JP2007534705A - 脳卒中の予防と治療のための医薬または製剤調製におけるチモサポニンbiiの使用 - Google Patents

脳卒中の予防と治療のための医薬または製剤調製におけるチモサポニンbiiの使用 Download PDF

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Abstract

本発明は卒中(脳卒中)の予防および治療のための医薬または製剤の製造におけるチモサポニンBIIの使用に関する。チモサポニンBIIが局所性脳虚血ラットの神経症状を顕著に改善し、脳梗塞範囲を縮小し、脳水腫の程度を軽減し、さらにモデル動物の血液レオロジーを顕著に改善し、脳虚血による炎症性脳損傷を軽減することが、実験により示された。

Description

本発明はチモサポニンBII、具体的にはチモサポニンを卒中(脳卒中)の予防および治療のための医薬または製剤の調製に使用することに関する。
卒中(脳卒中)では、頭蓋骨内外の血管閉塞または破裂による脳機能の急性損傷が起こる。これは中高齢者の身体障害と死亡の主原因として健康に重大な悪影響を及ぼす。この病気になった患者の約三分の一はまもなく死亡する。生き残ったものであっても、半身不随や失語症といった後遺症のせいで仕事や身の回りのことができなくなる。現在卒中には二つの治療法が用いられる。ひとつは血流を増して動脈内の酸素とグルコースの欠乏を解消することである。もうひとつは、脳虚血や興奮毒性が引き起こす神経細胞の死をブロックして神経細胞を保護することである。臨床的に使用されている神経保護剤には、カルシウムチャネルブロッカー、グルタミン酸レセプターのアンタゴニスト拮抗剤、NMDAアンタゴニストなどがある。しかしながら、高い罹患率、死亡率、後遺症率を考えると。卒中の予防や治療のために開発された薬品はほとんどなく、臨床の要望に答えるには程遠い。
漢方薬である知母は百合科(Liliaceous科)知母(Anemarrhena)属の多年生植物Anemarrhena asphodeloides Bge.の根茎である。主産地は中国河北、内蒙古、山西、東北部である。伝統的中国医学では、これは苦寒清熱薬(苦い生薬で体内の熱をとる薬)として用いられ清熱瀉火(炎症を抑え熱を冷ます)、慈陰潤燥(体液を補い乾燥を潤す)の効果がある。主な治療対象は外感熱病(感染による熱)、高熱頻渇、肺熱乾咳、骨蒸潮熱(体の深部から出る熱)、内熱消渇(糖尿病)、腸燥便秘(腸の水分不足による便秘)である。知母の主要成分はステロイド性サポニンである。これまでに32種のサポニンおよびサポゲニンが知母から単離されている。それ以外の成分としてはフラボン、オリゴサッカライド、ポリサッカライド、脂肪酸などである。川崎敏男等は1963年にはじめてチモサポニンを単離したが、化学構造は解明していない。南雲清二等は1991年にチモサポニンの構造を初めて解明した(非特許文献1参照)。それ以降、チモサポニンの抽出と活性測定が中島のぼる等(非特許文献2参照)、馬百平(非特許文献3参照)、Masayasu Kimula (非特許文献4参照)、Jianying Zhang (非特許文献5参照)と続いて報告されている。
チモサポニンBIIはプロトチモサポニンAIIIとも呼ばれ、知母の主要成分である。化学名は(25S)‐26‐0‐β‐D‐グルコピラノシル‐22‐ヒドロキシ‐5‐β‐フロスタン‐3β,26‐ジオール‐3‐O‐β‐D‐グルコピラノシル(1→2)‐β‐D‐ガラクトピラノシドで、化学構造式は以下のようである。
Figure 2007534705
主な報告されているチモサポニンBIIの薬理活性は以下のようである。
1.血糖低下作用
チモサポニンBIIは、ストレプトゾシンで誘導された糖尿病マウスの血糖レベルを、グルコースの吸収とインスリンの放出を促進することなく、低下させることができる。血中のグルコース低下のメカニズムはグリコーゲン分解の阻害と考えられている(非特許文献2参照)。
2.血小板凝集の阻害
チモサポニンBIIは血小板の凝集を明らかに阻害し、凝固時間を延ばす働きがある(非特許文献5参照)。
3.フリーラジカルの除去
常磁性法での観察によれば、チモサポニンBIIは、フェントン反応システムで生じたフリーラジカルの57%を除去できる(非特許文献3参照)。
4.抗痴呆活性
馬百平等はチモサポニンBIIが老年性痴呆に対し予防と治療の効果があると報告している(特許文献1参照)。
陳万生等は卒中の予防と治療のための医薬の調製に全チモサポニンを使用することを報告している(特許文献2参照)。そこで開示されている全チモサポニンは、チモサポニンBII、E、B、AIIIの含量の総和が≧50%であることを特徴とする。
Seiji NAGUMO et a1, 薬学雑誌(日)l991; 111(1): 306‐310 Noboru NAKASHIMA et a1, Journal of Natural Products, 1993; 56(3): 345‐350 馬百平、薬学学報(中)、1996; 3l(4): 27l‐277 Masayasu KIMURA et al,Bio1.Pharm.Bull.l996; 19(7):926‐931 Jianying ZHANG et al,Clinica Chimica Acta,1999; 289: 79‐88 中国特許出願公開第l212966, 出願番号97119680.X 中国特許出願公開第1451384A、出願番号03116824.8
何年も熱心に研究した結果、本発明の発明者たちはチモサポニンBIIだけで卒中の予防と治療の活性があることを初めて見出し、確認した。この化合物は虚血ラットにおける神経学的症状を顕著に改善し、脳梗塞の範囲を減少させ、脳浮腫の程度を軽減し、モデル動物における血液レオロジーを顕著に改善し、脳虚血による炎症性損傷を少なくする。
したがって、本発明は卒中の予防および治療用医薬の製造におけるチモサポニンBIIの使用に関する。
本発明はまた,活性成分としてのチモサポニンBIIおよび医薬品として許容されるキャリヤーあるいは賦形剤を含む卒中の予防または治療用の医薬組成物または製品に関する。
本発明によれば、チモサポニンBIIは実質的に純粋な形、たとえばチモサポニンBIIの純度が≧90%で使用される。
本発明によれば、このチモサポニンBIIを含む医薬組成物あるいは製品は、さまざまなルートで投与することができ、さまざまな投与形態に処方することができる。たとえば経口投与形態としては、錠剤、カプセル、溶液、懸濁液がある。非経口投与形態としては、注射剤、軟膏、パッチなどである。
本発明によれば、チモサポニンBII(20mg/kgおよび40mg/kg)を7日間投与すると、中大脳動脈 (MCA) 血栓症のラットにおける神経症状スコアを著しく低下させることができ、また脳梗塞の範囲を顕著に小さくすることができる。また40mg/kg投与群では顕著に脳の水分含量が低下し、対照群と比べ有意差があった(p<0.05, p<0.01)。
本発明によれば、アドレナリンの皮下注射と氷水浸漬法で作製した急性のうっ血ラットモデルに、チモサポニンBII(10mg/kg,20mg/kg,40mg/kg)を投与すると、高、中、低のせん断率の下での全血および血漿の粘度を、著しく低下させることができた。対照群とは有意差があった(p<0.05,p<0.01)。チモサポニンBII40mg/kg 投与では赤血球の変形能が改善され、赤血球凝集指数が低下した。対照群と比べ有意差があった(p<0.05, p<0.01)。
塞栓糸法を用いて脳虚血再灌流モデルラットを作製し、ELISAを用いてIL−1β、TNF−α、IL−10、TFG−βのレベルを各群について決定した。その結果、チモサポニンBIIが虚血−再灌流ラットモデルにおける炎症反応に対し著しい保護作用を有することが示された。
まとめると、チモサポニンBIIは卒中の予防、治療作用を有する。
発明の実施の形態
以下の実施例は本発明をさらに説明するものであって、なんら限定するものではない。
FeClで誘導した中大脳動脈血栓症(MCAT)ラットにおける神経症状および脳梗塞範囲に対するチモサポニンの影響
I.方法
1.中大脳動脈血栓ラットにおける神経症状および脳梗塞範囲に対するチモサポニンの影響
1.1.グループ分けと投薬
実験動物は無作為に6群に分けた。すなわちMCATモデル群、擬似手術群、ヒデルギン(hydergine)0.6mg/kg投与群、チモサポニンBII10mg/kg投与群、20mg/kg投与群、40mg/kg投与群である。一日あたり5ml/kgの強制経口投与による薬剤の連続投与を7日間行った。 手術は7日目の薬剤投与を行ってから1時間後に行った。MCATモデル群と擬似手術群には同量の0.5% CMC溶液を与えた。
1.2.MCA血栓栓塞性虚血による脳損傷モデルラットの作製
田村及び劉の方法に少し変更を加えてモデル動物を作製した。ラットは10%抱水クロラール(0.35g/kg)を腹腔内注射して麻酔した。ラットを右側を下にして固定し、約1.5cm長の切り込みを眼外眦(paropia)と外耳道と結んだ線の中点に入れ、側頭筋を除去して側頭骨を露出させた。実体顕微鏡下で、頬骨と側頭鱗の接合部で口のほうに1mmよったところの骨に直径約2.5mmの開口部をバードリルを用いて開け、残渣を除去して中大脳動脈を露出させた。この動脈は嗅索と下大脳静脈の間に位置する。周囲の組織はプラスチックフィルムの小片で保護した。50%塩化第二鉄溶液10μlをしみこませた定量ろ紙をこの中大脳動脈の部分にあてた。30分後にろ紙を取り除き、局部組織を生理食塩水で洗ったのち各層を縫合した。ついで実験用ラットを飼育ケージに戻した。温度は24℃に保った。擬似手術群は、塩化第二鉄溶液処理以外はモデル群と同様に手術を行った。
1.3.神経症状スコアの評価
手術後6時間と24時間に、実験動物の行動を改変ベダーソン(Bederson)法で試験した。
基準:
1.ラットの尾を持ち上げ、前肢の柔軟性を観察した。前肢の両方が対称的に前に伸びた場合は0点、手術したのと反対側の前肢で、肩の屈曲、肘の屈曲、肩の内方捻転のいずれかが見られた場合は1点とした。
2.動物を平面上に置き、その肩をそれぞれ反対側に押して抵抗力を検査した。両側とも抵抗力が等しくかつ強力な場合は0点とし、手術側の反対側の抗力が低下した場合は1点とした。
3.ラットの両方の前肢を金属の網の上に置き、筋肉の緊張を調べた。両側とも緊張が等しくかつ強力な場合は0点とし、手術側の反対側の緊張が低下した場合は1点とした。
4.ラットの尾を持ち上げ、手術した側と反対の方向に絶え間なく回転運動をした場合を1点とした。上記の基準により、満点は4で、点数が高ければ高いほど動物の行動障害は重症である。
1.4.脳梗塞範囲の測定
行動評価の後、動物は断首して脳を取り出した。4℃で臭球、小脳と脳幹下部を取り除き、残りを5つの輪切りにした。切片は直ちにTTC染色液(染色液5mlあたり4%TTCが1.5ml、1MKHPOが0.1 ml、残りは水)中に入れ、暗所、3℃で30分間インキュベートした。ついで、切片を10%ホルムアルデヒドに移し、暗所で24時間インキュベートした。染色後、非虚血領域はローズレッドになり、梗塞領域は白色であった。白色組織を丁寧に取り出し、秤量した。脳梗塞の程度は脳の全重量および病変側の脳の重量に対する梗塞組織の割合(%)としてあらわした。
2.中大脳動脈血栓症(MCAT)ラットの脳組織の水分含量に対する
チモサポニンBIIの影響
2.1.グループ分け、投薬、モデル動物作製(1と同じ)
2.2.脳組織の水分含量の測定
手術24時間後にラットを断頭し、脳を取り出し左脳と右脳に分けた。ろ紙で表面の水分を吸い取り、各半球の湿重量を秤量した。ついで脳組織を105℃で48時間乾燥し、乾燥重量を正確に秤量した。脳の水分含量は下記式により算出した。
脳の水分含量= (湿重量−乾燥重量)/ 湿重量×100%
3.統計分析
実験データはx=±sであらわした。結果はSPSSソフトウェアを用いて解析し、群間の比較にはt検定を用いた。
II. 結果
1.中大脳動脈血栓症ラットにおける神経症状と脳梗塞範囲に対するチモサポニンBIIの影響
結果を下の表4−1に示す。
表4−1中大脳動脈血栓症ラットにおける神経症状と脳梗塞範囲に対するチモサポニンBIIの影響(x±s)
Figure 2007534705
注 擬似手術群と比較して△△ P<0.01;モデル群と比較して*P<0.05、**P<0.01
これらの結果から、擬似手術群と比べMCATモデル群と各投与群の動物はさまざまな程度の梗塞および片麻痺様症状を示した。チモサポニンBII20mg/kgおよび40mg/kg投与群ではモデル動物の脳梗塞範囲が著しく縮小し、神経症状が改善された(P<0.05, P<0.01)。
2.チモサポニンBIIの中大脳動脈血栓症(MCAT)ラットにおける脳組織の水分含量に対する影響
結果を表4−2に示す。
表4−2 チモサポニンBIIの中大脳動脈血栓症(MCAT)ラットにおける脳組織の水分含量に対する影響(x±s)
Figure 2007534705
注 擬似手術群と比べて△△P<0.01;モデル群と比べて*P<0.05、**P<0.01
上記の表に示されるように、チモサポニンBII40mg/kgは顕著に罹患脳半球における水分含量を減少させ、またモデルラットの脳浮腫を改善した(P<0.05)。
検討とまとめ
中大脳動脈血栓症モデルは局部性脳虚血のモデル動物としてよく使われる。これは中大脳動脈において多発する脳梗塞の臨床状況を客観的にシミュレートするものであり、以下のような利点がある。局部的条件をコントロールするのが容易であり、再現性が高く、臨床での脳卒中発病過程と似ており、血栓の位置が固定されている。結果が示すように、術後6時間、24時間で、片麻痺様症状、血栓側の半球での水分含量の増加、顕著な脳梗塞(TTC染色)が観察された。チモサポニンBII 20mg/kgおよび40mg/kg群では顕著に脳梗塞範囲が縮小し、神経症状が改善された。モデル群と比較して有意差があった(P<0.05、P<0.01)。さらに、チモサポニンBII40mg/kg群における脳浮腫の程度が顕著に軽減し、モデル群と比べて有意差があった(P<0.05)。結果からこの薬剤は虚血性脳傷害に対して保護作用があることがわかる。
急性血液流滞モデルラットにおける血液レオロジーに対するチモサポニンBIIの影響
I.方法
1.グループ分けと投薬
実験動物は体重に基づき無作為に6群に分けた。すなわちモデル群、正常対照群、ニモジピン(12mg/kg)群、チモサポニンBII10mg/kg群、20mg/kg群、40mg/kg群である。一日あたり5ml/kgの強制経口投与による薬剤の連続投与を5日間行った。正常対照群とモデル群には同量の0.5%CMC溶液を与えた。
2.モデル化法
毛騰敏の方法を改変してモデル動物を作製した。5日目の投薬後約1時間と5時間後の2回ラットに0.8mg/kgのアドレナリンを皮下注射した。最初のアドレナリン注射の2時間後にラットを4℃の氷水中に5分間漬けた。
3.全血および血漿の粘度の評価
最終投薬の1時間後に、ラットの腹腔内に10%抱水クロラール(0.35g/kg)を注射して麻酔した。血液を頸動脈から採り1%ヘパリンで処理した。この抗凝固処理血液0.8m1を血液粘度計でテストした。全血の粘度は、高(200S−1)、中(30S−1)、低(5S−1)、低(1S−1) せん断速度で試験した血液粘度で表した。さらに、別に抗凝固処理血液を3000rpmで8分遠心して、血漿を上清として得、0.8 mlの血漿を血液粘度計をもちいて100S−1で試験し血漿粘度を求めた。
4.赤血球凝集と変形能の測定
40μlのヘパリン処理血液に、1mlの変形溶液を加えてよく混ぜた。試料0.8 mlを赤血球凝集/変形能テスターにかけ、赤血球変形能は最大赤血球変形インデックスと曲線下面積(SSS)で表した。別に0.8m1の抗凝固処理血を凝集/変形能テスターで試験した。赤血球凝集は最大赤血球凝集インデックス(MAXD)と曲線下面積(SSS)としてあらわした。
5.統計解析
実験データはx±sであらわした。結果はSPSSソフトウェアを用いて解析し、t−検定で群間の比較を行った。
II.結果
1.急性血液流滞モデルラットにおける全血および血漿の粘度に対するチモサポニンBIIの影響
結果を表10−1に示す。
表10−1 急性血液流滞モデルラットにおける全血および血漿の粘度に対するチモサポニンBIIの影響
Figure 2007534705
注 ブランク対照群と比べて△△P<0.01; モデル群と比べて*P<0.05、**P<0.01
結果は、正常対照群と比べると、血液流滞モデルラットではモデル作製後24時間で全血と血漿の粘度が有意に上昇した(P<0.01)。チモサポニンBIIの10mg/kg、20mg/kg、40mg/kg投与群ではモデル群に比べ有意に全血および血漿の粘度が高、中、低せん断速度において低下した(P<0.05, P<0.01)。
2.急性血液流滞モデルラットにおける赤血球凝集および変形能に対するチモサポニンBIIの影響
結果を下の表10−2に示す。
表10−2 急性血液流滞モデルラットにおける赤血球凝集および変形能に対するチモサポニンBIIの影響(x±s)
Figure 2007534705
注 空白対照群と比べてP<0.05、△△P<0.01; モデル群と比べて*P<0.05, **P<0.01
この結果から、モデル化の24時間後には血液流滞モデルラットはブランク対照群と比較して、有意な赤血球凝集インデックスの増加と赤血球変形能インデックスの減少があることがわかる(P<0.05, P<0.01)。 モデルラットと比較すると、チモサポニンBII40mg/kg投与群のラットは赤血球変形能の有意な増加と赤血球凝集インデックスの有意な減少がある(P<0.05, P<0.01)。
III. 検討とまとめ
血液レオロジーは血液の流動性、凝集性、凝固性および血液細胞の変形能に関する科学である。血液レオロジーのパラメーター、たとえば全血比粘度、血漿比粘度、赤血球凝集インデックス、フィブリノーゲンは虚血性脳血管疾患の患者では変化する可能性がある。したがって、血液レオロジーの改善、たとえば血液粘度および赤血球凝集の減少、赤血球変形能の増加は虚血性脳血管疾患の予防および治療にとって非常に重要である。われわれの研究では、ラットに大量のアドレナリンを皮下注射して怒りと不安状態をシミュレートし、氷水の中に入れて寒気状態をシミュレートした。こうすることにより、血液の粘度が高く、どろどろしており、凝集凝固していること特徴とする急性の血液流滞モデルを作製することができた。結果は、急性血液流滞モデルラットにおいてチモサポニンBIIが有意に赤血球の凝集を抑制し、赤血球の変形能を増加させ、高、中、低せん断速度での全血粘度および血漿の粘度を低下させることを示す。この薬剤が有意に血液レオロジーを改善できることが示唆される。
脳虚血−再灌流ラットの脳組織中の炎症因子群に対するチモサポニンBIIの影響
塞栓糸法を用いて脳虚血−再潅流ラットモデルを作製し、ELISAを用いて各群のIL−1β、TNF−α、IL−10およびTGF−βレベルを測定して、脳虚血−再潅流ラットモデルにおける炎症因子に対する保護作用を調べた。
I.方法
1.グループわけと投薬
実験動物は体重に基づき無作為に6群に分けた。すなわちモデル群、正常対照群、ニモジピン(12mg/kg)群、チモサポニンBII10mg/kg群、40mg/kg群である。薬剤はすべて0.5%CMCで処方した。各群のラットは2日間の観察を飼養を行った後に実験に供した。一日あたり10ml/kgの強制経口投与による薬剤の連続投与を5日間行った。擬似手術群とモデル群には1日1回同量の0.5% CMC 溶液を与えた。手術は5日目の朝の投薬1時間後に行った。
2.モデル化方法
中大脳動脈障害(MCAO)モデルをコイズミとナガサワの方法で作製した。10%抱水クロラール0.35g/kgを腹腔内に注射して麻酔したラットを仰臥位で固定した。局部の皮や毛を消毒してから手術を行った。右総頸動脈(CCA)と右内頚動脈(ICA)、外頚動脈(ECA)を分離し、糸を埋め込んだ。ECAとCCAを結紮した。ICAの末梢側を動脈鉗子で閉じてすぐに、ECAとICAの分岐部に切込みを入れ、一方の端を熱して球形にした(直径0.25mm、球の末端から2cmのところにしるしをつけ、塞栓糸の前端はあとのためにパラフィンで処理)ナイロン糸を一本挿入した。糸をICAに挿入後、糸とICA入り口を軽く結紮し、動脈鉗子を開放した。ナイロン糸をさらにICAに挿入して少し抵抗があるところまで挿入したらわずかに引き戻し、約18.5±0.5mmの深さに達するまで挿入した。これにより、MCA閉塞−脳虚血を起こした。入り口は再び結紮し、ナイロン糸を外に1cm出しておく。ラットの筋肉と皮膚を縫合し、硫酸ゲンタマイシンを腹腔内に0.4ml注射した。3時間後、糸端を、抵抗があるまでそっと引っ張り出して、MCAを再灌流させた。こうしてモデル化は完了した。擬似手術群では、右CCAのみを結さつし、切開と糸の挿入は行わなかった。動物の選定基準:虚血3時間後に、対側前肢ねじれ、ぐるぐる回りをする、あるいは歩いている間に対側に倒れるといった徴候を示した動物を選んだ。これらの徴候を示さなかった動物、あるいは3時間経っても意識が戻らない動物は除外した。
3.組織ホモジネートの調製
動物は3時間の虚血後再灌流して21時間で断首した。臭球、小脳と脳幹下部を取り除き、残った右大脳半球を4℃で生理食塩水中10%のホモジネートにした。
4.IL−1β、TNF−α、IL−10およびTGF−βのELISAアッセイ
(1) 標準曲線の作成
8個の標準ウェルを設け、各ウェルに100μlの試料希釈用液を入れた。第1のウェルには、100μlの標準品を入れよく混ぜ、ついで100μl をピペットで第2のウェルに移した。この倍々希釈のプロセスを第7のウェルまで繰り返した。最後に100μl をピペットで第7のウェルから取りだして捨て、各ウェルの液量が100μlになるようにした。第8のウェルはブランクコントロールとした。
(2)負荷
100μl の試料を各試料ウェルに入れた。
(3)反応プレートをよく混ぜた後30℃に120分おいた。
(4)プレートの洗浄
反応プレートは洗浄溶液で4−6回よく洗い、ろ紙で水気を吸い取った。
(5)各ウェルに50μ1の第一の抗体作用液を加え、プレートを37℃に60分間置いた。
(6)プレートを上記のように洗浄。
(7)各ウェルに100μlの抗体‐酵素複合体作用液を加え、37℃に60分間置いた。
(8)プレートを上記のように洗浄。
(9) 各ウェルに100μl の基質溶液を加え、プレートを暗所に37℃で5−10分間置いた。
(10)各ウェルに反応停止溶液を一滴加え、よく混合した。
(11)492nmにおける吸光度を読み取った。
5.結果の計算
全OD値からブランク値を差し引いた後、計算を行った。標準品1000、500、250、125、62、31、16、0(PG/ml)のOD値を半対数のグラフ用紙にプロットし、標準曲線を得た。対応する炎症因子のレベルは、試料のOD値と標準曲線から決定することができた。
6. 統計解析
実験データはx±sであらわした。結果はSPSSソフトウェアを用いて解析し、t−検定を用いて群間の比較を行った。
II.結果
脳虚血‐再灌流ラットにおける炎症因子に対するチモサポニンBIIの影響
表 虚血‐再灌流ラットにおけるIL−1β、TNF−α、IL−10およびTGF−βに対するチモサポニンBIIの影響
Figure 2007534705

注 擬似手術群と比較 P<0.05、△△P<0.01;
モデル群と比較 *P<0.05、**P<0.01
実験結果が示すように、擬似手術群と比べて脳虚血‐再灌流モデルラットの脳組織における炎症性因子のIL−1βとTNF−α のレベルは顕著に上昇し、保護性炎症因子のIL−10とTGF−βのレベルも顕著に上昇した。その差は統計的に有意であった。ポジティブコントロールであるニモジピン群、およびチモサポニンBII40mg/kg投与群ではこれらの炎症因子のレベルは顕著に低く、したがって虚血‐再灌流モデルラットにおける炎症反応に対し明らかに保護作用があった。

Claims (2)

  1. 卒中(脳卒中)の予防および治療のための医薬または製剤の製造におけるチモサポニンBIIの使用。
  2. チモサポニンBIIの純度が≦90%であることを特徴とする、請求項1に記載のチモサポニンBIIの使用。
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