JP2007305459A - 燃料電池用セパレータ部材、成形用金型及び燃料電池用セパレータの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 黒鉛と樹脂とを含有する燃料電池用セパレータ材料を成形してなり、貫通孔を形成するための薄肉部を有する燃料電池用セパレータ部材であって、前記薄肉部をセパレータ部材の一方の面から板厚の外方向に向かって設けたことを特徴とする燃料電池用セパレータ部材、この部材を製造する際に使用する成形用金型及び燃料電池用セパレータの製造方法に関する。
【選択図】 図11
Description
かかるセパレータに求められる品質は、ガスバリア性、導電性、耐久性、寸法精度等が挙げられるが、特にセパレータは電池の心臓部である電解質膜に影響を及ぼす成分を排出しないこととその損傷を防ぐため及びガスの漏れを防ぐために、その板厚精度を数十μm単位で平滑に仕上げることが要求されている。更には実用段階ではセパレータの低コスト化が求められており、その加工工程での省力化が不可欠な状況となっている。
これらセパレータには、水素や空気、発生した水の流路として図1のように貫通孔を設ける必要がある。しかし、図2のように一旦作製した樹脂成形品を機械加工することによって穴あけをしていては、生産性が悪く、コストアップの要因となる。
そのなかでも貫通孔部の切り離しを容易にするため、該貫通孔形成部分の外周薄肉部の厚みをセパレータ部材厚みの10〜50%とした薄肉部を金型に設けて成形する方法(例えば特許文献1参照)が提案されているが、この提案では、図3に示すように切り離しのための薄肉部は板に対して水平方向にあり、かつその板厚方向の位置も板の肉厚の範囲内にある。
このようなバリが存在すると、電池を運転中にバリが脱離して流路を塞ぎ電池性能を低下させる恐れがある。このため貫通孔を除去するときに、そのバリを完全に除去することが必要であるが、通常貫通孔は、Rと直線をつないだ形状であるため、肉厚の範囲内にバリが存在すると、この形状に沿って除去することになり手間が掛かる。
また図7のように切り離し部の金型の突起を刃物のような突起にすると材料投入時や成形品の脱型時等に金型の薄刃状の突起を損傷し易くなるという欠点がある。
更には図3、図5、図7のように薄肉部分を板に対して板厚内で水平方向に設ける場合、金型に突起を設けるため、局部的に断面積が小さい部分が生じる。局部的に断面積が小さい部分が生じると、黒鉛を混合したような流動性の悪い材料を金型内に全面充填して高圧で成形する場合には食い切り部が僅かに開き、食い切り部近傍では板厚精度が数十μm厚くなる現象が生じてしまう。板厚精度が局部的に数十μmも狂うとガス漏れや電解質膜の損傷を引き起こす恐れがある。
そしてこのためには、貫通孔を形成するための薄肉部分をセパレータ部材の一方の面から板厚の外方向の位置に設置する必要があるとの知見を得ることにより、本発明を完成するに至った。
また本発明は、前記の燃料電池用セパレータ部材の製造方法に使用する成形用金型を提供するものである。
さらに本発明は、前記の燃料電池用セパレータ部材の薄肉部を切断し、貫通孔部を切り離すことによりセパレータ部材の一方の面から板厚の外方向に向かってバリを凸状に発生させ、次いでバリ取りを行うことを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法を提供するものである。
更に流動性の悪い材料を金型内に全面充填して成形する場合でも、貫通孔付近の板厚の顕著な増加が見られず、電池性能を有効に発揮できるセパレータを得ることが出来る。
本発明の燃料電池用セパレータ部材は、黒鉛と樹脂とを含有する燃料電池用セパレータ材料を成形してなるものであり、貫通孔を形成するための薄肉部を有することを特徴とする。
燃料電池用セパレータは、単位セルを複数積層して構成する燃料電池において、隣接する単位セル間に設けられ、電極との間で燃料ガス流路、酸化ガス流路を形成し、燃料ガスと酸化ガスとを隔てる作用を有するものであり、ガス流路用の溝及び貫通孔等が形成されている。
本発明に使用する黒鉛粉としては、高い導電性を示すものであれば制限はないが、例えば、メソカーボンマイクロビーズなどの炭素質を黒鉛化したもの、石炭系コークスや石油系コークスを黒鉛化したもの、黒鉛電極や等方性黒鉛のような特殊炭素材料、天然黒鉛やキッシュ黒鉛等が使用される他、黒鉛電極の加工粉等が挙げられる。
本発明に使用する樹脂としては、耐熱性で、混練可能な程度に低粘度である熱硬化性の樹脂または熱可塑性樹脂であれば特に制限はなく、例えばフェノール樹脂、フルフリルアルコール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリフェニレンオキサイド(PPO)樹脂等の樹脂が挙げられる。これらのうち、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。これらの樹脂はスチレンモノマー等のモノマー成分で希釈し、更に場合によっては増粘剤を使用して増粘させ、有機過酸化物等の硬化剤を使用して硬化させる。
前記セパレータ材料には、さらに離型剤等の添加剤を含んでいてもよい。またかかる離型剤を使用せずに、金型内に外部離型剤を塗布することもできる。
黒鉛紛と樹脂等を含むセパレータ材料の成形法としては、金型を使用する各種プレス成形法又は射出成形法等を挙げることができる。
プレス成形法又は射出成形法を行う場合、例えば熱硬化性樹脂と黒鉛粉との混合物を加熱、加圧型のプレス成形機や射出成形機などを使用して成形する場合、金型温度は100〜350℃、好ましくは100〜150℃程度に保持することがよい。この場合、温度は使用する熱硬化樹脂の硬化温度以上、炭化温度未満の条件とする。成形圧力は2〜100MPa、好ましくは5〜50MPaが適当である。
燃料電池用セパレータ部材に貫通孔切り離し部及び薄肉部を前記セパレータ部材の一方の面から板厚の外方向に設けるための金型としては、例えば図11に示すような凹凸形状を設けた上下の金型が挙げられる。
この場合、薄肉部の位置は、完全に板厚の垂直方向とはせず、金型の抜き勾配分だけ貫通孔中心に傾けることが好ましい。この金型の抜き勾配は、脱型性と製品外観上0.5〜15°であることが好適である。
更に図10に示される貫通孔の切り離しのための薄肉部3の厚さは、0.01〜0.3mmであることが好ましく、さらに研磨のし易さの点で0.05〜0.15mmであることがこのましい。また、金型凸部のコーナー4の部分にはRを付けてもよく、その範囲は特に特定しないが、0.05〜0.3の範囲が好適である。
薄肉部を一方の面から板厚の外方向に向かって設けた形状としては、例えば図12のように切り離し部を板厚の外方向に出したものが好適であるが、薄肉部を簡単に加工するという点で、図13のように切り離しのための薄肉部のみを板厚の外側に出す形状も好ましい。また図14のように薄肉部を斜め方向に出す方法も研磨材が少し穴の中でたわむため、結果的に薄肉部が容易に除去できる。さらに図15のように上型側の抜き勾配をわざときつくすることにより、脱型時に切り離し部を上型に取られるようにし、切り離し部を脱型と同時に除去する方法も有効である。この場合、上型に残った切り離し部は金型より線膨張率が大きいため、エアーを吹き付けることにより収縮し、容易に取り除くことができる。
かかる貫通孔の薄肉部分の切断は、エアーブローや、人の指又はパンチを使用することにより容易に行うことができる。かかる薄肉部分の切断により貫通孔内の板厚の範囲外に凸状に発生したバリが残る。
かかるバリは板の表面を水平方向に研磨材等を水平方向に当てて用いるか、又はスコッチブライト等の研磨布のロールに板を通すことにより、容易に除去することができる。研磨材としては、研磨布[例えばスコッチブライト(登録商標)]やサンドペーパー等が挙げられる。
以下、本発明の実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
黒鉛粉80重量部にビニルエステル樹脂、硬化剤、増粘剤及び添加剤を合計20重量部配合し、混合した。この混合物を常温で24時間熟成し、増粘させた。
得られた材料を1cm程度の厚みの四角形形状に予備成形し、図11に示すような金型5,6に入れ、型温140℃、圧力100kg/cm2の条件で垂直方向に型を加圧して5分間成形し、脱型した。この金型の貫通孔部分を図12に示す。この金型の貫通孔の薄肉部分の厚みは0.1mmとし、抜き勾配は5°である。
この成形品は脱型時に既に切り離し部が取れた状態であった。また、貫通孔周囲には僅かにバリ部分の突起が残ったため、スコッチブライト(登録商標)で水平面を磨き、バリを除去した。僅かな加工で済ますことが出来た。
実施例1と同様の条件で金型の貫通孔の薄肉部分の厚みは0.01mmとし、抜き勾配は0.5°とした。
この成形品も脱型時に既に切り離し部分は離れており、バリ部分の突起も非常に僅かであったため、後加工は全く必要なくなった。
実施例1と同様の条件で金型の貫通孔の薄肉部分の厚みは0.3mmとし、抜き勾配は15°とした。
この成形品の貫通方向の切り離し部を除去したところ、バリが残ったため、サンドペーパーを水平方向にあててバリを除去した。少ない手間で加工を済ますことが出来た。
2 貫通孔の切り離し部
3 切り離しのための薄肉部
4 金型凸部の角部
5 上金型
6 下金型
7 加工工具
8 研磨材
Claims (5)
- 黒鉛と樹脂とを含有する燃料電池用セパレータ材料を成形してなり、貫通孔を形成するための薄肉部を有する燃料電池用セパレータ部材であって、前記薄肉部をセパレータ部材の一方の面から板厚の外方向に向かって設けたことを特徴とする燃料電池用セパレータ部材。
- 前記セパレータ部材の薄肉部の勾配が0.5〜15°である請求項1記載の燃料電池用セパレータ部材。
- 前記セパレータ部材の薄肉部の厚さが0.01〜0.3mmである請求項1又は2に記載の燃料電池用セパレータ部材。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池用セパレータ部材を製造する際に使用する成形用金型。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池用セパレータ部材の薄肉部を切断し、貫通孔部を切り離すことによりセパレータ部材の一方の面から板厚の外方向に向かってバリを凸状に発生させ、次いでバリ取りを行うことを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
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