JP2007533458A - 連続鋳造装置の鋳造ベルトの表面テクスチュアリング - Google Patents

連続鋳造装置の鋳造ベルトの表面テクスチュアリング Download PDF

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Abstract

連続ベルト式鋳造装置は、鋳造キャビティと、進行するとともに少なくとも部分的に前記鋳造キャビティを形造る長く伸びた鋳造表面を有する、少なくとも1つのフレキシブルな金属製ベルトとを備えている。前記金属製ベルトを前記鋳造表面の長手方向に回転させ、それにより、前記鋳造表面が前記長手方向において前記鋳造キャビティを通り過ぎるようにするモータが設けられている。溶融金属供給装置が、溶融金属を前記鋳造キャビティに連続的に送給し、それにより、前記鋳造キャビティに供給された溶融金属が、凝固し、連続したストリップインゴットとして前記ベルトの回転によって前記鋳造キャビティから移動する。前記鋳造表面には、実質的に同一方向に方位付けられた複数の溝が設けられている。また、本発明は、かかる装置用の鋳造ベルト、及び該装置を用いる鋳造方法に関する。

Description

発明の詳細な説明
(技術分野)
この発明は、溶融金属をストリップ(strip)の形態にて連続的に鋳造するのに用いられる連続ベルト式鋳造機における熱流束の制御に関する。特に、本発明は、かかる鋳造機に用いられる鋳造ベルトの表面構造(サーフェイス・テクスチュアリング:surface texturing)に関するものである。
(背景技術)
溶融金属から、特にアルミニウム合金から、ストリップ鋳塊(連続した金属ストリップ)を生産するのに、例えば双ベルト(ツインベルト:twin belt)鋳造機、単一ベルト鋳造機および再循環ブロック鋳造機のような、連続鋳造機が一般に用いられている。この種の鋳造機では、連続して移動する鋳造表面(casting surface)間に鋳造空洞部(キャビティ:cavity)が形成され、この鋳造キャビティ内に溶融金属が連続して導かれる。前記鋳造表面を介して金属から熱が奪われ、当該金属は、移動する鋳造表面によって鋳造キャビティから連続して引き抜かれるストリップ鋳塊(インゴット:ingot)の形態で凝固する。前記鋳造表面を通る熱流(凝固しつつある金属から導出された熱)は、良好な表面品質のストリップインゴットの鋳造を達成し、また、鋳造キャビティの歪みを回避するために、注意深く制御されなければならない。適切な鋳造を連続して行うためには、金属(例えばアルミニウム合金)が異なれば、異なるレベルの熱流束が必要であり、従って、鋳造される特定の金属に対して所要のレベルの熱流束をもたらすように、鋳造装置を制御できることが重要である。
基本的な熱流制御は、通常、鋳造ベルト又はブロックに冷却水を適用することによって達成される。殆どのベルト式鋳造機では、これは、ベルトが鋳造キャビティを通過する領域でベルトの背面について行われる。しかしながら、追加的な手段を用いて、熱流束がより精密に調整される場合もしばしばある。例えば、ベルト式鋳造機が、金属ベルトを覆う多孔性のセラミックコーティングを備えている。かかるコーティングは、より一層の精密さを与えるために、随意的に、部分的または全体にわたって、例えばヘリウムのような伝導性が高い不活性ガスで満たすことができる。このような場合、セラミックコーティングを堅固に維持する費用や不活性ガスのコストは、かかる手法を経済的観点から魅力のないものにしている。
また、鋳造表面が溶融金属との接触に至る前に、例えばオイル等の揮発性または部分的な揮発性の液体の層を、前記鋳造表面に適用することも知られている。この層は、しばしば、「ベルトドレッシング(belt dressing)」或いは「離型層(パーティング層:parting layer)」と呼ばれている。層の厚さは、その下に在る鋳造表面への熱流の制御をもたらすように変えることができる。しかしながら、かかるオイルの使用は、鋳造ストリップインゴット(特に、マグネシウムを多く含んだアルミニウム合金で造られたインゴット)の表面品質に悪影響を及ぼすおそれがあり、また、特に、所望の程度の熱流制御を達成するために過剰な適用が必要とされる場合には、環境問題を招くかも知れない。
パウル・ダブリュ・ジェフェリ他(Paul W. Jeffery et al.)に対して1980年9月30日に発行された米国特許第4,614,224号およびイルジョーン・ジン他(Iljoon Jin et al.)に対して2000年9月19日に発行された米国特許第6,120,621号は、ランダム(random)に表面状態が調整(テクスチュア:texture)された(ショットブラストによってテクスチュアされた)鋼製ベルトを用いることを開示しており、そこでは、ベルト表面を溶融金属に接触させるに先だって、当該ベルト表面に液体の層が適用される。前記ベルト表面は、鋳造キャビティを通過する際に、ベルトの反対側に冷却剤を直接に適用することによって冷却される。前記液体は、一般に炭化水素である。この炭化水素は、使用中に少なくとも部分的に揮発して、溶融金属とベルト表面の間にガス状の層を形成する。このガス状の層は、断熱特性を有しており、それ故、溶融金属とベルト表面の間に著しい温度落差を生じせしめる。残った液体自体は、比較的僅かな効果しか有さない。適用される液体の量を変化させることにより、ガス状の層の効果を調節することが可能で、金属ベルトを通過する熱流全体にわたって或る制御を達成し、鋳造プロセスを向上させることができる。これら2つの特許は、210マイクロ・インチ(5.3マイクロメータ)(RMS)の表面粗さ、及び160から512マイクロ・インチ(4から13マイクロメータ)(Ra)の表面粗さを、それぞれ教示している。
上述のように、ベルトが鋳造キャビティを通過する際に当該ベルトの反対側に冷却剤が直接に適用される鋳造機では、(例えば銅のように)より熱伝導性の高いベルトの使用を通じて、また、液体離型層の量を低減することにより、熱流束の増量を達成することができる。かかる熱伝導性の高いベルトに適用される従来のテクスチュアリングは、高い熱流能力の最大値を減少させる、けれども、かかるテクスチュアリングを無くしてしまえば、鋳造中のメニスカス(meniscus)安定性の問題を招来し得る。
ドナルド・ジー・ハーリントン(Donald G. Harrington)に対して2000年5月16日に発行された米国特許第6,063,215号は、より規則的なやり方でテクスチュアされた鋼製の鋳造ベルトを開示している。すなわち、鋼製の鋳造表面上に設けられた横方向の溝または窪み(ディンプル:dimple)を教示している。このテクスチュアされた鋼製ベルトは、その後、人為的に酸化させられる。このテクスチュアリングは、より均一な熱伝達を促進し、また、鋳造中に形成され得るガスを逃がすようにできる、と言われている。このようなベルトは、鋳造キャビティから離間した領域でベルトが冷却され、離型剤を使用しない鋳造機で用いられる。
ギャビン・ヤット(Gavin Wyatt)に対して2000年10月24日に発行された米国特許第6,135,199号は、ベルトが目の細かい長手方向の溝を有し得るベルト式の鋳造機を開示しているが、好ましい実施態様として、(米国特許第6,063,215号の継続により発行された)米国出願08/543,445号に言及している。
従って、裏面の冷却剤によって直接に冷却される鋳造ベルトであって、高い熱排除能力の特性を有し、ベルトの歪みを伴うことなく安定した鋳造プロセスをもたらす、改良された鋳造ベルトを提供することが必要とされている。
(発明の開示)
本発明の1つの態様によれば、鋳造キャビティと、進行するとともに少なくとも部分的に前記鋳造キャビティを形造る長く伸びた鋳造表面を有する少なくとも1つ(好ましくは2つ)のフレキシブルな金属製ベルトと、前記少なくとも1つの金属製ベルトを前記鋳造表面の長手方向に回転させるモータであって、それにより、前記鋳造表面が前記長手方向において前記鋳造キャビティを通り過ぎるようになっているモータと、溶融金属を前記鋳造キャビティに連続的に送給するのに適合した溶融金属供給装置であって、それにより、前記鋳造キャビティに供給された溶融金属が、凝固し、連続したストリップインゴットとして前記少なくとも1つのベルトの回転によって前記鋳造キャビティから移動するようになっている、溶融金属供給装置と、を備え、前記鋳造表面には、実質的に同一方向に方位付けられた複数の溝が設けられている、連続ベルト式鋳造装置が提供される。前記溝は、前記鋳造表面に、好ましくは18−80マイクロ・インチ(0.46から2.0マイクロメータ)の範囲で、より好ましくは18−65マイクロ・インチ(0.46から1.65マイクロメータ)の範囲で、そして最も好ましくは25−45マイクロ・インチ(0.64から1.14マイクロメータ)の範囲で、表面粗さ(Ra)を与える。該粗さは、前記溝の方向に対し垂直に測定される。前記溝の相対的な間隔は、粗さの平均値(Ra)が、溝の方向に対し垂直にとって、10mmよりも小さい距離、より典型的には約5mmの距離にわたって、測定されるものである。前記鋳造ベルトは、銅製もしくは銅合金製、またはアルミニウム製もしくはアルミニウム合金製であることが、好都合である。
前記装置は、好ましくは、少なくとも部分的に揮発性のある液体離型剤を、前記鋳造表面が鋳造キャビティ内で溶融金属に接触する前に、前記鋳造表面に供給するのに適合した供給装置を有している。
また、前記装置は、好ましくは、前記鋳造表面が前記鋳造キャビティを出て連続したストリップインゴットから分離した後に、前記鋳造表面から前記離型剤を除去するのに適合した除去装置を有している。
前記装置が、ベルトが鋳造キャビティを通過する際に当該ベルトの裏面側に冷却剤を適用するために設けられた冷却剤出口を有するベルト式の鋳造機であることが、特に好ましい。
本発明の今一つの態様によれば、金属を鋳造して連続ストリップインゴットに形成する方法であって、伸長した鋳造表面を有する少なくとも1つのフレキシブルな金属製バンド(band)に、進行するとともに少なくとも部分的に前記鋳造キャビティを形造る鋳造表面を設けることにより、鋳造キャビティを形成する工程と、溶融金属を前記鋳造キャビティに連続的に供給する工程と、前記バンドを前記鋳造表面の長手方向に回転させて、前記溶融金属を前記鋳造キャビティを通して引き出し、前記鋳造キャビティ内で前記溶融金属が凝固するときに形成されたストリップインゴットを前記鋳造キャビティから移動させる工程と、を備え、前記鋳造表面には、実質的に同一方向に方位付けられた複数の溝が設けられている方法が提供される。
本発明の更に他の態様によれば、実質的に同一方向に方位付けられた複数の溝を備えた伸長する鋳造表面を有するフレキシブルな金属製ベルトでなる、連続ベルト式鋳造機での使用に適合した鋳造ベルトが提供される。
本発明においては、前記溝は、好ましくは前記鋳造表面の長手方向から45度よりも小さい(より好ましくは20度よりも小さい、理想的には10度よりも小さい又は5度に比してさえ小さい)角度の方向に方位付けられ、そして最も好ましくは実質的に前記鋳造表面の長手方向に方位付けられている。好ましくは、前記溝はベルトの鋳造表面の全体にわたって設けられ、それらが平坦な溝のないランド(land)部によって分離されている場合でも、かかるランド部が隣の溝の幅よりも小さい幅を有するように、溝は前記ベルトの横断方向に実質的に切れ目がない。
以下の記載,付属された特許請求の範囲および添付図面を参照することにより、本発明のより一層の理解,態様および利点が認識されよう。
(発明を実施するための最良の形態)
図1及び図2は、例えば溶融したアルミニウム合金のような溶融金属をストリップ鋳塊の形態にて連続鋳造するための、ツインベルト式の鋳造機械10を示している。本発明は、決してそればかりではないが、このタイプの鋳造機械の鋳造ベルトに適用される。かかるタイプの鋳造機械は、例えば米国特許第4,061,177号および同第4,061,178号に開示されており、それらの開示事項は、引用することによりここに組み入れられる。尚、本発明の原理は、単一ベルト式の鋳造システムの鋳造ベルトにも首尾良く適用できるものである。図1及び図2のベルト式連続鋳造機械の構造および作動を、以下に簡単に説明する。
図1及び図2に示されるように、前記鋳造機械10は弾力的に可撓性を有する一対の鋳造ベルト12及び14を有しており、これら鋳造ベルトの各々は、一端の上側プーリ16及び下側プーリ17と他端の上側液体ベアリング18及び下側液体ベアリング19によって運行されている。各プーリは、前記機械の支持構造に回転可能に取り付けられ、好適な駆動手段によって駆動される。簡潔化の目的で、図1及び図2には前記支持構造及び駆動手段は図示されていない。鋳造ベルト12及び14は、それらが両者間に、つまりベルトの鋳造表面間に、(「成形隙間(モールディングギャップ:molding gap)」或いは「移動型(ムービングモールド:moving mold)」とも呼ばれる)鋳造キャビティ22を形作る領域を通って実質的に等しい速度で、互いに実質的に平行に、走行するように配置されている。鋳造されるべきアルミニウムストリップの所望の厚さに応じて、前記鋳造キャビティ22は、(図示しない)エッジダム(edge dam)によって、その幅を調節することができる。前記一対のベルトは、好ましくは或る程度の収束(コンバージェンス:convergence)を伴って、鋳造キャビティ内で実質的に互いに平行に走行する。溶融金属は、入口部25を通って矢印24の方向において鋳造キャビティ22内へ連続的に供給され、その間、ベルトは、鋳造キャビティの領域内で、例えば裏面への液体冷却剤の直接的な衝突により、その裏面側で冷やされる。その後、鋳造ストリップは、矢印27の方向において出口部26から出て来る。
図示された装置では、鋳造される溶融金属の経路は、鋳造キャビティの入口部25から出口部26にかけて僅かな程度の下向きの傾斜をもっているが、ほぼ水平である。
溶融金属は、鋳造キャビティ22の入口部25に配置された(図示しない)好適な樋(ローンダ:launder)或いはトラフ(trough)により、鋳造キャビティ22に供給される。例えば、本願と同一の譲受人に譲渡されている米国特許第5,636,681号に記載されている溶融金属インジェクタ(injector)が、鋳造機械10に溶融金属を供給するのに用いられても良い。図示されていないけれども、鋳造キャビティ22の縁部での囲い(エンクロージャ:enclosure)を完全なものとするために、機械の各側部にエッジダムが備えられている。前記鋳造機械の作動においては、鋳造キャビティ22の入口部25に供給された溶融金属は、ベルト12,14の連続動作により、鋳造キャビティ22を通ってその出口部26に向かって進むことが理解されよう。鋳造キャビティ(移動型)22に沿った移動期間中、金属からの熱は、ベルト12,14を通って伝達され、供給された冷却剤20によってそこから除去される。そして、溶融金属は、ベルトの鋳造表面と接触して、その上側及び下側の表面から内部に向かって漸次凝固するようになる。溶融金属は、鋳造キャビティの出口部26に至るまでに十分に凝固し、連続した固形体の鋳造されたストリップ30の形態で、出口部26から出て来る。前記ストリップの厚さは、ベルト12及び14の鋳造表面によって規定されるように、鋳造キャビティ22の幅により定められる。鋳造ストリップ30の幅は、鋳造ベルト12,14の縁部の近傍に位置する(図示しない)側部ダム(dam)によって規定される。
ベルト自体は、このタイプの鋳造機械に対し好適なやり方で製作されており、好適に高強度で、塑性的な降伏を伴うことなく十分に張力を掛けることができる性質の金属製のものが有利である。本発明での使用のためには、ベルトは、鋼またはこの種のベルトに従来用いられている他のあらゆる材料で作ることができるが、本発明には、例えば好適な銅合金のような熱伝導性が高い金属が好ましい。その開示事項は引用することによりここに組み入れられるのであるが、2003年10月3日にウィラード・エム・ティ・ガラーネオート他(Willard M. T. Gallerneault et al.)の名において出願され、本願と同一の譲受人に譲渡されている、共同出願に係る米国出願60/508,388号に開示されているように、アルミニウム合金でも、要求された特性を有するものであれば使用することができる。
本発明によれば、溶融金属からの熱流束を調整し、また、溶融金属と鋳造ベルトとの接触のポイントを(つまり、金属メニスカスを)安定化させ、それにより、結果として得られる金属ストリップの鋳造欠陥を回避すると共に、ベルトに加えられる熱応力による熱歪みを排除もしくは低減するために、一方の鋳造ベルト或いは好ましくは両方の鋳造ベルトが、その表面にテクスチュアを備えている。本発明においては、前記ベルトの鋳造表面は、実質的に同じ向きに、好ましくは鋳造ベルトの移動方向つまり実質的にベルトの長手方向に、方向付けられた多数の伸長した溝を創り出すことにより、テクスチュアされている。換言すれば、各溝の主たる方向成分は、好ましくは、鋳造ベルトの移動方向つまり長手方向に沿って走っている。かかる溝を設けることは、例えば、ベルト式のサンダーやグラインダなどの研削機械を用い、前記ベルトの長手方向に操作して、例えば研削紙(grinding paper)や研削布(grinding fabric)などの研削媒体でベルト表面を研削することにより達成される。前記研削媒体は、所望の平均表面粗さ、すなわち、18から80マイクロ・インチ(0.46から2.0マイクロメータ)の範囲の平均表面粗さを創成するように選ばれる。
図3は、鋳造ベルトの鋳造表面の表示であり、本発明の好ましい形態に従った表面テクスチュア、つまり、ベルトの鋳造表面に設けられた表面溝を、誇張した形態で示している。鋳造方向(ベルトが移動する方向)は矢印31で示されている。図3の好ましい実施形態では、前記溝は、鋳造表面に対して、従来の平均表面粗さ(Ra)の単位で、18−80マイクロ・インチ(0.46から2.0マイクロメータ)、好ましくは18−65マイクロ・インチ(0.46から1.65マイクロメータ)、より好ましくは25−45マイクロ・インチ(0.64から1.14マイクロメータ)の範囲の表面粗さを与える。表面粗さ値(Ra)は、算術平均表面粗さである。この粗さの測定は、例えば、米国オハイオ(Ohio)州44073、メタルスパーク(Metals Park)のASMインターナショナルにより1989年に出版された金属ハンドブック第9版第16巻における第19から23頁に発表された、ミカエル・フィールド他による論文に記載されており、それは引用することにより、ここに組み入れられる。図4は、図3に図示された表面の一部分の(鋳造方向31を横切る)断面であり、表面の算術平均粗さ(Ra)のピークPと谷Vとを示している。当業者に良く知られた表面粗さの測定方法が幾つかある。
ベルトの粗さ(Ra)が約18マイクロ・インチ(0.46マイクロメータ)より小さい場合には、前記メニスカスが不安定となり、その結果、表面欠陥を招き、また、鋳造ストリップの内部が気孔やその他の鋳造欠陥を有することが見出された。前記ベルトの粗さが80マイクロ・インチを超える場合には、平板(スラブ:slab)の内部は健全であっても、鋳造ストリップの表面は、(「フロスト(frost)」と呼ばれる)樹枝状結晶(デンドライト:dendrite)或いは(「ブレブ(bleb)」と呼ばれる)滲出物(exudates)が剥き出しになる。上限は多少合金依存性があり、従って、最も広範囲の合金をカバーするには、特に好ましい上限である80マイクロ・インチを用いることができる。しかしながら、以下に詳細に記載した例に示されるように、18−65マイクロ・インチの粗さがより好ましく、また、25−45マイクロ・インチの粗さが更に好ましいことが見出された。
前記ベルトの鋳造表面に設けられた溝は、溶融金属への接触に先だって当該鋳造表面に適用された液体の離型層と協働して、より効果的に働く。離型層を構成する液体離型剤は、好ましくは、使用時に少なくとも部分的に揮発するものである。本発明の前記溝は、溝がランダム(random)である場合よりも、揮発した離型層が鋳造キャビティ内で(鋳造の方向に)より効果的に配分されるようにし、そのことが熱分布を改善する。このことは、溝がベルトの長手方向近くに方位付けられている好ましい実施形態の場合に顕著である。また、好ましい実施形態は、鋳造方向において所要の表面凹凸を備え、それにより、メニスカス挙動を安定化させ、また、より高い鋳造速度を達成できるようにする、鋳造ベルトを提供するものである。
液体離型剤を用いた公知のベルト・テクスチュアリング・システムは、例えば、160から512マイクロ・インチの範囲のテクスチュアを有する米国特許第6,120,621号に開示されているように、多量の離型剤の適用を必要とする、例えばショットブラストの窪み(ディンプル:dimple)のような木目の大きなテクスチュアリング(heavy texturing)を用いる傾向がある。本発明に係る溝は、より少ない離型剤しか必要とせず、しかも、不安定で不均一な熱応力に起因するベルトの歪みを伴うことなく、ベルトの裏面側に冷却剤が直接に適用される鋳造システムにおいて維持されるべき高い熱流を許容する離型剤の分配を達成する。
更に、本発明は、残りの離型剤(層)が、鋳造キャビティから浮かび上がった後に鋳造表面から実質的に完全に除去され、鋳造キャビティ内へ再び入り連続的に供給される溶融金属と接触する前に新たな離型層の適用の際に、より有効に作用する。
この目的のために、図5,6及び7に示す装置を用いることができる。この装置は、1997年6月10日にジョン・スルーザ他(John Sulzer et al.)に対して発行され、本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許5,636,681号に開示されている。この特許の開示事項は引用することによりここに組み入れられる。これら装置の構造および作動を、以下に簡単に説明する。図5は、離型層除去装置32を示すベルト式鋳造機械の一部の簡略化した断面図を示している。図6は鋳造表面に離型剤の新しい層を塗布する装置を模式的に図説しており、図7は図6の簡略化した長手方向の縦断面図である。
図5では、ツインベルト式鋳造機械10(図1)の鋳造キャビティの出口側端部での上側ベルト12の一部が示されている。溶融金属は、矢印27の方向に移動する鋳造表面12aと接触して、ストリップ30として凝固する。前記ベルト12の一部分12cは、凝固した金属ストリップとの接触から再び解放され、そして、熱い金属との接触の結果として生じる残骸(デトリタス:detritus)で汚れた離型剤の表面コーティングを有している。溶融金属層を適用するインジェクタの上流のステーション(図5には図示していないが、図6及び7を参照)で、ベルトの戻り側(リターン:return)表面に対し液体離型剤の新たな層が塗布される。
離型層除去装置32は、きれいで新しい離型剤が塗布される前に、ベルトの表面から古い離型剤およびデトリタスを完全に除去するために、前記ベルト12に近接して配置されている。前記除去装置32は、前記ベルトの幅を横切って延設され、且つ、ベルト12の隣接した表面に面する開口サイド36以外の全てのサイドで閉じられた中空ケーシング34を備えている。フラットなスプレイノズルを備えたスプレイバー38が、ケーシング34内に配置され、洗浄液の高圧スプレイを指向させている。この洗浄液のスプレイは、ベルトが除去装置32を通過するときに、当該ベルトの表面から離型液および汚れたデトリタスの殆どを除去する。ベルト表面上のどんな残留洗浄液あるいはデトリタスも、スクレーパ40によって除去される。
前記除去装置32は、離型液の汚れた層および固形のデトリタスを、ベルト表面から素早く、効率的にそして連続的に除去することができるようにし、その結果、鋳造キャビティ22から現れて来るベルト12の鋳造表面は、完全に清浄で、再び溶融金属を受け止める前に離型液のきれいで新たな層の適用準備ができたものとなる。
本発明の溝のより有効な作用のために、従前に塗布されていた離型剤の残留分の除去の後に、ベルトの幅を横切って薄く均一に新たな離型液の層が塗布される。図6及び図7には、新たな離型層の塗布に用いることができる非接触の静電塗装装置42が示されている。離型液の量は、スプレイヘッドに送給される液の流量を変化させることにより変えることができる。
図6に示されるように、部分的に重なり合う梯子状(オーバラッピング・エシェロン:overlapping echelon)にベルトに沿って静電塗装装置を配置することにより、ベルトの幅を横切った離型液の均一な塗布を達成することができる。実際の液体の分布は、ベルトを横切って取り付けられた小さなメタルトークン(metal token)を用いた予備走行において測定することができる。トークンの除去および精密な計量はスプレイ分布を表しており、その結果、もし必要であれば、均一なスプレイのために、スプレイ装置が調整され得る。
本発明は、その範囲を限定することを意図したものではないが、更に以下の例を参照しながら説明される。
(実施例)
ツインベルト式の鋳造機械を用いて、アルミニウム合金(タイプAA5754)の一連の鋳造が実行された。1.5mmの厚さを有する銅製のベルトが使用された。銅製ベルトは、研磨用のバンド(band)を用いて、鋳造方向に平行な溝をもってテクスチュアされ、そのテクスチュア(粗さ)は異なる粗さ値に変化させられた。粗さは、研磨の主たる方向を横切って測定された粗さ平均(Ra)を用いて定量化された。何れの特定のベルトについても、2つのテクスチュアが施された。ベルトを用意するために、異なるグレード(grade)の研磨用ベルトが用いられた:A18からA80であり、数字は、これら研磨紙を用いたときに得られるマイクロ・インチでの粗さ値(Ra)を指称している。新しく用意された溝を付したベルト表面の粗さは、新しく準備されたベルト表面の取得された模写(レプリカ:replica)から得られると同様に、携帯式の表面形状測定装置(0.8mmカットオフを伴った5.60mm評価長さ)を用いて得た。鋳造は、異なる鋳造速度で、また異なる熱流条件下で行った。
鋳造スラブの表面品質は表面の外観から決定され;より良好な品質が低い数値になるように、数字での評価システム(1から5)が創成された。最も良好なスラブ表面品質は、25−45マイクロ・インチ(0.64から1.14マイクロメータ)の範囲の表面粗さ測定値をもって用意されたベルトを用いたときに得られた。或る鋳造条件下では、この範囲は、18−80マイクロ・インチ(0.46から2.0マイクロメータ)の範囲まで広げられる。表1は、平均粗さ値(Ra)と、その結果得られる鋳造ストリップ上の全体の効果の評価を与えるものである。
(表1)
表面粗さ値に依存した鋳造品質

Figure 2007533458
本発明は幾つかの好ましい実施形態を参照して説明されたが、その記載は、発明の例証となるものであり、発明を限定するものとして解釈されるべきものではない。添付されたクレームによって規定される発明の要旨および範囲を逸脱することなく、当業者にとって種々の修正や変更が生じ得る。
本発明において用いられ得る連続ツインベルト式鋳造機械の簡略化した側面図である。 図1の鋳造機械の出口部分の拡大図である。 本発明に係る鋳造ベルトの表面を描写的に表示する図である。 図3の領域IVから採取したベルトの部分拡大断面図である。 鋳造表面から残留離型剤を除去するのに用いることができる離型層除去装置の簡略化した断面図である。 鋳造表面に離型剤の新たな層を塗布する装置を模式的に示す図である。 図6の簡略化された長手方向の縦断面図である。

Claims (36)

  1. 鋳造キャビティと、
    進行するとともに少なくとも部分的に前記鋳造キャビティを形造る長く伸びた鋳造表面を有する、少なくとも1つのフレキシブルな金属製ベルトと、
    前記少なくとも1つの金属製ベルトを前記鋳造表面の長手方向に回転させるモータであって、それにより、前記鋳造表面が前記長手方向において前記鋳造キャビティを通り過ぎるようになっている、モータと、
    溶融金属を前記鋳造キャビティに連続的に送給するのに適合した溶融金属供給装置であって、それにより、前記鋳造キャビティに供給された溶融金属が、凝固し、連続したストリップインゴットとして前記少なくとも1つのベルトの回転によって前記鋳造キャビティから移動するようになっている、溶融金属供給装置と、を備え、
    前記鋳造表面には、実質的に同一方向に方位付けられた複数の溝が設けられている、
    ことを特徴とする連続ベルト式鋳造装置。
  2. 前記複数の溝は前記鋳造表面に表面粗さ(Ra)を与え、該表面粗さ(Ra)は、18−80マイクロ・インチ(0.46から2.0マイクロメータ)の範囲であることを特徴とする請求項1記載の装置。
  3. 前記鋳造表面の粗さ(Ra)は、18−65マイクロ・インチ(0.46から1.65マイクロメータ)の範囲であることを特徴とする請求項2記載の装置。
  4. 前記鋳造表面の粗さ(Ra)は、25−45マイクロ・インチ(0.64から1.14マイクロメータ)の範囲であることを特徴とする請求項2記載の装置。
  5. 前記少なくとも1つの鋳造ベルトは、銅製または銅合金製であることを特徴とする請求項1記載の装置。
  6. 前記少なくとも1つの鋳造ベルトは、アルミニウム製またはアルミニウム合金製であることを特徴とする請求項1記載の装置。
  7. 前記少なくとも1つの鋳造ベルトは鋼製であることを特徴とする請求項1記載の装置。
  8. 前記溝は、前記鋳造表面の長手方向の45度以内の方向に方位付けられていることを特徴とする請求項1記載の装置。
  9. 前記溝は、実質的に前記鋳造表面の長手方向に方位付けられていることを特徴とする請求項1記載の装置。
  10. 前記鋳造装置は2つのベルトを備えたツインベルト式の鋳造機であることを特徴とする請求項1記載の装置。
  11. 前記鋳造表面が前記鋳造キャビティ内で溶融金属に接触する前に、少なくとも部分的に揮発性の液体離型剤を前記鋳造表面に供給するのに適合した供給装置を備えていることを特徴とする請求項1記載の装置。
  12. 前記鋳造表面が前記鋳造キャビティを出て前記連続したストリップインゴットから分離した後に、前記鋳造表面から前記離型剤を除去するのに適合した除去装置を更に備えていることを特徴とする請求項10記載の装置。
  13. 前記金属製ベルトが前記鋳造キャビティを通過するときに、前記金属製ベルトの背面に冷却剤を適用する手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の装置。
  14. 金属を鋳造して連続ストリップインゴットに形成する方法であって、
    伸長した鋳造表面を有する少なくとも1つのフレキシブルな金属製ベルトに、進行するとともに少なくとも部分的に前記鋳造キャビティを形造る鋳造表面を設けることにより、鋳造キャビティを形成する工程と、
    溶融金属を前記鋳造キャビティに連続的に供給する工程と、
    前記ベルトを前記鋳造表面の長手方向に回転させて、前記溶融金属を前記鋳造キャビティを通して引き出し、前記鋳造キャビティ内で前記溶融金属が凝固するときに形成されたストリップインゴットを前記鋳造キャビティから移動させる工程と、を備え、
    前記鋳造表面には、実質的に同一方向に方位付けられた複数の溝が設けられている、
    ことを特徴とする方法。
  15. 前記鋳造表面は当該鋳造表面に表面粗さ(Ra)を与える複数の溝を備え、該表面粗さ(Ra)は、18−80マイクロ・インチ(0.46から2.0マイクロメータ)の範囲であることを特徴とする請求項14記載の方法。
  16. 前記鋳造表面は、当該鋳造表面に18−65マイクロ・インチ(0.46から1.65マイクロメータ)の範囲で表面粗さ(Ra)を与える溝を備えていることを特徴とする請求項15記載の方法。
  17. 前記鋳造表面は、当該鋳造表面に25−45マイクロ・インチ(0.64から1.14マイクロメータ)の範囲で表面粗さ(Ra)を与える溝を備えていることを特徴とする請求項15記載の方法。
  18. 銅製または銅合金製の前記少なくとも1つの鋳造ベルトを設けることを特徴とする請求項14記載の方法。
  19. アルミニウム製またはアルミニウム合金製の前記少なくとも1つの鋳造ベルトを設けることを特徴とする請求項14記載の方法。
  20. 鋼製の前記少なくとも1つの鋳造ベルトを設けることを特徴とする請求項14記載の方法。
  21. 前記複数の溝を前記鋳造表面の長手方向の45度以内の方向に方位付けることを特徴とする請求項14記載の方法。
  22. 前記複数の溝を実質的に前記鋳造表面の長手方向に方位付けることを特徴とする請求項14記載の方法。
  23. 前記鋳造キャビティを形造るために2つのベルトを備えることを特徴とする請求項14記載の方法。
  24. 前記鋳造キャビティに、前記溶融金属として溶融したアルミニウム又はアルミニウム合金を供給することを特徴とする請求項14記載の方法。
  25. 前記鋳造表面が前記溶融金属に接触する前に、少なくとも部分的に揮発性の液体離型剤を前記鋳造表面に供給する工程を更に備えている、ことを特徴とする請求項14記載の方法。
  26. 前記鋳造表面が前記鋳造キャビティを出て前記連続したストリップインゴットから分離した後に、前記鋳造表面から前記離型剤を除去する工程を更に備えていることを特徴とする請求項14記載の方法。
  27. 前記ベルトが前記鋳造キャビティを通過するときに、前記ベルトの背面に冷却剤を適用する工程を更に備えていることを特徴とする請求項14記載の方法。
  28. 連続ベルト式鋳造機での使用に適した鋳造ベルトであって、実質的に同一方向に方位付けられた複数の溝を備えた伸長する鋳造表面を有する、フレキシブルな金属製ベルトでなることを特徴とする連続ベルト式鋳造機での使用に適合した鋳造ベルト。
  29. 前記複数の溝は前記鋳造表面に表面粗さ(Ra)を与え、該表面粗さ(Ra)は、18−80マイクロ・インチ(0.46から2.0マイクロメータ)の範囲であることを特徴とする請求項28記載の鋳造ベルト。
  30. 前記鋳造表面の粗さ(Ra)は、18−65マイクロ・インチ(0.46から1.65マイクロメータ)の範囲であることを特徴とする請求項28記載の鋳造ベルト。
  31. 前記鋳造表面の粗さ(Ra)は、25−45マイクロ・インチ(0.64から1.14マイクロメータ)の範囲である
    ことを特徴とする請求項28記載の鋳造ベルト。
  32. 前記ベルトは、銅製または銅合金製であることを特徴とする請求項28記載の鋳造ベルト。
  33. 前記ベルトは、アルミニウム製またはアルミニウム合金製であることを特徴とする請求項28記載の鋳造ベルト。
  34. 前記ベルトは鋼製であることを特徴とする請求項28記載の鋳造ベルト。
  35. 前記溝は、前記鋳造表面の長手方向の45度以内の方向に方位付けられていることを特徴とする請求項28記載の鋳造ベルト。
  36. 前記溝は、実質的に前記鋳造表面の長手方向に方位付けられていることを特徴とする請求項28記載の鋳造ベルト。
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