JP2004256436A - アグリカナーゼ−1阻害剤 - Google Patents

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Yasunori Okada
保典 岡田
Gakuji Hashimoto
学爾 橋本
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Sumitomo Pharmaceuticals Co Ltd
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Abstract

【課題】軟骨基質の一成分であるプロテオグリカン(アグリカン)の分解酵素、アグリカナーゼ−1に対する阻害剤の提供
【解決手段】本発明は細胞接着因子であるフィブロネクチン、及び該フィブロネクチンにおけるCOOH末端に位置する約40キロダルトンの断片等を有効成分として含有するアグリカナーゼ−1阻害剤を提供する。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アグリカナーゼ−1阻害剤として有効なポリペプチド等に関する。
【0002】
【従来の技術】
アグリカナーゼはADAM(A Disintegrin And Metalloproteinase)ファミリーに属する金属プロテアーゼであり、これまでにアグリカナーゼ−1、アグリカナーゼ−2が知られている。アグリカナーゼは、活性を触媒するメタロプロテアーゼドメイン、ディスインテグリンドメイン、トロンボスポンジンドメイン、及びスペーサー領域を含有すると考えられており、該スペーサー領域は、アグリカナーゼのCOOH末端部分に存在し、他のメタロプロテアーゼ類との相同性が認められない特徴的な領域である。
【0003】
アグリカナーゼは、軟骨基質の一成分、プロテオグリカンに含まれるアグリカンを分解するプロテアーゼとして報告され(非特許文献1)、ウシ軟骨の器官培養液中からタンパク質が精製された(非特許文献2)。アグリカナーゼは、そのアミノ酸配列からトロンボスポンジンドメインを含むADAMファミリー、ADAMTSグループに属する酵素であることが明らかとなった。アグリカナーゼ−1はADAMTS4とも呼ばれている。また、他のアグリカナーゼとしてアグリカナーゼ−2(ADAMTS5)も同定されており、アグリカナーゼ−1と同様にアグリカンを分解することが知られている。
【0004】
アグリカナーゼ−1の基質としては、前述の軟骨組織中のアグリカン他、脳組織内のブレビカンやバーシカンが知られているが(非特許文献3及び4)、基質の種類は限定されており、極めて基質特異性が高いと考えられている。生体内物質であるTIMP−3(Tissue inhibitor of metalloproteinases−3)がアグリカナーゼ−1を阻害することが知られているが(非特許文献5及び6)、生体内におけるアグリカナーゼ−1の翻訳後における活性制御については明らかではない。
一方、フィブロネクチンは、細胞接着に関与する細胞表面蛋白質で、そのレセプターであるインテグリンと結合する糖タンパク質であるが、アグリカナーゼ−1との関係は全く知られていなかった。
【非特許文献1】
Lohmander, L. S. ら、Arthritis Rheum.、36巻、1214−1222頁 (1993)
【非特許文献2】
Tortorella, M. D. ら、Science、 284巻、1664−1666頁 (1999)
【非特許文献3】
Nakamura, H.ら、J.Biol.Chem.、275巻、 38885−38890頁 (2000)
【非特許文献4】
Sandy,J.D.ら、J.Biol.Chem.、276巻、 13372−13378頁 (2001)
【非特許文献5】
Hashimoto, G.ら、FEBS Lett.、 494巻、 192−195頁 (2001)
【非特許文献6】
Kashiwagi, M.ら、J.Biol.Chem.、276巻、 12501−12504頁 (2001)
【非特許文献7】
Skorstengaard, Kら、Eur.J.Biochem.、154巻、 15−29頁 (1986)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、軟骨基質であるプロテオグリカン(アグリカン)の分解に深く関与している酵素、アグリカナーゼ−1の阻害剤を提供することにある。該阻害剤は、アグリカナーゼ−1が関与する関節疾患の治療もしくは予防などに用いることができる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アグリカナーゼ−1の生体内インヒビターを探索する目的で酵母ツーハイブリッドシステム(Chien, C.T.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. (1991) 88 9578−9582)を用いてアグリカナーゼ−1と結合するタンパク質のスクリーニングを行った。その結果、細胞接着因子の一種であるフィブロネクチン、及びそのカルボキシル末端の約40キロダルトンのポリペプチドが、アグリカナーゼ−1と結合することが明らかとなった。
【0007】
そこで、フィブロネクチンがアグリカナーゼ−1の活性を阻害するか否かを調べた結果、フィブロネクチンは、アグリカナーゼ−1の存在下でアグリカン(ウシ鼻軟骨より精製)の分解を用量依存的に阻害することがわかった(図3)。更に、フィブロネクチンをアルファキモトリプシンで消化することによって調製されるC末端の40キロダルトンのフィブロネクチン断片(Gibco BRL社製)についても、フィブロネクチンと同等のアグリカナーゼ−1阻害活性を示すことがわかった(図4)。該フィブロネクチン断片は、配列番号2に示される367アミノ酸残基からなるポリペプチドである(Skorstengaard, Kら、Eur.J.Biochem.154, 15−29(1986))。すなわち、本発明は、
[1] フィブロネクチン又はフィブロネクチンのC末端40キロダルトン以上の断片を有効成分として含有する、アグリカナーゼ−1阻害剤、
[2] フィブロネクチン断片が、以下の(a)〜(g):
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するポリペプチド、
(d)配列番号:1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(e)配列番号:1に記載の塩基配列において、1個以上の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されたポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(f)配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(g)配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
からなる群より選択され、かつアグリカナーゼ−1結合活性を有するポリペプチドであることを特徴とするアグリカナーゼ−1阻害剤、
[3] 分子量が40キロダルトン以上であることを特徴とする[1]又は[2]記載のアグリカナーゼ−1阻害剤、
[4] 分子量が40キロダルトンであることを特徴とする[3]記載のアグリカナーゼ阻害剤、
[5] フィブロネクチン遺伝子又はフィブロネクチン断片遺伝子を有効成分として含有する、アグリカナーゼ−1阻害剤、
[6] フィブロネクチン断片遺伝子が、以下の(h)〜(k):
(h)配列番号:1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(i)配列番号:1に記載の塩基配列において、1個以上の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されたポリヌクレオチド、
(j)配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の配列同一性を有すポリヌクレオチド、
(k)配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、
からなる群より選択されるポリヌクレオチドであることを特徴とする、[5]に記載のアグリカナーゼ−1阻害剤、
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載のアグリカナーゼ−1阻害活性を有する化合物を有効成分として含有する、関節疾患治療剤、又は予防剤、
[8] 関節疾患が変形性関節症であることを特徴とする、[7]記載の治療剤、
[9] フィブロネクチンが、以下の(l)〜(r):
(l)配列番号:4に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(m)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(n)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するポリペプチド、
(o)配列番号:3に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(p)配列番号:3に記載の塩基配列において、1個以上の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されたポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(q)配列番号:3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(r)配列番号:3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
からなる群より選択され、かつアグリカナーゼ−1結合活性を有するポリペプチドであることを特徴とする[1]に記載のアグリカナーゼ−1阻害剤、
[10]フィブロネクチン遺伝子が、以下の(s)〜(v):
(s)配列番号:3に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(t)配列番号:3に記載の塩基配列において、1個以上の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されたポリヌクレオチド、
(u)配列番号:3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の配列同一性を有すポリヌクレオチド、
(v)配列番号:3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、
からなる群より選択されるポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、[5]に記載のアグリカナーゼ−1阻害剤、
に関するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の第1の態様は、フィブロネクチン、又はフィブロネクチン断片を有効成分として含有するアグリカナーゼ−1阻害剤に関する。
本明細書において、「アグリカナーゼ−1」とは、プロテオグリカンに含まれる糖タンパク質、アグリカンを分解する作用を有する酵素として公知のタンパク質であり、その配列は、ヒト型についてはGenBank(アクセッション番号:AF_148213)に開示されている。
本明細書において、「アグリカナーゼ−1」という用語を用いる場合、前記ヒトアグリカナーゼ−1やその同族体も含まれる。該同族体としてはマウス型(GenBank アクセッション番号:XM_136308)が知られている。
【0009】
本明細書において、「フィブロネクチン」とは、細胞接着因子として公知のポリペプチドである。分子量は約220キロダルトンであり、生体内においてホモ2量体を形成している。ヒトフィブロネクチンの配列(配列番号:4)は、GenBank(アクセッション番号:X02761)に開示されている。
本明細書において、「フィブロネクチン」という用語を用いる場合、前記ヒトフィブロネクチンやその同族体、変異体、及びアミノ酸修飾体などを包含する趣旨で用いられる。
同族体としては、マウス型(GenBank Accession番号:XM_129845)が知られている。また、ラット型(X15906)等についても、部分配列が知られており、「Sambrookら著、Molecular Cloning 2nd Edition(1989)」等に記載された方法で、cDNAライブラリーからクローニングして得ることができる。
また、変異体としては、上記ヒトフィブロネクチンもしくはその同族体に対して、1以上のアミノ酸の置換、欠失、付加、挿入等の変異を施したポリペプチドが挙げられ、アグリカナーゼ−1結合活性やアグリカナーゼ−1阻害活性を保持している限り、本発明のフィブロネクチンに含まれる。
また、アミノ酸修飾体としては、ヒトフィブロネクチン、その同族体、もしくはその変異体のアミノ末端、カルボキシル末端、もしくはアミノ酸側鎖官能基が、アシル化、エステル化、またはエーテル化等の修飾を受けたものが挙げられ、アグリカナーゼ−1阻害活性を保持している限り、本発明のフィブロネクチンに含まれる。
具体的には、フィブロネクチンは、以下の(l)〜(r):
(l)配列番号:4に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(m)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(n)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するポリペプチド、
(o)配列番号:3に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(p)配列番号:3に記載の塩基配列において、1個以上の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されたポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(q)配列番号:3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(r)配列番号:3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
からなる群より選択され、かつアグリカナーゼ−1結合活性を有するポリペプチド、又はその機能的に同等な誘導体である。
【0010】
ここで「アグリカナーゼ−1阻害活性」とは、アグリカナーゼ−1の酵素活性を阻害する活性を表す。すなわち、アグリカナーゼがアグリカン、バーシカン、ブレビカンなどの基質を分解するのを抑制する活性を表す。該酵素活性を測定する方法は特に限定されず、例えば、既報の文献(Hashimoto, G.ら、FEBS Lett 494 192−195(2001); Kashiwagi, M.ら、J.Biol.Chem.276 12501−12504(2001))等に記載された方法、本発明の実施例に記載された方法等を用いて、上記変異体やアミノ酸修飾体のアグリカナーゼ−1阻害活性を確認することができる。
また、「アグリカナーゼ−1結合活性」は、本明細書実施例1に記載された方法で確認することができる。すなわち、cDNAライブラリーの替わりに対象となる蛋白質(フィブロネクチン又はフィブロネクチン断片)をコードする遺伝子を有するプラスミドを用いて実施し、要求アミノ酸(ロイシン、トリプトファン、ヒスチジン)及びアデニンを欠いた培地で培養し、生存するコロニーが存在するか否かで、確認できる。前記プラスミドは当業者に公知の方法で調製することができる。
【0011】
本明細書において、「1以上のアミノ酸の置換、欠失、付加、挿入等の変異を施したポリペプチド」とは、例えば、ポリペプチドが細胞内で受けるプロセシング、動物間の種差、個体差、組織間の差異等により天然に生じる変異や、人為的なアミノ酸の変異等が含まれる。なお、ポリペプチドにおけるアミノ酸の変異数や変異部位は、その生物学的機能、すなわちアグリカナーゼ−1阻害活性が保持される限り制限はない。生物学的機能を喪失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個置換、挿入あるいは欠失されればよいかを決定する指標は、当業者に周知のコンピュータプログラム、例えばDNA Star softwareを用いて見出すことができる。例えば変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内であり、さらに好ましくは全アミノ酸の1%以内である。また前記欠失、付加、挿入、又は置換のうち、特にアミノ酸の置換に係る改変が好ましく、置換されるアミノ酸は、置換後に得られるポリペプチドが該ポリペプチドの生物学的機能を保持している限り、特に制限されないが、タンパク質の構造保持の観点から、残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性並びに両親媒性など、置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe及びTrpは互いに非極性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn及びGlnは互いに非荷電性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、Asp及びGluは互いに酸性アミノ酸に分類されるアミノ酸であり、またLys、Arg及びHisは互いに塩基性アミノ酸に分類されるアミノ酸である。ゆえに、これらを指標として同群に属するアミノ酸を適宜選択することができる。
【0012】
前記「1以上のアミノ酸の置換、欠失、付加、挿入等の変異を施したポリペプチド」を人為的に行う場合の手法としては、例えば、対象となるポリペプチドをコードするDNAに対して慣用の部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441−9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
【0013】
前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個、又はそれ以上である。かかる改変の数は、元のポリペプチドに対して80%以上の配列同一性を有し、かつ該ポリペプチドのアグリカナーゼ−1阻害活性を維持する範囲であればよい。前記配列同一性は、好ましくは、80%、更に好ましくは90%、更に好ましくは95%である。
本発明において「配列同一性」とは、2つのDNA又は2つのポリペプチド間の、配列の同一性及び相同性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象のDNA又はポリペプチドは、2つの配列の最適なアラインメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。このような配列同一性に関しては、例えば、Vector NTIを用いて、ClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res.,22(22):4673−4680(1994)を利用してアラインメントを作成することにより算出することができる。尚、配列同一性は、配列解析ソフト、具体的にはVector NTI、GENETYX−MACや公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共データベースは、例えば、ホームページアドレスhttp://www.ddbj.nig.ac.jpにおいて、一般的に利用可能である。
また、前記(o)〜(r)におけるポリヌクレオチドとしては後述する(s)〜(v)に記載のポリヌクレオチドと同義である。
【0014】
本明細書において、「機能的に同等な誘導体」としては、上記フィブロネクチン断片のアミノ酸修飾体、又は任意の1以上のアミノ酸残基を非天然型アミノ酸へ置換した誘導体等が挙げられる。「機能的に同等」とは、アグリカナーゼ結合活性やアグリカナーゼ−1阻害活性を有することを意味し、配列番号2又は配列番号4で表されるポリペプチドと同等のアグリカナーゼ阻害活性を示すことが好ましい。
【0015】
前記「アミノ酸修飾体」としては、アミノ末端、カルボキシル末端、又はアミノ酸側鎖官能基が、アシル化、エステル化、エーテル化等の修飾を受けたものが挙げられる。具体的には、例えば前記フィブロネクチン断片のアミノ末端もしくはリジンのε−アミノ基等がアシル化、アルコキシカルボニル化もしくはアルキル化された誘導体;フィブロネクチン断片のカルボキシル末端、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸がエステル化もしくはアミド化された誘導体;システインのメルカプト基が酸化され、ポリマー(ダイマー、ポリマー等)や環状構造を形成している誘導体;またはシステイン、セリン、スレオニンもしくはチロシンの水酸基が、エーテル化もしくはアシル化された誘導体等が挙げられる。
前記で修飾されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個、又はそれ以上である。かかる改変の数は、元のポリペプチドに対して80%以上の配列同一性を有し、かつ該ポリペプチドのアグリカナーゼ−1阻害活性を維持する範囲であればよい。前記配列同一性は、好ましくは、80%、更に好ましくは90%、更に好ましくは95%である。
【0016】
前記「アミノ酸残基を非天然型アミノ酸へ置換した誘導体」における非天然型アミノ酸は、天然の蛋白質を構成する20種類のL−α−アミノ酸(天然型アミノ酸)以外の任意のアミノ酸を表し、D−アミノ酸、β−アミノ酸、γ−アミノ酸、オルニチン、ターシャリーロイシン、ノルロイシンもしくはヒドロキシプロリン等の天然型アミノ酸の側鎖を改変したアミノ酸、Aib等のα−アルキル化アミノ酸、N−メチルグリシン等のN−アルキルアミノ酸等が挙げられる。
前記で置換されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個、又はそれ以上である。かかる改変の数は、元のポリペプチドに対して80%以上の配列同一性を有し、かつ該ポリペプチドのアグリカナーゼ−1阻害活性を維持する範囲であればよい。前記配列同一性は、好ましくは、80%、更に好ましくは90%、更に好ましくは95%である。
【0017】
本明細書において、フィブロネクチン断片とは、以下の(a)〜(g):
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するポリペプチド、
(d)配列番号:1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(e)配列番号:1に記載の塩基配列において、1個以上の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されたポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(f)配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の配列同一性を有すポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(g)配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
からなる群より選択され、かつアグリカナーゼ−1結合活性を有するポリペプチドからなるフィブロネクチン断片、又はその機能的に同等な誘導体を表す。
【0018】
ここで、前記(b)における「1個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド」とは、配列番号2で表されるフィブロネクチンの部分配列が、動物間の種差、個体差、組織間の差異等により天然に生じる変異や、人為的なアミノ酸の変異等が含まれる。なお、ポリペプチドにおけるアミノ酸の変異数や変異部位は、その生物学的機能、すなわちアグリカナーゼ−1阻害活性が保持される限り制限はない。生物学的機能を喪失することなくアミノ酸残基が、どのように、何個置換、挿入あるいは欠失されればよいかを決定する指標は、上記と同様である。また、前記「1以上のアミノ酸の置換、欠失、付加、挿入等の変異を施したポリペプチド」を人為的に行う場合の手法についても上記に記載された方法を用いることができる。
前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個、又はそれ以上である。かかる改変の数は、元のポリペプチドに対して80%以上の配列同一性を有し、かつ該ポリペプチドのアグリカナーゼ−1阻害活性を維持する範囲であればよい。前記配列同一性は、好ましくは、80%、更に好ましくは90%、更に好ましくは95%である。
【0019】
また、前記(c)における配列同一性は、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上である。
【0020】
また、前記(d)〜(g)におけるポリヌクレオチドとしては後述する(h)〜(k)に記載のポリヌクレオチドと同義である。
【0021】
前記フィブロネクチン断片は、好ましくは、40キロダルトン〜220キロダルトンの分子量を有する。更に好ましくは約40キロダルトンの分子量を有する。また、前記フィブロネクチン断片として、配列番号4に記載された蛋白質の連続する1000残基からなる断片、配列番号4に記載された蛋白質の連続する800残基からなる断片、配列番号4に記載された蛋白質の連続する500残基からなる断片、配列番号4に記載された蛋白質の連続する300残基からなる断片、配列番号4に記載された蛋白質の連続する200残基からなる断片、配列番号4に記載された蛋白質の連続する100残基からなる断片、配列番号4に記載された蛋白質の連続する50残基からなる断片等を例示することもできる。
【0022】
フィブロネクチンはヒト、ウシ血清からDEAE、ゼラチンセファロース、あるいはヘパリンセファロースを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製可能である。また、40キロダルトンは全長フィブロネクチンを、キモトリプシンあるいはサーモライシンにより酵素消化した後に上記カラムにより精製して調製することが可能である(Clark, R.A.Fら、J.Biol.Chem. 263 12115−12123 (1988)に記載)。
【0023】
さらに40キロダルトン〜220キロダルトンの分子量に相当するフィブロネクチン断片は、公知の配列情報(GenBank アクセッション番号:X02761)及び配列番号:1に記載された配列に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養および培養物からのタンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1989), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))などに準じて行うことができる。
【0024】
具体的には、本発明のフィブロネクチン又はフィブロネクチン断片をコードする遺伝子に開始コドンを付加し、所望の宿主細胞中で発現できる組み換えDNA(発現ベクター)を作製し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養して、得られる培養物から、目的タンパク質を回収することによって、目的のポリペプチドを得ることができる。
【0025】
以下具体的に説明する。フィブロネクチン又はフィブロネクチン断片をコードする遺伝子は、公知文献(Kornblihtt,A.R.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80 (11), 3218−3222 (1983))、GenBankにおいてアクセッション番号 X02761として登録されている配列情報、本明細書配列番号1に記載された配列情報をもとに適当なPCRプライマーを作製し、例えばMolecular Cloning 2nd Edt. Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)等の基本書に従ってPCR反応を行うことなどにより、容易にクローニングできる。該方法については、既報(Guan, J.L.ら、J. Cell Biol. 110 833−847(1990))にも記載されている。また、変異を施す場合は前記Molecular Cloning等の基本書を参考にして容易に行うことができる。さらに、このようにしてクローニングされたフィブロネクチン又はフィブロネクチン断片をコードする遺伝子を用いてフィブロネクチン又はフィブロネクチン断片を発現させる方法としては、例えば、前述のMolecular Cloning 等の多くの成書や文献に基づいて実施することができる。発現させたいDNAの上流に、場合によっては転写を制御するプロモーター配列の制御遺伝子を付加し、適当なベクター(例えばレトロウイルスベクターpLJなど)に組み込むことにより、宿主細胞内で複製し、機能する発現プラスミドを作製する。次に発現プラスミドを適当な宿主細胞に導入して形質転換体を得る。宿主細胞としては、大腸菌などの原核生物、酵母のような単細胞真核生物、昆虫、動物などの多細胞真核生物の細胞などが挙げられる。また、宿主細胞への遺伝子導入法としては、リン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン法、電気パルス法などがある。形質転換体は、適当な培地で培養することによってフィブロネクチンタンパク質を生産する。以上のようにして得られた培養液中のフィブロネクチンは一般的な生化学的方法によって単離精製することができる。
以上のようにして作製されたフィブロネクチン又はフィブロネクチン断片がアグリカナーゼ−1阻害活性を有しているか否かは、例えば上記アグリカナーゼ阻害活性を測定する方法に順じて確認することができる。具体的には本明細書実施例に記載した方法が挙げられる。
【0026】
また、本発明のフィブロネクチン、又はフィブロネクチン断片もしくはその誘導体は、一般的な化学合成法(ペプチド合成)によって製造することもできる。ここで、ペプチドの合成については、通常のペプチド化学において用いられる方法に準じて行うことができる。該公知方法としては文献(ペプタイド・シンセシス(Peptide Synthesis),Interscience,New York,1966;ザ・プロテインズ(The Proteins),Vol 2,Academic Press Inc.,New York,1976;ペプチド合成,丸善(株),1975;ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株),1985;医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成,広川書店,1991)などに記載されている方法が挙げられる。
【0027】
本発明の第2の態様は、フィブロネクチン遺伝子又はフィブロネクチン断片遺伝子を有効成分として含有するアグリカナーゼ−1阻害剤に関する。
本明細書において、フィブロネクチン遺伝子とは、上記フィブロネクチンをコードする遺伝子を表し、ヒトフィブロネクチン遺伝子やその同族体、及びア変異体等を包含する趣旨で用いられる。ヒトフィブロネクチン遺伝子の配列(配列番号:3)は、Genbank Accession 番号:XM_129845)に記載されている。
【0028】
本明細書において「フィブロネクチン遺伝子」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。また当該「フィブロネクチン遺伝子」には、特定の塩基配列(配列番号:3)で示されるポリヌクレオチドだけでなく、これらによりコードされるタンパク質と生物学的機能が同等であるタンパク質(例えば同族体(ホモログやスプライスバリアントなど)、変異体及び誘導体)をコードするポリヌクレオチドが包含される。かかる同族体、変異体または誘導体をコードするポリヌクレオチドとしては、具体的には、フィブロネクチン遺伝子は、以下の(s)〜(v):
(s)配列番号:3に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(t)配列番号:3に記載の塩基配列において、1個以上の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されたポリヌクレオチド、
(u)配列番号:3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の配列同一性を有すポリヌクレオチド、
(v)配列番号:3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、
からなる群より選択されるポリヌクレオチドからなる。
【0029】
本明細書において、フィブロネクチン断片遺伝子とは、上記フィブロネクチン断片をコードする遺伝子を表す。具体的には、以下の(h)〜(k):
(h)配列番号:1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(i)配列番号:1に記載の塩基配列において、1個以上の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されたポリヌクレオチド、
(j)配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の配列同一性を有すポリヌクレオチド、
(k)配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、
からなる群より選択されるポリヌクレオチドを含むアグリカナーゼ−1阻害剤である。
【0030】
前記(i)及び(t)における「1以上の塩基の置換、欠失、付加、挿入等の変異を施したポリヌクレオチド」とは、例えば、ポリヌクレオチドが細胞内で受けるプロセシング、動物間の種差、個体差、組織間の差異等により天然に生じる変異や、又は人為的な塩基の変異等が含まれる。なお、フィブロネクチン遺伝子における塩基の変異数や変異部位は、該遺伝子がコードするタンパク質の生物学的機能、すなわちアグリカナーゼ−1阻害活性が保持される限り制限はない。変異数は、典型的には、全塩基の10%以内であり、好ましくは全塩基の5%以内であり、さらに好ましくは全塩基の1%以内である。
【0031】
前記「1以上の塩基の置換、欠失、付加、挿入等の変異を施したポリヌクレオチド」を人為的に行う場合の手法としては、例えば、対象となるポリヌクレオチドに対して慣用の部位特異的変異導入を施す手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441−9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
【0032】
前記で改変される塩基の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個、又はそれ以上である。かかる改変の数は、元のポリヌクレオチドに対して80%以上の配列同一性を有し、かつ該ポリヌクレオチドがコードするタンパク質のアグリカナーゼ−1阻害活性を維持する範囲であればよい。前記配列同一性は、好ましくは、80%、更に好ましくは90%、更に好ましくは95%である。
【0033】
例えばヒト由来のタンパク質のホモログをコードする遺伝子としては、当該タンパク質をコードするヒト遺伝子に対応するマウスやラットなど他生物種の遺伝子が例示でき、これらの遺伝子(ホモログ)は、HomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定することができる。具体的には、特定ヒト塩基配列をBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873−5877, 1993、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)にかけて一致する(Scoreが最も高く、E−valueが0でかつIdentityが100%を示す)配列のアクセッション番号を取得する。そのアクセッション番号をUniGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/)に入力して得られたUniGene Cluster ID(Hs.で示す番号)をHomoloGeneに入力する。結果として得られた他生物種遺伝子とヒト遺伝子との遺伝子ホモログの相関を示したリストから、特定の塩基配列で示されるヒト遺伝子に対応する遺伝子(ホモログ)として他生物種の遺伝子を選抜することができる。
なお、フィブロネクチン遺伝子は、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン、またはイントロンを含むことができる。
【0034】
前記(k)および(v)における「ストリンジェントな条件でハイブリダイズする」に関して、ここで使用されるハイブリダイゼーションは、例えばSambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)等に記載される通常の方法に準じて行うことができる。また「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、6xSSC(1.5M NaCl、0.15M クエン酸三ナトリウムを含む溶液を10xSSCとする)、50%フォルムアミドを含む溶液中で45℃にてハイブリッドを形成させた後、2xSSCで65℃にて洗浄するような条件(Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1−6.3.6)等を挙げることができる。洗浄ステップにおける塩濃度は、例えば、2xSSCで50℃の条件(低ストリンジェンシーな条件)から0.2xSSCで50℃までの条件(高ストリンジェンシーな条件)までの温度から選択することができる。また、塩濃度と温度の両方を変えることもできる。
【0035】
本発明の第3の態様は、上記アグリカナーゼ−1阻害活性を有する化合物、すなわち、フィブロネクチン、フィブロネクチン断片もしくはその誘導体、フィブロネクチン遺伝子、フィブロネクチン断片遺伝子を有効成分として含有する、関節疾患の治療剤又は予防剤に関する。
本発明のフィブロネクチン及びフィブロネクチン断片は、軟骨組織の一部であるアグリカンの分解を抑制するため、軟骨の破壊を伴う疾患の治療又は予防に有効である。該疾患としては、関節疾患が挙げられる。
ここで関節疾患とは、関節軟骨の破壊を伴う疾患を表し、具体的には、変形性関節症、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎、又は敗血症性関節炎等の感染性関節炎が挙げられる。
本発明のフィブロネクチン、又はフィブロネクチン断片は、これらを医薬品として用いるにあたり、そのままもしくは公知の薬学的に許容される担体(賦形剤、希釈剤、増量剤、結合剤、滑沢剤、流動助剤、崩壊剤、界面活性剤等などが含まれる)や慣用の添加剤などと混合して医薬組成物として調製することができる。当該医薬組成物は、調製する形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤などの経口投与剤;注射剤、点滴剤、外用剤、坐剤などの非経口投与剤)等に応じて、全身的にまたは局所的に、経口投与または非経口投与することができる。非経口投与する場合には、静脈投与、皮内投与、皮下投与、又は膝関節もしくは股関節への関節内投与することが可能である。
また投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象または患者の年齢、体重、症状などによって異なり一概に規定できないが、通常、1日投与用量として、数mg〜2g程度、好ましくは数十mg程度を、1日1〜数回にわけて投与することができる。
【0036】
上記有効成分物質がフィブロネクチン遺伝子もしくはフィブロネクチン断片遺伝子である場合は、これらを遺伝子治療用ベクターに組込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。これらの場合も、遺伝子治療用組成物の投与量、投与方法は患者の体重、年齢、症状などにより変動し、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【0037】
上記遺伝子治療につき詳述すれば、該遺伝子治療は、通常のこの種の遺伝子治療と同様にして、例えばフィブロネクチン遺伝子、フィブロネクチン断片遺伝子またはそれらの化学的修飾体(以下本遺伝子と称することがある。)を直接患者の体内に投与することにより目的遺伝子の発現を制御する方法、もしくはこれらの遺伝子を患者の標的細胞に導入することにより該細胞による目的遺伝子の発現を制御する方法により実施できる。
【0038】
ここで前記化学修飾体としては、例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホトリエステル、アルキルホスホナート、アルキルホスホアミデートなどの、細胞内への移行性または細胞内での安定性を高め得る誘導体(”Antisense RNA and DNA” WILEY−LISS刊、1992年、pp.1−50、J. Med. Chem. 36, 1923−1937(1993))が含まれる。これらは常法に従い合成することができる。
【0039】
本遺伝子は、その投与に当たり、通常慣用される安定化剤、緩衝液、溶媒などを用いて製剤化され得る。
【0040】
本遺伝子を患者の標的細胞に導入する方法において、用いられるポリヌクレオチドは、好ましくは100塩基以上、より好ましくは300塩基以上、さらに好ましくは500塩基以上の長さを有するものとすればよい。また、この方法は、生体内の細胞に遺伝子を導入するin vivo法および一旦体外に取り出した細胞に遺伝子を導入し、該細胞を体内に戻すex vivo法を包含する(日経サイエンス, 1994年4月号, 20−45頁、月刊薬事, 36 (1), 23−48 (1994)、実験医学増刊, 12 (15), 全頁 (1994)など参照)。この内ではin vivo法が好ましく、これには、ウイルス的導入法(組換えウイルスを用いる方法)と非ウイルス的導入法がある(前記各文献参照)。
【0041】
上記組換えウイルスを用いる方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルスなどのウイルスゲノムにフィブロネクチン遺伝子もしくはフィブロネクチン断片遺伝子のポリヌクレオチドを組込んで生体内に導入する方法が挙げられる。この中では、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルスなどを用いる方法が特に好ましい。非ウイルス的導入法としては、リポソーム法、リポフェクチン法などが挙げられ、特にリポソーム法が好ましい。他の非ウイルス的導入法としては、例えばマイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法なども挙げられる。
【0042】
遺伝子治療用製剤組成物は、本遺伝子又はこれらを含む組換えウイルスおよびこれらウイルスが導入された感染細胞などを有効成分とするものである。該組成物の患者への投与形態、投与経路などは、治療目的とする疾患、症状などに応じて適宜決定できる。例えば注射剤などの適当な投与形態で、静脈、動脈、皮下、筋肉内などに投与することができ、また患者の疾患対象部位に直接投与、導入することもできる。in vivo法を採用する場合、遺伝子治療用組成物は、本遺伝子を含む注射剤などの投与形態の他に、例えば本遺伝子を含有するウイルスベクターをリポソームまたは膜融合リポソームに包埋した形態(センダイウイルス(HVJ)−リポソームなど)とすることができる。これらのリポソーム製剤形態には、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤などが含まれる。また、遺伝子治療用組成物は、本遺伝子を含有するベクターを導入されたウイルスで感染された細胞培養液の形態とすることもできる。これら各種形態の製剤中の有効成分の投与量は、治療目的である疾患の程度、患者の年齢、体重などにより適宜調節することができる。通常、患者成人1人当たり約0.0001−100mg、好ましくは約0.001−10mgが数日ないし数カ月に1回投与される量とすればよい。本遺伝子を含むレトロウイルスベクターの場合は、レトロウイルス力価として、1日患者体重1kg当たり約1×10pfu−1×1015pfuとなる量範囲から選ぶことができる。本意電子を導入した細胞の場合は、1×10細胞/body−1×1015細胞/body程度を投与すればよい。
【0043】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
材料
実施例において用いられた材料は以下の通りである。Matchmaker Two−Hybrid System3およびヒト軟骨細胞由来Matchmaker cDNAライブラリーはいずれもClontech(Palo Alto、CA、米国)より購入した。ヒト血清由来フィブロネクチン(全長)はChemicon International Inc.(Temecula、CA、米国)より、40キロダルトンおよび120キロダルトンのフィブロネクチンはいずれもGibco BRL(東京)より購入した(120キロダルトン断片の調整法については既報(Clark, R.A.Fら、J.Biol.Chem. 263 12115−12123 (1988))に記載されている)。ゲルろ過担体Sepacryl S−100HRはAmersham Biosciences(Piscataway,NJ、米国)より購入した。なお、Matchmaker Two−Hybrid System3を用いた実験に必要な試薬は使用説明書の指示に従って購入した。その他あらゆる実験に必要な化学薬品は全て商業的に入手可能なものを購入し、使用した。
【0044】
実施例1:結合タンパクのスクリーニング
Matchmaker Two−Hybrid System3 (Clontech、Palo Alto、CA、米国)に付属のベクター:pGBKT7を用いておとりタンパク質発現のためのプラスミドを作製した。酵母内転写因子GAL4BDとアグリカナーゼ−1のスペーサー領域との融合タンパクを発現させるためのベクター作製を行った後、ヒト軟骨細胞由来cDNAライブラリー(転写因子GAL4ADとの融合タンパクを発現)(Clontech)と共に酵母株に導入してアグリカナーゼ−1の結合タンパクをスクリーニングした。
すなわち、添付のベクターにアグリカナーゼ−1のスペーサー領域由来のcDNAを挿入したプラスミドを作製する目的でPCRのためのプライマーを準備した。プライマーの配列は5−GGAATTCCATATGGACTGGGTTCCTCGCT−3’(配列番号:5)と5−TTTGAATTCTTTCCTGCCCGCCCAGGG−3’(配列番号:6)である。PCR反応のための酵素はExTaq(宝酒造、東京)を使用した。鋳型(テンプレート)は既に報告された文献におけるアグリカナーゼ−1の発現プラスミドを使用した(Hashimoto,G.ら、FEBS Lett 494 192−195 (2001))。反応液には、鋳型である発現プラスミド1μg、10倍濃縮されたExTaq用バッファー(酵素に添付)5μl、4×dNTP(酵素に添付)4μl、10μMに滅菌水で希釈した前記の2種類のプライマー各2μl、ExTaq0.1μlを添加し、最後に滅菌水を50μlになるよう添加した。PCR反応は94℃40秒→(94℃20秒→55℃30秒→72℃1分)×10サイクル→72℃5分という内容で行った。PCR終了後、反応液に滅菌水150μlを添加し、さらに3M酢酸ナトリウム(pH5.2)20μl、エタノール500μlを添加した後よく攪拌して−80℃に10分間置き、冷却型遠心機で15000回転/分、5分間遠心した後、上清画分を除去して70%エタノールでリンスして乾燥させた(エタノール沈殿)。乾燥DNAを滅菌水30μlで溶解させた後、このうち10μlを制限酵素消化に使用した。反応液の組成はDNA溶液10μl、10倍濃縮されたHバッファー(制限酵素に添付)4μl、制限酵素EcoRI、NdeI(いずれも宝酒造)各々2μl、滅菌水32μlである。この反応液を37℃、2時間インキュベーションした後、1%アガロースゲルを用いて電気泳動を行い(100V,30分)、エチジウムブロマイド水溶液(10μg/ml)に浸してDNAを染色してPCR反応による増幅バンド(約450bp)をメス刃で切り出した。切り出したアガロースゲルからのDNA抽出はMinElute GelExtraction Kit(QIAGEN,東京)を用い、方法は添付説明書に従った。最後の溶出は滅菌水30μlを用いて行った。さらに発現ベクターの酵素処理を行うため、1μgのpGBKT7にEcoRIとNdeIを各々2μlずつと10倍濃縮されたHバッファー4μl(制限酵素に添付)、最後に滅菌水で40μlになるよう添加して37℃、2時間インキュベーションした。その後、仔牛小腸由来脱リン酸酵素(New England Biolabs、Beverly,MA,米国)1μlを添加して37℃、1時間インキュベーションし、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN)を用いて酵素消化されたベクターを精製した。方法は添付説明書に従った。精製されたベクターおよびPCR産物をそれぞれ吸光度計で定量し、ベクター150ngとPCR産物100ngを混合し、同じ液量のLigation High(東洋紡、東京)を添加・混合して16℃、1時間インキュベーションした(ライゲーション反応)。ライゲーション反応後、反応液2μlをコンピテント細胞、Competent High(大腸菌JM109、東洋紡)に添加して形質転換を行い、カナマイシン50μg/ml含有のLBプレートに塗布した。詳細な方法は添付説明書に従った。プレートを終夜インキュベーションした後、生育したコロニーを2mlのLB培地に移して37℃で攪拌培養してプラスミドDNAを単離した。プラスミドの単離はQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を使用し、方法は添付説明書に従った。単離した各プラスミドは前述と同様の方法でEcoRIとNdeIで酵素消化を行い、アガロースゲル電気泳動により酵素消化されたDNA断片を確認し、約450bpの断片を含むクローンについてMegaBase1000(Amersham)を用いてDNAシークエンシングを行った。塩基配列を確認した上で酵母株導入用のプラスミドを決定した。一方でヒト軟骨細胞由来Matchmaker cDNAライブラリー(大腸菌に導入された形で購入)からプラスミドライブラリーの単離を行った。直径15cmプレート150枚を用いた培養、およびプラスミドの単離方法は添付説明書に従った。おとりプラスミドおよびライブラリーを調整した上で酵母株AH109への導入を実施した。方法はすべてMatchmaker Two−Hybrid System3の使用説明書に従った。概要を以下に示す。予めおとりプラスミドおよびライブラリーを小スケール(各々100ng)で導入して力価(DNA量あたりのコロニー数)を測定し、スクリーニング用におとり600μg、ライブラリー300μg用いることとした。これらの量のDNAを酵母株AH109に導入し、要求アミノ酸である3アミノ酸(ロイシン、トリプトファン、ヒスチジン)およびアデニンを欠いたSD培地に塗布して30℃で2週間培養した。代表的なコロニーをさらに3アミノ酸とアデニンを欠くSD培地に画線培養(ストリーキング)することを2回繰り返した後に各コロニーからプラスミドDNAを単離してコンピテント細胞に形質転換して100μg/mlアンピシリンを含有したLB培地に塗布した。出現したコロニーにはアンピシリン耐性であるライブラリー由来のプラスミドを含むと考えられる。前述と同様に各コロニーをLB培地で培養し、プラスミドを単離した後、T7プライマーを用いてDNAシークエンシングを行い、明らかになった塩基配列を基にBLASTサーチを行った。156個の酵母株コロニーから塩基配列を明らかにした結果、31個は細胞接着因子であるフィブロネクチン由来であった。
【0045】
実施例2:タンパク質の調製
組み換えアグリカナーゼ−1は前述のHashimotoらによる文献の方法に従って精製した。概説すると以下の通りになる。アグリカナーゼ−1cDNAのCOOH末端にFLAGタグを付加した発現プラスミドをヒト腎臓由来の細胞株COS−7に導入し、無血清培地に交換した3日後に培地を回収した。ろ過した後に抗FLAG抗体カラムに通して洗浄後、6M尿素を含有するバッファーで溶出し、TNCBバッファー(50mM Tris−HCl(pH7.5)、10mM CaCl2、0.15M NaCl,0.02% NaN3、0.05% Brij35)に透析膜を用いて置換した。フィブロネクチン各種は前記の通り商業的に購入したが、プロテアーゼが混入しているため、ゲルろ過精製を行った。Sephacryl S−100HRを脱気後、カラム(8mm×100cm)に充填した。フィブロネクチン各種をTNCBバッファーで500μlに希釈してゲルろ過カラムに添加した。TNCBバッファーを流速10ml/時でカラムに通してフラクションに分取して、フラクション5本おきについて10%アクリルアミドゲルを用いたドデシル硫酸ナトリウムーポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に与した。その後、ゲルを銀染色してフィブロネクチンを含むフラクションを特定した。銀染色は2D銀染色試薬II「第一」(第一化学薬品、東京)を用いてその説明書の方法に従って実施した。精製された各フィブロネクチンを含むフラクションを混合した後、Centricon YM−10(Amicon,Bedford,MA,米国)を用いて限界ろ過により濃縮して1μg/μlになるよう調製した。アグリカナーゼ−1の基質であるアグリカンは前記のHashimotoらによる文献の方法に従ってウシ鼻軟骨組織から精製した。
【0046】
実施例3:アグリカナーゼ−1阻害活性
フィブロネクチンがアグリカナーゼ−1のプロテアーゼ活性に与える影響について調べるため以下の実験を行った。精製した各濃度のフィブロネクチン(0、10、20、40、100、200、500nM)をアグリカナーゼ−1(8nM、10μl)と混合して4℃、2時間置いた。その後にアグリカン100μg(5μl)を添加して37℃、12時間インキュベーションした。最終濃度で20mMになるようEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を添加した後、抗フィブロネクチン抗体による免疫沈降法により溶液中のフィブロネクチンを除去した。方法は以下の通りである。予めProtein G Sepharose 4 Fast Flow(Amersham)に対してTNCBバッファーで懸濁・遠心を3回繰り返して洗浄し(ビーズの分量が約500μlになるよう調製)、抗フィブロネクチン抗体H−300(Santa Cruz Biotechnology Inc., Santa Cruz, CA,米国)を5μg分添加して4℃で4時間攪拌した。その後TNCBバッファーで遠心・懸濁を繰り返して洗浄し、最終的にビーズが液量の半分になるよう調製した。フィブロネクチンとアグリカナーゼ−1の反応液にビーズの懸濁液を100μlずつ添加して4℃で終夜ゆっくりと攪拌した。15000回転/分で3分間遠心して上清を回収することを2回繰り返した後、0.025UのコンドロイチナーゼABCおよび0.01Uのケラタナーゼ(いずれも生化学工業、東京)を添加して37℃、5時間インキュベーションした。反応後、等量のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)サンプルバッファー(組成は300mM Tris−HCl(pH6.8)、2%SDS,40%グリセロール、0.1%ブロモフェノールブルー、10% 2−メルカプトエタノール)と混合し、3分間煮沸してSDS−PAGEに与した。5%アクリルアミドゲルを用いてSDS−PAGEを行った後、CBB(クーマジー・ブリリアントブルー)染色を行い、5%酢酸、7%メタノール含有の溶液で脱色した。各モル濃度のフィブロネクチン(0、10、20、40、100、200、500nM)とアグリカナーゼ−1(8nM)を4℃、2時間プレインキュベーションした後にアグリカナーゼ−1の基質であるウシアグリカン(100μg)を添加して37℃、24時間インキュベーションした。EDTAを添加して反応停止した後、抗フィブロネクチン抗体を用いた免疫沈降法で溶液中のフィブロネクチンを除去し、最後に修飾糖鎖を除去した。このように調整した各サンプルを5%アクリルアミドゲルでSDS−PAGEを行った後、CBB染色を行った。図3Aにおいて黒矢印が酵素消化されていないアグリカンコアタンパク質を、グレー矢印が酵素消化された代表的なタンパク質を示した。フィブロネクチンの用量が10nMではほとんどアグリカナーゼ−1の活性が阻害されていないのに対して500nMでは活性がよく阻害されていることがわかる。さらにここで認められた阻害活性を数値化するため、各モル濃度のフィブロネクチン(0、10、20、40、100、200、500nM、1μM)を用いて前記方法でCBB染色まで行い、活性の阻害率(100%−全長コアタンパク質の残存率)をグラフに表した。陰性コントロールとしてアグリカナーゼ−1を添加せずにインキュベーションしたサンプルにおけるコアタンパク質の量を基準(100%)とした。バンドの濃さの定量はNIH image 1.62を用いて行った。定量の結果、アグリカナーゼ−1に対するフィブロネクチンのIC50値(酵素活性を50%抑制する阻害剤濃度)は110nMであった(図3B)。
【0047】
さらにフィブロネクチン断片(40キロダルトン、120キロダルトン)によるアグリカナーゼ−1の阻害効果について検討を行った。各濃度のフィブロネクチン(0、10、20、40、100、200、500、750nM,1μM)を前述と同様にアグリカナーゼ−1およびアグリカンとインキュベーションし、EDTAで反応停止後、コンドロイチナーゼABCとケラタナーゼで糖鎖を除去してSDS−PAGEに続いて、CBB染色を行った。120キロダルトンおよび40キロダルトン断片はアグリカンコアタンパクの大きさ(約300キロダルトン)と重ならないため、免疫沈降法によるフィブロネクチンの除去は行わなかった。前述の方法により各断片によるアグリカナーゼ−1の活性阻害率をグラフ化した(図4)。40キロダルトン断片によるIC50値は93nMであり、全長フィブロネクチンと同等の阻害活性を有していた。一方で120キロダルトンフィブロネクチン断片(Gibco BRL)は、アグリカナーゼ−1阻害活性を示さなかった。これに対して120キロダルトン断片は1μMにおいても阻害率は35%に過ぎなかった。
【0048】
上記の実施例における実験結果から、細胞接着因子フィブロネクチンとそのCOOH末端部位に相当する40キロダルトン断片はアグリカナーゼ−1のプロテアーゼ活性を強く阻害した。前述の通り、40キロダルトン断片はKKTDEで始まる367アミノ酸残基である。従って、フィブロネクチンにおいて、アグリカナーゼ−1阻害活性の活性中心は、該40キロダルトン断片であると考えられる。
【0049】
実施例4:ラット半月板切除モデル試験
実験動物として6週齢のSD(IGS)系雄性ラットを用いた。右後肢の関節の半月板を部分的に切除し変形性関節症モデル動物を作製した。生理食塩水に溶解した40キロダルトンのフィブロネクチン断片(Gibco BRL社製)を1日1回、10μM(30〜200μl)を3週間関節内あるいは尾静脈中に注入した後、関節部の組織標本を作製し、サフラニン0/ファーストグリーン染色を施し、軟骨変性を評価する。病態コントロール群の軟骨変性の程度を100%とし、被験薬投与群の軟骨の変性程度を算出することができる。
【0050】
実施例5:アジュバント関節炎モデル試験
実験動物としてLewis系雄性ラットを用いた。Mycobacterium butyricumの死菌菌体を0.5%の濃度になるように流動パラフィンに懸濁した液をラットの右側後肢足蹠皮下肢皮下に注入し、モデル動物を作製した。10日後に左側後肢にも明確な2次炎症の発症の見られた動物を選び、生理食塩水に溶解した40キロダルトンのフィブロネクチン断片(Gibco BRL社製)を1日1回、10μM(30〜200μl)を12日間関節内あるいは尾静脈中に注入した後、投与終了から5時間後の後肢容積を投与開始時の後肢容積と比較し、この差により腫脹抑制作用の評価を行うことができる。
【0051】
【発明の効果】
本発明により、変形性関節症等の疾患の治療剤として有用な、フィブロネクチン、及び該フィブロネクチンにおけるCOOH末端に位置する約40キロダルトンの断片等を有効成分とするアグリカナーゼ阻害剤を提供することが可能となった。
【0052】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】アグリカナーゼ−1(ADAMTS4)のドメイン構造を示す図である。下線部はおとりであるスペーサー領域の一部を示しており、この部位のcDNAを含むGAL4BDとの融合タンパクの発現ベクターを前述の酵母2−ハイブリッドシステムによるスクリーニングに使用した。SPはシグナルペプチドを、Proはプロドメインを、Disはディスインテグリンドメインを、TSPはトロンボスポンジンドメインを意味する。
【図2】細胞接着因子であるフィブロネクチンのドメイン構造を示す図である。COOH末端の40キロダルトン断片および中盤の120キロダルトン断片の位置も併せて示した。
【図3】フィブロネクチンがアグリカナーゼ−1のプロテアーゼ活性を用量依存的に阻害することを示した図である。(A)黒矢印が酵素消化されていないアグリカンコアタンパク質を、グレー矢印が酵素消化された代表的なタンパク質を示す。フィブロネクチンの用量が10nMではほとんどアグリカナーゼ−1の活性が阻害されていないのに対して500nMでは活性がよく阻害された。(B)には(A)と同様に行った実験結果を数値化したものを示した。各モル濃度のフィブロネクチン(0、10、20、40、100、200、500nM、1μM)を用いて前記方法でCBB染色まで行い、活性の阻害率(100%−全長コアタンパク質の残存率)をグラフに表した。陰性コントロールとしてアグリカナーゼ−1を添加せずにインキュベーションしたサンプルにおけるコアタンパク質の量を基準とした。この結果からアグリカナーゼ−1に対するフィブロネクチンのIC50値(酵素活性を50%抑制する阻害剤濃度)は110nMであった。
【図4】フィブロネクチン断片によるアグリカナーゼ−1阻害活性を示す図である。すなわち、40キロダルトン、120キロダルトンのフィブロネクチン断片による阻害曲線を示している。フィブロネクチンのCOOH末端部位を含む40キロダルトン断片によるアグリカナーゼ−1のIC50値は92nMであり、全長フィブロネクチンのIC50値と同等であった。これに対して120キロダルトン断片は1μMにおいても約35%と弱い阻害活性に過ぎなかった。

Claims (6)

  1. フィブロネクチン又はフィブロネクチンのC末端40キロダルトン以上の断片を有効成分として含有する、アグリカナーゼ−1阻害剤。
  2. フィブロネクチン断片が、以下の(a)〜(g):
    (a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
    (b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するポリペプチド、
    (d)配列番号:1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、
    (e)配列番号:1に記載の塩基配列において、1個以上の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されたポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (f)配列番号:1に記載の塩基配列と80%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (g)配列番号:1に記載の塩基配列に対し相補性を有するポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    からなる群より選択され、かつアグリカナーゼ−1結合活性を有するポリペプチドであることを特徴とするアグリカナーゼ−1阻害剤。
  3. 分子量が40キロダルトン以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のアグリカナーゼ−1阻害剤。
  4. 分子量が40キロダルトンであることを特徴とする請求項3記載のアグリカナーゼ阻害剤。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のアグリカナーゼ−1阻害活性を有する化合物を有効成分として含有する、関節疾患治療剤、又は予防剤。
  6. 関節疾患が変形性関節症であることを特徴とする、請求項5記載の治療剤。
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