以下、本発明に係る表示装置の製造装置及び表示装置の製造方法について、実施の形態を示して詳しく説明する。
[第1の実施形態]
<表示装置の製造装置>
まず、本発明に係る表示装置の製造装置について説明する。
図1は、本発明に係る表示装置の製造装置の第1の実施形態を示す概略構成図である。
本実施形態に係る表示装置の製造装置(表示パネルの製造装置)は、大別して、正孔輸送材料として、例えば導電性ポリマーであるポリエチレンジオキシチオフェンPEDOTと、ドーパントであるポリスチレンスルホン酸PSS(以下、「PEDOT/PSS」と略記する)を、水、エタノール、エチレングリコール等の水系溶媒に溶解又は分散させた強酸性の水系インク(正孔輸送材料含有液;材料溶液)や、電子輸送性発光材料として、例えばフェニレンビニレン系ポリマーやフルオレン系ポリマー等の共役系高分子を、水やテトラリン、テトラメチルベンゼン、メシチレン、キシレン、トルエン等の芳香族系の有機溶媒に溶解した又は分散した水系インク或いは有機溶剤系インク(発光材料含有液;材料溶液)を吐出するインク吐出機構部と、上記水系インクや有機溶剤系インクが塗布されるパネル基板(絶縁性基板)が載置され、上記インク吐出機構部に設けられたプリンタヘッド(詳しくは、後述する)に対して、2次元座標方向に相対的に移動する基板可動機構部と、を有している。
(インク吐出機構部)
インク吐出機構部は、図1に示すように、上記インクを吐出するとともに、当該インクが塗布される領域(画素形成領域)を親液化処理するための紫外光(又は紫外線)を出射するプリンタヘッド11と、当該プリンタヘッド11に対して上記インクを供給するポンプ部12と、当該ポンプ部12におけるプリンタヘッド11へのインクの供給量や供給タイミング等の供給状態を制御するポンプ制御部13と、インクを貯蔵するインクタンク14と、プリンタヘッド11からの紫外光の出射タイミング等の出射状態を制御する光源制御部15と、を備えている。
なお、図1(a)は、プリンタヘッド11及び基板ステージ21を上方から俯瞰した構造図であり、基板ステージ21は、X−Y2軸ロボット22によって互いに直交するX−Y平面(Xm方向及びYm方向)の任意の位置に移動自在である。図1(b)は、プリンタヘッド11及び基板ステージ21を側方から俯瞰した制御系構成図であり、プリンタヘッド11は、基板ステージ21の基板搭載面(X−Y平面)に対して垂直方向(Zm方向;上下方向)の任意の位置に昇降自在である。
(プリンタヘッド)
図2は、本実施形態に係る表示装置の製造装置に適用されるプリンタヘッドの一例を示す概略構成図である。ここで、図2(a)は、プリンタヘッドの平面図(上面図)であり、図2(b)は、プリンタヘッドの正面図であり、図2(c)は、プリンタヘッドの側面図であり、図2(d)は、プリンタヘッドの下面図(ノズル面図)である。
プリンタヘッド11は、例えば図1に示すように、基板ステージ21の基板載置面側の上方であって、該基板ステージ21の移動方向(X−Yの2軸方向;図1(a)のXm方向及びYm方向)に対して、所定の位置に固定されて設置されている。また、プリンタヘッド11は、例えば図2に示すように、インクをパネル基板PSBに吐出して塗布するインク吐出部(溶液吐出部)INJと、当該インク吐出部INJを挟んで隣接して設けられ、パネル基板PSB上のインクの塗布領域(画素形成領域)に、紫外光(又は紫外線)を照射して親液化処理する光源となる一対の紫外光源部(親液化処理部)LSA、LSBと、を備えている。特に、本実施形態においては、上記インク吐出部INJと一対の紫外光源部LSA、LSBが一体的に形成されている。
インク吐出部INJは、具体的には、中空の筐体構造を有し、インクを貯留するインク貯留部ISVと、当該インク貯留部ISVの上面(図2(a))側に設けられ、後述するポンプ部12から供給されるインクをインク貯留部ISVに注入するための注入口IKIと、インク貯留部ISVの下面(ノズル面;図2(d))側にインク吐出部INJの延伸方向(図面上下方向;後述する走査移動方向に対して垂直方向)に直線状に配置され、インク貯留部ISVに注入されたインクを吐出するための複数(本構成例においては3個)の吐出口(ノズル)NZLと、後述する画像処理部24に入力される画像情報データに基づいた量のインクをインク吐出部INJが吐出するように制御信号を出力する吐出制御部16に接続される制御配線CBLと、を備えている。
ここで、インク吐出部INJに設けられた注入口IKIは、後述するポンプ部12の送出口とチューブ(又は配管)を用いて接続されており、吐出制御部16が演算したインク吐出部INJから吐出された量に基づき、ポンプ制御部13が適宜ポンプ部12を駆動することによりインクタンク14からインクを注入しているので、インク貯留部ISVに常に充填されている状態になっている。インク吐出部INJ(プリンタヘッド11)は、ピエゾ素子等の圧電素子或いはインクを加熱して気化膨張させる発熱抵抗素子であり、制御配線CBLから入力された制御信号にしたがって上記複数の吐出口NZLから同時に所定量のインクが基板ステージ21に向けて吐出される。吐出されたインクは、後述するように基板ステージ21がプリンタヘッド11に対して、X−Y2軸方向(2次元座標方向)に相対的に移動することにより、パネル基板PSB上の所定の領域(画素形成領域)に塗布される。
紫外光源部LSA、LSBは、各々紫外光(具体的には、紫外レーザー光や紫外線等)を基板ステージ21方向に出射するレーザーや発光ダイオード(LED)等からなる紫外光源を備え、例えば紫外光源部LSA、LSBの上面(図2(a))側には、各紫外光源部LSA、LSBを駆動するための制御配線CBLが接続されている。また、紫外光源部LSA、LSBの下面(図2(c))側には、基板ステージ21に載置されたパネル基板PSBの所定領域(画素形成領域)に対してインクを連続的に塗布する際の基板ステージ21の移動に伴って各吐出口NZLがパネル基板PSBの所定領域に対して相対的に走査移動する方向線(図中、左右方向の一点鎖線で示す)上に位置し、且つパネル基板PSBの当該所定領域にインクが塗布される直前に各々紫外光を出射するための複数(本構成例においては走査移動方向に対して垂直方向に各々3個)の出射部APLが配置されている。ここで、各出射部APLから出射される紫外光は、各紫外光源部LSA、LSB内に設けられた単一の光源から出射される紫外光を分光して各出射部APLから出射するものであってもよいし、各紫外光源部LSA、LSBの各出射部APLに対応して個別の光源を備えるものであってもよい。これらの紫外光は、いずれもマイクロレンズ等の光学系を介して所望の光束径に収束させてインクの塗布位置に選択的に出射される。
つまり、各紫外光源部LSA、LSBは、光源制御部15から出力される制御信号に基づいて、上記インク吐出部INJによりパネル基板PSBの所定領域上にインクを塗布するタイミングに先立って、当該インクが塗布される所定領域に対して紫外光を照射してUVオゾン処理を施すことにより、当該塗布領域を親液化し、インクが馴染んで広がりやすくする。ここで、上記制御信号に基づく紫外光の照射タイミングは、例えば上記インク吐出部INJにおけるインクの吐出タイミングに略同期するように設定されている。
これにより、パネル基板PSBに対してプリンタヘッド11を走査させながらインクを塗布する工程において、インクを塗布する領域を親液化した直後に、つまり親液性が失われない間に、親液化された領域に対してインク吐出部INJによりインクを吐出して塗布する動作(塗布動作)を同時並行して実行することができる。詳しくは、後述する製造方法において説明する。
なお、図2に示したプリンタヘッド11においては、インク吐出部INJに設けられた単一のインク貯留部ISVに貯留されたインクを、複数の吐出口NZLから同時に吐出して、パネル基板PSB上の複数の画素形成領域に同時に塗布する構造について説明した。
この場合、図2(d)に示すように、インク吐出部INJに設けられる複数の吐出口NZL相互の配置間隔P1を、パネル基板PSBに2次元配列された隣接する画素形成領域相互の配置間隔(例えば図4(b)に示す表示パネル30における隣接する色画素間の間隔P2)に対応するように設定する(P1=P2)ことにより、パネル基板PSB上に正孔輸送材料を含む正孔輸送材料含有液、又は、モノクロ表示パネルに対応した単一の発光色からなる発光層を形成するための電子輸送性発光材料を含む発光材料含有液を良好に塗布することができる。
また、上記吐出口NZL相互の配置間隔P1を、パネル基板PSBに2次元配列された隣接する表示画素の同一色の色画素相互の配置間隔(例えば図4(b)に示す表示パネル30における隣接する同一発光色の色画素間の間隔P3)に対応するように設定(P1=P3=3×P2)し、カラー表示パネルに対応した赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の発光色のうちのいずれかの発光色からなる発光層を形成するための電子輸送性発光材料を含む発光材料含有液を塗布する操作を、赤色画素PXr、緑色画素PXg、青色画素PXbの各色画素ごとに実行することによって良好に色画素をパターニングすることができる。
ところで、本発明に係る表示装置の製造装置に適用可能なプリンタヘッド11(インク吐出部INJ)は、上述した例に限定されるものではなく、例えばインク吐出部INJに、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応した個別のインク貯留部と、各インク貯留部にRGB各色の有機溶剤系インクを個別に注入するための注入口と、各インク貯留部に注入されたRGB各色の有機溶剤系インクを個別に吐出するための吐出口と、を備えるものであってもよい。
この場合、図2(d)に示したインク吐出部に設けられる複数の吐出口相互の配置間隔P1を、パネル基板PSBに2次元配列された隣接する赤(R)、緑(G)、青(B)の各色画素相互の配置間隔(例えば図4(b)に示す表示パネル30における隣接する色画素間の間隔P2)に対応するように設定する(P1=P2)ことにより、カラー表示パネルに対応した赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の発光色からなる発光層を形成するための電子輸送性発光材料をそれぞれ含む各発光材料含有液を各色画素の形成領域に同期して塗布することができる。
なお、プリンタヘッド11は、インク吐出部INJの吐出口NZLとパネル基板PSB(又は、基板ステージ21)との間のクリアランス(パネル基板PSBに対する垂直方向の離間距離)を調整することができるように、図1(b)に示すように、基板ステージ21の移動方向(X−Y方向;図1(a)参照)に対して垂直な方向への移動(矢印Zmで表記)が可能なアーム部材等(図示を省略)に取り付けられているものであっても良い。
(ポンプ部)
ポンプ部12は、ポンプ制御部13から出力される駆動信号に基づいて、インクタンク14に貯蔵されたインクを取り込んで上記プリンタヘッド11(インク吐出部INJ)に送出することにより、インク貯留部ISVがインクで満たされた状態に保持する。
(吐出制御部)
吐出制御部16は、後述する画像処理部24が画像情報データを解析した解析結果に基づいて、プリンタヘッド11がパネル基板PSBの所定領域においてインクを吐出する吐出量を制御する制御信号を制御配線CBLに出力するとともに、吐出量データをポンプ制御部13に出力する。
(基板可動機構部)
基板可動機構部は、図1に示すように、例えば、パネル基板PSBが載置、固定される基板ステージ21と、当該基板ステージ21をX、Y方向の直交する2軸方向に移動させるX−Y2軸ロボット22と、基板ステージ21(又は、基板ステージ21に対して所定の基準位置に固定された上記プリンタヘッド11)に対するパネル基板PSBの載置位置(アライメントマークの整合状態)を検出して調整するためのアライメント(位置合わせ)用カメラ23と、該アライメント用カメラ23により撮像された画像を解析する画像処理部24と、該解析結果に基づいて、基板ステージ21がプリンタヘッド11に対して所定の位置関係に設定されるように、X−Y2軸ロボット22の移動量を制御するロボット制御部25と、を備えている。
ここで、基板ステージ21は、図示を省略したが、載置されたパネル基板PSBを所定の位置に固定するための、真空吸着機構や機械的な支持機構を備えている。また、X−Y2軸ロボット22は、X軸方向及びY軸方向に独立して移動することにより、該X−Y2軸ロボット22に取り付けられた基板ステージ21(すなわち、載置、固定されたパネル基板PSB)を2次元座標方向に移動させ、プリンタヘッド11に対して所定の位置関係に設定する。
さらに、基板ステージ21は、パネル基板PSBに対するプリンタヘッド11の初期吐出位置のアライメント(位置合わせ)のために、上記X−Y2軸方向に加え、基板ステージ21におけるX−Y平面の重心を軸とした回転方向(θ方向)に対しても微調整移動が可能な構造になっている。また、予めパネル基板PSB上に形成したアライメント用マークを検出するためのアライメント用カメラ23も、上述したプリンタヘッド11と同様に、基板ステージ21の移動方向に対して所定の位置に固定されている。
図3は、本実施形態に係る表示装置の製造装置に適用されるプリンタヘッドを用いた親液化処理、及び、インクの塗布動作を説明するための概念図である。
上述したような表示装置の製造装置においては、第1のタイミングでプリンタヘッド11のインク吐出部INJに隣接して設けられた紫外光源部LSA又はLSBによりパネル基板PSB上の領域(画素形成領域)に対して紫外光を照射してUVオゾン処理を施して親液化し、第2のタイミングでインク吐出部INJにより上記親液化された画素形成領域にインクを塗布する。
すなわち、図3(a)、(b)に示すように、パネル基板PSBに対してプリンタヘッド11を図面右方向から左方向(図中、白抜き矢印で表記)へ走査移動させながら画素形成領域の親液化処理、及び、インクの塗布動作を行う場合にあっては、まず、上記第1のタイミングにおいて図3(a)に示すように、インク吐出部INJの左側に隣接して一体的に設けられた紫外光源部LSAの紫外光の出射部APLが、所望の画素形成領域上(具体的には、有機EL素子の画素電極の直上;i番目の画素形成領域上(iは正の整数))に位置するように設定した状態で、紫外光源部LSAから紫外光Ruvを照射してUVオゾン処理を施し、当該画素形成領域を親液化する。当該画素形成領域の親液性は紫外光Ruvを照射直後が最も強く、経時的に低減していってしまう。
次いで、第1のタイミングの直後の第2のタイミングにおいて図3(b)に示すように、インク吐出部INJの吐出口NZLの中心と、当該インク吐出部INJに隣接して設けられた紫外光源部LSAの出射部APLの中心との間隔Pprに相当する寸法だけ、プリンタヘッド11をパネル基板PSB(基板ステージ21)に対して相対的に移動させて、インク吐出部INJの吐出口NZLが上記第1のタイミングにおいて親液化された画素形成領域上(i番目の画素形成領域上)に位置するように設定した状態で、インク吐出部INJからインク液滴INKを吐出して当該画素形成領域に塗布する。吐出中の液滴INKは略粒形状であるが、画素形成領域に被着後に平面的に広がって画素形成領域の形状、つまり各色画素PXr、PXg、PXbの画素電極32の露出している部分の形状となる。このとき、紫外光の照射領域も画素電極32の露出している部分となっている。なお、この第2のタイミングにおいては、上述した第1のタイミングにおける動作と同様に、(i+1)番目の画素形成領域に対して紫外光源部LSAから紫外光Ruvを照射してUVオゾン処理を施し親液化する処理が同時並行して実行される。
一方、図3(c)に示すように、パネル基板PSBに対してプリンタヘッド11を図面左方向から右方向(図中、白抜き矢印で表記)へ走査移動させながら画素形成領域の親液化処理とインクの塗布動作を行う場合にあっては、第1のタイミングでインク吐出部INJの右側に隣接して設けられた紫外光源部LSBからインクが塗布される領域(画素形成領域)に対して紫外光Ruvを照射してUVオゾン処理を施し親液化し、第2のタイミングで当該親液化処理された画素形成領域にインク吐出部INJからインク液滴INKを塗布する。
例えば、インク吐出部INJの吐出口NZLの数が全画素形成領域の数だけない場合、全画素形成領域に一括して紫外光Ruvを照射してしまうと、各画素形成領域における紫外光Ruvの照射からインク吐出までの時間にばらつきが生じてしまう。つまり、紫外光Ruvの照射後にインクの塗布タイミングが前半の画素形成領域では撥液性が十分あるので均一に成膜できるが、インクの塗布タイミングが後半の画素形成領域では紫外光Ruvの照射による撥液性が弱くなってしまい、十分にインクが広がらなくなってしまい、1つの画素形成領域内の膜厚が不均一になるばかりかパネル基板PSBの面内で画素ごとに膜厚の状態が不均一になってしまう。
対して上述したように、連続して画素形成領域ごとに紫外光Ruvを照射してからインクを吐出すると、各画素形成領域において、紫外光Ruvの照射からインク吐出までの時間を短く且つ等間隔((i−1)番目の画素形成領域における紫外光Ruvの照射からインク吐出までの時間がi番目の画素形成領域における紫外光Ruvの照射からインク吐出までの時間に等しい)とすることができるので、インクが吐出される時の画素形成領域の撥液性の状態が高く且つ均一なので、1つの画素形成領域内の膜厚が均一にするとともにパネル基板PSBの面内で複数の画素形成領域の膜厚を均一にすることができる。
特に、インク吐出部INJの吐出口NZLに対し両側に出射部APLを設けたことによって吐出口NZLが相対的にパネル基板PSB上をYm方向(順方向)に直進するように走査して成膜後、Xm方向に直進するように移動して再びYm方向(逆方向)に直進するように走査すればよいので、インク吐出部INJ又はパネル基板PSBを反転させることがなく、比較的単純な動作制御で速やかに紫外光Ruvの照射及びインクの塗布を行うことができる。
このように、本実施形態においては、パネル基板(表示画素の画素電極)に対して、プリンタヘッドを相対的に図面左方向、あるいは、図面右方向のいずれの方向に走査移動させながらインクを塗布する場合であっても、光源制御部から出力される制御信号により、当該走査移動方向の前方となる紫外光源部から紫外光を照射して、インクの塗布領域(画素形成領域)を親液化するように制御することができる。
なお、図3においては、紫外光源部LSA又はLSBにより親液化処理された領域(画素形成領域)を概念的に示すため、パネル基板(画素電極)上に便宜的にハッチングを施して示した。また、当該領域に塗布されたインクを概念的に示すため、便宜的に表面張力によりドーム状を有しているものとして図示したが、インクは画素形成領域内にある程度の広がりを有して塗布されているものであってもよいし、また、紫外光は画素形成領域の全域に連続的に照射されるものであってもよいし、当該全域に一時に照射されるように紫外光の光束径を比較的大きく設定するものであってもよい。
<表示装置の製造方法>
次に、上述したような製造装置を適用した表示装置(表示パネル)の製造方法について説明する。
まず、本実施形態に係る製造装置を適用して製造される表示パネルについて説明する。
図4は、本実施形態に係る表示装置の製造方法により製造される表示パネルの画素配列の一例を示す要部概略図である。ここで、図4(a)は、表示パネルの平面図であり、図4(b)は、図4(a)における表示パネルのA−A断面図である。なお、図4(a)に示す平面図においては、説明の都合上、表示パネルを視野側から見た場合の、各表示画素(色画素)に設けられる画素電極と、画素形成領域を画定する隔壁(バンク)と、の配置関係のみを示し、また、画素電極及び隔壁の配置を明瞭にするために、便宜的にハッチングを施して示した。
図4(a)に示すように、本実施形態に係る製造装置により製造される表示パネル30(表示装置)は、ガラス基板等の絶縁性基板からなるパネル基板PSBの一面側に、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色からなる色画素PXr、PXg、PXbが図面横方向に順次繰り返し複数(3の倍数)配列されるとともに、図面縦方向に同一色の色画素PXr、PXg、PXbが複数配列されている。ここでは、隣接するRGB3色の色画素PXr、PXg、PXbを一組として一の表示画素PIXが形成されている。
また、表示パネル30は、図4(a)、(b)に示すように、パネル基板PSBの一面側から突出し、柵状又は格子状の平面パターンを有して配設された隔壁(バンク)31により、パネル基板PSBの一面側に2次元配列された複数の表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)のうち、図4(a)の図面縦方向に配列された同一色の複数の色画素PXr、又は、PXg、PXbの形成領域を含む領域が画定される。また、当該領域に含まれる各色画素PXr、又は、PXg、PXbの形成領域には、各々画素電極32が形成されている。
図5及び図6は、本実施形態に係る製造装置を適用した表示装置(表示パネル)の製造方法の一例を示す工程断面図である。ここでは、図4に示した、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の色画素PXr、PXg、PXbを一組とする表示画素PIXを備えたカラー表示パネルを製造する場合について説明し、各色画素へのインクの塗布工程については、上述したプリンタヘッドの説明(図3)を適宜参照するものとする。また、図7は、本実施形態に係る製造装置におけるパネル基板(基板ステージ)に対するプリンタヘッドの走査移動経路を説明するための概念図である。
本実施形態に係る表示装置の製造方法、まず、図5(a)に示すように、ガラス基板等からなるパネル基板PSBの一面側(図面上方側)に設定された各画素形成領域Apxごとに、少なくとも最上層の表面が錫ドープ酸化インジウム(Indium Thin Oxide;ITO)や亜鉛ドープ酸化インジウム等の透明電極材料からなる画素電極(例えばアノード電極)32を形成した後、図5(b)に示すように、隣接する画素形成領域Apxとの境界領域に絶縁性の樹脂材料等からなる隔壁(バンク)31を形成する。隔壁31は、画素電極32の周縁部を覆い、画素電極32の中央部が露出されるような開口部が設けられている。これにより、隔壁31に囲まれた画素形成領域Apxには、上記画素電極32が露出する。ITO等の金属酸化物は表面粗さが適度なので金属のように緻密且つ平滑でないため塗布されたインクがなじみ広がりやすい。
次いで、上記画素電極32及び隔壁31が形成されたパネル基板PSBを純水やアルコールにより洗浄した後、例えばフッ化物ガス雰囲気中で紫外線を照射するCF4プラズマ洗浄法等によりパネル基板PSBの全面にフッ素を結合させて、少なくとも後述する有機EL層33(正孔輸送層33a及び電子輸送性発光層33b)を形成する際に塗布される有機溶液の液滴INKに対して撥液性を有するように撥液化する(撥液化処理)。
ここで、本実施形態において使用する「撥液性」とは、後述する正孔輸送層となる正孔輸送材料を含む有機溶液HMCや、電子輸送性発光層となる電子輸送性発光材料を含む有機溶液EMCの液滴INK、もしくは、これらの溶液に用いる有機溶媒を、絶縁性基板上等に滴下して、接触角の測定を行った場合に、当該接触角が50°以上になる状態と規定する。また、「撥液性」に対する後述する「親液性」とは、本実施形態においては、上記接触角が40°以下になる状態と規定する。
なお、本実施形態においては、各画素形成領域Apxに形成される画素電極32として、単層の電極材料からなる導電層を適用した場合を図示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば表示パネル30が、後述する有機EL層33において発光した光を、パネル基板PSBと反対側(図面上方)に出射するトップエミッション型の発光構造を有している場合にあっては、例えば下層側にアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銀(Ag)、パラジウム銀(AgPd)系の合金等の光反射特性を有する反射金属膜からなる反射金属層と、上層側に上記ITO等の透明電極材料からなる(光透過特性を有する)導電性酸化金属層と、を積層した電極構造を有しているものであってもよい。
また、本実施形態においては、図示の都合上、各画素形成領域Apxに画素電極32のみが形成された構造を示すが、当該画素電極32の各々に接続され、後述する有機EL層33(有機EL素子)に供給する発光駆動電流を制御する駆動制御素子(例えば薄膜トランジスタ)や駆動回路(画素回路)が各画素電極32の下層側に層間絶縁膜(平坦化膜)を介して設けられているものであってもよい。
次いで、図5(c)に示すように、上述した表示装置の製造装置(図1〜図3参照)を適用して、プリンタヘッド11H(上述したプリンタヘッド11と同等の構成を有する)の紫外光源部(上述した紫外光源部LSA又はLSBに相当する;図中では便宜的に「LS」と表記する)が、上記隔壁31により画定された各画素形成領域Apx(画素電極32)の直上に位置するようにパネル基板PSB(基板ステージ21)を相対的に移動させ、例えば酸素ガス雰囲気中で当該紫外光源部LSから紫外光Ruvを照射することにより、活性酸素ラジカルを発生させて、上記撥液性を有する画素電極32の表面(ITO等からなる導電性酸化金属層)を、後述する有機溶液HMCに対して親液化(親水化)する(UVオゾン処理)。出射部APLの径は、吐出口NZLの相対的走査移動方向における画素電極32の長さと同等もしくはそれよりも若干短い方が好ましい。各画素電極32は、露出されている全域に紫外光Ruvが照射されることが好ましいが、隔壁31の表面の撥液性を損なう恐れがあるので、画素電極32の露出されている中央部のみに照射され、隔壁31に沿っている周縁部に照射されないようにしてもよい。
その後、図5(d)に示すように、プリンタヘッド11H(プリンタヘッド11)のインク吐出部(上述したインク吐出部INJに相当する)から正孔輸送材料(例えば、上述したPEDOT/PSS)を水性溶剤(例えば水99〜80wt%、エタノール1〜20wt%)に加えてなる有機溶液(材料溶液;水系インク)HMCを、上述した吐出制御部16により設定される所定量の液滴状にした液滴INKを吐出させ、各画素形成領域Apxの画素電極32上に塗布する。ここで、上述したように、隔壁31の表面は撥液性を有している(又は、撥液化処理が施されている)ので、画素形成領域Apxに塗布された有機溶液HMCの液滴INKが仮に隔壁31上に着滴した場合であってもはじかれて、親液性を有する各画素形成領域Apx内にのみ塗布される。
具体的には、上述したプリンタヘッドを備えた製造装置において、正孔輸送材料を含む有機溶液(水系インク)を各表示画素(色画素)の画素電極上に塗布する工程において、図3(a)に示したように、まず、第1のタイミングで、有機溶液HMC(インク液滴INK)を塗布するi番目の各画素電極32の直上に紫外光源部LS(図3(a)では紫外光源部LSAに相当する)の各出射部APLが位置するように、X−Yロボット22を制御して基板ステージ21を移動させ、紫外光源部LSの各出射部APLから紫外光Ruvを同時に照射することにより、各画素電極32の表層となるITO等からなる導電性酸化金属層の表面がUVオゾン処理されて、有機溶液HMCに対して親液化される。
次いで、図3(b)に示したように、第2のタイミングで、(i+1)番目の各画素電極32の直上に紫外光源部LSの各出射部APLが位置するように基板ステージ21を移動させる。これにより、プリンタヘッド11Hの走査移動方向(図5においては紙面に垂直方向)に対して後方側に設けられたインク吐出部INJの各吐出口NZLが、上記第1のタイミングで親液化されたi番目の各画素電極32の直上に位置することになる。この状態において、i番目の画素電極32の直上のインク吐出部INJの各吐出口NZLから、所定量の有機溶液HMC(インク液滴INK)を液滴状にした液滴INKを同時に滴下し、親液化された各画素電極32上に塗布する。
このような各画素形成領域Apxへの親液化処理と有機溶液HMCの塗布動作を、図4に示したように、i番目の画素形成領域に対して紫外光を照射しつつ、一つ前のタイミングで、既に親液化された隣接する(i−1)番目の画素形成領域に有機溶液HMCを塗布する処理を同時に実行し、さらに、パネル基板PSB上の各画素形成領域Apxに対してプリンタヘッド11Hを走査移動させて順次繰り返し実行することにより、画素形成領域の親液化から有機溶液の塗布までの時間を均一にすることができ、各画素形成領域における有機溶液HMCの広がり(馴染み)の度合いを均一化することができる。
そして、上記有機溶液のHMCの塗布後、パネル基板PSBを加熱して上記有機溶液HMCの水性溶剤を蒸発させることにより、各画素電極32上に正孔輸送材料を薄膜状に定着させて、図4に示したように、パネル基板PSBの全域にわたり各画素形成領域Apxに均等な膜厚を有する正孔輸送層(発光機能層)33aを迅速に形成することができる。ここで、正孔輸送層33aは、例えば数十nmオーダーの薄膜として形成される。
なお、上述した第1のタイミングにおける紫外光Ruvの照射は、例えば第2のタイミングで有機溶液HMCが塗布される領域(画素電極上)のみに照射されるものであってもよいし、当該塗布領域を含む領域(例えば隣接する画素形成領域全域)に紫外光Ruvを連続的に照射するものであってもよい。
また、パネル基板PSB(基板ステージ21)に対するプリンタヘッド11Hの相対的な走査移動方法は、例えば図7(a)、(b)に示すように、プリンタヘッド11Hをパネル基板PSBの一方の端部(図面上端側)から他方の端部(図面下端側)までを走査する往路動作と、パネル基板PSBの他方の端部(図面下端側)から一方の端部(図面上端側)までを走査する復路動作とを、軌跡(親液化処理及び塗布処理される画素形成領域)が重ならないようにパネル基板PSBの全域を網羅するように繰り返す「折り返し経路」を有するように移動させつつ、上記有機溶液(水系インク)HMCの塗布、乾燥工程を実行することにより、パネル基板PSB上の全ての画素形成領域Apxに正孔輸送層33aを形成することができる。なお、吐出中の液滴INKは略粒形状であるが、画素形成領域に被着後に平面的に広がって画素形成領域の形状、つまり各色画素PXr、PXg、PXbの画素電極32の露出している部分の形状となる。このとき、紫外光の照射領域も画素電極32の露出している部分となっている。
すなわち、上記往路動作においては、図3(a)、図7(b)に示すように、紫外光源部LSAから紫外光Ruvが照射されて親液化された画素形成領域(画素電極)に対して、走査移動方向(図7(b)中、白抜き矢印で表記)の後方側となるインク吐出部INJから有機溶液HMCが塗布され、一方、復路動作においては、図3(c)、図7(b)に示すように、紫外光源部LSBから紫外光Ruvが照射されて親液化された画素形成領域(画素電極)に対して、走査移動方向(図7(b)中、白抜き矢印で表記)の後方側となるインク吐出部INJから有機溶液HMCが塗布される。
また、図5、図7においては、図示の都合上、プリンタヘッド11Hから隣接する3つの画素形成領域Apxに対して、同時に紫外光Ruvを照射して親液化処理を施しつつ、有機溶液HMCを吐出して各画素電極32上に塗布する場合について示したが、本発明に係る製造装置及び表示装置の製造方法はこれに限定されるものではなく、図2に示したプリンタヘッド11の紫外光源部LSA、LSBの各々に設けられる出射部APL及びインク吐出部INJに設けられる吐出口NZLの数を適宜設定することにより、より多数の画素形成領域Apxを同時に親液化処理しつつ、有機溶液HMCを同時に塗布して正孔輸送層33aを形成することができる。
次いで、図5(e)に示すように、上述した構成を有する表示装置の製造装置を適用して、プリンタヘッド11Er(少なくとも上述したプリンタヘッド11のインク吐出部INJと同等の構造を有し、後述する特定の発光色に対応した有機溶液が充填されたもの)のインク吐出部から、特定の発光色(例えば赤(R))に対応した有機高分子系の電子輸送性発光材料(例えば、上述したポリフェニレンビニレン系ポリマー)を溶剤に加えてなる有機溶液EMCを、上述したポンプ部12及びポンプ制御部13により設定される所定量の液滴状にして同時に吐出させ、上述した工程において当該特定色(赤(R))の各画素形成領域Apxの画素電極32上に形成された正孔輸送層33a上に同時に塗布する。
次いで、図6(a)に示すように、プリンタヘッド11Erに対して、パネル基板PSB(基板ステージ21)を隣接する画素形成領域Apx相互の配置間隔P2の分、相対的に移動させた状態で、プリンタヘッド11Eg(図5(e)に示したプリンタヘッド11Erと同等の構造を有し、他の特定の発光色に対応した有機溶液が充填されたもの)のインク吐出部から、他の特定の発光色(例えば緑(G))に対応した有機高分子系の電子輸送性発光材料を溶剤に加えてなる有機溶液EMCを、上述したポンプ部12及びポンプ制御部13により設定される所定量の液滴状にして同時に吐出させ、上述した工程において当該特定色(緑(G))の各画素形成領域Apxの画素電極32上に形成された正孔輸送層33a上に同時に塗布する。
そして、このような各発光色に対応した電子輸送性発光材料を含む有機溶液EMCの塗布動作を、青(B)の各画素形成領域Apxに対しても繰り返し実行した後、パネル基板PSBを加熱して上記有機溶液EMCの水性溶剤を蒸発させて、各画素形成領域Apxの正孔輸送層33a上に電子輸送性発光材料を薄膜状に定着させて有機EL層33の電子輸送性発光層(発光機能層)33bを形成する。
ここで、各画素形成領域Apxに対して電子輸送性発光材料を含む有機溶液(有機溶剤系インク)を塗布する工程は、例えば図7(a)、(b)に示した場合と同様に、プリンタヘッド(11Er、11Eg)をパネル基板PSBに対して折り返し経路を有するように走査移動させつつ実行することにより、図4に示したように、パネル基板PSB上に2次元配列された各表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)の画素形成領域Apxの正孔輸送層33a上に電子輸送性発光層33bを形成することができる。
なお、図5(e)、図6(a)においては、表示画素PIXを形成するRGB3色の色画素PXr、PXg、PXbのうち、同一色となる複数の色画素の各形成領域に対して、当該発光色に対応した電子輸送性発光材料を含む有機溶液EMCの液滴INKを滴下して正孔輸送層33a上に塗布する場合について図示したが、上述したように、プリンタヘッド11の単一のインク吐出部INJに、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応した個別のインク貯留部と、各色に対応した吐出口とを備える場合には、隣接して配列された赤(R)、緑(G)、青(B)の各色画素の形成領域(画素形成領域Apx)に赤(R)、緑(G)、青(B)の各発光色に対応した電子輸送性発光材料を含む有機溶液を同時に塗布することができる。
次いで、図6(b)に示すように、少なくとも上述した正孔輸送層33a及び電子輸送性発光層33bからなる有機EL層33を介して、各画素電極32に対向する対向電極(例えばカソード電極)34を、各画素形成領域Apxに共通して一体的に形成した後、図6(c)に示すように、対向電極34を含むパネル基板PSB上に、保護絶縁膜や封止樹脂層35を形成し、さらに封止基板36を接合することにより、有機EL素子からなる表示画素PIXが2次元配列された表示パネル30が完成する。
このように、本実施形態によれば、各表示画素(各色画素)の有機EL層(例えば正孔輸送層)の形成工程において、正孔輸送材料を含む有機溶液を各画素形成領域に塗布する直前に、当該画素形成領域に紫外光を照射して画素電極表面を親液化することにより、塗布された有機溶液が画素電極の全域にわたり略均一に広がるので、乾燥工程を経て薄膜状に定着する正孔輸送材料の膜厚を均等にすることができる。
具体的には、有機EL素子の画素電極(例えばアノード電極)として適用されるITO等の導電性酸化金属膜(層)は、上述したような紫外光を照射することにより親液化(又は親水化)した場合、本願発明者等の検証によれば、比較的短い時間で徐々に親液性が劣化することが判明している。そのため、例えばパネル基板上の各画素形成領域に露出する画素電極を一括して(一時に)親液化し、その後、プリンタヘッドを走査させつつ、各画素形成領域に有機溶液を順次塗布する工程を適用した場合、親液化処理から有機溶液の塗布までの時間が各画素形成領域ごとに異なることになり、各画素形成領域ごとに画素電極表面の親液性(濡れ性)が異なって、各画素形成領域ごとの有機EL層(正孔輸送層)の膜厚が不均一になるという問題を有している。
特に、上述したように、画素電極上に例えば数十nmオーダーの極めて薄い有機膜を形成する場合にあっては、画素電極(導電性酸化金属膜)表面の親液性の差により、有機EL層(正孔輸送層)の膜厚や平坦性が不均一になる。そのため、有機EL素子の発光動作時における発光開始電圧や有機EL層から放射される光の波長(すなわち、画像表示時の色度)が設計値からずれて、所望の表示画質が得られなくなるとともに、有機EL層の膜厚の薄い領域に過大な発光駆動電流が流れることになるため、表示パネル(画素形成領域)に占める発光領域の割合(いわゆる開口率)の低下や有機EL層(有機EL素子)の劣化が著しくという問題を有していた。
そこで、本実施形態においては、単一のプリンタベッドの走査方向に紫外光源部とインク吐出部とを隣接して配置し、紫外光源部から紫外光を照射することにより画素形成領域に露出する画素電極(導電性酸化金属層)の表面を親液化する処理と、当該親液化された画素電極上にインク吐出部から有機溶液を吐出して塗布する動作を、同時並行して実行することにより、各画素形成領域における親液化処理から有機溶液の塗布までの時間を、上記プリンタヘッドを隣接する画素形成領域間の間隔(ピッチ)分だけ走査移動させる時間(又はそれに基づく時間)に均一化することができる。これにより、各画素形成領域の画素電極表面における親液性(濡れ性)の度合いを均一化した状態で有機溶液を塗布することができるので、当該有機溶液の広がりの度合いを同等にして、有機EL層(正孔輸送層)の膜厚を均等にすることができる。
したがって、各画素形成領域の略全域において、発光駆動電流が均一に流れることにより、広い範囲の有機EL層で光が放射され、また、表示パネルに配列された複数の表示画素間で発光輝度のバラツキが抑制されるので、表示パネルの開口率を改善して表示画質を向上させることができるとともに、画素形成領域の特定の領域に過大な発光駆動電流が流れる現象が抑制されるので、有機EL層(有機EL素子)の劣化を抑制して表示パネルの信頼性の向上や寿命の改善を図ることができる。
なお、本実施形態においては、画素電極32を有機EL素子のアノード電極とし、対向電極34をカソード電極として、画素電極32側に正孔輸送層33aを、また、対向電極34側に電子輸送性発光層33bを形成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、画素電極32を有機EL素子のカソード電極とし、対向電極34をアノード電極とするものであってもよい。
この場合、画素電極32側に電子輸送性発光層33bを、また、対向電極34側に正孔輸送層33aを形成した素子構造となるが、この場合にあっても、画素電極32表面の親液性(濡れ性)に応じて電子輸送性発光材料を含む有機溶液の広がりの度合いが左右されるので、本実施形態に係る表示装置の製造装置、及び、当該製造装置を用いた表示装置の製造方法を良好に適用して、パネル基板の全域にわたり、均等な膜厚を有する有機EL層(電子輸送性発光層)を形成することができる。
また、本実施形態においては、プリンタヘッドの構造例として、インク吐出部を挟んで一対の紫外光源部を設け、光源制御部からの制御信号に基づいて、各紫外光源の駆動状態を制御する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば紫外光源をプリンタヘッドの外部に別個に設け、当該光源からの紫外光を光ファイバ等を介してプリンタヘッドに供給する(導く)ものであってもよいし、さらには、当該紫外光をプリンタヘッドに設けられた反射鏡等の光学部材を介してパネル基板側に照射するものであってもよい。
図8は、本実施形態に係る表示装置の製造装置に適用されるプリンタヘッドの他の例を示す概略構成図である。ここで、図8(a)は、プリンタヘッドの平面図(上面図)であり、図8(b)は、プリンタヘッドの正面図であり、図8(c)は、プリンタヘッドの側面図であり、図8(d)は、プリンタヘッドの下面図(ノズル面図)である。なお、図2に示したプリンタヘッドと同等の構成については、同一又は同等の符号を付して説明を簡略化する。また、図9は、本構成例に係るプリンタヘッドを備えた製造装置におけるパネル基板(基板ステージ)に対するプリンタヘッドの走査移動経路を説明するための概念図である。
図2に示したプリンタヘッドにおいては、インク吐出部INJを挟んで一対の紫外光源部LSA、LSBが隣接して設けられた構造を示したが、本構成例においては、図8、図9に示すように、プリンタヘッド11の走査移動方向に対して前方側であって、インク吐出部INJに隣接して唯一の紫外光源部LSCが設けられている。
そして、このような構造を有するプリンタヘッド11を備えた製造装置を適用した製造方法においては、パネル基板PSB(基板ステージ21)に対するプリンタヘッド11の走査移動方法として、例えば図9(a)、(b)に示すように、プリンタヘッド11をパネル基板PSBに対して「折り返し経路」を有するように移動させる場合にあっては、復路動作の開始直前にプリンタヘッド11を180°回転させて、プリンタヘッド11の走査移動方向(図9(b)中、白抜き矢印で表記)に対して、常に紫外光源部LSCが前方側に、また、インク吐出部INJが後方側に位置するように設定することにより、上述した実施形態と同等の製造方法(正孔輸送層及び電子輸送性発光層の形成工程)を適用して、簡易な構成のプリンタヘッドで膜厚の均等な有機EL層を形成することができる。また、復路動作の開始直前にパネル基板PSBが載置されている基板ステージ21をプリンタヘッド11に対して(θ方向に)180°回転するようにしてもよい。なお、吐出中の液滴INKは略粒形状であるが、画素形成領域に被着後に平面的に広がって画素形成領域の形状、つまり各色画素PXr、PXg、PXbの画素電極32の露出している部分の形状となる。このとき、紫外光の照射領域も画素電極32の露出している部分となっている。
[第2の実施形態]
図10は、第2の実施形態に係る表示装置の製造装置に適用されるプリンタヘッドの一例を示す概略構成図である。ここで、表示装置の製造装置の全体構成については上述した第1の実施形態(図1参照)と同等であるので、具体的な説明を省略する。ここで、図2、図8に示したプリンタヘッドと同等の構成については、同一又は同等の符号を付して説明を簡略化する。また、図11は、本構成例に係るプリンタヘッドを備えた製造装置におけるパネル基板(基板ステージ)に対するプリンタヘッドの走査移動経路の一例を説明するための概念図であり、図12は、本構成例に係るプリンタヘッドを備えた製造装置におけるパネル基板(基板ステージ)に対するプリンタヘッドの走査移動経路の他の例を説明するための概念図である。
上述した第1の実施形態に示したプリンタヘッド(図2、図8参照)においては、プリンタヘッド11の走査移動方向線(図中、一点鎖線で表示)上に、インク吐出部INJの各吐出口NZLと、紫外光源部LSA、LSB、LSCの各出射部APLが対応して配列された構造を示したが、本実施形態においては、図10、図11に示すように、インク吐出部INJと紫外光源部LSDが隣接して一体的に形成されたプリンタヘッド11において、当該プリンタヘッド11の走査移動方向(図10では一点鎖線、図11では白抜き矢印で表記)に対して垂直方向に、インク吐出部INJの吐出口NZLと、紫外光源部LSDの出射部APLが配列されている。
そして、このような構造を有するプリンタヘッド11を備えた製造装置を適用した製造方法においては、パネル基板PSB(基板ステージ21)に対するプリンタヘッド11の走査移動方法として、例えば図11(a)に示すように、プリンタヘッド11をパネル基板PSBの一方の端部(図面上端側)から他方の端部(図面下端側)まで走査移動させる「一方向走査」を繰り返す場合にあっては、図11(b)、(c)に示すように、前回の一方向走査(j番目の走査;jは正の整数)においてプリンタヘッド11の紫外光源部LSDによりパネル基板PSB上の各画素形成領域に紫外光が照射されて親液化され、当該親液化された画素形成領域(画素電極)に対して、次回の一方向走査(j+1番目の走査)においてプリンタヘッド11のインク吐出部INJにより有機溶液の液滴INKを吐出して塗布し、当該有機溶液に含まれる正孔輸送材料又は電子輸送性発光材料を画素電極上に定着させる。吐出中の液滴INKは略粒形状であるが、画素形成領域に被着後に平面的に広がって画素形成領域の形状、つまり各色画素PXr、PXg、PXbの画素電極32の露出している部分の形状となる。このとき、紫外光の照射領域も画素電極32の露出している部分となっている。
また、このような構造を有するプリンタヘッド11の走査移動方法の他の例としては、例えば図12(a)に示すように、プリンタヘッド11をパネル基板PSBに対して「折り返し経路」を有するように移動させるものであってもよく、この場合においては、図12(b)、(c)に示すように、往路動作(前回の走査)においてプリンタヘッド11の紫外光源部LSDにより紫外光が照射されて親液化された各画素形成領域(画素電極)に対して、復路動作(次回の走査)においてプリンタヘッド11のインク吐出部INJにより有機溶液を吐出して塗布し、当該有機溶液に含まれる正孔輸送材料又は電子輸送性発光材料を画素電極上に定着させる。
すなわち、本実施形態に係るプリンタヘッド11においては、インク吐出部INJに設けられる紫外光源部LSDに設けられる出射部APLと吐出口NZLとの配置間隔P4が、パネル基板PSBに2次元配列された隣接する画素形成領域相互の配置間隔(図11(b)、図12(b)に示すパネル基板PSBにおいて走査方向とは垂直方向に隣接する表示画素間の間隔であって、図4に示した色画素の配置間隔と同等)P2に対応するように設定(P4=P2)されている。
これにより、パネル基板PSBに対してプリンタヘッド11を走査させながら有機溶液を塗布する工程において、紫外光源部LSDにより各画素形成領域に対して順次紫外光を照射して親液化しつつ(親液化処理)、インク吐出部INJにより各画素形成領域に対して順次有機溶液を吐出して塗布する動作(塗布動作)を同時並行して実行することができるので、画素形成領域の親液化から有機溶液の塗布までの時間を略均一にすることができ、各画素形成領域に形成される有機EL層の膜厚を略均等にすることができる。
なお、上述した各実施形態においては、プリンタヘッドとして、紫外光源部とインク吐出部を一体的に設けた構造を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、紫外光源部とインク吐出部が離間して設けられているものであってもよく、この場合、当該紫外光源部の出射部とインク吐出部の吐出口との配置間隔が、パネル基板(表示パネル)上に相互に隣接して配列される表示画素(色画素)間の配置間隔と同一、又は、その整数倍になるように設定されたものを適用することができる。
また、上述した各実施形態においては、有機EL層33が正孔輸送層33a及び電子輸送性発光層33bであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば正孔輸送兼電子輸送性発光層のみでもよく、正孔輸送性発光層及び電子輸送層でもよく、また、これらの層の間に適宜電荷輸送層が介在してもよく、その他の電荷輸送層の組合せであってもよい。つまり、親液化される直後に塗布されるインクは正孔輸送兼電子輸送性発光材料、電子輸送材料等の電荷輸送材料を含んでいてもよい。
さらに、本発明は、上述したように有機溶液を液滴状にして吐出するインクジェット装置への適用のみならず、例えばノズルプリンティング装置等に適用するものであってもよい。この場合、有機EL層を形成するための有機溶液(水系インク又は有機溶剤系インク)は、パネル基板の複数の画素形成領域に対してインク吐出部から液流状に連続的に吐出されて塗布されることになるため、当該有機溶液が塗布される領域(塗布領域)に対して紫外光源部により連続的に紫外光を照射して親液化することにより、当該塗布領域全体で有機溶液の広がりを均一化して、膜厚が均等な有機EL層を形成することができる。