JP2007312716A - 脊椎動物の初期発生における中胚葉形成を支配する新規遺伝子BrachyuryExpressionbyNuclearInhibitor,BENI - Google Patents

脊椎動物の初期発生における中胚葉形成を支配する新規遺伝子BrachyuryExpressionbyNuclearInhibitor,BENI Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、アクチビンAに早期に応答する遺伝子を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明者は、網羅的マイクロアレイ法を用いて、アフリカツメガエルの胚を検討したところ、アクチビンAに応答して早期にその発現が大きく低下する遺伝子として、Unigene code Xl. 7756(BENI, Brachyury Expression by Nuclear Inhibitorと命名)を発見し、これが中胚葉特異的な因子であるBrachyuryの発現を核の中で抑制しながら、中胚葉の分化誘導を調節することを見出した。
【選択図】なし

Description

本発明は、細胞の分化調節因子に関する。より詳細には、中胚葉系細胞の分化調節因子に関する。
受精後の初期発生の時期に、将来において様々な器官や組織になるべく、未分化細胞の運命決定の過程が開始する。この時期の細胞の初期運命決定において決定的に重要な働きをもつ分化誘導因子として、浅島らが1990年に同定した母性因子のアクチビンAがある(非特許文献1)。すなわち、すでに母性因子として胚に存在しているアクチビンAの働きにより、受精直後に胚における細胞の分化誘導のスイッチが入り、そのスイッチに応じて、別の多くの因子が活性化や抑制を受けて、段階的、継続的に種々の分化誘導因子が働いて、すい臓、筋肉、心臓、肝臓、血管などの色々な器官や組織ができる。しかし、アクチビンAの働きに対して、このように活性化あるいは抑制の応答をする因子に何らかの異常があれば、胚は受精後も正常な発生(初期発生)を行なうことができず、その結果、重篤な疾患や、場合によっては死に至る。このような異常は遺伝子の異常による遺伝子疾患である。したがって、アクチビンAの働きに応答するような因子を同定し、その働きを同定することで、胚における分化誘導の仕組みを詳細に解明できるだけでなく、その知見を活用して、種々の遺伝子疾患の早期診断や、さらには、治療の手がかりを得ることが期待できる。
ヒトをはじめとする幾つかの生物に関するゲノム配列の網羅的決定が行われて、多くの遺伝子の存在が明らかになっているが、それらの遺伝子の多くは、その働きが未知のままである。胚の初期発生を支配する遺伝子も未知のものが多くある。
異なる性質の細胞群の相互作用によって、新たな性質を持つ細胞群が生まれる誘導現象は、古くから発生のしくみを理解する上で注目されてきた。特に中胚葉誘導は、中期胞胚期に動物半球側の細胞が植物半球側からのシグナルを受けて予定中胚葉領域を形成する、胚内で最も早く起こる誘導現象である。神経誘導とは中胚葉誘導にひきつづいて起こるもので、中胚葉が形態形成運動により胚の内側へと陥入する際に裏打ちする外胚葉が神経へと誘導される現象である。これらの誘導現象は、その後の脊椎動物の発生におけるボディープランに大きな影響を与える現象であり、分子生物学的解析が進められている。多細胞生物の初期発生において、個々の細胞のアイデンティティー決定は非常に重要である。個々の細胞は、細胞外のリガンド蛋白の存在を細胞膜表面のレセプター蛋白により検知し、その信号を細胞内に伝え、細胞質中の蛋白質を経て標的遺伝子の発現を制御することにより、個性を確立していく。これら一連のシステムは、細胞内シグナル伝達系と呼ばれる。
Asashima, M., Nakano, H., Shimada, K., Kinoshita, K., Ishii, K., Shibai, H. & Ueno, N. (1990) Roux’s Arch. Dev. Biol. 198, 330−335.
本発明は、アクチビンAに早期に応答する遺伝子を提供することを課題とする。
本発明者らは、このような遺伝子を同定するために、はじめに、アクチビンAに早期に応答する遺伝子を網羅的に捕らえ、次に、それぞれの遺伝子について、その働きを同定する方法がある。はじめの目的を達成するために適した方法の一つとして網羅的マイクロアレイ法がある。本発明者らも、網羅的マイクロアレイ法を用いて、アフリカツメガエルの胚を検討したところ、アクチビンAに応答して早期にその発現が大きく低下する遺伝子として、Unigene code Xl. 7756(BENI, Brachyury Expression by Nuclear Inhibitorと命名)を発見した。この遺伝子は、ヒトやマウスなどの哺乳類にも相同な遺伝子が存在するが、その働きはまったく不明であった(図1)。
図1に示したように、アフリカツメガエルのBENIは、トロピカリス(Xenopus tropicalis)、ヒト(Homo sapiens)、マウス(Mus musculus)、ラット(Rattus norvegirus)、ミドリフグ(Tetraodon nigroviridis)などにも相同遺伝子が存在し、それらとの相同性は、N末側の1−58アミノ酸の配列では57%−93%と高い値を示す。一方、C末側の相同性は低い。
従って、本発明は、以下を提供する。
(項目1)
Brachyury Expression by Nuclear Inhibitor(BENI)をコードする核酸配列またはその改変体もしくはフラグメント。
(項目2)前記BENIは、
(a)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1、3、5、7、9、11、17または19に記載の塩基配列の対立遺伝子変異体またはスプライス変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
をコードする、項目1に記載の核酸分子またはその改変体もしくはフラグメント。
(項目3)
前記BENIは、配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に示される配列をコードする、項目1に記載の核酸分子またはその改変体もしくはフラグメント。
(項目4)
前記BENIは、配列番号1、3、5、7、9、11、17または19に示される配列を含む、項目1に記載の核酸分子またはその改変体もしくはフラグメント。
(項目5)
前記生物学的活性は、中胚葉の分化誘導の調節活性である、項目1に記載の核酸分子またはその改変体もしくはフラグメント。
(項目6)
前記生物学的活性は、中胚葉分化誘導因子Brachyuryを調節する活性を有する、項目1に記載の核酸分子またはその改変体もしくはフラグメント。
(項目7)
Brachyury Expression by Nuclear Inhibitor(BENI)ポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメント。
(項目8)
前記BENIは、
(a)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列において、1以上のまたは1もしくは数個のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1、3、5、7、9、11、17または19に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド
である、項目7に記載のポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメント。
(項目9)
前記BENIは、配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に示される配列を有する、項目7に記載のポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメント。
(項目10)
前記BENIは、配列番号1、3、5、7、9、11、17または19に示される配列を含む、項目7に記載のポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメント。
(項目11)
前記生物学的活性は、中胚葉の分化誘導の調節活性である、項目7に記載のポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメント。
(項目12)
前記生物学的活性は、中胚葉分化誘導因子Brachyuryを調節する活性を有する、項目7に記載のポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメント。
(項目13)
中胚葉分化誘導因子Brachyuryを調節する活性を調節することができる因子であって、該因子は、項目1に記載の核酸分子またはその改変体もしくはフラグメント、あるいは項目7に記載のポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントの機能を阻害する機能を有する、因子。
(項目14)
前記因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される、項目13に記載の因子。
(項目15)
前記因子は、項目1に記載の核酸分子またはその改変体もしくはフラグメント、あるいは項目7に記載のポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントと相互作用することを特徴とする、項目13に記載の因子。
(項目16)
前記因子は、項目1に記載の核酸分子またはその改変体もしくはフラグメントのアンチセンス核酸分子またはRNAi分子であるか、あるいは項目7に記載のポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントに対する抗体であることを特徴とする、項目13に記載の因子。
(項目17)
前記因子を特異的部位に送達させる手段をさらに含む、項目13に記載の因子。
(項目18)
前記手段は、前記特異的部位に特異的に前記核酸分子を発現させるものである、項目17に記載の因子。
(項目19)
前記手段は、プロモーターである、項目18に記載の因子。
(項目20)
前記手段は、指向性リポソームである、項目17に記載の因子。
(項目21)
項目1に記載の核酸分子を含む、ベクター。
(項目22)
項目1に記載の核酸分子の機能を阻害する阻害核酸分子を含む、ベクター。
(項目23)
中胚葉分化誘導の調節因子をスクリーニングする方法であって、
A)候補物質を提供する工程、
B)該候補物質がBENIの活性を調節するかどうかを決定するためのアッセイ系に供する工程;
C)該候補物質の内、BENIを調節する因子を同定し、該調節する因子を、BENIの調節因子であると決定する工程
を包含する、方法。
(項目24)
前記候補物質は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される、項目24に記載の方法。
(項目25)
項目23に記載の方法によって同定された、BENIの調節因子。
(項目26)
中胚葉分化誘導の調節因子を生産する方法であって、
A)候補物質を提供する工程、
B)該候補物質がBENIの活性を調節するかどうかを決定するためのアッセイ系に供する工程;
C)該候補物質の内、BENIを調節する因子を同定し、該調節する因子を、BENIの調節因子であると決定する工程;
D)該BENIの調節因子を生産する工程、
を包含する、方法。
(項目27)
前記候補物質が、コンビナトリアルケミストリのライブラリーから選択される、項目26に記載の方法。
(項目28)
項目26または27に記載の方法によって同定された、BENIの調節因子。
(項目29)
中胚葉分化に関連する状態の診断方法であって、
A)BENIのレベルを測定する工程
を包含する、方法。
(項目30)
さらに、B)前記BENIのレベルの変化を指標として、中胚葉分化の状態を決定する工程を包含する、項目29に記載の方法。
(項目31)
中胚葉分化に関連する状態の診断試薬であって、BENIに特異的な因子を含む、診断試薬。
(項目32)
中胚葉分化に関連する状態の処置または予防の方法であって、
A)BENIのレベルを調節する工程
を包含する、方法。
(項目33)
前記調節する工程は、BENIに特異的な因子を用いて達成される、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記BENIに特異的な因子は、BENIまたはその改変体をコードする核酸配列を含む、項目33に記載の方法。
(項目35)
中胚葉分化に関連する状態の処置または予防のシステムであって、
A)BENIのレベルを調節する手段
を備える、システム。
(項目36)
BENIをコードする核酸分子もしくはBENIポリペプチドまたはそれらに特異的な因子の、中胚葉分化状態の診断薬の製造のための、使用。
(項目37)
BENIをコードする核酸分子もしくはBENIポリペプチドまたはそれらに特異的な因子の、中胚葉分化に関連する状態、障害または疾患の処置または予防のための医薬の製造のための、使用。
(項目38)
BENIをコードする核酸分子もしくはBENIポリペプチドまたはそれらに特異的な因子の、中胚葉分化状態の診断薬の製造のための、使用。
以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および当該分野における周知慣用技術からその実施形態などを適宜実施することができ、本発明が奏する作用および効果を容易に理解することが認識されるべきである。
従って、本発明のこれらおよび他の利点は、必要に応じて添付の図面等を参照して、以下の詳細な説明を読みかつ理解すれば、当業者には明白になることが理解される。
アクチビンAに早期に応答する遺伝子が提供される。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞または形容詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
(定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
本明細書において「BENI」または「Brachyury Expression by Nuclear Inhibitor」とは、本発明者らが見出した因子であり、中胚葉特異的な因子であるBrachyuryの発現を核の中で抑制しながら、中胚葉の分化誘導を調節する。BENIの相同遺伝子は、Xenopus flavis(配列番号1−2)の他、近縁種のトリピカリス(Xenopus tropicalis)(配列番号3−4)だけでなく、ヒト(配列番号5−6)からラット(R.norvegirus)(配列番号7−8)、マウス(M.musculus)(配列番号9−10)、ミドリフグ(T.nigroviridis)(配列番号11−12および17〜20)まで幅広く存在している。本発明者らは、これらの相同遺伝子すべてが、この中胚葉特異的な因子であるBrachyuryの発現を核の中で抑制しながら、中胚葉の分化誘導を調節することを見出した。
このBENIは、
(a)配列番号1、3、5、7、9、11、17または19に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列において、1以上または1もしくは数個のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有する改変体ポリペプチドまたはそのフラグメントであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1、3、5、7、9、11、17または19に記載の塩基配列のスプライス変異体もしくは対立遺伝子変異体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
であり得る。
BENIは、アミノ酸配列に関して言うと、
(a)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列において、1以上のまたは1もしくは数個のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1、3、5、7、9、11、17または19に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
であり得る。
BENIの生物学的活性としては、例えば、主として、中胚葉特異的な因子であるBrachyuryの発現を核の中で抑制しながら、中胚葉の分化誘導を調節する活性、アクチビンAを加えた時に有意に発現が上昇する活性などを挙げることができいる。
本明細書において「中胚葉」とは、大部分の後生動物の初期発生途上で,外胚葉と内胚葉との中間に現われる胚葉をいい、中胚葉は体腔壁を形成し,間充織(間葉)を生じて胚葉間の空隙を埋める。体節制を示す動物では,中胚葉は分節して体節として前後方向への反復的構造を示す.成体の器官系や組織の中でその主要部が中胚葉より由来するものは,動物群によって多少の差はあるが,筋肉系・結合組織・骨格系・循環系・排出系・生殖系などである。予定中胚葉細胞群は原腸形成に先だって胚の特定の部位に存在している。
本明細書において、「分化」または「細胞分化」とは、1個の細胞の分裂によって由来した娘細胞集団の中で形態的および/または機能的に質的な差をもった二つ以上のタイプの細胞が生じてくる現象をいう。従って、元来特別な特徴を検出できない細胞に由来する細胞集団(細胞系譜)が、特定のタンパク質の産生などはっきりした特徴を示すに至る過程も分化に包含される。現在では細胞分化を,ゲノム中の特定の遺伝子群が発現した状態と考えることが一般的であり、このような遺伝子発現状態をもたらす細胞内あるいは細胞外の因子または条件を探索することにより細胞分化を同定することができる。細胞分化の結果は原則として安定であって、特に動物細胞では,別のタイプの細胞に分化することは例外的にしか起こらない。分化を誘導することを、「分化誘導」という。
本発明で用いられる細胞は、どの生物由来の細胞(たとえば、任意の種類の多細胞生物(例えば、動物(たとえば、脊椎動物、無脊椎動物)、植物(たとえば、単子葉植物、双子葉植物など)など))でもよい。好ましくは、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)由来の細胞が用いられ、より好ましくは、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)由来の細胞が用いられる。さらに好ましくは、哺乳動物のもの(例えば、げっ歯類(マウス、ラットなど)、霊長類(サル、ヒトなど))が用いられる。
本明細書において「組織」(tissue)とは、多細胞生物において、実質的に同一の機能および/または形態をもつ細胞集団をいう。通常「組織」は、同じ起源を有するが、異なる起源を持つ細胞集団であっても、同一の機能および/-または形態を有するのであれば、組織と呼ばれ得る。従って、本発明の幹細胞を用いて組織を再生する場合、2以上の異なる起源を有する細胞集団が一つの組織を構成し得る。通常、組織は、臓器の一部を構成する。動物の組織は,形態的、機能的または発生的根拠に基づき、上皮組織、結合組織、筋肉組織、神経組織などに区別される。
本明細書において「アクチビン」とは、卵巣の顆粒膜細胞などから分泌され,下垂体前葉の濾胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を促進する蛋白質ホルモンをいう。代表的なアクチビンとしては、例えば、アクチビン−A、アクチビン−B、アクチビン−C、インヒビンなどがあり、これらは、動物間でよく保存されており、ヒトのものがアフリカツメガエルに作用したり、逆も真であることが予期されている。配列番号13および配列番号15(アクセッション番号:NM002192(ヒトインヒビンβA)の配列番号およびアクセション番号:X68250(アフリカツメガエルアクチビンA)=核酸配列)および配列番号14および配列番号16(それぞれヒトインヒビンβAの配列番号およびアクセッション番号X68250(アフリカツメガエルアクチビンA)=アミノ酸配列)に示されるような配列を有する因子および他の種の動物において対応する因子(オルソログ)が挙げられるがそれに限定されない。また、アフリカツメガエルにはインヒビンβB(アクセッション番号:S61773)の登録がある。分子量25000.インヒビンβ鎖のサブユニットがS−S結合した二量体であり,アクチビンA(βAβA),アクチビンAB(βAβB),アクチビンB(βBβB)の3種類が知られている.アクチビンAは赤芽球分化誘導因子(erythroblast differentiation factor,EDF)ともいう.インヒビンβ鎖が形質転換成長因子TGF−βと約40%の相同性をもっており,また一次構造中のシステイン残基の位置がよく保存されているので,アクチビンをTGF−βファミリーに入れることもある。アクチビンは、卵巣の顆粒膜細胞などから分泌され,下垂体前葉の濾胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を促進する蛋白質ホルモンである。インヒビンを精製する過程で卵胞液中から単離された(1986).分子量25000.インヒビンβ鎖のサブユニットがS−S結合した二量体であり,アクチビンA(βAβA),アクチビンAB(βAβB),アクチビンB(βBβB)の3種類が知られている.アクチビンAは赤芽球分化誘導因子(erythroblast differentiation factor,EDF)ともいう.インヒビンβ鎖が形質転換成長因子TGF−βと約40%の相同性をもっており,また一次構造中のシステイン残基の位置がよく保存されているので,アクチビンをTGF−βファミリーに入れることもある.脊椎動物のいろいろな臓器でアクチビン遺伝子の発現が報告されており,卵巣の顆粒膜細胞におけるFSH受容体の合成の促進,フレンド細胞および骨髄の赤芽球前駆細胞の増殖抑制とヘモグロビン合成の誘導,すい臓からのインシュリン分泌の促進,両生類胚における中胚葉誘導など,多くの生理活性をもつ。アクチビンについては、以下を参照することができる:Nakamura et al.,Isolation and characterization of native activin B.J Biol.Chem.1992,267,16385−9;Uchiyama and Asashima,Specific erythroid differentiation of mouse erythroleukemia cells by activins and its enhancement by retinoic acids.Biochem Biophys.Res.Commun.1992,187,347−52;Fukui et al.,Isolation and characterization of Xenopus follistatin and activins.Dev.Biol.1993,159,131−9;Fukui et al.,Identification of activins A,AB,and B and follistatin proteins in Xenopus embryos.Dev.Biol.1994,163,279−81;Nakano et al.,Comparison of mesoderm−inducing activity with monomeric and dimeric inhibin alpha and beta−A subunits on Xenopus ectoderm.Horm.Res.1995,44,Suppl.2,15−22。
アクチビンは、ヒト、ラット、マウス、アフリカツメガエルなどを含む哺乳動物のほか、ショウジョウバエなどでもそのホモログが知られている。従って、本明細書においてアクチビンは、通常、哺乳動物のほか、生物一般において存在するアクチビンを指す。アクチビン−AはインヒビンβAの二量体である(ヒトインヒビンβAのアクセッション番号NM002192;配列番号13および14(核酸およびアミノ酸))。アクチビン−ABはインヒビンβAとインヒビンβBの二量体である(ヒトインヒビンβBのアクセッション番号NM002193)。アクチビン−BはインヒビンβBの二量体である。アクチビン−CはインヒビンβCの二量体である(ヒトインヒビンβCのアクセッション番号NM005538)。インヒビンはインヒビンαの二量体である(ヒトインヒビンαのアクセッション番号NM002191)。
本発明において用いられるアクチビンなどのポリペプチドについて、糖鎖が付加され得る部分としては、N−アセチル−D−グルコサミンなどが結合するN−グルコシド結合可能な部分、およびN−アセチル−D−ガラクトサミンのO−グリコシド結合をする部分(セリンまたはスレオニン残基が頻出する部分)が挙げられる。本明細書において使用されるアクチビンは、糖鎖の有無は特に活性に影響を与えるというわけではないが、これらの糖鎖が付加されたタンパク質は、通常生体内での分解に対して安定であり、強い生理活性を有し得る。従って、これら糖鎖が付加されたポリペプチドもまた、本発明の範囲内にある。
本明細書において、「リガンド」とは、あるタンパク質に特異的に結合する物質をいう。例えば,細胞膜上に存在する種々のレセプタータンパク質分子と特異的に結合するレクチン、抗原、抗体、ホルモン、神経伝達物質などがリガンドとして挙げられる。
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または複数のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。本発明の遺伝子産物は、通常ポリペプチド形態をとる。このようなポリペプチド形態の本発明の遺伝子産物は、本発明の診断、予防、治療または予後のための組成物として有用である。
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」を含む。
本明細書において「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体およびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体などが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1または複数の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。本発明の遺伝子は、通常、このポリヌクレオチド形態をとる。
本明細書では「核酸分子」もまた、核酸、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドと互換可能に使用され、cDNA、mRNA、ゲノムDNAなどを含む。本明細書では、核酸および核酸分子は、用語「遺伝子」の概念に含まれ得る。ある遺伝子配列をコードする核酸分子はまた、「スプライス変異体(改変体)」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を包含する。その名が示唆するように「スプライス変異体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス変異体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。したがって、本明細書では、たとえば、本発明で使用され得る遺伝子(アクチビン遺伝子)には、そのスプライス変異体もまた包含され得る。
本明細書において、「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定するものを構造遺伝子といい、その発現を左右するものを調節遺伝子(たとえば、プロモーター)という。本明細書では、遺伝子は、特に言及しない限り、構造遺伝子および調節遺伝子を包含する。したがって、アクチビンなどの遺伝子というときは、通常、本発明の遺伝子の構造遺伝子ならびにそのプロモーターなどの転写および/または翻訳の調節配列の両方を包含する。本発明では、構造遺伝子のほか、転写および/または翻訳などの調節配列もまた、神経再生、神経疾患の診断、治療、予防、予後などに有用であることが理解される。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」ならびに/または「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を指すことがある。本明細書においてはまた、「遺伝子産物」は、遺伝子によって発現された「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」ならびに/または「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を包含する。当業者であれば、遺伝子産物が何たるかはその状況に応じて理解することができる。
本明細書において遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。また、本明細書において配列(核酸配列、アミノ酸配列など)の同一性とは、2以上の対比可能な配列の、互いに対する同一の配列(個々の核酸、アミノ酸など)の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて相同性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、相同性と類似性とは同じ数値を示す。
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、同一性の検索は例えば、NCBIのBLAST 2.2.9 (2004.5.12 発行)を用いて行うことができる。本明細書における同一性の値は通常は上記BLASTを用い、デフォルトの条件でアラインした際の値をいう。ただし、パラメーターの変更により、より高い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価される場合はそのうちの最も高い値を同一性の値とする。
本明細書において、「アミノ酸」は、本発明の目的を満たす限り、天然のものでも非天然のものでもよい。「アミノ酸誘導体」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのようなアミノ酸誘導体およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。
用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体であるが、D体のアミノ酸を用いた形態もまた本発明の範囲内にある。
本明細書において用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。
本明細書において「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。本明細書におけるアクチビンとしては、天然型のアミノ酸を含むもののほか、このようなアミノ酸アナログまたはアミノ酸誘導体を含むものが使用され得る。
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。
本明細書において、「対応する」アミノ酸または核酸とは、あるポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子において、比較の基準となるポリペプチドまたはポリヌクレオチドにおける所定のアミノ酸またはヌクレオチドと同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸またはヌクレオチドをいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、アンチセンス分子であれば、そのアンチセンス分子の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。従って、本明細書においてマウスアクチビンにおける特定のアミノ酸配列は、アラインメントなどの解析によって、ヒトアクチビンにおける特定のアミノ酸に対して対応付けることができる。このような「対応する」アミノ酸または核酸は、一定範囲にわたる領域またはドメインであってもよい。従って、そのような場合、本明細書において「対応する」領域またはドメインと称される。
本明細書において、「対応する」遺伝子(例えば、ポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子)とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子(例えば、ポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子)をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子に対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。したがって、アフリカツメガエルのアクチビンなどの遺伝子に対応する遺伝子は、他の動物(ヒト、ラット、ブタ、ウシなど)においても見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。したがって、例えば、ある動物における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子(例えば、アフリカツメガエルのアクチビンなどの遺伝子)の配列をクエリ配列として用いてその動物(例えばヒト、ラット)の配列データベースを検索することによって見出すことができる。
本明細書において「フラグメント」(または断片)とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または下限としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。本明細書において有用なフラグメントの長さは、そのフラグメントの基準となる全長タンパク質の機能のうち少なくとも1つの機能(例えば、分化調節作用、他の分子との特異的相互作用)が保持されているかどうかによって決定され得る。
本明細書において使用される用語「領域」によって、生体分子の一次構造の物理的に連続した部分を意味する。タンパク質の場合、領域は、そのタンパク質のアミノ酸配列の連続した部分によって定義される。用語「ドメイン」は、本明細書中で、生体分子の既知の機能または推測されている機能に寄与する、その生体分子の構造部分をいうものとして定義される。ドメインは、領域またはその部分と同じ広がりを有し得;ドメインはまた、その領域の全てまたは一部に加えて、特定の領域と区別される生体分子の一部を組み込み得る。本発明のアクチビンまたはBENIのドメインの例としては、シグナルペプチド、細胞外(すなわち、N末端)ドメイン、ロイシンリッチ反復ドメインが挙げられるが、これらに限定されない。本発明のBENIは、核移行シグナルをドメインとして有することが判明した。
本明細書において第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」とは、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して、第二の物質または因子以外の物質または因子(特に、第二の物質または因子を含むサンプル中に存在する他の物質または因子)に対するよりも高い親和性で相互作用することをいう。物質または因子について特異的な相互作用としては、例えば、核酸におけるハイブリダイゼーション、タンパク質における抗原抗体反応、リガンド−レセプター反応、酵素−基質反応など、核酸およびタンパク質の両方が関係する場合、転写因子とその転写因子の結合部位との反応など、タンパク質−脂質相互作用、核酸−脂質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。従って、物質または因子がともに核酸である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」ことには、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して少なくとも一部に相補性を有することが包含される。また例えば、物質または因子がともにタンパク質である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」こととしては、例えば、抗原抗体反応による相互作用、レセプター−リガンド反応による相互作用、酵素−基質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。2種類の物質または因子がタンパク質および核酸を含む場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」ことには、転写因子と、その転写因子が対象とする核酸分子の結合領域との間の相互作用が包含される。
したがって、本明細書においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドなどの生物学的因子に対して「特異的に相互作用する因子」とは、そのポリヌクレオチドまたはそのポリペプチドなどの生物学的因子に対する親和性が、他の無関連の(特に、同一性が30%未満の)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対する親和性よりも、代表的には同等またはより高いか、好ましくは有意に(例えば、統計学的に有意に)高いものを包含する。そのような親和性は、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ、結合アッセイなどによって測定することができる。
本明細書において「因子」(agent)としては、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、光、放射能、熱、電気などのエネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性を(例えば、70%以上の配列同一性)もって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモーター領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリペプチドに対して特異的に指向された抗体またはその誘導体あるいはその類似物(例えば、単鎖抗体)、そのポリペプチドがレセプターまたはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプター、そのポリペプチドが酵素である場合、その基質などが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書では、アクチビンが幹細胞の分化に使用され得るが、アクチビンと同一の生物学的活性を有する因子であれば、本発明においてアクチビンと交換可能に用いられ得ることが理解される。このような因子は、本明細書における開示に基づいて、当該分野における技術常識を用いてスクリーニングすることによって同定することができ、これらは、周知・慣用技術の範囲内であることが理解される。
本明細書中で使用される「化合物」は、任意の識別可能な化学物質または分子を意味し、これらには、低分子、ペプチド、タンパク質、糖、ヌクレオチド、または核酸が挙げられるが、これらに限定されず、そしてこのような化合物は、天然物または合成物であり得る。
本明細書において「有機低分子」とは、有機分子であって、比較的分子量が小さなものをいう。通常有機低分子は、分子量が約1000以下のものをいうが、それ以上のものであってもよい。有機低分子は、通常当該分野において公知の方法を用いるかそれらを組み合わせて合成することができる。そのような有機低分子は、生物に生産させてもよい。有機低分子としては、例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書中で使用される「接触(させる)」とは、化合物を、直接的または間接的のいずれかで、本発明のアクチビンなど(例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)に対して物理的に近接させることを意味する。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、多くの緩衝液、塩、溶液などに存在し得る。接触とは、核酸分子またはそのフラグメントをコードするポリペプチドを含む、例えば、ビーカー、マイクロタイタープレート、細胞培養フラスコまたはマイクロアレイ(例えば、遺伝子チップ)などに化合物を置くことが挙げられる。代表的には、接触させたい因子(例えば、アクチビン)を含む溶液(例えば、培地)に接触対象(例えば、細胞)を入れることなどによって接触が達成され得る。
本明細書において「複合分子」とは、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、脂質、糖、低分子などの分子が複数種連結してできた分子をいう。そのような複合分子としては、例えば、糖脂質、糖ペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書においてアクチビンとしては、このような複合分子の形態でも用いられ得る。
本明細書において「単離された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子が天然に存在する生物体の細胞内の他の生物学的因子(例えば、核酸である場合、核酸以外の因子および目的とする核酸以外の核酸配列を含む核酸;タンパク質である場合、タンパク質以外の因子および目的とするタンパク質以外のアミノ酸配列を含むタンパク質など)から実質的に分離または精製されたものをいう。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。したがって、単離された核酸およびタンパク質は、化学的に合成した核酸およびタンパク質を包含する。
本明細書において「精製された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。したがって、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。
本明細書中で使用される用語「精製された」および「単離された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質など)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含される。例えば、2つの因子が相互作用する(例えば、アクチビンとその特異的因子とが結合する)場合、その生物学的活性は、その二分子との間の結合およびそれによって生じる生物学的変化、例えば、一つの分子を抗体を用いて沈降させたときに他の分子も共沈するとき、2分子は結合していると考えられる。したがって、そのような共沈を見ることが一つの判断手法として挙げられる。
したがって、「活性」は、結合(直接的または間接的のいずれか)を示すかまたは明らかにするか;応答に影響する(すなわち、いくらかの曝露または刺激に応答する測定可能な影響を有する)、種々の測定可能な指標をいい、例えば、本発明において使用されるポリペプチドまたはポリヌクレオチドに直接結合する化合物の親和性、または例えば、いくつかの刺激後または事象後の上流または下流のタンパク質の量あるいは他の類似の機能の尺度が、挙げられる。このような活性は、アクチビンに対する特異的因子の結合の競合阻害のようなアッセイによって測定され得る。
本明細書において「相互作用」とは、2つの物質についていうとき、一方の物質と他方の物質との間で力(例えば、分子間力(ファンデルワールス力)、水素結合、疎水性相互作用など)を及ぼしあうこという。通常、相互作用をした2つの物質は、会合または結合している状態にある。
本明細書中で使用される用語「結合」は、2つのタンパク質もしくは化合物または関連するタンパク質もしくは化合物の間、あるいはそれらの組み合わせの間での、物理的相互作用または化学的相互作用を意味する。結合には、イオン結合、非イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合、疎水性相互作用などが含まれる。物理的相互作用(結合)は、直接的または間接的であり得、間接的なものは、別のタンパク質または化合物の効果を介するかまたは起因する。直接的な結合とは、別のタンパク質または化合物の効果を介してもまたはそれらに起因しても起こらず、他の実質的な化学中間体を伴わない、相互作用をいう。
本明細書中で使用される用語「調節する(modulate)」または「改変する(modify)」は、特定の活性またはタンパク質の量、質または効果における増加または減少あるいは維持を意味する。
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件で入手されるポリヌクレオチドをいう。本発明において使用されるポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、本発明で具体的に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド(例えば、アクチビン)をコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
本明細書において「高度にストリンジェントな条件」は、核酸配列において高度の相補性を有するDNA鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、そしてミスマッチを有意に有するDNAのハイブリダイゼーションを除外するように設計された条件をいう。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、主に、温度、イオン強度、およびホルムアミドのような変性剤の条件によって決定される。このようなハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、65〜68℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および50% ホルムアミド、42℃である。このような高度にストリンジェントな条件については、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory(Cold Spring Harbor,N,Y.1989);およびAnderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical approach、IV、IRL Press Limited(Oxford,England).Limited,Oxford,Englandを参照のこと。必要により、よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤)を、使用してもよい。他の薬剤が、非特異的なハイブリダイゼーションおよび/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少する目的で、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に含まれ得る。そのような他の薬剤の例としては、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(NaDodSOまたはSDS)、Ficoll、Denhardt溶液、超音波処理されたサケ精子DNA(または別の非相補的DNA)および硫酸デキストランであるが、他の適切な薬剤もまた、使用され得る。これらの添加物の濃度および型は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション実験は、通常、pH6.8〜7.4で実施されるが;代表的なイオン強度条件において、ハイブリダイゼーションの速度は、ほとんどpH独立である。Anderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical Approach、第4章、IRL Press Limited(Oxford,England)を参照のこと。
DNA二重鎖の安定性に影響を与える因子としては、塩基の組成、長さおよび塩基対不一致の程度が挙げられる。ハイブリダイゼーション条件は、当業者によって調整され得、これらの変数を適用させ、そして異なる配列関連性のDNAがハイブリッドを形成するのを可能にする。完全に一致したDNA二重鎖の融解温度は、以下の式によって概算され得る。
Tm(℃)=81.5+16.6(log[Na])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド)
ここで、Nは、形成される二重鎖の長さであり、[Na]は、ハイブリダイゼーション溶液または洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド中の(グアニン+シトシン)塩基のパーセンテージである。不完全に一致したハイブリッドに関して、融解温度は、各1%不一致(ミスマッチ)に対して約1℃ずつ減少する。
本明細書において「中程度にストリンジェントな条件」とは、「高度にストリンジェントな条件」下で生じ得るよりも高い程度の塩基対不一致を有するDNA二重鎖が、形成し得る条件をいう。代表的な「中程度にストリンジェントな条件」の例は、0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、50〜65℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および20%ホルムアミド、37〜50℃である。例として、0.015M ナトリウムイオン中、50℃の「中程度にストリンジェントな」条件は、約21%の不一致を許容する。
本明細書において「高度」にストリンジェントな条件と「中程度」にストリンジェントな条件との間に完全な区別は存在しないことがあり得ることが、当業者によって理解される。例えば、0.015M ナトリウムイオン(ホルムアミドなし)において、完全に一致した長いDNAの融解温度は、約71℃である。65℃(同じイオン強度)での洗浄において、これは、約6%不一致を許容にする。より離れた関連する配列を捕獲するために、当業者は、単に温度を低下させ得るか、またはイオン強度を上昇し得る。
約20ヌクレオチドまでのオリゴヌクレオチドプローブについて、1M NaClにおける融解温度の適切な概算は、
Tm=(1つのA−T塩基につき2℃)+(1つのG−C塩基対につき4℃)
によって提供される。なお、6×クエン酸ナトリウム塩(SSC)におけるナトリウムイオン濃度は、1Mである(Suggsら、Developmental Biology Using Purified Genes、683頁、BrownおよびFox(編)(1981)を参照のこと)。
アクチビンまたはその改変体もしくはフラグメントなどのタンパク質をコードする天然の核酸は、例えば、配列番号1などの核酸配列の一部またはその改変体を含むPCRプライマーおよびハイブリダイゼーションプローブを有するcDNAライブラリーから容易に分離される。好ましいアクチビンまたはその改変体もしくはフラグメントなどをコードする核酸は、本質的に1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO);1mM EDTA;42℃の温度で 7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に2×SSC(600mM NaCl;60mM クエン酸ナトリウム);50℃の0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、さらに好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO);15%ホルムアミド;1mM EDTA;7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に50℃の1×SSC(300mM NaCl;30mM クエン酸ナトリウム);1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、最も好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);200mM リン酸ナトリウム(NaPO);15%ホルムアミド;1mM EDTA;7%SDSを含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に65℃の0.5×SSC(150mM NaCl;15mM クエン酸ナトリウム);0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下に配列番号1または3に示す配列の1つまたはその一部とハイブリダイズし得る。
本明細書において、「検索」とは、電子的にまたは生物学的あるいは他の方法により、ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、FASTA(Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 85:2444−2448(1988))、Smith and Waterman法(Smith and Waterman,J.Mol.Biol.147:195−197(1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443−453(1970))などが挙げられるがそれらに限定されない。生物学的な検索としては、ストリンジェントハイブリダイゼーション、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマクロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PCRおよびin situハイブリダイゼーションなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、本発明において使用されるアクチビンなどには、このような電子的検索、生物学的検索によって同定された対応遺伝子も含まれるべきであることが意図される。
本明細書において配列(アミノ酸または核酸など)の「同一性」、「相同性」および「類似性」のパーセンテージは、比較ウィンドウで最適な状態に整列された配列2つを比較することによって求められる。ここで、ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の比較ウィンドウ内の部分には、2つの配列の最適なアライメントについての基準配列(他の配列に付加が含まれていればギャップが生じることもあるが、ここでの基準配列は付加も欠失もないものとする)と比較したときに、付加または欠失(すなわちギャップ)が含まれる場合がある。同一の核酸塩基またはアミノ酸残基がどちらの配列にも認められる位置の数を求めることによって、マッチ位置の数を求め、マッチ位置の数を比較ウィンドウ内の総位置数で割り、得られた結果に100を掛けて同一性のパーセンテージを算出する。検索において使用される場合、相同性については、従来技術において周知のさまざまな配列比較アルゴリズムおよびプログラムの中から、適当なものを用いて評価する。このようなアルゴリズムおよびプログラムとしては、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTAおよびCLUSTALW(Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(8):2444−2448、 Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Thompson et al.,1994,Nucleic Acids Res.22(2):4673−4680、Higgins et al.,1996,Methods Enzymol.266:383−402、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272)があげられるが、何らこれに限定されるものではない。特に好ましい実施形態では、従来技術において周知のBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)(たとえば、Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2267−2268、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272、Altschul et al.,1997,Nuc.Acids Res.25:3389−3402を参照のこと)を用いてタンパク質および核酸配列の相同性を評価する。特に、5つの専用BLASTプログラムを用いて以下の作業を実施することによって比較または検索が達成され得る。
(1)BLASTPおよびBLAST3でアミノ酸のクエリー配列をタンパク質配列データベースと比較;
(2)BLASTNでヌクレオチドのクエリー配列をヌクレオチド配列データベースと比較;
(3)BLASTXでヌクレオチドのクエリー配列(両方の鎖)を6つの読み枠で変換した概念的翻訳産物をタンパク質配列データベースと比較;
(4)TBLASTNでタンパク質のクエリー配列を6つの読み枠(両方の鎖)すべてで変換したヌクレオチド配列データベースと比較;
(5)TBLASTXでヌクレオチドのクエリ配列を6つの読み枠で変換したものを、6つの読み枠で変換したヌクレオチド配列データベースと比較。
BLASTプログラムは、アミノ酸のクエリ配列または核酸のクエリ配列と、好ましくはタンパク質配列データベースまたは核酸配列データベースから得られた被検配列との間で、「ハイスコアセグメント対」と呼ばれる類似のセグメントを特定することによって相同配列を同定するものである。ハイスコアセグメント対は、多くのものが従来技術において周知のスコアリングマトリックスによって同定(すなわち整列化)されると好ましい。好ましくは、スコアリングマトリックスとしてBLOSUM62マトリックス(Gonnet et al.,1992,Science 256:1443−1445、Henikoff and Henikoff,1993,Proteins 17:49−61)を使用する。このマトリックスほど好ましいものではないが、PAMまたはPAM250マトリックスも使用できる(たとえば、Schwartz and Dayhoff,eds.,1978,Matrices for Detecting Distance Relationships:Atlas of Protein Sequence and Structure,Washington:National Biomedical Research Foundationを参照のこと)。BLASTプログラムは、同定されたすべてのハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価し、好ましくはユーザー固有の相同率などのユーザーが独自に定める有意性の閾値レベルを満たすセグメントを選択する。統計的な有意性を求めるKarlinの式を用いてハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価すると好ましい(Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2267−2268参照のこと)。
(遺伝子、タンパク質分子、核酸分子などの改変)
あるタンパク質分子(例えば、本発明のBENI、アクチビンなど)において、配列に含まれるあるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、カチオン性領域または基質分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。このように改変された改変体もまた、本発明の範囲内にあることが理解される。
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。
親水性指数もまた、本発明のアミノ酸配列を改変するのに有用である。米国特許第4,554,101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
本明細書において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例としては、例えば、親水性指数または疎水性指数が、±2以内のもの同士、好ましくは±1以内のもの同士、より好ましくは±0.5以内のもの同士のものが挙げられるがそれらに限定されない。従って、保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。そのような改変体としては、基準となる核酸分子またはポリペプチドに対して、1または数個の置換、付加および/または欠失、あるいは1つ以上の置換、付加および/または欠失を含むものが挙げられるがそれらに限定されない。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。そのような対立遺伝子変異体は、通常その対応する対立遺伝子と同一または非常に類似性の高い配列を有し、通常はほぼ同一の生物学的活性を有するが、まれに異なる生物学的活性を有することもある。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトおよびマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子およびβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用である。オルソログは、通常別の種において、もとの種と同様の機能を果たしていることがあり得ることから、本発明のオルソログもまた、本発明において有用であり得る。
本明細書において「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。このような塩基配列の改変法としては、制限酵素などによる切断、DNAポリメラーゼ、Klenowフラグメント、DNAリガーゼなどによる処理等による連結等の処理、合成オリゴヌクレオチドなどを用いた部位特異的塩基置換法(特定部位指向突然変異法;Mark Zoller and Michael Smith,Methods in Enzymology,100,468−500(1983))が挙げられるが、この他にも通常分子生物学の分野で用いられる方法によって改変を行うこともできる。
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、短縮化、脂質化(lipidation)、ホスホリル化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
本明細書において使用される用語「ペプチドアナログ」または「ペプチド誘導体」とは、ペプチドとは異なる化合物であるが、ペプチドと少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ペプチドアナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のアミノ酸アナログまたはアミノ酸誘導体が付加または置換されているものが含まれる。ペプチドアナログは、その機能が、もとのペプチドの機能(例えば、pKa値が類似していること、官能基が類似していること、他の分子との結合様式が類似していること、水溶性が類似していることなど)と実質的に同様であるように、このような付加または置換がされている。そのようなペプチドアナログは、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。したがって、ペプチドアナログは、アミノ酸アナログを含むポリマーであり得る。
本発明において使用されるポリペプチドがポリマーに結合している、化学修飾されたポリペプチド組成物は、本発明の範囲に包含される。このポリマーは、水溶性であり得、水溶性環境(例えば、生理学的環境)でこのタンパク質の沈澱を防止し得る。適切な水性ポリマーは、例えば、以下からなる群より選択され得る:ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、または他の炭水化物に基づくポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)およびポリビニルアルコール。この選択されたポリマーは、通常は改変され、単一の反応性基(例えば、アシル化のための活性エステルまたはアルキル化のためのアルデヒド)を有し、その結果、重合度は制御され得る。ポリマーは、任意の分子量であり得、そして、このポリマーは分枝状でも分枝状でなくてもよく、そしてこのようなポリマーの混合物はまた、使用され得る。この化学修飾された本発明において使用されるポリマーは、治療用途に決定付けられる場合、薬学的に受容可能なポリマーが使用するために選択される。
このポリマーがアシル化反応によって改変される場合、このポリマーは、単一の反応性エステル基を有するべきである。あるいは、このポリマーが還元アルキル化によって改変される場合、このポリマーは単一の反応性アルデヒド基を有するべきである。好ましい反応性アルデヒドは、ポリエチレングリコール、プロピオンアルデヒド(このプロピオンアルデヒドは、水溶性である)または、そのモノC1〜C10の、アルコキシ誘導体もしくはアリールオキシ誘導体である(例えば、米国特許第5,252,714号(これは、本明細書中で全体が参考として援用される)を参照のこと)。
本発明において使用されるポリペプチドのペグ化(Pegylation)は、例えば、以下の参考文献に記載されるような、当該分野で公知の、任意のペグ化反応によって実施され得る:Focus on Growth Factors 3,4−10(1992);EP 0 154 316 ;およびEP 0 401 384(これらの各々は、本明細書中で、全体が参考として援用される)。好ましくは、このペグ化は、反応性ポリエチレングリコール分子(または、類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応を介して実施される。本発明において使用されるポリペプチド(例えば、アクチビン、Mel−18、M33、Mph−1/Rae28など)のペグ化のための好ましい水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)である。本明細書中で使用される場合、「ポリエチレングリコール」は、PEGの任意の形態の包含することを意味し、ここで、このPEGは、他のタンパク質(例えば、モノ(C1〜C10)アルコキシポリエチレングリコールまたはモノ(C1〜C10)アリールオキシポリエチレングリコール)を誘導体するために使用される。
本発明において使用されるポリペプチドの化学誘導体化を、生物学的に活性な物質を活性化したポリマー分子と反応させるのに使用される適切な条件下で、実施され得る。ペグ化した本発明において使用されるポリペプチドを調製するための方法は、一般に以下の工程を包含する:(a)アクチビンが1以上のPEG基に結合するような条件下で、ポリエチレングリコール(例えば、PEGの、反応性エステルまたはアルデヒド誘導体)とこのポリペプチドを反応させる工程および(b)この反応生成物を得る工程。公知のパラメータおよび所望の結果に基づいて、最適な反応条件またはアシル化反応を選択することは当業者に容易である。
ペグ化された本発明において使用されるポリペプチドは、一般に、本明細書中に記載のポリペプチドを投与することによって、緩和または調節され得る状態を処置するために使用され得るが、しかし、本明細書中で開示された、化学誘導体化された本発明において使用されるポリペプチド分子は、それらの非誘導体分子と比較して、さらなる活性、増大された生物活性もしくは減少した生物活性、または他の特徴(例えば、増大された半減期または減少した半減期)を有し得る。本発明において使用されるポリペプチド、それらのフラグメント、改変体および誘導体は、単独で、併用して、または他の薬学的組成物を組み合わせて使用され得る。これらのサイトカイン、増殖因子、抗原、抗炎症剤および/または化学療法剤は、徴候を処置するのに適切である。
同様に、「ポリヌクレオチドアナログ」、「核酸アナログ」は、ポリヌクレオチドまたは核酸とは異なる化合物であるが、ポリヌクレオチドまたは核酸と少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ポリヌクレオチドアナログまたは核酸アナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のヌクレオチドアナログまたはヌクレオチド誘導体が付加または置換されているものが含まれる。
本明細書において使用される核酸分子は、発現されるポリペプチドが天然型のポリペプチドと実質的に同一の活性を有する限り、上述のようにその核酸の配列の一部が欠失または他の塩基により置換されていてもよく、あるいは他の核酸配列が一部挿入されていてもよい。あるいは、5’末端および/または3’末端に他の核酸が結合していてもよい。また、ポリペプチドをコードする遺伝子をストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、そのポリペプチドと実質的に同一の機能を有するポリペプチドをコードする核酸分子でもよい。このような遺伝子は、当該分野において公知であり、本発明において利用することができる。
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、ホルモン、サイトカインの情報伝達機能など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional Genomics,Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRLPress;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.etal.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I996).Bioconjugate Techniques,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
(遺伝子工学)
本発明において用いられるアクチビンなどならびにそのフラグメントおよび改変体は、遺伝子工学技術を用いて生産することができる。
本明細書において遺伝子について言及する場合、「ベクター」または「組み換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。そのようなベクターとしては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体などの宿主細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明において使用されるポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。ベクターのうち、クローニングに適したベクターを「クローニングベクター」という。そのようなクローニングベクターは通常、制限酵素部位を複数含むマルチプルクローニング部位を含む。そのような制限酵素部位およびマルチプルクローニング部位は、当該分野において周知であり、当業者は、目的に合わせて適宜選択して使用することができる。そのような技術は、本明細書に記載される文献(例えば、Sambrookら、前出)に記載されている。好ましいベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド、エピソーム、ウイルス粒子またはウイルスおよび組み込み可能なDNAフラグメント(すなわち、相同組換えによって宿主ゲノム中に組み込み可能なフラグメント)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいウイルス粒子としては、アデノウイルス、バキュロウイルス、パルボウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノ随伴ウイルス、セムリキ森林ウイルス、ワクシニアウイルスおよびレトロウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
ベクターの1つの型は、「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントが連結され得る環状二重鎖DNAループをいう。別の型のベクターは、ウイルスベクターであり、ここで、さらなるDNAセグメントは、ウイルスゲノム中に連結され得る。特定のベクター(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)は、これらが導入される宿主細胞中で自律的に複製し得る。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞中への導入の際に宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、これらが作動可能に連結される遺伝子の発現を指向し得る。このようなベクターは、本明細書中で、「発現ベクター」といわれる。
従って、本明細書において「発現ベクター」とは、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子のような選択マーカーおよび、エンハンサーを含み得る。生物(例えば、動物)の発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
本発明において用いられ得る原核細胞に対する「組み換えベクター」としては、pcDNA3(+)、pBluescript−SK(+/−)、pGEM−T、pEF−BOS、pEGFP、pHAT、pUC18、pFT−DESTTM42GATEWAY(Invitrogen)などが例示される。
本発明において用いられ得る動物細胞に対する「組み換えベクター」としては、pcDNAI/Amp、pcDNAI、pCDM8(いずれもフナコシより市販)、pAGE107[特開平3−229(Invitrogen)、pAGE103[J.Biochem.,101,1307(1987)]、pAMo、pAMoA[J.Biol.Chem.,268,22782−22787(1993)]、マウス幹細胞ウイルス(Murine Stem Cell Virus)(MSCV)に基づいたレトロウイルス型発現ベクター、pEF−BOS、pEGFPなどが例示される。
本明細書において「ターミネーター」は、遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、ポリA配列の付加に関与する配列である。ターミネーターは、mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。
本明細書において「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、通常RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。したがって、本明細書においてある遺伝子のプロモーターの働きを有する部分を「プロモーター部分」という。プロモーターの領域は、通常、推定タンパク質コード領域の第1エキソンの上流約2kbp以内の領域であることが多いので、DNA解析用ソフトウエアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領域を予測すれば、プロモータ領域を推定することはできる。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。好ましくは、推定プロモーター領域は、第一エキソン翻訳開始点から上流約2kbp以内に存在する。
本明細書において「複製起点」とは、DNA複製が開始する染色体上の特定領域をいう。複製起点は、内因性起点を含むようにそのベクターを構築することによって提供され得るか、または宿主細胞の染色体複製機構により提供され得るかのいずれかであり得る。そのベクターが、宿主細胞染色体中に組み込まれる場合、後者が十分であり得る。あるいは、ウイルス複製起点を含むベクターを使用するよりも、当業者は、選択マーカーと本発明のDNAとを同時形質転換する方法によって、哺乳動物細胞を形質転換し得る。適切な選択マーカーの例は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)またはチミジンキナーゼである(米国特許第4,399,216号を参照)。
例えば、組織特異的調節エレメントを使用して核酸を発現することによって、組換え哺乳動物発現ベクターでは、特定の細胞型において核酸の発現を優先的に指向し得る。組織特異的調節エレメントは、当該分野で公知である。適切な組織特異的プロモーターの非限定的な例としては、発生的に調節されたプロモーター(例えば、マウスhoxプロモーター(KesselおよびGruss(1990)Science 249,374−379)およびα−フェトプロテインプロモーター(CampesおよびTilghman(1989)Genes Dev.3,537−546))、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkertら(1987)Genes Dev.1,268−277)、リンパ特異的プロモーター(CalameおよびEaton(1988)Adv.Immunol.43,235−275)、特にT細胞レセプター(WinotoおよびBaltimore(1989)EMBO J.8,729−733)および免疫グロブリン(Banerjiら(1983)Cell 33,729−740;QueenおよびBaltimore(1983)Cell 33,741−748)のプロモーター、ニューロン特異的プロモーター(例えば、神経線維プロモーター;ByrneおよびRuddle(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,5473−5477)、すい臓特異的プロモーター(Edlundら(1985)Science 230,912−916)、および乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州出願公開番号264,166)が挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「エンハンサー」とは、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられる配列をいう。そのようなエンハンサーは当該分野において周知である。エンハンサーは複数個用いられ得るが1個用いられてもよいし、用いなくともよい。
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
本明細書において、核酸分子を細胞に導入する技術は、どのような技術でもよく、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.およびその第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
また、ベクターの導入方法としては、細胞にDNAを導入する上述のような方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、形質転換など(例えば、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法など)が挙げられる。
本明細書において「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部をいう。形質転換体としては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞などが例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれる。本発明において用いられる細胞は、形質転換体であってもよい。
本発明において遺伝子操作などにおいて原核生物細胞が使用される場合、原核生物細胞としては、Escherichia属、Serratia属、Bacillus属、Brevibacterium属、Corynebacterium属、Microbacterium属、Pseudomonas属などに属する原核生物細胞、例えば、Escherichia coli XL1−Blue、Escherichia coli XL2−Blue、Escherichia coli DH1が例示される。
本明細書において使用される場合、動物細胞としては、マウス・ミエローマ細胞、ラット・ミエローマ細胞、マウス・ハイブリドーマ細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、BHK細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞、ヒト白血病細胞、HBT5637(特開昭63−299)、ヒト結腸癌細胞株などを挙げることができる。マウス・ミエローマ細胞としては、ps20、NSOなど、ラット・ミエローマ細胞としてはYB2/0など、ヒト胎児腎臓細胞としてはHEK293(ATCC:CRL−1573)など、ヒト白血病細胞としてはBALL−1など、アフリカミドリザル腎臓細胞としてはCOS−1、COS−7、ヒト結腸癌細胞株としてはHCT−15、ヒト神経芽細胞腫SK−N−SH、SK−N−SH−5Y、マウス神経芽細胞腫Neuro2Aなどが例示される。
本明細書において使用される場合、組換えベクターの導入方法としては、DNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法[Methods.Enzymol.,194,182(1990)]、リポフェクション法、スフェロプラスト法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,1929(1978)]、酢酸リチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)記載の方法などが例示される。
(ポリペプチドの製造方法)
本発明において使用されるポリペプチド(例えば、アクチビン、LIFまたはその改変体もしくはフラグメントなど)をコードするDNAを組み込んだ組換え体ベクターを保有する微生物、動物細胞などに由来する形質転換体を、通常の培養方法に従って培養し、本発明において使用されるポリペプチドを生成蓄積させ、本発明の培養物より本発明において使用されるポリペプチドを採取することにより、本発明に係るポリペプチドを製造することができる。
本発明の形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。大腸菌等の原核生物あるいは酵母等の真核生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、本発明の生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、それぞれの微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類を用いることができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機酸または有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素物質、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を用いることができる。
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行う。
培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常5時間〜7日間である。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。また培養中必要に応じて、アンピシリンまたはテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。遺伝子を導入した細胞または器官は、ジャーファーメンターを用いて大量培養することができる。
例えば、動物細胞を用いる場合、本発明の細胞を培養する培地は、一般に使用されているRPMI1640培地(The Journal of the American Medical Association,199,519(1967))、EagleのMEM培地(Science,122,501(1952))、DMEM培地(Virology,8,396(1959))、199培地(Proceedings of the Society for the Biological Medicine,73,1(1950))またはこれら培地にウシ胎児血清等を添加した培地等が用いられる。
培養は、通常pH6〜8、25〜40℃、5%CO存在下等の条件下で1〜7日間行う。また培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
本発明において使用される発明のポリペプチドをコードする核酸配列で形質転換された形質転換体の培養物から、本発明において使用されるポリペプチドを単離または精製するためには、当該分野で周知慣用の通常の酵素の単離または精製法を用いることができる。例えば、本発明のポリペプチドが本発明のポリペプチド製造用形質転換体の細胞外に本発明のポリペプチドが分泌される場合には、その培養物を遠心分離等の手法により処理し、可溶性画分を取得する。その可溶性画分から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION HPA−75(三菱化学)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用い、精製標品を得ることができる。
本発明において使用されるポリペプチド(例えば、アクチビン、LIFまたはその改変体もしくはフラグメントなど)が本発明において使用されるポリペプチド製造用形質転換体の細胞内に溶解状態で蓄積する場合には、培養物を遠心分離することにより、培養物中の細胞を集め、その細胞を洗浄した後に、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモジナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。その無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION HPA−75(三菱化学)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用いることによって、精製標品を得ることができる。
本発明において使用されるポリペプチドが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈澱画分より、通常の方法により本発明において使用されるポリペプチドを回収後、そのポリペプチドの不溶体をポリペプチド変性剤で可溶化する。この可溶化液を、ポリペプチド変性剤を含まないあるいはポリペプチド変性剤の濃度がポリペプチドが変性しない程度に希薄な溶液に希釈、あるいは透析し、本発明において使用されるポリペプチドを正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得ることができる。
また、通常のタンパク質の精製方法[J.Evan.Sadlerら:Methods in Enzymology,83,458]に準じて精製できる。また、本発明において使用されるポリペプチドを他のタンパク質との融合タンパク質として生産し、融合したタンパク質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを利用して精製することもできる[山川彰夫,実験医学(Experimental Medicine),13,469−474(1995)]。例えば、Loweらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227−8231(1989)、GenesDevelop.,4,1288(1990)]に記載の方法に準じて、本発明において使用されるポリペプチドをプロテインAとの融合タンパク質として生産し、イムノグロブリンGを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
また、本発明において使用されるポリペプチドをFLAGペプチドとの融合タンパク質として生産し、抗FLAG抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,4,1288(1990)]。このような融合タンパク質では、発現ベクターにおいて、タンパク質分解切断部位は、融合タンパク質の精製に続いて、融合部分からの組換えタンパク質の分離を可能にするために、融合部分と組換えタンパク質との接合部に導入される。このような酵素およびこれらの同族の認識配列は、第Xa因子、トロンビン、およびエンテロキナーゼを含む。代表的な融合発現ベクターとしては、それぞれ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAを標的組換えタンパク質に融合する、pGEX(Pharmacia Biotech;SmithおよびJohnson(1988)Gene 67,31〜40)、pMAL(New England Biolabs,Beverly,Mass.)およびpRIT5(Pharmacia,Piscataway,N.J.)が挙げられる。
さらに、本発明において使用されるポリペプチド自身に対する抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーで精製することもできる。本発明において使用されるポリペプチドは、公知の方法[J.Biomolecular NMR,6,129−134、Science,242,1162−1164、J.Biochem.,110,166−168(1991)]に準じて、in vitro転写・翻訳系を用いてを生産することができる。
本発明において使用されるポリペプチドは、そのアミノ酸情報を基に、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、Advanced ChemTech、Applied Biosystems、Pharmacia Biotech、Protein Technology Instrument、Synthecell−Vega、PerSeptive、島津製作所等のペプチド合成機を利用し化学合成することもできる。
精製した本発明において使用されるポリペプチドの構造解析は、タンパク質化学で通常用いられる方法、例えば遺伝子クローニングのためのタンパク質構造解析(平野久著、東京化学同人発行、1993年)に記載の方法により実施可能である。本発明において使用されるポリペプチドの生理活性は、公知の測定法に準じて測定することができる。
本発明において使用されるポリペプチド(例えば、アクチビン、LIFなど)のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加(融合を含む)は、周知技術である部位特異的変異誘発法により実施することができる。かかる1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38,JohnWiley & Sons(1987−1997)、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci USA,82,488(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,81,5662(1984)、Science,224,1431(1984)、PCT WO85/00817(1985)、Nature,316,601(1985)等に記載の方法に準じて調製することができる。
(細胞培養)
当該分野において公知の広範な培地処方物の、中胚葉系細胞分化に関する細胞培養特性は、本明細書中において開示されるBENI、アクチビンまたはその等価物の添加量の調節によって劇的に変化することが見出された。
多くの培地処方物が、幾年もの間開発され、所定の培養された細胞または細胞株についての細胞増殖、細胞生存能、および/または生物製剤産生を最大限にしてきた。これらの培地組成物は、例えば、培地に添加される成長因子、抗生物質、およびアミノ酸補充物の数、タイプ、および濃度が相互に異なり、そしてプロテアーゼインヒビターのような成分、および特に細胞が懸濁内で増殖される場合には、1つまたはそれ以上の消泡剤(anti−foarmingagent)を含む。他の個性化された成分は、組換えタンパク質産生を増強する添加物を包含する。例えば、宿主細胞が、組換えタンパク質の遺伝子増幅のために開発された場合、選択マーカーDHFR(ジヒドロ葉酸レダクターゼ)は、代表的には、選択マーカーとしてトランスフェクトされた宿主の一部を構成し、そしてメトトレキセートは培養培地に含まれる。インスリンまたは他の成長因子、例えば、IGFのようにエネルギー源カスケードの役割を果たす因子はまた、しばしば含有されて細胞増殖を増強する。
本明細書中において開示されるBENI、アクチビンまたはその等価物は、種々の培地処方物に対して、ならびに標準的な処方物中において、効果を有することが期待される。
例えば、すべての無血清培地処方物は、細胞増殖を可能にする必須成分を含み、(1)エネルギー源、代表的にはグルコースまたはグルタミン、あるいは他の糖、例えば、フククトース、ガラクトース、マンノースなど;(2)窒素源(典型的には1つまたはそれ以上のアミノ酸の包含により得られる);および(3)ビタミン(酵素反応における補因子)を含む。また、Na、K、Ca2+、Mg2+、Cl、HPO 2−などを含む広範な無機塩、ならびに脂肪酸(好ましくは結合物)、コレステロール、リン脂質、およびそれらの前駆体を含む広範な脂肪および脂溶性成分も必須である。標準的な無血清培地処方物の成分は表1に挙げられる。これには、GrandIslandBiologicalCo.(GIBCO),GrandIsland,N.Y.のような培地製造者から得られる「DMEM/F−12」に見出される成分が含まれる。動物細胞培養培地の検討については、MizrahiおよびLazar、Cytotechnology,1:199−214(1988)を参照のこと。昆虫細胞培養についての培地の考察は、Goodwin,R.H.(1990)Nature347:209−210に開示されている。ハイブリドーマの培養について個性化された、規定された無血清培地の例が、Kovar,J.(1987)FoliaBiologia33:377−384により記載されている。Imagawaら(1989)PNAS86:4122−4126は、マウス乳房上皮細胞における細胞増殖を最大にするように開発された培地について記載し、そしてMiyazakiら(1991)Res.Exp.Med.191:77−83は、ラット肝細胞の生存能をインビトロで増強するように培地について記載する。
本明細書において「栄養培地」とは、天然培地、半合成培地、合成培地、固形培地、半固形培地、液体培地などが挙げられるが、未分化細胞を、自己を含めた増殖、分化、成熟または保存させるために用いられるものであり、通常、細胞培養に用いられるようなものであれば如何なる培地であってもよい。例を挙げると、たとえばSteinberg培地、α−MEM培地、RPMI−1640培地またはMEM基本培地などが挙げることができる。基本成分としてナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、アミノ酸、ビタミン、ホルモン、抗生物質、脂肪酸、糖または目的に応じてその他の化学成分もしくは血清のような生体成分を含有することもできる。
培地成分は代表的には任意の順序で添加され得、そして最終的な組合せは、標準的な方法、例えば、濾過滅菌により滅菌され得る。
本発明の培地を利用して、広範な細胞(脊椎動物および無脊椎動物の両方)の幹細胞を所望の方向に分化させ得る。本発明の培地を用いて、多くの異なる細胞培養系における細胞培養特性を改善し得る。
動物の場合は、通常動物細胞の培養で用いられるイスコフ培地、RPMI培地、ダルベッコMEM培地、MEM培地、F12培地等の血清を含まない培地を用いることができる。また、公知文献等により、細胞の増殖および維持に有効であることが知られている血清以外の因子、たとえば脂質および脂肪酸源、コレステロール、ピルビン酸塩、グルココルチコイド、DNAおよびRNA合成ヌクレオシド等を添加してもよい。
本明細書において「培養容器」とは、所望の細胞、例えば、未分化細胞を増殖させるときに用いる容器のことであり、必要に応じてストローマ細胞などのフィーダー細胞が維持・生存でき、未分化細胞が維持・生存・分化・成熟・自己複製するのに何ら阻害するものでなければ如何なる素材、形状のものを用いてもよい。具体的には培養容器の素材としてはガラス、合成樹脂、天然樹脂、金属、プラスチックなどが挙げられ、形状としては具体的には三角柱、立方体、直方体などの多角柱、三角錐、四角錐などの多角錘、ひょうたんのような任意の形状、球形、半球形、円柱(底面が円形、楕円形または半円形等を含む)などを挙げることができ、また例えば半球形から球形のように培養中に必要に応じて形状を変化させてもよい。培養は開放条件下であってもよいし、閉鎖(密閉)条件下であってもよい。
本発明における細胞培養法は、マトリクスコーティングが異なる培養皿、またはマトリクスコーティングの有無が異なる培養皿を用いた二次元培養法、マトリジェル等のソフトゲルおよびコラーゲンスポンジ等を用いた三次元培養法、またはそれらを併用する方法が挙げられるが、好ましくは、マトリクスコーティングが異なる培養皿、またはマトリクスコーティングの有無が異なる培養皿を用いた二次元培養法であり、例えば、ゼラチンコーティング培養皿、I型コラーゲンコーティング培養皿またはラミニンコーティング培養皿のうち2つを用いる二次元培養法である。また、多分化能を有する細胞として、ヒト由来の細胞を用いる場合は、I型コラーゲンコーティング培養皿を用いるのが好ましい。
本発明の方法の培養条件は、実施例などの特定の条件に限定されるものではなく、一般的に許容される条件を取りうる。例えば、分化誘導開始時の細胞数としては、5.0x10〜5.0x10細胞/培養皿の範囲を例示できる。また、分化誘導期間としては、例えば、2〜10日間(好ましくは5日間)、あるいは1〜4日間(好ましくは2日間)、前培養工程では2〜5日間(好ましくは3日間)である。また、ヒト間葉系細胞の場合、分化誘導期間としては、12〜21日間(好ましくは14日間)である。
培養するにあたり、温度、浸透圧、光などの物理的環境条件、酸素、炭酸ガス、pH、酸化還元電位などの化学的環境条件としては死滅処理前の未分化細胞および分化後の細胞が維持・生存でき、未分化細胞が維持・生存・分化・成熟・自己複製するのに何ら阻害するものでなければ如何なる環境条件であってもよい。好ましい条件を以下に示す。
温度については具体的には、30℃〜40℃であり、好ましくは37℃である。浸透圧については具体的には生理条件における浸透圧であり、好ましくは生理食塩水と等しい浸透圧である。
光は暗室ほどの暗い条件であってもよいし、晴天時の外の明るさほどに明るくてもよい。
酸素濃度としては具体的には培養系が気相中の酸素濃度が10%の気相と接触している状態での溶存酸素濃度〜気相中の酸素濃度が30%の気相と接触している状態での酸素濃度であってもよく、好ましくは気相中の酸素濃度が20%の気相と接触している状態での溶存酸素濃度の気相と接触している状態での酸素濃度である。
培養系において一般的にpHをコントロールするためのpHとして具体的にはpH6.0〜pH8.0であり、好ましくは生理条件と同等のpHである。pHをコントロールする為には二酸化炭素を用いてもよいし、他のいかなる緩衝液を用いてもよい。炭酸ガスの濃度としては具体的には培養系が5%の気相と接触している状態での溶存炭酸ガス濃度である。
本明細書において「コロニー」とは、固型培地で1個の細胞から出発してできた可視的な集塊をいう。
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、試薬、粒子など)が提供されるユニットをいう。混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、試薬、粒子など)をどのように処理すべきかを記載する説明書を備えていることが有利である。このような説明書は、どのような媒体であってもよく、例えば、そのような媒体としては、紙媒体、伝送媒体、記録媒体などが挙げられるがそれらに限定されない。伝送媒体としては、例えば、インターネット、イントラネット、エクストラネット、LANなどが挙げられるがそれらに限定されない。記録媒体としては、CD−ROM、CD−R、フレキシブルディスク、DVD−ROM、MD、ミニディスク、MO、メモリースティックなどが挙げられるがそれらに限定されない。
(スクリーニング)
本明細書において「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ生物または物質などの標的を、特定の操作/評価方法で多数を含む集団の中から選抜することをいう。スクリーニングのために、本発明の因子(例えば、抗体)、ポリペプチドまたは核酸分子を使用することができる。スクリーニングは、インビトロ、インビボなど実在物質を用いた系を使用してもよく、インシリコ(コンピュータを用いた系)の系を用いて生成されたライブラリーを用いてもよい。本発明では、所望の活性を有するスクリーニングによって得られた化合物もまた、本発明の範囲内に包含されることが理解される。また本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュータモデリングによる薬物が提供されることも企図される。
1実施形態において、本発明は、本発明のタンパク質(BENIまたはアクチビン)、あるいはその生物学的に活性な部分に結合するか、またはこれらの活性を調節する、候補化合物もしくは試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。本発明の試験化合物は、当該分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法における多数のアプローチの任意のものを使用して得られ得、これには、以下が挙げられる:生物学的ライブラリー;空間的にアクセス可能な平行固相もしくは溶液相ライブラリー;逆重畳を要する合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法。生物学的ライブラリーアプローチはペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマーもしくは化合物の低分子ライブラリーに適用可能である(Lam(1997)Anticancer Drug Des.12:145)。
分子ライブラリーの合成のための方法の例は、当該分野において、例えば以下に見出され得る:DeWittら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6909;Erbら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422;Zuckermannら(1994)J.Med.Chem 37:2678;Choら(1993)Science 261:1303;Carrellら(1994)Angew Chem.Int.Ed.Engl.33:2059;Carellら(1994)Angew Chem.Int.Ed.Engl.33:2061;およびGallopら(1994)J.Med.Chem 37:1233。
化合物のライブラリーは、溶液中で(例えば、Houghten(1992)BioTechniques 13:412〜421)、あるいはビーズ上(Lam(1991)Nature 354:82〜84)、チップ上(Fodor(1993)Nature 364:555〜556)、細菌(Ladner 米国特許第5,223,409号)、胞子(Ladner、上記)、プラスミド(Cullら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865〜1869)またはファージ上(ScottおよびSmith(1990)Science 249:386〜390;Devlin(1990)Science 249:404〜406;Cwirlaら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:6378〜6382;Felici(1991)J Mol Biol 222:301〜310;Ladner上記)において示され得る。
(疾患)
1つの局面において、本発明は、中胚葉異常の障害に関する任意の疾患、障害または異常状態、例えば、筋肉系・結合組織・骨格系・循環系・排出系・生殖系の疾患などの関連疾患、障害または異常状態を処置するための方法を提供する。より特定すると、中胚葉異常の障害に関する任意の疾患、障害または異常状態は、中胚葉分化に関連する任意の疾患、障害または(異常または正常な)状態である。
本明細書において「中胚葉に関連する状態」とは、上記中胚葉(筋肉系・結合組織・骨格系・循環系・排出系・生殖系など)の状態に関連する状態(障害、疾患など)を指す。本明細書においてそれに関連する障害、疾患を具体的に指すときは、「中胚葉に関連する障害」または「中胚葉に関連する疾患」ということがあり、中胚葉分化に関連する場合は、「中胚葉分化に関連する状態」等ということがある。
本明細書において「中胚葉に関連する障害」または「中胚葉に関連する疾患」としては、例えば、筋肉系・結合組織・骨格系・循環系・排出系・生殖系などの異常状態(たとえば、炎症、がんなど)を挙げることができ、より具体的には、筋肉球体症、筋肉骨化症、筋肉腫、筋肉不全症、結合組織炎、結合組織腫瘍、結合組織病、骨格異形成症、循環虚脱、循環血液量過多症、心筋炎、心筋虚血、心筋梗塞、心外膜炎、心室中隔欠損、心筋細胞融解、心筋症、心筋線維症、血管ジストロフィ、血管ヒアリン症、血管ミエリン障害、血管リンパ管腫、血管運動神経麻痺、狭心症、血管炎、血管芽細胞腫、血管筋脂肪腫、血管筋腫、血管筋障害、血管形成異常、血管形成不全症、血管結石、血管硬化症、腎アミロイドーシス、腎炎、腎芽細胞腫、腎機能不全、腎形成不全、腎ろう、腎結石、腎硬化症、腎腫、膀胱腎盂炎、膀胱性血尿、尿路感染症、尿路結石、尿道炎、尿道周囲炎、尿道神経症、尿道障害、卵巣炎、卵巣機能減退症、卵巣機能亢進症、卵巣甲状腺腫、卵巣静脈瘤、卵巣男性胚細胞腫、卵巣膿瘍、卵巣傍組織炎、子宮筋層炎、頚部リンパ管腫脹、子宮頚管炎、子宮頚内膜炎、子宮頚部形成異常、精巣陰嚢癒着、精巣炎、精巣過剰症、精巣腫瘍、精巣消失症、精巣鞘膜炎、精巣上体炎、精巣性発育不全、精巣精巣上体炎、前立腺炎、前立腺結石、前立腺症、前立腺肥大、前立腺腺腫などを挙げることができる。、「中胚葉分化に関連する状態」もまた、上記特定の障害および疾患における細胞、組織等の分化状態に関連することが理解される。
中胚葉異常関連の疾患としては、代表的なものとして、中胚葉型、肥満型、中胚葉性腎腫などがあげられる。
本明細書において「予防(する)」は、生物が病気にかかる(contract)かまたは異常な状態を発生する可能性を減少させることをいう。
本明細書において「処置(する)」は、治療効果を有すること、および生物における異常な状態を少なくとも部分的に軽減するかまたは抑止することをいう。
本明細書において「治療効果」は、異常な状態を引き起こすかまたはこれに寄与する阻害因子または活性化因子をいう。治療効果は、異常な状態の症状の1つ以上をある程度緩和する。異常な状態の処置に関して、治療効果とは、以下の1つ以上をいい得る:(a)細胞の増殖(proliferation)、増殖(growth)、および/または分化における増加;(b)細胞死の阻害(すなわち、遅らせることまたは停止させること);(c)変性の阻害;(d)異常な状態に関連する症状の1つ以上をある程度緩和する;および(e)罹患した細胞集団の機能を強化すること。異常な状態に対する効力を示す化合物は、本明細書中に記載されるように同定され得る。
本明細書において「異常な状態」は、生物におけるその正常な機能から逸脱する、生物の細胞または組織における機能をいう。異常な状態は、細胞増殖、細胞分化、細胞シグナル伝達、または細胞生存に関連し得る。異常な状態としてはまた、造血障害、肥満、網膜変性のような糖尿病合併症、ならびにグルコースの取り込みおよび代謝における不規則性、ならびに脂肪酸の取り込みおよび代謝における不規則性が挙げられ得る。
異常な細胞増殖状態としては、例えば、がん、新生物、腫瘍および炎症などが挙げられる。
異常な分化状態としては、例えば、奇形、がんなどが挙げられる。
異常な細胞シグナル伝達状態としては、例えば、異常な細胞分化が挙げられる。
異常な細胞生存状態はまた、アポトーシス(プログラム細胞死)経路が活性化されるかまたは抑止される状態に関連する。多数のタンパク質キナーゼが、アポトーシス経路に関連している。タンパク質キナーゼのいずれか1つの機能における異常は、細胞不死または未熟な細胞死を生じ得る。
別の局面において、本発明は、中胚葉異常関連疾患、障害または異常状態のある(罹患しているおそれのある)被験体または上記障害を有する被験体を処置する、予防的方法および治療的方法の両方を提供する。
本発明はまた、本発明の医薬の1つ以上の成分を満たした1つ以上の容器を備える薬学的パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が定めた形式の通知が、このような容器に任意に付属し得、この通知は、ヒトへの投与に対する製造、使用または販売に関する政府機関による承認を表す。
(遺伝子治療)
特定の実施形態において、本発明の正常な遺伝子の核酸配列、抗体またはその機能的誘導体をコードする配列を含む核酸は、本発明において使用されるポリペプチドの異常な発現および/または活性に関連した疾患または障害を処置、阻害または予防するために、遺伝子治療の目的で投与される。遺伝子治療とは、発現されたか、または発現可能な核酸の、被験体への投与により行われる治療をいう。本発明のこの実施形態において、核酸は、それらのコードされたタンパク質を産生し、そのタンパク質は治療効果を媒介する。
当該分野で利用可能な遺伝子治療のための任意の方法が、本発明に従って使用され得る。例示的な方法は、以下のとおりである。
遺伝子治療の方法の一般的な概説については、Goldspielら,Clinical Pharmacy 12:488−505(1993);WuおよびWu,Biotherapy 3:87−95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulligan,Science 260:926−932(1993);ならびにMorganおよびAnderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993);May,TIBTECH 11(5):155−215(1993)を参照のこと。遺伝子治療において使用される一般的に公知の組換えDNA技術は、Ausubelら(編),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993);およびKriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)に記載される。
したがって、本発明では、アクチビンまたはその改変体もしくはフラグメントなどをコードする核酸分子を用いた遺伝子治療が有用であり得る。
本明細書中で使用され、かつ、当該分野で理解されるように、用語「合成(synthesis)」または「合成する(synthesize)」とは、酵素的方法とは対照的に、純粋に化学的に生成された化学物質(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど)をいう。従って、「全体が」(globally)合成された化学物質(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど)は、その全体が化学的手段によって生成され、そして「部分的に」合成された化学物質(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど)は、その得られた化学物質(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど)の一部分のみが化学的手段によって生成された化学物質(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど)を包含する。
(アンチセンス・RNAi)
本明細書において「アンチセンス」とは、「アンチセンス分子」などといい、mRNAなどに対して相補的な塩基配列をもつRNAをいう。RNA分子に対して相補的塩基配列をもつRNAは,分子間結合を介してRNAの機能発現に阻害的に作用すると考えられる。アンチセンスRNAは任意の標的遺伝子に対して人工的かつ容易に作製することができるので,人為的な遺伝子発現制御の一つの手法としても利用されている。
本明細書において「RNAi」とは、RNA interferenceの略称で、二本鎖RNA(dsRNAともいう)のようなRNAiを引き起こす因子を細胞に導入することにより、相同なmRNAが特異的に分解され、遺伝子産物の合成が抑制される現象およびそれに用いられる技術をいう。本明細書においてRNAiはまた、場合によっては、RNAiを引き起こす因子と同義に用いられ得る。
本明細書において「RNAiを引き起こす因子」とは、RNAiを引き起こすことができるような任意の因子をいう。本明細書において「遺伝子」に対して「RNAiを引き起こす因子」とは、その遺伝子に関するRNAiを引き起こし、RNAiがもたらす効果(例えば、その遺伝子の発現抑制など)が達成されることをいう。そのようなRNAiを引き起こす因子としては、例えば、標的遺伝子の核酸配列の一部に対して少なくとも約70%の相同性を有する配列またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、少なくとも10ヌクレオチド長の二本鎖部分を含むRNAまたはその改変体が挙げられるがそれに限定されない。ここで、この因子は、好ましくは、3’突出末端を含み、より好ましくは、3’突出末端は、2ヌクレオチド長以上のDNA(例えば、2〜4ヌクレオチド長のDNA)であり得る。
理論に束縛されないが、RNAiが働く機構として考えられるものの一つとして、dsRNAのようなRNAiを引き起こす分子が細胞に導入されると、比較的長い(例えば、40塩基対以上)RNAの場合、ヘリカーゼドメインを持つダイサー(Dicer)と呼ばれるRNaseIII様のヌクレアーゼがATP存在下で、その分子を3’末端から約20塩基対ずつ切り出し、短鎖dsRNA(siRNAとも呼ばれる)を生じる。本明細書において「siRNA」とは、short interfering RNAの略称であり、人工的に化学合成されるかまたは生化学的に合成されたものか、あるいは生物体内で合成されたものか、あるいは約40塩基以上の二本鎖RNAが体内で分解されてできた10塩基対以上の短鎖二本鎖RNAをいい、通常、5’−リン酸、3’−OHの構造を有しており、3’末端は約2塩基突出している。このsiRNAに特異的なタンパク質が結合して、RISC(RNA−induced−silencing−complex)が形成される。この複合体は、siRNAと同じ配列を有するmRNAを認識して結合し、RNaseIII様の酵素活性によってsiRNAの中央部でmRNAを切断する。siRNAの配列と標的として切断するmRNAの配列の関係については、100%一致することが好ましい。しかし、siRNAの中央から外れた位置についての塩基の変異については、完全にRNAiによる切断活性がなくなるのではなく、部分的な活性が残存する。他方、siRNAの中央部の塩基の変異は影響が大きく、RNAiによるmRNAの切断活性が極度に低下する。このような性質を利用して、変異をもつmRNAについては、その変異を中央に配したsiRNAを合成し、細胞内に導入することで特異的に変異を含むmRNAだけを分解することができる。従って、本発明では、siRNAそのものを、RNAiを引き起こす因子として用いることができるし、siRNAを生成するような因子(例えば、代表的に約40塩基以上のdsRNA)をそのような因子として用いることができる。
また、理論に束縛されることを希望しないが、siRNAは、上記経路とは別に、siRNAのアンチセンス鎖がmRNAに結合してRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRP)のプライマーとして作用し、dsRNAが合成され、このdsRNAが再びダイサーの基質となり、新たなsiRNAを生じて作用を増幅することも企図される。従って、本発明では、siRNA自体およびsiRNAが生じるような因子もまた、有用である。実際に、昆虫などでは、例えば35分子のdsRNA分子が、1,000コピー以上ある細胞内のmRNAをほぼ完全に分解することから、siRNA自体およびsiRNAが生じるような因子が有用であることが理解される。
本発明においてsiRNAと呼ばれる、約20塩基前後(例えば、代表的には約21〜23塩基長)またはそれ未満の長さの二本鎖RNAを用いることができる。このようなsiRNAは、細胞に発現させることにより遺伝子発現を抑制し、そのsiRNAの標的となる病原遺伝子の発現を抑えることから、疾患の治療、予防、予後などに使用することができる。
本発明において用いられるsiRNAは、RNAiを引き起こすことができる限り、どのような形態を採っていてもよい。
別の実施形態において、本発明のRNAiを引き起こす因子は、3’末端に突出部を有する短いヘアピン構造(shRNA;short hairpin RNA)であり得る。本明細書において「shRNA」とは、一本鎖RNAで部分的に回文状の塩基配列を含むことにより、分子内で二本鎖構造をとり、ヘアピンのような構造となる約20塩基対以上の分子をいう。そのようなshRNAは、人工的に化学合成される。あるいは、そのようなshRNAは、センス鎖およびアンチセンス鎖のDNA配列を逆向きに連結したヘアピン構造のDNAをT7 RNAポリメラーゼによりインビトロでRNAを合成することによって生成することができる。理論に束縛されることは希望しないが、そのようなshRNAは、細胞内に導入された後、細胞内で約20塩基(代表的には例えば、21塩基、22塩基、23塩基)の長さに分解され、siRNAと同様にRNAiを引き起こし、本発明の処置効果があることが理解されるべきである。このような効果は、昆虫、植物、動物(哺乳動物を含む)など広汎な生物において発揮されることが理解されるべきである。このように、shRNAは、siRNAと同様にRNAiを引き起こすことから、本発明の有効成分として用いることができる。shRNAはまた、好ましくは、3’突出末端を有し得る。二本鎖部分の長さは特に限定されないが、好ましくは約10ヌクレオチド長以上、より好ましくは約20ヌクレオチド長以上であり得る。ここで、3’突出末端は、好ましくはDNAであり得、より好ましくは少なくとも2ヌクレオチド長以上のDNAであり得、さらに好ましくは2〜4ヌクレオチド長のDNAであり得る。
本発明において用いられるRNAiを引き起こす因子は、人工的に合成した(例えば、化学的または生化学的)ものでも、天然に存在するものでも用いることができ、この両者の間で本発明の効果に本質的な違いは生じない。化学的に合成したものでは、液体クロマトグラフィーなどにより精製をすることが好ましい。
本発明において用いられるRNAiを引き起こす因子は、インビトロで合成することもできる。この合成系において、T7 RNAポリメラーゼおよびT7プロモーターを用いて、鋳型DNAからアンチセンスおよびセンスのRNAを合成する。これらをインビトロでアニーリングした後、細胞に導入すると、上述のような機構を通じてRNAiが引き起こされ、本発明の効果が達成される。ここでは、例えば、リン酸カルシウム法でそのようなRNAを細胞内に導入することができる。
本発明のRNAiを引き起こす因子としてはまた、mRNAとハイブリダイズし得る一本鎖、あるいはそれらのすべての類似の核酸アナログのような因子も挙げられる。そのような因子もまた、本発明の処置方法および組成物において有用である。
以下により詳細なRNAiの設計方法の説明を記載する。
本発明において用いられるRNAiとしては、標的遺伝子の少なくとも一部の塩基配列と実質的に同一の配列を有するDNAとRNAからなる2本鎖ポリヌクレオチドを、細胞、組織、あるいは個体に導入することを特徴とする標的遺伝子の発現阻害方法を用いることができる。ここで、2本鎖ポリヌクレオチドが、自己相補性を有する1本鎖からなるものを用いることができる。あるいは、この2本鎖ポリヌクレオチドは、DNA鎖とRNA鎖のハイブリッドであってもよい。好ましくは、使用されるDNA鎖とRNA鎖のハイブリッドは、センス鎖がDNAで、アンチセンス鎖がRNAであり得る。あるいは、使用される2本鎖ポリヌクレオチドは、DNAとRNAのキメラであってもよい。1つの実施形態では、使用される2本鎖ポリヌクレオチドが、該ポリヌクレオチドのうち、少なくとも上流側の一部はRNAであってもよい。1つの実施形態では、使用されるヌクレオチドの上流側の一部は、9〜13ヌクレオチドからなり得る。
1つの実施形態では、使用される2本鎖ポリヌクレオチドは、19〜25ヌクレオチドからなり、該ポリヌクレオチドのうち、少なくとも上流約1/2がRNAであり得る。
RNAi技術では、標的遺伝子は、複数であってもよい。RNAi技術による標的遺伝子の発現阻害の結果、該細胞、組織、あるいは個体に現れる表現型の変化を解析することにより効果確認を行うことができる。
RNAi技術を用いれば、標的遺伝子の発現の阻害により、細胞、組織、あるいは個体に特定の性質を付与することができる。
RNAi法におけるRNAの機能部位は、以下の工程を包含する方法により同定することができる:(i)標的遺伝子の少なくとも一部の塩基配列と実質的に同一の配列を有する2本鎖ポリヌクレオチドであってDNAとRNAのキメラからなるものを作製し、(ii)該2本鎖ポリヌクレオチドを細胞、組織、あるいは個体に導入し、(iii)該細胞、組織、あるいは個体中の標的遺伝子の発現阻害度を測定し、(iv)標的遺伝子の発現阻害にRNAであることが必要とされる配列を特定すること。この方法では、使用される2本鎖ポリヌクレオチドが、その2本鎖のどちらか一方がRNA鎖であってもよい。
本明細書においてRNAi技術で使用される「標的遺伝子」とは、これを導入する細胞、組織、あるいは個体(以下これを「被導入体」と称することがある)に mRNA、および任意にタンパク質を産出するように翻訳され得るものであれば如何なるものであってもよい。具体的には、導入する対象物の内在性のものでも、 また外来性のものでもよい。また、染色体上に存在する遺伝子でも、染色体外のものでもよい。外来性のものとしては、例えば、被導入体に感染可能なウィルス、細菌、真菌または原生動物のような病原体由来のもの等が挙げられる。その機能については、既知のものでも、未知のものでもよく、また、他生物の細胞内では機能が既知であるが、被導入体内では機能が未知のもの等でもよい。
これらの遺伝子の少なくとも一部の塩基配列と実質的に同一の配列を有するDNAとRNAからなる二本鎖ポリヌクレオチド(以下、これを「二本鎖ポリヌクレオチド」と称することがある)とは、標的遺伝子の塩基配列のうち、いずれの部分でもよい20ヌクレオチド以上の配列と実質的に同一な配列からなるものである。ここで、実質的に同一とは、標的遺伝子の配列と50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上の相同性を有することを意味する。ヌクレオチドの鎖長は19ヌクレオチドから標的遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の全長までの如何なる長さでもよいが、19〜500ヌクレオチドの鎖長を有するものが好ましく用いられる。ただし、哺乳類動物由来の細胞においては、30ヌクレオチド以上の鎖長を有する二本鎖RNAに反応して活性化するシグナル伝達系の存在が知られている。これはインターフェロン反応と呼ばれており(Mareus,P.I.,et al.,Interferon,5,115−180(1983))、該二本鎖RNAが細胞内に侵入すると、PKR(dsRNA−responsive protein kinase: Bass,B.L.,Nature,411,428−429(2001))を介して多くの遺伝子の翻訳開始が非特異的に阻害され、それと同時に2’、5’oligoadenylate synthetase(Bass,B.L.,Nature,411,428−429(2001))を介してRNaseLの活性化が起こり、細胞内のRNAの非特異的な分解が惹起される。これらの非特異的な反応のために、標的遺伝子の特異的反応が隠蔽されてしまう。従って哺乳類動物、または該動物由来の細胞、あるいは組織を被導入体として用いる場合には19〜25、好ましくは19〜23、さらに好ましくは19〜21ヌクレオチドからなる二本鎖ポリヌクレオチドが用いられる。本発明の二本鎖ポリヌクレオチドは、その全体が2本鎖である必要はなく、5’、または3’末端が一部突出したものも含み、その突出末端は1〜5ヌクレオチド、好ましくは1〜3ヌクレオチド、さらに好ましくは2ヌクレオチドである。また、最も好ましい例としては、各ポリヌクレオチド鎖の3’末端が2ヌクレオチドずつ突出している構造を有するものが挙げられる。二本鎖ポリヌクレオチドは、相補性を有する部分が二本鎖となっているポリヌクレオチドを意味するが、自己相補正を有する1本鎖ポリヌクレオチドが自己アニーリングしたものでもよい。自己相補正を有する1本鎖ポリヌクレオチドとしては、例えば、逆方向反復配列を有するもの等が挙げられる。
さらに、DNAとRNAの混合については、DNA鎖とRNA鎖のハイブリッド型や、DNAとRNAのキメラ型等が用いられる。DNA鎖とRNA鎖のハイブリッドは、それを被導入体に導入した際に、標的遺伝子の発現が阻害される活性を有するものである限り如何なるものであってもよいが、好ましくは、センス鎖がDNAであり、アンチセンス鎖がRNAであるものが用いられる。また、DNAとRNAのキメラ型では、それを被導入体に導入した際に、標的遺伝子の発現が阻害される活性を有するものである限り如何なるものであってもよい。二本鎖ポリヌクレオチドの安定性を高めるためにはDNAをできるだけ多く含むことが好ましいが、本発明のキメラ型二本鎖ポリヌクレオチドのうち、RNAであることが標的遺伝子の発現阻害に必要な配列については、後述する標的遺伝子の発現阻害度の解析を行いながら発現阻害の起こる範囲で適宜決定していくことが望ましい。これにより、RNAi法におけるRNAの機能部位を同定することもできる。このように決定されたキメラ型の好ましい例としては、例えば、二本鎖ポリヌクレオチドの上流側の一部がRNAであるものが挙げられる。ここで、上流側とは、センス鎖の5’側およびアンチセンス鎖の3’側を意味する。上流側の一部とは、上記二本鎖ポリヌクレオチドの上流の末端から9〜13ヌクレオチドの部分が好ましく挙げられる。また、このようなキメラ型二本鎖ポリヌクレオチドとして好ましい例としては、ポリヌクレオチドの鎖長がそれぞれ19〜21ポリヌクレオチドからなり、該ポリヌクレオチドのうち、少なくとも上流側1/2がRNAで、それ以外がDNAである二本鎖ポリヌクレオチドが挙げられる。また、このような二本鎖ポリヌクレオチドのうち、アンチセンス鎖が全てRNAのものは標的遺伝子の発現阻害効果がさらに高い。
二本鎖ポリヌクレオチドの調製方法としては、特に制限はないが、それ自体既知の化学合成方法を用いることが好ましい。化学合成は、相補性を有する1本鎖ポリヌクレオチドを別個に合成し、これを適当な方法で会合させることにより二本鎖とすることができる。会合の方法として具体的には、例えば、合成した1本鎖ポリヌクレオチドを好ましくは少なくとも約3:7のモル比で、より好ましくは約4:6のモル比で、そして最も好ましくは本質的に同モル量(すなわち約5:5のモル比)で混合し、二本鎖が解離する温度にまで加熱し、その後徐々に冷却する方法等が挙げられる。会合した二本鎖ポリヌクレオチドは、必要に応じてそれ自体公知の通常用いられる方法により精製される。精製方法としては、例えばアガロースゲル等を用いて確認し、任意に残存する1本鎖ポリヌクレオチドを適当な酵素により分解する等して除去する方法を用いることができる。また、自己相補正を有する1本鎖ポリヌクレオチドとして、逆方向反復配列を有するものを調製する場合には、該ポリヌクレオチドを化学合成等の方法で作製した後に上記と同様の方法で自己相補性を有する配列を会合させることにより調製する。
二本鎖ポリヌクレオチドの細胞、組織、あるいは個体への導入、および標的遺伝子の発現阻害を説明する。 このようにして調製した二本鎖ポリヌクレオチドを導入する被導入体としては、標的遺伝子がその細胞内でRNAに転写、またはタンパク質に翻訳され得るものであれば如何なるものであってもよい。具体的には、本発明で用いる被導入体は、細胞、組織、あるいは個体を意味する。本発明に用いられる細胞としては、生殖系列細胞、体性細胞、分化全能細胞、多分化能細胞、分割細胞、非分割細胞、実質組織細胞、上皮細胞、不滅化細胞、または形質転換細胞等何れのものであってもよい。具体的には、例えば、幹細胞のような未分化細胞、器官または組織由来の細胞あるいはその分化細胞等が挙げられる。組織としては、単一細胞胚または構成性細胞、または多重細胞胚、胎児組織等を含む。また、上記分化細胞としては、例えば、脂肪細胞、繊維芽細胞、筋細胞、心筋細胞、内皮細胞、神経細胞、グリア、血液細胞、巨核球、リンパ球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、白血球、顆粒球、ケラチン生成細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、肝細胞および内分泌線または外分泌腺の細胞等が挙げられる。このような細胞の具体例としては、CHO−KI細胞(RIKEN Cell bank)、ショウジョウバエS2細胞(Schneider,I.,et al.,J.Embryol.Exp.Morph.,27,353−365(1972))、ヒトHeLa細胞(ATCC:CCL−2)、あるいはヒトHEK293細胞(ATCC:CRL−1573)等が好ましく用いられる。さらに、本発明で被導入体として用いられる個体として、具体的には、植物、動物、原生動物、ウイルス、細菌、または真菌種に属するもの等が挙げられる。植物は単子葉植物、双子葉植物または裸子植物であってよく、動物は、脊椎動物または無脊椎動物であってよい。本発明の被導入体として好ましい微生物は、農業で、または工業によって使用されるものであり、そして植物または動物に対して病原性のものである。真菌には、カビおよび酵母形態両方での生物体が含まれる。脊椎動物の例には、魚類、ウシ、ヤギ、ブタ、ヒツジ、ハムスター、マウス、ラット、サルおよびヒトを含む哺乳動物が含まれ、無脊椎動物には、線虫類および他の虫類、キイロショウジョウバエ(Drosophila)、および他の昆虫が含まれる。上記培養細胞として、具体的には、例えば、CHO−KI細胞(RIKEN Cell bank)、ショウジョウバエS2細胞(Schneider,I.,et al.,J.Embryol.Exp.Morph.,27,353−365(1972))、ヒトHeLa細胞(ATCC:CCL−2)、あるいはヒトHEK293細胞(ATCC:CRL−1573)等が好ましく用いられる。
被導入体への二本鎖ポリヌクレオチドの導入法としては、被導入体が細胞、あるいは組織の場合は、カルシウムフォスフェート法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、ウイルス感染、二本鎖ポリヌクレオチド溶液への浸漬、あるいは形質転換法等が用いられる。また、胚に導入する方法としては、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション法、あるいはウィスル感染等が挙げられる。被導入体が植物の場合には、植物体の体腔または間質細胞等への注入または灌流、あるいは噴霧による方法が用いられる。また、動物個体の場合には、経口、局所、(皮下、筋肉内および静脈内投与を含む)非経口、経膣、経直腸、経鼻、経眼、腹膜内投与等によって全身的に導入する方法、あるいはエレクトロポレーション法またはウイルス感染等が用いられる。経口導入のための方法には、二本鎖ポリヌクレオチドを生物の食物と直接混合することができる。さらに、個体に導入する場合には、例えば埋め込み長期放出製剤等として投与することや、二本鎖ポリヌクレオチドを導入した導入体を摂取させることにより行うこともできる。
導入する二本鎖ポリヌクレオチドの量は、導入体や、標的遺伝子によって適宜選択することができるが、細胞あたり少なくとも1コピー導入されるに充分量を導入することが好ましい。具体的には、例えば、被導入体がヒト培養細胞で、カルシウムホスフェート法により二本鎖ポリヌクレオチドを導入する場合、0.1〜1000nMが好ましい。
ここで、二本鎖ポリヌクレオチドは、2種類以上のものを同時に導入することもできる。この場合、該ポリヌクレオチドの導入を受けた細胞、組織、あるいは個体(以下これを「導入体」と称することがある)においては、2種類以上の標的遺伝子の発現阻害が期待される。本発明において、標的遺伝子の発現阻害とは、その発現を完全に阻害することだけでなく、m−RNA、もしくはタンパク質の発現量として20%以上の阻害を意味する。標的遺伝子の発現阻害度は、標的遺伝子のRNAの蓄積、または標的遺伝子によってコードされるタンパク質の産出量を、二本鎖ポリヌクレオチドの導入体と非導入体において比較することにより測定することができる。mRNA量は、それ自体既知の通常用いられる方法により測定することができる。具体的には、例えば、ノーザンハイブリダイゼーション、定量的リバーストランスフェレースPCR、あるいは In situ hybridization等を用いて行うことができる。また、タンパク質の産生量は、標的遺伝子がコードするタンパク質を抗原とする抗体によるウェスタンブロッティング法や、標的遺伝子がコードするタンパク質が有する酵素活性を測定すること等により測定することができる。
本発明の二本鎖ポリヌクレオチドによる導入体内の遺伝子の発現阻害の結果、該導入体に現れる表現型の変化を解析することにより導入した二本鎖ポリヌクレオチドが標的とする遺伝子の機能を同定することができる。
ここで、標的遺伝子はその機能が既知であっても、被導入体内での機能が未知のものであってもよい。該標的遺伝子に対応する二本鎖ポリヌクレオチドは上記上記のとおり調製され、被導入体に同様にして導入する。導入体でその変化を解析すべき表現型は特に制限はされないが、例えば導入体の形態、導入体内物質量、導入体が分泌する物質量、導入体内物質の動態、導入体間接着、導入体の運動、あるいは導入体の寿命等の生命体行動が挙げられる。標的遺伝子の機能が、他の被導入体において既知の場合には、その機能に連関する表現型について解析することが好ましい。表現型の変化を解析する手段としては、導入体の形態の変化を解析する場合には、顕微鏡、あるいは肉眼的に検出する方法を用いることができる。また、導入体内の物質として、例えばmRNAの場合には、その量の解析方法として、ノーザンハイブリダイゼーション、定量的リバーストランスフェレースPCR、あるいはIn situ hybridization等が挙げられる。タンパク質の場合には、その量の解析方法として、標的遺伝子がコードするタンパク質を抗原とする抗体によるウェスタンブロッティング法や、標的遺伝子がコードするタンパク質が有する酵素活性を測定する方法等が挙げられる。このようにして解析した、導入体にのみ現れる表現型の変化は、標的遺伝子の発現阻害の結果生じているものであるので、これを標的遺伝子の機能として同定することができる。
本発明の二本鎖ポリヌクレオチドを用いた標的遺伝子の発現阻害により、細胞、組織、あるいは個体に特定の性質を付与することができる。特定の性質とは、標的遺伝子の発現阻害の結果、該導入体に現れるものをさす。ここでの標的遺伝子としては、その発現の阻害が導入体に与える性質がすでに判明しているものでもよいし、機能、もしくは導入体内での機能が未知のものでもよい。機能が未知の標的遺伝子については、これに対する二本鎖ポリヌクレオチドを導入した後に、該導入体が示す表現型のうち所望のものを選択することにより、該導入体に所望の性質を付与することができる。
被導入体に付与するべき所望の性質として、具体的には、例えば、細胞内生産機能、細胞外分泌を阻害する機能、細胞やDNAに対する障害の修復機能、特定の疾患に対する耐性機能等が挙げられる。具体的には、被導入体が植物個体等の場合、標的遺伝子としては、果実熟成に関連する酵素、植物構造タンパク質、若しくは病原性に関連する遺伝子等が挙げられる。標的遺伝子の発現阻害が、特定の疾患に対する耐性機能を有する場合としては、特定のタンパク質の発現の上昇が特定の疾患の原因となる場合で、標的遺伝子は、上記タンパク質をコードする遺伝子や、上記タンパク質の発現を制御する機能を有するタンパク質をコードする遺伝子等が挙げられる。具体的例としては、標的遺伝子ががん化/腫瘍化表現型の保持に必要である遺伝子であり、被導入体ががん性細胞、または腫瘍組織等である。
このような標的遺伝子に対する二本鎖 ポリヌクレオチドは、標的遺伝子がコードするタンパク質の発現を阻害することから、標的遺伝子が関連する疾患の治療または予防薬として用いることができる。二本鎖ポリヌクレオチドを上記薬剤の有効成分として用いる場合には、該ポリヌクレオチドを単独で用いることも可能であるが、薬学的に許容され得る担体と配合して医薬品組成物として用いることもできる。この時の有効成分の担体に対する割合は、1〜90重量%の間で変動され得る。また、かかる薬剤は種々の形態で投与することができ、それらの投与形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、あるいはシロップ剤等による経口投与、または注射剤、点滴剤、リポソーム剤、坐薬剤等による非経口投与を挙げることができる。また、その投与量は、症状、年齢、体重等によって適宜選択することができる。
このような遺伝子を標的とする二本鎖ポリヌクレオチドが導入された導入体は、その遺伝子発現阻害に付随すると予測される表現型によって選択される。また、 導入する二本鎖ヌクレオチドにおいて、特定の遺伝標識、例えば蛍光タンパク質等をコードする配列を連結しておけば、被導入体に該二本鎖ポリヌクレオチドと共に導入した蛍光タンパク質の発現阻害度に基づいて選択することも可能である。このうち、例えばガン抑制に機能する遺伝子を標的遺伝子とした場合、選択されるべき細胞の形質としては、増殖能の亢進や、細胞接着能の低下、あるいは運動(転移)能の亢進等、悪性腫瘍の形質等が挙げられる。また、生体リズムを調製する遺伝子を標的遺伝子とした場合、選択されるべき細胞の形質としては、細胞固有の慨日リズムの消失等が挙げられる。さらには、環境変異原によるDNA損傷の修復等に関与する遺伝子を標的遺伝子とした場合、選択されるべき細胞の形質としては、変異原に対して感受性を示すこと等が挙げられる。
選択された導入体は、それぞれに適したそれ自体既知のクローン化技術により系として樹立、取得することができる。具体的には、被導入体が細胞である場合に は、導入体は通常の培養細胞における細胞株樹立法である、限界希釈法、薬剤耐性マーカーによる方法等により細胞株として樹立、取得することができる。本発明で取得された特定の機能を付与された導入体は、有用物質の産生あるいは分泌効率が上昇した細胞株、細胞あるいはDNA等に対する障害を与える環境要因に対して高感受性を示す細胞株、疾病に付随する形質を示し、疾病治療のモデルとして使用することができる。
このうち、疾病治療のモデルとなる細胞株の取得方法を、本発明のさらなる具体的な適用例として説明する。標的遺伝子としては、その発現量の低下、または欠如が疾病の原因となる遺伝子が挙げられる。具体的には、小細胞肺がんにおけるTSLC1の分子経路の因子(BENIまたはその改変体)遺伝子等が挙げられる。
これらのヒト遺伝子等の少なくとも一部の塩基配列と実質的に同一の配列を有するDNAとRNAからなる二本鎖ポリヌクレオチドを、例えばヒト由来の培養細 胞に導入することにより、ヒト型の疾病モデル細胞を取得することができる。さらにこの特定の性質を付与された細胞、組織、あるいは個体に被検物質を接触させて、その遺伝子が関与する疾病の症状、あるいは形質に変化が現れるか否かを解析することによれば、上記疾病の治療剤、および/または予防剤のスクリーニングを行うことも可能である。
このようなスクリーニングにより選択された物質を上記薬剤の有効成分として用いる場合には、該物質を単独で用いることも可能であるが、薬学的に許容され得る担体と配合して医薬品組成物として用いることもできる。この時の有効成分の担体に対する割合は、1〜90重量%の間で変動され得る。また、かかる薬剤は種々の形態で投与することができ、それらの投与形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、あるいはシロップ剤等による経口投与、または注射剤、点滴剤、リポソーム剤、坐薬剤等による非経口投与を挙げることができる。また、その投与量は、症状、年齢、体重等によって適宜選択することができる。
本明細書において上記したRNAi技術は、被導入体に標的遺伝子の少なくとも一部の塩基配列と実質的に同一の配列を有するDNAとRNAからなる二本鎖ポリヌクレオチドを導入する方法であるが、本発明の方法では、さらに(a)指標タンパク質をコードするDNAを含む発現ベクター、(b)該指標タンパク質をコードする塩基配列の少なくとも一部の塩基配列と実質的に同一の配列を有するDNAとRNAからなる二本鎖ポリヌクレオチドを導入し、該指標タンパク質から発せられる信号量を指標として導入体を一次スクリーニングすることにより、導入体内での遺伝子の発現阻害がかかった導入体のみを解析することができ、効率的な解析を行うことができる。
本発明のさらに具体的な例として、被導入体を脊椎動物由来の培養細胞とし、指標タンパク質を蛍光タンパク質とした場合を説明する。脊椎動物由来の培養細胞に蛍光タンパク質をコードするDNAを含む発現ベクターを導入して培養し、該指標タンパク質から発せられる蛍光量が、特定の強さ以上の細胞を選択する。ここで選択された細胞に、さらに指標タンパク質をコードするDNAの少なくとも一部の塩基配列と実質的に同一の配列を有するDNAとRNAからなる二本鎖ポリヌクレオチドを導入して培養して、指標遺伝子の発現の阻害度を、該指標タンパク質から発せられる蛍光量の減弱度により解析する。
このような一次スクリーニングは、いずれも被導入体への二本鎖ポリヌクレオチドの導入が行われたことや、該導入体内で標的遺伝子の発現阻害が起こっていることを確認するものであるので、指標タンパク質は、そのタンパク質量とそれが発 する信号量とが相関するものである必要がある。このようなタンパク質の具体例としては、ルシフェラーゼタンパク質が挙げられる。
さらには、標的遺伝子発現の阻害度を測定する場合に、指標タンパク質の発現量を基準として、標的遺伝子がコードするタンパク質量を算出することもできる。
本明細書において記載したRNAi技術実施するためのキットとしては、二本鎖ポリヌクレオチド、指標タンパク質をコードするDNAを含むベクター、指標遺伝子の少なくとも一部の塩基配列と実質的に同一の配列を有するDNAとRNAからなる二本鎖ポリヌクレオチド、酵素、バッファー等の試薬類、ポリヌクレオチオド導入のための試薬類等が含まれる。本発明のキットは、これら全ての試薬類等を含む必要はなく、上記した本発明の方法に用いられるキットであればいかなる試薬類等の組み合わせであってもよい。
RNAi技術を用いた場合に、RNAi効果の発現が弱い細胞であっても、特にRNAi効果の高く発現している細胞を一次スクリーニングして、より強いものを利用すればよい。
上述のような例示のDNAとRNAからなるポリヌクレオチド、具体的にはDNA鎖とRNA鎖からなるハイブリッドポリヌクレオチド、またはDNA−RNAキメラポリヌクレオチドを用いることによって導入するポリヌクレオチドの物質としての安定性を高め、製造費用を低減することが可能である。このことから、RNAi技術を用いて、導入するポリヌクレオチド自体を、がん治療を目的とした製剤として開発することができる。また、DNAはRNAと比較して蛍光標識、ビオチン標識、アミン化、リン酸化、チオール化等の修飾をより多種にわたり容易に行うことができる。従って、医薬品あるいは試薬として使用する場合に、このような化学的修飾を行うことによって目的に応じた機能を付加することができる。
(再生/治療/予防のための投与および組成物)
本発明は、被験体への有効量の本発明の化合物または薬学的組成物の投与による、中胚葉異常関連疾患、障害または異常状態の処置、阻害および予防の方法を提供する。好ましい局面において、化合物は実質的に精製されたものであり得る(例えば、その効果を制限するかまたは望ましくない副作用を生じる物質が実質的に存在しない状態が挙げられる)。
本明細書において「診断、予防、処置または予後上有効な量」とは、それぞれ、診断、予防、処置(または治療)または予後において、医療上有効であると認められる程度の量をいう。このような量は、当該分野において周知の技法を用いて当業者が種々のパラメータを参酌しながら決定することができる。
本発明が対象とする動物は、神経系または類似の系を有するものであれば、どの生物(例えば、動物(たとえば、脊椎動物、無脊椎動物))でもよい。好ましくは、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)であり、より好ましくは、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)であり得る。例示的な被験体としては、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物が挙げられるがそれらに限定されない。さらに好ましくは、霊長類(たとえば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞が用いられる。最も好ましくはヒト由来の細胞が用いられる。
本発明の核酸分子またはポリペプチドが医薬として使用される場合、そのような組成物は、薬学的に受容可能なキャリアなどをさらに含み得る。本発明の医薬に含まれる薬学的に受容可能なキャリアとしては、当該分野において公知の任意の物質が挙げられる。
そのような適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリアとしては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバントが挙げられるがそれらに限定されない。代表的には、本発明の医薬は、アクチビンまたはその改変体もしくはフラグメントなどのポリペプチドまたはポリヌクレオチド、またはその改変体もしくは誘導体を、1つ以上の生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。例えば、適切なビヒクルは、注射用水、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには、非経口送達のための組成物に一般的な他の物質を補充することが可能である。
本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエントに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不活性であり、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;アスコルビン酸、α−トコフェロール;低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、Tween、プルロニック(pluronic)またはポリエチレングリコール(PEG))などが挙げられるがそれらに限定されない。
例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、その生成物は、適切な賦形剤(例えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。他の例示的な組成物は、pH7.0−8.5のTris緩衝剤またはpH4.0−5.5の酢酸緩衝剤を含み、これらは、さらに、ソルビトールまたはその適切な代替物を含み得る。
以下に本発明の医薬組成物の一般的な調製法を示す。なお、動物薬組成物、医薬部外品、水産薬組成物、食品組成物および化粧品組成物等についても公知の調製法により製造することができる。
本発明において使用されるポリペプチド、ポリヌクレオチドなどは、薬学的に受容可能なキャリアと配合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、座剤等の固形製剤、またはシロップ剤、注射剤、懸濁剤、溶液剤、スプレー剤等の液状製剤として経口または非経口的に投与することができる。薬学的に受容可能なキャリアとしては、上述のように、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、崩壊阻害剤、吸収促進剤、吸着剤、保湿剤、溶解補助剤、安定化剤、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等が挙げられる。また、必要に応じ、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を用いることができる。また、本発明の組成物には本発明において使用されるポリヌクレオチド、ポリペプチドなど以外の物質を配合することも可能である。非経口の投与経路としては、静脈内注射、筋肉内注射、経鼻、直腸、膣および経皮等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における賦形剤としては、例えば、グルコース、ラクトース、スクロース、D−マンニトール、結晶セルロース、デンプン、炭酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、塩化ナトリウム、カオリンおよび尿素等が挙げられる。
固形製剤における滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ホウ酸末、コロイド状ケイ酸、タルクおよびポリエチレングリコール等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、白糖、D−マンニトール、結晶セルロース、デキストリン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン溶液、ゼラチン溶液、ポリビニルピロリドン、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、およびシェラック等が挙げられる。
固形製剤における崩壊剤としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カンテン末、ラミナラン末、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、アルギン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプン、ステアリン酸モノグリセリド、ラクトースおよび繊維素グリコール酸カルシウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における崩壊阻害剤の好適な例としては、水素添加油、白糖、ステアリン、カカオ脂および硬化油等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における吸収促進剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩基類およびラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における吸着剤としては、例えば、デンプン、ラクトース、カオリン、ベントナイトおよびコロイド状ケイ酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における保湿剤としては、例えば、グリセリン、デンプン等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における溶解補助剤としては、例えば、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における安定化剤としては、例えば、ヒト血清アルブミン、ラクトース等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤として錠剤、丸剤等を調製する際には、必要により胃溶性または腸溶性物質(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)のフィルムで被覆していてもよい。錠剤には、必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーテイング錠あるいは二重錠、多層錠が含まれる。カプセル剤にはハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれる。座剤の形態に成形する際には、上記に列挙した添加物以外に、例えば、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、半合成グリセライド等を添加することができるがそれらに限定されない。
液状製剤における溶剤の好適な例としては、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油およびトウモロコシ油等が挙げられる。
液状製剤における溶解補助剤の好適な例としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における懸濁化剤の好適な例としては、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における等張化剤の好適な例としては、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における緩衝剤の好適な例としては、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩およびクエン酸塩等の緩衝液等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における無痛化剤の好適な例としては、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウムおよび塩酸プロカイン等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における防腐剤の好適な例としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における抗酸化剤の好適な例としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロールおよびシステイン等が挙げられるがそれらに限定されない。
注射剤として調製する際には、液剤および懸濁剤は殺菌され、かつ血液と等張であることが好ましい。通常、これらは、バクテリア保留フィルター等を用いるろ過、殺菌剤の配合または照射によって無菌化する。さらにこれらの処理後、凍結乾燥等の方法により固形物とし、使用直前に無菌水または無菌の注射用希釈剤(塩酸リドカイン水溶液、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノールまたはこれらの混合溶液等)を添加してもよい。
さらに、必要ならば、医薬組成物は、着色料、保存剤、香料、矯味矯臭剤、甘味料等、ならびに他の薬剤を含んでいてもよい。
本発明の医薬は、経口的または非経口的に投与され得る。あるいは、本発明の医薬は、静脈内または皮下で投与され得る。全身投与されるとき、本発明において使用される医薬は、発熱物質を含まない、薬学的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学的に受容可能な組成物の調製は、pH、等張性、安定性などを考慮することにより、当業者は、容易に行うことができる。本明細書において、投与方法は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、患部への局所投与、皮膚投与など)であり得る。そのような投与のための処方物は、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。
本発明の医薬は、必要に応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤(日本薬局方第15版、必要に応じてその追補またはその最新版、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company,1990などを参照)と、所望の程度の純度を有する糖鎖組成物とを混合することによって、凍結乾燥されたケーキまたは水溶液の形態で調製され保存され得る。
様々な送達系が公知であり、そして本発明の化合物を投与するために用いられ得る(例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルなど)。導入方法としては、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が挙げられるがそれらに限定されない。化合物または組成物は、任意の好都合な経路により(例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を通しての吸収により)投与され得、そして他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与され得る。投与は、全身的または局所的であり得る。さらに、本発明の薬学的化合物または組成物を、任意の適切な経路(脳室内注射および髄腔内注射を包含し;脳室内注射は、例えば、Ommayaリザーバのようなリザーバに取り付けられた脳室内カテーテルにより容易にされ得る)により中枢神経系に導入することが望まれ得る。例えば、吸入器または噴霧器の使用、およびエアロゾル化剤を用いた処方により、肺投与もまた使用され得る。
特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは組成物を、処置の必要な領域(例えば、中枢神経、脳など)に局所的に投与することが望まれ得る;これは、制限する目的ではないが、例えば、手術中の局部注入、局所適用(例えば、手術後の創傷包帯との組み合わせで)により、注射により、カテーテルにより、坐剤により、またはインプラント(このインプラントは、シアラスティック(sialastic)膜のような膜または繊維を含む、多孔性、非多孔性、または膠様材料である)により達成され得る。好ましくは、抗体を含む本発明のタンパク質を投与する際、タンパク質が吸収されない材料を使用するために注意が払われなければならない。
別の実施形態において、化合物または組成物は、小胞、特に、リポソーム中に封入された状態で送達され得る(Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら,Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−BeresteinおよびFidler(編),Liss,New York,353〜365頁(1989);Lopez−Berestein,同書317〜327頁を参照のこと;広く同書を参照のこと)。
さらに別の実施形態において、化合物または組成物は、制御された徐放系中で送達され得る。1つの実施形態において、ポンプが用いられ得る(Langer(前出);Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら,Surgery 88:507(1980);Saudekら,N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと)。別の実施形態において、高分子材料が用いられ得る(Medical Applications of Controlled Release,LangerおよびWise(編),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,SmolenおよびBall(編),Wiley,New York(1984);RangerおよびPeppas,J.、Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61(1983)を参照のこと;Levyら,Science 228:190(1985);Duringら,Ann.Neurol.25:351(1989);Howardら,J.Neurosurg.71:105(1989)もまた参照のこと)。
さらに別の実施形態において、制御された徐放系は、治療標的、即ち、脳の近くに置かれ得、従って、全身用量の一部のみを必要とする(例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release,(前出),第2巻,115〜138頁(1984)を参照のこと)。
他の制御された徐放系は、Langerによる総説において議論される(Science 249:1527−1533(1990))。
本発明の処置方法において使用される組成物の量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被験体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間−1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドなどの投与量は、被験体の年齢、体重、症状または投与方法などにより異なり、特に限定されないが、通常成人1日あたり、経口投与の場合、0.01mg〜10gであり、好ましくは、0.1mg〜1g、1mg〜100mg、0.1mg〜10mgなどであり得る。非経口投与の場合、0.01mg〜1gであり、好ましくは、0.01mg〜100mg、0.1mg〜100mg、1mg〜100mg、0.1mg〜10mgなどであり得る。
本明細書中、「投与する」とは、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、因子などまたはそれを含む医薬組成物を、単独で、または他の治療剤と組み合わせて、生物の細胞または組織に取り込むことを意味する。組み合わせは、例えば、混合物として同時に、別々であるが同時にもしくは並行して;または逐次的にかのいずれかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤が、治療混合物としてともに投与される提示を含み、そして組み合わせた薬剤が、別々であるが同時に(例えば、同じ個体へ別々の静脈ラインを通じての場合)投与される手順もまた含む。「組み合わせ」投与は、第1に与えられ、続いて第2に与えられる化合物または薬剤のうちの1つを別々に投与することをさらに含む。
異常な状態はまた、生物へのシグナル伝達経路に異常を有する細胞の群に化合物(本発明によって同定される薬剤など)を投与することによって予防または処置され得る。次いで、化合物を投与することの生物機能に対する効果が、モニターされ得る。この生物は、好ましくは、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギまたはサル(monkeyまたはape)などの実験動物、および最も好ましくは、ヒトである。
本明細書において「指示書」は、本発明の医薬などを投与する方法または診断する方法などを医師、患者など投与を行う人、診断する人(患者本人であり得る)に対して記載したものである。この指示書は、本発明の診断薬、医薬などを投与する手順を指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ(ウェブサイト)、電子メール)のような形態でも提供され得る。
本発明の方法による治療の終了の判断は、商業的に利用できるアッセイもしくは機器使用による標準的な臨床検査室の結果またはBENI,アクチビンなどに関連する疾患(例えば、中胚葉異常疾患、血液系疾患)に特徴的な臨床症状の消滅によって支持され得る。治療は、BENI、アクチビンなどに関連する疾患(例えば、中胚葉異常疾患、血液系疾患)の再発により再開することができる。
本発明はまた、本発明の医薬組成物の1つ以上の成分を満たした1つ以上の容器を備える医薬品パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が定めた形式の通知が、このような容器に任意に付属し得、この通知は、ヒトへの投与に対する製造、使用または販売に関する政府機関による承認を表す。
中胚葉異常を起こす器官中での薬物および代謝産物の血漿半減期および体内分布はまた、障害を阻害するのに最も適切な薬物の選択を容易にするように決定され得る。このような測定が行われ得る。例えば、HPLC分析は、薬物で処置された動物の血漿において行われ得、放射線標識された化合物の位置が、X線、CATスキャンおよびMRIのような検出方法を用いて決定され得る。スクリーニングアッセイにおいて強力な阻害活性を示すが、薬物動態学的特徴が不十分な化合物は、化学構造の変更および再試験によって最適化され得る。この点について、良好な薬物動態学的特徴を示す化合物が、モデルとして使用され得る。
毒性研究はまた、本発明の組成物を試験することによって行われ得る。例えば、毒性研究は、以下のような適切な動物モデルにおいて行われ得る:(1)化合物がマウスに投与される(未処置のコントロールマウスもまた、使用されるべきである);(2)各々の処置群中の1匹のマウスから尾静脈を介して血液サンプルを周期的に得る;そして(3)上記サンプルを、赤血球および白血球の数、組成物ならびにリンパ球と多形核細胞との割合について分析する。各々の投薬レジメンについての結果とコントロールとの比較は、毒性が存在するか否かを示す。
各々の毒性研究の終了の際に、動物を屠殺することによって、さらなる研究を行い得る(好ましくは、American Veterinary Medical Association guidelines Report of the American Veterinary Medical Assoc.Panel on Euthanasia,(1993)J.Am.Vet.Med.Assoc.202:229−249に従う)。次いで、各処置群からの代表的な動物が、転移、異常な疾患または毒性の直接的な証拠のために全体的な検屍によって試験され得る。組織における全体の異常が記載され、組織が組織学的に試験される。体重の減少または血液成分の減少を引き起こす化合物は、主要な器官に対する有害作用を有する化合物と同様に好ましくない。一般的に、有害作用が大きいほど、その化合物は好ましくない。
(発明を実施するための最良の形態)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
(BENI)
1つの局面において、本発明は、Brachyury Expression by Nuclear Inhibitor(BENI)をコードする核酸配列またはその改変体もしくはフラグメントを提供する。本発明においてその機能が見出されたBENIは、代表的には、(a)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;(b)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;(c)配列番号1、3、5、7、9、11、17または19に記載の塩基配列の対立遺伝子変異体またはスプライス変異体によってコードされる、ポリペプチド;(d)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、をコードする、核酸分子またはその改変体もしくはフラグメントである。
好ましい実施形態では、BENIは、配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に示される配列をコードする核酸分子またはその改変体もしくはフラグメントである。あるいは、別の好ましい実施形態では、BENIは、配列番号1、3、5、7、9、11、17または19に示される配列を含む。
1つの実施形態では、BENIが有し得る上記生物学的活性は、中胚葉の分化誘導の調節活性であり、代表的には、オーガナイザー形成活性、原腸陥入誘導活性、神経誘導活性、パターン形成活性などを挙げることができる。
1つの代表的な実施形態では、本発明のBENIが有する生物学的活性は、中胚葉分化誘導因子Brachyuryを調節である。中胚葉分化誘導因子Brachyuryの調節活性は、当業者に公知の方法を用いて測定することができる。
別の局面において、本発明は、Brachyury Expression by Nuclear Inhibitor(BENI)ポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントを提供する。BENIポリペプチドは、代表的には、(a)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;(b)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列において、1以上のまたは1もしくは数個のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;(c)配列番号1、3、5、7、9、11、17または19に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;(d)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチドでまたはその改変体もしくはフラグメントである。
1つの実施形態では、本発明のBENIは、配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に示される配列を有するポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントである。
別の実施形態では、本発明のBENIは、配列番号1、3、5、7、9、11、17または19に示される配列を含むポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントである。
別の実施形態では、本発明のBENIが有する生物学的活性は、中胚葉の分化誘導の調節活性である。
別の実施形態では、本発明のBENIが有する生物学的活性は、中胚葉分化誘導因子Brachyuryを調節する活性であり得る。
1つの具体的な実施形態では、本発明は、中胚葉分化誘導因子Brachyuryを調節する活性を調節することができる因子を提供し、ここでこの因子は、本発明の核酸分子またはその改変体もしくはフラグメント、あるいは本発明のポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントの機能を阻害する機能を有する、因子であり得る。
本発明の因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択されるものであり得る。
1つの具体的な実施形態では、本発明の因子は、本発明の核酸分子またはその改変体もしくはフラグメント、あるいは本発明のポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントと相互作用することを特徴とする。
別の実施形態では、本発明の因子は、本発明の核酸分子またはその改変体もしくはフラグメントのアンチセンス核酸分子またはRNAi分子であるか、あるいは本発明のポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントに対する抗体であることを特徴とする。
ある特定の実施形態では、本発明の因子は、前記因子を特異的部位に送達させる手段をさらに含む。このような送達系は周知であり適宜使用することができる。
別の実施形態では、上記手段は、前記特異的部位に特異的に前記核酸分子を発現させるものであり得る。このような発現系は、分子生物学において使用される任意のものを使用することができる。
別の実施形態では、本発明の因子が含む上記手段は、プロモーターであり得る。この手段は、指向性リポソームであり得る。
別の局面において、本発明は、本発明の核酸分子(例えば、BENI遺伝子をコードする)を含むベクターを提供する。このようなベクターとしては任意のものを使用することができることが理解される。ベクターが含む核酸分子としては、BENI遺伝子の代わりに、本発明の核酸分子(BENI)の機能を阻害する阻害核酸分子であり得る。
より好ましい実施形態として、(BENI)に記載された任意の実施形態を使用することができることが理解される。
(スクリーニング方法)
別の局面において、本発明は、中胚葉分化誘導の調節因子をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、A)候補物質を提供する工程、B)該候補物質がBENIの活性を調節するかどうかを決定するためのアッセイ系に供する工程;C)該候補物質の内、BENIを調節する因子を同定し、該調節する因子を、BENIの調節因子であると決定する工程を包含する。
1つの実施形態では、この候補物質は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択されるがこれに限定されない。
別の実施形態では、本発明は、本発明の方法によって同定された、BENIの調節因子を提供する。調節因子の具体例としては、例えば、抗体、その改変体、アンチセンス分子、RNAi分子などを挙げることができる。
このようなスクリーニングは、目的とする核酸分子またはポリペプチドに対して特異的に相互作用する因子ならびにその改変体およびフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つの分子とそれらに相互作用する分子との相互作用に、試験因子が有意に影響を与える(減少、増強、消失など)かどうかを判定することによって同定することができる。このような試験因子の判定方法は、当該分野において周知であり、任意の統計学的手法を用いて結果を算出することができる。このようなスクリーニングまたは同定の方法は、当該分野において周知であり、例えば、そのようなスクリーニングまたは同定は、マイクロタイタープレート、DNAまたはプロテインなどの生体分子アレイまたはチップを用いて行うことができる。スクリーニングの試験因子を含む対象としては、例えば、遺伝子のライブラリー、コンビナトリアルライブラリーで合成した化合物ライブラリーなどが挙げられるがそれらに限定されない。
したがって、本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュータモデリングによる薬物が提供されることも企図される。
より好ましい実施形態として、(BENI)に記載された任意の実施形態を使用することができることが理解される。
(調節因子生産法)
別の局面において、本発明は、中胚葉分化誘導の調節因子を生産する方法を提供する。この方法は、A)候補物質を提供する工程;B)該候補物質がBENIの活性を調節するかどうかを決定するためのアッセイ系に供する工程;C)該候補物質の内、BENIを調節する因子を同定し、該調節する因子を、BENIの調節因子であると決定する工程;D)該BENIの調節因子を生産する工程、を包含する。ここで、生産方法としては、任意のものを使用することができ、候補物質は、コンビナトリアルケミストリのライブラリーから選択され得る。
従って、本発明は、このような本発明の方法によって生産された、BENIの調節因子を提供する。
本発明は、他の実施形態において、本発明の化合物に対する調節活性についての有効性のスクリーニングの道具として、コンピュータによる定量的構造活性相関(quantitative structure activity relationship=QSAR)モデル化技術を使用して得られる化合物を包含する。ここで、コンピューター技術は、いくつかのコンピュータによって作成した基質鋳型、ファーマコフォア、ならびに本発明の活性部位の相同モデルの作製などを包含する。一般に、インビトロで得られたデータから、ある物質に対する相互作用物質の通常の特性基をモデル化するは、CATALYSTTM ファーマコフォア法(Ekins et al.、Pharmacogenetics,9:477〜489,1999;Ekins et al.、J.Pharmacol.& Exp.Ther.,288:21〜29,1999;Ekins et al.、J.Pharmacol.& Exp.Ther.,290:429〜438,1999;Ekins et al.、J.Pharmacol.& Exp.Ther.,291:424〜433,1999)および比較分子電界分析(comparative molecular field analysis;CoMFA)(Jones et al.、Drug Metabolism & Disposition,24:1〜6,1996)などを使用して示されている。本発明において、コンピュータモデリングは、分子モデル化ソフトウェア(例えば、CATALYSTTMバージョン4(Molecular Simulations,Inc.,San Diego,CA)など)を使用して行われ得る。
活性部位に対する化合物のフィッティングは、当該分野で公知の種々のコンピュータモデリング技術のいずれかを使用してで行うことができる。視覚による検査および活性部位に対する化合物のマニュアルによる操作は、QUANTA(Molecular Simulations,Burlington,MA,1992)、SYBYL(Molecular Modeling Software,Tripos Associates,Inc.,St.Louis,MO,1992)、AMBER(Weiner et al.、J.Am.Chem.Soc.,106:765〜784,1984)、CHARMM(Brooks et al.、J.Comp.Chem.,4:187〜217,1983)などのようなプログラムを使用して行うことができる。これに加え、CHARMM、AMBERなどのような標準的な力の場を使用してエネルギーの最小化を行うこともできる。他のさらに特殊化されたコンピュータモデリングは、GRID(Goodford et al.、J.Med.Chem.,28:849〜857,1985)、MCSS(Miranker and Karplus,Function and Genetics,11:29〜34,1991)、AUTODOCK(Goodsell and Olsen,Proteins:Structure,Function and Genetics,8:195〜202,1990)、DOCK(Kuntz et al.、J.Mol.Biol.,161:269〜288,(1982))などを含む。さらなる構造の化合物は、空白の活性部位、既知の低分子化合物における活性部位などに、LUDI(Bohm,J.Comp.Aid.Molec.Design,6:61〜78,1992)、LEGEND(Nishibata and Itai,Tetrahedron,47:8985,1991)、LeapFrog(Tripos Associates,St.Louis,MO)などのようなコンピュータープログラムを使用して新規に構築することもできる。このようなモデリングは、当該分野において周知慣用されており、当業者は、本明細書の開示に従って、適宜本発明の範囲に入る化合物を設計することができる。
別の局面において、本発明は、本発明の上記同定またはモデリング方法によって同定される因子を提供する。
より好ましい実施形態として、(BENI)に記載された任意の実施形態を使用することができることが理解される。
(診断)
1つの局面において、本発明は、中胚葉分化に関連する状態の診断方法を提供する。この方法は、A)BENIのレベルを測定する工程を包含する。この方法は、好ましくは、さらに、B)前記BENIのレベルの変化を指標として、中胚葉分化の状態を決定する工程を包含する。
別の局面では、本発明は、中胚葉分化に関連する状態の診断試薬であって、BENIに特異的な因子を含む、診断試薬を提供する。
より好ましい実施形態として、(BENI)に記載された任意の実施形態を使用することができることが理解される。
(予防・治療)
1つの局面において、本発明は、中胚葉分化に関連する状態の処置または予防の方法であって、A)BENIのレベルを調節する工程を包含する、方法を提供する。この方法において、上記調節工程は、BENIに特異的な因子を用いて達成され得る。また、BENIに特異的な因子は、BENIまたはその改変体をコードする核酸配列を含んでいてもよい。
より好ましい実施形態として、(BENI)に記載された任意の実施形態を使用することができることが理解される。
別の局面において、本発明は、中胚葉分化に関連する状態の処置または予防のシステムを提供する。このシステムは、A)BENIのレベルを調節する手段を備える、システム。 より好ましい実施形態として、(BENI)に記載された任意の実施形態を使用することができることが理解される。
(使用)
別の局面において、本発明はまた、BENIをコードする核酸分子もしくはBENIポリペプチドまたはそれらに特異的な因子の、中胚葉分化状態の診断薬の製造のための、使用を提供する。
あるいは、別の局面では、本発明は、BENIをコードする核酸分子もしくはBENIポリペプチドまたはそれらに特異的な因子の、中胚葉分化に関連する状態、障害または疾患の処置または予防のための医薬の製造のための、使用を提供する。
別の局面では、本発明は、BENIをコードする核酸分子もしくはBENIポリペプチドまたはそれらに特異的な因子の、中胚葉分化状態の診断薬の製造のための、使用を提供する。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、この発明は以下の例に限定されるものではない。動物の取り扱いは、東京大学動物実験施設において規定される基準を遵守し、動物愛護精神に則って行った。
(実施例1:BENIの単離)
本発明者らは、アフリカツメガエルの受精卵を用いて、アクチビンAを加えた時に有意に発現が上昇する遺伝子を22Kの網羅的マイクロアレイ法で探索した。
(材料および方法)
(受精卵の調製)
アフリカツメガエルにヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモン(Gestron:デンカ製薬株式会社、川崎市)を注入することにより卵を得た。受精卵を、人工授精により調製し、メルカプト酢酸ナトリウムを用いてゼラチン質を除去した。室温で9期まで発生を進めた。次いで、この受精卵に、種々の濃度(0.1ng/ml、0.5ng/ml、1ng/ml、10ng/ml、100ng/mlのアクチビンAを加えて1時間インキュベートし、洗浄して、アクチビンAを除去した。
(RNAの調製およびマイクロアレイ分析)
全RNAを、ISOGEN(カタログ番号317−02503;株式会社ニッポンジーン、富山市)を用いて抽出した。抽出したRNAのCy−dye標識を、Low RNA Input linear増幅キット(カタログ番号5184−3523、アジレント・テクノロジー社、東京)の指示書に従って増幅させた。まとめると、dsDNAをT7プロモーターを含むoligo dTプライマーを用いて、抽出したRNAから合成した。次いで、cDNAを、Cy3−dCTPおよびCy−5dCTP(カタログ番号PA53021、PA55021:GEヘルスケア バイオサイエンス株式会社、東京)のいずれかを用いてT7ポリメラーゼにより合成した。標識したcRNAを、DNAマイクロアレイとハイブリダイズさせた。このマイクロアレイを、20℃にて、6×SSC、0.005% TritonX−102中で洗浄し、次いで4℃にて、0.1×SSC、0.005% TritonX−102中で洗浄した。データ分析を、Rosetta Luminatorシステム(Rosetta Biosoftware,http://www.rosettabio.com)を用いて実施した。アフリカツメガエルのオリゴマイクロアレイ(60−mer オリゴDNA)は、アジレント・テクノロジー社のマイクロアレイデザインサービスに受注作製したものを用いた。
(結果)
その結果、そのような遺伝子として、GenBank内に登録番号BC043737として登録されている遺伝子を見出した。このBC043737遺伝子は、その存在が知られていたものの、これまでその働きは不明であった。後に詳しく述べるように、本発明者らの検討により、BC043737遺伝子は、初期発生において、主として、中胚葉特異的な因子であるBrachyuryの発現を核の中で抑制しながら、中胚葉の分化誘導を調節していることが分かった。そこで、本発明者らは、BC043737遺伝子をBENI(Brachyury Expression by Nuclear Inhibitor)と呼ぶこととした。
BENIを、アフリカツメガエルの発生期17−19胚IMAGE cDNAクローンライブラリー(Open Biosystems, USA社)から単離した。単離したBENI遺伝子のOpen Reading Frame (ORF)は2,025base pairであり、予測される蛋白質は674アミノ酸からなる配列を持つ。BLASTP検索により、BENIの相同遺伝子は、近縁種のトリピカリス(Xenopus tropicalis)だけでなく、ヒトからラット(R. norvegirus)、マウス(M. musculus)、ミドリフグ(T. nigroviridis)まで幅広く存在していることが分かった。図1に示したように、アフリカツメガエルのBENIとヒトの相同遺伝子との相同性は、N末側の1−58アミノ酸配列で57%−93%と高い値を示す。一方、C末側の相同性は低い。
BENIの遺伝子配列の中に既知の機能性ドメインを検討したところ、同じく図1内に箱で囲んだ核移行シグナルが同定できた(N末側に1個、C末側に2個)。その他の配列には、既知の機能性ドメインは同定できなかった。
(実施例2:BENIの機能の解明)
本発明者らは、アフリカツメガエルの受精卵の中で、BENIがどの時期にどの程度発現しているかをreverse transcription PCR (RT−PCR)法で調べた。
(材料および方法)
全RNAを、実施例1と同様の方法を用いて抽出した。全RNA 1μgを、RNase−free DNase I(GIBCO/BRL)で処理した。次いで、抽出した全RNAをDNaseIを用いて前処理した。逆転写反応は、25℃ 10分間、42℃ 50分間、70℃ 15分間で行い、cDNAを合成した。Ornithine decarboxylase (ODC)を、house−keeping遺伝子(対照)として用いた。PCR反応は、変性反応95℃1分間、アニーリングを各々適切な条件で行い、伸長反応72℃ 30秒間とした。これを1サイクルとして、各々の適切なサイクル数行いPCR産物を得た。増幅に用いたプライマーペアは、フナコシ株式会社(東京)のプライマー合成受託サービスにより作製されたものである。各PCR産物(5μl)を3%アガロースゲル電気泳動により分離し、syber−gold(和光純薬株式会社、大阪)により視覚化した。RT-PCRを行なわないODCを、ゲノムDNAの混入を確認するために含めた。
(結果)
その結果、BENIは、母方に由来する未受精卵にはまったく発現しておらず、受精後の10期以降から12期まで急速に上皮部分での発現が上昇し、12期以降は徐々に発現が増加することが分かった(図2)。
図2は、 アフリカツメガエル受精卵の各発生時期でのBENIの発現量をRT−PCR法で調べたものを示す(上段)。中段のOrnithine decarboxylase (ODC)は、いわゆるhouse−keeping遺伝子(対照)として用いた。また、下段は、RT−PCRを行なわないODCを示す。
また、同じく10期から42期までの受精卵を、whole−mount in situ hybridization(WISH)法で調べた。
(材料および方法)
試料として、8期、9期、10期、11期、12期、13期、15期、20期、23期、26期、30期、35期、40期および45期の受精卵を用いた。WISH法を、ジゴキシゲニン標識化アンチセンスプローブを用いてHarlandの方法(Harland,R.M.(1991)Methods Cell Biol 36:685−95)に従って実施した。細胞系譜追跡のために、アルビノ胚に250pg β−gal mRNAを注入した。注入した領域を、反応緩衝液(1 mM MgSO、10 mM KFe(CN)、10 mM KFe(CN)、0.1 M リン酸化緩衝液および0.1% Triton X−100)中でred−gal(Research Organics,Inc)で染色した。用いたプローブは、フナコシ株式会社(東京)のプローブ合成受託サービスにより作製されたものである。対照してsense probeを用いた。シグナルを、BM purple(Roche)を用いて検出した。
その結果、BENI遺伝子は、外胚葉上皮部分に特異的に発現していること(図3)、また、その断面切片の解析から特に動物極と非陥入部位に局在することが分かった(図4)。
図3は、WISH法によるアフリカツメガエル胚におけるBENI遺伝子の発現部位(各パネルの左端に示した写真はsense probeを用いた対照実験の結果)を示す。
図4は、WISH法で染色したアフリカツメガエル胚の断面切片(上段)、および、胚の断面切片の全体像(下段)を示す。
次に、BENIのアンチセンスモルフォリノRNA(BENI−MO)を4割球期のカエル胚に注入して、胚の正常発生に対するBENI−MO効果を調べた(図5)。
(材料および方法)
BENIのアンチセンスモルフォリノRNA(BENI−MO)は、フナコシ株式会社(東京)のアンチセンス合成受託サービスにより合成したものを用いた。実施例1と同様の方法により受精卵を調製し、4割球期まで発生を進めた。4割球期のカエル胚に背面にBENI−MO(34ng)を注入した。対照としてStMO(Gene Tools,LLC、OR,USA)を同量注入した。
その結果を図5に示す。図5は、4割球期のカエル胚の背面にBENI−MO(34ng)を注入して、35ないし36期に観察したものを示す(右パネル)。左パネルは、同じ胚に影響のない(StMO)を同量注入した対照実験を示す。
BENI−MOを注入した胚は、対照胚(左)と比較して胚全体が丸く萎縮している。この結果から、BENIは、何らかの仕組みで原腸陥入運動を支配していることが分かった。
次に、カエルの未分化細胞集団であるアニマルキャップを用いて、アクチビンAの誘導作用による伸張運動に対するBENIのmRNA(BENI mRNA)とBENI−MOの効果を調べた(図6)。
(材料および方法)
BENIのアンチセンスモルフォリノRNA(BENI−MO)は、フナコシ株式会社(東京)のアンチセンス合成受託サービスにより合成したものを用いた。実施例1と同様の方法により受精卵を調製し、8期胚のアニマルキャップを約0.4×0.4mmで切り出した。このアニマルキャップを、アクチビンA25 ng/mlを含むカエル用生理食塩水Steinberg溶液(SS)中で1時間処理した。アクチビンAを処理したアニマルキャップを、BENI mRNA(1 ng)またはBENI−MO(34 ng)でそれぞれ処理した。次いで、アクチビンAを含まないSS中で、0時間、12時間、3時間、4時間前培養した。
その結果を図6に示す。図6は、アクチビンA存在下におけるBENI mRNAとBENI−MOの効果を示す。
アクチビンAを処理しないアニマルキャップ(上段左)に対してアクチビンA(25 ng/mL)を処理したアニマルキャップ(上段右)は、伸張運動を起こす。一方、アクチビンAを処理したアニマルキャップに対してBENI mRNA(1 ng)を処理すると(下段左)、アニマルキャップは伸張運動の阻害を受けるが、BENI−MO(34 ng)処理では正常な伸張運動を示す。このように、BENIは、アクチビンAによって誘導される伸張運動を阻害する作用を持つ。BENI−MOの結果を注意深く観察すると、アクチビンAを処理した対照胚より胚がより伸張していることが分かった。Brachyuryの中胚葉誘導因子であり(Smith, J.C., Price, B.M., Green, J.B., Weigel, D. & Herrmann, B.G. (1991) Cell 67, 79−87)、核内において転写を制御する転写因子である(Kispert, A., Koschorz, B. & Herrmann, B.G. (1995) EMBO J. 14, 4763−4772.)。Brachyuryを過剰発現すると、BENI−MOの作用と同じように、胚が異常に伸張することが既に報告されている(Kwan, K.M. & Kirschner, M.W. (2003) Development 130, 1961−1972.)。このことは、BENIが引き起こす胚の伸張運動に対する効果が、Brachyuryの作用と関連することを示唆している。
(実施例3:原腸陥入運動の阻害の更なる解明)
本実施例では、原腸陥入運動の阻害をさらに解明した。
これまでの結果から、BENIは、アクチビンAによって誘導される原腸陥入運動に対して阻害的な制御作用を持つと考えられた。原腸陥入運動の阻害の仕組みには、中胚葉の形成異常を介するものと、それ以外のものが考えられる。さらに、BENIの作用とBrachyuryとの関連性も示唆されている。そこで、BENIが示す原腸陥入運動の阻害制御作用と中胚葉形成との関わるのかを調べるために、アクチビンAの非存在下および存在下での中胚葉因子(Mix−1, Goosecoid, Chordin, Brachyuryの発現をReverse transcriptase PCR(RT−PCR)法で調べた(図7)。
(材料および方法)
4割球期のカエル胚に対してあらかじめ、BENI mRNA(1 ng)または、BENI−MO(34 ng)を注入した。その胚を8期まで飼育してアニマルキャップを単離した。その後、アクチビンAの非存在下、または、存在下(25 ng/mL)で単離したアニマルキャップを3.5時間にわたって培養した。そのように処理したアニマルキャップ内での中胚葉因子の遺伝子発現の状態を、RT−PCR法により同定した。なお、Mix−1は中内胚葉マーカー、GoosecoidとChordinは背側中胚葉マーカー、そして、Brachyuryは汎中胚葉マーカーとして知られている。
各アニマルキャップから全RNAを、実施例1と同様の方法を用いて抽出した。全RNA 1μgを、RNase−free DNase I(GIBCO/BRL)で処理した。次いで、抽出した全RNAをDNaseIを用いて前処理した。逆転写反応は、25℃10分間、42℃ 50分間、70℃ 15分間で行い、cDNAを合成した。ODCを、house−keeping遺伝子(対照)として用いた。PCR反応は、変性反応95℃1分間、アニーリングを各々に適切な条件で行い、伸長反応72℃ 30秒間とした。これを1サイクルとして、各々に適切なサイクル数行ってPCR産物を得た。増幅に用いた各プライマーペアは、フナコシ株式会社(東京)のプライマー合成受託サービスにより作製されたものである。各PCR産物(5μl)を3%アガロースゲル電気泳動により分離し、syber−gold(和光純薬株式会社、大阪)により視覚化した。RT-PCRを行なわないODCを、ゲノムDNAの混入を確認するために含めた。
(結果)
図7は、RT−PCRによる遺伝子発現の同定(ODCは正対照試料として、また、右端レインは、正常発生胚の対照試料として用いた)を示す。
図からわかる様に、どの中胚葉マーカーもアクチビンAによりその発現が誘導されている。その中で、Brachyuryの発現だけが、BENI mRNAの注入により発現が阻害されている。また同じく、Brachyuryの発現だけが、BENI−MOの注入により発現が亢進している。
(まとめ)
以上のすべての結果から、BENIは、Brachyuryの発現を抑制的に調節することで、中胚葉誘導を制御し、その結果、原腸陥入運動をはじめとする胚の形作りを支配していることが判明した。先に述べたように、BENIは、N末側とC末側の双方に、総計3個の核移行シグナルを持っている(すなわち、7−12配列, 653−668配列, 668−674配列(図1参照)。また、Brachyuryは、核内因子として、脊椎動物の初期発生における中胚葉の分化誘導を支配していることが分かっている(Kispert,A., Koschorz, B. & Herrmann, B.G. (1995) EMBO J. 14,4763-4772.)。
(実施例4:核内での機能)
本実施例では、BENIが本当に核内に存在して機能しているのかどうかを、本来のBENIのmRNA配列のC末にEGFPを結合したもの(BENI−EGFP mRNA)、N末側の核移行シグナルだけを欠如したBENIのmRNA配列にEGFPを結合したもの(BENI−△N−NLS−EGFP mRNA)、BENIのC末側の核移行シグナルだけを欠如したmRNA配列にEGFPを結合したもの(BENI−△C−NLS−EGFP mRNA)、N末側とC末側の双方の核移行シグナルを欠如したBENIのmRNA配列にEGFPを結合したもの(BENI−△NLS−EGFP mRNA)を用いて、夫々のmRNAが核内に局在するかどうかを検討した。
BENI−△N−NLS−EGFP mRNA、BENI−△C−NLS−EGFP mRNA、およびBENI−△NLS−EGFP mRNAは、フナコシ株式会社(東京)の合成受託サービスにより作製されたものを用いた。実施例1と同様の方法により得られた受精卵を8期胚まで発生を進めた。常法に従い、EGFP-C1ベクター(Clontech社製)のマルチクローニングサイトにサブクローニングした。これら組換えベクターを、リン酸カルシウム法を用いて、8期胚に導入した。次いで、常法に従い、免疫化染色を行い蛍光顕微鏡で観察した。
(結果)
図8は、核酸配列の核移行シグナルを欠如したBENI mRNAの核内局在の検討を示す。BENI配列を持たないEGFP mRNAを対照試料(EGFP mRNA)として用いた。
BENI配列を持たないEGFP mRNA単独では、細胞内の全域にわたってmRNAが取り込まれる。一方、BENI全配列を持つmRNAは核内に局在する。N末の核移行シグナルだけを欠如したBENI−△N−NLS−EGFP mRNAは、核内に局在するが、C末の核移行シグナルを欠如したBENI mRNAは、N末の核移行シグナルの有無に関係なく細胞の全域にわたって存在した(BENI−△C−NLS−EGFP mRNA、BENI−△NLS−EGFP mRNA)。このことから、BENIは核内因子であり、その核内移行はC末端核移行シグナルに依存することが分かった。
(まとめ)
BENI(すなわち、BC043737遺伝子)は、脊椎動物の初期発生において、主として中胚葉特異的遺伝子であるBrachyuryの発現を核内で抑制しながら、中胚葉の分化誘導を調節している核内因子であることが分かった。
本発明により、これまで不明であったBENI(すなわち、BC043737遺伝子)の中胚葉の分化誘導機能が明らかになった。従来、中胚葉を特異的に分化誘導する因子として、Mix−1、Goosecoid、Chordin、そして、Brachyuryが知られているが、BENIはBrachyuryの発現だけを特異的に抑制して中胚葉の分化誘導を制御している。また、発明者が見出した3個のヒト相同遺伝子との間に、1−57アミノ酸配列で57%以上の相同性が、とりわけ、ヒトBAB14718遺伝子との間には93%もの相同性が認められるので、BENIがBrachyuryの正常な働きを阻害するために生じるヒトの遺伝子疾患に関わっていることが示唆される。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
(産業上の利用可能性)
本発明により、これまで不明であったBENI(すなわち、BC043737遺伝子)の中胚葉の分化誘導機能が明らかになった。従来、中胚葉を特異的に分化誘導する因子として、Mix-1、Goosecoid、Chordin、そして、Brachyuryが知られているが、BENIはBrachyuryの発現だけを特異的に抑制して中胚葉の分化誘導を制御している。また、発明者が見出した3個のヒト相同遺伝子との間に、1-57アミノ酸配列で57%以上の相同性が、とりわけ、ヒトBAB14718遺伝子との間には93%もの相同性が認められるので、BENIがBrachyuryの正常な働きを阻害するために生じるヒトの遺伝子疾患に関わっていることが示唆される。
図1は、単離したアフリカツメガエルのBENIのアミノ酸配列と他の生物に見られるBENI相同遺伝子のアミノ酸配列(上段はN末領域、下段はC末領域を表わす)を示す。 図2は、アフリカツメガエル受精卵の各発生時期でのBENIの発現量をRT-PCR法で調べた(上段)を示す。中段のOrnithine decarboxylase(ODC) は、いわゆるhouse-keeping遺伝子(対照)として用いた。また、下段は、RT-PCRを行なわないODCを示す。 図3は、WISH法によるアフリカツメガエル胚におけるBENI遺伝子の発現部位(各パネルの左端に示した写真はsenseprobeを用いた対照実験の結果)を示す。 図4は、WISH法で染色したアフリカツメガエル胚の断面切片(上段)、および、胚の断面切片の全体像(下段)を示す。 図5は、4割球期のカエル胚の背面にBENI-MO(34ng)を注入して、35ないし36期に観察した(右パネル)を示す。左パネルは、同じ胚に影響のない(StMO)を同量注入した対照実験を示す。 図6は、アクチビンA存在下におけるBENI mRNAとBENI-MOの効果を示す。アクチビンAを処理しないアニマルキャップ(上段左)に対してアクチビンA(25ng/mL)を処理したアニマルキャップ(上段右)は、伸張運動を起こす。一方、アクチビンAを処理したアニマルキャップに対してBENI mRNA(1 ng)を処理すると(下段左)、アニマルキャップは伸張運動の阻害を受けるが、BENI-MO(34ng)処理では正常な伸張運動を示す(下段右)。 図7は、RT-PCRによる遺伝子発現の同定(ODCは正対照試料として、また、右端レインは、正常発生胚の対照試料として用いた)を示す。その隣に、右側から、BENI−MOの遺伝子発現の様子、BENI mRNAの場合の遺伝子発現の様子、注射していたものとしていないものとを順番に示す。 図8は、核酸配列の核移行シグナルを欠如したBENI mRNAの核内局在の検討を示す。BENI配列を持たないEGFP mRNAを対照試料(EGFP mRNA)として用いた。上段:暗視野、下段:明視野
(配列表の説明)
配列番号1:アフリカツメガエル(Xenopus laevis)のBENIの核酸配列
配列番号2:アフリカツメガエル(Xenopus laevis)のBENIのアミノ酸配列
配列番号3:トロピカリス(Xenopus tropicalis)のBENI核酸配列
配列番号4:トロピカリス(Xenopus tropicalis)のBENIアミノ酸配列
配列番号5:ヒト(Homo sapiens)のBENI核酸配列
配列番号6:ヒト(Homo sapiens)のBENIアミノ酸配列
配列番号7:マウス(Mus musculus)のBENI核酸配列
配列番号8:マウス(Mus musculus)のBENIアミノ酸配列
配列番号9:ラット(Rattus norvegirus)のBENI核酸配列
配列番号10:ラット(Rattus norvegirus)のBENIアミノ酸配列
配列番号11:ミドリフグ(Tetraodon nigroviridis)のBENI核酸配列
配列番号12:ミドリフグ(Tetraodon nigroviridis)のBENIアミノ酸配列
配列番号13:アクチビンA(アクセッション番号:NM002192(ヒトインヒビンβA))の核酸配列
配列番号14:アクチビンA(アクセッション番号:NM002192(ヒトインヒビンβA))のアミノ酸配列
配列番号15:アクチビンA(アクセッション番号:X68250(アフリカツメガエルアクチビンA))の核酸配列
配列番号16:アクチビンA(アクセッション番号:X68250(アフリカツメガエルアクチビンA))のアミノ酸配列
配列番号17:ミドリフグ(Tetraodon nigroviridis)のBENI(アクセッション番号:CAG01099)の核酸配列
配列番号18:ミドリフグ(Tetraodon nigroviridis)のBENI(アクセッション番号:CAG01099)のアミノ酸配列
配列番号19:ミドリフグ(Tetraodon nigroviridis)のBENI(アクセッション番号:CAG04344)の核酸配列
配列番号20:ミドリフグ(Tetraodon nigroviridis)のBENI(アクセッション番号:CAG04344)のアミノ酸配列
配列番号21:アクチビンA(アクセッション番号:NM002192(ヒトインヒビンβA))の核酸配列
配列番号22:アクチビンA(アクセッション番号:NM002192(ヒトインヒビンβA))のアミノ酸配列
配列番号23:アクチビンA(アクセッション番号:X68250(アフリカツメガエルアクチビンA))の核酸配列
配列番号24:アクチビンA(アクセッション番号:X68250(アフリカツメガエルアクチビンA))のアミノ酸配列

Claims (38)

  1. Brachyury Expression by Nuclear Inhibitor(BENI)をコードする核酸配列またはその改変体もしくはフラグメント。
  2. 前記BENIは、
    (a)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
    (b)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
    (c)配列番号1、3、5、7、9、11、17または19に記載の塩基配列の対立遺伝子変異体またはスプライス変異体によってコードされる、ポリペプチド;
    (d)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
    (e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
    をコードする、請求項1に記載の核酸分子またはその改変体もしくはフラグメント。
  3. 前記BENIは、配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に示される配列をコードする、請求項1に記載の核酸分子またはその改変体もしくはフラグメント。
  4. 前記BENIは、配列番号1、3、5、7、9、11、17または19に示される配列を含む、請求項1に記載の核酸分子またはその改変体もしくはフラグメント。
  5. 前記生物学的活性は、中胚葉の分化誘導の調節活性である、請求項1に記載の核酸分子またはその改変体もしくはフラグメント。
  6. 前記生物学的活性は、中胚葉分化誘導因子Brachyuryを調節する活性を有する、請求項1に記載の核酸分子またはその改変体もしくはフラグメント。
  7. Brachyury Expression by Nuclear Inhibitor(BENI)ポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメント。
  8. 前記BENIは、
    (a)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
    (b)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列において、1以上のまたは1もしくは数個のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
    (c)配列番号1、3、5、7、9、11、17または19に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
    (d)配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
    (e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド
    である、請求項7に記載のポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメント。
  9. 前記BENIは、配列番号2、4、6、8、10、12、18または20に示される配列を有する、請求項7に記載のポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメント。
  10. 前記BENIは、配列番号1、3、5、7、9、11、17または19に示される配列を含む、請求項7に記載のポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメント。
  11. 前記生物学的活性は、中胚葉の分化誘導の調節活性である、請求項7に記載のポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメント。
  12. 前記生物学的活性は、中胚葉分化誘導因子Brachyuryを調節する活性を有する、請求項7に記載のポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメント。
  13. 中胚葉分化誘導因子Brachyuryを調節する活性を調節することができる因子であって、該因子は、請求項1に記載の核酸分子またはその改変体もしくはフラグメント、あるいは請求項7に記載のポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントの機能を阻害する機能を有する、因子。
  14. 前記因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される、請求項13に記載の因子。
  15. 前記因子は、請求項1に記載の核酸分子またはその改変体もしくはフラグメント、あるいは請求項7に記載のポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントと相互作用することを特徴とする、請求項13に記載の因子。
  16. 前記因子は、請求項1に記載の核酸分子またはその改変体もしくはフラグメントのアンチセンス核酸分子またはRNAi分子であるか、あるいは請求項7に記載のポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントに対する抗体であることを特徴とする、請求項13に記載の因子。
  17. 前記因子を特異的部位に送達させる手段をさらに含む、請求項13に記載の因子。
  18. 前記手段は、前記特異的部位に特異的に前記核酸分子を発現させるものである、請求項17に記載の因子。
  19. 前記手段は、プロモーターである、請求項18に記載の因子。
  20. 前記手段は、指向性リポソームである、請求項17に記載の因子。
  21. 請求項1に記載の核酸分子を含む、ベクター。
  22. 請求項1に記載の核酸分子の機能を阻害する阻害核酸分子を含む、ベクター。
  23. 中胚葉分化誘導の調節因子をスクリーニングする方法であって、
    A)候補物質を提供する工程、
    B)該候補物質がBENIの活性を調節するかどうかを決定するためのアッセイ系に供する工程;
    C)該候補物質の内、BENIを調節する因子を同定し、該調節する因子を、BENIの調節因子であると決定する工程
    を包含する、方法。
  24. 前記候補物質は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
  25. 請求項23に記載の方法によって同定された、BENIの調節因子。
  26. 中胚葉分化誘導の調節因子を生産する方法であって、
    A)候補物質を提供する工程、
    B)該候補物質がBENIの活性を調節するかどうかを決定するためのアッセイ系に供する工程;
    C)該候補物質の内、BENIを調節する因子を同定し、該調節する因子を、BENIの調節因子であると決定する工程;
    D)該BENIの調節因子を生産する工程、
    を包含する、方法。
  27. 前記候補物質が、コンビナトリアルケミストリのライブラリーから選択される、請求項26に記載の方法。
  28. 請求項26または27に記載の方法によって同定された、BENIの調節因子。
  29. 中胚葉分化に関連する状態の診断方法であって、
    A)BENIのレベルを測定する工程
    を包含する、方法。
  30. さらに、B)前記BENIのレベルの変化を指標として、中胚葉分化の状態を決定する工程を包含する、請求項29に記載の方法。
  31. 中胚葉分化に関連する状態の診断試薬であって、BENIに特異的な因子を含む、診断試薬。
  32. 中胚葉分化に関連する状態の処置または予防の方法であって、
    A)BENIのレベルを調節する工程
    を包含する、方法。
  33. 前記調節する工程は、BENIに特異的な因子を用いて達成される、請求項32に記載の方法。
  34. 前記BENIに特異的な因子は、BENIまたはその改変体をコードする核酸配列を含む、請求項33に記載の方法。
  35. 中胚葉分化に関連する状態の処置または予防のシステムであって、
    A)BENIのレベルを調節する手段
    を備える、システム。
  36. BENIをコードする核酸分子もしくはBENIポリペプチドまたはそれらに特異的な因子の、中胚葉分化状態の診断薬の製造のための、使用。
  37. BENIをコードする核酸分子もしくはBENIポリペプチドまたはそれらに特異的な因子の、中胚葉分化に関連する状態、障害または疾患の処置または予防のための医薬の製造のための、使用。
  38. BENIをコードする核酸分子もしくはBENIポリペプチドまたはそれらに特異的な因子の、中胚葉分化状態の診断薬の製造のための、使用。
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