JP2004345968A - アディポネクチンの新規用途 - Google Patents

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Takashi Kadowaki
孝 門脇
Toshimasa Yamauchi
敏正 山内
Hideyuki Gomi
英行 五味
Makoto Takada
高田  誠
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Abstract

【課題】各種癌、炎症性疾患等の治療又は予防剤を提供する。
【解決手段】アディポネクチン、アディポネクチン断片又はアディポネクチン様作用を有する物質を有効成分として含有する、PPARγ機能亢進作用、COX−1機能抑制作用を有さない、COX−2特異的機能抑制作用、並びにMMP機能抑制作用を併せ持つ医薬組成物。
【選択図】 なし。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アディポネクチンの新規な用途等に関する。詳しくは、アディポネクチン又はアディポネクチン様の作用を有する物質を有効成分とする、各種癌、心肥大、腸ポリープ、感染症、線維症及び炎症性疾患の治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
アディポネクチンは、主に脂肪組織にて発現している、247アミノ酸からなる脂肪組織由来の生理活性物質(アディポカイン)の一種であり、N末端のシグナル配列、ノンホモロガス配列、コラーゲン様ドメインおよびC末端のグロビュラードメインの主に4つのドメインで構成されている。コラーゲンドメインとグロビュラードメインとの間にはプロテアーゼ切断部位が存在し、該切断部位で切断されたC末側断片はグロビュラーアディポネクチンと呼ばれる。
アディポネクチンの血清中蛋白質濃度は肥満糖尿病マウスや肥満や2型糖尿病の患者において減少しており、これらの病態に関与していることが示唆されている(非特許文献1、2)。実際にマウスに対してアディポネクチンをオスモティックポンプで皮下投与した場合、血糖降下作用、血清脂質低下作用が認められることが報告されている他、グロビュラーアディポネクチンを高発現させたob/obマウスでは、非トランスジェニックob/obマウスと比較して、空腹時血糖ならびに糖負荷後の血糖値が共に有意に低下しており、グロビュラーアディポネクチンが抗糖尿病作用、血清脂質低下作用を有することが示されている(非特許文献3,4)。
また、高脂肪食を負荷したマウスに対してグロビュラーアディポネクチンを投与すると、コントロールと比較して、肥満発症が抑制され(非特許文献5)、アディポネクチンおよびグロビュラーアディポネクチンは抗肥満作用を示すことが報告されている。
また、アデノウイルスを用いてアディポネクチンを発現させたApoE欠損マウスにおいて、ならびにグロビュラーアディポネクチンを高発現させたApoE欠損マウスにおいて、動脈硬化の病巣の形成が抑制されることが報告されており、アディポネクチンが抗動脈硬化作用を有することが示唆されている(非特許文献4、6)。
【0003】
しかしながら、上記以外の疾患に対してアディポネクチンが関与しているかどうかについては知られていなかった。
【0004】
一方、ロジグリタゾンやピオグリタゾン等のチアゾリジンジオン系化合物は、核内受容体PPAR(peroxisome proliferator−activated receptor)のγサブタイプへ作用することが知られている。これらのPPARγアゴニストは糖尿病、腎癌、膵癌、舌癌、甲状腺癌、食道癌、胃癌、前立腺癌、大腸癌、肺癌、乳癌および肝癌などの各種癌、腸ポリープ、動脈硬化、心肥大、感染症、ならびに線維症等の疾患に対して有効であることが報告されている。例えば癌に対するPPARγアゴニストの作用としては、食道癌細胞株における抗腫瘍効果(非特許文献7)、大腸癌の前癌病変であるACFの形成の抑制(非特許文献8)、胃癌株6株における増殖抑制及びDNA断片化(非特許文献9)等が報告されている。しかしながら、アディポネクチンがPPARγの機能に影響を与えるか否かは不明であった。
【0005】
また、アスピリン、インドメタシン等の抗炎症剤は、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害作用を有するが、その阻害作用はCOX−1/COX−2に対して非選択的であり、消化管障害が副作用として問題となっている。それに対して、近年COX−2選択的なシクロオキシゲナーゼ阻害剤が開発され、消化管障害を伴わない抗炎症剤として有用であることが知られている。しかしながら、アディポネクチンがシクロオキシゲナーゼの機能に関与しているか否かについては全く知られていなかった。
【0006】
また、マトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinase;MMP)は、コラーゲンを中心とする細胞外マトリックスの蛋白質分解に関わる一連の酵素であり、MMP1〜3、7〜28の多種類のサブタイプが知られている。MMPは、胚形成、再生、再吸収、リモデリング、創傷治癒、血管新生などの多岐にわたる生理的機能を担っているが、その異常な機能亢進が様々な疾患の原因となっている。具体的には、慢性関節リウマチ等の炎症性疾患、変形性関節症、癌の病巣部への転移・湿潤、喘息(非特許文献10)などの増悪因子であることが知られている。
例えば、胃癌において、MMP−1,2,9,7,14が関与していることが報告されている(非特許文献11)。また、特に、MMP−2,7,9が癌細胞による組織破壊に機能すると考えられている(非特許文献12)。
実際に、MMP阻害作用を有する化合物が癌転移抑制剤、または、慢性関節リウマチ、変形性関節症、もしくは歯周病の治療剤として研究・開発されている。
しかしながら、アディポネクチンと上記MMPの関係は知られていなかった。
【0007】
【非特許文献1】
J. Biol. Chem. 271:10697−10703, 1996
【非特許文献2】
Biochem. Biophys. Res. Commun. 257:79−83, 1999
【非特許文献3】
Nat. Med. 7:941−946, 2001
【非特許文献4】
J. Biol. Chem. 278:2461−2468, 2003
【非特許文献5】
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:2005−2010, 2001
【非特許文献6】
Circulation 106:2767−2770, 2002
【非特許文献7】
日本癌学会第61回総会記事, 431, 2002
【非特許文献8】
Cancer. Res. 61:2424−2428, 2001
【非特許文献9】
日本癌学会第61回総会記事 163, 2002
【非特許文献10】
Current Opin. Pulm. Med. 9:28, 2003
【非特許文献11】
日本臨床 59巻増刊号4, 107−112, 2001
【非特許文献12】
Molecular Medicine 39, 2002年
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、新たなメカニズムによる、各種癌、心肥大、腸ポリープ、感染症、線維症、及び炎症性疾患等の治療剤を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アディポネクチンの機能を解明し、既に知られている糖尿病、高脂血症、動脈硬化症以外の疾患の治療剤としても適用すべく鋭意検討を行った。
すなわち、グロビュラーアディポネクチントランスジエニックマウスとApoE欠損マウスを交配して作成したグロビュラーアディポネクチントランスジエニックApoE欠損マウスとApoE 欠損マウスに高コレステロール食を負荷し、該マウスから摘出した起始部から下大動脈分岐部までの大動脈(以下、本明細書において「大動脈」ともいう。)において、アディポネクチンがどのような遺伝子の発現を制御しているかを調べた。その結果、アディポネクチンがPPARγの発現を亢進するという新しい知見を見出した。従って、アディポネクチン、アディポネクチン断片及びアディポネクチン様作用を有する物質は、PPARγのアゴニストが有効性を示す疾患、即ち、糖尿病、高脂血症、動脈硬化症のみならず、各種癌、心肥大、腸ポリープ、感染症及び線維症の治療剤となる。
また、マクロファージ系の培養細胞、すなわちTHP−1細胞に対してLPS存在下でアディポネクチン又はグロビュラーアディポネクチンを添加した。細胞から抽出したRNAを用いてDNAチップ解析を行い、アディポネクチンによって発現量が変動する遺伝子を同定した。
その結果、驚くべきことに、アディポネクチンはCOX−1の発現には影響を与えないにもかかわらず、COX−2の発現を抑制することを見出した。従って、アディポネクチン及びアディポネクチン様作用を有する物質は、COX−2特異的に発現を抑制するため、優れた炎症性疾患の治療又は予防剤となる。
また、本発明者らは、上記細胞において、MMP−1,8及び10の発現量が低下することを見出した。従って、アディポネクチン及びアディポネクチン様作用を有する物質は、癌(特に癌転移)等のMMPの機能亢進により増悪される疾患の治療又は予防剤となる。
本発明は、上記の知見を基に完成するに至ったものである。
すなわち本発明は、
[1]アディポネクチン、アディポネクチン断片、又はアディポネクチン様作用を有する物質を有効成分として含有する、PPARγ機能亢進剤、
[2] 癌、心肥大、腸ポリープ、感染症又は線維症の治療又は予防剤として用いられることを特徴とする、[1]に記載のPPARγ機能亢進剤、
[3] アディポネクチン、アディポネクチン断片、又はアディポネクチン様作用を有する物質を有効成分として含有する、MMP機能抑制剤、
[4] MMPが、MMP−1、MMP−8及び/又はMMP−10である、[3]に記載のMMP機能抑制剤、
[5] 癌、炎症性疾患、変形性関節症、肩関節周囲炎、頚肩腕症候群又は歯周病の治療又は予防剤であることを特徴とする、[3]又は[4]に記載のMMP機能抑制剤、
[6] アディポネクチン、アディポネクチン断片、又はアディポネクチン様作用を有する物質を有効成分として含有する、COX−2機能抑制剤、
[7] COX−1に対して作用しないことを特徴とする、[6]に記載のCOX−2機能抑制剤、
[8] 炎症性疾患の治療又は予防剤であることを特徴とする、[6]又は[7]に記載のCOX−2機能抑制剤、及び、
[9] 消化管障害を起こす頻度及び/又は程度が低いことを特徴とする[8]に記載のCOX−2機能抑制剤、に関する。
【0010】
【本発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
「アディポネクチン」とは、脂肪組織において高発現しているアディポカインの一種であり、その配列は、ヒト型については配列番号2、又はGenBank(アクセッション番号:D45371)に記載されている。本明細書において、「アディポネクチン」という用語を用いる場合、前記ヒトアディポネクチンやその同族体及び変異体などを包含する。該同族体としてはマウスアディポネクチン(配列番号4又はGenBank (アクセッション番号:U37222)に記載されている。)等が知られている。
また、現在公知になっていない同族体についても、配列番号1に記載のDNA配列の任意のDNA断片をプローブとして用いて、当業者によく知られた方法で対応する動物種のcDNAライブラリーからクローニングして得ることができる。具体的な手順は、「Sambrookら著、Molecular Cloning 2nd Edition(1989)」等に記載されている。
【0011】
前記「変異体」としては、前記ヒトアディポネクチンもしくはその同族体に対して、1以上のアミノ酸の置換、欠失、付加、挿入等の変異を施したポリペプチド等が挙げられ、アディポネクチン活性を保持している限り、本発明のアディポネクチンに含まれる。
具体的には、アディポネクチンは、以下の(a)〜(d):
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含有するポリペプチド、
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が置換、欠失、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなり、かつアディポネクチン活性を有するポリペプチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有し、かつアディポネクチン活性を有するポリペプチド、または
(d)配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなり、かつアディポネクチン活性を有するポリペプチド、が挙げられる。
該アディポネクチン活性としては、
(1) C2C12細胞における、AMPK活性化作用およびACC抑制作用、グルコース取り込み促進活性、脂肪酸酸化促進活性(Nat. Med. 8:1288−1295, 2002) ;
(2) 初代培養肝細胞におけるAMPK活性化作用(Nat. Med. 8:1288−1295, 2002)、グルコース放出抑制作用(Nat. Med. 7:947−953, 2001);
(3) 血管内皮細胞におけるVCAM−1、ICAM−1、E−Selectin(Circulation 100:2473−2476, 1999);
(4) マクロファージにおける、コレステロールエステル量の低下(Eur. J. Clin. Invest. 27:285, 1997)、リピッドドロップレット蓄積低下(Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 19:1333, 1999)、スカベンジャーレセプター(Biochem. Biophys. Res. Commun. 22:277, 2000)、又はリポプロテインリパーゼ(LPL)発現抑制活性(Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 15:522, 1995)、又はTNF−α産生抑制活性;
(5)血管平滑筋細胞の増殖・遊走抑制活性(Circulation 105:2893, 2002) ;
(6)コラーゲンI、III、V結合活性(Horm. Metab. Res. 32:47−50, 2000)、
等を挙げることができる。前記(1)〜(6)に記載されたうちの1又は複数の活性を維持する限り、「アディポネクチン活性を有する」の範疇に含まれる。ここで「アディポネクチン活性を有する」とは好ましくは、配列番号2もしくは配列番号4で表されるアディポネクチン、又は、配列番号6で表されるグロビュラーアディポネクチンと同等の活性を示すことを意味する。
前記(1)〜(6)の活性(作用)はそれぞれ当業者に公知のそれぞれ上記の文献に記載の方法で確認することができる。
【0012】
具体的には、初代培養肝細胞におけるグルコース放出抑制作用をBerg. et al., Nat. Med. 7:947−953, 2001に記載された方法で、以下のように測定することができる。すなわち、SDラット由来の肝細胞をBerry and Friend J. Cell. Biol. 43:506, 1969およびLeffert et al., Methods. Enzymol. 58:536, 1979に記載された方法により採取し、ラットテイルコラーゲンIでコートされた24ウエルプレートに播種する。接着後、グルコースを含む培地(デキサメタゾンおよびインスリンは含まない)を添加し一昼夜加温する。翌朝培地を交換し、インスリンおよびアディポネクチンを添加し24時間刺激する。刺激後、アラニン、バリン、グリシン、ピルビン酸、乳酸を含む培地(グルコースは含まない)で6時間加温する。その後培地中に放出されたグルコースを、Trinder assay(シグマ社製)等を用いて測定することができる。
【0013】
また、コレステロールエステル量の低下をIshigami et al., Eur. J. Clin. Invest. 27:285, 1997に記載された方法で、以下のように測定することができる。すなわち、密度勾配遠心により末梢血から単離した単核球を、10%ヒト型AB血清を含む培地にて37℃で1時間加温する。PBSにて洗浄後、接着細胞を同じ培地にて培養する。2、3日毎に培地を交換する。コレステロールエステル量の測定は、アディポネクチンで3日間処理した細胞中のトータルコレステロール量からフリーコレステロール量を引いて求める。すなわち、細胞からフリーコレステロール・トータルコレステロールをヘキサン/イソプロパノールにて抽出し、イソプロパノールに懸濁する。フリーコレステロールは、コレステロールオキシダーゼを含む反応液に上清を添加し1時間加温したした後、励起310nm、発光407nmにて蛍光強度を測定し、スタンダードとの比較からフリーコレステロールの濃度を測定することができる。トータルコレステロールは、コレステロールオキシダーゼおよびコレステロールエステラーゼを含む反応液に上清を添加し2時間加温した後、励起310nm、発光407nmにて蛍光強度を測定し、スタンダードとの比較からトータルコレステロールの濃度を測定することができる。
【0014】
本明細書において、「1以上のアミノ酸の置換、欠失、付加、挿入等の変異を施したポリペプチド」とは、例えば、ポリペプチドが細胞内で受けるプロセシング、動物間の種差、個体差、組織間の差異等により天然に生じる変異や、人為的なアミノ酸の変異等が含まれる。なお、ポリペプチドにおけるアミノ酸の変異数や変異部位は、その生物学的機能、すなわちアディポネクチン活性が保持される限り制限はない。生物学的機能を喪失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個置換、挿入あるいは欠失されればよいかを決定する指標は、当業者に周知のコンピュータプログラム、例えばDNA Star softwareを用いて見出すことができる。例えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内であり、さらに好ましくは全アミノ酸の1%以内である。また前記欠失、付加、挿入、又は置換のうち、特にアミノ酸の置換に係る改変が好ましく、置換されるアミノ酸は、置換後に得られるポリペプチドが該ポリペプチドの生物学的機能を保持している限り、特に制限されないが、タンパク質の構造保持の観点から、残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性並びに両親媒性など、置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。
例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe及びTrpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn及びGlnは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Asp及びGluは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、またLys、Arg及びHisは互いに塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属するアミノ酸を適宜選択することができる。
【0015】
前記「1以上のアミノ酸の置換、欠失、付加、挿入等の変異を施したポリペプチド」を人為的に行う場合の手法としては、例えば、対象となるポリペプチドをコードするDNAに対して慣用の部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res. 12:9441−9456, 1984、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
【0016】
前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個、又はそれ以上である。かかる改変の数は、元のポリペプチドに対して80%以上の配列同一性を有し、かつ該ポリペプチドのアディポネクチン活性を維持する範囲であればよい。前記配列同一性は、好ましくは、80%、更に好ましくは90%、更に好ましくは95%である。
【0017】
本発明において「配列同一性」とは、2つのDNA又は2つのポリペプチド間の、配列の同一性及び相同性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象のDNA又はポリペプチドは、2つの配列の最適なアラインメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。このような配列同一性に関しては、例えば、Vector NTIを用いて、ClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res. 22:4673−4680, 1994を利用してアラインメントを作成することにより算出することができる。尚、配列同一性は、配列解析ソフト、具体的にはVector NTI、GENETYX−MACや公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共データベースは、例えば、ホームページアドレスhttp://www.ddbj.nig.ac.jpにおいて、一般的に利用可能である。
【0018】
前記ストリンジェントな条件は、Berger and Kimmel (Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol.152, Academic Press, San Diego CA, 1987) に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。
例えば、6xSSC(1.5M NaCl、0.15M クエン酸三ナトリウムを含む溶液を10xSSCとする)、50%フォルムアミドを含む溶液中で45℃にてハイブリッドを形成させた後、洗浄する。ハイブリダイズ後の洗浄条件として、例えば通常「1xSSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5xSSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1xSSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。具体的には、このような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに該鎖と少なくとも90%、好ましくは95%の相同性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
【0019】
本明細書において、前記(a)〜(d)で表されるポリペプチドのアミノ末端もしくはリジンの側鎖アミノ基等がアシル化、アルコキシカルボニル化もしくはアルキル化された誘導体もまた、アディポネクチンの「変異体」の範疇である。
具体的には、アミノ基がアセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基等に変換された誘導体を例示できる。また、アディポネクチンのカルボキシル末端、又はアスパラギン酸もしくはグルタミン酸の側鎖がエステル化もしくはアミド化された誘導体が挙げられ、カルボキシ基がエトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、カルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基等に変換された誘導体を例示できる。また、システインのメルカプト基が酸化され、ポリマー(ダイマー、ポリマー等)や分子内で環状構造を形成している誘導体が挙げられる。また、システイン、セリン、スレオニンもしくはチロシンの水酸基がエーテル化もしくはアシル化された誘導体等が挙げられ、水酸基又はチオール基がメトキシ基、メチルチオ基、エトキシ基、エチルチオ基、アセチルオキシ基、アセチルチオ基、プロパノイルオキシ基、プロパノイルチオ基等に変換された誘導体が挙げられる。
【0020】
また、本明細書において、任意の1以上のアミノ酸残基を非天然型アミノ酸へ置換した誘導体もまた、上記アディポネクチン活性を保持している限り、アディポネクチンの「変異体」の範疇である。
【0021】
前記「アミノ酸残基を非天然型アミノ酸へ置換した誘導体」における非天然型アミノ酸は、天然の蛋白質を構成する20種類のL−α−アミノ酸(天然型アミノ酸)以外の任意のアミノ酸を表し、D−アミノ酸、β−アミノ酸、γ−アミノ酸、オルニチン、ターシャリーロイシン、ノルロイシンもしくはヒドロキシプロリン等の天然型アミノ酸の側鎖を改変したアミノ酸、Aib等のα−アルキル化アミノ酸、N−メチルグリシン等のN−アルキルアミノ酸等が挙げられる。
【0022】
上記誘導体において、修飾されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数残基、又はそれ以上である。かかる改変の数は、元のポリペプチドに対して80%以上の配列同一性を有し、かつアディポネクチン活性を維持する範囲であればよい。前記配列同一性は、好ましくは、80%、更に好ましくは90%、更に好ましくは95%である。
【0023】
本明細書において、「アディポネクチン断片」とは、前記アディポネクチン(ヒトアディポネクチンの同族体及び変異体を含む。)のグロビュラードメインを含む任意のアディポネクチン断片を表す。ここでグロビュラードメインとは、C末端約138残基からなる断片を表す。該アディポネクチン断片として、具体的には配列番号:6で表されるグロビュラーアディポネクチンが挙げられる。
【0024】
アディポネクチンは、公知の配列情報(GenBank アクセッション番号:U37222)及び配列番号:1に記載された配列に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養および培養物からのタンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1989), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))などに準じて行うことができる。
【0025】
具体的には、アディポネクチンをコードする遺伝子に開始コドンを付加し、所望の宿主細胞中で発現できる組み換えDNA(発現ベクター)を作製し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養して、得られる培養物から、目的タンパク質を回収することによって、目的のポリペプチドを得ることができる。
【0026】
以下具体的に説明する。
アディポネクチンをコードする遺伝子は、公知文献(Gene 229:1158−1162, 1999)、GenBankにおいてアクセッション番号: D45371として登録されている配列情報、本明細書配列番号1に記載された配列情報をもとに適当なPCRプライマーを作製し、例えばMolecular Cloning 2nd Edt. Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)等の基本書に従ってPCR反応を行うことなどにより、容易にクローニングできる。
また、変異を施す場合は前記Molecular Cloning等の基本書を参考にして容易に行うことができる。さらに、このようにしてクローニングされたアディポネクチンをコードする遺伝子を用いてアディポネクチンを発現させる方法としては、例えば、前述のMolecular Cloning 等の多くの成書や文献に基づいて実施することができる。発現させたいDNAの上流に、場合によっては転写を制御するプロモーター配列の制御遺伝子を付加し、適当なベクター(例えばレトロウイルスベクターpLJなど)に組み込むことにより、宿主細胞内で複製し、機能する発現プラスミドを作製する。次に発現プラスミドを適当な宿主細胞に導入して形質転換体を得る。宿主細胞としては、大腸菌などの原核生物、酵母のような単細胞真核生物、昆虫、動物などの多細胞真核生物の細胞などが挙げられる。また、宿主細胞への遺伝子導入法としては、リン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン法、電気パルス法などがある。形質転換体は、適当な培地で培養することによってフィブロネクチンタンパク質を生産する。以上のようにして得られた培養液中のフィブロネクチンは一般的な生化学的方法によって単離精製することができる。
以上のようにして作製されたアディポネクチンがアディポネクチン活性を有しているか否かは、例えば上記の方法に順じてアディポネクチン活性を測定し、確認することができる。
【0027】
一方、アディポネクチン断片についても、該断片のアミノ酸配列に基づいて、上記アディポネクチンと同様の方法で、製造することができる。
【0028】
また、本発明のアディポネクチンおよびアディポネクチン断片は、一般的な化学合成法(ペプチド合成)によって製造することもできる。ここで、ペプチドの合成については、通常のペプチド化学において用いられる方法に準じて行うことができる。該公知方法としては文献(ペプタイド・シンセシス(Peptide Synthesis),Interscience,New York,1966;ザ・プロテインズ(The Proteins),Vol 2,Academic Press Inc.,New York,1976;ペプチド合成,丸善(株),1975;ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株),1985;医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成,広川書店,1991)などに記載されている方法が挙げられる。
【0029】
本明細書において、アディポネクチン様作用を有する物質とは、上記のアディポネクチン活性を有する、任意の、天然もしくは非天然の、ポリペプチド、核酸、有機化合物等公知化合物又は新規化合物を表す。コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された有機化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレー法により作製されたランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分などが挙げられる。好ましくは分子量200〜2000の化合物、更に好ましくは分子量300〜800の化合物である。核酸の例としては、遺伝子治療用のアディポネクチン遺伝子を挙げることができる。
【0030】
本明細書において、アディポネクチン遺伝子とは、配列番号:1で表されるヒトアディポネクチン遺伝子やその同族体、及び変異体等を包含する趣旨で用いられる。ヒトアディポネクチン遺伝子の配列は又、Genbank Accession 番号:D45371に記載されている。
前記同族体としては、配列番号:3に記載のマウスアディポネクチン遺伝子を例示することができ、Genbank Accession 番号:U37222に記載されている。
【0031】
本明細書において「アディポネクチン遺伝子」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。また当該「アディポネクチン遺伝子」には、特定の塩基配列(配列番号:1)で示されるポリヌクレオチドだけでなく、これらによりコードされるタンパク質と生物学的機能が同等であるタンパク質(例えば同族体(ホモログやスプライスバリアントなど)、変異体及び誘導体)をコードするポリヌクレオチドが包含される。かかる同族体、変異体または誘導体をコードするポリヌクレオチドとしては、具体的には、アディポネクチン遺伝子は、以下の(a)〜(d):
(a)配列番号:1に記載の塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:1に記載の塩基配列において、1個以上の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されたポリヌクレオチド、
(c)配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の配列同一性を有すポリヌクレオチド、
(d)配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、からなる群より選択されるポリヌクレオチドからなり、該ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドがアディポネクチン活性を有することを特徴とするポリヌクレオチドである。
【0032】
前記(b)における「1以上の塩基の置換、欠失、付加、挿入等の変異を施したポリヌクレオチド」とは、例えば、ポリヌクレオチドが細胞内で受けるプロセシング、動物間の種差、個体差、組織間の差異等により天然に生じる変異や、又は人為的な塩基の変異等が含まれる。なお、アディポネクチン遺伝子における塩基の変異数や変異部位は、該遺伝子がコードするタンパク質の生物学的機能、すなわちアディポネクチン活性が保持される限り制限はない。変異数は、典型的には、全塩基の10%以内であり、好ましくは全塩基の5%以内であり、さらに好ましくは全塩基の1%以内である。
【0033】
前記「1以上の塩基の置換、欠失、付加、挿入等の変異を施したポリヌクレオチド」を人為的に行う場合の手法としては、例えば、対象となるポリヌクレオチドに対して慣用の部位特異的変異導入を施す手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441−9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
【0034】
前記で改変される塩基の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個、又はそれ以上である。かかる改変の数は、元のポリヌクレオチドに対して80%以上の配列同一性を有し、かつ該ポリヌクレオチドがコードするタンパク質のアディポネクチン活性を維持する範囲であればよい。前記配列同一性は、好ましくは、80%、更に好ましくは90%、更に好ましくは95%である。
【0035】
例えばヒト由来のタンパク質のホモログをコードする遺伝子としては、当該タンパク質をコードするヒト遺伝子に対応するヒトやラットなど他生物種の遺伝子が例示でき、これらの遺伝子(ホモログ)は、HomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定することができる。具体的には、特定ヒト塩基配列をBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873−5877, 1993、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)にかけて一致する(Scoreが最も高く、E−valueが0でかつIdentityが100%を示す)配列のアクセッション番号を取得する。そのアクセッション番号をUniGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/)に入力して得られたUniGene Cluster ID(Hs.で示す番号)をHomoloGeneに入力する。
結果として得られた他生物種遺伝子とヒト遺伝子との遺伝子ホモログの相関を示したリストから、特定の塩基配列で示されるヒト遺伝子に対応する遺伝子(ホモログ)として他生物種の遺伝子を選抜することができる。
なお、アディポネクチン遺伝子は、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン、またはイントロンを含むことができる。
【0036】
前記(d)における「ストリンジェントな条件でハイブリダイズする」に関して、ここで使用されるハイブリダイゼーションの条件は、上記のアディポネクチン(蛋白質)における(d)と同じである。
すなわち、「ストリンジェントな条件」は、Berger and Kimmel (1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA) に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。
例えば、6xSSC(1.5M NaCl、0.15M クエン酸三ナトリウムを含む溶液を10xSSCとする)、50%フォルムアミドを含む溶液中で45℃にてハイブリッドを形成させた後、洗浄する。ハイブリダイズ後の洗浄条件として、例えば通常「1xSSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5xSSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1xSSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。
【0037】
本発明は、アディポネクチン、アディポネクチン断片、又はアディポネクチン様作用を有する物質を有効成分として含有するPPARγ機能亢進剤を提供する。
ここで、「PPARγ機能亢進剤」とは、転写因子であるPPARγが、PPAR応答配列と結合することによって生ずる転写活性を促進する薬剤を表す。該転写活性は、具体的には、PPARγ遺伝子およびPPAR応答配列の下流にレポータ遺伝子を有する細胞に対して刺激した際の、レポータ遺伝子の発現量を指標として測定することができる(EMBO J. 15:5336−48, 1996)。
本明細書において、「PPARγ機能亢進剤」という場合、好ましくはPPARγの発現を増加する物質である。
PPARγ機能亢進剤は、癌、心肥大、腸ポリープ、感染症又は線維症の治療又は予防剤として用いられる。すなわち本発明は、アディポネクチン、アディポネクチン断片又はアディポネクチン様作用を有する物質を有効成分として含有する、癌、心肥大、腸ポリープ、感染症又は線維症の治療又は予防剤をも包含する。
【0038】
また、本発明は、アディポネクチン、アディポネクチン断片、又はアディポネクチン様作用を有する物質を有効成分として含有する、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)機能抑制剤を提供する。更に詳しくは、アディポネクチン、アディポネクチン断片及びアディポネクチン様作用を有する物質は、シクロオキシゲナーゼ−1(COX−1)に対しては機能抑制作用を示さないことを特徴とする。
ここで、「COX−2機能抑制剤」とは、アラキドン酸等の脂肪酸に2分子の酸素原子を導入添加し、PGGを合成する脂肪酸シクロオキシゲナーゼ反応とPGGの15−ヒドロペルオキシドを切断し、PGHを精製するヒドロペルオキシダーゼ反応の2種類の反応を触媒する酵素であるシクロオキシゲナーゼ−2の酵素活性を抑制する物質を表す。該酵素活性の抑制作用は公知の方法で測定することができる。
本明細書において、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)機能抑制剤とは、好ましくはCOX−2の発現を抑制する物質である。
【0039】
従って、アディポネクチン、アディポネクチン断片及びアディポネクチン様作用を有する物質は、消化管障害を伴わない副作用の軽減された、慢性関節リウマチもしくは多発性硬化症等の炎症性疾患の治療又は予防剤として用いることができる。すなわち本発明は、アディポネクチン、アディポネクチン断片又はアディポネクチン様作用を有する物質を有効成分として含有する炎症性疾患治療又は予防剤をも包含する。
【0040】
本発明は、アディポネクチン、アディポネクチン断片、又はアディポネクチン様作用を有する物質を有効成分として含有する、マトリクスメタロプロテアーゼ機能抑制剤(MMP機能抑制剤)を提供する。
「MMP」とは、コラーゲン等の細胞外マトリクスを分解する酵素であり、MMP−1〜28(4,5,6は除く)の多くのサブタイプが存在する。該MMPは、細胞外マトリックスのほぼすべてのコンポーネント(コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン等)を基質とする酵素であり、その機能亢進は、種々の疾患の要因となることが知られている。
本明細書において、MMP機能抑制剤とは、好ましくはMMPの発現を抑制する物質である。
従って、アディポネクチン、アディポネクチン断片及びアディポネクチン様作用を有する物質は、MMP機能抑制剤が有効である、癌(特に癌転移)、慢性関節リウマチや多発性硬化症等の炎症性疾患、変形性関節症、肩関節周囲炎、頚肩腕症候群、歯周病、喘息等の治療又は予防剤として用いることができる。従って本発明は、アディポネクチン、アディポネクチン断片又はアディポネクチン様作用を有する物質を有効成分として含有する上記疾患の治療又は予防剤をも包含する。
アディポネクチン、アディポネクチン断片及びアディポネクチン様作用を有する物質は、中でもMMP−1、8、10に対する機能抑制作用を有する。従って、アディポネクチン、アディポネクチン断片及びアディポネクチン様作用を有する物質は、MMP−1、8、及び/又は10が増悪因子となっている疾患の治療もしくは予防剤として特に好ましい。
【0041】
本発明のアディポネクチン、アディポネクチン断片、又はアディポネクチン様作用を有する物質は、PPARγ機能亢進作用、COX−2機能抑制作用、及び、MMP−1、8、10機能抑制作用を併せ持つことを特徴とする上記疾患の治療又は予防剤として有用である。
【0042】
本発明のアディポネクチン、アディポネクチン断片、又はアディポネクチン様作用を有する物質は、これらを医薬品として用いるにあたり、そのままもしくは公知の薬学的に許容される担体(賦形剤、希釈剤、増量剤、結合剤、滑沢剤、流動助剤、崩壊剤、界面活性剤等などが含まれる)や慣用の添加剤などと混合して医薬組成物として調製することができる。当該医薬組成物は、調製する形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤などの経口投与剤;注射剤、点滴剤、外用剤、坐剤などの非経口投与剤)等に応じて、全身的にまたは局所的に、経口投与または非経口投与することができる。非経口投与する場合には、静脈投与、皮内投与、皮下投与、又は膝関節もしくは股関節への関節内投与することが可能である。
また投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象または患者の年齢、体重、症状などによって異なり一概に規定できないが、通常、1日投与用量として、数mg〜2g程度、好ましくは数十mg程度を、1日1〜数回にわけて投与することができる。
【0043】
上記有効成分物質がアディポネクチン遺伝子である場合は、これらを遺伝子治療用ベクターに組込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。これらの場合も、遺伝子治療用組成物の投与量、投与方法は患者の体重、年齢、症状などにより変動し、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【0044】
上記遺伝子治療につき詳述すれば、該遺伝子治療は、通常のこの種の遺伝子治療と同様にして、例えばアディポネクチン遺伝子またはそれらの化学的修飾体(以下本遺伝子と称することがある。)を直接患者の体内に投与することにより目的遺伝子の発現を制御する方法、もしくはこれらの遺伝子を患者の標的細胞に導入することにより該細胞による目的遺伝子の発現を制御する方法により実施できる。
【0045】
ここで前記化学修飾体としては、例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホトリエステル、アルキルホスホナート、アルキルホスホアミデートなどの、細胞内への移行性または細胞内での安定性を高め得る誘導体(”Antisense RNA and DNA” WILEY−LISS刊、1992年、pp.1−50、J. Med. Chem. 36:1923−1937, 1993)が含まれる。これらは常法に従い合成することができる。
【0046】
本遺伝子は、その投与に当たり、通常慣用される安定化剤、緩衝液、溶媒などを用いて製剤化され得る。
【0047】
本遺伝子を患者の標的細胞に導入する方法において、用いられるポリヌクレオチドは、好ましくは100塩基以上、より好ましくは300塩基以上、さらに好ましくは500塩基以上の長さを有するものとすればよい。また、この方法は、生体内の細胞に遺伝子を導入するin vivo法および一旦体外に取り出した細胞に遺伝子を導入し、該細胞を体内に戻すex vivo法を包含する(日経サイエンス, 1994年4月号, 20−45頁、月刊薬事, 36 (1), 23−48 (1994)、実験医学増刊, 12 (15), 全頁 (1994)など参照)。この内ではin vivo法が好ましく、これには、ウイルス的導入法(組換えウイルスを用いる方法)と非ウイルス的導入法がある(前記各文献参照)。
【0048】
上記組換えウイルスを用いる方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルスなどのウイルスゲノムにアディポネクチン遺伝子のポリヌクレオチドを組込んで生体内に導入する方法が挙げられる。この中では、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルスなどを用いる方法が特に好ましい。非ウイルス的導入法としては、リポソーム法、リポフェクチン法などが挙げられ、特にリポソーム法が好ましい。他の非ウイルス的導入法としては、例えばマイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法なども挙げられる。
【0049】
遺伝子治療用製剤組成物は、本遺伝子又はこれらを含む組換えウイルスおよびこれらウイルスが導入された感染細胞などを有効成分とするものである。該組成物の患者への投与形態、投与経路などは、治療目的とする疾患、症状などに応じて適宜決定できる。例えば注射剤などの適当な投与形態で、静脈、動脈、皮下、筋肉内などに投与することができ、また患者の疾患対象部位に直接投与、導入することもできる。in vivo法を採用する場合、遺伝子治療用組成物は、本遺伝子を含む注射剤などの投与形態の他に、例えば本遺伝子を含有するウイルスベクターをリポソームまたは膜融合リポソームに包埋した形態(センダイウイルス(HVJ)−リポソームなど)とすることができる。これらのリポソーム製剤形態には、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤などが含まれる。また、遺伝子治療用組成物は、本遺伝子を含有するベクターを導入されたウイルスで感染された細胞培養液の形態とすることもできる。これら各種形態の製剤中の有効成分の投与量は、治療目的である疾患の程度、患者の年齢、体重などにより適宜調節することができる。通常、患者成人1人当たり約0.0001−100mg、好ましくは約0.001−10mgが数日ないし数カ月に1回投与される量とすればよい。本遺伝子を含むレトロウイルスベクターの場合は、レトロウイルス力価として、1日患者体重1kg当たり約1x10pfu−1x1015pfuとなる量範囲から選ぶことができる。本意電子を導入した細胞の場合は、1x10細胞/body−1x1015細胞/body程度を投与すればよい。
【0050】
【実施例】
実施例1 マウス動脈硬化症モデルの作製および大動脈採取
雌性グロビュラーアディポネクチントランスジエニックApoE欠損マウス(J. Biol. Chem. 278:2461−2468, 2003)と雌性ApoE欠損マウスに高コレステロール食(1.25%コレステロール含有、オリエンタル酵母)を8週間負荷した後、起始部から下大動脈分岐部までの大動脈を摘出した。
【0051】
実施例2 マウス動脈硬化症モデル大動脈からのtotal RNAの調製
実施例1で採取したマウスの大動脈からtotal RNAを調製した。具体的には動脈硬化症モデルを作製し8週間高コレステロール食負荷後の大動脈にTRIZOL(Gibco−BRL社製)を添加し、ホモゲナイザーでつぶしてからそれぞれtotal RNAを調製した。なお、total RNAの調製は、TRIZOLを用いて付属のプロトコールに従って行った。得られたtotal RNAはDEPC処理水(ナカライテスク社製)に溶解した。
【0052】
実施例3 マウス動脈硬化症モデル大動脈のDNAチップ解析
実施例2で調製したtotal RNAを用いてDNAチップ解析を行った。なお、DNAチップ解析はAffymetrix社Gene Chip Murine Genome U74A version2を用いて行った。具体的には、解析は、(1) total RNAからの増幅によるcDNAの調製、(2) 該cDNAからラベル化cRNAの調製、(3) ラベル化cRNAのフラグメント化、(4) フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ、(5) プローブアレイの染色、(6) プローブアレイのスキャン、及び(7) 遺伝子発現解析、の手順で行った。
(1) total RNAからのリニア−増幅によるcDNAの調製
300 ngのtotal RNAからSuperScript Choice System(Invitrogen社製)、100 pmolのT7−(dT)24プライマー(T7プロモーター付加オリゴdTプライマー:Amersham社製)を用いてcDNAを合成した。合成したcDNAをDNA精製カラム(QIAGEN社製)で精製し、エタノール沈殿で濃縮した後当該cDNAを鋳型にしてMEGAscript T7 Kit(Ambion社製)を用いてin vitro転写によりcRNAを合成した。cRNAをRNA精製カラム(QIAGEN社製)で精製し、再度SuperScript Choice Systemを用いてcDNAを合成した。2回目のcDNA合成時のプライマーは、ファーストストランド(センス)合成時にはランダムヘキサマー(Applied Biosystems社製)を、セカンドストランド(アンチセンス)合成時にはT7−(dT)24プライマーを用いた(注:cRNA=アンチセンス)。合成したcDNAはDNA精製カラムで精製後、濃度を測定した。
(2) cDNAからラベル化cRNAの調製
各cDNA溶液5μL(150ng)に、DEPC処理水17μL、BioArray High Yield RNA Transcript Labeling Kit(ENZO社製)に含まれる10xHY Reaction Buffer 4μL、該キットに含まれる10xBiotin Labeled Ribonucleotides 4μL、該キットに含まれる10xDTT 4μL、該キットに含まれる10xRNase Inhibitor Mix 4μL、該キットに含まれる20xT7 RNA Polymerase 2μLを混合し、37℃で5時間反応させて、ラベル化cRNAを調製した。反応後、該反応液にDEPC処理水60μLを加えたのち、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いて添付プロトコールに従い、調製したラベル化cRNAを精製した。
(3) ラベル化cRNAのフラグメント化
各ラベル化cRNA 20μgを含む溶液に、5xFragmentation Buffer(200mMトリス−酢酸 pH8.1(Sigma社製)、 500mM酢酸カリウム(Sigma社製)、150mM酢酸マグネシウム(Sigma社製))8μLを加えた反応液40μLを、94℃で35分間加熱した後、氷中に置いた。これによって、ラベル化cDNAをフラグメント化した。
(4) フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ
各フラグメント化cRNA 40μLに、3nM Control Oligo B2(Amersham社製)6.7μL、20xEukaryotic Hybridization Controls 20μL、Herring sperm DNA(Promega社製)40μg、Acetylated BSA(Gibco−BRL社製)200μg、2xMES Hybridization Buffer(200mM MES、2M [Na], 40mM EDTA、0.02% Tween20 (Pierce社製)、pH6.5〜6.7) 200μL、及びDEPC処理水125.3μLを混合し、400μLのハイブリカクテルを得た。得られた各ハイブリカクテルを99℃で5分間加熱し、更に45℃で5分間加熱した。加熱後、室温で14,000rpm、5分間遠心分離し、ハイブリカクテル上清を得た。
一方、1xMESハイブリダイゼーションバッファーで満たしたMurine Genome U74A version2プローブアレイ(Affymetrix社製)を、ハイブリオーブン(Affymetrix社製)内で、45℃、60rpmで10分間回転させた後、1xMESハイブリダイゼーションバッファーを除去してプローブアレイを調製した。上記で得られたハイブリカクテル上清200μLを該プローブアレイにそれぞれ添加し、ハイブリオーブン内で45℃、60rpmで16時間回転させ、フラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを得た。
(5) プローブアレイの染色
上記で得られたハイブリダイズ済みプローブアレイそれぞれからハイブリカクテルを回収除去した後、Non−Stringent Wash Buffer(6xSSPE(20xSSPE(ナカライテスク社製)を希釈)、0.01%Tween20)で満たした。次にNon−Stringent Wash BufferおよびStringent Wash Buffer(100mM MES、0.1M NaCl、0.01%Tween20)をセットしたGeneChip Fluidics Station 400(Affymetrix社製)の所定の位置にフラグメント化cRNAとハイブリダイズしたプローブアレイを装着した。その後染色プロトコールEuKGE−WS2v4に従って、1次染色液(10μg/mL Streptavidin Phycoerythrin (SAPE)(Molecular Probe社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES(2−(N−Morpholino)ethanesulfonic Acid)、1M NaCl(Ambion社製)、0.05%Tween20)、 2次染色液(100μg/mL Goat IgG (Sigma社製)、3μg/mL Biotinylated Anti−Streptavidin antibody (Vector Laboratories社製)、2mg/mL Acetylated BSA、100mM MES、1M NaCl、0.05%Tween20)により染色した。
(6) プローブアレイのスキャン、及び (7) 遺伝子発現解析
染色した各プローブアレイをHP GeneArray Scanner(Affymetrix社製)に供し、染色パターンを読み取った。染色パターンをもとにGeneChip Workstation System(Affymetrix社製)によってプローブアレイ上の遺伝子の発現を解析した。次に、解析プロトコールに従ってNormalization、遺伝子発現の比較解析を行った。
【0053】
実施例4 動脈硬化症モデルマウスを用いた大動脈での遺伝子発現の変動解析 8週間高コレステロール食負荷後の雌性グロビュラーアディポネクチントランスジェニッテニックApoE欠損マウスの大動脈における遺伝子発現量(signal)を、8週間高コレステロール食負荷後の雌性ApoE欠損マウスの大動脈における発現量と、GeneChip Workstation System(Affymetrix社製)にある解析ツールComparison Analysisを用いて比較した。Comparison Analysisは解析プロトコールに基づいて行った。
これらの比較解析の結果から得られた、遺伝子発現量(signal)と遺伝子発現の増減の判定(Change)より、発現変動遺伝子を選抜した。
ApoE欠損マウスとグロビュラーアディポネクチントランスジェニック ApoE欠損マウスにおけるPPARγ遺伝子発現の結果を図1に示した。図1から明らかなように、グロビュラーアディポネクチントランスジェニックマウスとApoE欠損マウスを交配してグロビュラーアディポネクチントランスジェニックApoE欠損マウスを作成し、ApoE欠損マウスと遺伝子発現を比較すると、PPARγ遺伝子の増加が認められた。これは、グロビュラーアディポネクチンがPPARγ遺伝子の増加に関わることを示している。この結果から、ApoE欠損マウスにおいて、グロビュラーアディポネクチンの発現によりPPARγ遺伝子を増加させることを示し、グロビュラーアディポネクチンによるPPARγの発現制御が判明した。
【0054】
実施例5 LPS存在下アディポネクチンまたはグロビュラーアディポネクチンを添加したヒトTHP−1細胞の調製
ヒトTHP−1細胞を12 ウェルプレートに8 x 10の5乗個/ウェルにて播種し、10%ウシ胎児血清、12.5mM Hepes−HCl(pH7.4)、400ng/ml PMAを含むRPMI1640培地にて3日間培養することにより、マクロファージに分化させた。以下の因子を含むOPTI−MEM I培地に交換し、24時間培養後、培地を除去してTRIZOL(インビトロジェン社)にて細胞を溶解した。マニュアルに従って抽出したRNAを、さらにRNeasy Mini Kit(キアゲン社)を用いて精製した。
〔OPTI−MEM I培地〕
LPS(0.1μg/ml)
LPS + アディポネクチン 2.5μg/ml
LPS + グロビュラーアディポネクチン 0.5μg/ml
LPS + グロビュラーアディポネクチン 2.5μg/ml
【0055】
実施例6 LPS存在下アディポネクチンまたはグロビュラーアディポネクチンを添加したヒトTHP−1細胞のtotal RNAの調製
実施例5で採取したLPS存在下アディポネクチンまたはグロビュラーアディポネクチンを添加したヒトTHP−1細胞からtotal RNAを調製した。具体的にはヒトTHP−1細胞をマクロファージに分化させ、上記の因子を含むOPTI−MEM I培地に交換して24時間培養後培地を除去しTRIZOL(Gibco−BRL社製)を添加し、それぞれtotal RNAを調製した。なお、total RNAの調製は、TRIZOLを用いて付属のプロトコールに従って行った。得られたtotal RNAはDEPC処理水(ナカライテスク社製)に溶解した。
【0056】
実施例7 ヒトTHP−1細胞にアディポネクチンまたはグロビュラーアディポネクチン添加するDNAチップ解析
実施例6で調製したtotal RNAを用いて実施例3と同様の方法によりDNAチップ解析を行った。なお、DNAチップ解析はAffymetrix社Gene Chip Human Genome U133A を用いて行った。
(1) total RNAからcDNAの調製
実施例6で得られた各total RNA 10μgとT7−(dT)24プライマー(Amersham社製)100pmolを含む11μLの混合液を、70℃、10分間加熱した後、氷上で冷却した。冷却後、SuperScript Choice System for cDNA Synthesis(Gibco−BRL社製)に含まれる5xFirst Strand cDNA Buffer 4μL、該キットに含まれる0.1M DTT (dithiothreitol)2μL、該キットに含まれる10mM dNTP Mix 1μLを添加し、42℃で2分間加熱した。更に、該キットに含まれるSuper ScriptII RT 2μL(400U)を添加し、42℃で1時間加熱した後、氷上で冷却した。冷却後、DEPC処理水91μL、該キットに含まれる5xSecond Strand Reaction Buffer 30μL、10mM dNTP Mix 3μL、該キットに含まれるE. coli DNA Ligase 1μL(10U)、該キットに含まれるE. coli DNA Polymerase I 4μL(40U)、該キットに含まれるE. coli RNaseH 1μL(2U)を添加し、16℃で2時間反応させた。次いで、該キットに含まれるT4 DNA Polymerase 2μL(10U)を加え、16℃で5分間反応させた後、0.5M EDTA 10μLを添加した。次いで、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール溶液(ニッポンジーン社製)162μLを添加し、混合した。該混合液を、予め室温、14,000rpm、30秒間遠心分離しておいたPhase Lock Gel Heavy(エッペンドルフ社製)に移し、室温で14,000rpm、2分間遠心分離した後、145μLの水層をエッペンドルフチューブに移した。得られた溶液に、7.5M酢酸アンモニウム溶液72.5μL、エタノール362.5μLを加えて混合した後、4℃で14,000rpm、20分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨て、作製したcDNAを含むペレットを得た。その後、該ペレットに80%エタノール0.5mLを添加し、4℃で14,000rpm、5分間遠心分離した後、上清を捨てた。再度同様の操作を行った後、該ペレットを乾燥させ、DEPC処理水12μLに溶解した。
(2) cDNAからラベル化cRNAの調製
各cDNA溶液5μLに、DEPC処理水17μL、BioArray High Yield RNA Transcript Labeling Kit(ENZO社製)に含まれる10xHY Reaction Buffer 4μL、該キットに含まれる10xBiotin Labeled Ribonucleotides 4μL、該キットに含まれる10xDTT 4μL、該キットに含まれる10xRNase Inhibitor Mix 4μL、該キットに含まれる20xT7 RNA Polymerase 2μLを混合し、37℃で5時間反応させて、ラベル化cRNAを調製した。反応後、該反応液にDEPC処理水60μLを加えたのち、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いて添付プロトコールに従い、調製したラベル化cRNAを精製した。
(3) ラベル化cRNAのフラグメント化、(4) フラグメント化cRNAとプローブアレイとのハイブリダイズ、(5) プローブアレイの染色、(6) プローブアレイのスキャン、(7) 遺伝子発現解析はGene Chip Human Genome U133A を用い、実施例3の(3)〜(7)の方法に従った。
【0057】
実施例8 ヒトTHP−1細胞にLPS存在下でアディポネクチンまたはグロビュラーアディポネクチンを添加した時の遺伝子発現の変動解析
ヒトTHP−1細胞にLPS存在下でアディポネクチンまたはグロビュラーアディポネクチンを添加した時の遺伝子発現量(signal)を、ヒトTHP−1細胞にLPSを添加した時の発現量と、GeneChip Workstation System(Affymetrix社製)にある解析ツールComparison Analysisを用いて比較した。Comparison Analysisは解析プロトコールに基づいて行った。
これらの比較解析の結果から得られた、遺伝子発現量(signal)および遺伝子発現の増減の判定(Change)より、発現変動遺伝子を選抜した。
LPS存在下でヒトTHP−1細胞に対して、アディポネクチンおよびグロビュラーアディポネクチンを添加した場合のCOX−2遺伝子発現解析の結果を図2に示す。図2から明らかなように、アディポネクチンおよびグロビュラーアディポネクチンを処理したTHP−1細胞においては、COX−2の遺伝子発現の減少が認められた。
LPS存在下でTHP−1細胞に対して、アディポネクチンおよびグロビュラーアディポネクチンを添加した場合のCOX−1遺伝子発現の結果を図3、4に示す。図3、4から明らかなように、アディポネクチンおよびグロビュラーアディポネクチンを処理したTHP−1細胞においては、COX−1の遺伝子発現の変動は認められなかった。
これらの結果は、THP−1細胞に対して、アディポネクチンおよびグロビュラーアディポネクチンを処理することによりCOX−2遺伝子を選択的に減少させ、アディポネクチンおよびグロビュラーアディポネクチンが消化器障害の可能性が少ない抗炎症作用を有することを示している。
LPS存在下でヒトTHP−1細胞に対して、アディポネクチンおよびグロビュラーアディポネクチンを添加した場合のMMP−1、8、10遺伝子発現の結果を図5〜7に示す。図5〜7から明らかなように、アディポネクチンおよびグロビュラーアディポネクチンを処理したヒトTHP−1細胞においては、MMP−1、8、10遺伝子発現の減少が認められた。
この結果は、THP−1細胞に対して、アディポネクチンおよびグロビュラーアディポネクチンは、癌の転移に関わるMMP遺伝子の発現の減少を導くことが判明した。
【0058】
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【0059】
【発明の効果】
本発明により、各種癌、心肥大、腸ポリープ、感染症、線維症、及び炎症性疾患等の治療又は予防剤を提供することができる。詳しくは、アディポネクチン、アディポネクチン断片、又はアディポネクチン様作用を有する物質を有効成分として含有する、PPARγ機能亢進作用、COX1非選択的なCOX−2機能抑制作用、並びにMMP1,8及び10機能抑制作用を併せ持つ医薬組成物を提供することができる。
【0060】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ApoE欠損マウスとグロビュラーアディポネクチントランスジェニック ApoE欠損マウスにおけるPPARγ遺伝子の発現の結果を示すグラフである。
【図2】図2は、LPS存在下でヒトTHP−1細胞に対して、アディポネクチンおよびグロビュラーアディポネクチンを添加した場合のCOX−2遺伝子発現の結果を示すグラフである。
【図3】図3は、LPS存在下でヒトTHP−1細胞に対して、アディポネクチンおよびグロビュラーアディポネクチンを添加した場合のCOX−1遺伝子発現の結果を示すグラフである。プローブ205128_x_atのデータを示す。
【図4】図4は、LPS存在下でヒトTHP−1細胞に対して、アディポネクチンおよびグロビュラーアディポネクチンを添加した場合のCOX−1遺伝子発現の結果を示すグラフである。プローブ215813_s_atのデータを示す。
【図5】図5は、LPS存在下でヒトTHP−1細胞に対して、アディポネクチンおよびグロビュラーアディポネクチンを添加した場合のMMP遺伝子発現の結果を示すグラフである。MMP−1のデータを示す。
【図6】図6は、LPS存在下でヒトTHP−1細胞に対して、アディポネクチンおよびグロビュラーアディポネクチンを添加した場合のMMP遺伝子発現の結果を示すグラフである。MMP−8のデータを示す。
【図7】図7は、LPS存在下でヒトTHP−1細胞に対して、アディポネクチンおよびグロビュラーアディポネクチンを添加した場合のMMP遺伝子発現の結果を示すグラフである。MMP−10のデータを示す。

Claims (9)

  1. アディポネクチン、アディポネクチン断片、又はアディポネクチン様作用を有する物質を有効成分として含有する、PPARγ機能亢進剤。
  2. 癌、心肥大、腸ポリープ、感染症又は線維症の治療又は予防剤として用いられることを特徴とする、請求項1に記載のPPARγ機能亢進剤。
  3. アディポネクチン、アディポネクチン断片、又はアディポネクチン様作用を有する物質を有効成分として含有する、MMP機能抑制剤。
  4. MMPが、MMP−1、MMP−8及び/又はMMP−10である、請求項3に記載のMMP機能抑制剤。
  5. 癌、炎症性疾患、変形性関節症、肩関節周囲炎、頚肩腕症候群又は歯周病の治療又は予防剤であることを特徴とする、請求項3又は4に記載のMMP機能抑制剤。
  6. アディポネクチン、アディポネクチン断片、又はアディポネクチン様作用を有する物質を有効成分として含有する、COX−2機能抑制剤。
  7. COX−1に対して作用しないことを特徴とする、請求項6に記載のCOX−2機能抑制剤。
  8. 炎症性疾患の治療又は予防剤であることを特徴とする、請求項6又は7に記載のCOX−2機能抑制剤。
  9. 消化管障害を起こす頻度及び/又は程度が低いことを特徴とする請求項8に記載のCOX−2機能抑制剤。
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