JP2007311667A - 異方性焼結永久磁石及びその製造方法 - Google Patents

異方性焼結永久磁石及びその製造方法 Download PDF

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【課題】 異方性焼結永久磁石の製造工程の磁場中プレス成形時のプレス成形条件を工夫することにより、磁化容易軸方向の曲がりを改善した異方性焼結永久磁石及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 磁場中プレス成形工程において、原料粉末充填時のキャビティ内の該粉末高さをA、該粉末を圧縮し成形した後のプレス体の高さをBとした時、ダイに対する上及び下パンチの移動距離を(A−B)/2mm±0.2×(A−B)/2mmになるように調整することにより、磁化容易軸方向の曲がりを改善する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、粉末冶金法によって得られる異方性焼結永久磁石と、その製造方法に関する。
永久磁石は、一般家庭の各種電気製品から通信機器などにわたる多くの分野で応用され、使用されている製品である。また、各種電気製品の高性能化、軽薄短小化が進み、その中に含まれる永久磁石も高性能化と小型化が進んでいる。
特に、センサー用に用いられる永久磁石については、センサーの高性能化、高精度化のため、永久磁石から発生する磁束密度の分布にも高い精度が要求され、永久磁石の形状を設計する際にも、磁束密度分布等をコンピューターによって磁場解析し、この結果を用いて永久磁石の形状を決定することが多く、理論的な解析結果と実際の磁束密度分布が高い精度で一致することが要求されている。
異方性焼結永久磁石としては、Srフェライト系、Baフェライト系などのフェライト磁石、希土類−Co系、希土類−Fe−B系などの希土類磁石が広く使用されているが、近年、高性能磁石としては、希土類磁石の使用が増えている。
これらの異方性焼結永久磁石は、磁性を担う各結晶粒の磁化容易軸方向をある一定の方向に揃えたものであり、磁化容易軸方向が、ばらばらの方向を向いている等方性磁石と比較して、磁化容易軸方向が一方向に揃っているため、磁化容易軸方向に着磁した場合、残留磁束密度が大きく、従って、最大エネルギー積を大きくすることができる。
一般に、異方性焼結永久磁石は、結晶粒の磁化容易軸方向をある一定の方向に揃えるため、溶解法でつくられた原料を微粉砕し、この永久磁石原料粉末に外部磁界を印加して、永久磁石原料粉末の磁化容易軸方向を外部磁場と平行な方向に揃え、圧力をかけてプレス成形した後、焼結され、さらに熱処理を施されて製造される。つまり、外部磁場印加方向が永久磁石の磁化方向となる。
図1は、磁場中プレス成形装置の主要部を示す図である。図1(a)は側面概略図、図1(b)は、その上面概略図である。ここで、1はポールピース、2は下パンチ、3は粉末原料、4は上パンチ、5はダイである。
図1に示すように、磁場中プレス成形工程で使用されるプレス成形装置は、主にパンチ、ダイ及び磁場発生装置からなり、永久磁石粉末原料は、ダイ及びパンチからなるキャビティ内に充填され、結晶粒の磁化容易軸方向を揃えるために、配向磁場を印加しながら、パンチにて圧力をかけ、永久磁石を成形する。
この配向磁場の方向が、製造された永久磁石の磁化方向となる。キャビティ内に充填された永久磁石粉末原料に配向磁場を印加する方向には、上下パンチにより圧力をかける方向と平行に磁場を印加する縦磁場成形と、垂直方向に印加する横磁場成形がある。このどちらを選択するかは、製造される製品の特性、形状、着磁方向などによって決まるが、磁気特性上、横磁場成形が多く用いられる。
一般に、希土類永久磁石を製造する場合は、結晶粒の磁化容易軸方向を、ある一定方向に揃えるため、溶解法で作られた原料を微粉砕し、この永久磁石原料粉末に外部磁場を印加して、永久磁石原料粉末の磁化容易軸方向を外部磁場と平行な方向に揃え、圧力をかけてプレス成形した後、このプレス体に焼結等を施し、その後、加工、表面処理等が行われる。この外部磁場を印加して磁化容易軸方向を揃えた方向が磁化方向となる。
しかしながら、磁化容易軸方向を一方向に揃えるために配向磁場を印加してプレス成形、焼結等を施した永久磁石において、配向方向が理想的な方向からずれているもの、つまり、磁化方向が曲がっているものがある。この現象は、特に永久磁石の端部及び磁極面プレス方向の中央部に顕著に現れ、永久磁石の中心部では、ほとんど見られない。
現在、各種電気製品の高性能化、軽薄短小化が進んでおり、その中に含まれる永久磁石も高性能化、小型化が進み、このような流れの中で、磁化方向の傾き、曲がりの問題は無視できず、歩留まりを悪化させている。また、このような製品に使用される小型の永久磁石は、大きな焼結体を切断して製造されることも多く、特に、大きな焼結体の端部及び磁極面のプレス方向の中央部から切り出された製品の磁化方向の曲がりは大きく、永久磁石の高性能化が進む中で使用できないものが多く、歩留まりを悪化させている。
このような問題を解決するため、ダイ及びパンチ金型の少なくとも一部に磁性材料を用い、キャビティ内の配向磁場を均一にすることが、有効であることが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。しかしながら、これらの提案によって、キャビティ内の配向磁場は均一に平行になり、磁化方向の曲がりは大きく改善することができるが、永久磁石の磁極面のプレス方向の中央部については、磁化方向の曲がりに問題が残る。
特開2003−64403号公報 特開2004−22800号公報
本発明の課題は、異方性焼結永久磁石の製造工程の磁場中プレス成形時のプレス成形条件を工夫することにより、磁化方向の曲がりを改善した異方性焼結永久磁石及びその製造方法を提供することにある。
本発明は、ダイ、上パンチ及び下パンチからなる金型により形成されるキャビティ内に、異方性焼結永久磁石の原料粉末を充填し、該原料粉末を磁化容易軸方向に配向するために磁場を印加しながら、前記金型によりプレス成形を行う磁場中プレス成形工程を含む異方性焼結永久磁石の製造方法であって、異方性焼結永久磁石の原料粉末の充填時のキャビティ内の該粉末高さをA、該粉末を圧縮し成形した後のプレス体の高さをBとした時、上及び下パンチのうちの一方をダイに対して移動させる第1の工程と、上及び下パンチのうちの他方のパンチをダイに対し移動させる第2の工程をもってプレス成形を完了する磁場中プレス成形工程において、ダイに対する上及び下パンチの移動距離を(A−B)/2mm±0.2×(A−B)/2mmになるように調整することを特徴とする異方性焼結永久磁石の製造方法を提供することである。
本発明では、上下パンチの移動距離を(A−B)/2mm±0.2×(A−B)/2mmとすることにより、磁極面プレス方向の中央部の永久磁石の原料粉末の移動距離が少なくなり、また、加圧してから粉末が成形されるまでの時間が短くなるため、磁極面プレス方向の中央部の磁化容易軸方向の曲がり(乱れ)が改善される。従って、焼結体の端部、磁極面の中央部、及び中心部に関係なく、均一に平行に配向した磁石が得られ、小型の磁石を大型の焼結体から切断して製造する場合においても、焼結体端部から切り出された小型の磁石でも磁化の曲がりがなく、高精度の品質の良い磁石が得られ、歩留まりが向上する。
本発明によれば、異方性焼結永久磁石の磁場中プレス成形工程において、粉末充填時のキャビティ内での粉末高さをA、粉末を成形した後のプレス体の高さをBとした時に、上及び下パンチの一方をダイに対して変位させる第1の成形工程と、上及び下パンチの他方のパンチをダイに対して変位させる第2の成形工程とをもって成形を完了する成形工程において、上及び下パンチの変位量を(A−B)/2mm±0.2×(A−B)/2mmになるように調整することによって、焼結体のどの部分においても配向方向(磁化方向)に曲がりがなく、均一に平行に配向した、品質の良い磁石を歩留まりよく得ることができる。
異方性焼結永久磁石の残留磁束密度を決める大きな要因の1つに、磁性相の配向度がある。即ち、これは、結晶粒の磁化容易軸方向を揃えることである。磁化容易軸方向を一方向に揃えるためには、外部磁場を印加しながらプレス成形するのが一般的である。しかしながら、上パンチのみ又は下パンチのみでの従来の加圧方法では、外部から磁場をかけているために発生する永久磁石の粉末原料に働く電磁力、ダイ金型壁面と粉末原料との摩擦力及びパンチからの圧縮力により、外部磁場によって揃えられた結晶粒の磁化容易軸方向が特にダイ金型との接触部分で、図2に示すように曲げられていた。つまり、焼結体の磁極面のプレス方向の中心部において、磁化の曲がりが大きくなっていると考えられる。
本発明によるプレス成形時の加圧方法(条件)を用いることによって、磁極面の中心部の永久磁石の粉末原料の移動量が少なくなり、また、加圧してから粉末が成形されるまでの時間が短くなるため、磁極面のプレス方向の中心部の磁化容易軸方向の曲がり(乱れ)も少なくなり、よって、成形体の磁化容易軸方向が、どの部分でも均一に平行になり、磁化の曲がりも生じない。
従って、本発明を適用することによって、焼結体の端部、磁極面中心部、素材中央部に関係なく均一に平行に配向した磁石が得られ、よって、小型の磁石を大型の焼結体から切断して製造する場合においても、焼結体端部から切り出された小型の磁石でも磁化の曲がりがなく、高精度の品質の良い磁石が得られ、歩留まりも大きく上げることができる。
本発明に適用できる永久磁石原料粉末としては、強磁性を有する結晶粒からなる永久磁石粉末が適用可能である。特に、Sm−Co系焼結磁石は、本発明の効果を最も発揮する。
本発明の異方性焼結永久磁石及びその製造方法の例を、2−17系Sm−Co磁石の原料を微粉砕して得られる永久磁石原料粉末とした例を説明する。
2−17系Sm−Co磁石の原料を微粉砕し、永久磁石原料粉末を準備した。次に、この永久磁石原料粉末をプレス方向と垂直に配向磁場を印加し、上パンチとダイ金型が駆動するタイプの横磁場プレス装置で磁場中成形した。粉末充填時のキャビティ内での粉末高さ(A)が80mm、粉末を成形した後のプレス体の高さ(B)が30mmである時、上パンチの移動距離を0mm(50mm)、10mm(40mm)、20mm(30mm)、25mm(25mm)、30mm(20mm)、40mm(10mm)、50mm(0mm)[()内は対応する下パンチの移動距離]としてプレス体を作製した。
このプレス体に、焼結、時効等の熱処理を施し、30×25×50(磁化方向50mm)の焼結体を作製した。図3に、ブロック素材30×25×50(焼結体)からの試料の切り出し方法を示す。それぞれのブロック素材30×25×50(焼結体)から30mm方向に3mmの厚さの板状体3×25×50を8枚切り出し、次に、それぞれの板状体3×25×50を25mm方向に1mm間隔、50mm方向に2mm間隔で切断した。その後、図3の斜線部1×2(サンプリング表示部)であり、板状体の50mm方向の両端部で、25mm方向の中央部に当たる部分、すなわちブロック素材で最も磁化の曲がりが顕著に表われる部分をサンプリングし、それぞれ1ブロック素材から16個の立方体(3×1×2)試料を得た。これら試料を同一条件で着磁を行ない、ニュートラルゾーンの傾き測定試料とした。
次に、それぞれのプレス条件で得られた各ブロック素材(焼結体)から切り出され、サンプリングされた16個の磁石試料(3×1×2)について1×2mm面上にマグネットビュアシートを載せ、N極、S極の中心部に見えるスジ(ニュートラルゾーン)の傾きを測定した。ここで、磁石の配向方向が均一に平行で乱れが無ければ、このスジは磁化方向(2mm方向)に垂直になるはずであるが、磁化方向に曲がりが生じている場合、このスジに傾きが見られる。このスジの磁化方向と垂直な方向からの傾きを測定することで、配向方向(磁化方向)の曲がりを調べた。表1、図1に測定結果を示し、表1には、プレス条件とニュートラルゾーン傾き(°)の関係も示す。
Figure 2007311667
表1より、ダイに対する上及び下パンチの移動距離が(A−B)/2mm±0.2×(A−B)/2mmを満足する、(20±5)mmの発明品1,2,3が、ニュートラルゾーンの傾き5°以内で従来品に較べニュートラルゾーンの傾きが小さいことがわかる。本発明の範囲外の比較品1,2は、傾きが改善傾向にはあるが、本発明品に較べ傾きが大きいことがわかる。従来品1のパンチ移動距離の条件を上下入れ替えた比較品3は、従来品と同じレベルであることがわかる。
磁場中プレス成形装置の主要部を示す図。図1(a)は磁場中プレス機の側面概略図、図1(b)は、磁場中プレス機の上面概略図。 上パンチ加圧時の磁化容易軸方向の曲がりを示す図。 ブロック素材からの試料の切り出し方法を示す図。 ニュートラルゾーン傾きの測定結果を示す図。
符号の説明
1 ポールピース
2 下パンチ
3 粉末原料
4 上パンチ
5 ダイ

Claims (2)

  1. ダイ、上パンチ及び下パンチからなる金型により形成されるキャビティ内に、異方性焼結永久磁石の原料粉末を充填し、該原料粉末を磁化容易軸方向に配向するために磁場を印加しながら、前記金型によりプレス成形を行う磁場中プレス成形工程を含む横磁場成形による異方性焼結永久磁石の製造方法であって、異方性焼結永久磁石の原料粉末充填時のキャビティ内の該粉末高さをA、該粉末を圧縮し成形した後のプレス体の高さをBとした時、上及び下パンチのうちの一方をダイに対して移動させる第1の工程と、上及び下パンチのうちの他方のパンチをダイに対し移動させる第2の工程をもってプレス成形を完了する磁場中プレス成形工程において、ダイに対する上及び下パンチの移動距離を(A−B)/2mm±0.2×(A−B)/2mmとすることを特徴する異方性焼結永久磁石の製造方法。
  2. 請求項1記載の異方性焼結永久磁石の製造方法によって得られる異方性焼結永久磁石であって、該永久磁石の全領域において、結晶粒の磁化容易軸方向が均一かつ互いに平行に配向することを特徴とする異方性焼結永久磁石。
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