近年、地球温暖化防止対策の見地から、家電製品等のスタンバイ電力の削減が注目されており、スタンバイ時における消費電力がより低いスイッチング電源装置が強く要求されている。
以下に従来のスイッチング電源装置について説明する。
図15は従来のスイッチング電源装置の回路構成の一例を示している。図15に示すように、従来のスイッチング電源装置は、一次側整流平滑回路111と、本体回路112と、トランス104と、二次側整流平滑回路121とを有している。
具体的には、一次側整流平滑回路111の入力端子116及び117間に入力された交流電圧は、一次側整流平滑回路111によって整流平滑され、入力直流電圧として本体回路112に供給される。ここで、一次側整流平滑回路111は、ダイオードブリッジ131と入力コンデンサ132とを有しており、ダイオードブリッジ131によって全波整流された電圧が、入力コンデンサ132によって平滑されて本体回路112に供給されている。
本体回路112内には、半導体スイッチング素子113と電圧制御回路114とが設けられている。この半導体スイッチング素子113と電圧制御回路114とはワンチップに集積化可能である。トランス104内には一次巻線141が設けられており、当該一次巻線141と半導体スイッチング素子113とは直列接続されており、当該直列接続回路に一次側整流平滑回路111からの入力直流電圧が供給されている。
半導体スイッチング素子113の制御端子は電圧制御回路114に接続されており、電圧制御回路114が出力するゲート信号によって半導体スイッチング素子113の導通と遮断とが制御されるように構成されている。
トランス104内には、一次巻線141と磁気結合した二次巻線142と、一次巻線141及び二次巻線142と磁気結合した補助巻線143が設けられている。半導体スイッチング素子113がスイッチング動作し、一次巻線141に断続的に電流が流れると、二次巻線142と補助巻線143とに電圧が誘起される。
二次側整流平滑回路121は、二次巻線142に誘起された電圧を整流平滑して直流出力電圧を生成し、出力端子126及び127から出力する。具体的には、二次側整流平滑回路121は、ダイオード122と、チョークコイル123と、第1及び第2の出力コンデンサ124及び125とを有している。チョークコイル123と、第1及び第2の出力コンデンサ124及び125とはπ型接続されており、二次巻線142に誘起された電圧は、ダイオード122によって半波整流されると共にチョークコイル123と第1及び第2の出力コンデンサ124及び125とによって平滑されるようになっている。
補助巻線143の両端に生じる電圧は、電圧制御回路114を介して、半導体スイッチング素子113の制御端子に入力されている。すなわち、図15に示すスイッチング電源装置は、リンギングチョークコンバータ(RCC)方式であり、半導体スイッチング素子113は補助巻線143に生じた電圧によって、自励でスイッチング動作するようになっている。
出力端子126及び127間の電圧は、フォトカプラ129を介して電圧制御回路114にフィードバックされている。例えば出力端子126及び127間の電圧が低下した場合には、電圧制御回路114は、半導体スイッチング素子113の導通期間を強制的に長くし、逆に、出力端子126及び127間の電圧が上昇した場合には、電圧制御回路114は、スイッチング素子113の導通期間を強制的に短くする。これにより、出力端子126及び127に現れる電圧が一定値に維持されるようになっている。
電圧制御回路114の内部では、補助巻線143に誘起された電圧を利用して補助的な直流電圧が生成されているので、電圧制御回路114はスイッチング電源装置の始動時を除き、その補助的な直流電圧によって動作するようになっている。
尚、スイッチング電源装置の始動時、つまり入力端子116及び117間に交流電圧を投入した時には、半導体スイッチング素子113がスイッチング動作をしていないために、補助巻線143への電圧の誘起がなく、電圧制御回路114は無電源の状態である。従って、半導体スイッチング素子113にスイッチングを開始させるために、一次側整流平滑回路111から外付けの抵抗151(高耐圧、高電力)を通して、電圧制御回路114を起動させるのに見合う低電圧を供給する。
上記のようなスイッチング電源では、損失は主として半導体スイッチング素子113で生じる。このスイッチング素子113には、通常MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor )が用いられている。一般に、バイポーラトランジスタでは、導通状態から遮断状態に切り替わるときのスイッチング損失が大きいが、MOSFETでは、スイッチング速度が速いためにスイッチング損失は小さい。その反面、MOSFETは、バイポーラトランジスタとは異なり、導通抵抗が大きいために導通損失が無視できない。従って、MOSFETに大電流が流れると、損失が大きくなってしまう。
近年では、スイッチング電源の技術分野においても、ユニポーラ型のMOSFETに対して、ドリフト層に少数キャリアを注入するバイポーラ型のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor )が注目されている。図15に示す従来のスイッチング電源装置において、IGBTをスイッチング素子113に用いた場合、バイポーラトランジスタと同様に伝導度変調が生じるため、導通抵抗は小さくなるものの、少数キャリアを利用するため、スイッチング速度が遅くなってスイッチング損失が大きくなる。
ところで、上記のようなRCC方式のスイッチング電源では、出力端子126及び127に接続される負荷が重い場合には、スイッチング素子113のスイッチング周波数が低下すると共にスイッチング素子113の導通期間が長くなり、その結果、一次巻線141に大電流が流れることによって出力端子126及び127間の電圧が一定値に維持される。逆に、待機モードのような軽負荷時には、スイッチング素子113のスイッチング周波数が高くなると共に導通期間が短くなり、その結果、一次巻線141に流れる電流が減少することによって出力端子126及び127間の電圧が一定値に維持される。
従って、スイッチング損失及び導通損失の両方を総合的にみた場合、重負荷の場合には、低周波・大電流になるため、MOSFETが不利になり、IGBTが有利になる。逆に、待機モードのような軽負荷時には、高周波・低電流になるため、MOSFETが有利になり、IGBTが不利になる。
図16は、MOSFET(横型、ドリフト領域はリサーフ構造)及びIGBT(横型)をそれぞれスイッチング電源に使用した場合における負荷と損失との関係を比較した結果を示す図である。図16に示すように、低出力(軽負荷)側ではスイッチング周波数が高くなるためにIGBTの損失が大きくなっており、高出力(重負荷)側ではスイッチング周波数が低くなるためにMOSFETの損失が大きくなっている。
特開平7−153951号公報
特開2002−345242号公報
特公平6−52791号公報(米国特許第5072268号明細書)
D.S.Byeon 他、The separated shorted-anode insulated gate bipolar transistor with the suppressed negative differntial resistance regime、Microelectronics Journal 30、1999年、p.571-575
前述のように、スイッチング素子としてMOSFETを用いた場合、重負荷での導通損失が大きくなる一方、スイッチング素子としてIGBTを用いた場合、待機時や軽負荷時でのスイッチング損失が増えるので、軽負荷から重負荷までの全域にわたって損失を低減することは、従来の半導体スイッチング素子では困難であった。
前記に鑑み、本発明は、軽負荷から重負荷までの全域にわたって損失を低減できる高耐圧半導体スイッチング素子及びそれを用いたスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、つまり、軽負荷から重負荷までの全域にわたって損失を低減するために、本願発明者らは、ひとつのスイッチング電源においてMOSFET及びIGBTの二種類を使い分けることを検討してみた。
ところで、特許文献1には、スイッチング素子1チップ内に縦型IGBTと縦型パワーMOSFETとを共存させる構成が提案されている。しかしながら、この構成では縦型IGBTの駆動能力に対して縦型パワーMOSFETの電流能力が小さすぎ、その結果、軽負荷時にパワーMOSFETを駆動させることは実用的に難しい。さらに、当該構成においては、半導体基板裏面に段差を形成しなければならないので、作製プロセスが困難である。
また、特許文献2には、スイッチング素子としてショットキー接合型のIGBTを用いる構成が提案されている。しかし、このショットキー接合型IGBTにおいては、軽負荷時の損失はパワーMOSFETよりも大きく、また、重負荷時の損失も従来のIGBTよりも大きいため、特許文献2の構成は必ずしも低損失化を進展させるものとは言えない。
さらに、特許文献1及び2のいずれのスイッチング素子も縦型構造であるため、例えば、図15に示す従来のスイッチング電源装置の半導体スイッチング素子113として、これらの縦型構造のスイッチング素子を用いた場合には電圧制御回路114と半導体スイッチング素子113とのワンチップ化が困難になるという問題もある。
また、ひとつの素子でMOSFET及びIGBTの二種類の使い分けを可能とすることを目的としているものではないが、非特許文献1や特許文献3に、MOSFETとIGBTとの中間的な働きをする半導体素子としてアノードショート構造の横型IGBTが提案されている。
図17は、特許文献3に開示されているアノードショート構造の横型IGBTの一例を示す断面図である。図17に示す構成においては、P+ 型ポケット514とN+ 型ポケット515とがドレイン電極513を介してショートしている。このアノードショート横型IGBTにおいては、ドレイン電極513とソース電極505との間を正バイアスしてゲート電極512に正の電圧を印加すると、N+ 型ポケット515からN+ 型ソース領域507を経てソース電極505へと電流が流れ始める(MOSFET動作)。そして、P+ 型ポケット514下側のN型ウエル領域503の電位がP+ 型ポケット514と比べて約0.6V下がると、P+ 型ポケット514からN型ウエル領域503へとホールが注入されようになってIGBT動作となる。また、ゲート信号のターンオフ時には、電子がN型ウエル領域503からN+ 型ポケット515へと排出されるので、図17に示すアノードショート横型IGBTはスイッチングが速いという特徴を持つ。しかも、このスイッチング素子は横型構造であるため、このスイッチング素子を例えば図15に示す半導体スイッチング素子113として用いた場合には電圧制御回路114と半導体スイッチング素子113とのワンチップ化も可能になる。
しかしながら、図17に示すアノードショート横型IGBTをスイッチング素子として用いても、軽負荷から重負荷までの全域にわたって損失を低減することは難しい。なぜなら、このスイッチング素子においては、P+ 型ポケット514の長さ523を大きくしない限り、MOSFET動作からIGBT動作へ移行しにくいため、本来ならIGBT動作が好ましい負荷領域でもMOSFET動作してしまい、その結果、損失が増大するからである。一方、P+ 型ポケット514の長さ523を大きくすれば、P+ 型ポケット514とN型ウエル領域503との間に電位差が生じやすくなり、IGBT動作への移行が容易になる。しかし、P+ 型ポケット514の長さ523を大きくした場合には、素子の単位面積が大きくなり、その結果、MOSFET動作時にもIGBT動作時にも素子のオン抵抗が大きくなって損失が増大してしまう。
従って、図17に示すようなアノードショート横型IGBTをスイッチング電源装置に用いたとしても、実用的には、軽負荷から重負荷までの全域にわたって損失を低減することは難しい。
以上の知見に基づき、本願発明者らは、以下に述べるような、ひとつの素子でMOSFET及びIGBTの二種類の使い分けが可能であり且つ軽負荷から重負荷までの全域にわたって損失を低減できるスイッチング素子であって、制御回路等ともワンチップ化が可能である横型の高耐圧半導体スイッチング素子を発明するに至った。
すなわち、本発明に係る高耐圧半導体スイッチング素子は、第1導電型の半導体基板の表面部に形成された第2導電型のリサーフ領域と、前記半導体基板内に前記リサーフ領域と隣り合うように形成された第1導電型のベース領域と、前記ベース領域内に前記リサーフ領域とは離隔して形成された第2導電型のエミッタ/ソース領域と、前記エミッタ/ソース領域上から前記ベース領域をまたいで少なくとも前記リサーフ領域上まで形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、前記リサーフ領域内に前記ベース領域とは離隔して形成された第2導電型のドレイン領域と、前記リサーフ領域内に前記ベース領域とは離隔して形成された第1導電型のコレクタ領域と、前記半導体基板上に形成され且つ前記コレクタ領域及び前記ドレイン領域の両方に電気的に接続されたコレクタ/ドレイン電極と、前記半導体基板上に形成され且つ前記ベース領域及び前記エミッタ/ソース領域の両方に電気的に接続されたエミッタ/ソース電極とを備えている。
本発明の高耐圧半導体スイッチング素子によると、素子に流れるコレクタ電流が比較的小さい時にはMOSFET動作をさせることができると共に、当該コレクタ電流が大きくなるとIGBT動作をさせることができるので、ひとつの素子でMOSFET及びIGBTの二種類を使い分けることができる。従って、待機時や軽負荷時にはMOSFET動作をさせることができると共に重負荷時にはIGBT動作をさせることができ、それによって軽負荷から重負荷までの全域にわたって損失を低減できる高耐圧半導体スイッチング素子を実現することができる。
また、本発明の高耐圧半導体スイッチング素子によると、延長ドレイン領域(例えば第1の実施形態のN型リサーフ領域202に相当し、主に耐圧を保持する領域)がリサーフ構造であるため、高不純物濃度のリサーフ層によってMOSFET動作時の抵抗を低くすることができる。このため、従来の横型素子と比較してMOSFET動作においてより大きなコレクタ(ドレイン)電流を流すことができる。
また、本発明の高耐圧半導体スイッチング素子は、コレクタ電極(コレクタ/ドレイン電極)とエミッタ電極(エミッタ/ソース電極)とが基板の同じ主面上に設けられた横型素子であるので、ゲート信号制御回路等ともワンチップ化することが可能である。
本発明の高耐圧半導体スイッチング素子において、前記コレクタ領域及び前記ドレイン領域はそれぞれ分離した複数の部分から構成され、前記コレクタ領域から前記エミッタ/ソース領域へと向かう方向に対して垂直な方向において、前記コレクタ領域の各部分と前記ドレイン領域の各部分とが交互に接触するように配置されていることが好ましい。
このようにすると、例えばコレクタ領域の各部分とドレイン領域の各部分とが、コレクタ領域からエミッタ/ソース領域へと向かう方向に沿って配置されている場合と比べて、コレクタ領域の各部分の長さを変えることによって、素子面積を増大させることなく、MOSFET動作からIGBT動作へと容易に移行できる。
また、本発明に係る他の高耐圧半導体スイッチング素子は、第1導電型の半導体基板の表面部に形成された第2導電型のリサーフ領域と、前記半導体基板内に前記リサーフ領域と隣り合うように形成された第1導電型のベース領域と、前記ベース領域内に前記リサーフ領域とは離隔して形成された第2導電型のエミッタ/ソース領域と、前記エミッタ/ソース領域上から前記ベース領域をまたいで少なくとも前記リサーフ領域上まで形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、前記リサーフ領域内に前記ベース領域とは離隔して形成された第2導電型のドレイン領域と、前記リサーフ領域内に前記ベース領域とは離隔して形成された第1導電型の第1コレクタ領域と、前記リサーフ領域内に前記ベース領域とは離隔して形成された第1導電型の第2コレクタ領域と、前記半導体基板上に形成され且つ前記第1コレクタ領域、前記第2コレクタ領域及び前記ドレイン領域のそれぞれに電気的に接続されたコレクタ/ドレイン電極と、前記半導体基板上に形成され且つ前記ベース領域及び前記エミッタ/ソース領域の両方に電気的に接続されたエミッタ/ソース電極とを備え、前記第1コレクタ領域、前記第2コレクタ領域及び前記ドレイン領域はそれぞれ分離した複数の部分から構成され、前記第1コレクタ領域の各部分は、前記ドレイン領域から前記エミッタ/ソース領域へと向かう方向に対して垂直な方向において所定長さX1を有し、前記第2コレクタ領域の各部分は、前記垂直な方向において前記所定長さX1よりも短い所定長さX2を有し、前記第1コレクタ領域の各部分と前記第2コレクタ領域の各部分と前記ドレイン領域の各部分とは、前記垂直な方向において前記第1コレクタ領域の各部分及び前記第2コレクタ領域の各部分のそれぞれの間に前記ドレイン領域の各部分が介在し且つ当該ドレイン領域の各部分が前記第1コレクタ領域の各部分及び前記第2コレクタ領域の各部分のそれぞれと接触するように配置されている。
本発明の他の高耐圧半導体スイッチング素子によると、上記の本発明の高耐圧半導体スイッチング素子と同様の効果に加えて、次のような効果が得られる。すなわち、MOSFET動作からIGBT動作へと切り替わるときのコレクタ電圧をVchとすると、Vchについては、第2コレクタ領域の各部分の長さX2よりも長い第1コレクタ領域の各部分の長さX1によって決めることができる。また、第1コレクタ領域の各部分の長さX1よりも短い長さX2を有する各部分からなる第2コレクタ領域の存在によって、コレクタ領域のトータル面積を抑制することができるので、ターンオフ時のフォールタイムtfを短くできる。従って、Vch及びtfを共に抑制することが可能となって、Vchとtfとのトレードオフを改善することができる。
本発明の他の高耐圧半導体スイッチング素子において、前記第1コレクタ領域となる部分の数は、前記第2コレクタ領域となる部分の数よりも少ないことが好ましい。
このようにすると、第1コレクタ領域を構成する相対的に長い部分の数を、第2コレクタ領域を構成する相対的に短い部分の数よりも少なくするので、コレクタ領域のトータル面積をより一層抑制することができるので、ターンオフ時のフォールタイムtfをより一層短くできる。
本発明の他の高耐圧半導体スイッチング素子において、前記第1コレクタ領域は、前記垂直方向において所定長さZを有する複数の部分からなる第3コレクタ領域と、前記垂直方向において所定長さ(X1−Z)を有する複数の部分からなる第4コレクタ領域とからなり、前記垂直方向において、前記第3コレクタ領域の各部分と前記第4コレクタ領域の各部分との間に前記コレクタ/ドレイン電極に接続されていない前記リサーフ領域の一部分が介在すると共に当該リサーフ領域の一部分は前記第3コレクタ領域の各部分及び前記第4コレクタ領域の各部分のそれぞれと接触することが好ましい。
このようにすると、第3コレクタ領域の各部分と第4コレクタ領域の各部分との間にコレクタ/ドレイン電極に接続されていないリサーフ領域の一部分を介在させることによって、当該リサーフ領域の一部分の上側に例えば多結晶シリコンからなる配線を形成することが可能となる。すなわち、素子性能を劣化させることなく、回路パターンの設計自由度を向上させることができる。
また、第3コレクタ領域の各部分と第4コレクタ領域の各部分との間にリサーフ領域の一部分を介在させる場合、前記コレクタ/ドレイン電極は、前記リサーフ領域上に形成された層間膜上に引き出されており、前記層間膜と前記リサーフ領域との間に形成され且つ前記コレクタ/ドレイン電極と電気的に接続されたドレイン電界緩和層をさらに備え、前記ドレイン電界緩和層の少なくとも一部分は、前記コレクタ/ドレイン電極のうち前記層間膜上に引き出されている部分の下側、及び前記第3コレクタ領域の各部分と前記第4コレクタ領域の各部分との間に介在する前記リサーフ領域の一部分の上側に配置されていることが好ましい。このようにすると、当該リサーフ領域の一部分の上側に例えば多結晶シリコンからなるドレイン電界緩和層を形成することによって、回路パターンの設計自由度を向上させることができると共にドレイン電界緩和層の配置面積を低減することができる。
さらに、第3コレクタ領域の各部分と第4コレクタ領域の各部分との間に介在するリサーフ領域の一部分の上側にドレイン電界緩和層が配置される場合、前記ドレイン電界緩和層は、前記第3コレクタ領域の各部分と前記第4コレクタ領域の各部分との間に介在する前記リサーフ領域の一部分の上側において前記コレクタ/ドレイン電極と接続されていることが好ましい。このようにすると、当該リサーフ領域の一部分においてドレイン電界緩和層とコレクタ/ドレイン電極とを接続することによって、回路パターンの設計自由度を向上させることができると共にドレイン電界緩和層とコレクタ/ドレイン電極との接続面積を低減することができる。
本発明によると、軽負荷から重負荷までの全域にわたって損失を低減できる高耐圧半導体スイッチング素子及びそれを用いたスイッチング電源装置を実現することができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る横型高耐圧半導体スイッチング素子について、図面を参照しながら説明する。
図1〜図3はそれぞれ、本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子の構成の一例を示す図面であり、図2は平面図であり、図1は図2におけるA−A’線の断面図であり、図3は図2におけるB−B’線の断面図である。尚、図2においては、一部の構成要素の図示を省略している。
図1〜図3に示す本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子においては、例えば濃度1×1014/cm3 程度のP− 型半導体基板201の表面部に、例えば濃度1×1016/cm3 程度で深さ7μm程度のN型リサーフ領域202が形成されている。また、半導体基板201内にリサーフ領域202と隣り合うように例えば濃度1×1017/cm3 程度のp型ベース領域204が形成されている。ベース領域204内にはリサーフ領域202と離隔して例えば濃度1×1019/cm3 程度のP+ 型コンタクト領域205及び例えば濃度1×1020/cm3 程度のN+ 型エミッタ/ソース領域206が互いに隣接するように形成されている。エミッタ/ソース領域206上からベース領域204をまたいで少なくともリサーフ領域202の端部上までゲート絶縁膜209が形成されている。ゲート絶縁膜209の上にはゲート電極210が形成されている。
また、図1に示すように、リサーフ領域202内にベース領域204とは離隔して例えば濃度1×1019/cm3 程度のp+ 型コレクタ領域203が形成されていると共に、図3に示すように、リサーフ領域202内にベース領域204とは離隔して例えば濃度1×1020/cm3 程度のN+ 型ドレイン領域213が形成されている。ここで、図2に示すように、コレクタ領域203及びドレイン領域213はそれぞれ分離した複数の部分から構成されており、コレクタ領域203からエミッタ/ソース領域206へと向かう方向に対して垂直な方向(以下、単に垂直方向と称する)において、コレクタ領域203の各部分とドレイン領域213の各部分とが交互に接触するように配置されている。ここで、前記垂直方向におけるコレクタ領域203の各部分の長さをXとすると、長さXは例えば40μm程度である。また、当該垂直方向におけるドレイン領域213の各部分の長さをYとすると、長さYは例えば10μm程度である。
また、図1及び図3に示すように、半導体基板201上には、コレクタ領域203及びドレイン領域213の両方に電気的に接続されたコレクタ/ドレイン電極211が形成されていると共に、半導体基板201上には、ベース領域204及びエミッタ/ソース領域206の両方に電気的に接続されたエミッタ/ソース電極212が形成されている。尚、エミッタ/ソース電極212はコンタクト領域205を介してベース領域204と電気的に接続している。また、リサーフ領域202上にはフィールド絶縁膜207を介して層間膜208が形成されており、コレクタ/ドレイン電極211及びエミッタ/ソース電極212はそれぞれ層間膜208上に引き出されている。
本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子においては、コレクタ/ドレイン電極211とエミッタ/ソース電極212との間に正バイアス(以下、コレクタ電圧と称することもある)を印加し、ゲート電極210に正の電圧を印加すると、ドレイン領域213からリサーフ領域202、ベース領域204(チャネル領域となる部分)及びエミッタ/ソース領域206を通ってエミッタ/ソース電極212へと電流(以下、コレクタ電流と称することもある)が流れ始める(MOSFET動作)。コレクタ電圧を大きくすることによりコレクタ電流がある程度大きくなり、コレクタ領域203周囲のリサーフ領域202の電位がコレクタ領域203と比べて例えば0.6V程度下がると、コレクタ領域203からリサーフ領域202にホールが注入されるようになり、MOSFET動作からIGBT動作へと移行する。このとき、コレクタ電流は、コレクタ領域203からリサーフ領域202(又は半導体基板201)、ベース領域204及びコンタクト領域205を通ってエミッタ/ソース電極212へ流れる。
図4は、本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子におけるコレクタ電圧とコレクタ電流との相関を示している。尚、MOSFET動作からIGBT動作へと切り替わるときのコレクタ電圧をVchとすると、本実施形態ではVchを、図2に示すコレクタ領域203の長さX(以下、コレクタ領域長Xと称する)によって変えることができる。
図5は、本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子におけるコレクタ領域長Xとターンオフ時のフォールタイム(降下時間tf:ターンオフ後、コレクタ電流がピーク値の90%から10%まで小さくなる(変化する)のに要する時間)及びVchとの相関を示している。図5に示すように、コレクタ領域長Xを短くすると、ホールの注入効率が下がってtfが小さくなる。また、コレクタ領域長Xを短くすると、コレクタ領域203とその周囲のリサーフ領域202との間に電位差が生じにくくなるので、Vchは大きくなる。逆に、コレクタ領域長Xを長くすると、Vchは小さくなる。また、コレクタ領域長Xを短くするほどtfが減少し、スイッチング損失が小さくなる。尚、実用的な軽負荷時MOSFET動作を実現するためには、Vchは2V程度かそれよりも大きくする必要がある。従って、本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子においては、コレクタ領域長Xを48μm以下に設計することが望ましい。
以上に説明した、本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子によると、素子に流れるコレクタ電流が比較的小さい時にはMOSFET動作をさせることができると共に、当該コレクタ電流が大きくなるとIGBT動作をさせることができるので、ひとつの素子でMOSFET及びIGBTの二種類を使い分けることができる。従って、待機時や軽負荷時にはMOSFET動作をさせることができると共に重負荷時にはIGBT動作をさせることができ、それによって軽負荷から重負荷までの全域にわたって損失を低減できる高耐圧半導体スイッチング素子を実現することができる。
また、本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子によると、N型リサーフ領域202を用いているため、高不純物濃度のリサーフ領域202によってMOSFET動作時の導通抵抗を低くすることができる。このため、図4に示すMOSFET動作において、従来の横型素子と比較して、より大きなコレクタ(ドレイン)電流を流すことができる。
また、本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子によると、コレクタ領域203及びドレイン領域213はそれぞれ分離した複数の部分から構成され、コレクタ領域203からエミッタ/ソース領域206へと向かう方向に対して垂直な方向において、コレクタ領域203の各部分とドレイン領域213の各部分とが交互に接触するように配置されている。従って、MOSFET動作からIGBT動作への移行を、素子面積を増大させることなく容易に行うことができる。具体的には、例えばコレクタ領域203の各部分とドレイン領域213の各部分とが、本実施形態と異なり、コレクタ領域203からエミッタ/ソース領域206へと向かう方向に沿って配置されている場合には、コレクタ領域203におけるエミッタ/ソース領域206へと向かう方向の長さを大きくしない限り、MOSFET動作からIGBT動作へ移行しにくくなる。その結果、本来ならIGBT動作が好ましい負荷領域でもMOSFET動作してしまい、損失が増大する。一方、コレクタ領域203におけるエミッタ/ソース領域206へと向かう方向の長さを大きくすれば、コレクタ領域203とリサーフ領域202との間に電位差が生じやすくなり、IGBT動作への移行が容易になる。しかし、この場合には素子1個当たりの面積が大きくなる結果、MOSFET動作時にもIGBT動作時にも素子のオン抵抗が大きくなって損失が増大してしまう。
それに対して、コレクタ領域203及びドレイン領域213の前述の構成を持つ本実施形態においては、コレクタ領域203の長さXを変えることによって、素子面積を増大させることなく、MOSFET動作からIGBT動作への容易な移行が可能となる。
また、本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子は、コレクタ/ドレイン電極211とエミッタ/ソース電極212とが半導体基板201の同じ主面上に設けられた横型素子であるので、ゲート信号制御回路等ともワンチップ化することが可能である。
尚、本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子において、コレクタ領域203及びドレイン領域213はそれぞれ分離した複数の部分から構成され、コレクタ領域203からエミッタ/ソース領域206へと向かう方向に対して垂直な方向において、コレクタ領域203の各部分とドレイン領域213の各部分とが交互に接触するように配置されていた。しかし、コレクタ領域203及びドレイン領域213の両方又は一方が単一領域であってもよい。また、コレクタ領域203及びドレイン領域213の各配置は、前述のようなMOSFET動作からIGBT動作への切り換わりが容易に生じるような配置を除き、特に限定されるものではない。
また、本実施形態において、N型リサーフ領域202が形成されたP型半導体基板201に本発明の半導体スイッチング素子を設けたが、これに代えて、P型リサーフ領域が形成されたN型半導体基板に本発明の半導体スイッチング素子を設けてもよい。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る横型高耐圧半導体スイッチング素子について、図面を参照しながら説明する。
ところで、第1の実施形態に係る高耐圧半導体スイッチング素子においては、図5に示すように、MOSFET動作からIGBT動作へと切り替わるコレクタ電圧Vchと、IGBT動作におけるターンオフ時のフォールタイムtfとの間にはトレードオフの関係がある。すなわち、コレクタ領域長Xを短くすると、ホールの注入効率が下がってtfが短くなる。また、コレクタ領域長Xを短くすると、コレクタ領域203とその周囲のリサーフ領域202との間に電位差が生じにくくなるので、Vchは大きくなる。逆に、コレクタ領域長Xを長くすると、Vchは小さくなるが、ホールの注入効率が上がってtfが長くなる。従って、第1の実施形態においては、所望の小さいVchを得ようとすると、フォールタイムtfが長くなってしまい、重負荷時のIGBT動作におけるスイッチング損失を十分には低減できない。
そこで、本実施形態に係る高耐圧半導体スイッチング素子は、(1)コレクタ電圧が所望の小さいVchに達すると、MOSFET動作からIGBT動作へと移行できること、及び(2)IGBT動作においてターンオフ時のフォールタイム(tf)を短くして重負荷時におけるより一層の損失低減を可能とすることの両立、つまりVchとtfとのトレードオフを改善した高耐圧半導体スイッチング素子の実現を目的とするものである。
図6及び図7(a)〜(c)はそれぞれ、本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子の構成の一例を示す図面であり、図6は平面図であり、図7(a)は図6におけるA−A’線の断面図であり、図7(b)は図6におけるB−B’線の断面図であり、図7(c)は図6におけるC−C’線の断面図である。尚、図6においては、一部の構成要素の図示を省略している。
図6及び図7(a)〜(c)に示す本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子においては、例えば濃度1×1014/cm3 程度のP− 型半導体基板301の表面部に、例えば濃度1×1016/cm3 程度で深さ7μm程度のN型リサーフ領域302が形成されている。また、半導体基板301内にリサーフ領域302と隣り合うように例えば濃度1×1017/cm3 程度のp型ベース領域304が形成されている。ベース領域304内にはリサーフ領域302と離隔して例えば濃度1×1019/cm3 程度のP+ 型コンタクト領域305及び例えば濃度1×1020/cm3 程度のN+ 型エミッタ/ソース領域306が互いに隣接するように形成されている。エミッタ/ソース領域306上からベース領域304をまたいで少なくともリサーフ領域302の端部上までゲート絶縁膜309が形成されている。ゲート絶縁膜309の上にはゲート電極310が形成されている。
また、図7(a)及び(b)に示すように、リサーフ領域302内にベース領域304とは離隔して例えば濃度1×1019/cm3 程度のp+ 型第1コレクタ領域303及び例えば濃度1×1019/cm3 程度のp+ 型第2コレクタ領域314が形成されていると共に、図7(c)に示すように、リサーフ領域302内にベース領域304とは離隔して例えば濃度1×1020/cm3 程度のN+ 型ドレイン領域313が形成されている。ここで、図6に示すように、第1コレクタ領域303、第2コレクタ領域314及びドレイン領域313はそれぞれ分離した複数の部分から構成されている。また、第1コレクタ領域303の各部分と第2コレクタ領域314の各部分とドレイン領域313の各部分とは、ドレイン領域313からエミッタ/ソース領域306へと向かう方向に対して垂直な方向(以下、単に垂直方向と称する)において第1コレクタ領域303の各部分及び第2コレクタ領域314の各部分のそれぞれの間にドレイン領域313の各部分が介在し且つドレイン領域313の各部分が第1コレクタ領域303の各部分及び第2コレクタ領域314の各部分のそれぞれと接触するように配置されている。
尚、本実施形態において、第1コレクタ領域303となる部分の数及び第2コレクタ領域314となる部分の数については任意に設計可能であるが、第1コレクタ領域303となる部分の数を、第2コレクタ領域314となる部分の数よりも少なくした場合には、コレクタ領域のトータル面積をより一層抑制することができるので、ターンオフ時のフォールタイムtfをより一層短くできる。また、前記垂直方向における第1コレクタ領域303の各部分の長さをX1とすると、長さX1は例えば40μm程度である。また、前記垂直方向における第2コレクタ領域314の各部分の長さをX2とすると、長さX2は長さX1よりも短く、例えば20μm程度である。さらに、当該垂直方向におけるドレイン領域313の各部分の長さをYとすると、長さYは例えば20μm程度である。
また、図7(a)〜(c)に示すように、半導体基板301上には、第1コレクタ領域303、第2コレクタ領域314及びドレイン領域313のそれぞれに電気的に接続されたコレクタ/ドレイン電極311が形成されていると共に、半導体基板301上には、ベース領域304及びエミッタ/ソース領域306の両方に電気的に接続されたエミッタ/ソース電極312が形成されている。尚、エミッタ/ソース電極312はコンタクト領域305を介してベース領域304と電気的に接続している。また、リサーフ領域302上にはフィールド絶縁膜307を介して層間膜308が形成されており、コレクタ/ドレイン電極311及びエミッタ/ソース電極312はそれぞれ層間膜308上に引き出されている。
本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子においては、コレクタ/ドレイン電極311とエミッタ/ソース電極312との間に正バイアス(以下、コレクタ電圧と称することもある)を印加し、ゲート電極310に正の電圧を印加すると、ドレイン領域313からリサーフ領域302、ベース領域304(チャネル領域となる部分)及びエミッタ/ソース領域306を通ってエミッタ/ソース電極312へと電流(以下、コレクタ電流と称することもある)が流れ始める(MOSFET動作)。コレクタ電圧を大きくすることによりコレクタ電流がある程度大きくなり、第1コレクタ領域303周囲のリサーフ領域302の電位が第1コレクタ領域303と比べて例えば0.6V程度下がると、第1コレクタ領域303からリサーフ領域302にホールが注入されるようになり、MOSFET動作からIGBT動作へと移行する。ここで、MOSFET動作からIGBT動作へと切り替わるときのコレクタ電圧をVchとすると、本実施形態ではVchを、図1〜図3に示す第1の実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子のコレクタ領域長Xに代えて、図6に示す第1コレクタ領域303の各部分の長さX1によって変えることができる。また、MOSFET動作からIGBT動作への移行時には、大きなコレクタ電流が、第1コレクタ領域303からリサーフ領域302(又は半導体基板301)、ベース領域304及びコンタクト領域305を通ってエミッタ/ソース電極312へ流れる。さらに、当該コレクタ電流によって第2コレクタ領域314周囲のリサーフ領域302の電位が第2コレクタ領域314と比べて例えば0.6V程度下がると、第2コレクタ領域314からもリサーフ領域302にホールが注入され始める。
すなわち、本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子においては、第1コレクタ領域303の各部分の長さX1よりも短い第2コレクタ領域314の各部分の長さX2を調整することによって、図1〜図3に示す第1の実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子と同等の電流駆動能力(つまりオン抵抗Ron)を得ることができる。
また、本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子においては、第1コレクタ領域303の各部分の長さX1よりも短い長さX2を有する各部分からなる第2コレクタ領域314の存在によって、コレクタ領域のトータル面積を抑制することができるので、ターンオフ時のフォールタイムtfを短くできる。
図8は、本願発明者らが比較例としての第1の実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子と本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子とをそれぞれ実際に試作し、Vchとフォールタイムtfとの相関を評価した結果示す図である。図8に示すように、比較例(コレクタ領域長Xの部分のみからなるコレクタ領域が設けられた第1の実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子)においては、例えばVchが4Vであるときの条件で測定されたtfが350nsecである。それに対して、本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子においては、例えばVchが3.6Vであるときの条件で測定されたtfが130nsecである。また、図8に示すように、その他のデータについても、比較例と比べて本実施形態の方がVch及びtfを共に抑制できていることから、本実施形態によってVchとtfとのトレードオフを改善できていると言える。
以上に説明したように、本実施形態によると、MOSFET動作からIGBT動作へと切り替わるときのコレクタ電圧をVchとすると、Vchについては、第2コレクタ領域314の各部分の長さX2よりも長い第1コレクタ領域303の各部分の長さX1によって決めることができる。また、第1コレクタ領域303の各部分の長さX1よりも短い長さX2を有する各部分からなる第2コレクタ領域314の存在によって、コレクタ領域のトータル面積を抑制することができるので、ターンオフ時のフォールタイムtfを短くできる。従って、Vch及びtfを共に抑制することが可能となって、Vchとtfとのトレードオフを改善することができる。
従って、本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子をスイッチング電源装置に用いた場合には、待機時や軽負荷時にはMOSFET動作をさせることができると共に重負荷時にはIGBT動作をさせることができ、それによって軽負荷から重負荷までの全域にわたって損失を低減できる。特に、従来のスイッチング電源装置と比べて、重負荷時におけるより一層の損失低減が可能である。
以下、本実施形態による効果(本実施形態のコレクタ/ドレイン領域構造の優位性)についてさらに詳しく説明する。
図9は、コレクタ領域(P+ 領域)が相対的に長い部分(長さ40μm)と相対的に短い部分(長さ20μm)とからなり且つコレクタ領域の各部分の間に配置されたドレイン領域(N+ 領域)の各部分が相対的に短い(長さ20μm)本実施形態のコレクタ/ドレイン領域構造(以下、構造A)を、他のコレクタ/ドレイン領域構造と比較して模式的に示している。ここで、他のコレクタ/ドレイン領域構造としては、コレクタ領域(P+ 領域)が相対的に長い部分(長さ40μm)のみからなり且つコレクタ領域の各部分の間に配置されたドレイン領域(N+ 領域)の各部分が相対的に短い(長さ20μm)構造Bと、コレクタ領域(P+ 領域)が相対的に長い部分(長さ40μm)のみからなり且つコレクタ領域の各部分の間に配置されたドレイン領域(N+ 領域)の各部分が相対的に長い(長さ40μm)構造Cと、コレクタ領域(P+ 領域)が相対的に短い部分(長さ20μm)のみからなり且つコレクタ領域の各部分の間に配置されたドレイン領域(N+ 領域)の各部分が相対的に短い(長さ20μm)構造Dとがある。
図10は、上記構造A〜Dのそれぞれを有する高耐圧半導体スイッチング素子の特性、具体的には、P+ 領域とN+ 領域との面積比及びVch、並びにフォールタイムtf及びオン抵抗Ron(電流駆動能力)を所定の条件で測定した結果を示している。
尚、フォールタイムtfは測定条件によって変化する。この測定条件としては、ドレイン電流Idとオンタイム(ゲート電圧をターンオンさせてからターンオフさせるまでの時間)とがある。Idを大きくすると、tfも大きく(悪く)なる。また、オンタイムを大きくしても、tfが大きく(悪く)なる。
一方、オン抵抗Ronも測定条件によって変化する。この測定条件としては、ドレイン電流Id(但し飽和領域に達する前の活性領域のId)がある。IGBT動作においては、Idが大きいときにRonを測定した方がRonが小さく求まる。
図10に示すように、Vch、フォールタイムtf及びオン抵抗Ron(電流駆動能力)のそれぞれについて、本実施形態の構造Aの優位性は明らかである。尚、構造Cと比べて、本実施形態の構造Aのtf及びRonが共に改善される理由は以下のように推測される。
(1)構造Aの方がN+ 領域の各部分が短いため、当該構造を上から見たときの電流密度を大きくできるので、Ronを小さくできる。すなわち、IGBT動作時にはP+ 領域から大きな電流が流れるが、構造AのようにP+ 領域とP+ 領域との間隔が短いと、P+ 領域とP+ 領域との間隔が長い場合と比べて、当該構造を上から見たときの単位面積当たりの電流密度を大きくできるので、Ronを小さくして電流駆動能力を高くできる。
(2)構造Aと構造Cとを比較した場合、P+ 領域とN+ 領域との面積比はほぼ同じであるが、N+ 領域の各部分の個数については当該各部分がより短い構造Aの方が構造Cよりも多いため、構造Aのtfの方が短くなる。すなわち、ターンオフ時にはコレクタ/ドレイン電圧が上昇するに伴ってN+ 領域から電子が引き抜かれるが、このとき、構造Aにおいては構造Cと比べてN+ 領域がより多く形成されているため、電子がより効率的にN+ 領域から引き抜かれので、構造Aのtfの方が短くなる。
ところで、構造Aにおいて、P+ 領域の長い部分の長さを40μmにしたまま、P+ 領域の短い部分の長さ及びN+ 領域の各部分の長さを10μmまで短くした場合にも、素子は動作可能であった。しかしながら、P+ 領域の短い部分の長さをさらに短くした場合には、P+ 領域の長い部分でIGBT動作がオンしたとしても、P+ 領域の短い部分でIGBT動作がオンしなくなるので、P+ 領域の短い部分の長さには下限値が存在する。但し、当該下限値はリサーフ領域302の濃度に依存して決まる。
また、構造Aにおいて、N+ 領域の各部分の長さをより短くした場合には、(P+ 領域の面積)/(N+ 領域の面積)が1よりも大きくなってtfが大きくなる。一方、N+ 領域の各部分の長さをより長くした場合には、図10に示す構造Bの特性と構造Cの特性との比較から分かるように、Ronが大きくなってしまう。従って、N+ 領域の各部分の長さはP+ 領域の短い部分の長さと同程度であることが好ましい。
尚、図5に示す第1の実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子の測定結果と図10に示す構造B及びCの測定結果とは異なる条件下で得られたものであるため、図5では例えばコレクタ領域長Xが約40μmのときにVchが約2V程度であるのに対して、図10の構造B及びCではコレクタ領域の各部分の長さが約40μmのときにVchが約4V程度となっている。第1の実施形態の素子構造と構造B及びCの素子構造との主な違いは、第1の実施形態ではドレイン領域(N+ 領域)の各部分の長さを10μmとしているのに対して、構造B及びCではN+ 領域の各部分の長さを20μm又は40μmとしていることである。
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る横型高耐圧半導体スイッチング素子について、図面を参照しながら説明する。
図11及び図12(a)〜(c)はそれぞれ、本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子の構成の一例を示す図面であり、図11は平面図であり、図12(a)は図11におけるA1−A1’線の断面図であり、図12(b)は図11におけるA2−A2’線の断面図であり、図12(c)は図11におけるA3−A3’線の断面図である。尚、図11においては、一部の構成要素の図示を省略している。また、図11におけるB−B’線の断面図は第2の実施形態の図7(b)と同様であり、図11におけるC−C’線の断面図は第2の実施形態の図7(c)と同様である。
本実施形態が、先に説明した第2の実施形態(図6及び図7(a)〜(c)参照)と異なっている点は、図11及び図12(a)〜(c)に示すように、第2の実施形態のp+ 型第1コレクタ領域303に代えて、p+ 型第1コレクタ領域330が設けられていることである。ここで、第1コレクタ領域330は、ドレイン領域313からエミッタ/ソース領域306へと向かう方向に対して垂直な方向(以下、単に垂直方向と称する)において所定長さZを有する複数の部分からなる第3コレクタ領域315と、前記垂直方向において所定長さ(X1−Z)を有する複数の部分からなる第4コレクタ領域325とからなる。また、前記垂直方向において、第3コレクタ領域315の各部分と第4コレクタ領域325の各部分との間には、コレクタ/ドレイン電極311に接続されていないリサーフ領域302の一部分(以下、N型第2リサーフ領域316と称する)が介在すると共に当該第2リサーフ領域316は第3コレクタ領域315の各部分及び第4コレクタ領域325の各部分のそれぞれと接触する。尚、第2リサーフ領域316上にはフィールド絶縁膜307が形成されている。
上記の第2の実施形態との相違点を除くと、本実施形態の素子構造は、図6及び図7(a)〜(c)に示す第2の実施形態と同様である。すなわち、図11及び図12(a)〜(c)に示すように、第2リサーフ領域316を含む第1コレクタ領域330、第2コレクタ領域314及びドレイン領域313はそれぞれ分離した複数の部分から構成されている。ここで、第1コレクタ領域330の各部分は、第2リサーフ領域316を挟む第3コレクタ領域315の各部分及び第4コレクタ領域325の各部分からなる。また、第1コレクタ領域330の各部分と第2コレクタ領域314の各部分とドレイン領域313の各部分とは、前記垂直な方向において第1コレクタ領域330の各部分及び第2コレクタ領域314の各部分のそれぞれの間にドレイン領域313の各部分が介在し且つドレイン領域313の各部分が第1コレクタ領域330の各部分及び第2コレクタ領域314の各部分のそれぞれと接触するように配置されている。
尚、本実施形態においても、第1コレクタ領域330となる部分の数及び第2コレクタ領域314となる部分の数については任意に設計可能であるが、第1コレクタ領域330となる部分の数を、第2コレクタ領域314となる部分の数よりも少なくした場合には、コレクタ領域のトータル面積をより一層抑制することができるので、ターンオフ時のフォールタイムtfをより一層短くできる。また、前記垂直方向における第1コレクタ領域330の各部分の長さ(第2リサーフ領域316の長さは含まない)をX1(=(第3コレクタ領域315の各部分の長さZ)+(第4コレクタ領域325の各部分の長さ(X1−Z)))とすると、長さX1は例えば40μm程度である。また、前記垂直方向における第2コレクタ領域314の各部分の長さをX2とすると、長さX2は長さX1よりも短く、例えば20μm程度である。さらに、当該垂直方向におけるドレイン領域313の各部分の長さをYとすると、長さYは例えば20μm程度である。
本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子の動作は第2の実施形態と同様であり、コレクタ/ドレイン電極311とエミッタ/ソース電極312との間に正バイアス(以下、コレクタ電圧と称することもある)を印加し、ゲート電極310に正の電圧を印加すると、ドレイン領域313からリサーフ領域302、ベース領域304(チャネル領域となる部分)及びエミッタ/ソース領域306を通ってエミッタ/ソース電極312へと電流(以下、コレクタ電流と称することもある)が流れ始める(MOSFET動作)。コレクタ電圧を大きくすることによりコレクタ電流がある程度大きくなり、第3コレクタ領域315周囲又は第4コレクタ領域325周囲のリサーフ領域302の電位が当該第3コレクタ領域315又は第4コレクタ領域325と比べて例えば0.6V程度下がると、当該第3コレクタ領域315又は第4コレクタ領域325からリサーフ領域302にホールが注入されるようになり、MOSFET動作からIGBT動作へと移行する。ここで、MOSFET動作からIGBT動作へと切り替わるときのコレクタ電圧をVchとすると、本実施形態ではVchを、図6に示す第2の実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子におけるの第1コレクタ領域303の長さX1に代えて、図11に示す第3コレクタ領域315の各部分の長さZと第4コレクタ領域325の各部分の長さ(X1−Z)との和、つまり長さX1によって変えることができる。その理由は次の通りである。すなわち、第3コレクタ領域315の各部分と第4コレクタ領域325の各部分との間に設けられる第2リサーフ領域316は、コレクタ/ドレイン電極311には接続されていないため、ゲート電極310に正の電圧を印加しても第2リサーフ領域316からは電流が流れない。このため、ドレイン領域313から流れるコレクタ電流による第1コレクタ領域330周囲のリサーフ領域302の電位の変化の様子は、第2の実施形態のようにコレクタ領域長X1の部分から第1コレクタ領域303を構成しても(図6参照)、本実施形態のように長さZを有する複数の部分からなる第3コレクタ領域315及び長さ(X1−Z)を有する複数の部分からなる第4コレクタ領域325から第1コレクタ領域330を構成しても(図11参照)、ほとんど同じである。従って、本実施形態ではVchを、第3コレクタ領域315の各部分の長さZと第4コレクタ領域325の各部分の長さ(X1−Z)との和、つまり長さX1によって変えることができる。
以上に説明したように、本実施形態によると、第2の実施形態と同様の効果に加えて、次のような効果が得られる。すなわち、第3コレクタ領域315の各部分と第4コレクタ領域325の各部分との間にコレクタ/ドレイン電極311に接続されていない第2リサーフ領域316を介在させることによって、当該第2リサーフ領域316の上側に例えば多結晶シリコンからなる配線を形成することが可能となる。すなわち、素子性能を劣化させることなく、回路パターンの設計自由度を向上させることができる。
尚、本実施形態において、第3コレクタ領域315の各部分の長さZは、コレクタ/ドレイン領域構造を上から見たときの電流分布を一様にするため、第4コレクタ領域325の各部分の長さ(X1−Z)と同程度であること、つまりZはX1/2程度であることが好ましい。具体的には、IGBT動作の場合、局所的な電流集中が起こると、当該箇所の温度が著しく上昇して熱暴走が起こる一方、第3コレクタ領域315の各部分の長さZをX1/2と比べて長くしても短くしても、コレクタ/ドレイン領域構造を上から見たときの電流の流れは一様にならなくなる。そこで、ZをX1/2程度にすることが好ましい。
従って、本実施形態のように、X1を40μm程度に設定する場合、Zは20μm程度であることが好ましい。このようにすると、第2の実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子と同等の素子性能が得られる。また、第2の実施形態で述べたように、第3コレクタ領域315の各部分の長さZ及び第4コレクタ領域325の各部分の長さ(X1−Z)はそれぞれ10μm程度まで短くすることが可能である。
また、本実施形態において、前記垂直方向における第2リサーフ領域316の長さとしては、当該第2リサーフ領域316の上側での配線形成を考慮して、10μm程度は必要である。また、第2リサーフ領域316の長さを長くすると、つまりN型の第2リサーフ領域316の面積を大きくすると、Ron(電流駆動能力)が劣化するので、第2リサーフ領域316の長さは20μm程度以下であることが好ましい。
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係る横型高耐圧半導体スイッチング素子について、図面を参照しながら説明する。
図13及び図14(a)〜(e)はそれぞれ、本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子の構成の一例を示す図面であり、図13は平面図であり、図14(a)は図13におけるA1−A1’線の断面図であり、図14(b)は図13におけるA2−A2’線の断面図であり、図14(c)は図13におけるA3−A3’線の断面図であり、図14(d)は図13におけるB−B’線の断面図であり、図14(e)は図13におけるC−C’線の断面図である。尚、図13においては、一部の構成要素の図示を省略している。また、図13及び図14(a)〜(e)はそれぞれ、説明を分かりやすくするため、例えば図6及び図7(a)〜(c)等に示す1つのセル構造をD−D’線で折り返すことによって得られる2つのセル構造を示している。
本実施形態が、先に説明した第3の実施形態(図11及び図12(a)〜(c)参照)と異なっている点は、図13及び図14(a)〜(e)に示すように、層間膜308とリサーフ領域302との間に、例えば多結晶シリコンからなるドレイン電界緩和層320が形成されていることである。ここで、ドレイン電界緩和層320の少なくとも一部分は、コレクタ/ドレイン電極311のうち層間膜308上に引き出されている部分の下側に層間膜308を挟んで配置されていると共に、第3コレクタ領域315の各部分と第4コレクタ領域325の各部分との間の第2リサーフ領域316の上側にフィールド絶縁膜307を挟んで配置されている。また、図14(c)に示すように、ドレイン電界緩和層320は、第2リサーフ領域316の上側においてコレクタ/ドレイン電極311と接続されている。尚、フィールド絶縁膜307が形成されていないリサーフ領域302とドレイン電界緩和層320との間にはゲート絶縁膜309が介在する。
上記の第3の実施形態との相違点を除くと、本実施形態の素子構造は、図11及び図12(a)〜(c)に示す第3の実施形態と同様である。すなわち、図13及び図14(a)〜(e)に示すように、第2リサーフ領域316を含む第1コレクタ領域330、第2コレクタ領域314及びドレイン領域313はそれぞれ分離した複数の部分から構成されている。ここで、第1コレクタ領域330の各部分は、第2リサーフ領域316を挟む第3コレクタ領域315の各部分及び第4コレクタ領域325の各部分からなる。また、第1コレクタ領域330の各部分と第2コレクタ領域314の各部分とドレイン領域313の各部分とは、ドレイン領域313からエミッタ/ソース領域306へと向かう方向に対して垂直な方向(以下、単に垂直方向と称する)において第1コレクタ領域330の各部分及び第2コレクタ領域314の各部分のそれぞれの間にドレイン領域313の各部分が介在し且つドレイン領域313の各部分が第1コレクタ領域330の各部分及び第2コレクタ領域314の各部分のそれぞれと接触するように配置されている。
また、本実施形態の高耐圧半導体スイッチング素子の動作も第3の実施形態と同様である。
以上に説明したように、本実施形態によると、第3の実施形態と同様の効果に加えて、次のような効果が得られる。すなわち、層間膜308とリサーフ領域302との間にドレイン電界緩和層320を設けていることによって、第3の実施形態と比較してコレクタ耐圧をより高くすることができる。また、ドレイン電界緩和層320の一部分を第2リサーフ領域316の上側に配置し且つ当該配置箇所にてコレクタ/ドレイン電極311に接続するため、回路パターンの設計自由度を向上させることができると共に、ドレイン電界緩和層の配置面積及びドレイン電界緩和層とコレクタ/ドレイン電極との接続面積を低減することができる。それに対して、例えば図6に示す第2の実施形態のドレイン領域313の上側又は第2コレクタ領域314の上側にドレイン電界緩和層を配置しようとした場合には、ドレイン領域313又は第2コレクタ領域314をコレクタ/ドレイン電極311に接続するスペースが小さくなって、当該接続が困難になる。
尚、第2〜第4の実施形態において、N型リサーフ領域302が形成されたP型半導体基板301に本発明の半導体スイッチング素子を設けたが、これに代えて、P型リサーフ領域が形成されたN型半導体基板に本発明の半導体スイッチング素子を設けてもよい。