JP2008024798A - インクジェット記録方法、インクジェットインクおよびインクジェットインクセット - Google Patents

インクジェット記録方法、インクジェットインクおよびインクジェットインクセット Download PDF

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正樹 中村
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Abstract

【課題】出射性に優れ、ブリード耐性に優れ、さらに光沢均一性、写像性光沢に優れたインクジェット記録方法、インクジェットインクおよびインクジェットインクセットを提供することにある。
【解決手段】記録媒体に、インクを付着させ、前記インクに刺激を与えるインクジェット記録方法において、前記インクが、少なくとも色材と、前記刺激を付与されることにより粘度を変化させる刺激応答性高分子化合物と、水とを含有し、前記刺激応答性高分子化合物の前記刺激に応答する前と応答した後の初期粘度変化が下記式(1)を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。
式(1) 2<d(lnη)/dt
但し、ηは粘度を表し、tは時間(秒)を表す。
【選択図】なし

Description

本発明は、活性エネルギー線照射により架橋結合可能な高分子化合物を含むインクジェットインク、インクジェットインクセットとそれらを用いたインクジェット記録方法に関するものである。
インクジェット記録方法は比較的簡単な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。また使用される用途も多岐に亘り、それぞれの目的にあった記録媒体あるいはインクが使用される。
特に近年では記録速度の大幅な向上がみられ、軽印刷用途にも耐え得る性能を持つプリンタの開発も行われている。しかしながら、インクジェットプリンタにおいて、その性能を引き出すためにはインク吸収性を付与したインクジェット専用紙が必要である。
インク吸収性をあまりもたないコート紙やアート紙、もしくはインク吸収性の全くないプラスチックフイルム上に記録する際には、異色インク液体同士が記録媒体上で混ざり色濁りを起こす、所謂ブリード等の課題があり、インクジェット記録において記録媒体に多様性をもたせる上で課題となっていた。
上記課題に対し、紫外線を照射することにより硬化する無溶媒型紫外線硬化インクジェットインクとインクジェット記録方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、顔料と三官能以上のポリアクリレートとケトン、アルコールを主溶剤とする溶媒型紫外線硬化インクも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
上記提案されている無溶媒型紫外線硬化インクジェットインクでは、インク自身を硬化させるため、非吸収性記録媒体に対しても記録が可能となったが、色材以外の硬化成分を多量に含有し、且つそれらが揮発しないため記録画像面が盛り上がり、画質、特に光沢の不自然さを生じさせるという課題を抱えていた。また、溶媒型紫外線硬化インクでは、体に有害な揮発性有機溶媒を多量に含有するという問題点を抱えていた。
上記、無溶媒紫外線硬化インクまたは溶媒型紫外線硬化インクに代わり、水溶性の紫外線硬化モノマーまたはオリゴマーを用い、水で希釈した水性紫外線硬化インクジェットインクが開示されている(例えば、特許文献3、4参照。)。確かにこれら提案されている水性紫外線硬化インクジェットインクを用いることにより、画像の盛り上がりがない平坦な画像が得られるが、開示されている水溶性の紫外線硬化モノマーあるいはオリゴマーを用いる限りにおいては、ブリード防止が可能なゲル化を充分起こさせるために、多くのエネルギーを必要とするとともに、たとえ充分なゲル化が可能な光量を付与しても、低分子量の紫外線硬化性モノマーまたはオリゴマーを用いているため、微量、残存する未硬化成分による画像のベタツキが発生し、形成された画像同士を重ねるとくっついて画像が剥がれてしまう欠点が解消出来なかった。
米国特許第4,228,438号明細書 特公平5−64667号公報 特開平7−224241号公報 特開2004−285161号公報
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は出射性に優れ、ブリード耐性に優れ、さらに光沢均一性、写像性光沢に優れたインクジェット記録方法、インクジェットインクおよびインクジェットインクセットを提供することにある。
ブリードについては、インク液滴とインク液滴の間で混色部が発生するため、粘度が高いインクほど有利である。一方、出射性においては、粘度が高いほど出射力を必要とするため、粘度の低いインクほど有利となるため、ブリードと出射性は本来、相反するものである。この解決のためには、出射時には低粘度で、着弾した瞬間に高粘度になるインクが出来れば、このブリードと出射性が両立した理想的なインクが得られる。
従来の水性紫外線硬化インクジェットインクの紫外線照射による初期粘度変化は、モノマー、オリゴマーの重合反応によるために、小さい値を取り、出射性を確保しつつブリード耐性を付与するには不十分であった。今回、刺激応答性高分子化合物を用いることによって、初期粘度変化を一定の値に制御する事が可能になり、ブリードと出射性の両立を果たすことが出来た。
具体的には、
1.記録媒体に、インクを付着させ、前記インクに刺激を与えるインクジェット記録方法において、前記インクが、少なくとも色材と、前記刺激を付与されることにより粘度を変化させる刺激応答性高分子化合物と、水とを含有し、前記刺激応答性高分子化合物の前記刺激に応答する前と応答した後の初期粘度変化が下記式(1)を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。
式(1) 2<d(lnη)/dt
但し、ηは粘度を表し、tは時間(秒)を表す。
2.前記初期粘度変化が、下記式(2)を満たすことを特徴とする前記1に記載のインクジェット記録方法。
式(2) 2<d(lnη)/dt<6
3.前記刺激応答性高分子が、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、前記刺激として活性エネルギー線を照射することにより、前記側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物であることを特徴とする前記1または2に記載のインクジェット記録方法。
4.前記親水性主鎖の複数の側鎖が下記一般式(A)で表される構造を有することを特徴とする前記3に記載のインクジェット記録方法。
一般式(A) Poly−{(X1)m−〔B−(Y1)n〕p}
(式中、Polyは親水性主鎖を表し、{ }内は側鎖を表し、X1は(p+1)価の連結基を表し、Bは架橋性基を表し、Y1は水素原子または置換基を表す。mは0または1、nは0または1、pは正の整数を表す。pが2以上のとき、複数のB及びY1は同一でも異なってもよい。)
5.前記親水性主鎖がポリ酢酸ビニルのケン化物であり、ケン化度が77%以上、99%以下で、且つ重合度が200以上、4000以下であることを特徴とする前記3または4に記載のインクジェット記録方法。
6.前記親水性主鎖に対する前記側鎖の変性率が0.8モル%以上、4.5モル%以下であることを特徴とする前記3〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
7.水溶性光重合開始剤を含有することを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
8.前記インクが、前記刺激応答性高分子化合物を0.5質量%以上、5.0質量%以下含有することを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
9.前記色材がアニオン性顔料であることを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
10.前記インクの前記刺激に応答する前の粘度が1.5mPa・s以上、20mPa・s以下であり、前記インクの前記刺激に応答した後の粘度が80mPa・s以上、250Pa・s以下であることを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
11.記録媒体に、複数種のインクを付着させ、前記インクに刺激を与えるインクジェット記録方法において、前記複数種のインクのうち少なくとも1種が、少なくとも色材と、前記刺激を付与されることにより粘度を変化させる刺激応答性高分子化合物と、水とを含有し、前記刺激応答性高分子化合物の前記刺激に応答する前と応答した後の初期粘度変化が下記式(1)を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。
式(1) 2<d(lnη)/dt
但し、ηは粘度を表し、tは時間(秒)を表す。
12.前記複数種のインク全てが、それぞれ、少なくとも色材と、前記刺激を付与されることにより粘度を変化させる刺激応答性高分子化合物と水を含有し、それぞれのインク中の刺激応答性高分子化合物が前記刺激に応答する前と応答した後の初期粘度変化が前記式(1)を満たすことを特徴とする前記11に記載のインクジェット記録方法。
13.少なくとも色材と、刺激を付与されることにより粘度を変化させる刺激応答性高分子化合物と、水とを含有するインクジェットインクであって、前記刺激応答性高分子化合物の刺激に応答する前と応答した後の初期粘度変化が下記式(1)を満たすことを特徴とするインクジェットインク。
式(1) 2<d(lnη)/dt
但し、ηは粘度を表し、tは時間(秒)を表す。
14.前記初期粘度変化が、下記式(2)を満たすことを特徴とする前記13に記載のインクジェットインク。
式(2) 2<d(lnη)/dt<6
15.前記刺激応答性高分子化合物が、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、前記刺激として活性エネルギー線を照射することにより、前記側鎖間で架橋結合可能な高分子であることを特徴とする前記13または14に記載のインクジェットインク。
16.前記親水性主鎖の複数の側鎖が下記一般式(A)で表される構造を有することを特徴とする前記15に記載のインクジェットインク。
一般式(A) Poly−{(X1)m−〔B−(Y1)n〕p}
(式中、Polyは親水性主鎖を表し、{ }内は側鎖を表し、X1は(p+1)価の連結基を表し、Bは架橋性基を表し、Y1は水素原子または置換基を表す。mは0または1、nは0または1、pは正の整数を表す。pが2以上のとき、複数のB及びY1は同一でも異なってもよい。)
17.前記親水性主鎖がポリ酢酸ビニルのケン化物であり、ケン化度が77%以上、99%以下で、且つ重合度が200以上、4000以下であることを特徴とする前記16に記載のインクジェットインク。
18.前記親水性主鎖に対する前記側鎖の変性率が0.8モル%以上、4.5モル%以下であることを特徴とする前記17に記載のインクジェットインク。
19.水溶性光重合開始剤を含有することを特徴とする前記13〜18のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
20.前記刺激応答性高分子化合物を0.5質量%以上、5.0質量%以下含有することを特徴とする前記13〜19のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
21.前記色材がアニオン性顔料であることを特徴とする前記13〜20のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
22.前記刺激に応答する前の粘度が1.5mPa・s以上、20mPa・s以下であり、前記インクの前記刺激に応答した後の粘度が80mPa・s以上、250Pa・s以下であることを特徴とする前記13〜21のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
23.インクを複数種具備するインクジェットインクセットにおいて、少なくとも1種のインクが、前記13〜22のいずれか一項に記載のインクジェットインクであることを特徴とするインクジェットインクセット。
24.インクを複数種具備するインクジェットインクセットにおいて、複数種のインク全てが、前記13〜22のいずれか一項に記載のインクジェットインクであることを特徴とするインクジェットインクセット。
本発明によれば、出射性、ブリード耐性に優れ、さらに光沢均一性、写像性光沢、に優れたインクジェットインク、インクジェット用インクセット、インクジェット記録方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
本発明者は上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、少なくとも色材、水及び特定の刺激応答性高分子化合物を含有するインクジェットインクを用いる事により、出射性に優れ、写像性光沢に優れ、ブリード耐性、耐擦過性に優れたインクジェットインクを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
インクジェットインクの粘度要件としては、インクジェットヘッドから出射させるために、ピエゾ、サーマルなどインクジェットヘッドの種類によらず、20mPa・s以下の低粘度が必要となる。しかし、インクジェットインクは複数の色のインクをほぼ同時に出射させるために、記録媒体に着弾して乾燥するまでの間に、それぞれの色が混色、すなわちブリードを起こしてしまう。これを防止するには、インクの粘度として数100mPa・sまたはそれ以上の粘度が必要となるため、出射時には低粘度であり、着弾後は直ちにインクを高粘度にすることが必要になる。
この相反する粘度特性をもたせる方法としては、複数の高分子化合物が、極めて短時間のうちに刺激によって物理的に、または化学的に結合することが必要である。
刺激とは、光、熱、電力などを指す。刺激の与え方としては、インクの着弾直前、または直後にインクに刺激を与える事が必要であるが、刺激そのものは、インクの着弾より以前から連続して与えても構わないし、着弾後、さらに加え続けても構わない。光刺激による例としては、後述する活性エネルギー線架橋性高分子化合物が挙げられ、熱刺激に対しては、感温性高分子化合物、電力に関しては、イオン性高分子化合物が挙げられる。
刺激を光とする場合は、インク中に活性エネルギー線架橋性高分子化合物を加えておき、記録媒体に着弾した着後に、粘度を上昇させるために必要な例えば紫外線を、紫外線ランプ、例えば高圧水銀灯、低圧水銀灯、LEDランプなどから照射する。
インクジェットヘッドから出射可能で、光沢均一性、特に写像性光沢が良い画像を得るためには、刺激に応答する前と応答した後の初期粘度変化が、
式(1) 2<d(lnη)/dt
を満たす刺激応答性高分子化合物を添加することにより得ることが出来る。従来のアクリルモノマー/オリゴマーを用いて紫外線(UV)刺激により硬化させる方法では、インクジェットヘッドから出射出来る粘度に調整すると、緩慢な粘度上昇になってしまい、逆にアクリルモノマー/オリゴマーの量を多くして急激な粘度上昇を引き起こさせようとすると、逆に出射時の粘度が高くなりすぎて、出射不良を起こすために、目的を達成することが出来ない。
刺激応答性高分子化合物の粘度変化が、この範囲にあると、インクジェットヘッドの出射時にはインクの粘度を20mPa・s以下まで低下させることが可能になり出射が良好になるとともに、さらに、記録媒体に着弾して、拡散により色混ざりが起こる前に粘度が増加するために、ブリードを呼ばれる色混ざりを防止出来、さらに、
d(lnη)/dt
が6未満の場合は、適当にレベリングが起きる結果、表面が平滑になり、光沢の均一性、また写像性光沢がさらに向上させることが出来る。
したがって、好ましくは、d(lnη)/dtが、2を越えて、6未満の間にある事が好ましい。
ここで、ηは粘度(単位はPa・s)、tは時間(秒)、dは微分を表し、lnは自然対数を表す。
d(lnη)/dtを調節する方法は、活性エネルギー線架橋性高分子化合物の高分子構造を変えるほかに、活性エネルギー線で架橋する架橋基の変性率でも変えることが出来る。
また、本願では、前記刺激に応答する前の粘度が1.5mPa・s以上、20mPa・s以下であり、前記インクの前記刺激に応答した後の粘度が80mPa・s以上、250Pa・s以下が好ましい。
((dlnη)/dtの測定)
活性エネルギー線架橋性高分子化合物の初期粘度測定方法は、高分子化合物の5%水溶液を、紫外線照射装置を備えたレオメーターDAR−2000(ジャスコインターナショナル(株)社製)UV−ETCシステム 周波数1000/S プレートギャップ 0.02mmの条件で、紫外線照射(主波長365nm UV照射量;100mW/cm2)して、紫外線照射直前の0秒時の粘度と紫外線照射後の2秒後の粘度を測定し(温度25℃)、その粘度変化から、1秒あたりの粘度変化率、d(lnη)/dtを測定する。ここで、ηは粘度(単位はPa)、tは秒を表す。その粘度変化から、1秒あたりの粘度変化率、
d(lnη)/dt
を測定する。ここで、ηは粘度(単位はPa・s)、tは秒を表す。
本発明に係わる刺激応答性高分子化合物について説明する。
刺激とは、光、熱、電力などを指し、それらの刺激に対応して、粘度が増加し、初期粘度変化が、式(1)を満たす化合物であれば特に限定する必要はないが、光刺激による例としては、後述する活性エネルギー線架橋性高分子化合物が挙げられ、熱刺激に対しては、感温性高分子化合物、電力に関しては、イオン性高分子化合物が挙げられる。しかし、光刺激はオンオフが容易なために、最も好ましい。
《活性エネルギー線架橋性高分子化合物》
本発明に係る活性エネルギー線架橋性高分子化合物の例について説明する。
本発明に用いる活性エネルギー線架橋性高分子化合物は、親水性主鎖にポリ酢酸ビニルのケン化物、ポリビニルアセタール、ポリエチレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または前記親水性樹脂の誘導体などの親水性主鎖を有し、側鎖に架橋基を有している事が好ましい。
側鎖に架橋基が入る事によって、主鎖の分子運動が容易になる結果、側鎖の架橋基同士の衝突確率が増加するためではないかと想像している。
好ましくは、親水性主鎖と側鎖の架橋性基が前記一般式(A)で表わされる構造を少なくとも有するものが、多く選ばれる。
一般式(A)において、Polyは親水性主鎖を表す。
親水性主鎖としては、ポリ酢酸ビニルのケン化物、ポリビニルアセタール、ポリエチレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または前記親水性樹脂の誘導体、並びにこれらの共重合体が好ましい。
一般式(A)において、{ }内は側鎖を表す。側鎖中、X1は(p+1)価の連結基を表す。pは正の整数を表し、好ましくは1〜5の整数である。具体的には、p=1のときX1が2価の連結基を表し、例えば、アルキレン基、アルキレンオキシド基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、エーテル基、チオエーテル基、イミノ基、エステル基、アミド基、スルホニル基などが挙げられ、また、これらが組み合わさって一つの2価以上の基を形成してもよい。またp=2以上のとき、後述する複数のB及びY1は同一であっても異なっていてもよい。
1としては、好ましくはアルキレンオキシド基、芳香族基が少なくとも組み合わさっている2価以上の連結基が挙げられる。
Bは架橋性基を表す。具体的には二重結合、三重結合を含有する基であり、例えば、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基、ジアゾ基、アジド基等を表す。好ましくはアクリル基、メタクリル基である。
1は水素原子または置換基を表す。置換基とは、具体的にはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、ブチル、ペンジル、2−メトキシエチル、トリフルオロメチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル等)、アリール基(例えば、フェニル、p−トリル、ナフチル等)、アシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ベンゾイル等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、i−プロポキシカルボニル等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ等)、カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ブチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、p−トリルチオ等)、アルキルウレイド基(例えば、メチルウレイド、エチルウレイド、メトキシエチルウレイド、ジメチルウレイド等)、アリールウレイド基(例えば、フェニルウレイド等)、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、エタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、トリフルオロメチルスルホンアミド、2,2,2−トリフルオロエチルスルホンアミド等)、アリールスルホンアミド基(例えば、フェニルスルホンアミド、トリルスルホンアミド等)、アルキルアミノスルホニルアミノ基(例えば、メチルアミノスルホニルアミノ、エチルアミノスルホニルアミノ等)、アリールアミノスルホニルアミノ基(例えば、フェニルアミノスルホニルアミノ等)、ヒドロキシ基、複素環基(例えば、ピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、フリル、チエニル等)などが挙げられ、更にこれらは置換基を有していてもよい。
mは、0または1を表し、nは、0または1を表す。
親水性主鎖においては、側鎖の導入に対する簡便性や取り扱いの観点からポリ酢酸ビニルのケン化物が好ましく、ケン化度としては77%以上、99%以下であることが好ましく、その重合度は200以上、4000以下が好ましく、200以上、2000以下がハンドリングの観点からより好ましく、更には吐出安定性の観点から200以上、500以下が好ましい。
本発明に係る活性エネルギー線架橋性高分子化合物において、更に好ましい構造として、特開昭56−67309号公報記載の感光性樹脂であり、ポリビニルアルコール構造体中に下記一般式(1)で表される2−アジド−5−ニトロフェニルカルボニルオキシエチレン構造(ノニオン性)の側鎖、または下記一般式(2)で表され4−アジド−3−ニトロフェニルカルボニルオキシエチレン構造(ノニオン性)の側鎖を変性基として有する樹脂組成物である。
Figure 2008024798
また、下記一般式(3)で表される変性基(アニオン性)の側鎖も好ましく用いられる。
Figure 2008024798
式中、Rはアルキレン基または芳香族環(アリーレン基)を表す。好ましくはベンゼン環(フェニレン基)である。
光重合型の変性基としては、例えば、特開2000−181062号公報、同2004−189841号公報に示される下記一般式(4)で表される樹脂(ノニオン性)が反応性の観点から好ましい。
Figure 2008024798
式中、R2はメチル基または水素原子を表し、nは1または2を表し、
Xは、−(CH2m−COO−または−O−、Yは芳香族環または単結合、mは0〜6までの整数を表す。
また、特開2004−161942号公報に記載されている光重合型の下記一般式(5)で表される変性基(ノニオン性)を、従来公知の水溶性樹脂に用いることも好ましい。
Figure 2008024798
式中、R3はメチル基または水素原子を表し、R4は炭素数2〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。
更に、下記一般式(6)〜(8)で表される変性基(ノニオン性)も好ましく用いられる。
Figure 2008024798
本発明に用いる活性エネルギー線架橋性高分子化合物のポリ酢酸ビニルケン化物に対す架橋性基の変性率は、初期増粘変化が好ましい範囲に入るためには、0.8モル%以上、4.0モル%以下が好ましい。
このような活性エネルギー線架橋性高分子化合物は、インク全質量に対して0.8〜5.0質量%含有することが好ましい。0.8質量%以上存在することで架橋効率が向上し、架橋後のインク粘度の急激な上昇によりビーディングやカラーブリードがより好ましくなる。5.0質量%より小さい場合は、出射性やインク保存性が向上する。
また、活性エネルギー線架橋性高分子化合物のイオン性に関しては、色材のイオン性と前記高分子化合物の側鎖のイオン性の間には、好ましい組合せが存在する。色材としてはアニオン性を選択し、活性エネルギー線架橋性高分子化合物の側鎖にはノニオン性またはアニオン性を組み合わせることが、画像堅牢性及びインクジェットインクの保存性、連続出射性の観点で優れている点から好ましい。なかでも側鎖としてはノニオン性が最も好ましい。
《光重合開始剤、光増感剤》
本発明においては、光重合開始剤や光増感剤を添加するのも好ましい。これらの化合物は溶媒に溶解、または分散した状態か、もしくは感光性樹脂に対して化学的に結合されていてもよい。
適用される光重合開始剤、光増感剤については特に制限はなく、従来公知の物を用いることができるが、水溶性化合物であることが混合性、反応効率の観点から好ましい。特に4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(HMPK)、チオキサントンアンモニウム塩(QTX)、ベンゾフェノンアンモニウム塩(ABQ)が水系溶媒への混合性という観点で好ましい。
更に、本発明に係る活性エネルギー線架橋性高分子化合物との相溶性の観点から、下記一般式(9)で表される4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(n=1、HMPK)や、そのエチレンオキシド付加物(n=2〜5)がより好ましい。
Figure 2008024798
上記一般式(9)において、nは1〜5の整数を表す。
また、他の例として、
(1)ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ビス−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、ビス−N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、
(2)チオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントン等のチオキサントン類、
(3)エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、アミノアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン類、
(4)アセトフェノン類、
(5)ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル類、
(6)2,4,6−トリハロメチルトリアジン類、
(7)1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール2量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体等のイミダゾール類、
(8)ベンジルジメチルケタール、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、フェナントレンキノン、9,10−フェナンスレンキノン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン類、
(9)9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、
(10)ビスアシルフォスフィンオキサイド、
及びこれらの混合物等が好ましく用いられ、上記は単独で使用しても混合して使用しても構わない。
これらの光重合開始剤に加え、促進剤等を添加することもできる。これらの例として、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
《色材》
本発明のインクジェット用インクに用いられる色材としては、インクジェットで公知の各種染料または顔料を用いることができるが、活性エネルギー線架橋型の高分子の側鎖のイオン性との組合せからアニオン性であることが好ましい。
〔染料〕
本発明で用いることのできる染料としては特に制限はなく、酸性染料、直接染料、反応性染料等の水溶性染料、分散染料等が挙げられ、アニオン性染料である。
(水溶性染料)
本発明で用いることのできるアニオン性の水溶性染料としては、例えば、アゾ染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、フタロシアニン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料等を挙げることができ、その具体的化合物を以下に示す。但し、これら例示した化合物に限定されるものではない。
〈C.I.アシッドイエロー〉
1、3、11、17、18、19、23、25、36、38、40、42、44、49、59、61、65、67、72、73、79、99、104、110、114、116、118、121、127、129、135、137、141、143、151、155、158、159、169、176、184、193、200、204、207、215、219、220、230、232、235、241、242、246、
〈C.I.アシッドオレンジ〉
3、7、8、10、19、24、51、56、67、74、80、86、87、88、89、94、95、107、108、116、122、127、140、142、144、149、152、156、162、166、168、
〈C.I.アシッドレッド〉
88、97、106、111、114、118、119、127、131、138、143、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415、
〈C.I.アシッドバイオレット〉
17、19、21、42、43、47、48、49、54、66、78、90、97、102、109、126、
〈C.I.アシッドブルー〉
1、7、9、15、23、25、40、62、72、74、80、83、90、92、103、104、112、113、114、120、127、128、129、138、140、142、156、158、171、182、185、193、199、201、203、204、205、207、209、220、221、224、225、229、230、239、249、258、260、264、278、279、280、284、290、296、298、300、317、324、333、335、338、342、350、
〈C.I.アシッドグリーン〉
9、12、16、19、20、25、27、28、40、43、56、73、81、84、104、108、109、
〈C.I.アシッドブラウン〉
2、4、13、14、19、28、44、123、224、226、227、248、282、283、289、294、297、298、301、355、357、413、
〈C.I.アシッドブラック〉
1、2、3、24、26、31、50、52、58、60、63、107、109、112、119、132、140、155、172、187、188、194、207、222、
〈C.I.ダイレクトイエロー〉
8、9、10、11、12、22、27、28、39、44、50、58、79、86、87、98、105、106、130、132、137、142、147、153、
〈C.I.ダイレクトオレンジ〉
6、26、27、34、39、40、46、102、105、107、118、
〈C.I.ダイレクトレッド〉
2、4、9、23、24、31、54、62、69、79、80、81、83、84、89、95、212、224、225、226、227、239、242、243、254、
〈C.I.ダイレクトバイオレット〉
9、35、51、66、94、95、
〈C.I.ダイレクトブルー〉
1、15、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、160、168、189、192、193、199、200、201、202、203、218、225、229、237、244、248、251、270、273、274、290、291、
〈C.I.ダイレクトグリーン〉
26、28、59、80、85、
〈C.I.ダイレクトブラウン〉
44、106、115、195、209、210、222、223、
〈C.I.ダイレクトブラック〉
17、19、22、32、51、62、108、112、113、117、118、132、146、154、159、169、
〈C.I.リアクティブイエロー〉
2、3、7、15、17、18、22、23、24、25、27、37、39、42、57、69、76、81、84、85、86、87、92、95、102、105、111、125、135、136、137、142、143、145、151、160、161、165、167、168、175、176、
〈C.I.リアクティブオレンジ〉
1、4、5、7、11、12、13、15、16、20、30、35、56、64、67、69、70、72、74、82、84、86、87、91、92、93、95、107、
〈C.I.リアクティブレッド〉
2、3、5、8、11、21、22、23、24、28、29、31、33、35、43、45、49、55、56、58、65、66、78、83、84、106、111、112、113、114、116、120、123、124、128、130、136、141、147、158、159、171、174、180、183、184、187、190、193、194、195、198、218、220、222、223、228、235、
〈C.I.リアクティブバイオレット〉
1、2、4、5、6、22、23、33、36、38、
〈C.I.リアクティブブルー〉
2、3、4、5、7、13、14、15、19、21、25、27、28、29、38、39、41、49、50、52、63、69、71、72、77、79、89、104、109、112、113、114、116、119、120、122、137、140、143、147、160、161、162、163、168、171、176、182、184、191、194、195、198、203、204、207、209、211、214、220、221、222、231、235、236、
〈C.I.リアクティブグリーン〉
8、12、15、19、21、
〈C.I.リアクティブブラウン〉
2、7、9、10、11、17、18、19、21、23、31、37、43、46
〈C.I.リアクティブブラック〉
5、8、13、14、31、34、39、
〈C.I.フードブラック〉
1、2、
等を挙げることができる。
〔顔料〕
本発明に使用できる顔料としては、従来公知の有機及び無機顔料が使用できるが、好ましいのはアニオン性顔料である。例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料や、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。
具体的な有機顔料を以下に例示する。
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
〈分散剤〉
上記顔料をインク中に安定に分散するための水溶性高分子分散剤としては、下記の水溶性樹脂を用いることができ、吐出安定性の観点から好ましい。
水溶性樹脂として好ましく用いられるのは、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等のような水溶性樹脂である。
水溶性樹脂のインク全量に対する含有量としては0.1〜10質量%が好ましく、更に好ましくは0.3〜5質量%である。
これらの水溶性樹脂は2種以上併用することも可能である。
〈アニオン性顔料〉
本発明に用いられるアニオン性顔料の形態としては、上記顔料をアニオン性高分子分散剤により分散された顔料、またはアニオン変性自己分散顔料であることが分散安定性の点から好ましい。
アニオン性高分子分散剤とは分子内に酸性基を有しており、これを塩基性化合物により中和して得られるアニオン性基を有した分散剤を指す。この時に用いる塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミン等のアミン類が挙げられるが、本発明においてはアミン類が特に好ましい。
本発明に好ましく用いられるアニオン性高分子分散剤としては、分子量が1000以上であれば特に制限はなく、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸や、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレン−アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、及び酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩などの共重合体あるいは樹脂が、例えば、カルボン酸、スルホン酸またはホスホン酸の官能性を持つホモポリマー、コポリマー、ターポリマーを含むものである。酸の官能性を与えるモノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸、シトラコン酸、ビニル酢酸、アクリルオキシプロピオン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、アリルホスホン酸、ビニルホスホン酸及びビニルスルホン酸等である。
本発明に好ましく用いられるアニオン変性自己分散顔料とは、表面にアニオン性基を有し、分散剤なしで分散が可能な顔料を指す。アニオン性の自己分散顔料は顔料に酸性基が修飾されており、これを塩基性化合物により中和しアニオン性基として、分散剤が無くとも水への分散を可能とした顔料を指す。
表面に酸性基を有する顔料粒子とは、顔料粒子表面に直接酸性基で修飾させた顔料、あるいは有機顔料母核を有する有機物で直接にまたはジョイントを介して酸性基が結合しているものをいう。
酸性基(極性基ともいう)としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、燐酸基、硼酸基、水酸基が挙げられるが、好ましくはスルホン酸基、カルボン酸基であり、更に好ましくはスルホン酸基である。
本発明においては、極性基はフリーでも塩の状態でもよいし、あるいはカウンター塩を有していてもよい。カウンター塩としては、例えば、無機塩(リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ニッケル、アンモニウム)、有機塩(トリエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ピリジニウム、トリエタノールアンモニウム等)が挙げられ、好ましくは1価の価数を有するカウンター塩である。
本発明のインクジェット用インクに使用する顔料分散体の平均粒径は、500nm以下が好ましく、10nm以上、200nm以下であることが好ましく、10nm以上、150nm以下がより好ましい。顔料分散体の平均粒径が500nmを越えると、分散が不安定となり、また顔料分散体の平均粒径が10nm未満になっても顔料分散体の安定性が悪くなりやすく、インクの保存安定性が劣化しやすくなる。
顔料分散体の粒径測定は光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができる。また、透過型電子顕微鏡による粒子像撮影を少なくとも100粒子以上に対して行い、この像をImage−Pro(メディアサイバネティクス製)等の画像解析ソフトを用いて統計的処理を行うことによっても求めることが可能である。
顔料の分散方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等各種を用いることができる。
本発明のインクジェット用インクに用いる水に分散あるいは溶解可能な色材の含有量は、インク全質量に対して1〜10質量%であるのが好ましい。
《水溶性溶媒》
本発明のインクジェット用インクでは、水溶性溶媒が好ましく用いられ、水溶性溶媒としては、水及び水溶性有機溶媒等の混合溶媒が更に好ましく用いられる。好ましく用いることの出来る水溶性有機溶媒の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)等が挙げられる。
《界面活性剤》
本発明のインクに好ましく使用される界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
これらの界面活性剤は顔料の分散剤としても用いることができ、特にアニオン性及びノニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。
《インクジェット用インクセット》
本発明のインクジェット用インクセットは、2種以上のインクジェット用インクから構成され、該インクジェット用インクの少なくとも1種が本発明のインクジェット用インクであることを特徴とする。
本発明のインクジェット用インクセットは、請求項13〜22に記載したインクジェットインクを含むものであり、好ましくは2種以上のインクが本発明のインクジェットインクであり、特に好ましくは全てのインクが本発明のインクジェットインクであることにより本発明の効果を顕著に奏する。
本発明のインクジェット用インクセットを構成する色相の異なるインクとしては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のインクジェットインクから構成されているインクセットを用いることが好ましい。
更に前記4色のインクに加えて、淡色シアンインク、淡色マゼンタインク、濃色イエローインク、淡色黒インク(グレーインク)を用いてもよい。また、ブルー、レッド、グリーン、オレンジ、バイオレット等の所謂特色インクを使用することも可能である。
(濃淡インク)
本発明のインクジェット用インクセットにおいては、好ましくは少なくとも1色以上のインクにおいて、少なくとも2つの濃度の異なる同色のインクから構成されるインクジェット用インクセットを用いることが望ましい。更に2色以上のインクにおいて、少なくとも2つの濃度の異なる同色のインクから構成されるインクジェット用インクセットを用いることがより好ましく、特に3色以上のインクにおいて、少なくとも二つの濃度の異なる同色のインクから構成されるインクジェット用インクセットを用いることが好ましい。
これは、低濃度のインクジェットインクを用いることで粒状感を減少させ、所謂「ざらつき」のない高品位の画像を形成することができる。特には人間の視感度の高いマゼンタインクあるいはシアンインクにおいて、濃度の異なる少なくとも2つのインクを用いることが好ましい。
この濃度が異なるインクジェット用インクセットの濃度比は任意な値としてよいが、滑らかな階調再現を行うためには、高濃度インクと低濃度インクとの比(低濃度インクの色材濃度/高濃度インクの色材濃度)は0.1〜1.0の間にあることが好ましく、0.2〜0.5の間にあることが更に好ましく、0.25〜0.4の間にあることが特に好ましい。
《インクジェットインクのその他の添加剤》
本発明のインクジェットインクには、必要に応じて吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができ、例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、尿素樹脂、またはメラミン樹脂等の有機ラテックス、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報及び特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤等を挙げることができる。
(ラテックス)
本発明のインクジェットインクにおいては、ラテックスをインク中に加えてもよい。例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン、シリコン−アクリル共重合体及びアクリル変性フッ素樹脂等のラテックスが挙げられる。ラテックスは乳化剤を用いてポリマー粒子を分散させたものであっても、また乳化剤を用いないで分散させたものであってもよい。乳化剤としては界面活性剤が多く用いられるが、スルホン酸基、カルボン酸基等の水に可溶な基を有するポリマー(例えば、可溶化基がグラフト結合しているポリマー、可溶化基を持つ単量体と不溶性の部分を持つ単量体とから得られるポリマー)を用いることも好ましい。
また本発明のインクジェットインクでは、ソープフリーラテックスを用いることが特に好ましい。ソープフリーラテックスとは、乳化剤を使用していないラテックス、及びスルホン酸基、カルボン酸基等の水に可溶な基を有するポリマー(例えば、可溶化基がグラフト結合しているポリマー、可溶化基を持つ単量体と不溶性の部分を持つ単量体とから得られるポリマー)を乳化剤として用いたラテックスのことを指す。
近年、ラテックスのポリマー粒子として、粒子全体が均一であるポリマー粒子を分散したラテックス以外に粒子の中心部と外縁部で組成を異にしたコア・シェルタイプのポリマー粒子を分散したラテックスも存在するが、このタイプのラテックスも好ましく用いることができる。
本発明のインクジェットインクにおいて、ラテックス中のポリマー粒子の平均粒径は10nm以上、300nm以下であることが好ましく、10nm以上、100nm以下であることがより好ましい。ラテックスの平均粒径が300nmを越えると画像の光沢感の劣化が起こり、10nm未満であると耐水性、耐擦過性が不十分となる。ラテックス中のポリマー粒子の平均粒子径は光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法を用いた市販の粒径測定機器により求めることができる。
本発明のインクジェットインクにおいて、ラテックスは固形分添加量としてインクの全質量に対して0.1質量%以上、20質量%以下となるように添加することが好ましく、ラテックスの固形分添加量を0.5質量%以上、10質量%以下とすることが特に好ましい。ラテックスの固形分添加量が0.1質量%未満では、耐候性に関して十分な効果を発揮させることが難しく、また20質量%を越えると、経時でインク粘度の上昇が起こったりしてインク保存性の点で問題が生じることが多い。
(サーマル用出射安定剤)
本発明のインクジェットインクは、サーマル型インクジェットプリンタを用いてもよい。このとき、ゴゲーションを呼ばれるヘッドの目詰まりを解決するために、特開2001−81379号公報に開示されている(M12SO4、CH3COO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO3、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M12SO3及び(M12CO3から選ばれる塩を加えてもよい。M1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し、Phはフェニル基を表わす。上記のアルカリ金属としては、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs等が挙げられる。また有機アンモニウムとしては、例えば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリヒドロキシメチルアミン、ジヒドロキシメチルアミン、モノヒドロキシメチルアミン、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、N−メチルモノエタノールアンモニウム、N−メチルジエタノールアンモニウム、モノプロパノールアンモニウム、ジプロパノールアンモニウム、トリプロパノールアンモニウム等が挙げられる。
(架橋剤)
本発明のインクジェットインクには、記録媒体に着弾後、徐々に硬化させるために架橋剤を含有させてもよい。架橋剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬、ホウ酸またはその塩等が挙げられる。
(退色防止剤)
本発明のインクジェットインクでは、従来インクジェットインクで公知の退色防止剤を用いることができる。この退色防止剤は、光照射による退色及びオゾン、活性酸素、NOx、SOxなどの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。そのような退色防止剤としては、例えば、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報及び同60−72785号公報に記載の酸化防止剤、特開昭57−74193号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭61−154989号公報に記載のヒドラジド類、特開昭61−146591号公報に記載のヒンダードアミン系酸化防止剤、特開昭61−177279号公報に記載の含窒素複素環メルカプト系化合物、特開平1−115677号公報及び同1−36479号公報に記載のチオエーテル系酸化防止剤、特開平1−36480号公報に記載の特定構造のヒンダードフェノール系酸化防止剤、特開平7−195824号公報及び同8−150773号公報に記載のアスコルビン酸類、特開平7−149037号公報に記載の硫酸亜鉛、特開平7−314882号公報に記載のチオシアン酸塩類など、特開平7−314883号公報に記載のチオ尿素誘導体など、特開平7−276790号公報及び同8−108617号公報に記載の糖類、特開平8−118791号公報に記載のリン酸系酸化防止剤が、特開平8−300807号公報に記載の亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩などが、また特開平9−267544号公報に記載のヒドロキシルアミン誘導体等を退色防止剤として挙げることができる。更に特開2000−263928号公報等に記載のジシアンジアミドとポリアルキレンポリアミンの重縮合物なども、インクジェットにおける有効な退色防止剤の一つである。
(pHバッファー剤)
本発明のインクジェットインクでは、pHバッファー剤をインク中に添加してもよい。例えば、有機酸や無機酸である。有機酸としては、例えば、非揮発性のフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、安息香酸、セバチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、蓚酸、ポリアクリル酸、ベンジル酸等各種の有機酸を挙げることができる。
(消泡剤)
本発明のインクジェットインクでは消泡剤を添加することができ、消泡剤としては特に制限なく、市販品を使用することができる。そのような市販品としては、例えば、信越シリコーン社製のKF96、66、69、KS68、604、607A、602、603、KM73、73A、73E、72、72A、72C、72F、82F、70、71、75、80、83A、85、89、90、68−1F、68−2F(商品名)等が挙げられる。これら化合物の配合量に特に制限はないが、本発明のインクジェットインク中に、0.001〜2質量%配合されることが好ましい。該化合物の配合量が0.001質量%に満たないとインク調製時に泡が発生し易く、またインク内での小泡の除去が難しく、2質量%を超えると泡の発生は抑えられるものの、印字の際、インク内でハジキが発生し印字品質の低下が起こる場合があるので上記範囲内とすることが好ましい。
(不純物)
本発明では、顔料等が分散している色材粒子を使用する場合、イオンなどの不純物の影響で分散安定性を阻害するために、インク中のイオン等の不純物の量を少なくすることが好ましい。存在してもよいイオン量は、ナトリウム、カリウムなどの1価のカチオン、塩素イオン、臭素イオンなどの1価のアニオンにおいては、それぞれの総量が2000ppm以下がよく、更に好ましくは500ppm以下である。カルシウムイオン、マグネシウムなどの2価のカチオン、硫酸イオンなどの2価のアニオンでは、それぞれの総量が50ppm以下が好ましく、更に好ましくは20ppm以下である。アルミニウム、鉄などの3価以上のカチオン、燐酸などの3価以上のアニオンは、それぞれの総量が5ppm以下が好ましく、更に好ましくは2ppm以下である。
《インクの調製》
本発明のインクジェットインクの調製については特に制限はないが、顔料、分散染料、無機微粒子、樹脂微粒子等の分散物を含むインクの調製を行なう場合、調製過程での凝集、沈降が生じないようにインクを調製することが好ましい。必要に応じて、分散体、溶媒、水、感光性樹脂及びその他の添加物の添加順序、添加速度を調節する等の調合方法を取ることができる。また調合中もしくは調合後のインクについて、分散の安定化、調合時に生じた凝集を再分散すること等を目的として、ビーズミルや超音波による分散処理、加熱処理等を行ってもよい。
《インクの物性》
(インクの表面張力)
本発明のインクジェットインクの表面張力は特に制限はないが、24mN/m以上、50mN/m以下であることが好ましい。具体的な表面張力調整手段としては、以下に示す界面活性剤の種類や添加量、あるいは水溶性有機溶媒の種類や添加量を適宜選択、調整することにより所望の表面張力に調整することできる。
(粘度)
本発明のインクジェットインクの粘度は特に制限はないが、刺激に応答する前の粘度は、1.5mPa・s以上、20mPa・s以下であることが好ましい。また本発明のインクジェットインクの粘度は、せん断速度依存性がない方が好ましい。
本発明でいうインク粘度(mPa・s)は、JIS Z 8809に規定されている粘度計校正用標準液で検定されたものであれば特に制限はなく、前記レオメーターDAR−2000 UV−ETCシステム(ジャスコインターナショナル(株)社製)を用いて、測定する事が出来るが、公知の方法に従って、25℃で測定することが出来、粘度測定装置としては回転式、振動式や細管式の粘度計等も用いることができる。例えば、Saybolt粘度計、Redwood粘度計等で測定でき、例えば、トキメック社製、円錐平板型E型粘度計、東機産業社製のE Type Viscometer(回転粘度計)、東京計器社製のB型粘度計BL、山一電機社製のFVM−80A、Nametore工業社製のViscoliner、山一電気社製のVISCO MATE MODEL VM−1A、同DD−1等を挙げることができる。
(電気伝導度)
本発明のインクジェットインクにおいては、色材に顔料を用いる場合は、インク保存安定性の観点から電気伝導度が1mS/m以上、500mS/m以下であることが好ましく、より好ましくは1mS/m以上、200mS/m以下であり、更に好ましくは10mS/m以上、100mS/m以下である。インクの電気伝導度が500mS/mを越えると、色材の析出などによる出射不良が発生してしまう。また1ms/m以下では、分散物を安定に存在させるための静電反発が十分に得られず、やはり凝集してしまう。従って、電気伝導度を1mS/m以上、500mS/mにすることで、安定に分散物を存在させることが出来る。
本発明のインクジェットインクにおいて、所望の電気伝導度を達成する手段として特に制限はないが、本発明においては色材として顔料を用い、顔料の分散剤として高分子化合物(高分子分散剤)を用いる方法、あるいは電気伝導度調節剤、例えば、塩化カリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどの無機塩や、トリエタノールアミン等の水性アミン等を用いる方法を適宜選択、あるいは組み合わせることにより達成することができる。
本発明でいうインクの電気伝導度の測定は、JIS K 0400−13−10(1999)に記載の方法、あるいは特開昭61−61164号公報に示されているような方法に従って容易に行うことができる。
(イオン濃度の調整)
本発明のインクジェットインクの調製においては、イオン濃度を適宜調整することが好ましい。
所定濃度の染料水溶液をICP−AESにより測定し、インクで使用される染料濃度に換算してインクの状態のイオン濃度を算出する。水は蒸留水またはイオン交換水を使用することによりインク形成時のイオン濃度が推定できる。
次にその他の添加剤などを加えてインクを調製し、インク中のイオン濃度をICP−AESにより測定する。目標のイオン濃度を超えるときは、染料水溶液をイオン交換樹脂に通してイオン濃度を低下させることができる。イオン交換を複数回行い、更にイオン濃度を低下することができる。これによっても所望のイオン濃度に至らなかった場合は、染料以外の添加剤についてもイオン交換等の処理を行う。また、必要に応じて活性炭処理や限外濾過膜による濾過等の処理を加えてもよい。
(インク安全性)
本発明に用いる活性エネルギー線架橋性高分子化合物としては、変異原性、急性毒性、感作性等が低いか、もしくはない方が好ましい。
《記録媒体》
本発明のインクジェット記録方法で適用可能な記録媒体としては、各種紙、各種フィルム、各種布、各種木材、各種インクジェット用記録媒体等が使用できるが、記録媒体が、印刷用塗工紙(アート紙またはコート紙)あるいは非吸収性記録媒体であることが好ましい。
〔印刷用塗工紙〕
印刷用塗工紙とは印刷でしばしば用いられる塗工紙であり、一般的には上質紙や中質紙を原紙とし、紙の表面に白土等の顔料を塗布した後、平滑性を高めるためにカレンダー処理をかけて作製される。このような処理により白色度や平滑性、印刷インクの受理性、あるいは網点再現性、印刷光沢、印刷不透明度などが向上する。塗工量によりアート紙、コート紙、軽量コート紙等の分類があり、また紙の光沢によりグロス系、ダル系、マット系等に分類されるが、特に、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、アート紙またはコート紙であることが好ましい。
アート紙は塗工量が片面20g/m2前後の塗工紙であり、一般的には紙表面に顔料を塗工した後、カレンダー処理をかけて作製される。特アート、並アート、マット(艶消し)アート、片アート(片面塗工)、両アート(両面塗工)などの種類があり、具体的には、OK金藤N、サテン金藤N、SA金藤、ウルトラサテン金藤N、OKウルトラアクアサテン、OK金藤片面、Nアートポスト、NK特両面アート、雷鳥スーパーアートN、雷鳥スーパーアートMN、雷鳥アートN、雷鳥ダルアートN、ハイマッキンレーアート、ハイマッキンレーマット、ハイマッキンレーピュアダルアート、ハイマッキンレースーパーダル、ハイマッキンレーマットエレガンス、ハイマッキンレーディープマット等がある。
コート紙は塗工量が片面10g/m2前後の塗工紙であり、一般的には抄紙機の途中に設けた塗工装置で加工して作製される。コート量がアート紙より少なく、平滑度はやや落ちるものの廉価、軽量という利点がある。また、軽量コートや微塗工紙というコート量の更に少ない種類の塗工紙も存在する。これらのコート紙の具体例として、PODグロスコート、OKトップコート、OKトップコートS、オーロラコート、ミューコート、ミューホワイト、雷鳥コートN、ユトリロコート、パールコート、ホワイトパールコート、PODマットコート、ニューエイジ、ニューエイジW、OKトップコートマットN、OKロイヤルコート、OKトップコートダル、Zコート、シルバーダイヤ、ユーライト、ネプチューン、ミューマット、ホワイトミューマット、雷鳥マットコートN、ユトリログロスマット、ニューVマット、ホワイトニューVマット等が挙げられる。
〔非吸収性記録媒体〕
非吸収性記録媒体としては、一般的に使用されている各種フィルム等はすべて使用できる。例えば、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルムなどがある。また、写真用印画紙であるレジンコートペーパーや合成紙であるユポ紙なども使用できる。
《インクジェット記録方法》
本発明のインクジェット記録方法では、本発明のインクジェットインク、あるいはインクジェット用インクセットを記録媒体上に吐出し、活性エネルギー線を照射してインクを硬化させた後、乾燥させることを特徴とする。
以下、インクジェットインクへの活性エネルギー線照射方法について説明する。
〔活性エネルギー線照射〕
(活性エネルギー線)
本発明でいう活性エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、エックス線等が挙げられるが、人体への危険性や取り扱いが容易で、工業的にもその利用が普及している電子線や紫外線が好ましい。本発明では特に紫外線が好ましい。
電子線を用いる場合には、照射する電子線の量は0.1〜30Mradの範囲が望ましい。0.1Mrad未満では十分な照射効果が得られず、30Mradを越えると支持体等を劣化させる可能性があるため好ましくない。
紫外線を用いる場合は、光源として、例えば、数100Paから1MPaまでの動作圧力を有する低圧、中圧、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプや紫外域の発光波長を持つキセノンランプ、冷陰極管、熱陰極管、LED等従来公知のものが用いられる。
(インク着弾後の光照射条件)
活性エネルギー線の照射条件としては、記録媒体上にインクが着弾した後、0.001〜1.0秒の間に活性エネルギー線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.5秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングができるだけ早いことが特に重要となる。
(活性エネルギー線の照射方法)
活性エネルギー線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号公報に開示されている。これによるとヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射はインク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号明細書では、照射方法として光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へ紫外線を照射する方法が開示されている。本発明のインクジェット記録方法においては、これらのいずれの照射方法も用いることができる。
また活性エネルギー線を照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性エネルギー線を照射し、更に活性エネルギー線を照射する方法も好ましい態様の1つである。活性エネルギー線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
(硬化処理後の乾燥)
本発明のインクジェット記録方法では、記録媒体上へ吐出したインクジェットインクに活性エネルギー線を照射して硬化させた後、不要の水溶性有機溶媒等を除去する目的で乾燥を行う。
インクの乾燥手段としては特に制限はないが、インクが記録媒体に着弾後、急速乾燥を行うほど有利であるため、例えば、記録媒体の裏面を加熱ローラあるいはフラットヒータ等に接触させて乾燥させる方法、赤外線ヒーターを照射する方法、や、印字面にドライヤー等で温風を吹き付ける手段、あるいは減圧処理により揮発成分を除去する方法等を適宜選択あるいは組み合わせて用いることができる。好ましくは、記録媒体の裏面を加熱ローラあるいはフラットヒータ等に接触させて加熱しておき、インクが着弾後、赤外線ヒーターで加熱乾燥するなど、複数の方法を採用しても良い。
(記録ヘッド)
使用する記録ヘッド(インクジェットプリントヘッド)は、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを挙げることができる。好ましくは電気−機械変換方式であるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
以下、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中で「%」は、特に断りのない限り質量%を表す。
実施例1
《高分子化合物の調製》
〔高分子化合物1の調製〕
ポリアクリル酸(重量平均分子量80万)の100gを750gのメタノールに加熱溶解させた後、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルの16gと触媒としてピリジンの11gを加え、60℃に保ちながら24時間攪拌した。次いで、系の温度を95℃に上げ、水を滴下しながらメタノールを溜去した後、イオン交換樹脂(三菱化学社製、PK−216H)処理を行い、ピリジンを除去して不揮発性分濃度が15%の水溶液を得た。ここに、光重合開始剤として一般式(9)のn=1のイルガキュア2959(チバスペシャリティケミカルズ社製)を15%の水溶液100gに対して0.1gの割合で混合し、その後イオン交換水にて希釈して、高分子化合物1の10%水溶液を得た。
〔高分子化合物2の調製〕
グリシジルメタクリレートの56g、p−ヒドロキシベンズアルデヒドの48g、ピリジンの2g及びN−ニトロソ−フェニルヒドロキシアミンアンモニウム塩の1gを反応容器に入れ、80℃の湯浴中で8時間攪拌した。次に、重合度500、ケン化率88%のポリ酢酸ビニルケン化物の45gをイオン交換水225gに分散した後、この溶液にリン酸を4.5gと上記反応で得られたp−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンズアルデヒドをポリビニルアルコールに対して変性率が2.2モル%になるように加え、90℃で6時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却した後、塩基性イオン交換樹脂30gを加え1時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過し、ここに光重合開始剤として、イルガキュア2959(チバスペシャリティケミカルズ社製)を15%の水溶液100gに対して0.1gの割合で混合し、その後イオン交換水にて希釈して高分子化合物2の10%水溶液を得た。この高分子化合物2は重合度が500、側鎖の変性率が2.2モル%である。
〔高分子化合物3〜15の調製〕
上記高分子化合物2の調製において、ポリ酢酸ビニルケン化物の重合度、ケン化度を変え、更にp−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ベンズアルデヒドの添加量を変えて変性率を調整した以外は同様にして、表1,表2に記載の重合度及び変性率の高分子化合物3〜15を調製した。
(マゼンダ顔料分散液1の調製)
以下の各添加剤を混合し、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で55%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、マゼンタ顔料の含有量が12のマゼンダ顔料分散液を調製した。このマゼンタ顔料分散液に含まれるマゼンタ顔料粒子の平均粒径は95nmであった。なお、粒径測定はマルバーン社製ゼータサイザ1000HSにより行った。
C.I.ピグメントレッド122 12質量部
ジョンクリル60 9質量部
(アクリルスチレン系樹脂分散剤、ジョンソン社製 固形分濃度 34%)
ジエチレングリコール 20質量部
純水を加えて100質量部とした。
《マゼンタインクの調製》
〔マゼンタインク1の調製:顔料インク〕
マゼンタ顔料分散液1(顔料濃度:12%) 25質量部
高分子化合物1の10%水溶液 20質量部
エチレングリコール 15質量部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 6質量部
オルフィンE1010(日信化学社製) 0.3質量部
純水を加えて100質量部とした。
〔マゼンタインク2〜14,32,33,34の調製:顔料インク〕
マゼンタインク1の高分子化合物(高分子化合物1)を、表1,表2に記載のように変化させ、また、その添加量を変えたほかは同様にして、マゼンタインク2〜14,32,33,34を調製した。
〔マゼンタインク15〜17の調製:顔料インク〕
マゼンタインク1の高分子化合物の代わりに、A−400;水溶性光硬化モノマー/オリゴマー;ポリエチレングリコールアクリレート系(新中村化学(株)社製)を用い、添加量を表1,表2のように変えたほかは同様にして、マゼンタインク1の調製と同様にして、マゼンタインク15〜17を調製した。
〔マゼンタインク18〜20の調製:顔料インク〕
マゼンタインク1の高分子化合物の代わりに、UA−W2A;水溶性光硬化モノマー/オリゴマー;ウレタンアクリレート系(新中村化学(株)社製)を用い、添加量を表1,表2のように変えた他は同様にして、マゼンタインク1の調製と同様にして、マゼンタインク18〜20を調製した。
(ブラック顔料分散液1の調製)
以下の各添加剤を混合し、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で55%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、カーボンブラックの含有量が12%のブラック顔料分散液を調製した。このマゼンタ顔料分散液に含まれるマゼンタ顔料粒子の平均粒径は90nmであった。なお、粒径測定はマルバーン社製ゼータサイザ1000HSにより行った。
カーボンブラック 12質量部
ジョンクリル60 10質量部
(アクリルスチレン系樹脂分散剤、ジョンソン社製 固形分濃度 34%)
ジエチレングリコール 22質量部
純水を加えて100質量部とした。
《ブラックインクの調製》
〔ブラックインク1の調製:顔料インク〕
ブラック顔料分散液1(顔料濃度:12%) 25質量部
高分子化合物1の10%水溶液 20質量部
エチレングリコール 15質量部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 6質量部
オルフィンE1010(日信化学社製) 0.3質量部
純水を加えて100質量部とした。
〔ブラックインク2〜14,32,33,34の調製:顔料インク〕
マゼンタインク2〜14,32,33,34のマゼンタ顔料分散液1の変わりにブラック顔料分散液を用いた他は同様にして、ブラックインク 2〜14,32,33,34を調製した。
〔ブラックインク15〜17の調製:顔料インク〕
ブラックインク1の高分子化合物の代わりに、A−400(新中村化学(株)社製)を用い、添加量を表1,表2のように変えたほかは同様にして、ブラックインク1の調製と同様にして、ブラックインク15〜17を調製した。
〔ブラックインク18〜20の調製:顔料インク〕
ブラックインク1の高分子化合物の代わりに、UA−W2A(新中村化学(株)社製)を用い、添加量を表1,表2のように変えたほかは同様にして、ブラックインク1の調製と同様にして、ブラックインク18〜20を調製した。
〔マゼンタインク21:染料インク〕
マゼンタインク1のマゼンタ顔料分散液の代わりに、C.I.アシッドレッド35、2.5質量部を用いたほかは同様に行い、染料を用いたマゼンタインク21を作製した。
同様にして、表1,表2の記載に通りの高分子化合物、また添加量を変えたマゼンタインク22〜31を作製した。
〔ブラックインク21:染料インク〕
ブラックインク1のブラック顔料分散液の代わりに、C.I.フードブラック2を2.5質量部を用いたほかは同様に行い、染料を用いたブラックインク21を作製した。
同様にして、表1,表2の記載に通りの高分子化合物、また添加量を変えたブラックインク22〜31を作製した。
(d(lnη)/dtの測定)
得られた高分子化合物、およびA−400,UA−W2Aの5%水溶液をDAR−2000(ジャスコインターナショナル(株)社製)UV−ETCシステム 周波数1000/S プレートギャップ 0.02mmの条件で(温度25℃)、紫外線照射(ウシオ電機(株)製 スポットUV照射装置SP−7を用いて、照射量 100mW/cm2)、直前の0秒時の粘度と紫外線照射2秒後の粘度を測定し、その粘度変化から、1秒あたりの粘度変化率、d(lnη)/dtを測定した。ここで、ηは粘度(単位はPa)、tは秒を表す。
《画像形成》
ノズル口径25μm、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpi(なお、dpiは2.54cm当たりのドット数を表す)であるピエゾ型ヘッドを搭載し、ピエゾ型ヘッドの両端に120W/cmメタルハライドランプ(日本電池社製 MAL 400NL 電源電力3kW・hr)を配置し、最大記録密度が720×720dpiであるオンデマンド型インクジェットプリンタを用意した。メタルハライドランプを照射しながら(照射条件;ウシオ電機(株)製 スポットUV照射装置SP−7を用いて、照射量 1500mW/cm2)、アート紙(王子製紙社製 NKアート金藤N)に各マゼンタインクとブラックインクをそれぞれセットで用いて吐出し、アート紙上にマゼンタベタ画像、および0.3mmのブラック細線画像を記録した。画像記録後、ドライヤーにより5分間温風乾燥した。
《形成画像の評価》
(出射性評価)
上記作製したマゼンタインクを用いて、上記記録方法により、
10秒間連続吐出→一定時間休止→連続出射
の間欠動作を行った。この際、吐出休止後の最初で吐出方向の乱れが生じるか否かは休止時間の長さで決まるので、吐出休止時間の長さを段階的に変えることにより、間欠出射の安定性を測定した。
○:30秒以上休止しても安定に出射した
△:15秒以上30秒休止いても安定に出射したが、30秒以上休止すると出射方向に乱れが生じた
×:15秒放置したら、安定に出射できなかった。
(写像性光沢評価)
評価サンプル画像を写像性測定器ICM−1DP(スガ試験機械社製)で反射角60°光学櫛2mmでの写像性(C値)を測定し、値により○、△、×の三段階評価を行った。
○:C値60より大きい
△:C値50より大きく、60以下
×:C値50以下。
(光沢均一性の評価)
パネラー20名に、評価サンプル画像を斜め45°の角度で映し出される反射画像を評価して、○、△、×の三段階評価を行った。
○:反射画像のボケ具合が均一である。
△:反射画像のボケ具合が一部不均一である。
×::射画像のボケ具合が不均一である。
(ブリード防止(耐性)評価)
上記作成したマゼンタベタ画像上のブラック細線画像を目視観察し、下記の基準に従ってブリード耐性の評価を行った。
○:細線とベタ部の境界線がはっきりしている
△:境界部にややにじみが認められるが、実用上許容限界内の品質である
×:境界部で明らかなにじみの発生が認められ、線幅が1.5倍ほどとなり、実用上問題となる品質である。
Figure 2008024798
Figure 2008024798
表1,表2に示すように、本発明のインクジェットインクは出射性が良好であり、本発明のインクジェットインクからの画像は、比較に対しブリードが防止され、写像光沢性、光沢均一性に優れていることがわかる。
実施例2
《インクセットの調製》
〔イエロー顔料分散液、シアン顔料分散液、の調製〕
実施例1のマゼンタ顔料分散液の調製において、C.I.ピグメントレッド122に代えて、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントブルー15:3、をそれぞれ用いた以外は同様にして、イエロー顔料分散液、シアン顔料分散液を調製した。
〔インクセット1の調製〕
実施例1に記載のマゼンタインク2の調製のマゼンタ顔料分散液のそれぞれイエロー顔料分散液、シアン顔料分散液を置き換えた他は同様にして、イエローインク、シアンインクを調製し、あわせてインクセット1のインクを調製した。
〔インクセット2〜5の調製〕
実施例2に記載のインクセット1に記載の高分子化合物を表3の高分子化合物に置き換えたほかは同様に行い、インクセット2〜5を調製した。
〔インクセット6の調製〕
実施例2に記載のインクセット1に記載の高分子化合物2をA−400(新中村化学(株)社製)に変えたほかは同様に行い、インクセット6を調製した。
〔インクセット7の調製〕
実施例2に記載のインクセット1に記載の高分子化合物2をUA−W2A(新中村化学(株)社製)に変えた他は同様に行い、インクセット7を調製した。
《画像形成》
ノズル口径25μm、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpi(なお、dpiは2.54cm当たりのドット数を表す)であるピエゾ型ヘッドを搭載し、ピエゾ型ヘッドの両端に120W/cmメタルハライドランプ(日本電池社製 MAL 400NL 電源電力3kW・hr)を配置し、最大記録密度が720×720dpiであるオンデマンド型インクジェットプリンタを用意した。メタルハライドランプを照射しながら(照射条件;ウシオ電機(株)製 スポットUV照射装置SP−7を用いて、照射量 1500mW/cm2)、各インクを吐出し、アート紙(王子製紙社製 NKアート金藤N)上に、マゼンタベタ画像、巾100μmのマゼンタ細線画像と、高精細カラーデジタル標準データ「N5・自転車」(財団法人 日本企画協会 1995年12月発行)を記録後、ドライヤーにより1分間温風乾燥し、更に24時間自然乾燥した。
実施例1と同じ方法で以下の評価を行った。
(ブリード防止(耐性)評価)
上記作成した各マゼンタ細線画像を目視観察し、下記の基準に従ってブリード耐性の評価を行った。
○:細線と非画像部の境界線がはっきりしている
△:境界部にややにじみが認められるが、実用上許容限界内の品質である
×:境界部で明らかなにじみの発生が認められ、線幅が1.5倍ほどとなり、実用上問題となる品質である。
(写像性光沢評価)
「N5・自転車」カラー画像の斜め60度の確度で画像上に写った遠景を、目視で写像性を測定した。
○:遠景が鮮明に見える
△:一部の画像上で遠景が不鮮明である。
×:遠景が不鮮明である。
(光沢均一性の評価)
パネラー20名に、評価サンプル画像を斜め45°の角度で映し出される反射画像を評価して、○、△、×の三段階評価を行った。
○:反射画像のボケ具合が均一である。
△:反射画像のボケ具合が一部不均一である。
×:反射画像のボケ具合が不均一である。
Figure 2008024798
表3に記載の結果より明らかなように、本発明のインクジェットインクから構成されるインクセットと用いても、出射性に優れ、ブリード防止され、写像性光沢、光沢均一性も良好な画像が得られることがわかる。
実施例3
実施例1で作成したブラックインクおよびマゼンタインク2,15,18を用いて、アート紙(王子製紙社製 NKアート金藤N、PODグロスコート)、普通紙に実施例1と同じ方法を用いて、出射性、ブリード、写像光沢性、光沢均一性の評価を行った。本発明のインクジェットインクを用いると、数々の記録媒体に対しても、優れた効果が得られることが分かる。
Figure 2008024798

Claims (24)

  1. 記録媒体に、インクを付着させ、前記インクに刺激を与えるインクジェット記録方法において、前記インクが、少なくとも色材と、前記刺激を付与されることにより粘度を変化させる刺激応答性高分子化合物と、水とを含有し、前記刺激応答性高分子化合物の前記刺激に応答する前と応答した後の初期粘度変化が下記式(1)を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。
    式(1) 2<d(lnη)/dt
    但し、ηは粘度を表し、tは時間(秒)を表す。
  2. 前記初期粘度変化が、下記式(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
    式(2) 2<d(lnη)/dt<6
  3. 前記刺激応答性高分子が、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、前記刺激として活性エネルギー線を照射することにより、前記側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記親水性主鎖の複数の側鎖が下記一般式(A)で表される構造を有することを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録方法。
    一般式(A) Poly−{(X1)m−〔B−(Y1)n〕p}
    (式中、Polyは親水性主鎖を表し、{ }内は側鎖を表し、X1は(p+1)価の連結基を表し、Bは架橋性基を表し、Y1は水素原子または置換基を表す。mは0または1、nは0または1、pは正の整数を表す。pが2以上のとき、複数のB及びY1は同一でも異なってもよい。)
  5. 前記親水性主鎖がポリ酢酸ビニルのケン化物であり、ケン化度が77%以上、99%以下で、且つ重合度が200以上、4000以下であることを特徴とする請求項3または4に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記親水性主鎖に対する前記側鎖の変性率が0.8モル%以上、4.5モル%以下であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  7. 水溶性光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  8. 前記インクが、前記刺激応答性高分子化合物を0.5質量%以上、5.0質量%以下含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  9. 前記色材がアニオン性顔料であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  10. 前記インクの前記刺激に応答する前の粘度が1.5mPa・s以上、20mPa・s以下であり、前記インクの前記刺激に応答した後の粘度が80mPa・s以上、250Pa・s以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  11. 記録媒体に、複数種のインクを付着させ、前記インクに刺激を与えるインクジェット記録方法において、前記複数種のインクのうち少なくとも1種が、少なくとも色材と、前記刺激を付与されることにより粘度を変化させる刺激応答性高分子化合物と、水とを含有し、前記刺激応答性高分子化合物の前記刺激に応答する前と応答した後の初期粘度変化が下記式(1)を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。
    式(1) 2<d(lnη)/dt
    但し、ηは粘度を表し、tは時間(秒)を表す。
  12. 前記複数種のインク全てが、それぞれ、少なくとも色材と、前記刺激を付与されることにより粘度を変化させる刺激応答性高分子化合物と水を含有し、それぞれのインク中の刺激応答性高分子化合物が前記刺激に応答する前と応答した後の初期粘度変化が前記式(1)を満たすことを特徴とする請求項11に記載のインクジェット記録方法。
  13. 少なくとも色材と、刺激を付与されることにより粘度を変化させる刺激応答性高分子化合物と、水とを含有するインクジェットインクであって、前記刺激応答性高分子化合物の刺激に応答する前と応答した後の初期粘度変化が下記式(1)を満たすことを特徴とするインクジェットインク。
    式(1) 2<d(lnη)/dt
    但し、ηは粘度を表し、tは時間(秒)を表す。
  14. 前記初期粘度変化が、下記式(2)を満たすことを特徴とする請求項13に記載のインクジェットインク。
    式(2) 2<d(lnη)/dt<6
  15. 前記刺激応答性高分子化合物が、親水性主鎖に複数の側鎖を有し、前記刺激として活性エネルギー線を照射することにより、前記側鎖間で架橋結合可能な高分子であることを特徴とする請求項13または14に記載のインクジェットインク。
  16. 前記親水性主鎖の複数の側鎖が下記一般式(A)で表される構造を有することを特徴とする請求項15に記載のインクジェットインク。
    一般式(A) Poly−{(X1)m−〔B−(Y1)n〕p}
    (式中、Polyは親水性主鎖を表し、{ }内は側鎖を表し、X1は(p+1)価の連結基を表し、Bは架橋性基を表し、Y1は水素原子または置換基を表す。mは0または1、nは0または1、pは正の整数を表す。pが2以上のとき、複数のB及びY1は同一でも異なってもよい。)
  17. 前記親水性主鎖がポリ酢酸ビニルのケン化物であり、ケン化度が77%以上、99%以下で、且つ重合度が200以上、4000以下であることを特徴とする請求項16に記載のインクジェットインク。
  18. 前記親水性主鎖に対する前記側鎖の変性率が0.8モル%以上、4.5モル%以下であることを特徴とする請求項17に記載のインクジェットインク。
  19. 水溶性光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項13〜18のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
  20. 前記刺激応答性高分子化合物を0.5質量%以上、5.0質量%以下含有することを特徴とする請求項13〜19のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
  21. 前記色材がアニオン性顔料であることを特徴とする請求項13〜20のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
  22. 前記刺激に応答する前の粘度が1.5mPa・s以上、20mPa・s以下であり、前記インクの前記刺激に応答した後の粘度が80mPa・s以上、250Pa・s以下であることを特徴とする請求項13〜21のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
  23. インクを複数種具備するインクジェットインクセットにおいて、少なくとも1種のインクが、請求項13〜22のいずれか一項に記載のインクジェットインクであることを特徴とするインクジェットインクセット。
  24. インクを複数種具備するインクジェットインクセットにおいて、複数種のインク全てが、請求項13〜22のいずれか一項に記載のインクジェットインクであることを特徴とするインクジェットインクセット。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013194226A (ja) * 2012-03-22 2013-09-30 Fujifilm Corp インク組成物、インクセット、及び、画像形成方法
JP2016040125A (ja) * 2010-10-18 2016-03-24 株式会社リコー インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、及び記録セット

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