JP2008017787A - 改良された逆転写反応方法 - Google Patents

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Atsushi Kawai
川井  淳
Akio Sugiyama
明生 杉山
Shigeaki Nishii
重明 西井
Masanori Oka
岡  正則
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Abstract

【課題】RNAを鋳型として、該RNAの塩基配列と相補的な塩基配列を持つDNAを合成する方法において、DNA依存性DNAポリメラーゼを用いた逆転写反応直前における非特異反応の発生を効率よく抑制し、なおかつ鋳型RNAに悪影響を及ぼさずに迅速に酵素の再活性化させる。
【解決手段】(1)活性が可逆的に阻害されている、RNAとDNAのいずれにも依存する耐熱性DNAポリメラーゼを含む逆転写反応混合物を用意し、(2)該混合物をDNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させるよう温度処理し、(3)該混合物を、耐熱性DNAポリメラーゼがプライマーの伸長産物の合成を開始させるよう温度処理する。
【選択図】なし

Description

本発明は、RNAを鋳型としたその相補的な配列を持つDNAの合成反応、すなわち、逆転写反応に関する。
逆転写反応は、通常の転写反応、即ちDNAを鋳型としたその相補的な配列を持つRNAの合成反応の逆方向の反応であり、RNAを鋳型としたその相補的な配列を持つDNAの合成反応である。逆転写反応を触媒する活性を持つ酵素、即ち逆転写酵素は、RNA依存性DNAポリメラーゼとも呼ばれ、RNAからその相補的なDNA(cDNA)を合成するために広く利用されている。特に分子生物学や遺伝子工学の分野においては、逆転写により得られるcDNAを利用したcDNAライブラリーの作成や、RNAポリメラーゼと組み合わせた核酸増幅法(NASBA法)、逆転写反応とポリメラーゼ連鎖反応を組み合わせたRT−PCR法、RACE解析法、メッセンジャーRNAのディファレンシャルディスプレイ法などの目的に広く用いられている。
逆転写酵素は、RNAウィルス(レトロウィルス)が自身の増殖を行う為に必須の酵素として単離された。マウス白血病ウィルスから発見されたM−MLV(Moloney Murine Leukemia Virus) RTaseや、AMV (Avian Myeloblastosis Virus) RTaseはその一例であり、野生型酵素や、野生型酵素に分子生物学的な改変を加え、高温反応性、伸長性、反応効率を向上させたものが、前述のような目的に使用する為に市販されている。
逆転写酵素として、一部のDNA依存性DNAポリメラーゼを用いることができる。DNA依存性DNAポリメラーゼは、通常の条件下では主としてDNAを鋳型としたその相補的な配列を持つDNAの合成反応を主に触媒するが、それらDNA依存性DNAポリメラーゼに分類される酵素のうち、一部については、ある特定の条件下でRNA依存性DNAポリメラーゼ活性、即ちRNAを鋳型としたその相補的な配列を持つDNAの合成活性を強く示すものがあることが知られている。高度好熱菌Thermus thermophilus由来のDNA依存性DNAポリメラーゼ(Tth DNAポリメラーゼ)はその一例であり、Mn2+イオン存在下において強い逆転写活性を示す。高度好熱菌由来のDNA依存性DNAポリメラーゼは、その高い耐熱性により、逆転写反応を高温で行うことが出来るという特徴がある。M−MLV RTaseやAMV RTaseの反応温度が37℃から42℃、遺伝子工学的手法により耐熱性を向上させた改変型酵素でも50℃程度までしか反応温度を上げられないのに対し、前述のTth DNAポリメラーゼは野生型酵素でも60℃以上で反応を行うことが可能である。
一方、反応の鋳型となるRNAは、DNAと異なり相補的な配列を持つ他の核酸と結合しておらず、通常は一本鎖状態で存在していることから、自らの配列中で相補的な配列を持つ部分同士が結合し、複雑な立体構造を容易に取りうるという性質がある。この性質は、逆転写反応を行う上では好ましくなく、構造の状態によっては逆転写酵素による反応が正常に進行しない場合があるという問題があった。この理由による反応阻害を回避する有効な方法として、逆転写反応を高温で行うという手法が用いられてきたが、前述のような理由から、高温での逆転写反応はTth DNAポリメラーゼなどの高度好熱菌由来のDNA依存性DNAポリメラーゼを用いる方法が有利であると考えられてきた。
特許2968585号
通常、逆転写反応を実施する際には、ランダムプライマーやオリゴdTプライマーなどの、標的配列を特に限定しない標的非限定型プライマーを用いる場合と、標的配列のみを特異的に認識する標的限定型プライマーを用いる場合とがある。プライマーの配列によっては非特異的な反応が起こりやすい場合があるが、特に標的限定型プライマーを用いる方法においては、非特異反応産物の存在が実験の実施目的において障害となるという問題があり、非特異反応を抑制する必要性が高かった。しかしながら、DNA依存性DNAポリメラーゼの逆転写酵素活性を用いて逆転写反応を行う場合、DNA依存性DNAポリメラーゼのDNA複製活性による非特異反応がおこり、プライマーダイマー等の非特異的合成産物が精製されやすいという問題があった。
また、DNA依存性DNAポリメラーゼを用いた逆転写反応における非特異的反応には、反応液調製時等の低温時にのみ酵素活性を阻害することにより有効に抑制することが可能であると一般的に考えられてきたが、その一方で逆転写反応の鋳型となるRNAは、高温時、特に2価のイオン存在中で高温に晒された場合には不安定となり、容易に加水分解されてしまうことから、酵素の再活性化は極めて迅速に実施する必要があった。この目的を達成する為の方法として、アプタマーを用いた酵素の不活性化方法が実用化されているが、アプタマーの酵素活性阻害性能は一般的に高くなく、非特異反応の抑制には効果が十分でないという問題があった。そのため、より効果が高く、かつ迅速に酵素の再活性化が行える方法が求められていた。
本発明者らは、上記事情に鑑み、鋭意研究の結果、DNA依存性DNAポリメラーゼを用いた逆転写反応直前における非特異反応の発生を効率よく抑制し、なおかつ鋳型RNAに悪影響を及ぼさずに迅速に酵素の再活性化ができる手法を開発し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
[項1]
RNAを鋳型として、該RNAの塩基配列と相補的な塩基配列を持つDNAを合成する方法であって、次のステップを含む方法
(1)(a)前記RNA、
(b)プライマー、
(c)遷移金属イオン、および、
(d)RNA依存性DNAポリメラーゼとしての活性とDNA依存性DNAポリメ
ラーゼとしての活性とを有する耐熱性DNAポリメラーゼ、
を含む逆転写反応混合物であって、該耐熱性DNAポリメラーゼの活性が可逆的に阻害されていること、を特徴とする逆転写反応混合物を用意すること
(2)前記逆転写反応混合物を、前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させるに足る温度で処理して、前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させること
(3)前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させたのち、前記逆転写反応混合物を、前記耐熱性DNAポリメラーゼが前記プライマーの伸長産物の合成を開始させるに足る温度で処理して、前記RNAに対して相補的であるcDNA分子を合成すること
[項2]
耐熱性DNAポリメラーゼの活性の可逆的阻害が、抗DNAポリメラーゼ抗体を逆転写反応混合物に含むことによりなされる、項1記載の方法。
[項3]
耐熱性DNAポリメラーゼの不可逆的な活性化が、50℃より高い温度でなされる、項1記載の方法。
[項4]
耐熱性DNAポリメラーゼの不可逆的な活性化が、1分以内で行われる、項1記載の方法。
[項5]
耐熱性DNAポリメラーゼが、Thermus(サーマス)属由来のDNAポリメラーゼ、あるいは、それらが改変されたものである、項1記載の方法。
[項6]
耐熱性DNAポリメラーゼが、Thermus thermophillus(サーマス サーモフィラス)、または、Thermus aquaticus(サーマス アクティカス)由来のDNAポリメラーゼ、あるいは、それらが改変されたものである、項1記載の方法。
[項7]
耐熱性DNAポリメラーゼが、1ユニットあたり10000コピー以上の宿主由来のゲノムDNAを実質的に含有しない、項1記載の方法。
[項8]
RNAを鋳型として、該RNAの塩基配列と相補的な塩基配列を持つDNAを合成するための試薬キットであって、次の構成を含む試薬キット
(a)プライマー、
(b)遷移金属イオン、
(c)RNA依存性DNAポリメラーゼとしての活性とDNA依存性DNAポリメラーゼ
としての活性とを有する耐熱性DNAポリメラーゼ、および、
(d)該耐熱性DNAポリメラーゼのDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を可逆的に阻
害する抗DNAポリメラーゼ抗体
[項9]
RNAを鋳型として、該RNAの塩基配列と相補的な塩基配列を持つDNAを合成し、さらに、合成されたDNAを鋳型としたポリメラーゼ連鎖反応を行うための方法であって、次のステップを含む方法
(1)(a)前記RNA、
(b)プライマー、
(c)遷移金属イオン、
(d)RNA依存性DNAポリメラーゼとしての活性とDNA依存性DNAポリメ
ラーゼとしての活性とを有する耐熱性DNAポリメラーゼ、および、
(e)DNA二本鎖依存性の蛍光物質、または、特定の塩基配列に相補的に結合す
る蛍光ラベル化核酸分子プローブ、または、蛍光ラベル化プライマー
を含む逆転写反応混合物であって、該耐熱性DNAポリメラーゼの活性が可逆的に阻害されていること、を特徴とする逆転写反応混合物を用意すること
(2)前記逆転写反応混合物を、前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させるに足る温度で処理して、前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させること
(3)前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させたのち、前記逆転写反応混合物を、前記耐熱性DNAポリメラーゼが前記プライマーの伸長産物の合成を開始させるに足る温度で処理して、前記RNAに対して相補的であるcDNA分子を合成すること
(4)RNAに対して相補的であるcDNA分子を合成した反応液に対して、実質的に新たな物質を追加せずに、温度条件のみを変化させることによって、合成されたDNAを鋳型としたポリメラーゼ連鎖反応を行うこと
(5)DNA二本鎖依存性の蛍光物質、または、特定の塩基配列に相補的に結合する蛍光ラベル化核酸分子プローブとにより、ポリメラーゼ連鎖反応におけるDNA分子の増幅量を経時的に追跡すること
[項10]
RNAを鋳型として、該RNAの塩基配列と相補的な塩基配列を持つDNAを合成し、さらに、合成されたDNAを鋳型としたポリメラーゼ連鎖反応を行うための試薬キットであって、次の構成を含む試薬キット
(a)プライマー、
(b)遷移金属イオン、
(c)RNA依存性DNAポリメラーゼとしての活性とDNA依存性DNAポリメラーゼ
としての活性とを有する耐熱性DNAポリメラーゼ、
(d)該耐熱性DNAポリメラーゼのDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を可逆的に阻
害する抗DNAポリメラーゼ抗体、、および、
(e)DNA二本鎖依存性の蛍光物質または特定の塩基配列に相補的に結合する蛍光ラベ
ル化核酸分子プローブ、または、蛍光ラベル化プライマー
本発明により、逆転写反応における非特異反応を抑制し、従来の方法に比べて正確、迅速、簡便に実施することができる。
本発明の一つの態様は、RNAを鋳型として、該RNAの塩基配列と相補的な塩基配列を持つDNAを合成する方法、すなわち逆転写反応に関連する。好ましくは、これらの方法は次のステップを含む。
(1)(a)前記RNA、
(b)プライマー、
(c)遷移金属イオン、
(d)RNA依存性DNAポリメラーゼとしての活性とDNA依存性DNAポリメ
ラーゼとしての活性とを有する耐熱性DNAポリメラーゼ
を含む逆転写反応混合物であって、該耐熱性DNAポリメラーゼの活性が可逆的に阻害されていること、を特徴とする逆転写反応混合物を用意すること
(2)前記逆転写反応混合物を、前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させるに足る温度で処理して、前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させること
(3)前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させたのち、前記逆転写反応混合物を、前記耐熱性DNAポリメラーゼが前記プライマーの伸長産物の合成を開始させるに足る温度で処理して、前記RNAに対して相補的であるcDNA分子を合成すること
本発明における逆転写とは、RNAを鋳型とし、その配列に相補的なDNAを合成する反応を言い、合成する範囲は、RNA分子の一部または全部である。またその範囲は制御できる場合もあるが、特に限定せず、ランダムである場合もある。
本発明で逆転写の鋳型となるRNAが含有される試料は、何ら制限されない。
本発明のプライマーは、プライマー伸長開始条件下に置いたときに合成起点として機能しうるオリゴヌクレオチドをいい、天然、合成を問わない。プライマーは好ましくは1本鎖オリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーの適正な長さは意図するプライマーの用途次第であるが、一般に15〜35ヌクレオチドの範囲である。プライマーは正確な鋳型配列を反映する必要はないが、鋳型とハイブリダイズしてプライマーの伸長を起こすためには鋳型に対して十分に相補的でなければならない。
プライマーは任意の適当な方法により調製することができる。
この調製方法にはたとえば、然るべき配列のクローニングと制限および直接化学合成などが含まれ、直接化学合成にはNarang他、1979、「Meth. Enzymol.」68:90-99のリン酸トリエステル法、Brown他、1979、「Meth. Enzymol.」68:109-151のリン酸ジエステル法、Beaucage他、1981、「Tetrahedron Lett.」22:1859-1862のジエチルホスホラミダイト法、および米国特許第4,458,066号の固相担体法などがある。シアノエチルホスホラミダイト化学を使用する自動合成が好ましい。試薬と器具はたとえばApplera(Applied Biosystems−カリフォルニア州フォスターシティー)やGE Healthcare(ニュージャージー州ピスカタウェイ)などから市販されている。
本発明における遷移金属とは、元素周期表において第3属元素から第11属元素の間に存在する元素の総称である。また本発明における遷移金属のイオンは、その元素の種類、電荷の値は特に限定されないが、好ましくは2価の陽イオン、より好ましくは2価のマンガンイオン(Mn2+)を用いることができる。溶液中におけるマンガンの検出には、蛍光X線分析法を用いた方法、ベンジジンを用いた化学的方法、呈色反応を用いた方法などにより行うことができる。
また本発明におけるRNA依存性DNAポリメラーゼとしての活性とDNA依存性DNAポリメラーゼとしての活性とを有する耐熱性DNAポリメラーゼは、いかなる種類のものを用いても良く、例えばThermus(サーマス)属として、Thermus thermophillus(サーマス サーモフィラス)、および、Thermus aquaticus(サーマス アクティカス)が例示できる。このほか、アネロセルム・サーモフィルム(特表2001-502169)、カルボキシドテルムス・ヒドロゲノホルマンス(特表2001-502170)、サーモアクチノマイセス・ブルガリス(特表2003-525603、特表2003-525601)、バチルス・ステアロサーモフィラス(特表2003-525601)なども例示できる。
好ましくは好熱性細菌または好熱性始原菌に由来するもの、より好ましくは好熱性細菌に由来するもの、さらに好ましくはThermus属の好熱性細菌に由来するもの、さらに好ましくは、Thermus thermophillus(サーマス サーモフィラス)あるいはThermus aquaticus(サーマス アクティカス)、さらにより好ましくはThermus thermophilus HB8株由来のものを用いることができる。
なお、ここで例示された酵素においては、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性と、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性とは、同一の活性部位により反応が行われる。そのため、本明細書において記載される「DNAポリメラーゼ活性の阻害」については、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性とDNA依存性DNAポリメラーゼ活性とが同時に阻害されることを意味する。
本願では「酵素活性の阻害」はDNA依存性DNAポリメラーゼ活性で判断する。
また本発明における耐熱性DNAポリメラーゼに関し、ここで言う耐熱性とは、高温におけるDNAポリメラーゼ活性半減期が長いことを指し、好ましくは95℃における活性半減期が5分以上、より好ましくは95℃における活性半減期が30分以上である。
耐熱性DNAポリメラーゼの活性半減期は、該酵素が含まれる逆転写反応組成物が、逆転写反応を行うに十分な性能を維持していると判断できる期間内(例えば逆転写を行うためのキットの有効期限内)であれば、いつ測定しても良い。
また、ここで言う酵素活性の阻害とは、阻害されていない通常状態の酵素よりもDNAポリメラーゼ活性が低く抑えられることを指し、好ましくは活性値が阻害されていない状態の20%以下、より好ましくは10%以下に抑えられることを指す。
またここで言う活性化とは、活性が阻害された酵素が、阻害される以前の状態に実質的に復帰することを指し、具体的にはDNAポリメラーゼ活性が阻害された酵素が、阻害される以前の活性値の好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であることを指す。
酵素活性の阻害、あるいは、活性化は、酵素阻害状態を解消するような処理を行う前後において、酵素活性を比較することにより評価することが出来る。例えば後述のように可逆的阻害を抗DNAポリメラーゼ抗体を逆転写反応混合物に含むことによりなしている場合、逆転写反応混合物を抗体が不可逆的に変性する温度で加温し(通常この温度では耐熱性酵素の活性はほとんど失われない。)、その前後の酵素活性を比較することにより評価することができる。
なお、DNA依存性DNAポリメラーゼ、RNA依存性DNAポリメラーゼの活性測定には、通常用いられるどのような方法を用いても測定することが可能であるが、最も多く用いられる方法としては、そのDNAポリメラーゼの至適温度、より具体的には、耐熱性DNA依存性DNAポリメラーゼでは75℃付近で、RNA依存性DNAポリメラーゼでは42℃〜50℃付近で、30分間に10ナノモルの全ヌクレオチドを酸不溶性画分に取り込む酵素量を1Uとして測定する方法を用いることができる。(本願明細書における酵素活性値はこの方法で測定した。)
本発明の逆転写反応方法の第一ステップにおいては、(a)鋳型となりうるRNA、(b)プライマー、(c)遷移金属イオン、および、(d)RNA依存性DNAポリメラーゼとしての活性とDNA依存性DNAポリメラーゼとしての活性とを有する耐熱性DNAポリメラーゼ、を含む逆転写反応混合物を用意する。
ここで、該耐熱性DNAポリメラーゼの活性が可逆的に阻害されている。
耐熱性DNAポリメラーゼの活性の可逆的阻害は、例えば、抗DNAポリメラーゼ抗体を逆転写反応混合物に含ませるか、あるいは、熱変性により構造が変化するように酵素を化学修飾することで、酵素を可逆的に不活性化させることにより達成される。
抗DNAポリメラーゼ抗体を逆転写反応混合物に含ませる場合は、その酵素活性部位に抗DNAポリメラーゼ抗体を結合させることにより阻害がおこると考えられる。
ここで言う抗耐熱性DNAポリメラーゼ抗体は、その形態は特に限定されないが、好ましくは耐熱性DNAポリメラーゼに結合し、50℃以下の低温において活性を80%以上阻害するもの、より好ましくは90%以上阻害するものを用いることができる。またここで言う抗耐熱性DNAポリメラーゼ抗体は、単一種のモノクローナル抗体を用いるか、または複数のモノクローナル抗体を用いるか、あるいはポリクローナル抗体を用いることができる。
このような抗体としてanti-Taq high (東洋紡)や、Taq Start Antibody、Tth Start Antibody (タカラバイオ)が入手可能である。あるいは、マウス、ラット、ハムスター等を用いたハイブリドーマ作製による公知のモノクローナル抗体作製法により作ることが出来る。
本発明の逆転写反応方法の第二ステップにおいては、前記逆転写反応混合物を、前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させるに足る温度で処理して、前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させる。
耐熱性DNAポリメラーゼの活性の可逆的阻害を、抗DNAポリメラーゼ抗体を逆転写反応混合物に含ませる場合、「耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させるに足る温度」とは、使用する抗体が熱変性により構造が不可逆的に変化しうる温度である。好ましくは50℃以上、より好ましくは75℃以上、更に好ましくは85℃以上である。耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させるに足る温度で処理することにより、抗体が不可逆的に構造変化を起こすことで、抗体のDNAポリメラーゼへの再結合を起こらなくすることにより、不可逆的な活性化がなされうる。
また、熱変性により構造が変化するように酵素を化学修飾する場合、「耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させるに足る温度」とは、結合した化学修飾基が乖離しうる温度である。好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上である。化学修飾基の解離は不可逆的に起こる為、酵素を耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させるに足る温度で処理することにより、不可逆的な活性化がなされうる。
本願発明において、耐熱性DNAポリメラーゼのDNAポリメラーゼ活性の不可逆的な活性化は、50℃より高い温度でなされうる。好ましくは50℃以上、より好ましくは75℃以上、更に好ましくは85℃以上である。
また、本願発明において、耐熱性DNAポリメラーゼのRNA依存性DNAポリメラーゼおよびDNA依存性DNAポリメラーゼ活性の可逆的阻害を、抗DNAポリメラーゼ抗体を逆転写反応混合物に含ませる場合、耐熱性DNAポリメラーゼのDNAポリメラーゼ活性の不可逆的な活性化は、1分以内で行われうる。
本発明の逆転写反応方法の第三ステップにおいては、前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させたのち、前記逆転写反応混合物を、前記耐熱性DNAポリメラーゼが前記プライマーの伸長産物の合成を開始させるに足る温度で処理して、前記RNAに対して相補的であるcDNA分子を合成する。
「プライマーの伸長産物の合成を開始させるに足る温度」とは、酵素活性を発現することができる温度であり、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上である。
また本発明の一つの態様としては、耐熱性DNAポリメラーゼが1ユニットあたり10コピー以上の宿主由来のゲノムDNAを実質的に含有しない、改良された逆転写方法が例示される。
ゲノムDNAの含有量の測定は、その含有すると予測されるゲノムDNAの由来生物、具体的には耐熱性DNAポリメラーゼを製造する際に用いた宿主生物の、特定のDNA配列をリアルタイムPCR法により検出することで絶対的あるいは相対的にDNAの存在量を測定することができる。特定のDNA配列は特に限定されないが、リボソームRNAをコードする遺伝子DNAの配列が好適に用いられる。
使用する耐熱性DNAポリメラーゼは、宿主由来のゲノムDNAが混入することにより擬陽性シグナルや非特異的反応の発生の原因となる為、可能な限りゲノムDNAの混入量が少ないものを使用するのが好ましい。使用する耐熱性DNAポリメラーゼを、ポリエチレンイミン等を用いた除核酸処理し、DNAポリメラーゼに親和性を持つ物質を結合させた精製用樹脂(例えばヘパリンセファロース)を用いたカラムクロマトグラフィーを実施することにより、1ユニットあたり10コピー以上の宿主由来のゲノムDNAを実質的に含有しない耐熱性DNAポリメラーゼを作製することが出来る。
本発明の別の一つの態様としてRT−PCRを例示することができる。RT−PCR法は、逆転写反応とポリメラーゼ連鎖反応(PCR)とを組み合わせたもので、生物中における遺伝子の発現量の測定や、遺伝子中の非翻訳領域を取り除いたDNA(cDNA)の合成等の目的において広く応用されている。
RT−PCRは、RNAを鋳型として、該RNAの塩基配列と相補的な塩基配列を持つDNAを合成し、さらに、合成されたDNAを鋳型としたポリメラーゼ連鎖反応を行うための方法であって、次のステップを含む方法である。
(1)(a)前記RNA、
(b)プライマー、
(c)遷移金属イオン、
(d)RNA依存性DNAポリメラーゼとしての活性とDNA依存性DNAポリメ
ラーゼとしての活性とを有する耐熱性DNAポリメラーゼ、および、
(e)DNA二本鎖依存性の蛍光物質、または、特定の塩基配列に相補的に結合す
る蛍光ラベル化核酸分子プローブ、または、蛍光ラベル化プライマー
を含む逆転写反応混合物であって、該耐熱性DNAポリメラーゼのDNA依存性DNAポリメラーゼ活性が可逆的に阻害されていること、を特徴とする逆転写反応混合物を用意すること
(2)前記逆転写反応混合物を、前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させるに足る温度で処理して、前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させること
(3)前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させたのち、前記逆転写反応混合物を、前記耐熱性DNAポリメラーゼが前記プライマーの伸長産物の合成を開始させるに足る温度で処理して、前記RNAに対して相補的であるcDNA分子を合成すること
(4)RNAに対して相補的であるcDNA分子を合成した反応液に対して、実質的に新たな物質を追加せずに、温度条件のみを変化させることによって、合成されたDNAを鋳型としたポリメラーゼ連鎖反応を行うこと
(5)DNA二本鎖依存性の蛍光物質、または、特定の塩基配列に相補的に結合する蛍光ラベル化核酸分子プローブ、または蛍光ラベル化プライマーとにより、ポリメラーゼ連鎖反応におけるDNA分子の増幅量を経時的に追跡すること
RT−PCR法においては、逆転写酵素を用いてRNAからその相補的な配列を持つcDNAを合成し、次いで得られたcDNAを精製し、あるいは未精製状態のままでPCR反応系に添加し、PCRを行うのが通常である。この方法は、逆転写反応とPCRとを別々に行うことから、ツーステップRT−PCR法とも呼ばれている。
これに対し、逆転写酵素とPCR酵素、即ちDNA依存性DNAポリメラーゼをあらかじめ混合することで、逆転写反応とPCRとを連続的に行うことも可能である。この方法は、ワンステップRT−PCR法と呼ばれ、逆転写反応を行った液から、PCRの鋳型となるcDNAを新たな反応系に移動する手順が省略できることから、多検体の測定における操作の迅速化や、検体間での反応液の誤混入(クロスコンタミネーション)を防止する方法として有用である。
Tth DNAポリメラーゼもまたそのDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を用いてPCRにおいて利用される酵素であるが、前述のようにMn2+イオン存在下で逆転写活性を示すことを利用して、単一の酵素のみを用いて逆転写反応とPCRとを連続的に行うことが可能である。前述のワンステップRT−PCR法は、この原理を用いることでもまた達成される。本原理によるワンステップRT−PCR法の利点としては、単一の酵素を用いることで試薬の安定性や取り扱いの簡便さにおいて有利であること、高温条件で逆転写反応を行うことで鋳型RNAの立体構造に由来する反応効率の低下を防ぐことが可能であること、酵素を製造する際に混入する宿主由来のゲノムDNAのコンタミネーションを減らすことが可能であることなどが挙げられる。
本発明の一つの態様は、RNAを鋳型として、該RNAの塩基配列と相補的な塩基配列を持つDNAを合成するための試薬キットであって、次の構成を含む試薬キットである。
(a)プライマー、
(b)遷移金属イオン、
(c)RNA依存性DNAポリメラーゼとしての活性とDNA依存性DNAポリメラーゼ
としての活性とを有する耐熱性DNAポリメラーゼ、および、
(d)該耐熱性DNAポリメラーゼのDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を可逆的に阻
害する抗DNAポリメラーゼ抗体
本発明の上記試薬キットは、さらに必要により、発色試薬または発光試薬、蛍光試薬などを含む。また緩衝液としては、トリス緩衝液 (pH6.5 、75℃) 、トリシン緩衝液(pH6.5、75℃) 、ビシン緩衝液(pH6.5、75℃)などが挙げられる。
本発明の試薬キットの具体的な組成の1つは、下記のとおりである。
50mM Bicine-KOH (pH6.5 、75℃)
115mM KOAc
1〜5mM Mn(OAc)2
50〜500μM dNTPs
0.1pM〜1μM プライマー
10fg〜10μg 鋳型RNA
本発明の別の一つの態様は、RNAを鋳型として、該RNAの塩基配列と相補的な塩基配列を持つDNAを合成し、さらに、合成されたDNAを鋳型としたポリメラーゼ連鎖反応を行うための試薬キットであって、次の構成を含む試薬キットである。
(a)プライマー、
(b)遷移金属イオン、
(c)RNA依存性DNAポリメラーゼとしての活性とDNA依存性DNAポリメラーゼ
としての活性とを有する耐熱性DNAポリメラーゼ、
(d)該耐熱性DNAポリメラーゼのDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を可逆的に阻
害する抗DNAポリメラーゼ抗体、および、
(e)DNA二本鎖依存性の蛍光物質または特定の塩基配列に相補的に結合する蛍光ラベ
ル化核酸分子プローブまたは蛍光ラベル化プライマー
本発明で用いられる、DNA二本鎖依存性の蛍光物質または特定の塩基配列に相補的に結合する蛍光ラベル化核酸分子プローブまたは蛍光ラベル化プライマーは特に限定されないが、DNA二本鎖依存性の蛍光物質としては、DNA二本鎖と結合した場合に蛍光を発する色素(インターカレータ)が好適に用いられ、具体的には臭化エチジウム、SYBR Green I (Invitrogen)、LC Green (Idaho Technology)、Green DNA Dyeなどが例示され、また蛍光ラベル化核酸分子プローブとしては、TaqManプローブ、FRETプローブ、QuantiTectプローブ、Molecular Beaconなどが例示され、また蛍光ラベル化プローブとしてはLUXプライマーなどが例示される。
本発明の上記試薬キットは、さらに必要によりジメチルスルホキシド、グリセロール、ホルムアミド、トリメチルグリシン、トレハロースなどを含む。また緩衝液としては、トリス緩衝液 (pH6.5 、75℃) 、トリシン緩衝液(pH6.5 、75℃) 、ビシン緩衝液(pH6.5、75℃) などが挙げられる。
本発明の試薬キットの具体的な組成の1つは、下記のとおりである。
50mM Bicine-KOH (pH6.5 、75℃)
115mM KOAc
1〜5mM Mn(OAc)2
50〜500μM dNTPs
0.1pM〜1μM プライマー
10fg〜10μg 鋳型RNA
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1 定量RT−PCR法における抗体の使用の有無による検出感度の差異の検討
ヒト由来の各種細胞から抽出したメッセンジャーRNAの混合液をサンプルとして、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PDH)タンパク質をコードするメッセンジャーRNAの検出を試みた。反応液は以下のように調製した。即ち、RT−PCR high Plus(東洋紡)添付の5xバッファーを1x濃度、酢酸マンガン溶液を2.5mM、dNTPsを0.4mM、rTth DNAポリメラーゼ(東洋紡)を1U、ウシ血清アルブミン(ニッポンジーン)を250μg/μl、プライマー1(配列番号1)およびプライマー2(配列番号2)をそれぞれ4pmol、SYBR Green I(インビトロジェン)を1/20000濃度、という組成を基本とし、鋳型RNAは1μg/μlの液を10倍希釈から10の5乗倍希釈まで、10倍間隔で5水準を作成し、それぞれを反応液に1μlずつ添加した。Tth Start Antibody(クロンテック)は、反応系あたり0.6μgの添加量となるように、あらかじめrTth DNAポリメラーゼに混合して添加した。同様に抗DNAポリメラーゼ抗体を混合しない反応液も調製した。最終液量は20μlになるように設定した。定量RT−PCRは以下の条件で実施した。即ち、反応機器は、ロシュ・ダイアグノスティックス社製のライトサイクラーを使用し、熱変性反応90℃・30秒、逆転写反応61℃・20分、熱変性反応95℃・30秒、増幅反応95℃・5秒、60℃・20秒、72℃・20秒(50サイクル)で行った。機器の詳細な取扱については取扱い説明書に従った。その結果を図1〜図4に示す。抗DNAポリメラーゼ抗体を用いた反応系については、図1に示す通り、鋳型RNAの濃度水準に従ってCt値が等間隔にシフトしており、鋳型RNA濃度とCtとの相関係数は0.999以上であった。また図2に示す融解曲線分析の結果から、非特異反応が全く起こっていないことが示唆された。これらの結果より、抗DNAポリメラーゼ抗体を用いた反応においては、鋳型RNA濃度の検出が高い正確性を持って行われていることが示唆された。それに対し、抗DNAポリメラーゼ抗体を用いなかった反応系については、図3に示す通り、鋳型RNAが10の4乗倍希釈濃度以下のサンプルでCt値の間隔が不均一になり、鋳型RNAとCt値との相関係数は0.944であった。また図4に示す誘拐曲線分析の結果から、鋳型RNAが10の4乗倍希釈濃度以下のサンプルで非特異反応が発生し、正反応が強く阻害されていることが示唆された。これらの結果から、抗DNAポリメラーゼ抗体を用いなかった反応においては、鋳型RNA濃度の検出が鋳型量が低濃度の場合、正確に行われていないことが示唆された。
実施例2 定量RT−PCR法におけるアプタマーを使用した場合の検出感度の検討
実施例1と同様に、ヒト由来の各種細胞から抽出したメッセンジャーRNAの混合液をサンプルとして、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PDH)タンパク質をコードするメッセンジャーRNAの検出を、アプタマーを用いた試薬を使用して試みた。反応液は以下のように調製した。即ち、ライトサイクラーRNAマスターSYBRグリーン(ロシュ)を7.5μl、酢酸マンガン溶液を3.5mM、プライマー1(配列番号1)およびプライマー2(配列番号2)をそれぞれ4pmol、という組成を基本とし、鋳型RNAは1μg/μlの液を10倍希釈から10の5乗倍希釈まで、10倍間隔で5水準を作成し、それぞれを反応液に1μlずつ添加した。最終液量は20μlになるように設定した。定量RT−PCRは以下の条件で実施した。即ち、反応機器は、ロシュ・ダイアグノスティックス社製のライトサイクラーを使用し、熱変性反応90℃・30秒、逆転写反応61℃・20分、熱変性反応95℃・30秒、増幅反応95℃・5秒、60℃・20秒、72℃・20秒(50サイクル)で行った。機器の詳細な取扱については取扱い説明書に従った。その結果を図5および図6に示す。アプタマーを用いた反応では、図3に示す通り、鋳型RNAが10の4乗倍希釈濃度以下のサンプルでCt値の間隔が不均一になり、鋳型RNAとCt値との相関係数は0.974であった。また図4に示す誘拐曲線分析の結果から、鋳型RNAが10の4乗倍希釈濃度以下のサンプルで非特異反応が発生し、正反応が強く阻害されていることが示唆された。これらの結果から、実施例1に示す抗DNAポリメラーゼ抗体を用いた場合と比較して、アプタマーを用いた反応においては、鋳型RNA濃度の検出が鋳型量が低濃度の場合、正確に行われていないことが示唆された。
実施例3 短時間の熱変性による鋳型RNAの損傷の有無の検討
HeLa細胞から抽出した全RNAの溶液をサンプルとして、ベータアクチンタンパク質をコードするメッセンジャーRNAの検出を試みた。反応液は以下のように調製した。即ち、RT−PCR high Plus(東洋紡)添付の5xバッファーを1x濃度、酢酸マンガン溶液を2.5mM、dNTPsを0.4mM、rTth DNAポリメラーゼ(東洋紡)を1U、ウシ血清アルブミン(ニッポンジーン)を250μg/μl、プライマー3(配列番号3)およびプライマー4(配列番号4)をそれぞれ4pmol、SYBR Green I(インビトロジェン)を1/20000濃度、という組成を基本とし、鋳型RNAは0.75μg/μlの液1μlずつ添加した。最終液量は20μlになるように設定した。定量RT−PCRは以下の条件で実施した。即ち、反応機器は、ロシュ・ダイアグノスティックス社製のライトサイクラーを使用し、熱変性反応90℃・30秒、逆転写反応61℃・20分、熱変性反応95℃・30秒、増幅反応95℃・5秒、60℃・20秒、72℃・20秒(50サイクル)で行った。機器の詳細な取扱については取扱い説明書に従った。最初の熱変性反応を行わない温度条件においても、同じ反応組成を用いて反応を実施した。その結果を表1に示す。最初の熱変性を実施した場合と実施しなかった場合とでCt値に差が見られず、ここで実施した熱変性条件では鋳型RNAの分解は実質的に生じていないことが示唆された。
Figure 2008017787
実施例4 宿主由来のゲノムDNA混入量の検討
大腸菌の16SリボソームRNAをコードするゲノムDNAの検出を試みた。反応液は以下のように調製した。即ち、RT−PCR high Plus(東洋紡)添付の5xバッファーを1x濃度、酢酸マンガン溶液を2.5mM、dNTPsを0.4mM、rTth DNAポリメラーゼ(東洋紡)を1U、ウシ血清アルブミン(ニッポンジーン)を250μg/μl、プライマー5(配列番号5)およびプライマー3(配列番号6)をそれぞれ4pmol、SYBR Green I(インビトロジェン)を1/20000濃度、という組成を基本とし、鋳型となる核酸を添加せず液量を20μlにあわせ、反応を行った。Tth Start Antibody (クロンテック)は、反応系あたり0.6μgの添加量となるように、あらかじめrTth DNAポリメラーゼに混合して添加した。定量RT−PCRは以下の条件で実施した。即ち、反応機器は、ロシュ・ダイアグノスティックス社製のライトサイクラーを使用し、熱変性反応90℃・30秒、逆転写反応61℃・20分、熱変性反応95℃・30秒、増幅反応95℃・5秒、60℃・20秒、72℃・20秒(50サイクル)で行った。機器の詳細な取扱については取扱い説明書に従った。その結果を表2に示す。得られたCt値から、1UのrTth DNAポリメラーゼに混入している16SリボソームRNA遺伝子は10000コピー以下と推測されるが、大腸菌の場合、16SリボソームRNA遺伝子はゲノムDNA中に7コピー存在することから、1UのrTth DNAポリメラーゼに混入しているゲノムDNAは1400コピー以下であると算出された。
Figure 2008017787
本発明の方法は従来の方法に比べて極めて迅速、簡便に実施することができ、逆転写により得られるcDNAを利用したcDNAライブラリーの作成や、RNAポリメラーゼと組み合わせた核酸増幅法(NASBA法)、逆転写反応とポリメラーゼ連鎖反応を組み合わせたRT−PCR法、RACE解析法、メッセンジャーRNAのディファレンシャルディスプレイ法などを実施するものに経済的に多大の利益をもたらす。
本発明は、遺伝子発現解析や塩基配列解析、塩基多型解析等に際して特に有用であり、研究のみならず臨床診断や環境検査等にも利用できる。
抗DNAポリメラーゼ抗体を用いて反応を行った、定量RT−PCR法によるヒト由来の各種細胞から抽出したメッセンジャーRNAの混合液をサンプルとして、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PDH)タンパク質をコードするメッセンジャーRNAの検出を行った際の増幅曲線を示す図。 抗DNAポリメラーゼ抗体を用いて反応を行った、定量RT−PCR法によるヒト由来の各種細胞から抽出したメッセンジャーRNAの混合液をサンプルとして、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PDH)タンパク質をコードするメッセンジャーRNAの検出を行った際の融解曲線分析結果を示す図。 抗DNAポリメラーゼ抗体を用いずに反応を行った、定量RT−PCR法によるヒト由来の各種細胞から抽出したメッセンジャーRNAの混合液をサンプルとして、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PDH)タンパク質をコードするメッセンジャーRNAの検出を行った際の増幅曲線を示す図。 抗DNAポリメラーゼ抗体を用いずに反応を行った、定量RT−PCR法によるヒト由来の各種細胞から抽出したメッセンジャーRNAの混合液をサンプルとして、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PDH)タンパク質をコードするメッセンジャーRNAの検出を行った際の融解曲線分析結果を示す図。 アプタマーを用いて反応を行った、定量RT−PCR法によるヒト由来の各種細胞から抽出したメッセンジャーRNAの混合液をサンプルとして、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PDH)タンパク質をコードするメッセンジャーRNAの検出を行った際の増幅曲線を示す図。 アプタマーを用いて反応を行った、定量RT−PCR法によるヒト由来の各種細胞から抽出したメッセンジャーRNAの混合液をサンプルとして、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(G3PDH)タンパク質をコードするメッセンジャーRNAの検出を行った際の融解曲線分析結果を示す図。

Claims (10)

  1. RNAを鋳型として、該RNAの塩基配列と相補的な塩基配列を持つDNAを合成する方法であって、次のステップを含む方法
    (1)(a)前記RNA、
    (b)プライマー、
    (c)遷移金属イオン、および、
    (d)RNA依存性DNAポリメラーゼとしての活性とDNA依存性DNAポリメ
    ラーゼとしての活性とを有する耐熱性DNAポリメラーゼ、
    を含む逆転写反応混合物であって、該耐熱性DNAポリメラーゼの活性が可逆的に阻害されていること、を特徴とする逆転写反応混合物を用意すること
    (2)前記逆転写反応混合物を、前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させるに足る温度で処理して、前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させること
    (3)前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させたのち、前記逆転写反応混合物を、前記耐熱性DNAポリメラーゼが前記プライマーの伸長産物の合成を開始させるに足る温度で処理して、前記RNAに対して相補的であるcDNA分子を合成すること
  2. 耐熱性DNAポリメラーゼの活性の可逆的阻害が、抗DNAポリメラーゼ抗体を逆転写反応混合物に含むことによりなされる、請求項1記載の方法。
  3. 耐熱性DNAポリメラーゼの不可逆的な活性化が、50℃より高い温度でなされる、請求項1記載の方法。
  4. 耐熱性DNAポリメラーゼの不可逆的な活性化が、1分以内で行われる、請求項1記載の方法。
  5. 耐熱性DNAポリメラーゼが、Thermus(サーマス)属由来のDNAポリメラーゼ、あるいは、それらが改変されたものである、請求項1記載の方法。
  6. 耐熱性DNAポリメラーゼが、Thermus thermophillus(サーマス サーモフィラス)、または、Thermus aquaticus(サーマス アクティカス)由来のDNAポリメラーゼ、あるいは、それらが改変されたものである、請求項1記載の方法。
  7. 耐熱性DNAポリメラーゼが、1ユニットあたり10000コピー以上の宿主由来のゲノムDNAを実質的に含有しない、請求項1記載の方法。
  8. RNAを鋳型として、該RNAの塩基配列と相補的な塩基配列を持つDNAを合成するための試薬キットであって、次の構成を含む試薬キット
    (a)プライマー、
    (b)遷移金属イオン、
    (c)RNA依存性DNAポリメラーゼとしての活性とDNA依存性DNAポリメラーゼ
    としての活性とを有する耐熱性DNAポリメラーゼ、および、
    (d)該耐熱性DNAポリメラーゼのDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を可逆的に阻
    害する抗DNAポリメラーゼ抗体
  9. RNAを鋳型として、該RNAの塩基配列と相補的な塩基配列を持つDNAを合成し、さらに、合成されたDNAを鋳型としたポリメラーゼ連鎖反応を行うための方法であって、次のステップを含む方法
    (1)(a)前記RNA、
    (b)プライマー、
    (c)遷移金属イオン、
    (d)RNA依存性DNAポリメラーゼとしての活性とDNA依存性DNAポリメ
    ラーゼとしての活性とを有する耐熱性DNAポリメラーゼ、および、
    (e)DNA二本鎖依存性の蛍光物質、または、特定の塩基配列に相補的に結合す
    る蛍光ラベル化核酸分子プローブ、または、蛍光ラベル化プライマー
    を含む逆転写反応混合物であって、該耐熱性DNAポリメラーゼの活性が可逆的に阻害されていること、を特徴とする逆転写反応混合物を用意すること
    (2)前記逆転写反応混合物を、前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させるに足る温度で処理して、前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させること
    (3)前記耐熱性DNAポリメラーゼを不可逆的に活性化させたのち、前記逆転写反応混合物を、前記耐熱性DNAポリメラーゼが前記プライマーの伸長産物の合成を開始させるに足る温度で処理して、前記RNAに対して相補的であるcDNA分子を合成すること
    (4)RNAに対して相補的であるcDNA分子を合成した反応液に対して、実質的に新たな物質を追加せずに、温度条件のみを変化させることによって、合成されたDNAを鋳型としたポリメラーゼ連鎖反応を行うこと
    (5)DNA二本鎖依存性の蛍光物質、または、特定の塩基配列に相補的に結合する蛍光ラベル化核酸分子プローブとにより、ポリメラーゼ連鎖反応におけるDNA分子の増幅量を経時的に追跡すること
  10. RNAを鋳型として、該RNAの塩基配列と相補的な塩基配列を持つDNAを合成し、さらに、合成されたDNAを鋳型としたポリメラーゼ連鎖反応を行うための試薬キットであって、次の構成を含む試薬キット
    (a)プライマー、
    (b)遷移金属イオン、
    (c)RNA依存性DNAポリメラーゼとしての活性とDNA依存性DNAポリメラーゼ
    としての活性とを有する耐熱性DNAポリメラーゼ、
    (d)該耐熱性DNAポリメラーゼのDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を可逆的に阻
    害する抗DNAポリメラーゼ抗体、、および、
    (e)DNA二本鎖依存性の蛍光物質または特定の塩基配列に相補的に結合する蛍光ラベ
    ル化核酸分子プローブ、または、蛍光ラベル化プライマー
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