しかし、移送管6の管径を大きくして移送管6での圧力損失を低減させる方法では、管径を大きくする分だけ設置スペースが増大するし、設置コストも増大する。また、貯留液3の種類によっては、移送管6の内面に貯留液3が固着することがあり、その場合には移送管6を定期的に交換する必要があり、移送管6を交換するためのコストも増大する。
また、塗布装置1が設置されている作業室全体の室温を上げることによって、貯留液3を加熱することは、非経済的である。そして、加熱保温室を設置して、その加熱保温室で容器2内の貯留液3を加熱保温することも考えられるが、加熱保温室を設置するための設置スペースが必要であるし、設置コストも掛かる。更に、貯留液3を加熱するための手間と時間が掛かる。
更に、ポンプ5bの能力を大きくするという方法は、その能力を大きくする分だけ初期コストが増大するし、ランニングコストもその分だけ増大する。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、貯留液を加熱するための費用が安価であって、加熱のためのスペースが不要であり、しかも、貯留液を比較的短時間で加熱して、ポンプから所定流量で流出させることができる加熱機能付きフォロープレート、汲出し装置及び貯留液の汲出し方法を提供することを目的としている。
請求項1の発明に係る加熱機能付きフォロープレートは、容器に貯留されている貯留液を汲み上げて流出させるポンプの吸込み口部に設けられ、前記容器の蓋として使用されるフォロープレートと、このフォロープレートに設けられ前記容器内の貯留液を加熱するための加熱部とを備えることを特徴とするものである。
請求項1の発明に係る加熱機能付きフォロープレートによると、加熱部をフォロープレートに設けてあり、このプレートは、容器内の貯留液の液面に配置されるので、加熱部によって、容器内の貯留液をその液面から容器の底に向かって順に加熱していくことができる。このように、貯留液の液面及びそれに近い部分を、短時間で加熱できるので、その加熱された液面に近い貯留液をポンプで吸い込むことができ、これによって、短時間でこの加熱された貯留液を、ポンプの流出口に接続される例えば移送管に通して送り出すことができる。
また、このように、容器内の貯留液がポンプから送り出される前の段階で、貯留液を加熱部によって加熱して、貯留液の粘度を低下させることができるので、貯留液を所定流量で流出させることができるし、貯留液の移送管での圧力損失を低減することができる。よって、例えば室温が低下しても、貯留液を、比較的低圧で、しかも所定流量でポンプから流出させることができる。
請求項2の発明に係る加熱機能付きフォロープレートは、請求項1の発明において、前記フォロープレートは、前記ポンプの吸込み口部と着脱自在に密封嵌合して結合するための装着孔を備え、前記装着孔の内周面は、合成樹脂又はゴムで形成されていることを特徴とするものである。
請求項2の発明に係る加熱機能付きフォロープレートによると、ポンプの吸込み口部を装着孔に装着すると、装着孔の内周面は、弾性的に拡径してポンプの吸込み口部と嵌合し、これによって着脱自在に結合することができる。そして、その嵌合部は、密封されるので、外気が嵌合部を通って容器内に流入することがなく、よって、気体が貯留液内に混入しないように汲み出すことができる。そして、ポンプをフォロープレートの装着孔に装着する前に、予めこのプレートを容器に挿入して貯留液を加熱しておくことができるので、貯留液を容器から汲み出すときに、直ちにこの加熱された貯留液を汲み出して流出させることができる。
請求項3の発明に係る加熱機能付きフォロープレートは、請求項2の発明において、前記装着孔の内周面は、短円筒形、前記フォロープレートの上面側に向かって広がるテーパ形状、又は上側開口縁から下側開口縁の手前まで延びる1又は2以上の溝部が形成されていることを特徴とするものである。
請求項3の発明に係る加熱機能付きフォロープレートによると、装着孔の内周面を短円筒形にすることによって、装着孔に装着されたポンプの吸込み口部が、装着孔から外れ難くすることができる。そして、装着孔の内周面をテーパ形状にすることによって、ポンプの吸込み口部を装着孔に装着する際に、吸込み口部の下端と、液面との間に気体が存在しないようにして、吸込み口部を装着孔に装着することができる。また、装着孔の内周面に対して、上側開口縁から下側開口縁の手前まで延びる1又は2以上の溝部を形成したものでは、溝部の下側部が貯留液に浸かるように、加熱機能付きフォロープレートを貯留液の液面に配置して、この状態で、ポンプの吸込み口部を装着孔に装着すると、吸込み口部の下端と、液面との間に気体が存在しないようにして、吸込み口部を装着することができる。
請求項4の発明に係る加熱機能付きフォロープレートは、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記加熱部の前記貯留液と反対側に向かう面を覆う位置に配置された断熱部を備えることを特徴とするものである。
請求項4の発明に係る加熱機能付きフォロープレートによると、加熱部の貯留液と反対側に向かう面を、断熱部で覆っているので、貯留液を効率よく加熱することができる。従って、貯留液を所定の温度に加熱するときに、貯留液の局所的な温度上昇を抑制でき、加熱部の温度を低くすることができる。これによって、例えば貯留液が熱硬化性である場合、貯留液の熱硬化を防止又は抑制することができる。そして、熱硬化を防止等することができるので、貯留液を滑らかに移送管等に通して送出することができる。
請求項5の発明に係る加熱機能付きフォロープレートは、請求項4の発明において、前記断熱部が、前記フォロープレートであることを特徴とするものである。
請求項5の発明に係る加熱機能付きフォロープレートによると、フォロープレート自体が断熱部としての機能を果たすので、部品点数を少なくすることができ、経済的である。
請求項6の発明に係る加熱機能付きフォロープレートは、請求項1乃至5のいずれかの発明において、前記加熱部と対応する温度を検出する温度検出部を備えることを特徴とするものである。
請求項6の発明に係る加熱機能付きフォロープレートによると、このプレートを容器内の貯留液の液面に配置して、加熱部によって貯留液を加熱するときに、温度検出部が加熱部と対応する温度を検出することができる。従って、例えば作業者は、この検出温度を目で見て加熱部を操作して、貯留液の液温が所定の温度となるように手動で調整できるし、自動で制御できるようにすることもできる。
請求項7の発明に係る加熱機能付きフォロープレートは、請求項6の発明において、前記温度検出部によって検出された検出温度に基づいて、前記容器内の貯留液の液温、又は前記ポンプから流出する前記貯留液の液温を制御する温度制御部を備えることを特徴とするものである。
請求項7の発明に係る加熱機能付きフォロープレートによると、温度制御部は、温度検出部によって検出された検出温度に基づいて、容器内の貯留液の液温、又はポンプから流出する貯留液の液温が所定温度となるように、加熱部を制御することができる。つまり、例えば温度検出部によって検出される検出温度と、容器内の貯留液の液温、又はポンプから流出する貯留液の液温との関係を予め実験で得ておくことによって、容器内の貯留液の液温、又はポンプから流出する貯留液の液温が、所定の液温よりも上がらないように適切に貯留液を加熱することができる。よって、貯留液(例えば熱硬化性の貯留液)を、品質を変化(熱硬化)させないように加熱することができる。
請求項8の発明に係る汲出し装置は、容器に貯留されている貯留液をポンプで汲み上げて流出させる汲出し装置において、請求項1乃至7のいずれかに記載の加熱機能付きフォロープレートを備えることを特徴とするものである。
請求項8の発明に係る汲出し装置によると、上記の通り、各加熱機能付きフォロープレートの作用を奏することができる。よって、貯留液を所定流量でポンプの流出口から確実に流出させることができる。
請求項9の発明に係る汲出し装置は、請求項8の発明において、前記ポンプは、一軸偏心ねじポンプであることを特徴とするものである。
請求項9の発明に係る汲出し装置によると、ポンプそのものも定流量ポンプであるので、容器内の貯留液を精度良く所定流量で汲出して流出させることができる。
請求項10の発明に係る貯留液の汲出し方法は、容器に貯留されている貯留液の液面に、加熱部を備える加熱機能付きフォロープレートを配置して、この加熱機能付きフォロープレートに形成されている装着孔にポンプの吸込み口部を装着し、そして前記ポンプで前記貯留液を汲み上げて流出させる貯留液の汲出し方法であって、前記装着孔に前記ポンプが装着されていない前記加熱機能付きフォロープレートを、前記貯留液の液面に配置して、前記加熱部によって前記容器内の貯留液を加熱し、しかる後に、前記液面に配置された前記加熱機能付きフォロープレートの前記装着孔に前記ポンプの吸込み口部を装着することを特徴とするものである。
請求項10の発明に係る貯留液の汲出し方法によると、まず、装着孔にポンプが装着されていない加熱機能付きフォロープレートを、容器に挿入して貯留液の液面に配置する。そして、加熱部によって容器内の貯留液を加熱する。しかる後に、液面に配置された加熱機能付きフォロープレートの装着孔にポンプの吸込み口部を装着して、ポンプでこの加熱された貯留液を汲み上げて流出させることができる。
請求項1の発明に係る加熱機能付きフォロープレートによると、フォロープレートに設けた加熱部によって、容器に貯留されている貯留液を直接に加熱して、この加熱された貯留液をポンプから流出させる構成としたので、貯留液を加熱するための設備の費用、及び加熱エネルギの費用が安価であって、加熱のためのスペースが不要であり、しかも、貯留液を比較的短時間で加熱して所定流量で流出させることができる。
つまり、従来のように、移送管での圧力損失を低減するために、移送管の管径を大きくする必要がないので、移送管の設置スペースが増大しないし、設置コストも増大しない。また、例えば移送管の内面に貯留液が固着するために移送管を定期的に交換する場合でも、移送管を交換するためのコストも増大しない。
また、塗布装置が設置されている作業室全体の室温を上げる必要がなく、容器内の貯留液を加熱するだけでよいので経済的である。そして、加熱保温室を設置する必要がないので、加熱保温室のための設置スペースが不要であるし、設置コストも掛からない。更に、貯留液を加熱するための手間と時間も掛からない。
更に、ポンプの能力を大きくする必要がないので、初期コストが増大しないし、ランニングコストも増大しない。
請求項8の発明に係る汲出し装置によると、上記の通り、加熱機能付きフォロープレートによって、容器内の貯留液を加熱して粘度を低下させることができる。よって、ポンプの流出口から貯留液を所定流量で確実に流出することができる。
請求項10の発明に係る貯留液の汲出し方法によると、ポンプを加熱機能付きフォロープレートに装着する前に、予めこのプレートを容器に挿入して貯留液を加熱しておくことができるので、貯留液を容器から汲み出すときに、直ちにこの加熱された貯留液を汲出して流出させることができる。
以下、本発明に係る加熱機能付きフォロープレート(以下、単に「加熱機能付きプレート」と言うこともある。)、汲出し装置、及び貯留液の汲出し方法の一実施形態を、図1〜図5を参照して説明する。この汲出し装置11は、図4(a)、(b)、(c)に示すように、加熱機能付きプレート12、及びポンプ14を備えている。このポンプ14は、例えばドラム缶やペール缶等の容器2に貯留されている貯留液3を汲み上げて、流出口15から所定流量で流出させることができるものである。
この汲出し装置11は、図5に示すように、塗布装置10や充填装置等に適用することができるものである。この塗布装置10は、汲出し装置11によって汲み出された貯留液3を、流出口15に接続している移送管61に所定流量で通して吐出機4に供給し、そして、この吐出機4から貯留液3を規定流量で吐出して各種部材に塗布することができるものである。ただし、図5では、吐出機4を誇張して描いてある。
貯留液3は、例えばペースト状又はクリーム状の食品材料、シール剤、制振剤、軟膏、パテ剤等の高粘度液である。勿論、水に近い粘性を有する低粘度液も使用することができ、必要に応じてその液体を加熱して所望の温度にすることができる。そして、容器2は、例えば上側に開口し、底部を有する短円筒形状のものである。
図4(a)は、汲出し装置11の側面図であり、加熱機能付きプレート12が容器2に挿入され、この加熱機能付きプレート12には、ポンプ14が装着されておらず、容器2内の貯留液3を汲み出す前の状態を示している。図4(b)は、汲出し装置11の正面図であり、ポンプ14が容器2に挿入されている加熱機能付きプレート12に装着されており、容器2内の貯留液3を汲み出している状態を示している。図4(c)は、この汲出し装置11に設けられている定荷重バネ16を示す斜視図である。
汲出し装置11は、図4(a)、(b)に示すように、ポンプ14を備えるポンプ装置17と、このポンプ装置17を昇降させるための昇降機構部18と、定荷重機構部19とを備えている。
ポンプ装置17は、図4(a)、(b)に示すように、ポンプ14の吸込み口14aから容器2内の貯留液3を吸い込んで、流出口15から所定流量で流出することができるものである。この流出口15には、図5に示す移送管61が接続している。ポンプ14は、その下端部に加熱機能付きプレート12が着脱自在に取り付けられるものであり、その上端部にポンプケーシング20が取り付けられている。このポンプケーシング20の上端部には、ブラケット21を介して減速機22及び電動モータ23が取り付けられている。
ポンプ14は、図3に示すように、縦型の一軸偏心ねじポンプであり、ロータ24とステータ25とを有している。ロータ24は、雄ねじ形状であり、雌ねじ形状の内孔25aを有するステータ25に回動自在に装着されている。そして、このロータ24の上端は、コネクティングロッド26を介して減速機22の回転軸と連結している。なお、コネクティングロッド26の上下の各端部は、それぞれユニバーサルジョイント27を介して減速機22の回転軸、及びロータ24と連結している。
昇降機構部18は、図4(a)、(b)に示すように、ポンプ装置17を昇降させるためのものであり、上下方向に向けて配置されている一対のレール28、28を備えている。この一対のレール28、28に対して、ポンプ装置17がスライドプレート29、定荷重機構部19、支持部30、及びブラケット21を介して昇降自在に設けられている。この一対のレール28、28は、それぞれ支柱31、31に設けられており、この一対の支柱31、31の下端部には台座32が設けられている。そして、台座32には、キャスタ33、・・・が設けられている。
また、図4(a)に示すように、ポンプ装置17が取り付けられているスライドプレート29は、連結具34を介してチェーン35と連結している。このチェーン35は、上下の各位置に取り付けられている2つのスプロケット36、36、及び昇降ハンドル37に掛けられている。この昇降ハンドル37を作業者が回動操作することによって、ポンプ装置17をレール28、28に沿って昇降させることができる。また、後述するように、ポンプ装置17は、その吸込み力によって、このポンプ装置17自体が下降することができる。なお、上下の各スプロケット36、36は、支柱31、31の上下の各端部に設けられている上板38及び下板39に取り付けられている。そして、昇降ハンドル37は、補強支柱40に取り付けられている。
定荷重機構部19は、図4(a)に示すように、作業者が比較的小さい力で昇降ハンドル37を回動させることによって、ポンプ装置17を昇降させることができるようにすると共に、ポンプ14が作動して容器2内の貯留液3を汲み上げているときに、ポンプ14の吸込み力によって、ポンプ装置17が自動的に液面に追従して下降できるようにするためのものである。
この定荷重機構部19は、定荷重バネ16を有し、この定荷重バネ16は筐体41に収容されている。この筐体41は、スライドプレート29に取り付けられており、そして、この筐体41に支持部30が設けられている。この支持部30にブラケット(ポンプ装置17)21が取り付けられている。
定荷重バネ16は、図4(a)、(c)に示すように、上下の各ドラム軸42、42に対して相反する方向に巻き付けられて取り付けられており、この上下の各ドラム軸42、42は、筐体41に回動自在に設けられている。そして、この上側ドラム軸42には、ドラム43が固着され、このドラム43にバランスワイヤ44が巻き付けられていて、バランスワイヤ44の一端がドラム43に結合している。また、バランスワイヤ44は、上板38に設けられている滑車45に掛けられており、その他端がこの上板38に結合している。
次に、図1〜図3を参照して、加熱機能付きプレート12を説明する。この加熱機能付きプレート12は、図1(a)、(b)に示すように、全体として一定の厚みを有する略円板状体として形成されており、フォロープレート62と、加熱部63とを備えている。
フォロープレート62は、加熱機能付きプレート12が貯留液3に浮くようにすることができる材質であり、例えば発泡ポリエチレン等の発泡合成樹脂や発泡合成ゴムの独立気泡体で形成されている。
そして、フォロープレート62は、柔軟性を有しており、容器2の内径よりも少し大きい直径に形成されている。従って、この加熱機能付きプレート12を容器2内に圧入して装着したときは、加熱機能付きプレート12が弾性変形して、その外周部12aと、容器2の内周面2aとの接触部が密封される。
また、フォロープレート62は、図1(a)、(b)に示すように、下面に環状の凹部62aが形成され、この環状凹部62aに加熱部63が例えばボルト(図示せず)で取り付けられている。そして、このように加熱部63が取り付けられた状態で、加熱機能付きプレート12の下面12bが平坦面として形成され、この加熱部63が加熱機能付きプレート12の底面の一部を形成している。
加熱部63は、図1(a)、(b)に示すように、防水構造であって、例えば抵抗加熱型の電気ヒータであり、外形が円環状の板状体である。そして、この加熱部63の上面には、例えば熱電対等の温度検出部64が設けられている。この温度検出部64は、加熱部63の温度、又はそれと対応する温度を検出することができるものである。これら加熱部63及び温度検出部64は、接続電線65を介して温度制御部66と電気的に接続している。
温度制御部66は、例えば容器2内の貯留液3、及びポンプ14の流出口15から流出する貯留液3が予め設定された液温となるように、加熱部63を制御するものである。このように、温度制御部66が加熱部63を制御する方法として、例えば加熱部63に印加される電圧値を変更したり、印加電圧をON・OFFする方法がある。なお、温度制御部66に予め設定される液温は、貯留液3の比熱、粘度、熱伝導率等の性状に応じて設定される。このように、加熱部63によって容器2内の貯留液3を加熱するのは、低温では高粘度の貯留液3を加熱することによって粘度を低くして、貯留液3をポンプ14で吸い込んで吐出し易く、更に、移送管61に通し易くするためである。そして、この液温は、貯留液3の品質に影響のない温度である。
また、フォロープレート62は、発泡合成樹脂や発泡合成ゴムで形成されているので、断熱部としての機能を備えており、これによって、加熱部63が発生する熱が外気中に放熱することを抑制することができ、効率よく容器2内の貯留液3を加熱できるようにすることができる。
また、加熱機能付きプレート12は、図1(a)、(b)に示すように、その中央部に装着孔47が形成され、この装着孔47は、ポンプ14の先端部に形成されている吸込み口部14bが着脱自在に装着されるものである。
装着孔47は、図1(a)、(b)、(c)に示すように、加熱機能付きプレート12を、容器2に挿入して容器2に貯留されている貯留液3の液面に配置するときに、加熱機能付きプレート12の下面12bと、液面との間に存在する空気を、この装着孔47に通して外気中に排出することができるものである。装着孔47は、横断面形状が円形であり、加熱機能付きプレート12の上面側に向かって広がるテーパ形状の貫通孔である。この装着孔47の形状は、ポンプ14の先端部に形成されている吸込み口部14bと対応する形状である。
このように、装着孔47の内周面は、ポンプ14の吸込み口部14bと対応するテーパ形状であること、及び発泡合成樹脂製等のフォロープレート62が柔軟性を有することによって、ポンプ14の吸込み口部14bが装着孔47に装着されたときに、装着孔47が吸込み口部14bと嵌合して着脱自在に結合すると共に、その嵌合部が密封される。
ただし、図2(a)に示すように、ポンプ14の吸込み口部14bが装着孔47に対して、所定の深さで装着できるようにするために、吸込み口部14bに鍔状部14cが設けられている。
次に、図5に示すように、ポンプ装置17の流出口15に順に接続される移送管61、圧力調整弁67、及び吐出機4を説明する。移送管61は、金属管と、この金属管の両端部に接続している第1及び第2フレキシブル管とを備えている。吐出機4は、例えばロボット(図示せず)のアーム先端部に取り付けられて、貯留液3を各種部材に塗布できるようになっている。
圧力調整弁67は、ポンプ14から移送管61を介して供給される高圧の貯留液3を、所定の低圧に調整して吐出機4に供給するものである。
吐出機4は、図5に示すように、塗布ポンプ(一軸偏心ねじポンプ)80と、この塗布ポンプ80を駆動するための電動モータ(サーボモータ)81とを備えている。塗布ポンプ80は、これが作動することによって、圧力調整弁67の出口から供給される貯留液3を吸込み口から吸い込んで、吐出口4bから所定量ずつ規定流量で吐出することができる。
次に、図1〜図5に示すように、汲出し装置11が適用された塗布装置10を使用して、容器2内の貯留液3を吐出機4から吐出させる手順を説明する。まず、図1(a)に示すように、作業者は、例えば容器2を汲出し装置11に取り付ける前の段階で、加熱機能付きプレート12の装着孔47にポンプ14を装着していない状態で、加熱機能付きプレート12を容器2内に挿入して、容器2内に押し込んでいく。このとき、加熱機能付きプレート12の下面12bと、容器2内の貯留液3の液面との間に存在する空気を、この装着孔47に通して外気中に排出することができる。このようにして、図1(c)に示すように、加熱機能付きプレート12を、その下面12bと液面との間に空気が存在しない状態で、その液面に配置する。
次に、加熱部63を作動させて容器2内の貯留液3を加熱する。このように、容器2内の貯留液3を加熱することによって、低温では高粘度の貯留液3の粘度を低くすることができ、貯留液3をポンプ14で吸い込んで吐出し易くすることができる。更に、ポンプ14から吐出された貯留液3を移送管61に通し易くすることができ、所定流量で吐出機4に供給できるようにすることができる。
また、図1及び図2に示す加熱機能付きプレート12は、貯留液3に浮かぶ材質、例えば発泡合成樹脂や発泡合成ゴムの独立気泡体で形成されているので、貯留液3に浮かぶことができる。よって、加熱機能付きプレート12を、容器2内の貯留液3の液面に配置して、加熱部63によって容器2内の貯留液3を加熱するときに、加熱機能付きプレート12が貯留液3内に沈み込むことがない。従って、加熱機能付きプレート12を容器2内の貯留液3の液面に配置しておけば、必要なときにポンプ14を装着孔47に装着して、容器2内の所定液温に加熱された貯留液3を汲み出すことができる。
次に、図4(a)、(b)に示すように、作業者は、この加熱機能付きプレート12が取り付けられた容器2を、汲出し装置11の台座32の所定位置に取り付けて固定する。そして、図2(a)に示すように、作業者が昇降機構部18を操作してポンプ装置17を下降させて、ポンプ14の吸込み口部14bを装着孔47に装着する。
次に、ポンプ装置17を駆動する。これによって、図2(a)に示す容器2内の加熱されて粘度が低くなった貯留液3を、ポンプ14の吸込み口14aから吸い込んで流出口15から流出させることができる。この際、加熱機能付きプレート12の下面12b側に空気が存在していないので、ポンプ14に吸い込まれる貯留液3中に空気が含まれることがなく、従って、貯留液3を所定流量でポンプ14の流出口15から確実に流出させることができる。
このポンプ14の流出口15から流出する加熱された貯留液3は、移送管61を通って吐出機4に供給される。この吐出機4に供給される貯留液3は、圧力調整弁67によって所定の圧力に調整される。吐出機4は、この加熱された貯留液3を、規定流量で吐出して各種部材に塗布することができる。
なお、貯留液3をポンプ14で汲み上げているときは、容器2内が負圧となり、貯留液3の減少に伴って加熱機能付きプレート12及びポンプ装置17が自動的に下降する。そして、加熱機能付きプレート12が下降するときは、プレート12の外周部12aと容器2の内周面2aとの接触部が密封されているので、容器2内の貯留液3がその接触部から漏出することを防止できる。
次に、図2(b)に示すように、容器2内の貯留液3が少なくなり、貯留液3を所定流量で汲み上げることができなくなる手前の予め定めた液量となったときは、この使用済みの容器2を、規定量の貯留液3が貯留されている別の容器2に交換する。
つまり、図2(b)に示すように、作業者が昇降機構部18を操作してポンプ装置17を上昇させて、ポンプ14の吸込み口部14bを加熱機能付きプレート12の装着孔47から取り外す。そして、この使用済みの容器2を汲出し装置11から取り外して、規定量の貯留液3が貯留されている新しい容器2を汲出し装置11の台座32に固定する。この新しい容器2には、図1(a)、(b)、(c)に示すようにして、予め加熱機能付きプレート12が装着されており、容器2内の貯留液3は、加熱部63によって所定の液温に加熱されている。
次に、図2(a)に示すように、上記と同様の手順を行うことによって、ポンプ14を加熱機能付きプレート12の装着孔47に装着して、容器2内の貯留液3をポンプ14で吸い込んで所定流量で流出口15から流出させることができ、吐出機4から吐出することができる。
次に、図1〜図5に示す加熱機能付きプレート12の作用を説明する。図1(a)、(b)、(c)示すように、この加熱機能付きプレート12によると、加熱部63をプレート62の下面12bに設けてあり、このプレート62は、容器2内の貯留液3の液面に配置されるので、加熱部63によって、容器2内の貯留液3をその液面から容器2の底に向かって順に加熱していくことができる。このように、貯留液3の液面及びそれに近い部分を、短時間で加熱できるので、その加熱された液面に近い貯留液3をポンプ14で吸い込むことができ、これによって、短時間でこの加熱された貯留液3を、ポンプ14の流出口15に接続される例えば移送管61に通して送り出すことができる。
また、このように容器2内の貯留液3がポンプ14から送り出される前の段階で、予め容器2内の貯留液3を加熱部63によって加熱して、貯留液3の粘度を低下させることができるので、貯留液3を容器2から汲み出すときに、直ちにこの加熱された貯留液3を汲み出して流出させることができるし、貯留液3の移送管61での圧力損失を低減することができる。よって、例えば室温が低下しても、貯留液3を、比較的低圧で、しかも所定流量でポンプ14から流出させることができる。
そして、この加熱機能付きプレート12によると、図2(a)に示すように、プレート62に設けた加熱部63によって、容器2に貯留されている貯留液3を直接に加熱して、この加熱された貯留液3をポンプ14から流出させる構成としたので、貯留液3を加熱するための設備の費用、及び加熱エネルギの費用が安価であって、加熱のためのスペースが不要であり、しかも、貯留液3を比較的短時間で加熱して所定流量で流出させることができる。
つまり、従来のように、移送管61の管径を大きくして圧力損失を低減する必要がないので、移送管61の設置スペースが増大しないし、設置コストも増大しない。また、例えば移送管61を定期的に交換する場合でも、移送管61を交換するためのコストも増大しない。
また、塗布装置10が設置されている作業室全体の室温を上げる必要がなく、容器2内の貯留液3を加熱するだけでよいので経済的である。そして、加熱保温室を設置する必要がないので、加熱保温室のための設置スペースが不要であるし、設置コストも掛からない。更に、貯留液3を加熱するための手間と時間も掛からない。
更に、ポンプ14の能力を大きくする必要がないので、初期コストが増大しないし、ランニングコストも増大しない。
そして、図1及び図2に示す加熱機能付きプレート12によると、ポンプ14の吸込み口部14bを装着孔47に装着すると、装着孔47の内周面は、弾性的に拡径してポンプ14の吸込み口部14bと嵌合し、これによって着脱自在に結合することができる。そして、その嵌合部は、密封されるので、外気が嵌合部を通って容器2内に流入することがなく、よって、空気が貯留液3内に混入しないように汲み出すことができる。そして、ポンプ14を加熱機能付きプレート12の装着孔47に装着する前に、予めこのプレート12を容器2に挿入して貯留液3を加熱しておくことができるので、貯留液3を容器2から汲み出すときに、直ちにこの加熱された貯留液3を汲み出して流出させることができる。
そして、この加熱機能付きプレート12によると、図1(a)、(b)、(c)に示すように、加熱機能付きプレート12の下面12b側の空気を装着孔47に通して外気中に排出することができ、プレート12の下面12b側に空気が存在しない状態で、加熱機能付きプレート12を液面に簡単に配置することができる。そして、作業者は、プレート12の下面12b側の空気が全て確実に排出されていることを、装着孔47から目で見て確認することができるので、ポンプ14に吸い込まれる貯留液3中に空気が含まれることを確実に防止でき、貯留液3が所定流量でポンプ14の流出口15から確実に流出されるようにすることができる。
また、図2(a)に示すように、加熱部63の貯留液3と反対側に向かう面を、フォロープレート(断熱部)62で覆っているので、貯留液3を効率よく加熱することができる。従って、貯留液3を所定の温度に加熱するために、加熱部63から発せられる熱量が比較的少なくて済み、例えば貯留液3が熱硬化性である場合、貯留液3の熱硬化を防止又は抑制することができる。そして、熱硬化を防止等することができるので、貯留液3を滑らかに移送管61等に通して吐出機4に供給することができる。そして、フォロープレート62自体が断熱部としての機能を果たすので、部品点数を少なくすることができ、経済的である。
更に、図1及び図2に示す加熱機能付きプレート12によると、このプレート12を容器2内の貯留液3の液面に配置して、加熱部63によって貯留液3を加熱するときに、温度検出部64が加熱部63と対応する温度を検出することができる。そして、温度制御部66は、この温度検出部64によって検出された検出温度に基づいて、容器2内の貯留液3の液温、又はポンプ14から流出する貯留液3の液温を制御することができる。
つまり、例えば容器2内の貯留液3の種類ごとに、温度検出部64によって検出される検出温度と、容器2内の貯留液3の液温、又はポンプ14から流出する貯留液3の液温との関係を予め実験で得ておくことによって、温度制御部66は、容器2内の貯留液3の液温、又はポンプ14から流出する貯留液3の液温が所定の温度になるように制御することができる。また、貯留液3を、所定の液温よりも上がらないように適切に加熱することができ、これによって、貯留液3(例えば熱硬化性の貯留液3)を、品質を変化(熱硬化)させないように加熱することができる。
なお、例えば温度制御部66によって、容器2内の貯留液3の液温が所定の温度となるように制御するのは、容器2内の貯留液3を汲み出す前の段階で、予め容器2内の貯留液3を加熱、保温するときに行うとよい。そして、温度制御部66によって、ポンプ14から流出する貯留液3の液温が所定の温度となるように制御するのは、汲出し装置11が容器2内の貯留液3を汲み出しているときに行うとよい。
そして、図4(a)、(b)に示す汲出し装置11によると、上記の通り、各加熱機能付きプレート12によって、容器2内の貯留液3を加熱して貯留液3の粘度を低下させることができるので、ポンプ装置17の流出口15から貯留液3を所定流量で確実に流出することができる。
また、図3に示すように、ポンプ14に一軸偏心ねじポンプを採用しており、このポンプ14そのものも定流量ポンプであるので、容器2内の貯留液3を所定流量で汲み出して流出させることができると共に、吐出機4から貯留液3を精度よく規定流量で吐出できるようにすることができる。
ただし、上記実施形態の図1(c)に示す加熱機能付きプレート12は、貯留液3に浮かぶ材質、例えば発泡合成樹脂等の独立気泡体で形成したが、これに代えて、独立気泡を含まない例えば柔軟な合成樹脂で形成してもよい。この加熱機能付きプレート48は、図6(a)、(b)示すように、貯留液3に浮かぶように、円環状の空気室49を設けた構成となっている。この加熱機能付きプレート48は、図6(c)に示すように、中央部に凹部50が形成され、この凹部50の底壁には、この凹部50の内径よりも小さい直径の装着孔51が形成されている。この装着孔51は、ポンプ14の吸込み口部14bと嵌合して着脱自在に結合すると共に、その嵌合部が密封される。そして、この装着孔51を形成する内側縁部52は、その上面にポンプ14の吸込み口部14bの鍔状部14cが係合して、吸込み口部14bの差込深さを規定することができる。そして、この加熱機能付きプレート48の下面に上記実施形態と同様に、加熱部63が取り付けられている。これ以外は、図1(a)、(b)、(c)に示す加熱機能付きプレート12と同等であり、それらの説明を省略する。
そして、上記実施形態の加熱機能付きプレート12は、図1(a)、(b)、(c)に示すように、装着孔47の内周面は、テーパ形状としたが、これに代えて、図7(a)、(b)に示すように、その内周面が短円筒形であって、その内周面に1又は2以上の溝部53が形成されているものとしてもよい。各溝部53は、装着孔55の上側開口縁から下側開口縁の手前まで延びるものである。これ以外は、図1(a)、(b)、(c)に示す加熱機能付きプレート12と同等であり、それらの説明を省略する。
この図7(a)、(b)に示す加熱機能付きプレート54によると、図7(a)に示すように、各溝部53の下側部が貯留液3に浸かるように、加熱機能付きプレート54を貯留液3の液面に配置して、図8に示すように、この状態で、ポンプ14の吸込み口部14bを装着孔55に装着すると、吸込み口部14bの下端と、液面との間に空気が存在しないようにして、ポンプ14の吸込み口部14bを装着孔55に装着することができる。なぜなら、吸込み口部14bの下端部が、装着孔55の下部に形成されている短円筒形の封止部55aと接触するときに、両者が貯留液3中で接触するからである。そして、装着孔55に溝部53を設けたことによって、吸込み口部14bを装着孔55に装着したときに、装着孔55内の貯留液3の液面が溝部53内で上昇するので、貯留液3が加熱機能付きプレート12の上面に溢れ出ることを防止できる。
また、装着孔47は、図1(a)に示すようにテーパ形状とせずに、短円筒形としてもよい。装着孔47の内周面を短円筒形にすることによって、装着孔に装着されたポンプ14の吸込み口部が、装着孔から外れ難くすることができるし、密封度を向上させることができる。なお、装着孔を短円筒形とするときは、吸込み口部をその装着孔と対応する短円筒形とする。
そして、上記実施形態では、図1(a)に示すように、フォロープレート62を、断熱性を有する材料で形成して、このフォロープレート62によって加熱部63の上面を被覆する断熱構造としたが、これに代えて、フォロープレート62を断熱材以外の材料で形成して、別個の断熱材によって加熱部63の上面を被覆する断熱構造としてもよい。
そして、上記実施形態では、図1(a)に示すように、加熱機能付きプレート12の下面12bを平坦面としたが、これに代えて、図には示さないが、外周部12aから装着孔47に向かうに従って凹状に傾斜する傾斜面としてもよい。
このように、加熱機能付きプレート12の下面を凹状に傾斜する傾斜面とすることによって、このプレート12の下面側の空気を、プレート12の下面に沿ってその外周部12aから装着孔47に向かう方向に強制的に移動させることができ、この移動してきた空気を装着孔47から確実に排出することができる。
更に、上記実施形態では、図1(b)に示すように、加熱機能付きプレート12を全体として円形の板状体としたが、容器2の内周面2aの形状に応じて例えば楕円形や多角形の板状体としてもよい。
そして、上記実施形態では、図3に示すように、ポンプ14として一軸偏心ねじポンプを使用したが、これ以外の例えばロータリーポンプやプランジャポンプを使用してもよい。
また、上記実施形態では、図1(a)、(b)、(c)に示すように、加熱機能付きプレート12を柔軟な発泡合成樹脂等で形成することによって、プレート12の外周部12aと容器2の内周面2aとの接触部を密封する構成としたが、これに代えて、図には示さないが、加熱機能付きプレート12の外周部12aに円環状の板状ゴムリング(シール部材)を設け、この板状ゴムリングによって、プレート12の外周部12aと容器2の内周面2aとの隙間を密封する構成としてもよい。この場合は、加熱機能付きプレート12の直径を容器2の内径よりも小さくし、板状ゴムリングを容器2の内径よりも少し大きくする。
そして、上記実施形態では、図1(a)、(b)、(c)に示すように、プレート12の外周部12aと、容器2の内周面2aとの接触部を密封する構成としたが、これに代えて、プレート12の外周部12aが、容器2の内周面2aに付着する貯留液3を掻き取ることができる程度の接触部の構成としてもよい。また、プレート12の外周部12aと、容器2の内周面2aとの間に隙間が形成されるような加熱機能付きプレートを使用してもよい。
更に、上記実施形態では、図4(a)に示すように、昇降機構部18として作業者が手で操作するものを例に挙げたが、これ以外の例えば電動モータや、油圧式、空気圧式の駆動部によってポンプ装置17を昇降させるようにしてもよい。
そして、上記実施形態では、図1に示すように、温度制御部66を設けたが、この温度制御部66を省略して、温度検出部64で検出された検出温度を表示するための温度表示部(図示せず)を設けてもよい。このようにすると、例えば作業者は、この温度表示部に表示された検出温度を目で見て加熱部を操作して、貯留液の液温が所定の温度となるように手動で調整できる。