まず、具体的構成を説明する前に、この発明に係る画像形成装置を想到するに到った経緯を説明する。この発明に係る画像形成装置における定着装置では、熱源を内蔵した定着部材に加圧部材を当接させて、その当接位置が記録用紙の挟持搬送位置であり、また加熱位置である転写定着ニップとされる。定着部材としてはローラやベルトが用いられ、加圧部材としてはローラやベルトあるいは固定パッドなどが用いられる。
一方、転写対象となる画像には、単一色のみでなく、フルカラーなどのように複数の色の画像を組み合わせたものがある。このような画像に対する定着に際しては、転写される対象の画像形態に応じた定着特性、特に温度特性が重要となる。温度特性は、トナーと記録用紙との間の熱移動に影響する。熱移動は、定着部材に接触するトナー表面温度と、トナーおよびこれが接触する記録用紙表面の温度(界面温度)によって変化する。温度特性のうちで、トナーの表面温度は、フルカラー画像などに要求される光沢度に影響する。トナーおよびこれが接触する記録用紙の表面温度は、記録用紙に対するトナーの浸透度(密着性)に影響を及ぼす。
図5には、フルカラー画像形成装置の定着装置を示す。図示定着装置では、各色ごとの画像が形成可能な像担持体A〜Dが並置されており、その並置方向に沿って展張面を有する一次転写部材に相当する中間転写体Eが設けられ、中間転写体Eに対して各色ごとの画像が順次転写されるようになっている。中間転写体Eには、重畳転写された画像を記録用紙に対して一括転写するための二次転写部材としての転写装置Fが対向当接して設けられており、一括転写された記録用紙が定着装置Gに向けて搬送されるようになっている。
図5に示す定着装置Gは、互いに対向当接して距離Lの転写定着ニップを形成する定着ローラG1および加圧ローラG2を備えた熱ローラ定着方式を採用した構成であり、定着ローラG1からの加熱により記録用紙上の未定着画像が定着されるようになっている。熱ローラ定着方式は、熱効率が高く高速化が図れること、伝熱効率が高く安定した定着効率が得られること、および記録用紙の搬送媒体として利用できることにより構造が簡単であるなどの利点があり、近年多用されるようになっている。
定着装置Gにおいては、所定の温度に達するまでのウォームアップ作業が行われるようになっている。フルカラー画像の場合には、白黒画像のような単一色画像の場合と違って重畳されるトナーの層厚が厚いことが原因しておおよそ1.5倍程度多い熱量が必要とされている。このため、単一色画像を対象とした場合に比べて記録用紙への加熱熱量が増加する傾向となり、記録用紙が加熱状態に陥りやすいばかりでなく、フルカラー画像を高速で多数定着する際には商用電源である100V、15Aなどの電源容量では加熱電力が不足してしまい、対応できなくなるおそれがあった。
過剰な加熱が起こると、記録用紙自体も過熱気味となる。このような現象は、記録用紙を取り扱う際にユーザの意に沿わないばかりでなく、過熱によりトナーが再軟化を引き起こした場合に積層された記録用紙同士が密着して、いわゆる貼り付いた状態となり、記録用紙の取り出し作業時に剥ぎ取らなければならなくなるなどの作業性の悪化を招くこととなる。過熱による不具合としては、トナーが転写対象となる普通紙などの記録用紙と違って、表面に滲み防止のための特別なコーティング処理が施されているような記録用紙が誤って画像形成のために用いられると、コーティング材料が熱によって定着部材に転移して、いわゆるオフセットが発生しやすくなり、定着部材での汚れの発生や記録用紙の巻き付き等が発生しやすくなる。このため、巻き付いた記録用紙の除去作業や定着部材の清掃作業など、本来、画像形成装置において必要とされない余計な作業が必要となり、作業性において不利となる。
電子写真画像形成方法を用いる装置においては、記録用紙裏面から電気的なバイアスを掛けることで画像を静電的に記録用紙へ転写するようになっているが、記録用紙の吸湿性、厚さ、表面特性(凹凸)等の条件によって記録用紙の電気的特性が変化しやすいことから、像担持体上の画像を直接あるいは中間転写体を介して記録用紙に転写する際の転写品質を一定化することが難しく、異常画像が発生しやすいという不具合もあった。
一方、記録用紙に転写される画像は、定着装置において加熱されることになるが、定着時でのトナーの層厚方向での温度が異なる。つまり、図5に示す構成では、定着装置Gに達した時点で初めて加熱が開始されることから、記録用紙の界面側のトナーの温度に比べて厚さ方向において記録用紙の界面側の反対側に相当する表層側のトナーの温度がかなり低く、層厚方向で温度勾配が大きくなる。
このような問題を解消するために定着温度を高めることが考えられるが、加熱温度を高めた場合には、加熱負荷(消費電力の増加)が大きくなるばかりでなく、上述したような加熱状態が得られやすくなることで、記録用紙の加熱状態やトナーの再軟化による不具合が解消されないことになる。
この発明は、上述のような考察の下に具体化されたものである。
この発明の画像形成装置は、像担持体と、その像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、その静電潜像をトナーを用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、そのトナー像を担持する転写定着部材と、その転写定着部材上のトナー像を加熱する加熱手段と、前記転写定着部材とで転写定着ニップを形成する加圧部材とを備え、さらに必要に応じてクリーニング手段、除電手段、制御手段等のその他の手段を有してなる。
この発明の画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程と、トナー像を担持する転写定着部材と、その転写定着部材上のトナー像を加熱する加熱手段と、前記転写定着部材とで転写定着ニップを形成する加圧部材とを用いた転写定着工程とを含み、さらに必要に応じてその他の工程を含んでなる。
前記像担持体(以下、「電子写真感光体」、「感光体」と称することがある)としては、その材質、形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体、などが挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコン等が好ましい。
−静電潜像形成手段および静電潜像形成工程−
前記静電潜像の形成は、例えば、前記像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段により行うことができる。前記静電潜像形成手段は、例えば、前記像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、前記像担持体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
前記帯電は、例えば、前記帯電器を用いて前記像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
前記帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性または半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、などが挙げられる。
前記露光は、例えば、前記露光器を用いて前記像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光器としては、前記帯電器により帯電された前記像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。
なお、この発明においては、前記像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
−現像手段および現像工程−
前記現像工程は、前記静電潜像を、トナー乃至現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程であり、前記現像手段を用いて行われる。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像をトナー乃至現像剤を用いて現像することにより行うことができる。
前記現像手段は、例えば、トナー乃至現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、前記トナー乃至現像剤を収容し、前記静電潜像にトナー乃至現像剤を接触または非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられ、前記トナー入り容器を備えた現像器などがより好ましい。
前記現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、前記像担持体(感光体)近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって像担持体(感光体)の表面に移動する。その結果、前記静電潜像がトナーにより現像されて像担持体(感光体)の表面にトナーによる可視像が形成される。
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の最良形態につき具体的に説明する。
まず、図1に基づいてこの発明の一例であるタンデム型のカラー複写機の構成および動作の概要を説明する。カラー複写機1は、装置本体中央部に位置する画像形成部1Aと、その画像形成部1Aの下方に位置する給紙部1Bと、画像形成部1Aの上方に位置する図示しない画像読取部を有している。
画像形成部1Aには、水平方向に延びる転写面を有する中間転写体としての中間転写ベルト2が配置されており、その中間転写ベルト2の上面には、色分解色と補色関係にある色の画像を形成するための構成が設けられている。すなわち、補色関係にある色のトナー(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)による像を担持可能な像担持体としての感光体3B、3C、3M、3Yが中間転写ベルト2の転写面に沿って並置されている。各色の並び順は、これに限定されるものではない。
各感光体3B、3C、3M、3Yは、それぞれ同じ方向(反時計回り方向)に回転可能なドラムで構成されており、その周りには、回転過程において画像形成処理を実行する帯電装置4、静電潜像形成手段としての書き込み装置5、現像手段としての現像装置6、一次転写装置7、およびクリーニング装置8が配置されている。各符号に付記しているアルファベットは、感光体3と同様、トナーの色別に対応している。各現像装置6には、それぞれのカラートナーが収容されている。
中間転写ベルト2は、駆動ローラ9と、従動ローラ10に掛け回されて感光体3Y、3M、3C、3Bとの対峙位置において同方向に移動可能な構成を有している。従動ローラ10と対向する位置には、中間転写ベルト2の表面をクリーニングするクリーニング装置11が設けられている。
感光体3Bの表面が帯電装置4Bにより一様に帯電され、画像読取部からの画像情報に基づいて書き込み装置5により書き込みが行われて感光体3B上に静電潜像が形成される。その静電潜像は、ブラックのトナーを収容した現像装置6Bによりトナーを付着することによってトナー像として可視像化される。そのトナー像は、所定のバイアスが印加される一次転写装置7Yにより中間転写ベルト2上に一次転写される。ここで、現像装置6は、一成分現像装置、二成分現像装置いずれかに限定されるものではない。他の感光体3C、3M、3Yでもトナーの色が異なるだけで同様の画像形成がなされ、それぞれの色のトナー像が中間転写ベルト2上に順に転写されて重ね合わせられる。
画像転写後、感光体3上に残留したトナーは、クリーニング装置8により除去される。また、画像転写後、図示しない除電ランプにより感光体3の電位が初期化され、次の作像工程に備えられる。
駆動ローラ9の近傍には、定着装置12が設けられている。定着装置12は、中間転写ベルト2上の画像としての未定着トナー像が転写されるローラ状の転写定着部材13と、その転写定着部材13とで転写定着ニップNを形成するローラ状の加圧部材14を有している。トナー像を担持する転写定着部材13は、アルミニウム等の金属によりパイプ状に形成されており、表面には離型層がコーティングされている。また、転写定着部材13の内部には、その転写定着部材13上のトナー像を加熱する加熱手段15が設けられている。加熱手段15としては、例えばハロゲンヒータなどを用いる。他方、加圧部材14は、芯金14aとゴム等の弾性層14bを有している。
給紙部1Bは、記録媒体としての記録用紙Pを積載収容する給紙トレイ16と、その給紙トレイ16内の記録用紙Pを最上のものから順に1枚ずつ分離して給紙する給紙コロ17と、給紙された記録用紙Pを搬送する搬送ローラ対18と、記録用紙Pが一旦停止され、斜めずれを修正された後、転写定着部材13上の画像の先端と搬送方向の所定位置とが一致するタイミングで転写定着ニップNに向けて送り出されるレジストローラ対19を有している。
感光体3B、3C、3M、3Yから中間転写ベルト2上に一次転写されたトナー像Tは、図示しないバイアス印加手段により従動ローラ11に印加されるバイアス(AC、パルスなどの重畳を含む)により転写定着部材13に静電気力で二次転写される。
図1に示すように、中間転写ベルト2と転写定着部材13との間には、転写定着部材13から中間転写ベルト2への熱放射(熱移動)を抑制する熱遮蔽部材または熱移動抑止部材としての断熱プレート20が設けられている。断熱プレート20は、中間転写ベルト2から転写定着部材13への二次転写を阻害しない状態で中間転写ベルト2への熱放射を極力抑えるように、開口部を有する形状に形成されており、図示しない定着装置本体、画像形成装置本体のいずれの側に設けてもよい。熱移動抑止部材としては、放射率の低い金属光沢を有する板状のものが好ましく、特に2枚の金属シートを微小空隙または断熱材を挟んで配置すると優れた効果が得られる。また、ノートパソコンのCPU冷却用に用いられるマイクロヒートパイプ構造を内包する薄板を用いた場合、熱移動抑止部材を低温に保ち熱移動を抑制することができる。
また、この例では、中間転写ベルト2の転写定着部材13に対する転写部(転写定着部材13との対向部)と、最も上流側の感光体3Bに対する転写部との間に中間転写ベルト2の熱を奪う冷却部材としての冷却ローラ210が設けられている。冷却ローラ210は熱伝導率の高い材料で形成されており、中間転写ベルト2に接触して回転する。この例では、断熱プレート20と冷却ローラ210を同時に設ける構成としたが、いずれか一方を設ける構成としてもよい。この例によれば、中間転写体である中間転写ベルト2の温度を低減でき、中間転写ベルト2側の熱劣化を抑制できる。また、転写定着部材13の設計上の自由度を大きくすることができる。
中間転写ベルト2から転写定着部材13上に転写されたトナー像Tは、転写定着ニップNで記録用紙Pに定着されるまで、転写定着部材13上において単独で加熱される。トナー像Tのみを予め加熱する過程が十分に得られるので、トナー像Tと記録用紙Pを同時に加熱する従来方式に比べて加熱温度を低くできる。実験の結果、転写定着部材13の温度は、トナー像の溶融温度Tmt+10℃の低温でも十分な画質が得られることが確認された。
トナー像の溶融温度Tmt+50℃未満であると、定着温度が低く抑えるられることにより省エネルギーの観点から好ましい。
転写定着ニップNにて転写定着部材13上に残された転写残トナーや用紙ジャム時に転写定着部材13に残された未定着トナーはクリーニングローラ22により取り除かれる。この場合の転写定着ローラ上のトナー像は加熱され溶融した状態である。クリーニングローラ22表面には複数の凹部が形成されており、その凹部は転写定着部材13巾以上の巾になっている。
クリーニングローラ22表層に用いられる材料は、転写定着部材13に比べ離型性の低い材料が選択されている。
転写定着部材13表層は、離形成に優れたPTFE、PFA、FEPなどのほとんどの水素をフッ素に置換した化学構造のパーフルオロ樹脂から主に選択される。電気的な導電性や耐磨耗性を得るために、これらにカーボンなどの充填材が数%以下含まれていてもよい。この離型性は、水の接触角で表すことができる。接触角は、表面エネルギーと相関があり、表面エネルギーが小さいほど接触角は大きくなる。これらの材料は、最も表面エネルギーが小さな材料であり、110〜115°の値を示すことが知られている。
これに対して、クリーニングローラ22表層は、接触角が70〜95°の材料を用いることが、溶融トナーを加圧部材側に転移させるのには有効であった。PTFE、PFA、FEPに耐磨耗性に優れたカーボン、ガラス繊維やセラミック、摺動性に優れたニ硫化モリブデンなどの充填材を10〜20%加えたもの、機械的強度に優れたETFEなど水素の半分をフッ素に置換した構造のフッ素樹脂により、これらの接触角の材料を得ることは容易である。また、充填材を多く含むことで耐磨耗性が確保され、トナーを掻き取ることによる損耗も同時に抑制され、非常に好適である。接触角が70°以下では、容易にトナーが固着し、掻き取りが困難となる。
図示はしないが、必要によっては、クリーニングローラ22後の転写定着部材13上に中間転写ベルト2への熱周りを防止するための冷却部材が配置される場合がある。
中間転写ベルト2から転写定着部材13に転写された転写定着部材13上のトナー像Tは、転写定着ニップNを通過する記録用紙Pに三次転写されて同時に定着され、記録用紙P上に画像が記録される。その転写定着されるまで、転写定着部材13上において単独で加熱される。トナー像Tのみを予め加熱する過程が十分に得られるので、トナー像Tと記録用紙Pを同時に加熱する従来方式に比べて加熱温度を低くできる。実験の結果、転写定着部材13の温度は、トナーの溶融温度Tmt+10℃の低温でも十分な画質が得られることが確認された。
上述のように、従来のカラー画像形成装置では、十分な光沢を得るために記録用紙による温度低下を考慮して白黒画像形成装置に比べて1.5倍ほどの熱量を与えていた。このため、記録用紙が必要以上に加熱されるとともに、トナーと記録用紙の密着性も必要以上に高められていた。この例では、記録用紙Pを考慮せずに十分な光沢を得るための温度を独立に設定できるので、転写定着部材13の温度(定着設定温度)を低くできる。また、記録用紙Pは、転写定着ニップNのみで加熱されるので過剰に加熱されず、トナー像Tと記録用紙の密着性も必要以上に高められることはない。
図2には、この発明の他例であるタンデム型のカラー複写機の構成を示す。
この図2に示す例では、図1に示すローラ状の転写定着部材13に代えてベルト状の転写定着部材23を使用し、2つのローラ24、25に掛けまわして外側からテンションローラ26を押し当ててなり、加圧部材14を押し当てる三次転写側のローラ25を加熱するIHヒータ27を設けてなる。その他は、図1に示す構成と同様であり、図1の対応部分に使用した符号をそのまま使用して重複説明を省略する。
これにより、転写定着部材23をベルト状とし、像担持体である感光体3B、3C、3M、3Y上に形成したトナー像を中間転写体である中間転写ベルト2に一次転写し、その中間転写ベルト2上のトナー像をベルト状の転写定着部材23に二次転写し、その転写定着部材23上のトナー像を記録用紙Pに三次転写する。
図3には、この発明のさらに他例であるタンデム型のカラー複写機の構成を示す。
カラー複写機1は、装置本体中央部に位置する画像形成部1Aと、その画像形成部1Aの下方に位置する給紙部1Bと、画像形成部1Aの上方に位置する図示しない画像読取部を有している。
画像形成部1Aには、水平方向に延びる転写面を有する転写定着部材として中間転写体である中間転写ベルト2が配置されており、その中間転写ベルト2の上面には、色分解色と補色関係にある色の画像を形成するための構成が設けられている。すなわち、補色関係にある色のトナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)による像を担持可能な像担持体としての感光体3Y、3M、3C、3Bが中間転写ベルト2の転写面に沿って並置されている。
各感光体3Y、3M、3C、3Bはそれぞれ同じ方向(反時計回り方向)に回転可能なドラムで構成されており、その周りには、回転過程において画像形成処理を実行する帯電装置4、光書き込み手段としての書き込み装置5、現像装置6、一次転写装置7、およびクリーニング装置8が配置されている。各符号に付記しているアルファベットは、感光体3と同様、トナーの色別に対応している。各現像装置6には、それぞれのカラートナーが収容されている。
中間転写ベルト2は、駆動ローラ9と、従動ローラ10a、10bに掛け回されて感光体3Y、3M、3C、3Bとの対峙位置において同方向に移動可能な構成を有している。駆動ローラ9と対向する位置には、中間転写ベルト2の表面をクリーニングするクリーニング装置11が設けられている。
感光体3Yの表面が帯電装置4により一様に帯電され、画像読取部からの画像情報に基づいて感光体3Y上に静電潜像が形成される。その静電潜像はイエローのトナーを収容した現像装置6Yによりトナー像として可視像化され、そのトナー像は所定のバイアスが印加される一次転写装置7Yにより転写定着部材である中間転写ベルト2上に一次転写される。他の感光体3M、3C、3Bでもトナーの色が異なるだけで同様の画像形成がなされ、それぞれの色のトナー像が中間転写ベルト2上に順に転写されて重ね合わせられる。
転写後、感光体3上に残留したトナーは、クリーニング装置8により除去される。また、転写後、図示しない除電ランプにより感光体3の電位が初期化され、次の作像工程に備えられる。
従動ローラ10aの近傍には、定着装置12が設けられている。定着装置12は、中間転写ベルト2上の画像としての未定着トナー像を加熱する加熱手段としての加熱ローラ30と、その加熱ローラ30と転写定着ニップNを形成するローラ状の加圧部材14を有している。加熱ローラ30は、アルミニウム等の金属によりパイプ状に形成されている。また、加熱ローラ30の内部には、中間転写ベルト2上の画像を加熱する加熱手段としてのハロゲンヒータ15が設けられている。
給紙部1Bは、記録媒体としての記録用紙Pを積載収容する給紙トレイ16と、その給紙トレイ16内の記録用紙Pを最上のものから順に1枚ずつ分離して給紙する給紙コロ17と、給紙された記録用紙Pを搬送する搬送ローラ対18と、用紙Pが一旦停止され、斜めずれを修正された後、転写定着部材13上の画像の先端と搬送方向の所定位置とが一致するタイミングで転写定着ニップNに向けて送り出されるレジストローラ対19を有している。
感光体3Y、3M、3C、3Bから転写定着部材である中間転写ベルト2上に一次転写されたトナー像Tは、転写定着ニップNを通過する記録用紙Pに二次転写されて同時に定着され、記録用紙P上に画像が記録される。その転写定着されるまで、中間転写ベルト2上において単独で加熱される。トナー像Tのみを予め加熱する過程が十分に得られるので、トナー像Tと記録用紙Pを同時に加熱する従来方式に比べて加熱温度を低くできる。実験の結果、加熱ローラ30の温度は、トナーの溶融温度Tmt+10℃の低温でも十分な画質が得られることが確認された。
上述のように、従来のカラー画像形成装置では、十分な光沢を得るために記録用紙による温度低下を考慮して白黒画像形成装置に比べて1.5倍ほどの熱量を与えていた。このため、記録用紙が必要以上に加熱されるとともに、トナーと記録用紙の密着性も必要以上に高められていた。この例では、記録用紙Pを考慮せずに十分な光沢を得るための温度を独立に設定できるので、転写定着部材13の温度(定着設定温度)を低くできる。また、記録用紙Pは、転写定着ニップNのみで加熱されるので過剰に加熱されず、トナー像Tと記録用紙の密着性も必要以上に高められることはない。
この例によれば、低温定着が可能でウォームアップ時間を短くでき、省エネルギー効果を高めることができる。また、中間転写体である中間転写ベルト2への熱移動を抑制できるので耐久性を向上させることができる。また、中間転写ベルト2の温度を低減でき、中間転写ベルト2側の熱劣化を抑制できる。そのための転写定着部材13の表面温度T1は、Tmt+50以下となる。
以上のように、この例における定着装置12は、それ自体が未定着トナー像の被転写機能を有するものであり、未定着トナー像を保持した記録用紙を単に加熱かつ加圧する従来の定着装置に対し、「転写型定着装置」として位置付けられるものである。
前述した図5に表される従来の定着装置を用いた場合、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立を図るために一般的な方法としては、例えば、分子量分布の広いバインダー樹脂を用いる方法、また、分子量が数十万・数百万の高分子成分と、分子量が数千から数万の低分子成分の、少なくとも2つの分子量ピークを有するような樹脂を混合して使用し、それぞれの成分の機能を分離させる方法などがある。高分子成分は、架橋構造を持っているかゲルの状態であると、ホットオフセットにはより効果的である。一方、透明性・光沢性などを実現するためには、分子量はなるべく小さく、分子量分布はシャープであることが好ましく、上記の方法でだけではこれら相反する特性を両立することは難しいとされている。
しかし、この発明に係る画像形成装置にあっては、定着装置において、転写定着部材上のトナー像、記録媒体、定着部材の温度履歴が従来の定着装置を用いた場合と大きく異なり、転写定着部材上のトナー像は十分加熱されて転写定着部材の表面温度とほぼ同一な温度まで均一に加熱され、さらに転写定着部材から記録媒体への熱損失がきわめて少なく、加熱されたトナー像は記録媒体との接触により急冷される特徴を持っている。したがって、従来の定着装置におけるトナーの必要特性とは明らかに違った特性が必要とされることが明らかになった。
この発明に係る画像形成装置で用いる定着装置では、ハイライト領域においては、転写定着率が低く、粒状性が悪い。すなわち、記録媒体へトナーが十分には移行しにくく、通常行われている静電転写方式と比較して、画像の劣化が改善されておらず、時には悪化している。
上述したハイライト再現性に関する転写定着同時方式の問題の原因を追求すると、ハイライト領域においては、トナーがまばらに配置されており、記録媒体である記録用紙の表面の凹凸などによりまばらなトナーに転写定着時のエネルギーが伝わりにくく、またトナー同士の凝集も行われにくく、記録媒体へトナーが十分には移行しにくくなっている。転写定着同時方式を用いて高品質なハイライト画像を得るためには、ハイライト領域においても、粉体である個々のトナーが集合して画素をつくっていることが重要であることを確認した。これは、トナーが集合していると、紙表面の凹凸などに影響されず、転写定着時のエネルギーが伝わりやすいことと、トナー同士の融着、凝集力が働くことによる。
従来の特許文献1や3では、溶融状態のトナーへの毛細管力による流動に基づく画像の乱れを考慮し、溶融状態から転写定着までのトナー粘度を規定している。しかしながら、この発明のニップ時間を30ms以下とした画像形成装置においては、加熱されたトナー像は記録媒体との接触において冷却途中で記録媒体から分離されるため毛細管力による流動は発生せず、この発明者らによれば、ハイライト領域での十分な転写性を得るためには、転写定着部材上のトナー像は十分に溶融していなければならず、かつトナー溶融状態の微小ドット内に粘度バラツキがないことが求められる。溶融したトナー中に微小な高粘度体が認められると、一部が転写定着部材に残留し、結果ハイライトの再現性の低下、転写定着部材への汚染が発生する。
また、トナー上層、トナー下層、紙上層温度とは、実際のトナーと紙との界面の温度が測定困難なため、差分法を用いた1次元の伝熱シミュレーションにより求めた理論計算値である。
以下に理論計算による各温度の算出方法について説明する。
1次元の非定常熱伝導方程式は、以下の数式1(フーリエの法則)で示される。
ここで、T、t、x、λ、ρ、cは、それぞれ温度、時間、距離、熱伝導率、比重、比熱である。
この数式1から、空間離散化を行い、以下の差分方程式が求められる。
ここで、hは各格子間の距離、τは微小時間であり、上記数式2より時刻tにおける微小距離なhを隔てて隣接する3つの格子点x−h、x、x+hでの温度Tが既知であるなら、時刻τだけ進んだときの温度T(x,t+τ)が求まる。
上記数式2は同一物質内での差分方程式であるが、異なる物質a,bが接している境界上での差分方程式は同様に求められ、以下の数式3となる。
その他の解析条件は、以下のとおりである。
軸方向および周方向の熱の移動は無視し、厚み方向のみの熱移動を考える(1次元)。
トナー層は転写定着は紙接触前にフィルム化しているため、粉体としてのトナーに比べ厚さは半分、比重は2倍、熱伝導率も2倍とする。比較した従来定着では0.04s後にフィルム化していることが確認できたため、初期から直線的に厚さ、比重、熱伝導率が変化するものとして計算した。
上記計算方法により、定着ニップ部に突入する直前の定着ベルト、定着ローラ、加圧ローラ、トナー、記録紙、および雰囲気温度を時刻t=0の時の初期条件として計算を行えば、任意の時間τ後の各部の温度を計算できる。
なお、上記計算方法はトナー・紙界面温度を求めるための一例であり、上記の方法に限定されるわけではない。上記方法は差分方程式の陽解法であるが、例えば差分方程式の陰解法を用いても良い。また、2次元に拡張し、さらに計算精度を向上させるようにしても問題ない。また、伝熱シミュレーションではなく、各種実験結果からトナー・紙界面温度を経験的に推測してもよい。
この結果をグラフに示すと、図7のようになるが、転写定着はトナー層全体で温度が低下しながら定着する。従来定着では、その逆であって温度が低い温度から上昇しながら定着する。特に、この差が大きいのは、ニップ時間30ms以下、さらに顕著なのは20ms以下であり、10〜20msがさらに好ましい。
また、ニップ時間を変えてホットオフセットの発生有無を調べた結果と対比して、ニップ時間とオフセット発生のメカニズムを考察すると、上記にニップ時間範囲では従来定着ではトナー下面が軟化変形し紙に投錨する温度まで上昇していないため、ホットオフセットが発生する。一方、転写定着ではこの領域であってもトナー下面が軟化変形し紙に投錨する温度に上昇しているため、ホットオフセットが発生しない。
この発明に係る画像形成装置で使用されるトナーは、少なくともGPCにより測定される分子量分布で分子量5,000〜15,000の領域にメインピークを有し、分子量30,000以上の成分を含有せず、かつMw/Mnの値が2以上6以下である目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知のバインダー樹脂が挙げられる。
例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体の単重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、 スチレン−アクリロニトリル共重合体、 スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレンーイソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体が挙げられる。
また、下記の樹脂を混合して使用することもできる。ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられる。
この中で特に、ポリエステル樹脂が十分な定着性を得るために、好ましい。ポリエステル樹脂は、元来低温定着性に優れた性能を有しているため、フィルム加熱方式の加熱定着装置との組み合わせにおいて優れた低温定着性を示し、光沢性にも優れている。
ポリエステル樹脂は、アルコールとカルボン酸との縮重合によって得られるが、用いられるアルコールとはポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等のジオール類、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリエキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノル類、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価のアルコール単体、その他の2価のアルコール単体を挙げることができる。
また、ポリエステル樹脂を得るために用いられるカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマール酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価の有機酸単量体、これらの酸無水物、低級アルキルエステルとリノレイン酸の2量体、その他の2価の有機酸単量体を挙げることができる。
バインダー樹脂として用いるポリエステル樹脂を得るためには、以上の2官能性単量体のみによる重合体のみでなく、3官能以上の多官能性単量体による成分を含有する重合体を用いることも好適である。かかる多官能性単量体である3価以上の多価アルコール単量体としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−サルビタン、ペンタエスリトール、ジペンタエスリトール、トリペンタエスリトール、蔗糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1.3.5−トリヒドロキシメチルベンゼン、その他を挙げることができる。
また、3価以上の多価カルボン酸単量体としては、例えば1,2,4−ペンゼントリカルボン酸、1,2,5−ペンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンボール3量体酸、これらの酸無水物、その他を挙げることができる。
また、トナーバインダーとして含有するポリエステル樹脂は、変性ポリエステルを使用することも可能である。変性ポリエステル(MPE)とは、ポリエステル樹脂中に前記酸、アルコールのモノマーユニットに含まれる官能基とエステル結合以外の結合基が存在し、またポリエステル樹脂中に構成の異なる樹脂成分が共有結合、イオン結合などで結合した状態をさす。例えば、ポリエステル末端をエステル結合以外のもので反応させたもの、具体的には末端に酸基、水酸基と反応するイソシアネート基などの官能基を導入し、活性水素化合物とさらに反応させ末端を変性したり伸長反応させたりしたものも含まれる。さらに、活性水素基が複数存在する化合物であれば、ポリエステル末端同士を結合させたものも含まれる(ウレア変性ポリエステル、ウレタン変性ポリエステルなど)。また、ポリエステル主鎖中に二重結合などの反応性基を導入し、そこからラジカル重合を起こして側鎖に炭素−炭素結合のグラフト成分を導入したり二重結合同士を橋かけしたりしたものも含まれる(スチレン変性、アクリル変性ポリエステルなど)。また、ポリエステルの主鎖中に構成の異なる樹脂成分を共重合させたり末端のカルボキシル基や水酸基と反応させたりしたもの、例えば末端がカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、メルカプト基によって変性されたシリコーン樹脂と共重合させたものも含まれる(シリコーン変性ポリエステルなど)。
トナーバインダーである樹脂の分子量は、以下のようにして測定することができる。すなわち、前記樹脂微粒子約1gを三角フラスコで精評した後、THF(テトラヒドロフラン)10〜20gを加え、樹脂濃度5〜10%のTHF試料溶液とする。次に、40℃のヒートチャンバー内でカラムを安定させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを1ml/minの流速で流し、前記THF試料溶液20μlを注入する。そして、試料の重量平均分子量(Mw)は、単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とリテンションタイムとの関係から算出することができる。前記検量線は、ポリスチレン標準試料を用いて作成される。なお、前記単分散ポリスチレン標準試料としては、例えば東ソー社製の分子量2.7×102〜6.2×106の範囲のものを使用することができる。また、前記検出器としては、屈折率(RI)検出器を使用することができる。前記カラムとしては、例えば、東ソー社製のTSKgel、G1000H、G2000H、G2500H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、GMHなどが挙げられる。
GPCの測定データの一例を図4に示す。
この発明で用いられるトナーは、分子量分布で分子量5,000〜15,000の領域にメインピークを有することで、短時間の転写定着で、十分に溶融したドット状態を形成する。分子量5,000未満では、定着後の画像耐熱性が著しく低下する。よって、好ましくは8,000以上であるとよい。分子量が15,000より大きいと転写定着部材の条件設定にもよるが、熱応答性が不十分となり、転写定着部材上で十分に溶融しない成分が発生し、記録媒体へのアンカー効果が不十分となる。よって、好ましくは12,000以下であるとよい。さらに、分子量30,000以上の成分を含まないことにより、溶融ドット内に高粘度成分、ゲル状成分が発生せず、優れた転写性を実現できる。
以上のとおり、分子量30,000以上の成分を含まないことが好ましく、この発明における「分子量30,000以上の成分が0.05%以下である」とは、前記GPCの測定誤差も踏まえ、分子量30,000以下の成分が0.05%以下の場合は、分子量30,000以上の成分を含まないといえるからである。
また、この発明で用いられるトナーのMw/Mnの値は、2以上6以下であり、2以上5以下が好ましい。そこで、分子量分布をシャープにすることで、溶融ドット内の粘度を均一に保てるだけでなく、透明性、光沢性にも優れた画像を得ることが可能となる。
この発明において、高速、省エネルギーを達成すべく、トナーの溶融温度は、80〜140℃が好ましい。80℃未満では、画像の耐熱保存性が悪化するおそれがあり、140℃を超えると記録媒体への熱影響付与や、省エネルギーの観点からも好ましくない。また、トナーのガラス転移点(Tg)は、通常50〜80℃、好ましくは55〜65℃である。50℃未満ではトナーの耐熱性が悪化する場合があり、装置内の温度上昇によって現像部などへの固着が発生する。80℃を超えると低温定着性が不十分となるおそれがある。
請求項12における可塑剤は、加熱時に前記樹脂と相溶可能なその樹脂の可塑剤である。前記可塑剤の融点(Tm)としては、保存時に前記樹脂と前記可塑剤とが独立して存在した状態(相溶していない状態)におかれることにより優れた耐熱保存性を有し、定着時の加熱により、前記樹脂と前記可塑剤とが速やかに相溶し、高いレベルでの低温定着性を実現することができる点で、30℃以上120℃未満であるのが好ましく、60℃以上80℃未満であるのがより好ましい。前記融点(Tm)が30℃未満であると、耐熱保存性に劣り、120℃以上であると、加熱時の相溶性が不十分となり、十分な貯蔵弾性率変動が得られない。
前記可塑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪酸エステル、フタル酸等の芳香族酸のエステル、燐酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、イタコン酸エステル、その他エステル、ベンジル、ベンゾイン化合物、ベンゾイル化合物等のケトン類、ヒンダードフェノール化合物、べンゾトリアゾール化合物、芳香族スルホンアミド化合物、脂肪族アミド化合物、長鎖アルコール、長鎖ジアルコール、長鎖カルボン酸、長鎖ジカルボン酸、などが挙げられる。
具体的には、ジメチルフマレート、モノエチルフマレート、モノブチルフマレート、モノメチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジフェニルアジペート、ジベンジルテレフタレート、ジベンジルイソフタレート、ベンジル、ベンゾインイソプロピルエーテル、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、2−ベンゾイルナフタレン、ジベンゾイルメタン、4−ビフェニルカルボキシリックアシッド、ステアリルステアリン酸アミド、オレイルステアリン酸アミド、ステアリンオレイル酸アミド、オクタデカノール、n−オクチルアルコール、テトラコサン酸、エイコサン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ノナデカン酸、パルミチン酸ヒドロキシオクタン酸、ドコサン酸、特開2002−105414号公報に記載の一般式(1)〜(17)の化合物、等が挙げられる。
前記可塑剤は、前記トナー中に分散状態で含まれるのが好ましく、その可塑剤の分散径としては、最大方向の粒径で、例えば、10nm〜3μmが好ましく、50nm〜1μmがより好ましい。
前記分散径が10nm未満であると、可塑剤と樹脂の接触表面積の増大により、耐熱保存性に劣ることがあり、3μmを超えると、定着時の加熱の際に前記樹脂との相溶が十分に行われず、低温定着性に劣ることがある。
前記可塑剤の分散径の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、トナーをエポキシ樹脂に包埋して約100μmに超薄切片化し、四酸化ルテニウムにより染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM)により倍率10,000倍で観察を行い、写真撮影し、この写真を画像評価することにより、前記可塑剤の分散状態を観察し、前記分散径を測定することができる。なお、前記可塑剤の分散体が粒子中に存在しているのが確認された場合、前記可塑剤は前記トナー中に分散状態で含まれていないと判断することができる。
前記可塑剤の溶解度としては、例えば、25℃以下の有機溶剤に対する溶解度が1質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%以下であるのがより好ましい。前記溶解度が1質量%を超えると、前記樹脂と前記可塑剤とが、後述するトナーの製造方法において、製造中に相溶してしまうことがある。
また、前記可塑剤の溶解度としては、例えば、60℃以上の有機溶剤に対する溶解度が5質量%以上であるのが好ましく、20質量%以上であるのがより好ましい。前記溶解度が5質量%未満であると、加熱により、前記可塑剤が前記有機溶剤に溶解しないため、前記トナー中での分散状態が悪くなることがある。
前記可塑剤の前記有機溶剤に対する溶解度は、各測定温度において、前記有機溶剤100gに対して前記可塑剤が溶解した量(g)を測定することにより求めることができる。
前記可塑剤の前記トナーにおける含有量としては、低温定着性と耐熱保存性とを両立し、帯電性、解像度等のトナー特性を高いレベルで維持することができる点で、5〜30質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。前記含有量が5質量%未満であると、低温定着性に劣ることがあり、30質量%を超えると、トナー表面における可塑剤の面積が増大し、流動性に劣ることがある。
また、請求項13における結晶性ポリエステル樹脂は、加熱時に前記樹脂と相溶可能な結晶性樹脂である。前記結晶性樹脂のガラス転移点(Tg)としては、保存時に前記樹脂と前記可塑剤とが独立して存在した状態(相溶していない状態)におかれることにより優れた耐熱保存性を有し、定着時の加熱により、前記樹脂と前記可塑剤とが速やかに相溶し、高いレベルでの低温定着性を実現することができる点で、60℃以上140℃未満であるのが好ましい。前記融点(Tm)が60℃未満であると、耐熱保存性に劣り、140℃以上であると、トナーの低温定着性が悪化と共に加熱時の相溶性が不十分となり、十分な貯蔵弾性率変動が得られない。
また、トナーの造粒方法に粉砕法を用いた場合、混錬工程にて条件を規定しても一部が相溶することで耐熱性が低下するため、その場合結晶性樹脂単体でのガラス転移点(Tg)は100℃以上が好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコール単位およびカルボン酸単位を含む、−OCOC−R−COO−(CH2)n−(但し、式中、Rは炭素数2〜20の直鎖状不飽和脂肪族基を示し、nは2〜20の整数を示す。)で表される構造を少なくとも樹脂全体における全エステル結合の60モル%含有する。なお、前記式中、Rは、好ましくは、直鎖状不飽和脂肪族二価カルボン酸残基を示し、炭素数2〜20であり、より好ましくは2〜4の直鎖状不飽和脂肪族基である。nは、好ましくは、2〜6の整数である。
前記直鎖状不飽和脂肪族基の具体例としては、マレン酸、フマル酸、1,3−n−プロペンジカルボン酸、1,4−n−ブテンジカルボン酸等の直鎖状不飽和二価カルボン酸由来の直鎖状不飽和脂肪族基を挙げることができる。
前記(CH2)nは、直鎖状脂肪族二価アルコール残基を示す。この場合における直鎖状脂肪族二価アルコール残基の具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の直鎖状脂肪族二価アルコールから誘導されたものを示すことができる。結晶性ポリエステル樹脂は、カルボン酸単位として、直鎖状不飽和脂肪族ジカルボン酸単位を用いたことから、芳香族ジカルボン酸単位を用いた場合に比べて結晶構造を形成し易いという作用効果を示す。
結晶性ポリエステル樹脂は、(1)直鎖状不飽和脂肪族二価カルボン酸またはその反応性誘導体(酸無水物、炭素数1〜4の低級アルキルエステル酸ハライド等)からなる多価カルボン酸単位と、(2)直鎖状脂肪族ジオールからなる多価アルコール単位とを、常法により重縮合反応させることによって製造することができる。この場合、多価カルボン酸単位には、必要に応じ、少量の他の多価カルボン酸単位が含有されていてもよい。この場合の多価カルボン酸単位には、(1)分岐鎖を有する不飽和脂肪族二価カルボン酸単位、(2)飽和脂肪族二価カルボン酸や、飽和脂肪族三価カルボン酸等の飽和脂肪族多価カルボン酸単位の他、(3)芳香族二価カルボン酸や芳香族三価カルボン酸等の芳香族多価カルボン酸単位等が包含される。これらの多価カルボン酸単位の含有量は、全カルボン酸に対して、通常、30モル%以下、好ましくは10モル%以下であり、得られるポリエステルが結晶性を有する範囲内で適宜添加される。
必要に応じて添加することができる多価カルボン酸単位の具体例を示すと、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シトラコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の二価カルボン酸単位;無水トリメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸等の三価以上の多価カルボン酸単位等を挙げることができる。
前記多価アルコール単位には、必要に応じ、少量の脂肪族系の分岐鎖二価アルコール単位や環状二価アルコール単位の他、三価以上の多価アルコール単位が含まれていてもよい。その含有量は、全アルコール単位に対して、30モル%以下、好ましくは10モル%以下であり、得られるポリエステルが結晶性を有する範囲内で適宜添加される。
必要に応じて添加される多価アルコール単位を例示すると、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン単位、ポリエチレングリコール単位、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物単位、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物単位、グリセリン単位等が挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂において、その分子量分布は、低温定着性の点から、シャープであるのが好ましく、また、その分子量は、比較的低分子量であるのが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の分子量は、そのo−ジクロルベンゼン可溶分のGPCによる分子量分布において、その重量平均分子量(Mw)が5500〜6500、その数平均分子量(Mn)が1300〜1500およびそのMw/Mn比が2〜5であることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂において、ガラス転移温度(Tg)および軟化温度〔T(F1/2)〕は、トナーの耐熱保存性が悪化しない範囲で低いことが望ましいが、一般的には、ガラス転移温度は80〜140℃、好ましくは80〜125℃であり、その軟化温度は80〜140℃、好ましくは80〜125℃である。ガラス転移温度および軟化温度が前記範囲より高くなると、トナーの定着下限温度が高くなるため、トナーの低温定着性が悪化するからである。
トナーの酸価は、30〜50mgKOH/gが好ましい。酸価を持たせることで主に紙である記録媒体の親和性が増大し、ニップ時間が短い場合でも十分なアンカー効果を発生する。酸価が30以下であると転写定着不良が発生しやすくなり、酸価が50より大きくなるとトナーの負帯電性が高くなり現像器内でのチャージアップ、中間転写体への一次転写時に転写チリが発生しやすいなどの静電的な不具合が発生しやすくなす。
また、トナーバインダー、着色剤とともに、ワックスを含有させることが好ましい。ワックスとしては、公知のものが使用でき、ライスワックス、木ロウなどの植物系ワックス、ミツロウなどの動物系ワックス、モンタンワックス等の鉱物系ワックス、およびパラフィン等の石油ワックス、その他ポリオレフィンワッックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);長鎖炭化水素(パラフィンワックス、サゾールワックスなど)、酸アミド、合成エステルワックス等が挙げられる。これらのうち特に好ましいものは、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、みつロウ、などの植物系ワックスである。これらの植物系ワックスが特に好適なのは、ポリエステル樹脂と適度に分散すること、さらに、融点が60℃〜110℃でポリエステル樹脂のTgおよび軟化点との関係がしみ出しに効果的であること、などの理由による。
ワックスの融点Twは、通常40〜160℃であり、好ましくはトナーバインダー樹脂のTg(Tgt)以上、トナーバインダーの溶融温度(Tmt)以下である。融点がTgt未満のワックスは耐熱保存性に悪影響を与える場合があり、Tmtを超えるワックスは低温での定着時のコールドオフセットに対し効果を発生しない。また、ワックスの溶融粘度は、融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1000cpsが好ましく、さらに好ましくは10〜100cpsである。1000cpsを超えるワックスは、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果に乏しい。トナー中のワックスの含有量は、通常5〜40重量%であり、好ましくは5〜30重量%である。30重量%を超えると、トナー表面にワックスが露出しやすく、トナー流動性で問題となる場合がある。植物系ワックスの分子量は、Waters社製GPCにて測定した結果、重量平均分子量は400〜5,000が好適であり、5,000を超えるとワックスの分散粒径が大きくなり、透明性や新たなキャリア汚染、感光体付着が発生する可能性がある。400未満では、トナーの耐熱保存低下につながるおそれがある。分子量については、ワックスとポリエステル樹脂との分散性において適度なワックス分散性のもとワックスの分散粒径として0.1〜1.5μmが達成できる。
この発明で用いられるトナーは、流動性、現像性、転写性を補助するための外添剤として無機微粒子を好ましく用いることができる。この無機微粒子の一次粒子径は、5nm〜200nmであることが好ましく、特に10nm〜150nmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5重量%であることが好ましく、特に0.01〜2.0重量%であることが好ましい。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。この他、高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
このような流動化剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、着色剤、離型剤、帯電制御剤、無機微粒子、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、金属石鹸、等が挙げられる。
前記着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料および顔料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記着色剤の前記トナーにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。
前記含有量が、1質量%未満であると、トナーの着色力の低下が見られ、15質量%を超えると、トナー中での顔料の分散不良が起こり、着色力の低下、およびトナーの電気特性の低下を招くことがある。
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、スチレンまたはその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記スチレンまたはその置換体の重合体としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン、等が挙げられる。前記スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体、等が挙げられる。
前記マスターバッチは、前記マスターバッチ用樹脂と、前記着色剤とを高せん断力をかけて混合または混練させて製造することができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を添加することが好ましい。また、いわゆるフラッシング法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がない点で好適である。このフラッシング法は、着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合または混練し、着色剤を樹脂側に移行させて水分および有機溶剤成分を除去する方法である。前記混合または混練には、例えば、三本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に用いられる。
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のもの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体またはその化合物、タングステンの単体またはその化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記帯電制御剤は、市販品を使用してもよく、その市販品としては、例えば、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物、等が挙げられる。
前記帯電制御剤の前記トナーにおける含有量としては、前記樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法等により異なり、一概に規定することができないが、用いるとすれば、前記結着樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。含有量が、0.1質量部未満であると、狙いの帯電制御性が得られないことがあり、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させて、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
この発明のトナーとしては、懸濁重合法、乳化重合法、溶解懸濁法等の公知の方法を使用して製造することができ、例えば、トナー材料の溶解乃至分散液を水系媒体中に乳化乃至分散させて乳化乃至分散液を調製した後トナーを造粒することにより得ることができる。
また、ピエゾ素子や振動オリフィスを用いた噴霧造粒法を使用して製造することができる。
ここで、この発明の前記トナーを製造する際の温度としては、例えば、10〜80℃が好ましく、20〜60℃がより好ましい。前記製造温度が80℃を超えると、加熱により構成材料同士が相溶し、低温定着性と耐熱保存性との両立を図ることができないことがある。
この発明で用いられるトナーは、高画質を得るため、また転写定着部材上のトナー像内のトナー粒子間のギャップを小さくするため、体積平均粒径は3〜10μmが好ましく、4〜6μmがより好ましい。また、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)との比Dv/Dpは1.05〜1.25が好ましく、1.05〜1.15がより好ましい。また、トナーの平均円形度は0.90〜1.00が好もしく、0.94〜0.97がより好ましい。このようなトナーを用いることにより、より高画質で安定した定着性を達成できる。
この発明の画像形成装置に用いられる現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができ、以下のこの発明のトナー入り容器、プロセスカートリッジ、画像形成装置および画像形成方法に特に好適に用いることができる。
以下に、この発明の実施例を説明する。
[トナーA〜Dの作成]
表2に記載の分子量分布、ガラス転移点、溶融温度を示すポリエステル樹脂A〜Dを入手した。
次に、実験評価を行うにあたり、各ポリエステル樹脂AからDのそれぞれ100重量部に対し、カーボンブラック顔料5重量部、離型剤としてカウルナバワックスとライスワックスの混合体(セラリカ野田社製、融点84℃)20重量部を溶融混錬し、ジェットミルにて重量平均粒径5〜6μm、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)との比Dv/Dpが1.05〜1.15、円形度0.90〜0.93に粉砕分級した後、適切な流動性、転写性、帯電性を付与するために外添剤を調整混合し、トナーA〜Dを得た。
[トナーE〜Hの作成]
さらに、離型剤をエステルワックス(日本油脂社製、融点82℃)5重量部にした以外は、トナーA〜Dと同じトナーE〜Hを作成した。
[トナーIの作成]
−トナー材料の溶解乃至分散液の調製−
−−未変性ポリエステル(低分子ポリエステル)の合成−−
冷却管、攪拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物67質量部、ビスフェノールAプロピオンオキサイド3モル付加物84質量部、テレフタル酸274質量部、およびジブチルチンオキサイド2質量部を投入し、常圧下、230℃にて8時間反応させた。次いで、その反応液を10〜15mmHgの減圧下にて5時間反応させて、未変性ポリエステルを合成した。
得られた未変性ポリエステルは、Tg58.2℃、Tm96.4℃、分子量ピーク5,600、分子量3000以上成分0%、Mw/Mn 4.2であった。
−−マスターバッチ(MB)の調製−−
水1000質量部、およびカーボンブラック(「Printex35」;デグサ社製、DBP吸油量=42ml/100g、pH=9.5)540質量部、および前記未変性ポリエステル1200質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合した。その混合物を二本ロールで150℃にて30分混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で粉砕して、マスターバッチを調製した。
−−可塑剤分散液の調製−−
前記可塑剤としてのポリエチレングリコールジエステル(松本油脂社製 融点=66℃)200質量部、ポリエステル樹脂400質量部、および酢酸エチル800質量部を混合し、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」;アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、および0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で5分循環して可塑剤の分散を行い、可塑剤分散液を調製した。
−−トナー材料の溶解乃至分散液の調製−−
ビーカー内に、前記未変性ポリエステル75質量部、酢酸エチル130質量部、および前記可塑剤分散液100質量部を入れ、攪拌し溶解させた。次いで、カルナウバワックス(分子量=1,800、酸価=2.5、針入度=1.5mm(40℃))10質量部、および前記マスターバッチ10質量部を仕込み、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」;アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、および0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして原料溶解液を調製し、トナー材料の溶解乃至分散液を調製した。
−水系媒体相の調製−
イオン交換水306質量部、リン酸三カルシウム10質量%懸濁液265質量部、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2質量部を混合撹拌し、均一に溶解させて水系媒体相を調製した。
−乳化乃至分散液の調製−
前記水系媒体相150質量部を容器に入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用い、回転数12,000rpmで攪拌し、これに前記トナー材料の溶解乃至分散液100質量部を添加し、10分間混合して乳化乃至分散液(乳化スラリー)を調製した。
−有機溶剤の除去−
攪拌機および温度計をセットしたコルベンに、前記乳化スラリー100質量部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら30℃にて12時間脱溶剤した。
−洗浄・乾燥−
前記分散スラリー100質量部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液20質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて30分間)した後減圧濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行った。さらに得られた濾過ケーキに10質量%塩酸20質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行い、最終濾過ケーキを得た。
得られた最終濾過ケーキを循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、トナー母体粒子Aを得た。このトナーの体積平均粒径は5.3ミクロンで体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)との比Dv/Dpが1.15、円形度0.98であった。さらに、適切な流動性、転写性、帯電性を付与するために外添剤を調整混合し、トナーIを得た。
[トナーJの作成]
トナーIにおける可塑剤分散液を、下記の結晶性ポリエステル樹脂分散液にした。
−−結晶性ポリエステル樹脂Aの合成−−
フマル酸(モル比88.6)、コハク酸(モル比4.9)、無水トリメリット酸(モル比6.5)、1,4ブタンジオール(モル比100)からなる組成物4000gとハイドロキノン4gを、温度計、攪拌器、コンデンサーおよび窒素ガス導入管を備えた容量5リットルの4つ口丸底フラスコ内に入れ、このフラスコをマントルヒーターにセットし、窒素ガス導入管より窒素ガスを導入してフラスコ内を不活性雰囲気下に保った状態で昇温し、160℃に保って5時間、続いて200℃で1時間反応させたのち、8.3kPaにて1時間反応させ、結晶性ポリエステルを得た。
この結晶性ポリエステル樹脂Aは、ガラス転移点118℃、分子量ピーク6400であった。
−−結晶性ポリエステル樹脂分散液の調製−−
前記結晶性ポリエステル樹脂A200質量部、ポリエステル樹脂400質量部、および酢酸エチル800質量部を混合し、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」;アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、および0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で5分循環して結晶性ポリエステルの分散を行い、結晶性ポリエステル分散液を調製した。
以外は、トナー母体粒子Iと同様にしてトナー母体粒子Jを得た。このトナー母体粒子の体積平均粒径は、5.5ミクロンで体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)との比Dv/Dpが1.17、円形度0.98であった。さらに、適切な流動性、転写性、帯電性を付与するために外添剤を調整混合し、トナーJを得た。
[トナーKの作成]
ビーカー内に、スチレンアクリル共重合体(Tg59.2℃、酸価30、分子量ピーク11000、Mw/Mn4.5)100重量部、酢酸エチル130質量部を入れ、攪拌して溶解させた。次いで、カルナウバワックス(分子量=1,800、酸価=2.5、針入度=1.5mm(40℃))7質量部、および前記マスターバッチ10質量部を仕込み、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」;アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、および0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして原料溶解液を調製し、トナー材料の溶解乃至分散液を調製した。
前記トナー材料の溶解乃至分散液を、ピエゾ式吐出方式を有する噴霧乾燥機にて噴霧造粒しトナー母体粒子Kを得た。このトナー母体粒子の体積平均粒径は5.5ミクロンで体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)との比Dv/Dpが1.05、円形度0.99であった。さらに、適切な流動性、転写性、帯電性を付与するために外添剤を調整混合し、トナーKを得た。
[トナーLの作成]
<接着性基材生成工程>
−トナー材料の溶解乃至分散液の調製−
−−未変性ポリエステル(低分子ポリエステル)の合成−−
冷却管、攪拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物67質量部、ビスフェノールAプロピオンオキサイド3モル付加物84質量部、テレフタル酸274質量部、およびジブチルチンオキサイド2質量部を投入し、常圧下、230℃にて8時間反応させた。次いで、その反応液を10〜15mmHgの減圧下にて5時間反応させて、未変性ポリエステルを合成した。
得られた未変性ポリエステルは、分子量ピーク5,600、ガラス転移温度(Tg)が58℃であった。
−−マスターバッチ(MB)の調製−−
水1000質量部、およびカーボンブラック(「Printex35」;デグサ社製、DBP吸油量=42ml/100g、pH=9.5)540質量部、および前記未変性ポリエステル1200質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合した。その混合物を二本ロールで150℃にて30分混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で粉砕して、マスターバッチを調製した。
−−プレポリマーの合成−−
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81質量部、テレフタル酸283質量部、無水トリメリット酸22質量部、およびジブチルチンオキサイド2質量部を仕込み、常圧下で、230℃にて8時間反応させた。次いで、10〜15mHgの減圧下で、5時間反応させて、中間体ポリエステルを合成した。
得られた中間体ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,100、重量平均分子量(Mw)が9,600、ガラス転移温度(Tg)が55℃、酸価が0.5、水酸基価が49であった。
次に、冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、前記中間体ポリエステル411質量部、イソホロンジイソシアネート89質量部、および酢酸エチル500質量部を仕込み、100℃にて5時間反応させて、プレポリマー(前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体)を合成した。
得られたプレポリマーの遊離イソシアネート含有量は、1.60質量%であり、プレポリマーの固形分濃度(150℃、45分間放置後)は50質量%であった。
−−ケチミン(前記活性水素基含有化合物)の合成−−
撹拌棒および温度計をセットした反応容器中に、イソホロンジアミン30質量部およびメチルエチルケトン70質量部を仕込み、50℃にて5時間反応を行い、ケチミン化合物(前記活性水素基含有化合物)を合成した。
得られたケチミン化合物(前記活性水素機含有化合物)のアミン価は423であった。
−−ケチミン(前記活性水素基含有化合物)の合成−−
撹拌棒および温度計をセットした反応容器中に、イソホロンジアミン30質量部およびメチルエチルケトン70質量部を仕込み、50℃にて5時間反応を行い、ケチミン化合物(前記活性水素基含有化合物)を合成した。
得られたケチミン化合物(前記活性水素機含有化合物)のアミン価は423であった。
−水系媒体相の調製−
イオン交換水306質量部、リン酸三カルシウム10質量%懸濁液265質量部、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2質量部を混合撹拌し、均一に溶解させて水系媒体相を調製した。
−乳化乃至分散液の調製−
前記水系媒体相150質量部を容器に入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用い、回転数12,000rpmで攪拌し、これに前記トナー材料の溶解乃至分散液100質量部を添加し、10分間混合して乳化乃至分散液(乳化スラリー)を調製した。
−有機溶剤の除去−
攪拌機および温度計をセットしたコルベンに、前記乳化スラリー100質量部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら30℃にて12時間脱溶剤した。
−洗浄・乾燥−
前記分散スラリー100質量部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液20質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて30分間)した後減圧濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行った。さらに得られた濾過ケーキに10質量%塩酸20質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を2回行い、最終濾過ケーキを得た。
得られた最終濾過ケーキを循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、トナー母体粒子Lを得た。このトナーの体積平均粒径は5.5ミクロンで体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)との比Dv/Dpが1.15、円形度0.98であった。さらに、適切な流動性、転写性、帯電性を付与するために外添剤を調整混合し、トナーLを得た。
--トナーMの作成--
結晶性ポリエステル樹脂A………15部
非結晶性ポリエステル樹脂
(花王社製 Tg63.6℃ Tm106.1℃)………35部
非結晶性ポリエステル樹脂
(花王社製 Tg59.8℃ Tm149.2℃)………40部
脱遊離脂肪酸型カルナウバワックス(ガラス転移温度83℃)………5部
カーボンブラック(三菱化学 #44)………10部
上記のトナー構成材料をヘンシェルミキサー中で十分撹拌混合した後、2軸押出し機にて混練し、冷却後粉砕、分級し、重量平均粒径6.5μm、体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)との比Dv/Dpが1.25、円形度0.91のトナー母体粒子Mを作成した。混錬条件については、混練物が溶融状態になる範囲での最低温度に混錬機の温度設定を行った結果、混練機出口での混練品の温度が120℃となるよう混練機の温度設定を行った。
さらに、適切な流動性、転写性、帯電性を付与するために外添剤を調整混合し、トナーMを得た。
表3にトナーAからMのTg、Tm、分子量ピーク、分子量3000以上成分%、Mw/Mn を示す。
ここで、この実施例における画像形成装置は、前述した図1の構成を基としたタンデム型カラー複写機構成を用いる。
この転写型定着装置を用いた画像形成装置において、転写定着条件は、
条件1:転写定着ニップ時間8ms、部材温度トナー溶融温度Tmt+50℃
条件2:転写定着ニップ時間25ms、部材温度トナー溶融温度Tmt+10℃
条件3:転写定着ニップ時間30ms、部材温度トナー溶融温度Tmt+10℃
条件4:転写定着ニップ時間40ms、部材温度トナー溶融温度Tmt+10℃
とした。また、ニップ圧力は、記録媒体に転写定着部材が十分密着するように、0.5MPaに設定した。
トナーA〜Mを用いて、付着量0.6mg/cm2のベタ画像および2×2ドット(600dpi;25%)画像における転写定着性評価を行った。ここで、記録媒体は普通紙としてリコー製タイプ6000−70Wを用い、ベタ画像部のΔID(IDmax−IDmin)、および2×2ドット画像の目視による記録媒体上のドット再現性を評価した。ΔIDの基準は、許容範囲としてΔIDが0.005未満を○、0.005以上0.008以下を△、0.008より大きい場合を×とした。また、記録媒体上のドット再現性は、忠実に再現されていると判断した時を○、ムラ、ドット抜け等の問題がある場合を×、問題となるムラ、ドット抜けはないが再現性にかける場合を△とした。その結果を表4に表す。
実施例のトナーA、B、E、F、I、J、Kは、条件1〜3ではΔID、ドット再現性ともに良好な結果を示したが、条件4では、ベタ部画像のホットオフセット、ドット画像の太りによる再現性の悪化が発生した。また、比較例のトナーC、D、G、H、L、Mは、条件1〜3にて定着不良によるΔIDの悪化、ドット再現性の悪化が認められたが、ニップ時間が前記比較例のトナーにおいては、十分な条件4となると、良化傾向が認められた。
さらに、前記実験で良好な結果を得たトナーA、B、E、F、I、J、Kについて、図5に示す構成である従来の定着装置にて以下の条件にて評価を行ったところ、全てのトナーにおいて、条件5ではトナーが十分加熱されないため、定着不良を発生した。また、条件6では、良好な定着性を示したが、条件7ではホットオフセットが発生した。
条件5:定着ニップ時間8ms、部材温度トナー溶融温度Tmt+50℃にて2×2ドット(600dpi;25%)画像を定着
条件6:定着ニップ時間30ms、部材温度トナー溶融温度Tmt+30℃にて付着量0.6mg/cm2のベタ画像を定着
条件7:定着ニップ時間30ms、部材温度トナー溶融温度Tmt+50℃にて付着量0.6mg/cm2のベタ画像を定着