JP2007526270A - 充填剤入り重合性歯科材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、充填剤入り重合性歯科材料であって、有機結合剤、部分的に凝結したナノメーターサイズの充填剤並びにその他の無機及び/又は有機充填剤を含有する該歯科材料に関する。本発明は、熱分解によって得られる二酸化ケイ素のような経済的な凝結充填剤に基づく歯科材料中にナノメーターサイズの充填剤を配合する利点を有する。
Description
本発明は、充填剤入り重合性歯科材料及びその製造方法に関する。
補てつ歯学、保存歯学及び予防歯学においては種々の歯科材料が使用されている。このような歯科材料には、1種又は複数種の充填剤を樹脂マトリックス中へ含有させた「複合材」が含まれる。充填剤は、歯科材料へ所望の機械的特性を付与する。このような特性には加工相中のレオロジー及び硬化状態における硬度や耐摩耗性等の機械的性質が含まれる。歯科材料の機械的特性を、ナノメーターサイズの充填剤を添加することによって改良する技術は既に提案されている(WO−A−02092022公報参照)。この特許公報に開示されているナノ充填剤(nanofiller)は、非常に複雑なプラズマトーチ(plasma torch)法(PVS)によって製造されている。
本発明は、低コストで製造できる充填剤入り重合性歯科材料であって、優れた機械的特性(例えば、圧縮強さ及び耐摩耗性等)を有する該歯科材料とその製造方法を提供するためになされたものである。
本発明によれば、上記課題は、充填剤入りの重合性歯科材料であって、下記の成分a)〜c)を含有する充填剤入り重合性歯科材料によって解決された:
a)有機結合剤
b)次の特性 i)〜iii)を有するナノメーターサイズの充填剤:
i)ナノ粒子の少なくとも50重量%(好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%)が200nm未満(好ましくは150nm未満、又は100nm未満)の粒径を有する。
ii)ナノ粒子の少なくとも20粒子数%(好ましくは少なくとも30粒子数%、より好ましくは40粒子数%、特に好ましくは少なくとも50粒子数%)が凝結粒子である。
c)少なくとも1種の無機及び/又は有機充填剤であって、0.2μm〜50μmの平均粒径を有する粉砕充填剤及び0.1μm〜50μmの平均粒径を有する球状充填剤から成る群から選択される該充填剤。
a)有機結合剤
b)次の特性 i)〜iii)を有するナノメーターサイズの充填剤:
i)ナノ粒子の少なくとも50重量%(好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%)が200nm未満(好ましくは150nm未満、又は100nm未満)の粒径を有する。
ii)ナノ粒子の少なくとも20粒子数%(好ましくは少なくとも30粒子数%、より好ましくは40粒子数%、特に好ましくは少なくとも50粒子数%)が凝結粒子である。
c)少なくとも1種の無機及び/又は有機充填剤であって、0.2μm〜50μmの平均粒径を有する粉砕充填剤及び0.1μm〜50μmの平均粒径を有する球状充填剤から成る群から選択される該充填剤。
本発明による該歯科材料の製造方法は下記の工程a)〜d)を含む方法である[但し、工程c)とd)はいずれの順序でおこなってもよく、あるいは同時におこなってもよく、また、工程b)は工程c)及び/又はd)の前におこなってもよく、あるいは工程c)及び/又はd)と同時におこなってもよい]:
a)次の成分a1)〜a4)を準備する:
a1)有機結合剤、
a2)少なくとも部分的に凝集及び/又は凝結したナノメーターサイズの充填剤、
a3)充填剤a2)の有機表面改質剤、及び
a4)少なくとも1種の無機及び/又は有機充填剤であって、0.2μm〜50μmの平均粒径を有する粉砕充填剤及び0.1μm〜50μmの平均粒径を有する球状充填剤から成る群から選択される該充填剤。
b)表面改質剤a3)を用いて充填剤a2)の有機表面改質をおこなう。
c)表面改質されたナノメーターサイズの充填剤の少なくとも50重量%(好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%)が200nm未満(好ましくは150nm未満、又は100nm未満)の粒径を有するようになるまで該充填剤を有機結合剤中へ均質混合する。
d)充填剤a4)を有機結合剤中へ均質混合する。
a)次の成分a1)〜a4)を準備する:
a1)有機結合剤、
a2)少なくとも部分的に凝集及び/又は凝結したナノメーターサイズの充填剤、
a3)充填剤a2)の有機表面改質剤、及び
a4)少なくとも1種の無機及び/又は有機充填剤であって、0.2μm〜50μmの平均粒径を有する粉砕充填剤及び0.1μm〜50μmの平均粒径を有する球状充填剤から成る群から選択される該充填剤。
b)表面改質剤a3)を用いて充填剤a2)の有機表面改質をおこなう。
c)表面改質されたナノメーターサイズの充填剤の少なくとも50重量%(好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%)が200nm未満(好ましくは150nm未満、又は100nm未満)の粒径を有するようになるまで該充填剤を有機結合剤中へ均質混合する。
d)充填剤a4)を有機結合剤中へ均質混合する。
本発明の核心は、請求項1の特徴b)で詳細に規定される低コストで入手可能なナノメーターサイズの充填剤を、請求項1の特徴c)で詳細に規定される別の微小充填剤を組み合わせる点にある。ナノ粒子はゾル−ゲル法によって調製することができる。
この方法においては、アルコキシシランが加水分解され、形成されるシラノールを比較的ゆっくりと縮合させることによってナノ粒子が得られる。実質的には、非常に均一なサイズ分布を示す「一次粒子」のみが得られる。この方法は非常にコスト高となる。何故ならば、該粒子は完全にシランから調製されなければならないからである。
ケイ酸の火炎熱分解調製法も知られている。この場合、ナノメーターの範囲の一次粒子も得られる。しかしながら、火炎熱分解による反応条件下では、大部分は一次粒子から得られる「凝集体(agglomerate)」又は「凝結体(aggregate)」となる。「凝結体」という用語は、2個若しくはそれよりも多くの一次粒子が、例えば、焼結架橋等の強い結合によって相互に結合した粒子を意味する。「凝集体」という用語は、2個若しくはそれよりも多くの一次粒子及び/又は凝結体が比較的弱い結合、例えば、水素架橋若しくは双極子−双極子相互作用等によって相互に結合した粒子を意味する。一般に、凝結体においては、一次粒子は相互に表面的に連結し、一方、凝集体においては、一般に点状連結部が存在する(即ち、接触面が比較的小さい)。
一次粒子から形成される凝結体及び/又は凝集体は一次粒子に比べて著しく大きいので、この種の充填剤を含有する有機マトリックスの流動性はかなり影響を受けるか、又は悪化する。
本発明によれば、ナノメーターサイズの一次粒子が凝集及び/又は凝結した充填剤から出発するにもかかわらず、良好な機械的特性を有する歯科材料が得られることが判明した。好ましくは、これらの凝結又は凝集した充填剤は、最初に有機的な表面改質処理に付した後、有機バインダー中へ均質混合される。この場合、凝集体と凝結体は、ナノ粒子の少なくとも50重量%が100nm未満の粒径を有する程度まで均一混合処理に付すことによって破砕される(粒径の測定法は以下において、詳細に説明する)。従って、本発明においては、ナノメーターサイズの充填剤用に低コストの出発原料を使用するにもかかわらず、本発明による歯科材料はナノメーターサイズの充填剤によってもたらされる有利な特性(特に機械的特性)を有する。
本発明によれば、特徴b)によるナノメーターサイズの充填剤は依然として部分的に凝結している。即ち、特許請求の範囲においてより詳細に定義される最小量のナノ粒子は、2個若しくはそれよりも多くの一次粒子及び/又は凝集体が強い力で結合した凝結粒子である。非常に小さな一次粒子の場合、凝結体は依然として100nm未満の粒径を有しているが、この種の凝結体は限界粒径である100nmを越える場合がしばしばある。
本発明によれば、ナノ充填剤の一次粒子の部分的な凝結体は、ナノメーターサイズの充填剤の有利な特性に対して不利な影響を全く与えないか、又はほんの僅か与えるに過ぎないこと、及び一次粒子のみから成るナノ充填剤の複雑な調製法(例えば、ゾル−ゲル法)は不必要であることが判明した。
例えば、火炎熱分解法によって得られる二酸化ケイ素のような充填剤は、比較的多量の凝結体及び/又は凝集体が強い凝結力(特に焼結結合)と弱い凝集力によって保持されたナノメーターサイズの一次粒子を有している。本発明方法は、この種の充填剤を有機結合剤中へ均質混合させることによって大部分の凝集体結合を破壊させると共に、凝結体結合を部分的に破壊させ、均質混合後の充填剤が特許請求の範囲の特徴b)によって規定されるパラメーターを有するようにすることに基づく。請求項16の特徴b)による有機的な表面改質によって、有機結合剤中への均質混合処理を停止させ後で、一次粒子又は凝結体/凝集体の新たな凝集がもたらされる。この有機的表面改質は、特に、以下においてさらに詳述するシラン化処理(silanization)である。好ましくは、有機表面改質によって、ナノメーターサイズの充填剤の表面へ、有機結合剤と化学的に反応できる基又は該有機結合剤
に対して高い親和性を示す基が導入される。
に対して高い親和性を示す基が導入される。
本発明による歯科材料は、請求項1の特徴c)による少なくとも1種の別の充填剤を含有する。この種の充填剤は粉砕充填剤又は球状充填剤(例えば、独国特許公報DE−C3247800に記載されているような球状充填剤)であってもよく、これらのいずれの充填剤も、より詳細に規定される粒径を有する。球状充填剤と粉砕充填剤は、特徴b)による部分的に凝結したナノ粒子とは著しく相違する特徴的な粒子形態を有する。ナノメーターサイズの一次粒子は、特徴c)による球状充填剤と類似する粒子形態を有するが、粒径の点で著しく相違する。
本発明によれば、低コストで製造できるにも拘わらず、優れた機械的特性を有する歯科材料が得られる。
本発明の有利な実施態様は特許請求の範囲の従属項に示すものである。請求項2〜4は有機結合剤、ナノメーターサイズの充填剤又は請求項1の特徴c)による付加的な充填剤の好ましい重量割合を示す。
本発明によるナノメーターサイズの充填剤の一次粒子の平均粒径は1〜80nm、好ましくは4〜60nm、特に好ましくは6〜50nmである。本発明によるナノメーターサイズの充填剤はBET表面積(DIN 66131又はDIN ISO 9277による値)は15〜600m2/g、好ましくは30〜500m2/g、特に好ましくは50〜400m2/gである。
本発明において使用する好ましいナノメーターサイズの充填剤は金属、半金属若しくは混合した金属酸化物、ケイ酸塩、窒化物、硫酸塩、チタン酸塩、ジルコン酸塩、錫酸塩、タングステン酸塩、又はこれらの任意の混合物である。特性(特に外観と電気伝導度)が金属と非金属との間にある半金属群には、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、ビスマス、セレン、テルル及びポロニウムが含まれる[レンプ・ヘミー・レキシコン、ゲオルク・チーメ・フェアラーク、1990年、第1711頁参照]。金属群には、周期律表の半金属群の左側に存在するもの、即ち、主族の金属、亜族の金属、ランタニド元素及びアクチニド元素が含まれる。「混合金属酸化物、窒化物等」は、少なくとも2種の金属及び/又は半金属が対応する非金属アニオン(酸化物、窒化物等)と相互に化学的に結合した化合物を意味する。
本発明において使用する特に好ましいナノメーターサイズの充填剤は下記のものである:二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、二酸化錫、酸化セリウム、アルミニウム−ケイ素酸化物、ケイ素−亜鉛酸化物、ケイ素−ジルコニウム酸化物、鉄酸化物及びこれらと二酸化ケイ素との混合物、酸化インジウム及びこれらと二酸化ケイ素及び/又は二酸化錫との混合物、窒化ホウ素、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸ナトリウム、ジルコン酸カリウム、ジルコン酸マグネシウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウム、ジルコン酸バリウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸マグネシウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸ストロンチウム及び/又はタングステン酸バリウム。
本発明方法においては、これらのナノメーターサイズの充填剤は、市販の凝結/凝集したナノ充填剤(例えば、熱分解法ケイ酸等)を有機溶剤中へ分散させ、次いで該充填剤の表面を有機的改質処理に付すことによって得られる。この有機的改質処理において、ナノ粒子の表面上へ官能基が導入される。該官能基は、一方では、ナノ粒子へ共有結合的若しくは吸着的に結合し、他方では、有機結合剤と化学的に反応するか、又は有機結合剤に対して高い親和性を示す。次の工程においては、改質されたナノ充填剤が溶剤中へ分散された分散液を直接使用してもよいが、好ましくは、溶剤を除去した後、乾燥したナノ粉末を有機結合剤中へ均質混合する。有機的表面改質処理は、有機結合剤中で直接的におこなってもよい。
驚くべきことには、上記の方法を採用することにより、凝集体及び場合によっては凝結体が永続的に微粉化され、ナノ粒子の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、特に好ましくは少なくとも80%は100nm未満の粒径を有する。しかしながら、完全な脱凝結はおこなわれない。即ち、ナノ粒子の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、特に好ましくは少なくとも50%は凝結粒子である。
凝結/凝集したナノ充填剤の表面の有機的改質は、シロキサン、クロロシラン、シラザン、チタン酸塩、ジルコン酸塩、タングステン酸塩、有機酸(例えば、米国特許第6387981号明細書に記載されているような有機酸)、又は有機酸の塩化物若しくは酸無水物を用いておこなうのが好ましい。シロキサン、クロロシラン、シラザン、チタン酸塩、ジルコン酸塩及びタングスタン酸塩としては、特に次式で表されるものが好ましい:Si(OR’)nR4−n、SiClnR4−n、(RmR''3−mSi)2NH、Ti(OR’)nR4−n、Zr(OR’)nR4−n及びW(OR’)nR6−n[式中、m及びnは1、2又は3を示し、好ましくはn=3である]。また、これらの式において、酸素原子を介して結合したR’は、R''の場合と同様に、いずれかの所望の有機官能基、好ましくはアルキル基、特に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基を示す。さらに、官能基Rはいずれかの所望の有機基であって、炭素原子を介してケイ素原子、チタン原子、ジルコニウム原子又はタングステン原子へ直接結合する有機基を示す。m又はnが1若しくは2を示すとき、Rは同一又は異なっていてもよい。
Rは、有機結合剤と化学的に結合することができるか、又は有機結合剤に対して高い親和性を示す1若しくは複数の官能基を有するように選択するのが好ましい。この種の官能基は、有機的表面改質のために用いることができる上記の有機酸、酸塩化物及び酸無水物に含まれていてもよい。好ましい官能基はアクリレート基、メタクリレート基、シアノアクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基、アリル基、エポキシド基、オキセタン基、ビニルエーテル基、アミノ基、酸基、酸エステル基、酸クロライド基、ホスフェート基、ホスホネート基、ホスフィット基、チオール基、アルコール基及び/又はイソシアネート基である。ナノ充填剤の有機的表面改質において生成す副生成物、例えば、アルコール、塩酸又はアンモニア等は、存在する可能性のある残渣(不純物)以外はその後の工程において除去される。即ち、この種の副生成物は、その後で調製される歯科材料中に含まれないか、又は僅かに少量含まれるに過ぎない(0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下)。
本発明の別の有利な選択肢は、ナノ充填剤の表面を染料を用いて有機的に改質する態様である。この場合、表面改質に用いられる化合物の基Rは染色基を含むか、又は染料と反応することができる官能基を含む。ナノ充填剤の表面への染料の結合は共有結合又はイオン結合によっておこなわれる。
ナノ充填剤の有機的表面改質がおこなわれる好ましい溶剤は極性非プロトン性溶剤であり、特に好ましい溶剤はアセトン、ブタノン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン及びジイソプロピルエーテルである。さらに、歯科材料の調製に用いられる有機結合剤中でのナノ充填剤の直接的な有機的表面改質は特に好ましい表面改質法である。この場合、有機結合剤は、使用されるべき溶剤である。ナノ充填剤の有機的表面改質を促進させるために、触媒として酸を添加することができる。いずれの場合にも、表面改質をおこなうためには、触媒量(好ましくは0.01〜5%)の水を存在させなければならない。このような量の水分は、しばしば吸着質として、出発材料として用いる凝結/凝集したナノ充填剤の表面上に既に存在する。反応を補助するために、別の水源(例えば、希酸)を添加することができる。
有機的表面改質中又は該改質前と該改質中における有機溶剤中での凝集体と凝結体の砕解を促進するために、常套法により付加的なエネルギー入力を印加することができる。このエネルギー入力の印加は、例えば、高速攪拌機、溶解機、ビーズミル又はミキサー等を用いておこなうことができる。比較的粘度の高い溶剤を使用する場合、特に有機結合剤を溶剤として直接的に使用する場合には、この方法は好ましい態様である。有機結合剤を溶剤として使用しない場合には、使用されるべき有機結合剤は、有機的に改質されたナノ充填剤の分散液と共に有機溶剤中へ直接的に充填することができる。この場合、溶剤は、有機結合剤と有機的に改質されたナノ充填剤との混合物の調製後に除去されるか、又はナノ充填剤配合歯科材料のその後の使用中に除去される。後者は、本発明による歯科材料に基づく溶剤含有ラッカーの場合には特に実用的な方法である。好ましくは、有機的に改質されたナノ充填剤は溶剤を含有せず、乾燥粉末としてさらに加工される。この場合、有機的に改質された乾燥ナノ粉末は有機結合剤へ添加され、機械的なエネルギー入力の印加によって均質混合される。この均質混合処理は、例えば、高速攪拌機、溶解機、ビーズミル、ロールミル、混練機又はミキサー等を用いておこなうことができる。
比較的粘度の高い溶剤を使用する場合、特に有機結合剤を溶剤として直接的に使用する場合、ナノ充填剤の有機的表面改質に用いる化合物の過剰部分及び/又は未反応部分が分散液から除去されないことがありうる。このような場合の好ましい対応策は、ナノ充填剤の有機的表面改質に用いる化合物の過剰部分及び/又は未反応部分を、適当な試剤と反応させることによって、その後で分散液から除去できる物質へ転化させるか、又はヒトに対して無害な(即ち、有害でない)物質として分散液中に存在させることができる物質へ転化させる方法である。特に好ましい方法は、ナノ充填剤の有機的表面改質に用いる化合物の過剰部分及び/又は未反応部分と反応する試剤として水を使用する方法である。
使用する有機結合剤は、ラジカル重合性基及び/又はカチオン重合性基及び/又はアニオン重合性基及び/又は縮合反応及び/又は付加反応及び/又は酸−塩基反応によって硬化をもたらす基を有する化合物又は多数のこれらの化合物の任意の混合物である。これらの化合物はホスファゼン、ケイ素若しくは有機炭素に基づく親構造体及び該親構造体に結合した少なくとも1個の官能基から成り、該官能基は、ラジカル重合反応及び/又はカチオン重合反応及び/又はアニオン重合反応及び/又は縮合反応及び/又は付加反応及び/又は酸−塩基反応によって進行する硬化をもたらす。好ましくは、これらの官能基はアクリレート基、メタクリレート基、シアノアクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基、アリル基、エポキシド基、オキセタン基、ビニルエーテル基、アミノ基、酸基、酸エステル基、酸クロライド基、ホスフェート基、ホスホネート基、ホスフィット基、チオール基、アルコール基及び/又はイソシアネート基である。酸基、酸エステル基及び酸クロライド基は、例えば、カルボン酸、リン酸、ホスホン酸又はスルホン酸から誘導することができる。
親構造体は線状構造体、分枝状構造体、環状構造体、樹状構造体及び/又は超分枝状構造体であってもよい。親構造体はモノマー性構造体、オリゴマー性構造体又はポリマー性構造体であってもよい。親構造体の化学構造は、脂肪族セグメント、脂環式セグメント、ヘテロ環式セグメント、芳香族セグメント及び/又はヘテロ芳香族セグメントから構成される。1又は複数の官能基は、脂肪族セグメント、脂環式セグメント、ヘテロ環式セグメント、芳香族セグメント及び/又はヘテロ芳香族セグメント中に含まれていてもよい。このようなセグメントとしては、次のものが例示される:
−O−,−S−、−SO−、−SO2−、−NR1−、−PR1−、−P(OR1)−、−POR1−、−PO(OR1)−、−O−PO(OR1)−O−、−CO−、−CO2−、O−CO−O−、−COS−、−CS2−、−C=N−、−N=C=N−、−CO(NR1)−、O−CO−NR1−、−NR1−CO−NR2−、−SiR1R2−、及び/又は−SiR1R2−O−[式中、R1はH又はいずれかの所望の有機残基(好ましくは非置換若しくは置換アルキル基又はアリール基)を示し、R2はR1と同一若しくは異なっていてもよく、H又はいずれかの所望の有機残基(好ましくは非置換若しくは置換アルキル基又はアリール基)を示す]。
−O−,−S−、−SO−、−SO2−、−NR1−、−PR1−、−P(OR1)−、−POR1−、−PO(OR1)−、−O−PO(OR1)−O−、−CO−、−CO2−、O−CO−O−、−COS−、−CS2−、−C=N−、−N=C=N−、−CO(NR1)−、O−CO−NR1−、−NR1−CO−NR2−、−SiR1R2−、及び/又は−SiR1R2−O−[式中、R1はH又はいずれかの所望の有機残基(好ましくは非置換若しくは置換アルキル基又はアリール基)を示し、R2はR1と同一若しくは異なっていてもよく、H又はいずれかの所望の有機残基(好ましくは非置換若しくは置換アルキル基又はアリール基)を示す]。
脂肪族セグメントが親構造体中に含まれている場合には、好ましいこれらのセグメントは、置換(例えば、ハロゲン化)若しくは非置換のアルキル化合物とアルケニル化合物、エーテル、エステル、カーボネート、ウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート及びポリウレタンから誘導される。
脂環式セグメントが親構造体中に含まれている場合には、好ましいこれらのセグメントは置換(例えば、ハロゲン化)若しくは非置換のシクロアルカン(例えば、シクロヘキサン及びその誘導体)、スピラン類(例えば、スピロ[3.3]ヘプタン)並びに二環式及び多環式炭化水素(例えば、デカリン、ノルボルナン、ノルカラン、ピナン、アダマンタン、ツイスタン及びジアマンタン)から誘導される。
ヘテロ環式セグメントが親構造体中に含まれている場合には、好ましいこれらのセグメントは置換(例えば、ハロゲン化)若しくは非置換のシクロデキストリン、モルホリン及びイミノオキサジアジンジオンから誘導される。
芳香族セグメントが親構造体中に含まれている場合には、好ましいこれらのセグメントは置換(例えば、ハロゲン化)若しくは非置換のベンゼン類(例えば、ベンゼン、トルエン、フェノール、アニリン及びビフェニル)及び縮合芳香族環系化合物(例えば、インデン、フルオレン、ナフタレン、アセナフテン、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、ピレン及びクリセン)から誘導される。
ヘテロ芳香族セグメントが親構造体中に含まれている場合には、好ましいこれらのセグメントは置換(例えば、ハロゲン化)若しくは非置換のピロール類、フラン類、チオフェン類、インドール類、ベンゾフラン類、ベンゾチオフェン類、ジベンゾフラン類、ジベンゾチオフェン類、ピラゾール類、イミダゾール類、ピリジン類、ピラン類、チオピラン類及びキノリン類から誘導される。
有機結合剤としては、ラジカル重合性基及び/又はカチオン重合性基及び/又はアニオン重合性基、及び/又は縮合反応及び/又は付加反応及び/又は酸−塩基反応によって硬化をもたらす基を有する液晶化合物又は液晶化合物を少なくとも1種含有する複数の化合物の混合物を使用することもできる。
さらに別の好ましい選択肢は、ラジカル重合性基及び/又はカチオン重合性基及び/又はアニオン重合性基、及び/又は縮合反応及び/又は付加反応及び/又は酸−塩基反応によって硬化をもたらす基を付加的に有するフッ化物イオン放出性化合物又はフッ化物イオン放出性化合物を少なくとも1種含有する複数の化合物の混合物を有機結合剤として使用する態様である。
特に好ましい有機結合剤は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルエーテル、エポキシド、オキセタン、スピロオルトカーボネート、スピロオルトエステル、二環式オルトエステル、二環式モノラクトン、二環式ビスラクトン、環状カーボネート、環状アセタール、アリルスルフィド、ビニルシクロプロパン、有機ホスフェート、有機ホスホネート、有機ホスフィット、及びこれらの化合物の任意の混合物である。
このような有機結合剤の具体例としては、一般的に限定するものではないが、以下のものが例示される:
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−若しくはi−プロピル
(メタ)アクリレート、n−、i−若しくはt−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル
(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート若しくはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのリン酸エステル、(メタ)アクリル酸、マロン酸モノ(メタ)アクリレートエステル、コハク酸モノ(メタ)アクリレートエステル、マレイン酸モノ(メタ)アクリレートエステル、グリセリル(メタ)アクリレート、グリセリルジ(メタ)アクリレートエステル、グリセリルジ(メタ)アクリレート、グリセリルジ(メタ)アクリレートエステル(例えば、グリセリルジ(メタ)アクリレートサクシネート)、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸、ビス−4,6−若しくはビス−2,5−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸、2−(((アルキルアミノ)カルボニル)オキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリルジ(メタ)アクリレート、グリセロールプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシル化及び/又はプロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス−4−(3−(メタ)アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルプロパン及びその誘導体、ビスフェノールAグリシジル(メタ)アクリレートのクロロ−及びブロモ−リン酸エステル、ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、7,7,9−トリメチロール−4,13−ジオキソ−3,14−ジオキサ−5,12−ジアザヘキサデカン1,16−ジオキシジメタクリレート)、ポリエステルウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、ポリアミド(メタ)アクリレート、ポリイミド(メタ)アクリレート、ホスファゼン(メタ)アクリレート及びシロキサン(メタ)アクリレート;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−若しくはi−プロピル
(メタ)アクリレート、n−、i−若しくはt−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル
(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート若しくはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのリン酸エステル、(メタ)アクリル酸、マロン酸モノ(メタ)アクリレートエステル、コハク酸モノ(メタ)アクリレートエステル、マレイン酸モノ(メタ)アクリレートエステル、グリセリル(メタ)アクリレート、グリセリルジ(メタ)アクリレートエステル、グリセリルジ(メタ)アクリレート、グリセリルジ(メタ)アクリレートエステル(例えば、グリセリルジ(メタ)アクリレートサクシネート)、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸、ビス−4,6−若しくはビス−2,5−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸、2−(((アルキルアミノ)カルボニル)オキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリルジ(メタ)アクリレート、グリセロールプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシル化及び/又はプロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス−4−(3−(メタ)アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルプロパン及びその誘導体、ビスフェノールAグリシジル(メタ)アクリレートのクロロ−及びブロモ−リン酸エステル、ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、7,7,9−トリメチロール−4,13−ジオキソ−3,14−ジオキサ−5,12−ジアザヘキサデカン1,16−ジオキシジメタクリレート)、ポリエステルウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、ポリアミド(メタ)アクリレート、ポリイミド(メタ)アクリレート、ホスファゼン(メタ)アクリレート及びシロキサン(メタ)アクリレート;
エチルビニルエーテル、n−若しくはi−プロピルビニルエーテル、n−、i−若しくはt−ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシル3,4−エポキシ−1−メチルビニルエーテル、ジメタノールシクロヘキシルモノビニルエーテル、1,4−ジメタノールシクロヘキシルジビニルエーテル、プロパンジオールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、オクタンジオールジビニルエーテル、デカンジオールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテルモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、グリセリルトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、7,7,9−トリメチル−4,13−ジオキソ−3,14−ジオキサ−5,12−ジアザヘキサデカン−1,16−ジオキシジビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ビスフェノールAジビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテル、ポリカーボネートビニルエーテル、ポリアクリレートビニルエーテル、ポリアミドビニルエーテル、ポリイミドビニルエーテル、ポリウレタンビニルエーテル、ホスファゼンビニルエーテル、及びシロキサンビニルエーテル;
アルキルグリシジルエーテル、グリシドール、グリシジル(メタ)アクリレート、ジペンテンジオキシド、1,2−エポキシ−ヘキサデカン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシド、エポキシ−シクロヘキサンカルボキシレート(例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート)、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ドデカンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール若しくはポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、置換(例えば、ハロゲン化)若しくは非置換のビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA,ビスフェノールC及びビスフェノールF)のジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリブタジエンポリエポキシド、ポリエステルエポキシド、ポリカーボネートエポキシド、ポリアクリレートエポキシド、ポリアミドエポキシド、ポリイミドエポキシド、ポリウレタンエポキシド、ホスファゼンエポキシド、及びシロキサンエポキシド;
3,3−ジ置換オキセタン及びジオキセタン(例えば、3−エチル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキセタン);(トランス/トランス)−2,3,8,9−ジ−(テトラメチレン)−1,5,7,11−テトラオキサスピラ[5.5]ウンデカン;置換1,3−ジオキソラン(例えば、2−フェニル−4−メチレン−1,3−ジオキソラン);二官能性6−メチレン−1,4−ジチエパン並びに求核性の(メタ)アクリレート[例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート若しくはグリセリル(メタ)アクリレートエステル]と反応性のリン酸、ホスホン酸若しくはホスフィン酸誘導体(例えば、P2O5,POCl3若しくはPCl3)との反応生成物。
得られる有機的に改質されたナノ充填剤と有機結合剤との混合物は高透明性と低粘度によって特徴づけられる。しかしながら、歯科材料として使用する場合には、該混合物は、重合による収縮率が高く、機械的強度が比較的低いために、全ての歯科用途に適しているわけではない。従って、本発明によれば、0.2〜50μmの平均粒径を有する粉砕充填剤及び0.1〜50μmの平均粒径を有する球状充填剤から成る群から選択される少なくとも1種の無機充填剤及び/又は有機充填剤を上記混合物へ均質混合させる。このようにして得られる材料は、より高い圧縮強さ、より低い重合収縮率及び改良された耐摩耗性によって特徴づけられる。
本発明によるこの種の歯科材料は従来品とは非常に異なるコンシステンシー(consistency)を有する。例えば、該歯科材料は流動性と剛性を併有する(即ち、適度なコンシステンシーを有する)。さらに、この種の歯科材料は従来品とは非常に異なる流動学的特性を有する。例えば、該歯科材料はチキソトロープ剪断増粘性若しくは剪断減粘性を有する。本発明による歯科材料は高い半透明性(即ち、低い不透明性)も有する。
前記の無機充填剤及び/又は有機充填剤は、機械的エネルギー入力によって、有機結合剤と有機的に改質されたナノ充填剤との混合物中へ均質混合される。この均質混合は、例えば、高速撹拌機、溶解機、ビーズミル、ロールミル、混練機又はミキサーを用いておこなうことができる。
本発明方法においては、ナノメーターサイズの充填剤の表面改質は、有機結合剤中への均質混合の前、又は該均質混合中におこなわれる。他の充填剤(球状充填剤及び/又は粉砕充填剤)の有機結合剤への均質混合は、ナノメーターサイズの充填剤の混合前、混合中又は混合後におこなうことができる。
無機充填剤及び/又は有機充填剤は非反応性充填剤、反応性充填剤又はこれらの2種の充填剤の混合物であってもよい。この場合、反応性充填剤は、混入水の作用によってイオンを放出し、酸−塩基反応による歯科材料の硬化をもたらす充填剤を意味する。この種の反応性充填剤は、例えば、コンポマー(compomer)及びガラスアイオノマーセメントの調製のために使用されており、例えば、次の文献に記載されている:D.C.スミス、バイオマテリアルズ(Biomaterials)、第19巻、第467頁〜第478頁(1998年)。
好ましい無機充填剤及び/又は有機充填剤としては次の充填剤が例示される:
石英粉末、ガラス粉末、ガラスセラミック粉末、金属酸化物、金属水酸化物、充填剤入り及び/又は非充填剤入りチップポリマー、充填剤入り及び/又は非充填剤入りビーズポリマー、前記の球状充填剤(例えば、独国特許公報DE−C3247800号に記載の球状充填剤)並びにこれらの充填剤の任意の混合物。チップポリマーとビーズポリマーは、前述の重合性化合物(有機結合剤として使用可能な化合物)のホモポリマー若しくはコポリマーである。この種のホモポリマー若しくはコポリマーは前記のナノ充填剤及び/又は無機充填剤(例えば、石英粉末、ガラス粉末、ガラスセラミック粉末、熱分解法ケイ酸又は湿式沈降ケイ酸)と共に充填することができる。チップポリマーは、対応する重合生成物を粉砕することによって得られる。
石英粉末、ガラス粉末、ガラスセラミック粉末、金属酸化物、金属水酸化物、充填剤入り及び/又は非充填剤入りチップポリマー、充填剤入り及び/又は非充填剤入りビーズポリマー、前記の球状充填剤(例えば、独国特許公報DE−C3247800号に記載の球状充填剤)並びにこれらの充填剤の任意の混合物。チップポリマーとビーズポリマーは、前述の重合性化合物(有機結合剤として使用可能な化合物)のホモポリマー若しくはコポリマーである。この種のホモポリマー若しくはコポリマーは前記のナノ充填剤及び/又は無機充填剤(例えば、石英粉末、ガラス粉末、ガラスセラミック粉末、熱分解法ケイ酸又は湿式沈降ケイ酸)と共に充填することができる。チップポリマーは、対応する重合生成物を粉砕することによって得られる。
特に好ましい無機充填剤及び/又は有機充填剤としては次の充填剤が例示される:
ケイ酸バリウムガラス、ケイ酸ストロンチウムガラス、硼酸塩アルミノシリケートガラス、リン酸塩アルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ナトリウムアルミニウムシリケート、層状シリケート、ベントナイト、ゼオライト(モレキュラーシーブを含む)、アルカリ金属とアルカリ土類金属の酸化物と水酸化物、アパタイト、充填剤入りチップポリマー、前記の球状充填剤(例えば、独国特許公報DE−C3247800号に記載の球状充填剤)並びにこれらの充填剤の任意の混合物。
ケイ酸バリウムガラス、ケイ酸ストロンチウムガラス、硼酸塩アルミノシリケートガラス、リン酸塩アルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ナトリウムアルミニウムシリケート、層状シリケート、ベントナイト、ゼオライト(モレキュラーシーブを含む)、アルカリ金属とアルカリ土類金属の酸化物と水酸化物、アパタイト、充填剤入りチップポリマー、前記の球状充填剤(例えば、独国特許公報DE−C3247800号に記載の球状充填剤)並びにこれらの充填剤の任意の混合物。
好ましい変形態様においては、無機充填剤及び/又は有機充填剤であって、これらの充填剤の表面へ、有機結合剤と化学的に反応することができるか又は有機結合剤に対して高い親和性を示して有機的改質をもたらす官能基が導入された該充填剤が使用される。好ましいこの種の官能基を次に例示する:アクリレート基、メタクリレート基、シアノアクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基、アリル基、エポキシド基、オキセタン基、ビニルエーテル基、アミノ基、酸基、酸エステル基、酸クロライド基、ホスフェート基、ホスホネート基、ホスフィット基、チオール基、アルコール基及び/又はイソシアネート基。好ましくは、これらの官能基は、ナノ充填剤の表面改質に関連して既に例示した化合物(例えば、シロキサン、クロロシラン、シラザン、チタン酸塩、ジルコン酸塩、タングステン酸塩、有機酸、有機酸の塩化物若しくは酸無水物)によって導入される。
特に好ましい変形態様においては、X線不透過性を有する無機充填剤及び/又は有機充填剤が使用され、本発明による歯科材料へのその均質配合量は、本発明による歯科材料が好ましくは100%Al以上(特に好ましくは200%Al以上)のX線不透過度(ISO 4049−2000による値)を示すように調整される。
本発明による歯科材料の粘度を調整するためには、該歯科材料中へ熱分解法ケイ酸又は湿式沈降ケイ酸を所望により付加的に均質混合する。
本発明による歯科材料は、1成分系材料として使用してもよく、あるいは多成分系材料として使用してもよい。後者の場合、少なくとも1種の成分(好ましくは全ての成分)は本発明による組成物に対応させる。従って、本発明は、本発明による歯科材料を調製するためのキット(kit)にも関する。該キットは単数若しくは複数の成分を保有することができる。多成分キット又は多成分系を用いる本発明による歯科材料の調製は、所定の成分を特定の混合比で混合した後、該混合物を硬化させることによっておこなわれる。
本発明による歯科材料を硬化させるためには、1種若しくは複数種の開始剤及び所望による1種若しくは複数種の共開始剤(coinitiator)を該歯科材料中へ均質混合する態様が好ましい。この場合、1種若しくは複数種の開始剤及び1種若しくは複数種の共開始剤は、1成分中へ一緒に配合してもよく、及び/又は2種若しくはそれよりも多くの成分中へ別々に配合してもよい。従って、本発明による歯科材料は、熱的、化学的若しくは光化学的に硬化させることができ、例えば、該歯科材料は、紫外線及び/又は可視光の照射、及び/又は口腔内の湿分及び/又は大気中の湿分との反応によって硬化させることができる。
この場合に使用可能な開始剤としては、光開始剤を例示することができる。光開始剤は、波長が300〜700nm(好ましくは350〜600nm、特に好ましくは380〜500nm)の光の吸収及び所望による1種若しくは複数種の共開始剤との付加的な反応によって歯科材料の硬化をもたらすことによって特徴づけられる。この場合に使用される好ましい開始剤を以下に例示する:ホスフィンオキシド、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ビスイミダゾール、メタロセン、フルオロン、α−ジカルボニル化合物、アリールジアゾニウム塩、アリールスルホニウム塩、アリールヨードニウム塩、フェロセニウム塩、フェニルホスホニウム塩、及びこれらの任意の混合物。
特に好ましい開始剤を以下に例示する:ジフェニル−2,4,6−トリメチル−ベンゾイルホスフィンオキシド、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジアルキルケタール、α−ヒドロキシアセトフェノン、ジアルコキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノン、i−プロピルチオキサントン、カンフォールキノン、フェニルプロパンジオン、5,7−ジヨード−3−ブトキシ−6−フルオロン、(η−6−クメン)(η−5−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、(η−6−クメン)(η−5−シクロペンタジエニル)鉄テトラフルオロボーレート、(η−6−クメン)(η−5−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロアンチモネート、置換ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、及びこれらの任意の混合物。
好ましい光化学的硬化用共開始剤を以下に例示する:第三アミン、硼酸塩、有機ホスフィット、ジアリールヨードニウム化合物、チオキサントン、キサンテン、フルオレン、フルオロン、α−ジカルボニル化合物、縮合ポリ芳香族炭化水素及びこれらの任意の混合物。特に好ましい共開始剤は、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジアルキルアルキルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、2−エチルヘキシルp−(ジメチルアミノ)−ベンゾエート、ブチリルコリントリフェニルブチルボーレート、及びこれらの任意の混合物である。
開始剤としては、高温での熱エネルギーの吸収によって歯科材料の硬化をもたらす「熱的開始剤」も使用することができる。この場合、好ましい熱的開始剤は、無機過酸化物及び/又は有機過酸化物、無機ヒドロペルオキシド及び/又は有機ヒドロペルオキシド、α、α’−アゾビス(イソブチロエチルエステル)、α、α’−アゾビス(イソブチロニトリル)、ベンゾピナコール、及びこれらの任意の混合物である。特に好ましい熱的開始剤はジアシルペルオキシド、例えば、ベンゾイルペルオキシド若しくはラウロイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ベンゾピナコール、2,2’−ジメチルベンゾピナコール、及びこれらの任意の混合物である。
室温での化学的硬化をもたらすためには、特にレドックス開始剤系が使用される。該開始剤系は、活性剤として作用する1種若しくは複数種の共開始剤及び1種若しくは複数種の開始剤から成る。貯蔵安定性の理由から、1種若しくは複数種の開始剤及び1種若しくは複数種の共開始剤は、本発明による歯科材料を空間的に相互に分離させた複数部分、即ち、多成分系材料(好ましくは2成分系材料)へ配合される。1種若しくは複数種の開始剤としては、好ましくは、無機過酸化物及び/又は有機過酸化物、無機ヒドロペルオキシド及び/又は有機ヒドロペルオキシド、バルビツル酸誘導体、マロニルスルファミド、プロトン性酸、ルイス酸若しくはブレンステッド酸又はこの種の酸を放出する化合物、カルベニウムイオン供与体(例えば、メチルトリフレート又はトリエチルパークロレート)又はこれらの任意の混合物が使用される。さらに、1種若しくは複数種の共開始剤としては、好ましくは、第三アミン、重金属化合物、特に周期律表の第8族と9族(「鉄/銅族」)の元素の化合物、ハロゲン若しくは疑ハロゲンがイオン結合した化合物(例えば、第四アンモニウムハロゲン化物)、弱ブレンステッド酸(例えば、アルコール及び水)又はこれらの任意の混合物が使用される。
本発明による歯科材料においては、上記の開始剤と共開始剤の可能ないずれの併用態様も包含される。例えば、「二元硬化性(dual-curing)歯科材料」、即ち、光化学的硬化用の光開始剤と所望による対応する共開始剤及び室温での化学的硬化用の開始剤と対応する共開始剤を含有する歯科材料が挙げられる。
本発明による歯科材料には、特定の特性を調整するために、付加的に「添加剤」又は「改質剤」を配合してもよい。この種の付加的な配合剤としては、一般的には特に限定的ではないが、下記のものが例示される:
無機及び/又は有機の有色顔料若しくは染料、安定剤(例えば、置換若しくは非置換ヒドロキシ芳香族炭化水素、チヌビン、テルピネン、フェノチアジン、「HALS」(ヒンダードアミン系光安定剤)及び/又はEDTAのような重金属掃去剤)、可塑剤(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、不飽和ポリエステル、フタレート、アジペート、セバケート、リン酸エステル、ホスホン酸エステル及び/又はクエン酸エステル)、イオン放出性物質、特にフッ化物イオン放出性物質(例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化イットリウム、フッ化イッテリビウム及び/又はフッ化第四アンモニウム)、殺菌作用性物質若しくは抗生作用性物質(例えば、クロルヘキシジン、ピリジニウム塩、ペニシリン、テトラサイクリン、クロルアンフェニコール、抗菌性マクロライド及び/又はポリペプチド抗生物質)及び/又は溶剤(例えば、水、アセトン、エタノール、i−プロパノール、ブタノン及び/又は酢酸エチル)。
無機及び/又は有機の有色顔料若しくは染料、安定剤(例えば、置換若しくは非置換ヒドロキシ芳香族炭化水素、チヌビン、テルピネン、フェノチアジン、「HALS」(ヒンダードアミン系光安定剤)及び/又はEDTAのような重金属掃去剤)、可塑剤(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、不飽和ポリエステル、フタレート、アジペート、セバケート、リン酸エステル、ホスホン酸エステル及び/又はクエン酸エステル)、イオン放出性物質、特にフッ化物イオン放出性物質(例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化イットリウム、フッ化イッテリビウム及び/又はフッ化第四アンモニウム)、殺菌作用性物質若しくは抗生作用性物質(例えば、クロルヘキシジン、ピリジニウム塩、ペニシリン、テトラサイクリン、クロルアンフェニコール、抗菌性マクロライド及び/又はポリペプチド抗生物質)及び/又は溶剤(例えば、水、アセトン、エタノール、i−プロパノール、ブタノン及び/又は酢酸エチル)。
本発明による歯科材料は補てつ歯学、保存歯学及び予防歯学において使用することができる。このような分野における代表的な使用例を以下に示すが、本発明による歯科材料はこれらの用途に限定されるものではない:歯の充填剤、断端(stump)の肉盛材料、仮のクラウンとブリッジ用材料、歯科セメント、接着剤、人口歯用材料、ベニア材料、封止材料及び歯科用ラッカー。
本発明を以下の実施態様によってさらに説明する。最初に、実施態様において使用した種々の測定方法と試験方法について説明し、次いで実施例と比較例について説明する。
I.測定方法と試験方法
1.ナノメーターサイズの充填剤の粒径測定
粒径の測定は、動的光散乱法(3D−PCS)を用いておこなった。この方法により、1nm〜数μmの範囲の粒径を有する粒子の重量割合を測定することができる。この測定法の上限は、粒径のより大きな粒子は測定溶液中で沈殿するために測定できないような限界にある。
1.ナノメーターサイズの充填剤の粒径測定
粒径の測定は、動的光散乱法(3D−PCS)を用いておこなった。この方法により、1nm〜数μmの範囲の粒径を有する粒子の重量割合を測定することができる。この測定法の上限は、粒径のより大きな粒子は測定溶液中で沈殿するために測定できないような限界にある。
全ての試料は、2−ブタノンを媒体とする希釈分散液(固形分:約0.5重量%)として試験に供した。この希釈度は、主として粒子−粒子相互作用を確実に排除するために選定した。
2.微小充填剤の粒径の測定
粒径の分布はレーザー回折法を用いて測定した(測定器:クールターLS 130)。
この測定法においては、特定の粒径を有する粒子の重量割合が測定される。この測定法の特徴は、d50値、即ち、粒子の全質量の半分(50%)がこの粒径よりも大きいか若しくは小さいことを示す値である。粒子の測定は希釈分散液(通常は希釈水性分散液)中でおこなった。
粒径の分布はレーザー回折法を用いて測定した(測定器:クールターLS 130)。
この測定法においては、特定の粒径を有する粒子の重量割合が測定される。この測定法の特徴は、d50値、即ち、粒子の全質量の半分(50%)がこの粒径よりも大きいか若しくは小さいことを示す値である。粒子の測定は希釈分散液(通常は希釈水性分散液)中でおこなった。
3.ナノメーターサイズの充填剤の凝結体の粒子数含量の測定
充填剤と有機結合剤の分散性を、電子顕微鏡を用いて調べた。この分析においては、一次粒子が外見上相互に結合した粒子(凝結体)を計測した。
充填剤と有機結合剤の分散性を、電子顕微鏡を用いて調べた。この分析においては、一次粒子が外見上相互に結合した粒子(凝結体)を計測した。
4.重合収縮
重合収縮は「浮力法」によって測定した。この方法は、アルキメデスの原理に基づく比重天秤の原理に従っておこなう。被験体が受ける浮力は、該被験体によって排除される液体の重量に等しい。従って、浮力は、被験体を液体中へ浸漬した後のその重量損失に等しい。
4℃の蒸留水中においては、浮力(従って、重量損失)は被験体の体積に直接的に対応する。
重合収縮は「浮力法」によって測定した。この方法は、アルキメデスの原理に基づく比重天秤の原理に従っておこなう。被験体が受ける浮力は、該被験体によって排除される液体の重量に等しい。従って、浮力は、被験体を液体中へ浸漬した後のその重量損失に等しい。
4℃の蒸留水中においては、浮力(従って、重量損失)は被験体の体積に直接的に対応する。
この場合、重合収縮(即ち、体積減少)を測定するために、各々の被験試料を非常に細い糸へ固定させ、これを電子化学天秤(サルトリウス社製のA200 S型天秤)の天秤皿へ強固に連結させた。乾燥重量(mair)を測定した。試料を完全に浸漬した水を満たしたビーカーを該天秤上へ移動させた。試料の質量(m1)及び水の温度と密度(ρ1)を測定した。次いで、試料を、エスペ社製のエリパー II ハロゲンランプを用いて硬化させた後(40秒間で3回)、23℃において24時間にわたって乾燥状態で保存した。水中へ再び完全に浸漬させた試料の質量(m2)及び水の温度と密度(ρ2)を測定した。重合収縮ΔVは次式に従って計算した:
ΔV[%]=100[Δm1−(ρ1/ρ2) Δm2]/Δm1
式中、Δm1=mair−m1及びΔm2=mair−m2である。
ΔV[%]=100[Δm1−(ρ1/ρ2) Δm2]/Δm1
式中、Δm1=mair−m1及びΔm2=mair−m2である。
5.曲げ強さ
ステンレス鋼製のモールドを用いることによって、被験体[(40±2)mm×(2±0.1)mm×(2±0.1)mm]を調製した。硬化処理は、デンタカラー社製のXS光オーブン内でおこなった(片面の照射時間:90秒間)。被験体を40℃の蒸留水中で23時間保存した後、23℃で1時間保存した。次いで、ツビック社製の万能試験機(Z010/TN2A型)を用いて、ISO 4049−2000に従って一定の前進速度(0.8mm/分)で測定した。曲げ強さ(FS)は次式に従って計算した:
FS[MPa]=(3Fl)/(2bh2)
式中、「F」は被験体に印加される最大の力(単位:ニュートン)を示し、「l」は支持体間の距離(mm)を示し(精度:±0.01mm)、「b」は試験の直前に測定した被験
体の幅(mm)を示し、「h」は試験の直前に測定した被験体の高さ(mm)を示す。
ステンレス鋼製のモールドを用いることによって、被験体[(40±2)mm×(2±0.1)mm×(2±0.1)mm]を調製した。硬化処理は、デンタカラー社製のXS光オーブン内でおこなった(片面の照射時間:90秒間)。被験体を40℃の蒸留水中で23時間保存した後、23℃で1時間保存した。次いで、ツビック社製の万能試験機(Z010/TN2A型)を用いて、ISO 4049−2000に従って一定の前進速度(0.8mm/分)で測定した。曲げ強さ(FS)は次式に従って計算した:
FS[MPa]=(3Fl)/(2bh2)
式中、「F」は被験体に印加される最大の力(単位:ニュートン)を示し、「l」は支持体間の距離(mm)を示し(精度:±0.01mm)、「b」は試験の直前に測定した被験
体の幅(mm)を示し、「h」は試験の直前に測定した被験体の高さ(mm)を示す。
6.圧縮強さ
ステンレス鋼製のモールドを用いることによって、円筒状の被験体[高さ:4±0.02mm、直径:2±0.01mm]を調製した。硬化処理は、エスペ社製のエリパー II ハロゲンランプを用いておこなった(片面の照射時間:40秒間)。被験体を40℃の蒸留水中で23時間保存した後、23℃で1時間保存した。次いで、ツビック社製の万能試験機(Z010/TN2A型)を用いて一定の前進速度(1.0mm/分)で測定した。圧縮強さ(CS)は次式に従って計算した:
CS[MPa]=F/(πr2)
式中、「F」は被験体に印加される最大の力(ニュートン;N)を示し、「r」は被験体の半径(mm)を示す。
ステンレス鋼製のモールドを用いることによって、円筒状の被験体[高さ:4±0.02mm、直径:2±0.01mm]を調製した。硬化処理は、エスペ社製のエリパー II ハロゲンランプを用いておこなった(片面の照射時間:40秒間)。被験体を40℃の蒸留水中で23時間保存した後、23℃で1時間保存した。次いで、ツビック社製の万能試験機(Z010/TN2A型)を用いて一定の前進速度(1.0mm/分)で測定した。圧縮強さ(CS)は次式に従って計算した:
CS[MPa]=F/(πr2)
式中、「F」は被験体に印加される最大の力(ニュートン;N)を示し、「r」は被験体の半径(mm)を示す。
7.直径方向の引張強さ
ステンレス鋼製のモールドを用いることによって、円筒状の被験体[高さ:3±0.01mm、直径:6±0.01mm]を調製した。硬化処理は、デンタカラー社製のXS光オーブン内でおこなった(片面の照射時間:90秒間)。被験体を40℃の蒸留水中で23時間保存した後、23℃で1時間保存した。次いで、ツビック社製の万能試験機(Z010/TN2A型)を用いて、ADA仕様書No.27(1977年)に従って一定の前進速度(1.0mm/分)で測定した。直径方向の引張強さ(DT)は次式に従って計算した:
DT[MPa]=2F/(πdh)
式中、「F」は被験体に印加される最大の力(単位:ニュートン)を示し、「d」は被験体の直径(mm)を示し、「h」は被験体の高さ(mm)を示す。
ステンレス鋼製のモールドを用いることによって、円筒状の被験体[高さ:3±0.01mm、直径:6±0.01mm]を調製した。硬化処理は、デンタカラー社製のXS光オーブン内でおこなった(片面の照射時間:90秒間)。被験体を40℃の蒸留水中で23時間保存した後、23℃で1時間保存した。次いで、ツビック社製の万能試験機(Z010/TN2A型)を用いて、ADA仕様書No.27(1977年)に従って一定の前進速度(1.0mm/分)で測定した。直径方向の引張強さ(DT)は次式に従って計算した:
DT[MPa]=2F/(πdh)
式中、「F」は被験体に印加される最大の力(単位:ニュートン)を示し、「d」は被験体の直径(mm)を示し、「h」は被験体の高さ(mm)を示す。
8.バーコル硬度
ステンレス鋼製のモールドを用いることによって、円筒状の被験体[高さ:2.5±0.1mm、直径:25±0.1mm]を調製した。硬化処理は、デンタカラー社製のXS光オーブン内でおこなった(片面の照射時間:180秒間)。次いで、バーベル−コルマン社製の圧子を用いてバーコル硬度を測定した。この場合、各々の被験体に関しては、該被験体上に分布する少なくとも5つの部分における硬度を測定し、これらの値の平均値を求めた。
ステンレス鋼製のモールドを用いることによって、円筒状の被験体[高さ:2.5±0.1mm、直径:25±0.1mm]を調製した。硬化処理は、デンタカラー社製のXS光オーブン内でおこなった(片面の照射時間:180秒間)。次いで、バーベル−コルマン社製の圧子を用いてバーコル硬度を測定した。この場合、各々の被験体に関しては、該被験体上に分布する少なくとも5つの部分における硬度を測定し、これらの値の平均値を求めた。
9.重合深さ
重合深さは、ISO 4049−1988に従って測定した。この場合、成形被験体としては、中空円筒[高さ:10mm、直径:5mm]を選定した。各々の被験体は、クルツァー社製のトランスルックスECハロゲンランプを用いる照射処理に付した。
重合深さは、ISO 4049−1988に従って測定した。この場合、成形被験体としては、中空円筒[高さ:10mm、直径:5mm]を選定した。各々の被験体は、クルツァー社製のトランスルックスECハロゲンランプを用いる照射処理に付した。
10.吸水度
吸水度は、ISO 4049−2000に従って測定した。この場合、成形被験体としては、アルミニウム製中空円筒[高さ:1.0±0.1mm、内径:15±0.1mm]を選定した。各々の被験体の照射処理は、デンタカラー社製のXS光オーブン内でおこなった(各面の照射時間:180秒間)。
吸水度は、ISO 4049−2000に従って測定した。この場合、成形被験体としては、アルミニウム製中空円筒[高さ:1.0±0.1mm、内径:15±0.1mm]を選定した。各々の被験体の照射処理は、デンタカラー社製のXS光オーブン内でおこなった(各面の照射時間:180秒間)。
11.摩耗性
摩耗性は、デゲーらによって1986年に開発された3−媒体摩耗(3-media abrasion)法を使用して測定した(A.J.デゲーら、J. Dent. Res. 、第65巻(5)、1986年、第654頁〜第658頁)。
摩耗性は、デゲーらによって1986年に開発された3−媒体摩耗(3-media abrasion)法を使用して測定した(A.J.デゲーら、J. Dent. Res. 、第65巻(5)、1986年、第654頁〜第658頁)。
被験体を調製するために、試料ホイールの下方部位に適合させたモールドを使用した。材料はモールド内へ層状に導入し(各層あたり約2mm)、エスペ・トリ−ライト社製のハロゲンランプを用いる硬化処理に40秒間付した後、直ちにクラレイ社製のCS 110光オーブン内における再硬化処理に90秒間付した。種々の材料試料を、3−媒体摩耗機の試料ホイールへランダムな配置で固着させた。均一な丸みと表面を保証するために、試料ホイールを湿式研磨法によって平坦に研磨した(1000グリッド)。調製直後の被験体を蒸留水(37℃)中において少なくとも2週間貯蔵した。
全ての材料は、文献に記載の方法(クレマー、1997年)に従って、3−媒体摩耗機内において、5000サイクルの負荷処理に4回付した。摩耗体の粗面計による測定は、ペルトヘン社(ゲッチンゲン)製のコンピューター支援パーソメーター(perthometer)CSDを用いておこなった。得られた3−Dデータは、ウインドウズ用画像処理ユーザー・インターフェースXPERTを用いて分析した。この目的のためには、摩耗の範囲を正確に規定し、延伸面の下部における高さの平均低下による研磨体積からアウトプットした。
II.実施例及び比較例
本発明を複数の実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明の一般性がこれらの実施例によって限定されるものではない。
本発明を複数の実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明の一般性がこれらの実施例によって限定されるものではない。
ナノ充填剤A:
最初に,「アエロシルOX50」(デグッサ社製)150gを反応容器内へ入れ、次いでジクロロメタン220gを反応容器内へ真空吸引させた後、混合物の撹拌をおこなった。次いで、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(ABCR社製)7.6g、蒸留水3.3g及びメタクリル酸12mgをジクロロメタン580gに加えた溶液を反応容器内へ真空吸引させた。上記の操作が完結した後、溶剤混合物を真空下で留去させることによって、白色粉末を得た。
最初に,「アエロシルOX50」(デグッサ社製)150gを反応容器内へ入れ、次いでジクロロメタン220gを反応容器内へ真空吸引させた後、混合物の撹拌をおこなった。次いで、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(ABCR社製)7.6g、蒸留水3.3g及びメタクリル酸12mgをジクロロメタン580gに加えた溶液を反応容器内へ真空吸引させた。上記の操作が完結した後、溶剤混合物を真空下で留去させることによって、白色粉末を得た。
ナノ充填剤B:
2つ口フラスコ(2リットル)内へ「アエロシル200」(デグッサ社製)150gを導入し、これを2−ブタノン(約1000g)で処理した。当初はペースト状の混合物をKPG攪拌機で撹拌することによって均質な懸濁液を得た。次いで、3−メタクリルオキシ
プロピルトリメトキシシラン95.55gを滴下漏斗から滴下させた。水性懸濁液を全体で48時間撹拌した。次いで、2−ブタノンを回転エバポレーターからゆっくりと蒸発させた。溶剤を除去した後、白色綿毛状の易分解性の多孔性粗粒状粉末が得られた。
2つ口フラスコ(2リットル)内へ「アエロシル200」(デグッサ社製)150gを導入し、これを2−ブタノン(約1000g)で処理した。当初はペースト状の混合物をKPG攪拌機で撹拌することによって均質な懸濁液を得た。次いで、3−メタクリルオキシ
プロピルトリメトキシシラン95.55gを滴下漏斗から滴下させた。水性懸濁液を全体で48時間撹拌した。次いで、2−ブタノンを回転エバポレーターからゆっくりと蒸発させた。溶剤を除去した後、白色綿毛状の易分解性の多孔性粗粒状粉末が得られた。
樹脂A:
カンフォールキノン1.97g,2−エチルヘキシル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート3.21g及び2,6−ビス−t−ブチル−4−メチルフェノール65.8mgを、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレートとトリエチレングリコールジメタクリレートとの1:1混合物649.7gに溶解させた。24時間後の体積収縮率:10.7%。
カンフォールキノン1.97g,2−エチルヘキシル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート3.21g及び2,6−ビス−t−ブチル−4−メチルフェノール65.8mgを、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレートとトリエチレングリコールジメタクリレートとの1:1混合物649.7gに溶解させた。24時間後の体積収縮率:10.7%。
ナノ充填剤入り樹脂B−1(参考例2−1の前駆体):
「ディスパーマット(Dispermat)」を使用して、ナノ充填剤A(96.7g)を少量に分割して樹脂A(100g)と2時間かけて均質に混合した。この操作によって、幾分不透明性のある中粘度の充填剤入り樹脂が得られた(ナノメーターサイズの二酸化ケイ素の充填度:49.2%)。ナノ充填剤入り樹脂B−1の粒径分布は動的光散乱法によって測定すべきであった。しかしながら、非常に大きな凝結体及び/又は凝集体(平均粒径:d50>1μm)が樹脂中に存在するという問題が発生した。この種の粒体は測定前若しくは測定中に分離され、別途に測定しなかった。従って、図1には、測定することができたナノ充填剤入り樹脂B−1の粒子の粒径分布のみを示す。透明度は56.2%であり、24時間後の体積収縮率は5.2%であった。
「ディスパーマット(Dispermat)」を使用して、ナノ充填剤A(96.7g)を少量に分割して樹脂A(100g)と2時間かけて均質に混合した。この操作によって、幾分不透明性のある中粘度の充填剤入り樹脂が得られた(ナノメーターサイズの二酸化ケイ素の充填度:49.2%)。ナノ充填剤入り樹脂B−1の粒径分布は動的光散乱法によって測定すべきであった。しかしながら、非常に大きな凝結体及び/又は凝集体(平均粒径:d50>1μm)が樹脂中に存在するという問題が発生した。この種の粒体は測定前若しくは測定中に分離され、別途に測定しなかった。従って、図1には、測定することができたナノ充填剤入り樹脂B−1の粒子の粒径分布のみを示す。透明度は56.2%であり、24時間後の体積収縮率は5.2%であった。
図1は、ナノ充填剤入り樹脂B−1の非分離粒子の粒径分布を示す(動的光散乱法)。
ピーク1:平均値=75.8nm、幅=12.5%、振幅=34.5%
ピーク2:平均値=212.7nm、幅=11.1%、振幅=65.5%
ピーク1:平均値=75.8nm、幅=12.5%、振幅=34.5%
ピーク2:平均値=212.7nm、幅=11.1%、振幅=65.5%
粒径(d)が1μmよりも大きな測定できない凝結体及び/又は凝集体が比較的高い割合で存在することを考慮するならば、第1図からは次のことが結論づけられる。即ち、ナノ充填剤入り樹脂B−1粒子の内の非常に僅かの割合の粒子が100nm未満の粒径(d)を有する。
ナノ充填剤入り樹脂B−2(参考例2−2の前駆体):
実験室用ミキサーを使用して、ナノ充填剤A(96.7g)を少量に分割して樹脂A(100g)と1時間かけて均質に混合した。この操作によって、幾分不透明性のある中粘度の充填剤入り樹脂が得られた(ナノメーターサイズの二酸化ケイ素の充填度:49.2%)。この樹脂の場合、粒径分布は動的光散乱法によっては測定できなかった。何故ならば、充填剤の少なくとも80%は強く凝結及び/又は凝集しているために、対応する粒子は分離して測定できないほど大きいからである。透明度は56.4%であり、24時間後の体積収縮率は5.3%であった。
実験室用ミキサーを使用して、ナノ充填剤A(96.7g)を少量に分割して樹脂A(100g)と1時間かけて均質に混合した。この操作によって、幾分不透明性のある中粘度の充填剤入り樹脂が得られた(ナノメーターサイズの二酸化ケイ素の充填度:49.2%)。この樹脂の場合、粒径分布は動的光散乱法によっては測定できなかった。何故ならば、充填剤の少なくとも80%は強く凝結及び/又は凝集しているために、対応する粒子は分離して測定できないほど大きいからである。透明度は56.4%であり、24時間後の体積収縮率は5.3%であった。
ナノ充填剤入り樹脂C(本発明による実施例の前駆体):
ビスフェノールAジグリシジルメタクリレートとトリエチレングリコールジメタクリレートとの1:1混合物(259g)中へナノ充填剤B(約50g)を添加し、「ディスパーマット」を用いて1200rpmで90分間にわたって均質に混合させた。ナノ充填剤Bをさらに40g添加し、この混合物を1000rpmの条件下での分散処理に1時間付した後、500rpmの条件下での分散処理に一夜付した。全体で225gの該ナノ充填剤を30〜40gに分割して分散させた。次いで、カンフォールキノン、2−エチルヘキシル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート及び2,6−ビス−t−ブチル−4−メチルフェノールをそれぞれ0.16重量%、0.26重量%及び0.005重量%の濃度になるようにこの均質混合物中へ溶解させた。この操作により、非常に透明度の高い中粘度の充填剤入り樹脂が得られた(ナノメーターサイズの二酸化ケイ素の充填度:47.2%)。ナノ充填剤入り樹脂B−1及びB−2の場合とは対照的に、この樹脂の場合には、粒子の分離は発生せず、全ての粒子の粒径分布を動的光散乱法によって測定することができた(図2参照)。透明度は94.5%であり、24時間後の体積収縮率は7.3%であった。
ビスフェノールAジグリシジルメタクリレートとトリエチレングリコールジメタクリレートとの1:1混合物(259g)中へナノ充填剤B(約50g)を添加し、「ディスパーマット」を用いて1200rpmで90分間にわたって均質に混合させた。ナノ充填剤Bをさらに40g添加し、この混合物を1000rpmの条件下での分散処理に1時間付した後、500rpmの条件下での分散処理に一夜付した。全体で225gの該ナノ充填剤を30〜40gに分割して分散させた。次いで、カンフォールキノン、2−エチルヘキシル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート及び2,6−ビス−t−ブチル−4−メチルフェノールをそれぞれ0.16重量%、0.26重量%及び0.005重量%の濃度になるようにこの均質混合物中へ溶解させた。この操作により、非常に透明度の高い中粘度の充填剤入り樹脂が得られた(ナノメーターサイズの二酸化ケイ素の充填度:47.2%)。ナノ充填剤入り樹脂B−1及びB−2の場合とは対照的に、この樹脂の場合には、粒子の分離は発生せず、全ての粒子の粒径分布を動的光散乱法によって測定することができた(図2参照)。透明度は94.5%であり、24時間後の体積収縮率は7.3%であった。
図2は、ナノ充填剤入り樹脂Cの粒径分布を示す(動的光散乱法)。
ピーク1:平均値=35.2nm、幅=31.9%、振幅=77.2%
ピーク2:平均値=159.1nm、幅=17.5%、振幅=22.8%
図2から明らかなように、ナノ充填剤入り樹脂Cの粒子の50%よりも多くの粒子は100nm未満の粒径(d)を有する。
ピーク1:平均値=35.2nm、幅=31.9%、振幅=77.2%
ピーク2:平均値=159.1nm、幅=17.5%、振幅=22.8%
図2から明らかなように、ナノ充填剤入り樹脂Cの粒子の50%よりも多くの粒子は100nm未満の粒径(d)を有する。
以下の実施例1〜4においては、従来技術(参考例)又は本発明に従って調製した混成複合材について説明する。5種類のペーストは、同一のコンシステンシーを示すように感覚的に調整した。
実施例1(参考例):
「アエロシルR974」(デグッサ社製)6.0g及びシラン処理されたケイ酸バリウムガラス(平均粒径:1.0μm)130.7gを樹脂A(34.1g)と均質に混合した。次いで、この混合物を約200 mbar の条件下での脱ガス処理に約60分間付した。この操作によって、固体状の成形可能な光硬化性ペーストが得られた。混成複合材の組成及び特性をそれぞれ後記の表1及び表2に示す。
「アエロシルR974」(デグッサ社製)6.0g及びシラン処理されたケイ酸バリウムガラス(平均粒径:1.0μm)130.7gを樹脂A(34.1g)と均質に混合した。次いで、この混合物を約200 mbar の条件下での脱ガス処理に約60分間付した。この操作によって、固体状の成形可能な光硬化性ペーストが得られた。混成複合材の組成及び特性をそれぞれ後記の表1及び表2に示す。
実施例2−1(参考例):
シラン化処理したケイ酸バリウムガラス(平均粒径:1.0μm)70.6gをナノ充填剤入り樹脂B−1(50.0g)中へ均質に混合した。しかしながら、得られたペーストは固体状で砕けやすいために、さらに10.0gの樹脂Aを用いて希釈した。次いで、このペーストを約200 mbar の条件下での脱ガス処理に約60分間付した。この操作によって、固体状の成形可能な光硬化性ペーストが得られた。混成複合材の組成及び特性をそれぞれ後記の表1及び表2に示す。
シラン化処理したケイ酸バリウムガラス(平均粒径:1.0μm)70.6gをナノ充填剤入り樹脂B−1(50.0g)中へ均質に混合した。しかしながら、得られたペーストは固体状で砕けやすいために、さらに10.0gの樹脂Aを用いて希釈した。次いで、このペーストを約200 mbar の条件下での脱ガス処理に約60分間付した。この操作によって、固体状の成形可能な光硬化性ペーストが得られた。混成複合材の組成及び特性をそれぞれ後記の表1及び表2に示す。
実施例2−2(参考例):
シラン化処理したケイ酸バリウムガラス(平均粒径:1.0μm)60.8gをナノ充填剤入り樹脂B−2(50.0g)中へ均質に混合した。しかしながら、得られたペーストは幾分固めだったために、さらに1.0gの樹脂Aを用いて希釈した。次いで、このペーストを約200 mbar の条件下での脱ガス処理に約60分間付した。この操作によって、固体状の成形可能な光硬化性ペーストが得られた。混成複合材の組成及び特性をそれぞれ後記の表1及び表2に示す。
シラン化処理したケイ酸バリウムガラス(平均粒径:1.0μm)60.8gをナノ充填剤入り樹脂B−2(50.0g)中へ均質に混合した。しかしながら、得られたペーストは幾分固めだったために、さらに1.0gの樹脂Aを用いて希釈した。次いで、このペーストを約200 mbar の条件下での脱ガス処理に約60分間付した。この操作によって、固体状の成形可能な光硬化性ペーストが得られた。混成複合材の組成及び特性をそれぞれ後記の表1及び表2に示す。
実施例3(本発明):
シラン化処理したケイ酸バリウムガラス(平均粒径:1.0μm)105.5gをナノ充填剤入り樹脂C(50.1g)中へ均質に混合した。次いで、このペーストを約300 mbar の条件下での脱ガス処理に約60分間付した。この操作によって、固体状の成形可能な光硬化性ペーストが得られた。混成複合材の組成及び特性をそれぞれ後記の表1及び表2に示す。
シラン化処理したケイ酸バリウムガラス(平均粒径:1.0μm)105.5gをナノ充填剤入り樹脂C(50.1g)中へ均質に混合した。次いで、このペーストを約300 mbar の条件下での脱ガス処理に約60分間付した。この操作によって、固体状の成形可能な光硬化性ペーストが得られた。混成複合材の組成及び特性をそれぞれ後記の表1及び表2に示す。
実施例4(本発明):
「アエロシルR974」(デグッサ社製)6.0g及びシラン化処理したケイ酸バリウムガラス(平均粒径:1.0μm)95.6gをナノ充填剤入り樹脂C(54.1g)中へ均質に混合した。次いで、このペーストを約200 mbar の条件下での脱ガス処理に約60分間付した。この操作によって、固体状の成形可能な光硬化性ペーストが得られた。混成複合材の組成及び特性をそれぞれ後記の表1及び表2に示す。
「アエロシルR974」(デグッサ社製)6.0g及びシラン化処理したケイ酸バリウムガラス(平均粒径:1.0μm)95.6gをナノ充填剤入り樹脂C(54.1g)中へ均質に混合した。次いで、このペーストを約200 mbar の条件下での脱ガス処理に約60分間付した。この操作によって、固体状の成形可能な光硬化性ペーストが得られた。混成複合材の組成及び特性をそれぞれ後記の表1及び表2に示す。
以下の実施例5及び6においては、従来技術(参考例)又は本発明に従って調製した微小充填剤含有複合材について説明する。2種類のペーストは、同一のコンシステンシーを示すように感覚的に調整した。
実施例5(参考例):
「アエロシルR974」(デグッサ社製)14.0g及び粉砕チップポリマー(該チップポリマーはドデカンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート及びシラン化処理したアエロシルOX50を含む)86.1gを樹脂A(40.0g)中へ均質に混合した。次いで、このペーストを約300 mbar の条件下での脱ガス処理に約45分間付した。この操作によって、固体状の成形可能な光硬化性ペーストが得られた。微小充填剤含有複合材の組成及び特性をそれぞれ後記の表3及び表4に示す。
「アエロシルR974」(デグッサ社製)14.0g及び粉砕チップポリマー(該チップポリマーはドデカンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート及びシラン化処理したアエロシルOX50を含む)86.1gを樹脂A(40.0g)中へ均質に混合した。次いで、このペーストを約300 mbar の条件下での脱ガス処理に約45分間付した。この操作によって、固体状の成形可能な光硬化性ペーストが得られた。微小充填剤含有複合材の組成及び特性をそれぞれ後記の表3及び表4に示す。
実施例6(本発明):
実施玲5に記載の粉砕チップポリマー100.7gをナノ充填剤入り樹脂C(54.0g)中へ均質に混合した。得られたペーストは幾分固めだったために、12.4gのナノ充填剤入り樹脂Cを用いて希釈した。次いで、このペーストを約200 mbar の条件下での脱ガス処理に約60分間付した。この操作によって、固体状の成形可能な光硬化性ペーストが得られた。微小充填剤含有複合材の組成及び特性をそれぞれ後記の表3及び表4に示す。
実施玲5に記載の粉砕チップポリマー100.7gをナノ充填剤入り樹脂C(54.0g)中へ均質に混合した。得られたペーストは幾分固めだったために、12.4gのナノ充填剤入り樹脂Cを用いて希釈した。次いで、このペーストを約200 mbar の条件下での脱ガス処理に約60分間付した。この操作によって、固体状の成形可能な光硬化性ペーストが得られた。微小充填剤含有複合材の組成及び特性をそれぞれ後記の表3及び表4に示す。
以上の結果は、本発明による組成物を歯科材料に使用することによって、圧縮強さの増加、重合収縮率の低減及び耐摩耗性の改善がもたらされることを示す。
Claims (27)
- 充填剤入りの重合性歯科材料であって、下記の成分a)〜c)を含有する該歯科材料:
a)有機結合剤
b)次の特性 i)及びii)を有するナノメーターサイズの充填剤:
i)ナノ粒子の少なくとも50重量%(好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%)が200nm未満(好ましくは150nm未満、特に好ましくは100nm未満)の粒径を有する。
ii)ナノ粒子の少なくとも20粒子数%(好ましくは少なくとも30粒子数%、より好ましくは40粒子数%、特に好ましくは少なくとも50粒子数%)が凝結粒子である。
c)少なくとも1種の無機及び/又は有機充填剤であって、0.2μm〜50μmの平均粒径を有する粉砕充填剤及び0.1μm〜50μmの平均粒径を有する球状充填剤から成る群から選択される該充填剤。 - 有機結合剤a)を1〜99重量%(好ましくは5〜90重量%、特に好ましくは10〜80重量%)含有する請求項1記載の歯科材料。
- ナノメーターサイズの充填剤b)を0.1〜90重量%(好ましく1〜80重量%、特に好ましくは10〜60重量%)含有する請求項1記載の歯科材料。
- 無機及び/又は有機充填剤c)を0.1〜95重量%(好ましく1〜90重量%、特に好ましくは10〜80重量%)含有する請求項1記載の歯科材料。
- ナノメーターサイズの充填剤が有機化学的に表面改質された請求項1から4いずれかに記載の歯科材料。
- 粘度を調整するために、熱分解法ケイ酸及び/又は湿式沈降ケイ酸をさらに含有する請求項1から5いずれかに記載の歯科材料。
- 粘度を調整するために、0〜30重量%(好ましくは0〜20重量%、特に好ましくは0〜10重量%)の熱分解法ケイ酸及び/又は湿式沈降ケイ酸を含有する請求項6記載の歯科材料。
- 有機結合剤a)が、ラジカル重合性基及び/又はカチオン重合性基及び/又はアニオン重合性基、及び/又は縮合反応、付加反応及び/又は酸−塩基反応によって硬化をもたらす基を有する化合物群から選択される1種の化合物又は2種以上の混合物である請求項1から7いずれかに記載の歯科材料。
- ナノメーターサイズの充填剤b)が金属、半金属、混合金属酸化物、ケイ酸塩、窒化物、硫酸塩、チタン酸塩、ジルコン酸塩、スズ酸塩、タングステン酸塩、又はこれらの任意の混合物である請求項1から8いずれかに記載の歯科材料、
- ナノメーターサイズの充填剤b)が二酸化ケイ素である請求項9記載の歯科材料。
- 充填剤c)が球状充填剤、石英粉末、ガラス粉末、ガラスセラミック粉末、又はこれらの任意の混合物である請求項1から10いずれかに記載の歯科材料。
- 無機及び/又は有機充填剤c)が充填剤入り又は非充填剤入りのチップポリマー及び/又はビードポリマーである請求項1から10いずれかに記載の歯科材料。
- 無機及び/又は有機充填剤c)が表面改質されて該表面上に官能基を有し、該官能基が有機結合剤a)と化学的に反応するか、又は有機結合剤a)に対して高い親和性を有する請求項1から12いずれかに記載の歯科材料。
- さらに1種若しくは複数種の開始剤及び所望による1種若しくは複数種の共開始剤を含有する請求項1から13いずれかに記載の歯科材料。
- X線に対して不透過性である請求項1から14いずれかに記載の歯科材料。
- 請求項1から15いずれかに記載の歯科材料の補てつ歯学、保存歯学及び予防歯学において用いられる材料としての使用であって、例えば、歯の充填剤、断端の肉盛材料、仮のクラウンとブリッジ用材料、歯科セメント、接着剤、人口歯用材料、ベニア材料、封止材料及び歯科用ラッカーとしての該使用。
- 下記の工程a)〜d)を含む歯科材料の製造方法[但し、工程c)とd)はいずれの順序でおこなってもよく、あるいは同時におこなってもよく、また、工程b)は工程c)及び/又はd)の前におこなってもよく、あるいは工程c)及び/又はd)と同時におこなってもよい]:
a)次の成分a1)〜a4)を準備する:
a1)有機結合剤、
a2)少なくとも部分的に凝集及び/又は凝結したナノメーターサイズの充填剤、
a3)充填剤a2)の有機表面改質剤、及び
a4)少なくとも1種の無機及び/又は有機充填剤であって、0.2μm〜50μmの平均粒径を有する粉砕充填剤及び0.1μm〜50μmの平均粒径を有する球状充填剤から成る群から選択される該充填剤。
b)表面改質剤a3)を用いて充填剤a2)の有機表面改質をおこなう。
c)表面改質されたナノメーターサイズの充填剤の少なくとも50重量%(好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%)が200nm未満(好ましくは150nm未満、特に好ましくは100nm未満)の粒径を有するようになるまで該充填剤を有機結合剤中へ均質混合する。
d)充填剤a4)を有機結合剤中へ均質混合する。 - ナノメーターサイズの充填剤a2)の有機表面改質を有機結合剤中で直接的におこなう請求項17記載の方法。
- 工程b)において、付加的な機械的エネルギーを、好ましくは高速攪拌機、溶解機、ビードミル又はミキサーを用いて導入する請求項17又は18記載の方法。
- 有機結合剤a1)が、ラジカル重合性基及び/又はカチオン重合性基及び/又はアニオン重合性基、及び/又は縮合反応、付加反応及び/又は酸−塩基反応によって硬化をもたらす基を有する化合物群から選択される1種の化合物又は2種以上の混合物である請求項17から19いずれかに記載の方法。
- ナノメーターサイズの充填剤a2)が金属、半金属、混合金属酸化物、ケイ酸塩、窒化物、硫酸塩、チタン酸塩、ジルコン酸塩、スズ酸塩、タングステン酸塩、又はこれらの任意の混合物である請求項17から20いずれかに記載の方法。
- ナノメーターサイズの充填剤a2)が二酸化ケイ素である請求項21記載の方法。
- 有機表面改質において、有機結合剤a1)と化学的に反応するか、又は有機結合剤a1)に対して高い親和性を有する基を、ナノメーターサイズの充填剤a2)の表面上へ導入する請求項17から22いずれかに記載の方法。
- 有機表面改質のために使用する表面改質剤がシラン、クロロシラン、シラザン、チタン酸塩、ジルコン酸塩及び/又はタングステン酸塩である請求項17から23いずれかに記載の方法。
- 無機及び/又は有機充填剤a4)が球状充填剤、石英粉末、ガラス粉末、ガラスセラミック粉末、又はこれらの任意の混合物である請求項17から24いずれかに記載の方法。
- 無機及び/又は有機充填剤a4)が充填剤入り又は非充填剤入りのチップポリマー及び/又はビードポリマーである請求項17から24いずれかに記載の方法。
- 無機及び/又は有機充填剤a4)が表面改質されて該表面上に官能基を有し、該官能基が有機結合剤a1)と化学的に反応するか、又は有機結合剤a1)に対して高い親和性を有する請求項17から26いずれかに記載の方法。
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