JP2008021535A - 電子放射源 - Google Patents

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喜之 山本
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暁彦 植田
Yoshiki Nishibayashi
良樹 西林
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貴浩 今井
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Abstract

【課題】本発明は、電子放出を向上し、低コストな電界放出型電子放射源を提供する。並びに、電界放出型電子放射源を備える電子顕微鏡及び電子ビーム露光機を提供する。
【解決手段】絶縁性のベース12と、ベースに設けられた端子14と、電子放射陰極18と、電子放射陰極を把持し、かつ電子放射陰極と端子とを電気的に接続する導電部材16とを備え、電子放射陰極18が、板状のダイヤモンドからなり、その一主面に、複数の電子放出部となる突起を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子顕微鏡、電子ビーム露光機などの電子線及び電子ビーム機器、進行波管、マイクロ波管など真空管に用いられるダイヤモンド電子放射源及びこれらを用いた電子機器に関する。
電子はマイナスの電荷を持ち、質量が極めて小さいため、電子を一方向に揃えて走らせた電子ビームは以下のような特徴を有している。(1)電界や磁界で方向や収束度を制御できる。(2)電界による加減速で広範囲なエネルギーが得られる。(3)波長が短いため、細く絞り込むことができる。このような特徴を活かした電子顕微鏡や、電子ビーム露光機が広く普及している。これらの陰極材料として、例えば、熱電子放射源としては安価なWフィラメントや、輝度の高い電子ビームが得られるLaB等の六ホウ化物がある。また、さらに高輝度でエネルギー幅の狭い陰極として、量子効果によるトンネル現象を利用した先鋭化Wや、電界によるショットキー効果を利用したZrO/Wが用いられている。
しかしながら、Wフィラメントは安価である反面、寿命が100時間程度と極端に短いために、フィラメントが切れた場合、真空槽を大気開放したり、電子ビームの光軸を調整したりする等の交換作業を頻繁に行わねばならないといった問題がある。LaBはWフィラメントと比較して寿命が1000時間程度と長いが、比較的高輝度ビームが得られる装置で使用されているために、交換作業は装置メーカーが行う場合が多く、コストがかかるといった問題がある。より高輝度が得られる先鋭化Wや、寿命が1年程度と比較的長いZrO/Wについても交換コストが高く問題がある。
電子顕微鏡においてはより小さいものを高精度に観察したいという要求があることや、電子ビーム露光機においては65nmノード以細の開発が進んできていることから、さらに高輝度でエネルギー幅が狭い陰極が求められている。
このような期待に答える材料の一つとして、ダイヤモンドがある。ダイヤモンドには非特許文献1あるいは非特許文献2にあるように電子親和力が負(NEA)の状態、あるいは仕事関数が小さい金属と比較しても小さな正(PEA)の状態が存在する。この非常に稀な物性を活かせば、WフィラメントやLaB、あるいはZrO/Wのように1000℃を超える高熱の必要なしに高電流密度電子放射が可能であり、エネルギー幅が狭く抑えられる。そして、駆動温度が低いために長寿命が期待できる。また、非特許文献3のような先端径10nmが得られる微細加工技術があるので高輝度化についても問題ない。また、ダイヤモンドについては、上記電子親和力を有することが判明して以来、特許文献1や非特許文献4のような電子源がこれまでに提案されてきた。
電界放出型電子放射源には、先鋭化W等の冷陰極を利用した電界放出型電子放射源と、ZrO/W等の電子源を1000℃程度以上に加熱して電界放出を行う熱電界放出陰極を利用した電界放出型電子放射源がある。後者、即ち、熱電界放出陰極を利用した電界放出型電子放射源では、電子ビームのエネルギー幅が冷陰極に比べて大きくなるので、装置の高分解能化には不十分である。一方、冷陰極を用いた電界放出型電子放射源は、輝度及びエネルギー分布に関して優れている。特に、先鋭化Wを用いた電界放出型電子放射源が、エネルギー分布等の点で優れている。
先鋭化Wを陰極とする電界放出型電子放射源は、量子効果によるトンネル現象を利用して、室温で電子を取り出すことが可能である。この電界放出型電子放射源では、電子放出
源(エミッタ)として、W(111)、W(310)、又はW(100)方位単結晶を主材料とする長さ2mm弱の先鋭端を有するチップが用いられており、当該チップがWフィラメントに取り付けられている。このエミッタと対を成す引出電極は、エミッタから数mm〜十数mm程度の距離をおいて配置されおり、エミッタ及び引出電極を収容する空間は、高真空状態に排気される。
この先鋭化Wを利用した電界放出型電子放射源は、他の熱電子源等に比較して、圧倒的に電子のエネルギー幅が小さく、輝度が高いという特徴をもっている。具体的に、先鋭化Wを利用した電界放出型電子放射源のエネルギー幅は、200〜300meV程度になる。したがって、電子光学系に用いられるレンズの色収差を低減できるので、先鋭化Wを有する電界放出型電子放射源は、電子顕微鏡の性能向上に大きく役立っている。
しかしながら、この電界放出型電子放射源は、10−8Pa程度の超高真空下で使用しなければならない。また、エミッタを瞬間的に通電加熱し、エミッタに吸着したガス分子を除去するという清浄化作業(熱フラッシュ)を定期的に行うことが必要不可欠である。
また、先鋭化Wを利用した電界放出型電子放射源の電子放出特性を一定にするためには、W表面の仕事関数や表面の形状を一定に維持する必要がある。しかしながら、使用時間の経過に伴って、W表面にガス分子が吸着し、W表面の仕事関数が変化する。また、残留ガスの陽イオンがエミッタに衝突し、エミッタの形状を変化させる。その結果、先鋭化Wを用いた電界放出型電子放射源では、使用時間の経過に伴い、引き出される電子ビーム電流量が減少し、最終的に電子放射源が破壊されてしまうことがある。また、所定の電流量を得るために引出電圧を大きくすると、放電等が起こりやすくなり、電子放射源の破壊が起こる。
エミッタに吸着したガス分子は、上述の熱フラッシュによって除去することができる。しかしながら、熱フラッシュによって半径が変化する等、先鋭端の形状が変化するので、エミッタの初期性能の長期維持が困難である。エミッタ形状の変化に対しては、逆バイアスを印加することによって形状を整えるリモルディング法が提案されている。しかしながら、先端の電界強度が測定し難いばかりでなく、制御の再現性が難しく、エミッタを初期形状に復元することは、実用的には困難である。
先鋭化Wを利用した電界放出型冷陰極電子放射源は、上記の通り安定して電子ビームを取り出すために、熱フラッシュによる再生を必要不可欠としている。したがって、エミッタ取り付け用の金属は、高融点で耐熱性の高いものに限られる。また、繰り返し熱履歴が加えられるためにエミッタとエミッタ取り付け用金属間の接合部が破損し、取り付け用金属が熱膨張・熱収縮を繰り返すためにエミッタの取り付け強度が低下する。その結果、エミッタの位置がずれ、充分な電界集中が実現できずに電子放出特性が低下するなどの問題があった。
また、先鋭化Wを利用した電界放出型冷陰極は、超高真空環境を必要とするために、故障時の交換に手間を要する。また、電子銃室の汚染を防止する上でも交換の頻度はできるだけ少ないほうが好ましい。
特開平4−67527号公報 F.J.Himpsel et al.,Phys.Rev.B., Vol.20,Number 2(1979) 624− J.Ristein et al.,New Diamond and Frontier Carbon Technology,Vol.10,No.6,(2000) 363− Y.Nishibayashi et al.,SEI Technical Review,57,(2004) 31− W.B.Choi et al.,J.Vac.Sci.Technol.B 14,(1996)2051 −
そこで、本発明は、電子放出寿命を向上し、低コストな電界放出型電子放射源を提供すること、並びに当該電界放出型電子放射源を備える電子顕微鏡及び電子ビーム露光機を提供することを目的としている。
本発明の第一の電子放射源は、下記の構成をとる。すなわち、絶縁性のベースと、前記ベースに設けられた端子と、電子放射陰極と、前記電子放射陰極を把持し、かつ前記電子放射陰極と前記端子とを電気的に接続する導電部材とを備えており、前記電子放射陰極が、板状のダイヤモンドからなり、その一主面に、複数の電子放出部となる突起を有することを特徴とする、電子放射源である。
第一の電子放射源は、電子放射陰極にダイヤモンドを用いている。ダイヤモンドには、その表面が非常に小さな電子親和力を示す状態がある。この物性をうまく活用すれば、先鋭化Wと同様、もしくはそれ以上に大電流で室温動作可能な冷陰極としての応用が期待できる。このダイヤモンドからなる電子放射陰極は、板状であり、その一主面に複数の突起構造を有する。突起構造は、円錐形、角錘形等、底面の断面積に比べて先端の断面積が小さくなっていることが好ましい。
電子放射陰極として使用する際に、突起構造の先端に高電界が印加されるので、電子放出部は突起の先端部となる。本発明の電子放射陰極では、複数の突起(電子放出部)が存在する。電子光学系を調整することによって、使用する突起を選択することが可能である。すなわち、本発明の電子放射源を使えば、まず第一の突起を電子放出部として選択して使用し、この突起が寿命を迎えた場合に、電子光学系の調整のみで、第二の突起を電子放出部として使用することができ、全体としての電子放射源の寿命を飛躍的に向上させることが可能である。従来の電界放射型電子放射源を用いる場合に必要であった熱フラッシュ回路が不要となり、本発明の電子放射源を用いる電子ビーム機器のコスト削減に寄与できる。
ベースに支持された導電部材によって、この電子放射陰極を把持している。なお、導電部材による把持とは、ロウ付け、半田付け等によって導電部材に固定する方法とは異なり、機械的固定によるものである。この機械的固定には、ネジやバネで固定する方法が含まれる。例えば、導電部材としての金属棒の先端に溝を設け、当該溝にはめ込む方法や、溝を構成する壁に孔を設け、はめ込んだ電子放射陰極をネジで直接固定する方法が利用可能である。かかる機械的固定によれば、不純物混入による真空度劣化、電子放射源の特性劣化を防止可能である。また、機械的固定によれば、部品点数を減らせるので、製造コストを安価にすることができる。
なお、この第一の電子放射源において、従来型の電子放射源とコネクタ部を共通化するために、端子を2つ有していても良い。
ダイヤモンドはバンドギャップが広く、キャリアを供給する不純物がなければ室温ではほとんど絶縁体として振舞う。電子放射陰極に応用するためには電子放射部まで電子を供給する必要があるが、例えばダイヤモンドにB(ホウ素)やN(窒素)、P(燐)などをドーピングして、半導体ダイヤモンドとすることが好ましい。こうした不純物のドーピング濃度の制御が、ダイヤモンドの気相成長(CVD)によって可能である。また、多結晶
ダイヤモンドでは前記ドーピング濃度や得られる電気特性の制御が難しいので、単結晶ダイヤモンドを用いることが好ましい。
前記突起の形成には、気相成長法による方法や、エッチングによる方法、あるいはそれらを組み合わせた方法を使用することができる。
本発明の第二の電子放射源は、下記の構成をとる。すなわち、絶縁性のベースと、前記ベースに設けられた2つの端子と、電子放射陰極と、前記2つの端子のそれぞれに電気的に接続された導電部材とを備え、前記電子放射陰極は、前記第一の導電部材と第二の導電部材の間に把持され、かつ板状のダイヤモンドからなり、その一主面に複数の電子放出部となる突起構造を有する、電子放射源である。
この構成によれば、第一の電子放射源での利点に加え、電子放射陰極を第一の導電部材と第二の導電部材との間に機械的に固定できるので、位置安定性が向上し、得られるビーム品質の安定性に寄与できる。
本発明の第三の電子放射源は、下記の構成をとる。すなわち、第二の電子放射源において、電子放射陰極の突起近傍に、突起とは電気的に絶縁された金属電極が配置され、第一の導電部材は突起と電気的に接続され、第二の導電部材は金属電極と電気的に接続されている、電子放射源である。
この構成によれば、例えば金属電極を引出電極として利用したり、ゲート電極として利用することができ、より低圧で効率よく電子を引き出すことが可能となる。この絶縁層には、SiO2などのSiの酸化物等が好適に使用可能である。また、金属電極には例えばMoやWなどの高融点金属が好適に使用可能である。
上述した第1〜第3の電界放出型電子放射源では、導電部材が、インバーもしくはコバール製であることが好ましい。インバー、スーパーインバー、又はコバールといった金属は、キュリー点以下の温度で自発体積磁歪による体積変化が生じる。これが格子振動による体積変化を打ち消す方向に作用するため、非常に低い熱膨張係数を示す。したがって、インバー、又はコバール製の導電部材によれば、電界放出エミッタの端部、即ち先鋭端の位置変動が少なくなる。これによって、電界放出エミッタの先鋭端に印加される電界が安定し、安定した電子放出特性が得られる。
以上説明したように、本発明によれば、電子放出寿命の大幅な向上が可能であり、ランニングコストが非常に低廉な電子放射源が提供される。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。
[第一の実施形態]
図1は、本発明の第一の実施形態に係る電子放射源の側面図である。図1に示す電子放射源10は、ベース12と、端子14と、導電部材16と、電子放射陰極18と、を備えている。ベース12は、導電部材16を支持する部材であり、絶縁性を有している。ベース12は、アルミナや窒化珪素などの絶縁性セラミックスによって形成されている。図1に示すベース12は、第一の主面12aおよび第二の主面12bを有する板状を成している。ベース12は、第一の主面12aから第二の主面12bを貫通するように取り付けられた導電部材16を支持している。ベース12の第二の主面12bには端子14が取り付
けられ、この端子14と導電部材16は電気的に接続されている。
導電部材16は、端子14と電子放射陰極18とを電気的に接続するための部材である。この導電部材16は、金属製の棒状体である。導電部材16には、熱膨張係数の小さなインバーやコバールなどを好適に用いることができる。なお、導電部材16は、たとえばステンレス、銅、アルミなどを用いてもかまわない。
図2は、図1に示す電子放射陰極および導電部材の端部を拡大して示す側面図である。具体的に、導電部材16の端部には、ザグリが形成され、そこに電子放射陰極がはめ込まれ、ねじ20によって固定されている。なお、導電部材16の端部は、電子放射陰極を機械的に固定可能であれば、たとえばばね構造等の種々の構造をとることが可能である。
電子放射陰極18は、ダイヤモンド製のエミッタである。第一の主面18aの表面には突起部18cが形成されている。少なくとも内部に単結晶ダイヤモンドを含む。単結晶は、天然に産するもののほか、高温高圧法、気相合成法などによって人工的に工業的に生産されているものでもかまわない。
また、電子放射陰極18は、突起18cへの導電パスのために、導電部材16との
接触部と突起18cとの間に、導電性ダイヤモンドを含んでいてもよい。本実施の形態では、電子放射陰極18は、その表層に導電性ダイヤモンドを含んでいる。
ダイヤモンドに導電性をもたせるための手法としては、公知のドーピング技術を利用可能である。例えば、n型不純物、例えばP(リン)、S(硫黄)をドーピングすることによって、優れたn型導電性を呈するダイヤモンドを得ることができる。この導電性ダイヤモンドには、n型不純物(たとえばP、S)が、2×1015cm−3以上、より好ましくは2×1019cm−3含まれていることが好ましい。この場合には、ダイヤモンドの伝導帯に電子が供給されるので、実質的に仕事関数が小さくなり、高電流密度での電子放射が可能となる。
なお、p型不純物、例えばB(ホウ素)を用いることによって、p型導電性を呈する導電性ダイヤモンドが設けられていてもよい。
また、電子放射陰極18のダイヤモンド全体が、導電性を有していてもよい。或いは、表面もしくは内部に導電性ダイヤモンドを設けて、電子放射陰極18の突起部18cと導電部材16の間の導電パスを形成してもよい。導電性ダイヤモンド層の導電率等の諸特性は、電子放射陰極の電界放出特性に大きな影響を与えるので、導電性ダイヤモンド層を気相合成法によって単結晶上にエピタキシャル成長させることが好ましい。全体を導電性ダイヤモンドとする場合には、導電性ダイヤモンドを基材となる単結晶上に気相合成法によりエピタキシャル成長した後、単結晶を除去することができる。
気相合成法により、これらの不純物をドーピングしながらエピタキシャル成長を行うには、マイクロ波プラズマCVD法を適用することが好ましい。原料ガスとしては、H(水素)希釈のメタンガスを用いることが好ましい。ドーピングガスとしてはPHやHS、Bが好ましい。
上述したように、電子放射陰極18は、電子放出部は突起の先端部となる。本発明の電子放射陰極では、複数の突起(電子放出部)が存在する。電子光学系を調整することによって、使用する突起を選択することが可能である。すなわち、本発明の電子放射源を使えば、まず第一の突起を電子放出部として選択して使用し、この突起が寿命を迎えた場合に、電子光学系の調整のみで、第二の突起を電子放出部として使用することができ、全体としての電子放射源の寿命を飛躍的に向上させることが可能である。従来の電界放射型電子放射源を用いる場合に必要であった熱フラッシュ回路が不要となり、本発明の電子放射源を用いる電子ビーム機器のコスト削減に寄与できる。
[第二の実施形態]
図3は、本発明の第二の実施形態に係る電子放射源の側面図である。図3に示す電子放射源10Bは、ベース12、端子14A及び14B、導電部材16B、並びに電子放射陰極18を備えている。電子放射源10Bの構成部材のうち、ベース12及び電子放射陰極18は、図1に示した電子放射源10のものと同様の部材である。
端子14A及び端子14Bは、ベース12の第2の主面12b上に設けられており、軸線Xに対して略対称に配置されている。端子14Aには、導電部材16Bが、電気的に接続されており、当該導電部材16Bは、端子14Bと絶縁されている。
導電部材16Bは、端部16aと胴部16fとを有する金属製の棒状体である。導電部材16Bは、図1に示した導電部材16と同様の材料から構成することができる。導電部材16Bの胴部16fは、軸線Xに交差する方向に延びており、その一端は端子14Aと電気的に接続されている。導電部材16Bの端部16aは、胴部16fの他端に連続している。
この端部16aは、第1の実施の形態に係る導電部材16の端部16aと同様の構成を有しており、ねじ20との共働によって電子放射陰極18を把持することができる。
この電子放射源10Bは、上述した第一の実施形態における電子放射源10と同様の作用効果を有している。また、電子放射源10Bは、一対の端子14A、14Bを有しているので、従来型の電子放射源とコネクタを共通化することができる。
[第三の実施形態]
図4は、本発明の第三の実施形態に係る電子放射源の側面図である。図4に示す電子放射源10Cは、ベース12、端子14A及び14B、導電部材16D及び導電部材16E、電子放射陰極18を備えている。電子放射源10Cの構成部材のうち、ベース12、端子14A及び14B、並びに、電子放射陰極18は、第2の実施の形態のものと同様の部材である。
導電部材16D及び導電部材16Eは、金属製の棒状体であり、第1の実施の形態の導電部材16と同様の材料から構成されている。導電部材16D及び導電部材16Eは、軸線Xに交差する方向に延びている。導電部材16Dは、端子14Aと電子放射陰極18とを電気的に接続している。導電部材16Eは、端子14Bと電気的に接続されており、電子放射陰極18とは電気的に接続している。
導電部材16Dは、その先端に面16iを有しており、導電部材16Eは、その先端に面16jを有している。これら面16iと面16jは、互いに対面している。導電部材16D及び導電部材16Eは、面16iと面16jの間に電子放射陰極18を把持している。そのために、電子放射陰極18を把持していない状態において、面16iと面16jとの間の距離は、電子放射陰極18の幅より小さくなっている。また、導電部材16D及び導電部材16Eは、軸線Xに交差する方向に可撓性を有している。これによって、導電部材16D及び導電部材16Eは、電子放射陰極18を、適切な強度で把持することができる。
かかる電子放射源10Cは、第1の実施の形態と同様の作用・効果を有している。
[第四の実施形態]
図5は、本発明の第四の実施形態に係る電子放射源における、電子放射陰極18Bの突起部の断面図である。本実施形態では、電子放射陰極の部分以外は第三の実施形態と同様の形態をとる。
本実施形態における電子放射陰極18Bは、第一〜第三の実施形態で記載した電子放射陰極18と同様、主面18aと18bを有し、主面18aには突起18cを有する。
本実施形態においては、それに加えて絶縁層18xと金属層18yを有する。絶縁層18xは、主面18a上に、突起18cが存在しない領域の一部もしくは全部に形成される。金属層18yは、絶縁層18xを介して形成され、主面18aとは電気的に絶縁されている。
絶縁層18xは、SiOなどSiの酸化物が好適に使用可能である。金属層18yは、導電性を有し、本電子放射陰極の使用温度範囲内において剥離や融解などを起こさずに安定している材料であればよいが、たとえばMoやTa、Ti、Pt、Au,Wなどが好適に使用可能である。
突起部18cは、導電部材16Dを介して端子14Aと電気的に接続されている。一方、金属層18yは、導電部材16Eを介して端子14Bと電気的に接続されている。
この電子放射陰極18Bを用いた電子放射源10Cは、第一の実施形態と同様の作用効果を有している。さらに、金属層18yに、引出電位を印加することによって、突起部18cにより効率的に電界を印加でき、優れた電子放出特性を発揮させることが可能となる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
第三の実施の形態と同構造の電子放射源において、Ib型の高圧合成ダイヤモンド単結晶に、n型ダイヤモンド層を形成したものを、電子放出陰極とした。n型ダイヤモンド層は、水素希釈のメタンガスを原料としたマイクロ波プラズマCVD法により合成した。ドーパントとしてはPHを用いて、P(リン)を不純物として導入した。n型ダイヤモンド層中のP濃度は2.9×1019cm−3であり、室温における抵抗率は8.3×10Ωcmであった。n型ダイヤモンド層を反応性イオンエッチング法によるパターンエッチングで微細加工し、高さ約4μm、直径約3μmの突起を約100μm間隔で、1列4個を4列、合計16個形成した。また、導電部材はSUS304製とし、前記突起と電気的に接続した。ベースはステアタイト製とした。図6は、実施例1として作成した電子放射源に係る写真である。
この構成の電子放射源を、電子顕微鏡の電子放射源部に取り付け、電子放出特性を評価した。引出電圧を0.8kV,加速電圧は25kVとした。すると、初期のエミッション電流は120μAであった。この条件で約2500時間経過した後、エミッション電流は100μAまで落ちていたが、ここで電子光学系を調整することによって、またエミッション電流を120μA以上に回復させることができた。この操作を繰り返すことによって、この電子放射源における寿命は25000時間以上であることを確認した。
(実施例2)
第四の実施形態と同構造の電子放射源において、CVD法により合成した単結晶ダイヤモンドに、n型ダイヤモンド層を形成したものを、電子放出陰極とした。n型ダイヤモンド層の形成方法、特性および突起の形成方法は実施例1と同様とした。
この後、セルフアライン法により突起を露出させた状態で、絶縁層および金属層を形成した。絶縁層は、ICP−CVD法によりTEOSを原料としてSiOを形成した。金属層は、RFマグネトロンスパッタ法により、Moを形成した。金属層とn型ダイヤモンドからなる突起は電気的に絶縁され、それぞれ導電部材を介して2つの端子に電気的に接続された。
金属層に引出電圧を0.5kV印加し、加速電圧は25kVとして、実施例1と同様に電子放出特性を評価した。すると、初期エミッション電流は約180μAであった。この条件で、約2000時間経過した後、エミッション電流は約140μAまで落ちていたが、ここで電子光学系を調整することによって、再度エミッション電流は約180μA以上に個回復した。この操作を繰り返すことによって、この電子放射源における寿命は20000時間以上あることを確認した。
(比較例)
先鋭化Wの陰極を有する電界放出型電子放射源を、同様に真空容器内にセットし、その電子放出特性を評価した。引出電圧は0.7kV,加速電圧は25kVとした。10hrに1回程度の定期的な熱フラッシュによる表面汚染除去も実施した(前記実施例では実施せず)。その結果、エミッション電流は90μAであり、2000時間経過で40μA以下に低下した。電子光学系の調整を行っても回復させることはできなかった。
以上のように、本発明による電子放射源を利用すれば、初期エミッション電流、寿命のいずれをとっても比較例の従来型電子放射源に比べて優れていた。
本発明における電子放射源を搭載した電子顕微鏡は、従来陰極材料が使用されている電子顕微鏡と比較して高倍率観察が可能である。
本発明における電子放射源を搭載した電子ビーム露光機は、従来陰極材料が使用されている電子ビーム露光機と比較して微細パターンを高スループットで描画することが可能である。
本発明における電子放射源によれば、真空管や、電子ビーム分析装置、加速器、殺菌用電子線照射装置、X線発生装置、樹脂用照射装置、電子ビーム加熱装置など、電子線を使う全ての機器に使用可能な高効率電子放射源が実現される。特に電子顕微鏡や電子ビーム露光機に使用される、ダイヤモンドを用いた高輝度でエネルギー幅が狭い電子放射源が実現される。また、これらを用いて高倍率観察が可能な電子顕微鏡や、微細パターンを高スループットで描画可能な電子ビーム露光機が実現される。
本発明の第一の実施形態に係る電子放射源の側面図 図1に示す電子放射陰極および導電部材の端部を拡大して示す側面図 本発明の第二の実施形態に係る電子放射源の側面図 本発明の第三の実施形態に係る電子放射源の側面図 本発明の第四の実施形態に係る電子放射源における、電子放射陰極18Bの突起部の断面図 実施例1として作成した電子放射源に係る写真である。
符号の説明
10,10B 電子放射源
12 ベース
12a 第一の主面
12b 第二の主面
14,14A,14B 端子
16,16B,16D,16E 導電部材
16a 端部
16f 胴部
16i,j 面
18 電子放射陰極
18a 第一の主面
18b 主面
18c 突起
18x 絶縁層
18y 金属層
20 ねじ

Claims (3)

  1. 絶縁性のベースと、前記ベースに設けられた端子と、電子放射陰極と、前記電子放射陰極を把持し、かつ前記電子放射陰極と前記端子とを電気的に接続する導電部材とを備えており、前記電子放射陰極が、板状のダイヤモンドからなり、その一主面に複数の電子放出部となる突起を有することを特徴とする電子放射源。
  2. 絶縁性のベースと、前記ベースに設けられた第一の端子及び第二の端子と、電子放射陰極と、前記第一の端子に電気的に接続された第一の導電部材と、前記第二の端子に電気的に接続された第二の導電部材と、を備えており、前記電子放射陰極は、前記第一の導電部材と前記第二の導電部材との間に把持され、かつ、板状のダイヤモンドからなり、その一主面に複数の電子放出部となる突起を有することを特徴とする電子放射源。
  3. 前記電子放射陰極の突起近傍に絶縁層を介して金属電極が形成され、前記第一の導電部材は突起と電気的に接続され、前記第二の導電部材は、前記金属電極と電気的に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の電子放射源。
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