JP2007528860A - 血糖降下用組成物 - Google Patents

血糖降下用組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP2007528860A
JP2007528860A JP2006519248A JP2006519248A JP2007528860A JP 2007528860 A JP2007528860 A JP 2007528860A JP 2006519248 A JP2006519248 A JP 2006519248A JP 2006519248 A JP2006519248 A JP 2006519248A JP 2007528860 A JP2007528860 A JP 2007528860A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
histamine
diabetic
receptor
composition
group
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2006519248A
Other languages
English (en)
Inventor
克也 永井
三郎 相本
徹 川上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
OSAKA FOUNDATION FOR TRADE AND INDUSTRY
Osaka University NUC
Original Assignee
OSAKA FOUNDATION FOR TRADE AND INDUSTRY
Osaka University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by OSAKA FOUNDATION FOR TRADE AND INDUSTRY, Osaka University NUC filed Critical OSAKA FOUNDATION FOR TRADE AND INDUSTRY
Publication of JP2007528860A publication Critical patent/JP2007528860A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/33Heterocyclic compounds
    • A61K31/395Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins
    • A61K31/41Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins having five-membered rings with two or more ring hetero atoms, at least one of which being nitrogen, e.g. tetrazole
    • A61K31/41641,3-Diazoles
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P3/00Drugs for disorders of the metabolism
    • A61P3/08Drugs for disorders of the metabolism for glucose homeostasis
    • A61P3/10Drugs for disorders of the metabolism for glucose homeostasis for hyperglycaemia, e.g. antidiabetics
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N2333/00Assays involving biological materials from specific organisms or of a specific nature
    • G01N2333/435Assays involving biological materials from specific organisms or of a specific nature from animals; from humans
    • G01N2333/705Assays involving receptors, cell surface antigens or cell surface determinants
    • G01N2333/72Assays involving receptors, cell surface antigens or cell surface determinants for hormones
    • G01N2333/726G protein coupled receptor, e.g. TSHR-thyrotropin-receptor, LH/hCG receptor, FSH
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N2500/00Screening for compounds of potential therapeutic value
    • G01N2500/04Screening involving studying the effect of compounds C directly on molecule A (e.g. C are potential ligands for a receptor A, or potential substrates for an enzyme A)

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Diabetes (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Emergency Medicine (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Endocrinology (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Obesity (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

本発明は、従来の糖尿病治療薬とは異なる作用メカニズムに基づいて、高血糖状態にある被験者の血糖値を降下させる作用を有し、このため当該被験者の血糖値降下のために用いられる組成物(血糖降下用組成物)を提供する。また本発明は、上記作用に基づいて高血糖に起因する疾患、具体的には糖尿病や糖尿病合併症の予防または治療のために用いられる組成物(高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物)を提供する。さらに本発明は、当該組成物の新規作用メカニズムに基づいた血糖降下作用を利用して、高血糖状態にある被験者の血糖値を降下させる方法、並びに高血糖に起因する疾患の予防または治療方法を提供する。さらにまた本発明は、上記組成物の有効成分をスクリーニングする方法を提供する。

Description

本発明は血糖降下用組成物に関する。より詳細には、本発明は、従来の糖尿病治療薬とは異なる作用メカニズムに基づいて、高血糖状態にある被験者の血糖値を降下させる作用を有し、このため当該被験者の血糖値降下のために用いられる組成物(血糖降下用組成物)に関する。また本発明は、上記作用に基づいて、高血糖に起因する疾患、具体的には糖尿病や糖尿病合併症の予防または治療のために用いられる組成物(高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物)に関する。
また本発明は、上記組成物の有効成分となる、新規イミダゾール化合物とその調製方法に関する。
さらに本発明は、当該組成物の新規作用メカニズムに基づいた血糖降下作用を利用して、高血糖状態にある被験者の血糖値を降下させる方法、並びに高血糖に起因する疾患(具体的には糖尿病や糖尿病合併症)の予防または治療方法に関する。
さらにまた本発明は、上記組成物の有効成分をスクリーニングする方法に関する。
体内の血糖値は、インスリンの血糖降下作用とアドレナリン、グルカゴン又は糖質コルチコイド等が有する血糖上昇作用とのバランスによって調節されている。具体的には、インスリンは肝臓でのグリコーゲン分解や糖新生を抑制してグルコース生成量を減少させて肝臓から血中への放出量を減少させるとともに、骨格筋や白色脂肪組織へのグルコースの取り込みを増加させて、血糖値を低下させる。一方、アドレナリンやグルカゴン等は逆に肝臓でのグリコーゲン分解や糖新生を促し肝臓からのグルコースの放出を促進して血糖値を上昇させる。
糖尿病は、上記インスリンの作用が急性的にまたは慢性的に低下することによって、高血糖状態が持続し、糖、脂質及びアミノ酸などの代謝異常を生じる代謝性疾患である。
糖尿病にはインスリン依存型とインスリン非依存型がある。インスリン依存型糖尿病は、インスリン分泌能が低下・消失しているため、食餌療法や経口血糖降下剤では治療効果がなく、インスリンによってのみ治療可能である。一方、糖尿病患者の9割以上を占めるインスリン非依存型の糖尿病は、インスリン作用が正常者よりも低下してはいるものの治療には必ずしもインスリンを必要とせず、食餌療法や運動療法を基本として、それで充分でない場合に血糖降下剤による薬物療法が併用される。
前述するように、糖尿病は高血糖状態が持続することによって代謝異常を招く疾患であるため、同時に眼、腎臓、神経系、心血管系及び皮膚などに種々の合併症を伴うやっかいな疾患である。こうした合併症は、一般に血糖値を正常に近い値に制御することによって減少すると考えられている(最新医学大辞典、p.1211、1988年、医歯薬出版)。
高血糖状態を是正する医薬製剤としては、インスリン製剤、スルホニルウレア製剤、ビグアナイド剤、インスリン抵抗性を改善する製剤、及びα−グルコシダーゼ阻害剤などが知られている。ここでインスリン製剤はインスリン依存性糖尿病に対する治療薬であり、確実に血糖値を低下することができるが、低血糖になるおそれもある。スルホニルウレア製剤は、膵臓β細胞を刺激して内因性インスリンの分泌を促進することによって血糖値を低下させる薬物であるが、血糖値とは無関係にインスリンが分泌する結果、副作用として低血糖を招く場合がある。一方、ビグアナイド剤は、肝臓での糖新生の抑制、骨格筋等での糖の利用増大、または糖の腸管吸収を抑制することによって血糖を低下させる薬物であり、健常人や糖尿病患者のいずれにも低血糖症を招かないという利点はあるものの、比較的重篤な乳酸性アシドーシスを起こしやすいという問題がある。インスリン抵抗性を改善する薬剤(例えばチアゾリジン誘導体等)は、インスリン作用を増強し、インスリン受容体キナーゼを活性化することによって血糖値を低下させる薬物であるが、副作用として消化器症状や浮腫などが起こり、赤血球数、ヘマトクリット及びヘモグロビンの低下とLDHの上昇が起こることが指摘されている(新しい糖尿病治療薬、90〜99頁、(1994)、医薬ジャーナル社)。また、α−グルコシダーゼ阻害剤は、消化管における糖質の消化や吸収を遅延させ食後の血糖上昇を抑制する作用があるが、膨満感、腹鳴、及び下痢などの副作用が問題となっている(JOSLIN’S DIABETES MELLITUS 13Th Edition 521-522)。
このように、現状では糖尿病やその合併症に対して有効な治療または予防方法がいまだ充分に確立されていないといえる。
ところで、分析技術の進歩によりヒスタミン作動神経の同定が可能になったことに伴って、1990年代前半に哺乳類の脳にヒスタミン作動神経系が存在することが明らかになり、ヒスタミンが摂食、睡眠−覚醒リズム、けいれん、攻撃性行動などの神経伝達物質として関与していることが示唆された(渡辺建彦、小野寺憲治:「中枢ヒスタミンニューロン系の最近の進歩:病態との関連」薬物・精神・行動11、105-121(1991);Onodera K,Yamatodani A, Watanabe T and Wada H, Prog Neurobiol 42, 685-702 (1994))。ヒスタミン受容体には、大きくH、H及びH受容体の3種類があり(Arrang JM, Cell Mol Biol 40, 273-279 (1994);Hill SJ, Ganellin CR, Timmerman H, Schwartz JC, Shankley NP, Yong JM, Schunack W, Levi R and Haas HL, Pharmacol Rev 49, 253-278 (1997))、中でもH受容体はヒスタミン作動神経細胞体のシナプス前膜に存在し、ヒスタミンの合成や遊離を負のフィードバック機能で調節するオートレセプターであることが知られている(Arrang JM, Garbarg M and Schwartz JC: Nature 302, 832-837 (1983);Arrang JM, Garbarg M and Schwartz JC: Neuroscience 15, 533-562 (1985);Arrang JM, Garbarg M and Schwartz JC: Neuroscience 23, 149-157 (1987))。また、H受容体は脳内では大脳皮質、扁桃体、線条体、海馬、視床、視床下部に高密度で分布している。
受容体に対する選択的なアゴニスト及びアンタゴニストとしてそれぞれ(R)-α-メチルヒスタミン及びチオペラマイドが報告されて以来(Arrang JM, Garbarg M, Lancelot JC, Lecomte JM, Pollard H, Robba M, Schunack W and Schwartz JC: Nature 327, 117-123 (1987))、この受容体に対するより選択的なリガンドが盛んに合成され、それに伴ってヒスタミン受容体の機能が解明され、臨床に応用されつつある。例えば、各種の神経精神薬理学的実験の結果から、Hアゴニストである(R)-α-メチルヒスタミンやそのプロドラッグのアゾメチン誘導体、Imetitなどが不安や片頭痛等の改善に有効であることが示唆されており、またアンタゴニストは学習記憶障害に対する改善作用、覚醒作用があることから、過食症、ナルコレプシー、痴呆の治療薬として期待されている。
しかしながら、例えばH受容体アゴニストのように、ヒスタミンのH受容体を刺激して負のフィードバック機能を活性化する作用(すなわちヒスタミン作動神経細胞体のシナプス前膜でのヒスタミンの合成や当該細胞体のシナプス前膜からのヒスタミン遊離を抑制する作用。これは間接的にヒスタミンH受容体の刺激を抑制する作用ともいえる)を有する物質が、高血糖状態にある哺乳類(ヒトを含む)の血糖値を降下させる作用を有することについては今まで報告されていない。
本発明は、従来の糖尿病治療薬とは異なる新しい作用機序に基づく血糖降下作用を備えた医薬組成物または食品組成物を提供することを課題とするものである。また本願発明はこれらの組成物を、糖尿病またはその合併症の治療または予防用の組成物として提供することを課題とする。
さらに本発明は、従来の糖尿病治療薬とは異なる新しい血糖降下作用メカニズムを提供し、当該メカニズムに基づいて新たな糖尿病またはその合併症の治療若しくは予防に有効な成分を探索し、これを含む医薬組成物または食品組成物を開発するための方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明者は日夜鋭意検討の下、ヒスタミンH受容体に対する選択的なアゴニストの典型化合物であるα−メチルヒスタミンを、人為的に低血糖状態にすることによって高血糖反応を惹起させたラットに投与したところ、有意に血糖値が低下し高血糖状態が改善することを見いだした。更に当該α−メチルヒスタミンによる血糖降下作用は、ヒスタミンH受容体に対する選択的なアンタゴニストであるチオペラマイドによって阻害されることを見いだした。さらに本発明者は、当該ヒスタミンH受容体アゴニストの血糖降下作用は、血糖値が正常なラットには認められず、高血糖状態、すなわち血糖値が異常なラットに対する特異的な作用であることを確認した。
そして本発明者はこれらの事実に基づいて、さらにヒスタミンH受容体を介してヒスタミンの遊離を抑制する物質についても同様に検討を重ねたところ、上記ヒスタミンH受容体アゴニストのようにヒスタミンH受容体に直接作用してヒスタミンの遊離を抑制する物質のみならず、当該受容体に間接的に作用してヒスタミンの遊離を抑制する物質にも、上記ラット血糖値を降下させて高血糖状態を改善する作用があることを確認した。本発明者はこうした一連の知見から、体内の血糖値の制御(上昇及び降下)に、ヒスタミン作動神経細胞体のシナプス前膜に存在してヒスタミンニューロンの代謝回転を制御しているヒスタミンH受容体が深く関与していること、そして当該ヒスタミンH受容体に対してアゴニスト若しくはアゴニスト様の作用を発揮する物質が、高血糖状態を抑制・改善して(高血糖状態の血糖値を降下させて)、糖尿病やその合併症など、高血糖に起因する疾病の予防または治療のための有効であることを見いだした。
さらに本発明者らは、新規なイミダゾール化合物を開発し、当該化合物に、ヒスタミン受容体を介して高血糖状態を改善する作用があることを見いだした。具体的には、そのイミダゾール化合物を、人為的に低血糖状態にすることによって高血糖反応を惹起させたラットに投与したところ、有意に血糖値が低下し高血糖状態が改善することを見いだし、当該化合物が、高血糖状態を抑制・改善して(高血糖状態の血糖値を降下させて)、糖尿病やその合併症など、高血糖に起因する疾病の予防または治療のために有効であることを確認した。また、当該イミダゾール化合物による血糖降下作用は、ヒスタミンH受容体に対する選択的なアンタゴニストであるチオペラマイドによって阻害されることから、従来の血糖降下剤とは異なるヒスタミンH受容体を介したH受容体アゴニストまたはアゴニスト様の、新規作用機序に基づくものであると考えられた。本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は下記の態様を包含するもである。
項1. ヒスタミンH受容体に直接または間接的に作用し、当該H受容体を刺激してヒスタミンの遊離及び/または合成を抑制する作用を発揮する物質を有効成分とする血糖降下用組成物。
項2. ヒスタミンH受容体が、ヒスタミン作動神経細胞体のシナプス前膜にあるヒスタミンH受容体である項1に記載の血糖降下用組成物。
項3. ヒスタミンH受容体アゴニストを有効成分とする項1または2に記載の血糖降下用組成物。
項4. 有効成分が、一般式(1):
Figure 2007528860
(式中、Rは水素原子または低級アルキル基、Rは低級アルキル基、アルコキシ基、またはシクロアルコキシ基を示す。)
で示されるイミダゾール化合物である、項1乃至3のいずれか1つに記載の血糖降下用組成物。
項5. 有効成分が、下式のいずれか一に示されるイミダゾール化合物である項1乃至3のいずれかに記載する血糖降下用組成物:
式(2):
Figure 2007528860
式(3):
Figure 2007528860
式(4):
Figure 2007528860
式(5):
Figure 2007528860
式(6):
Figure 2007528860
項6. 医薬品組成物または食品組成物である項1乃至5のいずれか1に記載する血糖降下用組成物。
項7. ヒスタミンH受容体に直接または間接的に作用し、当該H受容体を刺激してヒスタミンの遊離及び/または合成を抑制する作用を発揮する物質を有効成分とする、高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物。
項8. ヒスタミンH受容体が、ヒスタミン作動神経細胞体のシナプス前膜にあるものである項7に記載の高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物。
項9. 有効成分が、ヒスタミンH受容体アゴニストである項7または8に記載する高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物。
項10. 有効成分が、一般式(1):
Figure 2007528860
(式中、Rは水素原子または低級アルキル基、Rは低級アルキル基、アルコキシ基、またはシクロアルコキシ基を示す。)
に示されるイミダゾール化合物である、項7乃至9のいずれか1つに記載する高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物。
項11. 有効成分が、下式のいずれか一に示されるイミダゾール化合物である項7乃至9のいずれか1つに記載する高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物:
式(2):
Figure 2007528860
式(3):
Figure 2007528860
式(4):
Figure 2007528860
式(5):
Figure 2007528860
式(6):
Figure 2007528860
項12. 高血糖に起因する疾患が、糖尿病、並びに糖尿病アシドーシス、糖尿病性黄色腫、糖尿病性筋萎縮症、糖尿病性ケトーシス、糖尿病性昏睡、糖尿病性胃障害、糖尿性壊疽、糖尿病性潰瘍、糖尿病性合併症、糖尿病性下痢症、糖尿病性細小血管症、糖尿病性子宮体硬化症、糖尿病性心筋症、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性腎症、糖尿病性水疱、糖尿病性白内障、糖尿病性皮膚障害、糖尿病性浮腫性硬化症、糖尿病性網膜症、糖尿病性リポイド類壊死症、糖尿病性血流障害等の糖尿病の合併症である項7乃至11のいずれか1つに記載する高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物。
項13. 高血糖に起因する疾患が、II型糖尿病またはその合併症である項7乃至12のいずれか1つに記載する高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物。
項14. 医薬品組成物または食品組成物である項7乃至13のいずれかに記載する高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物。
項15. ヒスタミンH受容体に直接または間接的に作用し、当該H受容体を刺激してヒスタミンの遊離及び/または合成を抑制する作用を発揮する物質を有効量、高血糖に起因する疾患に罹患若しくはその前状態にある被験者に投与することを含む、当該被験者の血糖値を降下させる方法。
項16. ヒスタミンH受容体が、ヒスタミン作動神経細胞体のシナプス前膜にあるヒスタミンH受容体である項15に記載の方法。
項17. 上記物質が、ヒスタミンH受容体アゴニストである項15または16に記載の方法。
項18. 有効成分が、一般式(1):
Figure 2007528860
(式中、Rは水素原子または低級アルキル基、Rは低級アルキル基、アルコキシ基、またはシクロアルコキシ基を示す。)
で示されるイミダゾール化合物である、項15乃至17のいずれか1つに記載する方法。
項19. 有効成分が、下式のいずれかで示されるイミダゾール化合物である項15乃至17のいずれかに記載する方法:
式(2):
Figure 2007528860
式(3):
Figure 2007528860
式(4):
Figure 2007528860
式(5):
Figure 2007528860
式(6):
Figure 2007528860
項20. 高血糖に起因する疾患の予防または治療方法である項15乃至19のいずれか1つに記載する方法。
項21. 高血糖に起因する疾患が、糖尿病、糖尿病アシドーシス、糖尿病性黄色腫、糖尿病性筋萎縮症、糖尿病性ケトーシス、糖尿病性昏睡、糖尿病性胃障害、糖尿性壊疽、糖尿病性潰瘍、糖尿病性合併症、糖尿病性下痢症、糖尿病性細小血管症、糖尿病性子宮体硬化症、糖尿病性心筋症、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性腎症、糖尿病性水疱、糖尿病性白内障、糖尿病性皮膚障害、糖尿病性浮腫性硬化症、糖尿病性網膜症、糖尿病性リポイド類壊死症、糖尿病性血流障害である項20に記載する方法。
項22. 高血糖に起因する疾患が、II型糖尿病、またはその合併症である項20または21に記載する方法。
項23. ヒスタミンH受容体に直接または間接的に作用し、当該H受容体を刺激してヒスタミンの遊離及び/または合成を抑制する作用を発揮する物質の、血糖降下用組成物を製造するための使用。
項24. ヒスタミンH受容体が、ヒスタミン作動神経細胞体のシナプス前膜にあるヒスタミンH受容体である項23に記載の使用。
項25. 上記物質がヒスタミンH受容体アゴニストである、項23または24に記載の使用。
項26. 上記物質が、一般式(1):
Figure 2007528860
(式中、Rは水素原子または低級アルキル基、Rは低級アルキル基、アルコキシ基、またはシクロアルコキシ基を示す。)
で示されるイミダゾール化合物である、項23乃至25のいずれか1つに記載する使用。
項27. 上記物質が、下式のいずれか一に示されるイミダゾール化合物である項23乃至25のいずれかに記載する使用:
式(2):
Figure 2007528860
式(3):
Figure 2007528860
式(4):
Figure 2007528860
式(5):
Figure 2007528860
式(6):
Figure 2007528860
項28. 上記血糖降下用組成物が医薬品組成物または食品組成物である項23乃至27のいずれか1つに記載の使用。
項29. ヒスタミンH受容体に直接または間接的に作用し、当該H受容体を刺激してヒスタミンの遊離及び/または合成を抑制する作用を発揮する物質の、高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物を製造するための使用。
項30. ヒスタミンH受容体が、ヒスタミン作動神経細胞体のシナプス前膜にあるものである項29に記載の使用。
項31. 上記物質がヒスタミンH受容体アゴニストである、項29または31に記載の使用。
項32. 上記物質が、一般式(1):
Figure 2007528860
(式中、Rは水素原子または低級アルキル基、Rは低級アルキル基、アルコキシ基、またはシクロアルコキシ基を示す。)
で示されるイミダゾール化合物である、項29乃至31のいずれか1つに記載する使用。
項33. 上記物質が、下式のいずれか一に示されるイミダゾール化合物である項29乃至31のいずれかに記載する使用:
式(2):
Figure 2007528860
式(3):
Figure 2007528860
式(4):
Figure 2007528860
式(5):
Figure 2007528860
式(6):
Figure 2007528860
項34. 上記高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物が医薬品組成物または食品組成物である項29乃至38のいずれか1つに記載の使用。
項35. 高血糖に起因する疾患が、糖尿病、糖尿病アシドーシス、糖尿病性黄色腫、糖尿病性筋萎縮症、糖尿病性ケトーシス、糖尿病性昏睡、糖尿病性胃障害、糖尿性壊疽、糖尿病性潰瘍、糖尿病性合併症、糖尿病性下痢症、糖尿病性細小血管症、糖尿病性子宮体硬化症、糖尿病性心筋症、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性腎症、糖尿病性水疱、糖尿病性白内障、糖尿病性皮膚障害、糖尿病性浮腫性硬化症、糖尿病性網膜症、糖尿病性リポイド類壊死症、糖尿病性血流障害である項29乃至34のいずれかに1つに記載する使用。
項36. 高血糖に起因する疾患が、II型糖尿病、またはその合併症である項29乃至35のいずれか1つに記載する使用。
項37. ヒスタミン作動神経細胞体のシナプス前膜から遊離されるヒスタミンの量を、直接または間接的に指標として、被験物質の中から当該シナプス前膜からのヒスタミン遊離を抑制する作用を有する物質を選別する工程を有する、血糖降下用組成物の有効成分のスクリーニング方法。
項38. 下記:
(a) 被験物質がヒスタミンH受容体と反応してヒスタミンの遊離を抑制するか否かを直接または間接的に測定する工程、
(b) 上記工程(a)でヒスタミンの遊離抑制作用が確認された物質について、そのヒスタミンの遊離抑制作用がヒスタミンH受容体アンタゴニストによって阻害されるか否かを直接または間接的に測定する工程、及び
(c) 上記工程(b)でヒスタミンH受容体アンタゴニストによる拮抗的阻害作用が確認された物質を選別する工程
を有する、項37に記載する血糖降下用組成物の有効成分のスクリーニング方法。
項39. 被験物質についてヒスタミンH受容体との結合アッセイを行い、ヒスタミンH受容体のアゴニストを選別する工程を有する、項37または38に記載の血糖降下用組成物の有効成分のスクリーニング方法。
項40. 下記:
(a) 人為的に高血糖を誘導した被験動物に被験物質を投与し、投与前後の血糖値の変動を測定する工程、
(b) 上記工程(a)の結果から、人為的に誘導された高血糖状態を改善する作用(血糖低下作用)を有する被験物質を選択する工程、
及び必要により、
(c) 上記工程(b)で選択された被験物質の中から、人為的に誘導された高血糖状態を改善する作用がヒスタミンH受容体アンタゴニストによって阻害されるものを選択する工程
を有する、血糖降下用組成物の有効成分のスクリーニング方法。
項41. ヒスタミン作動神経細胞体のシナプス前膜から遊離されるヒスタミンの量を、直接または間接的に指標として、被験物質の中から当該シナプス前膜からのヒスタミン遊離を抑制する作用を有する物質を選別する工程を有する、高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物の有効成分をスクリーニングする方法。
項42. 下記:
(a) 被験物質がヒスタミンH受容体と反応してヒスタミンの遊離を抑制するか否かを直接または間接的に測定する工程、
(b) 上記工程(a)でヒスタミンの遊離抑制作用が確認された物質について、そのヒスタミンの遊離抑制作用がヒスタミンH受容体アンタゴニストによって阻害されるか否かを直接または間接的に測定する工程、及び
(c) ヒスタミンの遊離抑制作用がヒスタミンH受容体アンタゴニストによって阻害された物質を選別する工程
を有する、項41に記載する高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物の有効成分のスクリーニング方法。
項43. 被験物質についてヒスタミンH受容体との結合アッセイを行い、ヒスタミンH受容体のアゴニストを選別する工程を有する項42に記載のスクリーニング方法。
項44.下記:
(a) 人為的に高血糖を誘導した被験動物に被験物質を投与し、投与前後の血糖値の変動を測定する工程、
(b) 工程(a)で得られた結果から、人為的に誘導された高血糖状態を改善する作用を有する被験物質を選択する工程、
及び必要により、
(c) 工程(b)で選択された被験物質の中から、人為的に誘導された高血糖状態を改善する作用が、ヒスタミンH受容体アンタゴニストによって阻害されるものを選択する工程
を有する、項41乃至43のいずれかに記載されるスクリーニング方法。
項45. 高血糖に起因する疾患が、糖尿病、糖尿病アシドーシス、糖尿病性黄色腫、糖尿病性筋萎縮症、糖尿病性ケトーシス、糖尿病性昏睡、糖尿病性胃障害、糖尿性壊疽、糖尿病性潰瘍、糖尿病性合併症、糖尿病性下痢症、糖尿病性細小血管症、糖尿病性子宮体硬化症、糖尿病性心筋症、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性腎症、糖尿病性水疱、糖尿病性白内障、糖尿病性皮膚障害、糖尿病性浮腫性硬化症、糖尿病性網膜症、糖尿病性リポイド類壊死症、糖尿病性血流障害である項41乃至44のいずれかに記載するスクリーニング方法。
項46. 高血糖に起因する疾患が、II型糖尿病、またはその合併症である項41乃至45のいずれかに記載するスクリーニング方法。
項47. 一般式(1):
Figure 2007528860
(式中、Rは水素原子または低級アルキル基、Rは低級アルキル基、アルコキシ基、またはシクロアルコキシ基を示す。)
で示されるイミダゾール化合物。
項48. イミダゾール化合物が、下式のいずれかで示される化合物である項47に記載するイミダゾール化合物:
式(2):
Figure 2007528860
式(3):
Figure 2007528860
式(4):
Figure 2007528860
式(5):
Figure 2007528860
式(6):
Figure 2007528860
項49. イミダゾール化合物が、下式(3)または(4)で示される化合物である項47に記載するイミダゾール化合物:
式(3):
Figure 2007528860
式(4):
Figure 2007528860
(I)血糖降下用組成物
本発明の血糖降下用組成物は、脳内、特に視床下部に多く存在するヒスタミンH受容体、特にヒスタミン作動神経細胞のシナプス前膜に存在するヒスタミンH受容体に対して直接または間接的に刺激作用を発揮する物質を有効成分とするものである。血糖降下用組成物として、好適には医薬組成物または食品組成物を挙げることができる。ヒスタミンH受容体に対して直接または間接的に刺激作用を発揮する物質(以下、「H受容体刺激物質」ともいう)は、それ単独で血糖降下剤として使用することができるが、好ましくは当該物質以外の成分として、薬学的または食品衛生上許容される担体若しくは添加物を組み合わせて、血糖降下用組成物として使用されることが好ましい。
ヒスタミンH受容体に対して直接的な刺激作用を有する物質として、ヒスタミンH受容体に対するアゴニストを挙げることができる。
ここでヒスタミンH受容体アゴニスト(以下、単に「H受容体アゴニスト」ともいう)は、ヒスタミンH受容体に結合してヒスタミンと同様の作用を有する物質をいい、公知物質あるいは将来見いだされる新規物質のいずれであってもよい。公知のヒスタミンH受容体アゴニストとしては、H受容体に選択に作用する外因性H受容体アゴニストとして周知のα−メチルヒスタミン〔(R)-(−)-α-Methylhistamine、S(+)-α-Methylhistamine〕〔Arrang,et al., Nature 327, 117 (1987);Oishi et al., J.Neurochem. 52, 1388 (1989);Gerhard, et al., Arch. Pharm. 313, 709 (1980)〕;Nα-Methylhistamine〔Arrang,et al., Nature 302, 832-837 (1983)〕、(R)-α,(S)-β-Dimethylhistamine〔Arrang,J.M.,et al., Agents and Actions Supplement,Vol.33,Birkhauser-Verlag,Basel, pp.55-67(1991);Lipp, R. et al., Agents and Actions Supplement,Vol.33,Birkhauser-Verlag,Basel, pp.277-282 (1991)〕、Imetit〔S-2-(4-(imidazolyl)isothiourea)〕〔M.Garbarg, et al., J. Pharmacol. Exper. Therap. Vol.263, No.1, pp.304- (1992)〕、Immepip〔〔4-(1-H-imidazol-4-ylmethyl)piperidine〕〕〔Vollinga RC. et al., J.Med Chem 37, 332-333 (1994) 〕、SKF91606〔Howson W, et al., Bioorg Med Chem Lett 2, 77-78 (1992) 〕、BP2.94及びFUB307〔Krause M, et al., Elsevier Science BV, Amsterdam Vol.30, pp.175-196 (1998) 〕を挙げることができる。好ましくはヒスタミンH受容体に作動的に作用して、例えばヒスタミンH受容体、及びH受容体などといったヒスタミンH受容体以外のヒスタミン受容体とは反応しないもの、すなわちヒスタミンH受容体に選択的に作用するもの(選択的ヒスタミンH受容体アゴニスト)である。なお、上記α−メチルヒスタミン、Nα-Methylhistamine、(R)-α,(S)-β-Dimethylhistamine、limetit、Immepip、SKF91606、BP2.94及びFUB307はヒスタミンH3受容体に対して選択的に作用するアゴニストとして知られている(上記文献参照)。
また、本発明が対象とするH受容体刺激物質(H受容体アゴニストを含む。以下、同じ。)には、特表平06-505265号公報に記載のイミダゾール誘導体、特表平11-507631号公報に記載の1H-4(5)-置換イミダゾール誘導体、特表2000-500125号公報に記載の5-フェニル-3-(ピペリジン-4-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2(3H)-オン誘導体、特表2000-505428号公報に記載の化合物、特表2002-504483号公報に記載の化合物、特表2002-521463号公報に記載の非イミダゾールアルキルアミン、PCT/DK02/00438に記載の化合物、US2001/0049385A1に記載のイミダゾール複素環化合物、WO01/74815A2に記載のフェニル置換イミダゾピリジン化合物、WO01/68652A1に記載のイミダゾール複素環化合物、WO01/68651A1に記載のイミダゾール複素環化合物、WO00/64884A1に記載のピペリジルイミダゾール誘導体、WO00/63208A1に記載の置換イミダゾール誘導体、WO00/42023A1に記載の置換イミダゾール誘導体、WO00/23438A1に記載のN-(イミダゾリルアルキル)置換環状アミン、WO99/05141A1に記載の化合物、WO99/05115A1に記載の置換イミダゾール誘導体、WO99/05114A1に記載の1H-4(5)-置換イミダゾール誘導体、WO95/06037A1に記載のイミダゾール誘導体、US2002/0198237A1に記載の複素環化合物、WO02/15905A1に記載のイミダゾール誘導体、US2002/0042400A1に記載のAlicyclicイミダゾール誘導体、US2002/0037896A1に記載の二環化合物、US2002/0065278A1に記載の非イミダゾール−アリールオキシアルキルアミン、US2002/0040024A1に記載の非イミダゾール−アリールオキシアルキルアミン、US2002/0006934A1に記載のフェニル置換-イミダゾピリジン誘導体、US2002/0006928A1に記載のフェニル置換-インドール及びインダゾール誘導体、US2001/0051632A1に記載のフェニル置換-インドリジン及びテトラヒドロインドリジン、US2002/0044439A1に記載の2-アリールオキシアルキルアミノベンゾキサゾール及び2-アリールオキシアルキルアミノベンゾチアゾール、及びUS2002/0058659A1に記載のイミダゾール誘導体が含まれる。なお、これらの文献は本発明の内容の一部として本明細書に援用される。
上記文献に記載されている化合物、並びに現在公知の化合物もしくは将来見いだされる化合物が、ヒスタミンH受容体アゴニストであるか否かの評価、並びに当該化合物のヒスタミンH受容体アゴニスト活性は、例えばGarbarg et al., J. Pharmacol. Exp. Ther.1992, 263, 304-310に記載される生物学的試験法によって容易に実証及び測定することができる。かかる生物学的試験法は、具体的には下記の方法によって実施することができる。
三重水素化したヒスチジンで予め培養したラットの大脳皮質シナプトソームから新たに合成された三重水素化ヒスタミン放出量を測定してH受容体と対象する化合物との交互作用を立証する(Garbarg et al., J. Pharmacol. Exp. Ther.1992, 263, 304-310)。 なお、H受容体アゴニストの力価は、対象とする化合物をH受容体と反応させた場合に生じる三重水素化ヒスタミン放出量の抑制の程度から求めることができる(Arrang et al.,Nature, 1987, 327, 117-123)。
本発明が対象とするH受容体刺激物質は塩の形態を有していてもよい。かかる塩としては生理学的または薬学的に許容される、酸または塩基との付加塩が含まれる。好ましくは生理学的または薬学的に許容される酸付加塩である。このような塩には生理学的または薬学的に許容される無機酸または有機酸の非毒性塩が含まれる。これらの塩の例として、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸、水素酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩を挙げることができる。また本発明が対象とするH受容体刺激物質には、水和物、水加塩または多結晶構造を有するものも含まれる。また、対象とする化合物が分子の非対称中心の数に応じた複数の異性体の形で存在する場合には、全ての光学異性体、そのラセミ体、対応するジアステレオ異性体にも関するものである。ジアステレオ異性体および/または光学異性体の分離は公知の方法に従って行うことができる。本発明はさらに、対象化合物の全ての可能な互変異性型を含む。この互変異性体は単離された形または混合物の形にすることができる。
上記のH受容体刺激物質は、投与形態として、摂取後に体内で分解されて上記化合物になるように修飾されていてもよい。かかる修飾形態としては、例えば、消化管内や血液中では代謝分解されない修飾形態を有し、血液−脳関門を通過した後、脳内でH受容体刺激物質となるようなもの、或いは血液−脳関門を通過しやすい修飾形態を有し、血液−脳関門を通過した後、脳内でH受容体刺激物質となるようなものを例示することができる。本発明において、こうしたH受容体刺激物質の修飾物を「前駆体」または「pro-drug」とも称するが、当該修飾物も被験者に投与後、体内でヒスタミンH受容体を刺激する作用を発揮する作動性物質である点で、H受容体刺激物質(H受容体アゴニスト)と同一視することができ、本発明の血糖降下用組成物の有効成分、すなわち請求項1に記載する「ヒスタミンH受容体に直接作用し、当該H受容体を刺激してヒスタミンの遊離及び/または合成を抑制する作用を発揮する物質」に含まれる。
こうしたH受容体刺激物質の前駆体(pro-drug)のいくつかは既に公知であり、例えばα−メチルヒスタミンの血液−脳関門通過性を改善したpro-drugとして各種のazomethine誘導体が提案されている(Klause,M., et al, Abstracts of Satelite Symposium of XIIth International Congress of Pharmacology, New perspective in Histamine Research (Manitoba) 59P (1994);Klause,M., et al, Journal of Medical Chemistry, 1995, Vol.38, No.20, pp.4070-4079)。また、こうしたH受容体刺激物質の前駆体(pro-drug)は定法に従って適宜設計することができる。
なお、後述の実験例で示すように、本発明における血糖降下作用は、ヒスタミンH受容体を介したヒスタミンの遊離抑制作用に基づくものである。ゆえに、結果としてヒスタミンH受容体を介したヒスタミン遊離を抑制する作用をもたらすものであれば、H受容体刺激物質(H受容体アゴニストを含む)またはその前駆体(pro-drug)に限らず、例えば、ヒスタミンH受容体を間接的に刺激する作用を有する物質またはこの前駆体(pro-drug)も、本発明の血糖降下用組成物の有効成分となり得る。かかる物質としては、実験例で示す新規イミダゾール化合物、およびオレキシンAを例示することができる。
現在公知の化合物もしくは将来見いだされる化合物が、ヒスタミンH受容体を刺激することによって血糖降下作用を発揮する本発明組成物の有効成分となり得るか否かは、例えば下記の実験例3に示すように、2−デオキシ−2−グルコース(2−デオキシ−D−グルコース)を脳内に投与することによって人為的に高血糖状態にした被験動物に、被験物質を投与(但し、経口及び非経口〔経静脈、脳内投与〕の別などの投与経路を問わない)することによって血糖値低下を示すこと、さらに当該血糖値低下現象が、ヒスタミンH受容体アンタゴニストであるチオペラマイドの脳内投与によって阻害されることを測定することによって容易に実証し確認することができる。
ヒスタミンH受容体に対して直接または間接的に刺激作用を発揮するこれらの物質(前駆体を含む)は、その血糖低下に有効な量とともに、薬学的に許容される担体またはその他の添加剤を含んでいてもよく、医薬組成物の形態で使用することができる。かかる医薬組成物の投与単位形態(医薬製剤形態)は、投与経路に応じて各種適宜選択することができ、これらは大きく経口剤、経鼻剤、経膣剤、坐剤、舌下剤、非経口剤(注射剤、点滴剤)、外用剤(貼付剤、軟膏剤、クレーム剤、噴霧剤)などに分類される。これらは常法に従って、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、及びカプセル剤などの固体投与形態;溶液、懸濁剤、乳剤、シロップ、及びエリキシルなどの液剤投与形態;貼付剤、軟膏、クレーム及び噴霧剤などの外用投与形態に、調合、成形乃至調製することができる。
これらの医薬製剤の調製に利用される担体としては、製剤の投与形態に応じて通常使用される賦形剤、希釈剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、吸収促進剤、滑沢剤、溶解補助剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤などが例示できる。また添加剤としては、製剤の投与形態に応じて通常使用される安定化剤、保存剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤、着色剤、香料、風味剤、甘味剤などが例示できる。
本発明の医薬組成物中に含まれる有効成分の量は、医薬組成物の製剤形態または投与経路によって種々異なり、一概に規定することはできないが通常、最終製剤中に約1×10-12−70重量%の範囲、好ましくは1×10-11−50重量%、または1×10-11−10重量%の範囲から適宜選択して決定することができる。
上記医薬組成物中に含有されるべき有効成分の量およびその投与量は、特に限定されず、所望の治療効果、投与法、治療期間、患者の年齢、性別その他の条件などに応じて広範囲より適宜選択される。投与量は、投与経路によっても異なるが、体重60kgのヒトに対して1回投与あたりの有効成分の量に換算して、約0.1pg−1mg/60kgの範囲から適宜選択することができる。好ましくは約0.2pg−200μg/60kgである。
またヒスタミンH受容体に対して直接または間接的に刺激する作用を発揮するこれらの物質及びその前駆体は、その血糖低下に有効な量とともに、食品衛生上許容される担体またはその他の添加剤を含むことができ、こうした食品組成物の形態で使用することもできる。当該食品組成物には、上記物質または前駆体を、必要に応じて食品衛生上許容される担体や添加剤とともに、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、または溶液(ドリンク)等の形態に調製してなるサプリメント(機能性食品)の類、並びに上記物質または前駆体を配合した一般の飲食物(例えば特定保健用食品)が含まれる。
上記食品組成物中に含有されるべき有効成分の量、または摂取量は、特に限定されず、食品組成物の種類、目的とする改善効果の度合い、並びにその他の諸条件などに応じて広範囲より適宜選択される。摂取量は、食品組成物の種類によっても異なるが、体重60kgのヒトに対して1回摂取あたりの有効成分の量に換算して、約1pg−1mg/60kgの範囲から適宜選択することができる。好ましくは約10pg−1mg/60kg、または10pg−200μg/60kgである。
(II)新規イミダゾール化合物及びそれを有効成分とする血糖降下組成物
本発明が対象とするイミダゾール化合物は、一般式(1)
Figure 2007528860
(式中、Rは水素原子または低級アルキル基を、Rは低級アルキル基、低級アルコキシ基、またはシクロアルコキシ基を示す。)
で示されるものである。
式(1)中、Rで示される低級アルキル基には、炭素数1〜6の直鎖状または分枝状のアルキル基が含まれる。好ましくは直鎖状のアルキル基である。かかるアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert-ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、及びn−ヘキシル基を挙げることができる。好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜2のアルキル基、特にはメチル基を挙げることができる。
また式(1)中、Rで示される低級アルキル基もまた、上記と同様に、炭素数1〜6の直鎖状または分枝状のアルキル基を含むものである。好ましくは炭素数1〜4の直鎖状または分枝状のアルキル基である。直鎖状のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、及びn−ブチル基、好ましくはメチルを挙げることができる。また、分枝状のアルキル基としてはイソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、及びtert−ブチル基、好ましくはtert−ブチル基を挙げることができる。
またRで示される低級アルコキシ基は、炭素数1〜6、好ましくは1〜4の直鎖状または分枝状のアルキル基を含むものである。ここで直鎖状のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、及びn−ブチル基、好ましくはエチル基を挙げることができる。また、分枝状のアルキル基として、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、及びtert−ブチル基、好ましくはイソプロピル基を挙げることができる。すなわち、低級アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、及びtert−ブトキシ基を挙げることができる。
さらに、Rで示されるシクロアルコキシ基には、炭素数3〜6からなる飽和単環炭化水素を有するものが含まれる。具体的には、シクロプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、及びシクロヘキシルオキシ基、好ましくはシクロヘキシルオキシ基を挙げることができる。
上記イミダゾール化合物(1)の中で、好ましいイミダゾール化合物としては、(a)RとRがいずれもメチル基である場合の、下式(2)で示されるイミダゾール化合物〔1-acetyloxyethyl (2S)-2-(3-aminopropanoylamino)-3-imidazol-4-ylpropanoate、または(2S)-2-(3-aminopropionylamino)-3-(1H-imidazol-4-yl)-propionic acid 1-acetoxyethyl ester〕:
Figure 2007528860
(b)Rが水素原子で、Rがtert-ブチル基である場合の、下式(3)で示されるイミダゾール化合物〔(2S)-2-(3-aminopropionylamino)-3-(1H-imidazol-4-yl)-propionic acid 2,2-dimethyl-propionyloxymethyl ester〕:
Figure 2007528860
(c)Rが水素原子で、Rがエトキシ基である場合の、下式(4)で示されるイミダゾール化合物〔ethoxycarbonyloxymethyl (2S)-2-(3-aminopropanoylamino)-3-imidazol-4-ylpropanoate、または(2S)-2-(3-aminopropionylamino)-3-(1H-imidazol-4-yl)-propionic acid ethoxycarbonyloxymethyl ester〕:
Figure 2007528860
(d)Rがメチル基で、Rがイソプロポキシ基である場合の、下式(5)で示されるイミダゾール化合物〔1-(1-methylethoxycarbonyloxy)ethyl (2S)-2-(3-aminopropanoylamino)-3-imidazol-4-ylpropanoate、または(2S)-2-(3-aminopropionylamino)-3-(1H-imidazol-4-yl)-propionic acid 1-isopropyloxycarbonyloxyethyl ester〕:
Figure 2007528860
(e)Rがメチル基で、Rがシクロヘキシルオキシ基である場合の、下式(6)で示されるイミダゾール化合物〔1-cyclohexyloxycarbonyloxyethyl (2S)-2-(3-aminopropanoylamino)-3-imidazol-4-ylpropanoate、または(2S)-2-(3-aminopropionylamino)-3-(1H-imidazol-4-yl)-propionic acid 1-cyclohexyloxycarbonyloxyethyl ester〕:
Figure 2007528860
を挙げることができる。
中でも好ましくは、上記式(3)で示されるイミダゾール化合物、及び式(4)で示されるイミダゾール化合物である。なお、これらイミダゾール化合物(3)及び(4)の合成方法を、製造例1及び2にそれぞれ記載する。一般式(1)に含まれるその他のイミダゾール化合物(例えば、イミダゾール化合物(2)、(5)及び(6))も、上記方法に準じて合成することができる。
具体的には、イミダゾール化合物(2)[β-Ala-His-OCH(CH3)OCOCH3]は、イミダゾール化合物(3)[β-Ala-His-OCH-OCO−C(CH)](製造例1)と同様な合成方法により製造することができる。すなわち,アセチルクロリドとアセトアルデヒドを塩化亜鉛存在下で反応させ、1-クロロエチル アセテートを調製し、これとヨウ化ナトリウムから1-ヨードエチルアセテートを得る。これとBoc-His(Trt)-OCsあるいはBoc-β-Ala-His(Trt)-OCsと反応させることにより、保護アミノ酸エステルあるいはBoc-β-Ala-His(Trt)-OCH(CH3)OCOCH3を得る。これより保護基を除去すればイミダゾール化合物(2)を得ることができる。なお、1-ヨードエチルアシレートの調製は、文献[Y. Yoshimura et al., J. Antibiotics, 39,1329 (1986)]を参考にして行うことができる。
また、イミダゾール化合物(5)[β-Ala-His-OCH(CH3)OCOOCH(CH3)2]およびイミダゾール化合物(6)[β-Ala-His-OCH(CH3)OCOOC6H11]もまた、イミダゾール化合物(4)[β-Ala-His-OCH-OCO-OCHCH・2HCl](製造例2)と同様の方法により得ることができる。すなわち、対応するアルキル1-クロロエチルカーボネートとヨウ化ナトリウムを反応させ、アルキル1-ヨードエチルカーボネートを得る。これとBoc-β-Ala-His(Trt)-OCsあるいはジイソプロピルエチルアミン存在下でBoc-β-Ala-His(Trt)-OHとを反応させることにより、Boc-β-Ala-His(Trt)-OCH(CH3)OCOO-R(ここで、Rはイソプロピル基あるいはシクロヘキシル基)を得る。これらより保護基を除去すればイミダゾール化合物(5)および(6)が得られる。なお、アルキル1-ヨードエチルカーボネートの調製は、文献[T. Nishimura et al., J. Antibiotics, 40, 81 (1987); K. Fujimoto et al., J. Antibiotics, 40, 370 (1987)]を参考にして行うことができる。
本発明が対象とするイミダゾール化合物(1)は塩の形態を有していてもよい。かかる塩としては生理学的または薬学的に許容される、酸または塩基との付加塩が含まれる。好ましくは生理学的または薬学的に許容される酸付加塩である。このような塩には生理学的または薬学的に許容される無機酸または有機酸の非毒性塩が含まれる。これらの塩の例として、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩を挙げることができる。また本発明が対象とするイミダゾール化合物には、水和物、水加塩または多結晶構造を有するものも含まれる。また、対象とする化合物が分子の非対称中心の数に応じた複数の異性体の形で存在する場合には、全ての光学異性体、そのラセミ体、対応するジアステレオ異性体にも関するものである。ジアステレオ異性体および/または光学異性体の分離は公知の方法に従って行うことができる。本発明はさらに、対象化合物の全ての可能な互変異性型を含む。この互変異性体は単離された形または混合物の形にすることができる。
本発明はまた、上記イミダゾール化合物(1)を有効成分とする血糖降下用組成物を提供する。好ましい血糖降下用組成物としては、イミダゾール化合物(3)を有効成分とするものである。当該イミダゾール化合物(1)は、それ単独で血糖降下剤として使用することができるが、好ましくは当該化合物以外の成分として、薬学的または食品衛生上許容される担体若しくは添加物を組み合わせて、血糖降下用組成物として使用されることが好ましい。血糖降下用組成物として、好適には医薬組成物または食品組成物を挙げることができる。
本発明が有効成分として用いるイミダゾール化合物は塩の形態を有していてもよい。かかる塩としては生理学的または薬学的に許容される、酸または塩基との付加塩が含まれる。好ましくは、前述するような、生理学的または薬学的に許容される酸付加塩である。
イミダゾール化合物(1)は、その血糖低下に有効な量とともに、薬学的に許容される担体またはその他の添加剤を含んでいてもよく、医薬組成物の形態で使用することができる。かかる医薬組成物の投与単位形態(医薬製剤形態)は、投与経路に応じて各種適宜選択することができ、これらは大きく経口剤、経鼻剤、経膣剤、坐剤、舌下剤、非経口剤(注射剤、点滴剤)、外用剤(貼付剤、軟膏剤、クレーム剤、噴霧剤)などに分類される。これらは常法に従って、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、及びカプセル剤などの固体投与形態;溶液、懸濁剤、乳剤、シロップ、及びエリキシルなどの液剤投与形態;貼付剤、軟膏、クレーム及び噴霧剤などの外用投与形態に、調合、成形乃至調製することができる。
これらの医薬製剤の調製に利用される担体としては、製剤の投与形態に応じて通常使用される賦形剤、希釈剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、吸収促進剤、滑沢剤、溶解補助剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤などが例示できる。また添加剤としては、製剤の投与形態に応じて通常使用される安定化剤、保存剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤、着色剤、香料、風味剤、甘味剤などが例示できる。
本発明の医薬組成物中に含まれる有効成分の量は、医薬組成物の製剤形態または投与経路によって種々異なり、一概に規定することはできないが通常、最終製剤中に約1×10−12−70重量%の範囲、好ましくは1×10−11−50重量%、または1×10−11−10重量%の範囲から適宜選択して決定することができる。
上記医薬組成物中に含有されるべき有効成分の量およびその投与量は、特に限定されず、所望の治療効果、投与法、治療期間、患者の年齢、性別その他の条件などに応じて広範囲より適宜選択される。投与量は、投与経路によっても異なるが、体重60kgのヒトに対して1回投与あたりの有効成分の量に換算して、約1pg−10mg/60kgの範囲から適宜選択することができる。好ましくは約10pg−1mg/60kgである。
またイミダゾール化合物(1)は、その血糖低下に有効な量とともに、食品衛生上許容される担体またはその他の添加剤を含むことができ、こうした食品組成物の形態で使用することもできる。当該食品組成物には、上記化合物を、必要に応じて食品衛生上許容される担体や添加剤とともに、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、または溶液(ドリンク)等の形態に調製してなるサプリメント(機能性食品)の類、並びに上記物質または前駆体を配合した一般の飲食物(例えば特定保健用食品)が含まれる。
上記食品組成物中に含有されるべき有効成分の量、または摂取量は、特に限定されず、食品組成物の種類、目的とする改善効果の度合い、並びにその他の諸条件などに応じて広範囲より適宜選択される。摂取量は、食品組成物の種類によっても異なるが、体重60kgのヒトに対して1回摂取あたりの有効成分の量に換算して、約1pg−10mg/60kgの範囲から適宜選択することができる。好ましくは約10pg−1mg/60kgである。
(III)高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物
前述するヒスタミンH受容体、特にヒスタミン作動神経細胞のシナプス前膜に存在するヒスタミンH受容体に対して直接または間接的に刺激作用を発揮する物質、及びイミダゾール化合物は、後記実験例で示すように、インスリン作用の低下または欠乏によって生じる高血糖状態を改善し、血糖降下作用を発揮する。このため、これらの物質はインスリン作用の低下または欠乏によって生じる高血糖状態に起因する各種の疾患の予防または治療用組成物として有効である。
かかる疾患としては、糖尿病及び糖尿病の合併症を挙げることができる。ここで対象とする糖尿病は、好適にはインスリン非依存性のII型糖尿病である。また糖尿病合併症とは糖尿病(好ましくはインスリン非依存性のII型糖尿病)を直接または間接的な要因として併発する全身性もしくは局所性の疾患であり、具体的には、糖尿病アシドーシス、糖尿病性黄色腫、糖尿病性筋萎縮症、糖尿病性ケトーシス、糖尿病性昏睡、糖尿病性胃障害、糖尿性壊疽、糖尿病性潰瘍、糖尿病性合併症、糖尿病性下痢症、糖尿病性細小血管症、糖尿病性子宮体硬化症、糖尿病性心筋症、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性腎症、糖尿病性水疱、糖尿病性白内障、糖尿病性皮膚障害、糖尿病性浮腫性硬化症、糖尿病性網膜症、糖尿病性リポイド類壊死症、糖尿病性血流障害等を例示することができる。
ヒスタミンH受容体、、特にヒスタミン作動神経細胞のシナプス前膜に存在するヒスタミンH受容体を直接または間接的に刺激する作用を有する物質は、(1)で述べるものを同様に挙げることができる。かかる物質(上記イミダゾール化合物が含まれる)は、前述のように生理学的または薬学的に許容される塩、水和物、水加塩または多結晶構造の形態を有していても良い。また体内で分解された後または血液−脳関門通過後に、ヒスタミンH受容体に対する作動性を示すものであれば、修飾された投与形態(前駆体:pro-drug)を有するものであってもよい。
これらのヒスタミンH受容体に直接または間接的に刺激作用を発揮する物質は、糖尿病の治療またはその合併症の予防または治療に有効な量を、薬学的に許容される担体若しくはその他の添加剤とともに、または食品衛生上許容される担体若しくはその他の添加剤とともに、医薬組成物の形態または食品組成物の形態で使用することができる。これら組成物の有効成分の含有量や投与(摂取)用量は、前述(2)の通りである。
(IV)スクリーニング方法
本発明はまた、血糖降下用組成物の有効成分(血糖降下作用物質)のスクリーニング方法を提供する。当該方法は、被験物質の中から、ヒスタミンH受容体に作用して、シナプス前膜からのヒスタミン遊離を抑制する作用を有する物質を有効成分の候補物質として選別する工程を含む。
ここで、被験物質がヒスタミンH受容体と反応して、ヒスタミン作動神経細胞体のシナプス前膜からのヒスタミン遊離を抑制するか否かを測定する方法としては、細胞外に放出されるヒスタミンの量を直接測定する方法のほか、細胞外へのカルシウムの流入を測定することによっても行うことができる(Arrang,J.M., Garbarg, M. and Schwartz, J.C.; Neuroscience, 15, 553-562 (1985)、及び Schlicker,E., Fink,K., Detzner,M. and Gothert,M. Naunyn-Schmiedberg’s Archives of Pharmacology, 350, 34-41 (1994))。具体的には、例えばFrancis Coge et al., Biochem. J. (2001) 355, p.279-288 の「EXPERIMENTAL」の欄、「Camobilization assay」に記載されている方法に従って、測定対象の被験物質についてintracellular Camobilizationを蛍光イメージング・プレート・リーダーで測定することによって評価することができる。なお、ここで使用されるH受容体発現CHO-K1細胞は、既に公知のものであるが、例えば同文献の「EXPERIMENTAL」の欄、「Stable CHO-K1 cell line」等の記載に従って常法により作成することができる。
なお、Francis Coge et al., Biochem. J. (2001) 355, p.279-288を含む上記文献に記載された内容は、援用により本件明細書の内容に含まれる。
かかる方法でヒスタミン前膜からのヒスタミン遊離の抑制を指標として選別された被験物質はさらに、そのヒスタミンの遊離抑制作用がヒスタミンH受容体アンタゴニストによって阻害されるか否かを確認することが好ましい。かかる確認方法は、上記ヒスタミンの遊離試験(細胞外へのカルシウムの流入測定試験を含む)をヒスタミンH受容体アンタゴニスト(例えば、チオペラマイド)の存在下で実施することによって行うことができる。
斯くして、ヒスタミンの遊離抑制作用がヒスタミンH受容体アンタゴニストによって阻害されることが確認された被験物質は、血糖降下組成物の有効成分の候補物質として選別することができる。
また、上記ヒスタミン遊離抑制評価試験に加えて、またはヒスタミン遊離抑制評価試験及びそのヒスタミンH受容体アンタゴニストによる阻害試験に加えて、必要に応じて、被験物質についてヒスタミンH受容体との結合アッセイを行うこともできる。なお、ヒスタミンH受容体の結合アッセイは既に公知であり、当該公知の方法をいずれも使用することができるが、具体的には、例えばFrancis Coge et al., Biochem. J. (2001) 355, p.279-288 の「EXPERIMENTAL」の欄、「[125I] Iodoproxyfan binding assay」に記載されている方法に従って行うことができる。なお、ここで結合アッセイに使用される膜は、H受容体を発現する細胞から、例えば同文献の「EXPERIMENTAL」の欄、「Cell membrane preparation」の記載に従って常法により作成することができる。
上記ヒスタミン遊離を抑制作用に加えて、当該結合アッセイによって、ヒスタミンH受容体との親和性が確認された物質は、ヒスタミンH受容体アゴニストとして、特に血糖降下組成物の有効成分の候補物質としてより有効に利用することができる。
また、血糖降下用組成物の有効成分(血糖降下作用物質)のスクリーニングは、後述する実験例に示すように、下記の:
(a) 2−デオキシ−2−グルコースを投与することによって人為的に高血糖を誘導した被験動物に被験物質を投与し、投与前後の血糖値の変動を測定する工程、
(b) 上記の結果から、人為的に誘導された高血糖状態を改善する作用(血糖低下作用)を有する被験物質を選択する工程、
及び必要により、
(c) 工程(b)で選択された被験物質の中から、人為的に誘導された高血糖状態を改善する作用(血糖低下作用)がヒスタミンH受容体アンタゴニストによって阻害されたものを選択する工程
を行うことによって実施することもできる。
ここで被験動物としては、ラット、マウス、モルモッット、ウサギ、サル、イヌなどを例示することができる。
なお、上記本発明のスクリーニング方法によって選別された候補物質は、さらに高血糖症状を有する糖尿病モデル動物を用いた薬効試験、安全性試験、さらに高血糖症状を有する糖尿病患者(ヒト)もしくはその前状態にある患者(ヒト)への臨床試験に供してもよく、これらの試験を実施することによって、より実用的な血糖降下用組成物の有効成分を選別取得することができる。このようにして選別された物質は、必要に応じて構造解析を行った後、その物質の種類に応じて、化学的合成、生物学的合成(発酵を含む)または遺伝子学的操作によって、工業的に製造することができ、血糖降下用組成物の調製に使用することができる。
なお、斯くして得られる血糖降下用組成物の有効成分は、同時に高血糖に起因する疾患、例えば糖尿病(好ましくはインスリン非依存性のII型糖尿病)や糖尿病合併症の予防または治療用組成物の有効成分となり得るものである。よって、上記本発明の血糖降下用組成物の有効成分のスクリーニング方法は、高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物の有効成分のスクリーニング方法と言い換えることもできる。
以下、本発明を製造例及び実験例によって更に詳細に説明する。但し、これらの製造例及び実験例は本発明を何ら限定するものではない。なお、下記の実験例において、特に言及しない限り、%は重量%を意味するものとする。
製造例1 イミダゾール化合物(3)〔β-Ala-His-OCH-OCO−C(CH)
Figure 2007528860
(1)(CH)CO-OCHIの合成
Cl-CHOCOC(CH) (150 mg)をアセトン(1.5 mL)に溶解し、窒素気流下NaI (300 mg)を加え5時間攪拌した。次いで生じた不溶物を濾別後、得られた濾液を濃縮してシリカゲルカラム(1 x 5 cm)に供して、ヘキサン−酢酸エチル(9:1, v/v)を溶出液として(CH)CO-OCHIを単離し、これを濃縮して、油状物(190 mg)を得た。
(2)Boc-His(Trt)-OCH-CO-C(CH)の合成
CsCO(9.0 mg)を溶解した水(0.5 mL)とDMF(0.5 mL)の混合溶媒にBoc-His(Trt)(25.3 mg)を溶解し、減圧下濃縮乾固した。残渣をDMF(2mL)に溶解した後、再び減圧下で濃縮乾固し、得られた残渣(Boc-His(Trt)OCs)を五酸化二リン存在下で1夜デシケーター中にて減圧乾燥した。この残渣(Boc-His(Trt)OCs)に乾燥したDMF(1mL)を加えて溶解し、これに上記(1)で得られた(CH)CO-OCHI(13 mg)を加えて室温にて終夜攪拌した。次いで得られた反応溶液を、0.1% TFAを含有する水−アセトニトリルを溶出液として用いたHPLC(ODCカラムを装着)に供し、標記の(Boc-His(Trt)-OCH-OCO-C(CH))を含む分画を220nmの吸光度を指標として単離し、凍結乾燥することにより粉末(19 mg、61%収率)を得た。目的物の確認はMALDI-MSにより行った。
(3)Boc-β-Ala-His(Trt)-OCH-CO-C(CH)の合成
上記(2)で得られたBoc-His(Trt)-OCH-OCO-C(CH)(11.7 mg)を99% ギ酸(0.3 mL)に溶解し、室温にて20分攪拌したのち、直ちに凍結乾燥してHis(Trt)-OCH-OCO-C(CH)を含む粉末(10.2 mg)を得た。この粉末にBoc-β-Ala-OSu(7.2 mg)を含むDMF溶液(120 mL)を加え、さらにN,N-ジイソプロピルエチルアミン(10 mL)を加えて4時間攪拌した。次いで得られた反応溶液を、0.1% TFAを含有する水−アセトニトリルを溶出液として用いた下記条件のHPLC(ODCカラムを装着)に供し、標記の(Boc-β-Ala-His(Trt)-OCH-CO-C(CH)) を含む分画を220nmの吸光度を指標として単離し、凍結乾燥することにより粉末(10.2 mg、78%収率)を得た。目的物の確認はMALDI-MSにより行った。
<HPLC条件>
カラム:Cosmosil 5C18-AR-II 10 x 250 mm
溶出液:A液:0.1% TFA含有水溶液
B液:0.1% TFA含有アセトニトリル溶液
濃度勾配 時間(分) 0 5 45 50
B % 5 5 90 100
流速 : 2.5 mL/min。
(4)β-Ala-His-OCH-OCO-C(CH)の調製
上記(3)で得られた粉末(1.8 mg)に2.5%の水、2.5%のトリイソプロピルシラン及び95%トリフルオロ酢酸よりなる試薬組成物(300 mL)を加え、室温にて30分攪拌した。次いで得られた反応溶液を、0.1% TFAを含有する水−アセトニトリルを溶出液として用いた下記条件のHPLC(ODCカラムを装着)に供し、標記の(β-Ala-His-OCH-OCO-C(CH)) を含む分画を220nmの吸光度を指標として単離し、凍結乾燥することにより粉末を得た。この粉末に 0.1M HCl/ジオキサン(1 mL)を加え、再度凍結乾燥を行い、白色粉末の標記化合物(1.0 mg、92%収率)を得た。
<HPLC条件>
カラム:Cosmosil 5C18-AR-II 4.6 x 150 mm
溶出液:A液:0.1% TFA含有水溶液
B液:0.1% TFA含有アセトニトリル溶液
濃度勾配 時間(分) 0 5 45 50
B% 5 5 90 100
流速:1.0 mL/min。
得られた標記化合物(TFA塩)のMS及びNMRの測定結果を以下に示す。
MS (MALDI-MS): 実測値 340.4,計算値341.2.
NMR:図1参照
H NMR(400MHz, CDOD, 25℃)δ:1.22(9H,s), 2.64-2.69(2H,s), 3.14-3.22(3H,m), 5.78(1H,d,J=5.3Hz), 5.82(1H,d,J=5.3Hz), 7.4(1H,s), 8.84(1H,s)。
製造例2 化合物(4)の塩酸塩〔β-Ala-His-OCH-OCO-OCHCH・2HCl〕
Figure 2007528860
ヨウ化ナトリウム(25 mg)をクロロメチル エチルカーボネート(22mg)[Z. Li et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 7, 2909 (1997)]を溶解したアセトニトリル(0.15mL)に溶解し、これを室温、暗室条件下で4時間攪拌した。次いでこれを、a solution of Boc-β-Ala-His(Trt) (30 mg) とジイソプロピルエチルアミン(0.019 mL)を溶解したDMF(0.30 mL)に添加し、さらに室温で3日間攪拌した。その後、得られた溶液に酢酸エチル(30 mL)を添加し、この溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液(5 mL)で2回、及び塩化ナトリウム水溶液(5 mL)で1回、洗浄した。洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧条件下で濃縮し、これをアセトニトリルと水の混合液(1:4)に溶解した後、凍結乾燥して白色粉末(約55mg)を取得した。
これを、室温下、2%トリイソプロピルシランと2%TFAを含有する水 (1.2 mL)で30分間処理し、エーテル(10 mL)で3回洗浄した。この残渣をアセトニトリルと水の混合液(1:4)に溶解した後、凍結乾燥して、28mgの粗生成物を取得した。
得られた粗生成物を、0.1% TFAを含有する水−アセトニトリルを溶出液として用いた下記条件のHPLC(ODCカラムを装着)に供し、標記の(β-Ala-His-OCH-OCO-C(CH)) を含む分画を220nmの吸光度を指標として単離し、凍結乾燥することによりβ-Ala-His-OCH-OCO-OCHCH(TFA塩)の白色粉末(19mg)を得た。これを、5%のアセトニトリルを含む0.05M HCl水溶液に溶解して、再度凍結乾燥して、標記化合物(β-Ala-His-OCH-OCO-OCHCH・2HCl)の白色状粉末(11mg:52%収率)を取得した。
<HPLC条件>
カラム:Cosmosil 5C18-MS 10 x 250 mm
溶出液:A液:0.1% TFA含有水溶液
B液:0.1% TFA含有アセトニトリル溶液
濃度勾配 時間(分) 0 20 25
B% 5 15 95
流速:2.5 mL/min。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d, 25℃):δ1.23 (3H, t, J=7.1 Hz), 2.46-2.58 (2H, m), 2.88-2.98 (2H, m), 3.07 (1H, dd, J=8.8 and 15.1 Hz), 3.16 (1H, dd, J=5.7 and 15.1 Hz), 4.19 (2H, q, J=7.1 Hz), 4.58-4.66 (1H, m), 5.69 (1H, d, J=6.1 Hz), 5.72 (1H, d, J=6.1 Hz), 7.44 (1H, s), 7.87 (3H, br), 8.87 (1H, d, J=7.2 Hz), 9.01 (1H, s), 14.35 (2H, br);
13C NMR (100 MHz, DMSO-d, 25 ℃):δ 13.9, 25.6, 31.8, 34.9, 51.3, 64.5, 82.4, 117.2, 128.6, 133.9, 153.1, 169.3, 169.8;
ESI-MS: m/z 329(M+H).Calcd for C13H21NO,329.15。
実験例1
(1)始めに
哺乳類の脳はグルコースを必須のエネルギー源とする。従って、哺乳類の脳内に、グルコースの細胞内での利用を阻害する2−デオキシ−2−グルコース(以下、「2DG」と称する)を投与すると、脳はエネルギー欠乏状態に陥る。そうすると、哺乳類は交感神経を興奮させて副交感神経の活動を低下させて、アドレナリンやグルカゴンなどの血糖上昇作用を有するホルモンの血中濃度を増加させ、またインスリンのような血糖降下作用をもつホルモンの血中濃度を減少させて、血糖値を上昇させ、この危機的状態を克服し、生存しようとする。
以下の実験において、この2DGの脳(側脳室)内投与による血糖上昇(高血糖)反応に対する(R)-(−)-α-メチルヒスタミン(以下、「MH」とも称する。)の作用を、MHを側脳室内に投与することにより調べた。
(2)実験内容
具体的には、予め1週間、24±1℃、12時間周期の明期(照明80lx、7:00-19:00)及び暗期(19:00-7:00)の環境下で飼育したラット(雄、Wistar rat、250〜300g)を被験動物として用いて、下記の実験を行った。なお、ラットには飼料(MF type; Oriental Yeast)と水を自由に摂取させた。実験開始の3日前、ペントバルビタール麻酔下(35mg/kg)で、PE-10製(Clay Adams, Parsippany, NJ)の脳用カニューレを右側脳室(LCV)に挿入し、また別のSILASTIC製(Dow Corning, Midland MI)及びPE-50製(Clay Adams, Parsippany, NJ)の心臓カテーテルを右心房に挿入した。
実験当日、上記ラットを11群に分けて(各群:3〜5匹)、下記の被験試料を、それぞれ非麻酔下で、脳用カニューレを使用して各ラットの右側脳室(LCV)内に投与した。なお、実験の2時間前から採血終了まで、ラットには食餌を一切与えなかった。
<被験試料>
(i) 各濃度のMH溶液(0.001pg/aCSF10μl、0.1pg/aCSF10μl、1pg/aCSF10μl、10pg/aCSF10μl、100pg/aCSF10μl、1ng/aCSF10μl、及び10ng/aCSF10μl)10μlと2DG溶液(40μmol/aCSF10μl)10μlの混合液
(ii) aCSF 10μlと2DG溶液(40μmol/aCSF10μl)10μlの混合液
(iii) aCSF 10μlとMH溶液(10pg/aCSF10μl及び10ng/aCSF10μl)10μlの混合液
(iv) aCSF20μl。
なお、上記被験試料に使用したMH溶液及び2DG溶液は、いずれも人工脳脊髄液(aCSF[artificial cerebrospinal fluid]:S. Sadashima, et al., Am. J. Physiol, 241: H78-H84, 1981)で調製したものである。
各ラットについて、投与前(0分)と投与30分、60分、90分及び120分後に、それぞれ右心房に挿入した心臓カテーテルから血液(各0.3ml)を採取した。採取した血液サンプルにaprotinin(100KIU/10μl)とEDTA(300nmol/10μl)をそれぞれ10μlずつ添加し、遠心して血漿サンプルを取得した後、血糖値(血漿中のグルコース濃度)測定まで冷凍庫(−60℃)にて保存した。
血漿中のグルコース濃度は、グルコースオキシダーゼ法(Brain Res., 809 (1998) p.165-174)を使用して、富士ドライケムシステム(富士フィルム社製、日本)を用いて測定した。
(3)実験結果
結果を図2に示す。なお、図のデータは平均値±標準誤差で示す。図中の( )内の整数(3〜5)は被験ラット数を意味する。また図中、「aCSF」は人工脳脊髄液単独(被験試料(iv))、「2DG」は2DG溶液とaCSFの混合液(被験試料(ii))、「MH」はMH溶液とaCSFの混合液(被験試料(iii))、「2DG−MH」は2DG溶液とMH溶液の混合液(aCSFを含む)(被験試料(i))を、それぞれ被験ラットに側脳内投与した結果を意味する。
図2に示すように、aCSF(人工脳脊髄液)のみを投与した被験動物の血糖値(--○--)を基準として、他の被験ラットの血糖値と比較すると、2DGを投与した被験ラットの血糖値は顕著に高く、2DGの投与により被験ラットに高い血糖上昇反応(高血糖反応)が生じていることが認められた(−●−)。これに対して2DGとMH(0.001pg/aCSF10μl〜10ng/aCSF10μl)を併用投与すると2DG投与によって生じる血糖上昇反応(高血糖反応)が抑制されて血糖値が低下し、高血糖状態が改善されることが認められた(―■―、―□―、―△―、---▲---、---△---、---■---、及び---□---)。
また、図2に示すように、MH溶液(10ng/aCSF10μlもしくは10pg/aCSF10μl)を脳内投与した場合には(―▲―、---●---)、若干の血糖上昇反応が認められたものの、その上昇の程度はaCSF単独投与(---○---)の場合に認められる血糖上昇程度と有意差がなかった。このことから血糖値が正常範囲にある状態(正常者)に対しては、MHは血糖降下作用を示さないことが示唆された。
(4)考察
これらの実験結果は、ヒスタミンH受容体の典型的なアゴニストである(R)-(−)-α-メチルヒスタミン(MH)が、脳の糖欠乏状態によって生じる生体反応、すなわち血糖上昇反応(高血糖反応)を抑制することを示している。なお、2DGの脳内投与による高血糖反応はインスリンの分泌を抑制することにより発現するので、2DGの脳内投与によって誘導された高血糖状態は糖尿病状態を示しているといえる。従って、2DGの脳内投与によって生じる高血糖反応がMHによって抑制されて血糖値が降下することを示した上記実験の結果は、MHが糖尿病によって生じる高血糖状態を改善する作用または糖尿病による高血糖状態の発現を抑制する作用を有することを示している。言い換えれば、上記結果は、MHに、糖尿病状態の発現を予防する作用(糖尿病に対する予防作用)ならびに糖尿病状態を改善する作用(糖尿病に対する治療作用、糖尿病合併症の予防作用)があることを示すものである。一方、MHは正常な血糖値を有するラットに対しては血糖降下作用を示さなかった。
これらのことから、MH等のヒスタミンH受容体アゴニスト(ヒスタミンH受容体刺激剤)のように、直接ヒスタミンH受容体に作動的に作用する物質又は間接的に当該受容体に作動的に作用する物質によってヒスタミンH受容体を刺激することにより、糖尿病状態(すなわち高血糖状態)の発現が予防できること、また糖尿病状態(すなわち高血糖状態)を改善することができることがわかる。当該、ヒスタミンH受容体に対して作動的に作用すること(ヒスタミンH受容体の刺激)に基づく血糖低下メカニズムは、本実験によって初めて示されたものである。そして、当該メカニズムに基づけば、ヒスタミンH受容体を直接または間接的に刺激する化合物は、血糖低下剤の有効成分として、また糖尿病や糖尿病合併症などのように、インスリン反応の低下による高血糖反応に起因して生じる疾病の予防及び治療剤の有効成分として有用である。
また、上記で得られた結果のうち、各濃度(0.001pg/aCSF10μl〜10ng/aCSF10μl)のMH溶液10μlと2DG溶液(40μmol/aCSF10μl)10μlの混合液を投与したラットに関する投与前(0分)と投与60分後の血糖値データを、MHの投与量(pg/aCSF10μl)を横軸(log表示)に、血糖値を縦軸にプロットしたグラフを図3に示す。なお、aCSF10μlと2DG溶液(40μmol/aCSF10μl)10μlの混合液を投与したラットについて得られた投与前(0分)と投与60分後の血糖値を、MHの投与量を0pg/aCSF10μlとしたときの血糖値として、図3に示す。
これらの結果から、MHは0.001pg〜0.01μg/1動物と広い投与量範囲にわたって、前述する血糖値低下作用、糖尿病状態の改善作用があることが分かる。
実験例2 (R)-(−)-α-メチルヒスタミンの血糖降下作用に対するヒスタミンH受容体アンタゴニストによる拮抗作用
(1)始めに
チオペラマイド(thioperamide)は、ヒスタミンH受容体に対する選択的なアンタゴニスト(ヒスタミンH受容体阻害剤)である(Arrang, J.M., Garbarg,M., Lancelot,J.C., Lecomte,J.M., Pollard,H., Robba,M., Schunack,W. and Schwartz,J.C., Nature, 327 (1987) pp.117-123)。以下の実験では、上記実験例1で示したMH(ヒスタミンH受容体アゴニスト)による血糖降下作用が、ヒスタミンH受容体アンタゴニストによって阻害されるかどうか調べた。
(2)実験内容
実験には、予め10日間、12時間の明暗周期下(明期:照明80lx、8:00-20:00)、23℃の恒温動物室で飼育したラット(雄、Wistar rat、250〜300g)を被験動物として用いた。なお、ラットには飼料(MF type; Oriental Yeast)と水を自由に摂取させた(以下、実験例3及び参考実験例1〜3においても同様にして飼育したラットを被験動物として使用した)。
実験開始の3日前、ペントバルビタール麻酔下(35mg/kg)で、PE-10製(Clay Adams, Parsippany, NJ)の脳用カニューレを右側脳室(LCV)に挿入し、また別のSILASTIC製(Dow Corning, Midland MI)及びPE-50製(Clay Adams, Parsippany, NJ)の心臓カテーテルを右心房に挿入した。
実験当日、上記ラットを4群に分けて、下記の被験試料を、それぞれ非麻酔下で脳用カニューレを使用して、右側脳室(LCV)内に投与した。なお、実験の2時間前から採血終了まで、ラットには食餌を一切与えなかった。
<被験試料>
(i) aCSF 30μl
(ii) 2DG溶液(40μmol/aCSF30μl) 30μl
(iii) 2DG溶液(40μmol/aCSF30μl)とMH溶液(1ng/aCSF30μl)の混合液 30μl
(iv) 2DG溶液(40μmol/aCSF30μl)とMH溶液(1ng/aCSF30μl)とチオペラマイド溶液(200μg/aCSF30μl)の混合液 30μl。
なお、上記被験試料に使用したMH溶液、2DG溶液及びチオペラマイド溶液は、いずれも人工脳脊髄液(aCSF)で調製したものである。
各ラットについて、投与前(0分)と投与30分、60分、90分及び120分後に、それぞれ右心房に挿入した心臓カテーテルから血液(各0.3ml)を採取した。採取した血液サンプルにはEDTA(300nmol/15μl)をそれぞれ15μlずつ添加した。得られた血液サンプルは、その後遠心して血漿サンプルを取得した後、血糖値測定まで冷凍庫(−20℃)にて保存した。血漿中のグルコース濃度は、実験例1と同様にグルコースオキシダーゼ法を使用して、富士ドライケムシステム(富士フィルム社製、日本)を用いて測定した。
(3)実験結果
結果を図4に示す。なお、図のデータは平均値±標準誤差で示す。図中の( )内の整数(5または6)は被験ラット数を意味する。また図中、「aCSF」は人工脳脊髄液単独(被験試料(i))、「2DG−aCSF」は2DG溶液(aCSFを含む)(被験試料(ii))、「2DG−MH」は2DG溶液とMH溶液との混合液(aCSFを含む)(被験試料(iii))、「2DG−MH−Thiop.」は2DG溶液、MH溶液、チオペラマイド溶液の混合液(aCSFを含む)(被験試料(iv))を、それぞれ被験ラットに側脳内投与した結果であることを意味する。
図4に示すように、実験例1で示したのと同様に、2DGの投与によって生じた被験動物の血糖値上昇(血糖上昇反応)は(---○---)、MH(ヒスタミンH受容体アゴニスト)の併用投与によって有意に抑制されて、血糖値の低下並びに高血糖状態の改善が認められた(―●―)。これに対して、MHに加えてさらにチオペラマイド(ヒスタミンH受容体アンタゴニスト)を併用投与すると、MHによって生じた血糖上昇抑制作用が阻害された(―■―)。
(4)考察
以上の結果から、血糖上昇反応(高血糖反応)に対するMHの抑制作用は、ヒスタミンH受容体アンタゴニスト(チオペラマイド)で消失することが明らかになった。このことは、MHの高血糖反応抑制作用はヒスタミンH受容体アンタゴニストによって拮抗阻害されること、すなわち、MHによる高血糖反応抑制作用(血糖上昇抑制作用)はヒスタミンH受容体を介した作用、例えばヒスタミンH受容体のアゴニストとしての作用(ヒスタミンH受容体刺激作用)であることを示すものである。このことから、哺乳類においてヒスタミンH受容体は血糖値の制御に深く関わっていること、そして、ヒスタミンH受容体を刺激することによって、2DG脳内投与(脳の糖欠乏状態)によって生じる血糖上昇反応(高血糖反応)が抑制でき、血糖値を低下させて高血糖状態を改善できることがわかる。これは、ヒスタミンH受容体アゴニスト等のようにヒスタミンH受容体を刺激する物質は、血糖低下剤(血糖上昇抑制剤)、または高血糖によって生じる各種疾患(糖尿病、糖尿病合併症)の予防若しくは治療剤の有効成分として作用することを示している。
実験例3 オレキシンによる血糖降下作用とH3受容体アンタゴニストによる拮抗作用
(1)始めに
上記実験例2の実験を、MHに代えてオレキシンA(orexin A)を用いて、同様に行った。
(2)実験内容
実験開始の3日前、被験ラット(19匹)に対して、ペントバルビタール麻酔下(35mg/kg)で、PE-10製(Clay Adams, Parsippany, NJ)の脳用カニューレを右側脳室(LCV)に挿入し、また別のSILASTIC製(Dow Corning, Midland MI)及びPE-50製(Clay Adams, Parsippany, NJ)の心臓カテーテルを右心房に挿入した。これらのラットを3群(1群:8匹、2群:6匹、3群:5匹)に分けて、下記の実験を行った。実験当日は、PM10:00に飼育室から食餌を取り除き、採血終了まで食餌を与えなかった。
<被験試料>
(i)1群:PM11:30(-30分)にaCSFを20μl投与し、PM12:00(0分)に2DG溶液(40μmol/aCSF20μl)を20μl投与
(ii)2群:PM11:30(-30分)にオレキシンA溶液(10ng/aCSF20μl)を20μl投与し、PM12:00(0分)に2DG溶液(40μmol/aCSF20μl)を20μl投与
(iii)3群:PM11:30(-30分)にオレキシンA溶液(10ng/aCSF20μl)とチオペラマイド溶液(20μg/aCSF20μl)の混合液を20μl投与し、PM12:00(0分)に2DG溶液(40μmol/aCSF20μl)とチオペラマイド溶液(20μg/aCSF20μl)の混合液を20μl投与。
なお、上記で使用した2DG溶液、オレキシンA溶液、及びチオペラマイド溶液は、いずれも人工脳脊髄液(aCSF)で調製したものである。また、各被験試料の投与は、非麻酔下で脳用カニューレを使用して、右側脳室(LCV)内に投与することによって行った。
各ラットについて、PM11:30(−30分)、2DG投与前(0分)、2DG投与から30分、60分、90分及び120分後に、それぞれ右心房に挿入した心臓カテーテルから血液(各0.3ml)を採取した。採取した血液サンプルにはEDTA(300nmol/15μl)をそれぞれ15μlずつ添加し、その後遠心して血漿サンプルを取得した後、血糖値測定まで冷凍庫(−20℃)にて保存した。
血漿中のグルコース濃度は、実験例1と同様にグルコースオキシダーゼ法を使用して、富士ドライケムシステム(富士フィルム社製、日本)を用いて測定した。
(3)実験結果
結果を図5に示す。なお、図のデータは平均値±標準誤差で示す。図中の( )内の整数(5、6及び8)は被験動物数を意味する。また図中、「2DG−aCSF」は2DG溶液(aCSFを含む)を投与した1群、「2DG−orexin」は2DG及びオレキシンを併用投与した2群、「2DG−Orexin−Thiop.」は2DG、オレキシン及びチオペラマイドを併用投与した3群の各被験ラットの実験結果を意味する。
図5に示すように、2DGの投与によって生じた被験ラットの血糖値上昇(血糖上昇反応)は(---○---)、オレキシンAの併用投与によって有意に抑制されて、血糖値の低下並びに高血糖状態の改善が認められた(―●―)。これに対して、オレキシンAに加えてさらにチオペラマイド(ヒスタミンH受容体アンタゴニスト)を併用投与すると、オレキシンによって生じた血糖上昇抑制作用は阻害され、2DGによる血糖上昇反応がほぼ維持されることが確認された(―■―)。
(4)考察
以上の結果は、オレキシンAがヒスタミンH受容体を介して、脳の糖欠乏状態によって生じる高血糖反応(血糖上昇反応)を抑制することを示すものである。すなわち、実験例1と2の結果を総合するに、オレキシンAは、ヒスタミンH受容体に対するアゴニストか、もしくはヒスタミンH受容体を間接的に刺激する作用を有するものであり、それ自体、血糖低下剤(血糖上昇抑制剤)の有効成分、または高血糖によって生じる疾患(糖尿病、糖尿病合併症)の予防または治療剤の有効成分となり得るものと考えられる。
実験例4 ヒスタミン合成阻害による血糖降下作用
(1)始めに
5(+)-α-Fluoromethylhistidine(以下、「FMH」という)は、ヒスタミン合成酵素であるhistidine decarboxylaseの活性を阻害することが知られている(J. Neurochem. 65, 791-797 (1995);J. Neurochem. 66, 2153-2159 (1996);Brain Res. 14, 83-88 (1995))。ここでは、かかるヒスタミン合成阻害剤によって、2DGの脳内投与によって誘導される高血糖反応が抑制されるかどうかを調べた。
(2)実験内容
実験開始の3日前、被験ラット(19匹)に対して、ペントバルビタール麻酔下(35mg/kg)で、PE-10製(Clay Adams, Parsippany, NJ)の脳用カニューレを右側脳室(LCV)に挿入し、また別のSILASTIC製(Dow Corning, Midland MI)及びPE-50製(Clay Adams, Parsippany, NJ)の心臓カテーテルを右心房に挿入した。これらのラットを2群(1群:6匹、2群:5匹)に分けて、下記の実験を行った。実験当日は、実験開始2時間前に飼育室から食餌を取り除き、採血終了まで食餌を与えなかった。
(i)1群:生理食塩水100μlを腹腔内投与し、その22時間後に再度生理食塩水100μlを腹腔内投与。その2時間後に、2DG溶液(40μmol/aCSF20μl)20μlを脳室内投与。
(ii)2群:FMH溶液(100mg/kg/saline100μl)100μlを腹腔内投与し、その22時間後に再度FMH溶液(100mg/kg/saline100μl)100μlを腹腔内投与。その2時間後に、2DG溶液(40μmol/aCSF20μl)20μlを脳室内投与。
1群及び2群の被験ラットについて、2DG投与前(0分)、2DG投与から30分、60分、90分及び120分後に、それぞれ右心房に挿入した心臓カテーテルから血液(各0.3ml)を採取した。採取した血液サンプルにはEDTA(300nmol/15μl)をそれぞれ15μlずつ添加し、その後遠心して血漿サンプルを取得した後、血糖値測定まで冷凍庫(−20℃)にて保存した。血漿中のグルコース濃度は、実験例1と同様にグルコースオキシダーゼ法を使用して、富士ドライケムシステム(富士フィルム社製、日本)を用いて測定した。
(3)実験結果
結果を図6に示す。なお、図のデータは平均値±標準誤差で示す。図中の( )内の整数(5、6)は被験動物数を意味する。また図中、「saline+2DG」は生理食塩水と2DGを併用投与した1群の被験ラットの実験結果を、「FMH+2DG」は5(+)-α-Fluoromethylhistidineと2DGを併用投与した2群の被験ラットの実験結果を意味する。
図6に示すように、2DGの投与によって生じる被験ラット(1群)の血糖値上昇(血糖上昇反応、高血糖反応)(---○---)は、ヒスタミンの合成阻害剤であるFMHの投与により有意に抑制された(2群ラット:―●―)。
(4)考察
上記の結果は、2DGによる高血糖反応(血糖値上昇反応)は、ヒスタミンの合成を阻害することによっても抑制できること、すなわち、ヒスタミンの遊離抑制作用を有する物質のみならず、ヒスタミンの合成抑制作用を有する物質も、血糖低下用組成物また糖尿病の予防若しくは治療用組成物の有効成分となり得ることを示している。
<総合考察>
哺乳類では脳の視床下部は自律神経系の活動を調節する機能を有し、体内の恒常性(ホメオスタシス)維持に重要な役割を果たしている(W.F. Ganong, Review of Midical Physiology, 18th edition, Appleton & Lange, 1997; S.C. Woods and D. Porte, Jr., Physiol. Rev. 54: 596-619, 1974; K. Nagai et al., In: R.M. Buijs et al, Eds., Hypothalamic Integration of Circadian Rhythms, Progr. Brain Res., vol 111, Elsevier, Amsterdam, pp. 253-272, 1996)。血糖調節に関して言えば、視床下部にはグルコースに反応するニューロンが存在しており、血糖が低下すると交感神経の活動を上昇させる機能を持つニューロンが興奮し(交感神経興奮)、逆に血糖が上昇すると交感神経の活動を低下させる機能を持つニューロンが興奮する(交感神経抑制)。その結果、前者の場合は、交感神経が興奮して膵臓ランゲルハンス島のβ細胞からのインスリン(血糖降下ホルモン)分泌が抑制され、またα細胞からのグルカゴン(血糖上昇ホルモン)分泌が促進されて、血糖上昇へと導かれる。後者の場合は逆に、交感神経が抑制されて(副交感神経が興奮して)、インスリン分泌が促進され、またグルカゴン分泌が抑制されて、血糖低下へと導かれる。また、血糖上昇作用を持つ副腎髄質からのアドレナリンの分泌は前者の場合は亢進し、後者の場合は抑制される。摂食行動は視床下部が作動することにより前者の場合は促進され、後者の場合には抑制される。このように哺乳類の生命活動には常に自律神経系による体内恒常性(ホメオスタシス)を維持する機構が働いている。同様に血糖値も、正常な場合には、交感神経と副交感神経とがバランスよく作動(興奮と抑制)して上記各種ホルモンの分泌が調節されることによって、ある一定範囲に保たれている。
従来技術の欄で述べるようにヒスタミン含有ニューロンは視床下部後部のTuberomammillary region(結節乳頭体領域)に存在しており、視床下部に神経投射し(T. Watababe et al., Brain Res. 295: 13-25, 1984)、交感神経の制御を介してエネルギー代謝調節に関与していることが知られている。具体的には、ヒスタミン含有ニューロンが興奮するとその投射先のシナプス間隙にヒスタミンが放出(遊離)されてシナプス後膜に存在するヒスタミンのH受容体が刺激され、結果として交感神経が興奮することが示されている(Yoshimatsu et al., Exp. Biol. Med (Maywood), 227: 208-213, 2002 )。このことから、ヒスタミン含有ニューロンもしくは当該ニューロンを介した反応もまた体内恒常性(ホメオスタシス)維持に関わる自律神経の調節機構の一つと考えられる。
本発明者はかねてより、細胞における糖の利用を阻害する2−デオキシ−D−グルコース(2DG)を脳内に投与することによって生じる高血糖反応は、グルコースに反応する視床下部のニューロンの活動が変化して、低血糖状態の際に見られるのと同様に、一般に交感神経が興奮し副交感神経の活動が低下することによって生じる血糖上昇機序に基づいて起こる現象であることを確認している(Nagai et al., In: R.M. Buijs et al, Eds., Hypothalamic Integration of Circadian Rhythms, Progr. Brain Res., vol 111, Elsevier, Amsterdam, pp. 253-272, 1996)。さらに下記参考実験例1に示すように、このような2DGによる高血糖反応(低血糖状態における高血糖反応の擬モデル)もヒスタミンH受容体のアンタゴニストにより阻害される。このことから、血糖値に関する体内恒常性維持(自律神経系の調節)には脳内のヒスタミンニューロン並びにヒスタミンH受容体が関与していることが確認された。すなわち、ヒスタミンニューロンはヒスタミンの放出によりヒスタミンH受容体を介して交感神経を興奮させ、副交感神経の活動を抑制する機能を有するものと考えられる。
ところで、最近、ヒスタミンに対する親和性がHおよびH受容体よりもはるかに高いH受容体がクローニングされその性質が明らかにされた。さらに、ヒスタミンニューロンの神経投射部位のシナプス前膜に存在するヒスタミンH受容体が刺激されるとヒスタミンニューロンでのヒスタミンの産生と放出が抑制されることが明らかになった(J.M. Arrang et al., J. Neurochem. 51: 105-108, 1988)。一方で本発明者は、ヒスタミンH受容体アゴニスト(ヒスタミンH受容体刺激剤)である(R)-(−)-α-メチルヒスタミンによって交感神経の活動が抑制されること、さらに当該(R)-(−)-α-メチルヒスタミンによる交感神経活動抑制作用は、ヒスタミンH受容体アンタゴニスト(ヒスタミンH受容体阻害剤)であるチオペラマイドによって消失することを電気生理学的実験により確認した(参考実験例2及び3)。
これらの事実を総合するに、ヒスタミンニューロンのH受容体を刺激すると、ヒスタミンの放出が抑制される結果として、交感神経の活動が抑制され、副交感神経が促進されて(血糖が上昇した状態と同様の反応が起こり)、上昇した血糖値が下降することが予想された。
本発明で示した実験例1の結果は、ヒスタミンH受容体のアゴニストである(R)-(−)-α-メチルヒスタミンを脳内投与することによって、2DG脳内投与による高血糖反応が抑制されること、しかもこの抑制効果はヒスタミンH受容体のアンタゴニストであるチオペラマイドにより消失することを示している。これらの事実はヒスタミンのH受容体を刺激すると上昇した血糖値が低下することをまさに証明するものである。
参考実験例1 ヒスタミンH受容体アンタゴニストによる2DGの高血糖反応の阻害
(1)始めに
ここでは、2DGによる高血糖反応がヒスタミンH受容体のアンタゴニストによって阻害されることを示す。なお、ヒスタミンH受容体のアンタゴニストとしてジフェンヒドラミン(Diphenhydramine)を用いた。
(2)実験内容
実験開始の3日前、被験ラットに対して、ペントバルビタール麻酔下(35mg/kg)で、PE-10製(Clay Adams, Parsippany, NJ)の脳用カニューレを右側脳室(LCV)に挿入し、また別のSILASTIC製(Dow Corning, Midland MI)及びPE-50製(Clay Adams, Parsippany, NJ)の心臓カテーテルを右心房に挿入した。これらのラットを3群(1群:6匹、2群:5匹、3群:6匹)に分けて、下記の実験を行った。
実験当日はPM10:00に飼育室から食餌を取り除き、各群のラットに各被験試料を投与した。なお、被験試料の脳室内投与は、非麻酔下で脳用カニューレを使用して右側脳室(LCV)内に投与することにより行った。
(i)1群:PM12:00に生理食塩水100μlを腹腔内投与し、その後直ちに2DG溶液(40μmol/aCSF20μl)20μlを脳室内投与、
(ii)2群:PM12:00にジフェンヒドラミン溶液(4mg/kg/saline100μl)を100μl腹腔内投与し、その後直ちに2DG溶液(40μmol/aCSF20μl)20μlを脳室内投与、
(iii)3群:PM12:00に生理食塩水100μlを腹腔内投与し、その後直ちにaCSF100μlを脳室内投与。
1群及び2群の被験ラットについて、2DG投与前(0分)、2DG投与から30分、60分、90分及び120分後に、それぞれ右心房に挿入した心臓カテーテルから血液(各0.3ml)を採取した。3群の被験ラットについては、aCSF投与前(0分)、aCSF投与から30分、60分、90分及び120分後に、それぞれ右心房に挿入した心臓カテーテルから血液(各0.3ml)を採取した。採取した血液サンプルにはEDTA(300nmol/15μl)をそれぞれ15μlずつ添加し、その後遠心して血漿サンプルを取得した後、血糖値測定まで冷凍庫(−20℃)にて保存した。血漿中のグルコース濃度は、実験例1と同様にグルコースオキシダーゼ法を使用して、富士ドライケムシステム(富士フィルム社製、日本)を用いて測定した。
(3)実験結果
結果を図7に示す。なお、図のデータは平均値±標準誤差で示す。図中の( )内の整数(5、6)は被験動物数を意味する。また図中、「saline+2DG」は生理食塩水と2DGを併用投与した1群の被験ラットの実験結果を、「Diphenhydramine+2DG」はジフェンヒドラミンと2DGを併用投与した2群の被験ラットの実験結果を、また「saline+aCSF」は生理食塩水とaCSFを併用投与した3群の被験ラットの実験結果を意味する。図中の統計計算は「saline+2DG」群(1群)と「Diphenhydramine(4mg/kg)+2DG」群(2群)とのANOVAによる有意差を示す。
図7に示すように、2DGの投与によって生じた被験ラット(1群)の血糖値上昇(血糖上昇反応、高血糖反応)(---○---)は、ヒスタミンH受容体のアンタゴニストであるジフェンヒドラミンの投与により有意に抑制された(2群ラット:―●―)。
(4)考察
上記の結果は、2DGによる高血糖反応(血糖値上昇反応)は、少なくとも一部はヒスタミンH受容体の刺激を介して形成されることを示している。このことから、ヒスタミンH受容体の刺激を何らかの方法で阻害(抑制)することによって2DGによる高血糖反応(血糖値上昇反応)が阻害されて、高血糖状態(糖尿病状態)を改善できると考えられる。すなわち、実験例1〜3で示すMH並びにオレキシンによる高血糖状態(糖尿病状態)の改善作用は、ヒスタミンH受容体刺激によるヒスタミン遊離の抑制によって、ヒスタミンH受容体の刺激が阻害(抑制)されることによって生じているとも考えられる。
参考実験例2 MHによる副腎交感神経の抑制及びそれに対するチオペラマイドの作用
(1)実験内容
被験ラットを3群に分けて、各被験ラットをウレタン(urethane)(1g/kg body)麻酔下で開腹して、副腎神経を切断して、各被験試料〔1群:生理食塩水、2群:MH(10μg)、3群:MH(10μg)+チオペラマイド(200μg)〕各々0.1mlを腹部大静脈に注入し、中枢側の神経活動を白金電極を使用して測定した。なお、MH及びチオペラマイドは、生理食塩水を用いて溶液として調製した。
(2)実験結果
結果を図8に示す。なお、結果は被験試料投与前(0分)の神経活動値(pulse/sec)を100%として、それとの相対比(%)で、被験試料投与後の神経活動値の変化を示したものである。
また図中、「---○--- Saline」は生理食塩水を投与した1群の被験ラットの実験結果、「―●― MH(10μg)」はMH溶液を投与した2群の被験ラットの実験結果、「―■― MH(10μg)-Thiop.(200μg)」はMHとチオペラマイドを併用投与した3群の被験ラットの実験結果を意味する。
図8に示すように、ヒスタミンH受容体アゴニスト(ヒスタミンH受容体刺激剤)であるMHを腹部大静脈に注入することによって副腎交感神経の活動は漸次減少し、そして当該MHの副腎交感神経活動の抑制作用はヒスタミンH受容体アンタゴニスト(ヒスタミンH受容体阻害剤)であるチオペラマイドの添加によって阻害されて消失することがわかる。これらの事実は、ヒスタミンH受容体を刺激することによって副腎交感神経活動が抑制されることを示すものである。
尚、図9は、実際の電気記録を示す図である。図中、「preinjection」は投与前(0分)、「post injection」は投与30分後の実際の測定結果をそれぞれ示す。
参考実験例3 MHによる腎臓交感神経の抑制、及びそれに対するチオペラマイドの作用
(1)実験内容
被験ラットを3群に分けて、各被験ラットをウレタン(urethane)(1g/kg body)麻酔下で開腹して、腎臓交感神経を切断して、各被験試料〔1群:生理食塩水、2群:MH(100ng)、3群:MH(100ng)+チオペラマイド(200μg)〕各0.1mlを腹部大静脈に注入し、腎臓交感神経の切断中枢側の神経活動を白金電極を使用して測定した。
(2)実験結果
結果を図10に示す。なお、結果は被験試料投与前(0分)の神経活動値(pulse/sec)を100%として、それとの相対比(%)で、被験試料投与後の神経活動値の変化を示したものである。
また図中、「---○--- Saline」は生理食塩水を投与した1群の被験ラットの実験結果、「―●― MH(100ng)」はMH溶液を投与した2群の被験ラットの実験結果、「―■― MH(100ng)-Thiop.(200μg)」はMHとチオペラマイドを併用投与した3群の被験ラットの実験結果を意味する。なお、MH及びチオペラマイドは、生理食塩水を用いて溶液として調製した。
図10に示すように、ヒスタミンH受容体アゴニスト(ヒスタミンH受容体刺激剤)であるMHを腹部大静脈に注入することによって腎臓交感神経の活動は漸次減少し、そして当該MHの腎臓交感神経活動の抑制作用はヒスタミンH受容体アンタゴニスト(ヒスタミンH受容体阻害剤)の添加によって阻害されて消失することがわかる。これらの事実は、ヒスタミンH受容体を刺激することによって腎臓交感神経活動が抑制されることを示すものである。
実験例5 II型糖尿病モデル動物(db/dbマウス)の随時血糖値に対するimmepipの作用
末梢投与で視床下部のヒスタミン放出を抑制することが知られているヒスタミンH受容体アゴニスト、immepip hydrobromide(Jansen FP, et al., In vivo modulation of rat hypothalamic histamine release by the histamine H3 receptor ligands, immepip and clobenpropit. Effects of intrahypothalamic and peripheral application. Eur J Pharmacol 362, 149-155, 1998)を用いて、II型糖尿病モデル動物(db/dbマウス)の糖代謝異常に対する作用を検討した。
5週齢の雄性C57BL/KsJ-db/dbJclマウス(肥満・糖尿病マウス:以下「db/dbマウス」という)及びC57BL/KsJ-+m/+mJc1マウス(正常マウス:以下「+m/+mマウス」という)を日本クレアより購入し、6週齢で実験に供した。実験開始(immepip投与開始)の前日に眼窩静脈叢より採血し、「随時血糖値」及び「トリグリセリド値」を測定した。「随時血糖値」に基づいてdb/dbマウスを4つに群分けし〔1群:コントロール群(immepip 未投与)、2群:immepip 0.05mg/kg body投与群、3群:immepip 0.5mg/kg body投与群、4群:immepip 5mg/kg body投与群〕、翌日(7週齢)から、immepip hydrobromide(TpcrisCooksonInc., USA)を1日1回、7日間に亘って皮下に反復投与した(投与容量2mL/kg)。最終投与の翌日に眼窩静脈層より採血し、「随時血糖値」及び「トリグリセリド値」を測定した。
なお、血漿中グルコース濃度(血糖値)、及び血漿中トリグリセリド(トリグリセリド値)は、それぞれムタロダーゼ・GOD法(グルコースCIIテストワコー:和光純薬工業)、及びGPO-DAOS法(トリアセリドEテストワコー;和光純薬工業)を用いて各々測定した。
血漿中グルコース濃度(血糖値)の推移を図11に示す。なお、2群間の比較にはt検討(Student-t検定もしくはAspin-Welch検定)、及び多群間の比較にはDunnettの多重比較を用い、P<0.05を有意とした。図11からわかるように、immepip投与開始前のdb/dbマウスの血糖値は約250mg/dLであり、+m/+mマウス(120〜140mg/mL)よりも有意に高かった。db/dbマウスのうち1群(コントロール、−●−)では、7日間の投与期間中、血糖値が320mg/dL程度まで上昇した。immepip投与群(−△−:0.05mg/kg投与群、−▲−:0.5mg/kg投与群、−◇−:5mg/kg投与群)では、最終投与の翌日の血糖値が1群(コントロール群)より低く、病態進展に伴う血糖値上昇が抑制される傾向が認められた。一方、トリグリセリド値及び体重には明確な影響は認められなかった。
以上に説明するように、immepipには、若週齢db/dbマウスの加齢に伴う血糖上昇を抑制する傾向が見られた。これは、immepipが糖尿病発症初期において、病態の進展を阻止する作用を有する可能性を示唆するものである。
実験例6
製造例1で調製した化合物(3)を用いて、下記の実験を行った。
(1)始めに
哺乳類の脳はグルコースを必須のエネルギー源とする。従って、哺乳類の脳内に、グルコースの細胞内での利用を阻害する2−デオキシ−D−グルコース(以下、「2DG」と称する)を投与すると、脳はエネルギー欠乏状態に陥る。そうすると、哺乳類は交感神経を興奮させて副交感神経の活動を低下させて、アドレナリンやグルカゴンなどの血糖上昇作用を有するホルモンの血中濃度を増加させ、またインスリンのような血糖降下作用をもつホルモンの血中濃度を減少させて、血糖値を上昇させ、この危機的状態を克服し、生存しようとする。
以下の実験において、この2DGの脳(側脳室)内投与による血糖上昇(高血糖)反応に対する化合物(3)〔β-Ala-His-OCH-OCO-C(CH)〕の作用を、化合物(3)を腹腔内に投与することにより調べた。さらに、当該化合物(3)の作用が、ヒスタミンH受容体アンタゴニストであるチオペラマイドによって阻害されるかどうかも調べた。なお、チオペラマイド(thioperamide)は、ヒスタミンH受容体に対する選択的なアンタゴニスト(ヒスタミンH受容体阻害剤)である(Arrang, J.M., Garbarg,M., Lancelot,J.C., Lecomte,J.M., Pollard,H., Robba,M., Schunack,W. and Schwartz,J.C., Nature, 327 (1987) pp.117-123)。
(2)実験内容
実験には、予め1週間、12時間毎の明期(照明80lx、7:00-19:00)及び暗期(19:00-7:00)の周期環境下で、24±1℃の恒温動物室で飼育したラット(雄、Wistar rat、250〜300g)を被験動物として用いた。なお、ラットには飼料(MF type; Oriental Yeast)と水を自由に摂取させた。
実験開始の3日前、ペントバルビタール麻酔下(35mg/kg)で、PE-10製(Clay Adams, Parsippany, NJ)の脳用カニューレを右側脳室(LCV)に挿入し、また別のSILASTICチューブ(Dow Corning, Midland MI)とPE-50チューブ(Clay Adams, Parsippany, NJ)からなる心臓カテーテルを右心房に挿入した。
実験当日、上記ラットを3群に分けて(1群:5匹、2群:5匹、3群:3匹)、各群のラットに、下記に記載する方法で各投与試料を投与した。なお、実験の2時間前から採血終了まで、ラットには食餌を一切与えなかった。
<被験試料及び方法>
第1群(コントロール群):
(i)始めに、生理食塩水100μlを腹腔内投与、
(ii)30分後に、2DG溶液(40μmol/aCSF10μl)10μlを右側脳室投与し、且つ生理食塩水100μlを腹腔内投与。
第2群(化合物(3)投与群):
(i)始めに、化合物(3)(1μg)(生理食塩水100μlに溶解)100μlを腹腔内投与、
(ii)30分後に、2DG溶液(40μmol/aCSF10μl)10μlを右側脳室投与し、且つ化合物(3)(1μg)(生理食塩水100μlに溶解)100μlを腹腔内投与。
第3群(チオペラマイド投与群):
(i)始めに、化合物(3)(1μg)(生理食塩水100μlに溶解)100μlを腹腔内投与、
(ii)30分後に、2DG溶液(40μmol/aCSF10μl)10μl及びチオペラマイド溶液(200μmol/aCSF10μl)10μlを右側脳室投与し、且つ化合物(3)(1μg)(生理食塩水100μlに溶解)100μlを腹腔内投与。
なお、上記被験試料に使用した2DG溶液及びチオペラマイド溶液は、いずれも人工脳脊髄液(aCSF[artificial cerebrospinal fluid]:S. Sadashima, et al., Am. J. Physiol, 241: H78-H84, 1981)で調製した。
各群のラットについて、2DG投与前30分(-30分)、2DG投与前(0分)、並びに2DG投与後30分、60分、90分及び120分後に、それぞれ右心房に挿入した心臓カテーテルから血液(各0.3ml)を採取した。採取した血液サンプルにaprotinin(100KIU/10μl)とEDTA(300nmol/10μl)をそれぞれ10μlずつ添加し、遠心して血漿サンプルを取得した後、血糖値(血漿中のグルコース濃度)測定まで冷凍庫(−60℃)にて保存した。
血漿中のグルコース濃度は、グルコースオキシダーゼ法(Brain Res., 809 (1998) p.165-174)を使用して、富士ドライケムシステム(富士フィルム社製、日本)を用いて測定した。
(3)実験結果
結果を図12に示す。なお、図のデータは平均値±標準誤差で示す。図中、---○---は第1群(コントロール)のラット、−●−は第2群(化合物(3)投与群)のラット、及び−▲−は第3群(チオペラマイド投与群)のラットの結果を示す。( )の数字は被験ラット数を意味する。
図12に示すように、化合物(3)(1μg×2回)投与することによって、2DG投与によって生じる血糖上昇反応(高血糖反応)(---○---)が抑制されて血糖値が低下し、高血糖状態が改善されることが認められた(―●―)。これに対して、化合物(3)に加えてさらにチオペラマイド(ヒスタミンH受容体アンタゴニスト)を併用投与すると、化合物(3)投与によって得られた血糖上昇抑制作用が阻害された(−▲−)。
(4)考察
以上の実験結果は、化合物(3)[β-Ala-His-OCH-OCO-C(CH)]が、脳の糖欠乏状態によって生じる生体反応、すなわち血糖上昇反応(高血糖反応)を抑制することを示している。なお、2DGの脳内投与による高血糖反応はインスリンの分泌を抑制することにより発現するので、2DGの脳内投与によって誘導された高血糖状態は糖尿病状態を示しているといえる。従って、2DGの脳内投与によって生じる高血糖反応が化合物(3)によって抑制されて血糖値が降下することを示した上記実験の結果は、化合物(3)が糖尿病によって生じる高血糖状態を改善する作用または糖尿病による高血糖状態の発現を抑制する作用を有することを示している。言い換えれば、上記結果は、化合物(3)に、糖尿病状態の発現を予防する作用(糖尿病に対する予防作用)ならびに糖尿病状態を改善する作用(糖尿病に対する治療作用、糖尿病合併症の予防作用)があることを示すものである。
さらに、上記の結果から血糖上昇反応(高血糖反応)に対する化合物(3)の抑制作用は、チオペラマイドで消失することが明らかになった。このことは、化合物(3)の高血糖反応抑制作用はヒスタミンH受容体アンタゴニストによって拮抗阻害されること、すなわち、化合物(3)による高血糖反応抑制作用(血糖上昇抑制作用)はヒスタミンH受容体を介した作用、例えばヒスタミンH受容体のアゴニストとしての作用(ヒスタミンH受容体刺激作用)であることを示唆するものである。
このことは、さらに哺乳類においてヒスタミンH受容体は血糖値の制御に深く関わっていること、そして、ヒスタミンH受容体を刺激することによって、2DG脳内投与(脳の糖欠乏状態)によって生じる血糖上昇反応(高血糖反応)が抑制でき、血糖値を低下させて高血糖状態を改善できることを示唆するものでもある。つまり、これはヒスタミンH受容体アゴニスト等のようにヒスタミンH受容体を刺激する物質は、血糖低下剤(血糖上昇抑制剤)、または高血糖によって生じる各種疾患(糖尿病、糖尿病合併症)の予防若しくは治療剤の有効成分として作用することを示唆するものである。
本発明の血糖降下用組成物は、従来の糖尿病治療薬とは異なる作用メカニズムに基づいて、高血糖状態にある被験者の血糖値を降下させる作用を有する。このため、本発明の血糖降下用組成物は、高血糖に起因する疾患、具体的には糖尿病や糖尿病合併症の予防または治療のために、医薬品組成物または食品組成物として有効に用いることができる。また本発明は、高血糖状態における血糖降下メカニズムにヒスタミン受容体、特にヒスタミンH受容体が関わっていることを新たに見いだし、これを提供するものである。よって、本発明が提供する血糖降下メカニズムを利用することにより、血糖降下作用を有する糖尿病や糖尿病合併症の予防または治療のための有効成分をスクリーニングする方法を構築することができる。そして、当該スクリーニング方法によって取得された血糖降下作用物質を用いることによって、糖尿病や糖尿病合併症の予防または治療のために有効な組成物を調製し、提供することができる。
また本発明は新規なイミダゾール化合物を提供する。当該イミダゾール化合物は、実験例6で示すように、高血糖状態にある被験者(実験例ではラット)の血糖値を降下させる作用を有する。このため、本発明のイミダゾール化合物は、血糖降下用組成物の有効成分、特に高血糖に起因する疾患、具体的には糖尿病や糖尿病合併症の予防または治療のために用いられる医薬品組成物または食品組成物の有効成分として有用である。ゆえに本発明は、当該イミダゾール化合物を有効成分とする血糖降下用組成物、特に糖尿病や糖尿病合併症の予防または治療のために有効な組成物を調製し、提供するものである。
製造例1で調製したイミダゾール化合物(3)[β-Ala-His-OCH-OCO−C(CH)]のTFA塩を重メタノールに溶解して400MHzのNMRで測定したNMRスペクトルを示す。 2−デオキシ−2−グルコース(2DG)の脳内投与による血糖上昇反応に対する(R)-(-)-α-メチルヒスタミン(MH)の血糖降下作用を示すグラフである(実験例1)。横軸は2DG投与からの経過時間(分)を、また縦軸は血糖値(mg/dl)を示す。 実験例1の結果から、各濃度(0.001pg/aCSF10μl〜10000pg/aCSF10μl)のMH溶液10μlと2DG溶液(40μmol/aCSF10μl)10μlの混合液を投与した被験ラットに関する投与前(0分)(---○---)と投与60分後(―●―)の血糖値データを、MHの投与量(pg/aCSF10μl)を横軸(log表示)に、血糖値(mg/dl)を縦軸にプロットしたグラフである。 実験例1で確認された2−デオキシ−2−グルコース(2DG)の脳内投与による血糖上昇反応に対する(R)-(-)-α-メチルヒスタミン(MH)の血糖降下作用が、ヒスタミンH受容体アンタゴニスト(チオペラマイド:Thiop.)によって拮抗阻害されることを示すグラフである(実験例2)。横軸は2DG投与からの経過時間(分)を、また縦軸は血糖値(mg/dl)を示す。 2−デオキシ−2−グルコース(2DG)の脳内投与による血糖上昇反応に対するオレキシンAの血糖降下作用、並びに当該血糖降下作用がヒスタミンH受容体アンタゴニスト(チオペラマイド:Thiop.)によって拮抗阻害されることを示すグラフである(実験例3)。横軸は2DG投与からの経過時間(分)を、また縦軸は血糖値(mg/dl)を示す。 2−デオキシ−2−グルコース(2DG)の脳内投与による血糖上昇反応がヒスタミン合成阻害剤(fluoromethylhistidine)によって阻害されることを示すグラフである(実験例4)。横軸は2DG投与からの経過時間(分)を、また縦軸は血糖値(mg/dl)を示す。 2−デオキシ−2−グルコース(2DG)の脳内投与による血糖上昇反応がヒスタミンH受容体アンタゴニスト(ジフェンヒドラミン)によって阻害されることを示すグラフである(参考実験例1)。横軸は2DG投与からの経過時間(分)を、また縦軸は血糖値(mg/dl)を示す。 ヒスタミンH受容体アゴニスト((R)-(-)-α-メチルヒスタミン:MH)を腹部大静脈に投与することによって副腎交感神経の活動が低下し、且つ当該低下がヒスタミンH受容体アンタゴニスト(チオペラマイド:Thiop.)の添加によって阻害されることを示すグラフである(参考実験例2)。横軸はMH投与からの経過時間(分)を、また縦軸は被験試料投与前(0分)の神経活動値(pulse/sec)を100%として、それとの相対比(%)で、被験試料投与後の神経活動値の変化を%で示したものである。 図8の結果の基礎になった実際の電気記録を示す図である。図中、「preinjection」は投与前(0分)、「post injection」は投与30分後の実際の測定結果をそれぞれ示す。また、「H3 agonist」は(R)-(-)-α-メチルヒスタミンを意味する。 ヒスタミンH受容体アゴニスト((R)-(-)-α-メチルヒスタミン:MH)を腹部大静脈に投与することによって腎臓交感神経の活動が低下し、且つ当該低下がヒスタミンH受容体アンタゴニスト(チオペラマイド:Thiop.)の添加によって阻害されることを示すグラフである(参考実験例3)。横軸はMH投与からの経過時間(分)を、また縦軸は被験試料投与前(0分)の神経活動値(pulse/sec)を100%として、それとの相対比(%)で、被験試料投与後の神経活動値の変化を%で示したものである。 肥満を伴う2型糖尿病マウス(C57BL/KsJ-db/dbJcl)に、ヒスタミンH受容体アゴニストであるimmepip hydrobromideを投与することにより、病態進展に伴う血糖値上昇が抑制されることを示すグラフである(実験例5)。縦軸は血漿中のグルコース濃度(血糖値:mg/dL)を意味する。横軸の「Pre」はimmepip投与前、「Pro」はimmepip投与後(1日1回、7日間投与後)を意味する。○は正常マウス(C57BL/KsJ-+m/+mJcl)群(n=5)、●は2型糖尿病マウス(C57BL/KsJ-db/dbJcl)のimmepip未投与群(n=5)、△は2型糖尿病マウスのimmepip 0.05mg/kg投与群(n=5)、▲は2型糖尿病マウスのimmepip 0.5mg/kg投与群(n=5)、及び◇は2型糖尿病マウスのimmepip 5mg/kg投与群(n=5)の平均値(Mean±SE)を示す(*:p<0.05)。 製造例1で調製したイミダゾール化合物[β-Ala-His-OCH-OCO−C(CH)](3)について、2−デオキシ−2−グルコース(2DG)の脳内投与によって生じる血糖上昇反応に対する血糖降下作用を調べた結果を示すグラフ(−●−)、並びに当該イミダゾール化合物(3)[β-Ala-His-OCH-OCO−C(CH)]の血糖降下作用が、チオペラマイド(Thiop.)(ヒスタミンH受容体アンタゴニスト)によって拮抗阻害されることを示すグラフ(−▲−)である(実験例6)。横軸は2DG投与からの経過時間(分)を、また縦軸は血糖値(mg/dl)を示す。なお、図において、イミダゾール化合物(3)は単に「Compound」と記載する。

Claims (19)

  1. ヒスタミンH受容体に直接または間接的に作用し、当該H受容体を刺激してヒスタミンの遊離及び/または合成を抑制する作用を発揮する物質を有効成分とする血糖降下用組成物。
  2. 上記物質がヒスタミンH受容体アゴニストである、請求項1に記載の血糖降下用組成物。
  3. 有効成分が、一般式(1):
    Figure 2007528860
    (式中、Rは水素原子または低級アルキル基、Rは低級アルキル基、アルコキシ基、またはシクロアルコキシ基を示す。)
    で示されるイミダゾール化合物である、請求項1に記載する血糖降下用組成物。
  4. 医薬品組成物または食品組成物である請求項1に記載する血糖降下用組成物。
  5. ヒスタミンH受容体に直接または間接的に作用し、当該H受容体を刺激してヒスタミンの遊離及び/または合成を抑制する作用を発揮する物質を有効成分とする、高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物。
  6. 上記物質が、ヒスタミンH受容体アゴニストである請求項5に記載する高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物。
  7. 有効成分が、一般式(1):
    Figure 2007528860
    (式中、Rは水素原子または低級アルキル基、Rは低級アルキル基、アルコキシ基、またはシクロアルコキシ基を示す。)
    で示されるイミダゾール化合物である、請求項5に記載する高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物。
  8. 高血糖に起因する疾患が、II型糖尿病またはその合併症である請求項5に記載する高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物。
  9. 高血糖に起因する疾患が、糖尿病、並びに糖尿病アシドーシス、糖尿病性黄色腫、糖尿病性筋萎縮症、糖尿病性ケトーシス、糖尿病性昏睡、糖尿病性胃障害、糖尿性壊疽、糖尿病性潰瘍、糖尿病性合併症、糖尿病性下痢症、糖尿病性細小血管症、糖尿病性子宮体硬化症、糖尿病性心筋症、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性腎症、糖尿病性水疱、糖尿病性白内障、糖尿病性皮膚障害、糖尿病性浮腫性硬化症、糖尿病性網膜症、糖尿病性リポイド類壊死症、糖尿病性血流障害等の糖尿病の合併症である請求項5に記載する高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物。
  10. ヒスタミンH受容体に直接または間接的に作用し、当該H受容体を刺激してヒスタミンの遊離及び/または合成を抑制する作用を発揮する物質を有効量、高血糖に起因する疾患に罹患若しくはその前状態にある被験者に投与することを含む、当該被験者の血糖値を降下させる方法。
  11. 上記物質が、ヒスタミンH受容体アゴニストである請求項10に記載する方法。
  12. 有効成分が、一般式(1):
    Figure 2007528860
    (式中、Rは水素原子または低級アルキル基、Rは低級アルキル基、アルコキシ基、またはシクロアルコキシ基を示す。)
    で示されるイミダゾール化合物である、請求項10に記載する方法。
  13. ヒスタミンH受容体に直接または間接的に作用し、当該H受容体を刺激してヒスタミンの遊離及び/または合成を抑制する作用を発揮する物質の、血糖降下用組成物を製造するための使用。
  14. 上記物質が、一般式(1):
    Figure 2007528860
    (式中、Rは水素原子または低級アルキル基、Rは低級アルキル基、アルコキシ基、またはシクロアルコキシ基を示す。)
    で示されるイミダゾール化合物である、請求項13に記載する使用。
  15. ヒスタミン作動神経細胞体のシナプス前膜から遊離されるヒスタミンの量を、直接または間接的に指標として、被験物質の中から当該シナプス前膜からのヒスタミン遊離を抑制する作用を有する物質を選別する工程を有する、血糖降下用組成物の有効成分のスクリーニング方法。
  16. (a) 被験物質がヒスタミンH受容体と反応してヒスタミンの遊離を抑制するか否かを直接または間接的に測定する工程、
    (b) 上記工程(a)でヒスタミンの遊離抑制作用が確認された物質について、そのヒスタミンの遊離抑制作用がヒスタミンH受容体アンタゴニストによって阻害されるか否かを直接または間接的に測定する工程、及び
    (c) 上記工程(b)においてヒスタミンの遊離抑制作用がヒスタミンH受容体アンタゴニストで阻害された物質を選別する工程
    を有する、請求項15に記載する血糖降下用組成物の有効成分のスクリーニング方法。
  17. 被験物質についてヒスタミンH受容体との結合アッセイを行い、ヒスタミンH受容体のアゴニストを選別する工程を有する、請求項15に記載の血糖降下用組成物の有効成分のスクリーニング方法。
  18. 一般式(1):
    Figure 2007528860
    (式中、Rは水素原子または低級アルキル基、Rは低級アルキル基、アルコキシ基、またはシクロアルコキシ基を示す。)
    で示されるイミダゾール化合物。
  19. イミダゾール化合物が、下式のいずれかに示される化合物である請求項18に記載するイミダゾール化合物:
    式(2):
    Figure 2007528860
    式(3):
    Figure 2007528860
    式(4):
    Figure 2007528860
    式(5):
    Figure 2007528860
    式(6):
    Figure 2007528860
JP2006519248A 2003-07-28 2004-07-28 血糖降下用組成物 Pending JP2007528860A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US49063603P 2003-07-28 2003-07-28
US55461904P 2004-03-19 2004-03-19
PCT/JP2004/011129 WO2005009471A1 (en) 2003-07-28 2004-07-28 Composition for lowering blood-sugar level

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2007528860A true JP2007528860A (ja) 2007-10-18

Family

ID=34107872

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006519248A Pending JP2007528860A (ja) 2003-07-28 2004-07-28 血糖降下用組成物

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP2007528860A (ja)
WO (1) WO2005009471A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101858113B1 (ko) 2016-11-28 2018-05-15 건국대학교 글로컬산학협력단 실리비닌을 유효성분으로 함유하는 케토시스 예방 및 치료용 약학 조성물.

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2049472B1 (en) 2006-06-23 2015-01-21 AbbVie Bahamas Ltd. Cyclopropyl amine derivatives as histamin h3 receptor modulators
US9108948B2 (en) 2006-06-23 2015-08-18 Abbvie Inc. Cyclopropyl amine derivatives
BRPI0715092A2 (pt) 2006-07-25 2013-06-04 Ams Res Corp implante pÉlvico, kit, e, mÉtodo para usar o mesmo
US9186353B2 (en) 2009-04-27 2015-11-17 Abbvie Inc. Treatment of osteoarthritis pain
US8853390B2 (en) 2010-09-16 2014-10-07 Abbvie Inc. Processes for preparing 1,2-substituted cyclopropyl derivatives
CN106365998A (zh) * 2016-08-19 2017-02-01 陕西思尔生物科技有限公司 一种特戊酸碘甲酯的制备方法
GB2609002A (en) * 2021-07-15 2023-01-25 Univ Nottingham Trent Carnosine Analogs

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1297830A1 (en) * 2001-09-28 2003-04-02 Flamma Fabbrica Lombarda Ammino Acidi S.p.a. Use of alpha- or beta-amino acids, of the corresponding esters or of dipeptides of these amino acids with histidine derivatives in the prevention or treatment of tissue damage caused by a atmospheric ozone

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6211182B1 (en) * 1999-03-08 2001-04-03 Schering Corporation Imidazole compounds substituted with a six or seven membered heterocyclic ring containing two nitrogen atoms
AU2001244087A1 (en) * 2000-03-17 2001-09-24 Boehringer Ingelheim International G.M.B.H Condensed imidazoles as histamine h3 receptor ligands
JP2003527395A (ja) * 2000-03-17 2003-09-16 ノボ ノルディスク アクティーゼルスカブ ヒスタミンh3受容体リガンドとしての縮環イミダゾール
CA2473232C (en) * 2002-01-11 2011-03-15 Abbott Laboratories Histamine-3 receptor ligands for diabetic conditions

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1297830A1 (en) * 2001-09-28 2003-04-02 Flamma Fabbrica Lombarda Ammino Acidi S.p.a. Use of alpha- or beta-amino acids, of the corresponding esters or of dipeptides of these amino acids with histidine derivatives in the prevention or treatment of tissue damage caused by a atmospheric ozone

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6010048771, Neuroscience Letters, 2001, 313, p.78−82 *

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101858113B1 (ko) 2016-11-28 2018-05-15 건국대학교 글로컬산학협력단 실리비닌을 유효성분으로 함유하는 케토시스 예방 및 치료용 약학 조성물.

Also Published As

Publication number Publication date
WO2005009471A1 (en) 2005-02-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1811991B1 (en) Treatment of type 2 diabetes using inhibitors of glycosphingolipid synthesis
Kordik et al. Pharmacological treatment of obesity: therapeutic strategies
Brain et al. Vascular actions of calcitonin gene-related peptide and adrenomedullin
AU2012253613B2 (en) L-proline and citric acid co-crystals of (2S, 3R, 4R, 5S, 6R )- 2- (3- ((5- (4-fluorophenyl)thiophen-2-yl) methyl) -4-methylphenyl)-6- (hydroxymethyl)tetrahydro-2H-pyran-3,4,5-triol
EP1723123A1 (en) Ion channel modulators
KR20010071335A (ko) 디펩티딜 펩티다제 iv의 신규한 효과기
EP3053911B1 (en) Adiponectin receptor-activating compound
EA015343B1 (ru) Модуляторы метаболизма и лечение связанных с ним расстройств
BRPI0718596A2 (pt) Terapia de combinação com inibidores de sglt-2 e suas composições farmacêuticas.
WO2005097103A2 (en) Diabetes and metabolic syndrome therapy utilizing cathepsin b inhibitors
CN101754687A (zh) 代谢综合征、2型糖尿病、肥胖或前驱糖尿病的治疗
MXPA06005038A (es) Compuestos terapeuticos y usos de los mismos.
JP2009521430A (ja) Gaba−b受容体モジュレーター
EA024207B1 (ru) Пиразольные соединения
JP2007528860A (ja) 血糖降下用組成物
US7081473B2 (en) Agent for preventing/ameliorating obesity comprising methylidene hydrizide compound as active ingredient
Reilly et al. FGF21 is required for the metabolic benefits of IKKε/TBK1 inhibition
Zhu et al. GPR119 agonists: a novel strategy for type 2 diabetes treatment
WO2004028453A2 (en) Methods for preventing and treating obesity in patients with mc4 receptor mutations
WO2011032099A1 (en) Methods of treating diastolic dysfunction and related conditions
BG63803B1 (bg) Фармацевтичен състав за профилактика и лечение надиабетични усложнения
EP1722787A1 (en) Ion channel modulators
US20060293359A1 (en) Methods and compositions for the treatment of diabetes
US20030162788A1 (en) Combination of MTP inhibitors or apoB-secretion inhibitors with fibrates for use as pharmaceuticals
JP2000500490A (ja) 糖尿病治療用の4−ヒドロキシクマリン−3−カルボキシアミド

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070725

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080108

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100831

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20110104