(好ましくは1500V以下)であれば、制電効果がありと評価できる。
[実施例1〜3、比較例1〜3]
テレフタル酸ジメチル100部、エチレングリコール60部、酢酸カルシウム1水塩0.06部(テレフタル酸ジメチルに対して0.066モル%)及び整色剤として酢酸コバルト4水塩0.013部(テレフタル酸ジメチルに対して0.01モル%)をエステル交換反応缶に仕込み、この反応物を窒素ガス雰囲気下で4時間かけて140℃から220℃まで昇温し、反応缶中に生成するメタノールを系外に留去しながらエステル交換反応させた。エステル交換反応終了後、反応混合物に安定剤としてリン酸トリメチル0.058部(テレフタル酸ジメチルに対して0.080モル%)、及び消泡剤としてジメチルポリシロキサンを0.024部加えた。次に、10分後に、反応混合物に三酸化アンチモン0.041部(テレフタル酸ジメチルに対して0.027モル%)を添加し、同時に過剰のエチレングリコールを留去しながら240℃まで昇温し、その後、反応混合物を重合反応缶に移した。次いで1時間40分かけて760mmHgから1mmHgまで減圧するとともに240℃から280℃まで昇温して重縮合反応せしめた後、下記化学式
Figure 2008025036
で表される水不溶性ポリオキシエチレン系ポリエーテル(a)4部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(b)2部を真空下で添加し、さらに240分間重縮合反応せしめ、次いで酸化防止剤としてチバカイギー社製「イルガノックス」1010(登録商標)を0.4部真空下で添加し、その後さらに30分間重縮合反応を行なった。重合反応工程で制電剤を添加して得られたポリマーは常法にてチップとした。このポリマーの固有粘度は0.657、軟化点は258℃であり、得られたポリマーのチップを常法により乾燥した。(これを乾燥ポリマーA1とする)
一方、固有粘度が0.64で、軟化点258℃のポリエチレンテレフタレート(PET)に各々表1に示す量のポリスチレン系ポリマー(PSASTM‐D1238に準拠したメルトインデックス(温度300℃、荷重2.16kgfで測定)が10g/10分)又はポリメチルメタアクリレート系ポリマー(PMMA:ASTM−D1238に準拠したメルトインデックス(温度230℃、荷重3.8kgfで測定)を表1に示す量で配合したポリエチレンテレフタレートのペレットを調製し、常法で乾燥した。(これを乾燥ポリマーB1とする。)
上記の乾燥ポリマーA1及び乾燥ポリマーB1を2基のスクリュー押出機を装備した複合紡糸設備にて各々常法で溶融し、スピンブロックを通して、複合紡糸スピンパックに導入した。ポリマーA1は、該スピンパックに組み込まれた円形吐出孔を36個穿設した紡糸口金から、ポリマーB1は円形吐出孔を48個穿設した紡糸口金よりそれぞれ吐出した。引き続き、吐出された2群のポリマー流を、通常のクロスフロー型紡糸筒からの冷却風で冷却・固化し、紡糸油剤を付与しつつ一本の糸条として集束し、3200m/分の速度で引き取り、280dtex/84フィラメントのポリエステル未延伸糸を得た(実施例1〜3)。
また、比較のため、本発明の条件外で同様の実験を行った(比較例1〜3)。表1から明らかなごとく、のポリスチレン(PS)の添加量が0.5重量%に満たない比較例1においては、2つの未延伸糸状群の伸度差が70%未満となり、得られた仮撚加工糸の糸条群Aと糸条群Bとの糸長差が10%未満となった。
溶融紡糸時の工程安定性は表1に示すとおりであり、ポリスチレンの添加量が3.0重量%を超える比較例2においては、紡糸工程で断糸が多発した。
それぞれ得られたポリエステル未延伸糸を、帝人製機製216錘建HTS−15Vに掛け、図1の(4、4’)の如く、前段及び後段で、それぞれ孔径1.8mmの圧空吹き出し孔を有するインターレースノズルを通過させつつ60nL/分の流量で交絡度が50個/mとなるように空気交絡を施し、延伸倍率1.60、第1段ヒーター(非接触タイプ)温度250℃の条件に設定し、直径60mm、厚み9mmのポリウレタンディスクを仮撚ディスクとして、走行角43度で仮撚数×Y1/2 [ただし、Y=複合仮撚加工糸繊度(dtex)] が26000近傍となるように延伸同時仮撚加工を行い、速度800m/分でチーズ形状に巻き取り、180dtex/84フィラメント(平均単糸繊度2.1dtex)のポリエステル複合仮撚加工糸を得た。このポリエステル複合仮撚加工糸を構成する芯部はポリマーA1からなる低伸度側糸条群A(90dtex/36フィラメント)であり、鞘部はポリマーB1からなる高伸度側糸条群B(90dtex/48フィラメント)であった。
これらのポリエステル複合仮撚加工糸を後述の方法で織物となし、その品位を評価した。その結果を表1に示す。この表1から明らかなごとく、比較例1におけるポリスチレンの添加量が0.5重量%に満たない織物は、硬い風合いのものとなった。ポリスチレンの添加量が3.0重量%を超える比較例2においては、延伸仮撚断糸及び毛羽の発生が多かった。また、得られた複合仮撚加工糸を用いてメリヤス編地を製造し、制電性を測定した。制電性能の結果も表1に示す。
次に、上記の複合仮撚加工糸を、液流染色機を用いて沸騰水で20分間リラックス処理し、引き続きプリセット処理を行った後、さらに、染色、ファイナルセット処理を行い、ポリエステル複合仮撚加工糸からなる布帛とした。
なお、本発明による複合仮撚加工糸の製織工程において、無撚、無糊でウォータージェットルームにより平織物としたところ、製織性は良好で、断糸は無くスムースであった。また、製織後、該織物を、液流染色機を用いて沸騰水で20分間リラックス処理し、引き続きプリセット処理を行った後、3.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液にて沸騰温度でアルカリ減量処理(減量率20%)を行った。さらに、染色、ファイナルセット処理を行い、ポリエステル複合仮撚加工糸からなる布帛とした。
本発明により得られた布帛(実施例1〜3)の官能評価を実施したところ、非常に深みのある、かつ高級感を有し、ソフトでかつ良好なふくらみを呈したスパンライク風合のものであった。
Figure 2008025036
[実施例4〜6、比較例4〜5]
実施例2で得られたポリエステル未延伸糸を、表2及び表3に示す仮撚条件で延伸仮撚加工を実施し、表2及び表3に示す物性のポリエステル複合仮撚加工糸を得た。このときの延伸仮撚断糸及び毛羽発生状況を表2、表3に示す。これらのポリエステル複合仮撚加工糸を前述の方法でその品位を評価し、表2及び表3に示す結果を得た。この際、芯糸(制電成分)を包み込み、変形を少なくすることで、毛羽を出さないようにすることが制電性の面からも肝要であることがわかった。
Figure 2008025036
[実施例7〜9、比較例6〜8]
実施例1において、最下流のディスクの糸条接触長さ、ディスク径のすぐ上流側のディスクの直径(Standard)との比(St対比%)を変更して、同様の実験を行った。その結果を表3に示す。
Figure 2008025036
[実施例10〜13、比較例9〜12]
実施例2で得られたポリエステル未延伸糸を、仮撚数及び仮撚温度を表4に示す条件とする以外は、実施例2と同じ延伸仮撚条件で延伸仮撚加工を実施し、表4に示すポリエステル複合仮撚加工糸を得た。この時の延伸仮撚断糸及び毛羽発生状況を表4に示す。また、これらのポリエステル複合仮撚加工糸を前述の方法で、その品位を評価し、表4に示す結果を得た。なお、表4に示す「撚数」は、撚数×(Y)1/2の値であり、複合仮撚加工糸の総繊度(Y)はいずれも180dtexであった。これらの実験でも、芯糸制電成分を包み込み、変形を少なくすることで、毛羽を出さないようにすることが制電性の面からも肝要であることが確認された。
Figure 2008025036
本発明によれば、特に、学生服、ユニフォーム、防塵衣、等の静電気を抑える用途向けとして、非常に良好な嵩高性、スパン感等を有するとともに、後工程での取り扱い性にも優れた制電性ポリエステル仮撚加工糸が提供されるので、合成繊維製造及びその加工において有効な発明である。
本発明の実施例1で使用した仮撚加工糸を製造する装置の概略図。 本発明で使用する仮撚ディスクユニットの1実施態様を示す正面図。
符号の説明
1 :ポリエステル未延伸糸
2 :糸ガイド
3、3’:フィードローラー
4 :インターレースノズル
5 :第1ヒーター
6 :冷却プレート
7 :仮撚ディスクユニット
8 :第1デリベリーローラー
9 :第2ヒーター
10 :第2デリベリーローラー
11 :巻取ローラー
12 :ポリエステル仮撚加工糸チーズ
13 :仮撚ディスク
14 :ガイドディスク
15 :回転軸
16 :タイミングベルト
17 :駆動ベルト

Claims (4)

  1. 芯部糸条(A)が、ポリオキシアルキレン系ポリエーテル及びポリエステルとは実質的に非反応性の有機イオン性化合物とを含有する制電性ポリエステルマルチフィラメントからなり、鞘部糸条(B)が、ポリメチルメタアクリレート系ポリマー及び/又はポリスチレン系ポリマーを0.5〜3.0重量%含有するポリエステルマルチフィラメントからなる特殊複合仮撚加工糸であって、該加工糸の帯電摩擦圧が2000V以下、捲縮率が2〜8%であり、かつ、鞘部糸条(B)の平均糸長が芯部糸条(A)の平均糸長より10〜20%長いことを特徴とする制電性特殊複合仮撚加工糸。
  2. 芯部糸条(A)が、芳香族ポリエステル100重量部に対して、(a)ポリオキシアルキレン系ポリエーテル0.2〜30重量部及び(b)該芳香族ポリエステルと実質的に非反応性の有機イオン性化合物0.05〜10重量部を含有する芳香族ポリエステル組成物からなる制電性ポリエステルマルチフィラメントであることを特徴とする請求項1記載の制電性特殊複合仮撚加工糸。
  3. ポリエステルマルチフィラメントを延伸仮撚加工するに際して、加工用原糸として、(a)ポリオキシアルキレン系ポリエーテル及びポリエステルと(b)実質的に非反応性の有機イオン性化合物とを含有してなる未延伸の制電性ポリエステマルチフィラメント(A’)とポリエステルマルチフィラメントにポリメチルメタアクリレート系ポリマー及び/又はポリスチレン系ポリマーを重量基準で0.5〜3.0重量%含有する未延伸のポリエステルマルチフィラメント(B’)とを、合糸し、下記(1)〜(4)を全て満足する条件で延伸同時仮撚加工することを特徴とする制電性特殊複合仮撚加工糸の製造方法。
    (1)仮撚直前に空気交絡処理を施し、30個以上/mの交絡を付与する。
    (2)仮撚具として、3軸フリクションディスクタイプの仮撚具であって、解撚部に位置する最下段のデイスとして、ディスク材質がセラミック製で、該ディスクと走行糸条との接触長が2.5〜0.5mmであり、かつ、該ディスクの直径が直上のディスクの直径の90〜98%であるものを使用する。
    (3)仮撚温度を、170℃〜300℃の温度とする。
    (4)仮撚数(T/m)を、仮撚加工糸の繊度(Y dtex)に対し、15000/Y1/2≦T≦35000/Y1/2とする。
  4. 未延伸の制電性ポリエステルマルチフィラメント(A’)が、芳香族ポリエステル100重量部に対して、(a)ポリオキシアルキレン系ポリエーテル0.2〜30重量部及び(b)該芳香族ポリエステルと実質的に非反応性の有機イオン性化合物0.05〜10重量部を配合した芳香族ポリエステル組成物からなる制電性ポリエステルマルチフィラメントであることを特徴とする請求項3記載の制電性特殊複合仮撚加工糸の製造方法。
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