JP2008016227A - 有機光起電力素子およびその製造方法ならびに光センサー - Google Patents

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Abstract

【課題】湿式成膜可能で製造が容易であり、安定性がよく、かつ高い変換効率を与える有機光起電力素子、およびそれを備えた、分光器やフィルターが要らず、色素の選択により検出波長が可変であり、かつ特定波長以下の光に対してのみ検出が可能である光センサーを提供することを課題とする。
【解決手段】透明電極と背面電極との間に光起電力層としてJ会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を介在させてなることを特徴とする有機光起電力素子により、上記の課題を解決する。
【選択図】図2

Description

本発明は、有機光起電力素子およびその製造方法ならびにそれを備えた光センサーに関する。
光起電力素子は、光エネルギーを電気エネルギー(電圧×電流)に変換する素子である。その光電流の生成には内部電界の存在が必要であり、その内部電界を生成する方法としていくつかの素子構成が知られている。
例えば、(1)金属/半導体接合で生じる内部電界を利用するショットキー接合またはMIS型接合、(2)n型無機半導体/p型有機半導体接合を利用したヘテロpn接合、(3)電子受容性の有機物と電子供与性の有機物を接合したときに生じる内部電界を利用する有機/有機ヘテロpn接合が挙げられる。
上記(1)および(2)の接合では、無機半導体として単結晶、多結晶およびアモルファスのシリコンが多く用いられており、これらでは安価で毒性のない光起電力素子の開発は困難とされている。
そこで、上記(3)の接合、すなわち有機物を能動材料として用いた光起電力素子が多く研究されている。
例えば、特開2005−93572号公報(特許文献1)には、少なくとも一方が透光性である2つの電極の間に、接合により内部電界を生じる電子受容性有機物層と特定の高分子材料を含有する電子供与性有機物層が積層された光起電力素子が開示されている。
また、特開2001−305591号公報(特許文献2)には、会合体を形成可能な色素分子と光安定剤(光退色防止剤)としてのクエンチャーを含有する色素会合体薄膜とそれを用いる光スイッチが開示されている。
しかしながら、上記公報に記載の先行技術は、可視領域に広い吸収を有する光センサーに関し、波長幅の狭い範囲の検出が必要な場合には分光器などを用いる必要がある。
さらに、Minghua Liu, Akira Kira,「fabrication of J aggregate films in synthetic polyanion matrix and their chemochromism」, Elsevier, Thin Solid Films, 2000年, 359, p.104-107(非特許文献1)には、J会合体を含む薄膜の作成方法が記載されている。
しかしながら、上記文献には、J会合体を含む薄膜の作成方法が記載されているが、その薄膜は導電性に問題があり、光センサーとして用いることができない。
特開2005−93572号公報 特開2001−305591号公報 Minghua Liu, Akira Kira,「fabrication of J aggregate films in synthetic polyanion matrix and their chemochromism」, Elsevier, Thin Solid Films, 2000年, 359, p.104-107
本発明は、湿式成膜可能で製造が容易であり、安定性がよく、かつ高い変換効率を与える有機光起電力素子、およびそれを備えた、分光器やフィルターが要らず、色素の選択により検出波長が可変であり、かつ特定波長以下の光に対してのみ検出が可能である光センサーを提供することを課題とする。
本発明の発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、透明電極と背面電極との間に光起電力層としてJ会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を介在させることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
かくして、本発明によれば、透明電極と背面電極との間に光起電力層としてJ会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を介在させてなることを特徴とする有機光起電力素子が提供される。
また、本発明によれば、上記の有機光起電力素子の製造方法であり、
(1)透明電極上にJ会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む溶液を塗布して単層を形成し、次いで背面電極を形成する、および
(2)透明電極上に導電性高分子および任意に高分子電解質を含む溶液を塗布して層を形成し、次いでJ会合色素を含む溶液を塗布して層を形成し、次いで背面電極を形成する
ことを特徴とする有機光起電力素子の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、上記の有機光起電力素子を備えた光センサーが提供される。
本発明によれば、湿式成膜可能で製造が容易であり、安定性がよく、かつ高い変換効率を与える有機光起電力素子、およびそれを備えた、分光器やフィルターが要らず、色素の選択により検出波長が可変であり、かつ特定波長以下の光に対してのみ検出が可能である光センサーを提供することができる。
また、本発明の有機光起電力素子は、逆バイアスをかけることにより、光電流信号強度を飛躍的に向上させることができる。このような現象はフォトアバランシェ効果であると考えられるが、有機物では先行技術はない。
本発明の有機光起電力素子は、透明電極と背面電極との間に光起電力層としてJ会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を介在させてなることを特徴とする。すなわち、本発明の有機光起電力素子は、安定な状態でJ会合色素を含む光起電力層を有することを特徴とする。
本発明において「介在させる」とは、光起電力層がJ会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を含むことを意味する。
本発明の有機光起電力素子の光起電力層は、光の照射により起電力を発生する層であり、例えば、(1)J会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む単層、または(2)透明電極側から導電性高分子および任意に高分子電解質を含む層とJ会合色素を含む層との積層からなる。
図1は、本発明の有機光起電力素子の一例を示す模式断面図であり、上記(1)の例である。図中、1は透明電極付き基板、2は背面電極、3はJ会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む単層を示す。すなわち、この有機光起電力素子は、J会合色素をドープした導電性高分子を用いた例である。
図2は、本発明の有機光起電力素子の別の例を示す模式断面図であり、上記(2)の例である。図中、1は透明電極付き基板、2は背面電極、4は導電性高分子および任意に高分子電解質を含む層、5はJ会合色素を含む層を示す。すなわち、この有機光起電力素子は、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む層上にJ会合色素溶液を含む層を積層する例である。
図1および図2に示されるように、本発明の有機光起電力素子は、透明電極が基板に支持されているのが好ましい。また、透明電極が基板に支持されず、背面電極が基板に支持されていてもよい。なお、基板については後述する。
図1の有機光起電力素子は、透明電極付き基板1とJ会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む単層3との間に、J会合色素のJバンド吸収波長に吸収を有さないホール輸送性有機半導体を含む層(図示せず)を有していてもよい。
また、図1の有機光起電力素子は、背面電極2とJ会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む単層3との間に、電子輸送性有機半導体等を含む層(図示せず)を有していてもよい。
図2の有機光起電力素子は、透明電極付き基板1と導電性高分子および任意に高分子電解質を含む層4との間に、J会合色素のJバンド吸収波長に吸収を有さないホール輸送性有機半導体を含む層(図示せず)を有していてもよい。
また、図2の有機光起電力素子は、背面電極2とJ会合色素を含む層5との間に、電子輸送性有機半導体を含む層(図示せず)を有していてもよい。
なお、ホール輸送性有機半導体を含む層および電子輸送性有機半導体を含む層については後述する。
まず、本発明の有機光起電力素子の主要な構成材料について説明する。
本発明において用いられるJ会合色素は、1936年にJellyとScheibeによりそれぞれ独立に発見された色素分子の集合体(色素会合体)である。すなわち、シアニン系色素やスクアリウム系色素は、流動配向などにより分子が規則正しく配列した集合体を形成し、これらは単分子分散系に比べて長波長側にシフトした鋭い吸収帯と、ストークスシフトの極めて小さい蛍光帯を示す。
このようなJ会合色素に用いられる色素としては、例えば、特開2005−128152号公報に記載の色素が挙げられる。具体的には、シアニン色素、オキサシアニン色素、チアシアニン色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素などのシアニン系色素、スクアリウム系色素などが挙げられる。
これらの色素の中でも、極性溶剤に可溶であるものが好ましく、水溶性であるものが特に好ましい。具体的には、高いJ会合体形成能、高い光吸収効率の点でシアニン系色素が特に好ましい。
以下にシアニン系色素を例示するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
3-エチル-2-[2-[(3-エチル-5-フェニル-2(3H)-ベンゾオキサゾリリデン)メチル]-1-ブテニル]-5-フェニルベンゾオキサゾリウムヨージド(オキサシアニン色素、下式)
例えば、株式会社林原生物化学研究所製、品番:NK1538。
Figure 2008016227
3-エチル-2-[3-(3-エチル-2(3H)-ベンゾチアゾリリデン)-2-メチル-1-プロペニル]ベンゾチアゾリウムヨージド(チアシアニン色素、下式)
例えば、株式会社林原生物化学研究所製、品番:NK77。
Figure 2008016227
5-クロロ-2-[[5-クロロ-3-(3-スルホプロピル)-2(3H)-ベンゾチアゾリリデン]メチル]-3-(3-スルホプロピル)ベンゾチアゾリウムヒドロオキサイド、分子内塩、ナトリウム塩
(チアシアニン色素、下式)
例えば、株式会社林原生物化学研究所製、品番:NK3989。
Figure 2008016227
5-フェニル-2-[2-[[5-フェニル-3-(3-スルホプロピル)-2(3H)-ベンゾオキサゾリリデン]メチル]-1-ブテニル]-3-(3-スルホプロピル)ベンゾオキサゾリウムヒドロオキサイド、分子内塩、ナトリウム塩(オキサシアニン色素、下式)
例えば、株式会社林原生物化学研究所製、品番:NK1952。
Figure 2008016227
3-エチル-2-[2-[(3-エチル-2(3H)-ベンゾチアゾリリデン)メチル]-1-ブテニル]ベンゾチアゾリウムヨージド(チアシアニン色素、下式)
例えば、株式会社林原生物化学研究所製、品番:NK737。
Figure 2008016227
1-エチル-2[(1-エチル-2(1H)-キノリニリデン)メチル]キノリニウムブロミド(シアニン色素、下式)
例えば、株式会社林原生物化学研究所製、品番:NK1046。
Figure 2008016227
3-エチル-2-[(3-エチル-2(3H)-ベンゾオキサゾリリデン)メチル]ベンゾオキサゾリウムヨージド(オキサシアニン色素、下式)
例えば、株式会社林原生物化学研究所製、品番:NK863。
Figure 2008016227
本発明において用いられる導電性高分子としては、例えば、特開2006−57100号公報に記載の導電性高分子が挙げられる。具体的には、膜形成性の重合体からなり、共重合体およびオリゴマーを含む。このような導電性高分子としては、例えば、ポリ(アリーレンビニレン)重合体が挙げられ、ポリヘテロアリーレンが好ましく、ポリチオフェンが特に好ましい。
このような導電性高分子の中でも、極性溶剤に可溶であるものが好ましく、水溶性であるものが特に好ましい。具体的には、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(下式)が好適に用いられる。
Figure 2008016227
本発明において用いられる高分子電解質としては、例えば、特開2006−59540号公報に記載の高分子電解質が挙げられる。本発明においては高分子電解質は、極性溶剤に可溶であるものが好ましく、水と混合することによって均一なゾルとなる水溶性であるものが特に好ましい。
このような水溶性高分子電解質としては、例えば、高分子鎖内にC−H結合を含み、かつC−F結合を含まない炭化水素系電解質、高分子鎖内にC−H結合とC−F結合の双方を含む部分フッ素系電解質、高分子鎖内にC−F結合を含み、かつC−H結合を含まない全フッ素系電解質等が挙げられる。
また、水溶性高分子電解質に結合している酸基の種類は特に限定されない。このような酸基としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、スルホンイミド基などが挙げられる。水溶性高分子電解質には、これらの酸基の少なくとも1種が含まれていればよく、その結合形態は特に限定されない。
このような水溶性高分子電解質としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸(下式)が好適に用いられる。
Figure 2008016227
次に、本発明の有機光起電力素子の他の構成材料について説明する。
本発明において用いられる基板は、透明電極、背面電極および各層を形成する際に変化しないものであれば特に限定されず、そのような材料としては、例えば、ガラス、高分子フィルムなどが挙げられる。基板を背面電極側に設ける場合には透明でなくてもよい。
基板の厚さは、例えば0.1〜2mm程度である。
本発明において用いられる透明電極としては、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズおよびこれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイドなどの金属酸化物、金、白金、銀、銅などの金属、ポリアニリン、ポリチオフェンおよびそれらの誘導体などの有機導電体などが挙げられる。これらの中でもITOが好適に用いられる。また、基板と一体化しされて市販されているITO透明電極付きガラス基板を用いることもできる。
透明電極は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などの公知の方法により、基板上に形成することができる。
その膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して適宜選択することができ、例えば10nm〜10μm、好ましくは20nm〜1μm、より好ましくは50nm〜500nmである。
本発明において用いられる背面電極は、仕事関数の小さい材料からなるのが好ましい。例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、タングステンなどの金属材料およびこれらの合金が挙げられる。
背面電極は、真空蒸着法、スパッタリング法、金属薄膜を熱圧着するラミネート法などの公知の方法により形成することができる。
背面電極は2層以上の積層構造であってもよく、その膜厚は、例えば10nm〜10μm、好ましくは20nm〜1μm、より好ましくは50nm〜500nmである。
本発明において任意に用いられるホール輸送性有機半導体(ホール輸送性材料)を含む層および電子輸送性有機半導体(電子輸送性材料)を含む層は、それぞれホール(正孔)を輸送する機能を有する層および電子を輸送する機能を有する層である。
これらの層を構成するホール輸送性材料および電子輸送性材料としては、公知の低分子化合物や高分子化合物が挙げられる。具体的には、ポリフルオレン、ポリアリーレン、ポリアリーレンビニレン、芳香族アミンおよびそれらの誘導体、共重合体などが挙げられる。
これらの層は、公知の方法、例えば用いる材料が低分子化合物の場合には、真空蒸着や高分子バインダーとの混合溶液からの成膜方法、用いる材料が高分子化合物の場合には、溶液や溶融状態からの成膜方法により形成することができる。
これらの膜厚は、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜300nmであり、より好ましくは5nm〜200nmである。
本発明の有機光起電力素子は、例えば、
(1)透明電極上にJ会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む溶液を塗布して単層を形成し、次いで背面電極を形成する、または
(2)透明電極上に導電性高分子および任意に高分子電解質を含む溶液を塗布して層を形成し、次いでJ会合色素を含む溶液を塗布して層を形成し、次いで背面電極を形成する
ことにより製造することができる。
図1を用いて上記の製造方法(1)について説明する。
製造方法(1)では、透明電極1上にJ会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む溶液Aを塗布してJ会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む単層3を形成し、次いで背面電極2を形成する。
上記の溶液Aは、例えば、次のように調製することができる。
まず、前記の導電性高分子および任意に高分子電解質を溶剤に溶解させて溶液A1を得る。このとき、導電性高分子は高分子電解質となるものが好ましい。溶液A1としては、市販のものを用いることもできる。
また、前記のJ会合色素を溶剤に溶解させて溶液A2を得る。
次いで、溶液A1に溶液A2を添加することにより溶液Aを得る。
溶解に際しては、各成分の溶解度を上昇させるために加熱してもよい。
溶液A1および溶液A2で用いる溶剤はいずれも極性溶剤が好ましく、これらは同一であっても異なっていてもよい。
極性溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶剤;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル系溶剤;アセトン、ジエチルケトン、ジブチルケトン、5-メチル-3-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどのケトン系溶剤;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;ピリジンなどのアミン系溶剤;ジメチルスルフォキシドなどのスルフォキシド系溶剤;ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド系溶剤が挙げられ、これらの中でもメタノールなどの炭素数3以下のアルコール系溶剤、水(超純水)が好ましく、導電性高分子および高分子電解質を効率よくイオン化させる観点から水が特に好ましい。
高分子電解質は任意成分であり、導電性高分子が単独であってもよいが、導電性高分子と高分子電解質とを混合する場合、これらの比は、アニオンとカチオンの比が等量となるように調整するのが好ましい。また、金属のようなアニオン、ハロゲンのようなカチオンなどの他のイオン成分が混入していてもよい。
導電性高分子および高分子電解質の合計の溶剤に対する濃度は、0.01〜1000g/L程度が好ましく、成膜した層の質を向上させる観点から濃度は、0.1〜10g/L程度が特に好ましい。
また、J会合色素の溶剤に対する濃度は、0.01〜1000g/L程度が好ましく、J会合体が効率よく形成され、かつ導電性高分子および任意に高分子電解質を含む溶液に効率よく分散させる観点から、濃度は、0.1〜10g/L程度が特に好ましい。
J会合色素と導電性高分子および高分子電解質の合計との重量比は1:0.1〜9程度が好ましく、成膜した層の質を向上させ、かつ導電性を良好にする観点から、重量比は1:1〜9程度が特に好ましい。
次いで、得られた溶液Aを前記の透明電極1上に塗布し乾燥して、J会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む単層3を得る。
塗布方法としては、スピンコート法などの公知の方法が挙げられる。
塗布条件は、溶液Aの性状などにより適宜設定すればよく、例えば、スピンコート法の場合、回転数は100〜5000回転/分程度、塗布時間は10〜300秒程度である。
乾燥は、真空定温乾燥機などの公知の装置を用いて行うことができる。乾燥条件は、成膜した層が変化しない程度であればよく、例えば、室温〜80℃程度である。
得られる単層3の膜厚は0.1〜1000nm程度が好ましく、成膜性および導電性の観点から1〜100nm程度が特に好ましい。
したがって、単層3、すなわち光起電力層は、10〜90重量%、好ましくは50〜90重量%のJ会合色素を含み、かつJ会合色素と導電性高分子および高分子電解質の合計との重量比が、1:0.1〜9、好ましくは1:1〜9であるのが好ましい。
次いで、前記のように背面電極を形成して、有機光起電力素子を得る。
図2を用いて上記の製造方法(2)について説明する。
製造方法(2)では、透明電極1上に導電性高分子および任意に高分子電解質を含む溶液Bを塗布して導電性高分子および任意に高分子電解質を含む層4を形成し、次いでJ会合色素を含む溶液Cを塗布してJ会合色素を含む層5を形成し、次いで背面電極2を形成する
上記の溶液Bおよび溶液Cは、例えば、製造方法(1)の溶液A1および溶液A2と同様にして調製することができる。
用いる溶剤、導電性高分子と高分子電解質の比、導電性高分子および高分子電解質の合計の溶剤に対する濃度およびJ会合色素の溶剤に対する濃度は、製造方法(1)と同様である。
また、溶解に際しては、各成分の溶解度を上昇させるために加熱してもよい。
次いで、得られた溶液Bおよび溶液Cを前記の透明電極1上に順次塗布するが、その塗布方法および塗布条件は、製造方法(1)と同様である。
次いで、前記のように背面電極を形成して、有機光起電力素子を得る。
導電性高分子および任意に高分子電解質を含む層4、およびJ会合色素を含む層5の膜厚は、それぞれ0.1〜1000nm程度が好ましく、成膜性および導電性の観点から1〜100nm程度が特に好ましい。
したがって、層4および層5の積層、すなわち光起電力層は、10〜90重量%、好ましくは50〜90重量%のJ会合色素を含み、かつJ会合色素と導電性高分子および高分子電解質の合計との重量比が、1:0.1〜9、好ましくは1:1〜9であるのが好ましい。
上記のように、本発明の有機光起電力素子では、光起電力層を湿式成膜により形成することができるが、これらに用いる塗液、すなわちJ会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む溶液、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む溶液、ならびにJ会合色素を含む溶液は、極性溶剤を含むものが好ましい。
本発明によれば、本発明の有機光起電力素子を備えた光センサーが提供される。本発明の光センサーは、後述する実施例に示されるように、分光器やフィルターが要らず、色素の選択により検出波長が可変であり、かつ特定波長以下の光に対してのみ検出が可能である。
また、本発明の有機光起電力素子は、逆バイアスをかけることにより、光電流信号強度を飛躍的に向上させることができる。
本発明の有機光起電力素子は、光センサー以外にも、光スイッチ、光分配器、光変調器などに適用できる。
本発明を以下の実施例および比較例により具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1)
図2の有機光起電力素子を作成し、それを評価した。
ITO(インジウム錫酸化物、膜厚:200nm)透明電極付きガラス基板(三容真空工業株式会社製)をアルカリ洗浄液(関東化学株式会社製、製品名:クレア635N)に浸漬し、超音波洗浄を行った。その後、基板を超純水で再度洗浄し、アセトン煮沸洗浄を行った。洗浄後の基板を紫外線−オゾン洗浄器でさらに洗浄した。
洗浄済みのITO透明電極付きガラス基板の透明電極1上に、導電性高分子としてのポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)と高分子電解質としてのポリスチレンスルホン酸(PSS)を含む溶液(PEDOT/PSS溶液、H.C.スタルク社製、製品名:バイトロン P VP AI4083)を、2000回転/分、30秒間の条件でスピンコート法により塗布した。
得られた基板を50℃、真空度(1Pa)の条件に設定した真空定温乾燥機で一晩乾燥させ、膜厚50nmの導電性高分子および任意に高分子電解質を含む層4を得た。
次に、色素としての5-フェニル-2-[2-[[5-フェニル-3-(3-スルホプロピル)-2(3H)-ベンゾオキサゾリリデン]メチル]-1-ブテニル]-3-(3-スルホプロピル)ベンゾオキサゾリウムヒドロオキサイド、分子内塩、ナトリウム塩(株式会社林原生物化学研究所製、品番:NK1952)4mgをメタノール0.5mLに加え、加熱しながら溶解させた。
得られた溶液を導電性高分子および任意に高分子電解質を含む層4上に、2000回転/分、30秒間の条件でスピンコート法により塗布した。
得られた基板を50℃、真空度(1Pa)の条件に設定した真空定温乾燥機で一晩乾燥させ、膜厚20nmのJ会合色素を含む層5を得た。
得られたJ会合色素を含む層5の吸収スペクトルを測定したところ、540nm付近に鋭いピークを有する吸収スペクトルが観測された。
次に、真空蒸着装置(アルバック株式会社製)を用いて、圧力4×10-4Pa、蒸着速度10Å/秒の条件で抵抗加熱法によりJ会合色素を含む層5上にアルミニウムを蒸着し、膜厚200nmの背面電極を得て、有機光起電力素子を完成した。
図3に示すように、得られた有機光起電力素子(光センサー素子)に、分光器(ジョバンイボン社製、型式:H−10)で分光したキセノンランプ(トーヨー株式会社製、300W)の光を照射し、エレクトロメーター(ケースレー社製、型式:617)を用いて、有機光起電力素子の入射光波長(nm)−電流特性(光電流信号強度:任意単位)を測定した。得られた結果を図4に示す。
また、吸収波長が最大となる540nmの光を照射したときの電流(A)−電圧(V)特性を測定した。得られた結果を図5に示す。
さらに、背面電極を陰極、透明電極を陽極として0Vおよび−1Vの電圧を印加した状態での入射光波長(nm)−電流密度(mA/cm2)特性を測定した。得られた結果を図6に示す。
(比較例1)
導電性高分子および任意に高分子電解質を含む層4を形成せず、洗浄済みのITO透明電極付きガラス基板の透明電極1上に直接J会合色素を含む層5を形成すること以外は、実施例1と同様にして有機光起電力素子を完成した。
得られた有機光起電力素子について、有機光起電力素子の入射光波長(nm)−電流特性(光電流信号強度:任意単位)を測定したが、J会合色素を含む層5の成膜性が悪く、光起電力発生に伴う有意な信号は観測されなかった。
(実施例2)
図1の有機光起電力素子を作成し、それを評価した。
実施例1と同様にして、ITO透明電極付きガラス基板(三容真空工業株式会社製)を洗浄した。
次に、色素としての5-クロロ-2-[[5-クロロ-3-(3-スルホプロピル)-2(3H)-ベンゾチアゾリリデン]メチル]-3-(3-スルホプロピル)ベンゾチアゾリウムヒドロオキサイド、分子内塩、ナトリウム塩(株式会社林原生物化学研究所製、品番:NK3989)3mgを超純水1mLに加え、溶解させた。
得られた溶液を、導電性高分子としてのポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)と高分子電解質としてのポリスチレンスルホン酸(PSS)を含む溶液(PEDOT/PSS溶液、H.C.スタルク社製、製品名:バイトロン P VP AI4083)1mLに加えた。
得られた溶液を、洗浄済みのITO透明電極付きガラス基板の透明電極1上に、1500回転/分、30秒間の条件でスピンコート法により塗布した。
得られた基板を50℃、真空度(1Pa)の条件に設定した真空定温乾燥機で一晩乾燥させ、膜厚100nmのJ会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む単層3を得た。
得られたJ会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む単層3の吸収スペクトルを測定したところ、560nm付近に鋭いピークを有する吸収スペクトルが観測された。
次に、真空蒸着装置(アルバック株式会社製)を用いて、圧力4×10-4Pa、蒸着速度2〜5Å/秒の条件で抵抗加熱法によりJ会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む単層3上にアルミニウムを蒸着し、膜厚200nmの背面電極を得て、有機光起電力素子を完成した。
得られた有機光起電力素子に、分光器(ジョバンイボン社製、型式:H−10)で分光したキセノンランプ(トーヨー株式会社製、300W)の光を照射し、エレクトロメーター(ケースレー社製、型式:617)を用いて、有機光起電力素子の入射光波長(nm)−電流測定特性(電流信号強度:任意単位)を測定した。得られた結果を図7に示す。
(比較例2)
導電性高分子および高分子電解質を加えず、J会合色素のみを含む溶液を用いて、洗浄済みのITO透明電極付きガラス基板の透明電極1上に、J会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む単層3の代わりにJ会合色素を含む層5を2000回転/分、30秒間の条件でスピンコート法により塗布し形成すること、および圧力4×10-4Pa、蒸着速度10Å/秒の条件で抵抗加熱法によりJ会合色素を含む層5上にアルミニウムを蒸着して背面電極を得ること以外は、実施例2と同様にして有機光起電力素子を完成した。
得られた有機光起電力素子について、有機光起電力素子の入射光波長(nm)−電流特性(光電流信号強度:任意単位)を測定したが、J会合色素を含む層5の成膜性が悪く、光起電力発生に伴う有意な信号は観測されなかった。
本発明の有機光起電力素子の一例を示す模式断面図である。 本発明の有機光起電力素子の別の例を示す模式断面図である。 本発明の有機光起電力素子の評価装置を示す模式図である(実施例1)。 本発明の有機光起電力素子における入射光波長(nm)−電流特性(光電流信号強度:任意単位)の測定結果を示す図である(実施例1)。 本発明の有機光起電力素子における540nmの光を照射したときの電流(A)−電圧(V)特性の測定結果を示す図である(実施例1)。 本発明の有機光起電力素子における背面電極を陰極、透明電極を陽極として0Vおよび−1Vの電圧を印加した状態での入射光波長(nm)−電流密度(mA/cm2)の測定結果を示す図である(実施例1)。 本発明の有機光起電力素子における入射光波長(nm)−電流信号強度特性(電流信号強度:任意単位)の測定結果を示す図である(実施例2)。
符号の説明
1 透明電極付き基板
2 背面電極
3 J会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む単層
4 導電性高分子および任意に高分子電解質を含む層
5 J会合色素を含む層

Claims (10)

  1. 透明電極と背面電極との間に光起電力層としてJ会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を介在させてなることを特徴とする有機光起電力素子。
  2. 光起電力層が、(1)J会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む単層、または(2)透明電極側から導電性高分子および任意に高分子電解質を含む層とJ会合色素を含む層との積層からなる請求項1に記載の有機光起電力素子。
  3. J会合色素が、シアニン系色素からなる請求項1または2に記載の有機光起電力素子。
  4. 導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である請求項1〜3のいずれか1つに記載の有機光起電力素子。
  5. 光起電力層が、10〜90重量%のJ会合色素を含み、かつJ会合色素と導電性高分子および高分子電解質の合計との重量比が、1:0.1〜9である請求項1〜4のいずれか1つに記載の有機光起電力素子。
  6. 高分子電解質が、ポリスチレンスルホン酸である請求項1〜5のいずれか1つに記載の有機光起電力素子。
  7. 請求項1〜6のいずれか1つに記載の有機光起電力素子の製造方法であり、透明電極上にJ会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む溶液を塗布して単層を形成し、次いで背面電極を形成することを特徴とする有機光起電力素子の製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれか1つに記載の有機光起電力素子の製造方法であり、透明電極上に導電性高分子および任意に高分子電解質を含む溶液を塗布して層を形成し、次いでJ会合色素を含む溶液を塗布して層を形成し、次いで背面電極を形成することを特徴とする有機光起電力素子の製造方法。
  9. J会合色素、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む溶液、導電性高分子および任意に高分子電解質を含む溶液、ならびにJ会合色素を含む溶液が、極性溶剤を含む請求項7または8に記載の有機光起電力素子の製造方法。
  10. 請求項1〜6のいずれか1つに記載の有機光起電力素子を備えた光センサー。
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