JP2007500201A - エクチナサイジン−743と白金抗腫瘍化合物との併用 - Google Patents

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Abstract

ET-743は、ヒトの癌患者における白金配位錯体抗腫瘍薬に対する耐性を軽減し、細胞傷害作用を増強するために使用することができる。

Description

本発明は、治療に関し、より具体的には癌治療における抗腫瘍化合物の使用の改善に関する。
本発明は、癌治療のためのエクチナサイジン743およびこの化合物を含む製品の使用、特に、癌治療における抗腫瘍白金配位錯体と組み合わせたエクチナサイジン743の使用に関する。
癌は、診療所で観察される大部分の症例を含む癌腫と、白血病、リンパ腫、中枢神経系腫瘍および肉腫などその他の発生率のより低い癌の2つのカテゴリーに分けることができる悪性腫瘍の群を含む。癌腫は上皮組織に由来し、一方肉腫は結合組織と中胚葉組織に由来するこれらの構造から発現する。肉腫は、例えば筋肉または骨に影響を及ぼし、骨、膀胱、腎臓、肝臓、肺、耳下腺、脾臓などで発生し得る。
癌は侵襲性で、新しい部位に転移する傾向がある。癌は周囲組織に直接浸潤(転移)し、さらにリンパ系および循環系を通して播種することが可能である。
癌では、局在化した病変に対する手術および放射線治療、ならびに薬物治療を含む多くの治療が利用できる。しかし、多くの癌種に対する利用可能な治療の有効性は限られており、臨床効果を示す新しい改善された治療が必要とされている。このことは進行病変および/または転移性病変を呈する患者では特に当てはまる。また、これは、以前に確立された治療による治療を受けた後、進行性病変が再発した患者にも当てはまり、これらの患者では同じ治療による以降の治療が、抵抗性獲得、または関連の毒性による治療実施の制限のためにほとんど効果がない。
化学治療は、遠隔転移を伴う進行癌の治療に必要とされ、多くの場合に手術前の腫瘍縮小にも役立つので、癌治療において重要な役割を果たす。多くの抗癌剤が、様々な作用機序を基にして開発されている。
最も一般的に使用される抗癌剤のタイプには、DNA-アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキセート、葉酸拮抗剤および5-フルオロウラシル、ピリミジン拮抗剤)、微小管形成阻害剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル)、DNAそう入剤(例えば、ドキソルビシン、ダウノマイシン、シスプラチン)およびホルモン治療(例えば、タモキシフェン、フルタミド)などがある。理想的な抗腫瘍薬は、非悪性細胞に対するその毒性に関連する広い治療係数を有し、選択的に癌細胞を殺すことができる。また、この薬剤に長期間曝露したあとでさえ、悪性細胞に対して有効性を保持することができる。残念なことに、現在の化学治療で理想的なプロフィールを有するものはない。そのほとんどは治療係数が非常に狭く、特にすべての例で、致死量以下の化学治療剤濃度に曝露した癌細胞は、そのような薬剤に対して耐性を獲得し、かなり頻繁に、他のいくつかの抗腫瘍薬に対して交差耐性を獲得する。
異なる作用機序を有する薬剤による併用治療は、処置した腫瘍による耐性獲得を防ぐために役立つ治療として認められている。
エクチナサイジン(ここではETと省略)は、海洋性被嚢類のEcteinascidia turbinataから単離された非常に強力な抗癌剤である。いくつかのエクチナサイジンは、特許文献および科学文献で以前に報告されている。これについては、例えば熱帯海洋性無脊椎動物のEcteinascidia turbinataから抽出され、エクチナサイジン729、743、745、759A、759Bおよび770として命名された物質の新しい化合物について記載した米国特許第5089273号を参照のこと。これらの化合物は、哺乳動物における抗菌剤および/または抗癌剤として有用である。米国特許第5478932号では、カリブ海の被嚢類Ecteinascidia turbinataから単離されるエクチナサイジンについて記載しており、本化合物はP388リンパ腫、B16黒色腫、M5076卵巣肉腫、ルイスラットの肺癌、ならびにLX-1ヒト肺およびMX-1ヒト乳癌異種移植片に対するインビボの保護もたらす。
これらのうちの1つであるエクチナサイジン-743(ET-743)は、ホヤ類のEcteinascidia turbinataから単離される新しいテトラヒドロイソキノリンアルカロイドであって、マウスおよびヒトの腫瘍において、かなりのインビトロおよびインビボでの抗腫瘍活性を有し、現在、臨床試験が行われている。
強力な抗腫瘍活性が、ヌードマウスにおけるヒト腫瘍異種移植片を含む、広い範囲のインビボでの腫瘍モデルで実証されている。Et-743は、遺伝子転写のレベルで新しい複雑な作用機序を有する。ET-743は、DNAの副溝でグアニン-シトシンに富む配列に結合し、N2位のグアニン残基をアルキル化する。
ヒト、マウスおよびイヌの前駆細胞を使用したインビトロでの骨髄測定では、ET-743に対して赤血球形成細胞および骨髄細胞は同等の感受性を示した。本剤に長期間または繰り返し曝露することにより、1回の1時間の曝露に比べて、造血前駆細胞に対する毒性が増すことが証明された。ET-743の治療係数は、長期曝露でより良好だった。
癌患者におけるET-743の臨床開発プログラムは、1時間、3時間、24時間および72時間の静注スケジュール、ならびに1時間1日×5(d×5)スケジュールを調査するフェーズI試験で開始された。フェーズIおよびフェーズII臨床試験で、ET-743は、軟部組織肉腫および卵巣癌などの数種のヒト悪性腫瘍に対して著明な抗腫瘍活性を示している。癌に関連する人体の治療におけるET-743の使用についての更なる詳細は、WO0069441で提供されており、本願明細書に援用する。
よく知られ使用される抗癌剤のファミリーは、白金化合物である。シスプラチン(シス−ジアミンジクロロプラチナム(II))は、1965年に細胞毒性物質として最初に同定された白金配位錯体である。抗腫瘍薬として広い活性を有し、上皮悪性腫瘍の治療で特に有用である。臨床試験で評価を受けている他の白金配位錯体には、カルボプラチン、テトラプラチン、オルミプラチン、イプロプラチンおよびオキサリプラチンなどがある。
シスプラチンまたはカルボプラチンなどの白金配位錯体抗腫瘍薬による癌患者の治療は、この10年間で実質的に増進している。シスプラチンは、精巣癌、卵巣癌および肺小細胞癌などの複数の悪性腫瘍の治療で有用なことが証明されており、一方、カルボプラチンは脳腫瘍、子宮内膜癌、胚細胞腫瘍および頭頚部癌で有用なことが証明されている。作用機序は、現在未知だが、これらの化合物がDNAに結合し、DNAおよびRNAの合成に干渉する可能性がある様々なタイプのストランド間およびストランド内の架橋を形成する能力に関連する可能性がある。
癌患者は、最終的にシスプラチンまたはカルボプラチンなどの白金配位錯体による治療に耐性を有するようになる。これらの化合物に対する耐性のメカニズムは不明だが、薬物蓄積の減少、本薬剤に結合して不活性化するメタロチオネインもしくはグルタチオンの細胞内濃度の上昇、または薬物-DNA付加物形成もしくは修復の減少に関連すると考えられる。したがって、これらの耐性を克服する有効な治療を開発する必要がある。
インビトロで増殖する癌細胞系で、ET-743およびシスプラチンの併用により、アイソボログラム分析による評価で相加効果または相乗効果が認められた。この相乗効果はインビボにおいても確認されている:Erba, E.ら、「ET-743 and cisplatin (DDP) show in vitro and in vivo synergy against human sarcoma and ovarian carcinoma cell lines」Proceed. AACR-NCI-EORTC、2001年11月、要約406; Faircloth、Glynn Thomas, Jr.ら、「In vivo combinations of chemotherapeutic agents with Ecteinascidin 743 (Et743) against solid tumors」 Proceed. AACR-NCI-EORTC、2001年11月、要約387; D'Incalci M.ら、「The combination of ET-743 and cisplatin (DDP): From a molecular pharmacology study to a phase I clinical trial.」 proceed. AACR、2002年3月、要約404; D'Incalci, M.ら、「In Human tumor xenografts the resistance to ET-743 or to cisplatin can be overcome by giving the two drugs in combination.」 Proceed. AACR-NCI-EORTC、2002年11月、要約97。
ET-743を含む併用治療は、WO0236135の目的でもあり、本願明細書にこの全体を援用する。
米国特許第5089273号 米国特許第5478932号 WO0069441 Erba, E.ら、「ET-743 and cisplatin (DDP) show in vitro and in vivo synergy against human sarcoma and ovarian carcinoma cell lines」Proceed. AACR-NCI-EORTC、2001年11月、要約406 Faircloth、Glynn Thomas, Jr.ら、「In vivo combinations of chemotherapeutic agents with Ecteinascidin 743 (Et743) against solid tumors」Proceed. AACR-NCI-EORTC、2001年11月、要約387 D'Incalci M.ら、「The combination of ET-743 and cisplatin (DDP): From a molecular pharmacology study to a phase I clinical trial.」proceed. AACR、2002年3月、要約404 D'Incalci, M.ら、「In Human tumor xenografts the resistance to ET-743 or to cisplatin can be overcome by giving the two drugs in combination.」Proceed. AACR-NCI-EORTC、2002年11月、要約97 WO0236135
本発明の目的は、ヒトの患者における白金配位錯体抗腫瘍薬に対する耐性を防ぐか、耐性の獲得を克服する有効な方法および製品を提供することである。本発明のもう1つの目的は、臨床状況における白金配位錯体抗腫瘍薬の細胞傷害作用を増強する有効な方法および製品を提供することである。
予想外なことに、我々は、併用投与すると、最大用量のET-743と白金化合物の特にシスプラチンまたはカルボプラチンを、毒性の増加または追加なしに投与できることを発見した。このことは、シスプラチンおよびカルボプラチンの総量を投与し、首尾よくET-743の用量を増加している臨床試験で確認されている。
したがって、本発明は、癌患者に対する白金化合物をET-743と併用投与する新しい治療レジメンに関する。
さらに本発明は、白金化合物量が、ET-743がない場合の白金化合物の推奨用量の少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%であり、ET-743の量が白金化合物がない場合のET-743の推奨用量の少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%である、白金化合物およびET-743を投与することに関わるヒト癌患者の治療を提供する。推奨用量は、用量制限毒性試験に基づく。好ましくは、白金化合物およびET-743の量は、両方ともそれぞれの推奨用量の少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%である。
もう1つの態様において、本発明は、併用が各薬剤の毒性を増加することなしに白金抗腫瘍化合物に対する耐性を克服することにより特徴付けられる、ET-743と白金化合物の併用治療によるヒト癌患者に対する有効な治療のための薬物調製における、ET-743の使用に関する。
関連する態様では、白金化合物の滴下用量を補うことなしにET-743を併用治療として投与する、白金化合物によるヒト癌患者の治療を提供する。
本発明のさらにもう1つの実施形態では、ET-743および白金化合物をそれぞれ単独で投与した場合の投与量と同じ投与量の範囲で、個人にET-743および白金化合物を投与することを含む、腫瘍疾患を有する個人の白金抗腫瘍化合物に対する耐性を減少する方法を提供する。
また、本発明は、白金化合物および薬学的に許容できる担体と毎週併用して投与するためのET-743の推奨用量を含む医薬組成物を提供する。
本発明のさらなる様態では、後述の投与スケジュールによるET-743投与のための印刷指示書と、各用量単位が上記で定義した治療のために適量のET-743と薬学的に許容できる担体を含む少なくとも1周期分の用量単位のET-743の供給を含む、抗腫瘍白金化合物と併用してET-743を投与するための医療キットを提供する。
ET-743は、下記の式で示される天然の化合物である。
Figure 2007500201
また、「ET-743」という用語は、薬学的に許容できるあらゆる塩、エステル、溶媒和化合物、水和物またはレシピエントへの投与において、本明細書に記載の化合物を提供する(直接的または間接的に)ことが可能な他のあらゆる化合物を包含する。しかし、非薬学的に許容できる塩も、薬学的に許容できる塩の調製に有用な可能性があるので本発明の範囲内に入ることはいうまでもない。塩ならびにプロドラッグおよび誘導剤の調製は、当技術分野で公知の方法により実施することができる。
ET-743は、治療に使用するために適した製剤の形でET-743と賦形剤からなる無菌凍結乾燥製品として供給および保存される。
本発明の併用は、ET-743および抗腫瘍白金化合物の、好ましくは錯体を含む。好ましい錯体として、シスプラチン、カルボプラチン、テトラプラチン、オルミプラチン、イプロプラチン、オキサリプラチンなどが挙げられる。好ましくは、白金配位錯体はシスプラチンまたはカルボプラチンであり、より好ましくはシスプラチンである。
2つの薬剤は、同時に投与するか、もう1つの投与後に連続して投与することが可能で、好ましくは、連続して投与する。
記載のように、本発明はヒト癌患者の治療を提供する。好ましくは、患者は再発しているか、以前の化学治療に無反応性である。最も好ましくは、患者は卵巣癌、頭頚部癌、非小細胞肺癌または黒色腫の患者である。特に好ましい実施形態では、患者は卵巣癌患者であって、以前の治療は白金化合物による治療を含む。
さらに、本発明は、ET-743を含む組成物を癌患者に最高4時間かけて持続投与で静注するステップと、その前後に白金抗腫瘍化合物を含む組成物を癌患者に持続投与で静注するステップとを周期的に毎週繰り返すことを含むヒトにおける癌の治療を提供する。
この注入ステップは、一般的に周期的に繰り返す。この周期は、週1回の注入期と休止期と呼ばれる非注入期の2つの段階を含む。休止期では、患者を回復させる。通常、本周期は数週間で実施し、したがって1週または複数週の注入期と1週または複数週の休止期を含む。休止期は、注入期より長くても、短くてもよい。各周期の好ましい期間は、2〜4週間であって、必要に応じて複数周期を実施してもよい。1週または2週の注入期からなる3週または4週の周期が最も好ましい。
ET-743をシスプラチンと併用投与するとき、ET-743の用量は、好ましくは3週または4週スケジュールの各1日目と8日目に700μg/m2/日未満であり、好ましくは約400〜約650μg/m2/日であって、より好ましくは約500〜約650μg/m2/日であって、さらに好ましくは約550〜650μg/m2/日である。この場合、最も好ましいスケジュールは、4週ごとの1日目と8日目に両方の化合物を投与するスケジュールである。
一方で、ET-743をカルボプラチンと併用投与するとき、ET-743の用量は、3週スケジュールごとの1日目に1200μg/m2/日未満であり、好ましくは650〜1200μg/m2/日であって、より好ましくは800〜1000μg/m2/日であって、さらに好ましくは800〜900μg/m2/日である。
シスプラチンの用量は、実施スケジュールのタイプにより使用される全用量範囲である。好ましくは、約30〜60mg/m2/日であり、より好ましくは約40〜50mg/m2/日であって、さらに好ましくは約40mg/m2/日である。
カルボプラチンの用量は、実施スケジュールのタイプにより使用される全用量範囲である。好ましくは、約200〜400mg/m2/日であり、より好ましくは約250〜300mg/m2/日である。
特定の実施形態では、ET-743の注入時間は、1〜3時間であり、好ましくは2〜3時間である。特に好ましくは、約3時間である。
上記のスケジュールおよび用量により、ヒトにおける有効な併用癌治療を可能にし、一方で毒性を避けることを可能にする。本発明者らは、ET-743とシスプラチンまたはカルボプラチンの併用が、進行癌または転移癌などのいくつかの癌種の治療において有効であることを発見している。好ましくは、肉腫、骨肉腫、卵巣癌、乳癌、黒色腫、頭頚部癌、大腸癌、中皮腫、腎癌、子宮内膜癌および肺癌の治療において、上記のスケジュールまたは用量に従ってET-743と白金化合物を併用することである。
腫瘍および病変の発達段階によって、本発明の治療は、発達する腫瘍のリスクの防止、腫瘍退縮の促進、腫瘍増殖の停止および/または転移の防止において有用である。
用量のガイダンスはすでに述べたが、本化合物の正しい用量は、特定の製剤、適用様式、ならびに治療される特定の位置、宿主および腫瘍により異なる。年齢、体重、性別、食事、投与の時間、排出の率、宿主の状態、薬剤の併用、反応感受性および疾患の重症度などのその他の因子を考慮に入れる必要がある。投与は、最大耐量の範囲内で連続的または周期的に実施することができる。
(実施例)
(実施例1)
インビボでのET-743とシスプラチン(DDP)の併用の効果を評価するために、DDPの一回量に相対的に耐性があり、ET-743の一回量に中等度に感受性があるいくつかの異種移植片を選択した。本剤の投与のために、適切な賦形剤を薬物治療と同じスケジュールおよび注射経路で注射した。ET-743およびDDPを1時間間隔で連続して、または同時に投与した。皮下に移植された異種移植片で、腫瘍の増殖を監視し、腫瘍重量(TW)は、腫瘍の直径を2〜4日ごとにノギスで計測し、式TW=d2×D/2(dとDは、それぞれ短径および長径を表す)を使用して測定した。
毒性による死亡を引き起こさない最大一回静注用量は、DDPが12mg/kgで、ET-743が0.2mg/kgであった。2つの薬剤が異なる実験(n=14)で10〜26%(中央値15%)の範囲の最大体重減少を示した耐容毒性で併用投与するとき、各薬剤の同じ用量を投与することができた。驚くべきことに、併用による治療は、各薬剤単独の治療よりわずかに高い体重減少を引き起こしただけであった。毒性は、2つの薬剤を同時投与または1時間の間隔で一方を投与した後、もう一方を投与したとき(2つのどちらを先にしても)、違いが見られなかった。
併用による抗腫瘍活性は、すべてのモデルにおいて各薬剤単独の抗腫瘍活性より大きかった。TE-671横紋筋肉腫およびSK-NDZ神経芽細胞腫において、3種類すべての組み合わせ(すなわち、ET-743をDDP投与の1時間前、同時、DDP投与の1時間後に投与)を比較し、抗腫瘍活性における著明な差は観察されなかった。また、H&N FADU、NSCLC LX-1、黒色腫H-187および卵巣SKOVで、2種類の順序を比較し、順序に関する一貫した違いは認められなかった。
まとめると、すべてのデータは、併用による抗腫瘍活性は各薬剤単独の抗腫瘍活性より大きく、順序は治療効果および毒性に一貫した様式で影響を及ぼさないことを示している。
(実施例2)
併用による毒性が非常にわずかであると考えられた観察から、4日間隔で両薬剤の用量を3回に分割投与した場合のET-743とDDPの併用の有効性を検討した。
1A9卵巣癌異種移植片が、単独治療として使用した2つの薬剤に対して比較的耐性を示した。一方、総用量12mg/kgのDDP 4mg/kg(Q4x3)を、総用量0.3mg/kgのET-743 0.1mg/kg(Q4×3)と同時に投与したところ、73%という著しいTWIが得られた。
繰り返すが、単一の薬剤(平均体重減少、ET-743が14%、DDPが12%)と比べて、併用による毒性死亡および重度の毒性は観察されなかった(平均体重減少16%)。
したがって、併用治療は、高用量を可能にし、単独投与では2つの薬剤が著明な活性を示さない腫瘍ですら、各薬剤の併用による活性が認められた。併用は、卵巣癌異種移植片の耐性を克服することにおいて特に有用である。
(実施例3)
卵巣癌患者では、腫瘍は腹腔に浸潤する。したがって、臨床的病変を模倣するために、ヒト卵巣異種移植片(HOC 8)を選択し、腹水から腹腔内に移植して、腹腔内に播種した。この腫瘍は、特にDDP(ILS=139%)に感受性を示し、ET-743(0.05%および0.15mg/kg(Q4×3)でILS=21%および23%)に対しては感受性が低い。
2つの薬剤を併用すると、効果は各薬剤を単剤として投与した場合よりはるかにに大きく、生存率で劇的な増加を示す。DDPと併用した場合、ET-743の低用量(賦形剤に対してILS=258%)および高用量(賦形剤に対してILS=322%)とも、HOC8を有するマウスの生存期間を延長し、単独治療におけるDDP(低用量ET-743+DDPに対してILS=49%、高用量ET-743+DDPに対してILS=76%)と比べて著明に改善した。3匹のマウスは12ヶ月後に依然として生存し、このうち2匹は高用量ET-743群に属していた。これらのマウスを屠殺し、詳細な肉眼的および顕微鏡的な病理学的評価を実施した。低用量ET-743群に属するマウスは明らかに治癒し、肝臓、脾臓、膵臓、骨髄、横隔膜、卵巣子宮網およびいくつかのリンパ節の顕微鏡による分析が陰性だった。代わりに、他の2匹の長期生存を示したマウスは、網のレベルで残存腫瘍が認められ、このうち1匹は子宮に単一の転移が発見されたが、その他の臓器では転移は検出されなかった。
転移は認められるものの、この実施例は、卵巣癌における併用の可能性を示している。
(実施例4)
3週間ごとの1日目と8日目に投与するスケジュールで、ステロイドおよび制吐剤による予防処置と共に3時間注入するETの投与量を増量し、引き続いて投与の30分後にシスプラチンの一定量40mg/m2を2LのNSによる水分補給と共に1時間注入する多施設用量決定試験を実施した。
患者36例を組み入れた(卵巣癌患者15例、子宮癌患者6例、軟部組織肉腫患者14例、他の腫瘍タイプ1例)。治療前の患者の状態は、以下のようであった。
Figure 2007500201
ET-743の用量濃度は、300、400、500、600および700μg/m2/日で、3〜6例の患者は、毒性により用量ごとに治療した。
ET-743の増量は、500μg/m2まで問題は見られなかった。600μg/m2では、化学治療の治療歴の程度により患者は2つのリスクコホートに分かれた(1つのレジメン=低リスク(LR)≧2のレジメン=高リスク(HR))。
下記の表は、発見された血液学的毒性を示す。
Figure 2007500201
下記の表は、発見された非血液学的毒性を示す。
Figure 2007500201
下記の表は、発見されたその他の非血液学的毒性を示す。
Figure 2007500201
用量制限毒性(DLT)
− 500:35日後に治療患者7例中1例が回復しなかった。
− 600:治療患者15例中3例で:
− 1例が35日後に血液学的毒性から回復しなかった。
− ALTグレード3の1例がB/Lへ回復しなかった。
− 1例が8日目に再治療できなかった(ビリルビングレード1、ALTグレード3)。
− 700:患者7例中2例で、ANCグレード4が7日より長く継続した(また1例がGr4の血小板減少を併発し、35日後に血液学的毒性から回復できなかった)。
下記の表は、観察された有効性を示す。
Figure 2007500201
本試験から、以下のように結論を下した。
・この集団において、以前に治療を受けた患者の4週ごとの各1日目と8日目のMTDは700μg/m2であった。
・治療歴のある患者の4週ごとの各1日目と8日目の推奨用量(RD)は、500μg/m2である。
・DLTは、骨髄抑制、特に好中球減少である。
・3週ごとの各1日目と8日目に≧600μg/m2の用量で、大部分の患者において、好中球減少の回復遅延が観察された。
・主な非血液学的毒性は、用量依存的な悪心および嘔吐(N&V)、無力症ならびに肝毒性である(常に可逆性で、600μg/m2/日まで軽度である)。
・主な非血液学的毒性は、用量依存的なN&Vおよび無力症であった。
・再治療の最適間隔は、28日である。
(実施例5)
3週間ごとの1日目に投与するスケジュールで、カルボプラチンの一定量300mg/m2を1時間注入し、引き続いてステロイドおよび制吐剤による予防処置と共にETを3時間注入し、この投与量を増量する多施設用量決定試験をデザインした。
患者11例を組み入れた(卵巣癌患者6例、肺癌患者1例、軟部組織肉腫患者4例)。治療前の患者の状態は、以下のようであった。
Figure 2007500201
ET-743の用量濃度は、500、650および800μg/m2/日で、3〜6例の患者は、毒性により用量ごとに治療した。
最大耐量(MTD)は、1周期目で最低患者2例がDLTを経験した試験での併用の最大用量濃度と定義した。患者1例が1周期または2周期目で薬剤誘発性のDLTを経験した場合、この濃度で最大患者6例まで治療することが可能であった。さらなる患者でDLTが観察されなかった場合、新しい患者を次に高い用量濃度で治療することができた。
血小板および絶対好中球数(ANC)に関する1周期目の血液学的毒性は、以下の表のように報告された。
Figure 2007500201
最初の周期に患者2例が、用量濃度3でグレード3の血小板減少によるDLTを発現した。両例とも卵巣癌患者で、カルボプラチンよる治療歴があった。
以下の表は、投与した全コースにおける血小板およびANCに関する血症学的毒性と、21日および28日までの血液学的回復が見られない周期数を示している。
Figure 2007500201
Figure 2007500201
さらに、2周期目の用量を遅らせた(および減少した)患者数とこの遅延理由を、以下の表で用量濃度ごとに報告する。
Figure 2007500201
治療した患者11例の1周期目のデータから推測可能なように、
この集団では、MTDはET-743が800μg/m2およびカルボプラチンが一定の標的用量の300mg/m2である。
DLTは、グレード3の血小板減少からなる。
この集団では、2番目の用量濃度で、100%の患者が血液学的毒性により2周期目の用量を遅らせ、さらに用量を減少した。
3番目の用量濃度で、50%の患者が血液学的毒性により2周期目の用量を遅らせ、さらに用量を減少した。
ET-743の適切な用量強度の獲得を妨げる中等度の好中球減少と、カルボプラチンによる治療歴のある卵巣癌患者2例におけるグレード3の血小板減少からなる2例のDLTが見られるが、持続性プロフィールと共にこの血液学的安全性プロフィールを考慮すると、以下のスケジュールが推測できる。
カルボプラチンによる治療歴がある患者では、3週ごとの1日目に、一定の標的用量(250mg/m2)のカルボプラチンを1時間かけて注入投与し、引き続いて、ET-743を3時間かけて静注する。
カルボプラチンによる治療歴のない患者では、3週ごとの1日目に、一定の標的用量(300mg/m2)のカルボプラチンを1時間かけて注入投与し、引き続いて、ET-743を3時間かけて静注する。

Claims (18)

  1. ヒト癌患者における白金配位錯体抗腫瘍薬に対する耐性を軽減する方法であって、白金配位錯体抗腫瘍薬およびET-743を前記患者に投与するステップを含む方法。
  2. ヒト癌患者における白金配位錯体抗腫瘍薬の細胞毒性作用を増強する方法であって、白金配位錯体抗腫瘍薬およびET-743を前記患者に投与するステップを含む方法。
  3. 前記白金抗腫瘍薬の滴下用量を補うことなしに、前記白金抗腫瘍薬との併用治療としてET-743を投与する、請求項1または2に記載の方法。
  4. ET-743および前記白金化合物をそれぞれ単独で投与した場合の投与量と同じ範囲の投与量で、個人に前記白金抗腫瘍薬およびET-743を投与するステップを含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
  5. 前記白金抗腫瘍薬およびET-743の量が両方ともそれぞれの推奨用量の少なくとも90%である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記白金抗腫瘍薬が、シスプラチン、カルボプラチン、テトラプラチン、オルミプラチン、イプロプラチン、オキサリプラチンから選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記白金抗腫瘍薬が、シスプラチンまたはカルボプラチンである、請求項6に記載の方法。
  8. 前記白金抗腫瘍薬がシスプラチンである、請求項7の方法。
  9. 前記白金抗腫瘍薬とET-743を連続して投与する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
  10. ET-743を含む組成物を前記患者に最高4時間をかけて持続投与で静注するステップと、その前後に白金抗腫瘍薬を含む組成物を前記患者に持続投与で静注するステップとを周期的に毎週繰り返すことを含む、請求項9に記載の方法。
  11. 前記周期は、注入期と呼ばれる週1回注入する期と、休止期と呼ばれる非注入期の2つの段階を含み、前記周期は1週または複数週の注入期と、1週または複数週の休止期を含む、請求項10に記載の方法。
  12. 前記患者が再発しているか、以前の化学治療に対して無反応性である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 患者が肉腫、骨肉腫、卵巣癌、乳癌、非小細胞肺癌、黒色腫、頭頚部癌、大腸癌、中皮腫、腎癌、子宮内膜癌および肺癌から選択される癌を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 患者が卵巣癌、非小細胞肺癌、黒色腫、頭頚部癌から選択される癌を有する、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 推奨用量の白金配位錯体抗腫瘍薬および推奨用量のET-743を含む週1回の投与用医薬組成物。
  16. 請求項1から14のいずれか一項に記載の方法用薬物調製における白金配位錯体抗腫瘍薬の使用。
  17. 請求項1から14のいずれか一項に記載の方法用薬物調製におけるET-743の使用。
  18. 各用量単位が適量のET-743と薬学的に許容できる担体を含む少なくとも1周期分の用量単位のET-743の供給と、投与スケジュールによるET-743投与のための印刷指示書を含む、抗腫瘍白金抗腫瘍薬とET-743の併用投与用医療キット。
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