JP2007505100A - 静水圧の適用による凍結保存生物学的材料の解凍後生存性の改善 - Google Patents

静水圧の適用による凍結保存生物学的材料の解凍後生存性の改善 Download PDF

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Abstract

本発明は、該生物学的材料に静水圧を適用し;該生物学的材料を静水圧に予め定めた時間維持し;静水圧を解放し;そしてこれに適用しうるいずれかのプロトコールを使用して該生物学的材料を凍結することを含む凍結保存生物学的材料の解凍後生存性を改善するための方法に関係する。この発明はまた凍結保存すべき生物学的材料を前処理するための加圧装置の使用、並びに凍結保存すべき生物学的材料を前処理するための加圧装置に関係し、該装置は生物学的材料を入れる加圧チャンバー、該圧を発生する手段、及び該チャンバー中に該圧力を維持する手段を含んでいる。

Description

技術分野
本発明は、凍結保存生物学的材料の解凍後生存性を改善する方法に関係し、その方法は該生物学的材料に静水圧を適用し、該生物学的材料を予め定めた時間その静水圧に保ち;静水圧を解放し;それに適用可能ないずれかのプロトコールを使用して該生物学的材料を凍結することからなる。また、本発明は、凍結保存される生物学的材料の前処理用の加圧装置の使用、並びに凍結保存される生物学的材料の前処理用の加圧装置に関係し、該装置は生物学的材料を入れる加圧チャンバー、該圧力を発生する手段、及び該チャンバー中に該圧力を維持する手段からなる。
背景技術
凍結保存の操作は、近年の生物学及びバイオテクノロジーの種々の分野において広範囲の目的で生物学的材料を保存するために十分に確立されている。
これらの方法は、極めて類似する基本的ステップをたどる:
1.生物学的材料を凍結保護剤(cryoprotective agents)含有溶液で処理する。
2.次のステップは生物学的材料を氷点下の温度に凍結することである。
3.そのように処理した生物学的材料を−非常に長期間であっても−低温において、例えば液体窒素中において保存する。
4.使用する前に、生物学的材料を温めて戻す。
5.生物学的材料から凍結保護剤を除去する。さらに、生物学的材料はその元来の生存能力を取り戻すためのステップを必要とするであろう。
凍結保存の操作は生物学的材料にとって有害であるので、上記の基本的プロトコールを改良するためにいくつかの方法が試みられてきた。超急速冷却及び加温速度により氷を形成させない方法、又は−80℃に冷却する間に平衡凝固点を徐々に低下することによる方法は、低温生物学のあらゆる分野に対して適する解決にはならなかった。凍結後の生存率改善の試みがなされた:凍結保護剤の高濃度水溶液が極めて低い温度に過冷却するガラス化において、細胞内ガラス化を可能にする(Rall及びFahy,1985)。Fahyら(1984)は、ガラス化を促進する可能性がある他の因子としてかなりの高い静水圧を使用する可能性について言及しているが、生殖生物学において殆ど実用的な成果が得られなかったとしている。他の研究は、相互に結合せずに(non−colligatively)水溶液の凍結温度を低下させ、膜のイオンチャネルを阻害し、これにより冷却の際にある程度防御に寄与する、抗凍結タンパク質(AFP)の使用を報告している(Baguisi et al.,1987)。記述されているいずれの方法においても、凍結保護剤の毒作用及び浸透圧変化の有害な結果は無視できない。
今のところ、これらの方法の種々の適用分野における有効性の程度はまちまちである。例えば、胚を保存する場合に、凍結保存の効率は種、凍結方法、胚の発生段階によって0〜80パーセントの範囲にある(Ishwar,1996;Van Wagtendonk−De Leeuw,1995,1997;Medeiro,2002;Reubinoff,2001;Hammitta,2003;Archer,2003;Stachecki,2002,Leibo and Songsasen,2002)。現在では通俗的問題であるヒト卵の凍結保存の成功率も充分満足するには程遠い。
1912年以来、水は、種々の温度において静水圧を受けたときに異なる相へ移行することが知られている(Bridgman,1911)(図7)。一定の圧力を溶液に適用することにより、溶液を零度以下の低温においても凍結させずに維持することができる(Bridgeman,1970)。既に、Nakahashiら(2000,2001)により、高い静水圧(HHP)が低温障害を減少させる目的で移植用のラット肝臓の零度以下の保存に使用された。この方法は、培地の氷点を実質的に低下させるために、HHPを使用して、低温保存の悪影響を伴わずに零度以下の温度において生物学的材料を保存する。この方法は、後記実施例2及び3に示されるように、本発明者らによりマウス胚の保存において信頼性に欠けることが見出されている。
30〜50MPaの範囲の静水圧は、種々の生物の生長を通常阻害する:DNA複製の開始は、最も圧力に対する感受性が高い細胞内過程の一つである(Abe et al.,1999)。その影響の程度は、圧縮の大きさと持続時間によりまちまちである(Murakami and Zimmerman,1973)。細胞膜は、圧力の障害を受ける主な部位であると記されている(Palou et al.,1997)。高静水圧処理は、能動輸送又は受動的透過性のような膜の機能を変化させるので、細胞の物理化学的バランスを乱す(Yager and Chang,1983; Aldridge and Bruner,1985;Macdonald,1987; Schuster and Sleytr,2002)。Routray et al.(2002)による最近の研究は、メダカ(Oryzias latipes)の卵と胚を使用して行った実験において静水圧(5MPa)はDMSOの取り込みを促進するが、生存能力は急速に失われることを示した。変化した圧力条件における物理的又は生化学的過程は、Le Chatelierの原理に従う:容積の減少を伴う反応は全てかなり加速される(Murakami and Zimmerman,1973;Welch et al.,1993;Palou et al.,1997)。圧力の適用は、部分的に又は完全にほどけたコンフォメーションを含むタンパク質の配座異性体の集団を生じることがある。圧力は、タンパク質内(intraprotein)の相互作用の破壊、キャビティーの開放と続く水の結合の複合作用によるタンパク質の変性を生じることができる(Schmid et al.,1975;Weber and Drickamer,1983;Jaenicke,1991;Gross and Jaenicke,1994;Silva et al.,2001)。
最近の報告は、静水圧がショックタンパク質の生産を増強することを述べている(Welch et al.,1993;Wemekamp−Kamphuis et al.,2002)。ある研究では、細菌における亜致死のコールドショックにより生じる正常タンパク質合成の不安定がいわゆるコールドショックタンパク質(CSP,HSP)の合成により克服されていると記述している(Phadtare et al.,1999)。CSP,HSPはRNAシャペロン(Graumann and Marahiel,1999)或いは転写活性化物質(LaTena et al.,1991)のような多くの機能を持つのではないかと考えられている;また、それらは凍結に対する防御の役割も果たしていると推定されている(Wouters et al.,1999)。他の研究では、CSP及びHSPの生産はコールドショックによって誘導されるだけでなく、他の環境のストレスによっても誘導されることが発見されている。例えば、E.coliにおいて一種のCSPが栄養ストレスにより生産される(Yamanaka et al.,1998)。他の試験では、高静水圧処理はある冷却誘発タンパク質及びヒートショックタンパク質の生産を引き起こすことが示された(Welch et al.,1993)。他の最近の報告には、静水圧はショックタンパク質の生産を増強することが述べられている(Wemekamp−Kamphuis et al.,2002)。コールドショック及び高圧処理はいずれもCSP及びHSPレベルを増加させるので、交差防御の可能性に関する試験が行われた。Wemekamp−Kamphuis et al.(2002)は、コールドショックを受けたListeria monocytogenesに圧力をかけた後の生存能力のレベルが、37℃で増殖した細胞のレベルよりも100倍高いことを発見した。
食品微生物学者は、有害微生物を殺すために上記方法を研究したが(Butz and Ludwig,1986;Wemekamp−Kamphuis et al.,2002; Spilimbergo et al.,2002)、本発明の目的は、凍結保存した生物学的材料の生存性の増強である。
最近、凍結保存におけるショックタンパク質の役割の研究がますます注目されている。Huang et al.(1999)は、ショックタンパク質、HSP90のかなりの減少はブタ精子の冷却の間の精子運動能の低下に関係する可能性があることを公表した。Wen−Lei et al.(2003)は、ヒト精子中のHSP90は凍結保存後にかなり減少し、これはタンパク質分解により生じている可能性があることを報告した。
まとめると、高静水圧により誘導されるHSP90は以下の通りである。
・ 細胞質タンパク質である。
・ ストレス耐性、タンパク質折りたたみ、シグナル伝達などに本質的役割を演ずる分子シャペロンである。
・ in vivo において真のクライアントタンパク質(anthentic client proteins)の活性化に必須である固有のATPアーゼを有することが知られている(Pearland Prodromou,2000)。
・以下のように精液運動能に関係する。
・一酸化窒素合成酵素(NOS)を活性化する(Garcia−Gardena et al.,1998)。
・冷却過程の間に有意に増加し、精子運動能を大きく害する活性酸素種(ROS)から細胞を保護する(Fukuda et al.,1996)。
・ATP代謝に関与する(Prodromou et al.,1997)。ATPレベルはコールドショックの後に低下し、その後回復しないであろう(Watson,1981)。
・ ブタ精液を冷却した後に精子運動能の低下と共にHSP 90は実質的に減少する。HSP 90はブタ精子運動能の調節に決定的な役割を演じている可能性があると結論されている(Huang et al.,1999)。
・ 特異的HSP 90阻害物質であるゲルダナマイシンは、用量と時間に依存する様式でブタ精液の精子運動能を有意に減少させる(Huang et al.,2000)。
ヒト精子中のHSP 90は凍結保存後、精子運動能と共に実質的に減少する;その減少は漏出によるものではなく、タンパク質分解の結果である(Wen−Lei CAO et al.,2003)。
一定のレベルを超えて圧力の効果が蓄積すると致死的となる:高圧においては一部の生物分子の不可逆的変化が起こるが、300MPaにおいては大部分の細菌及び多細胞生物は死ぬ。緩歩類は、活動状態では100から200MPaにおいて死ぬが、水を抜いた「たる」の状態(tun state)では600MPaまで生存することができる(Seki and Toyoshima,1998)。
本発明者らは驚くことに、静水圧の適用、次いで後記の技術態様による凍結保存プロトコールを適用することにより生物学的材料の生存性を有意に改善することができることを見出した。本発明の文脈において、生存性という語は、特に、(胚の場合には)インビトロ及びインビボにおいて継続する発育の改善、高い孵化率又は着床率及び出生率;(精子の場合には)解凍後の高い運動能及び/又は授精能力の改善;(卵母細胞の場合には)インビトロ及びインビボにおける継続した発育の改善、受精能力の改善、高い孵化率又は着床率及び出生率を意味する。この生存性という語は、扱われるほかの生物学的材料のタイプにより、他の種々の機能特性を包含できると、理解される。
この目的のために、一定のタイプの生物学的材料の耐圧性が確立され(実施例1,5及び6、参照)、次いで加圧される生物学的材料の生存性を改善する目的を達成するためにいくつかの技術態様コンセプトを検討した(実施例2及び3、参照)。次いで、本発明者らは、さらに種々のタイプの生物学的材料の圧力処理に対する影響を検討し、その目的を充たす革新的圧力適用方法を予期せず見出した。
この文脈において、われわれは、本発明のコンセプトは種々多数の凍結保存プロトコールに等しく適用され、その選択は本発明を制限しないことを強調しなければならない。改良プロトコールに含まれることが必要な唯一のステップは静水圧の適用のステップである;そのパラメーターは本明細書の教示に従って当業者により容易に最適化することができる
発明の要約
本発明は、凍結保存生物学的材料の解凍後生存性を改善する方法であって、
(a)予め定めた圧−時間プロフィールに任意に従い、該生物学的材料に静水圧を適用し;
(b)予め定めた時間該生物学的材料をその静水圧に保持し;
(c)静水圧を解放し;
(d)適用可能ないずれかのプロトコールを使用して該生物学的材料を凍結する、方法に関する。
一態様において、本発明による方法に使用される圧力は1から250MPaの範囲にある。好ましい態様において、圧力は好ましくは10から100MPaの範囲にあり、より好ましくは20から75MPaの範囲にあり、さらに好ましくは30から60MPaの範囲にある。
その他の態様において、本発明による方法において使用される静水圧は、1秒から300分の間の時間適用される。好ましい態様において、圧力は好ましくは1秒から150分の間の時間適用され、より好ましくは1秒から90分の間の時間適用され、さらに好ましくは1秒から60分の間の時間適用される。
他の態様において、本発明による方法は、1秒から4時間の間の時間をかけて徐々に圧力を解放することを含む。他の態様において、圧力を解放するための時間は、10秒から2時間の間であるか、又は1分から1時間の間であり、他の場合には10分から30分の間である。圧力の解放は瞬間的であっても良い。
好ましい態様において、本発明による方法は、脊椎動物の卵母細胞、精子、接合子、桑実胚、胚盤胞、胚、幹細胞、細胞又は組織からなる群から選択される生物学的材料に関して使用される。
他の好ましい態様は、該脊椎動物が魚類、鳥類又は哺乳類、好ましくはウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタその他の家畜、ペット、ヒトを含む霊長類である、方法に関係する。
本発明はまた、生物学的材料の加圧処理をするためであって、
・ 生物学的材料を入れるための加圧チャンバーと、
・ 1から250MPaの範囲、好ましくは10から100MPa、より好ましいのは20から75MPa、さらに好ましいのは30から60MPaの範囲の圧力を発生させる手段と、
・ 1秒から300分の間、好ましくは1秒から150分の間、より好ましくは1秒から90分の間、さらに好ましくは1秒から60分の間の時間該チャンバーに該圧力を維持するための手段と
を備える加圧装置に関する。
好ましい態様において、本発明は、
・ 圧力を発生させる該手段がピストンであり、該加圧チャンバーは該ピストンが挿入される筒状チャンバーであり、
・ チャンバーとピストンの間に高圧密封手段が施され、
・ 該ピストンに力を加えるための手動及び/又は自動で作動する手段が設けられている、
装置に関する。
他の好ましい態様において、本発明は、該ピストンに力を加えるための該手段が該ピストンに接する表面を持つプレート状の部品であり、そして該チャンバー内の該ピストンの位置を調節するための手段がある装置に関する。
他の好ましい態様において、この装置は、1秒から4時間の間の時間をかけて加圧チャンバーの減圧を調節するシステムを備える。
他の好ましい態様において、この装置は、チャンバーの圧力を示す圧力ゲージをさらに備える。
他の好ましい態様において、該加圧チャンバーは液状の媒体を含む。
特別の態様において、該加圧チャンバーは約10から25mmの厚さ、好ましくは20mm未満の厚さの壁を有し、該チャンバーは好ましくは100mm未満、より好ましくは50mm未満、特に好ましくは約20mmの内径、及び好ましくは250mm未満、より好ましくは100mm未満、特に好ましくは約200mmの内部の高さを有する。
他の好ましい態様において、本発明は、該生物学的材料が脊椎動物の卵母細胞、精子、接合子、桑実胚、胚盤胞、胚、幹細胞、細胞又は組織からなる群から選択される装置に関係する。
また、本発明は生物学的材料を圧縮するための加圧装置の使用に関する。
好ましい態様において、本発明は、該生物学的材料の凍結保存のための前処理として圧力が使用される加圧装置の使用に関する。
好ましい態様において、加圧装置の使用は、本発明の凍結保存方法のいずれも取り入れることができる。
好ましい態様において、本発明の使用は、生物学的材料を入れるのに適した加圧チャンバーと1から250MPaの範囲、好ましくは10から100MPa、より好ましくは20から75MPa、さらに好ましくは30から60MPaの範囲の制御された圧力を供給するための手段とを備える加圧装置を必要とする。
他の好ましい態様において、本発明の使用は、1秒から300分の間、好ましくは1秒から150分の間、より好ましくは1秒から90分の間、さらに好ましくは1秒から60分の間の時間該圧力を維持するための手段を備える加圧装置を必要とする。
好ましい態様において、本発明の使用は、1秒から4時間の間の時間をかけて加圧チャンバーの減圧を調節するために加圧装置と連結した制御システムの使用を包含する。
特別な態様において、本発明はまた、静水圧が加圧装置の中で発生される加圧装置の使用に関する。
他の好ましい態様において、本発明は、該生物学的材料が脊椎動物の卵母細胞、精子、接合子、桑実胚、胚盤胞、胚、幹細胞、細胞又は組織からなる群から選択される加圧装置の使用に関する。
本発明はさらに、生物学的材料の圧縮のための本発明による加圧装置の使用に関する。
発明の詳細な説明
本発明のコンセプトを明らかにするために、マウス胚を使用することにより本発明をさらに詳細に記述する。開示される方法は、この分野で日常的に凍結保存されている種々の生物学的材料の全ての種類に同等に適用されることは明白である。入手及び操作が容易であるために、詳細な検討の対象としてマウス胚が選択された。胚の凍結保存がその産業的及び医療上の利用価値のために凍結保存研究の最前線にあることは言うまでもないことである。しかし、本発明による方法において、そして同様にこの説明において、用語「マウス胚」は用語「生物学的材料」と互換的に使用することができる。本明細書においては、ウシIVF胚及びウシ精子についても実験データが提供され、これらは予期せざる解凍後生存性向上を示した。代表的生物学的材料としては、例えば、種々の哺乳動物種の着床前および着床後の胚、脊椎動物及びヒトの卵母細胞、精子、幹細胞、組織、器官、又は全身であっても良い。脊椎動物はいずれの種、例えば魚類、鳥類又は哺乳類、好ましくは、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタその他の家畜、ペット、ヒトを含む霊長類でも良い。
高度に発育した真核生物であるマウス胚は緩歩類及び細菌よりも静水圧の影響を受けやすい。したがって、最初の目的は、圧力下におけるマウス胚の形態及び生存率に関する基本的な特徴を把握することである。
本発明の方法を充分に検討するために、プロトタイプの装置を作製した。図8に示した加圧装置1を、下記実施例において考察される実験を実施するために使用した。
加圧装置1は、一つは上端に一つは下端にある2つの開口3,4を有し、そして上端開口3に圧力ケージ5を接続し、そしてピストン6が下端開口4から挿入されている筒状の加圧チャンバー2を備えている。圧力ゲージ5は、目的の圧力領域、すなわち1から250MPaの範囲、好ましくは10から100MPa、より好ましくは20から75MPa、さらに好ましくは30から60MPaの範囲の圧力を測定できれば、いずれかの適切なゲージでよい。加圧チャンバー2は内部の高さ約60mmと幅約20mmを有する。チャンバー2の壁7は、250MPa、好ましくは少なくとも75MPa、さらに好ましくは60MPaまでの圧力に耐えるように調節されている。チャンバー2の壁7は、好ましくは耐腐食性材料で作られており、それは好ましくはプラスチック又はステンレススチールである。下端の開口4での壁7の内側及びピストン6間の密封を増強するために、ピストンの周囲には、例えばテフロン(登録商標)リングシールのような圧力シール8が備えられている。そのような又は別の種類の圧力シール8は、圧力ゲージ5が取り付けられている上端の開口3にも使用されることが望ましい。下端開口を取り囲む壁7の部分は周囲に突き出て、フランジ9を形成する。加圧チャンバー2は、ピストン6を保持し、そしてチャンバー2の中へさらに押し込むためにさらに厚いキャップ10を装着している。キャップ10は、スクリュー11のような固定手段によりフランジ9に接着し得る。各スクリューの抗張力は、チャンバー2内の高圧による張力に耐えるために適切な高い値でなければならない。加圧チャンバー2は、加圧チャンバー2のさらに内側にピストンを押すことにより達成される比較的少しの圧縮の間に高圧を生じるのに適した媒体12で充たされている。該媒体は、高圧テクノロジーの分野に適用できる既知のタイプの非固体媒体12のいずれでも良い(液状又はゼラチン状の媒体12が好ましい)が、この研究には一般的な水が使用された。圧縮の間の媒体12の発熱を防ぐために、加圧チャンバー2の壁7は熱伝導性の材料で造られることが望ましい。
上記の加圧装置1は、本発明の改良冷凍保存方法を実施するための可搬手段を提供するような大きさで製造できることは、理解されるであろう。下記のサイズは例としてのみ役立つものであり、当業者は容易により大きい又はより小さいものを想像できることは理解される。加圧チャンバー2は、内側の高さHが60mmであり、内側の直径Dが20mmであり、これはピストン6の直径にも相当する。ピストン6の高さHはHに合わせて選択することができ、例えば、短い試験的装置では20mmであった。チャンバー2の壁7は約10mmの厚さDを持っている。ピストン6を取り巻く圧力シール8は5mmの高さH及び2mmの厚さDを持っている。フランジ9にキャップ10を固定するためのスクリュー11は8mmの直径Dを持つことができる。この大きさの市販のスクリュー11は800MPaの抗張力を持つことができ、これは200MPaまでの圧力を保証するのに充分である。装置の実際の大きさは、処理される生物学的材料及び装置の中へ生物学的材料を適用するために使用しうる手段に応じて設計することができる。
凍結保存するマウス胚の前処理の間、(胚を保持する適当な溶液を充たしたプラスチックストローの中に入れた)胚を加圧チャンバー2の中の液状媒体12の中に入れた(この媒体は通常の水である);ピストン6を下端開口4の中に余分の力を加えずに挿入し、ピストン6に接する位置でキャップ10をチャンバー2のフランジ9にスクリュー11により取り付けた。そしてそのピストンは媒体12を圧縮しない状態ではチャンバー2から部分的につき出ている。次いで、特別な実験を行うのに必要な圧力条件を達成するための速度と程度でスクリューを締め付けることにより(手動によるか又は自動的に締め付けて)、キャップを下端開口4の方向に締め付けて、ピストン6をさらに圧力チャンバー2の内側へ押しこんだ。チャンバー2の内部に発生した圧力は圧力ゲージ5により監視された。必要な時間が経過した後、チャンバーの減圧はスクリュー11を徐々に緩めることによるか、或いは上端開口から圧力ゲージ5を外して、半瞬間的に液状媒体12を膨張させることにより行われた。
チャンバーの中に胚を入れる方法はプラスチックストローに限定されない。特別な応用及び生物学的材料に応じて、処理する検体を種々の保持構造物に入れることができる。例えば、胚又は細胞をクリオループ(cryoloop)又は電子顕微鏡の格子の中に入れることができる。別の態様において、生物学的材料の入った保持溶液の液滴を単純に液状媒体12としての鉱物油で覆うこともできる。この場合に、容易に回収できるように立体顕微鏡下で操作できるように、加圧装置全体を小型化することができるであろう。肉眼で見える生物学的材料の場合には、特別な入れ物は必要でなく、検体はチャンバーの中に入れられ、そして液状媒体12自体が保持溶液になりうる。生物学的材料に高い静水圧の影響を及ぼすことができるチャンバーの中に生物学的材料を入れそして/又は保持する方法は、いずれも本発明の範囲内にある。
加圧装置1はプログラム化可能な制御システムを装着することにより完全に自動化することができる。該制御システムは、入力パラメーターとして以下を含むことができる:加圧速度、最大圧力での必要時間及び圧力解放速度。加圧チャンバー2の壁7に高い熱伝導性の材料を使用することにより有害な熱変動を充分に防ぎ得るかもしれないが、温度制御方法も使用することができる。温度制御方法は、凍結保存操作のワンステップ解決策となる一体型加圧−凍結装置として構想することもできる。その筋書きにおいて、加圧及び凍結の両者は自動化することができ、種々の生物学的材料の要求にしたがって加圧処理及び凍結をプログラムするための手段が装着される。
上記の試作機に極めて類似しそして生物学的材料を処理するための容易で簡単な方法を提供することができる携帯型装置も想像することができ、このステップを経て、該生物学的材料を保存するための容易に利用可能な技術に到ると思われる。そのようなアプローチは、遠隔地の開業医の助けとなり、また野生生物保存のような種々の目的に使用できるであろう。
種々の生物学的材料の耐圧性を調べるために、注意深く計画された実験が実施された。後の実用上の応用のために、使用された圧力及び時間の選択は最も幅広い範囲になるように設定された。例えば、図7に示されるように、水の相変化温度は0.1MPaにおける0℃から210MPaにおける−21℃まで加圧に伴って低下し、この圧力レベルを超えると逆の効果が観察される。したがって、本発明の方法に使用するための圧力は1MPaから250MPaの、或いは装置を運転する温度において媒体が凍結する点までの範囲が選択される。特に、拡大した胚盤胞期の胚に適用できる静水圧は、1,5,10,15,20,25,30,40,50,60,70,80,90,100,110,120,130,140,150,200又は250MPa、又はこの範囲内の中間のいずれかの値である。
静水圧は、予め定めた圧力−時間プロフィールに従って該生物学的材料に適用することができる。処理される生物学的材料によっては、材料に適用される圧力を時間をかけて徐々に増加させることができることは、当業者には理解されるであろう。所与の生物学的材料に適したプロフィールは経験的に決定することができ、それは直線的、段階的又はその他通常使用されている時間プロフィールでよい。
同様に、高い静水圧に維持される生物学的材料に対して幅広い時間間隔を選択することができる。より具体的には、マウス胚は、選択された圧力の下に、1秒から6時間の間、特に1秒、5秒、10秒、20秒、30秒、40秒、50秒、1分、2分、3分、4分、5分、6分、8分、10分、15分、20分、30分、40分、50分、60分、70分、80分、90分、120分、150分、180分、210分、240分、300分、又は360分の間維持される。圧力の下で胚が生存する時間は、圧力の増加に伴って減少する。
圧力前処理の終了と凍結保存の開始の間の時間は、特定の態様においてかなり異なることは、当業者によって理解される。所与のプロトコールにより、この時間枠内において、生物学的材料の状態は変化する可能性がある。充分に長い場合には、この時間内に細胞の物理的回復が可能になり、逆に、細胞内過程が始まり、例えばショックタンパク質の合成及び蓄積を生じることができるであろう。種々の環境において、この効果が有益であるか或いは有害であるかを証明することができる;したがって、これに関して実験によりプロトコールの最適化を行う必要があるであろう。
図1は、かなりの圧力(例えば、90MPaで1秒、又は30MPaで2時間)の下で、胚がその形態学上の外観的変化を生じることなく生存し得ることを示している。適用した圧力の大きさ及び時間により胚は圧縮した。理論により本発明の範囲を限定するものではないが、圧力は胚盤胞から水を搾り出す直接の原因になっていないことが想定される。引用した文献によると、胚の圧縮は、種々のタンパク質(コールドショックタンパク質、CSP)の圧力誘発生産、タンパク質構造及び代謝過程の可逆的変化の結果によるものであった。圧縮された胚(例えば、90MPaで30min又は30MPaで3hにより処理した胚)は、インビトロの培養の4〜5時間後に正常な形態を取り戻し、対照と同様な発育を再開できた。
理論により本発明の範囲を限定するものではないが、圧縮が最適の圧力前処理の条件ではないことを、IVFウシ胚を使用した試験により示すことができる。圧縮は、圧力により変化した膜透過性、細胞膜を介する拡散及び能動輸送の変化の結果であり得る。この形態の可逆的変化は、胚が「亜致死的」影響を受けたことを示す形態的「兆候」と考えることができる。文献によると、「亜致死的」ショックは、いわゆる「ショックタンパク質」の生産を誘発する影響であり、このショックタンパク質は凍結保存の成功率を改善する役割を担っていると考えられている。
しかし、一部の応用において、圧縮された胚は凍結保存のために好んで選択されることがある。加圧後、拡大した胚盤胞は圧縮された形となり、そして3〜4時間はこの形に止まり、その後再び拡大する。この現象に基づいて、凍結操作の前に圧力で処理された胚を選択することができる。圧力前処理による胚の形態的変化及び有益な効果は、タンパク質構造の変化及び/又は特性及び/又は種々の圧力誘発タンパク質の生産促進による可能性があるので、これらのタンパク質の検査は、凍結保存の前に生物学的材料に適用した高い静水圧の指標となりうる。
圧力前処理は、凍結保存後に胚が正常な発育を再開する時間ともある程度相関する。高い静水圧を使用することにより再生に必要な時間をかなり短くすることができるので、この過程を観察することにより前処理の性質を示すことができる。
圧力が高いほど、胚の生存時間は短い。一定の大きさと時間を超えた圧力の影響は不可逆的な変化を生じる:胚はインビトロ培養の2時間後に分解するか又は減圧後に既に分解している(例えば、90MPaで2時間又は30MPaで5時間により処理した胚)。当業者は使用した特別な生物学的材料に関して定型的実験によってこの限界圧力及び限界時間を決定できるはずである。
加圧した胚の生存性は徐々に減圧することにより高めることができることは理解されるであろう。ゆっくりと回復させられた場合には、加圧された胚の生存性は著しく増加することが試験により示された。90MPaにおいて60分では全ての胚に対して致死的であったが、120分をかけて徐々に減圧された場合には80%が生存した。減圧時間も本発明の特徴であり、それは特別な応用の観点から当業者により決定される。特に、選択された圧力の下に保たれたマウス胚は、1秒から4時間の間、特に1秒、5秒、10秒、20秒、30秒、40秒、50秒、1分、2分、3分、4分、5分、6分、8分、10分、15分、20分、30分、40分、50分、60分、70分、80分、90分、120分、150分、180分、210分又は240分で減圧される。圧力の適用と同様に、予め定めた圧力−時間プロフィールに従って減圧を行うことができるであろう。
再度、理論により限定するものではないが、圧力の下でかなりの量のCOが発生することはこの特徴の説明となる可能性がある(Abe and Horikoshi,1995)。COの水和とイオン化(HCO 及びH)の反応は適用した圧力の大きさに依存して体積の減少(#0.26ml/mol)を伴うので、この反応は上昇した圧力により促進される(Palou et al.1997,Welch et al.1993)。細胞内で生産された二酸化炭素は直ちに溶解し、次いで解離してHCO 及びHを生じるので、細胞内pHも低下する(Abe and Horikoshi 1995,1997,1998,Abe et al.1999)。上昇した圧力により維持される平衡は大気圧においては胚に対して致死的であると考えることができる。圧力の瞬間的な低下は、細胞質内で水和及びイオン化した形からCOの急激な放出を生じるので、胚の死亡を直ちに生じると、仮説することもできる。形質膜タンパク質(H−ATPase)は上昇した静水圧により可逆的に不活性化され

、一定の減圧時間の条件において、再び機能し始め(受動的拡散と共に)平衡を徐々に生理的状態の方向に移動させる。
高静水圧(HHP)は、既にNakahashi et al.(2000,2001)により、冷凍障害を減少させるために移植用のラット肝臓の零度以下の保存に使用されている。この方法は培地の凝固点を実質的に低下させるためにHHPを使用し、凍結保存の負の影響を受けずに零度以下の温度で生物学的材料を保存する。マウス胚の場合におけるこの凍結保存の方法を調べるために、0℃において胚に圧をかける試験が計画された。胚の生存率は有意に減少した。胚は室温(RT)においては30MPaで45分間において90%の平均生存率であったが、0℃における同じ衝撃は胚を全く生存させなかった。0℃において10分又は5分後に、60MPa及び90MPaのいずれにおいても、胚生存率は0%であった。これに対して、室温において、いずれの場合にも生存率は約90%であった。0℃において胚に圧力をかけ、そして徐々に減圧した。低温において徐々に減圧することは、胚生存性に対して有益な効果をもたらさなかった。これらの結果に基づくと、圧力及び低温は共に胚に対して致死性であることが示されたので、これらの現象の利用はこの形態においては適用できない。
本発明は、静水圧を適用することにより凍結保存マウス胚盤胞の解凍後の生存性を改善することに関係する。これは、圧力を加えた胚を、いずれかの凍結保存プロトコールにより処理し、解凍した後に、培地及び/又は偽妊娠レシピエントに移すことにより、評価することができる。インビトロにおける発育、着床及びさらに子宮内発育及び健康な子供の出産は、その生物学的及び遺伝子的能力の明らかな証明である。
前記で詳細に開示したように、凍結保存した拡大したマウス胚盤胞の生存率は、凍結操作の前の一定の圧力処理により改善することができる。60MPaで30分間の圧力衝撃が胚盤胞に適用され、それにより約80%から90%の胚は圧縮され、生存性は非処理対照と相違はなかった。インビトロ評価の結果によると、適用した圧力処理は凍結後の胚のインビトロ発育を著しく改善する。インビトロ試験は、静水圧適用は処理された胚盤胞の生存率を改善するのみならず、本来の状態に回復するために胚が必要とする回復時間も改善することを示した。われわれの代表的試験において、6時間後圧力処理した胚盤胞の98%は形態的に(直径、構造的完全さ、及び一般的形態)対照胚と正確に一致し、胚盤胞の95%は対照と共に20時間以内に完全に孵化した。圧力処理をせずに凍結した胚は、解凍後20時間にやっと再拡大したのみであった。再拡大した胚盤胞の率は圧力処理を受けたものに対して有意に劣った(46%vs.98%)。さらに、この群では孵化した胚はなかった。したがって、本発明の方法は高い生存能力のあるマウス胚を得るのに適していることは明らかである。
[実施例1〜4で用いる材料と方法]
実験動物及び胚の作製
CB6F1(Charles River,Germany)マウスを標準的条件下(22+/−2℃;12時間暗/12時間明;水と餌は自由摂取)で飼育した。
10 IUのPMSG(Sigma,USA)及びその46時間後に10 IUのhCG(Sigma,USA)を雌に腹腔内注射して過排卵させた。hCG投与の6時間後に、雌を繁殖力のある雄と一雌一雄で交配した。卵管にFertiCult Flushing Medium(FertiPro N.V.,Belgium)を流して1から2細胞期の胚(0日目及び1日目)を採取した。5%COを最大湿度の空気中、37℃の恒温器中で胚を培養した。一細胞から緊密化した桑実胚段階の間、胚を鉱物油、Ovoil(Vitrolife,Sweden)の下のG1.2培地(Vitrolife,Sweden)中で培養した。次いで、胚を移し、拡大した胚盤胞になるまでOvoil下のG2.2(Vitrolife,Sweden)中で培養した。
加圧
胚盤胞をM2(Sigma,USA)と共に気泡を入れずにプラスチックストロー(7〜9個の胚/ストロー)に入れ、ストローをヒートシールした。ストローを、加圧媒体として水を充たした加圧チャンバーに入れた。1から150MPaの範囲で正確に圧力を調節できる特製の加圧装置は、内径2cmのステンレススチール製であり、圧力ゲージが装着されていた。手動でスクリューを調節して、加圧チャンバーの中にピストンを押し込むことにより静水圧を発生させた。必要とする圧力に達するまでに20秒から5分間を要した(それぞれ10MPaから150MPa);圧力解放の所要時間は3秒であった。緩徐な減圧の影響を調べる実験では、解放時間は30〜210分の間であった。0℃において行った実験では、加圧チャンバーをBio−cool(FTS−Systems,NY,USA)の冷却浴中に浸した(simmered)。
予め加圧を行った凍結保存
胚を無作為に3グループに配分した。グループIの胚盤胞は、Nowshari and Brem(1998)にしたがって7Mエチレングリコール(EG)を含有するガラス化溶液中で、下記のように凍結保存した。グループIIの胚は、60MPa加圧30分間で処理した後、同様に凍結した。グループIIIは無処置対照とした。解凍後、胚をインビトロで24時間培養した。
凍結保存
M2(Sigma,USA)中1.5Mエチレングリコール(EG)(Sigma,USA)及び0.25Mスクロースを含む溶液に10%ウシ胎児血清(FCS)(Sigma,USA)を添加した溶液中で胚を5分間平衡させ、次いで胚を0.25mlプラスチックストローに予め充填したガラス化溶液(10%FCS添加M2中7M EG,0.5Mスクロース)中に移した(7〜9個の胚/ストロー)。最後に、ストローをヒートシールした。ガラス化溶液に暴露して1分後、ストローをゆっくりと液体窒素に浸した。ストローを30℃の水に30秒間移して解凍し、次いで胚を回収し、再水化培地(10%FCS添加M2中0.5Mスクロース)中に5分間置いた。次いで胚を、上記のように、G2.2培地中で培養した(Nowshari and Brem,1998)。
胚の移植
胚を上記のようにG2.2中で2時間培養した。次いで、各実験グループ毎に「死亡」及び「生存」に分け、擬妊娠3日目のレシピエントに別々に移植した(動物当たり7〜12個の胚)。非処理の胚盤胞は、対照として移植した。
評価及び統計解析
圧力解放又は解凍の直後並びに2,3,4,6,12,20及び24時間後に胚の質を検査した。胚の生存は、形態的外観によって評価した:割球の完全さ、胞胚腔の再拡大、透明帯からの孵化は生存の徴候であった。非処理胚盤胞を対照として使用した。
インビボ評価のために、加圧した胚をG2.2中で上記のように2時間培養した。次いで、動物当たり7〜12個の胚を擬妊娠3日目のレシピエントに移植した。非処理胚を対照として移植した。健康な子供の出産を胚のインビボにおける生存の証明とした。
生存率は、カイ二乗検定により対照と比較した。
[実施例1]
室温における種々の圧力におけるマウス胚の生存率
本実験では、室温において1秒から300分までの種々の時間、10から150MPa(10MPa間隔で)の種々の静水圧に、胚を暴露した。
一定の圧力及び時間を超えた処理は可逆的な形態変化を生じた(図1)。拡大した胚盤胞は透明帯の内側に圧縮され、胞胚腔は消失し、割球の大きさは減少したが、その構造上の状態は不変であった。インビトロ培養の4〜5時間後、これらの胚盤胞は再拡大し、24時間で透明帯から孵化した(a)。より少ない衝撃を受けた胚は形態的変化を示さず、インビトロ培養の24時間以内に孵化した(b)が、一方より大きな衝撃を受けた胚は圧縮された状態から再拡大せず、2時間以内に分解したか、又は減圧後に既に分解していた(c)(図1)。
インビボ評価のために、加圧した胚は、減圧後のインビトロ培養の2時間後に、「生存」(a+b)及び「死亡」(c)を判定し、レシピエントに別々に移植した。移植した「a」及び「b」の胚170個のうち健康な145匹(85%)の新生児が生まれたが、49個の「c」胚からの新生児はなかった(0%)。
孵化率(インビトロ)及び出生率(インビボ)について、非加圧対照と加圧による圧縮胚「a」及び非圧縮胚「b」との間に有意差はなかった(p<0.05)。
圧力が高くなるほど、胚の生存する時間は短くなるが、胚はかなりの圧力の下で生存率を変化させずに生存できることをこの結果は示している(図1)。インビトロ培養において2時間以内に分解しない胚は、非処理対照と同じインビトロ及びインビボ生存率を示す。
[実施例2]
種々の減圧プロフィールを使用した後のマウス胚の生存率
本実験において、われわれは、加圧した胚の生存率を緩徐な減圧により改善することができるか否かを検討した。
拡大した胚盤胞を90MPaに30,60及び120分間維持し(この条件において、室温における瞬間的減圧の生存率はそれぞれ50%,0%及び0%であった)、次いで圧力を30,60,90,120及び150分間に9ステップで徐々に解放した。その結果は、徐々に減圧することにより生存率は有意に改善することができること、その最適範囲は胚が圧力下に存在した時間に依存することを示している。最適の復帰時間は、胚が圧力下に存在した時間が長くなるほど長くなった。減圧によって達成された最大生存率は、加圧時間の増加にしたがって減少した(図2)。
インビトロ評価における「生存」胚54個及び「死亡」胚35個をレシピエント9匹に移植した。18日目の検査で、「生存」胚54個のうち47個が着床した(87%)が、「死亡」胚35個のうち着床した胚はなかった。「生存」グループの着床率は対照の率と差がなかった(p<0.05)。
[実施例3]
低温における種々の圧力によるマウス胚の生存率
この実験において、加圧した胚の生存能力に関する温度の役割を検討した。
低温(0℃)において、30,60及び90MPaの圧力を1秒、5,10,15,30及び60分間胚に適用した。非加圧胚は、0℃においてその生存率に有意な変化なしに、かなりの時間生存することができるが、同時に30,60,90MPaで圧力処理した場合には、45,10,5分間後にそれぞれ100%の胚致死率であった。室温で処理した群に比較して、低温において加圧した胚において有意に低下した生存率が観察された(p<0.01)(図3a,3b)。
インビトロ評価における「生存」胚40個及び「死亡」胚28個をレシピエント7匹に移植し、18日目の検査において「生存」胚40個のうち34個(85%)が着床し、「死亡」胚28個では着床したものはなかった。「生存」グループの着床率は対照の率と差がなかった(p<0.05)。
0℃において90MPaの圧力下に30分維持された胚も徐々に減圧した。われわれが使用した回収時間のいずれにおいても(30,60,90,120,150,180分)、生存した胚はなかった。各群8から12個の胚を使用し、実験を3回繰り返した。
[実施例4]
加圧処理、凍結及び解凍後のマウス胚の生存率
本実験において、われわれは、凍結操作の前に加圧処理を行うことにより拡大したマウス胚盤胞の凍結保存後の生存率を改善できるか否かを探求した。結果を表1に示す。
表1.予め加圧処理して/しないで凍結保存した胚の解凍後の生存性

異なる上付き文字のついた値は相互に有意差がある(p<0.01)。
加圧グループと非加圧グループの生存率間に有意差が観察された(p<0.01)。凍結保存前に加圧処理を受けた胚において、再拡大はより早く(4〜6時間対20時間)そして生存率はより高かった(98%対46%)(表1)。対照グループと加圧処理グループの間に生存率及び孵化率の有意差はなかった。
[実施例5]
加圧処理、凍結及び解凍後のウシ胚の生存性
(材料と方法)
卵母細胞採取及びインビトロ成熟(IVM)
化学薬品は、特記しない限り、EMBRAPA(Brasilia,Brazil)から購入した。卵巣を屠殺場から集め、生理食塩水の中に35〜37℃に保った。18G針を付けた20mlシリンジを使用して2〜10mmの小胞を吸引して卵丘卵母細胞複合体(Cumulus−occyte capkxs)(COC)を採取し、50ml遠心分離用試験管に集めた。10分間沈降後COCを吸い取り、ウシ胎児血清(FCS)、ペニシリン、ストレプトマイシン及びヘパリン(Sigma,H3149)を添加したTCM−199Hank’s(Gibco)の入ったペトリ皿に移した。採取後、COCを熟成培地(FCS,LH(Sigma),FSH(Sgma)、L−グルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシンを添加したTCM−199 Earl’s)中で3回洗い、2mlの熟成培地に移し(ペトリ皿当たり約100個のCOC)、鉱物油で覆った。5%CO及び最高湿度、38℃で22時間卵母細胞を成熟させた。
精子の調製、試験管内受精(IVF)及びインビトロ培養(IVC)
IVFのために、COCを受精培地で3回洗った後、4滴の200μlの受精培地(BSA、ペニシリン−Sigma P4875,ヒポタウリン−Sigma H1384,エピネフリン−Sigma E4250及びヘパリン−Sigma H3149を添加したTALP)を入れたペトリ皿に20〜25個のグループとして移し、鉱物油で覆った。自発運動能を有する精子は、Percoll不連続密度勾配(2mlの90%Percoll上2mlの45%Percoll)上、室温において700g20分間凍結解凍精子(Genton,Cuiaba,Brazil)を遠心分離して得た。90%フラクションの底に集められた精子のペレットを、HEPES−緩衝Tyrode液で洗い、700g5分間遠心分離してペレットにした。精子数を血球計数装置で測定し、適当な容量のTALPで希釈して、精子濃度を2x10/mlとした:この懸濁の200μlを各受精滴に加えた。プレートを19時間、5%COを加えた加湿した空気中、39℃でインキュベートした。次いで推定接合体を鉱物油下のSOF滴中で5%COの加湿空気中において、39℃で培養した。
加圧
拡大した胚盤胞を胚保持媒体(Emcare Holding,Emcare,New Zealnd)と共に、気泡が入らないようにして0.25mlプラスチックストローに入れ(7〜9個の胚/ストロー)、次いでPVCでストローをシールした。圧力媒体として水を充たした加圧チャンバーにストローを入れた。上記のように、室温において、60から90MPa(10MPa間隔で)の種々の静水圧に種々の時間(15,30,45,50,60,90,100分間)胚を暴露した。
予め加圧した凍結保存
胚を無作為に3グループに分配した。グループIの胚盤胞は、1.5Mエチレングリコール(EG)を含有する凍結溶液中で、下記のように凍結保存した。グループIIの胚は80MPaの圧力で50分間処理して同様に凍結した。凍結開始と加圧処理の間の時間は4〜5分であった。グループIIIは非処理対照とした。解凍後、胚を24時間インビトロで培養した。
凍結保存
0.25mlプラスチックストローに予め充填した1.5Mエチレングリコールからなる凍結溶液(Emcare,New Zealnd)中で8分間胚盤胞を平衡させた(7〜9個の胚/ストロー)。ストローをPVCでシールした。ストローを、−5.2℃に予め冷却したプログラム可能なフリーザー(Bio−cool,FTS−Systems,USA,NY)に入れた。3分後、植氷(seeding)を誘導した。その10分後ストローを−0.5℃/minで−32℃に冷却し、次いでそれを液体窒素中に浸漬した。ストローを空気中で10秒間ゆっくりと動かし、次いでストロー内の氷が解けるまで35℃の水中にストローをおいて解凍した。胚盤胞をストローから回収し、3回SOFで洗い、鉱物油下のSOFに移し、24時間インキュベーターに戻した。
評価及び統計解析
胚の質は、圧力の解放又は解凍の直後並びにその2,3,4,6,12及び24時間後に検査した。胚の生存は、形態的外観及びインビトロ発育の継続により評価した;胚盤胞の完全さ、胞胚腔の再拡大、及び透明帯からの孵化は生存の徴候であった。非処理胚盤胞を対照として使用した。
生存率をカイ二乗検定により対照と比較した。確率値p<0.05を統計的に有意とした。
(結果)
種々の加圧処理後の胚の生存性及び継続成長
最初の実験のセットにおいて、胚は種々の静水圧に種々の時間暴露された。結果を下記表2に示す。
表2.予め加圧処理して/せずに凍結保存したウシ胚の凍結解凍後の生存性

I−II:完全に又は2/3再拡大した第一又は第二のクラスの胚;III−IV:第三クラス又は死亡の胚
加圧前処理を行って或いは行わずにガラス化した胚盤胞の継続的インビトロ発育
二番目の試験において、われわれは、インビトロで成熟し/受精し/培養され拡大した後凍結保存されたウシ胚盤胞の継続的インビトロ発育が、凍結操作前に加圧処理することにより改善されるか否かを探求した。8〜12個の胚を各実験グループに使用し、実験を6回繰り返した。結果を表3に示す。
加圧グループと非加圧グループの間に、インビトロ生存率の有意差が認められた(p<0.01)。凍結保存前に加圧処理を受けた胚において、再拡大は早く(1〜2時間対4〜6時間)そして生存率は高かった(81%対41%)(表3)。生存率及び孵化率について、対照と加圧処理グループの間に有意差はなかった。
表3.加圧前処理をして/せずに凍結、解凍をした後のIVMFCウシ胚盤胞のインビトロ発育の継続

I−II:完全に又は2/3再拡大した第一又は第二のクラスの胚;IV:死亡の胚
(結論)
われわれの結果は、凍結に先立って加圧処理を施すことにより、IVMFC(卵母細胞のインビトロ成熟、インビトロ受精、胚のインビトロ培養)ウシ胚のインビトロ発育の速度、生存率及び孵化率を改善できることを示した。この試験は、圧力の刺激が凍結保存の成功に大いに貢献できることを示すさらなる証拠を提供する。上記実験に示された方法は、全範囲の生物学的材料、特に種々の起源の胚、例えばウマ、ヒツジ、ブタ又はヒトを含む霊長類に容易に適用できることは理解される。
[実施例6]
加圧処理、凍結及び解凍後の精子の生存性
本実験の最初の部分において、新鮮ウシ精液中の自発運動能力のある細胞の比率にHHPがいかに影響するかを記述することを意図した。実験の第二の部分では、われわれは、作成された圧力−時間−精子運動能力チャートから4パラメーター対を選択し、選択した圧−時間パラメーターで前処理した凍結ウシ精液の解凍後運動能力を加圧前処理を行わずに凍結した精液と比較した。
精液の検体はKlessheim,Austriaの人工授精センターで入手した。処方にしたがって、検体をAndroMed extender(MiniTub,Germany)で希釈して8x10/mlの精子濃度にした。希釈した精子を0.25mlストローに充填し、室温に保った。加圧処理の前に、精子検体の入ったストローを切って二分した。半分の一方はヒートシールして、特定の圧力/時間パラメーターで加圧し、他の一方は加圧後の運動能力を比較するために使用した。各圧力/時間パラメーターにおける実験は7回繰り返し、二人のアシスタントにより別々に光学顕微鏡検査により運動能の変化を個別に評価した。処理グループには次のようなパラメーターを適用した:10MPaで30,60,90及び120分間;30MPaで30,60,90,120及び510分間;50MPaで30,60及び90分間;70MPaで30,60及び90分間;90MPaで30,60,90,120及び510分間。加圧装置は特注のステンレススチール製であり、圧力媒体として水を使用する加圧チャンバー、当局承認圧力ゲージからなっていた。必要な圧力に達するまでの時間は1から5分であり、減圧には2から3秒を要した。
対照検体の平均運動能力は75から90%の範囲であり、一方加圧検体の平均運動能力は55%(90MPa/120分間)から84%(10MPa/30分間)の範囲であった。30MPa/510分間及び90MPa/510分間のグループの運動能は他の加圧グループに比較して有意に低下した(それぞれ27%及び33%;p<0.05)。図4参照。
この試験の第二部において、精液検体は二頭の雄牛から得た(1頭は非常に低い凍結能の経歴(a history of very poor freezability)があった)。検体は上記のように希釈し、4つの処理グループに分けた。処理グループは次のように分けた:半分はヒートシールし、そして、凍結の前にI:90MPa/30分間;II:90MPa/90分間;III:30MPa/30分間;IV:30MPa/90分間の条件で加圧し、他の半分は前処理せずに同じ凍結プロトコールで凍結した(5℃で60分間平衡し、次いで−110℃に10分間、次いで液体窒素に浸漬した)。解凍は35℃の水浴中30秒で行った。各グループについて、加圧を行った場合と行わなかった場合の最初の運動能力についても検査した。各試験は8回繰り返した。
両雄牛の精子の最初の平均運動能力は65から80%であったが、加圧後には45から75%に減少した。両雄牛の精子の解凍後の平均運動能力は、予め加圧処理せずに凍結した検体に比較して予め加圧処理をして凍結した検体において有意に優れていた(p<0.001)(雄牛I:加圧処理なし2〜3%対加圧処理17〜33%−図5;雄牛II:加圧処理なし0%対加圧前処理21〜35%−図6)。使用したパラメーターの中では、30MPa/90分間が有意に優れることが立証された(33及び35%,p<0.05)。
本試験は、われわれの実験において凍結保存した雄牛の精子の解凍後運動能力に対する加圧前処理の有益な影響を明らかに示している。この試験は、圧力の刺激が凍結保存の成功に大いに貢献できることを示す更なる証拠を提供する。上記実験に示された方法は、全範囲の生物学的材料、特に種々の起源の精子、例えばウマ、ヤギ、ブタ又はヒトを含む霊長類に容易に適用できることは理解される。
産業への応用
上記の実施例に示された結果は、凍結保存の前に適用した加圧処理が、胚のインビトロ成長速度、生存率及び孵化率を明らかに改善することを示している。したがって、そのような努力の全ての最終目的、即ちより多くの子孫の発生を達成することができる。また、ウシ胚及び雄牛精子に関して示したデータは、生物学的材料の凍結保存に関する発明概念の幅広い応用を示している。本発明による方法の応用は、他の哺乳類動物種(ヒトも除外しない)、並びに卵母細胞、胚性幹細胞、組織などを含めたあらゆる種類の胚の凍結保存及び胚−操作の成功率の改善に有用である。本方法は、生物学的材料の凍結保存の適用が見られるほかの分野にも幅広く適用可能である。
引用文献



図1は、室温において、10MPaから150MPaの間(10MPa間隔)の種々の圧力における種々の時間(1秒、5分、15分及び30分から300分まで30分間隔)の胚の生存率を示す。各群14〜16個の胚が使用された;各実験は3回繰り返した。「a」及び「b」と表示した部分の中の胚の生存率は未処理の対照と差がなかった(p<0.05)。 図2は、90MPaで30、60、120分間加圧し、そして30〜180分間で減圧した胚の生存率を示す(30、60及び120分における瞬間減圧による生存率は、それぞれ50%、0%、0%であった)。種々の上付きの文字が付けられた生存率は互いに有意差があった(p<0.05)。 図3aは、室温において、30、60及び90MPaで1秒から45分間加圧された胚の生存性を示す。 図3bは、0℃において、30、60及び90MPaで1秒から45分間加圧された胚の生存性を示す。各群12〜15個の胚が使用された;各実験は3回反復した。室温において加圧された群と0℃において加圧された群の間に有意差が認められた(p<0.01)。 図4は、精子運動能の平均値(加圧及び対照)を示す。 図5は、雄牛Iの精子の加圧及び凍結−解凍後の平均運動能を示す。 図6は、雄牛IIの精子の加圧及び凍結−解凍後の平均運動能を示す。 図7は、種々の圧力における水の凝固点を示す。 図8は、本発明による加圧装置の一例の断面図を示す。

Claims (23)

  1. (a)任意に予め定めた圧力−時間プロフィールに従って生物学的材料に静水圧を適用し、
    (b)該生物学的材料を、予め定めた時間静水圧に保持し、
    (c)静水圧を解放し、
    (d)それに適用可能な任意のプロトコールを使用して該生物学的材料を凍結する、凍結保存生物学的材料の解凍後生存性を改善する方法。
  2. 前記静水圧が、1から250MPa、好ましくは10から100MPa、より好ましくは20から75MPa、さらにより好ましくは30から60MPaの範囲にある、請求項1に記載の方法。
  3. 前記静水圧が、1秒と300分の間、好ましくは1秒と150分の間、より好ましくは1秒と90分の間、さらにより好ましくは1秒と60分の間の時間適用される、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記圧力が、1秒と4時間の間の時間をかけて徐々に解放される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記生物学的材料が、脊椎動物の卵母細胞、精子、接合子、桑実胚、胚盤胞、胚、幹細胞、細胞又は組織からなる群から選択される、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記脊椎動物が、魚類、鳥類又は哺乳類、好ましくはウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタその他の家畜、ペット、ヒトを含む霊長類である、請求項5に記載の方法。
  7. 生物学的材料を入れるための加圧チャンバーと、
    1から250MPa、好ましくは10から100MPa、より好ましくは20から75MPa、さらにより好ましくは30から60MPaの範囲の圧力を発生させる手段と、
    1秒と300分の間、好ましくは1秒と150分の間、より好ましいくは1秒と90分の間、さらにより好ましくは1秒と60分の間の時間、該チャンバーの中の該圧力を維持する手段と
    を備える生物学的材料を加圧処理するための加圧装置。
  8. 前記圧力を発生させる手段がピストンであり、前記加圧チャンバーが前記ピストンを入れるシリンダー状チャンバーであり、
    該チャンバーと該ピストンの間に高圧をシールする手段が施されており、
    該ピストンに力を加えるための手動及び/又は自動の作動手段が設けられている、請求項7に記載の装置。
  9. 前記ピストンに力を加える手段が、前記ピストンに接する表面を持つ板状部品であり、前記チャンバー内の該ピストンの位置を調節する手段がある、請求項8に記載の装置。
  10. 1秒と4時間の間の時間に亘って加圧チャンバーの減圧を調節するシステムを含む、請求項7から9のいずれかに記載の装置。
  11. 前記チャンバーの前記圧力を示すための圧力ゲージをさらに含む、請求項7から10のいずれかに記載の装置。
  12. 前記加圧チャンバーが液状媒体を含む、請求項7から11のいずれかに記載の装置。
  13. 前記加圧チャンバーが、厚さ約10から25mm、好ましくは厚さ20mm未満の壁を有し、該チャンバーが、好ましくは100mm未満、より好ましくは50mm未満、特に好ましくは約20mmの内径を有し、且つ好ましくは250mm未満、より好ましくは100mm未満、特に好ましくは約200mmの内側の高さを有する、請求項7から9のいずれかに記載の装置。
  14. 前記生物学的材料が脊椎動物の卵母細胞、精子、接合子、桑実胚、胚盤胞、胚、幹細胞、細胞又は組織からなる群から選択される請求項7から13のいずれかに記載の装置。
  15. 前記生物学的材料を圧縮するための加圧装置の使用。
  16. 前記該生物学的材料の凍結保存のための前処理として加圧が使用される、請求項15に記載の使用。
  17. 請求項1から6のいずれかに記載の凍結保存のための請求項16に記載の使用。
  18. 前記加圧装置が、生物学的材料を入れるのに適した加圧チャンバーと、1から250MPa、好ましくは10から100MPa、より好ましくは20から75MPa、さらにより好ましくは30から60MPaの範囲の調節された圧力を供給する手段とを備える、請求項15又は17に記載の使用。
  19. 前記加圧装置が、1秒と300分の間、好ましくは1秒と150分の間、より好ましいくは1秒と90分の間、さらにより好ましくは1秒と60分の間の時間、前記チャンバー内の前記圧力を維持する手段を備える、請求項18に記載の使用。
  20. 1秒と4時間の間の時間に亘って加圧チャンバーの減圧を調節するための制御システムを備える、請求項15から19のいずれかに記載の使用。
  21. 静水圧が前記加圧装置内で達成される、請求項15から20のいずれかに記載の使用。
  22. 前記生物学的材料が、脊椎動物の卵母細胞、精子、接合子、桑実胚、胚盤胞、胚、幹細胞、細胞又は組織からなる群から選択される、請求項15から21のいずれかに記載の使用。
  23. 生物学的材料の圧縮のための請求項7から14のいずれかに記載の加圧装置の使用。
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