JP2007306913A - 組換え微生物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】微生物において機能を有する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を、枯草菌prsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子のゲノム上における上流に導入してなるか、或いは微生物において機能を有する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を枯草菌prsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子の上流に連結した遺伝子断片を導入し、且つcspB遺伝子、cspC遺伝子若しくはcspD遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を欠失又は不活性化してなる微生物株に、目的のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子を導入した組換え微生物。
【選択図】なし
Description
しかしながら、prsA遺伝子を過剰発現しており、且つ、斯かるコールドショックタンパク質に関与する遺伝子を改変した微生物はこれまで知られておらず、特にその様な微生物がprsA遺伝子を過剰発現している微生物に比べ、有用なタンパク質又はポリペプチドの優れた生産性を示すことは予想すらされていない。
Nature,390,249,1997 Science,277,1453,1997 Mol. Microbiology, 8,:727 (1993) Mol. Gene. Genet., 209:335 (1987) Plasmid, 18:8 (1987) Mol. Microbiol., 25:741 (1997) J. Biol. Chem., 274:3407 (1999)
なお、ここで、配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列には、1若しくは数個、好ましくは1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列が含まれ、付加には、両末端への1〜数個のアミノ酸の付加が含まれる。
特に、本発明微生物の宿主として枯草菌を用いる場合、prsA遺伝子の本来の転写開始制御領域、若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位から、spoVG遺伝子の転写開始制御領域、若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位への相同組換えによる置換は、Mol.Gen.Genet.,223,268,1990記載の方法等を利用して行うことが出来る。
ここで用いる導入用DNA断片は、親微生物ゲノム上の導入部位の上流に隣接する約0.1〜3、好ましくは0.4〜3kb断片(以下、断片(1))と、下流に隣接する約0.1〜3、好ましくは0.4〜3kb断片(以下、断片(2))の間に、当該転写開始制御領域、若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を含む断片(以下、断片(3))、prsA遺伝子断片(以下、断片(4))、及び薬剤耐性マーカー遺伝子断片(以下、断片(5))を挿入したDNA断片である。まず、1回目のPCRによって、断片(1)〜断片(5)の5断片を調製する。
この際、例えば、断片(1)の下流末端に断片(3)の上流側10〜30塩基対配列、断片(4)の上流末端に断片(3)の下流側10〜30塩基対配列、断片(4)の下流末端に断片(5)の上流側10〜30塩基対配列、更に断片(2)の上流側に断片(5)の下流側10〜30塩基対配列が付加される様にデザインしたプライマーを用いる(図1)。
各遺伝子の遺伝子番号、遺伝子機能は、表1に示すとおりである。
以下の様に、prsA遺伝子の発現を強化した変異株の構築を行った(図2参照)。枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表2に示したPVG-FWとPVG-R、及びprsA/PVG-FとprsA/Em2-Rのプライマーセットを用いてspoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位を含む0.2kb断片(A)、及びprsA遺伝子を含む0.9kb断片(B)をPCRにより増幅した。またプラスミドpMUTIN4(Microbiology. 144, 3097 (1998))を鋳型として、表2に示したemf2とemr2のプライマーセットを用いてエリスロマイシン(Em)耐性遺伝子を含む1.3kb断片(C)をPCRにより増幅した。次いで、得られた(A)(B)(C)3断片を混合して鋳型とし、表2に示したPVG-FW2とemr2のプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、3断片を(A)(B)(C)の順になる様に結合させ、spoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位がprsA遺伝子の上流に連結し(spoVG遺伝子の開始コドンの位置にprsA遺伝子の開始コドンが位置する様に連結)、更にその下流にEm耐性遺伝子が結合した2.4kbのDNA断片(D)を得た。続いて枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表2に示したamyEfw2とamyE/PVG2-R、及びamyE/Em2-FとamyErv2のプライマーセットを用いてamyE遺伝子の5'側領域を含む1.0kb断片(E)、及びamyE遺伝子の3'側領域を含む1.0kb断片(F)をPCRにより増幅した。次いで、得られた(E)(F)(D)3断片を混合して鋳型とし、表2に示したamyEfw1とamyErv1のプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、3断片を(E)(D)(F)の順になる様に結合させ、spoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位の下流にprsA遺伝子が連結し、更にその下流にEm耐性遺伝子が結合した2.4kbのDNA断片がamyE遺伝子の中央に挿入された総塩基長4.3kbのDNA断片(G)を得た。得られた4.3kbのDNA断片(G)を用いてコンピテントセル法により枯草菌168株を形質転換し、エリスロマイシン(1μg/mL)とリンコマイシン(25μg/mL)を含むLB寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した。得られた形質転換体から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表2に示すamyEfw2とprsA/Em2-R、及びprsA/PVG-FとamyErv2のプライマーセットを用いたPCRを行うことによって2.4kb及び3.3kbのDNA断片の増幅を確認し、枯草菌168株ゲノム上のamyE遺伝子部位にspoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位の下流にprsA遺伝子が連結したDNA断片が挿入されたことを確認した。この様にして得られた菌株をprsA-Ka株と命名した。
実施例1にて得られたprsA-Ka株の異種タンパク質生産性評価は、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるバチルス属細菌由来のアルカリアミラーゼの生産性を指標として以下の様に行った。
バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-K38株(FERM BP-6946)より抽出したゲノムDNAを鋳型として、表2に示されるK38matu-F2(ALAA)とSP64K38-R(XbaI)のプライマーセットを用いてPCRを行い、アルカリアミラーゼ(特開2000-184882号公報、Eur.J.Biochem.,268,2974,2001)をコードする配列番号3で示される塩基配列の1.5kbのDNA断片(H)を増幅した。またバチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-S237株(FERM BP-7875)より抽出したゲノムDNAを鋳型として、表2に示されるS237ppp-F2(BamHI)とS237ppp-R2(ALAA)のプライマーセットを用いてPCRを行い、アルカリセルラーゼ遺伝子(特開2000-210081号公報)の転写開始制御領域、翻訳開始制御領域、及び分泌シグナル配列をコードする領域を含む0.6kbのDNA断片(I)を増幅した。次いで、得られた(H)(I)の2断片を混合して鋳型とし、表2に示されるS237ppp-F2(BamHI)とSP64K38-R(XbaI)のプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、アルカリセルラーゼ遺伝子の転写開始制御領域、翻訳開始制御領域、及び分泌シグナル配列をコードする領域の下流にアルカリアミラーゼ遺伝子が連結した2.1kbのDNA断片(J)を得た。得られた2.2kbのDNA断片(J)をシャトルベクターpHY300PLK(ヤクルト)のBamHI-XbaI制限酵素切断点に挿入し、アルカリアミラーゼ生産性評価用プラスミドpHYK38(S237ps)を構築した。
図3に基づいて、ゲノム中cspB遺伝子の薬剤耐性遺伝子による置換方法を説明する。尚、cspB遺伝子は枯草菌において低温環境下にて特定のmRNAに結合してその翻訳促進に関与するRNAシャペロンCspBをコードする遺伝子である。またCspBと高いアミノ酸同一性を示し、低温環境下にて同様のRNAシャペロン様機能を果たすと考えられるタンパク質として枯草菌にはCspC及びCspDが存在し、それぞれcspC遺伝子とcspD遺伝子によりコードされる(Mol. Microbiol., 25:741 (1997)、J. Biol. Chem., 274:3407 (1999))。
枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、表2に示したcspB-FW及びcspB/Cm-Rのプライマーセットを用いて、ゲノム中のcspB遺伝子の上流に隣接する1.0kb断片(A)をPCRにより増幅した。また、上記ゲノムDNAを鋳型とし、cspB/Cm-F及びcspB-RVのプライマーセットを用いて、ゲノム中のcspB遺伝子の下流に隣接する1.0kb断片(B)をPCRにより増幅した。
さらに、コンピテントセル形質転換法によって、得られたDNA断片(D)を用いて、168株の形質転換を行った。形質転換後、クロラムフェニコール(10μg/mL)を含むLB寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した。
実施例3にて構築した菌株のアルカリアミラーゼ分泌生産性評価を、実施例2と同様に行った。対照として枯草菌168株及び実施例1にて構築したprsA-Ka株についても評価を行った。図4に示した様に、prsAKΔcspB株においてprsA-Ka株より高いアルカリアミラーゼの分泌生産が認められ、そのprsA-Ka株に対する生産量の増加(図4の斜線部分に相当)は、ΔcspB株で示された枯草菌168株に対する生産量増加(図4の黒塗りで示す部分に相当)より顕著であった。即ち、prsAKΔcspB株では、prsA遺伝子発現強化と各々の遺伝子欠失との組合せがアルカリアミラーゼ分泌生産量向上に対し、相乗的に作用したものと考えられた。尚、prsA遺伝子とcspB遺伝子の機能、並びにcspB遺伝子と類似の機能を担うと考えられるcspC遺伝子及びcspD遺伝子は表1に示すとおりである。
枯草菌168株ゲノム上のdesR遺伝子を、実施例3に示したcspB遺伝子の薬剤耐性遺伝子による置換と同様にして、クロラムフェニコール耐性遺伝子にて置換してΔdesR株を構築した。使用したプライマーを表2に示し、それぞれのプライマーとΔcspB株の構築に用いたプライマーとの対応を表4に示した。また実施例1にて構築したprsA-Ka株のゲノム上のdesR遺伝子を同様にクロラムフェニコール耐性遺伝子にて置換することにより、prsAKΔdesR株を構築した。
尚、desR遺伝子はDesK-DesR二成分制御系のうちレギュレータータンパク質DesRをコード遺伝子である。細胞膜上に存在するセンサータンパク質DesKが感知した低温刺激はDesRに伝達され、DesRはdes遺伝子の上流に結合してその転写を促進する。des遺伝子は細胞膜リン脂質の不飽和化酵素であるΔ5-脂質デサチュラーゼをコードしている(J. Bacteriol., 181:7028 (1999))。
比較例1にて構築した菌株のアルカリアミラーゼ分泌生産性評価を、実施例2と同様に行った。対照として枯草菌168株及び実施例1にて構築したprsA-Ka株についても評価を行った。表5に示した様に、ΔdesR株において野生株168株以上の生産性が認められているにも関わらず、prsA-Ka株に対してdesR遺伝子欠失を行った効果は認められなかった。即ち、低温環境下において転写後のmRNAに作用して翻訳調節に関わるCspBに対し、DesRは低温環境下における転写調節、或いは脂質の不飽和化に関与するが、同じく細胞内の低温環境応答に関与する遺伝子でありながらcspB遺伝子とは異なり、desR遺伝子の欠失をprsA遺伝子発現強化と組合せても酵素生産性に対する相乗効果は認められないことが確認された。
尚、desR遺伝子、desK遺伝子及びdes遺伝子の機能を表6に示した。
バチルス セレウス(Bacillus cereus)由来のprsA遺伝子(配列番号41)は、枯草菌prsA遺伝子に相当する遺伝子である。実施例1の方法と同様の方法にて、バチルス セレウス(Bacillus cereus)由来prsA遺伝子の発現を強化した変異株の構築を行った。すなわち、バチルス セレウス(Bacillus cereus)から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表7に示したBce/PVG-FとBce/emf2-Rのプライマーセットを用いてバチルス セレウス(Bacillus cereus)由来prsA遺伝子を含む0.9kb断片(A)をPCRにより増幅した。また上記比較例にて構築したprsA-Ka株より抽出したゲノムDNAを鋳型とし、表1に示したamyEfw2とPVG-R、及びemf2とamyErv2のプライマーセットを用いて、amyE遺伝子の5’側領域の下流にspoVG遺伝子転写開始制御領域とリボソーム結合部位を含む領域が連結した1.2kb断片(B)、及びエリスロマイシン耐性遺伝子の下流にamyE遺伝子の3'側領域が連結した2.3kb断片(C)をPCRにより増幅した。次いで、得られた(A)(B)(C)3断片を混合して鋳型とし、表2に示したamyEfw1とamyErv1のプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、3断片を(B)(A)(C)の順になる様に結合させ、spoVG遺伝子の転写開始制御領域とリボソーム結合部位の下流にバチルス セレウス(Bacillus cereus)由来prsA遺伝子が連結し、更にその下流にエリスロマイシン耐性遺伝子が結合した遺伝子断片がamyE遺伝子の中央に挿入された総塩基長4.3kbのDNA断片(D)を得た。得られた4.3kbDNA断片(D)を用いて枯草菌168株を形質転換し、prsAbc-K株を構築した。
次いで、実施例3と同様の方法にて、prsAbc-K株のゲノム上よりcspB遺伝子をクロラムフェニコール耐性遺伝子にて置換したprsAbcKΔcspB株を構築した。
構築した上記prsAbc-K株及びprsAbcKΔcspB株について、実施例2と同様の方法によりアルカリアミラーゼ分泌生産評価を行った。対照として枯草菌168株とΔcspB株についても評価を行った。その結果、図5に示すようにprsAbc-K株にて168株を大きく上回る分泌生産が認められた。更にprsAbc-K株よりcspB遺伝子を欠失した菌株においては一層顕著な生産性向上が認められ、実施例5で見られたのと同様、バチルス セレウス(Bacillus cereus)由来のprsA遺伝子発現強化とcspB遺伝子欠失との組み合わせがアルカリアミラーゼ分泌生産量向上に対し、相乗的に作用したものと考えられた。すなわち、枯草菌prsA遺伝子に相当する遺伝子を用いれば、枯草菌prsA遺伝子を用いた場合と同様の有効性が得られることが確認された。
Claims (9)
- 微生物において機能を有する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を、枯草菌prsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子のゲノム上における上流に導入してなるか、或いは微生物において機能を有する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位を枯草菌prsA遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子の上流に連結した遺伝子断片を導入し、且つcspB遺伝子、cspC遺伝子若しくはcspD遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子を欠失又は不活性化してなる微生物株に、目的のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子を導入した組換え微生物。
- 微生物において機能を有する転写開始制御領域若しくは転写開始制御領域とリボソーム結合部位が、枯草菌のspoVG遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子由来のものである請求項1記載の組換え微生物。
- 微生物がバチルス属(Bacillus)細菌である請求項1又は2のいずれか1項記載の組換え微生物。
- バチルス(Bacillus)属細菌が枯草菌(Bacillus subtilis)である請求項3記載の組換え微生物。
- 目的のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子の上流に転写開始制御領域、翻訳開始制御領域又は分泌用シグナル領域のいずれか1以上の領域を結合した請求項1〜4のいずれか1項記載の組換え微生物。
- 転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域からなる3領域を結合した請求項5記載の組換え微生物。
- 分泌シグナル領域がバチルス(Bacillus)属細菌のセルラーゼ遺伝子由来のものであり、転写開始制御領域及び翻訳開始制御領域が当該セルラーゼ遺伝子の上流0.6〜1kb領域由来のものである請求項5又は6記載の組換え微生物。
- 転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域からなる3領域が、配列番号5で示される塩基配列からなるセルラーゼ遺伝子の塩基番号1〜659の塩基配列、配列番号7で示される塩基配列からなるセルラーゼ遺伝子の塩基番号1〜696の塩基配列又は当該塩基配列のいずれかと70%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNA断片、又は当該塩基配列の一部が欠失した塩基配列からなるDNA断片である請求項5〜7のいずれか1項記載の組換え微生物。
- 請求項1〜8のいずれか1項記載の組換え微生物を用いる目的のタンパク質又はポリペプチドの製造方法。
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