JP2007529226A - Sfec、精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質 - Google Patents

Sfec、精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質 Download PDF

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Abstract

本発明は、精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質、SFEC、SFECタンパク質またはペプチドをコードする単離核酸、SFECタンパク質に特異的な抗体、およびSFECタンパク質のSFEC活性のアンタゴニストの同定のための使用に関する。本発明はまた、SFEC発現、レベルおよび機能を調節することを含む避妊方法にも関する。SFECは精子の運動性に必須であると考えられており、精子の特定の領域に局在し、したがって、SFEC活性のアンタゴニストは避妊薬として有用であると予測される。

Description

関連出願とのクロスリファレンス
本出願は35 U.S.C. セクション 119(e)にしたがって、2004年3月17日出願の米国仮出願第60/554085号および2004年9月20日出願の米国仮出願第60/61481号からの優先権を主張する。
米国政府の権利
本発明は国立衛生研究所により与えられた認可番号TW 00654の下で米国政府の支援によりなされた。米国政府は本発明における一定の権利を有しうる。
背景
精子の運動性は機能的な鞭毛に依存する。精子鞭毛は線維鞘を含むいくつかの細胞骨格成分からなる。線維鞘は、哺乳類の精子鞭毛の主部セグメントにおける独特の細胞骨格成分である。線維鞘は、軸糸(運動性スライド装置(motile sliding apparatus))および外側緻密線維(outer dense fibers)を囲み、精子鞭毛の主部領域の範囲を規定する。それは精子形成に際して遠位から近位へと集まった緊密に並んだ半円のうね(ribs)により連結した2つの縦の柱(longitudinal column)からなる。線維鞘のタンパク質組成の包括的な概説が最近書かれた(Eddy et al、Microsc Res Tech. 2003、61:1:103-15)。
線維鞘が解糖のための足場として作用するという知見は、2つの解糖系の酵素、ヘキソキナーゼ 1およびグリセルアルデヒド 3 ホスファートデヒドロゲナーゼが、線維鞘のうねおよび縦の柱に局在しているという光学顕微鏡および電子顕微鏡での観察に基づく。
主部(principal piece)は精子尾部の最も長いドメインであり、ミトコンドリアを欠くにもかかわらず、それは、軸糸、外側緻密線維および線維鞘 (FS)を含む鞭毛の主な細胞骨格要素を含み、線維鞘の構造は主部に限られている。以前の報告によると2つの解糖系酵素、ヘキソキナーゼおよびGAPDHは線維鞘に局在しており、FSの解糖における役割が推測された。しかし現在、主部におけるエネルギー産生についてはほとんど知られておらず、現在、遠位鞭毛に沿った力作成モーターとして機能するダイニン ATPaseへのエネルギー転移を説明する機構は知られていない。
現在までに線維鞘のいくつかの機能が知られている:1)線維鞘は、精子の軸糸の保護帯として機能しつつ、鞭毛の柔軟性を維持し、鞭毛の拍動面に影響を与える;2)線維鞘は、そのA キナーゼアンカータンパク質であるAKAP 3およびAKAP4を介して、タンパク質キナーゼ Aを含むシグナル伝達、ロポリン(rhoporrin)およびロフィリン(rhophilin)を介するRho シグナル伝達系路、そしておそらくCABYRを介するカルシウムシグナル伝達に関与する酵素のための足場として作用する;そして、3)線維鞘は解糖系に関与する酵素の足場となる。
線維鞘が解糖のための足場として作用するという知見は、解糖系の2つの酵素である、ヘキソキナーゼ 1およびグリセルアルデヒド 3 ホスファートデヒドロゲナーゼが線維鞘のうねおよび縦の柱に局在するという光学顕微鏡および電子顕微鏡による観察に基づく。
避妊のよりよい方法ならびに精子の運動性および受精能の問題の迅速かつ経済的、正確な診断試験が求められている。本発明はこれらの要求を満たすものである。
本発明の様々な態様の概要
本明細書に記載されるように、さらなる解糖系の酵素が線維鞘と結合していることが見いだされ、線維鞘が解糖の足場として作用するというさらなる証拠が提供された。さらに、本出願人らはこのたび新規な、精子特異的線維鞘タンパク質を見いだし、これは、アデニンヌクレオチド転位酵素として機能すると考えられ、したがって精子鞭毛エネルギーキャリア (SFEC)と命名した。さらに、本出願人らはこのたび、新規な精子特異的線維鞘タンパク質が、中片(midpiece)ではなく精子尾部の主部に位置していることを見いだした。
本発明は、精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質 (SFEC)、SFECに特異的な抗体および該タンパク質をコードする核酸配列、ならびにかかる化合物を含む組成物に関する。SFECは精子の運動性に必須であると考えられ、したがってSFEC活性のアンタゴニストは避妊薬としての有用性を有すると予測される。本発明のタンパク質、アミノ酸配列、核酸配列または抗体を含む組成物はまた、本発明によると、受精能の診断上の指標として有用であり得る。
本発明の様々な側面および態様を以下にさらに詳細に説明する。
図面の簡単な説明
上記概説ならびに、以下の本発明の好ましい態様の詳細な説明は、添付の図面を参照するとよりよく理解されるであろう。本発明を例示する目的で、図面において現時点で好ましい態様が示される。しかし、本発明は図示される正確な配置および装置に限定されるものではないことを理解されたい。
図面において:
図1は、機械的および化学的手段によって調製し、透過電子顕微鏡法を用いて可視化した単離ヒト線維鞘の画像を表す。
図2は、単離ヒト線維鞘タンパク質(FS)のSDS-PAGE 像を表す。FSの命名は右側に示し、表1において要約されている。
図3は、C265 バンドのミクロシークエンシングおよびヒトおよびマウスの関連タンパク質配列から同定したペプチド配列を模式的に要約する。
図4は、ヒト脾臓、胸腺、前立腺、精巣、卵巣、小腸、大腸および白血球から単離したポリ A RNAの、32P標識 SFEC cDNAでプローブしたノザンブロットを表し、SFECが精巣特異的タンパク質であることを示す。ORFの全長に対応するSFEC cDNAを32Pで放射標識して2μgのポリ(A)+ mRNAとハイブリダイズさせたところ、2.4-kb メッセンジャーが精巣のRNAにのみ存在することが明らかになった。分子量マーカーのサイズは左側に示す。SFEC cDNAに用いたヒトノザンブロットを剥がし(strip)、陽性対照としてのβ-アクチンの32P標識 cDNAとハイブリダイズさせた。
図5は、76種類のヒト組織からのRNAのドットブロット分析 (上側パネル)を表し、これもまた、SFECが精巣特異的タンパク質であることを示す。上側パネルはドットブロットの像を表し、下側パネルは分析を要約するヒト多組織発現(MTE)アレイの模式図である。下側パネルは12の列と行AからHによって区分されている。ヒト多組織発現アレイは、32P標識 ヒトSFEC cDNAでプローブされた76種類のヒト組織からのポリ A+ RNA (右の図を参照)の正規化(nomalized)ローディングを含むものであった。大腸菌 DNAもハイブリダイズさせた。GenBank Submission (添付参照) GenBankにより、以下のGenBank 受入番号が与えられた:ヒト: AY550240およびマウス:AY550241。
図6は、上側、中央、下側パネルを含むが、SFECの機能的ドメインの模式的表示である。
図7は、SFECとその他の類似のドメインを有するヒトタンパク質とのアミノ酸配列アラインメントの模式的表示である。
図8は、エネルギー産生に関与するヒト線維鞘タンパク質、それらの組織分布、およびそれらの遺伝子座を要約する模式的表示である。
図9は、図9A、9Bおよび9Cを含み、SFECタンパク質の電気泳動分析を表す。図9Aは、誘導(中央のレーン)および非誘導(右のレーン) 切断型組換えSFEC (117 アミノ酸残基)のクーマシーブルー染色したゲルの像であり、組換えタンパク質 (矢印)はBLR (DE3) 宿主細胞で発現させた。矢印はSFECの染色バンドを示す。左のレーン (対照)は分子量マーカーペプチドレーンである。図9Bは、誘導(左のレーン)および非誘導 (右のレーン) 組換えSFECの抗ヒスチジン抗体を用いたウェスタンブロット分析像である。図9Cは、SYPRO Ruby 染色によって染色したアフィニティー精製組換えSFEC (矢印)の像を示す。
図10は、図10A、10Bおよび10Cを含み、組換えSFEC、ヒト精子、および単離FS タンパク質の抗-SFEC 抗体を用いたウェスタンブロット分析を表す。図10Aは、免疫後血清 (左のレーン)と免疫前血清 (右のレーン)とを比較する、電気泳動した組換えSFEC (recSFEC)の検出にSFECに対する抗体を用いたウェスタンブロット分析像である。図10Bは、ヒト精子についての、免疫後血清 (左のレーン)と免疫前血清 (右のレーン) とを比較する、SFECに対する抗体を用いたウェスタンブロット分析像である。図10Cは、電気泳動したFS タンパク質についての、免疫後血清 (左のレーン)と免疫前血清 (右のレーン) とを比較する、SFECに対する抗体を用いたウェスタンブロット分析像である。免疫後血清は組換えSFEC (A)およびヒト精子タンパク質(B)についての38、32および20 kDaの3つのバンドを認識した。FS(C)は32 kDaにて認識され、これは質量分析により最初にSFECであると同定されている。免疫前血清は、ヒト精子 (B)、FS (C) または組換えSFEC (A)のいずれのタンパク質も認識しなかった。
図11は、図11A、11B、11C、11D、11E、および11Fを含み、組換えヒトSFECタンパク質に対するラット血清を用いたヒトの泳動する(swim-up)精子の間接的免疫蛍光分析を表し、これによると、SFECはヒト精子の鞭毛の主部に局在していた。図11Aは、図11B (FITCのみ)、図11C (FITC + フェーズ)、および図11D (FITC + DAPI)に対応する位相差顕微鏡写真像を表す。図11Eは、精子の位相差顕微鏡写真像である。図11Fは、免疫前血清を用いた対照実験の、図11Eに対応するFITC像である。大きい矢印- 主部; 小さい矢印- 中片。精子のおよそ50%が、N-末端 120 アミノ酸に対するSFEC 抗体によって認識された。
発明の詳細な説明
定義
特に断りのない限り、本明細書において用いるすべての技術および科学用語は、本発明の属する分野の当業者によって通常理解されいる意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等のあらゆる方法と材料が本発明の実施または試験において利用できるが、好ましい方法および材料は本明細書に記載されるものである。
本明細書において用いる場合、以下の用語はそれぞれこの節において記載されている意味を有する。
本明細書において用いる「1の」および「1つの」という語は、それらの語が文法的に修飾するものの1つまたは2以上(即ち少なくとも1つ)を意味する。例えば、「1つの要素」は、1またはそれ以上の要素を意味する。
本明細書において用いる場合、アミノ酸は、その正式名、それに対応する3文字コードまたはそれに対応する1文字コードによって以下の表に示されるように表される。
Figure 2007529226
本明細書において用いる場合「アミノ酸」という表現は、天然および合成アミノ酸の両方、そしてDおよびLアミノ酸の両方を含む意味である。「標準アミノ酸」とは、天然ペプチドにおいて通常みられる20の標準L-アミノ酸のいずれをも意味する。「非標準アミノ酸残基」とは、合成により調製されたか天然源由来であるかにかかわらず、標準アミノ酸以外のあらゆるアミノ酸を意味する。本明細書において用いる場合、「合成アミノ酸」はまた、化学修飾されたアミノ酸も含み、これらに限定されないが、塩、アミノ酸誘導体(例えば、アミド)、および置換体が含まれる。本発明のペプチドに含まれるアミノ酸は、特にカルボキシ末端またはアミノ末端において、メチル化、アミド化、アセチル化またはペプチドの循環半減期をその活性に悪影響を及ぼすことなく変化させることが出来るその他の化学基による置換によって修飾されていてもよい。さらに、ジスルフィド結合は本発明のペプチドにおいて存在してもよいし存在しなくてもよい。
「アミノ酸」という用語は「アミノ酸残基」と互換的に用いられ、遊離アミノ酸およびペプチドのアミノ酸残基を指しうる。遊離アミノ酸またはペプチドの残基のいずれを指すために該用語が用いられているかは文脈から明らかであろう。
アミノ酸は以下の一般構造を有する。
Figure 2007529226
アミノ酸は側鎖Rに基づいて7つの群に分類することが出来る:(1) 脂肪族側鎖、(2)ヒドロキシル (OH) 基を含む側鎖、(3) 硫黄原子を含む側鎖、(4)酸性基またはアミド基を含む側鎖、(5) 塩基性基を含む側鎖、(6) 芳香環を含む側鎖、および(7)側鎖がアミノ基に融合しているイミノ酸であるプロリン。
本発明のペプチド化合物の記載に用いられる命名法は、アミノ基が各アミノ酸残基の左に、カルボキシ基が右に位置する常套の慣行に従う。本発明の選択された特定の態様を表す式において、アミノ末端基およびカルボキシ末端基は、具体的には示さないが、特に断りのない限り、生理的pH値でとると考えられる形態にあると理解されたい。
本明細書において用いる場合、「塩基性」または「正に荷電した」アミノ酸という用語は、R基がpH 7.0にて正味の正の電荷を有するアミノ酸を指し、これらに限定されないが、標準アミノ酸である、リジン、アルギニン、およびヒスチジンが含まれる。
本明細書において用いる場合、「抗体」という用語は、抗原上の特定のエピトープに特異的に結合することが出来る免疫グロブリン分子を指す。抗体は、天然源または組換え源由来のインタクトな免疫グロブリンであってもよいし、インタクトな免疫グロブリンの免疫反応性部分であってもよい。抗体は典型的には免疫グロブリン分子の四量体である。本発明における抗体は様々な形態で存在し得、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab)2、ならびに一本鎖抗体およびヒト化抗体、およびそれらの断片が挙げられる。
本明細書において用いる場合、「SFEC抗体」という用語は、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列あるいはその断片に特異的に結合する抗体を指す。
本明細書において用いる場合、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」またはアンチセンス核酸という用語は、正常細胞または疾患細胞に存在する核酸に相補的な核酸ポリマー、少なくともその部分を意味する。「アンチセンス」とは具体的には、タンパク質をコードする二本鎖DNA分子の非コード鎖の核酸配列、または非コード鎖に実質的に相同的な配列を意味する。本明細書において定義されるように、アンチセンス配列はタンパク質をコードする二本鎖DNA分子の配列に相補的である。アンチセンス配列はDNA分子のコード鎖のコード部分にのみ相補的である必要はない。アンチセンス配列はタンパク質をコードするDNA分子のコード鎖上に特定される調節配列と相補的であってもよく、ここで調節配列はコード配列の発現を制御する。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、これらに限定されないが、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドおよびその他のオリゴヌクレオチド修飾体が挙げられる。
SFECタンパク質、ペプチド、断片、誘導体、ホモログおよびアナログに関して本明細書において用いる場合、「生理活性」とは、タンパク質、ペプチド、断片、誘導体、ホモログおよびアナログが、本明細書に記載されるSFECタンパク質として機能する能力を有することを意味する。
本明細書において用いる場合、SFECポリペプチドの「生理活性断片」または「生物活性断片」という用語は、その天然リガンドに特異的に結合することが出来る全長タンパク質の天然または合成部分を含む。
本明細書において用いる場合、「相補的」とは、2つの核酸、例えば2つのDNA分子の間のサブユニット配列相補性の広い概念を意味する。両方の分子の1つのヌクレオチド位置が、通常互いに塩基対形成することができるヌクレオチドによって占められている場合、それら核酸はその位置において互いに相補的であるとみなされる。したがって、2つの核酸は、分子のそれぞれのかなりの数(少なくとも 50%)の対応する位置が通常互いに塩基対形成するヌクレオチド(例えば、A:TおよびG:C ヌクレオチド対)によって占められている場合、互いに相補的である。したがって、第一の核酸領域のアデニン残基は、該第一の領域に逆平行である第二の核酸領域の残基がチミンまたはウラシルである場合、該残基と特異的水素結合を形成(「塩基対形成」)することが出来ることが知られている。同様に、第一の核酸鎖のシトシン残基は、該第一の鎖と逆平行である第二の核酸鎖の残基がグアニンである場合、第二の核酸鎖の該残基と塩基対形成することが出来ることが知られている。核酸の第一の領域は、同一または異なる核酸の第二の領域と、それら2つの領域が逆平行に配置しており、第一の領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基が第二の領域の残基と塩基対形成出来る場合、相補的である。好ましくは、該第一の領域は第一の部分を含み、該第二の領域は第二の部分を含み、それによって、該第一および第二の部分が逆平行に配置する場合、第一の部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%が第二の部分のヌクレオチド残基と塩基対形成できる。より好ましくは、第一の部分のすべてのヌクレオチド残基が第二の部分におけるヌクレオチド残基と塩基対形成できる。
「対照」細胞は、被験細胞またはサンプル細胞と同一の細胞タイプである細胞である。対照細胞は、正常対象または被験対象の処理に用いられる化合物で処理されていない対象から得られる。対照細胞は、例えば、被験細胞が調べられるのと全くまたはほとんど同時に調べることができる。対照細胞はまた、例えば、被験細胞が調べられるのと異なる時点で調べてもよく、そして対照細胞の調査結果を、記録される結果が被験細胞の調査によって得られた結果と比較できるように記録するとよい。対照細胞は、被験細胞群または被験対象以外の別の源または類似の源から得たものであってもよく、ここで被験細胞は試験が行われる疾患または障害を有すると疑われる対象から得られる。対照細胞はインビトロで試験してもインビボで試験してもよい。
本明細書において用いる場合、「検出可能なマーカー」または「レポーター分子」は、マーカーを含まない類似の化合物の存在下にてマーカーを含む化合物の特異的検出を可能とする原子または分子である。検出可能なマーカーまたはレポーター分子としては、例えば、放射性同位体、抗原決定基、酵素、ハイブリダイゼーションのために使用可能な核酸、発色団、フルオロフォア、化学発光分子、電気化学的に検出可能な分子、および蛍光偏光または光散乱を変化させる分子が挙げられる。
「検出」および「同定」という用語は本明細書において互換的に用いられる。
化合物の「有効量」または「治療上有効量」とは、その化合物が投与される対象に有益な効果を与えるのに十分な化合物の量である。
「コードする」とは、ポリヌクレオチド、例えば、遺伝子、cDNA、またはmRNAにおけるヌクレオチドの特定の配列の、生物学的工程において規定の配列のヌクレオチド(即ち、rRNA、tRNAおよびmRNA)または規定の配列のアミノ酸のいずれかを有するその他のポリマーおよび高分子の合成のためのテンプレートとして働く固有の性質およびその結果としての生物学的性質をいう。したがって、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳によって、細胞またはその他の生物学的系においてタンパク質を産生する場合、そのタンパク質をコードする。遺伝子またはcDNAの転写のためのテンプレートとして使用される、コード鎖、即ちmRNA 配列と同一であって、通常配列表に提供されるヌクレオチド配列と、非コード鎖との両方が、遺伝子またはcDNAのタンパク質またはその他の産物をコードすると称されうる。
SFEC mRNAに関して用いられる場合、「発現」という用語は、SFEC mRNAをコードする核酸配列を含む核酸の転写を指し、その結果SFEC mRNAが合成される。SFECタンパク質、またはそのホモログ、誘導体、あるいは断片に関して用いられる場合、「発現」はSFEC mRNAの翻訳を指し、その結果、SFECタンパク質、またはそのホモログ、誘導体、または断片のタンパク質が合成される。
「断片」または「セグメント」は、少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列の部分、または少なくとも1つのヌクレオチドを含む核酸配列の部分である。「断片」および「セグメント」という用語は本明細書において互換的に用いられる。タンパク質またはペプチドの断片は通常少なくとも約20アミノ酸の長さである。
本明細書において用いる場合、「相同的」とは、2つのポリマー分子間、例えば2つの核酸分子間、例えば2つのDNA分子間または2つのRNA分子間、あるいは2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列類似性を指す。2つの分子の両方におけるサブユニット位置が同一のモノマーサブユニットによって占められている場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれにおけるある位置がアデニンによって占められている場合、それらはその位置において相同的である。2つの配列間の相同性は同一または相同的な位置の数の直接的関数であり、例えば、2つの化合物配列における位置の半分(例えば、10サブユニット長のポリマーにおける5つの位置)が相同的である場合、その2つの配列は50%相同的であり、位置の90%、例えば、10のうち9が同一または相同的である場合、その2つの配列は90%の相同性を共有する。例えば、DNA 配列、3'ATTGCC5' と 3'TATGGC とは50%の相同性を共有する。
本明細書において用いる場合、「相同性」は「同一性」と同一の意味で用いられる。
2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間のパーセント同一性の決定は、数学アルゴリズムを用いて達成できる。例えば、2つの配列の比較に有用な数学アルゴリズムは、Karlin and Altschul (1993、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877)によって改変された、Karlin and Altschulアルゴリズム(1990、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268)である。このアルゴリズムは、Altschul、et al. (1990、J. Mol. Biol. 215:403-410)のNBLASTおよびXBLAST プログラムに導入されており、例えば、URLが、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/である全米バイオテクノロジー情報センター (NCBI) ワールドワイドウェブサイトにてアクセス可能である。本明細書に記載される核酸に対して相同的なヌクレオチド配列を得るためのBLASTヌクレオチドサーチは以下のパラメーターを用いてNBLAST プログラム (NCBIウェブサイトにて「blastn」と称されている)を用いて実行可能である:ギャップペナルティー = 5; ギャップ伸長ペナルティ = 2; ミスマッチペナルティー = 3; マッチリワード = 1; 期待値 10.0;およびワードサイズ = 11。本明細書に記載されるタンパク質分子と相同的なアミノ酸配列を得るための、BLASTタンパク質サーチは以下のパラメーターを用いてXBLAST プログラム(NCBIウェブサイトにて「blastn」と称されている)またはNCBI「blastp」プログラムによって実行可能である:期待値 10.0、BLOSUM62 スコアリングマトリックス。比較の目的でギャップ付きアラインメントを得るためには、Gapped BLASTがAltschul et al. (1997、Nucleic Acids Res. 25:3389-3402)に記載のようにして利用できる。あるいは、PSI-BlastまたはPHI-Blastを用いて、分子間の遠い関係(Id.)および共通パターンを共有する分子間の関係を検出する重複(iterated)サーチを実行することが出来る。BLAST、Gapped BLAST、PSI-Blast、およびPHI-Blast プログラムを用いる場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォールトパラメーターを用いればよい。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
2つの配列間のパーセント同一性は上記と同様の技術を用いて、ギャップを許容して、または許容せずに決定することが出来る。パーセント同一性の計算において、典型的には完全な一致が数えられる。
組換えポリヌクレオチドを含む「宿主細胞」は、「組換え宿主細胞」と称される。遺伝子が組換えポリヌクレオチドを含む組換え宿主細胞において発現した遺伝子は、「組換えポリペプチド」を産生する。
本明細書において用いる場合、「阻害する」という用語は、対照値と比較して少なくとも約10パーセント活性または機能を抑制または妨害することを意味する。好ましくは活性は対照値と比較して約50%、より好ましくは約75%、さらにより好ましくは約95%阻害される。「阻害する」、「妨害する」および「抑制する」は本明細書において互換的に用いられる。
本明細書において用いる場合、「説明材料」には、それに記載される様々な疾患または障害の緩和のためのキットにおける本発明のペプチドの有用性を知らせるために用いられ得る刊行物、記録、図表またはその他のあらゆる表現媒体が含まれる。所望により、またはそれの代わりに、説明材料は哺乳類の細胞または組織における疾患または障害の1以上の緩和方法を説明するものであってもよい。本発明のキットの説明材料は、例えば、見いだした本発明の化合物を含む容器に添付してもよいし、見いだした化合物を含む容器とともに出荷してもよい。あるいは説明材料は、説明材料と化合物とがレシピエントによって一緒に用いられるべきであるという注意を付した容器から離れて出荷してもよい。
「単離核酸」とは、天然状態においてそれと隣接している配列から分離されている核酸セグメントまたは断片をいい、例えば、DNA断片に通常隣接する配列、例えば、天然にそれが存在するゲノムにおいて該断片に隣接する配列から取り出された該DNA 断片をいう。この用語は、核酸に天然に付随するその他の成分、例えば、細胞においてそれに天然に付随するRNAまたはDNAまたはタンパク質から実質的に精製された核酸にも適用される。この用語にはそれゆえ、例えば、ベクター、自己複製プラスミドまたはウイルス、または原核または真核生物のゲノムDNAに組み込まれた組換えDNA、あるいはその他の配列と独立して、分離した分子として(例えば、PCRまたは制限酵素消化によって生じたcDNAまたはゲノムまたはcDNA 断片として)存在する組換えDNAが含まれる。それにはまた、さらなるポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも含まれる。
本明細書において用いる場合、「リガンド」は、標的化合物に特異的に結合する化合物である。リガンド (例えば、抗体)は、不均一な化合物のサンプルにおける化合物の存在を同定する結合反応においてリガンドが機能する場合、化合物「に特異的に結合する」または化合物「と特異的に免疫反応性」である。したがって、所定のアッセイ (例えば、イムノアッセイ)条件下で、リガンドは優先的に特定の化合物に結合し、サンプル中に存在するその他の化合物には有意な程度で結合しない。例えば、抗体は、抗体の作成対象であるエピトープを担持する抗原に対してイムノアッセイ条件下で特異的に結合する。様々なイムノアッセイ形式を、特定の抗原と特異的に免疫反応性の抗体の選択に使用することができる。例えば、固相ELISAイムノアッセイが抗原と特異的に免疫反応性のモノクローナル抗体の選択に常套的に用いられる。特異的免疫反応性の判定に用いうるイムノアッセイ形式および条件の説明については、Harlow and Lane、1988、 Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Publications、New Yorkを参照されたい。
本明細書において用いる場合、「結合」という用語は、2つの基の間の連結を意味する。連結は共有結合または非共有結合のいずれであってもよく、これらに限定されないが イオン結合、水素結合、および疎水性/親水性相互作用が挙げられる。
本明細書において用いる場合、「リンカー」という用語は、2つの別の分子を共有結合または非共有結合によって、例えば、イオン結合または水素結合あるいはファンデルワールス相互作用によって連結させる分子をいう。
本明細書において用いる場合、「修飾」化合物とは、化合物の修飾または誘導体化をいい、それは化学的修飾、例えば、機能的能力または活性を上昇または変化させるための化合物の化学的改変におけるものであってよい。
本明細書において用いる場合、「核酸」、「DNA」および類似の用語はまた、核酸アナログ、即ち、ホスホジエステル骨格以外の骨格を有するアナログも含む。例えば、いわゆる当該技術分野で知られており、骨格においてホスホジエステル結合の代わりにペプチド結合を有する「ペプチド核酸」も本発明の範囲内であると考えられる。
特に断りのない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いに縮重版であって同一のアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列にはイントロンも含まれうる。
「作動可能に連結した」とは、成分がそれらの通常の機能を実行するために構成される並置を意味する。したがって、コード配列に作動可能に連結した制御配列またはプロモーターはコード配列の発現の実行を可能とする。
「ペプチド」という用語は、アミノ酸が天然または合成(非天然)アミノ酸である3以上のアミノ酸の配列を含む。ペプチド疑似体には以下の1以上の修飾を有するペプチドが含まれる:
1.1以上のペプチジル--C(O)NR--連結(結合)が以下のような非ペプチジル結合に置換されているペプチド: 例えば、--CH2--カルバメート結合(--CH2OC(O)NR--)、ホスホネート結合、--CH2--スルホンアミド(--CH2--S(O)2NR--)結合、尿素(--NHC(O)NH--)結合、--CH2--二級アミン結合、またはアルキル化ペプチジル結合(--C(O)NR--)、ここで、RはC1-C4アルキルである;
2. N末端が--NRR1基、--NRC(O)R 基、--NRC(O)OR 基、--NRS(O)2R 基、--NHC(O)NHR 基へと誘導体化されているペプチド、ここで、RおよびR1は水素またはC1-C4 アルキルであるがただし、RおよびR1が両方水素であることはない;
3. C末端が--C(O)R2へと誘導体化されているペプチド、ここで、R2はC1-C4 アルコキシ、および--NR3R4 からなる群から選択され、ここでR3およびR4 は独立に水素およびC1-C4アルキルからなる群から選択される。
ペプチドにおける天然アミノ酸残基は以下のようにIUPAC IUB Biochemical Nomenclature Commissionの推奨に従って略称する: フェニルアラニンはPheまたはF; ロイシンはLeuまたはL; イソロイシンはIleまたはI; メチオニンはMetまたはM; ノルロイシンはNle; バリンはValまたはV; セリンはSerまたはS; プロリンはProまたはP; スレオニン はThrまたはT; アラニンは AlaまたはA; チロシンはTyrまたはY; ヒスチジンはHisまたはH; グルタミンはGlnまたはQ; アスパラギンはAsnまたはN; リジンはLysまたはK; アスパラギン酸はAspまたはD; グルタミン酸は GluまたはE; システインはCysまたはC; トリプトファンはTrpまたはW; アルギニンはArgまたはR; グリシンはGlyまたはG、そしてXは任意のアミノ酸。その他の天然アミノ酸としては例えば、4-ヒドロキシプロリン、5-ヒドロキシリジンなどが含まれる。
合成または非天然アミノ酸とは、天然にはインビボで存在しないが、にもかかわらず、本明細書に記載されるペプチド構造中に組み込まれうるアミノ酸をいう。その結果得られる「合成ペプチド」は、20の天然の遺伝子によりコードされるアミノ酸以外のアミノ酸をペプチドの1、2またはそれ以上の位置にて含む。例えば、ナフチルアラニンは合成を容易にするためにトリプトファンを置換してもよい。ペプチド中に置換されうるその他の合成アミノ酸には、L-ヒドロキシプロピル、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニル、アルファアミノ酸、例えば、L-アルファヒドロキシリジルおよびD-アルファメチルアラニル、L-アルファ-メチルアラニル、ベータ-アミノ酸、およびイソキノリルが挙げられる。D-アミノ酸および非天然合成アミノ酸もまた、ペプチドに導入することが出来る。その他の誘導体には、20の遺伝子にコードされるアミノ酸(即ちLまたはD-アミノ酸のいずれか)の天然側鎖をその他の側鎖により置換したものが含まれる。
本明細書において用いる場合、「保存的アミノ酸置換」という用語は、以下の5群のうち1つの中でのアミノ酸交換として定義される:
I. 小さい脂肪族であって、非極性またはわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr、Pro、Gly;
II. 極性であって、負に荷電した残基およびそれらのアミド:Asp、Asn、Glu、Gln;
III. 極性であって、正に荷電した残基:His、Arg、Lys;
IV. 大きい脂肪族であって、非極性の残基:Met Leu、Ile、Val、Cys
V. 大きい芳香族残基:Phe、Tyr、Trp。
本明細書において用いる場合、「医薬上許容される担体」という用語はあらゆる標準的な医薬の担体を含み、例えば、リン酸緩衝食塩水、水、乳濁液、例えば、油/水または水/油乳濁液、および様々なタイプの湿潤剤が挙げられる。この用語はまた、US 連邦政府の規制当局によって認可されているか、またはヒトを含む動物に使用するために US 薬局方に挙げられているあらゆる剤を含む。
「複数」は、少なくとも2を意味する。
「ポリリンカー」は一連の3以上の狭い間隔で並んだ制限エンドヌクレアーゼ認識配列を含む核酸配列である。
本明細書において用いる場合、「プロモーター/調節配列」という用語は、プロモーター/調節配列に作動可能に連結した遺伝子産物の発現に必要な核酸配列を意味する。いくつかの例において、この配列はコアプロモーター配列であり得、別の例において、この配列はまた、エンハンサー配列およびその他の遺伝子産物の発現に必要な調節要素も含みうる。プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的に遺伝子産物を発現させるものであってよい。
「構成的」プロモーターは、それが作動可能に連結した遺伝子の発現を、細胞において恒常的に引き起こすプロモーターである。例えば、細胞内ハウスキーピング遺伝子の発現を引き起こすプロモーターは構成的プロモーターであるとみなされる。
「誘導可能」プロモーターは、遺伝子産物をコードまたは特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結した場合、プロモーターに対応する誘導物質が細胞内に存在する場合のみ実質的に生細胞における遺伝子産物の産生をもたらすヌクレオチド配列である。
本明細書において用いる場合、「外来プロモーター」という用語は、コード配列とプロモーターとが天然では連結していないコード配列に作動可能に連結したあらゆるプロモーターをいう(即ち、組換えプロモーター/コード配列コンストラクト)。
「組織特異的」プロモーターは、遺伝子産物をコードまたは特定するポリヌクレオチドに作動可能に連結した場合、細胞がプロモーターに対応する組織タイプの細胞である場合にのみ実質的に生細胞における遺伝子産物の産生をもたらすヌクレオチド配列である。
本明細書において用いる場合、末端アミノ基に関する「保護基」とは、末端アミノ基がペプチド合成において常套に用いられる様々なアミノ末端保護基のいずれかと結合しているペプチドの末端アミノ基を指す。かかる保護基としては、例えば、アシル保護基、例えば、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル、スクシニル、およびメトキシスクシニル; 芳香族ウレタン保護基、例えば、ベンジルオキシカルボニル;および脂肪族ウレタン保護基、例えば、tert-ブトキシカルボニルまたはアダマンチルオキシカルボニルが挙げられる。好適な保護基については、Gross and Mienhofer、eds.、The Peptides、vol. 3、pp. 3-88 (Academic Press、New York、1981)を参照されたい。
本明細書において用いる場合、末端カルボキシ基に関する「保護基」とは、末端カルボキシル基が様々なカルボキシル-末端保護基のいずれかと結合しているペプチドの末端カルボキシル基をいう。かかる保護基としては、例えば、tert-ブチル、ベンジル、またはエステルまたはエーテル結合により末端カルボキシル基に連結したその他の許容される基が挙げられる。
本明細書において用いる場合、「精製」という用語および同様の用語は、天然環境において分子または化合物と通常結合しているその他の成分に対するその分子または化合物の濃縮をいう。「精製」という用語は必ずしも特定の分子の完全な純粋性が工程において達成されたことを示すわけではない。本明細書において用いる場合、「高度に精製された」化合物は、純度が90%を超える化合物をいう。
「組換えポリペプチド」は、組換えポリヌクレオチドの発現によって産生されるものである。
本明細書において用いる場合、「精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の調節因子」は、SFEC発現、レベルまたは機能を調節する化合物をいう。1つの側面において、調節因子はSFEC発現、レベルまたは機能の阻害剤でありうる。別の側面において、調節因子はSFEC発現、レベルまたは機能を刺激または増強しうる。
本明細書において用いる場合、「サンプル」とは、対象からの生物学的サンプルをいい、例えば、正常組織サンプル、腫瘍組織サンプル、血液、尿、精液、または目的の化合物または細胞を含む対象から得られる物質のあらゆるその他の源が挙げられる。
本明細書において用いる場合、「SFEC」は精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質を表す。SFECは、「精巣アデニン核トランスポーター」(「tANT」)と互換的に用いられ得る。
本明細書において用いる場合、「SFEC活性」とは、SFECの機能または性質をいい、例えば、これらに限定されないが、アデニン核トランスポーターとして機能するその能力が挙げられる。
本明細書において用いる場合、「SFEC-関連疾患または障害」とは、突然変異または欠陥のあるSFEC遺伝子またはタンパク質、またはSFECの異常な発現またはSFEC発現の異常な調節、あるいはSFECの異常なレベルと関連のある疾患または障害をいう。
本明細書において用いる場合、「SFECポリペプチド」およびそれに類似の用語は、配列番号2、配列番号4、およびそれらの断片からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをいう。
本明細書において用いる場合、「対象」は、ヒトであっても非ヒト動物であってもよい。非ヒト動物としては、例えば、家畜および愛玩動物、例えば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコおよびマウスといった哺乳類、ならびに、爬虫類、鳥類および魚類が挙げられる。好ましくは、対象はヒトである。診断または治療の「対象」はヒトまたは非ヒト動物である。
本明細書において用いる場合、「実質的に類似のアミノ酸配列」とは、参照ペプチドに対して少なくとも約70%のアミノ酸配列同一性または類似性を有するペプチドまたはペプチドの部分をいう。好ましくは、配列同一性は少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、特に好ましくは少なくとも約90%、さらに好ましくは少なくとも約95%、そしてもっとも好ましくは少なくとも約98%である。アミノ酸配列類似性または同一性は、BLAST (basic local alignment search tool) 2.0.14 アルゴリズムを用いるBLASTPおよびTBLASTN プログラムを用いて算出することが出来る。これらプログラムに用いられるデフォールト設定は本発明の目的のために実質的に類似のアミノ酸配列を同定するのに好適なものである。
「実質的に類似の核酸配列」は、対応する配列が参照核酸配列によってコードされるペプチドと実質的に同一の構造および機能を有するペプチドをコードする参照核酸配列に対応する核酸配列を意味する; 例えばそれはペプチド機能に対する有意な影響を与えないアミノ酸変化のみを有するものである。好ましくは、実質的に類似の核酸配列は参照核酸配列によってコードされるペプチドをコードするものである。実質的に類似の核酸配列と参照核酸配列との同一性のパーセンテージは少なくとも70%である。好ましくは、該配列同一性は少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、特に好ましくは少なくとも約90%、さらに好ましくは少なくとも約95%、そしてもっとも好ましくは少なくとも約98%である。核酸配列の実質的類似性は2つの配列の配列同一性を例えば物理的/化学的方法(即ち、ハイブリダイゼーション)、または、コンピュータアルゴリズムを用いた配列アラインメントによって比較することによって決定できる。参照ヌクレオチド配列に対してヌクレオチド配列が実質的に類似であるかを判定するために好適な核酸ハイブリダイゼーション条件は以下の通りである: 7%ドデシル硫酸ナトリウムSDS、0.5 M NaPO4、1 mM EDTA中、50℃でのハイブリダイゼーション、2X 標準クエン酸塩溶液 (SSC)、0.1% SDS、50℃での洗浄; 好ましくは、7% (SDS)、0.5 M NaPO4、1 mM EDTA中、50℃でのハイブリダイゼーション、1X SSC、0.1% SDS、50℃での洗浄; 好ましくは7% SDS、0.5 M NaPO4、1 mM EDTA中、50℃でのハイブリダイゼーション、0.5X SSC、0.1% SDS、50℃での洗浄;より好ましくは、7% SDS、0.5 M NaPO4、1 mM EDTA中、50℃でのハイブリダイゼーション、0.1X SSC、0.1% SDS、65℃での洗浄。2つの核酸配列の間の実質的な類似性を判定するのに好適なコンピュータアルゴリズムとしては、GCS プログラムパッケージ (Devereux et al. (1984)、Nucl. Acids Res. 12:387)、およびBLASTNまたはFASTA プログラム (Altschul et al. (1990)、前掲)が挙げられる。これらのプログラムのデフォールト設定は本発明の目的の核酸配列の実質的な類似性の判定に好適なものである。
本明細書において用いる場合、「治療する」という用語は、特定の疾患、障害または症状の予防または特定の障害または症状に関連する症候の緩和および/または該症候の予防または排除を含む。「予防的」処置は、疾患の徴候を示していないか、または疾患の初期の徴候のみを示す対象に対して施される、その疾患に関連する病状の進展の危険を低下させるための処置である。
「治療的」処置は、病状の徴候を示す対象に施される、その徴候を減少または排除するための処置である。
本明細書において用いる場合、トランスジェニック細胞は、導入される核酸配列によってコードされる遺伝子の発現を可能とするように細胞に導入された核酸配列を含むあらゆる細胞をいう。
本明細書において用いる場合、「治療する」または「治療」という用語は、SFEC-関連疾患障害により生じる症候の頻度を減少させ、症候の重篤度を低減させ、あるいは症候の発症を防止する薬剤または化合物の投与を意味する。治療により、SFEC-関連障害において欠損しているかあるいは低下しているSFEC 機能または活性の有効性を回復させることが出来る。「治療」にはまた、避妊の目的でSFECを調節する方法も含まれる。
本明細書において用いる場合、「治療する」という用語は、特定の障害または症状に関連する症候の緩和および/または該症候の防止または排除を含む。例えば、癌を治療することは、癌細胞の増殖および/または分裂の防止または遅延および癌細胞の殺傷を含む。
「ベクター」は、単離核酸を含み、かつ、細胞の内部へ単離核酸を送達するのに用いられる組成物である。当該技術分野で知られている様々なベクターとしては、これらに限定されないが、直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物と結合しているポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスが挙げられる。したがって、「ベクター」という用語は、自己複製プラスミドまたはウイルスを含む。この用語はまた、核酸の細胞への輸送または送達を促進する非プラスミドおよび非ウイルス性化合物、例えば、ポリリジン化合物、リポソーム等も含むと考えるべきである。ウイルス性ベクターの例としては、これらに限定されないが、アデノウイルス性ベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、組換えウイルスベクター等が挙げられる。非ウイルス性ベクターの例としては、これらに限定されないが、リポソーム、DNAのポリアミン誘導体等が挙げられる。
「発現ベクター」とは、発現させるべきヌクレオチド配列に作動可能に連結した発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターをいう。発現ベクターは発現に十分なシス作動性の要素を含む; 発現のためのその他の要素は宿主細胞によって、またはインビトロ発現系によって供給されうる。発現ベクターには当該技術分野において公知のあらゆるものが含まれ、例えば、組換えポリヌクレオチドを組み込んだ、コスミド、プラスミド(例えば、裸の(naked)ものまたはリポソームに含まれたもの)およびウイルスが挙げられる。
本発明の態様
受精能には精子の運動性およびそれゆえATP産生が必要である。
ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化はATPの産生にもっとも効率のよい手段であるが、精子の場合は、ミトコンドリアは精子中片にのみ局在し、鞭毛は中片の基部よりさらに40 um程度の距離まで伸長している。これによって、ATPがどのようにして産生されており、鞭毛のミトコンドリアを含まない部分(主部)のダイニン-ATPaseに利用可能となっているのかという疑問が生じる。
一次元SDS-PAGEの結果により、線維鞘は少なくとも17種の異なるクーマシー染色タンパク質バンドを含むことが明らかとなった。これらバンドはC253-C269と命名され、各バンドは取り出され、タンデム質量分析によってミクロシークエンシングに供された。その結果は、単離線維鞘調製物がロポリン(roporrin)、AKAP3、AKAP4、GST mu、およびGAPDH-2を含む線維鞘成分として以前に特徴づけられていた多くのタンパク質を含んでいたことを示した。これらの知見は、単離線維鞘調製物の純度を確認するものであった。しかし、より重要なことに、単離ヒト線維鞘のミクロシークエンシングにより、線維鞘と関連していることが以前に報告されていない5つの解糖系タンパク質の存在が明らかとなった。これら酵素は、アルドラーゼA、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ピルビン酸キナーゼである。ヒト線維鞘に含まれている2つの以前に知られている解糖系酵素に5つの新たな成分が加わったことにより、決定的に、ミトコンドリアのATP産生とは独立して精子鞭毛の主部において解糖が起こることが確認された。解糖は、ATPの産生のために酸素の不在下において進行しうる必須の代謝経路である。したがって、これらの知見により、線維鞘が嫌気条件下でATPを産生する解糖系のための鞭毛の亜区画であることが証明される。
ヒト線維鞘から得られた5つの解糖系ペプチドのバイオインフォマティクス分析は、解糖系酵素は各酵素の体細胞形態であるが、乳酸デヒドロゲナーゼ、LDHCは例外的に精巣特異的形態であることを示した。トリオースリン酸イソメラーゼの精巣アイソフォームはヒトにおいて同定されているが(Strausberg et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99 (26)、16899-16903 (2002))、線維鞘において同定されたこのペプチドは、精巣アイソフォームではなくTPIの体細胞形態である。これは、線維鞘解糖系機構が2つのサブセットの解糖系酵素から構成されることを示す: 精巣特異的アイソフォームおよび体細胞アイソフォーム。
本明細書に記載されるように、ヒトSFECタンパク質は315アミノ酸長であり、分子量は35021.78ダルトン、等電点は10.4632、電荷は24.5そして平均残基重量は111.180である。
ヒトSFEC mRNAのヌクレオチド配列は1727 bpに渡り、315アミノ酸残基のタンパク質を生じるオープンリーディングフレームを含む。SFECの遺伝子構造はおよそ43.8 kbに渡り、6つのエキソンと5つのイントロンに分けられる。ヒトSFEC遺伝子は染色体4q28.2に局在していたが、マウスSFECは染色体3Bに局在していた。同じファミリー内であるその他の公知のヒトADP/ATPキャリアタンパク質、例えば、心臓/骨格筋アイソフォームT1(ANT 1)および肝臓アイソフォームT2 (ANT 3)は染色体4 q35.1および染色体X p22.33にそれぞれ局在していた。線維芽細胞アイソフォーム (ANT2)は染色体 X q24に局在していた。特徴決定されていない特有の遺伝子の存在を示すこの証拠から、C265タンパク質はADP/ATP 転位酵素あるいは、アデニンヌクレオチドトランスロケーター即ちANTとしても知られているADP/ATPキャリアタンパク質のファミリーの新規なメンバーであると考えられる。本明細書に記載されるC265タンパク質は線維鞘から単離されたことにより、そして、シグナル伝達または解糖あるいはその両方における役割が考えられるため、この新規タンパク質を、精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質またはSFECと称することとした。この時点では、SFECが、ATP貯蔵庫(例えば、保存庫/シンク)またはATPを軸糸へと送り出すATPキャリアとして機能しているかどうかは明らかではない。
ヘキソキナーゼ1の精巣特異的アイソフォーム(Hk1-sa、Hk1-sbおよびHk1-sc)が一つの体細胞遺伝子であるHk1から選択的スプライシングによって生じることが知られている。一方、GAPDHの精巣特異的形態であるGAPDSは、マウスにおいてGapds、ヒトにおいてGAPDH2という特有の遺伝子座によってコードされる。したがって、鞭毛に局在している2つの公知の解糖系酵素のなかに、精巣特異的アイソフォームが存在し、それらは選択的スプライシングまたは特有の遺伝子の発現のいずれかによって産生される。ヒト線維鞘から単離したペプチドのバイオインフォマティクス分析によると、トリオースリン酸イソメラーゼおよび乳酸デヒドロゲナーゼファミリーの生殖細胞特異的メンバーであるLDHCについてかかる形態(精巣特異的アイソフォーム)が記載されているが、それらペプチドはすべて体細胞アイソフォームであり、精巣特異的アイソフォームではないことが示された。これは、線維鞘が解糖系酵素ファミリーの精巣特異的および体細胞メンバーから構成されることを支持する。
ヒトおよびマウスSFECの核酸配列を配列番号1および配列番号3としてそれぞれ示し、推定ヒトおよびマウスアミノ酸配列を配列番号2および配列番号4としてそれぞれ示す。ヒトおよびマウスSFECはタンパク質配列の83%同一性および89%類似性を共有する。
本発明の1つの態様によると、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含む精製ポリペプチドまたは配列番号2または配列番号4とは1-5の保存的アミノ酸置換によって異なるアミノ酸配列を含む精製ポリペプチド、あるいはそれらのホモログ、断片または誘導体が提供される。 一つの態様において、精製ポリペプチドは配列番号2とは20以下の保存的アミノ酸置換にて異なるアミノ酸配列を含み、別の態様においては、精製ポリペプチドは配列番号2とは10以下の保存的アミノ酸置換にて異なるアミノ酸配列を含む。あるいは、ポリペプチドは配列番号2または配列番号4とは1〜5の変化によって異なるアミノ酸配列を含むものであってもよく、ここで変化は一アミノ酸欠失、一アミノ酸挿入および保存的アミノ酸置換から独立に選択される。一つの態様において、精製ポリペプチドは配列番号2のアミノ酸配列を含む。
本発明のポリペプチドは組換えにより産生されたポリペプチドの安定化および/または精製を補助する付加的なアミノ酸配列を含んでいてもよい。これらの付加的な配列としては、細胞内または細胞間標的化ペプチドまたは様々な当業者に知られたペプチドタグが挙げられる。一つの態様において、精製ポリペプチドは配列番号2のアミノ酸およびペプチドタグを含み、ここでペプチドタグは配列番号2に連結している。別の態様において、精製ポリペプチドは配列番号4のアミノ酸およびペプチドタグを含み、ここでペプチドタグは配列番号4に連結している。かかる融合タンパク質の発現に好適な発現ベクターおよび好適なペプチドタグは当業者に知られており、市販されている。一つの態様において、タグはHisタグを含む。
本発明はまた、SFECをコードする核酸配列を含む単離核酸も含む。一つの態様において、配列番号1、配列番号3の配列または配列番号1または配列番号3の誘導体、ホモログ、または断片を含む精製核酸が提供される。
本発明はまた、組換えヒトSFEC遺伝子コンストラクトも含む。一つの態様において、組換え遺伝子コンストラクトは、配列番号1または配列番号3を含む核酸配列に作動可能に連結した外来プロモーターを含む。外来プロモーターは好ましくは、所定の宿主細胞における遺伝子コンストラクトの発現を可能とする強力な構成的プロモーターである。これら組換え遺伝子コンストラクトを宿主細胞に導入して、SFEC遺伝子産物を合成するトランスジェニック細胞株を作ることが出来る。宿主細胞は多種多様な真核および原核生物から選択することが出来、2つの好ましい宿主細胞は大腸菌および酵母細胞である。
一つの態様によると、配列番号1または配列番号3を含む核酸配列を、遺伝子配列を適当な調節配列に作動可能に連結し、SFECが真核または原核宿主細胞にて発現されるように、真核または原核発現ベクターに挿入する。一つの態様において、遺伝子コンストラクトは、真核生物プロモーターに作動可能に連結した、配列番号1または配列番号3の核酸配列を含む。好適な真核宿主細胞およびベクターは当業者に知られている。バキュロウイルス系もまた、トランスジェニック細胞の作成および本発明のSFEC遺伝子の合成に好適である。本発明の一つの側面は、ヒトSFECおよびヒトSFECコード配列の断片を発現するトランスジェニック細胞株に関する。
一つの態様において、導入される核酸は子孫細胞に受け継がれるのに十分にトランスジェニック細胞において安定である(即ち、細胞のゲノムに導入されているか、多コピーのプラスミド中に存在する)。細胞は 標準細胞培養手順を用いてインビトロで増殖でき、別の態様においては、宿主細胞は真核細胞であり、非ヒト動物、例えば、非ヒトトランスジェニック動物の一部として増殖する。一つの態様において、トランスジェニック細胞はインビトロで増殖したヒト細胞であり、配列番号1または配列番号3の核酸配列を含む。
本発明はまた、ヒトおよびマウスSFECを産生する方法を含む。該方法は、ヒトまたはマウスSFECをコードする配列を含む核酸配列を宿主細胞に導入する工程、および、導入したSFEC遺伝子の発現を可能とする条件下で宿主細胞を培養する工程を含む。一つの態様において、プロモーターは条件的または誘導可能プロモーターであり、あるいはプロモーターは組織特異的または時間的に制約されたプロモーター(即ち、作動可能に連結した遺伝子が特定の組織または特定の時間にのみ発現する)であってもよい。合成SFECは標準技術を用いて精製することができ、SFEC活性の阻害剤を同定するハイスループットスクリーニングに用いられる。あるいは、一つの態様において、組換えにより産生されたSFECポリペプチド、またはその断片は、ヒトまたはマウスSFECに対する抗体の作成に用いられる。組換えにより産生されたSFECタンパク質はまた、結晶構造を得るためにも利用できる。かかる構造により、SFEC 機能を阻害する特異的薬剤の設計を導くであろう結晶学分析が可能となる。
SFECのその他の既知のADP/ATPキャリアタンパク質との配列類似性およびその精巣特異的発現と一致して、新規な線維鞘タンパク質であるSFECは、(解糖により生じる) ATPの鞭毛の主部を介した拡散に関連する機能を有すると予測される。SFECは、精子の運動性のためのエネルギーキャリアタンパク質として、または、ATPまたはADPの貯蔵所として機能している可能性がある。したがって、このタンパク質は避妊効果を有すると予測される低分子阻害剤の標的である。かかる阻害剤は、男性の避妊または腟内殺精子物質として有効である可能性がある。
本発明の一つの態様によると、SFEC活性を刺激または阻害し、したがって避妊薬として機能する薬剤の同定および単離方法が提供される。一つの態様において、SFEC活性は解糖系活性である。一つの態様において、同定される薬剤は解糖を阻害する。より具体的には、一つの態様において、薬剤はSFECがADPおよび/またはADPに結合する能力に干渉するその能力についてスクリーニングされる。精子原形質膜を貫通することができる低分子が非常に望ましい。さらに、低分子阻害剤は体細胞に対して毒性であってはならない。単離されたSFEC阻害剤は、本発明にしたがって単独でまたはその他の避妊薬と組み合わせて、望まない妊娠を妨害するのに用いられる。一つの態様において、本発明の方法によって同定される化合物はSFECアデニンヌクレオチド転位酵素の機能を調節する。
本発明の別の態様によると、配列番号2、配列番号4のアミノ酸配列を含む精製ペプチドまたはその抗原性断片を含む抗原性組成物が提供される。該組成物は医薬上許容される担体またはアジュバントと組み合わせてもよく、哺乳類種に投与されると免疫応答を誘導する。かかる抗原性組成物は、診断の目的で使用するための、または一つの態様において避妊ワクチン製剤にて使用するための、SFECタンパク質に対する抗体の作成に有用である。本発明のワクチンは、多価であっても一価であってもよい。多価ワクチンは、2以上の抗原の発現を導く組換えウイルス/ベクターから作られる。
抗原性組成物の好適な調製物には、液体溶液または懸濁液としての注射物質が含まれる;注射に先立って液体中の溶液 (または懸濁液)に好適な固体形態も調製することが出来る。調製物は乳化されていてもよいし、あるいはポリペプチドはリポソームに封入されていてもよい。活性免疫原性成分は医薬上許容され、活性成分と適合性である賦形剤と混合されることが多い。好適な賦形剤としては、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等 およびそれらの組合せが挙げられる。さらに、所望により、抗原性組成物は少量の補助剤、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、および/またはワクチンの有効性を増強するアジュバントを含んでいてもよい。
有効であり得るアジュバントの例としては、これらに限定されないが以下が含まれる: ミネラルゲル、例えば、水酸化アルミニウム、界面活性物質、例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール; ポリアニオン; ペプチド; 油乳濁液; ミョウバン、およびMDP; N-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1'-2'-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン、水酸化アルミニウム。
ポリペプチドは、中性または塩形態として組成物中に製剤してもよい。医薬上許容される塩には、酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基と形成される)であって、無機酸、例えば、、塩酸またはリン酸と形成されるもの、または有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸等と形成されるものが含まれる。遊離カルボキシル基と形成される塩は、無機塩基、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄から得られるもの、および有機塩基、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等から得られるものがある。
本発明はまた、アンタゴニストおよびアゴニスト、例えば、ヒトSFECの発現または活性を阻害する化合物またはヌクレオチドコンストラクト(即ち、転写因子阻害剤、アンチセンス、干渉RNAおよびリボザイム分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、あるいは遺伝子または調節配列置換コンストラクト)ならびにSFECの活性に干渉する抗体を含む。SFEC活性のアンタゴニストは避妊薬として利用できる。一つの態様によると、SFEC活性のアンタゴニストの同定方法が提供される。該方法は、潜在的SFECアンタゴニストの存在下および非存在下で、SFECタンパク質とATPまたはADPあるいはその他のアデノシン誘導体とを接触させる工程、および、該潜在的SFEC アンタゴニストの、ATPまたはADPあるいはその他のアデノシン誘導体のSFECへの結合を減少させる能力に基づいてSFEC活性のアンタゴニストを同定する工程を含む。一つの態様において、SFECタンパク質は配列番号2のアミノ酸配列を含む。本発明はまた、哺乳類種の避妊方法も含み、該方法は哺乳類精子細胞とSFEC活性の阻害剤を含む組成物とを接触させる工程を含む。
本発明の一つの態様によると、ヒトおよび/またはマウスSFECポリペプチド(即ち、配列番号2または4)、またはそのホモログ、誘導体、または断片に特異的に結合する抗体が提供される。一つの態様によると、配列番号2のポリペプチド、またはそのホモログ、誘導体または断片に特異的に結合する抗体が提供される。一つの態様において、抗体はSFEC、またはそのホモログ、誘導体あるいは断片の、機能または活性を阻害する。別の側面において、SFECの抗体による阻害は避妊に有用である。
本発明によって作成される抗体には、これらに限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ (即ち「ヒト化」抗体)、一本鎖(組換え)、Fab 断片、およびFab発現ライブラリーから作られた断片が含まれる。これら抗体は、SFECの適当な発現または過剰発現に特徴づけられる症状または疾患(例えば、腫瘍性疾患)の診断のための診断薬として利用できるし、SFECアゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤の有効性をモニターするアッセイにおいても利用できる。抗体は修飾されたものでも修飾されていないものでも使用でき、それらを共有結合または非共有結合によって、レポーター分子と結合させることにより標識してもよい。さらに、抗体は標準的な担体とともに製剤してもよく、所望により治療または診断組成物の調製のために標識してもよい。
SFECに対する抗体は標準的技術を用いて作製することが出来、例えば、これらに限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、Fab 断片およびFab発現ライブラリーが挙げられる。作成した抗体は標準的担体とともに製剤することが出来、所望により、治療または診断組成物の調製のために標識してもよい。一つの態様において、SFEC特異的抗体および医薬上許容される担体を含む組成物が提供される。一つの態様において、組成物はさらに、界面活性剤、アジュバント、賦形剤または安定剤を含む。一般に、水、生理食塩水、水性デキストロース、および関連糖溶液、およびグリコール、例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが、特に注射可能溶液のための液体担体である。
SFECペプチドまたはその誘導体、ホモログ、または断片に対する抗体は、当該技術分野において周知の方法を用いて作製することが出来る。例えば、その全体を引用により本明細書に含める米国特許出願第07/481491号は、精子-特異的タンパク質に対する抗体の作成方法を開示している。抗体の産生のためには、様々な宿主動物、例えばこれらに限定されないが、ウサギ、マウスおよびラットを、SFECペプチドまたはその誘導体、ホモログ、または断片の注射により免疫すればよい。免疫応答を増強させるために、様々なアジュバントが宿主の種に応じて使用でき、例えば、これらに限定されないが、フロイントアジュバント(完全および不完全)、ミネラルゲル、例えば、水酸化アルミニウム、界面活性物質、例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、および潜在的に有用なヒトアジュバント、例えば、BCG (bacille Calmette-Guerin)およびコリネバクテリウム・パルブム(corynebacterium parvum)が挙げられる。一つの態様において、SFECペプチドは配列番号2を含む。別の態様において、SFECペプチドは配列番号4を含む。
モノクローナル抗体の調製には、連続継代培養細胞株による抗体分子の産生をもたらすあらゆる技術を利用できる。例えば、Kohler and Milstein (1975、Nature 256:495-497)により最初に開発されたハイブリドーマ技術、トリオーマ技術、ヒトB-細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al.、1983、Immunology Today 4:72)、およびEBV-ハイブリドーマ技術(Cole et al.、1985、in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss、Inc.、pp. 77-96)を用いてヒトモノクローナル抗体を産生することが出来る。別の態様において、モノクローナル抗体はその全体を引用により本明細書に含める国際出願第PCT/US90/02545号に記載の技術を用いて無菌動物において産生される。
配列番号2、配列番号4の配列またはそれらの断片に対するモノクローナル抗体の調製のために、連続継代培養細胞株により抗体分子の産生をもたらすあらゆる技術が使用できる。例えば、Kohler and Milstein (1975、Nature 256:495-497) により最初に開発されたハイブリドーマ技術、およびトリオーマ技術、ヒトB-細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al.、1983、Immunology Today 4:72)、およびEBV-ハイブリドーマ技術をヒトモノクローナル抗体の産生に用いることが出来る (Cole et al.、1985、in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss、Inc.、pp. 77-96)。本発明のさらなる態様において、モノクローナル抗体は最近の技術(PCT/US90/02545)を用いて無菌動物において産生することが出来る。本発明によると、ヒト抗体を用いることが出来、ヒトハイブリドーマの使用(Cote et al.、1983、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:2026-2030)またはヒトB細胞のEBVウイルスによるインビトロでの形質転換 (Cole et al.、1985、in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss、pp. 77-96)により得ることが出来る。一つの態様において、「キメラ抗体」の産生のために開発された、卵表面タンパク質に特異的なマウス抗体分子からの遺伝子を適当な生理活性のヒト抗体分子からの遺伝子とともにスプライシングすることによる技術(Morrison et al.、1984、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:6851-6855; Neuberger et al.、1984、Nature 312:604-608; Takeda et al.、1985、Nature 314:452-454)を用いることが出来る;かかる「ヒト化」抗体は本発明の範囲内である。
本発明によると、ヒト抗体を利用することが出来、これはヒトハイブリドーマの利用(Cote et al.、1983、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:2026-2030)またはヒトB細胞のEBVウイルスによるインビトロでの形質転換(Cole et al.、1985、in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss、Inc.、pp. 77-96)により得ることが出来る。さらに、SLLPポリペプチドのエピトープに特異的なマウス抗体分子からの遺伝子と適当な生理活性のヒト抗体分子からの遺伝子とのスプライシングによる「キメラ抗体」産生のために開発された技術 (Morrison et al.、1984、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:6851-6855; Neuberger et al.、1984、Nature 312:604-608; Takeda et al.、1985、Nature 314:452-454) も利用することが出来る;かかる抗体は本発明の範囲内である。いったん特異的モノクローナル抗体が開発されたら、その突然変異体および変異体の常套技術による調製も可能である。
一つの態様において、一本鎖抗体の産生について記載された技術(米国特許第4946778号、その全体を引用により本明細書に含める)がSFECタンパク質、またはその誘導体、ホモログ、または断片に対するタンパク質-特異的一本鎖抗体の産生に適用される。
別の態様において、Fab発現ライブラリーの構築について記載された技術(Huse et al.、1989、Science 246:1275-1281)を用いると、精子特異的抗原、タンパク質、誘導体またはアナログに対する所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速且つ簡便な同定が可能となる。
抗体分子のイディオタイプを含む抗体断片は公知の技術により作成することが出来る。例えば、かかる断片としてはこれらに限定されないが以下が挙げられる:抗体分子のペプシン消化により産生されうるF(ab')2 断片; F(ab')2 断片のジスルフィド結合の還元により作成されうるFab' 断片;パパインおよび還元剤による抗体分子の処理により作成されうるFab 断片;およびFv 断片。
ポリクローナル抗体の作成は、所望の動物に抗原を接種し、それに由来する抗原に特異的に結合する抗体を単離することにより達成される。
タンパク質またはペプチドの全長またはペプチド断片に対するモノクローナル抗体はあらゆる周知のモノクローナル抗体調製手順、例えば、以下に記載の手順によって調製することが出来る:例えば、Harlow et al. (1988、In: Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、NY)およびTuszynski et al. (1988、Blood、72:109-115)。所望の量のペプチドはまた、化学合成技術を用いて合成することも出来る。あるいは、所望のペプチドをコードするDNAをクローニングし、大量のペプチドの作成に好適な細胞中で好適なプロモーター配列から発現させることも出来る。ペプチドに対するモノクローナル抗体は本明細書において言及する標準的手順を用いてペプチドにより免疫されたマウスから作成される。
本明細書に記載される手順を用いて得られたモノクローナル抗体をコードする核酸は当該技術分野において入手可能であり、例えば、Wright et al. (1992、Critical Rev. in Immunol. 12(3,4):125-168)およびその中の引用文献に記載の技術を用いてクローニングおよび配列決定することが出来る。さらに、本発明の抗体はWright et al.、(前掲) およびその中の引用文献ならびにGu et al. (1997、Thrombosis and Hematocyst 77(4):755-759)に記載の技術を用いて「ヒト化」したものでもよい。
ファージ抗体ライブラリーを作成するために、cDNAライブラリーをまず、細胞、例えば、ファージ表面に発現される所望のタンパク質、例えば、所望の抗体を発現するハイブリドーマから単離されたmRNAから得る。mRNAのcDNA コピーを逆転写酵素を用いて産生する。免疫グロブリン断片を特定するcDNAをPCRにより得て、その結果得られるDNAを好適なバクテリオファージベクターにクローニングして免疫グロブリン遺伝子を特定するDNAを含むバクテリオファージDNAライブラリーを作成する。異種DNAを含むバクテリオファージライブラリーの作成手順は当該技術分野において周知であり、例えば、Sambrook et al. (1989、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、NY)に記載されている。
所望の抗体をコードするバクテリオファージは、その対応する結合タンパク質、例えば、抗体の標的である抗原に結合可能な様式でタンパク質がその表面にディスプレーされるよう操作すればよい。したがって、特定の抗体を発現するバクテリオファージを対応する抗原を発現する細胞の存在下でインキュベートすると、バクテリオファージは細胞に結合する。抗体を発現しないバクテリオファージは細胞に結合しない。かかるパニング技術は当該技術分野において周知であり、例えば、Wright et al.、(前掲)に記載されている。
例えば上記のような工程は、M13バクテリオファージディスプレーを用いたヒト抗体の産生のために開発された(Burton et al.、1994、Adv. Immunol. 57:191-280)。重要なことは、cDNA ライブラリーが抗体産生細胞集団から得られたmRNAから作成されることである。mRNAは再編成された免疫グロブリン遺伝子をコードし、したがってcDNAも同じ遺伝子をコードする。増幅されたcDNAは、ヒトFab断片をその表面に発現するファージのライブラリーを作成するM13 発現ベクターにクローニングされる。目的の抗体をディスプレーするファージは抗原結合により選択され、細菌中で増殖して可溶性ヒトFab免疫グロブリンを生じる。したがって、常套のモノクローナル抗体合成と異なり、この手順は、ヒト免疫グロブリンを発現する細胞ではなく、むしろヒト免疫グロブリンをコードするDNAを永続的に存在させる。
上記手順は抗体分子のFab 部分をコードするファージの作成について記載する。しかし、本発明はFab 抗体をコードするファージの作成のみに限定解釈すべきではない。そうではなく、一本鎖抗体(scFv/ファージ抗体ライブラリー)をコードするファージも本発明に含まれる。Fab 分子は全Ig 軽鎖を含み、即ち、軽鎖の可変および定常領域の両方を含むが、重鎖については、可変領域と第一の定常領域ドメイン(CH1)のみを含む。一本鎖抗体分子はIg Fv 断片を含むタンパク質の一本鎖を含む。Ig Fv 断片は抗体の重鎖および軽鎖の可変領域のみを含み、定常領域は含まない。scFv DNAを含むファージライブラリーは、Marks et al.、1991、J. Mol. Biol. 222:581-597に記載の手順にしたがって作成することが出来る。所望の抗体の単離のために作成されたファージのパニングをFab DNAを含むファージライブラリーについて記載したものと類似の要領で行う。
本発明はまた、重鎖および軽鎖可変領域がほぼすべての可能な特異性を含むように合成されうる合成ファージディスプレーライブラリーを含むよう解釈すべきである(Barbas、1995、Nature Medicine 1:837-839; de Kruif et al. 1995、J. Mol. Biol.248:97-105)。
抗体の産生において、所望の抗体のスクリーニングは、当該技術分野において公知の技術、例えば、ELISA (酵素結合免疫吸着測定法)によって達成できる。本発明にしたがって作成される抗体には、これらに限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ (即ち、「ヒト化」)、および一本鎖 (組換え)抗体、Fab 断片ならびにFab発現ライブラリーによって産生される断片が挙げられる。
本発明のペプチドは、標準的な、よく確立された技術、例えば、Stewart et al、Solid Peptide Synthesis、2nd Edition、1984、Pierce Chemical Company、Rockford、Illinois;および Bodanszky and Bodanszky、The Practice of Peptide Synthesis、1984、Springer-Verlag、New Yorkに記載の固相ペプチド合成 (SPPS)により容易に調製することができる。最初に、好適に保護されたアミノ酸残基をそのカルボキシル基を介して誘導体化された不溶性ポリマー支持体、例えば、架橋ポリスチレンまたはポリアミド樹脂に結合させる。「好適に保護された」とは、アミノ酸のα-アミノ基、およびあらゆる側鎖官能基の両方の上に保護基が存在することをいう。側鎖保護基は一般に合成に際して用いられる溶媒、試薬および反応条件に対して安定であり、最終ペプチド産物に影響しない条件下で除去可能なものである。オリゴペプチドの段階的合成は所望のペプチドの配列の最初のアミノ酸からのN-保護基の除去、および次のアミノ酸のカルボキシル末端のそれに対する結合によって行われる。このアミノ酸もまた好適に保護されている。入ってくるアミノ酸のカルボキシルは支持体に結合したアミノ酸のN末端との反応のために、反応性基の形成、例えば、カルボジイミド、対称的酸無水物または「活性エステル」基、例えば、ヒドロキシベンゾトリアゾールまたはペンタフルオロフェニルエステルの形成により活性化することが出来る。固相ペプチド合成方法の例としては、α-アミノ保護基としてtert-ブチルオキシカルボニルを用いるBOC 方法、およびアミノ酸残基のα-アミノの保護に9-フルオレニルメチルオキシカルボニルを用いるFMOC 方法が挙げられ、これら両方法は当業者に周知である。
N-および/またはC-保護基の組込みはまた、固相ペプチド合成方法に常套のプロトコールを用いて達成することが出来る。C-末端保護基の組込み、例えば、所望のペプチドの合成は典型的には、固相として、樹脂からの切断により所望のC-末端保護基を有するペプチドが生じるように化学的に修飾された支持樹脂を用いて行われる。C末端が一級アミノ保護基を有するペプチドの提供のためには、例えば、合成は、ペプチド合成が完了した際に、フッ化水素酸処理により所望のC-末端アミド化ペプチドが遊離するように、p-メチルベンズヒドリルアミン (MBHA) 樹脂を用いて行われる。同様に、C末端へのN-メチルアミン保護基の組込みは、HF処理によりN-メチルアミド化C末端を有するペプチドが遊離する、N-メチルアミノエチル-誘導体化DVB樹脂を用いて達成される。C末端のエステル化による保護も常套の手順により達成できる。これは、所望のアルコールとの次の反応を可能とし、エステル官能基の形成させるために、樹脂からの側鎖ペプチドの遊離を可能とする樹脂/保護基の組合せの使用を必要とする。メトキシアルコキシベンジルアルコールまたは同等のリンカーにより誘導体化したDVB 樹脂と組み合わせたFMOC 保護基は、この目的のために利用でき、支持体からの切断はジクロロメタン中のTFAにより行われる。例えばDCCにより好適に活性化されたカルボキシル官能基のエステル化は、所望のアルコールの添加、次いでエステル化ペプチド産物の脱保護および単離によって進行させることが出来る。
合成ペプチドが樹脂に結合したままでも、例えば、好適な無水物およびニトリルでの処理によりN-末端保護基の組込みを達成することが出来る。アセチル-保護基をN末端に組み込むためには、例えば、樹脂-結合ペプチドをアセトニトリル中の20% 無水酢酸で処理するとよい。N-保護ペプチド産物を次いで樹脂から切断し、脱保護し、次いで、単離することができる。
化学または生物学的合成技術のいずれかから得られるペプチドが所望のペプチドであることを確認するためには、ペプチド組成分析を行うべきである。かかるアミノ酸組成分析は、高分解能質量分析を用いてペプチドの分子量を決定することにより行うことができる。あるいは、またはそれに加えて、ペプチドのアミノ酸含有物は、ペプチドを酸水溶液中で加水分解し、分離し、混合物の成分をHPLCを用いて同定および定量するか、またはアミノ酸分析器によって確認することが出来る。ペプチドを経時的に分解し、アミノ酸の順序を同定するタンパク質配列決定装置を用いて、ペプチドの配列を明確に決定することも可能である。
その使用に先立って、ペプチドは混入物を除くよう精製する。この点に関して、ペプチドは適当な規制機関により設定された標準に適合するよう精製されるということが理解される。多数の常套の精製手順のいずれも所望の純度レベルの達成に用いることが出来、例えばアルキル化シリカカラム、例えば、C4 -、C8-またはC18- シリカを用いる逆相高圧液体クロマトグラフィー (HPLC)が挙げられる。有機物質が増加する勾配移動相が一般に精製を達成するために用いられ、例えば、通常少量のトリフルオロ酢酸を含む水性バッファー中のアセトニトリルが挙げられる。イオン交換クロマトグラフィーも電荷に基づいてペプチドを分離するのに用いることが出来る。
もちろん、ペプチドまたは抗体、誘導体、またはその断片も、活性に影響することなく修飾アミノ酸残基を組み込むことができることが理解される。例えば、末端を誘導体化して保護基、即ち、「望ましくない分解」からN-およびC-末端を保護および/または安定化するのに好適な化学的置換基を含むようにしてもよく、ここで「望ましくない分解」とは、化合物の機能に影響を与えるであろうその末端における化合物の酵素的、化学的または生化学的なあらゆるタイプの分解、即ち、あらゆるその末端における化合物の逐次分解を含む意味である。
保護基には、ペプチド化学技術分野において常套に用いられ、ペプチドのインビボ活性に有害作用をもたらさない保護基が含まれる。例えば、好適なN-末端保護基はN末端のアルキル化またはアシル化により導入することが出来る。好適なN-末端保護基の例としては、C1-C5 分枝または非分枝アルキル基、アシル基、例えば、ホルミルおよびアセチル基、ならびにそれらの置換形態、例えば、アセトアミドメチル(Acm)基が挙げられる。アミノ酸のデスアミノアナログも有用なN-末端保護基であり、ペプチドのN末端に結合したものでもよいし、N-末端残基の代わりに用いてもよい。C末端のカルボキシル基が組み込まれていても組み込まれていなくてもよい好適なC-末端保護基としては、エステル、ケトンまたはアミドが挙げられる。エステルまたはケトン形成アルキル基、特に低級アルキル基、例えば、メチル、エチルおよびプロピル、およびアミド-形成アミノ基、例えば、一級アミン(-NH2)、およびモノ-およびジ-アルキルアミノ基、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ等がC-末端保護基の例である。デスカルボキシル化アミノ酸アナログ、例えば、アグマチンも有用なC-末端保護基であり、ペプチドのC-末端残基に結合させてもよいし、その代わりに用いてもよい。さらに、末端の遊離アミノおよびカルボキシル基をすべてペプチドから除いてペプチド活性に影響を与えずにそのデスアミノおよびデスカルボキシル化形態を作ることも可能であるということが理解される。
その他の修飾も活性に悪影響を与えることなく組み込むことができ、例えば、これに限定されないが、天然L-異性体形態の1以上のアミノ酸のD-異性体形態のアミノ酸による置換が挙げられる。したがって、ペプチドは1以上のD-アミノ酸残基を含んでいてもよく、あるいはすべてがD-形態であるアミノ酸から構成されるものでもよい。レトロ-インベルソ(retro-inverso)形態の本発明によるペプチドもまた包含され、例えば、すべてのアミノ酸がD-アミノ酸形態により置換された逆(inverted)ペプチドも含まれる。
本発明の酸付加塩もまた機能的同等物として含まれる。したがって、ペプチドの水溶性塩を与えるよう、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等、あるいは、有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等で処理された本発明によるペプチドは本発明における使用に好適である。
本発明はまた、タンパク質の誘導体も提供する。誘導体は、天然タンパク質またはペプチドと、保存的アミノ酸配列の相違によって、または配列に影響を与えない修飾によって、あるいはその両方によって異なるものでもよい。
例えば、タンパク質またはペプチドの一次配列を変化させるが、通常はその機能を変化させない保存的アミノ酸変化を施してもよい。この目的のため、10以上の保存的アミノ酸変化は典型的にはペプチド機能に影響を及ぼさない。保存的アミノ酸置換は典型的には以下の群内の置換を含む:
グリシン、アラニン;
バリン、イソロイシン、ロイシン;
アスパラギン酸、グルタミン酸;
アスパラギン、グルタミン;
セリン、スレオニン;
リジン、アルギニン;
フェニルアラニン、チロシン。
修飾(通常は一次配列を変化させない修飾)には、ポリペプチドのインビボ、またはインビトロの化学的誘導体化、例えば、アセチル化、またはカルボキシル化が含まれる。グリコシル化の修飾、例えば、その合成およびプロセシングまたはさらなるプロセシング工程におけるポリペプチドのグリコシル化パターンの、例えば、グリコシル化に影響を与える酵素、例えば、哺乳類グリコシル化または脱グリコシル化酵素へのポリペプチドの曝露による修飾によるものも含まれる。ホスホリル化アミノ酸残基、例えば、ホスホチロシン、ホスホセリン、またはホスホスレオニンを有する配列もまた含まれる。
タンパク分解に対するその耐性を向上させるため、または溶解性を最適化するため、あるいは治療薬としてより好適なものとするために、通常の分子生物学的技術を用いて修飾されたポリペプチドまたは抗体断片もまた含まれる。かかるポリペプチドのアナログとしては、天然L-アミノ酸以外の残基、例えば、D-アミノ酸または非天然合成アミノ酸を含むものが挙げられる。本発明のペプチドは本明細書に例示された特定の例示的な工程のいかなる産物にも限定されない。
本明細書に記載されるようにして得られた実質的に純粋なタンパク質は、タンパク質精製の以下のような公知の手順によって精製され得、ここで、免疫学的、酵素的またはその他のアッセイがその手順の各段階における精製をモニターするのに使用される。タンパク質精製方法は当該技術分野において周知であり、例えば、Deutscher et al. (ed.、1990、Guide to Protein Purification、Harcourt Brace Jovanovich、San Diego)に記載されている。
抗体はSFECの局在決定および活性に関する当該技術分野において公知の方法において利用でき、例えば、これらタンパク質のイメージング、適当な生理的サンプルにおけるそのレベルの測定、診断方法等に利用できる。SFEC抗原に対して作成された抗体はまた、避妊剤または不妊化薬(即ち、受動養子免疫療法)として、または診断イムノアッセイまたは抗イディオタイプ抗体の作成における使用のために利用することが出来る。例えば、一つの態様において、SFEC抗体を単離し(例えば、イムノアフィニティークロマトグラフィー、遠心分離、沈降等)、診断イムノアッセイに使用してもよいし、あるいは抗体を、治療および/または疾患の進行のモニターに用いてもよい。当該技術分野において知られているあらゆるイムノアッセイ系、例えば前記のものを、この目的に使用することができ、例えばこれらに限定されないが以下の技術を用いた競合および非競合アッセイ系が挙げられ、かかる技術としては、例えば、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、沈降素反応、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射定量アッセイ、蛍光イムノアッセイ、タンパク質Aイムノアッセイおよび免疫電気泳動アッセイが挙げられる。
本発明の別の態様は、SFECの低分子阻害剤および哺乳類精子の運動性の低下のため、したがって避妊薬として作用するためのそれらの使用に関する。一つの態様において避妊方法が提供され、ここで、該方法はSFEC活性を阻害する工程を含む。あるいは、SFEC阻害組成物は哺乳類精子細胞におけるSFECの発現または活性を妨害または破壊するアンチセンスまたは干渉RNAを含みうる。一つの態様によると、受精能阻害組成物は、低分子阻害剤、抗体、アンチセンスRNAおよび干渉核酸配列からなる群から選択される1以上の活性成分を含む。
哺乳類系における干渉RNAは、19〜22 ntの二本鎖RNA分子からなる低分子干渉RNA(siRNA)またはループ配列によって連結した19〜29 ntの回文配列からなるshRNAの存在を必要とする。遺伝子発現の下方制御は相同的siRNAと標的RNAとの間の対形成により配列特異的に達成される。siRNAまたはshRNAの安定な発現のための系を用いてトランスジェニック動物が作成され (Hasuwa et al. FEBS Lett 532、227 30 (2002)、Rubinson et al. Nat Genet 33、401 6 (2003)および Carmell et al. Nat Struct Biol 10、91 2 (2003))、本発明にしたがって用いることにより、受精能が調節されうる動物を作成することが出来る。条件的干渉RNAに基づくトランスジェニック系により、動物の生命の所与の段階での遺伝子発現レベルを調節することができるというさらなる利益が提供されるだろう。かかる調節可能な系はまた、家畜および飼育動物においても価値を有するであろう。
本発明は、SFECを阻害することを含む避妊方法を提供する。
本発明は、疾患または障害、特に受精能に関連する疾患または障害の診断方法を提供し、該方法はSFECの異常な発現、レベルまたは機能に関連する疾患または障害を有する対象におけるSFECの発現、レベルまたは機能を測定することを含む。一つの態様において、被験対象におけるSFECレベルは対照対象またはサンプルにおけるSFECレベルと比較される。
本発明はまた、本発明の組成物および組成物のサンプルへの投与を説明する説明材料を含むキットも含む。別の態様において、このキットは、抗体の投与の前の本発明の組成物の溶解または懸濁に好適な(好ましくは無菌の)溶媒を含む。
本明細書において用いる場合、「説明材料」には、刊行物、記録、図表、またはその他のあらゆる表現媒体が含まれ、これは、本明細書で言及する様々な疾患または障害の緩和に有効であるキットにおける本発明のペプチドの有用性を伝達するのに用いられ得る。所望により、あるいは代替的に、説明材料は哺乳類の細胞または組織における疾患または障害の1以上の緩和方法を説明するものであり得る。本発明のキットの説明材料は、例えば、本発明の抗体を含む容器に添付してもよいし、あるいは抗体を含む容器とともに輸送してもよい。あるいは、説明材料は、説明材料と化合物とが使用者により共に用いられるよう注意を付して容器とは別々に輸送してもよい。
本発明はまた、本発明の方法の実施に適当な化合物、そのアナログまたは誘導体の医薬組成物の使用を含み、該組成物は、少なくとも1つの適当な化合物、そのアナログ、または誘導体および医薬上許容される担体を含む。
本明細書において用いる場合、「医薬上許容される担体」という用語は、適当な化合物を混合でき、混合後に、適当な化合物を哺乳類に投与するのに用いうる化学組成物である。好ましくは、哺乳類はヒトである。
本発明の実施に有用な医薬組成物は1 ng/kg/日〜100 mg/kg/日の用量を送達するよう投与されうる。
本発明の方法に有用な医薬組成物は、経口固体剤形にて全身的に、点眼、坐薬、噴霧剤、局所的またはその他の類似の剤形にて投与してもよい。適当な化合物に加えて、かかる医薬組成物は、医薬上許容される担体および薬剤の投与を促進および容易にすることが知られているその他の成分を含んでいてもよい。その他の可能な剤形、例えば、ナノ粒子、リポソーム、再シール赤血球(resealed erythrocytes)、および免疫学に基づく系も本発明の方法にしたがって適当な化合物を投与するのに用いることが出来る。
本明細書に記載される方法のいずれかを用いて同定された化合物は製剤し、本明細書に開示する疾患または障害の治療のために哺乳類に投与されうる。
本発明は本明細書に開示する疾患の治療に有用な化合物を活性成分として含む医薬組成物の調製および使用を含む。かかる医薬組成物は対象への投与に好適な形態において活性成分のみからなるものであってもよいし、あるいは、医薬組成物は活性成分と1以上の医薬上許容される担体、1以上の付加的成分またはそれらの組合せを含むものであってもよい。活性成分は、例えば、当該技術分野において知られている生理的に許容されるカチオンまたはアニオンとともに生理的に許容されるエステルまたは塩の形態において医薬組成物中に存在してもよい。
本明細書において用いる場合、「医薬上許容される担体」という用語は、活性成分が組み合わされており、そして組み合わされた後、活性成分の対象への投与に利用できる化学組成物をいう。
本明細書において用いる場合、「生理的に許容される」エステルまたは塩という用語は、医薬組成物のその他のいずれの成分とも適合性であって、組成物が投与された対象にとって有害でない活性成分のエステルまたは塩形態をいう。
本明細書に記載される医薬組成物の剤形は公知方法または薬学技術分野において今後開発される方法のいずれによって調製されたものでもよい。一般に、かかる調製方法には、活性成分を担体または1以上のその他の副成分と混合させる工程、そして、必要または所望であれば、生成物を所望の単一または複数用量単位に成形または包装する工程が含まれる。
本発明にて提供される医薬組成物に関する記載は原則的にヒトへの倫理的な投与に好適な医薬組成物に関するものであるが、当業者であればかかる組成物はあらゆる種類の動物への投与に一般に好適なものであることを理解するであろう。組成物を様々な動物への投与に好適なものに変えるためのヒトへの投与に好適な医薬組成物の修飾はよく理解されており、獣医薬学の当業者であればかかる修飾の設計および実施は、必要であるとしても単に通常の実験によって行うことが出来る。本発明の医薬組成物の投与が考えられる対象としては、これらに限定されないが、ヒトおよびその他の霊長類、哺乳類、例えば、産業に関連する哺乳類、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、およびイヌ、鳥類、例えば、産業に関連する鳥類、例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、およびシチメンチョウが挙げられる。
本発明の方法に有用な医薬組成物は、経口、直腸、非経口、局所、肺、鼻腔内、頬側、点眼、くも膜下腔内、尿道内、またはその他の投与経路に好適な剤形にて調製、包装または販売されうる。他の考えられる剤形としては計画されるナノ粒子、リポソーム調製物、活性成分を含む再シール赤血球および免疫学に基づく剤形が挙げられる。
本発明の医薬組成物は単一単位用量として、または複数の単一単位用量として大量に調製、包装または販売されうる。本明細書において用いる場合、「単位用量」とはあらかじめ決定された量の活性成分を含む医薬組成物の個々の量をいう。活性成分の量は一般に対象に投与されうる活性成分の用量と同じであるか、かかる用量の便利な分画、例えば、かかる用量の1/2または1/3などである。
活性成分、医薬上許容される担体、およびあらゆる付加的成分の本発明の医薬組成物における相対量は治療される対象の実体、大きさ、および症状に依存して変動し、さらに、組成物が投与される経路にも依存するであろう。例えば、組成物は0.1%〜100% (w/w)の活性成分を含みうる。
活性成分に加えて、本発明の医薬組成物はさらに1以上のさらなる薬理活性薬を含みうる。特に考えられるさらなる薬剤としては、制吐薬および捕捉剤、例えば、シアン化物およびシアン酸捕捉剤が挙げられる。
本発明の医薬組成物の制御または徐放剤形は、常套の技術を用いて作ることが出来る。
経口投与に好適な本発明の医薬組成物の剤形は、あらかじめ決定された量の活性成分を含む別々の固体用量単位の形態、例えばこれらに限定されないが、錠剤、硬または軟カプセル、カシェ剤、トローチ、またはロゼンジにて調製、梱包または販売されうる。経口投与に好適なその他の剤形には、これらに限定されないが、粉末または顆粒剤形、水性または油性懸濁液、水性または油性溶液、または乳濁液が挙げられる。
本明細書において用いる場合、「油性」の液体は、炭素含有液体分子を含み、水と比べて低い極性を示すものである。
活性成分を含む錠剤は、例えば、活性成分を所望により1以上の付加的成分とともに圧縮または成形することによって作ることが出来る。圧縮錠は、自由流動形態、例えば、粉末または顆粒調製物にある活性成分を、所望により1以上の結合剤、滑沢剤、賦形剤、表面活性剤、および分散剤と混合して好適な装置内で圧縮することにより調製できる。成形錠は、活性成分、医薬上許容される担体、および少なくとも混合物を湿らせるのに十分な液体の混合物を好適な装置内で成形することにより作ることが出来る。錠剤の製造に用いられる医薬上許容される賦形剤としては、これらに限定されないが、不活性希釈剤、造粒および崩壊剤、結合剤、および滑沢剤が挙げられる。公知の分散剤としては、これらに限定されないが、ジャガイモデンプンおよびナトリウムデンプングリコラートが挙げられる。公知の表面活性剤としては、これらに限定されないが、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。公知の希釈剤としては、これらに限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、微晶質セルロース、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、およびリン酸ナトリウムが挙げられる。公知の造粒剤および崩壊剤としては、これらに限定されないが、トウモロコシデンプンおよびアルギン酸が挙げられる。公知の結合剤としては、これらに限定されないが、ゼラチン、アカシア、プレゼラチン化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。公知の滑沢剤としては、これらに限定されないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカ、およびタルクが挙げられる。
錠剤は被覆されていなくてもよいし、対象の胃腸管内で徐々に崩壊するよう公知の方法を用いて被覆してもよく、それによって活性成分の徐々の放出および吸収が提供される。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルといった材料を錠剤の被覆に用いることが出来る。さらに例えば、錠剤は米国特許第4256108号; 4160452号;および4265874号に記載の方法を用いて被覆して、浸透圧制御放出錠剤を作ることが出来る。錠剤はさらに甘味料、香味料、着色料、保存料またはこれらの組合せを含めて、医薬品として好適で口当たりがよい調製物を提供しうる。
活性成分を含む硬カプセルは生体分解性組成物、例えば、ゼラチンを用いて作ることが出来る。かかる硬カプセルは活性成分を含み、かつさらに付加的成分、例えば、不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンを含みうる。
活性成分を含む軟ゼラチンカプセルは生体分解性組成物、例えば、ゼラチンを用いて作ることが出来る。かかる軟カプセルは活性成分を水または油性媒体、例えば、 ピーナッツ油、流動パラフィン、またはオリーブオイルと混合して含みうる。
経口投与に好適な本発明の医薬組成物の液体剤形は、液体形態にて、または水またはその他の好適な媒体による使用時の再構成の目的で乾燥製品の形態で調製、梱包および販売することができる。
液体懸濁液は水性または油性媒体中への活性成分の懸濁を達成するための常套の方法を用いて調製することが出来る。水性媒体としては、例えば、水および等張生理食塩水が挙げられる。油性媒体としては、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、またはココナッツ油、分画植物油、およびミネラルオイル、例えば、流動パラフィンが挙げられる。液体懸濁液はさらに、1以上の付加的成分を含んでいてもよく、これらに限定されないが、懸濁剤、分散または湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、保存料、緩衝剤、塩類、香味料、着色料および甘味料が挙げられる。油性懸濁液はさらに、増粘剤を含んでいてもよい。公知の懸濁剤としては、これらに限定されないが、ソルビトールシロップ、水添食用脂、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アカシアゴム、およびセルロース誘導体、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。
公知の分散または湿潤剤としては、これらに限定されないが、天然リン脂質、例えば、レシチン、アルキレンオキシドと、脂肪酸、長鎖脂肪族 アルコール、脂肪酸とヘキシトール由来の部分エステルまたは脂肪酸とヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合生成物 (例えば、それぞれ、ポリオキシエチレンステアラート、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)が挙げられる。公知の乳化剤としては、これらに限定されないが、レシチンおよびアカシアが挙げられる。公知の保存料としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、またはn-プロピルパラヒドロキシ安息香酸、アスコルビン酸、およびソルビン酸が挙げられる。公知の甘味料としては、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、スクロース、およびサッカリンが挙げられる。油性懸濁液のための公知の増粘剤としては、例えば、蜜蝋、固形パラフィン、およびセチルアルコールが挙げられる。
水性または油性溶媒中の活性成分の液体溶液は実質的に液体懸濁液と同様にして調製できるが、主な違いは活性成分が、溶媒に懸濁されるのではなく、溶解されることである。本発明の医薬組成物の液体溶液は、液体懸濁液について記載した各成分を含んでいてもよく、懸濁剤は必ずしも活性成分の溶媒中への溶解を補助することはないことが理解される。水性溶媒としては、例えば、水および等張生理食塩水が挙げられる。油性溶媒としては、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、またはココナッツ油、分画植物油、およびミネラルオイル、例えば、流動パラフィンが挙げられる。
本発明の医薬調製物の粉末および顆粒剤形は公知の方法を用いて調製することが出来る。かかる剤形は直接対象に投与してもよく、例えば、錠剤の形成、カプセルの充填、または水性または油性懸濁液あるいは溶液の水性または油性媒体の付加による調製に用いてもよい。かかる剤形はそれぞれ1以上の分散または湿潤剤、懸濁剤、および保存料を含みうる。さらなる賦形剤、例えば、充填剤および甘味料、香味料、または着色料もまた、かかる剤形に含めてもよい。
本発明の医薬組成物は水中油乳濁液または油中水乳濁液の形態にて調製、梱包または販売されうる。油相は植物油、例えば、オリーブ油またはラッカセイ油、ミネラルオイル、例えば、流動パラフィン、またはそれらの組合せであり得る。かかる組成物はさらに1以上の乳化剤、例えば、天然ゴム、例えば、アカシアゴムまたはトラガカントゴム、天然リン脂質、例えば、ダイズまたはレシチンリン脂質、脂肪酸およびヘキシトール無水物の組合せ由来のエステルまたは部分エステル、例えば、ソルビタンモノオレアート、およびかかる部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートを含みうる。これら乳濁液はまた、付加的成分、例えば、甘味料または香味料を含んでいてもよい。
本発明の医薬組成物は、直腸投与に好適な剤形にて調製、梱包または販売されうる。かかる組成物は、例えば、坐薬、停留浣腸調製物、および直腸または結腸洗浄用溶液の形態であってよい。
坐薬剤形は、活性成分と、通常の温度(即ち約20℃)では固体であり、対象の直腸温度(即ち、健康なヒトにおいて約37℃)では液体の非刺激性の医薬上許容される賦形剤とを混合することによって作ることが出来る。好適な医薬上許容される賦形剤としては、これらに限定されないが、カカオ脂、ポリエチレングリコールおよび様々なグリセリドが挙げられる。坐薬剤形はさらに様々な付加的成分、例えば、これらに限定されないが、抗酸化剤および保存料を含んでいてもよい。
停留浣腸調製物または直腸または結腸用洗浄溶液は、活性成分と医薬上許容される液体担体とを混合することによって作ることが出来る。当該技術分野において周知のように、浣腸調製物は対象の直腸の構造に適合した送達装置を用いて投与され得、それに梱包され得る。浣腸調製物はさらに様々な付加的成分、例えば、これらに限定されないが、抗酸化剤および保存料を含んでいてもよい。
本発明を以下の実施例を参照して説明する。これら実施例は単に例示の目的で提供されるものであり、本発明はこれら実施例に限定解釈してはならず、本発明にて提供される教示の結果として明らかとなるあらゆるすべての改変も包含するよう解釈されるべきである。
本発明によると、上記または実施例に記載のように、当業者に公知の常套の臨床、化学、細胞、組織化学、生化学、分子生物学、微生物学および組換えDNA 技術が用いられ得る。かかる技術は文献において完全に説明されている。
本発明は本明細書に記載されるアッセイおよび方法のみに限定解釈してはならず、その他の方法およびアッセイも同様に含まれると解釈すべきである。当業者であれば本明細書に記載される手順を行うために利用可能なその他のアッセイおよび方法を知っているであろう。
さらに説明はしないが、当業者であれば、上記および以下の実施例を用いて、本発明の化合物を製造および使用し、特許請求された方法を実施することが出来ると考えられる。以下の実際に行った実施例はそれゆえ、本発明の好ましい態様を具体的に記載するが、本開示の残りの部分をいかなる様式においても限定するよう解釈してはならない。
本発明を以下の実施例を参照して記載する。これら実施例は単に例示の目的で提供されるものであり、本発明はこれら実施例に限定解釈してはならず、本発明にて提供される教示の結果として明らかとなるあらゆるすべての改変も包含するよう解釈されるべきである。
いかなる理論にも拘束される意図はないが、主部にミトコンドリアが無いことおよびミトコンドリアATPの拡散が精子中片から遠位鞭毛へと限定されることは、エネルギー産生および輸送の独立した機構が主部に存在することを示すと仮定される。エネルギー産生および輸送に関与する遠位鞭毛タンパク質を同定するために、プロテオームのアプローチを用いてヒト線維鞘を構成する不溶性タンパク質のミクロシークエンスを行った。
実施例 1-
SFECの同定
線維鞘を構成するタンパク質をさらに特徴づけるために、線維鞘をヒト精子から機械的および生化学的切開方法を用いて以前に記載された技術を用いて単離した(Kim et al.、Mol Hum Reprod.、1997、(4):307-13参照)。切開した画分の電子顕微鏡観察により、もっぱら線維鞘のうね(rib)と縦の柱(longitudinal column)とからなる高度に純粋な調製物が明らかとなった(図1参照)。線維鞘タンパク質を抽出し、一次元SDS-PAGEを行った(Kim et al.、Mol Hum Reprod. 1997、(4):307-13参照)。単離した線維鞘の古典的尿素抽出方法を用いた2-Dゲル分析は、等電点電気泳動法に用いたCelis バッファーに線維鞘タンパク質が溶解しなかったため失敗に終わった。
一次元SDS-PAGEの結果により、線維鞘は少なくとも17の異なるクーマシー染色タンパク質バンドを含むことが明らかとなった(図2)。これらバンドはC253-C269と命名され、各バンドを切り出しタンデム質量分析によりミクロシークエンシングした。結果は、単離線維鞘調製物は、ロポリン、AKAP3、AKAP4、GST mu、およびGAPDH-2を含む線維鞘成分として以前に特徴づけられているものよりも多くのタンパク質を含んでいることを示した(表1参照)。これらの知見により、単離線維鞘調製物の純度が確認された。しかしながら、より重要なことに、単離ヒト線維鞘のミクロシークエンシングによりまた、以前に線維鞘と関連していることが報告されていない、5つの解糖系タンパク質の存在が明らかとなった。これら酵素は、アルドラーゼ A、ソルビトール デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ (TPI)、ピルビン酸キナーゼである。
5つの新たな成分が2つの既知のヒト線維鞘に含まれる解糖系酵素に加わったことにより、解糖が精子鞭毛主部で、ミトコンドリアにおけるATP産生とは独立して起こる工程であることが決定的に確認された。解糖は酸素の非存在下でのATPの産生において起こりうる必須の代謝経路である。したがって、これらの知見は線維鞘が嫌気条件下でATPを産生する解糖系のための鞭毛の亜区画であることを示す。
ポリオール代謝における鍵となる酵素であるソルビトールデヒドロゲナーゼの同定により、鞭毛の運動性におけるエネルギー源として使用するためのソルビトールのフルクトースへの変換を伴うこの経路のための役割が強く示唆される。アルドラーゼ A、トリオースリン酸イソメラーゼおよびピルビン酸キナーゼペプチドのバイオインフォマティクス分析によると、これら酵素は体細胞形態であり、一方精製線維鞘は乳酸デヒドロゲナーゼ、LDHCの精巣特異的アイソフォームを含んでいることが示された。
非常に驚くべきことに、本明細書において精子鞭毛エネルギーキャリア(SFEC)と称する新規ADP/ATP転位酵素が、線維鞘画分において同定された。本発明において、このタンパク質のクローニング、その組換えタンパク質としての発現、このタンパク質の局在決定に役立つSFECに対する特異的ポリクローナル抗体の産生、SFEC発現の局在決定のための核酸プローブの作成、およびこのタンパク質の局在決定についての説明が提供される。この局在決定により、SFECがアデニンヌクレオチド転位酵素 (ANT) ファミリーの新規メンバーであり、ミトコンドリア内膜から単離されたANTとは異なることが確実になった。ノザン分析、ドットブロット分析、およびESTデータベースにより、SFECは精巣特異的ANTであることが示された。GenBank はヒトSFEC 核酸配列(配列番号1)について受入番号 AY550240を付与した。
ヒト線維鞘から得た5つの解糖系ペプチドのバイオインフォマティクス分析は、これら解糖系酵素は各酵素の体細胞形態を表すが(図8参照)、乳酸デヒドロゲナーゼ、LDHCについては例外的に精巣特異的形態を表すことを示した。トリオースリン酸イソメラーゼの精巣アイソフォームがヒトにおいて同定されているが(Strausberg et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99 (26)、16899-16903 (2002))、線維鞘において同定されたこのペプチドは精巣アイソフォームではなくTPIの体細胞形態を表す。これは線維鞘解糖系機構が2つのサブセットの解糖系酵素から構成されることを示す:即ち、精巣特異的アイソフォームおよび体細胞アイソフォーム。
さらに、いくつかの新しい特徴付けされていない仮想タンパク質が線維鞘の成分として同定された。これらには、バンドC253からの仮想タンパク質 FLJ23338、バンドC259からの仮想タンパク質 R30953_1およびバンドC265からの仮想タンパク質 DKFZp434N1235が含まれる。C265バンド仮想タンパク質DKFZp434N1235をクローニングし、配列決定し、さらにバイオインフォマティクス分析により研究した。遺伝子は、Ensembl 自動分析 パイプラインによって以下のいずれかを用いてアノテーションした。ヒト/脊椎動物タンパク質、アラインされたヒトcDNAのセットからのGeneWise モデル、次いでORF予測のためのGenomeWise、あるいはタンパク質、cDNAおよびEST 証拠によりサポートされるGenscan エキソンからのもの。GeneWise モデルをさらに入手可能なアラインされたcDNAと組み合わせてUTRをアノテーションした。バンドC265タンパク質とその他の既知のタンパク質とのバイオインフォマティクスによる比較によって、ヒト心臓/骨格筋におけるアデニンヌクレオチド 転位酵素 1、ANT1のアミノ酸配列との最も高い相同性(69% 同一性および79% 類似性)、およびヒト肝臓のANT3との67% 同一性および80% 類似性が示された。C265タンパク質はまたヒト線維芽細胞アイソフォーム(ANT2)とも67 % 同一性および79 % 類似性を示した。ヒトSFECタンパク質は315 アミノ酸長、分子量35021.78 ダルトン、等電点10.4632、電荷24.5および平均残基重量111.180であった。ヒトSFECの機能的ドメインを図6に示す。
ヒトSFEC mRNAのヌクレオチド配列は315 アミノ酸残基のタンパク質を生じるオープンリーディングフレームを含む1727 bp (配列番号1)を含む。配列番号1は以下の通り:
Figure 2007529226
SFECの遺伝子構造はおよそ43.8 kbにわたり、6のエキソンと5のイントロンに分けられる。ヒトSFEC遺伝子は染色体 4q28.2に局在していたが、マウスSFECは染色体 3Bに局在していた。同一のファミリー内のその他の公知のヒトADP/ATPキャリアタンパク質、例えば、心臓/骨格筋アイソフォームT1 (ANT 1)および肝臓アイソフォームT2 (ANT 3)はそれぞれ染色体 4 q35.1および染色体 X p22.33に局在していた。
線維芽細胞アイソフォーム(ANT2)は染色体 X q24に局在していた。特徴付けされていない特有の遺伝子の存在を示すこの証拠から、C265タンパク質はADP/ATP 転位酵素、あるいは、アデニンヌクレオチドトランスロケーターまたはANTとも称されるADP/ATP キャリアタンパク質のファミリーの新規メンバーであると考えられる。C265タンパク質は線維鞘から単離され、シグナル伝達または解糖あるいはそれら両方において役割を果たしているようであるため、この新規タンパク質を精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質またはSFECと命名した。この時点では、SFECがATP貯蔵庫(例えば、保存庫/シンク)またはATPを軸糸へと運ぶATPキャリアとして機能することは明らかではなかった。
ヘキソキナーゼ 1の精巣特異的アイソフォーム(Hk1-sa、Hk1-sbおよびHk1-sc)は一つの体細胞遺伝子 Hk1から選択的スプライシングにより産生されることが知られている。対照的に、GAPDHの精巣特異的形態、GAPDSは、マウスにおいてGapds、ヒトにおいて GAPDH2である特有の遺伝子座によってコードされる。したがって、鞭毛に局在する2つの既知の解糖系酵素のなかで、精巣特異的アイソフォームが存在し、これらは選択的スプライシングまたは特有の遺伝子発現のいずれかによって生じる。しかし、非常に興味深いことに、ヒト線維鞘から単離したペプチドのバイオインフォマティクス分析によると、それらはすべて体細胞アイソフォームであり精巣特異的アイソフォームではないことが示された。一方、トリオースリン酸イソメラーゼおよび乳酸デヒドロゲナーゼファミリーの生殖細胞-特異的メンバーであるLDHCについてかかる形態が報告されている。これは線維鞘が解糖系酵素ファミリーの精巣特異的メンバーと体細胞メンバーとから構成されていることを支持する。
ヒトおよびマウスSFECの核酸配列をそれぞれ配列番号1および配列番号3に示しそのヒトおよびマウスの推定アミノ酸配列をそれぞれ配列番号2および配列番号4に示す。ヒトおよびマウスSFECはタンパク質配列において83 % 同一性および89% 類似性を共有していた。315アミノ酸残基のヒトSFEC配列は配列番号2である:
Figure 2007529226
マウスの1577塩基のSFEC核酸配列は配列番号3である:
Figure 2007529226
本明細書に記載されるマウスの320アミノ酸残基のSFECタンパク質は配列番号4の配列を有する:
Figure 2007529226
線維鞘タンパク質のミクロシークエンシング
電気泳動により同定された線維鞘タンパク質の各バンドを質量分析によりミクロシークエンシングに供した。配列の結果を表1に要約する。バンドC265は未知のタンパク質 (DKFZp434N1235)であることが同定された。C265 バンドからミクロシークエンシングされたペプチドを図3において太字で示す。
C265のバイオインフォマティクス
遺伝子は、Ensembl 自動分析 パイプラインによって以下のいずれかを用いてアノテーションした。ヒト/脊椎動物タンパク質、アラインされたヒトcDNAのセットからのGeneWise モデル、次いでORF予測のためのGenomeWise、あるいはタンパク質、cDNAおよびEST 証拠によりサポートされるGenscan エキソンからのもの。GeneWise モデルをさらに入手可能なアラインされたcDNAと組み合わせてUTRをアノテーションした。C265をADP ATPキャリア ADP/ATP 転位酵素 アデニンヌクレオチドトランスロケーター ANTのタンパク質ファミリーとして同定した。
SFEC mRNAのヌクレオチド配列は、315 アミノ酸残基のタンパク質を生じるオープンリーディングフレームを含む1727 bpを含む。SFECの遺伝子構造はおよそ 43.8 kbにわたり、6のエキソンと5のイントロンとに分けられる。ヒトSFEC遺伝子は染色体 4q28.2に局在しており、マウスSFECは染色体 3Bに局在していた。
SFECペプチドの特徴
等電点 = 10.4632
電荷 = 24.5
分子量 = 35021.78
残基数 = 315
平均残基重量 = 111.180
SFECの組織特異的発現
一連のノザンブロット分析、ドットブロット分析、およびMTEアレイ測定を行った(図4および5)。データはSFECが精巣に発現しているが、試験したその他の組織または細胞型では発現していないことを示した。
SFECの機能的ドメイン
SFEC(315 アミノ酸残基)はいくつかの機能的ドメインを含み、例えば、ミトコンドリアキャリアタンパク質、ミトコンドリア基質キャリア、アデニンヌクレオチドトランスロケーター1および2つの膜貫通ドメインが含まれる(図6)。SFECはヒト心臓のADT1アミノ酸と69% 同一性および79% 類似性、ヒト肝臓のADT3と67% 同一性および80% 類似性を有していた。SFECとこれらタンパク質のアミノ酸配列アラインメントを図7に示す。
エネルギー産生に関与することが判明したヒト線維鞘ペプチドの要約を図8に示す。
Figure 2007529226
実施例 2-
組換えSFECタンパク質の発現および精製
ヒトSFEC (配列番号2; 315 アミノ酸残基)の切断型コンストラクト(アミノ酸残基4-120)を細菌で発現させてポリクローナル抗体を作成した。完全なSFEC オープンリーディングフレームを発現させる以前の試みは細菌では成功しなかった。これはおそらく、C末端における推定膜貫通ドメインの存在に起因する。遺伝子特異的プライマーを、ヒトSFEC cDNA配列に基づき、ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) 産物の5'末端にNco1部位、3'末端にNot1部位を備えるように設計した。プライマー(フォワードプライマー: 5'-CATGCCATGGAGCCTGCGAAAAAGAAGGCAGAAAAG-3' [配列番号5]およびリバースプライマー: 5'-ATAGTTTAGCGGCCGCCTGTTTTTCTTTATTAACTCCAGA-3' [配列番号6])をGIBCO BRL (Life Technologies、CA)から得た。
本明細書にて提供するSFEC 配列はまた、ヒト核酸 (配列番号1)、ヒトアミノ酸(配列番号2)、マウス核酸 (配列番号3)およびマウスアミノ酸 (配列番号4)である。
PCRは10 ngのヒトSFEC cDNAをテンプレートとして用い、94℃2 分の1サイクル、次いで94℃30秒、50℃1分および68℃2分の変性、アニーリング、および伸長の35 サイクルというプログラムを用いて行って切断型 SFEC cDNAを得た。ヒトSFECのヌクレオチド配列の残基位置番号129で開始して残基位置番号479で終結する351残基長の産物を1% NuSieve (FMC BioProducts、Rockland、ME) アガロースゲルで分離し、ベクター由来プライマーとインサート特異的プライマーとを用いて両方向について配列決定して配列を確認した。
N-末端117 アミノ酸に対応するcDNAを細菌発現ベクター pET28bにクローニングし、大腸菌株 BLR (DE3) (Novagen、Madison、WI) に形質転換した。シングルコロニーを形質転換プレートから取り出し、50μg/mlのカナマイシンを含む2 リットルの LB 培地に接種し、37℃でA600が0.5に達するまで培養した。組換えタンパク質の発現を1mM IPTG (イソプロピル-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド)により37℃で3時間誘導した。細胞を5,000 gで15 分遠心分離し、rLisozyme(1 KU/ml)とベンゾナーゼ (25 ユニット/ml)を含むBugBuster タンパク質抽出試薬 (Novagen、Madison、WI)に懸濁し、大腸菌の細胞壁を穏やかに破壊し、DNAとRNAとを分解した。細胞を5,000 gで15 分遠心分離し、インクルージョンボディのペレットを100 μg/ml リゾチームと8M尿素を含む1 X 結合バッファー(5 mM イミダゾール、0.5 M NaCl、20 mM Tris-HCl、pH 7.9)に再懸濁した。
上清である尿素可溶性画分をNi2+-活性化 His-結合樹脂 (Novagen、Madison、WI)に製造業者のプロトコールにしたがってロードした。組換えタンパク質は8M尿素を含む1X 結合バッファーにおいて400 mM イミダゾールにて溶出した。溶出したタンパク質を蒸留水中で透析し、-70℃で凍結乾燥し、モデル 491 Prep Cell (Bio Rad)を用いてシングルバンドになるまでさらに精製を行った。単離組換えタンパク質の純度をクーマシーおよびSYPRO Ruby染色(Bio-Rad)により確認した。
タンパク質のC末端に6つのヒスチジン残基を含む組換えSFECタンパク質を1 mM IPTGにより誘導し(図9A)、抗ヒスチジン抗体を用いてタンパク質発現を確認した(図9B)。~13 kDaの単離タンパク質の純度はSYPRO Ruby 染色により確認した(図9C)。
実施例 3-
ラット抗-ヒトSFEC抗体の作成
等量のフロイント完全アジュバント中に乳化したPBS中のおよそ100 μgの精製recSFECタンパク質を雌性スプラーグドーリーラットの皮下および筋肉内にそれぞれ注射した。動物に21 日の間隔を開けて2回不完全フロイントアジュバント中の50 μgの組換えタンパク質により追加免疫し、血清を第二の追加免疫の7日後に回収した。ラットは組換えSFEC、ヒト精子、および単離FSタンパク質についてのウェスタンブロット分析によって抗体産生が確認された後屠殺した。
ヒト精子、単離FSおよび組換えタンパク質についての抗-SFEC抗体のウェスタン分析
SFEC抗体の反応を、組換えSFEC、ヒト精子、および単離FSタンパク質に対するウェスタンブロット分析によって試験した。ヒトの泳動する精子のタンパク質を以前に記載されているようにして抽出した (Shetty et al.、Biol. Reprod. 61(1):61-9 (1999))。精子を9.8M尿素、2% NP-40、100 mM DTTおよびプロテアーゼ阻害剤: 2 mM PMSF、5 mM ヨードアセトアミド、5 mM EDTA、3 mg/ml L-1-クロロ-3-(4-トシルアミド)-7-アミノ-2-ヘプタノン-ヒドロクロリド、1.46 mM ペプスタチン A、および2.1 mM ロイペプチンを含むCELIS 溶解バッファー中で2 時間4℃で一定に撹拌することにより可溶化した。不溶性物質を10000 x g5 分の遠心分離で除き、可溶化ヒト精子タンパク質を含む上清を一次元電気泳動に供した。
一次元 SDS-PAGEによって分離されたタンパク質をニトロセルロースメンブレンにトランスファーし、抗-SFEC抗体により検出した。メンブレン上の過剰のタンパク質-結合部位を5% (w/v) 脱脂粉乳および0.2 % (w/v) Tween 20 (Merck-Schuchardt、Hohenbrunn、Germany)を含むPBSにより1時間ブロッキングした。メンブレンをSFECタンパク質に対するラットポリクローナル抗血清を用いて4℃で一晩プローブした。抗-SFEC抗体をブロッキング溶液で1:2000に希釈した。対照実験のために免疫前血清も免疫後血清と同じく希釈した。メンブレンをブロッキング溶液中1:5000に希釈したセイヨウワサビペルオキシダーゼ (Jackson Immuno Research Lab.、West Grove、PA. USA)と結合させた抗-ラット免疫グロブリン IgG-二次抗体とともに45 分インキュベートした。ブロットを化学発光基質 (Pierce、Rockford、IL)または3,3,5,5- テトラメチルベンジジン (TMB) 基質溶液 (Kirkegaard and Perry Lab.、Gaithersburg、MD. USA)により現像した。
抗-SFEC抗体により誘発された陽性シグナルがヒト精子については38、32、20 kDaに、しかし単離FSタンパク質については32 kDa のみにはっきりと検出された(図10A)。ヒト精子とFS タンパク質とは、対応する免疫前血清によっては検出されなかった(図10B)。この結果は、ラット抗-ヒトSFEC抗体が免疫原としてSFECおよびFS タンパク質を含むヒト精子を認識することを示し、SFECがFSタンパク質の成分であることが示された。
実施例 4-
ヒト精子における鞭毛のFSに関連した主部へのSFECの局在
泳動するヒト精子を0.2 mM PMSFを含むPBSで洗浄し、1 x 106 精子/mlの濃度に希釈し、スライドガラスにスポットした。精子を風乾し、4% パラホルムアルデヒドで30 分室温で固定した。PBSで3回洗浄した後、サンプルをPBS中の10% 正常ヤギ血清で一晩4℃でブロッキングした。次いで精子を1:50 希釈のラット抗-組換えSFEC抗体またはその免疫前血清とともにブロッキング溶液中で2 時間室温でインキュベートした。スライドをPBS中で3回各5 分洗浄し、ヤギ抗-ラット IgG FITCと接合した二次抗体(Jackson ImmunoResearch)を、PBS 中10% 正常ヤギ血清中1:100 希釈にて1時間室温でアプライした。スライドをPBS中3回各5 分にて洗浄した。DAPI を含むSlow Fade-Light Antifade キット(Molecular Probes、Inc.)を用いて精子DNAを染色し、フルオレセインの減光率を低下させた。
ヒトの泳動する精子の組換えヒトSFECタンパク質に対するラット血清を用いた間接的免疫蛍光分析によると、鞭毛主部全体に局在化し、中片、末端部または頭部は染色されなかった(図11B、C、D)。免疫前血清はヒト精子において免疫蛍光を示さなかった(図11 F)。興味深いことに精子のおよそ50%のみが、N-末端 117 アミノ酸に対するSFEC抗体によって認識された。この結果は、N-末端残基への近接可能性はADP/ATPキャリアの立体配座状態に依存するという以前の報告によって支持される(Brandolin et al.、Biochemistry 28:1093-1100 (1989))。この結果は、各精子は鞭毛主部におけるADP/ATP転位のための機能に関して異なる立体配座状態をとるということを示す。
要約すると、本開示は、SFECが新規かつ精子尾部の主部に局在する独特のタンパク質であって、避妊薬の適当な標的であるということを提供する。このプロテオーム分析は: 1)主部におけるエネルギー産生および転位に関与する酵素を補完する理解に拡張され; 2)鞭毛の解糖およびポリオール代謝における線維鞘の役割を支持し; 3)主部の内部の解糖系機構には体細胞および精巣特異的イソ酵素が含まれることを示し;そして4)中片ミトコンドリア鞘から独立に起こる遠位鞭毛のエネルギー代謝に対する支持を提供する。もっとも重要なことに、精巣特異的ATP/ADPキャリアであるSFECは、ATPの精子の運動性に関与するダイニンATPaseへの転位を媒介しており、これによってSFECが新規避妊薬標的となり、遠位鞭毛におけるエネルギー産生と輸送との間のリンクを提供するものであるという新しい仮説が立てられる。
本明細書に記載されていないが使用されたその他の方法は周知であり、生化学、細胞生物学、および分子生物学的の当業者の技術範囲内である。
本明細書において引用する各々の特許、特許出願、および刊行物の開示はその内容を引用により本明細書に組み込む。当業者であれば本発明は上記および本明細書に固有の目的の実施および結果および利点の達成に適していることを容易に理解するであろう。本発明は、その精神または必須の性質から逸脱することなくその他の特定の形態において具現化することが出来、したがって、上記明細書よりも添付の特許請求の範囲に注目すべきであり、特許請求の範囲が本発明の範囲を決定する。
本発明を特定の態様に言及して開示してきたが、本発明その他の態様および改変が本発明の精神と枠を逸脱することなく当業者によってなすことができることが明らかである。添付の特許請求の範囲はかかるすべての態様および均等な改変を含むと解釈されるべきである。
図1は、機械的および化学的手段によって調製し、透過電子顕微鏡法を用いて可視化した単離ヒト線維鞘の画像を表す。 図2は、単離ヒト線維鞘 タンパク質(FS)のSDS-PAGE 像を表す。 図3は、C265 バンドのミクロシークエンシングおよびヒトおよびマウスの関連タンパク質配列から同定したペプチド配列を模式的に要約する。 図4は、ヒト脾臓、胸腺、前立腺、精巣、卵巣、小腸、大腸および白血球から単離したポリ A RNAの、32P標識 SFEC cDNAでプローブしたノザンブロットを表し、SFECが精巣特異的タンパク質であることを示す。 図5は、76種類のヒト組織からのRNAのドットブロット分析 (上側パネル)を表し、これもまた、SFECが精巣特異的タンパク質であることを示す。 図6は、上側、中央、下側パネルを含むが、SFECの機能的ドメインの模式的表示である。 図7は、SFECとその他の類似のドメインを有するヒトタンパク質とのアミノ酸配列アラインメントの模式的表示である。 図8は、エネルギー産生に関与するヒト線維鞘タンパク質、それらの組織分布、およびそれらの遺伝子座を要約する模式的表示である。 図9は、図9A、9Bおよび9Cを含み、SFECタンパク質の電気泳動分析を表す。 図10は、図10A、10Bおよび10Cを含み、組換えSFEC、ヒト精子、および単離FS タンパク質の抗-SFEC 抗体を用いたウェスタンブロット分析を表す。 図11は、図11A、11B、11C、11D、11E、および11Fを含み、組換えヒトSFECタンパク質に対するラット血清を用いたヒトの泳動する(swim-up)精子の間接的免疫蛍光分析を表し、これによると、SFECはヒト精子の鞭毛の主部に局在していた。

Claims (37)

  1. 哺乳類精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質、またはそのホモログ、誘導体、もしくは断片、ここで該タンパク質は、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列またはそのホモログ、誘導体もしくは断片を含む。
  2. 精子鞭毛の主部に局在するものである、請求項1の精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質。
  3. 配列番号2のアミノ酸配列または配列番号2に実質的に類似のアミノ酸配列を含む、請求項1の精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質。
  4. アデニンヌクレオチド転位酵素である、請求項1の精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質。
  5. 請求項1の精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質および医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
  6. 精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質、またはそのホモログ、誘導体、もしくは断片をコードする核酸配列、またはそのホモログ、誘導体、もしくは断片を含む、単離核酸。
  7. 請求項6の単離核酸を含むベクター。
  8. 該ベクターがそれに作動可能に連結したプロモーター/調節配列を規定する核酸をさらに含む、請求項7のベクター。
  9. 請求項7のベクターを含む宿主細胞。
  10. 哺乳類細胞である請求項9の宿主細胞。
  11. 請求項8のベクターを含む宿主細胞。
  12. 哺乳類細胞である請求項11の宿主細胞。
  13. 配列番号1もしくは配列番号3の配列、または、配列番号1もしくは配列番号3に実質的に類似の配列を有する核酸を含む、請求項6の単離核酸。
  14. 配列番号2または配列番号4を含むSFECタンパク質をコードする核酸配列を含む、請求項6の単離核酸。
  15. 精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質、またはそのホモログ、誘導体、もしくは断片をコードする単離核酸に相補的な単離核酸および医薬上許容される担体を含む組成物。
  16. 精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質、またはそのホモログ、誘導体、もしくは断片に特異的に結合する抗体。
  17. 配列番号2のアミノ酸配列を含む精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質、またはそのホモログ、誘導体、もしくは断片に特異的に結合する、請求項6の抗体。
  18. モノクローナル抗体である請求項17の抗体。
  19. 請求項16の抗体および医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
  20. 配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質、またはその抗原性ホモログ、誘導体、もしくは断片、および医薬上許容される担体を含む抗原性組成物。
  21. さらにアジュバントを含む請求項20の組成物。
  22. 精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の異常な発現、機能、またはレベルに関連する精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質-関連疾患または障害の診断方法であって、対象からサンプルを得る工程、該サンプルにおける精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の発現、機能、またはレベルを測定する工程を含み、ここで、精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質-関連疾患または障害ではない対照対象からのサンプルにおける精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の発現、機能、またはレベルの量と比較して、サンプルにおける精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の発現、機能、またはレベルの量が異なることが、精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質-関連疾患または障害の存在を示す、方法。
  23. 精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質または該精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の生理活性ホモログ、誘導体、または断片をコードする核酸配列を含む少なくとも1つの単離核酸、および医薬上許容される担体を含む組成物を、有効量にて対象に投与することを含む、治療を必要とする対象における精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質-関連疾患または障害の治療方法。
  24. 精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の発現、機能、またはレベルの、少なくとも1つの調節因子および医薬上許容される担体を含む組成物を、有効量にて対象に投与することを含む、治療を必要とする対象における精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質-関連疾患または障害の治療方法。
  25. 精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の発現、機能、またはレベルの、少なくとも1つの調節因子および医薬上許容される担体を含む組成物を、有効量にて対象に投与することを含む、対象における精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の発現、機能、またはレベルの調節方法。
  26. 精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の発現、機能またはレベルの調節因子が精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の発現、機能またはレベルの阻害剤である、請求項25の方法。
  27. 該調節因子が抗体である、請求項26の方法。
  28. 精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の発現、機能またはレベルを調節する量の、精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の調節因子および医薬上許容される担体を含む組成物を含み、さらにその使用のためのアプリケーターおよび説明材料を含む、対象における精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質-関連疾患または障害の治療用キット。
  29. 精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質を調節する量の、精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の発現、機能またはレベルの調節因子および医薬上許容される担体を含む組成物を含み、さらにその使用のためのアプリケーターおよび説明材料を含む、精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の発現、機能またはレベルの調節用キット。
  30. 精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の発現、機能またはレベルの該調節因子が、精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の発現、機能またはレベルを阻害する、請求項29のキット。
  31. 該調節因子が抗体である、請求項30のキット。
  32. 細胞と被験化合物とを接触させる工程、該細胞における精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の発現、機能またはレベルを測定する工程を含む、細胞における精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の発現、機能またはレベルの阻害剤の同定方法であって、該被験化合物と接触していない点以外は同一の細胞における精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の発現、機能またはレベルと比較して、該細胞における精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の発現、機能またはレベルがより低レベルであることが、該被験化合物が細胞における精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質の発現、機能またはレベルの阻害剤であることを示す、方法。
  33. 該細胞がヒト細胞である請求項32の方法。
  34. 該阻害剤が抗体である請求項32の方法。
  35. 該抗体が配列番号2の配列または配列番号2に実質的に類似の配列を有する精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質、またはそのホモログ、誘導体、あるいは断片に対するものである請求項34の方法。
  36. 精子鞭毛エネルギーキャリアタンパク質のアデニンヌクレオチド転位酵素機能を阻害する化合物を同定するものである、請求項32の方法。
  37. 請求項32の方法によって同定される化合物。
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