JP2007323057A - 光デバイスおよび波長変換方法、並びにそれに適した光ファイバ - Google Patents

光デバイスおよび波長変換方法、並びにそれに適した光ファイバ Download PDF

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【課題】狭い波長帯域のプローブ光に対して選択的に波長変換をすることができる光デバイスおよび波長変換方法、およびそれに適した光ファイバを提供する。
【解決手段】光デバイス1は、波長λpumpのポンプ光を出力するポンプ光源12と、ポンプ光源12から出力されたポンプ光および波長λprobeのプローブ光を導波させて非線形光学現象によって波長λprobeに応じた新たな波長λidlerのアイドラ光を発生させる光ファイバ11と、を備える。光ファイバ11における波長λprobeのプローブ光から波長λidlerのアイドラ光への波長変換効率の波長λprobe依存性は、波長λpumpを含む主帯域と、この主帯域と区分される副帯域とを有する。副帯域に含まれる波長λprobeのプローブ光を光ファイバ11に導波させて、この波長λprobeに応じた波長λidlerのアイドラ光を光ファイバ11で発生させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、波長λpumpのポンプ光および波長λprobeのプローブ光を光ファイバに導波させて非線形光学現象によって波長λprobeに応じた新たな波長λidlerのアイドラ光を前記光ファイバで発生させる光デバイスおよび波長変換方法、並びにそれに適した光ファイバに関するものである。
高パワーの波長λpumpのポンプ光および波長λprobeのプローブ光を高非線形性の光ファイバに導波させると、その光ファイバにおいて非線形光学現象が発現する。そして、この非線形光学現象により、波長λprobeに応じた新たな波長λidlerのアイドラ光を光ファイバで発生させることができる。非線形光学現象の一種である四光波混合を利用することにより、波長変換「λprobe→λidler」を行うことができる。このような波長変換技術や、これに用いるのに好適な高非線形性光ファイバは、特許文献1,2等に開示されている。
また、波長変換技術の応用として、光通信システムにおける信号光の波長変換だけでなく、ポンプ光としてコントロールパルス光を光ファイバに入射させることにより、光スイッチ、デマルチプレクサおよびサンプリングモニタ等も実現可能である。また、元の光と同じ情報を有する新たな波長の光子を発生させることができるので、量子暗号通信用の光子ペアを生成することも可能である。さらに、適当な光源が無い波長の光を、波長変換技術により容易に生成することも可能である。
国際公開第99/10770号パンフレット 特開2002-207136号公報
一般に分散シフト光ファイバ中で発生する四光波混合を利用した波長変換技術では、波長変換可能なプローブ光の波長の帯域(波長変換帯域)は、ポンプ光波長を含むように10nm以上連続する。従来では、この波長変換帯域の広帯域化が注目されていた。しかしながら、例えば波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)光通信システムにおいて、伝搬する多波長信号光のうち特定波長の信号光に対しては波長変換をするものの他の波長の信号光については波長変換をしないというようなことは従来では困難であった。また、波長変換される波長を変化させることも困難であった。
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、狭い波長帯域のプローブ光に対して選択的に波長変換をすることができる光デバイスおよび波長変換方法、並びにそれに適した光ファイバを提供することを目的とする。
本発明に係る光デバイスは、波長λpumpのポンプ光を出力するポンプ光源と、ポンプ光と波長λprobeのプローブ光とを合波する合波器と、ポンプ光およびプローブ光を導波させて非線形光学現象によって波長λprobeに応じた新たな波長λidlerのアイドラ光を発生させる光ファイバと、を備える光デバイスであって、光ファイバにおける波長λprobeのプローブ光から波長λidlerのアイドラ光への波長変換効率の波長λprobe依存性が、波長λpumpを含む主帯域と、この主帯域と区分される副帯域とを有することを特徴とする。また、プローブ光は副帯域に含まれる一または複数のプローブ光であり、合波器はポンプ光と一または複数のプローブ光とを合波するのが好適である。
また、本発明に係る波長変換方法は、波長λpumpのポンプ光および波長λprobeのプローブ光を光ファイバに導波させて非線形光学現象によって波長λprobeに応じた新たな波長λidlerのアイドラ光を光ファイバで発生させる波長変換方法であって、光ファイバにおける波長λprobeのプローブ光から波長λidlerのアイドラ光への波長変換効率の波長λprobe依存性が、波長λpumpを含む主帯域と、この主帯域と区分される副帯域とを有し、副帯域に含まれる一または複数のプローブ光を光ファイバに導波させて、プローブ光に応じた一または複数のアイドラ光を光ファイバで発生させることを特徴とする。
ここで、光ファイバから出力されるアイドラ光の強度をPidlerとし、光ファイバに入力されるプローブ光の強度をPprobeとしたときに、波長変換効率は「Pidler/Pprobe」で定義される。主帯域は、ポンプ光波長λpumpを含む連続した帯域であって、該帯域における波長変換効率の最大値をη2としたときに波長変換効率が(η2−3dB)以上である帯域である。副帯域は、該帯域における波長変換効率の最大値をη1としたときに波長変換効率が(η1−3dB)以上である連続した帯域である。副帯域は、主帯域に対して長波長側および短波長側それぞれに存在する。主帯域と副帯域とは、互いに重複することは無く、互いに区分される。主帯域と副帯域との間に、波長変換効率が(η1−3dB)未満となる波長が存在する。また、主帯域の帯域幅と比較して、副帯域の帯域幅は狭い。
本発明に係る光デバイスまたは波長変換方法では、波長λpumpのポンプ光および波長λprobeのプローブ光が光ファイバに導波され、これにより発現する非線形光学現象によって、波長λprobeに応じた新たな波長λidlerのアイドラ光が光ファイバで発生する。特に、本発明では、光ファイバにおける波長λprobeのプローブ光から波長λidlerのアイドラ光への波長変換効率の波長λprobe依存性は、ポンプ光波長λpumpを含む主帯域と、この主帯域と区分される副帯域とを有している。そして、副帯域に含まれる波長λprobeのプローブ光が光ファイバに導波されて、この波長λprobeに応じた波長λidlerのアイドラ光が光ファイバで発生する。
このように、主帯域に含まれる波長のプローブ光を光ファイバに導波させて波長変換をする場合と比較すると、本発明に係る光デバイスまたは波長変換方法では、副帯域に含まれる波長のプローブ光を光ファイバに導波させて波長変換をすることにより、特定波長のプローブ光に対して選択的に波長変換をすることができる。
副帯域の帯域幅が30nm以下であり、副帯域における波長変換効率の最大値をη1とし、主帯域における波長変換効率の最大値をη2としたときに、η1が (η2−10dB)より大きいのが好適である。副帯域の帯域幅は、より好ましくは15nm以下であり、更に好ましくは10nm以下である。η1とη2との差は、より好ましくは5dB以下であり、更に好ましくは3dB以下である。このような場合には、波長変換の対象となるプローブ光に対して効率よく波長変換をすることができるとともに、このプローブ光とともに多重化されている他の波長の光に対しては波長変換の影響を抑制することができる。波長選択的な波長変換をする為には、副帯域の帯域幅は狭いほど好ましい。上記帯域幅30nmというのは、一般的なEDFA(Erbium-DopedFiber Amplifier)の利得帯域幅である。また、四光波混合を用いた波長変換において、波長変換効率が最大となるのは主帯域中のポンプ光波長λpumpの近傍であり、その最大値はη2となるので、副帯域における波長変換効率の最大値η1とη2との差は小さいほど好ましい。η1とη2との差の上限値10dBは、主帯域における波長変換効率の最大値に対して副帯域における波長変換効率の最大値が10%以上であることを意味する。
副帯域が変化すると、波長可変デバイスを実現することが可能となる。これは、ポンプ光の波長λpumpを変化させると実現できる。このとき、ポンプ光の波長λpumpを0.1nmだけ変化させたときに副帯域の中心波長の変化量が1nm以上であるのが好適である。また、光ファイバのゼロ分散波長を0.1nmだけ変化させたときに副帯域の中心波長の変化量が1nm以上であるのも好適である。ポンプ光の波長λpumpの変化量または光ファイバのゼロ分散波長の変化量に対して、副帯域の中心波長の変化量は10倍である。ポンプ光の波長を変化させることで、波長変換の対象となるプローブ光の波長を効率的に変化させることができる。
光ファイバに入射されるポンプ光の強度が1mWであるときに副帯域における波長変換効率の最大値が−80dB以上であるのが好適である。この場合、比較的容易に実現することができる強度1W(=+30dBm)のポンプ光を光ファイバに入射させたとき、副帯域における波長変換効率の最大値が−20dB以上となり、実用の上で好ましい。
ポンプ光の波長λpumpが1440nm〜1640nmの範囲にあるのが好適である。この場合、ポンプ光を出力するポンプ光源として、光通信に用いられている安価な高出力レーザ光源を利用することができる。
光ファイバの全長が500m以下であるのが好適である。ファイバ長が短いほど、光ファイバの長手方向のゼロ分散波長の変動量が小さく、副帯域の帯域幅が狭い。光ファイバの全長が500m以下であれば、光ファイバの長手方向のゼロ分散波長の変動量が±0.3nm以下とすることが容易である。
ポンプ光の波長λpumpと副帯域の中心波長との差が50nm以上であるのが好適である。ポンプ光の波長λpumpは光ファイバのゼロ分散波長と略等しいので、副帯域に含まれる複数波長のプローブ光を光ファイバに入射させた場合、ポンプ光の波長λpumpと副帯域の中心波長とが互いに近いときには、複数波長のプローブ光の間での四光波混合の発現が問題となる。これに対して、ポンプ光の波長λpumpと副帯域の中心波長との差が50nm以上であれば、副帯域における光ファイバの波長分散の絶対値が1ps/nm/km程度以上となるので、複数波長のプローブ光の間での四光波混合の発現が抑制され得る。
ポンプ光の波長λpumpと副帯域の中心波長との差が100nm以下であるのが好適である。これは、例えば、励起光としてCバンド(波長1520〜1565nm)内にある波長λpumpを用い、Lバンド(波長1570〜1620nm)の波長をSバンド(波長1510〜1460nm)に変換する、または、Sバンドの光をLバンドに変換する、というような通信応用を考えた際には、ポンプ光の波長λpumpと副帯域の中心波長との差は小さい方が良く、ポンプ光の波長λpumpと副帯域の中心波長との差が100nm以下であれば実現可能である。
光ファイバからのプローブ光またはアイドラ光の出射強度が光ファイバへのプローブ光の入射強度より大きいのが好適である。この場合、光パラメトリック増幅(Optical Parametric Amplification)によって、広帯域の光増幅が可能である。また、光増幅作用だけでなく、ポンプ光としてコントロールパルス光を光ファイバに入射させることにより光スイッチやデマルチプレクサの作用をも奏することができる。
光ファイバの波長λpumpにおける角周波数ωによる伝搬定数βの4階微分値βの絶対値が3×10−56sec/m以上であるのが好適である。この4階微分値βの絶対値が大きいほど、特定波長のプローブ光に対して選択的に波長変換をする上で好ましい。なお、光ファイバの4階微分値βの絶対値や分散スロープの調整は、該光ファイバの屈折率プロファイルを最適化することで可能である。より好ましくは1×10−55sec/m以上である。
光ファイバの長手方向に沿ったゼロ分散波長の変動量が±0.3nm以下であるのが好適である。ポンプ光の波長λpumpにおける4階微分値βの絶対値を変化させると副帯域の中心波長が大きく変化するので、光ファイバの長手方向に沿ったゼロ分散波長の変動量は小さいほど好ましい。より好ましくは±0.1nm以下である。
光ファイバのゼロ分散波長における分散スロープが+0.02ps/nm/km以上であるのが好適である。この場合には、光ファイバの長手方向に沿ったゼロ分散波長の変動が抑制され得る。分散スロープは大きいほうが好ましく、より好ましくは+0.04ps/nm/km以上である。
本発明に係る光ファイバは、波長1550nmにおいて実効断面積が15μm以下であり、ゼロ分散波長が1440nm〜1640nmの範囲にあり、ゼロ分散波長において分散スロープが0.04ps/nm/km以上であり、ゼロ分散波長において角周波数ωによる伝搬定数βの4階微分値βの絶対値が1×10−55sec/m以上であり、長手方向に沿ったゼロ分散波長の変動量が±0.3nm以下であることを特徴とする。この光ファイバは、上記の本発明に係る光デバイスまたは波長変換方法において好適に用いられ得る。光ファイバは直交偏波面が保持された偏波保持光ファイバであってもよいし、偏波分散が使用する光ファイバ全長で0.2ps以下と小さな値であってもよい。
本発明によれば、狭い波長帯域のプローブ光に対して選択的に波長変換をすることができる。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、波長変換を行う光デバイスの構成例を示す図である。この図に示される光デバイス1は、光ファイバ11,ポンプ光源12および光カプラ13を備える。この光デバイス1では、ポンプ光源12から出力された高パワーの波長λpumpのポンプ光と、波長変換の対象である波長λprobeのプローブ光とは、光カプラ13により合波されて高非線形性の光ファイバ11により導波され、この光ファイバ11において非線形光学現象が発現する。そして、この非線形光学現象により、波長λprobeに応じた新たな波長λidlerのアイドラ光が光ファイバ11で発生し出力される。
図2は、波長変換を行う光デバイスの他の構成例を示す図である。この図に示される光デバイス2は、光ファイバ11,ポンプ光源12および光カプラ13を備える。この光デバイス2では、波長変換の対象である波長λprobeのプローブ光は、光ファイバ11の一端側から入射される。ポンプ光源12から出力された高パワーの波長λpumpのポンプ光は、光カプラ13を経て光ファイバ11の他端側から入射される。これらプローブ光およびポンプ光が高非線形性の光ファイバ11により導波され、この光ファイバ11において非線形光学現象が発現する。そして、この非線形光学現象により、波長λprobeに応じた新たな波長λidlerのアイドラ光が光ファイバ11で発生して、そのアイドラ光は光カプラ13を経て出力される。
図3は、波長変換を行う光デバイスの更に他の構成例を示す図である。この図に示される光デバイス3は、光ファイバ11,ポンプ光源12,光カプラ13,光カプラ14,光増幅器15,光フィルタ16および光アイソレータ17を備える。この光デバイス3では、波長変換の対象である波長λprobeのプローブ光は、光カプラ13および光アイソレータ17を経て、光ファイバ11に入射される。また、ポンプ光源12から出力された高パワーの波長λpumpのポンプ光は、光増幅器15により光増幅され、光フィルタ16により所定波長の光成分が選択的に透過され、光カプラ13および光アイソレータ17を経て、光ファイバ11に入射される。これらプローブ光およびポンプ光が高非線形性の光ファイバ11により導波され、この光ファイバ11において非線形光学現象が発現する。そして、この非線形光学現象により、波長λprobeに応じた新たな波長λidlerのアイドラ光が光ファイバ11で発生して、そのアイドラ光は光カプラ14を経て出力される。また、光ファイバ11から出力されるプローブ光も光カプラ14を経て出力される。
これらのような構成を有する光デバイスに含まれる光ファイバにおいて発現する非線形光学現象の一種である縮退四光波混合では、ポンプ光波長λpump,プローブ光波長λprobeおよびアイドラ光波長λidlerの間には、下記(1)式で表される関係がある。また、光ファイバにおけるポンプ光の伝搬定数をβpumpとし、プローブ光の伝搬定数をβprobeとし、アイドラ光の伝搬定数をβidlerとしたとき、下記(2)式で示される位相不整合パラメータΔβが値0に近いほど、光ファイバにおける波長λprobeのプローブ光から波長λidlerのアイドラ光への波長変換効率は大きくなる。
Figure 2007323057
Figure 2007323057
この位相不整合パラメータΔβを4次項まで考慮してテーラー展開すると、下記(3)式のように表される。βは、光ファイバの波長λpumpにおける角周波数ωによる伝搬定数βの2階微分値である。βは、光ファイバの波長λpumpにおける角周波数ωによる伝搬定数βの4階微分値である。Cは真空中の光速であり、πは円周率である。
Figure 2007323057
この位相不整合パラメータΔβが値0となるのは、「λpump=λprobe」の場合を除くと、下記(4)式が成り立つときである。
Figure 2007323057
伝搬定数βの4階微分値βが非0である光ファイバにおいて、この(4)式が成り立つのは、伝搬定数βの2階微分値βが略0であって(1/λpump−1/λprobe)が小さいとき(ケース1)と、2階微分値βが非0であって2階微分値βおよび4階微分値βが逆符号であり下記(5)式が成り立つとき(ケース2)とがある。
Figure 2007323057
ケース1は、ポンプ光波長λpumpとプローブ光波長λprobeとが互いに近いときであり、一般的に分散シフトファイバを用いた場合によく知られている条件である。一方、ケース2は、これまで考慮されていなかった条件である。このケース2の条件を満たすのは、(1/λpump−1/λprobe)が或る程度大きな値を持ち、且つ狭い範囲でのみとなる。
したがって、ケース2の条件では、狭い帯域の四光波混合を実現することが可能となる。これを以下に説明する。
(5)式を用いると、下記(6)式の関係を満たすようなプローブ光波長λprobeにおいて、波長変換が実現する。つまり、β/βの値が変化すれば、波長変換可能なλprobeも変化する。例えば、λpump=1530nmのCバンドのポンプ光波長を用いて、λprobe=1610nmのLバンドのプローブ光をλidler=1460nmのアイドラ光に変換するような場合には、β/β=-3×1026-2であれば良い。光ファイバのゼロ分散波長近傍で、ポンプ光波長λpumpが変化した際β4はあまり変化しないが、βは大きく変化させることが可能であるため、四光波混合が発生するプローブ光の波長範囲を変化させることができるという波長可変的な波長変換を実現することが可能となる。
Figure 2007323057
光ファイバの伝送損失が小さい場合、波長変換効率は下記(7)式で表されるηに比例する。ここでLはファイバ長さである。この式(7)は最大値が1であるため、1〜0.5となるようなλprobeの範囲が、本発明で定義する波長変換帯域となる。これは、Δβ×Lの範囲が下記(8)式であるような場合に相当する。
Figure 2007323057
Figure 2007323057
従って、下記(9)式を満たすλprobe_Aと、下記(10)式を満たすλprobe_Bとの差(λprobe_A−λprobe_B)の絶対値が、波長変換帯域である。
Figure 2007323057
Figure 2007323057
式(9)と(10)の差を取ると、下記(11)式のようになる。ここで、「(1/λpump−1/λprobe_A)=(1/λpump−1/λprobe_B)」とし、さらに式(6)を代入すると、結局、下記(12)式となる。
Figure 2007323057
Figure 2007323057
従って、例えば、L=100mの長さのファイバを用い、λpump=1530nmのCバンドのポンプ光波長を用いて、λprobe=1610nmのLバンドのプローブ光をλidler=1460nmのアイドラ光に変換するような場合には、上述の通りβ/β=-3×1026-2であるため、βが6×10-29s2/mである場合、変換帯域(λprobe_A−λprobe_B)≒8nmとなり、このように100m程度以上の光ファイバ長を用いれば、狭い帯域の波長変換が実現する。
さらに、(1/λpump−1/λprobe)が或る程度大きな値を持つことから、WDM信号を高非線形ファイバの四光波混合を用いて一括で変換するような場合、信号光間の四光波混合は発生しにくく雑音の発生を抑制可能である。一方、従来のような主帯域を用いて一括で波長変換する場合には信号間での四光波混合が信号の雑音の原因となる。
そこで、本実施形態に係る光デバイスおよび波長変換方法では、光ファイバにおける波長λprobeのプローブ光から波長λidlerのアイドラ光への波長変換効率の波長λprobe依存性は、ポンプ光波長λpumpを含む主帯域と、この主帯域と区分される副帯域とを有している。そして、副帯域に含まれる波長λprobeのプローブ光が光ファイバに導波されて、この波長λprobeに応じた波長λidlerのアイドラ光が光ファイバで発生する。
図4は、光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性を示す図である。この図に示されるように、本実施形態に係る光デバイスおよび波長変換方法では、波長変換効率は、ポンプ光波長λpumpを含む主帯域と、この主帯域と区分される副帯域とを有する。ここで、光ファイバから出力されるアイドラ光の強度をPidlerとし、光ファイバに入力されるプローブ光の強度をPprobeとしたときに、波長変換効率は「Pidler/Pprobe」で定義される。主帯域は、ポンプ光波長λpumpを含む連続した帯域であって、該帯域における波長変換効率の最大値をη2としたときに波長変換効率が(η2−3dB)以上である帯域である。副帯域は、該帯域における波長変換効率の最大値をη1としたときに波長変換効率が(η1−3dB)以上である連続した帯域である。副帯域は、主帯域に対して長波長側および短波長側それぞれに存在する。主帯域と副帯域とは、互いに重複することは無く、互いに区分される。主帯域と副帯域との間に、波長変換効率が(η1−3dB)未満となる波長が存在する。また、主帯域の帯域幅と比較して、副帯域の帯域幅は狭い。
プローブ光は、1波長であってもよいし、複数波長であってもよい。プローブ光およびポンプ光それぞれは、連続光であってもよいし、パルス光でもあってもよい。ポンプ光は、変調されていてもよい。プローブ光は、光通信等で用いられる信号光であってもよい。
このように、主帯域に含まれる波長のプローブ光を光ファイバに導波させて波長変換をする場合と比較すると、本実施形態に係る光デバイスまたは波長変換方法では、副帯域に含まれる波長のプローブ光を光ファイバに導波させて波長変換をすることにより、特定波長のプローブ光に対して選択的に波長変換をすることができる。加えて、ポンプ光の波長を変化させることで波長変換効率を維持しながらプローブ光の波長を変えることができる。
副帯域の帯域幅は30nm以下であるのが好適である。副帯域における波長変換効率の最大値をη1とし、主帯域における波長変換効率の最大値をη2としたときに、η1が (η2−10dB)より大きいのが好適である。副帯域の帯域幅は、より好ましくは15nm以下であり、更に好ましくは10nm以下である。η1とη2との差は、より好ましくは5dB以下であり、更に好ましくは3dB以下である。このような場合には、波長変換の対象となるプローブ光に対して効率よく波長変換をすることができるとともに、このプローブ光とともに多重化されている他の波長の光に対しては波長変換の影響を抑制することができる。波長選択的な波長変換をする為には、副帯域の帯域幅は狭いほど好ましい。上記帯域幅30nmというのは、一般的なEDFAの利得帯域幅である。また、主帯域中のポンプ光波長λpumpの近傍において波長変換効率は最大値η2となるので、副帯域における波長変換効率の最大値η1とη2との差は小さいほど好ましい。η1とη2との差の上限値10dBは、主帯域における波長変換効率の最大値に対して副帯域における波長変換効率の最大値が10%であることを意味する。
図5は、光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性のシミュレーション結果を示す図である。また、図6〜図8それぞれは、光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性の実験結果を示す図である。これらの図には、ポンプ光波長λpumpが1527.4nm,1528.3nmおよび1529.2nmそれぞれの場合について示されている。
ここで用いた光ファイバは、長さが200mであり、ゼロ分散波長が1528.3nmであり、分散値(1550nm)が+1.0ps/nm/kmであり、分散スロープ(1550nm)が+0.047ps/nm/kmであり、4階微分値β(1528nm)が−1.7×10−55sec/mであり、伝送損失(1550nm)が1.3dB/kmであり、実効断面積(1550nm)が12μmであり、非線形係数γ(1550nm)が18/W/kmであり、モードフィールド径(1550nm)が4.0μmであり、偏波モード分散(Cバンド)が0.06ps/km1/2である。光ファイバに入射するポンプ光のパワーを+6dBmとした。また、光ファイバに入射するプローブ光のパワーを−4dBmとした。上記の非線形係数γはXPM法による測定値であり、以降のファイバ特性も同様である。また、CW-SPM法での測定では2/3程度になることが知られている。
この光ファイバは、ゼロ分散波長付近において4階微分値βは負である。したがって、2階微分値βが正となるようにゼロ分散波長より短い波長のポンプ光を光ファイバに入射させた場合には、波長選択的な四光波混合波長変換が可能であり、逆にゼロ分散波長より長い波長のポンプ光を光ファイバに入射させた場合には、このような現象は発生しない。すなわち、図5に示されるように、ポンプ光波長がゼロ分散波長より短波長である1527.4nmである場合のみ、プローブ光波長1455nm及び1607nmそれぞれを中心波長とする副帯域において、波長変換帯域が6nmである比較的狭い帯域の波長変換が可能であることが判る。このとき、プローブ光波長が1455nmである場合には、アイドラ光波長は1607nmであり、プローブ光波長が1607nmである場合には、アイドラ光波長は1455nmである。
図6はポンプ光波長λpumpが1527.4nmである場合を示し、図7はポンプ光波長λpumpが1528.3nmである場合を示し、また、図8はポンプ光波長λpumpが1529.4nmである場合を示す。また、図6〜図8それぞれにおいて、実線はシミュレーション結果を示し、プロットは実験結果を示す。また、これらの図に示されるように、シミュレーション結果実験結果とは互いによく一致している。実験でも、ポンプ光波長λpumpがゼロ分散波長(1528.3nm)より短波長である場合のみ、プローブ光波長1603nmでピークとなる効率−44.6dBm(プローブ光波長がポンプ光波長近傍の場合には波長変換効率が−39.5dBmであるので、効率差は−5.1dBmである)、副帯域幅10nmの波長変換を実現できた。
シミュレーション結果と実験結果とのずれは、光ファイバの長さ方向におけるゼロ分散波長の変動、偏波モード分散、4階微分値βより高次の分散項、といった要因が考えられる。波長変換効率はポンプ光パワーの2乗に比例する。今回のポンプ光パワーは+6dBmと低いが、誘導ブリルアン散乱の発生閾値であった+22dBmまでポンプ光パワーを高めれば、波長変換効率は−13dBと高くなる。
このような波長変換技術については、従来は検討されていなかった。これは、例えばCWDM(Course Wavelength Division Multiplexing)光信号を波長選択的にDropするような光スイッチに使用することができる。非常に単純な構成での波長選択スイッチとなる。
以上に示した図5〜図8は、ゼロ分散波長付近において4階微分値βが負である光ファイバを用いた場合における波長変換効率の波長λprobe依存性のシミュレーション結果または実験結果であった。これに対して、図9〜図11は、ゼロ分散波長付近において4階微分値βが正である光ファイバを用いた場合における波長変換効率の波長λprobe依存性のシミュレーション結果または実験結果を示す。
図9は、光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性のシミュレーション結果を示す図である。この図には、ポンプ光波長λpumpが1587.0nm,1585.5nmおよび1584.0nmそれぞれの場合について示されている。ここで用いた光ファイバは、長さが200mであり、ゼロ分散波長が1585.5nmであり、分散値(1550nm)が−0.56ps/nm/kmであり、分散スロープ(1550nm)が+0.018ps/nm/kmであり、4階微分値β(1585nm)が+1.4×10−55sec/mであり、伝送損失(1550nm)が0.7dB/kmであり、実効断面積(1550nm)が9.7μmであり、非線形係数γ(1550nm)が25/W/kmであり、モードフィールド径(1550nm)が3.6μmであり、偏波モード分散(Cバンド)が0.15ps/km1/2である。
この光ファイバは、4階微分値βがゼロ分散波長の近傍で正であり、2階微分値βが負であって、ポンプ光波長がゼロ分散波長よりも長い1587.0nmの場合のみ、図9に示されるように、波長1520nmおよび1660nmそれぞれを中心波長として、波長変換帯域が10nmというピーク波長選択的な波長変換デバイスを実現することができる。この場合、分散スロープが小さいので、ポンプ光波長とゼロ分散波長との差が大きくないと大きな2階微分値βを実現することができない。また、光ファイバのγ値が高いので、図6〜図8に示したものより効率が高い。
本実施形態に係る光デバイスまたは波長変換方法において、ポンプ光の波長λpumpを0.1nmだけ変化させたときに、副帯域の中心波長の変化量が1nm以上であるのが好適である。ポンプ光の波長λpumpの変化量に対して、副帯域の中心波長の変化量は10倍である。ポンプ光の波長を変化させることで、波長変換の対象となるプローブ光の波長を効率的に変化させることができる。これについて、図10および図11を用いて説明する。
図10は、光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性の実験結果を示す図である。図11は、ポンプ光波長λpump,副帯域の中心波長,副帯域の帯域幅および副帯域における波長変換効率の最大値η1の関係について纏めた図表である。ここで用いた光ファイバは、図6〜図8で用いたものと同様のものである。これらは、ポンプ光波長λpumpを1527.7nm,1527.5nm,1527.3nmおよび1527.1nmと変化させた際の四光波混合波長変換の結果を示す。光ファイバに入射するポンプ光のパワーは+6dBmであった。
図10および図11に示されるように、ポンプ光波長λpumpの0.2nmの変化で、副帯域の中心波長が2nm以上シフトした。波長可変型の光デバイスを容易に実現することが可能である。また、ポンプ光波長近傍の波長を有するプローブ光の波長変換効率η2は−40dB程度であり、副帯域における波長変換効率の最大値η2との差は10dB以下である。特にポンプ光波長が1527.7nmの場合には、その差は3dB以下である。
また、ポンプ光の波長は一定で光ファイバのゼロ分散波長を変化させた場合でもポンプ光波長における2階微分値βを変化することが可能である。この場合には、ポンプ光として波長可変光源を使う必要がなく、好適である。光ファイバのゼロ分散波長を変化させるには、光ファイバの温度を変えたり(T.Kato et.al.)、歪量を変えたり(J.D.Marconi et.al.)することで実現できる。
本実施形態に係る光デバイスまたは波長変換方法において、光ファイバに入射されるポンプ光の強度が1mW(=0dBm)であるときに、副帯域における波長変換効率の最大値が−80dB以上であるのが好適である。この場合、比較的容易に実現することができる強度1W(=+30dBm)のポンプ光を光ファイバに入射させたとき、副帯域における波長変換効率の最大値が−20dB以上となり、実用の上で好ましい。これについて、図12を用いて説明する。
図12は、光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性のシミュレーション結果を示す図である。ここで用いた光ファイバは、長さが50mであり、ゼロ分散波長が1480nmであり、分散値(1550nm)が+2.5ps/nm/kmであり、分散スロープ(1550nm)が+0.034ps/nm/kmであり、4階微分値β(1480nm)が−7×10−56sec/mであり、伝送損失(1550nm)が0.5dB/kmであり、実効断面積(1550nm)が12μmであり、非線形係数γ(1550nm)が19/W/kmであり、モードフィールド径(1550nm)が3.8μm、偏波モード分散(Cバンド)が0.05ps/km1/2である。光ファイバに入射するポンプ光の波長を1478.8nmとし、該ポンプ光のパワーを+30dBmとした。この図に示されるように、プローブ光波長1370nmおよび1606nmそれぞれを中心波長として、帯域12nm、ピーク効率−8.5dBの波長変換が可能である。これは、1mWのポンプ光入射時には効率−68.5dBに相当する。
本実施形態に係る光デバイスまたは波長変換方法において、ポンプ光の波長λpumpが1440nm〜1640nmの範囲にあるのが好適である。この場合、ポンプ光を出力するポンプ光源として、光通信に用いられている安価な高出力レーザ光源を利用することができる。
本実施形態に係る光デバイスまたは波長変換方法において、光ファイバの全長が500m以下であるのが好適である。ファイバ長が短いほど、光ファイバの長手方向のゼロ分散波長の変動量が小さく、副帯域の帯域幅が狭い。光ファイバの全長が500m以下であれば、光ファイバの長手方向のゼロ分散波長の変動量が±0.3nm以下とすることが容易である。
本実施形態に係る光デバイスまたは波長変換方法において、ポンプ光の波長λpumpと副帯域の中心波長との差が50nm以上であるのが好適である。ポンプ光の波長λpumpは光ファイバのゼロ分散波長と略等しいので、副帯域に含まれる複数波長のプローブ光を光ファイバに入射させた場合、ポンプ光の波長λpumpと副帯域の中心波長とが互いに近いときには、複数波長のプローブ光の間での四光波混合の発現が問題となる。これに対して、ポンプ光の波長λpumpと副帯域の中心波長との差が50nm以上であれば、副帯域における光ファイバの波長分散の絶対値が1ps/nm/km程度以上となるので、複数波長のプローブ光の間での四光波混合の発現が抑制され得る。
ポンプ光の波長λpumpと副帯域の中心波長との差が100nm以下であるのが好適である。これは、例えば励起光としてCバンド(波長1520〜1565nm)内にある波長λpumpを用い、Lバンド(波長1570〜1620nm)の波長をSバンド(波長1510〜1460nm)に変換する、またはSバンドの光をLバンドに変換する、というような通信応用を考えた際には、ポンプ光の波長λpumpと副帯域の中心波長との差は小さい方が良く、ポンプ光の波長λpumpと副帯域の中心波長との差が100nm以下であれば実現可能である。
本実施形態に係る光デバイスまたは波長変換方法において、光ファイバからのプローブ光またはアイドラ光の出射強度が光ファイバへのプローブ光の入射強度より大きいのが好適である。この場合、光パラメトリック増幅(Optical Parametric Amplification)によって、広帯域の光増幅が可能である。また、光増幅作用だけでなく、ポンプ光としてコントロールパルス光を光ファイバに入射させることにより光スイッチやデマルチプレクサの作用をも奏することができる。
本実施形態に係る光デバイスまたは波長変換方法において、光ファイバの波長λpumpにおける角周波数ωによる伝搬定数βの4階微分値βの絶対値が3×10−56sec/m以上であるのが好適である。この4階微分値βの絶対値が大きいほど、特定波長のプローブ光に対して選択的に波長変換をする上で好ましい。なお、光ファイバの4階微分値βの絶対値や分散スロープの調整は、該光ファイバの屈折率プロファイルを最適化することで可能である。これについて、図13〜図15を用いて説明する。図13〜図15それぞれは、光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性のシミュレーション結果を示す図である。
図13で用いた光ファイバは、長さが300mであり、ゼロ分散波長が1520.0nmであり、分散値(1550nm)が+0.9ps/nm/kmであり、分散スロープ(1550nm)が+0.024ps/nm/kmであり、4階微分値β(1520nm)が−1.6×10−56sec/mであり、伝送損失(1550nm)が1.2dB/kmであり、実効断面積(1550nm)が8.6μmであり、非線形係数γ(1550nm)が30/W/kmであり、モードフィールド径(1550nm)が3.4μmであり、偏波モード分散(Cバンド)が0.05ps/km1/2である。
このような光ファイバを用いた場合、4階微分値βが小さいので、主帯域が連続的に非常に広いものとなり、E〜Uバンドまでカバーしてしまう。例えば、波長1519.8nmで+10dBmのポンプ光を光ファイバに入射させると、波長変換効率のプローブ光波長依存性は、図13に示されるとおりである。式(6)を満たすようなプローブ光波長は、λpump=1610nmであるが、主帯域と区分される副帯域を有しない。
図14で用いた光ファイバは、長さが300mであり、ゼロ分散波長が1519.0nmであり、分散値(1550nm)が+1.0ps/nm/kmであり、分散スロープ(1550nm)が+0.026ps/nm/kmであり、4階微分値β(1519nm)が−3.1×10−56sec/mであり、伝送損失(1550nm)が1.2dB/kmであり、実効断面積(1550nm)が8.6μmであり、非線形係数γ(1550nm)が30/W/kmであり、モードフィールド径(1550nm)が3.4μmであり、偏波モード分散(Cバンド)が0.05ps/km1/2である。
このような光ファイバを用いた場合、ゼロ分散波長における4階微分値βが比較的大きいので、副帯域において波長選択的な波長変換が可能となる。例えば、波長1519.8nmで+10dBmのポンプ光を光ファイバに入射させると、波長変換帯域は図14に示されるとおりであり、波長1612nmを中心に帯域幅15nmの波長変換が可能である。
図15で用いた光ファイバは、長さが300mであり、ゼロ分散波長が1519.5nmであり、分散値(1550nm)が+1.2ps/nm/kmであり、分散スロープ(1550nm)が+0.033ps/nm/kmであり、4階微分値β(1519nm)が−9.6×10−56sec/mであり、伝送損失(1550nm)が1.2dB/kmであり、実効断面積(1550nm)が8.6μmであり、非線形係数γ(1550nm)が30/W/kmであり、モードフィールド径(1550nm)が3.4μmであり、偏波モード分散(Cバンド)が0.05ps/km1/2である。
このような光ファイバを用いた場合、ゼロ分散波長における4階微分値βがさらに大きいので、より消光比の大きな波長選択的な波長変換が可能となる。例えば、波長1518.9nmで+10dBmのポンプ光を光ファイバに入射させると、波長変換帯域は図15に示されるとおりであり、波長1453nmおよび1596nmそれぞれを中心に帯域幅8nmの波長変換が可能である。このようにポンプ光波長における4階微分値βの絶対値が1×10−55sec/m以上であると更に好ましい。
光ファイバの長さは短いほうがゼロ分散波長の変動が小さくなるが、式(12)のように、長さに反比例して波長変換帯域は大きくなってしまう。このような場合には、よりβ4を大きくする必要がある。
図19には、β4の大小による比較を行った結果を示す。用いた光ファイバは、長さが100mでゼロ分散波長が1558.0nmであり、分散値(1550nm)が−0.2ps/nm/kmであり、分散スロープ(1550nm)が+0.019ps/nm/kmであり、4階微分値β(1558nm)が+1.0×10−55sec/mであり、伝送損失(1550nm)が0.8dB/kmであり、実効断面積(1550nm)が9.6μmであり、非線形係数γ(1550nm)が24/W/kmであり、モードフィールド径(1550nm)が3.6μmであり、偏波モード分散(Cバンド)が0.03ps/km1/2である、光ファイバと、長さが100mでゼロ分散波長が1528.0nmであり、分散値(1550nm)が+1.0ps/nm/kmであり、分散スロープ(1550nm)が+0.047ps/nm/kmであり、4階微分値β(1528nm)が−1.8×10−55sec/mであり、伝送損失(1550nm)が1.3dB/kmであり、実効断面積(1550nm)が12μmであり、非線形係数γ(1550nm)が18/W/kmであり、モードフィールド径(1550nm)が4.0μmであり、偏波モード分散(Cバンド)が0.06ps/km1/2である、光ファイバである。
図19は、規格化した波長変換効率のポンプ光とプローブ光の差分依存性の実験結果を示す。このとき、β/βは-3×10262程度とした。β4=−1.0×10−55sec/mである光ファイバは、白丸のように、主帯域と区分される副帯域を有していない。一方、β4=−1.8×10−56sec/mである光ファイバは、黒丸のように、ポンプ光波長から80nm程度はなれたプローブ光波長に、変換帯域10nmの副帯域を有している。このように、β4は大きな値であると好ましい。
β4=−1.8×10−56sec/mである光ファイバ100mを用い、ポンプ光波長λpumpを変化させた際の、規格化した波長変換効率のプローブ光波長λprobe依存性を図20に示す。ファイバ長が100mと短いために、プローブ光波長λprobeが1620nmにおける、副帯域の波長変換効率のピーク値は主帯域の波長変換効率のピーク値から3dB程度しか低下していない。また、ポンプ光波長を変化させて、副帯域のプローブ光波長λprobe中心波長が1600、1610、1620nmとなり、消光比が約10dBとなるような可変型の波長変換を実現した。
本実施形態に係る光デバイスまたは波長変換方法において、光ファイバの長手方向に沿ったゼロ分散波長の変動量が±0.3nm以下であるのが好適である。ポンプ光の波長λpumpにおける4階微分値βの絶対値を変化させると副帯域の中心波長が大きく変化するので、光ファイバの長手方向に沿ったゼロ分散波長の変動量は小さいほど好ましい。これについて、図16を用いて説明する。
図16は、光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性の実験結果を示す図である。ここで用いた光ファイバは、長さが500mであり、ゼロ分散波長が1529.1nmであり、分散値(1550nm)が+1.2ps/nm/kmであり、分散スロープ(1550nm)が+0.042ps/nm/kmであり、4階微分値β(1519nm)が−1.5×10−56sec/mであり、伝送損失(1550nm)が0.35dB/kmであり、実効断面積(1550nm)が15μmであり、非線形係数γ(1550nm)が10/W/kmであり、モードフィールド径(1550nm)が4.6μmであり、偏波モード分散(Cバンド)が0.02ps/km1/2である。
この光ファイバの長さ方向におけるゼロ分散波長の変動は±0.1nmであった(測定はMollenauerらの方法。また、それぞれ波長の異なる2波長の波長可変レーザ光を光ファイバ中に入射し、波長間隔を一定に保ちながら波長をスキャンし、発生する四光波混合の変換効率を調査することによってもゼロ分散波長の変動を知ることが出来る:. Brenner, et al., Opt. Lett.,23, (1998) 1520.)。このような光ファイバに波長1528.5nmで+15dBmのポンプ光を入射させると、波長1471nm及び1592nmそれぞれを中心波長として、副帯域の幅10nmという波長選択的な波長変換デバイスを実現することができる。この副帯域内での波長変換効率は、最大−27dBであり、ポンプ光波長近傍での波長変換効率の最大値−20dBと比較して、10dB以内の差である。
本実施形態に係る光デバイスまたは波長変換方法において、光ファイバのゼロ分散波長における分散スロープが+0.02ps/nm/km以上であるのが好適である。この場合には、光ファイバの長手方向に沿ったゼロ分散波長の変動が抑制され得る。これについて、図17を用いて説明する。
図17は、光ファイバにおけるゼロ分散波長の長手方向変動量と分散スロープとの関係を示す図である。ここで用いた光ファイバは、実効断面積が8〜12μmであり、非線形係数γがXPM法での測定で17〜35/W/kmである。このような光ファイバのコア部の径が長さ方向で1%(±0.05%)変動した場合に、ゼロ分散波長がどの程度変化するのかが図17に示されている。
この図に示されるように、分散スロープが+0.02ps/nm/km以下である場合には、急激にゼロ分散波長の変動量が大きくなっている。したがって、好ましいのはゼロ分散波長において+0.02ps/nm/km以上の分散スロープを有する光ファイバである。その倍の+0.04ps/nm/km以上の分散スロープを有する光ファイバであれば、より好ましい。また、一般的に高非線形性光ファイバとして実現可能な分散スロープの最大値は+0.06ps/nm/km程度である。
本実施形態に係る光デバイスまたは波長変換方法において、光ファイバの偏波モード分散が全長で0.2ps以下であるのが好適である。偏波分散の影響が小さくなり、光ファイバにおける非線形光学現象が長時間に亘って安定して発現することが可能である。また、光ファイバを導波する基底モード光の直交偏波間のクロストークが全長で−15dB以下であるのが好適である。このような偏波保持光ファイバを用いることにより、偏波分散の影響が無視し得るほど小さくなり、光ファイバにおける非線形光学現象が長時間に亘って安定して発現することが可能である。
図18は、光ファイバの屈折率プロファイルの好適例を示す図である。偏波モード分散が低い方が、帯域が広くなるので、使用ファイバ長で0.2ps以下であるとよい。偏波モード分散が0.1ps以下であればより好ましい。一般的なPANDA型構造とすることで、導波モード(光ファイバの基底モード)の直交偏波間のカップリングを抑制することが可能であり、さらに好適である。ファイバ長1kmであっても、偏波間のカップリングを−15dB以下にすることが可能で、実使用のファイバ長ではさらに小さくすることができえる。
本実施形態に係る光デバイスまたは波長変換方法において用いられる光ファイバは、波長1550nmにおいて実効断面積が15μm以下であり、ゼロ分散波長が1440nm〜1640nmの範囲にあり、ゼロ分散波長において分散スロープが0.04ps/nm/km以上であり、ゼロ分散波長において角周波数ωによる伝搬定数βの4階微分値βの絶対値が1×10−55sec/m以上であり、長手方向に沿ったゼロ分散波長の変動量が±0.3nm以下である。この光ファイバは、上記の実施形態に係る光デバイスまたは波長変換方法において好適に用いられ得る。
また、光ファイバは、例えば最小曲げ径が40mmφ程度以下の小型コイルに巻かれていてもよい。このとき、光ファイバの被覆外径が150μm以下など細くなる方がより小型にすることができる。また、光ファイバのガラス部の外径が100μm以下など細ければ、小型に巻いたときの巻き歪が小さくなるので、破断する確率が小さくなったり、曲げ誘起複屈折による偏波モード分散の劣化を抑制できたりすることが可能である。
さらに、光ファイバの非線形係数は、高い方が望ましく、特に10/W-km以上であるとよい。そのため、実効断面積は15μm以下である方が望ましい。また、中心コア部の屈折率が高く非線形屈折率Nも高い方がよい。例えば中心コア部にGeOを添加した石英ガラスを使用し、純石英ガラスに対する比屈折率差が2.0%以上であり、非線形屈折率NはXPM法の測定で4以上であるとよい。モードフィールド径も小さい方がよく、例えば4.5μm以下であるとよい。
光ファイバの伝送損失は低い方がよい。光ファイバの実効長が長くなるため、変換効率が上昇する。伝送損失は例えば10dB/km以下(好ましくは2dB/km以下)であるとよい。そのためには、石英ガラスベースの光ファイバであるのが望ましい。ゼロ分散波長とポンプ光波長とは0.1nm〜10nm程度離れているのが望ましいので、分散シフトファイバである必要がある。波長分散の制御性といった観点からも、石英ガラスベースの光ファイバであるのが望ましい。
波長変換を行う光デバイスの構成例を示す図である。 波長変換を行う光デバイスの他の構成例を示す図である。 波長変換を行う光デバイスの更に他の構成例を示す図である。 光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性を示す図である。 光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性のシミュレーション結果を示す図である。 光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性の実験結果を示す図である。 光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性の実験結果を示す図である。 光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性の実験結果を示す図である。 光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性のシミュレーション結果を示す図である。 光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性の実験結果を示す図である。 ポンプ光波長λpump,副帯域の中心波長,副帯域の帯域幅および副帯域における波長変換効率の最大値η1の関係について纏めた図表である。 光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性のシミュレーション結果を示す図である。 光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性のシミュレーション結果を示す図である。 光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性のシミュレーション結果を示す図である。 光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性のシミュレーション結果を示す図である。 光ファイバにおける波長変換効率の波長λprobe依存性の実験結果を示す図である。 光ファイバにおけるゼロ分散波長の長手方向変動量と分散スロープとの関係を示す図である。 光ファイバの屈折率プロファイルの好適例を示す図である。 光ファイバにおける規格化した波長変換効率の波長λprobeとλprobeの差分波長依存性の実験結果を示す図である。 光ファイバにおける規格化した波長変換効率の波長λprobe依存性の実験結果を示す図である。
符号の説明
1〜3…光デバイス、11…光ファイバ、12…ポンプ光源、13…光カプラ、14…光カプラ、15…光増幅器、16…光フィルタ、17…光アイソレータ。

Claims (16)

  1. 波長λpumpのポンプ光を出力するポンプ光源と、前記ポンプ光と波長λprobeのプローブ光とを合波する合波器と、前記ポンプ光および前記プローブ光を導波させて非線形光学現象によって波長λprobeに応じた新たな波長λidlerのアイドラ光を発生させる光ファイバと、を備える光デバイスであって、
    前記光ファイバにおける波長λprobeのプローブ光から波長λidlerのアイドラ光への波長変換効率の波長λprobe依存性が、波長λpumpを含む主帯域と、この主帯域と区分される副帯域とを有することを特徴とする光デバイス。
  2. 前記プローブ光は前記副帯域に含まれる一または複数のプローブ光であり、前記合波器は前記ポンプ光と前記一または複数のプローブ光とを合波することを特徴とする請求項1記載の光デバイス。
  3. 前記副帯域の帯域幅が30nm以下であり、
    前記副帯域における波長変換効率の最大値をη1とし、前記主帯域における波長変換効率の最大値をη2としたときに、η1が (η2−10dB)より大きい、
    ことを特徴とする請求項1記載の光デバイス。
  4. 前記ポンプ光の波長λpumpを0.1nmだけ変化させたときに前記副帯域の中心波長の変化量が1nm以上であることを特徴とする請求項1記載の光デバイス。
  5. 前記光ファイバのゼロ分散波長を0.1nmだけ変化させたときに前記副帯域の中心波長の変化量が1nm以上であることを特徴とする請求項1記載の光デバイス。
  6. 前記光ファイバに入射される前記ポンプ光の強度が1mWであるときに前記副帯域における波長変換効率の最大値が−80dB以上であることを特徴とする請求項1記載の光デバイス。
  7. 前記ポンプ光の波長λpumpが1440nm〜1640nmの範囲にあることを特徴とする請求項1記載の光デバイス。
  8. 前記光ファイバの全長が500m以下であることを特徴とする請求項1記載の光デバイス。
  9. 前記ポンプ光の波長λpumpと前記副帯域の中心波長との差が50nm以上であることを特徴とする請求項1記載の光デバイス。
  10. 前記ポンプ光の波長λpumpと前記副帯域の中心波長との差が100nm以下であることを特徴とする請求項1記載の光デバイス。
  11. 前記光ファイバからの前記プローブ光または前記アイドラ光の出射強度が前記光ファイバへの前記プローブ光の入射強度より大きいことを特徴とする請求項1記載の光デバイス。
  12. 前記光ファイバの波長λpumpにおける角周波数ωによる伝搬定数βの4階微分値βの絶対値が3×10−56sec/m以上であることを特徴とする請求項1記載の光デバイス。
  13. 前記光ファイバの長手方向に沿ったゼロ分散波長の変動量が±0.3nm以下であることを特徴とする請求項1記載の光デバイス。
  14. 前記光ファイバのゼロ分散波長における分散スロープが+0.02ps/nm/km以上であることを特徴とする請求項1記載の光デバイス。
  15. 波長λpumpのポンプ光および波長λprobeのプローブ光を光ファイバに導波させて非線形光学現象によって波長λprobeに応じた新たな波長λidlerのアイドラ光を前記光ファイバで発生させる波長変換方法であって、
    前記光ファイバにおける波長λprobeのプローブ光から波長λidlerのアイドラ光への波長変換効率の波長λprobe依存性が、波長λpumpを含む主帯域と、この主帯域と区分される副帯域とを有し、
    前記副帯域に含まれる一または複数のプローブ光を前記光ファイバに導波させて、前記プローブ光に応じた一または複数のアイドラ光を前記光ファイバで発生させる、
    ことを特徴とする波長変換方法。
  16. 波長1550nmにおいて実効断面積が15μm以下であり、
    ゼロ分散波長が1440nm〜1640nmの範囲にあり、
    ゼロ分散波長において分散スロープが0.04ps/nm/km以上であり、
    ゼロ分散波長において角周波数ωによる伝搬定数βの4階微分値βの絶対値が1×10−55sec/m以上であり、
    長手方向に沿ったゼロ分散波長の変動量が±0.3nm以下である、
    ことを特徴とする光ファイバ。
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