JP2008007512A - 動脈狭窄の減弱方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】バルーン血管形成術後の狭窄を減弱するための医薬組成物の提供。
【解決手段】バルーン血管形成術後の被験体に生じる狭窄の程度を低下させるのに充分に有効な量の組織因子経路インヒビター(TFPI)を含み、生理学的に許容される賦形剤により保持されている、非経口的に投与される医薬組成物。例えば、TFPIは、約0.5mg/kg〜約6mg/kgの量で、約3時間〜約24時間の長時間投与される。TFPIは(Ala−1)−TFPI(1−277)又は天然TFPI(1−276)である。
【選択図】なし

Description

(発明の背景)
本発明は、動脈狭窄の新規な減弱方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、リポタンパク質結合凝固インヒビター(LACI)あるいは組織因子経路インヒビター(TFPI)としても知られている血液凝固インヒビターの投与により、バルーン血管形成術後の再狭窄を低下または阻害する方法に関する。
バルーン血管形成術は、動脈遮断の治療のために広く使用されている医学的方法である。しかし、イプ(Ip)ら、J.Am.Col.Cardiol.17,77B−88B(1991)、が報告しているように、患者の約5%に、治療された動脈の早期血栓性再閉塞が起きる。さらに、イプ(Ip)ら、J.Am.Col.Cardiol.17,77B−88B(1991)、フランクリン(Franklin)ら、Croronary Artery Dis.4.232−42(1993)、が総説に記載しているように、血管形成術により再疎通に成功した動脈の最大50%に3カ月以内に狭窄(動脈が細くなることまたは収縮すること)が起きる。従って、バルーン血管形成術後の再閉塞と再狭窄のために、多くの患者で再度血管形成術が必要である(ホルメス(Holmes)ら、Am.J.Cardiol.53,77C(1984)、リンコフ(Lincoff)ら、J.Am.Col.Cardiol.19,926−35(1992))。従って、バルーン血管形成術後の狭窄を減弱する方法は、医療の現場で大いに有用であろう。
静脈内ヘパリンによる抗凝固療法は、血管形成術中およびその後の血栓形成を阻害するための標準的な臨床的手技である。ヘパリンはトロンビンを阻害する作用を有し、平滑筋を阻害するかも知れないという証拠があるにもかかわらず、ヘパリンは患者の再狭窄を減弱することはないようである(エリス(Ellis)ら、Am.Heart J.117,777−82(1989))。同様に実験動物において、ギンプル(Gimple)ら(Criculation 86,1536−46,1992)は、ヘパリンの慢性の皮下投与は、バルーン血管形成術後の絶対的な管腔直径を改良しなかったと報告している。
他の抗凝固剤も再狭窄の阻害について試験されているが、確定的な結果は得られていない。経口抗凝固剤のワーファリンの投与は、患者の再狭窄の比率を低下させなかった(ソーントン(Thornton)ら、Circulation 69、721−7(1984)、およびアーバン(Urban)ら、Br.Heart J.60,485−8(1988))。サレンボック(Sarembock)ら、Circulation 84,232−43(1991)によると、ウサギの腸骨動脈の血管形成術のわずか2時間後に投与した組換えデスルファトヒルジンによるトロンビンの直接阻害は、1カ月後に管腔狭窄を低下させた。しかし、ウェブスター(Webster)ら(Circulation 84,11580,1991)は、ブタにおいてバルーンで動脈の損傷を引き起こした後、同じインヒビターを2週間注入しても、以後の管腔狭窄を減弱させなかったことを示した。
しかし、ハンケ(Hanke)ら、Circulation 85,1548−86(1992)、が報告したように、低分子量ヘパリンによるXa因子の阻害は、ウサギのバルーン血管形成術後の内膜増殖を低下させることが証明された。
他の提唱されている薬剤治療には、糖タンパク質IIb/IIIaとして知られている血小板受容体を妨害する物質がある。セントルクス(CentRx)と呼ばれるこのような物質の1つ(7E3としても知られている)は、The New England Jounal of Medicine,April 7,1994、およびThe Lancet,April 9,1994に記載されている。他の抗凝固剤(例えば、アルガトロバン(argatroban)(ノバスタン(Novastan)、米国特許第4,248,192号に記載されている)、およびヒルログ(Hirulog)(ヒルジンの類似体))も、再狭窄を防止すると言われている。米国特許第5,308,622号は、再狭窄の防止に塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)とサポリン(saporin)(リボゾーム不活性化物質)の結合体の使用を記載している。
血漿は、本明細書において組織因子経路インヒビター(TFPI)と呼ぶ多価クニッツタイプ(Kunitz−type)の凝固インヒビターを含有することは公知である。この名前は、1991年6月30日アムステルダムでの国際血栓止血学会において認められている。TFPIはまず、ヒト肝癌細胞(Hep G2)から精製され(ブローゼとミレチチ(Broze and Miletich)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84,1886−1890(1987))、次にヒト血漿(ノボトニー(Novotny)ら、J.Biol.Chem.264,18832−18837(1989))、およびチャン肝細胞とSK肝癌細胞(ウン(Wun)ら、J.Biol.Chem.265,16096−16101(1990))から精製された。TFPI cDNAは胎盤cDNAおよび内皮cDNAライブラリーから単離された(ウン(Wun)ら、J.Biol.Chem.263,6001−6004(1988);およびギラード(Girard)ら、Thromb.Res.55,37−50(1989))。cDNA配列から推定されたTFPIの一次アミノ酸配列は、TFPIは、強い陰性荷電のアミノ末端、3つの縦列のクニッツタイプの阻害ドメイン、および強い陽性荷電のカルボキシ末端を含有することを示している。TFPIの第1のクニッツ−ドメインは、VIIa因子/組織因子複合体の阻害に必要であり、TFPIの第2のクニッツ−ドメインは、Xa因子の阻害に関与し(ギラード(Girard)ら、Nature 328,518−520(1989))、第3のクニッツ−ドメインの機能は未知である。米国特許第5,106,833号も参照。TFPIは、不活性化な、4成分からなるXa因子:TFPI:VIIa因子:組織因子複合体を形成することにより、凝固の開始を制限するようにインビボで機能すると考えられている。TFPIのさらなるバックグランド情報は、以下の文献中に総説がある:ラパポート(Rapaport)、Blood 73、359−365(1989);およびブローゼ(Broze)ら、Biochemistry 29、7539−7546(1990))。
組換えTFPIは、マウスC127細胞(デイ(Day)ら、Blood 76、1538−1545(1990))、ベビーハムスター腎細胞(ペダーソン(Pedersen)ら、J.Biol.Chem.265,16786−16793(1990))、チャイニーズハムスター卵巣細胞およびヒトSK肝癌細胞などの、哺乳動物細胞宿主を用いて、グリコシル化タンパク質として発現されている。C127 TFPIは動物実験で使用されており、ウサギにおいて組織因子誘導性の血管内凝固の阻害(デイ(Day)ら、前出)、およびイヌにおいて血栓溶解後の動脈再閉塞の防止(ハスケル(Haskel)ら、Circulation 84、821−827(1991))に有効であることが証明されている。
組換えTFPIはまた、大腸菌(E.coli)細胞を用いて、タンパク質のインビトロの折り畳みによる非常に活性なTFPIを得ることにより、非グリコシル化タンパク質としても発現されている(米国特許第5,212,091号。この内容は参考のため本明細書に引用される)。またウン(Wun)ら、Thromb.Hemostas.68,54−59(1992)も参照。
TFPIのアミノ酸残基276個のタンパク質をコードするTFPI cDNAのクローニングは、さらにウン(Wun)ら、米国特許第4,966,852号(参考のため本明細書に引用される)に記載されている。
最近、米国特許第5,212,091号に開示されたように、大腸菌(E.coli)中で発現した組換えDNAクローンを介して得られたTFPIが、微小血管吻合の血栓形成性を低下させるのに有用であることが記載された。米国特許第5,276,015号を参照(参考のため本明細書に引用される)。
(発明の簡単な説明)
本発明において、バルーン血管形成術後の狭窄を減弱するための新規な方法が提供される。本発明は、血管形成術後の温血哺乳動物に、狭窄の程度を低下させるのに有効な量の組織因子経路インヒビター(TFPI)を、非経口投与することよりなる。
TFPIは、組織因子とVIIa因子の複合体により合成されるXa因子と、血管の損傷後に誘導される複合体の活性をともに阻害するために、TFPIは、単一部位のインヒビター(トロンビン(Xa因子によるプロトロンビンの活性化の産物)またはXa因子のインヒビターを含む)に対して利点を有している。本明細書に記載の結果は、血管損傷後の狭窄の阻害のためのヘパリンと比較して、TFPIの利点を示している。
アテローム発生性の食餌により誘導した高コレステロール血症を有するミニブタの、頸動脈のバルーン過膨張誘導性損傷後の、TFPIの静脈内投与により、本発明を以下に例示する。
以下に本発明の方法を特にミニブタ種で例示するが、本方法は他の哺乳動物(例えば、ヒト)でも同様に有用であることを理解されるであろう。
本明細書に記載のように、TFPIはグリコシル化されていてもまたはされていなくてもよい。
(発明の詳細な説明)
本明細書は、発明を構成すると考えられる主題を説明し特許請求をする請求の範囲で終了するが、添付の図面とともに以下の本発明の好適な態様の詳細な説明により、本発明の理解が一層容易になるであろう。
本発明をより詳細に例示するために、高脂血症ミニブタモデルを用いて以下の実施例を行なった。しかし、本発明は、この実施例やこの実施例の中の詳細に限定されない。
(材料と方法)
スティーブンス(Stevens)らが、すでにAnn.of Vascular Surgery 6、55−61(1992)に記載したように、ウサギで急速に複雑なプラーク様の病変を生成する方法であるアテローム発生性の食餌で誘導した高脂血症を有するミニブタの、頸動脈にバルーン過膨張誘導性損傷を起こした後、3時間(n=7)または24時間(n=7)、pH7.2の300mMのアルギニンリン酸緩衝液中の組換えTFPIを静脈内に注入した(0.5mg/kgのボーラス、次に6mg/kg/hr)。4週間後、損傷された血管をin situで潅流固定し、組織学的検査を行なった。
前記例で使用したTFPIは、大腸菌(E.coli)中で発現した組換えDNAクローンにより得られた。これは、277アミノ酸のタンパク質であり、ウン(Wun)ら、J.Biol.Chem.263,6001−6004(1988)、および米国特許第4,966,852号に記載されたように、276残基配列と、米国特許第5,212,091号に記載のようにN−末端に追加のアラニン残基が挿入されたものである。未分画ヘパリンは、エルキンス−シン(Elkins−Sinn)(チェリーヒル(Cherry Hill)、ニュージャージー州)より購入した。
(結果)
上記のように処理した血管の組織学的検査は、TFPIを3時間投与されたミニブタでは管腔狭窄は73±13(標準誤差)%であり、ヘパリンを3時間投与されたミニブタでは70±14%であった(図1、有意差無し)。TFPIを24時間投与したミニブタでは狭窄は、わずかに13±12%であった(図2、TFPIの3時間に比較してp=0.008)。内部の弾性管腔の破裂(図4)が示すように重傷の血管損傷があるにもかかわらず、TFPIを24時間投与されたミニブタの内膜病変は無視できるほどであった。ヘパリン処理したミニブタで観察された、吸着性の血栓と泡沫細胞(図3)も、TFPIを24時間投与したミニブタでは無視できるほどであった。血漿試料に組織因子とカルシウムを加えて凝固形成の時間を終点として測定することにより凝固の外因系を評価しているプロトロンビン時間(PT)は、TFPIの注入の間ベースラインの2.5倍を越えていた(図5)。しかし、凝固の内因系を測定する活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)では、変化は観察されなかった(図6)。すなわち、TFPIの24時間の投与は、バルーン誘導性動脈損傷後の狭窄を顕著に減弱させた(しかし、3時間投与では異なる)。これらのデータは、TF−介在血栓が、損傷血管の狭窄においてある役割を果たしており、これを長時間阻害することにより、バルーン血管形成術後の再狭窄を制限することができることを示している。
TFPIの非経口投与は、好ましくは生理的に許容される賦形剤または担体(例えば、通常の食塩水またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)のような緩衝化食塩水、アルギニンリン酸緩衝液、またはヘペスのような他の薬剤学的に許容される緩衝液)との混合物から、TFPIを静脈内投与して行われる。このような通常の賦形剤は公知であり、薬剤投与の分野の多くの教科書や論文に記載されている。例えば、レミントン薬剤学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、アーサー・オソル(Arthur Osol)編、第16版、1980、マック出版(Mack Publishing Co.)、イーストン(Easton)、ペンシルバニア州)。非経口投与されるTFPIの量は、狭窄の重傷度により大きく異なる。1時間あたり約0.5mg/kg〜約6.0mg/kgの量を3〜24時間の長時間投与することが好ましい。0時間と8時間に0.5mg/kg〜1.0mg/kgの範囲のTFPIの間欠的ボーラス投与(または、カテーテルに基づくドラッグデリバリーシステムを用いて、血管損傷後の決定的に重要な間隔で血管にTFPIを直接投与)を行うと、必要な薬剤の総量を低下させることができる。
当業者は本発明の開示後、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、種々の他の例が考えられるであろう。しかし、このような他の例も本発明の請求の範囲内に包含されると考えられる。
本発明はNational Institutes of Healthにより与えられた認可番号HL17646をもって政府援助下になされた。政府は本発明について一定の権利を有する。
図1は、バルーン過膨張誘導性血管損傷を起こしたミニブタに、損傷の時から開始してヘパリン(100U/kg/h)またはTFPI(0.5mg/kgのボーラスおよび6mg/kg/h)を3時間注入した場合の、バルーン過膨張誘導性損傷の4週間後の頸動脈の狭窄(%)を示す棒グラフである。 図2は、バルーンで損傷を誘導し、TFPIを3時間または24時間静脈内注入(0.5mg/kgのボーラスおよび6mg/kg/h)したミニブタの、損傷の4週間後の頸動脈の狭窄(%)の比較を示す棒グラフである。 図3は、バルーンで損傷を誘導したミニブタにヘパリンを投与した4週間後に得られたコラーゲンのマッソン3色染色法で染色した頸動脈の断面の顕微鏡写真である。管腔の狭窄は>80%であり、内膜病変は平滑筋細胞を含有する繊維性キャップ、組織化血栓の核、および病変の基部の泡沫細胞よりなっていた。平滑筋がコラーゲンにより置換されているため、媒質への重い損傷が明らかである。図3と図4の倍率は60倍である。 図4は、TFPIを24時間投与したミニブタのバルーン損傷の4週間後に得られた弾性組織のヴァーヘフファンギーソン染色(Verhoeff’s Van Gieson stain)で染色した頸動脈断面の顕微鏡写真である。内部弾性膜に重症の血管損傷を示す切断があるが、内膜の増殖は小さく、管腔表面に血栓は見えない。 図5は、TFPIを投与したミニブタのプロトロンビン時間(PT)を示すグラフである。PTは、注入の間50秒(凝固タイマーの最大の読み値)以上であった。 図6は、TFPIを投与したミニブタの活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を示すグラフである。早期の増加は、TFPI投与の前にカテーテルで血栓形成を防止するための投与したヘパリンの静脈内注入を反映する。ヘパリンが循環血流から排除された後、しかしTFPIの注入を続けている間、aPTTはベースラインに戻った。

Claims (13)

  1. バルーン血管形成術後の狭窄の程度を低下させるのに充分に有効な量のTFPIを含有する、温血哺乳動物のバルーン血管形成術後の狭窄を減弱するための医薬組成物。
  2. TFPIは、生理的pHに緩衝化された通常の食塩水賦形剤中で保持される、請求の範囲第1項に記載の医薬組成物。
  3. TFPIは、0.5mg/kg〜約6mg/kgの量で、約3時間〜約24時間の長時間投与される、請求の範囲第1項に記載の医薬組成物。
  4. バルーン血管形成術後の狭窄の程度を低下させるのに充分に有効な量のTFPIを含有し、長期間投与用である、温血哺乳動物のバルーン血管形成術後の狭窄を減弱するための医薬組成物。
  5. 非経口投与用である、請求項4に記載の医薬組成物。
  6. 局所投与用である、請求項4に記載の医薬組成物。
  7. TFPIが生理学的に許容される賦形剤により保持されている、請求項4に記載の医薬組成物。
  8. TFPIを該生理学的に許容される賦形剤中で1時間当たり約0.5mg/kgから約6mg/kgの量で投与するための、請求項4に記載の医薬組成物。
  9. 該TFPIが(Ala−1)−TFPI(1−277)又は天然TFPI(1−276)である、請求項4に記載の医薬組成物。
  10. 該TFPIが、該TFPIの第一及び第二のクニッツ−ドメインである、請求項4に記載の医薬組成物。
  11. 該TFPIのN末端に追加のアラニンをさらに含む、請求項4に記載の医薬組成物。
  12. 該TFPIが、該TFPIの第一又は第二のクニッツ−ドメインである、請求項4に記載の医薬組成物。
  13. 該長期間が、約3時間から約24時間までである、請求項4に記載の医薬組成物。
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