以下には、図面を参照して、この発明の具体的な実施形態について説明をする。
図1は、この発明の一実施形態に係る吸込具10を有する電気掃除機1の右側面図である。 以下、説明の便宜上、図1において左側を前方、右側を後方、手前側を左、奥側を右として説明し、電気掃除機1の各構成部材について説明する際も、その方向に従って、前後、左右および上下を区別しながら説明する。
電気掃除機1には、電気掃除機本体2、吸込ホース3、操作部4、吸込パイプ5および吸込具10が含まれている。電気掃除機本体2には電動送風機(図示せず)が内蔵されていて、この電動送風機により吸引力が発生する。
電気掃除機本体2の正面側には吸込ホース3の後端側に備えられた接続部6が着脱可能に連結されている。吸込ホース3は、可撓性を有し、任意の形態に曲げることができる。吸込ホース3の反対側(先端側)には操作部4が取り付けられている。操作部4は、吸込ホース3の軸方向に延びるパイプ部7と、パイプ部7から軸方向と交差方向後方へ延び出したグリップ8と、パイプ部7の中心軸に対して、グリップ8と反対側(180°隔たる側)に設けられたサブグリップ9とを具備している。また、吸込ホース3の先端側と操作部4との間には回動機構11が介在されていて、操作部4と吸込ホース3とは、互いに軸回りに回動自在に連結されている。
吸込パイプ5は、操作部4と吸込具10との間を連結する長手の、たとえば樹脂製のパイプである。吸込パイプ5は、その長さ方向ほぼ中央部を境に、先端側(吸込具10が取り付けられた側)12が、後端側(操作部4が接続された側)13内に同軸状に収納され、長さが可変できるように構成されている。この長さの可変は、吸込パイプ5の中央部に備えられたロックボタン14を操作することにより行うことができる。
この発明の一実施形態に係る吸込具10には、ハウジング20と、接続用の筒であるベンド21と、ベンド21をハウジング20に対して取り付けているベンドベース22とが含まれている。
なお、吸込パイプ5の後端側13は、操作部4から取り外し可能であり、操作部4を吸込具10のベンド21と直接連結することも可能である。
電気掃除機1では、図2および図3に示すように、吸込パイプ5をその軸回りにひねることにより、吸込具10の姿勢を切り換えることができる。
より具体的には、吸込具10は、通常、図1に示す基本姿勢をとっており、この基本姿勢では、後述する主吸込口が被清掃面100に対向した状態になっている。この状態から、吸込パイプ5を軸回りに約90°ひねると、図2に示すように、吸込具10は被清掃面100(図2では被清掃面100を理解の便宜のためにフローリング面として示し、紙面方向に広がっている状態で表わしている。)に対し、基本姿勢のままであるが、90°回転した状態となる。そしてさらに吸込パイプ5を軸方向にひねり、操作し易い斜め後方へ立ち上がった状態にすると、図3に示すように、吸込具10が起立姿勢に切り換わる。
吸込具10が起立姿勢とは、後述するように、吸込具10のハウジング20に形成されている副吸込口が被清掃面100に対向した状態を言い、ハウジング20の厚み方向が水平になるように立ち上がり、ハウジング20の幅方向に吸込パイプ5が斜め上方へ延び出している状態を言う。
この状態では、吸込パイプ5に連結された操作部4では、サブグリップ9が上方に位置し、グリップ8は下方に位置する。従って、サブグリップ9を握って吸込具10を操作することになる。
このように、吸込具10は、その姿勢を、基本姿勢と起立姿勢とに切り換えることができる点が、この実施形態に係る吸込具10の特徴の1つである。
図4は、吸込具10が基本姿勢のときの平面図である。図5は、吸込具10が基本姿勢のときの右側面図である。
図4および図5を参照して、吸込具10は、ハウジング20、ベンドベース22およびベンド21を含む。ハウジング20は、底面23、上面24、前面25および後面26を備えていて、幅W、厚みT、奥行Dの寸法をしている。ここに、幅W>奥行D>厚みTの寸法関係になっている。
ハウジング20の底面23には、その前方寄りに、ハウジング20の幅方向に長手の主吸込口27が形成されている。ハウジング20が基本姿勢では、主吸込口27は被清掃面に対向しており、塵挨は主吸込口27からハウジング20内に吸い込まれる。
ハウジング20には、その前面25に、開閉可能なシャッター28が備えられている。シャッター28はハウジング20の幅方向に延びている。シャッター28には、その左右両側に、斜め上方へ突出する回動自在な小ローラー29が設けられている。小ローラー29には、少なくともその転動周面に軟質部30が設けられている。小ローラー29は、吸込具10が起立姿勢になったとき、吸込具10が移動する際の移動補助部材として機能する。また、小ローラー29は、吸込具10を基本姿勢から起立姿勢に切り換える際に、被清掃面に当接してハウジング20が被清掃面上で滑らないようにする姿勢切り換え時のグリップ機能も奏する。具体的には、小ローラー29に、軟質部30を設けたことにより、軟質部30が吸込具10の姿勢切り換え時に被清掃面に当接し、グリップ機能を奏する。また、起立姿勢において、小ローラー29が転動する際に、軟質部30が被清掃面と接触する。
小ローラー29の詳細な構成例および変形例を、図6に示す。
図6Aは、小ローラー29の縦断面図である。小ローラー29は、支軸31と、支軸31に取り付けられた略きのこ形状のコロ部32と、コロ部32の転動周面にインサート成形で配置された軟質部30とを含んでいる。軟質部30は、たとえばエストラマーで構成されている。
図6Bは、小ローラー29の他の実施形態を示す縦断面図である。図6Bの小ローラー29は、コロ部32全体が、軟質材で構成された実施形態である。
図6Cは、小ローラー29のさらに他の実施形態を示す縦断面図である。図6Cに示す小ローラー29は、コロ部32の転動面に軟質材でできたOリング33が取り付けられた例である。
以上説明したように、小ローラー29は、その転動面(被清掃面と当接して転がる円周面)に、軟質材が配置された構成が採用されている。
図4および図5を再び参照して、シャッター28には、ハウジング20の幅方向に延びる衝撃吸収バー34が備えられている。衝撃吸収バー34は弾性体で形成されており、吸込具10の前面25が壁などにぶつかるとき、この吸収バー34が最初に壁にぶつかり、ぶつかった時の衝撃を緩和する。衝撃吸収バー34は、また、吸込具10が壁や家具にぶつかった際に、壁や家具を傷付けることのない傷付け防止部材としても機能する。なお、衝撃吸収バー34は、シャッター28と一体に形成された膨出部であって、その外表面に起毛布が貼着された構成としてもよい。
衝撃吸収バー34以外にも、傷付け防止部材が、吸込具10には必要に応じて配置されている。具体的には、ハウジング20の上面24には、平面視円弧状の傷付け防止起毛布35が貼着され、ハウジング20の左右両側面36,37には、それぞれ、傷付け防止用の弾性シート38が設けられている。
ハウジング20の後面26には、ベンドベース22が突設されている。ベンドベース22は、ハウジング20の幅方向中央に配置されている。ベンドベース22の左右両側には、ハウジング20の後面26から後方へ突出する一対の凸部39が備えられており、各凸部39には車輪40が回転自在に保持されている。車輪40は、吸込具10が基本姿勢において、奥行方向に前後へ移動される際に、その移動をスムーズに行わせる。
ベンドベース22はハウジング20に対して奥行方向に延びる軸を中心に回動可能である。
また、ベンドベース22には、ベンド21が揺動可能に取り付けられている。ベンド21は、図4および図5には現れていないが、ベンドベース22に備えられた支点を中心に上下方向(ハウジング20の厚み方向)に揺動し得る。この支点は、ハウジング20が基本姿勢のとき、ベンドベース22の回動中心よりも上方に偏った位置に設けられているのが望ましい。ベンド21には、その突出方向後端側に、前述したように、吸込パイプ5等が接続され得る。
さらに、ベンドベース22には、下側周面に、半円弧状に延びる起毛布帯41が設けられている。この実施形態では、起毛布帯41の取り付けに関し、工夫が施されている。この工夫につき、次に説明する。
図7は、図5におけるVII−VIIに沿って切断したベンドベース22の切断面端面図である。図7Aには、ベンド21の切断面は示されていない。また、図7Bは、ベンドベース22のみの切断面端面図であり、起毛布帯41が取り外された状態の切断面端面である。
図7Aおよび図7Bを参照して、ベンドベース22には、下部材42および上部材43が含まれていて、下部材42の下側周面には起毛布帯41のための配置凹部44が形成されている。起毛布帯41はこの凹部44に嵌め込むように配置されている。起毛布帯41の周方向両端41a,41bは、下部材42の内方に巻き込まれている。上部材43は、起毛布帯41の両端部41a,41bを上から押さえ込んで、下部材42との間で起毛布帯41の端部41a,41bを挟むように構成されている。このように、ベンドベース22の下部材42および上部材43によって、起毛布帯41の周方向両端を挟む挟持部が構成されている。よって、起毛布帯41は、凹部44に嵌め込まれ、かつ、その両端が下部材42および上部材43によって挟み込まれているので、ベンドベース22の周面から外れたり、めくれることがない。
なお、図7Aの構成に代えて、図7Cに示すように、上部材43と下部材42との当接面に、起毛布帯41の両端部41a,41bを圧接するリブ45を設け、より確実に起毛布帯41の両端部41a,41bの抜け止め防止が図られた構成としてもよい。
吸込具10が基本姿勢のときには、車輪40によって奥行方向に前後にスムーズに移動されるとともに、ベンドベース22に設けられた起毛布帯41も、被清掃面に接し、ハウジング20のスムーズな移動を助ける。
吸込具10は、ハウジング20に対してベンドベース22を90°回動させ、その状態でハウジング20の前面25を被清掃面に対向させることにより、図8および図9に示すように、被清掃面100に対して、ハウジング20の奥行方向が上下を向いて立ち上がった起立姿勢となる。ここに、図8は、吸込具10を起立姿勢にしたときの右側面図であり、図9は、吸込具10を起立姿勢にしたときの背面図である。また、図10は、起立姿勢の吸込具10の底面図である。
図8〜10を参照して説明すると、吸込具10を起立姿勢にすると、シャッター28は被清掃面100により押し上げられて開く。シャッター28は、吸込具10が基本姿勢の場合は、図示しないばねの付勢力によって下方に下がっておりハウジング20の前面25を閉じた状態としている。ところが、吸込具10が起立姿勢に切り換えられる際、シャッター28は被清掃面100により押し上げられて、ハウジング20の前面25は開かれた状態となる。これにより、ハウジング20の前面に形成された副吸込口46が被清掃面100と対向する。よって吸込具10は起立姿勢において、被清掃面100と対向した副吸込口46から塵挨を吸い込むことができる。副吸込口46は主吸込口27とつながっている。
図9を参照して、シャッター28が開いた起立姿勢では、ハウジング20の幅方向両端であって、ハウジング20の前面側(図9において被清掃面100に対向する側)に、補助吸込口47が現れる。補助吸込口47は、吸込具10が起立姿勢において前後に移動される際に、その移動方向側に開いた吸込口である。よって、吸込具10が移動する際、その移動方向側には補助吸込口47があるため、被清掃面100上に比較的大きな塵挨があっても、その塵挨はこの補助吸込口47から良好にハウジング20内へと吸い込まれる。
吸込具10が起立姿勢では、被清掃面100には小ローラー29および起毛布48が当接する。小ローラー29は、前述したように、シャッター28の両端(ハウジング20の幅方向に見て両端)に取り付けられており、その周面に軟質部30が備えられている。一方、起毛布48は、図10に示すように、シャッター28が取り付けられていない側の底面両隅に設けられている。従って、底面視において、起立姿勢の吸込具10は、被清掃面100に対向する四隅が、2つの小ローラーの軟質部30および2つの起毛布48により安定して支えられている。
小ローラー29および起毛布48は、起立姿勢の吸込具10が被清掃面100を移動する際、その移動をスムーズに行わせるための、移動補助部材としても機能している。これら移動補助部材は、軟質材または起毛布であるから、被清掃面100を傷付けることはない。
さらに、シャッター28には、起毛布49が貼着されていて、起毛布49により、ハウジング20の幅方向に見て、副吸込口46の中央部に塵挨が誘導される。すなわち、起毛布49は、中央部が湾曲した山を描くガイドエッジ50を有しており、このガイドエッジ50によって塵挨が副吸込口46の中央部に案内される。
図8において、ハウジング20に対して90°回動されたベンドベース22に対し、ベンド21は揺動自在に保持されており、揺動方向は、図8において矢印51で示す左上がりの斜め左右方向である。よって、ベンド21に接続された吸込パイプ5(図3参照)の角度および位置を操作し易い角度および位置にして、起立姿勢の吸込具10を操作することができる。
またその場合において、図9に示すように、起立姿勢のハウジング20に対して、ベンド21はハウジング20の厚み方向中心線上に軸線が位置している。よって、起立姿勢のハウジング20はベンド21を介して、安定した、扱い易いバランス状態に保たれている。さらに、図8において、ベンドベース22に備えられているベンド21の揺動支点52は、ベンドベース22の回動中心から右寄りに偏っている。それゆえ、ベンド21を介してハウジング20を前後に移動する際、ハウジング20の前方(図8における左側)が被清掃面100から浮き上がることを防止できる。
図11Aは、吸込具10が基本姿勢のときの平面図で、切断位置B−BおよびC−Cを示している。図11Bは、図11AのB−Bに沿う切断面部分断面図であり、図11Cは、図11AのC−Cに沿う切断面断面図である。
図11Bに示すように、ベンドベース22の先端はハウジング20内に進入しており、下部材42と上部材43との接合部に凸部53が形成されている。一方、ハウジング20内には回動角度規制突起54が設けられている。
また、図11Cに示すように、ハウジング20内に進入しているベンドベース22の先端にはフランジ55が備えられている。フランジ55は、その内周面56が吸込口を形成しており、その外周は、円弧状周面57、中心に対して180°隔たる位置に切欠かれた2つのロック用凹欠部58およびロック用凹欠部58と中心に対して90°隔たる位置に形成された2つの位置決め用直線部59を含んでいる。一方、ハウジング20内には、フランジ55に隣接して、ロック片60が配置されている。ロック片60はコイルばね61によって常時フランジ55の外周に向かって弾性付勢されている。
図11Aに示す吸込具10が基本姿勢では、ロック片60はフランジ55の位置決め用直線部59の一方に当接している。それゆえ、基本姿勢におけるベンドベース22の回動位置が位置決めされている。その状態からベンドベース22をハウジング20に対して回動させることは容易に行える。
図12Aは、吸込具10が起立姿勢のときの右側面図であり、切断位置B−BおよびC−Cを示している。図12Bは、図12AのB−Bに沿う切断面部分断面図であり、図12Cは、図12AのC−Cに沿う切断面断面図である。
図12Aに示すように、ベンドベース22をハウジング20に対して90°回動させて吸込具10を起立姿勢にしたときには、ハウジング20内のベンドベース22は、図12BおよびCに示す状態となる。
すなわち、図12Bに示すように、ハウジング20内に入り込んだベンドベース22がハウジング20に対して90°回動した状態では、ベンドベース22の凸部53はハウジング20の回動角度規制突起54とぶつからない。凸部53と回動角度規制突起54との間には遊びの隙間62が存在する。
また、フランジ55とロック片60との関係は、図12Cに示すようになる。すなわち、ロック用凹欠部58にロック片60が嵌まる。この状態では、ハウジング20とベンドベース22とをかなり強い力でひねらなければ、両者の角度位置を変えることができなくなる。よって、吸込具10は、起立姿勢において、ハウジング20とベンドベース22とが一定の角度にロックされている。起立姿勢では、ベンドベース22はハウジング20に対して安易に回動せず、ハウジング20とベンドベース22との角度位置が固定された状態のまま、ベンド21が斜め上下に揺動可能であり、隙間清掃が行い易い。
図13A,Bは、それぞれ、図12B,Cの状態(ベンドベース22が90°回動された状態)からさらにベンドベース22が10°ひねられて最初の状態から100°回動した状態を示している。
図13Bに示すように、ハウジング20に対してベンドベース22が100°回動すると、ロック用凹欠部58とロック片60との係合が外れる。一方、図13Aに示すように、ベンドベース22の凸部53が回動角度規制突起54にぶつかる。そしてベンドベース22は、それ以上回動し得ない状態となる。
この状態は、たとえば図14に示すように、家具と家具との隙間に吸込具10が挿入され、ハウジング20の回動が規制された状態で、ベンド21がひねられ、ベンドベース22に無理な回動力が加わった状態である。かかる状態において、さらにベンド21がひねられると、ベンドベース22とハウジング20との結合関係が破壊に至る。
そこでこの実施形態では、図12B,Cの状態から図13B,Cに示す状態になったとき、すなわちロック用凹欠部58とロック片60との係合が外れたとき、それがベンド21および吸込パイプ等を介して使用者に感知され得るようにしている。つまり、隙間清掃時に無理な力が加わった場合には、ロック用凹欠部58とロック片60とのクリック感を伴う係合が解除されることで、それが使用者に感知される。そして無理にベンドベース22がひねられても、凸部53と回動角度規制突起54とが衝突してそれ以上はベンドベース22が回動し得ないようにし、ハウジング20に対するベンドベース22の取付構造が破壊に至らないように工夫されている。
ところで、この実施形態に係る吸込具10を、図1に示す基本姿勢から図2に示す中間姿勢を経て図3に示す起立姿勢に切り換える際には、ハウジング20に備えられている起毛布49やシャッター28に取り付けられている小ローラー29の軟質部30等が、被清掃面上でハウジング20が回動しようとするのを阻止する摩擦抵抗発生部として機能する。ところが、場合によっては、この摩擦抵抗が十分でなく、電気掃除機1は、図2に示す状態から図3に示す状態にはならず、図15に示すように、ベンドベース22が回動せずにハウジング20が起立した状態になってしまうことがある。もちろん、こうなったときには、使用者は、ベンドベース22に対してハウジング20を90°ひねるように、手で操作すればよいわけであるが、操作性が悪い。
よって、吸込具10を基本姿勢から起立姿勢へ切り換える際の失敗を確実になくする構成が望ましい。
そこで、ベンドベース22に対して揺動可能に設けられたベンド21の揺動支軸に、ばね等の弾性付勢部材を設ける構成とするのが好ましい。
以下、具体的に説明する。
図16は、吸込具10が基本姿勢のときの平面図であり、ベンド21の上蓋部が取り除かれ、かつ、ベンドベース22は上部材43が取り外されて下部材42だけにされた状態の図であり、破線で示すA部分は、要部拡大図である。図17は、吸込具10が基本姿勢のときの右側面図であり、支軸31部分が透かして示された図である。
図16および図17を参照して、ベンド21は支軸31を中心に揺動可能であるが、支軸31には、ばね63が係合されている。ばね63は、いわゆる弦巻ばねであり、支軸31を中心にベンド21に常時下向きの力(図16において紙面奥行側に働く力であり、図17において時計回りの力)が付与されている。この実施形態では、図16に示すように、ばね63は、支軸31の右側だけに備えられた簡易な構造が採用されている。
支軸31にばね63を設けると、図18に示すように、ハウジング20の前面25側が被清掃面100から浮き上がる事態をなくすることができる。特に、この実施形態に係る吸込具10は、車輪40が支点30よりも前方にある。このような場合に、ベンド21を介してベンドベース22を下方に押し下げると、車輪40を中心にハウジング20の前面25側が被清掃面100から浮き上がる可能性がある。
ところが、支点31に前述のようにばね63が設けられており、図18において、支点31を中心に、ベンド21に右回りの弾性付勢力が働いていると、ベンド21から見ると、ハウジング20にはその前面25側が被清掃面100に向かって押し付けられる方向に弾性付勢されていることになる。
従って、ばね63を設けると、ハウジング20の前面側が被清掃面100から浮き上がらず(図18の状態にならない)、吸込具10が基本姿勢において、主吸込口27が被清掃面100から離れず、吸引性能が低下するおそれがなくなる。また、吸引性能の向上に加えて、ベンド21を操作してベンドベース22をハウジング20に対して回動させる際に、ハウジング20の前面側が常に被清掃面100に押し付けられているから、ハウジング20の起毛布48や小ローラー29の軟質部30は、ハウジング20が起立姿勢に切り換わる際に確実に被清掃面100と接し、摩擦抵抗を生じさせる。このように、ばね63を設けたことにより、吸込具10の姿勢を切り換える際に、図15で示したような姿勢切り換えの失敗がなくなる。
さらに、図20に示すように、ベンドベース22を90°回動させ、ハウジング20は起立姿勢にすることなく清掃を行う場合、たとえばベッドの下等の、被清掃面の上の空間高さが低い領域を清掃する場合において、ばね63によりベンド21はベンドベース22に対して真っ直ぐになる方向に弾性付勢されている。つまり、ベンドベース22を90°ひねった状態で、ハウジング20とベンド21とがT字に近い状態になるように弾性付勢されている。従ってベッドの下等の被清掃面を清掃する際の使い勝手が向上する。
図21は、この発明の他の実施形態に係る吸込具70で、起立姿勢の吸込具70の右側面図である。図21では、ベンド21の一部は省略されている。
図21に示す吸込具70の構成要素のうち、先に説明した吸込具10と同一または対応する部分には同一番号が付されている。図22は、吸込具70が基本姿勢のときの右側面から見た中央縦断面図である。
図21および22を参照して、吸込具70の特徴は、ベンドベース22がハウジング20に対して軸71を中心に回動可能にされているが、ベンドベース22に連結されたベンド21の揺動支点が、図22において、軸21よりも上方に設けられていることである。すなわち、ベンド21が揺動するときの支軸31が、ベンドベース22の回動中心軸21上ではなく、その位置よりも偏った位置、より具体的には基本姿勢において上方に偏った位置に設けられていることである。
これにより、図21に示すように、吸込具70を起立姿勢にしたときに、ベンド21の揺動支軸31は、ハウジング20の前後方向中心よりも後方側にずれる。このため、ベンド21を介して操作されるハウジング20は、支軸31よりも前方部分の長さが、後方部分の長さよりも長くなり、ベンド21から見るとハウジング20の前側が重くなる。よって、ハウジング21を被清掃面100上に沿って前後方向(図21で矢印72で示す方向)に移動する際に、ハウジング20の前側が被清掃面100から浮き上がることを防止できる。
特に、ハウジング20内に、ブラシ駆動用のモータが内蔵されており、そのモータがハウジング20の後方側に配置されている場合において、支軸31を後方側にずらすことにより、ハウジング20の前方側が浮き上がることを防止できる。
また、ハウジング20は、被清掃面100上を後方に移動させる際、その後方側が被清掃面に引っ掛かることがあるが、支軸31を後方にずらすことにより、かかる引っ掛かりの発生をなくすることができる。
図23は、基本姿勢の吸込具70の底面図である。吸込具70のハウジング20内には回転ブラシ73が設けられている。回転ブラシ73は主吸込口27に臨んでいる。なお、先の実施形態である吸込具10にも、回転ブラシは設けられているが、説明の都合上、回転ブラシについての説明は省略されていただけである。
吸込具70に設けられた回転ブラシ73の特徴は、幅方向に延びる回転軸74を中心に回転ブラシ73が回転し、回転軸74の両端部に、くびれ部75が設けられていることである。
図24は、回転ブラシ73のみを取り出して示した図である。回転ブラシ73は、幅方向に延びる回転軸74と、回転軸74の両端部を除く領域に植立された弾力性のある複数の集塵ブレード76と、回転軸74の一端部に、回転軸74と一体的に形成されたギヤ77とを備えている。そして集塵ブレード76の両端から延び出た回転軸74には、くびれ部75が形成されている。くびれ部75を形成したことにより、主吸込口27からハウジング20内に吸い込まれる空気および塵挨は、回転ブラシ73の両端部において、くびれ部75を通って良好に吸い込まれる。つまり、回転ブラシ73における両端部の吸い込み効率(空気移動量)が増加し、回転ブラシ73全体としての集塵能力の向上が図れる。
図25は、図23に示す吸込具70の回転ブラシ73の保持構造を説明するための拡大断面図である。回転ブラシ73の回転軸74には、それぞれ両端に、前述したくびれ部75が形成されている。そして、図25において、右側のベルト装着側は、くびれ部75の外側を形成する第1フランジ78、および、第1フランジ78と一定間隔をあけてさらに外側に設けられた第2フランジ79が備えられている。そして第1フランジ78および第2フランジ79の周面に接近して対向するように、ハウジング20には第1凸壁80および第2凸壁81が備えられている。このため、第1フランジ78の周面と第1凸壁80との対向面は、狭い隙間の第1シール面82を形成しており、第2フランジ79の周面と第2凸壁81の先端面との狭い隙間は第2シール面83を形成している。よって、使用に伴い、回転ブラシ73に毛髪が巻きつき、巻きついた毛髪が軸受部84へ進入しようとした場合、毛髪は、まず、くびれ部75に巻きつく。この場合に、くびれ部75は比較的大きな窪みスペースであるから、巻きついた毛髪はくびれ部75に留まりにくく、ハウジング内へ吸い込まれる。しかし、長期間の使用によりくびれ部75に毛髪が巻きついた場合に、一部の毛髪は第1シール面82を通って第1フランジ78および第2フランジ79間の窪みに進入することがある。そしてこの窪みに進入した毛髪が窪み内を満たすような状況になったとき、さらに第2シール面83を通って軸受部84へと進むおそれがある。しかし、くびれ部75および第1フランジ78および第2フランジ79間に形成されたくびれ部の容積が大きく、たとえ毛髪が巻きついても、これがくびれ部全体に毛髪が堆積しない限り、軸受部84への毛髪の進入を防ぐことができる。つまり、回転ブラシ73の軸受部84への毛髪の進入を防止し、たとえ進入するとしても長期の使用を経なければ進入せず、吸込具70のメンテナンスサイクルを長く保てる構成とすることができる。
回転ブラシ73の反対側(ホルダー側)にも、類似の構造が採用されている。すなわち、図25の左側において、くびれ部75の外側を構成するフランジ85は、その周面が外方へ曲成された円筒部86を備えている。そして円筒部86の外周面に僅かの間隔で対向するように、ハウジング20には第1凸壁87が形成され、かつ、円筒部86の内周面に対向するように第2凸壁88が形成されている。よって円筒部86の外周面と第1凸壁87の先端との隙間によって第1シール面89が、円筒部86の内周面と第2凸壁88の先端とによって第2シール面90が、形成されている。それゆえ、軸受部91に毛髪が進入しようとしても、そのためには、毛髪はくびれ部75に堆積し、堆積できなくなった毛髪が第1シール面89を通過してハウジング内に溜まり、さらにそこに堆積した毛髪の溢れたものが第2シール面90から軸受部91へと進入する。従って毛髪が軸受部91へ進入することを防止できるとともに、たとえ進入しようとしても、長期の使用により多くの毛髪がくびれ部75に巻きついた後でなければ進入しないという構成を提供できる。
図26は、基本姿勢の吸込具70の底面図であり、メンテナンスカバー92(図23参照)が取り外された状態の図である。
図23に示すように、吸込具70の底面には、その右側端部を覆うメンテナンスカバー92が備えられている。メンテナンスカバー92は、ロックねじ93をたとえばコイン(硬貨)で回動することにより、取り外すことができる。メンテナンスカバー92を取り外すと、図26に示すように、ベルト94が露出する。この実施形態では、モータ95の回転軸96に取り付けられたピニオンギヤ97と、回転軸74に設けられたギヤ77との間に掛け渡されたベルト94全体が露出する開口98が形成されている。このため、図27、図28および図29に示すように、メンテナンスカバー92を外した後、開口98を介してベルト94および回転ブラシ73の一端側を下方に容易に取り出すことができ、ベルト94から回転ブラシ73を取り外して、回転ブラシ73のメンテナンスを行うことができる。
この実施形態のように、メンテナンスカバー92を取り外したとき、ベルト94全体が露出する開口98は、従来の吸込具には備えられていない。開口98を図26に示すように、ベルト94全体が露出する形状にした点が、この実施形態の特徴の1つである。
図30A、B、C、Dは、図1に示す電気掃除機1に装着されているサブグリップ9の構造を説明するための図で、図30Aは右側面図、図30Bは図30Aを下方から見た底面図、図30Cは図30Bの切断線C−Cに沿う切断面断面図、図30Dは図30Bの切断線D−Dに沿う切断面断面図である。
サブグリップ9の特徴の1つは、その底面側に電気掃除機1の操作部4や吸込パイプ5(図1参照)に突設された凸部と嵌合するための嵌合凹部111を備えている点である。嵌合凹部111は、電気掃除機1の操作部4や吸込パイプ5の凸部に嵌合されたとき、当該凸部を左右両側(操作部4や吸込パイプ5の長さ方向に見て左右両側)から挟む右壁112および左壁113を有している。そして左壁113にはねじ挿入孔114が形成され、その外側にはねじ頭が収まる凹部115が形成されている。他方、右壁112には、その内側に、ねじの先端が係合する先端受部116が形成されている。さらに先端受部116に隣接して、ねじの先端が右壁112から外れるのを阻止するためのリブ117が形成されている。図31は、サブグリップ9が操作部4に装着された状態の右側面図であり、図32は図31における切断線X−Xに沿う切断面端面図である。
図32に示すように、サブグリップ9の右側壁112および左側壁113が操作部4に突設された凸部118を両側から挟むように嵌合され、左壁113および凸部118を左右方向に貫通するねじ119によって固定される。この場合において、ねじ119の先端は、操作部4側に形成されたリブ117と係合する。このため、サブグリップ9に対して矢印120方向の力が加わっても、リブ117がねじ119の先端と係合しているため、右壁112が操作部4の周面から離れる方向に変形しない。つまり、ねじ119のねじ頭と反対側に位置する右壁112は、矢印120方向の力が加わった場合でも操作部4から離れず、サブグリップ9は確実に操作部4に取り付けられた状態が保たれる。言い換えれば、リブ117は簡易的なナットの役割を果たしているといえる。
かかる構成にすることにより、サブグリップ9を、強度を保ちつつデザイン的に優れた形状にでき、また、操作性に優れたグリップ形状にできる。そしてかかるサブグリップ9を、操作部4や吸込パイプ5等の所望の位置に確実に固定することができる。
図31を参照して、操作部4に取り付けられたサブグリップ9の後方側は、吸込ホース3の先端側を覆っているホースカバー121と対向している。また、ホースカバー121の先端側には凸リング122が一体成形されていて、サブグリップ9には、凸リング122と係合するように窪み123が備えられている。このように、サブグリップ9の底面側が、操作部4の周面に取り付けられるのに加えて、サブグリップ9の底面側後方が、浮き上がった状態ではなく、ホースカバー121および凸リング122に当接していることによって、サブグリップ9を壊れにくい構造とすることができる。
すなわち、サブグリップ9の後方側が、たとえばホース3の周面に一定間隔をあけて対向しており、ホースカバー121等に当接していない状態では、サブグリップ9はその後方側に矢印124方向の荷重がかかった時、破損する可能性がある。そこで、この実施形態のように、サブグリップ9の後方側を、ホースカバー121に当接する構造にすることにより、部品点数を増やすことなく、サブグリップ9の強度を向上させることができる。
また、凸リング122に係合する窪み123をサブグリップ9に形成することにより、サブグリップ9が操作部4に対して前後方向にずれようとするのを防止できる。すなわち、ねじ119による取り付けが、窪み123と凸リング122との係合により補強されている。
図33は、電気掃除機1の操作部4や吸込パイプ5の先端側112の先に簡易ブラシ130が装着できることを説明する図である。図33に示すように、操作部4の先端には、簡易ブラシ取付領域131が形成されており、この領域131に簡易ブラシ130を着脱可能に取り付けることができる。また、吸込パイプ5の先端側12にも、図示のように簡易ブラシ130を着脱可能に取り付けることができる。
図34は、簡易ブラシ130の構成を説明するための図であり、Aはベース132とブラシ部133とが分解された状態の側面図、Bはベース132にブラシ部133が嵌合されて、ベース132に対してブラシ部133が収容状態に折り畳まれた状態(実線で示す)と、使用状態に開かれた状態(破線)とを示している。Cは、ベース132単体を正面側から見た図であり、Dはベース132にブラシ部133が組み合わされた状態を背面側から見た図である。
ここに示す簡易ブラシ130の特徴は、ブラシベース132の左右両側に、予め定める方向に特定形状をした係合突起134が備えられていること、および、ブラシ部133には、係合突起134の形状に対応した係合孔135が形成されていることである。これにより、ベース132とブラシ部133とを組み立てる際には、ベース132に対してブラシ部133の角度(方向)を、係合突起134と係合孔135との方向が一致する角度にしなければ、係合突起134と係合孔135とを嵌め合わせることができない。そして、ベース132とブラシ部133とが組み立てられた後は、ベース132に対してブラシ部133を回動させることができ、しかも、ベース132に対してブラシ部133を所定の角度位置、すなわち係合突起134と係合孔135との方向が合う角度位置にしなければ、ベース132からブラシ部133を外すことができない構造になっている。
それゆえ、清掃時には、ブラシ部133を使用し易い方向に向けて、利用できるという利点がある。
また、ベース132は、図34Cに示すように、断面形状がC字形であるから、操作部4や吸込パイプ5に対して、その下方側から容易に嵌め込むことができる。
従って、操作部4や吸込パイプ4の各先端に対して、装着が容易で、しかも装着後は、ブラシ部133の方向を所望の方向に回動させて使用し易い簡易ブラシを提供できる。
この発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。