JP2007321622A - ファンクラッチの異常検知方法及び装置 - Google Patents

ファンクラッチの異常検知方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ファンクラッチ自体やファン回転センサが故障することで生じた異常を明確に診断し得るようにしたファンクラッチの異常検知方法及び装置を提供する。
【解決手段】車両のエンジン1と冷却ファン3の間に介装した電子制御のファンクラッチ2の異常検知方法に関し、ファンクラッチ2をフルロック状態として冷却ファン3の回転数を実測する一方、現在のエンジン1の回転数に基づいてエンジン1側とファンクラッチ2側との回転比率から理論上の冷却ファン3の回転数を第一の閾値として算出し、この第一の閾値よりも冷却ファン3の回転数の実測値が上まわっている場合に直ちに異常と診断し、この実測値が第一の閾値以下の場合には該第一の閾値を下方修正した第二の閾値と更に比較を行い、実測値が第二の閾値以下の場合に異常を仮診断して該異常の仮診断が所定回数連続した時に異常と診断する。
【選択図】図1

Description

本発明はファンクラッチの異常検知方法及び装置に関するものである。
車両用エンジンに付帯する冷却ファンは、ラジエータ越しに外気を強制的に吸引して冷却媒体であるクーラントの放熱を助け、ノッキングや潤滑不良の要因となるエンジンの過熱を防ぐ役割を果たしているが、十分な送風量が期待できる車両高速走行時等においては、冷却ファンを駆動する分だけエンジン出力の損失が生じ、これにより燃費の悪化を招いてしまっていた。
そこで、エンジンのクランクシャフトと冷却ファンとの間に電子制御のファンクラッチを介在させ、車両の運転状況に基づきファン冷却が不要となる度にファンクラッチを切ることで冷却ファンの回転消費エネルギーをできるだけ少なくする提案が成されている。
そして、この種の電子制御のファンクラッチにあっては、冷却ファンの回転数を検出するファン回転センサが内蔵されているのが通常であり、このファン回転センサからの検出信号が適宜に各種制御に用いられるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−214155号公報
しかしながら、従来における電子制御のファンクラッチにおいては、断線等によりファン回転センサからの検出信号が途絶えてしまったような場合には明確な異常として検知することができるが、ファンクラッチ自体やファン回転センサの故障によりファン回転センサの検出信号が冷却ファンの実回転数と異なる誤信号として制御装置に入力され続けている間は、それが異常なのか正常なのかを明確に診断する手法が確立していなかった。
本発明は斯かる実情に鑑みてなしたもので、ファンクラッチ自体やファン回転センサが故障することで生じた異常を明確に診断し得るようにしたファンクラッチの異常検知方法及び装置を提供することを目的としている。
本発明は、車両のエンジンと冷却ファンの間に介装した電子制御のファンクラッチの異常検知方法であって、ファンクラッチをフルロック状態として冷却ファンの回転数を実測する一方、現在のエンジンの回転数に基づいてエンジン側とファンクラッチ側との回転比率から理論上の冷却ファンの回転数を第一の閾値として算出し、この第一の閾値よりも冷却ファンの回転数の実測値が上まわっている場合に直ちに異常と診断し、この実測値が第一の閾値以下の場合には該第一の閾値を下方修正した第二の閾値と更に比較を行い、実測値が第二の閾値以下の場合に異常を仮診断して該異常の仮診断が所定回数連続した時に異常と診断することを特徴とするものである。
即ち、現在のエンジンの回転数に基づいてエンジン側とファンクラッチ側との回転比率から第一の閾値として算出される冷却ファンの回転数は、ファンクラッチによるトルク伝達が損失なく100%実現することを想定した理論値に過ぎないため、ファンクラッチをフルロック状態とした時の冷却ファンの回転数の実測値が前記第一の閾値を上まわるといった事態は現実的に有り得ないはずである。
従って、第一の閾値よりも冷却ファンの回転数の実測値が上まわっている状態にあっては、ファン回転センサに何らかの故障が生じているものと推定することが可能であり、第一の閾値よりも冷却ファンの回転数の実測値が上まわっているという事実を以ってして直ちに異常を診断することが可能となる。
また、冷却ファンの回転数の実測値が第一の閾値以下の場合であっても、ファンクラッチによるトルク伝達の損失分を大きく逸脱して実測値が顕著に下まわっているような場合には、やはりファンクラッチ自体やファン回転センサに何らかの故障が生じているものと推定せざるを得ない。
そこで、冷却ファンの回転数の実測値が第一の閾値以下の場合には、該第一の閾値を下方修正した第二の閾値と更に比較を行い、実測値が第二の閾値以下の場合に異常を仮診断するようにしているが、ファンクラッチ自体やファン回転センサに故障が生じていなくても、ファンクラッチにフルロック状態を指示してから実際にフルロック状態となるまでにたまたま応答遅れが生じて実測値が低く検出されることも想定されるため、異常の仮診断が所定回数連続した時に正式に異常と診断するようにして異常検出の信頼性を高めている。
また、本発明においては、ファンクラッチがシリコンオイルの粘性を利用してトルク伝達を行うビスカス式の機構を採用している場合に、ファンクラッチのフルロック状態での回転数に応じたロック率と、ファンクラッチのトルク伝達に介在するシリコンオイルの劣化を見込んだ劣化係数とを第一の閾値に乗算して第二の閾値とすることが好ましい。
即ち、ビスカス式のファンクラッチでは、冷却ファンの回転数が高くなるのに従い滑り易くなってフルロック時のロック率が低下してくるので、冷却ファンの回転数に応じたロック率を第一の閾値に乗算すれば、ファンクラッチによるトルク伝達の損失分を考慮した現実的な冷却ファンの回転数が推定されることになる。
しかも、シリコンオイルは劣化により粘性が低下してロック率を下げてしまうことが判っているので、予めシリコンオイルの劣化を見込んだ劣化係数を前記現実的な冷却ファンの回転数に更に乗算すれば、シリコンオイルの劣化により異常の仮診断が生じ易くなる不具合を未然に回避することも可能となる。
更に、本発明においては、ファンクラッチにトルク伝達を指令する制御信号が所定値以上である条件下でのみファンクラッチの異常の有無を診断することが好ましく、このようにすれば、もともと冷却ファンによる空冷が要求されている条件下でファンクラッチをフルロック状態として異常検出が実施されることになるので、冷却ファンの不要時にファンクラッチが異常検出のためだけにフルロック状態とされるような不合理な事態が未然に回避されることになり、無駄な冷却ファンの駆動を極力排除して燃費の悪化を防止することが可能となる。
また、本発明の方法をより具体的に実施するにあたっては、例えば、ファンクラッチに内蔵されて冷却ファンの回転数を検出するファン回転センサと、現在のエンジンの回転数を検出するエンジン回転センサと、これらファン回転センサ及びエンジン回転センサから導いた検出信号に基づきファンクラッチの健全性を診断する診断装置とを備え、この診断装置が、ファンクラッチをフルロック状態として冷却ファンの回転数を実測する手段と、現在のエンジンの回転数に基づいてエンジン側とファンクラッチ側との回転比率から理論上の冷却ファンの回転数を第一の閾値として算出する手段と、この第一の閾値よりもファン回転センサの実測値が上まわっている場合に直ちに異常と診断する手段と、ファン回転センサの実測値が第一の閾値以下の場合に該第一の閾値を下方修正した第二の閾値と更に比較する手段と、ファン回転センサの実測値が第二の閾値以下の場合に異常を仮診断して該異常の仮診断が所定回数連続した時に異常と診断し且つ所定回数に達する前に実測値が第二の閾値を上回ったら異常の仮診断のカウントをリセットする手段とを備えるようにすれば良い。
また、ファンクラッチがシリコンオイルの粘性を利用してトルク伝達を行うビスカス式の機構を採用しており、ファンクラッチのフルロック状態での回転数に応じたロック率と、ファンクラッチのトルク伝達に介在するシリコンオイルの劣化を見込んだ劣化係数とを第一の閾値に乗算して第二の閾値とするように診断装置が構成されていることが好ましく、更には、ファンクラッチにトルク伝達を指令する制御信号が所定値以上である条件下でのみファンクラッチの異常の有無を診断するように診断装置が構成されていることが好ましい。
本発明のファンクラッチの異常検知方法及び装置によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
(I)本発明の請求項1、4に記載の発明によれば、現在のエンジンの回転数に基づいてエンジン側とファンクラッチ側との回転比率から第一の閾値として算出した理論上の冷却ファンの回転数よりも冷却ファンの回転数の実測値が上まわるといった現実的に有り得ない場合には直ちに異常と診断し、冷却ファンの回転数の実測値が第一の閾値以下の場合であっても、該第一の閾値を下方修正した第二の閾値と更に比較を行うことにより、ファンクラッチによるトルク伝達の損失分を大きく逸脱して実測値が顕著に下まわっているような場合に異常を仮診断し、この異常の仮診断が所定回数連続した時に高い信頼性を以って正式に異常と診断するようにしているので、ファンクラッチ自体やファン回転センサが故障することで生じた異常を明確に診断することができる。
(II)本発明の請求項2、5に記載の発明によれば、冷却ファンの回転数に応じたロック率を第一の閾値に乗算することにより、ファンクラッチによるトルク伝達の損失分を考慮した現実的な冷却ファンの回転数を推定することができ、しかも、予めシリコンオイルの劣化を見込んだ劣化係数を更に乗算することにより、シリコンオイルの劣化により異常の仮診断が生じ易くなる不具合を未然に回避することができる。
(III)本発明の請求項3、6に記載の発明によれば、もともと冷却ファンによる空冷が要求されている条件下でファンクラッチをフルロック状態として異常検出を実施するようにしているので、冷却ファンの不要時にファンクラッチが異常検出のためだけにフルロック状態とされるような不合理な事態を未然に回避することができ、無駄な冷却ファンの駆動を極力排除して燃費の悪化を防止することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明を実施するための具体的な形態の一例を示すもので、エンジン1に対し電子制御のファンクラッチ2を介して冷却ファン3が装備されており、該ファンクラッチ2は、シリコンオイルの粘性を利用してトルク伝達を行うようにした従来周知のビスカス式の機構を採用したものとなっていて、エンジン制御コンピュータ(ECU:Electronic Control Unit)を成す制御装置4からの制御信号4aに基づいて断続制御されるようになっている。
ここで、前記制御装置4には、サーモケース等に装備されてクーラントの温度を検出する温度センサ5からの検出信号5aが入力されるようになっており、該温度センサ5からの検出信号5aに基づき現在のクーラントの温度が所定の許容範囲を上回った際に、ファンクラッチ2を繋ぐ制御信号4aが出力され、現在のクーラントの温度が所定の許容範囲を下回った際には、ファンクラッチ2を切る制御信号4aが出力されるようになっている。
尚、この種の制御信号4aとしては、一般的にPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)信号と称されているものが用いられており、0%の信号出力でファンクラッチ2が断切され、100%の信号出力でファンクラッチ2がフルロック状態で接続されるようになっている。
また、冷却ファン3の前面には、クーラントを空冷するためのラジエータ以外に、ターボチャージャにより過給されて昇温した吸気を空冷するためのインタークーラや、エアコンの気相の冷却媒体を空冷して液相に復元するためのエアコンコンデンサが配置されることもあるので、このような場合には、現在のクーラントの温度が所定の許容範囲を下回っていても、吸気温度が所定の許容範囲を上回っている場合やエアコン稼働時にファンクラッチ2を繋ぐ制御信号4aが出力されるようにしても良い。
そして、本形態例においては、このようなファンクラッチ2を不要時に切ることで燃費向上を図るようにした通常制御に加え、ファンクラッチ2に内蔵されて冷却ファン3の回転数を検出するファン回転センサ6からの検出信号6aと、現在のエンジン1の回転数を検出するエンジン回転センサ7からの検出信号7aも入力されるようになっており、これらファン回転センサ6及びエンジン回転センサ7からの検出信号6a,7aに基づきファンクラッチ2の健全性(内蔵のファン回転センサ6も含めた健全性)を診断して異常が検知された時に警告信号4bがインストルメントパネルのチェックランプ8等へ向けて出力されるようにしてある。
即ち、本形態例においては、制御装置4がファンクラッチ2の健全性を診断する診断装置を兼ねたものとなっており、ファンクラッチ2を不要時に切ることで燃費向上を図るようにした通常の断続制御を通常制御モードとし、ファンクラッチ2にトルク伝達を指令する制御信号4aが所定値以上(例えば80%以上のPWM信号出力)となった時に通常制御モードから故障診断モードへと移行してファンクラッチ2の健全性が診断されるようになっている。
図2は前述したファンクラッチ2の健全性を診断する制御をフローチャートにまとめたものであり、最初にステップS1でファンクラッチ2にトルク伝達を指令する制御信号4aが所定値以上(例えば80%以上のPWM信号出力)であるか否かが判定され、「YES」の場合に故障診断モードへと移行してステップS2でファンクラッチ2をフルロック状態とする100%のPWM信号に制御信号4aが変更される一方、「NO」の場合にはステップS3に進んで通常制御モードが継続されるようにしてある。
尚、このようにファンクラッチ2にトルク伝達を指令する制御信号4aが所定値以上である条件下で故障診断モードへ移行するようにすれば、もともと冷却ファン3による空冷が要求されている条件下でファンクラッチ2をフルロック状態として異常検出が実施されることになるので、冷却ファン3の不要時にファンクラッチ2が異常検出のためだけにフルロック状態とされるような不合理な事態が未然に回避されることになる。
また、先のステップS2で100%のPWM信号に変更された制御信号4aが所要時間(t秒間)にわたり出力された後に次のステップS4に進み、このステップS4において、第一の閾値(Nin)よりも冷却ファン3の回転数の実測値(Nfan)が上まわっているか否かが判定されるようになっている。
ここで、第一の閾値(Nin)とは、ステップS5において、エンジン回転センサ7により検出される現在のエンジン1の回転数に基づいて、エンジン1側とファンクラッチ2側との回転比率から理論上の冷却ファン3の回転数として算出したものであり、例えば、エンジン1側からファンクラッチ2側へプーリーとベルトを介してトルク伝達が成されている場合、エンジン回転センサ7の検出値とプーリー比とを乗算することで算出されてステップS4に情報として伝えられるようになっている。
他方、冷却ファン3の回転数の実測値(Nfan)とは、ステップS6において、ファンクラッチ2に内蔵されたファン回転センサ6により検出されるものであり、該ファン回転センサ6の検出値がそのまま冷却ファン3の回転数の実測値(Nfan)としてステップS4に情報として伝えられるようになっている。
そして、先のステップS4で第一の閾値(Nin)よりも冷却ファン3の回転数の実測値(Nfan)が上まわっているか否かが判定された結果、「YES」の場合にはステップS7に進んで直ちに異常と診断し、フェールセーフモードに移行して警告信号4bがインストルメントパネルのチェックランプ8等へ向けて出力されるようになっている。
即ち、現在のエンジン1の回転数に基づいてエンジン1側とファンクラッチ2側との回転比率から第一の閾値(Nin)として算出される冷却ファン3の回転数は、ファンクラッチ2によるトルク伝達が損失なく100%実現することを想定した理論値に過ぎないため、ファンクラッチ2をフルロック状態とした時の冷却ファン3の回転数の実測値(Nfan)が前記第一の閾値(Nin)を上まわるといった事態は現実的に有り得ないはずである。
従って、第一の閾値(Nin)よりも冷却ファン3の回転数の実測値(Nfan)が上まわっている状態にあっては、ファン回転センサ6に何らかの故障が生じているものと推定することが可能であり、第一の閾値(Nin)よりも冷却ファン3の回転数の実測値(Nfan)が上まわっているという事実を以ってして直ちに異常を診断することが可能となる。
一方、ステップS4での判定が「NO」の場合には次のステップS8に進み、このステップS8において、冷却ファン3の回転数の実測値(Nfan)が、第一の閾値(Nin)を下方修正した第二の閾値(Ncal×B)以下であるか否かが判定されるようになっている。
即ち、冷却ファン3の回転数の実測値(Nfan)が第一の閾値(Nin)以下の場合であっても、ファンクラッチ2によるトルク伝達の損失分を大きく逸脱して実測値(Nfan)が顕著に下まわっているような場合には、やはりファンクラッチ2自体やファン回転センサ6に何らかの故障が生じているものと推定せざるを得ないからである。
ここで、第二の閾値(Ncal×B)とは、ステップS9において、ファンクラッチ2のフルロック状態での回転数に応じたロック率と、ファンクラッチ2のトルク伝達に介在するシリコンオイルの劣化を見込んだ劣化係数(B)とを第一の閾値(Nin)に乗算して算出されたものであり(ここでは第一の閾値にロック率を乗算した算出値をNcalとしている)、その算出値が第二の閾値(Ncal×B)としてステップS8に情報として伝えられるようにしている。
即ち、ビスカス式のファンクラッチ2では、冷却ファン3の回転数が高くなるのに従い滑り易くなってフルロック時のロック率が低下してくるので、冷却ファン3の回転数に応じたロック率を第一の閾値(Nin)に乗算すれば、ファンクラッチ2によるトルク伝達の損失分を考慮した現実的な冷却ファン3の回転数(Ncal)が推定されることになる。
しかも、シリコンオイルは劣化により粘性が低下してロック率を下げてしまうことが判っているので、予めシリコンオイルの劣化を見込んだ劣化係数を前記現実的な冷却ファン3の回転数(Ncal)に更に乗算すれば、シリコンオイルの劣化により異常の仮診断が生じ易くなる不具合を未然に回避することも可能となる。
そして、先のステップS8で冷却ファン3の回転数の実測値(Nfan)が第二の閾値(Ncal×B)以下であるか否かが判定された結果、「NO」の場合にはステップS10に進んで燃費向上を図るための通常制御モードに復帰するようにしてあるが、「YES」の場合にはステップS11に進んで異常が仮診断されて記憶されるようになっている。
また、先のステップS11における異常の仮診断が所定回数連続して記憶された時には異常と診断してステップS12に進み、フェールセーフモードに移行して警告信号4bがインストルメントパネルのチェックランプ8等へ向けて出力されるようになっているが、所定回数に達する前に実測値(Nfan)が第二の閾値(Ncal×B)を上回ったら異常の仮診断のカウントがリセットされるようにしてある。
要するに、ファンクラッチ2自体やファン回転センサ6に故障が生じていなくても、ファンクラッチ2にフルロック状態を指示してから実際にフルロック状態となるまでにたまたま応答遅れが生じて実測値(Nfan)が低く検出されることも想定されるため、異常の仮診断が所定回数連続した時に正式に異常と診断するようにして異常検出の信頼性を高めているのである。
尚、ステップS11で異常の仮診断の記憶が所定回数に達しないうちは、異常の仮診断の記憶した後に、ステップS13へ進み、燃費向上を図るための通常制御モードに復帰するようになっている。
従って、以上に詳述した如き図2のフローチャートに従い、ファンクラッチ2の健全性(内蔵のファン回転センサ6も含めた健全性)を診断するようにすれば、現在のエンジン1の回転数に基づいてエンジン1側とファンクラッチ2側との回転比率から第一の閾値(Nin)として算出した理論上の冷却ファン3の回転数よりも冷却ファン3の回転数の実測値(Nfan)が上まわるといった現実的に有り得ない場合には直ちに異常と診断し、冷却ファン3の回転数の実測値(Nfan)が第一の閾値(Nin)以下の場合であっても、該第一の閾値(Nin)を下方修正した第二の閾値(Ncal×B)と更に比較を行うことにより、ファンクラッチ2によるトルク伝達の損失分を大きく逸脱して実測値(Nfan)が顕著に下まわっているような場合に異常を仮診断し、この異常の仮診断が所定回数連続した時に高い信頼性を以って正式に異常と診断するようにしているので、ファンクラッチ2自体やファン回転センサ6が故障することで生じた異常を明確に診断することができる。
また、特に本形態例においては、冷却ファン3の回転数に応じたロック率を第一の閾値(Nin)に乗算することにより、ファンクラッチ2によるトルク伝達の損失分を考慮した現実的な冷却ファン3の回転数を推定することができ、しかも、予めシリコンオイルの劣化を見込んだ劣化係数を更に乗算することにより、シリコンオイルの劣化により異常の仮診断が生じ易くなる不具合を未然に回避することもできる。
更に、もともと冷却ファン3による空冷が要求されている条件下でファンクラッチ2をフルロック状態として異常検出を実施するようにしているので、冷却ファン3の不要時にファンクラッチ2が異常検出のためだけにフルロック状態とされるような不合理な事態を未然に回避することができ、無駄な冷却ファン3の駆動を極力排除して燃費の悪化を防止することができる。
尚、本発明のファンクラッチの異常検知方法及び装置は、上述の実施の形態のみに特に限定されるものではなく、ファンクラッチを不要時に切ることで燃費向上を図るようにした通常の断続制御に関する制御形式には各種の形式を採用して良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変更を加え得ることは勿論である。
本発明を実施する形態の一例を示す概略図である。 ファンクラッチの異常を診断する制御手順を示すフローチャートである。
符号の説明
1 エンジン
2 ファンクラッチ
3 冷却ファン
4 制御装置(診断装置)
6 ファン回転センサ
6a 検出信号
7 エンジン回転センサ
7a 検出信号

Claims (6)

  1. 車両のエンジンと冷却ファンの間に介装した電子制御のファンクラッチの異常検知方法であって、ファンクラッチをフルロック状態として冷却ファンの回転数を実測する一方、現在のエンジンの回転数に基づいてエンジン側とファンクラッチ側との回転比率から理論上の冷却ファンの回転数を第一の閾値として算出し、この第一の閾値よりも冷却ファンの回転数の実測値が上まわっている場合に直ちに異常と診断し、この実測値が第一の閾値以下の場合には該第一の閾値を下方修正した第二の閾値と更に比較を行い、実測値が第二の閾値以下の場合に異常を仮診断して該異常の仮診断が所定回数連続した時に異常と診断することを特徴とするファンクラッチの異常検知方法。
  2. ファンクラッチがシリコンオイルの粘性を利用してトルク伝達を行うビスカス式の機構を採用している場合に、ファンクラッチのフルロック状態での回転数に応じたロック率と、ファンクラッチのトルク伝達に介在するシリコンオイルの劣化を見込んだ劣化係数とを第一の閾値に乗算して第二の閾値とすることを特徴とする請求項1に記載のファンクラッチの異常検知方法。
  3. ファンクラッチにトルク伝達を指令する制御信号が所定値以上である条件下でのみファンクラッチの異常の有無を診断することを特徴とする請求項1又は2に記載のファンクラッチの異常検知方法。
  4. ファンクラッチに内蔵されて冷却ファンの回転数を検出するファン回転センサと、現在のエンジンの回転数を検出するエンジン回転センサと、これらファン回転センサ及びエンジン回転センサから導いた検出信号に基づきファンクラッチの健全性を診断する診断装置とを備え、この診断装置が、ファンクラッチをフルロック状態として冷却ファンの回転数を実測する手段と、現在のエンジンの回転数に基づいてエンジン側とファンクラッチ側との回転比率から理論上の冷却ファンの回転数を第一の閾値として算出する手段と、この第一の閾値よりもファン回転センサの実測値が上まわっている場合に直ちに異常と診断する手段と、ファン回転センサの実測値が第一の閾値以下の場合に該第一の閾値を下方修正した第二の閾値と更に比較する手段と、ファン回転センサの実測値が第二の閾値以下の場合に異常を仮診断して該異常の仮診断が所定回数連続した時に異常と診断し且つ所定回数に達する前に実測値が第二の閾値を上回ったら異常の仮診断のカウントをリセットする手段とを備えていることを特徴とするファンクラッチの異常検知装置。
  5. ファンクラッチがシリコンオイルの粘性を利用してトルク伝達を行うビスカス式の機構を採用しており、ファンクラッチのフルロック状態での回転数に応じたロック率と、ファンクラッチのトルク伝達に介在するシリコンオイルの劣化を見込んだ劣化係数とを第一の閾値に乗算して第二の閾値とするように診断装置が構成されていることを特徴とする請求項4に記載のファンクラッチの異常検知装置。
  6. ファンクラッチにトルク伝達を指令する制御信号が所定値以上である条件下でのみファンクラッチの異常の有無を診断するように診断装置が構成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のファンクラッチの異常検知装置。
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