JP2004527554A - Ardsの処理における修飾されたfvii - Google Patents
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Abstract
本発明は、ヒトにおける急性肺損傷(ALI)又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の処理のための薬剤の製造のための修飾された第VII因子の使用に関する。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、急性肺損傷(Acute Lung Injury)(AIL)及び急性窮迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome)(ARDS)の処理のための薬剤の製造のためへの修飾されたFVIIの使用、及びALI及びARDSの処理方法に関する。本発明はまた、ALI又はARDSに関連する慢性器官不全(chronic organ failure)を妨げるか又は最小にし、そしてそのような慢性器官不全を妨げるか又は最小にするための薬剤の製造のためへの修飾されたFVIIの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
急性呼吸窮迫症候群(“ARDS”)は、例えば外傷患者において進行することができる全身性炎症応答症候群(systemic inflammatory response syndrome)(SIRS)の表示である。前記症候群は、全身性メディエーター放出及び内皮の一般化された活性化により特徴づけられ、結果的に、多発性器官機能不全症候群を誘導する急性疾患である。感染性傷害(例えば、敗血症)及び非感染性病理学的原因(例えば、外傷及び組織損傷)は、SIRSを生成し、そしてARDSを明示する。ARDSは“臨床学的及び生理学的な異常性の型に関連する炎症及び高められた透過性の症候群”として記載されている(Am-European Consensus from 1994)。
【0003】
それは、急性疾患又は損傷、例えば敗血症、肺炎、呼吸、虚血症(循環停止、出血性ショック)、外傷及び他の疾病に合併症として進行する。ARDSを有する患者においては、肺の毛細血管性、間隙性及び肺胞性空間が、フィブリン沈着のための主要標的物である。これは主に、肺の大きな表面積(70m2)及び全心臓出力を受けるための肺毛細血管の位置のためである。しかしながら、破壊的な微血栓形成が、複数の器官、例えば最も暴露されるような肺及び腎臓において生じ、ここで多発性器官不全(MOF)の進行を導くことができる。さらに、炎症性応答はまた、肺水腫を引き起こす肺の肺胞空間中への血漿タンパク質の血管漏出をもたらす。
【0004】
ARDSの顕著な特徴は、透過性水腫の結果としての血液酸素付加及び呼吸系合併症における悪化である。種々の異なった傷害がARDSに導くことができるが、通常の経路はたぶん、酸素遊離基、アラキドン酸代謝物及び炎症性メディエイター、例えばインターロイキン−1、プロテアーゼの放出と共に、肺損傷及び/又は不全、肺内の白血球活性化をもたらし、そして腫瘍壊死因子は肺胞毛細血管膜透過性をもたらす。この高分子バリヤーの損失により、肺胞は、肺界面活性物質の機能を損なう血清タンパク質により満たされる(Saidなど., J. Clin. Invest. 44: 458-464; Holmなど., J. Appl. Physiol. 63: 1434-1442, 1987)。これは、病状をさらに悪化する静水力を創造し(Jefferiesなど., J. Appl. Physiol. 64: 5620-5628, 1988)、肺胞水腫、及びガス交換及び肺合併症における付随する悪化を導く。
【0005】
ARDS医療及び手術患者の両者に影響を及ぼす。この症候群はしばしば、進行性であり、異なった臨床学的、組織病理学的及びX線写真表示を伴なっての明白な段階により特徴づけられる。急性又は滲出性相は、病状についての免疫因子を有する患者における呼吸不全の急速な開始により表される。供給酸素による処理に対して抵抗力がある動脈性低酸素症は、特徴的な性質である。放射線的には、その発見は、心臓発生肺水腫の発見とは区別できない。両側の浸潤物は不調和又は非対称であり、そして胸膜滲出を包含することができる。肺胞充填、硬化及び無気肺は主に、依存性肺領域において生じ、そして他の領域は比較的そのままである。しかしながら、さらに空の非依存性領域は実質的な炎症を有する。病理学的発見は、好中球、マクロファージ、赤血球硝子膜に関する拡散性肺胞損傷、及び肺胞空間におけるタンパク質に富んでいる水腫、毛細管損傷、及び肺胞上皮の破壊を包含する。
【0006】
急性肺損傷及びARDSは、急性相の後、何人かの患者においては完全に解決することができるが、他においては、それは永続的な低酸素症、高められた肺胞デッドスペース、及び肺胞又は肺合併症のさらなる低下と共に、繊維性肺胞炎に進行する。肺高血圧は、肺−毛細管層の遮断のために、重度であり、そして右心室不全を導くことができる。ARDSから助かるほとんどの患者においては、肺機能は、肺の重度の損傷にもかかわらず、6〜12ヶ月以内にほぼ正常に戻る。肺機能の残留障害は、軽い拘束、閉塞、一酸化炭素についての拡散能力の傷害、又は運動を伴なってのガス交換異常性を包含するが、しかしそれらの異常性は通常、非症状性である。重度の疾病及び延長された機械的換気は、肺機能の永続的異常性についての高い危険性での患者を同定する。その疾病を生き延びるそれらの患者は、生命の低められた健康関連性質、及び生命の肺疾患−特異的健康関連性質を有する。
【0007】
ALI及びARDSのほとんどの研究は、40〜60%の死亡率を報告している。低い増減体積による換気の最近の治療成功は、ある場合、死が肺損傷に直接的に関連することを示すが、大部分の死は、主要な呼吸原因よりもむしろ敗血症又は多器官不全に寄与することができる。
【0008】
1988年、正の及び呼吸圧力のレベル、吸入される酸素の割合に対する動脈酸素の部分圧の割合、静止肺コンプライアンス、及び胸部X線写真に基づいての浸潤現象の程度に基づいての4点肺−損傷評点システムの使用を通して生理学的呼吸損傷を定量化する症候群の拡張された定義が提案された。その評価に包含される他の因子は、刺激性臨床学的障害及び非肺器官不全の存在又は不在である。
【0009】
1994年、新しい定義がAmerican-European Consensus Conference Committeeにより推薦された:第1に、臨床学的肺損傷の重度が変化し、低い重症度の低酸素症を有する患者(300又はそれ以下の吸入される酸素の割合に対する動脈酸素の部分圧の割合により定義されるような)は、ALIを有するものとして見なされ、そしてより重度の低酸素症を有するそれらの患者(200又はそれ以下の割合により定義されるような)はARDSを有するものとして見出される。第2に、その定義は、臨床学的設定に提供するために簡単である。1994年のコンセンサス定義及び1988年の肺−損傷評点システムの両者の広い許容性が、臨床学的調査及び試験の標準化を改良してきた。
【0010】
結果的に、急性肺損傷(ALI)は、次の基準により定義される(Bernardなど., Am. J. Respir. Crit. Care Med 149: 818-24, 1994):
−急性開始、
−胸部X線撮影に基づく両側の浸潤物、
−肺−動脈ウェッジ圧力は、18mmHg以下であるか、又は左動脈高血圧の臨床学的現象の不在であり、
−PaO2:FiO2は300以下である。
−ARDSは、次の基準に定義される(Bernardなど., Am. J. Respir. Crit. Care Med 149: 818-24, 1994):
【0011】
−急性開始、
−胸部X線撮影に基づく両側の浸潤物、
−肺−動脈ウェッジ圧力は、18mmHg以下であるか、又は左動脈高血圧の臨床学的現象の不在であり、
−PaO2:FiO2は200以下である。
(PaO2は、動脈酸素の部分圧、及び吸入される酸素のFiO2画分を示す)
ARDSは、肺への直接的な損傷に関連する臨床学的障害、及び全身性工程の設定において間接的な肺損傷を引き起こすそれらの障害により誘発され得る(表1を参照のこと):
【0012】
ARDS の進行に関連する臨床学的障害:
【表1】
【0013】
全体的に、敗血症は、ARDSへの進行の最高の危険性に40%関連する。
炎症がいかに調節されるかを変更する疾病、例えば敗血症は、宿主防御の適切な及び/又は過剰の刺激のために重度のALIを引き起こす。炎症の間、付随的な凝固経路のいくつかの成分、例えば組織因子(TF)、活性化された第VII因子(FVIIa)及び第X因子(FXa)、及びトロンビンが、組織応答を調節するためにキー炎症メディエーターと相互反応する。凝固の活性化は、血管空間における前凝固環境の進行による内毒素又は細菌の注入の後、急速に生じる。
【0014】
それらの変化は、TF依存性であり、そして炎症性サイトカインの上昇に関連している。同様に、肺においては、前凝固状態は、内毒素の注入の後、動物においては、又は実験ALIにより測定されて来た。類似する前凝固環境は、ARDSを有する患者の細気管支肺胞洗浄(BAL)において見出されており、血管外肺炎症がまた、付随的な経路を活性化することを示す。炎症メディエーターは凝固に対して特定の効果を有するが、炎症応答における調節因子としての凝固におけるTF及び関連する現象の役割の逆の関係は、ほとんど十分には理解されていない。
【0015】
ALI又はARDSの処理において有用な医薬についての必要性が当業界に存在する。本発明者は、修飾されたFVIIが急性肺損傷の進行の間、炎症及び凝固障害応答の両者を弱め、そして確立されたALI又はARDSを有する対象における修飾されたFVIIによる凝固の封鎖が肺及び腎損傷を弱め、そして肺及び腎機能を保護することを見出した。他の組織もまた保護された。確立された急性肺損傷のモデルにおける修飾されたFVIIによるTF/FVIIa活性の阻止は、有意且つ劇的に生存性を延長し、そして炎症及び凝固障害応答を弱めた。これは、肺、腎臓及び他の器官におけるフィブリン沈着の実質的な保護、器官機能の保存、及びIL−6及びIL−8放出の有意な弱体化を示すデータにより明白にされた。
【0016】
引用される技術:
国際出願番号WO92/15686号は、修飾された第VIIa因子、前記因子の生成のためのポリ核酸及び哺乳類細胞系、及び血液凝固を阻害するための修飾された第VIIa因子を含んで成る組成物に関する。
国際出願番号94/27631号は、血管再狭窄、組織因子活性及び血小板沈着を阻害するための方法に関する。
国際出願番号WO96/12800号は、組織プラスミノーゲン活性化因子又はストレプトキナーゼと共に、修飾された第VIIa因子を含んで成る組成物を個人に投与することを含んで成る、冠状動脈の急性閉鎖の処理方法に関する。
【0017】
Millerなど., FASEB Jaurnal 15 (4), A497, 7March 2001: FVIIaの競争阻害は、肺損傷、及び気管支内リポ多糖の前炎症サイトカイン放出を弱める。
Welty−Wolfなど., American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 158 (2), 61-, 1998:細菌プライミングはグラム陰性敗血症における肺損傷を高める。
Carrawayなど., American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 157 (3), 938, 1998: E-及びL−選択に対する抗体は、敗血性ヒヒにおいて肺損傷又は死亡率を妨げない。
Taylorなど., Critical Care Medicine 2000, 28 (9), 512:静脈内及び腹腔内E.コリ敗血症のヒヒモデル及び内毒血症のヒトモデルの説明;DICの良好な定義。
Bajajなど., Thrombosis and Haemostasis 78 (1), 471, 1997: TFPI;可能性ある治療への適用。
【0018】
Gandoなど., The Journal of Trauma : Jurry, Infection and Critical Care 47 (4), 719, 1999:進行性ARDSにおけるTF依存性凝固経路の組織的活性化及び外傷及び敗血症を有する患者。
Taylorなど., Haemostasis 1996, 26 (Suppl.1), 83: ヒヒにおけるLD100 E. コリに対する凝固及び炎症応答におけるTF及びFVIIaの役割。
Welty−Wolfなど., Abstract Preciew from ATS 200a, 2001年4月、ATSウェブページで入手できる:付随的な凝集封鎖は、E.コリ敗血症を有するヒヒにおける炎症性サイトカインレベル及び肺損傷を弱める。
【発明の開示】
【0019】
1つの観点においては、本発明は、ヒトにおける急性肺損傷(ALI)又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の処理のための薬剤の製造のための修飾された第VII因子の使用を提供する。
1つの態様においては、本発明は、ヒトにおける急性肺損傷(ALI)又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に関連する症候及び病状の処理のための薬剤の製造のための修飾された第VII因子の使用を提供する。
1つの態様においては、前記薬剤は、器官不全の処理のためである。
1つ態様においては、前記薬剤は、追加の器官の不全を妨げるためである。
【0020】
1つの態様においては、前記薬剤は、器官機能を維持するか又は改良するためである。1つの態様においては、前記薬剤は、肺高血圧の処理のためである。1つの態様においては、前記薬剤は、前凝固活性を低めるか又は最小にするためである。その1つの態様においては、前記前凝固活性は、肺上皮細胞及び組織マクロファージによる組織因子発現に関連している。1つの態様においては、前記薬剤は、炎症を低めるか又は最小にするためである。1つの態様においては、前記薬剤は、IL−6及びIL−8の生成を低めるか又は最小にするためである。1つの態様においては、前記薬剤は、肺ガス交換を改良するためである。1つの態様においては、前記薬剤は、肺水腫を低めるか又は最小にするためである。1つの態様においては、前記薬剤は、肺タンパク質漏出を低めるか又は最小にするためである。
【0021】
もう1つの観点においては、本発明は、ヒトにおけるALI又はARDSに関連する慢性器官不全を妨げるか又は最小にするための薬剤の製造のための修飾された第VII因子の使用を提供する。1つの態様においては、前記ALI又はARDSは、修飾されたFVIIが投与される前、確立されている。
本発明の1つの態様においては、前記器官が、腎臓、肺、副腎、肝臓、小腸、心血管系又は止血系である。1つの態様においては、前記器官は肺である。1つの態様においては、前記器官の腎臓である。1つの態様においては、前記器官は、心血管系である。1つの態様においては、前記器官は止血系である。
【0022】
1つの観点に置いては、本発明は、ヒトにおける急性肺損傷(ALI)又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の処理方法を提供し、ここで前記方法は治療的有効量の修飾されたFVIIを、そのような処理の必要な対象に投与することを含んで成る。
本発明の異なった態様においては、前記方法は、器官不全を処理し、追加の器官の不全を妨げ、肺高血圧を処理し、前凝固活性を低めるか又は最小にし、炎症を低めるか又は最小にし、IL−6及びIL−8の生成を低めるか又は最小にし、肺ガス交換を改良し、肺水腫を低めるか又は最小にし、そして肺タンパク質漏出を低めるか又は最小にするためである。
【0023】
1つの観点においては、ヒトにおけるALI又はARDSに関連する慢性器官不全を妨げるか又は最小にするための方法を提供し、ここで前記方法は、治療的有効量の修飾されたFVIIを、そのような処理を必要とする対象に投与することを含んで成る。1つの態様においては、前記ALI又はARDSは、修飾されたFVIIが投与される前、確立されている。
【0024】
もう1つの観点においては、本発明は、肺不全の処理のための薬剤の製造のためのFVIIaiの使用を提供する。1つの態様においては、前記肺損傷は、急性肺損傷(ALI)である。1つの態様いおいては、前記肺損傷は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である。1つの態様においては、肺損傷の処理は、ARDSへの進行からALIを防げる。さらなる観点においては、本発明は、確立されたALI又はARDSにおける追加の肺損傷を保護するための薬剤のためのFVIaiの使用を提供する。さらなる観点においては、本発明は、確立されたALI及びARDSにおける肺機能を維持するか又は改良するための薬剤の製造のためのFVIIaiの使用を提供する。
【0025】
1つの観点においては、本発明は、対象における肺損傷を処理するための方法を提供し、ここで前記方法は、そのような処理の必要な対象に医薬的有効量のFVIIaiを投与することを含んで成る。1つの態様においては、肺損傷は急性肺損傷(ALI)である。1つの態様においては、肺損傷は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である。1つの態様においては、肺損傷の処理は、ARDDSへの進行からALIを妨げる。さらなる観点においては、本発明は確立れたALI又はARDSを有する対照における追加の肺損傷に対する保護方法を提供し、ここで前記方法は、そのような処理の必要な対象に、治療的有効量のFVIIaiを投与することを含んで成る。
【0026】
さらなる観点においては、本発明は、確立されたALI又はARDSを有する対象おける肺機能を維持するか又は改良するための方法を提供し、ここで前記方法は、そのような処理の必要な対象に、治療的有効量のFVIIaiを投与することを含んで成る。1つのさらなる観点においては、本発明は、肺高血圧の処理のための薬剤の製造のためへの修飾されたFVIIの使用を提供する。もう1つの観点においては、本発明は、対象における肺高血圧の処理方法を提供し、ここで前記方法は、そのような処理の必要な対象に、治療的有効量の修飾されたFVIIを投与することを含んで成る。1つの態様においては、前記肺高血圧は急性肺損傷(ALI)に関連し;もう1つの態様においては、肺高血圧は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に関する。
【0027】
もう1つの観点においては、本発明は、肺における前凝集活性を低めるか又は阻害するための薬剤の製造のためへの修飾されたFVIIの使用を提供する。もう1つの観点においては、本発明は、対象の肺における前凝集活性を低めるか又は阻害するための方法を提供し、ここで前記方法は、そのような処理の必要な対象に、治療的有効量の修飾されたFVIIを投与することを含んで成る。1つの態様においては、前記前凝集活性は、肺上皮細胞及び組織マクロファージによる組織因子発現に関する。1つの観点においては、本発明は、血管外フィブリン沈着を低めるか又は阻害するための薬剤の製造のためへの修飾されたFVIIの使用を提供する。
【0028】
もう1つの観点においては、本発明は対象における血管外フィブリン沈着を低めるか又は阻害のするための方法を提供し、ここで前記方法は、そのような処理の必用な対象に、治療的有効量の修飾されたFVIIを投与することを含んで成る。1つの態様においては、前記血管外フィブリン沈着は、肺における沈着である。1つの態様においては、血管外フィブリン沈着は、器官損傷の間の沈着である。1つの観点においては、本発明は、肺炎症を低めるか又は阻害するための薬剤の製造のためへの修飾されたFVIIの使用を提供する。もう1つの観点においては、本発明は対象における肺炎症を低めるか又は阻害するための方法を提供し、ここで前記方法は、そのような処理の必要な対象に、治療的有効量の修飾されたFVIIを投与することを含んで成る。
【0029】
本発明の1つの態様においては、前記修飾されたFVIIは、触媒三元体において少なくとも1つのアミノ酸残基置換、挿入又は欠失を有するFVIIである。1つの態様においては、前記修飾されたFVIIは、位置Ser344、Asp242及びHis193において少なくとも1つのアミノ酸残基置換、挿入又は欠失を有するFVIIである(位置は、アメリカ特許4,784,950号に記載のような野生型ヒトFVIIの配列を言及する)。1つの態様においては、前記活性部位残基Ser344が修飾され、すなわちGly、 Met、 Thr, 又はより好ましくはAlaにより置換される。1つの態様においては、前記修飾されたFVIIが、セリンプロテアーゼインヒビターとの反応により修飾されたFVIIaである。
【0030】
1つの態様においては、前記プロテアーゼインヒビターは、有機リン化合物、弗化スルファニル、ペプチドハロメチルケトン又はアザペプチドである。1つの態様においては、前記プロテアーゼインヒビターは、ダンシル−L−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、ダンシル−L−Glu−Gly−Argクロロメチルケトン、ダンシル−L−Phe−Phe−Argクロロメチルケトン、L−Phe−Phe−Argクロロメチルケトン、ダンシル−D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、ダンシル−D−Glu−Gly−Argクロロメチルケトン、ダンシル−D−Phe−Phe−Argクロロメチルケトン及びD−Phe−Phe−Argクロロメチルケトンから選択されたペプチドハロメチルケトンである。
【0031】
1つの態様においては、修飾された第VII因子は、その態様する種の野生型第II因子の触媒活性の約5%以下、より好ましくは約1%以下の活性を有する。
1つの態様においては、本発明は、ヒトにおける確立された急性肺損傷(ALI)又は確立された急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の処理のための薬剤の製造のための修飾された第VII因子の使用を提供する。
1つの態様においては、前記修飾されたFVIIは、1又は複数回のボーラス注射として投与される。
1つの態様においては、修飾されたFVIIは、70kgの体重当たり、約0.05mg〜500mg/日;1mg〜200mg/日;1mg〜約150mg/日;1mg〜約125mg/日;1mg〜約100mg/日;10mg〜約175mg/日;10mg〜約150mg/日;又は10mg〜約125mg/日の量で投与される。
【0032】
1つの態様においては、修飾されたFVIIは、複数回のiv注射により投与される。
1つの態様においては、修飾されたFVIIは、100μg/kg×1、100μg/kg×2、100μg/kg×4、200μg/kg×1、200μg/kg×2、200μg/kg×4、400μg/kg×1、400μg/kg×2、400μg/kg×4、800μg/kg×1、又は800μg/kg×2の1日(24時間)当たりの用量で投与される。その1つの態様においては、修飾されたFVIIは、1日間、患者に投与され;他の態様においては、修飾されたVIIは、2日間、患者に投与され;他の態様においては、修飾されたFVIIは、3日間、患者に投与される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
略語:
AaDO2:動脈−肺胞酸素グラジエント
APTT :活性化された部分的トロンボプラスチン時間
ALL :急性肺損傷
APC :活性化されたタンパク質C
ARDS :急性呼吸窮迫症候群
ASIS :FFR−rFVIIa
BAL :気管支肺胞洗浄
BUN :血液尿窒素
【0034】
BW :体重
CO :心臓出力、L/分
Cs :肺システムコンプライアンスにおける低下
DO2 :酸素供給、mL/分
DVT :深部静脈血栓症
F1-2 :フィブリノーゲンフラグメント1及び2
FiO2 :吸入される酸素画分
FFR :D−フェニルアラニル−L−フェニルアラニル−L−アルギニル−トリペプチド
FFR-rFVIIa:FFR−不活性化されたrFVIIa
FPA :フィブリノペプチドA
【0035】
FVII :ヒト凝固第VII因子
FVIIa:ヒト活性化された凝固第VII因子
IL-1β:インターロイキン−1β
IL-6 :インターロイキン−6
IL-8 :インターロイキン−8
Kg :キログラム
LP5 :リポ多糖
MW :分子量
NIH :National Institute of Health
NOEL :効果レベルは観察されない
【0036】
PAM :平均肺動脈圧の上昇
PaO2 :動脈血液の酸素圧
PCWP :肺毛管ウェッジ圧力、mmHg
PT :プロトロンビン時間
PTCA :経皮トランスルミナー冠動脈形成
PVR :肺血管抵抗
RBC :赤血球細胞
rFVIIa :活性化された組換えヒト第VII因子
【0037】
SVR :全身性血管抵抗、色素×cm×kg/10
TAT :トロンビン−抗トロンビン複合体
TF :組織因子
TNFR-1:TNF受容体−1
TFPT :組織因子経路インヒビター
VO2 :酸素消費、mL/分
μg :μグラム
【0038】
用量“器官損傷”とは、構造体に対する損傷、及び/又は腎臓、肺、副腎、肝臓、腸、心血管系及び/又は止血系における器官の機能に対する損傷を包含するが、それだけには限定されない。器官損傷の例は、形態学的/構造的損傷、及び/又は器官の機能、例えば、タンパク質(例えば、界面活性剤)又は流体の肺クリアランス障害による蓄積、又は肺変化機構に対する損傷又は肺胞―毛細管膜損傷を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0039】
用語“器官外傷”、“器官損傷”及び“器官不全”とは、交換可能的に使用され得る。通常、器官損傷は、器官不全をもたらす。器官不全とは、ALI又はARDSを有さない個人におけるその対応する器官の平均的な正常機能に比較して、器官機能の低下を意味する。器官不全は、機能の少々の低下(例えば、正常の80〜90%)であり、又はそれは機能の主要な低下(正常の10〜20%)であり;その低下はまた、器官機能の完全な不全でもあり得る。器官不全は、例えば組織壊死、糸球体(腎臓)の損失、フィブリン沈着、出血、水腫又は炎症による低められた生物学的機能(例えば、尿生産量)を包含するが、但しこれだけには限定されない。器官損傷は、組織壊死、糸球体(腎臓損傷)の損失、フィブリン沈着、出血、水腫又は炎症を包含するが、但しこれだけには限定されない。
【0040】
用語“肺損傷”とは、例えば先天的な異常性又は後天的異常性による肺損傷、例えば自己免疫状態の開始、後−移植肺拒絶、炎症応答をもたらす感染、肺における圧力/体積関係の変化、外来性剤(例えば、タバコの煙又はダスト)、非毒性又は毒性剤(例えば溶媒又は発煙)への前記哺乳類の暴露、又は治療剤への暴露に起因する所望しない副作用による損傷を包含するが、但しそれらだけには限定されない。肺損傷の例は、形態学的/構造的損傷、及び/又は肺の機能、例えば肺クリアランス障害によるタンパク質(例えば、界面活性剤)又は流体の蓄積による損傷、又は肺変化機構による損傷又は肺胞−毛細管膜損傷を包含するが、但しそれらだけには限定されない。用語“肺外傷”、“肺損傷”及び“肺不全とは、交換可能的にしようされ得る。
【0041】
器官機能及び効率を試験するための方法、及びそのような試験のための適切な生化学又は臨床学的パラメーターは、当業者に良く知られている。
そのようなマーカー、又は器官機能の生化学的パラメーターは、例えば次の通りである:
呼吸 :PaO2/FiO2比
凝固 :血小板
肝臓 :ビリルビン
心血管 :血圧、及び昇圧処理のための必用性
腎 :クレアチニン及び尿生産量
【0042】
他の臨床学的評価は、ベンチレーターのない日、器官不全のない日、昇圧処理のない日、SOFA評点及び肺外傷評点評価、並びに生存微候を含んで成る。
凝固障害又は炎症を試験するための方法はまた、当業者に良く知られている。凝固又は炎症状態のそのようなマーカーは例えば、PTT、フィブリノーゲン消耗、TAT複合体の上昇、ATIII活性、IL−6、IL−8及びTNFR−1である。
【0043】
用語“慢性器官損傷”とは、ALI又はARDSを有することに起因する長期の損傷を包含するが、但しそれだけに限定されない。特に肺メカニックのこの残る障害は、一酸化炭素についての拡散能力の軽い制限、阻害、障害、又は運動によるガス交換異常、永続的な低酸素症を伴なっての繊維化性肺胞炎、高められた肺胞デットスペース、及び肺胞又は肺コンプライアンスのさらなる低下を包含するが、但しそれらだけには限定されない。肺高血圧は、肺毛細管層の閉塞のために、重度であり、そして右心室不全を導くことができる。
【0044】
本明細書においては、用語“処理”とは、確立されたALIの処理、確立されたARDSの処理及び確立されたALIからのARDSへの進行の阻止を包含する。処理は、ALI又はARDSに関連する症状又は又は病状の減衰、排除、最小化、緩和又は改善、例えばある程度の器官不全及び/又は損傷をすでに受けている器官への追加の損傷及び/又は不全の阻止、及び修飾されたFVIIの投与の時点で、器官不全及び/損傷を受けていない追加の器官の損傷及び/又は不全の進行の阻止を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0045】
そのような症状又は病状の例は、形態学的/構造的損傷、及び/又は器官、例えば、肺、腎臓、副腎、肝臓、腸、心血管系及び/又は止血系の機能の損傷を包含するが、但しそれらだけには限定されない。そのような症状又は病状の例は、形態学的/構造的損傷、及び/又は器官の機能、例えば肺クリアランス障害によるタンパク質(例えば、界面活性剤)又は流体の蓄積による損傷、又は肺交換機構の損傷、又は肺胞毛細管膜の損傷、低められた尿生産量(腎臓)、組織壊死、糸球体(腎臓)の損失、フィブリン沈着、出血、水腫又は炎症を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0046】
器官不全又は損傷の減衰とは、前記器官の機能の少なくとも1つのそれらの良く知られているマーカーにより測定される場合の器官機能の改良を意味し;器官不全又は損傷が減衰される場合、選択されたマーカーの値は、ALI又はARDSを有さないリヒトにおいて見出される値に比較して、正常化される。
“確立された”ALI又はARDSとは、患者が、ALI又はARDSを有する場合、上記で言及された4点肺損傷評点システムに従って評価されており(Bernardなど., Am. J. Respir. Crit. Care Med 149: 812-24)、又はALI又はARDSに関連する症状又は病状が患者において観察されていることを意味する。
【0047】
急性肺損傷(ALI)は、多くの肺外傷因子、例えば胃内溶物の吸引、肺炎、敗血症、多量の輸血、多発性外傷及び膵炎への暴露に続いて進行する。少数の患者は、約40〜50%の死亡率を有する成人又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)として言及されるより重度の肺外傷を進行する。ARDSは、多くの肺外傷因子、例えば胃内溶物の吸入、肺炎、敗血症、多量の輸血、多発性外傷及び膵炎(但し、これらだけには限定されない)への暴露に続いて進行する。
【0048】
本明細書においては、用語“修飾された第VII因子”とは、“部位−不活性化された第VIIa因子”、“活性部位−不活性化された第VIIa因子”又は“FVIIai”と交換可能的に使用され得る。修飾された第VII因子又は第VIIai因子は、チモーゲンの形(すなわち、一本鎖分子)で存在することができ、又はその活性化部位で切断され得る。従って、“修飾された第VII因子”とは、組織因子を結合し、そして第IX因子から第Ixa因子への及び第X因子から第Xa因子への活性化を阻害する、修飾された第VII因子及び修飾されたVIIa因子の包含を意味する。
【0049】
ヒト第IIa因子は、例えばアメリカ特許第4,784,950号に開示される(野生型第VII因子)。第VII因子配列は、少なくとも1つのアミノ酸修飾を有し、ここで前記修飾は、血漿第X又は第IX因子の活性化を触媒する、活性化された第VII因子の能力を実質的に低めるよう選択され、そして従って、凝固活性を阻害することができる。修飾された第VII因子は、少なくとも1つのアミノ酸置換により修飾される活性部位を有し、そしてこの修飾された形で、組織因子を結合することができる。修飾された第VII因子組成物は展開的には、実質的に純粋な形で存在する。
【0050】
ヒト及びウシ第VII因子の好ましい態様においては、活性部位残基Ser344が修飾され、すなわちGly, Met, Thr又はより好ましくはAlaにより置換される。そのような置換は、別々に、又はAsp242を包含する、触媒三元体における他の部位での置換と組合して行われ得る。
【0051】
修飾された第VII因子は、それぞれビタミンK−依存性血漿タンパク質のプレ−プロペプチド及びglaドメイン、及びglaドメインレス第VII因子タンパク質をコードする、2つの操作可能的に結合された配列コード領域を含んで成るポリヌクレオチド分子によりコードされ、ここで発現に基づいて、ポリヌクレオチドは、血漿第X又はIX因子を有意に活性化せず、そして組織因子を結合することができる修飾された第VII因子分子をコードする。このポリヌクレオチドにより発現される、修飾された第VII因子分子は生物学的活性の抗凝固剤であり、すなわちそれは、凝固カスケード及び従って、フィブリン沈着又は凝固の形成を阻害することができる。修飾された第VII因子を発現するためには、ポリヌクレオチド分子は、哺乳類細胞系、例えばBHK, BHK570又は293細胞系中にトランスフェクトされる。
【0052】
第VIIa因子の触媒活性は、触媒中心の化学的誘導体化により阻害され得る。誘導体化は、第VII因子と、非可逆性インヒビター、例えば有機リン化合物、弗化スルホニル、ペプチドハロメチルケトン又はアザペプチドとの反応により、又は例えばアシル化により達成され得る。好ましいペプチドパロメチルケトンは、PPACK(D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン)(引用により本明細書に組込まれるアメリカ特許第4,318,904号を参照のこと);D−Phe−Phe−Arg及びPhe−Phe−Argクロロメチルケトン(FFR−cmk);及びDEGRck(ダンシル−Glu−Gly−Argクロロメチルケトン)を包含する。
【0053】
第VIIa因子の触媒活性はまた、アミノ酸の置換、挿入又は欠失により阻害され得る。好ましい態様においては、アミノ酸置換が、第VIIa因子触媒部位に寄与するアミノ酸を含む領域として本明細書において定義される第VII因子触媒三元体(catalytic triad)のアミノ酸配列において行なわれる。触媒三元体における置換、挿入又は欠失は一般的に、触媒部位を形成するアミノ酸で又はそれに隣接して存在する。ヒト及びウシ第VII因子タンパク質においては、触媒“三元体”(triad)を形成するアミノ酸は、Ser344, Asp242及びHis193である(下付きの番号は、配列における位置を示す)。
【0054】
他の哺乳類からの第VII因子における触媒部位は、現在入手できる技法、例えば中でも、タンパク質単離及びアミノ酸配列分析を用いて決定され得る。触媒部位はまた、活性部位が前もって決定されている、他のセリンプロテアーゼ、特にキモトリプシンの配列とある配列とを一列整列し(Siglerなど., J. Mol. Biol., 35: 143-164 (1968)(引用における本明細書に組込まれる)、そして前記一列整列から、類似する活性部位残基を決定することによっても決定され得る。
【0055】
アミノ酸置換、挿入又は欠失は、第X因子及び/又はIX因子のVIIa因子による活性化を妨げるか又は他方では、阻害するために行われる。これは、例えば脂質膜に封入されたTF及び第X因子を含んで成るシステムにおいて第Xa因子を生成する第VIIa因子の能力を測定するか(Perssonなど., J. Biol. Chem. 272: 19919-19924, 1997);又は水性システムにおける第X因子加水分解を測定することによって容易に決定され得る(下記“インビトロタンパク質分解アッセイ”を参照のこと)。しかしながら、そのようにして修飾された第VII因子はまた、凝固カスケードにおける組織因子に結合するために確実な第VII因子及び/又は第VIIa因子と競争する能力を保持すべきである。
【0056】
そのような競争は、本明細書に記載のような凝固アッセイ(例えば、アメリカ特許第5,997,864号に記載のような)、又は例えば細胞表面組織因子を有する細胞系、例えばヒト膀胱癌細胞系J82(引用により本明細書に組込まれるSakaiなど., J. Biol. Chem. 264: 9980-9988 (1989))を用いる競争結合アッセイにより、又は表面プラスモン共鳴(例えば、Persson, FEBS Letts. 413: 359-1363, 1997)に基づいての装置を用いてTFに対するその物理的結合を測定することにより容易に決定され得る。
【0057】
第VII因子における触媒部位、例えばヒト及びウシ第VII因子におけるSer344, Asp242及びHis193を形成するアミノ酸は置換されるか又は欠失され得る。本発明においては、好ましくは単一のアミノ酸のみを変更し、従って、分子の抗原性の上昇又は組織因子を結合するその能力を阻害する傾向を最小にするが、しかしながら、複数のアミノ酸変更(置換、付加又は欠失)が行われ得、そして置換、付加および欠失の組み合わせがまた行われ得る。ヒト及びウシ第VII因子についての好ましい態様においては、Ser344が好ましくは、Alaにより置換されるが、しかしGly, Met, Thr又は他のアミノ酸が置換され得る。AspをGluにより置換し、そしてHisをLys又はArgにより置換することが好ましい。一般的に、置換は、できるだけタンパク質の三次構造を破壊しないよう選択される。
【0058】
引用により本明細書に組込まれるDaghoffなど. Atlas of Protein Structure 1978, Nat’l Biomed. Res. Found., Washington, D.C. のモデルは、他のアミノ酸置換の選択におけるガイドとして使用され得る。ヒト、ウシ又は他の種の適切な第VII因子配列の触媒部位における上記のような残基変更を導入し、そしてその得られるタンパク質を、本明細書に記載されるような触媒活性及び得られる抗凝固活性の所望する阻害レベルについて試験することができる。修飾された第VII因子に関しては、触媒活性は、実質的に阻害され、一般的には、その対応する種の野生型第VII因子の触媒活性の約5%以下、より好ましくは約1%以下(例えば、下記“インビトロタンパク質分析アッセイ”において測定されるように)に阻害されるであろう。
【0059】
修飾された第VII因子は、組換えDNA技法の使用により生成され得る。一般的に、クローン化された野生型第VII因子DNA配列は、所望するタンパク質をコードするよう修飾される。次に、この修飾された配列は、発現ベクター中に挿入され、次に、これを用いて、宿主細胞を形質転換するか又はトランスフェクトする。高等真核細胞、特に培養された哺乳類細胞が、宿主細胞として好ましい。ヒト第VII因子のための完全なヌクレオチド及びアミノ酸配列が知られている。組換えヒト第VII因子のクローニング及び発現が記載されている、引用により本明細書に組込まれるアメリカ特許第4,784,450号を参照のこと。ウシ第VII因子配列は、引用により本明細書に組込まれるTakeyaなど., J. Biol. Chem. 263: 14868-14872 (1988) に記載されている。
【0060】
アミノ酸配列変更は、種々の技法により達成され得る。DNA配列の修飾は、特定部位の突然変異誘発によってあり得る。特定部位の突然変異誘発についての技法は当業界おいて良く知られており、そして例えばZoller and Smith, DNA 3: 379-488, 1984により記載されている。従って、第VII因子のヌクレオチド及びアミノ酸配列を用いて、選択される変更を導入することができる。
【0061】
このようにして修飾された第VII因子は、ビタミンK−依存性血漿タンパク質第IX因子、第X因子、プロトロンビン、タンパク質C、タンパク質S又はタンパク質Zの1つのglaドメインにより置換されたアミノ末端タンパク質(glaドメイン)を有するそれらのタンパク質を包含する。ビタミンK−依存性血漿タンパク質のglaドメインは、γ−カルボキシグルタミン酸残基の存在により特徴づけられ、そして一般的には、それぞれの遺伝子におけるエキソン−イントロン境界の位置に対応するC−末端を有する約30〜約40個の長さのアミノ酸からである。異種glaドメインを有する第VII因子を生成するための方法は、引用により本明細書に組込まれるアメリカ特許第4,784,950号に開示される。
【0062】
修飾された第VII因子の生成のために使用されるDNA配列は典型的には、宿主細胞から適切な後―翻訳プロセッシング(例えばグルタミン酸残基のγ−カルボキシル化)及び分泌を得るために、第VII因子タンパク質のアミノ末端でプレ−プロペプチドコードするであろう。前記プレ−プロペプチドは、第VII因子又はもう1つのビタミンK−依存性血漿タンパク質、例えば第IX因子、第X因子、プロトロンビン、タンパク質C又はタンパク質Sのそのペプチドであり得る。当業者により理解されるように、追加の修飾は、修飾された第VII因子のアミノ酸配列において行なわれ、ここでそれらの修飾は、抗凝固剤としての作用するタンパク質の能力を有意に害しない。例えば、触媒三元体において修飾される第VII因子はまた、一般的に、引用により本明細書に組込まれるアメリカ特許第5,288,629号に記載されるように、チモーゲン第VII因子のその活性化された二本鎖形への転換を阻害するために活性化切断部位において修飾され得る。
【0063】
修飾された第VII因子は、抗−第VII因子抗体カラム上での親和性クロマトグラフィーにより精製され得る。引用により本明細書に組込まれるWakabayashiなど., J. Biol. htem. 261: 11097-11108 (1986) 及びThimなど., Biochem. 27: 7785-7793 (1933) により記載されるように、カルシウム−依存性モノクローナル抗体の使用は、特に好ましい。追加の精製は、従来の化学的精製手段、例えば高性能液体クロマトグラフィーにより達成され得る。
【0064】
クエン酸バリウム沈殿を包含する他の精製方法は、当業界において知られており、そして本明細書に記載される新規の修飾された第VII因子の精製に適用され得る(一般的には、Scopes, R., Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y., 1982を参照のこと)。少なくとも約90〜95%の相同性の実質的に純粋な修飾された第VII因子が好ましく、そして最も好ましくは98〜99%の相同性のその第VII因子が医薬使用のために好ましい。所望には、部分的に又は均質に精製されると、修飾された第VII因子が治療的に使用され得る。
【0065】
修飾された第VII因子は、それをその二本鎖形に転換するためにその活性化部位で切断される。活性化は、当業界において知られている方法、例えば引用により本明細書に組込まれる。Osterudなど., Biochemistry 11: 2855-2857 (1972); Thomas, アメリカ特許第4,456,591号;Hedner and Kisiel, J. Clin. Invest. 71: 1836-1841 (1983); 又はKisiel and Fujikawa, Behring Inst. Mitt. 73: 29-42 (1983) により開示されるそれらの方法により行なわれ得る。次に、得られる分子は、下記のようにして、配合され、そして投与される。
【0066】
投与及び用量:
肺不全の処理のための医薬組成物は、非経口の投与のために意図される。好ましくは、医薬組成物は、非経口的に、すなわち静脈内、皮下、筋肉内又は肺に投与される。非経口投与のための組成物は、許容できるキャリヤー、好ましくは水性キャリヤーに溶解された、修飾された第VII因子分子の溶液を含んで成る。種々の水性キャリヤー、例えば水、緩衝水、0.4%塩溶液、0.3%グリシン及び同様のものが使用され得る。修飾された第VII因子分子はまた、創傷の部位への供給又はその標的化のためにリポソーム調製物中に配合され得る。リポソーム調製物は一般的に、例えば引用により本明細書に組込まれるアメリカ特許第4,837,028号、第4,501,728号及び第4,975,282号に記載される。組成物は、従来の良く知られている殺菌技法により殺菌され得る。
【0067】
得られる水溶液は、使用のためにパッケージされ、又は無菌条件下で濾過され、そして凍結乾燥され、その凍結乾燥された調製物は、投与の前、無菌水溶液と組合される。組成物は、生理学的条件に近づけることが必要とされる場合、医薬的に許容できる補助物質、例えばpH調節及び緩衝剤、等張調節剤及び同様のもの、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、等をを含むことができる。それらの配合物における修飾された第VII因子の濃度は、広く変化し、すなわち約0.5重量%以下、通常約1重量%又は少なくとも1重量%〜15又は20重慮%ほどであり得、そして選択される投与の特定のモードに従って、流体体積、粘度、等により主に選択されるであろう。
【0068】
従って、静脈内注入のための典型的な医薬組成物は、250mlの無菌リンガー溶液、及び10mgの修飾された第VII因子を含むよう製造され得る。非経口投与できる化合物を調製するための実際の方法は、当業者に知られているか又は明らかであり、そして例えば、Remington’s Pharmaceutical Science, 16thed. Mack Publishing Company, Easton, PA (1982)(引用により本明細書に組込まれる)に、より詳細に記載される。
【0069】
修飾された第VII因子分子を含む組成物は、上記に記載されるような疾病をすでに有する患者に、前記疾病及びその合併症を治療するか又は少なくとも阻止するのに十分な量、投与される。これを達成するのに適切な量は、“治療的有効量”として定義される。この使用のために効果的な量は、疾病又は外傷の重症度、及び患者の体重及び一般的な状態に依存するが、しかし一般的には、負荷及び維持用量として70kgの患者当たり、約0.05mg〜500mg/日、より典型的には、1mg〜200mg/日、例えば1mg〜約150mg/日、1mg〜約125mg/日、1mg〜約100mg/日、10mg〜約175mg/日、10mg〜約150mg/日、又は10mg〜約125mg/日の範囲である。
【0070】
本発明の材料は一般的に、重度の疾病又は外傷状態、すなわち生命脅威の又は実質的に生命脅威の情況において使用され得ることが注目されるべきである。そのような場合、ヒトにおける異質物質の最少化及び修飾されたヒト第VII因子の免疫原性の一般的な欠乏の観点において、実質的に過剰のそれらの修飾された第VII因子組成物を投与することが可能であり、そして処置する医者により所望される。
【0071】
薬剤は、一回又は複数回の投与により投与され得る。毎日の維持レベルを必用とする患者に関しては、修飾された第VII因子が、反復されたi.v.注射、又はポータブルポンプシステムを用いて連続的注入により投与され得る。ARDSの処理における修飾された第VIIa因子の投与パターンは、負荷用量として約1mg/kg i.v.の用量、維持の用量としての約0.05mg/kg/時である(mg/kgは、患者のkg体重当たりmgの修飾された第VII因子を示す)。
【0072】
もう1つのパターンは、1日(24時間)当たり修飾された第VII因子の1又は複数回の用量、例えば100μg/kg×1、100μg/kg×2、100μg/kg×4、200μg/kg×1、200μg/kg×2、200μg/kg×4、400μg/kg×1、400μg/kg×2、400μg/kg×4、800μg/kg×1、又は800μg/kg×2である。この用量は、1又は複数日の間、例えば(100kg/kg×1/日)×2日、(100kg/kg×2)×2日、(100kg/kg×4)×2日、(200kg/kg×1)×2日、(200kg/kg×2)×2日、(200kg/kg×4)×2日、(400kg/kg×1)×2日、(400kg/kg×2)×2日、(400kg/kg×4)×2日、(800kg/kg×1)×2日又は(800kg/2)×2日で投与される。薬剤は好ましくは、iv注射として投与される。
【0073】
修飾された第II因子又はもう1つのTFアンタゴニスト(例えば、抗-TF抗体)はまた、活性化されたタンパク質C(APC)、又はAPCの生物学的活性を保持するそのフラグメント又は変異体と組合して投与され得る。この場合、第1量の修飾された第VII因子又はTFアンタゴニスト、及び第2量のAPC又はその生物学的活性変異体又はフラグメントが投与され、ここで前記第1及び第2量は一緒で、ALI又はARDSの処理において効果的である。
【0074】
組成物は、修飾された第VII因子又はもう1つのTFアンタゴニストの調製物、及びAPC又はその生物学的活性フラグメント又は変異体の調製物を、適切な濃度で含んで成る単一の調製物の形(単一用量形)で存在することができる。組成物はまた、修飾された第VII因子又はもう1つのTFアンタゴニストの調製物を含んで成る第1単位用量形、及びAPC又はその生物学的活性フラグメント又は変異体を含んで成る第2単位用量形から成るキット−オブ−パート(kit-of-parts)の形で存在することができる。いずれの成分でも最初に投与され得る。
【0075】
第1、又は第2、又は第3、等の単位用量がこの明細書において言及される場合いつでも、これは、投与の好ましい順序を言及しているのではなく、しかし単なる便利目的のためである。好ましくは、両生成物は、同じ静脈内アクセスを通して注射される。キットは、別々の組成物を含むための容器手段、例えば分割されたボトル又は分割された箔パケットを包含する。典型的には、キットは別々の成分の投与のための説明書を包含する。このキット形は、別々の成分が好ましくは異なった用量形で投与される場合、異なった投与間隔で投与される場合、又は組み合わせの個々の成分の滴定が処方医者により所望される場合、特に好都合である。
【0076】
修飾された第FVII因子又はもう1つのTFアンタゴニストの量、及び本発明に従って投与されるAPC又はその生物学的活性フラグメント又は変異体の量は、約1:100〜約100:1(w/w)の比である。修飾されたFVII又はもう1つのTFアンタゴニスト:APC又はその生物学的活性フラグメント又は変異体の比は、例えば約1:100、又は1:90、又は1:80、又は1:70、又は1:60、又は1:50、又は1:40、又は1:30、又は1:20、又は1:10、又は1:5、又は1:2、又は1:1、又は2:1、又は5:1、又は10:1、又は20:1、又は30:1、又は40:1、又は50:1、又は60:1、又は70:1、又は80:1、又は90:1、又は100:1、又は約80:1〜約2:1、又は約70:1〜約5:1、又は約60:1〜約10:1、又は約50:1〜約25:1、又は40:1〜約30:1、又は約10:1〜約1:10、又は約5:1〜約1:5であり得る。
【0077】
修飾されたFVII又はもう1つのTFアンタゴニスト(例えば、抗−TF抗体)はまた、TFPI、又はTFPIの生物学的活性を保持するそのフラグメント又は変異体と組み合しても投与され得、この場合、修飾されたFVII又はもう1つのTFPアンタゴニストの第1量及びTFPI又はその生物学的活性変異体又はフラグメントの第2量が投与され、ここで前記第1及び第2量は、ALI又はARDSの処理において効果的である。
【0078】
組成物は、修飾された第VII因子又はもう1つのTFアンタゴニストの調製物、及びTFPI又はその生物学的活性フラグメント又は変異体の調製物を、適切な濃度で含んで成る単一の調製物の形(単一用量形)で存在することができる。組成物はまた、修飾された第VII因子又はもう1つのTFアンタゴニストの調製物を含んで成る第1単位用量形、及びTFPI又はその生物学的活性フラグメント又は変異体を含んで成る第2単位用量形から成るキット−オブ−パート(kit-of-parts)の形で存在することができる。いずれの成分でも最初に投与され得る。
【0079】
第1、又は第2、又は第3、等の単位用量がこの明細書において言及される場合いつでも、これは、投与の好ましい順序を言及しているのではなく、しかし単なる便利目的のためである。好ましくは、両生成物は、同じ静脈内アクセスを通して注射される。キットは、別々の組成物を含むための容器手段、例えば分割されたボトル又は分割された箔パケットを包含する。典型的には、キットは別々の成分の投与のための説明書を包含する。このキット形は、別々の成分が好ましくは異なった用量形で投与される場合、異なった投与間隔で投与される場合、又は組み合わせの個々の成分の滴定が処方医者により所望される場合、特に好都合である。
【0080】
修飾された第FVII因子又はもう1つのTFアンタゴニストの量、及び本発明に従って投与されるTFPI又はその生物学的活性フラグメント又は変異体の量は、約1:100〜約100:1(w/w)の比である。修飾されたFVII又はもう1つのTFアンタゴニスト:TFPI又はその生物学的活性フラグメント又は変異体の比は、例えば約1:100、又は1:90、又は1:80、又は1:70、又は1:60、又は1:50、又は1:40、又は1:30、又は1:20、又は1:10、又は1:5、又は1:2、又は1:1、又は2:1、又は5:1、又は10:1、又は20:1、又は30:1、又は40:1、又は50:1、又は60:1、又は70:1、又は80:1、又は90:1、又は100:1、又は約80:1〜約2:1、又は約70:1〜約5:1、又は約60:1〜約10:1、又は約50:1〜約25:1、又は40:1〜約30:1、又は約10:1〜約1:10、又は約5:1〜約1:5であり得る。
【0081】
修飾されたFVII又はもう1つのTFアンタゴニスト(たとえば、抗−TF抗体)はまた、好ましくは患者血漿1dl当たり110mg又はそれ以下に血清グルコースを維持することができる。血液グルコース低減剤、例えばインスリンと組合して投与して得る。この場合、修飾されたFVII又はもう1つのTFアンタゴニストの第1量、及び血液グルコース低減剤、例えばインスリン又はその生物学的活性変異体又はフラグメントの第2量が投与され、ここで前記第1及び第2量は共に、ALI又はARDSの処理において有効である。
【0082】
組成物は、修飾された第VII因子又はもう1つのTFアンタゴニストの調製物、及び血液グルコース低減剤、例えばインスリン又はその生物学的活性フラグメント又は変異体の調製物を、適切な濃度で含んで成る単一の調製物の形(単一用量形)で存在することができる。組成物はまた、修飾された第VII因子又はもう1つのTFアンタゴニストの調製物を含んで成る第1単位用量形、及び血液グルコース低減剤、例えばインスリン又はその生物学的活性フラグメント又は変異体を含んで成る第2単位用量形から成るキット−オブ−パート(kit-of-parts)の形で存在することができる。いずれの成分でも最初に投与され得る。
【0083】
第1、又は第2、又は第3、等の単位用量がこの明細書において言及される場合いつでも、これは、投与の好ましい順序を言及しているのではなく、しかし単なる便利目的のためである。好ましくは、両生成物は、同じ静脈内アクセスを通して注射される。キットは、別々の組成物を含むための容器手段、例えば分割されたボトル又は分割された箔パケットを包含する。典型的には、キットは別々の成分の投与のための説明書を包含する。このキット形は、別々の成分が好ましくは異なった用量形で投与される場合、異なった投与間隔で投与される場合、又は組み合わせの個々の成分の滴定が処方医者により所望される場合、特に好都合である。
【0084】
修飾された第FVII因子又はもう1つのTFアンタゴニストの量、及び本発明に従って投与される血液グルコース低減剤、例えばインスリン又はその生物学的活性フラグメント又は変異体の量は、約1:100〜約100:1(w/w)の比である。FVII:血液グルコース低減剤の比は、例えば約1:100、又は1:90、又は1:80、又は1:70、又は1:60、又は1:50、又は1:40、又は1:30、又は1:20、又は1:10、又は1:5、又は1:2、又は1:1、又は2:1、又は5:1、又は10:1、又は20:1、又は30:1、又は40:1、又は50:1、又は60:1、又は70:1、又は80:1、又は90:1、又は100:1、又は約80:1〜約2:1、又は約70:1〜約5:1、又は約60:1〜約10:1、又は約50:1〜約25:1、又は40:1〜約30:1、又は約10:1〜約1:10、又は約5:1〜約1:5であり得る。
【0085】
実験及びヒヒモデルの説明:
敗血症−誘発された組織因子(TF)発現は、肺における凝固を活性化し、そしてフィブリン沈着をもたらし、そして炎症を強める前凝固環境に誘導する。TF−第VIIa因子(FVIIa) 複合体での凝固の開始の阻害は、フィブリン沈着を阻止し、そして炎症を調節し、それにより、敗血症における急性肺損傷(ALI)及び他の器官損傷を制限する。ALIのモデルを使用し、ここで動物は、殺害されたE. コリ(1×109CFU/kg)により感作され、そして致死性敗血症は、1×1010CFU/kgの生存E.コリの注入により12時間後、誘発された。
【0086】
処理グループにおける動物は、生存細菌の注入の時点でTFの競争体インヒビター、すなわち部位−不活性化されたFVIIa (修飾されたFVII) を静脈内に与えられ、そしてさらに36時間、生理学的にモニターされた。FVIaiはガス交換及び肺コンプライアンスを劇的に保護し、肺水腫及び肺高血圧を妨げ、そしてビークルに比較して腎機能を保存し(p<0.001)、そして全身性前炎症サイトカイン応答、例えばインターロイキン−6を低めた(p<0.01)。敗血症−誘発されたALIにおけるTFの保護効果遮断は、組織因子経路インヒビター(TFPI)を用いて確認された。その結果は、TF−FVIIa複合体が前炎症性サイトカイン放出及びフィブリン沈着の選択的刺激を通して敗血性霊長類において器官損傷を一部、制限されたことを示す。
【0087】
グラム陰性敗血症を有する患者は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)及び多臓器不全(MOF)の高い発生率を有する。それらの患者の肺は、特徴的には、フィブリンが敗血症におけるARDSの病原に寄与する証拠が付随するが、肺胞及び間隙区画におけるフィブリン沈着を示す。散在性血管間凝固(DIC)を妨げることによって敗血症を処理するよう企画された方策は、ショックによるヒト及び非ヒト霊長類における死亡率を低めるが、しかしそれらの研究は、残留死亡率、器官特異的分析の欠失、及びARDSに類似する急性肺損傷(ALI)を生成する動物モデルの無能性により制限されて来た。ARDSは敗血症患者において有意な羅病率及び死亡率を引き起こすので、本発明者は、肺への組織因子(TF)開始された凝固及びフィブリン沈着及び敗血症における全身性器官損傷の寄与を研究するためにARDS及びMOFの非ヒト霊長モデルを使用した。
【0088】
内毒素又は細菌が循環中に侵入する場合、付随的な凝固が急速に活性化され、そして前凝固環境が血管空間において進行する。これは、TF依存性であり、そして内毒素の前凝固効果を介在する炎症性サイトカインの上昇に関連する。同様に、前凝集環境は、内毒素注入の後又は実験的な急性肺損傷(ALI)の間、動物の肺において、及びARDSを有する患者の気管支肺胞洗浄(BAL)において見出される。
【0089】
全身性循環におけるように、肺における前凝固活性はTF発現に関連し、このことは、血管外炎症がまた、付随的な経路を活性化することを示唆する。前凝固活性と肺損傷との間の関連性にもかかわらず、TF及び他の凝固因子について特定の病因的役割は肺の外傷応答においては定義されていない。TFのように、活性化された第VII因子(FVIIa)及び第X因子(FXa)、トロンビン及びフィブリンは、肺における血管透過性、炎症細胞移動及び界面活性機能不全を変更する細胞シグナル化に対して特定の効果を有する。肺血症に対する応答における凝固と炎症との間のこの複雑なクロストークの正確な寄与は未だ知られていない。
【0090】
グラム陰性敗血症の間の凝固の防止は、凝固関連の炎症応答を弱くすることによってALI及び他の器官炎症を妨げる。これは、E.コリ敗血症の確立されたヒヒモデルにおいて試験され、ここで全身性炎症応答は、殺害された細菌のプライミング注入により予備活性化される。第2の致死用量の細菌の後、動物は、ARDSを有するヒトに類似する、筋力過多心血管応答、及び肺及び腎不全を進行する。本発明者は、天然のFVIIaよりもTFに対して5倍高い親和性のためにFVIIaを競争的に阻害する、部位−不活性化されたFVIIa(FVIIai)を用いて、プライミング用量の細菌の後、TF−FVIIa複合体での凝固の開始を阻止した。次の研究は、FVIIaiを用いての凝固遮断が敗血症候群における全身性炎症及びフィブリノーゲン消耗を低め、そして肺及び腎臓に対する外傷を妨げることを示す。
【0091】
これは、致死性敗血症における凝固の開始の阻止の後、最終器官機能における特定の改良性を示すための最初の研究である。この発見は、敗血症−誘発された呼吸及び腎不全におけるTFについての病因役割を確立し、そしてTFの遮断は肺及び腎機能を効果的に保存する。治療効果を評価するためのこのアプローチは、プライミングされたヒヒの生理学的及び組織学的応答がヒトにおける敗血症に対する応答に密接に従うので、強力である。敗血症における凝固を阻止するために種々の方策を用いるこれまでの動物研究は、TF遮断又は抗凝固のいずれかの後、より良好な生存性を報告しているが、しかし最終器官外傷の評価は重度の敗血症ショックの存在により複雑にされて来た。
【0092】
プライミングは炎症を予備活性化し、そしてヒトにおける実験的内毒症に類似する、肺ガス交換、メカニックス及び血液力学における軽い自己制限された変更を引き起こす。続く圧倒的なグラム陰性敗血症は、進行性肺及び腎損傷、炎症性サイトカインの永続的な上昇、及び凝固阻害をもたらす。それらの動物における免疫応答は複雑であり、そして一定の治療剤、例えば白血球付着分子に対するmAbは、プライミングされた動物における結果を有意に悪化する。対照的に、TF−FVIIaの遮断は、凝固障害及びフィブリン沈着を弱くし、そして致死性E.コリ感染の後、肺及び腎損傷を妨げる。
【0093】
過去においては、敗血症における凝固遮断の主要目的は、血管区画におけるフィブリン沈着の阻害であったが、しかし本発明者は、器官損傷の間の血管外フィブリン沈着がまた、介在を受けやすいことを示した。フィブリンは組織修復において細胞移動及びコラーゲン形成のための決定的なマトリックスを提供するが、しかしまた、炎症を刺激することができる。肺においては、フィブリンの実質細胞蓄積が、炎症細胞移動、界面活性機能不全及び前線維性工程に寄与することができる。ガス交換及び肺水はこの研究において非常に改良されたが、残留フィブリンがFVIIai処理された動物における肺胞領域及び小血管の周囲に検出された。これは、TF遮断の強い保護効果がフィブリンの不在のために完全でなく、そして凝固を包含するキー修復工程はFVIIaiによる処理の間、損なわれないまま存在することを示唆する。
【0094】
FVIIaiは、組織保護に寄与する敗血症の36時間後、肺及び腎臓における管腔内フィブリン凝固を妨げなかった。血管内フィブリン沈着は、小さな栄養血管における閉塞性トロンビンの直接的な結果として、及び内皮−白血球相互作用の増強を通して、器官不全に寄与する。血管内フィブリンはいくつかの組織において、及びある臨床学的設定においてたぶん重要であるけれども、例えば圧倒的なショック及び組織低灌流が生じる場合、上皮細胞及び組織マクロファージによる血管外TF発現はまた、前凝固性、前炎症性現象を開始する。内在し、そして浸潤するマクロファージ、及び固定された細胞集団の両者は、炎症性肺及び腎疾患におけるTFの源として包含され、このことは、凝固が血管外実質において異なって調節されることを示唆する。
【0095】
TFは、直接的に、又はFXa、トロンビン及びフィブリン(これらのすべては炎症とのクロストークを示す)の生成を通して免疫機能を調節することができるグループIIサイトカイン受容体である。個々の成分は、炎症応答に対して独立した効果を有し、そしてTFの阻止開始は、経路における続く段階で短い炎症相互作用の利点を有する。TFは、ALIの進行に相当するマイトゲン−活性化されたタンパク質キナーゼ(MAPK)サイトカイン調節を活性化した。特に、IL−6は、ARDSにおいて永続的炎症及び不良な結果に関連した。インビトロで、FVIIaiはMAPKを阻害し、このことは、触媒活性のFVIIaがそれらの経路を通してのTFシグナル化のために必要とされることを示す。FVIIaによるTFの結合は、多くの免疫調節剤、例えばIL−1β、IL−8及び他のケモカイン、凝固及び成長因子、及びコラゲナーゼを誘発する。
【0096】
本発明者のヒヒモデルにおいては、FVIIaiは、IL−6、IL−8及びTNFR−1の血漿レベルを低めた。これは、低められたTFシグナル化、又は前炎症性サイトカインを誘発する、FXa及びトロンビンの低められた下流生成から生じる。IL−6及びIL−8はさらに、TF発現及びTF遮断を高め、そしてFVIIaiは肺における敗血症−誘発されたTF発現を著しく低めた。急性肺損傷の他の重要なメディエーター、例えばVEGFの調節は、TF−FVIIaによるFXaの生成、又はTFの細胞質末端のいずれかを必要とする。最終的に、他のデータは、TFが高く発現される場合、それはシグナル化現象を開始する他のトランスメンブランタンパク質にFVIIaを提供するための補因子として機能することを示唆する。そのような相互作用が、TFが敗血症におけるように高く過剰発現される時、重要である場合、VIIaの直接的な標的化は、TFを阻害する他の発明よりも利点を有する。
【0097】
激症敗血症を有する動物の初期研究においては、3種の実験剤、すなわちTFPI、抗−TF mAb及びDEGR−FVIIaが、TF−開始された凝固で標的化された。それらの剤は生存性を改良したが、しかしながら、TF−FVIIa複合体、例えば活性化されたタンパク質C(APC)及び抗トロンビンIII(ATIII)に遠位のプロテアーゼの天然のインヒビターはまた、生存効能を示した。それらの方策は急速な進行性ショックを進行する前もって攻撃されていない動物においてすべて試験されたので、凝固活性はTF−FVIIaの複合体から下流のショックにおける死亡率に寄与することが可能である。抗−TF剤のように、それらの影響はALI及びMOFに関して研究されていない。
【0098】
上記研究においては、血清IL−6及びIL−8の低下が観察され、そして改良された生存性についての機構として考慮された。それらのメディエーターについての決定的な効果は、局在化するには困難であり、そして一貫して、凝固及びサイトカインを生存性に結び付けない。FXa及びトロンビンで凝固を阻害するATIIIは死亡率、凝固障害及びIL−6生成を低めたが、しかしながらそれらの結果はヒト試験においては再現されなかった。対照的に、DEGF−FVIIaは凝固障害及びIL−6生成を弱めたが、しかしサイトカインレベルと相関しない、生存性に対する種々の効果を有した。
【0099】
また、不活性化されたFXaは凝固障害を弱めたが、しかし急性敗血症ショックにおいて生存性を改良しなかった。それらの研究における凝固遮断の効果は、器官機能の生理学的エンドポイントと相関しなかった。ヒトにおいては、TFPIによるTF遮断は、低用量内毒素注入によりIL−6レベルに影響を及ぼさなかったが、但し、それは凝固の活性化を妨げた。それらの研究は共に、特に炎症挑戦が進行するにつれて、霊長類における凝固プロテアーゼの炎症及び凝固機能についての異なった閾値を包含する。
【0100】
本発明者の動物においては、FVIIaiは、全体的に凝固の阻止しないで、肺炎症を排除した。新規観察は、出血が関与する敗血症患者に望みを提供する。FVIIaiはTFを効果的に結合するが、それはインビトロで凝固を不完全に阻止する。従って、TF−FVIIaのより高い活性化は凝固よりも炎症のために必要とされ、そしてこの研究に使用されるFVIIaiの用量で、重度の出血は見られなかった。さらに、凝固に対する薬物の効果は、出血が生じる場合、ヒト組換えFVIIaにより逆にされた。
【0101】
要約すると、本発明者は、TF−FVIIaの複合体での凝固の遮断が、非ヒト霊長類において、E.コリ敗血症の間、肺及び腎臓損傷を妨げる。他の組織は、種々の程度に保護され、このことは、敗血症における損傷へのTFに基づく寄与が器官間で異なることを示唆する。ARDSを有する、決定的には疾病であるヒトにおけるように、本発明者は、永続的な炎症の存在下でこの方策を試験し、ここで延長されたサイトカイン発現が機能的効果のために決定的な関係を有する。凝固の異なった観点に基づく敗血性ショックについてのこれまでの方策は、種々の臨床学的成功を有した。
【0102】
これは、敗血症の異種損傷、及び炎症に関しての異なった凝固プロテアーゼ間の相互作用の両者にたぶん影響を及ぼす。本発明者のデータは、凝固カスケードにおいて近位に作用する剤が敗血症における肺及び肝臓損傷に対する高い陽性影響を有するであろうことを示唆する。
次の例は、例示目的であり、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0103】
例1.
FVII の生物学的活性:
第VIIa因子及び第VIIa因子変異体の活性を、生理学的基質、例えば第X因子を、適切には、100〜1000nMの濃度で用いて測定することができ、ここで生成される第Xa因子が、適切な発色性基質(例えば、5−2765)の添加の後に測定される。さらに、活性アッセイが生理学的温度で行なわれ得る。
【0104】
“インビトロタンパク質分解アッセイ”
天然(野生型)の第VIIa因子及び第VIIa因子変異体(この後、“第VIIa因子”として言及する)を、それらの比活性を直接的に比較するために同時にアッセイする。このアッセイは、マイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)において行なわれる。0.1MのNaCl、5mMのCaCl2及び1mg/mlのウシ血清アルブミンを含む50mMのヘルペス(pH7.4)100μl中、第VIIa因子(10nM)及び第X因子(0.8μM)を、15分間インキュベートする。次に、第X因子分解を、0.1MのNaCl、20mMのEDTA及び1mg/mlのウシ血清アルブミンを含む50mMのヘルペス(pH7.5)50μlの添加により停止する。
【0105】
生成される第Xa因子の量を、発色性基質、Z−D−Arg−Gly−Arg−p−ニトロアニリド(5-2765, Chromogenix, Sweden) (最終濃度0.5mMの)の添加により測定する。405nmでの吸光度を、SpectraMaxTM340プレートリーダー(Molecular Devices, USA)において連続的に測定する。10分間、進行した吸光度を、FVIIaを含まないブランクウェルにおける吸光度の控除の後、変異体のタンパク質分解活性と野生型第VIIa因子との間の比を計算するために使用する:
比=(A405nm 第VIIa因子変異体)/(A405nm 第VIIa因子野生型)。
それに基づいて、天然の第VIIa因子よりも実質的に低い活性を有する第VIIa因子変異体、例えば前記変異体の活性と天然の第VII因子(野生型第VII因子)との間の比が5%以下、又は1%又はそれ以下である変異体を同定することができる。
【0106】
例2.
非本質的な凝固の遮断が確立されたグラム陰性敗血症を有するヒヒにおける肺損傷を低める:
生存細菌注入の時点で活性部位−不活性化されたVIIa(ASIS)による凝固の遮断がヒヒにおける敗血症−関連の急性肺損傷(ALI)及び腎不全を弱めたことが示されている。本発明は、確立されたE.コリ敗血症がまた、低められたALI及び腎不全を伴なって、ASISによる処理に対して応答することを示した。
【0107】
成長した雄ヒヒは、静脈内生存E.コリ1×1010/kgの12時間前、1×109/kgの熱殺されたE.コリの注入を受けた。動物を48時間、機械的に換気し、そして8−12mmHgのPCWP(肺毛細血管楔入圧)を維持するために流体により支持した。6匹の動物を、細菌注入の後、ASIS(1mg/kg iv, 続いて50μg/kg/時)により処理した。6匹の動物は敗血症対照として作用した。値は平均±SEとして示された。
【0108】
ASISは血漿フィブリノーゲン消耗を妨げ、これは付随的経路の治療的遮断と一致する。敗血症は好中球減少症を誘発し、そして栓球現象症は影響されなかった。48時間後、処理された動物は、低められた肺湿/乾量(C=6.9±0.8, ASIS=5.0±0.2)と共に、ガス交換(ΔAaDO2, mmHg: C=25.4±3.9、ASIS=14.4±5.2)を保存した。肺組織は、ASIS−処理された敗血症動物において低められた炎症を示した。ASISにより処理された敗血症動物においては、尿生産量が高く(UOP, ml/kg/時=C=5.7±1, ASIS=12.3±1.7、P≦0.01)、そして代謝アシドーシスは弱められた(ΔHC3 -、meq/dl:C=−4.3±2.9, ASIS=+3±1.1, p≦0.05)。ASIS−処理された動物からの腎臓は、敗血症対照に比較して、保存された管状の構造を示した。薬剤注入は、出血性合併症を伴なわないで十分に許容された。その結果は、付随的な凝固の阻害開始が確立された敗血症における急性肺及び腎不全を保護することを示す。
【0109】
【表2】
【0110】
例3.
実験的な急性肺損傷における組織因子遮断:
本発明者は、E.コリ敗血症からALIを有するヒヒにおけるTF−開始された凝固の遮断を研究した。活性部位不活性化されたFVII(ASIS)は、付随的な凝固を阻止し、そして全身性サイトカイン応答、例えばインターロイキン(IL)−6、IL−8及び腫瘍壊死因子受容体−1を低めた。それはまた、肺、腎臓及び他の組織における敗血症関連の損傷を弱めた。血漿フィブリノーゲン及びトロンビン−抗−トロンビンIII(TAT)複合体の測定は、ASISによる処理の後、凝固の血管内活性化の低下を確証した。
【0111】
処理されていない敗血症動物においては、フィブリン沈着が肺及び血管内及び血管外区画における他の組織において著しかった。これは、低められたが、しかしASISにより処理された敗血症動物においては排除されず、このことはTF−遮断の保護効果がフィブリンの低められた生成のためにまったく存在しなかったことを示唆する。ASISによる遮断はまた、肺における炎症変化、例えば好中球湿潤を低め、そして水腫及び出血を低めた。ASISによる凝固の遮断及びフィブリン沈着の減衰は、ガス交換及びコンプライアンスを保存することにより肺機能を改良し、肺高血圧を低め、そして腎機能を改良した。TFPIにより処理された2匹の敗血症ヒヒはまた、ASISにより処理されたヒヒよりも低い程度ではあるが、ガス交換及び肺コンプライアンスにおいて改良性を示した。それらの結果は、TF−FVIIa複合体が敗血症に対する病理学的応答のための重要な調節部位であることを示す。
【0112】
敗血症における凝固遮断の1つの可能性ある保護機構は、前炎症サイトカイン生成の減衰である。凝固と炎症との間のクロストークが異常調節された炎症のキー成分である可能性が、最終水腫損傷の程度についての関係を有する。肺上皮細胞及びマクロファージによる肺胞及び間隙空間において発現されるTFは、TF遮断により修飾される場合、肺機能の改良を導く、敗血症における前凝固、前炎症性現象を開始することができる。
ASISはD−Phe−Phe−Arg−FVIIaである。
【0113】
例4.
方法:
動物の準備:体重14〜20kgの成長した雄ヒヒ(Papio cyanocephalus)を、最少4週間、隔離し、そして使用の前、結核のないことを確かめた。動物を、AAALACガイドラインに従って取り扱い、そして実験プロトコールは、Duke University Institutional Animal Care and Use Committeeにより許可された。それらは、処理及び敗血症対照グループにランダムに分けられた(それぞれ、n=6)。処理された動物は、生存細菌の注入の直前、時間t=12時で1mg/kgで活性部位−不活性化されたFVIIa (FVIIai, Novo Nordisk, Copenhagen) を、静脈内(iv.)に受け、続いて50mg/kg/時間(iv.)を受けた。
【0114】
処理されていない動物は、ビークルのみのiv. 注入を受けた。薬剤は、ヒト組換えFVIIaに由来し、ここで活性部位が小さなペプチド(D−Phe−L−Phe−L−Argクロロメチルケトン)の導入による阻止されており、そして用量はヒト患者における安全性に基づいて選択された。修飾は、タンパク質分解活性を阻止し、そしてTF活性を5倍、増強する。TFの独立したインヒビターに関する発見を確かめるために、2匹の追加のヒヒを、組織因子経路インヒビター(TFPI, Abla Creasy, Chiron, Emeryville, CA)により同じプロトコールを用いて、同じ用量で処理した。
【0115】
一晩の絶食の後、個々の動物は、筋肉内ケタミン(20−25mg/kg)により鎮静化され、そして挿管された。強い鎮静は、ケタミン(3−10mg/kg/時)及びジアセパム(2時間ごとに、0.4−0.8mg/kg)により維持された。動物は、容量で循環される換気装置により換気され、そして呼吸測定の前、パンクロニウム(4mg、静脈内)により継続的に麻酔された。FiO2は0.21であり、増減量(tidal volume)は12mg/kgであり、正の最終呼吸圧は2.5cm H2Oであり、そして速度は40mmHgの動脈PCO2を維持するよう調節された。内在性動脈系及び肺動脈カテーテルを、血液力学モニターリングのために大腿骨切断を通して配置した。このモデルについての詳細な記載は公開されている(例えば、Welty−Wolfなど.、Am.J. Resp. Care Med. 1998; 158: 610-619)。
【0116】
すべての動物は、生存E.コリの投与の12時間前、t=0での60分の注入とそて、約109CFU/kgの熱殺害されたE.コリを受けた。敗血症は、1010CFU/kgの生存E.コリを50mlの体積で60分間にわたっての注入によりt=12時で誘発された。ゲンタマイシン(3mg/kg, iv.)及びCaftazidime(1g, iv.)を、E.コリ注入の完結の60分後、投与した。肺毛細管楔入圧(PCWP)を8〜12mmHgで維持し、そして血圧を支持する必要がある場合、流体が与えられた。平均動脈圧(MAP)が、流体にもかかわらず、65mmHg以下に落ちる場合、ドーパミンを低血圧のために使用した。48時間後(生存細菌注入の36時間後)、動物は深く麻酔をかけられ、そしてKCl注入により殺された。前もって定義された終結基準は、難治性低血圧(60mmHg以下のMAP)、低酸素血症(40%以上のFiO2のために必要とされる)、又は難治性代謝アシドーシス(正常PaCO2を伴なって、pH<7.10)を包含した。
【0117】
血液力学モニターリング:生理学的パラメーター、例えば心拍数(HR)、温度、動脈圧、肺動脈圧、換気装置パラメーター及び流体摂取が1時間ごと回収された。測定は、必要な場合、熱希釈法による心臓出力(CO)、中心静脈圧(CVP)、PCWP、動脈及び混合された血液気体、酸素飽和、酸素含有率及びヘモグロビン(Hgb)により6時間ごとに得られた(例えば、Welty−Wolfなど., Am. J. resp. Crit. Care Med. 1998; 158: 610-619)。尿カテーテル生産量は、6時間ごとに測定され、そして流体バランスは合計のiv. 摂取−尿生産量として計算された。
【0118】
E.コリの調製:E.コリ(American Type Culture Collection, Rockville, MD; 血清型D869:K61)を、記載のようにして調製し(REFS7−10)、そして個々のヒヒに関して、1×1010FU/kgの最終用量を付与するために調節した(LD100)。熱殺害されたE.コリを、少なくとも30分間、65℃で水浴において細菌の管を加熱することによって調製した。生物の数及び熱殺害の効能を、注入プレートを用いてコロニー計数により確かめた。
【0119】
全血液、血漿及び血清に対する測定:血液サンプルを、0, 12, 13, 18, 24, 36及び48時間で採血した。完全な血液計数を、全血液に対して行なった(Sysmex−1000血球計数器、Sysmex, Inc., Long Grove, IL)。血漿(クエン酸血液から)及び血清を分離し、そして−80℃で貯蔵した。フィブリノーゲンを、分析されるST4機械的凝固を用いて測定した(Diagnostiga Stago, Parsippany, NJ)。プロトンビン時間(PT)及び活性化された部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を、二重反復して測定し、そして抗トロンビンIII(ATIII)活性を、発色性アッセイにより、MDA凝固アナライザー(Organon Teknika; Durham, NC)上で測定し、そしてキット標準の%として表した。
【0120】
ELISAを用いて、血漿トロンビン−抗トロンビン(TAT)複合体(Dade Behring, Deerfield, IL)、及び血漿及びBALにおけるFVIIai (Novo Nordisk, Copenhagen) を測定した。血清サンプルを、ELISAキット(R and D Systems, Inc., Minneapolis, MN)を用いて、インターロイキン1β(IL−1β、IL−6、IL−8及びTNF受容体−1(TNFR−1))について分析した。血液尿窒素(BUN)及びクレアチニンを、標準の臨床学的技法により測定した。
【0121】
組織収集及び調製:実験の後、胸部を切開し、右の主幹部気管支を連結し、そして左の肺を除いた。BALを、240mlの0.9%塩溶液により右上方葉に対して行なった。右下部葉からの肺組織のサンプルを、手動的に膨張し、そして光顕微鏡及び免疫組織化学のために4%パラホルムアルデヒドに含浸した。4種のサンプルを、大きな血管及び気管支構造を回避するために注意しながら、湿/乾量決定のために左肺の残りからランダムに採取した。肺、腎臓、小腸、心臓及び副腎からの追加のサンプルを、液体窒素においてフラッシュ凍結し、そして−80℃で、ウェスターンブロット及び生化学研究のために貯蔵した。全右肺を、0.85Mのカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中、2%グルタルアルデヒドにより、30cmの固定圧力で15分間、膨張−固定した。腎臓、肺、小腸、心臓及び副腎からの追加の組織を、4%パラホルムアルデヒドへの含浸により固定した。小腸の4種のサンプルを、湿/乾量決定のためにランダムに選択した。
【0122】
生化学的測定:肺均質物及びタンパク質のミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性及びタンパク質濃度、及びBAL流体の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)濃度を、記載のようにして測定した(例えば、Carrawayなど., AM. J. Resp. Crit. Care 1998, 157: 938-949)。MPO活性を、吸光度/分/g湿量組織での変化として表した。
【0123】
ウェスターンブロット:肺サンプルを、冷溶解緩衝液(150mMのNaCl、50mMのトリス、pH7.6, 1% SDS、3% Nonidet P-40, 5mMのEDTA、1mMのMgCl2、2mMの1,3−ジクロロイソクマリン、2mMの1,10−フェナンスロリン及び0.4mMのE−54)において均質化し、そして15,000×gで10分間、遠心分離した。上清液を、Laemmli緩衝液と共に混合し、そして−80℃で凍結した。電気泳動を、12%ポリアクリルアミドゲルを用いて、還元条件下で行なった。
【0124】
レーンを、等量のタンパク質により負荷し、そして電気泳動を、Hoeferミニゲルシステム(Hoefer Scientific Instruments, San Francisco, CA)上で行なった。トランスファーの後、ブロットを、抗−TF mAb(マウス抗ヒト、American, Diagnostica, Greenwich, CT)及びHRP−接合された第2Ab(ヤギ抗−マウス、Transduction Laboratories, Lexington, KY)を用いて、TF発現のためにプローブした。シグナルを、ECL検出のために展開し、そしてブロットを市販のソフトウェア(Quantity One, Biorad, Hercules, CA)を用いて濃縮した。
【0125】
組織学及び免疫化学:パラホルムアルデヒド固定された組織を、パラフィンに包埋し、切片化し、そしてヘマトキシリン及びエオシン(H&E)により染色し、そして光顕微鏡により試験した。フィブリンについての免疫局在化を、肺、腎臓、副腎及び小腸のパラフィン切片上でのmAb(抗−ヒトフィブリノーゲンβ−鎖、American Diagnostica, Greenwich, CT)を用いて行なった。このAbはフィブリンと強く反応し、そしてフィブリノーゲンと弱く反応した。
【0126】
切片(5ミクロン)を、キシレンにおいて脱パラフィン化し、等級付けされたアルコールにおいて再水和化し、そして洗浄し、その後、抗−フィブリンAbと共に4℃で一晩インキュベートした。次に、切片を洗浄し、そしてビオチニル化された第2Abと共にインキュベートし、そしてシグナルを、ペルオキシダーゼ−接合されたアビジン及びアミノベンジンにより進行せしめた。負の対照を上記のようにして処理し、但し一次インキュベーションを、非免疫マウス血清(Jackson Laboratories, Bar Harbor, NE)と共に行なった。
【0127】
統計学:データを、コンピューター表計算に入力し、そして市販のソフトウェア(StatView, Calabasas, CA)を用いて分析した。生理学的データ及び一連の採血からのデータを、2−要素ANOVAにより分析した。実験の最後で得られたBAL及び組織からの生化学データを、不対t−検定を用いて分析した。平均±sem及びp値は図及び表に提供され;p<0.05は有意であるとして考慮され、そして傾向はp<0.10について示される。
【0128】
結果:
凝固及び炎症の両者を、致死用量の生存E.コリの注入の前、死亡細菌により活性化した。生存E.コリの投与の直前、動物は、TAT複合体の上昇と共に軽い凝固障害、低められた血小板、及び急性相応答と一致する高められたフィブリノーゲンを有した。炎症性メディエーターIL−6、IL−8及びTNFR−1が2〜10倍、高められた。それらの動物における生存細菌の注入は、集中的な肺損傷、腎機能不全、及び他の活発な器官、例えば肝臓、腸及び副腎への損傷を引き起こした。一定した注入としてのFVIIai静脈内投与は、凝固及び炎症のさらなる活性化を効果的に阻止し、器官損傷を妨げ、そして血管内及び血管外フィブリン沈着を低めた。
【0129】
フィブリンの組織沈着に対する効果は肺及び腎臓において最も著しく、ここでFVIIai処理された動物は、ビークル処理された敗血症対照に比較して、ガス交換及び腎不全において著しい改良性を示した。処理されていない敗血症対照動物は、FVIIaiにより予防された肺においてTFの強いアップ−レギュレーションを有した(p<0.05, 図1)。薬剤レベルを、血漿及びBALにおいて測定し、そして肺胞区画中へのFVIIaiの挿入を示し、ここでBAL流体におけるレベルは、実験の最後で194.2±34.7ng/mgタンパク質であった。血漿レベルは表3に示される。それらの動物におけるFVIIai処理による肺及び腎臓保護の分析は、下記に提供される。
【0130】
敗血症における急性肺損傷:FVIIai処理は、敗血症−誘発された低酸素血症、肺高血圧、及び肺システムコンプライアンスの損傷を妨げた。それらの生理学的データは、図2に示され、薬剤効果を示すために、t=12からの変化としてプロットされた。初期の処理されていない動物(n=11)、及びTFPIにより処理された2匹の敗血症動物からの組織学的データは、単なる比較のためにグラフ上に形破線として示される(データは統計学的分析には包含されない)。肺胞動脈酸素グラジエント(AaDO2)は、殺された細菌の注入の後、両グループにおいて上昇し、そしてt=12時での生存細菌敗血症の開始の後、敗血症対照グループにおいては、連続的に悪化した。敗血症対照における1匹の動物は、補充酸素を必要とした。
【0131】
FVIIaiによる処理は、敗血症の間、ガス交換における悪化を妨げ(p<0.0001)、そして最終AaDO2は、12時に比較して、それらの動物において実際、改良した。平均肺動脈圧(PAM)及び肺血管抵抗性kg (PVR*kg)における敗血症−誘発された上昇は、FVIIaiにより弱められた(p<0.001及びp<0.02対、処理されていない敗血症対照)。FVIIaiはまた、敗血症対照動物に見られる肺システムコンプライアンスの損失を妨げた(p<0.001)。デットスペースは同様に上昇し、そして両グループは、実験の間、30〜35%の少々の換気(Vg)の上昇を必要とした(表3)。PaCO2は、両グループにおいて40mmHgで制御された(VE及びPaCO2の両者に関してp=NS)。
【0132】
後−モーテム(mortem)で、FVIIaiにより処理された動物の肺は、正常に見え、損傷されていない換気された動物からの肺に類似した。対照的に、敗血症対照動物からの肺は、濃密且つ出血性であった。肺湿/乾量での定量的測定、好中球(PMN)蓄積、及び洗浄LDHは、処理されたグループにおいてすべて改良された(図3)。肺湿/乾量は、FVIIai処理された動物における5.05±0.09に比較して、敗血症対照においては5.81±0.19であった(p<0.01l, 通常のリファレンスレンジは4.6−5.0である)。BAL LDHはほとんど60%(p<0.01)低下し、そして肺MPO活性は40%以上(p=0.07)低められた。BALタンパク質は、2種のグループ間で有意に異ならなかった。
【0133】
肺組織学は、FVIIaiにより処理された敗血症動物において著しい保護性を示した。肺の代表的な切片が抗−フィブリン抗体により染色された。敗血症対照動物の肺は肥厚化された肺胞隔壁、不統一の肺胞水腫及び出血、及びマクロファージ及びPMNによる肺胞内炎症細胞侵入を有する。抗−フィブリン染色は、肺胞内炎症細胞上の隔壁にそって及び肺胞流体において広範囲の拡散フィブリン沈着を示した。肺におけるいくらかの小血管は、フィブリン凝固物を含んだ。処理された動物の肺は、正常な肺胞隔壁構造、最少の肺胞PMN侵入を有し、そして肺胞水腫を有さなかった。それらの動物においては、隔壁のフィブリン染色は均質であり、そして敗血症対照においては、それほど大規模ではなかった。処理された動物においては、フィブリン染色は時折り、小血管を取り囲む領域に制限されたが、しかしながら、血管内フィブリン凝固物は見られなかった。肺胞マクロファージ及び血管内単球は局部的に染色された。
【0134】
敗血症における腎及び他の器官損傷:FVIIaiはまた、敗血症における腎不全を妨げた(図4)。血清クレアチニンは、敗血症対照グループにおいて倍増したが、しかし処理グループにおいては正常のままであった(p=0.05)。処理されていない動物においては、生存E.コリの注入の後、尿生産量において対応する低下が存在した。対照的に、尿生産量は、処理グループにおいては、維持されるか又は高められた(p<0.0001)。これは、バランス(図4)及び全身性血液力学(表3)が2種のグループにおいて類似しているために、回復における差異のためではなかった。血液pH及び血清[HCO3 -]は、処理されていない動物においては低かった(それぞれ、p<0.001及びp<0.1, 図4)。
【0135】
処理されていない動物殻の腎臓は、後モーテム(mortem)で膨張し、そして出血したが、しかしFVIIai処理された動物においては正常に見えた。処理されていない動物の腎臓のH&E染色された切片は、急性管状壊死(ATN)の不統一の領域及び糸球体の損失を有した。ATNの少数の病巣を除いて、処理された動物の腎臓は、正常な腎構造を示した。免疫染色は、毛細管構造の閉塞を有する敗血症対照動物の糸球体にフィブリン沈着を示した。管状上皮がまた染色し、そしていくつかの管は、フィブリンに関してもまた陽性である非晶性材量を含んだ。フィブリン凝固物により閉塞された血管が容易に同定された。処理された動物においては、糸球体フィブリン沈着は不在であり、そして最少の管状上皮染色が少数の動物のみに見出された。
【0136】
副腎、肝臓及び小腸の外観はまた、FVIIai処理された動物においては正常であった。対照的に、処理されていない動物からの副腎は膨張し、且つ出血性であり、そして小腸は全体的に水腫性であった。小腸の湿/乾量は、処理されていない動物においては高かったが、しかし腸損傷における高い変動性は、統計学的差異をグループ間で達成することは不可能であった(処理された動物において6.36±0.51−対−処理されていない動物において8.30±1.13、p=0.15)。
【0137】
肺及び腎臓における低められたフィブリン染色に比較して、集中的なフィブリン沈着が処理された及び処理されていない動物の両者における副腎及び小腸に見出された。これにもかかわらず、副腎皮質うっ血及び出血、及び小腸出血及び水腫は、FVIIaiにより処理された敗血症動物においては減じられた。肺以外の器官においてPMN含有率に対するFVIIaiの統計学的に有意な効果は存在しなかった。腎臓、肝臓及び小腸におけるMPO活性は、対照動物においては種々であり、そして差異は2種のグループ間で統計学的に有意ではなかった。
【0138】
敗血症−誘発された凝固障害:凝固の血管内活性化は、対照に比較して、FVIIaiにより処理された敗血症動物においては低められた(図5)。凝固パラメーターの初期値は、この種に関しては正常な範囲内であった。薬剤処理は、凝固の治療的遮断により予測されるよに、血漿フィブリノーゲン消耗を妨げた(p<0.0001)。TAT複合体は、生存E.コリ投与の後、敗血症対照においては高上し、13−18時間でピークに達し、そして次に、AT III活性レベルが低下するにつれて、低下した。
【0139】
TAT複合体の上昇は処理された動物においては弱められたが(p<0.001)、しかしながらAT III活性の低下は統計学的には異ならなかった。TATレベルは処理されていない敗血症動物における実験においては、後期で低下したが、凝固はそれらのヒヒにおいては進行した。aPPTは両グループにおいて連続的に上昇したが、しかし処理されていない動物においてはより高かった(p<0.01)。PTは、アッセイに対する薬剤効果のために、処理グループにおいては高く、薬剤注入の期間、53〜67秒であった(p<0.0001)。処理されていないグループにおいては、PTは、12時間での17.8±0.4(生存E.コリが注入される前)から、実験の最後での25.5±3.6に連続的に上昇した。
【0140】
両グループの動物は、生存E.コリの注入の後、好中球減少、栓球減少及び貧血を進行した(表3を参照のこと)。WBCは、注入の1時間後(t=13時間)、両グループにおいて約1,500 (×103/μl)の底に達し、そして実験の最後までに、ほぼ基線レベルに連続的に上昇した(処理された動物における9,400±1,800−対−処理されていない動物における13,000±3.900、p=0.08)。すべての動物は、生存E.コリの注入の12時間後までに(t=24時間)、栓球減少性であり、そして平均血小板計数は、実験の最後で、両グループにおいて30,000又はそれ以下であった。Hgbは、いずれかにおいても有意な出血の形跡も伴なわないで、両グループにおいて類似して低下した(表3)。
【0141】
前炎症性サイトカインレベル:炎症性サイトカインの上昇は、FVIIaiによる処理により弱められた(図6)。IL−1β、IL−6、IL−8及びTNFR−1の循環レベルは、処理された及び処理されていない動物において、生存E.コリの注入の後、鋭く上昇した。ピークIL−6レベルは2種のグループ間で異ならなかったが、しかしIL−6はFVIIai処理された動物においてより急速に低下し(p<0.001)、そして天然の動物に見出されるレベルに戻った。同様に、IL−8及びTNFR−1レベルは、対照に比較して、弱められた(p<0.01及びp<0.001)。2種のグループ間でIL−8レベルの差異は存在しなかった。
【0142】
全身性血液力学的パラメーター:血液力学測定、例えばHR, MAP, PCWP, CO/kg及び全身性血管抵抗*kg (SVR*kg)を、FVIIaiによる処理により変更した(表3)。低血圧は量グループにおいてIV流体に応答し;処理グループにおける1匹の動物は、生存細菌が注入された直後、低用量のドーパミンを必要とした。12匹の動物のうち10匹は、プロトコールの予定された終結点まで、生存した。
【0143】
1匹の敗血症対照動物は、難治性低酸素血症及び呼吸アシドーシスを伴なって、ALIから30時間(生存細菌注入の18時間後)で死亡し、そしてFVIIai処理グループにおける1匹の動物は、気管内挿管の合併症から、研究の最終前に死亡した。個々のグループにおける2匹の動物は、実験の間、自己制限された血尿を進行し、そしてFVIIai処理グループにおける1匹の動物は後−モーテムで、気管支中間において凝固物を有した。2種のグループにおけるほとんどの動物は、研究におけるいくつかの点で吸引に関連するいくらかの血液混合の分泌を有した。重度の又は生命−脅威の出血性合併症は、いずれのグループにおいても存在しなかった。
【0144】
TFPI注入後の肺及び腎損傷:すべてのE.コリ敗血症に対するTF遮断の効果を確かめるために、2匹のヒヒを、同じ実験プロトコールに基づいてTFPIにより処理した。凝固の活性化が、血漿フィブリノーゲンレベルにおける類似する改良性を伴なって、TFPI注入の後、敗血症において阻止された。それらの動物における最終フィブリノーゲンレベル(t=48時間)は、12時間の値の75%及び95%であった。TFPIは全身性血液力学的パラメーターを変更しなかった。ガス交換及び肺機構は、両動物において保護された(図2を参照のこと)。TFPI後の肺組織の組織病理学及びフィブリン免疫染色は、肺における低められた炎症細胞浸出物、低められた融壁肥大化、及び低められたフィブリン沈着を示した。FVIIai処理されたグループにおけるように、腎構造は正常であり、そして腎臓におけるフィブリン染色は、TFPIの後、不在であった。
【0145】
【表3】
【0146】
表3:敗血症対照及びFVIIai処理された敗血症グループにおける全身性測定。熱−殺害された細菌を、t=0時間で注入し、そして生存細胞をt=12時間で注入した。データは、平均±semとして示され、そして2−要素ANOVAにより分析した。処理されたグループにおけるFVIIai薬剤レベルは、ng/ml血漿において示される。略語:Temp(温度、℃)、Hgb(ヘモグロビン)、VE(少々の換気、L/分)、HR(心拍数)、MAP(平均動脈圧、mmHg)、CO(心臓出力、L/分)、DO2(酸素供給、mL/分)、VO2(酸素消費、mL/分)、SVR(全身性血管抵抗、ダイン×cm×kg/10)、PCWP(肺毛細管楔入圧、mmHg)。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】図1.E.コリ敗血症における組織因子(TF)発現。ウェスターンブロット(A)は、FVIIaiによる処理により妨げられた正常ヒヒ肺に比較して、敗血症対照動物の肺における高められたTF発現を示した。TFPIにより処理された2匹の動物のうち1匹は、TF発現における変化を有さなかった。代表的なブロットが示される。(B)濃度計測が、敗血症対照及びFVIIai処理されたグループに対して行なわれ、そして非敗血症の正常対照動物の平均に標準化され、2種の実験グループにおいてN=6及び正常対照に関してはN=3である。示されるデータは平均±semである(* p<0.05対正常対照、δ p<0.05対敗血症対照)。
【図2】図2.敗血症−誘発された肺損傷は、FVIIaiにより妨げられた。データは、薬剤効果を示すために、t=12時間からの変化として示される。グラフはまた、TFPIにより処理された2匹の動物からのデータ、及びこの実験からの敗血症対照からの累積データを示す。−●―敗血症グループ(n=6)、−(白円)−敗血症+FVIIai(n=6)、-----‐累積敗血症対処(n=11)、− − − −敗血症+TFPI(n=2)。PVIIaiは、(A)高められた動脈−肺胞酸素グラジエント(AaDO2, p<0.0001)、(B)肺システムコンプライアンスの低下(Cs, p<0.001)、(C)平均肺動脈圧の上昇(PAM, p<0.001)及び(D)肺血管抵抗性(PVR, p<0.05)を妨げた。
【図3】図3.FVIIai処理は肺炎症を低めた。肺MPO活性及びBAL LDHは、敗血症対照に比較して、処理された動物において低められた(Φ p=0.07及び* p<0.01)。2種のグループ間でBALタンパク質に差異は存在しなかった。データは、平均±semとして示され、そしてt−件さを用いて分析された。
【図4】図4.敗血症−誘発された損傷の腎及び代謝インデックスは、FVIIai処理された動物において改良された。(A)血清[HCO3]は、FVIIai処理された敗血症動物において高かった(p<0.01)。(B)血清クレアチニンは、敗血症対照グループにおいて上昇したが、しかしFVIIaiにより処理された敗血症グループにおいてはそうではなかった。(C)及び(D)は、2種のグループにおける類似する流体バランス(iv. 流体−尿生産量)を示すが、しかしFVIIaiにより処理された動物においては、敗血症の間、より高い尿生産量を示す(p<0.0001)。データは、平均±semとして示され、そして2−要素ANOVAを用いて分析された。−●−敗血症対照グループ(n=6)、−(白円)−敗血症+FVIIai(n=6)。
【図5】図5.FVIIaiは、敗血症−誘発された凝固障害を弱めた。(A)敗血症は、FVIIaiにより処理された動物において低められたPTTの前進性延長を引き起こした(p<0.01)。フィブリノーゲン消耗(B)及びTAT複合体の上昇(C)は、処理グループにおいて弱められた、両者に関して、p<0.0001。ATIII活性(D)は、両グループにおいて低められたキット標準の%として示されるが、しかし差異は統計学的有意性に達しなかった。データは、平均±semとして示され、そして2−要素ANOVAを用いて分析された。−●−敗血症対照グループ(n=6)、−(白円)−敗血症+FVIIai(n=6)。
【図6】図6.敗血症における炎症性サイトカインは、FVIIaiにより弱められた。データは、平均±semとして示され、そして2−要素ANOVAを用いて分析された。−●−敗血症対照グループ(n=6)、−(白円)−敗血症+FVIIai(n=6)。敗血症−誘発された、IL−6(A)、IL−8(B)及びTNFR−1(D)レベルの上昇はすべて、FVIIaiによる処理により弱められた、すべてに関して、p<0.001。IL−1βレベル(C)は、TF遮断により変更されなかった。
【0001】
本発明は、急性肺損傷(Acute Lung Injury)(AIL)及び急性窮迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome)(ARDS)の処理のための薬剤の製造のためへの修飾されたFVIIの使用、及びALI及びARDSの処理方法に関する。本発明はまた、ALI又はARDSに関連する慢性器官不全(chronic organ failure)を妨げるか又は最小にし、そしてそのような慢性器官不全を妨げるか又は最小にするための薬剤の製造のためへの修飾されたFVIIの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
急性呼吸窮迫症候群(“ARDS”)は、例えば外傷患者において進行することができる全身性炎症応答症候群(systemic inflammatory response syndrome)(SIRS)の表示である。前記症候群は、全身性メディエーター放出及び内皮の一般化された活性化により特徴づけられ、結果的に、多発性器官機能不全症候群を誘導する急性疾患である。感染性傷害(例えば、敗血症)及び非感染性病理学的原因(例えば、外傷及び組織損傷)は、SIRSを生成し、そしてARDSを明示する。ARDSは“臨床学的及び生理学的な異常性の型に関連する炎症及び高められた透過性の症候群”として記載されている(Am-European Consensus from 1994)。
【0003】
それは、急性疾患又は損傷、例えば敗血症、肺炎、呼吸、虚血症(循環停止、出血性ショック)、外傷及び他の疾病に合併症として進行する。ARDSを有する患者においては、肺の毛細血管性、間隙性及び肺胞性空間が、フィブリン沈着のための主要標的物である。これは主に、肺の大きな表面積(70m2)及び全心臓出力を受けるための肺毛細血管の位置のためである。しかしながら、破壊的な微血栓形成が、複数の器官、例えば最も暴露されるような肺及び腎臓において生じ、ここで多発性器官不全(MOF)の進行を導くことができる。さらに、炎症性応答はまた、肺水腫を引き起こす肺の肺胞空間中への血漿タンパク質の血管漏出をもたらす。
【0004】
ARDSの顕著な特徴は、透過性水腫の結果としての血液酸素付加及び呼吸系合併症における悪化である。種々の異なった傷害がARDSに導くことができるが、通常の経路はたぶん、酸素遊離基、アラキドン酸代謝物及び炎症性メディエイター、例えばインターロイキン−1、プロテアーゼの放出と共に、肺損傷及び/又は不全、肺内の白血球活性化をもたらし、そして腫瘍壊死因子は肺胞毛細血管膜透過性をもたらす。この高分子バリヤーの損失により、肺胞は、肺界面活性物質の機能を損なう血清タンパク質により満たされる(Saidなど., J. Clin. Invest. 44: 458-464; Holmなど., J. Appl. Physiol. 63: 1434-1442, 1987)。これは、病状をさらに悪化する静水力を創造し(Jefferiesなど., J. Appl. Physiol. 64: 5620-5628, 1988)、肺胞水腫、及びガス交換及び肺合併症における付随する悪化を導く。
【0005】
ARDS医療及び手術患者の両者に影響を及ぼす。この症候群はしばしば、進行性であり、異なった臨床学的、組織病理学的及びX線写真表示を伴なっての明白な段階により特徴づけられる。急性又は滲出性相は、病状についての免疫因子を有する患者における呼吸不全の急速な開始により表される。供給酸素による処理に対して抵抗力がある動脈性低酸素症は、特徴的な性質である。放射線的には、その発見は、心臓発生肺水腫の発見とは区別できない。両側の浸潤物は不調和又は非対称であり、そして胸膜滲出を包含することができる。肺胞充填、硬化及び無気肺は主に、依存性肺領域において生じ、そして他の領域は比較的そのままである。しかしながら、さらに空の非依存性領域は実質的な炎症を有する。病理学的発見は、好中球、マクロファージ、赤血球硝子膜に関する拡散性肺胞損傷、及び肺胞空間におけるタンパク質に富んでいる水腫、毛細管損傷、及び肺胞上皮の破壊を包含する。
【0006】
急性肺損傷及びARDSは、急性相の後、何人かの患者においては完全に解決することができるが、他においては、それは永続的な低酸素症、高められた肺胞デッドスペース、及び肺胞又は肺合併症のさらなる低下と共に、繊維性肺胞炎に進行する。肺高血圧は、肺−毛細管層の遮断のために、重度であり、そして右心室不全を導くことができる。ARDSから助かるほとんどの患者においては、肺機能は、肺の重度の損傷にもかかわらず、6〜12ヶ月以内にほぼ正常に戻る。肺機能の残留障害は、軽い拘束、閉塞、一酸化炭素についての拡散能力の傷害、又は運動を伴なってのガス交換異常性を包含するが、しかしそれらの異常性は通常、非症状性である。重度の疾病及び延長された機械的換気は、肺機能の永続的異常性についての高い危険性での患者を同定する。その疾病を生き延びるそれらの患者は、生命の低められた健康関連性質、及び生命の肺疾患−特異的健康関連性質を有する。
【0007】
ALI及びARDSのほとんどの研究は、40〜60%の死亡率を報告している。低い増減体積による換気の最近の治療成功は、ある場合、死が肺損傷に直接的に関連することを示すが、大部分の死は、主要な呼吸原因よりもむしろ敗血症又は多器官不全に寄与することができる。
【0008】
1988年、正の及び呼吸圧力のレベル、吸入される酸素の割合に対する動脈酸素の部分圧の割合、静止肺コンプライアンス、及び胸部X線写真に基づいての浸潤現象の程度に基づいての4点肺−損傷評点システムの使用を通して生理学的呼吸損傷を定量化する症候群の拡張された定義が提案された。その評価に包含される他の因子は、刺激性臨床学的障害及び非肺器官不全の存在又は不在である。
【0009】
1994年、新しい定義がAmerican-European Consensus Conference Committeeにより推薦された:第1に、臨床学的肺損傷の重度が変化し、低い重症度の低酸素症を有する患者(300又はそれ以下の吸入される酸素の割合に対する動脈酸素の部分圧の割合により定義されるような)は、ALIを有するものとして見なされ、そしてより重度の低酸素症を有するそれらの患者(200又はそれ以下の割合により定義されるような)はARDSを有するものとして見出される。第2に、その定義は、臨床学的設定に提供するために簡単である。1994年のコンセンサス定義及び1988年の肺−損傷評点システムの両者の広い許容性が、臨床学的調査及び試験の標準化を改良してきた。
【0010】
結果的に、急性肺損傷(ALI)は、次の基準により定義される(Bernardなど., Am. J. Respir. Crit. Care Med 149: 818-24, 1994):
−急性開始、
−胸部X線撮影に基づく両側の浸潤物、
−肺−動脈ウェッジ圧力は、18mmHg以下であるか、又は左動脈高血圧の臨床学的現象の不在であり、
−PaO2:FiO2は300以下である。
−ARDSは、次の基準に定義される(Bernardなど., Am. J. Respir. Crit. Care Med 149: 818-24, 1994):
【0011】
−急性開始、
−胸部X線撮影に基づく両側の浸潤物、
−肺−動脈ウェッジ圧力は、18mmHg以下であるか、又は左動脈高血圧の臨床学的現象の不在であり、
−PaO2:FiO2は200以下である。
(PaO2は、動脈酸素の部分圧、及び吸入される酸素のFiO2画分を示す)
ARDSは、肺への直接的な損傷に関連する臨床学的障害、及び全身性工程の設定において間接的な肺損傷を引き起こすそれらの障害により誘発され得る(表1を参照のこと):
【0012】
ARDS の進行に関連する臨床学的障害:
【表1】
【0013】
全体的に、敗血症は、ARDSへの進行の最高の危険性に40%関連する。
炎症がいかに調節されるかを変更する疾病、例えば敗血症は、宿主防御の適切な及び/又は過剰の刺激のために重度のALIを引き起こす。炎症の間、付随的な凝固経路のいくつかの成分、例えば組織因子(TF)、活性化された第VII因子(FVIIa)及び第X因子(FXa)、及びトロンビンが、組織応答を調節するためにキー炎症メディエーターと相互反応する。凝固の活性化は、血管空間における前凝固環境の進行による内毒素又は細菌の注入の後、急速に生じる。
【0014】
それらの変化は、TF依存性であり、そして炎症性サイトカインの上昇に関連している。同様に、肺においては、前凝固状態は、内毒素の注入の後、動物においては、又は実験ALIにより測定されて来た。類似する前凝固環境は、ARDSを有する患者の細気管支肺胞洗浄(BAL)において見出されており、血管外肺炎症がまた、付随的な経路を活性化することを示す。炎症メディエーターは凝固に対して特定の効果を有するが、炎症応答における調節因子としての凝固におけるTF及び関連する現象の役割の逆の関係は、ほとんど十分には理解されていない。
【0015】
ALI又はARDSの処理において有用な医薬についての必要性が当業界に存在する。本発明者は、修飾されたFVIIが急性肺損傷の進行の間、炎症及び凝固障害応答の両者を弱め、そして確立されたALI又はARDSを有する対象における修飾されたFVIIによる凝固の封鎖が肺及び腎損傷を弱め、そして肺及び腎機能を保護することを見出した。他の組織もまた保護された。確立された急性肺損傷のモデルにおける修飾されたFVIIによるTF/FVIIa活性の阻止は、有意且つ劇的に生存性を延長し、そして炎症及び凝固障害応答を弱めた。これは、肺、腎臓及び他の器官におけるフィブリン沈着の実質的な保護、器官機能の保存、及びIL−6及びIL−8放出の有意な弱体化を示すデータにより明白にされた。
【0016】
引用される技術:
国際出願番号WO92/15686号は、修飾された第VIIa因子、前記因子の生成のためのポリ核酸及び哺乳類細胞系、及び血液凝固を阻害するための修飾された第VIIa因子を含んで成る組成物に関する。
国際出願番号94/27631号は、血管再狭窄、組織因子活性及び血小板沈着を阻害するための方法に関する。
国際出願番号WO96/12800号は、組織プラスミノーゲン活性化因子又はストレプトキナーゼと共に、修飾された第VIIa因子を含んで成る組成物を個人に投与することを含んで成る、冠状動脈の急性閉鎖の処理方法に関する。
【0017】
Millerなど., FASEB Jaurnal 15 (4), A497, 7March 2001: FVIIaの競争阻害は、肺損傷、及び気管支内リポ多糖の前炎症サイトカイン放出を弱める。
Welty−Wolfなど., American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 158 (2), 61-, 1998:細菌プライミングはグラム陰性敗血症における肺損傷を高める。
Carrawayなど., American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 157 (3), 938, 1998: E-及びL−選択に対する抗体は、敗血性ヒヒにおいて肺損傷又は死亡率を妨げない。
Taylorなど., Critical Care Medicine 2000, 28 (9), 512:静脈内及び腹腔内E.コリ敗血症のヒヒモデル及び内毒血症のヒトモデルの説明;DICの良好な定義。
Bajajなど., Thrombosis and Haemostasis 78 (1), 471, 1997: TFPI;可能性ある治療への適用。
【0018】
Gandoなど., The Journal of Trauma : Jurry, Infection and Critical Care 47 (4), 719, 1999:進行性ARDSにおけるTF依存性凝固経路の組織的活性化及び外傷及び敗血症を有する患者。
Taylorなど., Haemostasis 1996, 26 (Suppl.1), 83: ヒヒにおけるLD100 E. コリに対する凝固及び炎症応答におけるTF及びFVIIaの役割。
Welty−Wolfなど., Abstract Preciew from ATS 200a, 2001年4月、ATSウェブページで入手できる:付随的な凝集封鎖は、E.コリ敗血症を有するヒヒにおける炎症性サイトカインレベル及び肺損傷を弱める。
【発明の開示】
【0019】
1つの観点においては、本発明は、ヒトにおける急性肺損傷(ALI)又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の処理のための薬剤の製造のための修飾された第VII因子の使用を提供する。
1つの態様においては、本発明は、ヒトにおける急性肺損傷(ALI)又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に関連する症候及び病状の処理のための薬剤の製造のための修飾された第VII因子の使用を提供する。
1つの態様においては、前記薬剤は、器官不全の処理のためである。
1つ態様においては、前記薬剤は、追加の器官の不全を妨げるためである。
【0020】
1つの態様においては、前記薬剤は、器官機能を維持するか又は改良するためである。1つの態様においては、前記薬剤は、肺高血圧の処理のためである。1つの態様においては、前記薬剤は、前凝固活性を低めるか又は最小にするためである。その1つの態様においては、前記前凝固活性は、肺上皮細胞及び組織マクロファージによる組織因子発現に関連している。1つの態様においては、前記薬剤は、炎症を低めるか又は最小にするためである。1つの態様においては、前記薬剤は、IL−6及びIL−8の生成を低めるか又は最小にするためである。1つの態様においては、前記薬剤は、肺ガス交換を改良するためである。1つの態様においては、前記薬剤は、肺水腫を低めるか又は最小にするためである。1つの態様においては、前記薬剤は、肺タンパク質漏出を低めるか又は最小にするためである。
【0021】
もう1つの観点においては、本発明は、ヒトにおけるALI又はARDSに関連する慢性器官不全を妨げるか又は最小にするための薬剤の製造のための修飾された第VII因子の使用を提供する。1つの態様においては、前記ALI又はARDSは、修飾されたFVIIが投与される前、確立されている。
本発明の1つの態様においては、前記器官が、腎臓、肺、副腎、肝臓、小腸、心血管系又は止血系である。1つの態様においては、前記器官は肺である。1つの態様においては、前記器官の腎臓である。1つの態様においては、前記器官は、心血管系である。1つの態様においては、前記器官は止血系である。
【0022】
1つの観点に置いては、本発明は、ヒトにおける急性肺損傷(ALI)又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の処理方法を提供し、ここで前記方法は治療的有効量の修飾されたFVIIを、そのような処理の必要な対象に投与することを含んで成る。
本発明の異なった態様においては、前記方法は、器官不全を処理し、追加の器官の不全を妨げ、肺高血圧を処理し、前凝固活性を低めるか又は最小にし、炎症を低めるか又は最小にし、IL−6及びIL−8の生成を低めるか又は最小にし、肺ガス交換を改良し、肺水腫を低めるか又は最小にし、そして肺タンパク質漏出を低めるか又は最小にするためである。
【0023】
1つの観点においては、ヒトにおけるALI又はARDSに関連する慢性器官不全を妨げるか又は最小にするための方法を提供し、ここで前記方法は、治療的有効量の修飾されたFVIIを、そのような処理を必要とする対象に投与することを含んで成る。1つの態様においては、前記ALI又はARDSは、修飾されたFVIIが投与される前、確立されている。
【0024】
もう1つの観点においては、本発明は、肺不全の処理のための薬剤の製造のためのFVIIaiの使用を提供する。1つの態様においては、前記肺損傷は、急性肺損傷(ALI)である。1つの態様いおいては、前記肺損傷は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である。1つの態様においては、肺損傷の処理は、ARDSへの進行からALIを防げる。さらなる観点においては、本発明は、確立されたALI又はARDSにおける追加の肺損傷を保護するための薬剤のためのFVIaiの使用を提供する。さらなる観点においては、本発明は、確立されたALI及びARDSにおける肺機能を維持するか又は改良するための薬剤の製造のためのFVIIaiの使用を提供する。
【0025】
1つの観点においては、本発明は、対象における肺損傷を処理するための方法を提供し、ここで前記方法は、そのような処理の必要な対象に医薬的有効量のFVIIaiを投与することを含んで成る。1つの態様においては、肺損傷は急性肺損傷(ALI)である。1つの態様においては、肺損傷は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である。1つの態様においては、肺損傷の処理は、ARDDSへの進行からALIを妨げる。さらなる観点においては、本発明は確立れたALI又はARDSを有する対照における追加の肺損傷に対する保護方法を提供し、ここで前記方法は、そのような処理の必要な対象に、治療的有効量のFVIIaiを投与することを含んで成る。
【0026】
さらなる観点においては、本発明は、確立されたALI又はARDSを有する対象おける肺機能を維持するか又は改良するための方法を提供し、ここで前記方法は、そのような処理の必要な対象に、治療的有効量のFVIIaiを投与することを含んで成る。1つのさらなる観点においては、本発明は、肺高血圧の処理のための薬剤の製造のためへの修飾されたFVIIの使用を提供する。もう1つの観点においては、本発明は、対象における肺高血圧の処理方法を提供し、ここで前記方法は、そのような処理の必要な対象に、治療的有効量の修飾されたFVIIを投与することを含んで成る。1つの態様においては、前記肺高血圧は急性肺損傷(ALI)に関連し;もう1つの態様においては、肺高血圧は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に関する。
【0027】
もう1つの観点においては、本発明は、肺における前凝集活性を低めるか又は阻害するための薬剤の製造のためへの修飾されたFVIIの使用を提供する。もう1つの観点においては、本発明は、対象の肺における前凝集活性を低めるか又は阻害するための方法を提供し、ここで前記方法は、そのような処理の必要な対象に、治療的有効量の修飾されたFVIIを投与することを含んで成る。1つの態様においては、前記前凝集活性は、肺上皮細胞及び組織マクロファージによる組織因子発現に関する。1つの観点においては、本発明は、血管外フィブリン沈着を低めるか又は阻害するための薬剤の製造のためへの修飾されたFVIIの使用を提供する。
【0028】
もう1つの観点においては、本発明は対象における血管外フィブリン沈着を低めるか又は阻害のするための方法を提供し、ここで前記方法は、そのような処理の必用な対象に、治療的有効量の修飾されたFVIIを投与することを含んで成る。1つの態様においては、前記血管外フィブリン沈着は、肺における沈着である。1つの態様においては、血管外フィブリン沈着は、器官損傷の間の沈着である。1つの観点においては、本発明は、肺炎症を低めるか又は阻害するための薬剤の製造のためへの修飾されたFVIIの使用を提供する。もう1つの観点においては、本発明は対象における肺炎症を低めるか又は阻害するための方法を提供し、ここで前記方法は、そのような処理の必要な対象に、治療的有効量の修飾されたFVIIを投与することを含んで成る。
【0029】
本発明の1つの態様においては、前記修飾されたFVIIは、触媒三元体において少なくとも1つのアミノ酸残基置換、挿入又は欠失を有するFVIIである。1つの態様においては、前記修飾されたFVIIは、位置Ser344、Asp242及びHis193において少なくとも1つのアミノ酸残基置換、挿入又は欠失を有するFVIIである(位置は、アメリカ特許4,784,950号に記載のような野生型ヒトFVIIの配列を言及する)。1つの態様においては、前記活性部位残基Ser344が修飾され、すなわちGly、 Met、 Thr, 又はより好ましくはAlaにより置換される。1つの態様においては、前記修飾されたFVIIが、セリンプロテアーゼインヒビターとの反応により修飾されたFVIIaである。
【0030】
1つの態様においては、前記プロテアーゼインヒビターは、有機リン化合物、弗化スルファニル、ペプチドハロメチルケトン又はアザペプチドである。1つの態様においては、前記プロテアーゼインヒビターは、ダンシル−L−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、ダンシル−L−Glu−Gly−Argクロロメチルケトン、ダンシル−L−Phe−Phe−Argクロロメチルケトン、L−Phe−Phe−Argクロロメチルケトン、ダンシル−D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、ダンシル−D−Glu−Gly−Argクロロメチルケトン、ダンシル−D−Phe−Phe−Argクロロメチルケトン及びD−Phe−Phe−Argクロロメチルケトンから選択されたペプチドハロメチルケトンである。
【0031】
1つの態様においては、修飾された第VII因子は、その態様する種の野生型第II因子の触媒活性の約5%以下、より好ましくは約1%以下の活性を有する。
1つの態様においては、本発明は、ヒトにおける確立された急性肺損傷(ALI)又は確立された急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の処理のための薬剤の製造のための修飾された第VII因子の使用を提供する。
1つの態様においては、前記修飾されたFVIIは、1又は複数回のボーラス注射として投与される。
1つの態様においては、修飾されたFVIIは、70kgの体重当たり、約0.05mg〜500mg/日;1mg〜200mg/日;1mg〜約150mg/日;1mg〜約125mg/日;1mg〜約100mg/日;10mg〜約175mg/日;10mg〜約150mg/日;又は10mg〜約125mg/日の量で投与される。
【0032】
1つの態様においては、修飾されたFVIIは、複数回のiv注射により投与される。
1つの態様においては、修飾されたFVIIは、100μg/kg×1、100μg/kg×2、100μg/kg×4、200μg/kg×1、200μg/kg×2、200μg/kg×4、400μg/kg×1、400μg/kg×2、400μg/kg×4、800μg/kg×1、又は800μg/kg×2の1日(24時間)当たりの用量で投与される。その1つの態様においては、修飾されたFVIIは、1日間、患者に投与され;他の態様においては、修飾されたVIIは、2日間、患者に投与され;他の態様においては、修飾されたFVIIは、3日間、患者に投与される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
略語:
AaDO2:動脈−肺胞酸素グラジエント
APTT :活性化された部分的トロンボプラスチン時間
ALL :急性肺損傷
APC :活性化されたタンパク質C
ARDS :急性呼吸窮迫症候群
ASIS :FFR−rFVIIa
BAL :気管支肺胞洗浄
BUN :血液尿窒素
【0034】
BW :体重
CO :心臓出力、L/分
Cs :肺システムコンプライアンスにおける低下
DO2 :酸素供給、mL/分
DVT :深部静脈血栓症
F1-2 :フィブリノーゲンフラグメント1及び2
FiO2 :吸入される酸素画分
FFR :D−フェニルアラニル−L−フェニルアラニル−L−アルギニル−トリペプチド
FFR-rFVIIa:FFR−不活性化されたrFVIIa
FPA :フィブリノペプチドA
【0035】
FVII :ヒト凝固第VII因子
FVIIa:ヒト活性化された凝固第VII因子
IL-1β:インターロイキン−1β
IL-6 :インターロイキン−6
IL-8 :インターロイキン−8
Kg :キログラム
LP5 :リポ多糖
MW :分子量
NIH :National Institute of Health
NOEL :効果レベルは観察されない
【0036】
PAM :平均肺動脈圧の上昇
PaO2 :動脈血液の酸素圧
PCWP :肺毛管ウェッジ圧力、mmHg
PT :プロトロンビン時間
PTCA :経皮トランスルミナー冠動脈形成
PVR :肺血管抵抗
RBC :赤血球細胞
rFVIIa :活性化された組換えヒト第VII因子
【0037】
SVR :全身性血管抵抗、色素×cm×kg/10
TAT :トロンビン−抗トロンビン複合体
TF :組織因子
TNFR-1:TNF受容体−1
TFPT :組織因子経路インヒビター
VO2 :酸素消費、mL/分
μg :μグラム
【0038】
用量“器官損傷”とは、構造体に対する損傷、及び/又は腎臓、肺、副腎、肝臓、腸、心血管系及び/又は止血系における器官の機能に対する損傷を包含するが、それだけには限定されない。器官損傷の例は、形態学的/構造的損傷、及び/又は器官の機能、例えば、タンパク質(例えば、界面活性剤)又は流体の肺クリアランス障害による蓄積、又は肺変化機構に対する損傷又は肺胞―毛細管膜損傷を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0039】
用語“器官外傷”、“器官損傷”及び“器官不全”とは、交換可能的に使用され得る。通常、器官損傷は、器官不全をもたらす。器官不全とは、ALI又はARDSを有さない個人におけるその対応する器官の平均的な正常機能に比較して、器官機能の低下を意味する。器官不全は、機能の少々の低下(例えば、正常の80〜90%)であり、又はそれは機能の主要な低下(正常の10〜20%)であり;その低下はまた、器官機能の完全な不全でもあり得る。器官不全は、例えば組織壊死、糸球体(腎臓)の損失、フィブリン沈着、出血、水腫又は炎症による低められた生物学的機能(例えば、尿生産量)を包含するが、但しこれだけには限定されない。器官損傷は、組織壊死、糸球体(腎臓損傷)の損失、フィブリン沈着、出血、水腫又は炎症を包含するが、但しこれだけには限定されない。
【0040】
用語“肺損傷”とは、例えば先天的な異常性又は後天的異常性による肺損傷、例えば自己免疫状態の開始、後−移植肺拒絶、炎症応答をもたらす感染、肺における圧力/体積関係の変化、外来性剤(例えば、タバコの煙又はダスト)、非毒性又は毒性剤(例えば溶媒又は発煙)への前記哺乳類の暴露、又は治療剤への暴露に起因する所望しない副作用による損傷を包含するが、但しそれらだけには限定されない。肺損傷の例は、形態学的/構造的損傷、及び/又は肺の機能、例えば肺クリアランス障害によるタンパク質(例えば、界面活性剤)又は流体の蓄積による損傷、又は肺変化機構による損傷又は肺胞−毛細管膜損傷を包含するが、但しそれらだけには限定されない。用語“肺外傷”、“肺損傷”及び“肺不全とは、交換可能的にしようされ得る。
【0041】
器官機能及び効率を試験するための方法、及びそのような試験のための適切な生化学又は臨床学的パラメーターは、当業者に良く知られている。
そのようなマーカー、又は器官機能の生化学的パラメーターは、例えば次の通りである:
呼吸 :PaO2/FiO2比
凝固 :血小板
肝臓 :ビリルビン
心血管 :血圧、及び昇圧処理のための必用性
腎 :クレアチニン及び尿生産量
【0042】
他の臨床学的評価は、ベンチレーターのない日、器官不全のない日、昇圧処理のない日、SOFA評点及び肺外傷評点評価、並びに生存微候を含んで成る。
凝固障害又は炎症を試験するための方法はまた、当業者に良く知られている。凝固又は炎症状態のそのようなマーカーは例えば、PTT、フィブリノーゲン消耗、TAT複合体の上昇、ATIII活性、IL−6、IL−8及びTNFR−1である。
【0043】
用語“慢性器官損傷”とは、ALI又はARDSを有することに起因する長期の損傷を包含するが、但しそれだけに限定されない。特に肺メカニックのこの残る障害は、一酸化炭素についての拡散能力の軽い制限、阻害、障害、又は運動によるガス交換異常、永続的な低酸素症を伴なっての繊維化性肺胞炎、高められた肺胞デットスペース、及び肺胞又は肺コンプライアンスのさらなる低下を包含するが、但しそれらだけには限定されない。肺高血圧は、肺毛細管層の閉塞のために、重度であり、そして右心室不全を導くことができる。
【0044】
本明細書においては、用語“処理”とは、確立されたALIの処理、確立されたARDSの処理及び確立されたALIからのARDSへの進行の阻止を包含する。処理は、ALI又はARDSに関連する症状又は又は病状の減衰、排除、最小化、緩和又は改善、例えばある程度の器官不全及び/又は損傷をすでに受けている器官への追加の損傷及び/又は不全の阻止、及び修飾されたFVIIの投与の時点で、器官不全及び/損傷を受けていない追加の器官の損傷及び/又は不全の進行の阻止を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0045】
そのような症状又は病状の例は、形態学的/構造的損傷、及び/又は器官、例えば、肺、腎臓、副腎、肝臓、腸、心血管系及び/又は止血系の機能の損傷を包含するが、但しそれらだけには限定されない。そのような症状又は病状の例は、形態学的/構造的損傷、及び/又は器官の機能、例えば肺クリアランス障害によるタンパク質(例えば、界面活性剤)又は流体の蓄積による損傷、又は肺交換機構の損傷、又は肺胞毛細管膜の損傷、低められた尿生産量(腎臓)、組織壊死、糸球体(腎臓)の損失、フィブリン沈着、出血、水腫又は炎症を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0046】
器官不全又は損傷の減衰とは、前記器官の機能の少なくとも1つのそれらの良く知られているマーカーにより測定される場合の器官機能の改良を意味し;器官不全又は損傷が減衰される場合、選択されたマーカーの値は、ALI又はARDSを有さないリヒトにおいて見出される値に比較して、正常化される。
“確立された”ALI又はARDSとは、患者が、ALI又はARDSを有する場合、上記で言及された4点肺損傷評点システムに従って評価されており(Bernardなど., Am. J. Respir. Crit. Care Med 149: 812-24)、又はALI又はARDSに関連する症状又は病状が患者において観察されていることを意味する。
【0047】
急性肺損傷(ALI)は、多くの肺外傷因子、例えば胃内溶物の吸引、肺炎、敗血症、多量の輸血、多発性外傷及び膵炎への暴露に続いて進行する。少数の患者は、約40〜50%の死亡率を有する成人又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)として言及されるより重度の肺外傷を進行する。ARDSは、多くの肺外傷因子、例えば胃内溶物の吸入、肺炎、敗血症、多量の輸血、多発性外傷及び膵炎(但し、これらだけには限定されない)への暴露に続いて進行する。
【0048】
本明細書においては、用語“修飾された第VII因子”とは、“部位−不活性化された第VIIa因子”、“活性部位−不活性化された第VIIa因子”又は“FVIIai”と交換可能的に使用され得る。修飾された第VII因子又は第VIIai因子は、チモーゲンの形(すなわち、一本鎖分子)で存在することができ、又はその活性化部位で切断され得る。従って、“修飾された第VII因子”とは、組織因子を結合し、そして第IX因子から第Ixa因子への及び第X因子から第Xa因子への活性化を阻害する、修飾された第VII因子及び修飾されたVIIa因子の包含を意味する。
【0049】
ヒト第IIa因子は、例えばアメリカ特許第4,784,950号に開示される(野生型第VII因子)。第VII因子配列は、少なくとも1つのアミノ酸修飾を有し、ここで前記修飾は、血漿第X又は第IX因子の活性化を触媒する、活性化された第VII因子の能力を実質的に低めるよう選択され、そして従って、凝固活性を阻害することができる。修飾された第VII因子は、少なくとも1つのアミノ酸置換により修飾される活性部位を有し、そしてこの修飾された形で、組織因子を結合することができる。修飾された第VII因子組成物は展開的には、実質的に純粋な形で存在する。
【0050】
ヒト及びウシ第VII因子の好ましい態様においては、活性部位残基Ser344が修飾され、すなわちGly, Met, Thr又はより好ましくはAlaにより置換される。そのような置換は、別々に、又はAsp242を包含する、触媒三元体における他の部位での置換と組合して行われ得る。
【0051】
修飾された第VII因子は、それぞれビタミンK−依存性血漿タンパク質のプレ−プロペプチド及びglaドメイン、及びglaドメインレス第VII因子タンパク質をコードする、2つの操作可能的に結合された配列コード領域を含んで成るポリヌクレオチド分子によりコードされ、ここで発現に基づいて、ポリヌクレオチドは、血漿第X又はIX因子を有意に活性化せず、そして組織因子を結合することができる修飾された第VII因子分子をコードする。このポリヌクレオチドにより発現される、修飾された第VII因子分子は生物学的活性の抗凝固剤であり、すなわちそれは、凝固カスケード及び従って、フィブリン沈着又は凝固の形成を阻害することができる。修飾された第VII因子を発現するためには、ポリヌクレオチド分子は、哺乳類細胞系、例えばBHK, BHK570又は293細胞系中にトランスフェクトされる。
【0052】
第VIIa因子の触媒活性は、触媒中心の化学的誘導体化により阻害され得る。誘導体化は、第VII因子と、非可逆性インヒビター、例えば有機リン化合物、弗化スルホニル、ペプチドハロメチルケトン又はアザペプチドとの反応により、又は例えばアシル化により達成され得る。好ましいペプチドパロメチルケトンは、PPACK(D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン)(引用により本明細書に組込まれるアメリカ特許第4,318,904号を参照のこと);D−Phe−Phe−Arg及びPhe−Phe−Argクロロメチルケトン(FFR−cmk);及びDEGRck(ダンシル−Glu−Gly−Argクロロメチルケトン)を包含する。
【0053】
第VIIa因子の触媒活性はまた、アミノ酸の置換、挿入又は欠失により阻害され得る。好ましい態様においては、アミノ酸置換が、第VIIa因子触媒部位に寄与するアミノ酸を含む領域として本明細書において定義される第VII因子触媒三元体(catalytic triad)のアミノ酸配列において行なわれる。触媒三元体における置換、挿入又は欠失は一般的に、触媒部位を形成するアミノ酸で又はそれに隣接して存在する。ヒト及びウシ第VII因子タンパク質においては、触媒“三元体”(triad)を形成するアミノ酸は、Ser344, Asp242及びHis193である(下付きの番号は、配列における位置を示す)。
【0054】
他の哺乳類からの第VII因子における触媒部位は、現在入手できる技法、例えば中でも、タンパク質単離及びアミノ酸配列分析を用いて決定され得る。触媒部位はまた、活性部位が前もって決定されている、他のセリンプロテアーゼ、特にキモトリプシンの配列とある配列とを一列整列し(Siglerなど., J. Mol. Biol., 35: 143-164 (1968)(引用における本明細書に組込まれる)、そして前記一列整列から、類似する活性部位残基を決定することによっても決定され得る。
【0055】
アミノ酸置換、挿入又は欠失は、第X因子及び/又はIX因子のVIIa因子による活性化を妨げるか又は他方では、阻害するために行われる。これは、例えば脂質膜に封入されたTF及び第X因子を含んで成るシステムにおいて第Xa因子を生成する第VIIa因子の能力を測定するか(Perssonなど., J. Biol. Chem. 272: 19919-19924, 1997);又は水性システムにおける第X因子加水分解を測定することによって容易に決定され得る(下記“インビトロタンパク質分解アッセイ”を参照のこと)。しかしながら、そのようにして修飾された第VII因子はまた、凝固カスケードにおける組織因子に結合するために確実な第VII因子及び/又は第VIIa因子と競争する能力を保持すべきである。
【0056】
そのような競争は、本明細書に記載のような凝固アッセイ(例えば、アメリカ特許第5,997,864号に記載のような)、又は例えば細胞表面組織因子を有する細胞系、例えばヒト膀胱癌細胞系J82(引用により本明細書に組込まれるSakaiなど., J. Biol. Chem. 264: 9980-9988 (1989))を用いる競争結合アッセイにより、又は表面プラスモン共鳴(例えば、Persson, FEBS Letts. 413: 359-1363, 1997)に基づいての装置を用いてTFに対するその物理的結合を測定することにより容易に決定され得る。
【0057】
第VII因子における触媒部位、例えばヒト及びウシ第VII因子におけるSer344, Asp242及びHis193を形成するアミノ酸は置換されるか又は欠失され得る。本発明においては、好ましくは単一のアミノ酸のみを変更し、従って、分子の抗原性の上昇又は組織因子を結合するその能力を阻害する傾向を最小にするが、しかしながら、複数のアミノ酸変更(置換、付加又は欠失)が行われ得、そして置換、付加および欠失の組み合わせがまた行われ得る。ヒト及びウシ第VII因子についての好ましい態様においては、Ser344が好ましくは、Alaにより置換されるが、しかしGly, Met, Thr又は他のアミノ酸が置換され得る。AspをGluにより置換し、そしてHisをLys又はArgにより置換することが好ましい。一般的に、置換は、できるだけタンパク質の三次構造を破壊しないよう選択される。
【0058】
引用により本明細書に組込まれるDaghoffなど. Atlas of Protein Structure 1978, Nat’l Biomed. Res. Found., Washington, D.C. のモデルは、他のアミノ酸置換の選択におけるガイドとして使用され得る。ヒト、ウシ又は他の種の適切な第VII因子配列の触媒部位における上記のような残基変更を導入し、そしてその得られるタンパク質を、本明細書に記載されるような触媒活性及び得られる抗凝固活性の所望する阻害レベルについて試験することができる。修飾された第VII因子に関しては、触媒活性は、実質的に阻害され、一般的には、その対応する種の野生型第VII因子の触媒活性の約5%以下、より好ましくは約1%以下(例えば、下記“インビトロタンパク質分析アッセイ”において測定されるように)に阻害されるであろう。
【0059】
修飾された第VII因子は、組換えDNA技法の使用により生成され得る。一般的に、クローン化された野生型第VII因子DNA配列は、所望するタンパク質をコードするよう修飾される。次に、この修飾された配列は、発現ベクター中に挿入され、次に、これを用いて、宿主細胞を形質転換するか又はトランスフェクトする。高等真核細胞、特に培養された哺乳類細胞が、宿主細胞として好ましい。ヒト第VII因子のための完全なヌクレオチド及びアミノ酸配列が知られている。組換えヒト第VII因子のクローニング及び発現が記載されている、引用により本明細書に組込まれるアメリカ特許第4,784,450号を参照のこと。ウシ第VII因子配列は、引用により本明細書に組込まれるTakeyaなど., J. Biol. Chem. 263: 14868-14872 (1988) に記載されている。
【0060】
アミノ酸配列変更は、種々の技法により達成され得る。DNA配列の修飾は、特定部位の突然変異誘発によってあり得る。特定部位の突然変異誘発についての技法は当業界おいて良く知られており、そして例えばZoller and Smith, DNA 3: 379-488, 1984により記載されている。従って、第VII因子のヌクレオチド及びアミノ酸配列を用いて、選択される変更を導入することができる。
【0061】
このようにして修飾された第VII因子は、ビタミンK−依存性血漿タンパク質第IX因子、第X因子、プロトロンビン、タンパク質C、タンパク質S又はタンパク質Zの1つのglaドメインにより置換されたアミノ末端タンパク質(glaドメイン)を有するそれらのタンパク質を包含する。ビタミンK−依存性血漿タンパク質のglaドメインは、γ−カルボキシグルタミン酸残基の存在により特徴づけられ、そして一般的には、それぞれの遺伝子におけるエキソン−イントロン境界の位置に対応するC−末端を有する約30〜約40個の長さのアミノ酸からである。異種glaドメインを有する第VII因子を生成するための方法は、引用により本明細書に組込まれるアメリカ特許第4,784,950号に開示される。
【0062】
修飾された第VII因子の生成のために使用されるDNA配列は典型的には、宿主細胞から適切な後―翻訳プロセッシング(例えばグルタミン酸残基のγ−カルボキシル化)及び分泌を得るために、第VII因子タンパク質のアミノ末端でプレ−プロペプチドコードするであろう。前記プレ−プロペプチドは、第VII因子又はもう1つのビタミンK−依存性血漿タンパク質、例えば第IX因子、第X因子、プロトロンビン、タンパク質C又はタンパク質Sのそのペプチドであり得る。当業者により理解されるように、追加の修飾は、修飾された第VII因子のアミノ酸配列において行なわれ、ここでそれらの修飾は、抗凝固剤としての作用するタンパク質の能力を有意に害しない。例えば、触媒三元体において修飾される第VII因子はまた、一般的に、引用により本明細書に組込まれるアメリカ特許第5,288,629号に記載されるように、チモーゲン第VII因子のその活性化された二本鎖形への転換を阻害するために活性化切断部位において修飾され得る。
【0063】
修飾された第VII因子は、抗−第VII因子抗体カラム上での親和性クロマトグラフィーにより精製され得る。引用により本明細書に組込まれるWakabayashiなど., J. Biol. htem. 261: 11097-11108 (1986) 及びThimなど., Biochem. 27: 7785-7793 (1933) により記載されるように、カルシウム−依存性モノクローナル抗体の使用は、特に好ましい。追加の精製は、従来の化学的精製手段、例えば高性能液体クロマトグラフィーにより達成され得る。
【0064】
クエン酸バリウム沈殿を包含する他の精製方法は、当業界において知られており、そして本明細書に記載される新規の修飾された第VII因子の精製に適用され得る(一般的には、Scopes, R., Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y., 1982を参照のこと)。少なくとも約90〜95%の相同性の実質的に純粋な修飾された第VII因子が好ましく、そして最も好ましくは98〜99%の相同性のその第VII因子が医薬使用のために好ましい。所望には、部分的に又は均質に精製されると、修飾された第VII因子が治療的に使用され得る。
【0065】
修飾された第VII因子は、それをその二本鎖形に転換するためにその活性化部位で切断される。活性化は、当業界において知られている方法、例えば引用により本明細書に組込まれる。Osterudなど., Biochemistry 11: 2855-2857 (1972); Thomas, アメリカ特許第4,456,591号;Hedner and Kisiel, J. Clin. Invest. 71: 1836-1841 (1983); 又はKisiel and Fujikawa, Behring Inst. Mitt. 73: 29-42 (1983) により開示されるそれらの方法により行なわれ得る。次に、得られる分子は、下記のようにして、配合され、そして投与される。
【0066】
投与及び用量:
肺不全の処理のための医薬組成物は、非経口の投与のために意図される。好ましくは、医薬組成物は、非経口的に、すなわち静脈内、皮下、筋肉内又は肺に投与される。非経口投与のための組成物は、許容できるキャリヤー、好ましくは水性キャリヤーに溶解された、修飾された第VII因子分子の溶液を含んで成る。種々の水性キャリヤー、例えば水、緩衝水、0.4%塩溶液、0.3%グリシン及び同様のものが使用され得る。修飾された第VII因子分子はまた、創傷の部位への供給又はその標的化のためにリポソーム調製物中に配合され得る。リポソーム調製物は一般的に、例えば引用により本明細書に組込まれるアメリカ特許第4,837,028号、第4,501,728号及び第4,975,282号に記載される。組成物は、従来の良く知られている殺菌技法により殺菌され得る。
【0067】
得られる水溶液は、使用のためにパッケージされ、又は無菌条件下で濾過され、そして凍結乾燥され、その凍結乾燥された調製物は、投与の前、無菌水溶液と組合される。組成物は、生理学的条件に近づけることが必要とされる場合、医薬的に許容できる補助物質、例えばpH調節及び緩衝剤、等張調節剤及び同様のもの、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、等をを含むことができる。それらの配合物における修飾された第VII因子の濃度は、広く変化し、すなわち約0.5重量%以下、通常約1重量%又は少なくとも1重量%〜15又は20重慮%ほどであり得、そして選択される投与の特定のモードに従って、流体体積、粘度、等により主に選択されるであろう。
【0068】
従って、静脈内注入のための典型的な医薬組成物は、250mlの無菌リンガー溶液、及び10mgの修飾された第VII因子を含むよう製造され得る。非経口投与できる化合物を調製するための実際の方法は、当業者に知られているか又は明らかであり、そして例えば、Remington’s Pharmaceutical Science, 16thed. Mack Publishing Company, Easton, PA (1982)(引用により本明細書に組込まれる)に、より詳細に記載される。
【0069】
修飾された第VII因子分子を含む組成物は、上記に記載されるような疾病をすでに有する患者に、前記疾病及びその合併症を治療するか又は少なくとも阻止するのに十分な量、投与される。これを達成するのに適切な量は、“治療的有効量”として定義される。この使用のために効果的な量は、疾病又は外傷の重症度、及び患者の体重及び一般的な状態に依存するが、しかし一般的には、負荷及び維持用量として70kgの患者当たり、約0.05mg〜500mg/日、より典型的には、1mg〜200mg/日、例えば1mg〜約150mg/日、1mg〜約125mg/日、1mg〜約100mg/日、10mg〜約175mg/日、10mg〜約150mg/日、又は10mg〜約125mg/日の範囲である。
【0070】
本発明の材料は一般的に、重度の疾病又は外傷状態、すなわち生命脅威の又は実質的に生命脅威の情況において使用され得ることが注目されるべきである。そのような場合、ヒトにおける異質物質の最少化及び修飾されたヒト第VII因子の免疫原性の一般的な欠乏の観点において、実質的に過剰のそれらの修飾された第VII因子組成物を投与することが可能であり、そして処置する医者により所望される。
【0071】
薬剤は、一回又は複数回の投与により投与され得る。毎日の維持レベルを必用とする患者に関しては、修飾された第VII因子が、反復されたi.v.注射、又はポータブルポンプシステムを用いて連続的注入により投与され得る。ARDSの処理における修飾された第VIIa因子の投与パターンは、負荷用量として約1mg/kg i.v.の用量、維持の用量としての約0.05mg/kg/時である(mg/kgは、患者のkg体重当たりmgの修飾された第VII因子を示す)。
【0072】
もう1つのパターンは、1日(24時間)当たり修飾された第VII因子の1又は複数回の用量、例えば100μg/kg×1、100μg/kg×2、100μg/kg×4、200μg/kg×1、200μg/kg×2、200μg/kg×4、400μg/kg×1、400μg/kg×2、400μg/kg×4、800μg/kg×1、又は800μg/kg×2である。この用量は、1又は複数日の間、例えば(100kg/kg×1/日)×2日、(100kg/kg×2)×2日、(100kg/kg×4)×2日、(200kg/kg×1)×2日、(200kg/kg×2)×2日、(200kg/kg×4)×2日、(400kg/kg×1)×2日、(400kg/kg×2)×2日、(400kg/kg×4)×2日、(800kg/kg×1)×2日又は(800kg/2)×2日で投与される。薬剤は好ましくは、iv注射として投与される。
【0073】
修飾された第II因子又はもう1つのTFアンタゴニスト(例えば、抗-TF抗体)はまた、活性化されたタンパク質C(APC)、又はAPCの生物学的活性を保持するそのフラグメント又は変異体と組合して投与され得る。この場合、第1量の修飾された第VII因子又はTFアンタゴニスト、及び第2量のAPC又はその生物学的活性変異体又はフラグメントが投与され、ここで前記第1及び第2量は一緒で、ALI又はARDSの処理において効果的である。
【0074】
組成物は、修飾された第VII因子又はもう1つのTFアンタゴニストの調製物、及びAPC又はその生物学的活性フラグメント又は変異体の調製物を、適切な濃度で含んで成る単一の調製物の形(単一用量形)で存在することができる。組成物はまた、修飾された第VII因子又はもう1つのTFアンタゴニストの調製物を含んで成る第1単位用量形、及びAPC又はその生物学的活性フラグメント又は変異体を含んで成る第2単位用量形から成るキット−オブ−パート(kit-of-parts)の形で存在することができる。いずれの成分でも最初に投与され得る。
【0075】
第1、又は第2、又は第3、等の単位用量がこの明細書において言及される場合いつでも、これは、投与の好ましい順序を言及しているのではなく、しかし単なる便利目的のためである。好ましくは、両生成物は、同じ静脈内アクセスを通して注射される。キットは、別々の組成物を含むための容器手段、例えば分割されたボトル又は分割された箔パケットを包含する。典型的には、キットは別々の成分の投与のための説明書を包含する。このキット形は、別々の成分が好ましくは異なった用量形で投与される場合、異なった投与間隔で投与される場合、又は組み合わせの個々の成分の滴定が処方医者により所望される場合、特に好都合である。
【0076】
修飾された第FVII因子又はもう1つのTFアンタゴニストの量、及び本発明に従って投与されるAPC又はその生物学的活性フラグメント又は変異体の量は、約1:100〜約100:1(w/w)の比である。修飾されたFVII又はもう1つのTFアンタゴニスト:APC又はその生物学的活性フラグメント又は変異体の比は、例えば約1:100、又は1:90、又は1:80、又は1:70、又は1:60、又は1:50、又は1:40、又は1:30、又は1:20、又は1:10、又は1:5、又は1:2、又は1:1、又は2:1、又は5:1、又は10:1、又は20:1、又は30:1、又は40:1、又は50:1、又は60:1、又は70:1、又は80:1、又は90:1、又は100:1、又は約80:1〜約2:1、又は約70:1〜約5:1、又は約60:1〜約10:1、又は約50:1〜約25:1、又は40:1〜約30:1、又は約10:1〜約1:10、又は約5:1〜約1:5であり得る。
【0077】
修飾されたFVII又はもう1つのTFアンタゴニスト(例えば、抗−TF抗体)はまた、TFPI、又はTFPIの生物学的活性を保持するそのフラグメント又は変異体と組み合しても投与され得、この場合、修飾されたFVII又はもう1つのTFPアンタゴニストの第1量及びTFPI又はその生物学的活性変異体又はフラグメントの第2量が投与され、ここで前記第1及び第2量は、ALI又はARDSの処理において効果的である。
【0078】
組成物は、修飾された第VII因子又はもう1つのTFアンタゴニストの調製物、及びTFPI又はその生物学的活性フラグメント又は変異体の調製物を、適切な濃度で含んで成る単一の調製物の形(単一用量形)で存在することができる。組成物はまた、修飾された第VII因子又はもう1つのTFアンタゴニストの調製物を含んで成る第1単位用量形、及びTFPI又はその生物学的活性フラグメント又は変異体を含んで成る第2単位用量形から成るキット−オブ−パート(kit-of-parts)の形で存在することができる。いずれの成分でも最初に投与され得る。
【0079】
第1、又は第2、又は第3、等の単位用量がこの明細書において言及される場合いつでも、これは、投与の好ましい順序を言及しているのではなく、しかし単なる便利目的のためである。好ましくは、両生成物は、同じ静脈内アクセスを通して注射される。キットは、別々の組成物を含むための容器手段、例えば分割されたボトル又は分割された箔パケットを包含する。典型的には、キットは別々の成分の投与のための説明書を包含する。このキット形は、別々の成分が好ましくは異なった用量形で投与される場合、異なった投与間隔で投与される場合、又は組み合わせの個々の成分の滴定が処方医者により所望される場合、特に好都合である。
【0080】
修飾された第FVII因子又はもう1つのTFアンタゴニストの量、及び本発明に従って投与されるTFPI又はその生物学的活性フラグメント又は変異体の量は、約1:100〜約100:1(w/w)の比である。修飾されたFVII又はもう1つのTFアンタゴニスト:TFPI又はその生物学的活性フラグメント又は変異体の比は、例えば約1:100、又は1:90、又は1:80、又は1:70、又は1:60、又は1:50、又は1:40、又は1:30、又は1:20、又は1:10、又は1:5、又は1:2、又は1:1、又は2:1、又は5:1、又は10:1、又は20:1、又は30:1、又は40:1、又は50:1、又は60:1、又は70:1、又は80:1、又は90:1、又は100:1、又は約80:1〜約2:1、又は約70:1〜約5:1、又は約60:1〜約10:1、又は約50:1〜約25:1、又は40:1〜約30:1、又は約10:1〜約1:10、又は約5:1〜約1:5であり得る。
【0081】
修飾されたFVII又はもう1つのTFアンタゴニスト(たとえば、抗−TF抗体)はまた、好ましくは患者血漿1dl当たり110mg又はそれ以下に血清グルコースを維持することができる。血液グルコース低減剤、例えばインスリンと組合して投与して得る。この場合、修飾されたFVII又はもう1つのTFアンタゴニストの第1量、及び血液グルコース低減剤、例えばインスリン又はその生物学的活性変異体又はフラグメントの第2量が投与され、ここで前記第1及び第2量は共に、ALI又はARDSの処理において有効である。
【0082】
組成物は、修飾された第VII因子又はもう1つのTFアンタゴニストの調製物、及び血液グルコース低減剤、例えばインスリン又はその生物学的活性フラグメント又は変異体の調製物を、適切な濃度で含んで成る単一の調製物の形(単一用量形)で存在することができる。組成物はまた、修飾された第VII因子又はもう1つのTFアンタゴニストの調製物を含んで成る第1単位用量形、及び血液グルコース低減剤、例えばインスリン又はその生物学的活性フラグメント又は変異体を含んで成る第2単位用量形から成るキット−オブ−パート(kit-of-parts)の形で存在することができる。いずれの成分でも最初に投与され得る。
【0083】
第1、又は第2、又は第3、等の単位用量がこの明細書において言及される場合いつでも、これは、投与の好ましい順序を言及しているのではなく、しかし単なる便利目的のためである。好ましくは、両生成物は、同じ静脈内アクセスを通して注射される。キットは、別々の組成物を含むための容器手段、例えば分割されたボトル又は分割された箔パケットを包含する。典型的には、キットは別々の成分の投与のための説明書を包含する。このキット形は、別々の成分が好ましくは異なった用量形で投与される場合、異なった投与間隔で投与される場合、又は組み合わせの個々の成分の滴定が処方医者により所望される場合、特に好都合である。
【0084】
修飾された第FVII因子又はもう1つのTFアンタゴニストの量、及び本発明に従って投与される血液グルコース低減剤、例えばインスリン又はその生物学的活性フラグメント又は変異体の量は、約1:100〜約100:1(w/w)の比である。FVII:血液グルコース低減剤の比は、例えば約1:100、又は1:90、又は1:80、又は1:70、又は1:60、又は1:50、又は1:40、又は1:30、又は1:20、又は1:10、又は1:5、又は1:2、又は1:1、又は2:1、又は5:1、又は10:1、又は20:1、又は30:1、又は40:1、又は50:1、又は60:1、又は70:1、又は80:1、又は90:1、又は100:1、又は約80:1〜約2:1、又は約70:1〜約5:1、又は約60:1〜約10:1、又は約50:1〜約25:1、又は40:1〜約30:1、又は約10:1〜約1:10、又は約5:1〜約1:5であり得る。
【0085】
実験及びヒヒモデルの説明:
敗血症−誘発された組織因子(TF)発現は、肺における凝固を活性化し、そしてフィブリン沈着をもたらし、そして炎症を強める前凝固環境に誘導する。TF−第VIIa因子(FVIIa) 複合体での凝固の開始の阻害は、フィブリン沈着を阻止し、そして炎症を調節し、それにより、敗血症における急性肺損傷(ALI)及び他の器官損傷を制限する。ALIのモデルを使用し、ここで動物は、殺害されたE. コリ(1×109CFU/kg)により感作され、そして致死性敗血症は、1×1010CFU/kgの生存E.コリの注入により12時間後、誘発された。
【0086】
処理グループにおける動物は、生存細菌の注入の時点でTFの競争体インヒビター、すなわち部位−不活性化されたFVIIa (修飾されたFVII) を静脈内に与えられ、そしてさらに36時間、生理学的にモニターされた。FVIaiはガス交換及び肺コンプライアンスを劇的に保護し、肺水腫及び肺高血圧を妨げ、そしてビークルに比較して腎機能を保存し(p<0.001)、そして全身性前炎症サイトカイン応答、例えばインターロイキン−6を低めた(p<0.01)。敗血症−誘発されたALIにおけるTFの保護効果遮断は、組織因子経路インヒビター(TFPI)を用いて確認された。その結果は、TF−FVIIa複合体が前炎症性サイトカイン放出及びフィブリン沈着の選択的刺激を通して敗血性霊長類において器官損傷を一部、制限されたことを示す。
【0087】
グラム陰性敗血症を有する患者は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)及び多臓器不全(MOF)の高い発生率を有する。それらの患者の肺は、特徴的には、フィブリンが敗血症におけるARDSの病原に寄与する証拠が付随するが、肺胞及び間隙区画におけるフィブリン沈着を示す。散在性血管間凝固(DIC)を妨げることによって敗血症を処理するよう企画された方策は、ショックによるヒト及び非ヒト霊長類における死亡率を低めるが、しかしそれらの研究は、残留死亡率、器官特異的分析の欠失、及びARDSに類似する急性肺損傷(ALI)を生成する動物モデルの無能性により制限されて来た。ARDSは敗血症患者において有意な羅病率及び死亡率を引き起こすので、本発明者は、肺への組織因子(TF)開始された凝固及びフィブリン沈着及び敗血症における全身性器官損傷の寄与を研究するためにARDS及びMOFの非ヒト霊長モデルを使用した。
【0088】
内毒素又は細菌が循環中に侵入する場合、付随的な凝固が急速に活性化され、そして前凝固環境が血管空間において進行する。これは、TF依存性であり、そして内毒素の前凝固効果を介在する炎症性サイトカインの上昇に関連する。同様に、前凝集環境は、内毒素注入の後又は実験的な急性肺損傷(ALI)の間、動物の肺において、及びARDSを有する患者の気管支肺胞洗浄(BAL)において見出される。
【0089】
全身性循環におけるように、肺における前凝固活性はTF発現に関連し、このことは、血管外炎症がまた、付随的な経路を活性化することを示唆する。前凝固活性と肺損傷との間の関連性にもかかわらず、TF及び他の凝固因子について特定の病因的役割は肺の外傷応答においては定義されていない。TFのように、活性化された第VII因子(FVIIa)及び第X因子(FXa)、トロンビン及びフィブリンは、肺における血管透過性、炎症細胞移動及び界面活性機能不全を変更する細胞シグナル化に対して特定の効果を有する。肺血症に対する応答における凝固と炎症との間のこの複雑なクロストークの正確な寄与は未だ知られていない。
【0090】
グラム陰性敗血症の間の凝固の防止は、凝固関連の炎症応答を弱くすることによってALI及び他の器官炎症を妨げる。これは、E.コリ敗血症の確立されたヒヒモデルにおいて試験され、ここで全身性炎症応答は、殺害された細菌のプライミング注入により予備活性化される。第2の致死用量の細菌の後、動物は、ARDSを有するヒトに類似する、筋力過多心血管応答、及び肺及び腎不全を進行する。本発明者は、天然のFVIIaよりもTFに対して5倍高い親和性のためにFVIIaを競争的に阻害する、部位−不活性化されたFVIIa(FVIIai)を用いて、プライミング用量の細菌の後、TF−FVIIa複合体での凝固の開始を阻止した。次の研究は、FVIIaiを用いての凝固遮断が敗血症候群における全身性炎症及びフィブリノーゲン消耗を低め、そして肺及び腎臓に対する外傷を妨げることを示す。
【0091】
これは、致死性敗血症における凝固の開始の阻止の後、最終器官機能における特定の改良性を示すための最初の研究である。この発見は、敗血症−誘発された呼吸及び腎不全におけるTFについての病因役割を確立し、そしてTFの遮断は肺及び腎機能を効果的に保存する。治療効果を評価するためのこのアプローチは、プライミングされたヒヒの生理学的及び組織学的応答がヒトにおける敗血症に対する応答に密接に従うので、強力である。敗血症における凝固を阻止するために種々の方策を用いるこれまでの動物研究は、TF遮断又は抗凝固のいずれかの後、より良好な生存性を報告しているが、しかし最終器官外傷の評価は重度の敗血症ショックの存在により複雑にされて来た。
【0092】
プライミングは炎症を予備活性化し、そしてヒトにおける実験的内毒症に類似する、肺ガス交換、メカニックス及び血液力学における軽い自己制限された変更を引き起こす。続く圧倒的なグラム陰性敗血症は、進行性肺及び腎損傷、炎症性サイトカインの永続的な上昇、及び凝固阻害をもたらす。それらの動物における免疫応答は複雑であり、そして一定の治療剤、例えば白血球付着分子に対するmAbは、プライミングされた動物における結果を有意に悪化する。対照的に、TF−FVIIaの遮断は、凝固障害及びフィブリン沈着を弱くし、そして致死性E.コリ感染の後、肺及び腎損傷を妨げる。
【0093】
過去においては、敗血症における凝固遮断の主要目的は、血管区画におけるフィブリン沈着の阻害であったが、しかし本発明者は、器官損傷の間の血管外フィブリン沈着がまた、介在を受けやすいことを示した。フィブリンは組織修復において細胞移動及びコラーゲン形成のための決定的なマトリックスを提供するが、しかしまた、炎症を刺激することができる。肺においては、フィブリンの実質細胞蓄積が、炎症細胞移動、界面活性機能不全及び前線維性工程に寄与することができる。ガス交換及び肺水はこの研究において非常に改良されたが、残留フィブリンがFVIIai処理された動物における肺胞領域及び小血管の周囲に検出された。これは、TF遮断の強い保護効果がフィブリンの不在のために完全でなく、そして凝固を包含するキー修復工程はFVIIaiによる処理の間、損なわれないまま存在することを示唆する。
【0094】
FVIIaiは、組織保護に寄与する敗血症の36時間後、肺及び腎臓における管腔内フィブリン凝固を妨げなかった。血管内フィブリン沈着は、小さな栄養血管における閉塞性トロンビンの直接的な結果として、及び内皮−白血球相互作用の増強を通して、器官不全に寄与する。血管内フィブリンはいくつかの組織において、及びある臨床学的設定においてたぶん重要であるけれども、例えば圧倒的なショック及び組織低灌流が生じる場合、上皮細胞及び組織マクロファージによる血管外TF発現はまた、前凝固性、前炎症性現象を開始する。内在し、そして浸潤するマクロファージ、及び固定された細胞集団の両者は、炎症性肺及び腎疾患におけるTFの源として包含され、このことは、凝固が血管外実質において異なって調節されることを示唆する。
【0095】
TFは、直接的に、又はFXa、トロンビン及びフィブリン(これらのすべては炎症とのクロストークを示す)の生成を通して免疫機能を調節することができるグループIIサイトカイン受容体である。個々の成分は、炎症応答に対して独立した効果を有し、そしてTFの阻止開始は、経路における続く段階で短い炎症相互作用の利点を有する。TFは、ALIの進行に相当するマイトゲン−活性化されたタンパク質キナーゼ(MAPK)サイトカイン調節を活性化した。特に、IL−6は、ARDSにおいて永続的炎症及び不良な結果に関連した。インビトロで、FVIIaiはMAPKを阻害し、このことは、触媒活性のFVIIaがそれらの経路を通してのTFシグナル化のために必要とされることを示す。FVIIaによるTFの結合は、多くの免疫調節剤、例えばIL−1β、IL−8及び他のケモカイン、凝固及び成長因子、及びコラゲナーゼを誘発する。
【0096】
本発明者のヒヒモデルにおいては、FVIIaiは、IL−6、IL−8及びTNFR−1の血漿レベルを低めた。これは、低められたTFシグナル化、又は前炎症性サイトカインを誘発する、FXa及びトロンビンの低められた下流生成から生じる。IL−6及びIL−8はさらに、TF発現及びTF遮断を高め、そしてFVIIaiは肺における敗血症−誘発されたTF発現を著しく低めた。急性肺損傷の他の重要なメディエーター、例えばVEGFの調節は、TF−FVIIaによるFXaの生成、又はTFの細胞質末端のいずれかを必要とする。最終的に、他のデータは、TFが高く発現される場合、それはシグナル化現象を開始する他のトランスメンブランタンパク質にFVIIaを提供するための補因子として機能することを示唆する。そのような相互作用が、TFが敗血症におけるように高く過剰発現される時、重要である場合、VIIaの直接的な標的化は、TFを阻害する他の発明よりも利点を有する。
【0097】
激症敗血症を有する動物の初期研究においては、3種の実験剤、すなわちTFPI、抗−TF mAb及びDEGR−FVIIaが、TF−開始された凝固で標的化された。それらの剤は生存性を改良したが、しかしながら、TF−FVIIa複合体、例えば活性化されたタンパク質C(APC)及び抗トロンビンIII(ATIII)に遠位のプロテアーゼの天然のインヒビターはまた、生存効能を示した。それらの方策は急速な進行性ショックを進行する前もって攻撃されていない動物においてすべて試験されたので、凝固活性はTF−FVIIaの複合体から下流のショックにおける死亡率に寄与することが可能である。抗−TF剤のように、それらの影響はALI及びMOFに関して研究されていない。
【0098】
上記研究においては、血清IL−6及びIL−8の低下が観察され、そして改良された生存性についての機構として考慮された。それらのメディエーターについての決定的な効果は、局在化するには困難であり、そして一貫して、凝固及びサイトカインを生存性に結び付けない。FXa及びトロンビンで凝固を阻害するATIIIは死亡率、凝固障害及びIL−6生成を低めたが、しかしながらそれらの結果はヒト試験においては再現されなかった。対照的に、DEGF−FVIIaは凝固障害及びIL−6生成を弱めたが、しかしサイトカインレベルと相関しない、生存性に対する種々の効果を有した。
【0099】
また、不活性化されたFXaは凝固障害を弱めたが、しかし急性敗血症ショックにおいて生存性を改良しなかった。それらの研究における凝固遮断の効果は、器官機能の生理学的エンドポイントと相関しなかった。ヒトにおいては、TFPIによるTF遮断は、低用量内毒素注入によりIL−6レベルに影響を及ぼさなかったが、但し、それは凝固の活性化を妨げた。それらの研究は共に、特に炎症挑戦が進行するにつれて、霊長類における凝固プロテアーゼの炎症及び凝固機能についての異なった閾値を包含する。
【0100】
本発明者の動物においては、FVIIaiは、全体的に凝固の阻止しないで、肺炎症を排除した。新規観察は、出血が関与する敗血症患者に望みを提供する。FVIIaiはTFを効果的に結合するが、それはインビトロで凝固を不完全に阻止する。従って、TF−FVIIaのより高い活性化は凝固よりも炎症のために必要とされ、そしてこの研究に使用されるFVIIaiの用量で、重度の出血は見られなかった。さらに、凝固に対する薬物の効果は、出血が生じる場合、ヒト組換えFVIIaにより逆にされた。
【0101】
要約すると、本発明者は、TF−FVIIaの複合体での凝固の遮断が、非ヒト霊長類において、E.コリ敗血症の間、肺及び腎臓損傷を妨げる。他の組織は、種々の程度に保護され、このことは、敗血症における損傷へのTFに基づく寄与が器官間で異なることを示唆する。ARDSを有する、決定的には疾病であるヒトにおけるように、本発明者は、永続的な炎症の存在下でこの方策を試験し、ここで延長されたサイトカイン発現が機能的効果のために決定的な関係を有する。凝固の異なった観点に基づく敗血性ショックについてのこれまでの方策は、種々の臨床学的成功を有した。
【0102】
これは、敗血症の異種損傷、及び炎症に関しての異なった凝固プロテアーゼ間の相互作用の両者にたぶん影響を及ぼす。本発明者のデータは、凝固カスケードにおいて近位に作用する剤が敗血症における肺及び肝臓損傷に対する高い陽性影響を有するであろうことを示唆する。
次の例は、例示目的であり、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0103】
例1.
FVII の生物学的活性:
第VIIa因子及び第VIIa因子変異体の活性を、生理学的基質、例えば第X因子を、適切には、100〜1000nMの濃度で用いて測定することができ、ここで生成される第Xa因子が、適切な発色性基質(例えば、5−2765)の添加の後に測定される。さらに、活性アッセイが生理学的温度で行なわれ得る。
【0104】
“インビトロタンパク質分解アッセイ”
天然(野生型)の第VIIa因子及び第VIIa因子変異体(この後、“第VIIa因子”として言及する)を、それらの比活性を直接的に比較するために同時にアッセイする。このアッセイは、マイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)において行なわれる。0.1MのNaCl、5mMのCaCl2及び1mg/mlのウシ血清アルブミンを含む50mMのヘルペス(pH7.4)100μl中、第VIIa因子(10nM)及び第X因子(0.8μM)を、15分間インキュベートする。次に、第X因子分解を、0.1MのNaCl、20mMのEDTA及び1mg/mlのウシ血清アルブミンを含む50mMのヘルペス(pH7.5)50μlの添加により停止する。
【0105】
生成される第Xa因子の量を、発色性基質、Z−D−Arg−Gly−Arg−p−ニトロアニリド(5-2765, Chromogenix, Sweden) (最終濃度0.5mMの)の添加により測定する。405nmでの吸光度を、SpectraMaxTM340プレートリーダー(Molecular Devices, USA)において連続的に測定する。10分間、進行した吸光度を、FVIIaを含まないブランクウェルにおける吸光度の控除の後、変異体のタンパク質分解活性と野生型第VIIa因子との間の比を計算するために使用する:
比=(A405nm 第VIIa因子変異体)/(A405nm 第VIIa因子野生型)。
それに基づいて、天然の第VIIa因子よりも実質的に低い活性を有する第VIIa因子変異体、例えば前記変異体の活性と天然の第VII因子(野生型第VII因子)との間の比が5%以下、又は1%又はそれ以下である変異体を同定することができる。
【0106】
例2.
非本質的な凝固の遮断が確立されたグラム陰性敗血症を有するヒヒにおける肺損傷を低める:
生存細菌注入の時点で活性部位−不活性化されたVIIa(ASIS)による凝固の遮断がヒヒにおける敗血症−関連の急性肺損傷(ALI)及び腎不全を弱めたことが示されている。本発明は、確立されたE.コリ敗血症がまた、低められたALI及び腎不全を伴なって、ASISによる処理に対して応答することを示した。
【0107】
成長した雄ヒヒは、静脈内生存E.コリ1×1010/kgの12時間前、1×109/kgの熱殺されたE.コリの注入を受けた。動物を48時間、機械的に換気し、そして8−12mmHgのPCWP(肺毛細血管楔入圧)を維持するために流体により支持した。6匹の動物を、細菌注入の後、ASIS(1mg/kg iv, 続いて50μg/kg/時)により処理した。6匹の動物は敗血症対照として作用した。値は平均±SEとして示された。
【0108】
ASISは血漿フィブリノーゲン消耗を妨げ、これは付随的経路の治療的遮断と一致する。敗血症は好中球減少症を誘発し、そして栓球現象症は影響されなかった。48時間後、処理された動物は、低められた肺湿/乾量(C=6.9±0.8, ASIS=5.0±0.2)と共に、ガス交換(ΔAaDO2, mmHg: C=25.4±3.9、ASIS=14.4±5.2)を保存した。肺組織は、ASIS−処理された敗血症動物において低められた炎症を示した。ASISにより処理された敗血症動物においては、尿生産量が高く(UOP, ml/kg/時=C=5.7±1, ASIS=12.3±1.7、P≦0.01)、そして代謝アシドーシスは弱められた(ΔHC3 -、meq/dl:C=−4.3±2.9, ASIS=+3±1.1, p≦0.05)。ASIS−処理された動物からの腎臓は、敗血症対照に比較して、保存された管状の構造を示した。薬剤注入は、出血性合併症を伴なわないで十分に許容された。その結果は、付随的な凝固の阻害開始が確立された敗血症における急性肺及び腎不全を保護することを示す。
【0109】
【表2】
【0110】
例3.
実験的な急性肺損傷における組織因子遮断:
本発明者は、E.コリ敗血症からALIを有するヒヒにおけるTF−開始された凝固の遮断を研究した。活性部位不活性化されたFVII(ASIS)は、付随的な凝固を阻止し、そして全身性サイトカイン応答、例えばインターロイキン(IL)−6、IL−8及び腫瘍壊死因子受容体−1を低めた。それはまた、肺、腎臓及び他の組織における敗血症関連の損傷を弱めた。血漿フィブリノーゲン及びトロンビン−抗−トロンビンIII(TAT)複合体の測定は、ASISによる処理の後、凝固の血管内活性化の低下を確証した。
【0111】
処理されていない敗血症動物においては、フィブリン沈着が肺及び血管内及び血管外区画における他の組織において著しかった。これは、低められたが、しかしASISにより処理された敗血症動物においては排除されず、このことはTF−遮断の保護効果がフィブリンの低められた生成のためにまったく存在しなかったことを示唆する。ASISによる遮断はまた、肺における炎症変化、例えば好中球湿潤を低め、そして水腫及び出血を低めた。ASISによる凝固の遮断及びフィブリン沈着の減衰は、ガス交換及びコンプライアンスを保存することにより肺機能を改良し、肺高血圧を低め、そして腎機能を改良した。TFPIにより処理された2匹の敗血症ヒヒはまた、ASISにより処理されたヒヒよりも低い程度ではあるが、ガス交換及び肺コンプライアンスにおいて改良性を示した。それらの結果は、TF−FVIIa複合体が敗血症に対する病理学的応答のための重要な調節部位であることを示す。
【0112】
敗血症における凝固遮断の1つの可能性ある保護機構は、前炎症サイトカイン生成の減衰である。凝固と炎症との間のクロストークが異常調節された炎症のキー成分である可能性が、最終水腫損傷の程度についての関係を有する。肺上皮細胞及びマクロファージによる肺胞及び間隙空間において発現されるTFは、TF遮断により修飾される場合、肺機能の改良を導く、敗血症における前凝固、前炎症性現象を開始することができる。
ASISはD−Phe−Phe−Arg−FVIIaである。
【0113】
例4.
方法:
動物の準備:体重14〜20kgの成長した雄ヒヒ(Papio cyanocephalus)を、最少4週間、隔離し、そして使用の前、結核のないことを確かめた。動物を、AAALACガイドラインに従って取り扱い、そして実験プロトコールは、Duke University Institutional Animal Care and Use Committeeにより許可された。それらは、処理及び敗血症対照グループにランダムに分けられた(それぞれ、n=6)。処理された動物は、生存細菌の注入の直前、時間t=12時で1mg/kgで活性部位−不活性化されたFVIIa (FVIIai, Novo Nordisk, Copenhagen) を、静脈内(iv.)に受け、続いて50mg/kg/時間(iv.)を受けた。
【0114】
処理されていない動物は、ビークルのみのiv. 注入を受けた。薬剤は、ヒト組換えFVIIaに由来し、ここで活性部位が小さなペプチド(D−Phe−L−Phe−L−Argクロロメチルケトン)の導入による阻止されており、そして用量はヒト患者における安全性に基づいて選択された。修飾は、タンパク質分解活性を阻止し、そしてTF活性を5倍、増強する。TFの独立したインヒビターに関する発見を確かめるために、2匹の追加のヒヒを、組織因子経路インヒビター(TFPI, Abla Creasy, Chiron, Emeryville, CA)により同じプロトコールを用いて、同じ用量で処理した。
【0115】
一晩の絶食の後、個々の動物は、筋肉内ケタミン(20−25mg/kg)により鎮静化され、そして挿管された。強い鎮静は、ケタミン(3−10mg/kg/時)及びジアセパム(2時間ごとに、0.4−0.8mg/kg)により維持された。動物は、容量で循環される換気装置により換気され、そして呼吸測定の前、パンクロニウム(4mg、静脈内)により継続的に麻酔された。FiO2は0.21であり、増減量(tidal volume)は12mg/kgであり、正の最終呼吸圧は2.5cm H2Oであり、そして速度は40mmHgの動脈PCO2を維持するよう調節された。内在性動脈系及び肺動脈カテーテルを、血液力学モニターリングのために大腿骨切断を通して配置した。このモデルについての詳細な記載は公開されている(例えば、Welty−Wolfなど.、Am.J. Resp. Care Med. 1998; 158: 610-619)。
【0116】
すべての動物は、生存E.コリの投与の12時間前、t=0での60分の注入とそて、約109CFU/kgの熱殺害されたE.コリを受けた。敗血症は、1010CFU/kgの生存E.コリを50mlの体積で60分間にわたっての注入によりt=12時で誘発された。ゲンタマイシン(3mg/kg, iv.)及びCaftazidime(1g, iv.)を、E.コリ注入の完結の60分後、投与した。肺毛細管楔入圧(PCWP)を8〜12mmHgで維持し、そして血圧を支持する必要がある場合、流体が与えられた。平均動脈圧(MAP)が、流体にもかかわらず、65mmHg以下に落ちる場合、ドーパミンを低血圧のために使用した。48時間後(生存細菌注入の36時間後)、動物は深く麻酔をかけられ、そしてKCl注入により殺された。前もって定義された終結基準は、難治性低血圧(60mmHg以下のMAP)、低酸素血症(40%以上のFiO2のために必要とされる)、又は難治性代謝アシドーシス(正常PaCO2を伴なって、pH<7.10)を包含した。
【0117】
血液力学モニターリング:生理学的パラメーター、例えば心拍数(HR)、温度、動脈圧、肺動脈圧、換気装置パラメーター及び流体摂取が1時間ごと回収された。測定は、必要な場合、熱希釈法による心臓出力(CO)、中心静脈圧(CVP)、PCWP、動脈及び混合された血液気体、酸素飽和、酸素含有率及びヘモグロビン(Hgb)により6時間ごとに得られた(例えば、Welty−Wolfなど., Am. J. resp. Crit. Care Med. 1998; 158: 610-619)。尿カテーテル生産量は、6時間ごとに測定され、そして流体バランスは合計のiv. 摂取−尿生産量として計算された。
【0118】
E.コリの調製:E.コリ(American Type Culture Collection, Rockville, MD; 血清型D869:K61)を、記載のようにして調製し(REFS7−10)、そして個々のヒヒに関して、1×1010FU/kgの最終用量を付与するために調節した(LD100)。熱殺害されたE.コリを、少なくとも30分間、65℃で水浴において細菌の管を加熱することによって調製した。生物の数及び熱殺害の効能を、注入プレートを用いてコロニー計数により確かめた。
【0119】
全血液、血漿及び血清に対する測定:血液サンプルを、0, 12, 13, 18, 24, 36及び48時間で採血した。完全な血液計数を、全血液に対して行なった(Sysmex−1000血球計数器、Sysmex, Inc., Long Grove, IL)。血漿(クエン酸血液から)及び血清を分離し、そして−80℃で貯蔵した。フィブリノーゲンを、分析されるST4機械的凝固を用いて測定した(Diagnostiga Stago, Parsippany, NJ)。プロトンビン時間(PT)及び活性化された部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を、二重反復して測定し、そして抗トロンビンIII(ATIII)活性を、発色性アッセイにより、MDA凝固アナライザー(Organon Teknika; Durham, NC)上で測定し、そしてキット標準の%として表した。
【0120】
ELISAを用いて、血漿トロンビン−抗トロンビン(TAT)複合体(Dade Behring, Deerfield, IL)、及び血漿及びBALにおけるFVIIai (Novo Nordisk, Copenhagen) を測定した。血清サンプルを、ELISAキット(R and D Systems, Inc., Minneapolis, MN)を用いて、インターロイキン1β(IL−1β、IL−6、IL−8及びTNF受容体−1(TNFR−1))について分析した。血液尿窒素(BUN)及びクレアチニンを、標準の臨床学的技法により測定した。
【0121】
組織収集及び調製:実験の後、胸部を切開し、右の主幹部気管支を連結し、そして左の肺を除いた。BALを、240mlの0.9%塩溶液により右上方葉に対して行なった。右下部葉からの肺組織のサンプルを、手動的に膨張し、そして光顕微鏡及び免疫組織化学のために4%パラホルムアルデヒドに含浸した。4種のサンプルを、大きな血管及び気管支構造を回避するために注意しながら、湿/乾量決定のために左肺の残りからランダムに採取した。肺、腎臓、小腸、心臓及び副腎からの追加のサンプルを、液体窒素においてフラッシュ凍結し、そして−80℃で、ウェスターンブロット及び生化学研究のために貯蔵した。全右肺を、0.85Mのカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中、2%グルタルアルデヒドにより、30cmの固定圧力で15分間、膨張−固定した。腎臓、肺、小腸、心臓及び副腎からの追加の組織を、4%パラホルムアルデヒドへの含浸により固定した。小腸の4種のサンプルを、湿/乾量決定のためにランダムに選択した。
【0122】
生化学的測定:肺均質物及びタンパク質のミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性及びタンパク質濃度、及びBAL流体の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)濃度を、記載のようにして測定した(例えば、Carrawayなど., AM. J. Resp. Crit. Care 1998, 157: 938-949)。MPO活性を、吸光度/分/g湿量組織での変化として表した。
【0123】
ウェスターンブロット:肺サンプルを、冷溶解緩衝液(150mMのNaCl、50mMのトリス、pH7.6, 1% SDS、3% Nonidet P-40, 5mMのEDTA、1mMのMgCl2、2mMの1,3−ジクロロイソクマリン、2mMの1,10−フェナンスロリン及び0.4mMのE−54)において均質化し、そして15,000×gで10分間、遠心分離した。上清液を、Laemmli緩衝液と共に混合し、そして−80℃で凍結した。電気泳動を、12%ポリアクリルアミドゲルを用いて、還元条件下で行なった。
【0124】
レーンを、等量のタンパク質により負荷し、そして電気泳動を、Hoeferミニゲルシステム(Hoefer Scientific Instruments, San Francisco, CA)上で行なった。トランスファーの後、ブロットを、抗−TF mAb(マウス抗ヒト、American, Diagnostica, Greenwich, CT)及びHRP−接合された第2Ab(ヤギ抗−マウス、Transduction Laboratories, Lexington, KY)を用いて、TF発現のためにプローブした。シグナルを、ECL検出のために展開し、そしてブロットを市販のソフトウェア(Quantity One, Biorad, Hercules, CA)を用いて濃縮した。
【0125】
組織学及び免疫化学:パラホルムアルデヒド固定された組織を、パラフィンに包埋し、切片化し、そしてヘマトキシリン及びエオシン(H&E)により染色し、そして光顕微鏡により試験した。フィブリンについての免疫局在化を、肺、腎臓、副腎及び小腸のパラフィン切片上でのmAb(抗−ヒトフィブリノーゲンβ−鎖、American Diagnostica, Greenwich, CT)を用いて行なった。このAbはフィブリンと強く反応し、そしてフィブリノーゲンと弱く反応した。
【0126】
切片(5ミクロン)を、キシレンにおいて脱パラフィン化し、等級付けされたアルコールにおいて再水和化し、そして洗浄し、その後、抗−フィブリンAbと共に4℃で一晩インキュベートした。次に、切片を洗浄し、そしてビオチニル化された第2Abと共にインキュベートし、そしてシグナルを、ペルオキシダーゼ−接合されたアビジン及びアミノベンジンにより進行せしめた。負の対照を上記のようにして処理し、但し一次インキュベーションを、非免疫マウス血清(Jackson Laboratories, Bar Harbor, NE)と共に行なった。
【0127】
統計学:データを、コンピューター表計算に入力し、そして市販のソフトウェア(StatView, Calabasas, CA)を用いて分析した。生理学的データ及び一連の採血からのデータを、2−要素ANOVAにより分析した。実験の最後で得られたBAL及び組織からの生化学データを、不対t−検定を用いて分析した。平均±sem及びp値は図及び表に提供され;p<0.05は有意であるとして考慮され、そして傾向はp<0.10について示される。
【0128】
結果:
凝固及び炎症の両者を、致死用量の生存E.コリの注入の前、死亡細菌により活性化した。生存E.コリの投与の直前、動物は、TAT複合体の上昇と共に軽い凝固障害、低められた血小板、及び急性相応答と一致する高められたフィブリノーゲンを有した。炎症性メディエーターIL−6、IL−8及びTNFR−1が2〜10倍、高められた。それらの動物における生存細菌の注入は、集中的な肺損傷、腎機能不全、及び他の活発な器官、例えば肝臓、腸及び副腎への損傷を引き起こした。一定した注入としてのFVIIai静脈内投与は、凝固及び炎症のさらなる活性化を効果的に阻止し、器官損傷を妨げ、そして血管内及び血管外フィブリン沈着を低めた。
【0129】
フィブリンの組織沈着に対する効果は肺及び腎臓において最も著しく、ここでFVIIai処理された動物は、ビークル処理された敗血症対照に比較して、ガス交換及び腎不全において著しい改良性を示した。処理されていない敗血症対照動物は、FVIIaiにより予防された肺においてTFの強いアップ−レギュレーションを有した(p<0.05, 図1)。薬剤レベルを、血漿及びBALにおいて測定し、そして肺胞区画中へのFVIIaiの挿入を示し、ここでBAL流体におけるレベルは、実験の最後で194.2±34.7ng/mgタンパク質であった。血漿レベルは表3に示される。それらの動物におけるFVIIai処理による肺及び腎臓保護の分析は、下記に提供される。
【0130】
敗血症における急性肺損傷:FVIIai処理は、敗血症−誘発された低酸素血症、肺高血圧、及び肺システムコンプライアンスの損傷を妨げた。それらの生理学的データは、図2に示され、薬剤効果を示すために、t=12からの変化としてプロットされた。初期の処理されていない動物(n=11)、及びTFPIにより処理された2匹の敗血症動物からの組織学的データは、単なる比較のためにグラフ上に形破線として示される(データは統計学的分析には包含されない)。肺胞動脈酸素グラジエント(AaDO2)は、殺された細菌の注入の後、両グループにおいて上昇し、そしてt=12時での生存細菌敗血症の開始の後、敗血症対照グループにおいては、連続的に悪化した。敗血症対照における1匹の動物は、補充酸素を必要とした。
【0131】
FVIIaiによる処理は、敗血症の間、ガス交換における悪化を妨げ(p<0.0001)、そして最終AaDO2は、12時に比較して、それらの動物において実際、改良した。平均肺動脈圧(PAM)及び肺血管抵抗性kg (PVR*kg)における敗血症−誘発された上昇は、FVIIaiにより弱められた(p<0.001及びp<0.02対、処理されていない敗血症対照)。FVIIaiはまた、敗血症対照動物に見られる肺システムコンプライアンスの損失を妨げた(p<0.001)。デットスペースは同様に上昇し、そして両グループは、実験の間、30〜35%の少々の換気(Vg)の上昇を必要とした(表3)。PaCO2は、両グループにおいて40mmHgで制御された(VE及びPaCO2の両者に関してp=NS)。
【0132】
後−モーテム(mortem)で、FVIIaiにより処理された動物の肺は、正常に見え、損傷されていない換気された動物からの肺に類似した。対照的に、敗血症対照動物からの肺は、濃密且つ出血性であった。肺湿/乾量での定量的測定、好中球(PMN)蓄積、及び洗浄LDHは、処理されたグループにおいてすべて改良された(図3)。肺湿/乾量は、FVIIai処理された動物における5.05±0.09に比較して、敗血症対照においては5.81±0.19であった(p<0.01l, 通常のリファレンスレンジは4.6−5.0である)。BAL LDHはほとんど60%(p<0.01)低下し、そして肺MPO活性は40%以上(p=0.07)低められた。BALタンパク質は、2種のグループ間で有意に異ならなかった。
【0133】
肺組織学は、FVIIaiにより処理された敗血症動物において著しい保護性を示した。肺の代表的な切片が抗−フィブリン抗体により染色された。敗血症対照動物の肺は肥厚化された肺胞隔壁、不統一の肺胞水腫及び出血、及びマクロファージ及びPMNによる肺胞内炎症細胞侵入を有する。抗−フィブリン染色は、肺胞内炎症細胞上の隔壁にそって及び肺胞流体において広範囲の拡散フィブリン沈着を示した。肺におけるいくらかの小血管は、フィブリン凝固物を含んだ。処理された動物の肺は、正常な肺胞隔壁構造、最少の肺胞PMN侵入を有し、そして肺胞水腫を有さなかった。それらの動物においては、隔壁のフィブリン染色は均質であり、そして敗血症対照においては、それほど大規模ではなかった。処理された動物においては、フィブリン染色は時折り、小血管を取り囲む領域に制限されたが、しかしながら、血管内フィブリン凝固物は見られなかった。肺胞マクロファージ及び血管内単球は局部的に染色された。
【0134】
敗血症における腎及び他の器官損傷:FVIIaiはまた、敗血症における腎不全を妨げた(図4)。血清クレアチニンは、敗血症対照グループにおいて倍増したが、しかし処理グループにおいては正常のままであった(p=0.05)。処理されていない動物においては、生存E.コリの注入の後、尿生産量において対応する低下が存在した。対照的に、尿生産量は、処理グループにおいては、維持されるか又は高められた(p<0.0001)。これは、バランス(図4)及び全身性血液力学(表3)が2種のグループにおいて類似しているために、回復における差異のためではなかった。血液pH及び血清[HCO3 -]は、処理されていない動物においては低かった(それぞれ、p<0.001及びp<0.1, 図4)。
【0135】
処理されていない動物殻の腎臓は、後モーテム(mortem)で膨張し、そして出血したが、しかしFVIIai処理された動物においては正常に見えた。処理されていない動物の腎臓のH&E染色された切片は、急性管状壊死(ATN)の不統一の領域及び糸球体の損失を有した。ATNの少数の病巣を除いて、処理された動物の腎臓は、正常な腎構造を示した。免疫染色は、毛細管構造の閉塞を有する敗血症対照動物の糸球体にフィブリン沈着を示した。管状上皮がまた染色し、そしていくつかの管は、フィブリンに関してもまた陽性である非晶性材量を含んだ。フィブリン凝固物により閉塞された血管が容易に同定された。処理された動物においては、糸球体フィブリン沈着は不在であり、そして最少の管状上皮染色が少数の動物のみに見出された。
【0136】
副腎、肝臓及び小腸の外観はまた、FVIIai処理された動物においては正常であった。対照的に、処理されていない動物からの副腎は膨張し、且つ出血性であり、そして小腸は全体的に水腫性であった。小腸の湿/乾量は、処理されていない動物においては高かったが、しかし腸損傷における高い変動性は、統計学的差異をグループ間で達成することは不可能であった(処理された動物において6.36±0.51−対−処理されていない動物において8.30±1.13、p=0.15)。
【0137】
肺及び腎臓における低められたフィブリン染色に比較して、集中的なフィブリン沈着が処理された及び処理されていない動物の両者における副腎及び小腸に見出された。これにもかかわらず、副腎皮質うっ血及び出血、及び小腸出血及び水腫は、FVIIaiにより処理された敗血症動物においては減じられた。肺以外の器官においてPMN含有率に対するFVIIaiの統計学的に有意な効果は存在しなかった。腎臓、肝臓及び小腸におけるMPO活性は、対照動物においては種々であり、そして差異は2種のグループ間で統計学的に有意ではなかった。
【0138】
敗血症−誘発された凝固障害:凝固の血管内活性化は、対照に比較して、FVIIaiにより処理された敗血症動物においては低められた(図5)。凝固パラメーターの初期値は、この種に関しては正常な範囲内であった。薬剤処理は、凝固の治療的遮断により予測されるよに、血漿フィブリノーゲン消耗を妨げた(p<0.0001)。TAT複合体は、生存E.コリ投与の後、敗血症対照においては高上し、13−18時間でピークに達し、そして次に、AT III活性レベルが低下するにつれて、低下した。
【0139】
TAT複合体の上昇は処理された動物においては弱められたが(p<0.001)、しかしながらAT III活性の低下は統計学的には異ならなかった。TATレベルは処理されていない敗血症動物における実験においては、後期で低下したが、凝固はそれらのヒヒにおいては進行した。aPPTは両グループにおいて連続的に上昇したが、しかし処理されていない動物においてはより高かった(p<0.01)。PTは、アッセイに対する薬剤効果のために、処理グループにおいては高く、薬剤注入の期間、53〜67秒であった(p<0.0001)。処理されていないグループにおいては、PTは、12時間での17.8±0.4(生存E.コリが注入される前)から、実験の最後での25.5±3.6に連続的に上昇した。
【0140】
両グループの動物は、生存E.コリの注入の後、好中球減少、栓球減少及び貧血を進行した(表3を参照のこと)。WBCは、注入の1時間後(t=13時間)、両グループにおいて約1,500 (×103/μl)の底に達し、そして実験の最後までに、ほぼ基線レベルに連続的に上昇した(処理された動物における9,400±1,800−対−処理されていない動物における13,000±3.900、p=0.08)。すべての動物は、生存E.コリの注入の12時間後までに(t=24時間)、栓球減少性であり、そして平均血小板計数は、実験の最後で、両グループにおいて30,000又はそれ以下であった。Hgbは、いずれかにおいても有意な出血の形跡も伴なわないで、両グループにおいて類似して低下した(表3)。
【0141】
前炎症性サイトカインレベル:炎症性サイトカインの上昇は、FVIIaiによる処理により弱められた(図6)。IL−1β、IL−6、IL−8及びTNFR−1の循環レベルは、処理された及び処理されていない動物において、生存E.コリの注入の後、鋭く上昇した。ピークIL−6レベルは2種のグループ間で異ならなかったが、しかしIL−6はFVIIai処理された動物においてより急速に低下し(p<0.001)、そして天然の動物に見出されるレベルに戻った。同様に、IL−8及びTNFR−1レベルは、対照に比較して、弱められた(p<0.01及びp<0.001)。2種のグループ間でIL−8レベルの差異は存在しなかった。
【0142】
全身性血液力学的パラメーター:血液力学測定、例えばHR, MAP, PCWP, CO/kg及び全身性血管抵抗*kg (SVR*kg)を、FVIIaiによる処理により変更した(表3)。低血圧は量グループにおいてIV流体に応答し;処理グループにおける1匹の動物は、生存細菌が注入された直後、低用量のドーパミンを必要とした。12匹の動物のうち10匹は、プロトコールの予定された終結点まで、生存した。
【0143】
1匹の敗血症対照動物は、難治性低酸素血症及び呼吸アシドーシスを伴なって、ALIから30時間(生存細菌注入の18時間後)で死亡し、そしてFVIIai処理グループにおける1匹の動物は、気管内挿管の合併症から、研究の最終前に死亡した。個々のグループにおける2匹の動物は、実験の間、自己制限された血尿を進行し、そしてFVIIai処理グループにおける1匹の動物は後−モーテムで、気管支中間において凝固物を有した。2種のグループにおけるほとんどの動物は、研究におけるいくつかの点で吸引に関連するいくらかの血液混合の分泌を有した。重度の又は生命−脅威の出血性合併症は、いずれのグループにおいても存在しなかった。
【0144】
TFPI注入後の肺及び腎損傷:すべてのE.コリ敗血症に対するTF遮断の効果を確かめるために、2匹のヒヒを、同じ実験プロトコールに基づいてTFPIにより処理した。凝固の活性化が、血漿フィブリノーゲンレベルにおける類似する改良性を伴なって、TFPI注入の後、敗血症において阻止された。それらの動物における最終フィブリノーゲンレベル(t=48時間)は、12時間の値の75%及び95%であった。TFPIは全身性血液力学的パラメーターを変更しなかった。ガス交換及び肺機構は、両動物において保護された(図2を参照のこと)。TFPI後の肺組織の組織病理学及びフィブリン免疫染色は、肺における低められた炎症細胞浸出物、低められた融壁肥大化、及び低められたフィブリン沈着を示した。FVIIai処理されたグループにおけるように、腎構造は正常であり、そして腎臓におけるフィブリン染色は、TFPIの後、不在であった。
【0145】
【表3】
【0146】
表3:敗血症対照及びFVIIai処理された敗血症グループにおける全身性測定。熱−殺害された細菌を、t=0時間で注入し、そして生存細胞をt=12時間で注入した。データは、平均±semとして示され、そして2−要素ANOVAにより分析した。処理されたグループにおけるFVIIai薬剤レベルは、ng/ml血漿において示される。略語:Temp(温度、℃)、Hgb(ヘモグロビン)、VE(少々の換気、L/分)、HR(心拍数)、MAP(平均動脈圧、mmHg)、CO(心臓出力、L/分)、DO2(酸素供給、mL/分)、VO2(酸素消費、mL/分)、SVR(全身性血管抵抗、ダイン×cm×kg/10)、PCWP(肺毛細管楔入圧、mmHg)。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】図1.E.コリ敗血症における組織因子(TF)発現。ウェスターンブロット(A)は、FVIIaiによる処理により妨げられた正常ヒヒ肺に比較して、敗血症対照動物の肺における高められたTF発現を示した。TFPIにより処理された2匹の動物のうち1匹は、TF発現における変化を有さなかった。代表的なブロットが示される。(B)濃度計測が、敗血症対照及びFVIIai処理されたグループに対して行なわれ、そして非敗血症の正常対照動物の平均に標準化され、2種の実験グループにおいてN=6及び正常対照に関してはN=3である。示されるデータは平均±semである(* p<0.05対正常対照、δ p<0.05対敗血症対照)。
【図2】図2.敗血症−誘発された肺損傷は、FVIIaiにより妨げられた。データは、薬剤効果を示すために、t=12時間からの変化として示される。グラフはまた、TFPIにより処理された2匹の動物からのデータ、及びこの実験からの敗血症対照からの累積データを示す。−●―敗血症グループ(n=6)、−(白円)−敗血症+FVIIai(n=6)、-----‐累積敗血症対処(n=11)、− − − −敗血症+TFPI(n=2)。PVIIaiは、(A)高められた動脈−肺胞酸素グラジエント(AaDO2, p<0.0001)、(B)肺システムコンプライアンスの低下(Cs, p<0.001)、(C)平均肺動脈圧の上昇(PAM, p<0.001)及び(D)肺血管抵抗性(PVR, p<0.05)を妨げた。
【図3】図3.FVIIai処理は肺炎症を低めた。肺MPO活性及びBAL LDHは、敗血症対照に比較して、処理された動物において低められた(Φ p=0.07及び* p<0.01)。2種のグループ間でBALタンパク質に差異は存在しなかった。データは、平均±semとして示され、そしてt−件さを用いて分析された。
【図4】図4.敗血症−誘発された損傷の腎及び代謝インデックスは、FVIIai処理された動物において改良された。(A)血清[HCO3]は、FVIIai処理された敗血症動物において高かった(p<0.01)。(B)血清クレアチニンは、敗血症対照グループにおいて上昇したが、しかしFVIIaiにより処理された敗血症グループにおいてはそうではなかった。(C)及び(D)は、2種のグループにおける類似する流体バランス(iv. 流体−尿生産量)を示すが、しかしFVIIaiにより処理された動物においては、敗血症の間、より高い尿生産量を示す(p<0.0001)。データは、平均±semとして示され、そして2−要素ANOVAを用いて分析された。−●−敗血症対照グループ(n=6)、−(白円)−敗血症+FVIIai(n=6)。
【図5】図5.FVIIaiは、敗血症−誘発された凝固障害を弱めた。(A)敗血症は、FVIIaiにより処理された動物において低められたPTTの前進性延長を引き起こした(p<0.01)。フィブリノーゲン消耗(B)及びTAT複合体の上昇(C)は、処理グループにおいて弱められた、両者に関して、p<0.0001。ATIII活性(D)は、両グループにおいて低められたキット標準の%として示されるが、しかし差異は統計学的有意性に達しなかった。データは、平均±semとして示され、そして2−要素ANOVAを用いて分析された。−●−敗血症対照グループ(n=6)、−(白円)−敗血症+FVIIai(n=6)。
【図6】図6.敗血症における炎症性サイトカインは、FVIIaiにより弱められた。データは、平均±semとして示され、そして2−要素ANOVAを用いて分析された。−●−敗血症対照グループ(n=6)、−(白円)−敗血症+FVIIai(n=6)。敗血症−誘発された、IL−6(A)、IL−8(B)及びTNFR−1(D)レベルの上昇はすべて、FVIIaiによる処理により弱められた、すべてに関して、p<0.001。IL−1βレベル(C)は、TF遮断により変更されなかった。
Claims (55)
- ヒトにおける急性肺損傷(ALI)又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の処理のための薬剤の製造のための修飾された第VII因子の使用。
- 器官不全の処理のための請求項1記載の使用。
- 前記器官が、腎臓、肺、副腎、肝臓、小腸、心血管系又は止血系である請求項2記載の使用。
- 前記器官不全が肺の不全である請求項3記載の使用。
- 器官機能を維持するか又は改良するための請求項1〜4のいずれか1項記載の使用。
- 肺高血圧の処理のための請求項1記載の使用。
- 前凝固活性を低めるか又は最小にするための請求項1記載の使用。
- 前記前凝固活性が、肺上皮細胞及び組織マクロファージによる組織因子発現に関連している請求項7記載の使用。
- 炎症を低めるか又は最小にするための請求項1記載の使用。
- IL−6及びIL−8の生成を低めるか又は最小にするための請求項9記載の使用。
- 肺ガス交換を改良するための請求項1記載の使用。
- 肺水腫を低めるか又は最小にするための請求項1記載の使用。
- 肺タンパク質漏出を低めるか又は最小にするための請求項1記載の使用。
- 前記修飾されたFVIIが、触媒三元体において少なくとも1つのアミノ酸残基置換、挿入又は欠失を有するFVIIである請求項1〜13のいずれか1項記載の使用。
- 前記修飾されたFVIIが、位置Ser344、Asp242及びHis193において少なくとも1つのアミノ酸残基置換、挿入又は欠失を有するFVIIである請求項14記載の使用。
- 前記活性部位残基Ser344が修飾され、すなわちGly、 Met、 Thr, 又はより好ましくはAlaにより置換される請求項15記載の使用。
- 前記修飾されたFVIIが、セリンプロテアーゼインヒビターとの反応により修飾されたFVIIaである請求項1〜13のいずれか1項記載の使用。
- 前記プロテアーゼインヒビターが、有機リン化合物、弗化スルファニル、ペプチドハロメチルケトン又はアザペプチドである請求項17記載の使用。
- 前記プロテアーゼインヒビターが、ダンシル−L−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、ダンシル−L−Glu−Gly−Argクロロメチルケトン、ダンシル−L−Phe−Phe−Argクロロメチルケトン、L−Phe−Phe−Argクロロメチルケトン、ダンシル−D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、ダンシル−D−Glu−Gly−Argクロロメチルケトン、ダンシル−D−Phe−Phe−Argクロロメチルケトン及びD−Phe−Phe−Argクロロメチルケトンから選択されたペプチドハロメチルケトンである請求項18記載の使用。
- 前記プロテアーゼインヒビターが、D−Phe−Phe−Argクロロメチルケトンである請求項19記載の使用。
- ヒトにおけるALI又はARDSに関連する慢性器官不全を妨げるか又は最小にするための薬剤の製造のための修飾されたFVIIの使用。
- 前記ALI又はARDSが、修飾されたFVIIが投与される前に確立されている請求項21記載の使用。
- 前記器官不全が、腎臓、肺、副腎、肝臓、小腸、心血管系又は止血系の不全である請求項22記載の使用。
- 前記器官不全が肺の不全である請求項23記載の使用。
- 前記修飾されたFVIIが、触媒三元体において少なくとも1つのアミノ酸残基置換、挿入又は欠失を有するFVIIである請求項21〜24のいずれか1項記載の使用。
- 前記修飾されたFVIIが、位置Ser344、Asp242及びHis193において少なくとも1つのアミノ酸残基置換、挿入又は欠失を有するFVIIである請求項25記載の使用。
- 前記活性部位残基Ser344が修飾され、すなわちGly、 Met、 Thr, 又はより好ましくはAlaにより置換される請求項26記載の使用。
- 前記修飾されたFVIIが、セリンプロテアーゼインヒビターとの反応により修飾されたFVIIaである請求項21〜24のいずれか1項記載の使用。
- 前記プロテアーゼインヒビターが、有機リン化合物、弗化スルファニル、ペプチドハロメチルケトン又はアザペプチドである請求項28記載の使用。
- 前記プロテアーゼインヒビターが、ダンシル−L−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、ダンシル−L−Glu−Gly−Argクロロメチルケトン、ダンシル−L−Phe−Phe−Argクロロメチルケトン、L−Phe−Phe−Argクロロメチルケトン、ダンシル−D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、ダンシル−D−Glu−Gly−Argクロロメチルケトン、ダンシル−D−Phe−Phe−Argクロロメチルケトン及びD−Phe−Phe−Argクロロメチルケトンから選択されたペプチドハロメチルケトンである請求項29記載の使用。
- 前記プロテアーゼインヒビターが、D−Phe−Phe−Argクロロメチルケトンである請求項30記載の使用。
- ヒトにおける急性肺損傷(ALI)又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の処理方法であって、治療的有効量の修飾されたFVIIを、そのような処理の必要な対象に投与することを含んで成る方法。
- 器官不全の処理のための請求項32記載の方法。
- 前記器官不全が、腎臓、肺、副腎、肝臓、小腸、心血管系又は止血系の不全である請求項33記載の方法。
- 前記器官不全が肺の不全である請求項34記載の方法。
- 器官機能を維持するか又は改良するための請求項32〜35のいずれか1項記載の方法。
- 肺高血圧の処理のための請求項32記載の方法。
- 前凝固活性を低めるか又は最小にするための請求項32記載の方法。
- 前記前凝固活性が、肺上皮細胞及び組織マクロファージによる組織因子発現に関連している請求項38記載の方法。
- 炎症を低めるか又は最小にするための請求項32記載の方法。
- IL−6及びIL−8の生成を低めるか又は最小にするための請求項40記載の方法。
- 肺ガス交換を改良するための請求項32記載の方法。
- 肺水腫を低めるか又は最小にするための請求項32記載の方法。
- 肺タンパク質漏出を低めるか又は最小にするための請求項32記載の方法。
- 前記修飾されたFVIIが、触媒三元体において少なくとも1つのアミノ酸残基置換、挿入又は欠失を有するFVIIである請求項32〜44のいずれか1項記載の方法。
- 前記修飾されたFVIIが、位置Ser344、Asp242及びHis193において少なくとも1つのアミノ酸残基置換、挿入又は欠失を有するFVIIである請求項45記載の方法。
- 前記活性部位残基Ser344が修飾され、すなわちGly、 Met、 Thr, 又はより好ましくはAlaにより置換される請求項46記載の方法。
- 前記修飾されたFVIIが、セリンプロテアーゼインヒビターとの反応により修飾されたFVIIaである請求項32〜44のいずれか1項記載の方法。
- 前記プロテアーゼインヒビターが、有機リン化合物、弗化スルファニル、ペプチドハロメチルケトン又はアザペプチドである請求項48記載の方法。
- 前記プロテアーゼインヒビターが、ダンシル−L−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、ダンシル−L−Glu−Gly−Argクロロメチルケトン、ダンシル−L−Phe−Phe−Argクロロメチルケトン、L−Phe−Phe−Argクロロメチルケトン、ダンシル−D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、ダンシル−D−Glu−Gly−Argクロロメチルケトン、ダンシル−D−Phe−Phe−Argクロロメチルケトン及びD−Phe−Phe−Argクロロメチルケトンから選択されたペプチドハロメチルケトンである請求項49記載の方法。
- 前記プロテアーゼインヒビターが、D−Phe−Phe−Argクロロメチルケトンである請求項50記載の方法。
- ヒトにおけるALI又はARDSに関連する慢性器官不全を妨げるか又は最小にするための方法であって、治療的有効量の修飾されたFVIIを、そのような処理を必要とする対象に投与することを含んで成る方法。
- 前記ALI又はARDSが、修飾されたFVIIが投与される前に確立されている請求項52記載の方法。
- 前記器官不全が、腎臓、肺、副腎、肝臓、小腸、心血管系又は止血系の不全である請求項52又は53記載の方法。
- 前記器官不全が肺の不全である請求項54記載の方法。
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