JP2007149659A - 電界放出型電子銃、電子顕微鏡、及び電子ビーム露光機 - Google Patents

電界放出型電子銃、電子顕微鏡、及び電子ビーム露光機 Download PDF

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喜之 山本
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暁彦 難波
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良樹 西林
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貴浩 今井
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Abstract

【課題】 電子放出特性の劣化を抑制可能であり、低コストな電界放出型電子銃、電子顕微鏡、及び電子ビーム露光機を提供する。
【解決手段】 本発明の一実施の形態に係る電界放出型電子銃は、(a)絶縁性のベースと、(b)ベースに設けられた端子と、(c)先鋭化された端部を有するダイヤモンド製の電界放出エミッタと、(d)電界放出エミッタを把持し、且つ、電界放出エミッタと端子とを電気的に接続する導電部材と、を備えている。一実施の形態の電子顕微鏡、及び電子ビーム露光機は、この電界放出型電子銃を備えている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電界放出型電子銃、並びに、当該電界放出型電子銃を用いた電子顕微鏡、及び電子ビーム露光機に関するものである。
電子は、マイナスの電荷を持ち、その質量は極めて小さい。したがって、電子を一方向に導くことによって得られる電子ビームは、以下のような特徴を有している。即ち、(1)電界や磁界によって、電子ビームの方向や収束度を制御することができる。(2)電界による加減速によって、広範囲なエネルギーの電子ビームが得られる。(3)電子ビームは、波長が短いので、細く絞り込むことができる。
このような電子ビームの特徴を活かした装置として、電子顕微鏡や電子ビーム露光機が広く普及している。これら装置の陰極材料には、例えば、安価な熱電子放出源が用いられている。熱電子放出源としては、W(タングステン)フィラメントや、輝度の高い電子ビームが得られるLaB等の六ホウ化物が知られている。また、高輝度でエネルギー幅の狭い電子ビームを得ることができる陰極として、先鋭化した端部(先鋭端)を有するW(タングステン)を用いた陰極(以下、「先鋭化W」という)、電界によるショットキー効果を利用したZrO/W製の陰極が知られている。
電子顕微鏡に対しては、より小さな対象物を高精度に観察したいという要求がある。また、電子ビーム露光機においては、65nmノード以細の開発が進んできている。かかる背景から、更に高輝度でエネルギー幅が狭い電子ビームを発生可能な陰極が求められている。
このような期待に応える材料の一つとして、ダイヤモンドがある。ダイヤモンドには、非特許文献1及び非特許文献2に記載されているように、電子親和力が負(NEA:Negative Electron Affinity)の状態、また、仕事関数が小さい金属と比較しても小さな正(PEA:Positive Electron Affinity)の状態が存在する。Wフィラメント、LaB6、或いはZrO/Wでは1000℃を超える高熱が必要であるのに対して、このような物性を有するダイヤモンドを用いた陰極によれば、高電流密度の電子放出が可能であり、且つ、エネルギー幅が狭く抑えられる。また、ダイヤモンドを用いた陰極は、その駆動温度が低いので、長寿命であることが期待できる。また、非特許文献3に開示されているように、先端径10nmのダイヤモンドの微細加工技術があるので、高輝度化も可能である。また、ダイヤモンドについては、上記電子親和力を有することが判明して以来、非特許文献4や特許文献1に開示の電子源が、提案されている。
特開平4-67527号公報 F.J.Himpselet al.,Phys. Rev.B.,Vol.20,Number 2(1979)624- J.Risteinet al.,New DiamondandFrontier Carbon Technology, Vol.10,No.6,(2000) 363- Y.Nishibayashiet al.,SEI TechnicalReview, 57,( 2004)31- W. B. Choiet al.,J. Vac.Sci. Technol.B 14,(1996 )2051 -
電界放出型電子銃には、先鋭化W等の冷陰極を利用した電界放出型電子銃と、ZrO/W等の電子源を1000℃程度以上に加熱して電界放出を行う熱電界放出陰極を利用した電界放出型電子銃がある。後者、即ち、熱電界放出陰極を利用した電界放出型電子銃では、電子ビームのエネルギー幅が冷陰極に比べて大きくなるので、装置の高分解能化には不十分である。一方、冷陰極を用いた電界放出型電子銃は、輝度及びエネルギー分布に関して、優れている。特に、先鋭化Wを用いた電界放出型電子銃が、エネルギー分布等の点で優れている。
先鋭化Wを陰極とする電界放出型電子銃は、量子効果によるトンネル現象を利用して、室温で電子を取り出すことが可能である。この電界放出型電子銃では、電子放出源(エミッタ)として、W(111)、W(310)、又はW(100)方位単結晶を主材料とする長さ2mm弱の先鋭端を有するチップが用いられており、当該チップがWフィラメントに取り付けられている。このエミッタと対を成す引出電極は、エミッタから数mm〜十数mm程度の距離をおいて配置されおり、エミッタ及び引出電極を収容する空間は、高真空状態に排気される。
この先鋭化Wを利用した電界放出型電子銃は、他の熱電子源等に比較して、圧倒的に電子のエネルギー幅が小さく、輝度が高いという特徴をもっている。具体的に、先鋭化Wを利用した電界放出型電子銃のエネルギー幅は、200〜300meV程度になる。したがって、電子光学系に用いられるレンズの色収差を低減できるので、先鋭化Wを有する電界放出型電子銃は、電子顕微鏡の性能向上に大きく役立っている。
しかしながら、この電界放出型電子銃は、10−8Pa程度の超高真空下で使用しなければならない。また、エミッタを瞬間的に通電加熱し、エミッタに吸着したガス分子を除去するという清浄化作業(熱フラッシュ)を定期的に行うことが必要不可欠である。
また、先鋭化Wを利用した電界放出型電子銃の電子放出特性を一定にするためには、W表面の仕事関数や表面の形状を一定に維持する必要がある。しかしながら、使用時間の経過に伴って、W表面にガス分子が吸着し、W表面の仕事関数が変化する。また、残留ガスの陽イオンがエミッタに衝突し、エミッタの形状を変化させる。その結果、先鋭化Wを用いた電界放出型電子銃では、使用時間の経過に伴い、引き出される電子ビーム電流量が減少し、最終的に電子銃が破壊されてしまうことがある。また、所定の電流量を得るために引出電圧を大きくすると、放電等が起こりやすくなり、電子銃の破壊が起こる。
エミッタに吸着したガス分子は、上述の熱フラッシュによって除去することができる。しかしながら、熱フラッシュによって半径が変化する等、先鋭端の形状が変化するので、エミッタの初期性能の長期維持が困難である。エミッタ形状の変化に対しては、逆バイアスを印加することによって形状を整えるリモルディング法が提案されている。しかしながら、先端の電界強度が測定し難いばかりでなく、制御の再現性が難しく、エミッタを初期形状に復元することは、実用的には困難である。
先鋭化Wを利用した電界放出型冷陰極は、上記の通り安定して電子ビームを取り出すために、熱フラッシュによる再生を必要不可欠としている。したがって、エミッタ取り付け用の金属は、高融点で耐熱性の高いものに限られる。また、繰り返し熱履歴が加えられるためにエミッタとエミッタ取り付け用金属間の接合部が破損し、取り付け用金属が熱膨張・熱収縮を繰り返すためにエミッタの取り付け強度が低下する。その結果、エミッタの位置がずれ、充分な電界集中が実現できずに電子放出特性が低下するなどの問題があった。
また、先鋭化Wを利用した電界放出型冷陰極は、超高真空環境を必要とするために、故障時の交換に手間を要する。また、電子銃室の汚染を防止する上でも交換の頻度はできるだけ少ないほうが好ましい。
そこで、本発明は、電子放出特性の変動、劣化を抑制可能であり、低コストな電界放出型電子銃を提供すること、ならびに当該電界放出型電子銃を備える電子顕微鏡及び電子ビーム露光機を提供することを目的としている。
本発明の第1の電界放出型電子銃は、絶縁性のベースと、ベースに設けられた端子と、先鋭化された端部を有するダイヤモンド製の電界放出エミッタと、電界放出エミッタを把持し、且つ、電界放出エミッタと端子とを電気的に接続する導電部材と、を備える。
第1の電界放出型電子銃は、エミッタにダイヤモンドを用いている。ダイヤモンドには、上述の通り、その表面が非常に小さな電子親和力を示す状態がある。この物性を活用すれば、先鋭化Wと同様、もしくは、それ以上に大電流で室温動作可能な冷陰極としての応用が期待できる。
また、本発明者らは、ダイヤモンド製のエミッタによれば、熱フラッシュによる表面清浄化が無くとも、安定した電子放出特性を維持できることを見出した。これは、ダイヤモンドの水素終端表面や酸素終端表面が、先鋭化Wに比べて非常に安定で、ガス分子による吸着が生じにくいためであると考えられる。また、ダイヤモンドは、非常に化学結合が強固であるので、陽イオンによるスパッタによる表面形状の変化に対しても、先鋭化Wに比べて、形状変化を生じにくい。したがって、熱フラッシュによる電子放出特性の回復動作は不要である。その結果、熱フラッシュ回路が不要となり、電界放出型電子銃のコストが低減される。
また、第1の電界放出型電子銃は、ベースに支持された導電部材によって、電界放出エミッタを把持している。なお、導電部材によるエミッタの把持とは、ロウ付け、半田付け等によってエミッタを導電部材に固定する方法とは異なり、機械的固定によるものである。この機械的固定には、ネジやバネでエミッタを固定する方法が含まれる。例えば、導電部材としての金属棒の先端に溝を設け、当該溝に電界放出エミッタをはめ込む方法や、溝を画成する壁に孔を設け、はめ込んだ電界放出エミッタをネジで直接固定する方法が利用可能である。かかる機械的固定によれば、不純物混入による真空度劣化、電子銃の特性劣化を防止可能である。また、機械的固定によれば、部品点数を減らせるので、製造コストを安価にすることができる。
また、ダイヤモンド製のエミッタは、従来の電子銃に比して低温での動作があり、熱フラッシュが不要である。したがって、導電部材は、電界放出エミッタを把持して、その位置を固定するための機械的強度及び剛性を有していればよい。例えば、導電部材には、ステンレス、銅、アルミなどが、好適に適用される。
なお、第1の電界放出型電子銃は、従来型の電子銃とコネクタを共通化するために、端子を二つ有していてもよい。
本発明の第2の電界放出型電子銃は、上述の第1の電界放出型電子銃の構成要素に加えて、ベースに設けられた別の端子と、先鋭化された端部を有するダイヤモンド製の別の電界放出エミッタと、別の電界放出エミッタを把持し、且つ、別の電界放出エミッタと別の端子とを電気的に接続する別の導電部材とを更に備えている。即ち、第2の電界放出型電子銃は、導電部材を介してベースに支持された電界放出エミッタを二組以上備えている。なお、二組の電界放出エミッタを備える構成によれば、コネクタを、従来型の電子銃のコネクタと共通化できるので好ましい。
また、電界放出型電子銃は、超高真空状態に保たれる必要があり、大気にリークすると超高真空状態への復帰に時間を要する。第2の電界放出型電子銃は、二組以上の電界放出エミッタを備えているので、電子銃の寿命を2倍以上に延ばすことができる。その結果、電界放出エミッタを含む電子銃の交換頻度を1/2以下に、低減することができる。したがって、電子銃の交換に要する手間も削減される。
本発明の第3の電界放出型電子銃は、絶縁性のベースと、ベースに設けられた第1の端子及び第2の端子と、先鋭化された端部を有するダイヤモンド製の電界放出エミッタと、第1の端子に電気的に接続された第1の導電部材と、前記第2の端子に電気的に接続された第2の導電部材とを備えている。第3の電界放出型電子銃では、電界放出エミッタは第1の導電部材と第2の導電部材の間に把持されており、第1の端子と第2の端子の電気的機能が相互に異なる。
第3の電界放出型電子銃によれば、第1の電界放出型電子銃と同様に、熱フラッシュ等によることなく、安定した電子放出特性を維持することができる。また、第1の導電部材と第2の導電部材とによって電界放出エミッタが把持されているので、不純物混入による真空度劣化、電子銃の特性劣化を防止可能である。また、部品点数を減らせるので、製造コストを安価にできる。
本発明の第4の電界放出型電子銃は、第3の電界放出型電子銃と同様の構成要素を備えており、かつ、第1の端子と電界放出エミッタの間の電気抵抗をR1、第2の端子と電界放出エミッタの間の電気抵抗をR2としたとき、R1×10<R2である。
本発明の第5の電界放出型電子銃は、第3もしくは第4に記載の電界放出型電子銃と同様の構成要素を備え、かつ、第1の端子と電界放出エミッタの間の電気抵抗をR1、第2の端子と電界放出エミッタの間の電気抵抗をR2としたとき、R1×10<R2かつ1×10Ω<R1<1×10Ωかつ1×10Ω<R2<1×1010Ωである。
第3、第4、第5の電界放出型電子銃は、2つの端子の電気的機能が互いに異なることから、例えば長時間動作させて電子放出特性が劣化してきた時に、比較的低抵抗な端子に切り替えて使用することによって、電子銃全体としての寿命、安定性向上に寄与することができる。
本発明の第6の電界放出型電子銃は、第3、第4の電界放出型電子銃と同様の構成要素を備えており、かつ、第1の端子と電界放出エミッタの間の電気抵抗をR1、第2の端子と電界放出エミッタの間の電気抵抗をR2としたとき、R1<1ΩかつR2>1×1010Ωである。
第6の電界放出型電子銃によれば、R2が1×1010Ω以上であることから、2つの端子間に短絡電流が流れることを防止できるので、第1および第2の導電部材や、電界放出エミッタが過熱されることを防止できる。
本発明の第7の電界放出型電子銃は、第6の電界放出型電子銃と同様の構成要素を備えており、電界放出エミッタは、端部を除く表面に第一の領域及び第2の領域を含んでおり、第2の領域には絶縁層を介して導電層が設けられており、導電層は電界放出エミッタと電気的に絶縁されており、第1の導電部材は、第1の領域において電界放出エミッタと電気的に接続されており、第2の導電部材は、導電層と電気的に接続されている。
この第7の電界放出型電子銃によれば、導電層を引き出し電極として利用することにより、電子銃の小型化が図れる。絶縁層には例えばSiOのようなSi系酸化物等が好適に使用可能である。また、導電層には、例えばMoやWなどの耐熱性の高い金属が好適に使用可能である。
本発明の第8の電界放出型電子銃は、第6、第7の電界放出型電子銃の構成要素に加えて、絶縁性のブロックであって第2の導電部材と電界放出エミッタの間に設けられたブロックを備えている。
本発明の第9の電界放出型電子銃は、第3の電界放出型電子銃と同様の構成要素を備えており、第2の端子と電界放出型エミッタの間の電気抵抗をR2としたとき、R2>1×1010Ωであり、PTC特性を有するブロックであって、第1の導電部材と電界放出エミッタとの間に設けられた該ブロックを更に備える。
PTC特性とは、電気抵抗が正の温度特性を持つ温度領域を有するもののことをいう。特に、室温から300℃までの温度領域において、1桁以上抵抗値が上昇するものが好ましい。例えば、BaTiOにYやLaを混入させた材料が好適に利用できる。
この第9の電界放出型電子銃によれば、PTC特性を有するブロックを、第1の導電部材と電界放出エミッタとの間に用いることで、仮にエミッション電流が流れすぎ、電界放出エミッタの温度が上昇しても、抵抗値が上昇するのでエミッション電流の抑制をすることができる。逆にエミッション電流が減りすぎても、電界放出エミッタの温度が低下するので抵抗値は下がり、エミッション電流の維持に効果的である。また、R2が1×1010Ω以上であることから、2つの端子間に短絡電流が流れることを防止できるので、第1および第2の導電部材や、電界放出エミッタが過熱されることを防止できる。
本発明の第10の電界放出型電子銃は、第9の電界放出型電子銃と同様の構成要素を備えており、かつ、電界放出エミッタは、端部を除く表面に第1の領域及び第2の領域を含んでおり、第2の領域には絶縁層を介して導電層が設けられており、導電層は電界放出エミッタと電気的に絶縁されており、第1の導電部材は、第1の領域において電界放出エミッタとPTC特性を有するブロックを挟んで接続されており、第2の導電部材は、導電層と電気的に接続されている。
この第10の電界放出型電子銃によれば、導電層を引き出し電極として利用することにより、電子銃の小型化が図れる。絶縁層には例えばSiOのようなSi系酸化物等が好適に使用可能である。また、導電層には、例えばMoやWなどの耐熱性の高い金属が好適に使用可能である。
本発明の第11の電界放出型電子銃は、第9、10の電界放出型電子銃同様の構成要素を備えており、かつ、絶縁性のブロックであって、第2の導電部材と電界放出エミッタの間に設けられたブロックを備えている。
上述した第1〜11の電界放出型電子銃では、導電部材が、インバー、もしくはコバール、もしくはインコネル製であることが好ましい。インバー、スーパーインバー、コバール、インコネルといった金属は、キュリー点以下の温度で自発体積磁歪による体積変化が生じる。これが格子振動による体積変化を打ち消す方向に作用するため、非常に小さな熱膨張係数を示す。したがって、これらの金属でできた導電部材によれば、電界放出エミッタの端部、すなわち先鋭端に印加される電界が安定して、安定した電子放出特性が得られる。
本発明の別の側面は、電子顕微鏡に関するものである。本発明の電子顕微鏡は、電子銃として、上述した第1〜11の電界放出型電子銃を備えている。また、本発明のさらに別の側面は、電子ビーム露光機に関するものである。本発明の電子ビーム露光機は、電子銃として、上述した第1〜11の電界放出型電子銃を備えている。
以上説明したように、本発明によれば、電子放出特性の変動、劣化を抑制可能であり、低コストな電界放出型電子銃、電子顕微鏡、及び電子ビーム露光機が提供される。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。図1に示す電界放出型電子銃10は、ベース12と、端子14と、導電部材16と、電界放出エミッタ18と、を備えている。
ベース12は、導電部材16を支持する部材であり、絶縁性を有している。ベース12には、アルミナ又は窒化珪素といったセラミック製であることができる。
図1に示すベース12は、第1の主面12a及び第2の主面12bを有する板状を成している。第1の主面12a及び第2の主面12bは、軸線Xに交差する方向に延びている。
ベース12は、第1の主面12aから第2の主面12bに貫通するように取り付けられた導電部材16を支持している。ベース12の第2の主面12bには、端子14が設けられており、この端子14と導電部材16が電気的に接続されている。
導電部材16は、端子14と電界放出エミッタ18とを電気的に接続するための部材である。この導電部材16は、金属製の棒状体である。導電部材16には、熱膨張係数の小さなインバー又はコバールを好適に用いることができる。なお、導電部材16は、例えば、ステンレス、銅、アルミ等から構成されていてもよい。
また、導電部材16は、軸線X方向に延びており、その端部16aによって、電界放出エミッタ18の胴部を保持している。
図2は、図1に示す電界放出エミッタ及び導電部材の端部を拡大して示す側面図である。具体的に、導電部材16の端部16aには、面16b及び面16cによって画成された溝が設けられている。面16b及び面16cは、軸線X方向に延びる面に沿っており、互いに対面している。これら面16bと面16cの間の距離は、電界放出エミッタ18の基部の幅より大きい。また、面16bを含む壁16dには、ねじ孔16eが設けられている。電界放出エミッタ18は、ねじ孔16eに挿入されるねじ20の先端面と面16cとの間に把持されている。なお、導電部材の端部は、電界放出エミッタを機械的に固定可能であれば、例えばバネ構造等の種々の構造を採用可能である。
電界放出エミッタ18は、ダイヤモンド製のエミッタである。この電界放出エミッタ18は、軸線X方向に延びており、当該軸線方向へ順に上述の胴部、及び端部18aを有している。この端部18aは、先鋭化されている。
図2に示す電界放出エミッタ18は、内部に単結晶ダイヤモンドを含んでいる。単結晶ダイヤモンドは、天然に産するものの他、高温高圧法、気相合成法などによって人工的に合成されるものであってもよい。
また、電界放出エミッタ18は、端部18aへの導電パスのために、導電部材16との接触部と端部18aとの間に、導電性ダイヤモンドを含んでいる。本実施の形態では、電界放出エミッタ18は、その表層18bに導電性ダイヤモンドを含んでいる。
ダイヤモンドに導電性をもたせるための手法としては、公知のドーピング技術を利用可能である。例えば、n型不純物、例えばP(リン)、S(硫黄)をドーピングすることによって、優れたn型導電性を呈するダイヤモンドを得ることができる。この導電性ダイヤモンドには、n型不純物(たとえばP、S(硫黄))が、2×1015−3以上、より好ましくは2×1019cm−3含まれていることが好ましい。この場合には、ダイヤモンドの伝導帯に電子が供給されるので、実質的に仕事関数が小さくなり、高電流密度での電子放射が可能となる。
なお、p型不純物、例えばB(ホウ素)を用いることによって、p型導電性を呈する導電性ダイヤモンドが設けられていてもよい。
また、電界放出エミッタ18のダイヤモンド全体が、導電性を有していてもよい。或いは、表面もしくは内部に導電性ダイヤモンドを設けて、電界放出エミッタ18の端部18aと導電部材16の間の導電パスを形成してもよい。導電性ダイヤモンド層の導電率等の諸特性は、電界放出エミッタの電界放出特性に大きな影響を与えるので、導電性ダイヤモンド層を気相合成法によって単結晶上にエピタキシャル成長させることが好ましい。全体を導電性ダイヤモンドとする場合には、導電性ダイヤモンドを基材となる単結晶上に気相合成法によりエピタキシャル成長した後、単結晶を除去することができる。
気相合成法により、これらの不純物をドーピングしながらエピタキシャル成長を行うには、マイクロ波プラズマCVD法を適用することが好ましい。原料ガスとしては、H2(水素)希釈のメタンガスを用いることが好ましい。ドーピングガスとしてはPH3やH2S、B2H6が好ましい。
以下、電界放出型電子銃10を備える電子放出装置について説明する。図3は、図1に示す電界放出型電子銃を備える電子放出装置の構成を概略的に示す図である。図3に示す電子放出装置30は、電界放出型電子銃10と、引出電極32と、加速電極34と、容器36と、電源38と、電源40とを備えている。
引出電極32は、電界放出エミッタ18から電子を放出させるための電極である。引出電極32は、開口32aを有する円盤状を成しており、開口32aが電界放出エミッタ18の端部18aと対向するように設けられている。この引出電極32は、電源38の正極に電気的に接続されており、当該電源38の負極には端子14が電気的に接続されている。
加速電極34は、電界放出エミッタ18から放出された電子を加速するための電極である。加速電極34は、開口34aを有する円盤状を成しており、開口34aが電界放出エミッタ18の端部18aと対向するように設けられている。加速電極34は、電源40の正極に電気的に接続されており、当該電源40の負極には端子14が電気的に接続されている。
容器36は、電界放出型電子銃10、引出電極32、及び加速電極34を収容する真空の空間を提供する部材である。この電子放出装置30では、容器36の内部が真空状態とされており、引出電極32と電界放出エミッタ18との間の電界によって、電界放出エミッタ18の端部18aから電子が放出される。この電子は、加速電極34による電界によって、加速されて、放出される。
以下、電界放出型電子銃10及び電子放出装置30の作用・効果について説明する。上述したように、電界放出型電子銃10は、ダイヤモンド製の電界放出エミッタ18を有しているので、熱フラッシュ等による表面洗浄化が無くとも安定した電子放出特性を維持することができる。また、熱フラッシュ回路が不要であるので、電界放出型電子銃10は、安価なデバイスとなっている。
また、電界放出エミッタ18は、熱フラッシュが不要であり且つ低温動作が可能である。したがって、導電部材16による把持によって、電界放出エミッタ18を安定的に固定することができる。また、導電部材16による把持によって電界放出エミッタ18が固定されているので、不純物混入による容器36内の真空度劣化、電界放出型電子銃10の特性劣化が防止される。更に、導電部材16による把持によって電界放出エミッタ18を固定することが可能であるので、電界放出型電子銃10の部品点数を削減し、製造コストを安価にすることができる。
[第2の実施の形態]
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。図4に示す電界放出型電子銃10Bは、ベース12、端子14A及び14B、導電部材16B、並びに電界放出エミッタ18を備えている。電界放出型電子銃10Bの構成部材のうち、ベース12及び電界放出エミッタ18は、電界放出型電子銃10のものと同様の部材である。
端子14A及び端子14Bは、ベース12の第2の主面12b上に設けられており、軸線Xに対して略対称に配置されている。端子14Aには、導電部材16Bが、電気的に接続されており、当該導電部材16Bは、端子14Bと絶縁されている。
導電部材16Bは、端部16aと胴部16fとを有する金属製の棒状体である。導電部材16Bは、導電部材16と同様の材料から構成することができる。導電部材16Bの胴部16fは、軸線Xに交差する方向に延びており、その一端は端子14Aと電気的に接続されている。導電部材16Bの端部16aは、胴部16fの他端に連続している。
この端部16aは、第1の実施の形態に係る導電部材16の端部16aと同様の構成を有しており、ねじ20との共働によって電界放出エミッタ18を把持することができる。
図5は、電界放出型電子銃10Bを備える電子放出装置30Bの構成を概略的に示す図である。図5に示す電子放出装置30Bは、第1の実施の形態と同様に、引出電極32、加速電極34、容器36、電源38、及び電源40を備えており、更に電界放出型電子銃10Bを備えている。
電子放出装置30Bでは、電界放出型電子銃10Bの端子14A及び端子14Bが、電源38及び40それぞれの負極に電気的に接続されている。
かかる電界放出型電子銃10B、及び電子放出装置30Bは、上述した第1の実施形態と同様の作用・効果を有している。また、電界放出型電子銃10Bは、一対の端子14A及び14Bを有しているので、従来型の電子銃とコネクタを共通化することができる。
[第3の実施の形態]
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。図6に示す電界放出型電子銃10Cは、ベース12、端子14A及び14B、二つの導電部材16B、並びに、二つの電界放出エミッタ18を備えている。電界放出型電子銃10Cの構成部材のうち、ベース12、端子14A及び14B、導電部材16Bのそれぞれ、電界放出エミッタ18のそれぞれは、第2の実施の形態のものと同様の部材である。
図6に示すように、二つの導電部材16Bは、端子14A及び端子14Bにそれぞれ接続されている。導電部材16Bそれぞれの胴部16fは、軸線Xに交差する方向に延びており、端部16aに連続している。導電部材16Bそれぞれの端部16aには、第1の実施の形態と同様に、電界放出エミッタ18が把持されている。
図7は、図6に示す電界放出型電子銃を備える電子放出装置の構成を概略的に示す図である。図7に示す電子放出装置30Cは、第2の実施の形態と同様に、引出電極32、加速電極34、容器36、電源38、及び電源40を備えており、更にスイッチ42及び電界放出型電子銃10Cを備えている。
この電子放出装置30Cでは、スイッチ42によって、電源38の負極及び電源40の負極に、端子14A及び端子14Bの一方を電気的に接続可能になっている。
かかる電界放出型電子銃10C、及び電子放出装置30Cは、第2の実施の形態と同様の作用・効果を有している。また、電界放出型電子銃10Cは、二つの電界放出エミッタ18を有しているので、電界放出エミッタ18を一つ有する電子銃に比べて、その寿命を2倍に延ばすことができる。その結果、電子放出装置30Cにおける電子銃の交換に要する手間が削減される。
[第4の実施の形態]
図8は、本発明の第4の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。図8に示す電界放出型電子銃10Dは、ベース12、端子14A、及び端子14B、導電部材16D、及び導電部材16E、並びに電界放出エミッタ18を備えている。電界放出型電子銃10Dの構成部材のうち、ベース12、端子14A、14Bのそれぞれは、第2の実施の形態と同様の部材である。
導電部材16D、16Eは、金属製の棒状体であり、第1の実施の形態の導電部材16と同様の材料から構成されている。導電部材16D,16Eは軸線Xに交差する方向に延びている。
導電部材16Dと電界放出エミッタ18との間に、抵抗体ブロック110Aが設けられている。また、導電部材16Eと電界放出エミッタの間に、抵抗体ブロック110Bが設けられている。このブロック110A、110Bは、セラミック系の部材や、カーボン系の部材であることができる。
端子14Aは、導電部材16D,抵抗体ブロック110Aを介して電界放出エミッタ18に接続される。端子14Bは、導電部材16E、抵抗体ブロック110Bを介して電界放出エミッタ18に接続される。端子14Aと電界放出エミッタ18との間の電気抵抗をR1とし端子14Bと電界放出エミッタ18との間の電気抵抗をR2とすると、R1×10<R2かつ1×10Ω<R1<1×10Ωかつ1×10Ω<R2<1×1010Ωとなっている。
電界放出型冷陰極からの電子放出電流は、電界放出エミッタの表面状態等に大きく影響を受けるため、他のタイプの電子銃に比べて安定性に劣る。直列に抵抗成分を挿入した場合には、電子放出電流が小さくなると、挿入した抵抗成分における電圧降下が小さくなり、相対的に電子放出部にかかる電界が上昇し、電子放出電流を上昇させる。逆に、電子放出電流が大きくなると、挿入した抵抗成分における電圧降下が大きくなるため、電子放出部にかかる電圧が小さくなり、電子放出電流が小さくなる。このように、直列に抵抗成分を導入すると、電子放出電流を安定化させる効果がある。ここで挿入すべき抵抗成分の抵抗値は、それぞれの電界放出エミッタの製造上のばらつきがあるので、電子ビーム装置側に組み込むのではなく、各エミッタごとに最適な抵抗値を有するブロックを挿入することが好ましい。
また、長時間動作させることによって、徐々に電界放出エミッタ18の放出特性は劣化が進行する。そこで、端子14Aと端子14Bで、電界放出エミッタ18までの抵抗値を差をつけておくことによって、動作初期は端子14Aを使用し、その後端子14Bに切り替えることによって、電界放出エミッタ18の寿命を延ばすことが可能となる。ここで、端子14Aと端子14Bで、1桁以上の抵抗値の差を設けておくことが好ましい。それ以下だと、寿命の延長効果は十分ではない。
電気抵抗値の範囲は、小さいほうのR1は1×10Ω以上が好ましい。1×10Ω未満だと、電流抑制の効果が小さくなりすぎる。大きいほうのR2は、1×1010Ω以下が好ましい。1×1010Ωを超えると、電子放出電流の絶対値が小さくなってしまう。
導電部材16Dは、その先端に面16iを有しており、導電部材16Eは、その先端に面16jを有している。これら面16i、16jは、互いに対面している。導電部材16D及び導電部材16Eは、面16i、16jの間に電界放出エミッタ18とブロック110A,110Bを把持している。そのために電界放出エミッタ18とブロック110A,110Bを把持しない状態において、面16iと16jの間の距離は、電界放出エミッタ18の幅とブロック110A,110Bの幅の和よりも小さくなっている。また、導電部材16D及び導電部材16Eは、軸線Xに交差する方向に可撓性を有している。これによって、導電部材16D,16Eは、電界放出エミッタ18およびブロック110A,110Bを、適切な強度を把持することができる。
図9は、図8に示す電界放出型電子銃を備える電子放出装置の構成を概略的に示す図である。図9に示す電子放出装置30Dは、第2、3の実施の形態と同様に、引出電極32、加速電極34、容器36、電源38、及び電源40を備えており、さらにスイッチ42と電界放出型電子銃10Dを備えている。この電子放出装置30Dでは、スイッチ42によって、電源38の負極及び電源40の負極に、端子14A及び14Bの一方を電気的に接続可能となっている。
かかる電界放出型電子銃10D、及び電子放出装置30Dは、第2の実施の形態と同様の作用・効果を有している。また、電界放出型電子銃10Dは、二つの抵抗成分を持った回路を有しているので、電界放出エミッタの劣化に伴う動作条件の調整を容易に行うことができ、その動作寿命を延ばすことが可能となる。その結果、電子放出装置30Dにおける電子銃の交換に要する手間が削減される。
[第5の実施の形態]
図10は、本発明の第5の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。図10に示す電界放出型電子銃10Eは、ベース12、端子14A及び14B、導電部材16D及び導電部材16E、電界放出エミッタ18、並びにブロック44を備えている。電界放出型電子銃10Eの構成部材のうち、ベース12、端子14A及び14B、並びに、電界放出エミッタ18は、第2の実施の形態のものと同様の部材である。
導電部材16D及び導電部材16Eは、金属製の棒状体であり、第1の実施の形態の導電部材16と同様の材料から構成されている。導電部材16D及び導電部材16Eは、軸線Xに交差する方向に延びている。
導電部材16Dは、端子14Aと電界放出エミッタ18とを電気的に接続している。導電部材16Eは、端子14Bと電気的に接続されており、電界放出エミッタ18とは絶縁されている。
本実施の形態では、導電部材16Eと電界放出エミッタ18との間に絶縁性のブロック44が設けられている。このブロック44は、セラミック製の部材であることができる。このセラミックとしては、アルミナ系セラミックや、窒化珪素系セラミック等が、絶縁性及び機械的強度の点で優れている。また、このブロック44は、テフロン(登録商標)樹脂やポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等で構成されていてもよい。端子14Aと電界放出エミッタ18の間の電気抵抗をR1とし、端子14Bと電界放出エミッタ18の間の電気抵抗をR2としたとき、R1<1ΩかつR2>1×1010Ωとなっている。
導電部材16Dは、その先端に面16iを有しており、導電部材16Eは、その先端に面16jを有している。これら面16iと面16jは、互いに対面している。導電部材16D及び導電部材16Eは、面16iと面16jの間に電界放出エミッタ18とブロック44を把持している。そのために、電界放出エミッタ18とブロック44を把持していない状態において、面16iと面16jとの間の距離は、電界放出エミッタ18の幅とブロック44の幅との和より小さくなっている。また、導電部材16D及び導電部材16Eは、軸線Xに交差する方向に可撓性を有している。これによって、導電部材16D及び導電部材16Eは、電界放出エミッタ18及びブロック44を、適切な強度で把持することができる。
図11は、図10に示す電界放出型電子銃を備える電子放出装置の構成を概略的に示す図である。図11に示す電子放出装置30Eは、第2の実施の形態と同様に、引出電極32、加速電極34、容器36、電源38、及び電源40を備えており、さらに電界放出型電子銃10Eを備えている。電子放出装置30Eでは、電源38の負極及び電源40の負極が、端子14A及び端子14Bに電気的に接続されている。
かかる電界放出型電子銃10E,及び電子放出装置30Eは、第2の実施の形態と同様の作用・効果を有している。また、電界放出型電子銃10Eによれば、端子14Aと端子14Bの間に短絡電流が流れることを防止し、導電部材16D及び16Eや電界放出エミッタ18が加熱されることを防止することができる。また、R2が1×1010Ω以上であることから、2つの端子間に短絡電流が流れることを防止できるので、導電部材16D,16Eや、電界放出エミッタ18が過熱されることを防止できる。
[第6の実施の形態]
図12は、本発明の第6の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。図13は、図12に示す電界放出エミッタ及び導電部材の端部を拡大して示す側面図である。図12及び図13に示す電界放出型電子銃10Fは、ベース12、端子14A及び14B、導電部材16D及び16E、電界放出エミッタ18、絶縁層46、並びに導電層48を備えている。これら電界放出型電子銃10Fの構成部材のうち、ベース12、端子14A及び14B、導電部材16D及び16E、電界放出エミッタ18は、第5の実施の形態のものと同様の部材である。
図13に示すように、電界放出エミッタ18は、端部18aの表面を除く表面が、第1の領域18fと第2の領域18eに区画されている。第2の領域18eには、絶縁層46を介して導電層48が設けられている。絶縁層46には、例えば、SiOのようなSi系酸化物等を用いることができる。また、導電層48には、例えば、MoやWを用いることができる。
第1の領域18fは、導電部材16Dを電界放出エミッタ18と電気的に接続するための領域である。第1の領域18fには、絶縁層46が設けられておらず、導電部材16Dの先端の面16iが接している。一方、導電部材16Eの先端の面16jは、導電層48に接している。
この電界放出型電子銃10Fでは、導電部材16Dの面16iと導電部材16Eの面16jの間に電界放出エミッタ18が把持されている。電界放出エミッタ18を把持していない状態においては、面16iと面16jとの間の距離が、電界放出エミッタ18の幅と絶縁層46の層厚と導電層48の層厚の和より小さくなっている。また、導電部材16D及び導電部材16Eは、軸線Xに交差する方向に可撓性を有している。これによって、導電部材16D及び導電部材16Eは、電界放出エミッタ18を適度な強度で把持することができる。
図14は、図12に示す電界放出型電子銃を備える電子放出装置の構成を概略的に示す図である。図14に示す電子放出装置30Fは、第1の実施の形態と同様に、加速電極34、容器36、電源38、及び電源40を備えており、更に電界放出型電子銃10Fを備えている。
電子放出装置30Fは、引出電極32を有しておらず、導電層48が引出電極として用いられている。具体的に、電子放出装置30Fでは、電源38の正極が導電部材16Eを介して導電層48に電気的に接続された端子14Bに接続されている。また、電源38の負極が端子14Aに接続されている。したがって、導電層48と端部18aとの間に生じる電界によって、端部18aから電子が放出される。
かかる電界放出型電子銃10F,及び電子放出装置30Fは、第5の実施の形態と同様の作用・効果を有している。また、導電層48を引出電極として用いることができるので、電界放出型電子銃10Fの小型化が実現され、更に、電子放出装置30Fの小型化及び低コスト化が実現される。
[第7の実施の形態]
図15は、本発明の第7の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。図16は、図15に示す電界放出エミッタ及び導電部材の端部を拡大して示す側面図である。図15及び図16に示す電界放出型電子銃10Gは、ベース12、端子14A及び14B、導電部材16D及び16E、電界放出エミッタ18、絶縁層46、導電層48、ブロック44、並びにワイヤ50を備えている。これら電界放出型電子銃10Gの構成部材のうち、ベース12、端子14A及び14B、導電部材16D及び16E、電界放出エミッタ18、絶縁層46、並びに導電層48は、第6の実施の形態と同様の要素である。
電界放出型電子銃10Gでは、導電部材16Eの先端の面16jと導電層48との間に絶縁性のブロック44が設けられている。また、導電部材16Eと導電層48とがワイヤ50によって電気的に接続されている。
導電部材16Dと導電部材16Eは、面16iと面16jとの間に、電界放出エミッタ18及びブロック44を把持している。電界放出型電子銃10Gでは面16iと面16jとの距離が、電界放出エミッタ18の幅と絶縁層46の層厚と導電層48の層厚とブロック44の幅との和より小さくなっている。また、導電部材16Dと導電部材16Eは、軸線Xに交差する方向に可撓性を有している。これによって、導電部材16D及び導電部材16Eは、電界放出エミッタ18及びブロック44を適度な強度で把持することができる。
図17は、図15に示す電界放出型電子銃を備える電子放出装置の構成を概略的に示す図である。図17に示す電子放出装置30Gは、第6の実施の形態と同様に、加速電極34、容器36、電源38、及び電源40を備えており、更に電界放出型電子銃10Gを備えている。
かかる電界放出型電子銃10G、及び電子放出装置30Gは、第6の実施の形態と同様の作用・効果を有している。また、絶縁性ブロック44を備えているので、導電部材16Eと電界放出エミッタ18との絶縁性がより高められている。
[第8の実施の形態]
図18は、本発明の第8の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。図19は、図18に示す電界放出エミッタ及び導電部材の端部を拡大して示す側面図である。図18及び図19に示す電界放射型電子銃10Hは、ベース12、端子14A及び14B,導電部材16D及び16E,電界放出エミッタ18、絶縁層46、ならびに導電層48、PTC特性を有するブロック200を備える。これらの電界放出型電子銃10Hの構成部材のうち、ベース12、端子14A及び14B,導電部材16D及び16E、電界放出エミッタ18は、第5の実施の形態のものと同様の部材である。
図19に示すように、電界放出エミッタ18は、端部18aの表面を除く表面が、第1の領域18fと第2の領域18eに区画されている。第2の領域18eには、絶縁層46を介して導電層48が設けられている。絶縁層46には、例えば、SiOのようなSi系酸化物等を用いることができる。また導電層48には、例えばMoやWを用いることができる。
第1の領域18fは、導電部材16Dを電界放出エミッタ18と、PTC特性を有するブロック200を介して接続される箇所である。第1の領域18fには、絶縁層46が設けられていない。導電部材16Dの先端の面16iは、PTC特性を有するブロックの表面200aに接している。一方、PTC特性を有するブロックの表面200aの対面200bは、第1の領域18fに接している。さらに、導電層48には、導電部材16Eの先端の面16jが接している。
ブロック200におけるPTC特性とは、室温から300℃までの温度領域において、その抵抗値が1桁以上上昇する領域を持つものである。例えば、BaTiOにYやLaを混入させ、焼成したものが好適に使用できる。
この電界放出型電子銃10Hによれば、PTC特性を有するブロック200を、導電部材16Dと電界放出エミッタ18との間に用いることで、仮にエミッション電流が流れすぎ、電界放出エミッタ18の温度が上昇しても、抵抗値が上昇するので、エミッション電流の抑制をすることができる。逆にエミッション電流が減りすぎても、電界放出エミッタ18の温度が低下するので抵抗値は下がり、エミッション電流の維持に効果的である。また、R2が1×1010Ω以上であることから、2つの端子間14A,14Bに短絡電流が流れることを防止できるので、導電部材16D,16Eや、電界放出エミッタ18が過熱されることを防止できる。
図20は、図18に示す電界放出型電子銃を備える電子放出装置の構成を概略的に示す図である。図20に示す電子放出装置30Hは、第6の実施の形態と同様に、加速電極34、容器36、電源38、及び電源40を備えており、更に電界放出型電子銃10Hを備えている。
電子放出装置30Hは、引出電極32を備えておらず、導電層48が引出電極として機能する。具体的に、電子放出装置30Hでは、電極38の正極が導電部材16Eを介して導電層48に電気的に接続された端子14Bに接続されている。また、電源38の負極が端子14Aに接続されている。したがって、導電層48と端部18aとの間に生じる電界によって、端部18aから電子が放出される。
かかる電界放出型電子銃10H、及び電子放出装置30Hは、第6の実施の形態と同様の作用・効果を有している。また、導電層48を引出電極として用いることができるので、電界放出型電子銃10Hの小型が実現され、更に、電子放出装置30Hの小型化及び低コスト化が実現される。また、PTCサーミスタの効果によってその電子放出電流の変動を抑制させることができる。
[第9の実施の形態]
図21は、本発明の第9の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。図22は、図21に示す電界放出エミッタ及び導電部材の端部を拡大して示す側面図である。図21及び図22に示す電界放出型電子銃10Iは、ベース12、端子14A及び14B、導電部材16D及び16E,電界放出エミッタ18、ならびにブロック44及びPTC特性を有するブロック200を備える。これら電界放出型電子銃10Iの構成部材のうち、ベース12、端子14Aおよび14B,導電部材16D及び16E,電界放出エミッタ18、PTC特性を有するブロック200は、第8の実施の形態と同様の部材である。
本実施の形態では、導電部材16Eと電界放出エミッタ18の間に絶縁性のブロック44が設けられている。このブロック44は、セラミックの部材であることができる。このセラミックとしては、窒化珪素系セラミックやアルミナ系セラミック等が、絶縁性及び機械的強度等の観点で優れている。また、このブロック44は、テフロン(登録商標)樹脂やポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等で構成されてもよい。
図23は、図21に示す電界放出型電子銃を備える電子放出装置の構成を概略的に示す図である。図23に示す電子放出装置30Iは、第5の実施の形態と同様に、引出電極32、加速電極34、容器36、電源38、及び電源40を備え、さらに電界放出型電子銃10Iを備える。電子放出装置30Iでは、電源38の負極及び電源40の負極が、端子14A及び14Bに電気的に接続されている。
かかる電界放出型電子銃10I、及び電子放出装置30Iは、第5の実施の形態と同様の作用、効果を有している。また、電界放出型電子銃10Iによれば、端子14Aと端子14Bの間に短絡電流が流れることを防止し、導電部材16D及び16Eが過熱することを防止できる。また、PTCサーミスタの効果によってその電子放出電流の変動を抑制させることができる。
[第10の実施の形態]
図24は、本発明の第10の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。図25は、図24に示す電界放出エミッタ及び導電部材の端部を拡大して示す側面図である。図24及び25に示す電界放出型電子銃10Jは、ベース12、端子14A及び14B,導電部材16D及び16E,電界放出エミッタ18、絶縁層46、導電層48、ブロック44、ワイヤ50、ならびにPTC特性を有するブロック200を備える。これらの電界放出型電子銃10Jの構成部材のうち、ワイヤ50以外の要素は第9の実施の形態と同様の要素であり、ワイヤ50は第7の実施の形態と同様の要素である。
電界放出型電子銃10Jでは、導電部材16Eの先端の面16jと導電層48の間に、絶縁性のブロック44が設けられている。また、導電部材16Eと導電層48が、ワイヤ50によって電気的に接続されている。さらに、導電部材16Dの先端の面16iが、PTC特性を有するブロック200の表面200aと接し、電界放出エミッタの18fとPTC特性を有するブロック200の表面200bが接している。
図26は、図24に示す電界放出型電子銃を備える電子放出装置の構成を概略的に示すものである。図26に示す電子放出装置30Jは、第9の実施の形態と同様に、加速電極34、容器36、電源38、及び電源40を備えており、更に電界放出型電子銃10Jを備えている。
かかる電界放出型電子銃10J、及び電子放出装置30Jは、第8、9の実施の形態と同様の作用効果を有している。また、絶縁性ブロック44と絶縁層46を有しているので、導電部材16Eと電界放出エミッタ18との絶縁性がより高められている。
以上、本発明の好適な実施の形態について、説明した。これら実施の形態に係る電界放出方電子銃は、電子顕微鏡や電子ビーム露光機に適用可能である。これによって、電子顕微鏡の観察分解能や、電子ビーム露光機の露光分解能を向上させることができる。
以下、上述した実施の形態の電子銃を適用した電子顕微鏡、及び電子ビーム露光機について説明する。
図27は、本発明の実施の形態に係る電子銃を適用した電子顕微鏡の一例の構成を概略的に示す図である。図27に示す電子顕微鏡60は、走査型電子顕微鏡(SEM)である。電子顕微鏡60には、上述した電子銃10,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H,10I及び10Jが適用可能である。なお、図27では、電子銃10Eが適用された例が図示されている。
電子顕微鏡60は、引出電極32、加速電極34、集束レンズ62、走査コイル64、対物レンズ66、検出器68、チャンバ70を備えている。
チャンバ70内には、引出電極32、加速電極34、集束レンズ62、走査コイル64、対物レンズ66が、電子銃10Eからの電子放出方向に沿って、順に設けられている。
電子顕微鏡60は、集束レンズ62、走査コイル64、及び対物レンズ66を含む電子光学系を有している。集束レンズ62、及び対物レンズ66は、電子レンズであり、電子銃10Eから放出された電子ビームBを縮小して、チャンバ70内に収容された試料Sの試料面上に微小な電子プローブを結像させる。走査コイル64は、試料S上の電子プローブの移動、操作を行うためのものである。検出器68は、チャンバ70に取り付けられており、試料Sからの電子を検出する。
電子顕微鏡の分解能は、電子銃の性能によって大きく影響される。電子銃の性能には、具体的には、電子源サイズが小さいこと、電子源の輝度が高いこと、電子源からの放出エネルギー幅が小さいこと、放出ビーム電流が安定していることが要求される。したがって、上述した実施の形態の電子銃は、電子顕微鏡に好適に適用可能である。
図28は、本発明の実施の形態に係る電子銃を適用した電子ビーム露光機の一例の構成を概略的に示す図である。図28に示す電子ビーム露光器の一例は、スポットビーム方式の電子ビーム露光機80である。電子ビーム露光機80には、上述した電子銃10,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H,10I及び10Jが適用可能である。なお、図28では、電子銃10Eが適用された例が示されている。
電子ビーム露光機80は、ブランキング電極82、電子レンズ84、偏向電極86、ステージ88、チャンバ90、制御用コンピュータ92、データ処理システム94、ブランキング制御系96、ビーム偏向制御系98、及び、ステージ制御系100を備えている。
チャンバ90内には、電子銃10Eからの電子の放出方向に沿って、ブランキング電極82、電子レンズ84、偏向電極86、及び、ステージ88が、順に設けられている。
この電子ビーム露光機80では、電子銃10Eから放射された電子ビームBは、電子レンズ84によって収束され、ステージ88上に搭載された材料M上で、非常に小さなスポットとなる。
一方、材料Mに描画するパターンのデータは、制御用コンピュータ92に読み込まれ、データ処理システム94を経て、ブランキング制御系96、及びビーム偏向制御系98に送出される。パターンを描くために、電子ビームBは、ブランキング制御系96からの信号に基づきブランキング電極82によってオン又はオフに制御され、ビーム偏向制御系98からの信号に基づき偏向電極86によって所定の位置に偏向される。また、ステージ制御系100の制御によってステージ88が移動される。
このように、電子ビーム露光機80では、電子ビームBの照射位置の制御、及びステージ88の移動によって、上述したパターンが材料Mに描かれる。電子ビーム露光機においても、上述した電子顕微鏡と同様に電子銃の性能が要求される。したがって、上述した実施の形態の電子銃は、電子ビーム露光機に好適に適用可能である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
第1の実施の形態と同構造の電界放出型電子において、Ib型の高圧合成単結晶ダイヤモンドに、n型ダイヤモンド層を形成したものを、電界放出エミッタとした。n型ダイヤモンド層は、水素希釈のメタンガスを原料ガスとして用いてマイクロ波プラズマCVD法によって形成した。ドーパントにはPHを用いて、P(リン)をn型不純物として導入した。n型ダイヤモンド層中のリン濃度は、3.1×1019cm−3であり、室温における抵抗率は約8×10Ωcmであった。また、導電部材は、SUS304製とし、ベースは、ステアタイト材製とした。かかる電界放出型電子銃を、第1の実施の形態の電子放出装置と同構造の電子放出装置の容器内にセットした。
(実施例2)
電界放出型電子銃の導電部材をインバー製とし、当該電界放出型電子銃における他の構成は実施例1と同様のものとした。この電界放出型電子銃を、第1の実施の形態の電子放出装置と同構造の容器内にセットした。
(実施例3)
電界放出型電子銃の導電部材をコバール製とし、当該電界放出型電子銃における他の構成は実施例1と同様のものとした。この電界放出型電子銃を、第1の実施の形態の電子放出装置と同構造の容器内にセットした。
(実施例4)
第2の実施の形態と同構造の電界放出型電子銃を、以下のように製造した。即ち、電界放出エミッタを実施例1と同様のものとした。導電部材は、スーパーインバー製とし、ベースは、ステアタイト材製とした。かかる電界放出型電子銃を、第2の実施の形態の電子放出装置と同構造の電子放出装置の容器内にセットした。
(実施例5)
第3の実施の形態と同構造の電界放出型電子銃を、以下のように製造した。即ち、二つの電界放出エミッタを実施例1と同様のものとした。導電部材は、インバー製とし、ベースは、ステアタイト材製とした。かかる電界放出型電子銃を、第3の実施の形態の電子放出装置と同構造の電子放出装置の容器内にセットした。
(実施例6)
第4の実施の形態と同構造の電界放出型電子銃を、以下のように製造した。すなわち、電界放出エミッタを実施例1と同様のものとした。ブロック110A,110Bを挿入し、端子14Aと電界放出エミッタとの間の抵抗値を7×10Ω、端子14Bと電界放出エミッタとの間の抵抗値を1×10Ωとした。二つの導電部材はコバール製とし、ベースはステアタイト製とした。かかる電界放出型電子銃を、第4の実施の形態の電子放出装置と同構造の電子放出装置の容器内にセットした。
(実施例7)
第5の実施の形態と同構造の電界放出型電子銃を、以下のように製造した。即ち、電界放出エミッタを実施例1と同様のものとした。ブロックは、アルミナ系セラミック製とした。また、二つの導電部材はコバール製とし、ベースはステアタイト製とした。かかる電界放出型電子銃を、第5の実施の形態の電子放出装置と同構造の電子放出装置の容器内にセットした。
(実施例8)
第6の実施の形態と同構造の電界放出型電子銃を、以下のように製造した。即ち、電界放出エミッタを実施例1と同様のものとした。また、この電界放出エミッタに、マグネトロンスパッタ法によるSiO製の絶縁層及びマグネトロンスパッタ法によるMo製の導電層を形成した。二つの導電部材は、コバール製とし、ベースはステアタイト製とした。かかる電界放出型電子銃を、第6の実施の形態の電子放出装置と同構造の電子放出装置の容器内にセットした。
(実施例9)
第7の実施の形態と同構造の電界放出型電子銃を、以下のように製造した。即ち、電界放出エミッタを実施例1と同様のものとした。ブロックはアルミナ系セラミックとした。また、この電界放出エミッタに、マグネトロンスパッタ法によるSiO製の絶縁層及びマグネトロンスパッタ法によるMo製の導電層を形成した。二つの導電部材は、コバール製とし、ベースはステアタイト製とした。かかる電界放出型電子銃を、第7の実施の形態の電子放出装置と同構造の電子放出装置の容器内にセットした。
(実施例10)
第8の実施の形態と同構造の電界放出型電子銃を、以下のように製造した。即ち、電界放出エミッタを実施例1と同様のものとした。絶縁ブロックは、アルミナ系セラミック製とした。PTC特性を有するブロックは、YをドーピングしたBaTiOの焼結体とした。二つの導電部材はコバール製とし、ベースはステアタイト製とした。かかる電界放出型電子銃を、第8の実施の形態の電子放出装置と同構造の電子放出装置の容器内にセットした。
(実施例11)
第9の実施の形態と同構造の電界放出型電子銃を、以下のように製造した。即ち、電界放出エミッタを実施例1と同様のものとした。また、この電界放出エミッタに、マグネトロンスパッタ法によるSiO製の絶縁層及びマグネトロンスパッタ法によるMo製の導電層を形成した。PTC特性を有するブロックは、YをドーピングしたBaTiOの焼結体とした。二つの導電部材は、コバール製とし、ベースはステアタイト製とした。かかる電界放出型電子銃を、第9の実施の形態の電子放出装置と同構造の電子放出装置の容器内にセットした。
(実施例12)
第10の実施の形態と同構造の電界放出型電子銃を、以下のように製造した。即ち、電界放出エミッタを実施例1と同様のものとした。ブロックはアルミナ系セラミックとした。また、この電界放出エミッタに、マグネトロンスパッタ法によるSiO製の絶縁層及びマグネトロンスパッタ法によるMo製の導電層を形成した。二つの導電部材は、コバール製とし、ベースはステアタイト製とした。かかる電界放出型電子銃を、第10の実施の形態の電子放出装置と同構造の電子放出装置の容器内にセットした。
(比較例)
比較例として、先鋭化Wの陰極を有する電界放出型電子銃を、真空容器内に配置した。
実施例1から12および比較例の容器内の圧力は7×10―9Pa、引出電圧は0.8kV、加速電圧は25kVに設定し、実施例1〜12の電界放出型電子銃のエミッション電流、エネルギー幅、ノイズ、寿命を評価した。寿命は、初期輝度の1/3の輝度になる時間とした。また、比較例では10hrに1hr程度の定期的な熱フラッシュによる表面汚染除去を行っているが、実施例1〜12では行っていない。
評価の結果を表1に示す。なお、実施例6については、二つの電界放出エミッタ(エミッタ1及びエミッタ2)を有しているので、それぞれのエミッション電流、エネルギー幅、寿命、及びノイズを評価した。
Figure 2007149659
表1に示すように、実施例1〜12の電界放出型電子銃は、エミッション電流、エネルギー幅、寿命、ノイズのすべての面で、比較例の電界放出型電子銃よりも優れていた。
本発明の第1の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。 図1に示す電界放出エミッタ及び導電部材の端部を拡大して示す側面図である。 図1に示す電界放出型電子銃を備える電子放出装置の構成を概略的に示す図である。 本発明の第2の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。 図4に示す電界放出型電子銃を備える電子放出装置の構成を概略的に示す図である。 本発明の第3の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。 図6に示す電界放出型電子銃を備える電子放出装置の構成を概略的に示す図である。 本発明の第4の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。 図8に示す電界放出型電子銃を備える電子放出装置の構成を概略的に示す図である。 本発明の第5の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。 図10に示す電界放出型電子銃を備える電子放出装置の構成を概略的に示す図である。 本発明の第6の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。 図12に示す電界放出エミッタ及び導電部材の端部を拡大して示す側面図である。 図12に示す電界放出型電子銃を備える電子放出装置の構成を概略的に示す図である。 本発明の第7の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。 図15に示す電界放出エミッタ及び導電部材の端部を拡大して示す側面図である。 図15に示す電界放出型電子銃を備える電子放出装置の構成を概略的に示す図である。 本発明の第8の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。 図18に示す電界放出エミッタ及び導電部材の端部を拡大して示す側面図である。 図18に示す電界放出型電子銃を備える電子放出装置の構成を概略的に示す図である。 本発明の第9の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。 図21に示す電界放出エミッタ及び導電部材の端部を拡大して示す側面図である。 図21に示す電界放出型電子銃を備える電子放出装置の構成を概略的に示す図である。 本発明の第10の実施の形態に係る電界放出型電子銃の側面図である。 図24に示す電界放出エミッタ及び導電部材の端部を拡大して示す側面図である。 図24に示す電界放出型電子銃を備える電子放出装置の構成を概略的に示す図である。 本発明の実施の形態に係る電子銃を適用した電子顕微鏡の一例の構成を概略的に示す図である。 本発明の実施の形態に係る電子銃を適用した電子ビーム露光機の一例の構成を概略的に示す図である。
符号の説明
10…電界放出型電子銃、12…ベース、14…端子、16…導電部材、18…電界放出エミッタ。

Claims (14)

  1. 絶縁性のベースと、
    前記ベースに設けられた端子と、
    先鋭化された端部を有するダイヤモンド製の電界放出エミッタと、
    前記電界放出エミッタを把持し、且つ、前記電界放出エミッタと前記端子とを電気的に
    接続する導電部材と、
    を備える電界放出型電子銃。
  2. 前記ベースに設けられた別の端子と、
    先鋭化された端部を有するダイヤモンド製の別の電界放出エミッタと、
    前記別の電界放出エミッタを把持し、且つ、前記別の電界放出エミッタと前記別の端子とを電気的に接続する別の導電部材と、
    を更に備える請求項1記載の電界放出型電子銃。
  3. 絶縁性のベースと、
    前記ベースに設けられた第1の端子及び第2の端子と、
    先鋭化された端部を有するダイヤモンド製の電界放出エミッタと、
    前記第1の端子に電気的に接続された第1の導電部材と、
    前記第2の端子に電気的に接続された第2の導電部材と、
    を備えており、
    前記電界放出エミッタは前記第1の導電部材と前記第2の導電部材の間に把持されており、
    前記第1の端子と前記第2の端子の電気的機能が相互に異なる、電界放出型電子銃。
  4. 前記第1の端子と前記電界放出エミッタの間の電気抵抗をR1、
    前記第2の端子と前記電界放出エミッタの間の電気抵抗をR2としたとき、
    R1×10<R2
    である、請求項3記載の電界放出型電子銃。
  5. 前記第1の端子と前記電界放出エミッタの間の電気抵抗をR1、
    前記第2の端子と前記電界放出エミッタの間の電気抵抗をR2としたとき、
    R1×10<R2
    かつ
    1×10Ω<R1<1×10Ω
    かつ
    1×10Ω<R2<1×1010Ω
    である、請求項3又は4に記載の電界放出型電子銃。
  6. 前記第1の端子と前記電界放出エミッタの間の電気抵抗をR1、
    前記第2の端子と前記電界放出エミッタの間の電気抵抗をR2としたとき、
    R1<1Ω
    かつ
    R2>1×1010Ω
    である、請求項3又は4に記載の電界放出型電子銃。
  7. 前記電界放出エミッタは、前記端部を除く表面に第1の領域及び第2の領域を含んでおり、
    前記第2の領域には、絶縁層を介して導電層が設けられており、
    前記導電層は、前記電界放出エミッタと電気的に絶縁されており、
    前記第1の導電部材は、前記第1の領域において前記電界放出エミッタと電気的に接続されており、
    前記第2の導電部材は、前記導電層と電気的に接続されている、
    請求項6記載の電界放出型電子銃。
  8. 絶縁性を有するブロックであって、前記第2の導電部材と前記電界放出エミッタとの間に設けられた該ブロックを、更に備える請求項6又は7に記載の電界放出型電子銃。
  9. 前記第2の端子と前記電界放出型エミッタの間の電気抵抗をR2としたとき、
    R2>1×1010Ω
    であり、
    PTC特性を有するブロックであって、前記第1の導電部材と前記電界放出エミッタとの間に設けられた該ブロックを、更に備える請求項3に電界放出型電子銃。
  10. 前記電界放出エミッタは、前記端部を除く表面に第1の領域及び第2の領域を含んでおり、
    前記第2の領域には、絶縁層を介して導電層が設けられており、
    前記導電層は、前記電界放出エミッタと電気的に絶縁されており、
    前記第1の導電部材は、前記第1の領域において前記電界放出エミッタと前記PTC特性を有するブロックを挟んで接続されており、
    前記第2の導電部材は、前記導電層と電気的に接続されている、
    請求項9に記載の電界放出型電子銃。
  11. 絶縁性を有するブロックであって、前記第2の導電部材と前記電界放出エミッタとの間に設けられた該ブロックを、更に備える請求項9又は10に記載の電界放出型電子銃。
  12. 前記導電部材は、インバー又はコバール製である、請求項1〜11に記載の電界放出型電子銃。
  13. 請求項1〜12の何れか一項記載の電界放出型電子銃を備える、電子顕微鏡。
  14. 請求項1〜12の何れか一項記載の電界放出型電子銃を備える、電子ビーム露光機。
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