JP2007329862A - 光通信システム - Google Patents

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Abstract

【課題】制御局装置と複数の端末装置との間で光信号の伝送を行う光通信システムにおいて、電気分散補償処理を行う場合に生じる収束時間中の符号誤り率を改善する。
【解決手段】制御局装置における電気分散補償処理(ステップS1)の収束時間中、一定水準の改善効果を確保するために前方誤り訂正符号を併用する。収束時間経過後、前方誤り訂正符号を使用せず(ステップS5)、電気分散補償処理のみで一定水準の符号誤り率改善効果を確保する。
【効果】一定水準の符号誤り率の改善効果を常時確保することが可能になり、かつ前方誤り訂正符号の付加時間を最小限に抑えることで、伝送路の実効帯域を広く使える。
【選択図】図6

Description

本発明は、制御局装置と複数の端末装置との間で光信号の伝送を行う場合に、制御局装置において波長分散により歪んだ受信信号を光電気変換後に補償することのできる光通信システムに関するものである。
局側装置としての制御局装置(Optical Line Terminal:光加入者線端局装置)と、複数の端末装置としての端末装置(Optical Network Unit:光加入者線終端装置)との間を、光データ通信ネットワークを使って双方向通信するシステムがある。そして、制御局装置と各端末装置との間を、それぞれ1本の光ファイバで放射状に結ぶ(Single Star)ネットワーク構成が実用化されている。このネットワーク構成では、システム及び機器構成は簡単になるが、1つの端末装置が一本の光ファイバを占有し、端末装置数がN局あれば、制御局装置から直接接続される光ファイバがN本必要となり、システムの低価格化を図るのが困難である。
そこで、制御局装置から引かれる1本の光ファイバを、複数の端末装置で共有するPON(Passive Optical Network)通信システム(PDS(Passive Double Star)ともいう。)が実用化されている。また、PON通信システムは、FTTH(Fiber To The Home)やFTTB(Fiber To The Building)などのFTTxに適用されてきた低価格の光加入者用アクセス方式の1つである。
PON通信システムでは、特に外部からの電源供給を必要とせず入力された信号から受動的(Passive)に信号を分岐・多重する受動型光分岐器(光カプラ)を介して、一つの制御局装置と複数の端末装置が光伝送路で接続される。制御局装置とN局の端末装置とは、光ファイバSMF及び光カプラOCを介して接続された1対Nの伝送を基本としている。これにより、1つの制御局装置に対して、多くの端末装置を割り当てることができ、全体的な設備コストを抑えることができる。
PON通信システムでは、制御局装置と光分岐器間の光伝送路を複数の端末装置で共有するため、端末装置から制御局装置に向かう方向(以下、上り方向と称する)において、各端末装置が送出する光信号の衝突回避対策が必要である。このため、制御局装置が時分割アクセス制御方式により各端末装置の光信号送出タイミングを制御している。
この時分割アクセス制御方式により、各端末装置は、各端末装置からある時間で区切られた光信号を送出する。このように各端末装置から送出される光信号を「バースト光信号」と呼ぶ。
PON通信システムは、その商用利用を想定した場合、システムの利便性をさらに高めるために、制御局装置と端末装置の接続距離の長延化が求められている。その一方で、端末装置の低コスト化も強く求められるという状況が存在する。
端末装置の低コスト化を考える場合、発光素子として高価なDFBレーザ(Distributed FeedBack Laser Diode)よりも、安価なFPレーザ(Fabry Perot Laser Diode)を使用するほうが有利である。DFBレーザとは波長スペクトルのピークが単一であるレーザを指し、伝送路長による波長分散の影響が小さく長距離通信に適している。一方FPレーザとは波長スペクトルのピークが複数であるレーザを指し、伝送路長による波長分散の影響が大きく主に短距離通信に使用される。
そこで、FPレーザを使用して光伝送路を長延化する方法を考える。
光伝送路を長延化した場合、波長分散の影響により、長距離伝送後の光信号の歪みが大きくなる(波形がなまる)という問題がある。歪み量が大きくなると符号間干渉が発生するため、受信側で元信号を正常に判別できなくなり、符号誤り率の増大に至る。
そこで、受信側で波形整形を行って符号誤り率を低下させる方法が必要となる。現在、光伝送路を長延化する際の波形整形を行う方法として、(1)前方誤り訂正符号(FEC)の適用、(2)電気分散補償(EDC)の適用が提案されている。
方法(1)は、送信信号に一定割合の冗長符号を付加することで、伝送後に符号誤りが発生した場合でも受信側で一定量の誤り訂正を可能としている。常に一定水準の改善効果を確保できる特長があるが、一定割合の冗長符号を付与する必要があり、伝送路の実効帯域が低下するという制約が生じる。
方法(2)は、受信後の歪み信号を電気分散補償処理により整形する方法であり、一定量の符号誤り率改善を可能としている。方法(2)は冗長符号の付与を必要としない特長がある。
下記特許文献1は、一つの制御局装置OLTと複数の端末装置ONUが分岐器を介して接続される通信網で、端末装置ONUから制御局装置OLTへの伝送方向において、個別伝送路(端末装置ONUと分岐器間の伝送路)で発生する歪みを端末装置ONUの送信部で事前補償し、共通伝送路(制御局装置OLTと分岐器間の伝送路)で発生する歪みを制御局装置OLTの受信部で事後補償する技術を開示する。
下記特許文献2は、判定フィードバックイコライザ(DFE)と線形イコライザ(LE)の構成で受信信号を等化する無線通信網において、予め所定のデータパターンを伝送するトレーニング期間を設け、同期間に使用するイコライザ、及びイコライザに適用する最適なフィルタ係数を導く技術を開示する。
特開2000-196649号公報 特表2005-528854号公報
ここで、PON通信システムの上り方向、すなわち制御局装置の受信部で、方法(2)の電気分散補償を適用する場合を考える。
光伝送路を利用する光通信は、自由空間を伝送路として利用する無線通信と比較して、伝送路の環境条件が短時間で大きく変化する確率は低い。バースト光信号の継続時間は通常、数μ秒〜1ミリ秒程度であり、光伝送路の環境条件変化に対して無視できる程に短いと考えてよい。端末装置のFPレーザスペクトル特性、光分岐器と端末装置間の光伝送路の距離及び分散特性の違いなどにより、各端末装置から送信された光信号が制御局装置で受信される際のひずみ量が異なる。したがって、バースト光信号単位、言い換えれば各端末装置単位で適応的に電気分散補償を実施することが望ましい。
電気分散補償処理を動作させる場合、最適な等化回路係数を導くための収束時間と補償精度の間にトレードオフの関係がある。補償精度を高めるためには十分な収束時間の確保が必要である。収束時間中は、初めから整った信号波形が得られる訳ではなく、徐々に信号波形が整形されていく。このため、収束時間中、符号誤り率の改善に時間がかかり、符号誤り率がなかなか改善しないという問題がある。
そこで本発明は、制御局装置と複数の端末装置との間で光信号の伝送を行う光通信システムにおいて、電気分散補償処理を行う場合に生じる収束時間中を含めて、符号誤り率を改善することのできる光通信システムを提供することを目的とする。
本発明では、収束時間中の符号誤り率を改善する方法として、前記両方法(1)(2)を組み合わせて使用することにより、両方法の制約が及ぼす影響を最小化する。
すなわち、本発明の光通信システムは、端末装置において、送信したい信号に前方誤り訂正符号を付加するための前方誤り訂正符号付加部と、電気信号を光信号に変換して光伝送路に送り出すための光電変換部とを備え、制御局装置において、光伝送路から受信した光信号を電気信号に変換する光電変換部と、変換された電気信号を適応的に等化処理するための電気分散補償部と、等化処理された電気信号から前方誤り訂正符号の付与有無を解読し、前方誤り訂正符号が付与されている場合は誤り訂正処理を実施する前方誤り訂正符号検査部とを備えることを特徴とする(請求項1)。
この構成によれば、電気分散補償処理の収束時間中は、一定水準の改善効果を確保するために前方誤り訂正符号を併用する。収束時間経過後は、前方誤り訂正符号を使用せず、電気分散補償処理のみで一定水準の符号誤り率改善効果を確保することができる。こうすることで、一定水準の符号誤り率の改善効果を常時確保することが可能になり、かつ前方誤り訂正符号の付加時間を最小限に抑えることで、伝送路の実効帯域を広く使えるという効果が得られる。
収束時間が経過したかどうかを判定するために、端末装置及び制御局装置に互いに時計を持たせ、端末装置は、送信から所定時間経過後に、送信信号に対する前方誤り訂正符号の付加を停止し、制御局装置は、受信から所定時間経過後に、等化回路係数を確定するものであってもよい(請求項2)。
また、制御局装置は時計を持ち、所定時間経過後に等化回路係数が確定したことを通知するための信号を送信するものであってもよい(請求項3)。端末装置は時計を持たなくても、この信号を受信して、送信信号に対する前方誤り訂正符号の付加を停止することができる。したがって、端末装置の構成を簡単にすることができる。
また、制御局装置は、改善率が達成したかどうかを判定する手段を持って、改善率達成後に等化回路係数を確定し、確定したことを通知するための信号を送信してもよい。端末装置は、当該信号を受信して、送信信号に対する前方誤り訂正符号の付加を停止することができる(請求項4)。
制御局装置は、等化回路係数の収束を早めるために、端末装置毎に前回使用した等化回路係数を保持する係数記憶部を備え、上り送信する端末装置の切換えに呼応して、前記係数記憶部から端末装置毎の等化回路係数を読み出し、前記電気分散補償部の適応処理開始時に等化回路係数の初期設定を実施するものでもよい(請求項5)。この構成であれば、前記電気分散補償部の適応処理終了時に等化回路係数を読み出し、前記係数記憶部に書き込みを実施するとともに、前回使用した等化回路係数を初期値として電気分散補償処理を行うことができる。また、前方誤り訂正符号の使用を早めに停止することができ、冗長符号のために伝送路の実効帯域が低下する期間を極力短くすることができる。
また、本発明は、前記本発明の光通信システムに用いられる制御局装置の構成を規定している(請求項6,7)。
また、本発明は、前記本発明の光通信システムに用いられる端末装置の構成を規定している(請求項8,9)。
本発明によれば、電気分散補償処理の収束時間中は、一定水準の改善効果を確保するために前方誤り訂正符号を併用することにより、一定水準の符号誤り率の改善効果を常時確保することが可能になり、かつ前方誤り訂正符号の付加時間を最小限に抑えることで、伝送路の実効帯域を広く使えるという特有の効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、PON通信システムの構成例を示す概略図である。
PON通信システムは、局舎が備える制御局装置OLTと複数の加入者宅が備える端末装置ONUとが、光ファイバSMF及び光カプラOCを介して接続されている。
端末装置ONUは、加入者宅内に設置されるパーソナルコンピュータなど、光ネットワークサービスを享受する端末を接続するためのネットワークインタフェースを備えている。
光カプラOCは、特に外部からの電源供給を必要とせず入力された信号から受動的に信号を分岐・多重するスターカプラで構成されている。
制御局装置OLT及び光カプラOC、光カプラOC及び端末装置ONUに接続されている光ファイバは、1本の光ファイバSMFからなるシングルモードファイバを用いている。つまり、1台の制御局装置OLTは、1台の光カプラOCに1本の幹線光ファイバSMFを通して接続されている。そして、1台の光カプラOCは、M台の第2の光カプラOC(Mは、この例では4の数)と光ファイバSMFで接続している。そして、第2の光カプラOCは、N台(Nは、この例では8以下の数)の端末装置ONUと、支線光ファイバSMFで接続されている。よって、1局の制御局装置OLTが送受する信号は、1+M台の光カプラOCによって、最大32台の端末装置ONUに分配されている。なお、光カプラOCや端末装置ONUの台数は例示であるにすぎない。
本発明の通信システムは、前記PON通信システムに、ギガビットイーサネット(Gigabit Ethernet)(イーサネット(Ethernet)は、登録商標である。)技術を取り込み、1.25Gbpsのベースバンド速度で光ファイバのアクセス区間通信を実現するGE−PON(Gigabit Ethernet-Passive Optical Network)方式を採用している。
GE−PON方式に従えば、制御局装置OLT及び端末装置ONUの相互の通信は、可変長なフレームを単位として行われる。フレームの構成は、論理リンク識別子を含むGE−PONヘッダと、64バイト以上のデータからなっている。データの最大サイズは一般に1530バイト程度である。
まず、上位のネットワークから制御局装置OLTに入ってくる下りフレームは、制御局装置OLTにおいて所定のブリッジ処理が行われ、中継されるべき論理リンクが特定される。そして、制御局装置OLTを通して、光信号として光ファイバSMFに送信される。このとき、制御局装置OLTは論理リンク識別子を含むGE−PONヘッダをフレームに付加している。光ファイバSMFに送信させた光信号は、光カプラOCで分岐され、光カプラOCにつながる端末装置ONUに送信されるが、当該論理リンクを構成する端末装置ONUのみが所定の光信号を取り込み、フレームを宅内ネットワークインタフェースに中継する。
一方、上り光信号には、それぞれの端末装置ONUからの上りフレームが含まれている。上り光信号は、それぞれの端末装置ONUからの光信号どうしが互いに時間的に競合しないように送信される必要がある。そのために、制御局装置OLTは、各端末装置ONUに対して上り光信号を送信してもよい期間ウインドウ(以下、単にウインドウという)を割り当て、制御フレームとして通知する。ウインドウを割り当てられた端末装置ONUは、その割り当てられたウインドウに上り光信号を送信する。したがって、各端末装置ONU間の上り光信号の競合は回避される。各端末装置ONUは、あるウインドウが与えられたとき、そのウインドウに収まる限りフレームを連続して送信してよい。
そして、制御局装置OLTは、各端末装置ONUからの一連のフレーム信号を含んだバースト光信号を受信することができる。「バースト光信号」とは、各端末装置ONUから送信され、1.25Gbpsのベースバンド信号で発光状態を変化させた、有限時間の光信号列である。
また、制御局装置OLTが受信する光信号波形は、例えば、端末装置ONUの発光素子の特性や、光ファイバSMFの長さなどの、光伝送路の特性によって異なる。そこで、制御局装置OLTは、上りバースト光信号に後述の処理を行った後、復元した有意なフレーム列を上位のネットワークに送信する。
図2は、端末装置ONUの光信号を送信する部分における基本構成を示すブロック図である。
端末装置ONUは、前段回路から出力されるデータ列に対して前方誤り訂正符号を付加する前方誤り訂正符号付加部1と、前方誤り訂正符号が付加されたデータ列を光通信に適した電気信号へ変換(8B10B変換)する符号変換部2と、光電変換部(Optical Transceiver)3とを備えている。
前方誤り訂正符号付加部1は、データを送信する際、受信側で誤りを訂正できるようにするための冗長なデータ(誤り訂正符号)を付加するものである。
この冗長なデータを受信した制御局装置OLTは、データ中に誤りが発見された場合は、誤り訂正符号を利用してある程度のデータ回復を自力で行うことができる。この方式では、データの誤りが発見された場合、誤り訂正符号で訂正できる範囲内であれば、再送信を行うことなしにデータを回復できるので、複雑な再送処理が不要となる。
光電変換部3は、FP(Fabry Perot)型LDを発光素子として用いている。
FP型LDは半導体レーザの一つであって、二つの光出射面(光取り出し側と、モニタフォトダイオードPD側の出射面)として結晶の劈開(ヘキカイ)面を利用し、その間での光の繰り返し反射によりレーザ発振(例えば1300nm帯)を実現するものである。このFP型LDは、波長の選択機構がなく複数の発振モードのレーザ光がそのまま出力されるため、端末装置ONUが送信する光信号は、広がった複数の離散スペクトルを有する。
光電変換部は、送りたい情報を表す電気信号であるベースバンド信号の1に対応する期間強く発光し、0に対応する期間弱く発光する。これにより、端末装置ONU及び制御局装置OLT間において、NRZ(Non Return to Zero:非ゼロ復帰記録方式)の方形信号を伝送することができる。
図3は、制御局装置OLTの受信部における基本構成を示すブロック図である。
制御局装置OLTは、端末装置ONUとの信号の送受を行う光電変換部4と、電気分散補償(Electric Dispersion Compensation)部5と、符号再生部6と、前方誤り訂正符号検査部7とを備える。
光電変換部4は、端末装置ONUから発せられ光ファイバSMFを介して到達する光信号を分離してフォトダイオードPDに導く。フォトダイオードPDで検出された微弱電流信号は、トランスインピーダンスアンプによって微弱電圧信号に変換され、さらに微弱電圧信号はポストアンプにて増幅される。
電気分散補償部5は、端末装置ONUから供給された信号を等化するための適応制御等化器(Adaptive Equalizer)AEを有する。ポストアンプにより増幅された端末装置ONUからの信号は、適応制御等化器AEに入力され、下記の機構により端末装置ONUから送信された元の信号に等化される。
以下では、本発明の適応制御等化器AEについて、詳細に説明する。
図4は、適応制御等化器AEの一例を示す構成図である。図5は、図4に示す等化回路係数適応制御部の構成図である。この適応トランスバーサルフィルタTFは、公知のLMS(Least Mean Square)アルゴリズムに基づいて動作がなされるものである。
この適応制御等化器AEは、長距離の光ファイバSMFを通して送られ波長分散によって歪んだ信号を整形し、端末装置ONUで送信された状態の方形信号に近づける。
この適応制御等化器AEの適応トランスバーサルフィルタTFは、遅延素子Z-1、乗算器X、加算器Σ及び等化回路係数制御部Tを備えている。
まず、適応制御等化器AEに入力された信号は、それぞれの遅延素子Z-1により時間的にずらされる。時間的にずらされた入力信号は、それぞれ、等化回路係数Ciが掛けられ(i=-2,-1,0,+1,+2)、加算器Σ+で合波される。合波された信号は、スライサにより、方形信号に置き換わり、適応制御等化器AEから出力される。
また、加算器Σ+から出力された信号とスライサから出力された信号とで、加算器Σ-により誤差eが求められ、乗算器Xによりシステム定数μが掛けられμeが出力される。
ここで乗算器Xに掛けられるシステム定数μは、収束の速さと安定性とを左右するものである。収束を速くするためにμを大きくすると、収束の安定性を損なう場合がある。逆に、μを小さくすると、概ね収束時間が長くなるが、収束の安定性が高まる。よって、μの値は、調整できることが好ましい。そこで、「所定時間」を設定し、この所定時間内に適応制御がほぼ収束するよう、μの値が予め決められる。
前記「所定時間」とは、受信側において適応制御によりベースバンド信号を回復するために設定される時間をいう(同期調整期間(Sync Time)STともいう)。例えば、数μ秒〜数10μ秒に設定される。
GE−PONにおいて、上り信号は前述したように、制御局装置OLTの指示に基づき時分割多重(Time Division Multiplex:TDM)される。すなわち、端末装置ONUは制御局装置OLTが指示したウインドウにバースト光信号を送出する。バースト光信号は、数μ秒〜1ミリ秒オーダーの持続時間をもつ。このバースト光信号の、先頭ビット群の数μ秒〜数10μ秒は同期調整期間STに充てられる。端末装置ONUは、この同期調整期間STの間に20bitの固定パターン(IDLEシーケンス)の信号を送信する。
そして、それぞれの等化回路係数制御部Tは、μe及びxから最小2乗法により、最適な等化回路係数Cを算出することができる。
例えば、図5に示すように、等化回路係数制御部Tiでは、乗算器Xで掛け合わされたμeと乗算器Xiで算出されたxiとを乗算器XTで掛け合わせる。そして、乗算器XTによって算出されたμe・xiと遅延素子Z-1により算出されたものとを加算器Σ+により加算することで、新しい等化回路係数Ciが求まる。
以下では、端末装置ONUと制御局装置OLTとにおいて、相互にやりとりされる光信号の一連の流れ1〜5を説明する。
以下の信号の流れ1〜3では、適応制御の状態はバースト毎に初期化され、次のバースト光信号に持ち越さないものとする。例えば、等化回路係数の初期値は、例えばC=1、C−2=C−1=C+1=C+2=0とする。
なお信号の流れ4〜5では、等化回路係数C、C−2、C−1、C+1及びC+2は、同一の端末装置ONUと前回に通信したときに用いた等化回路係数を初期値として用いる。
<信号の流れ1>
この実施形態では、制御局装置OLT、端末装置ONUともに時計を備えていることを前提とする。制御局装置OLT、端末装置ONU共に時計を持っているので、所定時間の時計満了により前方誤り訂正符号ありフレーム期間から前方誤り訂正符号なしフレーム期間への移行をそれぞれ独立して判断することができる。このため、制御局装置OLTと端末装置ONU間で時間合わせのための制御フレームの送受信は行われない。
図6は、光通信システムにおける信号の流れを示すフローチャートである。
端末装置ONUは、前方誤り訂正符号を含むバースト光信号の送信を開始すると、端末装置ONUは時間計測を開始する。
制御局装置OLTは、そのバースト光信号を受信すると、時間計測を開始する。制御局装置OLTは、受信したバースト光信号に対して適応電気分散補償処理を実行する(ステップS1)。前記同期調整期間に相当する「所定時間」が経過すると(ステップS2)、等化回路係数を確定する(ステップS3)。
ここに所定時間は前述したように、適応処理実行に要する時間であり、等化回路計数がほぼ収束する時間に設定される。これは数μ秒〜数10μ秒と見積もられる。
所定時間が経過するまでは、図7にTAで示すように、端末装置ONUから送信されてくるバースト光信号には、前方誤り訂正符号が付加されている。したがって、制御局装置OLTは、この誤り訂正符号により、受信したデータが正しいかどうかを検証することができ、所定ビット数以内の誤りを訂正することができる。
一方、端末装置ONUでは、所定時間が経過すると(ステップS4)、端末装置ONUの前方誤り訂正符号付加部1は、前方誤り訂正符号の付加を停止する(ステップS5)。この状態を図7にTBで示す。
この後、制御局装置OLTでは、バースト時間の送信が終わるまで、確定された等化回路係数に基づいて、電気分散補償処理による波形整形が継続される。
なお、バースト光信号の継続時間が短い場合には、適応処理が終了する前(所定時間が経過する前)にバーストが終了することも考えられる。このような場合は、図6に示した前方誤り訂正符号なしのフレーム期間TBは存在しないことになる。
<信号の流れ2>
図8は、光通信システムにおける信号の流れの他の例を示すフローチャートである。
この実施形態では端末装置ONUは時計を備えず、制御局装置OLTのみが時計を備えている。
図6と異なるところを説明すると、制御局装置OLTが所定時間の満了を契機に、端末装置ONUへ完了通知フレーム送信し(ステップS6)、その応答として端末装置ONUが制御局装置OLTへ受領通知フレームを送信する(ステップS7)。
この通知フレームの送受信により、端末装置ONUは、自局で時計を持たなくても、制御局装置OLTにおいて等化回路係数が確定されたことを知ることができる。それにより、端末装置ONUの前方誤り訂正符号付加部1は、前方誤り訂正符号の付加を停止するので、制御局装置OLTは、前方誤り訂正符号ありフレーム期間から前方誤り訂正符号なしフレーム期間へ移行することができる。
<信号の流れ3>
図9は、制御局装置OLTで適応処理による符号誤り率の改善をモニタする通信システムのフローチャートである。
この実施形態では、制御局装置OLTは適応処理による符号誤り率が一定値以下になるのをモニタリングし(ステップS8)、所望値に達した時点を契機に、端末装置ONUへ完了通知フレーム送信する。
その応答として端末装置ONUが制御局装置OLTへ受領通知フレームを送信する。この一連のフレーム送受信を経て、前方誤り訂正符号ありフレーム期間から前方誤り訂正符号なしフレーム期間へ移行する。
この実施形態では、制御局装置OLTは、「所定時間」経過後に符号誤り率が一定値以下になるのを見込んで等化回路係数を確定するのではなく、実際に符号誤り率が一定値以下になるのを確認してから等化回路係数を確定することができるので、符号誤り率が常に低い値に安定保持された光通信システムを構築することができる。
<信号の流れ4>
前述したとおり、適応的に電気分散補償処理を実施する場合、等化回路係数の収束時間と補償精度はトレードオフの関係になる。電気分散補償処理で一定水準の改善効果を確保するためには、収束に要する時間がより長く必要となる。
ここでは、適応時の収束所要時間を短くする方法を考える。前記した通り、PON通信システムでは、制御局装置OLTが各端末装置ONUの光信号送出タイミングを制御している。したがって、制御局装置OLTは、各端末装置ONUからのバースト光信号の受信開始タイミングを把握している。光通信では、各端末装置ONUの光送信部の特性や光伝送路の特性の違いが受信信号の歪み度合いに影響を及ぼすが、これらの要素が短時間に大きく変化する可能性は小さいと考えてよい。具体的には、経年劣化や周辺温度などにより歪み特性が緩やかに変化する場合が大半である。
以上の状況を考慮して、各端末装置ONUとの前回のバースト通信で使用した等化回路係数を記憶しておき、次のバースト受信時の適応収束開始時の初期パラメータとして流用する。
図10は、制御局装置OLTの受信部における基本構成を示すブロック図である。
制御局装置OLTは、端末装置ONUとの信号の送受を行う光電変換部4と、電気分散補償部5と、符号再生部6と、前方誤り訂正符号検査部7とを備えるとともに、電気分散補償部5に係数を提供するための係数制御部9と、前回使用した係数を記憶しておくための係数記憶部8とをさらに備えている。
図11は、制御局装置OLTの処理を示すフローチャートである。制御局装置OLTは適応処理開始前に、係数記憶部8に記憶された前回のバースト光信号受信時に使用した当該端末装置ONU用の等化回路係数を初期設定して(ステップS9)、適応処理を実行する。
等化回路係数を初期設定することで、適応収束時間を短縮する効果が得られる。初期値の設定が不適切だと収束時間がかえって長くなる場合もあるが、前記した通り歪み特性の変化は緩やかと仮定できるため、初期値を固定している場合よりも大きな効果が得られる。
ところでPON通信システムに端末装置ONUが初めて接続(登録)される場合がある。この場合、当該端末装置ONUに関する前回バースト情報は存在しない。この場合に限り、デフォルトの初期値で適応収束処理を動作させる。
このようにして、適応収束の所要時間を短くすることができ、その短い時間だけ前方誤り訂正符号を併用すればよいので、前方誤り訂正符号付加による帯域損失の時間をさらに短くする効果が得られる。
<信号の流れ5>
なお、次のような組み合わせも考えられる。
図12は、制御局装置OLTは適応処理開始前に、前回のバースト光信号受信時に使用した当該端末装置ONU用の等化回路係数を初期設定するとともに、制御局装置OLTにおいて適応処理による符号誤り率が一定値以下になるのをモニタリングし、所望値に達した時点を契機に、端末装置ONUへ完了通知フレーム送信する手順を示すフローチャートである。
制御局装置OLTは適応処理開始前に、前回のバースト光信号受信時に使用した当該端末装置ONU用の等化回路係数を初期設定する。以降は、図9のフローチャートに記した手続きと同一になる。
ここでは、図9の手続きをベースにして、適応処理開始前に端末装置ONU毎の等化回路係数を初期設定する手続きの追加例を示したが、図6,図8のフローチャートに対しても同様の初期設定手続き追加が可能である。
以上のように、本実施形態にかかる光通信システムは、制御局装置OLTにおいて、FP型LDから出力され長距離の光ファイバの伝送により歪んだ光信号を、光ファイバ通過前の出力された信号波形に近づけることができる。これにより、端末装置ONUにおいて、長距離の光伝送であっても、波長の異なる多モードの発光スペクトル特性を有するFP型LDを使用することができ、経済的な伝送システムを構築することができる。
以上で、本発明の信号の流れを説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではない。例えば、前記ではGE−PONを用い説明したが、他の方式を使ってもよい。また、上述のとおり、FP型LDを用いたシステムを説明したが、他のタイプのLDを使うことで、システムのコストダウンが図られるのであれば、他のLDを含む光発信器を使ってもよい。その他、本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
制御局装置OLTと複数の端末装置ONUとの間を、光カプラを介して光ファイバで接続したPON通信システムの構成例を示す概略図である。 端末装置ONUの送信部における基本構成を示すブロック図である。 制御局装置OLTの受信部における基本構成を示すブロック図である。 適応制御等化器の構成図である。 等化回路係数制御部の構成図である。 本発明の光通信システムにおける信号の流れを示すフローチャートである。 端末装置ONUから送信されるバースト光信号を示す模式的な図である。 本発明の光通信システムにおける信号の流れを示すフローチャートである。 本発明の光通信システムにおける信号の流れを示すフローチャートである。 制御局装置OLTの受信部の変更例を示すブロック構成図である。 本発明の光通信システムにおける信号の流れを示すフローチャートである。 本発明の光通信システムにおける信号の流れを示すフローチャートである。
符号の説明
1 前方誤り訂正符号付加部
2 符号変換部
3 光電変換部
4 光電変換部
5 電気分散補償部
6 符号再生部
7 前方誤り訂正符号検査部
8 係数記憶部
9 係数制御部
ONU 端末装置
OLT 制御局装置
OC 光カプラ
SMF 光ファイバ(シングルモードファイバ)
FP型LD ファブリペロー型レーザダイオード
TF 適応トランスバーサルフィルタ
T 等化回路係数制御部
AE 適応制御等化器

Claims (9)

  1. 制御局装置と複数の端末装置との間で光信号の伝送を行う光通信システムであって、
    端末装置は、送信信号に前方誤り訂正符号を付加するための前方誤り訂正符号付加部と、電気信号を光信号に変換して光伝送路に送り出すための光電変換部とを備え、
    制御局装置は、光伝送路から受信した光信号を電気信号に変換する光電変換部と、変換された電気信号を適応的に等化処理するための電気分散補償部と、等化処理された電気信号から前方誤り訂正符号の付与有無を解読し、前方誤り訂正符号が付与されている場合は誤り訂正処理を実施する前方誤り訂正符号検査部とを備える、光通信システム。
  2. 端末装置と制御局装置は互いに時計を持ち、端末装置は、送信から所定時間経過後に、送信信号に対する前方誤り訂正符号の付加を停止し、制御局装置は、受信から所定時間経過後に、等化回路係数を確定するものである請求項1記載の光通信システム。
  3. 制御局装置は時計を持ち、送信から所定時間経過後に等化回路係数を確定し、確定したことを通知するための信号を送信する通知手段を持ち、端末装置は、前記信号を受信して、送信信号に対する前方誤り訂正符号の付加を停止するものである請求項1記載の光通信システム。
  4. 制御局装置は、符号誤り率の改善率が所定の値まで達成したかどうかを判定する判定手段を持ち、改善率達成後に等化回路係数を確定し、確定したことを通知するための信号を送信するものであり、端末装置は、前記信号を受信して、送信信号に対する前方誤り訂正符号の付加を停止するものである請求項1記載の光通信システム。
  5. 制御局装置は、端末装置毎に前回使用した等化回路係数を保持する係数記憶部を備え、
    前記係数記憶部から端末装置毎の等化回路係数を読み出し、前記電気分散補償部の適応処理開始時に等化回路係数の初期設定を実施し、当該等化回路係数を初期値として電気分散補償処理を行う請求項1〜請求項4のいずれかに記載の光通信システム。
  6. 制御局装置と複数の端末装置との間で光信号の伝送を行う光通信システムにおける制御局装置であって、
    光伝送路から受信した光信号を電気信号に変換する光電変換部と、変換された電気信号を適応的に等化処理するための電気分散補償部と、等化処理された電気信号から前方誤り訂正符号の付与有無を解読し、前方誤り訂正符号が付与されている場合は誤り訂正処理を実施する前方誤り訂正符号検査部と、時計とを持ち、受信から所定時間経過後に、等化回路係数を確定する、制御局装置。
  7. 制御局装置と複数の端末装置との間で光信号の伝送を行う光通信システムにおける制御局装置であって、
    光伝送路から受信した光信号を電気信号に変換する光電変換部と、変換された電気信号を適応的に等化処理するための電気分散補償部と、等化処理された電気信号から前方誤り訂正符号の付与有無を解読し、前方誤り訂正符号が付与されている場合は誤り訂正処理を実施する前方誤り訂正符号検査部と、符号誤り率の改善率が所定の値まで達成したかどうかを判定する判定手段とを持ち、改善率達成後に等化回路係数を確定し、確定したことを通知するための信号を送信する、制御局装置。
  8. 制御局装置と複数の端末装置との間で光信号の伝送を行う光通信システムにおける端末装置であって、
    送信したい信号に前方誤り訂正符号を付加するための前方誤り訂正符号付加部と、電気信号を光信号に変換して光伝送路に送り出すための光電変換部と、信号送信時から計時を始める時計とを持ち、前記時計の所定時間経過後に前方誤り訂正符号の付加を停止する端末装置。
  9. 制御局装置と複数の端末装置との間で光信号の伝送を行う光通信システムにおける端末装置であって、
    送信したい信号に前方誤り訂正符号を付加するための前方誤り訂正符号付加部と、電気信号を光信号に変換して光伝送路に送り出すための光電変換部と、制御局装置から等化回路係数を確定したことを通知する信号を受信する受信手段と、を持ち、前記受信手段による受信後に前方誤り訂正符号の付加を停止する端末装置。
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