まず、図1〜図3を参照すると、本発明に係るCMMを、10に、概括的に示す。CMM10は、マルチジョイント式の、手動で操作される、多関節アーム14であって、一方の端部が、基部12に連結されており、もう一方の端部が、測定プローブ28に連結されている多関節アーム14を備える。アーム14は、基本的に、2種類のジョイント、すなわち、ロング(長い)ジョイント(スイベル動作を得るため)およびショート(短い)ジョイント(ヒンジ動作を得るため)で構成されている。ロングジョイントは、アームに沿って、実質的に軸方向に、つまり長手方向に配置されるが、ショートジョイントは、アームの縦軸に対して、90°に配置されるのが望ましい。ロングジョイントおよびショートジョイントは、一般に、2−2−2構成として知られている構成で対をなす(但し、例えば、2−1−2、2−1−3、2−2−3等のようなその他のジョイント構成を用いるようにしてもよい)。これらのジョイント対の各々を、図4〜図6に示す。
図4は、第1のジョイント対、すなわち、ロングジョイント16およびショートジョイント18の分解組立図を示す。また、図4は、携帯可能な電力供給電子回路20、携帯可能な電池パック22、磁気マウント24、および2つの部分からなる基部ハウジング26A,26Bを含む基部12の分解組立図を示す。これらの部品については、全て、以下に、より詳細に説明する。
言うまでもないが、多関節アーム14の様々な主要部品の直径が、基部12からプローブ28の方に向かって、徐々に細くなっている(テーパー形状である)ということは重要なことである。このようなテーパー形状は、連続的なものであってもよく、また、図面に示した実施の形態のように、テーパー形状が、不連続的なもの、または段階的なものであってもよい。さらに、多関節アーム14の主要部品の各々を、螺合可能(threadably)に連結することによって、従来技術によるCMMに付随する数多くの固定具をなくすことができる。例えば、後述することではあるが、磁気マウント24は、第1のロングジョイント16に螺合可能に連結される。望ましくは、そのようなねじ切りは、テーパー形状のねじ切りであって、これは、自己ロック式(self-locking)であり、向上された軸方向/曲げ剛性を可能にするものである。代替的には、図25Aおよび図25Bに示すように、また、以下に説明するように、多関節アームの主要部品は、対応付けられたフランジを備えた相補的なテーパー形状のオス端部とメス端部とを有する場合もあり、そのようなフランジは、互いにボルト止めされる。
図5を参照すると、ロングジョイントおよびショートジョイントの第2のセットが、第1のセットに連結される状態で図示されている。第2のジョイントセットは、ロングジョイント30およびショートジョイント32を含む。磁気マウント24のロングジョイント16への連結と整合するように、ロングジョイント30は、ロングジョイント16の内側表面のねじ切りに螺合可能に連結される。同様に、図6を参照すると、第3のジョイントセットは、第3のロングジョイント34および第3のショートジョイント36を含む。第3のロングジョイント34は、第2のショートジョイント32の内側表面のねじ切りに螺合可能に連結する。以下に、さらに詳細に説明するように、プローブ28は、ショートジョイント36に螺合可能に連結する。
望ましくは、各々のショートジョイント18,32,36は、鋳造および/または機械加工されたアルミニウム部品、または、代替的に、軽量であって硬質の合金または複合材料で構成される。各々のロングジョイント16,30,34は、望ましくは、鋳造および/または機械加工されたアルミニウム、軽量であって硬質の合金および/または繊維強化ポリマーで構成される。3つの上述したジョイント対(すなわち、ジョイント対16,18を備えるペア1、ジョイント対30,32を備えるペア2、およびジョイント対34,36を備えるペア3)の機械軸は、円滑かつ均一な機械的な動作を得るために、基部に対して位置合わせされる。基部12からプローブ28にかけての上述したテーパー形状の構造は、より大きな荷重がかかる基部における剛性をより向上したものにする上で、また、使用時に遮るもののないことが重要なプローブまたはハンドルにおける断面をより小さなものにする上で好ましい。以下に、さらに詳細に説明するように、各々のショートジョイントには、そのいずれの端部にも保護緩衝材38が連結されており、各々のロングプローブは、保護スリーブ40または41で覆われている。言うまでもないが、第1のロングジョイント16は、第2および第3のロングジョイント30,34に対してスリーブ40,41によって提供されるのと同様のタイプの保護を提供する基部ハウジング26A,26Bによって保護されている。
本発明の重要な特徴によれば、多関節アームにおけるジョイントの各々が、例えば、図7および図8に示したショートカートリッジ42およびロングカートリッジ44のようなモジュール式の軸受/エンコーダカートリッジを用いる。これらのカートリッジ42,44は、デュアルソケットジョイント46,48の開口部に取り付けられる。各々のソケットジョイント46,48は、第1の凹部つまりソケット120を有する第1の円筒形延長部分47および第2の凹部つまりソケット51を有する第2の円筒形延長部分49を含む。一般に、ソケット120,51は、互いに90° に配置されるが、その他の相対的な角度構成を用いる場合もある。ショートカートリッジ42は、デュアルソケットジョイント46,48の各ソケット51内に配置されて、ヒンジジョイントを構成する一方で、ロングカートリッジ44は、ジョイント46のソケット120(図25参照)内に配置されて、ロングカートリッジ44’(図26参照)は、ジョイント48のソケット120内に配置されて、各々が、長手方向のスイベルジョイントを構成する。モジュール式の軸受/エンコーダカートリッジ42,44によれば、モジュール式のエンコーダ部品が取り付けられる、予め圧力が加えられた、あるいは予荷重がかけられたデュアル軸受カートリッジを別々に製造することが可能となる。この軸受エンコーダカートリッジは、さらに、多関節アーム14の外部躯体部品(すなわち、デュアルソケットジョイント46,48)に固定的に連結することが可能である。このようなカートリッジを用いることは、当該分野における著しい進歩であるが、これは、そのことによって、多関節アーム14のこれらの複雑なサブコンポーネントを高品質かつ高速で生産することが可能となるからである。
本明細書において説明した実施の形態では、4つの異なるカートリッジタイプ、すなわち、ジョイント30,34のための2つのロング軸方向カートリッジ、ジョイント16のための1つの基部軸方向カートリッジ、ショートジョイント18のための1つの基部カートリッジ(カウンタバランスを含む)、およびジョイント32,36のための2つのヒンジカートリッジがある。さらに、多関節アーム14のテーパー形状と整合するように、基部に最も近い(例えば、ロングジョイント16およびショートジョイント18に位置する)カートリッジは、ジョイント30,32,34,36における比較的小さな直径と比べて、より大きな直径を有する。各々のカートリッジは、予荷重がかけられた軸受機構と、この実施の形態では、デジタルエンコーダを備える変換器と、を含む。続いて、図9および図10を参照して、軸方向ロングジョイント16内に配置されたカートリッジ44について説明する。
カートリッジ44は、内スリーブ54および外スリーブ56によって分離された一対の軸受50,52を含む。軸受50,52に、予荷重がかけられているということは重要なことである。この実施の形態において、そのような予荷重は、締め付けたときに、所定の予荷重が、軸受50,52上に生じるように、異なる長さである(内スリーブ54は、外スリーブ56よりも、約0.0005インチ短い)スリーブ54,56によって与えられる。軸受50,52は、封止材58を用いて封止されており、このアセンブリは、シャフト60に回転可能に取り付けられている。その上面において、シャフト60は、シャフト上部ハウジング62で終端している。環状部63は、シャフト60とシャフト上部ハウジング62との間に画定されている。このアセンブリ全体は、シャフトとその軸受アセンブリが、内ナット66と外ナット68との組み合わせを用いて、ハウジング64にしっかりと固定された状態で、外カートリッジハウジング64の内部に配置される。なお、組み立てに際して、外ハウジング64の上部分65は、環状部63の内部に収容されることになる。言うまでもないが、上述した予荷重が、軸受50,52に与えられるのは、内ナット66および外ナット68を締め付けたときであって、これらが、軸受に対して圧縮力を与えるとともに、内スペーサ54および外スペーサ56の長さの違いによって、所望の予荷重が加えられることになる。
望ましくは、軸受50,52は、二重ボール軸受である。適切な予荷重を得るためには、軸受面が、可能な限り平行であることが重要である。この平行度が、軸受の外周周囲における予荷重の均一性に影響を及ぼす。不均一な荷重では、軸受に、粗くて不均一な回転トルク感触を与えることになり、結果として、予測がつかない径方向の回転振れおよびエンコーダ性能の低下をもたらすことになる。モジュール式に取り付けられたエンコーダディスク(後述)の径方向の回転振れは、結果として、読み取りヘッドの下方における望ましくないフリンジパターンシフトをもたらすことになる。これは、著しいエンコーダ角度測定エラーをもたらす。さらに、望ましくは二重軸受であるこの構造の剛性は、軸受間の間隔に直接的に関係がある。軸受間の隔たりが大きいほど、そのアセンブリの剛性は、より高くなる。スペーサ54,56は、軸受間の間隔を広げるために用いられる。カートリッジハウジング64は、アルミニウムであることが望ましいことから、さらに、スペーサ54,56もまた、アルミニウムを材料として作られて、長さおよび平行度が、高精度に機械加工されることが望ましい。その結果、温度変化によって、予荷重を損なうことになるであろう膨張差をもたらすことはない。既に述べたように、予荷重は、スペーサ54,56の長さにおいて、既に分かっているその長さの違いを組み込むことによって設定される。ナット66,68が完全に締め付けられると、この長さにおける差が、軸受予荷重をもたらすことになる。封止材58を用いて、封止された軸受が提供されるのは、その悪影響が、どのような悪影響であっても、あらゆる回転運動およびエンコーダの正確さに影響があるばかりではなく、ジョイント感触に影響があるからである。
カートリッジ44には、間隔をあけて配置された一対の軸受が含まれることが望ましいが、代替的に、カートリッジ44が、単一の軸受、または3つ以上の軸受を含むようにしてもよい。このように、各々のカートリッジは、少なくとも1つの軸受を最低限必要とする。
本発明のジョイントカートリッジでは、回転に制限のない場合もあれば、代替として、回転が制限されている場合もある。制限された回転では、ハウジング64の外面上におけるフランジ72上の溝70によって、円筒形の軌道が提供されて、これに、シャトル74が収容される。シャトル74は、軌道70の内部を、それが、例えば、回転を停止させる止めねじ76のような、脱着可能なシャトル停止部に接するようになるまで進み、それ以上は、回転が起こらないようになっている。回転量は、どのくらいが望ましいかに応じて異なることが可能である。1つの好適な実施の形態において、シャトル回転は、720°未満に制限されるであろう。このタイプの回転シャトル停止部は、本願出願人が特許権者である米国特許第5,611,147号明細書に、より詳細に説明されており、その内容は全て、既に、本願に引用して援用されている。
既に述べたように、1つの代替的な実施の形態において、本発明に用いられるジョイントは、その回転が制限されていない場合もある。この後者の場合においては、既に知られているスリップリングアセンブリが用いられる。望ましくは、シャフト60は、これを貫通する中空つまり軸方向の開口78を有しており、この一方の端部に、直径が、より大きい部分80を有する。軸方向の開口78,80の交差部分に画定された肩部を接合することで、円筒形のスリップリングアセンブリ82となる。スリップリングアセンブリ82は、モジュール式のジョイントカートリッジにおける上述した予荷重がかけられた軸受アセンブリに対して、非構造的である(すなわち、機械的な機能は、何ら提供せず、電気的および/または信号伝達機能を提供するにすぎない)。スリップリングアセンブリ82は、どのような市販のスリップリングで構成するようにしてもよいが、好適な実施の形態において、スリップリングアセンブリ82は、英国バークシャー州レディングのIDMエレクトロニクス社(IDM Electronics Ltd.)から入手可能なHシリーズスリップリングで構成される。そのようなスリップリングは、小型であり、円筒形のデザインを備えているので、シャフト60のなかの開口80において用いるのに最適である。シャフト60を貫通する軸方向の開口80は、アパーチャ84で終端しており、これは、スリップリングアセンブリ82からの配線を収容するような大きさおよび構成となっている経路86に連絡している。そのような配線は、所定の位置に固定されており、経路86およびアパーチャ84にパチンとはまって収容される配線カバー88によって保護されている。そのような配線は、図10において、90に概略的に図示されている。
上述したように、モジュール式のカートリッジ44には、既に説明した、予荷重がかけられた軸受構造ばかりではなく、以下に説明する、モジュール式のエンコーダ構造の両方が含まれる。さらに、図9および図10を参照すると、本発明に用いる好適な変換器は、2つの主要な部品である読み取りヘッド92および格子ディスク94を有するモジュール式の光学エンコーダを備える。この実施の形態において、一対の読み取りヘッド92が、読み取りヘッド接続ボード96上に配置される。接続ボード96は、取り付けプレート100に(固定具98を介して)連結される。ディスク94は、望ましくは、シャフト60の下部軸受面102に(望ましくは、適切な接着剤を用いて)連結されており、読み取りヘッド92(プレート100によって支持および保持されている)から間隔をおいて、これに位置合わせして配置されることになる。配線ファンネル104および封止キャップ106によって、ハウジング64の下端部に最終的な外側の被覆が提供される。配線ファンネル104は、図10に最適な状態で図示されているように、配線90を、捕捉して、保持することになる。言うまでもないが、エンコーダディスク94は、102において接着剤を用いたことにより、シャフト60に保持されて、これとともに回転することになる。図9および図10は、ダブルの読み取りヘッド92を図示しているが、2つよりも多くの読み取りヘッドを用いてもよいし、代替的に、図9Aに示すような単一の読み取りヘッドを用いてもよいということは言うまでもない。図9B〜図9Eには、2つよりも多くの読み取りヘッドを備えたモジュール式のカートリッジ44の例を示す。図9Bおよび図9Cは、プレート100に収容された4つの読み取りヘッド92を、90°ずつ間隔をおいて配置された状態で示す(但し、異なる相対的な間隔が相応しい場合もある)。図9Dおよび図9Eは、プレート100に収容された3つの読み取りヘッド92を、120°ずつ間隔をおいて配置された状態で示す(但し、異なる相対的な間隔が相応しい場合もある)。
ディスク94を正しく位置合わせするために、穴(図示せず)が、ディスク94に隣接する位置にハウジング64を貫通して設けられる。さらに、工具(図示せず)を用いて、ディスク94を正しい位置合わせになるように押したところで、ディスク94とシャフト60との間の接着剤を硬化させて、ディスク94を所定の位置に固定する。さらに、穴栓73が、ハウジング64内の穴を貫通して設けられる。
ディスク94および読み取りヘッド92の位置を逆にして、ディスク94を、ハウジング56に連結させて、読み取りヘッド92をシャフト60とともに回転するようにしてもよいということは、重要な留意点である。そのような実施の形態を、図12Aに示すが、図中、ボード96’が、(接着剤を介して)シャフト60’に連結されるのは、それとともに回転するようにするためである。一対の読み取りヘッド92’が、ボード96’に連結されて、従って、シャフト60’とともに回転することになる。ディスク94’は、支持部100’上に配置されて、これは、ハウジング64’に連結される。いずれにせよ、ディスク94または読み取りヘッド92のどちらか一方を、シャフトとともに回転するように取り付けることができるということは言うまでもない。重要なことは、ディスク94および読み取りヘッド92が、光学的な通信状態を維持しつつ、互いに対して回転可能となるようにカートリッジ(またはジョイント)内に配置されるということだけである。
望ましくは、本発明において用いられる回転エンコーダは、米国特許第5,486,923号明細書および米国特許第5,559,600号明細書に開示されたものと同様であって、これらの明細書の内容は、その全てを、本願に引用して援用する。そのようなモジュール式のエンコーダは、ピュアプレシジョンオプティクス(Pure Precision Optics)という商品名でマイクロEシステムズ社(MicroE Systems)から市販されている。これらのエンコーダは、回折次数の間の干渉を検出することで、フリンジパターンに差し込まれた光検出器アレイ(例えば、読み取りヘッド)から、ほぼ完全な正弦波信号を生成する物理的な光学素子に基づいている。この正弦波信号を、電子的に補間することで、光学フリンジのほんの一部にすぎない変位を検出することが可能となる。
レーザ光源を用いて、レーザビームは、まず、レンズによって平行化されて、続いて、アパーチャによって大きさが調整される。大きさが調整された平行ビームが、光を離散的な次数に回折させる格子を通過すると、0次および全ての偶数次は、格子構造によって除去される。0次が除去されると、発散する3次を超える領域が、存在しており、ここでは、±1次のみが重複して、ほぼ純粋な正弦波干渉がもたらされる。1つまたは複数の光検出器アレイ(読み取りヘッド)が、この領域に配置されて、格子と検出器との間に相対的な動きがあるときに、4チャンネルのほぼ純粋な正弦波出力を生成する。電子回路によって、その出力は、所望のレベルの分解能に増幅、正規化、および補間される。
このエンコーダのデザインが簡単であることによって、従来の光学エンコーダと比較して、いくつかの利点が得られる。測定が、レーザ源とその平行化するための光学素子、回折格子、および検出器アレイのみを用いて行うことができる。その結果、比較的かさばる従来の通常のエンコーダと比べて、極めて小型のエンコーダシステムが得られる。また、格子とフリンジの動きとの間の直接的な関係によって、このエンコーダは、従来の機器が影響を受けやすい、環境的に引き起こされた誤差に影響を受けにくい。さらに、干渉の領域が大きいので、また、この領域のいたるところで、ほぼ正弦波の干渉が得られるので、位置合わせ許容範囲が、従来のエンコーダの場合よりもはるかに緩やかである。
上述の光学エンコーダの著しい利点としては、スタンドオフの向きおよび距離、つまり読み取りヘッドのエンコーダディスクに対する向きおよび距離の精度は、厳密さがはるかに低いということがある。これによって、高い精度の回転方向の測定と、組み立てやすいパッケージと、が可能になる。この「形状的に許容性がある」エンコーダ技術を用いた結果として、著しいコストの低下と製造の容易さを備えたCMM10が得られる。
言うまでもないが、上述した好適な実施の形態においては、光学ディスク94が含まれているが、本発明の好適な実施の形態は、同様に、読み取りヘッドが相対的な動きを測定することを可能にするあらゆる光学フリンジパターンを包含する。ここで用いたように、そのようなフリンジパターンとは、動きの測定を可能にするあらゆる周期的なアレイ状の光学素子を意味する。そのような光学素子つまりフリンジパターンは、上述したように、回転ディスクまたは固定ディスクに取り付けることが可能であろうし、また、代替的に、カートリッジの相対的可動部品(例えば、シャフト、軸受、ハウジング等)のいずれかの上に、堆積、固定、またはその他のやり方で配置され、あるいは、存在することが可能であろう。
実際、読み取りヘッドおよび対応付けられた周期的なアレイつまりパターンは、必ずしも、光学素子(上述)に基づいたものである必要は全くない。むしろ、より広義においては、読み取りヘッドは、動き、一般には、回転運動を測定するために用いることが可能なその他の何らかの測定可能な量または特性のその他の何らかの周期的なパターンを読み取る(検知する)ことが可能であろう。そのようなその他の測定可能な特性としては、例えば、反射率、不透明度、磁界強度、キャパシタンス、インダクタンス、または表面粗さが含まれる場合がある。(なお、表面粗さパターンを、例えば、CCDカメラのようなカメラの形態をとった読み取りヘッドつまりセンサを用いて読み取ることも可能であろう。)そのような場合において、読み取りヘッドは、例えば、磁界強度、反射率、キャパシタンス、インダクタンス、表面粗さ等の周期的な変化を測定するであろう。従って、ここで用いたように、「読み取りヘッド」という用語は、これらの測定可能な量または特性の分析のためのあらゆるセンサまたは変換器および対応付けられた電子回路を意味しており、光学読み取りヘッドは、1つの好適な例であるにすぎない。当然、読み取りヘッドによって読み取られている周期的なパターンは、読み取りヘッドと周期的なパターンとの間に相対的な動き(一般に、回転運動)がある限り、あらゆる表面上に存在することが可能である。周期的なパターンの例としては、回転部品または固定部品の上にパターン状に堆積させられた磁気媒体、電磁誘導媒体、または容量性媒体が含まれる。また、表面粗さが、読み取られる周期的なパターンである場合に、対応付けられた読み取りヘッド(おそらく、例えば、CCDカメラのようなカメラ)と通信状態にあるいずれの部品の表面粗さを用いるようにしてもよいので、別の周期的な媒体を、堆積またはその他のやり方で設ける必要はない。
上述したように、図9および図10には、軸方向に長いロングジョイント16のモジュール式の軸受およびエンコーダカートリッジの各要素を示す。図11および図12には、軸方向に長いロングジョイント30,34の軸受およびエンコーダカートリッジを示す。これらのカートリッジアセンブリは、図9および図10に示したものと実質的に同様であり、44’で示す。軽微な違いが、各図から、カートリッジ44を基準として、例えば、異なる構成の配線キャップ/カバー88’、わずかに異なる配線ファンネル/カバー104’,106’、ハウジング64’の上端部におけるフランジ72’の配置に関して明らかである。また、ハウジング64’とシャフト上部ハウジング62との間のフランジは、外側に向かって広がっている。当然、図11および図12に示した様々な部品の相対的な長さは、図9および図10に示したものと多少異なる場合もある。これらの部品は、全て、実質的に同様のものであるから、各部品について、プライム(’)を付けた同一の符号が付されている。図11Aは、図11と同様であるが、単一の読み取りヘッドの実施の形態を示す。
さらに、図13および図14には、ショートヒンジジョイント32,36の軸受およびエンコーダカートリッジについて、同様の分解組立図および断面図を示す。図11および図12のロング軸方向ジョイント44’の場合と同様に、ショートヒンジジョイント32,36のカートリッジは、詳細に上述したカートリッジ44と実質的に同様であって、従って、これらのカートリッジの各部品は、44’’において特定されて、同様の部品が、ダブルプライム(’’)を用いて特定されている。言うまでもないが、カートリッジ44’’は、ショートジョイント32,36に用いるためのものであるので、スリップリングアセンブリが必要とされることはなく、配線は、これらのジョイントのヒンジ動作により、単に、軸方向の開口78’’,80’’を貫通することになる。図13Aは、図13と同様であるが、単一の読み取りヘッドの実施の形態を示す。
最後に、図15および図16を参照すると、ショートヒンジジョイント18のモジュール式の軸受/エンコーダカートリッジが、108に図示されている。言うまでもないが、カートリッジ108のほぼ全ての部品が、カートリッジ44,44’,44’’における各部品と同様または同一であって、重要な例外としては、カウンタバランスアセンブリを含むという点がある。このカウンタバランスアセンブリには、ハウジング64’’の上方に収容されたカウンタバランススプリング110が含まれており、図26〜図28を参照して以下に説明するように、CMM10に重要なカウンタバランス機能を提供する。図15Aは、図15と同様であるが、単一の読み取りヘッドの実施の形態を示す。
上述したように、好適な実施の形態において、1つよりも多くの読み取りヘッドを、エンコーダに用いるようにしてもよい。言うまでもないが、エンコーダの角度測定は、加えられた荷重によるディスクの心振れつまり径方向の動きによって行われる。2つの読み取りヘッドが、互いに180°の角度で配置されていることで、結果として、各々の読み取りヘッドにおいて相殺効果を生じさせる心振れをもたらすことになるということが確認されている。これらの相殺効果を平均して、最終的な「耐性のある」角度測定値を求める。このように、2つの読み取りヘッドを用いること、およびその結果として得られる誤差相殺によって、より誤差の生じにくい、より正確なエンコーダ測定値がもたらされることになる。図17〜図19には、それぞれ、例えば、ジョイント16,18(すなわち、基部の最も近くにあるジョイント)において見られるような、より大きな直径のカートリッジにおいて有用な、デュアル読み取りヘッドの実施の形態についての底面図、断面図、上面図を示す。さらに、カートリッジ端部キャップ100は、そこに一対の回路基板96を取り付けており、各々の回路基板96が、そこに機械的に連結された読み取りヘッド92を備えている。読み取りヘッド92は、望ましくは、互いに180°離して配置されており、ディスクの心振れつまり径方向の動きから結果として生じる誤差相殺を可能にする。各々の基板96は、さらに、その回路基板96を内部バスおよび/またはその他の配線に連結するためのコネクタ93を含んでおり、これについては、以下にさらに説明する。図20〜図22には、図17〜図19において示したのと実質的に同一の部品を示すが、主要な違いとしては、より小さい直径のカートリッジ端部キャップ100である。このより小さい直径のデュアル読み取りヘッドの実施の形態は、例えば、ジョイント30,32,34,36のより小さい直径のカートリッジと対応付けられるであろう。
また、少なくとも2つの読み取りヘッド(あるいはそれ以上の読み取りヘッド、例えば、図9D〜図9Eに示した3つの読み取りヘッドおよび図9B〜図9Cに示した4つの読み取りヘッド)を用いることは、より多くの従来の座標測定装置において活用され、その製造におけるコストおよび複雑さを大幅に低減させることになる。例えば、本願に引用して援用する米国特許第5,794,356号明細書(以下、“ラーブ(Raab)の‘356号特許”)に記載の座標測定装置は、各ジョイントの構造が比較的簡単で、ジョイントの半分に固定された状態のままの第1のハウジングと、ジョイントのもう一方の半分に固定された状態のままの第2のハウジングと、を含み、第1および第2のハウジングは、これらを互いに回転させる予荷重がかけられた軸受を備える。第1のハウジングは、パッケージされたエンコーダを保持しており、第2のハウジングは、軸方向に配設された内側シャフトを含み、これは、第1のハウジングの方に延在して、パッケージされたエンコーダから突出するエンコーダシャフトと嵌合する。従来技術によるパッケージされたエンコーダにおいて、極めて正確な回転方向の測定値を維持するためには、これに対して荷重が全くかけられていないことと、内側シャフトの軸およびパッケージされたエンコーダの軸における小さな位置ずれにもかかわらず第2のハウジングの動きが正確にエンコーダに伝えられることが必要とされた。軸方向の位置ずれにおける製造上の許容誤差に対応するために、特別なカップリング装置がエンコーダシャフトと内側シャフトとの間に接続されている。そのような構成が、ラーブの‘356号特許の図7に示されている。
これに対して、図35は、一部変更された構成400を示しており、この構成では、ラーブの‘356号特許によるCMMのカップリング装置およびパッケージされたエンコーダが取り除かれ、エンコーダディスク96および端部キャップ100に取り替えられている。ここで、2つのジョイントが互いに90°の角度で配置されており、その各々のジョイントが、第1のハウジング420および第2のハウジング410を備える。内側シャフト412は、第2のハウジング420から第1のハウジング410の方に延在する。図中、エンコーダディスク96は、例えば、接着剤を用いて、内側シャフト412の端部に連結されており、端部キャップ100は、第1のハウジング420の内部に固定されている。但し、当然のことながら、エンコーダディスク96が第1のハウジング420の内部に固定され、端部キャップ100が内側シャフト412に固定されるようにしてもよく、このことが、ジョイントの動作に影響を及ぼすことはない。
上述したように、2つ(またはそれ以上)の読み取りヘッドを用いること、およびその結果として得られる誤差相殺によって、小さな軸方向の位置ずれにもかかわらず、より誤差の生じにくい、より正確なエンコーダ測定値がもたらされることになる。さらに、格子とフリンジの動きとの間の直接的な関係によって、このエンコーダは、従来の機器が影響を受けやすい、環境的に引き起こされた誤差に影響を受けにくい。さらに、干渉の領域が大きいので、また、この領域のいたるところで、ほぼ正弦波の干渉が得られるので、位置合わせ許容範囲が、上述したように、従来のエンコーダの場合よりもはるかに緩やかである。
もう1つの具体例として、イートン(Eaton)に付与された米国特許第5,829,148号明細書(以下、“イートンの‘148号特許”)は、本願に引用して援用するが、これに記載の従来技術によるCMMにおいて、パッケージされたエンコーダが、主要な回転軸受を設けることによって、各ジョイントにおける一体的な部分を構成し、従って、上述したラーブの‘356号特許において必要とされたように軸方向の位置ずれを補償することを不要にする。但し、エンコーダが主要な回転軸受を設けるので、エンコーダが、構造的に頑丈(rugged)であって、その性能に影響を及ぼすことなく様々な荷重にさらされることが可能であるということが重要である。このことで、エンコーダのコストと扱いにくさが増大する。そのような構成が、イートンの‘148号特許の図4に示されている。
これに対して、図36は、一部変更された構成450を示しており、この構成では、イートンの‘148号特許によるCMMの1つのジョイントにおけるパッケージされたエンコーダおよび接続シャフトが取り除かれ、端部キャップ100およびエンコーダディスク96に取り替えられている。ここで、第1のハウジング470が、端部キャップ100を保持し、軸受472によって第2のハウジング460の内側シャフト462を保持する。内側シャフト462は、端部キャップ100の近くで終端するように延在させられており、エンコーダディスク96は、例えば、接着剤を用いて、内側シャフト462の端部に連結されている。図35に示した実施の形態と同様に、2つ(またはそれ以上)の読み取りヘッドを用いることで、正確さを犠牲にすることなく、ジョイントのコストおよび複雑さが大幅に低減させられる。
言うまでもないが、周期的なパターンの動きにおける非循環性(non-circularity)が本明細書において説明したタイプの回転変換器における不正確さの主因である。この動きにおける非循環性は、組み立てが不完全であることおよび外部的な変形を含む数々の現象によるものである場合がある。外部的な変形は、CMMにおけるどこにでも生じる可能性があり、軸受構造および/またはジョイント配管に対して生じることがもっとも一般的である。例えば、そのような外部的な変形は、反復不可能な軸受の心振れ(run-out)、軸受のぐらつき(wobble)、軸受の変形、熱の影響および軸受の遊びに起因する場合がある。図17〜図21について述べたように、本発明の1つの実施の形態において、回転変換器における不正確さは、少なくとも2つの、望ましくは、互いに180°離して取り付けられた読み取りヘッドを用いて補正される。但し、図41〜図43に示した本発明のさらにもう1つの実施の形態において、CMMの変形および/または組み立てが不完全であることから生じうる誤差は、少なくとも1つの読み取りヘッドを、1つまたは複数のセンサ、望ましくは、複数の近接センサ(または変位を測定するその他の何らかのセンサ)と組み合わせて用いて補正される。
言うまでもないが、本明細書において説明したタイプのいずれか任意のカートリッジにおいて、そのカートリッジのシャフトとハウジングとの間には6つの自由度がある。すなわち、シャフトは、6つの自由度、つまりX軸、Y軸、Z軸における変位およびX軸、Y軸、Z軸における回転を含む。次に、図41〜図43を参照すると、上述したタイプのカートリッジが600に図示されている。カートリッジ600は、ハウジング606の内部に軸受(図示せず)上において回転するように取り付けられた内側シャフト602を含む。読み取りヘッドプレート604によって、エンコーダ読み取りヘッド610およびセンサS1〜S5がハウジング606に固定される。エンコーダディスク608は、その上に光学フリンジパターンを備えており、シャフト602に連結され、これとともに回転するようになっている。エンコーダ読み取りヘッド610(読み取りヘッドプレート604に連結されている)は、光学フリンジパターン608の上方に取り付けられており、望ましくは、シャフト602のZ軸における回転を測定するように機能する。読み取りヘッド610に加えて、カートリッジ600は、5つの追加のセンサを含み、これらの全てが読み取りヘッドプレート604を介してハウジング606に固定されており、これらの全てがシャフト602とハウジング606との間における相対的な動きを測定するためのものである。これらの追加のセンサは、シャフト602のY軸における変位を(ハウジング606を基準にして)測定するための変位センサS1およびシャフト602のX軸における変位を(ハウジング606を基準にして)測定するための変位センサS2を含む。従って、シャフト602は、これに対応付けて、3つのセンサ、つまりそのZ軸における回転およびX軸およびY軸における変位をそれぞれ測定するための読み取りヘッド610およびセンサS1,S2を備える。望ましくは、シャフト602は、これに対応付けられた、X軸およびY軸における回転およびZ軸における変位を測定するための3つの追加のセンサを含む。具体的には、センサS3,S4,S5が連係してX軸およびY軸における回転ならびにZ軸における変位を測定する。図41〜図43に示した実施の形態において、S3,S4,S5のセンサは、読み取りヘッドプレート604に沿って120°ずつ、間隔をあけて配置されている。これらの等間隔に配置された3つのセンサからの測定値を既に知られているやり方で組み合わせることで、X軸およびY軸における回転およびZ軸における変位を組み合わせたものが算出される。
このように、これらの追加の5つのセンサS1〜S5によって、ジョイント配管または軸受構造を含むCMMにおけるあらゆる変形が測定され、補正されるので、これらのセンサを用いることで、測定におけるそのような誤差を補正することが可能である。従って、これらの追加のセンサを用いることで、シャフトとハウジングとの間における相対的な動きが測定され、ディスクの回転運動以外のその他の動きが算出され、従って、これらの“その他の”動きによってもたらされたあらゆる誤差が補正される。これらの変位測定を行うために適切なタイプのセンサであれば、本発明において、どのようなセンサを用いてもよい。望ましくは、これらのセンサは、例えば、ホール効果を用いる近接センサ、または磁気特性、抵抗特性、容量特性、または光学特性による近接センサのような近接センサである。
言うまでもないが、例えば、ジョイントが荷重のかかった状態で、軸受が変形する場合(さらに、そのような変形の結果、光学パターン608を支持するシャフト602および読み取りヘッド610を備えたハウジング606が互いに対して移動することになる場合)に、そのような移動による影響を受けることになる角度測定値が、追加のセンサS1〜S5からの変位情報を用いて“補正”されることになる(言うまでもなく、本発明は、センサS1〜S5の全てまたは全てよりも少ないセンサを用いることについて予期しており、さらに、S1〜S5に加えてその他のセンサを用いることについても予期している)。このように補正することにより、携帯可能なCMMの相当に向上させられた精度が得られる。さらに、言うまでもないが、本発明は、ジョイントカートリッジのうちの少なくとも1つが追加のセンサS1〜S5を含むことについて予期しているが、1つの好適な実施の形態においては、これらのカートリッジの全てが、そのような追加のセンサを含むであろう。また、図41〜図43の実施の形態は、光学格子ディスクを有する回転エンコーダを備えて図示されているが、例えば、反射率、不透明度、磁界強度、キャパシタンス、インダクタンス、または表面粗さのような測定可能な特性を用いるものを含む測定可能な特性の周期的なパターンを検出し分析する、上述した代替的な回転エンコーダのうちのいずれを、本明細書において説明したようなセンサS1〜S5とともに用いるようにしてもよい。また、図41〜図43の実施の形態に示す実施の形態において、光学ディスクは、シャフト602とともに回転するが、複数のセンサS1〜S5は、例えば、図12Aに示したもののように光学ディスクが固定されている実施の形態に用いるようにしてもよい。
上述したように、追加のセンサを用いて、軸受およびその他のアームの変形によって生じる誤差を補正することができるであろうが、これらの追加のセンサを用いて、そのような構造的な変形を実際に生じさせている、ジョイントに対する外力を計算し測定することもできる。これらの測定値を有利に用いて、ユーザに対して感覚フィードバック(sensory feedback)を提供するようにすることができる。例えば、特定の軸受構造またはジョイントにおいて一定の範囲の外力を許容することが可能であるが、軸受機構の変形によって外力を検知することにより、これらの範囲を超過したということを表示し、その後、ユーザに対して感覚フィードバックを提供し、そのような外力を軽減するための是正策を講じるようにすることができる。すなわち、ユーザは、その場合に、測定値を向上させるためにCMMの操作を一部変更することが可能である。この感覚フィードバックは、聴覚フィードバックおよび/または視覚フィードバックの形であってもよく、CMMを制御するソフトウェアによって表示されるようにしてもよい。このように、上述した追加のセンサS1〜S5は、過荷重センサとしての役割を果たすことが可能であり、ユーザが、アームを過度に圧迫しないようにして、それによって、最適な精度を維持して、正確な測定が確実に行われるようにする。実際、任意のジョイントに対する外力の測定は、図41〜図43の実施の形態(追加のセンサS1〜S5を用いる実施の形態)にだけではなく、2つまたはそれ以上の読み取りヘッドを用いる上述の実施の形態にも用いることができる。この2つの読み取りヘッドの構成の場合には、角度測定値は、これらの2つの読み取りヘッドの平均から導き出される。変形力は、さらに、これらの2つの読み取りヘッドの読み取り値の間における差を測定することによって得ることが可能である。図41〜図43の実施の形態の場合には、2つの近接センサの各々の方向において変形を測定することが可能である。これによって、更なる方向情報が得られる。6つのセンサ(S1〜S5および読み取りヘッド)を全て用いることで、6つの自由度を全て測定することによる各々のジョイントにおける変形の全体的な内容(total description)が得られることになる。
2つの読み取りヘッドを用いることによって、あるいは単一の読み取りヘッドを1つまたは複数の近接センサとともに用いることによって得られる変換器の角度精度の向上に加えて、変形力を測定することから導き出された情報を用いることで、リアルタイムでアームの寸法を変え、それによって測定の精度を向上させるように、そのような変形情報を用いることによってアームの運動学(kinematics)を補正することも可能である。従って、例えば、軸受が変形した場合に、この変形によって、アームの一部分の長さに変化が生じることになる。この変形を、本明細書において説明したようにセンサおよび読み取りヘッドを用いて測定することによって、アームの長さにおけるこの変化を、当該CMMに対応付けられた測定ソフトウェアにおいて考慮し、さらに、アームの最終的な測定精度を向上させるための補正値として用いることが可能である。
さらに、図23Aには、図9A、図11A、図13Aおよび図15Aの単一の読み取りヘッドの実施の形態について、電子回路のブロック図を示す。言うまでもないが、CMM10には、望ましくは、外部バス(望ましくは、USBバス)260および内部バス(望ましくは、RS−485)261が含まれており、これは、より多くのエンコーダのためばかりではなく、外部に取り付けられたレールまたは例えば7番目の軸のような追加の回転軸のために拡張可能なように設計されている。内部バスは、望ましくは、RS485と整合性があって、このバスは、望ましくは、同一出願人による米国特許第6,219,928号明細書に開示されたような携帯可能なCMMアームにおいて変換器からデータを通信するためのシリアルネットワークと整合性があるように、シリアルネットワークとして用いられるように構成されており、この明細書の内容は、その全てを本願に引用して援用する。
図23Aを参照すると、言うまでもないが、各々のカートリッジにおける各々のエンコーダは、エンコーダ基板に対応付けられている。ジョイント16におけるカートリッジのためのエンコーダ基板は、基部12の内部に配置されており、図25において112に特定されている。ジョイント18,30のためのエンコーダは、デュアルエンコーダ基板上において処理されるが、これは、第2のロングジョイント30内に位置しており、図26において114に特定されている。また、図26は、ジョイント32,34に用いるエンコーダのための同様のデュアルエンコーダ基板116を示しており、この基板116は、図26に示したように、第3のロングジョイント34内に配置されている。最後に、端部エンコーダ基板118が、図24に示すように、測定プローブハンドル28の内部に配置されており、ショートジョイント36においてエンコーダを処理するために用いられる。各々の基板114,116,118は、熱電対に対応付けられており、温度の過渡的な事象による熱補償を可能にする。各々の基板112,114,116,118は、組み込まれたアナログデジタル変換手段、エンコーダ計数手段およびシリアルポート通信手段を内蔵する。また、各々の基板は、読み取りプログラム可能なフラッシュメモリを有することで、動作データの局部記憶を可能にしている。また、メインプロセッサ基板112は、外部USBバス260を介して現場でプログラム書き込みすることも可能である。上述したように、内部バス(RS−485)261は、より多くのエンコーダのために拡張可能なように設計されており、また、これには、外部に取り付けられたレールおよび/または7番目の回転軸が含まれる。軸ポートが、内部バスの診断を提供するように設けられている。これらの図面において10に図示したタイプの複数のCMMを、外部USB通信プロトコルの機能により、単一の適用先(アプリケーション)に連結することもできる。さらに、全く同一の理由から、複数の適用先(アプリケーション)を、単一のCMM10に連結することもできる。
望ましくは、各々の基板112,114,116,118には、例えば、モトローラ社(Motorola)からDSP56F807の型番で入手可能なプロセッサのような、16ビットのデジタル信号プロセッサが含まれる。この単一の処理部品は、シリアル通信、直交復調、A/Dコンバータ、およびオンボードメモリを含む数多くの処理機能を兼ね備えており、従って、各々の基板に必要とされるチップの総数を少なくすることを可能にする。
本発明のもう1つの重要な特徴によれば、各々のエンコーダは、個々に設けられた識別チップ121に対応付けられている。このチップは、各々の個別のエンコーダを特定することになるので、従って、品質管理、検査、および修理を容易にするとともに迅速化するように、各々の個別の軸受/エンコーダモジュール式カートリッジを特定することになる。
図23Bは、図23Aと同様の電子回路ブロック図であるが、図10、図12、図14および図16〜図22のデュアル読み取りヘッドの実施の形態を示す。
図24〜図26を参照して、多関節アーム14における各々のカートリッジの組み立てについて、さらに説明する(なお、図24には、基部12を含まないアーム10を示す。また、図24〜図26では、図9A、図11A、図13Aおよび図15Aの単一の読み取りヘッドの実施の形態を用いる)。図25に示すように、第1のロングジョイント16には、比較的長いカートリッジ44が含まれており、その上端部は、デュアルソケットジョイント46の円筒形のソケット120に差し込まれている。カートリッジ44は、適切な接着剤を用いてソケット120のなかにしっかりと保持される。カートリッジ44の反対側の端部である下端部は、延長チューブに差し込まれるが、これは、この実施の形態では、アルミニウム製のスリーブ122であってもよい(但し、スリーブ122は、硬質の合金または複合材料で構成されてもよい)。カートリッジ44は、再度、適切な接着剤を用いてスリーブ122内に固定される。スリーブ122の下端部は、外径が、より大きい部分124を含み、その上に、内ねじ切り126を有する。そのようなねじ切りは、外側に向かってテーパー形状であって、図4に明らかに示すように、磁気マウントハウジング130上において内側に向かってテーパー形状であるねじ切り128と螺合可能に嵌合するように構成される。既に述べたように、CMM10のいくつかのジョイントは、全て、そのようなテーパー形状のねじ切りを用いて相互に接続される。望ましくは、このテーパーねじは、自己締め付け式であるNPTタイプのものであり、従って、ロックナットまたはその他の固定機構は、全く必要ない。また、このねじ切りは、ねじロック剤を許容するものであり、これを含むであろう。
図26を参照すると、第1のロングジョイント16においてと同様に、ロングカートリッジ44’は、デュアルソケットジョイント46’の円筒形の開口120’に接着固定される。カートリッジ44’の外ハウジング64’には、フランジ72’の下側表面によって画定された肩部132が含まれる。この肩部132は、ハウジング64’の外側表面の上方に、これを取り囲むように設けられた円筒形の延長チューブ134を支持する。延長チューブは、各ジョイントにおいて、ねじ切りされた部品に連結するための調節可能な長さのチューブをつくるために用いられる。延長チューブ134は、従って、カートリッジ64’の底部から外側に向かって延在しており、そのなかに、ねじ切りされたスリーブ136を差し込んでいる。適切な接着剤が、ハウジング44’を延長チューブ134に接着するとともに、スリーブ136とチューブ134とを互いに接着するために用いられる。スリーブ136は、テーパー部分が、その上に、外ねじ切り138を有するところで終端する。外ねじ切りは、デュアルソケットジョイント48の開口144内に接着固定されている接続部142上において、内ねじ切り140と螺合可能に嵌合する。望ましくは、延長チューブ134は、例えば、適切な炭素繊維複合材料のような、複合材料で構成される一方で、螺合可能なスリーブ136は、デュアルソケットジョイント48の熱特性に適合するようにアルミニウムで構成される。言うまでもないが、PC(プリント回路)基板114が、支持部146に固定されて、さらに、これが、デュアルソケットジョイント支持部142に固定される。
上述したねじ切りされた接続部に加えて、各ジョイントのうちの1つ、一部、または全てを、図25Aおよび図25Bに示したようなねじ切りされた固定具を用いて相互に接続するようにしてもよい。図26のねじ切りされたスリーブ136の代わりに、図25Bのスリーブ136’は、滑らかなテーパー形状の端部137を有しており、これは、相補的なテーパー形状のソケット支持部142’に収容される。フランジ139は、スリーブ136’から外側に向かって円周状に延在しており、それを貫通するボルト穴アレイ(この場合は、6穴)が、ねじ切りされたボルト141を収容するために備えられている。ボルト141は、ソケット支持部142’の上側表面に沿って、対応する穴に螺合可能に収容される。延長チューブ134’ は、図26の実施の形態においてと同様に、スリーブ136’の上方に収容される。各ジョイントのための相補的なテーパー形状のオス相互接続部とメス相互接続部とによって、従来と比べて向上した接続インターフェースが提供される。
さらに、図26を参照すると、第3のロングジョイント34のロングカートリッジ44’’は、ロングジョイント30のカートリッジ44’と同様のやり方で、アーム14に固定されている。すなわち、カートリッジ44’’の上部分は、デュアルソケットジョイント46’’の開口120’’のなかに接着固定されている。延長チューブ148(望ましくは、チューブ134について述べたような複合材料で構成されている)は、外ハウジング64’’の上方に配置されており、そこから外側に向かって延在して、嵌合スリーブ150を収容するようにして、これを、延長チューブ148の内径に接着固定する。嵌合スリーブ150は、テーパー部分が、外ねじ切り152を有するところで終端しており、デュアルソケットジョイント148’の内部において円筒形のソケット156に接着連結されているデュアルソケットジョイント支持部154上における相補的な内ねじ切り153と嵌合する。プリント回路基板116は、同様に、デュアルソケットジョイント支持部154に固定されたPCB支持部146’を用いて、デュアルソケットジョイントに接続される。
図7および図8について述べたように、図13および図14におけるショートカートリッジ44’および図15の108は、単に、2つのデュアルソケットジョイント46,48の間に配置されており、デュアルソケットジョイントの内部において適切な接着剤を用いて固定される。結果として、ロングカートリッジおよびショートカートリッジは、互いに、直角(あるいは、所望の場合には、直角以外の角度)で、容易に連結される。
上述したようなモジュール式の軸受/変換器カートリッジは、例えば、上記のラーブの‘356号特許およびイートンの‘148号特許において示したような、携帯可能なCMMにおける重要な技術的進歩を構成する。これは、カートリッジ(または、カートリッジのハウジング)が、多関節アームを構成する各々のジョイントの構成要素を実際に画定するからである。ここで用いたように、「構成要素」とは、カートリッジ(例えば、カートリッジハウジング)の表面が、アームの変形を伴うことなく(あるいは、最大でも、ほんの少しの変形を伴うのみで)回転を伝達するために、多関節アームの別の構成部品に固定的に連結されているということを意味する。これは、独立した別個のジョイント要素と伝達要素とが必要とされており、回転エンコーダが、ジョイント要素の一部である(但し、伝達要素ではない)、従来の携帯可能なCMM(例えば、ラーブの‘356号特許およびイートンの‘148号特許に開示されたようなCMM)と対照的である。要するに、本発明によれば、ジョイント要素および伝達要素の機能性を組み合わせて、単一のモジュール式の部品(すなわち、カートリッジ)にすることによって、独立した伝達要素(例えば、伝達部材)の必要性が解消されている。このように、独立した別個のジョイントおよび伝達部材で構成された多関節アームの代わりに、本発明においては、より長いジョイント要素およびより短いジョイント要素(すなわち、カートリッジ)の組み合わせで構成された多関節アームを用いており、これらのジョイント要素の全てが、そのアームの構成要素である。これは、従来の技術に比べて効率向上につながる。例えば、‘148号特許および‘582号特許におけるジョイント/伝達部材の組み合わせにおいて用いられた軸受の数は、4つ(ジョイントにおける2つの軸受および伝達部材における2つの軸受)であったのに対して、本発明のモジュール式の軸受/変換器カートリッジでは、最低の1つの軸受を(但し、2つの軸受のほうが望ましい)用いることができるだけでなく、これまでどおり同様の機能性を(但し、異なる、より向上したやり方で)達成することができる。
図24A、図26Aおよび図26Bは、図24〜図26と同様の断面図であるが、図10、図12、図14および図16〜図22のデュアル読み取りヘッドの実施の形態を示しており、さらに、図3Aに示したCMM10’の断面図である。
多関節アーム14の全長および/または様々なアーム部分は、その所期の用途に応じて様々であろう。1つの実施の形態において、多関節アームは、約24インチの全長を有して、約0.0002インチ〜約0.0005インチのオーダーの測定値を提供する場合がある。このアーム寸法および測定精度では、現在、例えば、マイクロメータ、ハイトゲージ、キャリパ等のような、一般的な手持ちの器具を用いて達成されている測定に好適な携帯可能なCMMが提供される。当然のことながら、多関節アーム14が、より小さな寸法またはより大きな寸法およびより低い精度レベルまたはより高い精度レベルを有することも可能であろう。例えば、より大きなアームは、全長が、8フィートまたは12フィートであって、対応付けられた測定精度が、0.001インチである場合があり、これによって、ほとんどの即時検査の用途に用いること、またはリバースエンジニアリングに用いることを可能にする。
また、CMM10は、それに取り付けられたコントローラとともに用いて、上述の米国特許第5,978,748号明細書および米国特許出願第09/775,226号明細書において開示されたように、比較的簡単な実行可能なプログラムを実行するために用いることができるし、また、ホストコンピュータ172上のより複雑なプログラムに用いることもできる。
図1〜図6および図24〜図26を参照すると、好適な実施の形態において、ロングジョイントおよびショートジョイントの各々は、エラストマ緩衝材またはカバーによって保護されており、これは、衝撃の大きいショックを抑制するとともに、人間工学的に快適なグリップ位置(および見た目に美しい外観)を提供するように機能する。ロングジョイント16,30,34は、全て、硬質プラスチック(例えば、ABS)製の交換可能なカバーによって保護されており、これは、衝撃および摩耗に対するプロテクタとしての役割を果たす。第1のロングジョイント16の場合は、この硬質プラスチック製の交換可能なカバーは、図4にも示したように、2つの部分からなる基部ハウジング26A,26Bの形で提供されている。ロングジョイント30,34は、それぞれ、一対のカバー部分40,41によって保護されており、これは、図5および図6に示すように、保護スリーブを形成するように、適切なねじを用いて二枚貝の貝殻(クラムシェル)状に互いに固定することができる。言うまでもないが、好適な実施の形態において、各々のロングジョイント30,34のための、この硬質プラスチック製の交換可能なカバーによって、望ましくは、複合材料(炭素繊維)製である延長チューブ134,148が、それぞれ、取り囲まれることになる。
望ましくは、これらのカバーの1つ、すなわち、この場合は、カバー部分41には、それに一体成形された傾斜支持支柱166が含まれており、これによって、プローブ28が、停止位置にあるときに基部12にぶつからないように、アームの肘部分における回転を制限する。これは、図3、図24および図26に、最適な状態で図示されている。言うまでもないが、支柱166は、このようにして、不必要な衝撃および摩耗を抑制することになる。
また、図29および図31について、以下に説明するように、プローブ28は、硬質プラスチック材料でつくられた交換可能なプラスチック保護カバーを含む場合もある。
図3A、図24A、図26Aおよび図26Bには、代替的な保護スリーブ40’,41’を示しており、これらもまた、クラムシェル構造を有するが、ねじ切りされた固定具の代わりに、ストラップまたはスプリングクリップ167を用いて所定の位置に保持される。
ショートジョイント18,32,36の各々には、上述したように、また、図1〜図3、図5および図6に明らかに示すように、一対のエラストマ(例えば、スタントプレン(Stantoprene)(登録商標)のような熱可塑性ゴム)製の緩衝材38が含まれる。緩衝材38は、ねじ切りされた固定具または適切な接着剤を用いて連結してもよいし、その他の適切ないずれかのやり方で連結してもよい。エラストマまたはゴム製の緩衝材38によって、衝撃の大きいショックが抑制されるばかりではなく、見た目に美しく、人間工学的に快適なグリップ位置が提供されることになる。
上述のカバー40,41,40’,41’および緩衝材38は、全て、簡単に交換することが(基部ハウジング26A,26Bと同様に)可能であるので、アーム14は、CMM10の機械的な性能に影響を与えることなく、速やかに、かつ安価で修繕することが可能となる。
引き続き、図1〜図3を参照すると、基部ハウジング26A,26Bには、図3の168に示すように、少なくとも2つの円筒形の突起が、球面の取り付け用に含まれる。この球面は、クランプタイプのコンピュータホルダ170の取り付けに用いることができるが、これによって、さらに、携帯可能なまたはその他のコンピュータ機器172(例えば、「ホストコンピュータ」)が支持される。望ましくは、円筒形の突起が、基部ハウジング26A,26Bのいずれの側面にも設けられるので、ボールおよびクランプによるコンピュータマウントを、CMM10のいずれの側面にも取り付けることができる。
次に、図15、図16、図27A、図27B、および図28を参照して、CMM10とともに用いるための好適なカウンタバランスについて以下に説明する。従来、本明細書において説明したタイプの携帯可能なCMMには、カウンタバランスとして多関節アームの外側に張り出すように単独で取り付けられた外付けのコイルばねが用いられてきた。これに対して、本発明では、完全に一体化された内蔵カウンタバランスを用いており、これにより、多関節アームにおいて全体として低背化(lower overall profile)されるということにつながる。一般に、従来技術によるカウンタバランスは、カウンタバランス機構のなかに巻きコイルばねを用いてきた。しかしながら、本発明の重要な特徴によれば、カウンタバランスは、(巻きコイルばねではなく)機械加工されたコイルばねを用いる。この機械加工されたばね110は、図16および図27A〜図27Bに図示されており、このコイルの対向する端部における比較的幅の広い一対のリング174,176と、これらの端部コイル174,176の間における中間コイルとなる比較的幅のより狭いリング178と、を設けるように機械加工された金属(スチール)製の単一円筒からなる。言うまでもないが、より幅の広い端部リング174,176がそれぞれ、シャフト62’の側面180およびハウジング64’’の側面182に係合し、これによって、ばね110の横方向の動きが防止される。より幅の広い、中実の端部リング174,176は、ねじれ防止装置としての役割を果たし、従来の巻きばねと比べて、優れた機能をもたらす。望ましくは、端部リング174は、一対の係止支柱184,186(但し、1つだけの係止支柱としてもよい)を備え、端部リング176は、係止支柱188を備える。
図27Bを参照すると、各々のデュアルソケットジョイント46,48には、それぞれの支柱184,186,188を収容するために、例えば、デュアルソケットジョイント46において、190,191に図示されているような経路(溝)が設けられている。図28を参照すると、ピン184,186は、デュアルソケットジョイント48における適切な経路つまり溝のなかの決まった位置にとどまることになるが、ピン188の位置は、ばね110における全体的な巻き締め(overall wind-up)が最適な状態になり、最も効率的なカウンタバランス力が得られるように変えることができる。これは、ねじ切りされたねじ194を収容するねじ切りされた穴192を用いて行われる。図28に示すように、ねじ194は、内側経路696に沿って時計回り方向に円周方向にピン188に接触してピン188を移動させるように動かすことが可能である。この内側経路696は、図27Bにおいて、ピンアクセス溝190に対して垂直に図示されている。ねじ194は、望ましくは、工場において、ばね110が最適になるように位置調整される。
言うまでもないが、多関節アーム14の使用中において、エンコーダ/軸受カートリッジ108は、ヒンジジョイントとしての役割を果たすことになり、一旦、デュアルソケットジョイント46,48のソケットのなかに挿入され接着固定されると、ピン184,186,188は、それらのそれぞれの溝のなかに係止されることになる。ソケットジョイント48がソケットジョイント46に対して(カートリッジ108のヒンジジョイントを介して)回転させられると、ばね110が巻き締まることになる。ソケットジョイント48がその元の位置まで回転し戻ることが望ましい場合に、ばね110の巻き力(wound forces)が緩むことで、所望のカウンタバランス力が得られることになる。
例えば、グラインダ、梁、または天井のように、多関節アーム14を上下反対に取り付けることが望まれる場合には、ばね110の向きを同様に反転させて(または逆にして)もよく、これにより、必要なカウンタバランスに適した向きを実現することができる。
次に、図29および図30A〜図30Cを参照して、測定プローブ28の好適な実施の形態について、以下に説明する。プローブ28には、ハウジング196が含まれており、そのなかに、プリント回路基板118を収容するための内部空間198を有する。言うまでもないが、ハウジング196は、上述したタイプのデュアルソケットジョイントを構成しており、回路基板118を支持するための支持部材199が接着されるソケット197を含む。望ましくは、ハンドル28は、2つのスイッチ、すなわち捕捉スイッチ200および確認スイッチ202を備える。操作者は、これらのスイッチを用いて、操作中に、測定値を捕捉(捕捉スイッチ200)するとともに、その測定値を確認(確認スイッチ202)する。本発明の重要な特徴によれば、これらのスイッチは、互いに、違いを明確にすることで、使用に際して、取り違えることをできるだけ少なくする。このように違いを明確にすることは、例えば、スイッチ200,202が、異なる高さおよび/または異なる手触り(なお、スイッチ202は、スイッチ200の滑らかな上面とは対照的に、凹凸(identation)を有する)および/または異なる色(例えば、スイッチ200は、緑色であってもよく、スイッチ202は、赤色であってもよい)であることを含む1つまたは複数の形で実現できる。また、本発明の重要な特徴によれば、表示灯204が、正常なプローブ検出が行われていることを表示するために、スイッチ200,202と対応付けられている。望ましくは、表示灯204は、2色灯であり、例えば、灯204は、測定値を捕捉(緑色の捕捉ボタン200を押下)しているときは緑色であって、測定値を確認(赤色の確認ボタン202を押下)している間は赤色である。多色灯を用いることは、既に知られているLEDを灯204の光源として用いることで容易に達成される。グリップを助けるために、また、美観の向上および耐衝撃性を提供するために、上述したタイプの外側の保護被覆が、206に特定されており、プローブ28の一部を覆うように設けられている。スイッチ回路基板208が、ボタン200,202およびランプ204を取り付けるために設けられており、支持部材199によって支持されている。スイッチ基板208は、基板118と電気的に相互接続されており、これは、スイッチおよび表示灯を処理するためばかりではなく、ショートヒンジジョイント36の処理をするための部品を収容する。
本発明のもう1つの重要な特徴によれば、また、図29および図30A〜図30Cを参照すると、プローブ28には、恒久的に取り付けられたタッチトリガプローブばかりではなく、タッチトリガプローブを保護しつつ固定プローブを適応させるための脱着可能なキャップが含まれる。タッチプローブ機構は、図29において210に図示されており、簡単な3点キネマティックシートを土台としている。この従来の構成においては、コンタクトスプリング216によってバイアスがかけられたボール214に接触するノーズ212を備える。3つのコンタクトピン(1つのピンが、218に図示されている)が、下にある電気回路と接触している。プローブノーズ212に対して何らかの力を加えると、結果として、3つのコンタクトピン218のいずれか1つを持ち上げることになり、下にある電気回路を開くことになり、従って、スイッチを作動させることになる。望ましくは、タッチトリガプローブ210は、前面の「捕捉」スイッチ200と連係して動作することになる。
図30Bに示すように、タッチトリガプローブ210を用いる場合に、ねじ切りされた保護カバー220が、トリガプローブ210を取り囲むねじ切り222に螺合可能に連結される。但し、タッチトリガプローブではなく、固定プローブを用いるのが望ましい場合には、脱着可能なキャップ220を取り外して、例えば、図29および図30A〜図30Cの224に図示したような所望の固定プローブが、ねじ切り222に螺合可能に連結される。言うまでもないが、固定プローブ224は、これに連結された球状のボール226を有するが、どのような異なる所望の固定プローブ構造であっても、容易に、プローブ28にねじ切り222を介して螺合可能に連結することができる。タッチトリガプローブアセンブリ210は、ハウジング228に取り付けられており、これは、ねじ切りされたコネクタ230に螺合可能に収容されており、これによって、プローブハウジング196の一部が形成される。このように螺合可能に相互接続することによって、タッチトリガプローブ210をプローブ28に完全に一体化することが可能になる。完全に一体化されたタッチプローブを設けることは、本発明の重要な特徴であり、従来のCMMに連結された従来の脱着式タッチプローブと区別することが可能である。さらに、恒久的に取り付けられたタッチトリガプローブもまた、上述したように、容易に、ハードプローブと交換することが可能である。
図29A〜図29Cには、本発明による測定プローブのさらにもう1つの好適な実施の形態を示す。図29A〜図29Cにおいて、測定プローブは、28’に図示されており、図29の測定プローブ28と実質的に同様であって、主な違いは、「捕捉」スイッチおよび「確認」スイッチの構成にある。図29に示した別々のボタン形スイッチの代わりに、測定プローブ28’では、二対の弓状長円形スイッチ200a,200bおよび202a,202bを用いる。長円形スイッチ200a,200bおよび202a,202bの各対のそれぞれは、図29について上述した捕捉スイッチおよび確認スイッチに、それぞれ相当する。測定プローブ28’の実施の形態における測定プローブ28の実施の形態に対する利点としては、長円形スイッチ202および200の各対は、実質的に、測定プローブの全周(または、その周囲の少なくとも大部分)を取り囲んでおり、従って、その携帯可能なCMMの操作者によって、より容易に動かすことが可能であるという点がある。図29の実施の形態においてと同様に、表示灯204が、各々のスイッチに対応付けられており、灯204およびスイッチ200,202は、それぞれの回路基板208’上に取り付けられている。また、図29の実施の形態においてと同様に、スイッチ200,202は、例えば、異なる高さ、異なる手触り、および/または異なる色を用いることで、違いを明確にすることができる。望ましくは、スイッチ200,202は、わずかな浮きを有しており、そのボタンを、それに沿ったどの位置であっても押下したときに作動させることができる。図29の実施の形態においてと同様に、上述したタイプの外側の保護被覆が、206に用いられており、プローブ28’の一部を覆うように設けられている。
次に、図31を参照すると、CMM10に用いるための代替的な測定プローブを、232に概略的に示す。測定プローブ232は、図29の測定プローブ28と同様であって、主な違いは、プローブ232には、回転ハンドルカバー234が含まれるという点である。回転カバー234は、間隔をあけて配置された一対の軸受236,238上に取り付けられており、これらは、さらに、内側の中心部つまり支持部240上に取り付けられているので、カバー234は、内側の中心部240のまわりを(軸受236,238を介して)自由に回転することが可能となっている。軸受236,238は、望ましくは、ラジアル軸受であって、プローブ操作によるアーム上の寄生トルク(parasitic torques)を最小限に抑える。重要なことに、スイッチ板208’および対応するスイッチ200’,202’およびLED204’は、全て、回転ハンドルカバー234に、これとともに回転するように取り付けられている。回転中に、処理回路基板118’への電気的な接続性を提供するのに、従来のスリップリング機構242が用いられており、これは、間隔をあけて配置された既に知られている複数のスプリングフィンガ242を備えており、これが、固定された環状経路244に接触する。さらに、これらの接触経路244が、回路基板118’に電気的に接続される。回転ハンドルカバー234およびスイッチアセンブリは、このようにして、内側の中心部つまりプローブシャフト240および電子回路基板118’に、スリップリング導体242を用いて電気的に結合される。プローブハンドル234の回転によって、スイッチ200’,202’を、使用者にとって具合のよい向きに向けることが可能になる。これによって、記録されない力を最小限に抑えることによって、操作中における多関節アーム14’による正確な測定が可能になる。カバー234は、望ましくは、硬質ポリマによって構成されており、適切な凹凸246,248が設けられているので、プローブ操作者が、容易かつ具合よく、握ったり操作したりすることが可能である。
言うまでもないが、プローブ232の残りの部分は、恒久的かつ一体的に取り付けられたタッチプローブ210がカバー220に設けられていることを含めて、プローブ28と全く同様である。なお、スイッチ200’,202’は、容易に識別することを可能にするように、高さおよび表面の手触りが異なっている。
回転カバー234は、例えば、上述の米国特許第5,611,147号明細書に開示されたようなプローブにおける7番目の回転軸の必要性を軽減させることが可能であるという点で、CMM分野における著しい進歩である。言うまでもないが、7番目の軸を追加することは、より複雑で高価なCMMとなることにつながるばかりではなく、システムに起こりうるエラーを増加させることにつながる。回転可能なプローブ232を用いることによって、「真の」7番目の軸の必要性が軽減されるのは、それによって、そのプローブが、プローブ端部におけるハンドル配置のために必要な回転を、7番目の変換器および付随する軸受、エンコーダ、および電子回路による複雑さを伴うことなく与えることが可能となっているからである。
「真の」7番目の軸を有する測定プローブを用いることが望ましい場合には、すなわち、測定プローブが、旋回回転を測定するための7番目の回転エンコーダを備えており、そのような測定プローブを、図37〜図40に示す。これらの図面には、測定プローブ500が図示されており、そのような測定プローブは、図29の測定プローブと実質的に同様であって、主な違いは、上述したタイプのモジュール式の軸受/変換器カートリッジ502を装着していること、測定プローブの側面に捕捉スイッチ504および確認スイッチ506があること、脱着可能なハンドル508を含むことである。
言うまでもないが、モジュール式の軸受/変換器カートリッジ502は、詳細に上述したカートリッジと実質的に同様であって、回転可能なシャフトと、シャフト上の一対の軸受と、光学エンコーダディスクと、エンコーダディスクから間隔をあけて配置されて、エンコーダディスクと光学的な通信状態にある、少なくとも1つ、望ましくは、2つの光学読み取りヘッドと、これらの、軸受と、光学エンコーダディスクと、読み取りヘッドと、シャフトの少なくとも一部と、を取り囲むハウジングと、を含んでおり、単体のモジュール式の軸受/変換器カートリッジを画定することになる。エンコーダ電子回路のための回路基板503が、プローブ500の開口504にある。捕捉ボタン504および確認ボタン506の各対は、プローブ500の下向きに突き出たハウジング部分510のいずれの側面にも配置されており、各ボタンは、図29の実施の形態による測定プローブにおいてと同様に、適切なPC基板512に接続されている。同様に、表示灯513が、上述した実施の形態においてと同様に、ボタン504とボタン506との間に配置されている。ハウジング510におけるねじ切りされた一対の開口514において、測定プローブ500の使用中に容易に回転操作することを可能にするハンドル508を脱着可能に連結するための固定具を収容する。
その他の重要な全ての点において、測定プローブ500は、図29の測定プローブ28と同様であって、望ましくは、516に、恒久的に取り付けられたタッチトリガプローブを用いるとともに、タッチトリガプローブを保護しつつ固定プローブ518を適応させるための脱着可能なキャップを用いる。言うまでもないが、測定プローブ500に7番目の回転エンコーダ502が含まれていると、CMM10を、既に知られているレーザラインスキャナおよびその他の周辺機器と接続して用いる上で役に立つ。
次に、図2〜図4、図23および図25を参照すると、本発明の重要な特徴によれば、携帯可能な電力供給装置を設けて、CMM10に電力を供給することで、完全に携帯可能なCMMが提供される。これは、従来のCMMにおいて、電力供給を、ACコードのみによって得ていたのとは異なる。また、CMM10は、通常の差し込み式のコンセントからAC/DCアダプタを介してACコードによって直接、電力供給を得るようにしてもよい。図2、図3および図25に示すように、通常の再充電可能な電池(例えば、リチウムイオン電池)が、22に図示されている。電池22は、通常の電池支持部252に機械的かつ電気的に接続されており、これは、さらに、回路基板20上に配置された通常の電力供給用および電池再充電用の回路部品254に電気的に接続されている。同様に、基板20と通信を行うのは、オン/オフスイッチ258(図3参照)および高速通信ポート259(望ましくは、USBポート)である。アーム14のジョイント電子回路は、RS−485バスを用いて基板20に接続されている。電池22は、独立した充電器上で充電したり、通常のビデオカメラで一般的にみられるようにクレードル252における所定の位置に入れて充電したりすることが可能である。言うまでもないが、携帯可能なコンピュータ172(図2参照)は、その内蔵電池により数時間にわたって動作することが可能であり、および/または、代替的に、CMM10の電力供給ユニット254に電気的に接続される場合もある。
本発明によるオンボード電力供給/再充電ユニットは、望ましくは、この部品を、基部12の一体化された部分として、より具体的には、プラスチック製の基部ハウジング26A,26Bの一部として配置することによって、CMM10の一体化された部分として配置される。なお、望ましくは、基部ハウジング26A,26Bは、予備の電池またはプローブ等を保管するために、枢動可能な蓋262を有する小型の保管領域260を含む。
次に、図4、図25、図32〜図34を参照して、CMM10に用いるための新規な磁気取り付け機構について以下に説明する。この磁気取り付け機構は、図4、図25、図32、および図33において、24に、概括的に図示されている。磁気マウント24は、円筒形の非磁性ハウジング266を含んでおり、これは、その上端部において、ねじ切りされた部分268において終端する。CMM10に用いられた全ての好適なねじ切りと同様に、ねじ切り268は、テーパー形状のねじ切りであって、これは、図25に最適な状態で図示されているように、第1のロングジョイント16のねじ切り126に螺合接続されることになっている。互いに180°に対向するように配置され、ハウジング266から外向きかつ下向きに延在する2つの長手方向延長部分270,272を除けば、非磁性ハウジング266は、実質的に円筒形の構造となっている。長手方向延長部分270,272の両側には、一対の半円筒形ハウジング274,276が連結されており、その各々は、“磁性”材料、すなわち、例えば、鉄または磁性ステンレス鋼のような磁化可能な材料からなる。さらに、“磁性”ハウジングの半分部分274,276および長手方向延長部分270,272により、磁性コア278を収容し格納するための開放端型の円筒形容器が構成される。磁性コア278は、一対の希土類磁石(例えば、ネオジミウム−鉄−ボロン)282,284の間に非磁性中央部分280を挟んだ長円形の形状である。軸方向の開口286が非磁性中央部分280を貫通して設けられている。環状カバープレート288が、磁性コア278の下方に位置し、構成要素274,276および長手方向延長部分270,272によって構成された下部ハウジングのなかに配置される。シャフト290が、ハウジング266のなかに環状開口292を貫通して配置されており、磁性コア278の軸方向の開口286を貫通して下向きに延在する。シャフト290は、上部軸受292および下部軸受294によって回転させることができるように支持されている。上部軸受291は、ハウジング266における内側円筒形凹部に収容され、下部軸受294は、カバープレート288における同様の円筒形凹部に収容される。レバー296が、シャフト290から外向きかつ垂直に延在しており、以下に述べるように、磁気マウント264のためのオン/オフ機構を提供する。レバー296は、ハウジング266を貫通する溝297を貫通してハウジング266の外側に向かって延在する(図25参照)。
レバー296、シャフト290、および軸受292,294からなるこのアセンブリ全体は、上方のねじ切りされた固定具298および下方の保持リング300を用いて、互いに固定されている。言うまでもないが、磁気マウント264の各種部品は、さらに、例えば、ハウジング266を“磁性”材料ハウジング部分274,276に接続するねじ切りされた固定具302、およびハウジング部分274,276をカバー288に相互接続するねじ切りされた固定具304によって固定されている。さらに、ねじ切りされた固定具306により、ハウジング266の長手方向延長部分270,272がカバー288に連結される。ピン308が、コア278における横方向の開口およびシャフト290における横方向の開口に収容され、シャフト290をコア278に係止するようになっている。このようにして、レバー296が回転させられるのに従って、シャフト290は、シャフト接続部208を介してコア278を回転させることになる。
図1、図3、および図25に示すように、レバー296は、ハンドル310に接続されており、このハンドル310は、基部12の外側において容易にアクセス可能で(手が届きやすく)、磁気マウント264を作動させるために用いられる。この作動を実現するために、ハンドル296は、単に、(図1中、右から左へ)移動させられる。ハンドル310の移動により、次に、レバー296が回転させられ、これによって、次に、シャフト290が回転させられ、これによって、さらに、希土類磁石282,284が回転させられ、これらの非動作位置(磁石282,284が非磁性延長部分270,272と整列させられた位置)から、磁石282,284が磁性材料274,276と整列させられた作動位置に移ることになる。このように、これらの磁石が磁性材料と整列させられると、磁界(磁束)が生じる。同様に、磁石282,284が磁性材料274,276と整列した状態から外れると、磁束通路が遮断される。この状態において、磁性基部は、これが載せられているテーブルから切り離すことが可能である。但し、非整列位置であっても、多少の残留磁束が存在することになるということに注目すべきである。この“オフ”位置における小さな残留磁束は、本発明の良い特徴であって、これは、テーブル上に戻したときに、小さな量の磁束が磁石に対して反応し、レバー296を自動的に回転させ“オン”位置に戻す役割を果たすからである。言うまでもないが、磁石が磁性材料と整列状態となると、強力な磁界が発生させられ、半円形の構成要素274,276は、その下部に、図25および図33において312に示すように形成された環状表面に磁気的にくっつけられることになる。
本発明の磁気マウント264によれば、これが、(ねじ切り268を介して)脱着可能に取り付けられており、例えば、ねじマウントまたは真空マウントのような、その他の装着機構と置き換えることが可能であることから、完全に一体化されながらも脱着可能な取り付け機構が提供される。当然のことながら、適切に用いられるためには、磁気マウント264は、磁化可能な表面上に配置されなければならず、動作するためには、(レバー296を介して)作動させられなければならない。非磁性表面(例えば、花崗岩)に対する取り付けが必要とされる場合には、境界面プレートまたはその他の適切な機構を磁性基部と非磁性表面との間に用いなければならない。
いくつかの好適な実施の形態を図示および説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、これらに対して、様々な修正および置換を行うことが可能である。従って、当然のことながら、本発明は、限定としてではなく、例示として説明されたものである。