JP2007304431A - 光学補償シート、偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents

光学補償シート、偏光板及び液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】製造工程中に課される加熱条件に対しても、カール特性に優れた生産性のよい光学補償シート、偏光板、及びそれを用いた液晶表示装置の提供。
【解決手段】少なくとも透明樹脂及び可塑剤を含有する透明支持体を有する光学補償シートであって、前記透明支持体を125℃で5分間加熱処理し、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASC PH1.29−1985、Method−A)に従って測定した前記透明支持体の前記表面側におけるカール値が、+10(m−1)以下の範囲であることを特徴とする光学補償シート等である。
【選択図】なし

Description

本発明は、カール特性に優れ、生産性の高い光学補償シート、偏光板、及びこれを用いた液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、通常、液晶セル、偏光板、及び光学補償シート(位相差板)を有する。
例えば、透過型の液晶表示装置では、二枚の偏光板を液晶セルの両側に取り付け、一枚又は二枚の光学補償シートが、液晶セルと偏光板との間に配置されている。
また、反射型の液晶表示装置では、反射板と、液晶セルと、一枚の光学補償シートと、一枚の偏光板とが、この順に配置されている。
前記液晶セルは、一般的な例として、棒状液晶性分子、それを封入するための二枚の基板、及び棒状液晶性分子に電圧を加えるための電極層から構成されている。
前記液晶セルは、棒状液晶性分子の配向状態の違いにより、様々な表示モードが提案されている。
例えば、透過型の液晶表示装置に採用される液晶セルにおいては、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、及びVA(Vertically Aligned)のような表示モードが提案されている。
また、反射型の液晶表示装置に採用される液晶セルにおいては、HAN(Hybrid Aligned Nematic)といった表示モードが提案されている。
前記偏光板は、一般に、偏光膜と透明保護膜とから構成されており、この偏光膜は、一般に、ポリビニルアルコールにヨウ素、又は二色性染料の水溶液を含浸させ、更にこのフィルムを一軸延伸することにより得られる。そして、この偏光膜の両側に二枚の透明保護膜を貼りつけることにより、前記偏光板が構成されるのである。
前記光学補償シートは、画像着色を解消したり、視野角を拡大するために、様々な液晶表示装置で用いられている。この光学補償シートとして透明支持体上にディスコティック液晶の配向を固定した光学異方性層を有するフィルムが、特許文献1〜8に開示されている。
液晶表示装置に採用される光学補償シートは、前記透明支持体の製膜時、又は製膜後に延伸したり、前記透明支持体上に光学異方性層を積層したりして製造される。
ここで、前記光学異方性層は、その製膜時において、前記透明支持体のカール値が大きすぎると、以下の(1)及び(2)に示す問題を生じることがわかった。
(1)前記光学異方性層を設けるための工程において、前記透明支持体を送り出しから巻き取りまでハンドリングする最中に、前記光学異方性層の形成過程における加熱、電離放射線の照射、及び真空ゾーンの通過等の各工程において、カール値が更に大きくなり、前記透明支持体の端部が、光学補償シートを製造する装置の一部と接触したり、前記端部が鋭角に折れ曲がることにより、発塵して、点欠陥を増加させたり、破断してしまったりする。
(2)前記光学補償シートが、前記光学異方性層を設けない場合や、前記光学異方性層を前記透明支持体の表面に設ける工程において問題が発生しなかった場合でも、最終的に作製した光学補償シートを偏光子と貼り合わせて、偏光板を作製する際に、貼り合わせ不良等を引き起こす。
これらの問題は、特に塗布膜の乾燥工程や、液晶性化合物の配向を促進する熟成工程のような、透明支持体を高温処理する工程において顕著であり、該工程を含む上記特許文献1〜8に記載の技術において、このような問題を解決する対策は講じられていなかった。
したがって、製造工程中に課される加熱条件に対しても、カール特性に優れた生産性のよい光学補償シート、偏光板、及びそれを用いた液晶表示装置を製造する技術の開発が強く望まれているのが現状である。
特許第2640083号明細書 特許第2587398号明細書 特許第3118197号明細書 国際公開第96/37804号パンフレット 国際公開第96/31793号パンフレット 特開平11−316378号公報 特開平9−21914号公報 特開2005−37904号公報
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、製造工程中に課される加熱条件に対しても、カール特性に優れた生産性のよい光学補償シート、偏光板、及びそれを用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも透明樹脂、及び可塑剤を含有する透明支持体を有し、前記透明支持体を125℃で5分間加熱処理し、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASC PH1.29−1985、Method−A)に従って測定した前記透明支持体の前記表面側におけるカール値が、+10(m−1)以下であることを特徴とする光学補償シートである。
<2> 透明支持体の表層において測定した赤外線吸収スペクトルのうち、可塑剤に対応する赤外線吸収スペクトルで最も高いピークの高さAと、透明樹脂に対応する赤外線吸収スペクトルで最も高いピークの高さBとの比(A/B)が、125℃で5分間加熱処理した前後で0.1以上増加しない前記<1>に記載の光学補償シートである。
<3> 可塑剤が、単環芳香族構造を有する化合物を主成分として含み、透明樹脂が、セルロースアシレートを主成分として含み、前記可塑剤に対応する赤外線吸収スペクトルの波数が、1,450〜1,500cm−1で最も高いピークの高さAと、前記透明樹脂に対応する赤外線吸収スペクトルの波数が1,350〜1,400cm−1で最も高いピークの高さBとの比(A/B)が、100〜140℃の温度で5分間加熱処理した前後で0.1以上増加しない前記<2>に記載の光学補償シートである。
<4> 透明支持体の表面に、更に光学異方性層が設けられた前記<1>から<3>のいずれかに記載の光学補償シートである。
<5> 光学異方性層が、液晶性化合物を含む前記<4>に記載の光学補償シートである。
<6> 液晶性化合物が、ディスコティック液晶である前記<5>に記載の光学補償シートである。
<7> 光学補償シートが、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASC PH1.29−1985、Method−A)に従って測定した前記透明支持体の前記表面側における、前記加熱処理の前後のカール値の差が、−15(m−1)〜+15(m−1)の範囲であることを特徴とする前記<1>から<6>のいずれかに記載の光学補償シートである。
<8> 波長550nmの光に対して、下記式(a)で定義されるRe値が、2〜200nmの範囲であり、下記式(b)で定義されるRth値が、50〜400nmの範囲である前記<1>から<7>のいずれかに記載の光学補償シートである。
Re=(nx−ny)×d・・・・・・・・・・・・・式(a)
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d・・・・・式(b)
なお、上記式(a)、及び式(b)中、nxは、前記透明支持体の面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは、前記透明支持体の面内の進相軸方向の屈折率であり、nzは、前記透明支持体の厚み方向の屈折率であり、dは、前記透明支持体の厚さである。
<9> 透明支持体の膜厚が、60〜120μmである前記<1>から<8>のいずれかに記載の光学補償シートである。
<10> 偏光膜及びその両側に配置された2枚の透明保護フィルムからなる偏光板であって、該透明保護フィルムの少なくとも一方が前記<1>から<9>のいずれかに記載の光学補償シートであることを特徴とする偏光板である。
<11> 液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を含み、該偏光板のうちの少なくとも1つが、前記<10>に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置である。
<12> 液晶セルが、ベンド配向モードの液晶セルである前記<11>に記載の液晶表示装置である。
本発明によると、製造工程中に課される加熱条件に対しても、カール特性に優れた光学補償シートを得ることができる。
また、本発明によって、幅広の長尺ロール形態に製造した場合においても光学的欠陥が実用上問題の無い、カール特性に優れた光学補償シートを生産性よく製造することができる。
更に、本発明の光学補償シートを使用することにより、光学的欠陥が少ない偏光板、及び視野角特性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
(光学補償シート)
本発明の光学補償シートは、少なくとも透明支持体を有し、液晶性化合物を含有する光学異方性層を有してもよい。
なお、前記光学補償シートは、前記液晶製化合物を含有する光学異方性層を有する場合には、前記透明支持体と光学異方性層との間に、該光学異方性層中の液晶性化合物の配向を制御する配向膜を有することが好ましい。また、後述する物性を満たす限り、前記透明支持体、及び光学異方性層は、それぞれ2層以上有していてもよい。
<透明支持体>
本発明の光学補償シートを構成する透明支持体は、透明樹脂材料(以下、「透明樹脂」という。)及び可塑剤を少なくとも含有し、必要に応じて、レターデーション調整剤などを添加してもよい。
本発明の透明支持体は、後述する製造工程において、ドープと呼ばれる溶媒を含んだ状態で平滑な金属支持体上で乾燥することで好ましく製造される。その際、空気と接する面と金属支持体と接する面とで、乾燥後のシートの平滑性が異なる(金属支持体と接する面の方が平滑性が高い)ことが知られている。本発明では、金属支持体と接する面を「表面」と定義する。従って、本発明では、前記透明支持体の表面の平滑性と、その裏側の面の平滑性とが同じではないという前提で、平滑性が高い一方の面を「表面」と定義する。前記平滑性は例えば、接触式の粗さ計で、JIS B 0601に従って測定される中心線平均粗さ(Ra)等で評価することができる。
なお、本発明において、前記「表面」近傍に分布する可塑剤について説明するときには、所定の深さを含む領域として前記「表面」を定義する。
本発明の光学補償シートを構成する透明支持体としては、光透過率が80%以上であるのが好ましい。
<<透明樹脂>>
前記透明支持体を形成する透明樹脂としては、セルロースアシレート類、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ノルボルネン樹脂等が挙げられ、特にセルロースアシレート類が好ましい。前記透明樹脂を延伸することによって、光学異方性を得る。
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンター、ケナフ、木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、いずれの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により、これらを混合して使用してもよい。
本発明においてはセルロースからエステル化してセルロースアシレートを作製するが、特に好ましい前述のセルロースがそのまま利用できる訳ではなく、リンター、ケナフ、パルプを精製して用いられる。
本発明において、セルロースアシレートとは、セルロースの脂肪酸エステルのことである。特にセルロースの低級脂肪酸エステルが更に好ましい。
低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)、又は4(セルロースブチレート)であることが好ましい。
セルロースアシレートとしては、セルロースアセテートが好ましく、その例としては、ジアセチルセルロース及びトリアセチルセルロースなどが挙げられる。
また、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いることも好ましい。
本発明に用いられるセルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が下記数式(c)及び(d)を満足するものが、溶解性の点で好ましい。
ここで、下記式(c)において、「SA´」は、セルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基の置換度を表し、下記式(d)において、「SB´」は、セルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基の置換度を表す。
なお、SAはセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基を表し、SBはセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基を表す。SBは炭素原子数3〜6のアシル基が特に好ましい。
2.3≦SA´+SB´≦3.0・・・・・・・・・・式(c)
0≦SA´≦3.0・・・・・・・・・・・・・・・・式(d)
また、一般に、セルロースアシレートの2,3,6の水酸基は、全体の置換度の1/3ずつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。本発明ではセルロースアシレートの6位水酸基の置換度が、2,3位に比べて同程度、若しくは、多いほうが好ましい。
全体の置換度に対して6位の水酸基が30%以上40%以下のアシル基で置換されていることが好ましく、31%以上のアシル基で置換されていることが更に好ましく、32%以上のアシル基で置換されていることが特に好ましい。
また、6位の水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基であるプロピオニル基、ブチロイル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基などで置換されていてもよい。なお、各位置の置換度の測定は、NMR法などによって求めることができる。
本発明の透明支持体に用いられる透明樹脂としては、酢化度が54.0〜62.5%であるセルロースアシレートフィルムが好ましく、57.0〜61.5%であるセルロースアシレートフィルムがより好ましい。
ここで酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。
酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアシル化度の測定及び計算に従う。
また、セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることが更に好ましい。
また、透明支持体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される多分散性指数(Mw/Mn)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。
なお、Mwは質量平均分子量を示し、Mnは数平均分子量を示す。
具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜5.0であることが好ましく、1.0〜3.0であることが更に好ましく、1.0〜1.7であることが最も好ましい。
<<レターデーション調整剤>>
本発明の透明支持体は、溶液の紫外線吸収スペクトルの吸収極大を与える波長(λmax)が400nmより短波長にある紫外線を吸収する化合物をレターデーション調整剤として含有することが好ましい。
このような化合物の例としては、フェニルサリチル酸、2−ヒドロキシベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類等の紫外線吸収剤を挙げることができる。
また、少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物、トリフェニレン化合物、円盤状化合物(1,3,5−トリアジン骨格、ポルフィリン骨格を分子に含有の化合物等)等が好ましい。
更に、これらの化合物類は、可視光領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
[少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物]
本発明の透明支持体のレターデーション調整剤として、少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物(以下、「本発明の芳香族化合物」ともいう)を少なくとも1種を含有することが好ましい。
芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環でもよい。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環、又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることが更に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。
本発明の芳香族化合物が有する芳香族環の数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましい。3以上の芳香族環を有する場合、少なくとも2つの芳香族環の立体配座を立体障害しなければよい。
2つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合、及び(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。
レターデーション上昇機能の観点では、2つの芳香族環の結合関係は、上記(a)〜(c)のいずれでもよい。具体的には、特開2002−131537号公報の段落番号[0016]〜[0023]記載の内容のものが挙げられる。更に、上記(b)又は(c)の場合は、二つの芳香族環の立体配座を立体障害しないことが好ましい。
本発明の芳香族化合物としては、特開2002−363343号公報の段落番号[0011]〜[0031]に記載されたものと、実質的に同一の、直線的な分子構造を有する棒状化合物、特開2000−111914号公報の段落番号[0011]〜[0085]に記載されたものと、実質的に同一の、立体障害しない立体配座となっている2つの芳香族環を含有する化合物、少なくとも1つの芳香族環を置換基として含有する1,3,5−トリアジン化合物、及び、特開2001−166144号公報に記載された、ポルフィリン骨格を有する化合物が挙げられる。
特に、少なくとも一つの芳香族環を置換基として含有する1,3,5−トリアジン化合物が好ましい。この場合、該トリアジン環がもう一つの芳香環となる。
具体的には、特開2001−166144号公報の段落番号[0016]に記載の一般式(I)記載の1,3,5−トリアジン化合物が挙げられる。
本発明の芳香族化合物の含有量は、所望のレターデーションに調整するためにレターデション調整剤用化合物の種類及び使用量を選択して用いる。
また、透明支持体を作製するときに透明支持体作成物中での溶解性、製膜時での不溶化や析出等の問題を生じさせないことから、セルロースアシレート100質量部に対して、0.01〜30質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜25質量部の範囲で使用することがより好ましい。
<<可塑剤>>
透明支持体には、フィルムとしての機械的物性を改良するため、又は乾燥速度を向上するために、従来公知の可塑剤を添加することが好ましい。
可塑剤としては、例えば、リン酸エステル類、カルボン酸エステル類等が挙げられ、例えば、発明協会公開技報公技番号公技01−1745号のp.16に記載の化合物等が挙げられる。
なお、前記カルボン酸エステル類を構成するカルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、オキシカルボン酸(クエン酸、リンゴ酸等)、芳香族カルボン酸(フタル酸等)等が挙げられる。
また、前記可塑剤に適用する他の化合物としては、特開平11−124445号公報、及び特開2001−247717号公報に記載された、アルカンポリオールとカルボン酸とのエステル化化合物も好ましい。
可塑剤の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.05〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることが更に好ましい。
また、複数の可塑剤を併用することが好ましく、その際、本発明では、含有質量が最も多い可塑剤を主成分と定義する。
<<微粒子>>
本発明では、フィルムのカール抑制、搬送性、或は耐傷性を良好に保持するために、セルロースアシレート組成物に微粒子を添加するのが好ましい。
添加する微粒子は、前述の機能を呈する素材であれば特に限定はなく、微粒子のモース硬度が2〜10であるものが好ましい。
微粒子として無機化合物、有機化合物のいずれを用いてもよく、好ましい具体例として、無機化合物の微粒子としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、及びリン酸カルシウム等が好ましく、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムが更に好ましく、透明支持体の濁度を低減できるので二酸化ケイ素が特に好ましい。
また、添加する無機化合物の微粒子として、表面処理された無機微粒子を採用することも、セルロースアシレート中への分散性が良好となり好ましい。
前記無機化合物の微粒子の表面処理の方法としては、例えば、特開昭54−57562号公報に記載の方法が挙げられる。また、前記無機化合物の微粒子としては、例えば、特開2001−151936号公報に記載の無機化合物の微粒子が挙げられる。
有機化合物の微粒子としては、例えば、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、これらの中でも、シリコーン樹脂が好ましい。更に、シリコーン樹脂の中でも、特に、三次元の網状構造を有するシリコーン樹脂が好ましい。
以上の微粒子の1次平均粒子径(以下、粒径とも称する)としては、0.001〜1μmが好ましく、0.005〜0.4μmがより好ましく、0.005〜0.1μmが特に好ましい。これらの範囲であれば、フィルムとしての機械的な物性を損なうことなく、ヘイズを低く抑え、かつ製膜後のフィルム表面の凹凸を小さくすることができる。
セルロースアシレートに対する微粒子の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して、微粒子は0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部が更に好ましい。
<<他の添加剤>>
本発明の透明支持体には、更に、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
前記紫外線防止剤としては、例えば、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、及びシアノアクリレート系化合物等が挙げられる。
また、前記劣化防止剤としては、例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、及びヒンダードアミン等の光安定化剤等が挙げられる。
これら紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、帯電防止剤等の詳細は、上記発明協会公開技報公技番号公技01−1745号のp.17〜22に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
(透明支持体の製造方法)
本発明における透明支持体の製造方法としては、ソルベントキャスト法により、セルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。
当該製造方法に用いる有機溶媒としては、従来公知の有機溶媒が挙げられ、例えば、溶解度パラメーターで17〜22の範囲のものが好ましい。
ここで、溶解度パラメーター(Solubility Parameter)δは、下記(式e)で算出することができる。なお、下記式(e)において、Eは、凝集エネルギー(モル蒸発エネルギー)を示し、Vは、分子容(モル体積)を示す。また、この溶解度パラメーターについては、例えば、J.Brandrup、E.Hなどの「PolymerHandbook(4th.edition)、VII/671〜VII/714」に記載されている。
δ=(E/V)1/2・・・・・・・・・・式(e)
このような有機溶媒の例としては、低級脂肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、炭素原子数3から12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の脂肪族炭化水素類、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
エーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していてもよい。
エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及びCOO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。
有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。
2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
具体的には、例えば、前記発明協会公開技報公技番号公技01−1745号のp.12〜16に詳細に記載されている化合物が挙げられる。
特に、本発明では、溶媒は2種類以上の有機溶媒を混合して用いることが好ましく、互いに異なる3種類以上の混合溶媒であることが特に好ましい。
この、互いに異なる3種類以上の混合溶媒としては、第1の溶媒は、炭素原子数が3〜4のケトン、及び炭素原子数が3〜4のエステル或いはその混合液であり、第2の溶媒は、炭素原子数が5〜7のケトン類、又はアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として、沸点が30〜170℃のアルコール、又は沸点が30〜170℃の炭化水素から選ばれることが好ましい。
特に、酢酸エステルを20〜90質量%、ケトン類を5〜60質量%、アルコール類を5〜30質量%の混合比で用いることがセルロースアシレートの溶解性の点から好ましい。
また、ハロゲン化炭化水素を含まない非ハロゲン系有機溶媒系が特に好ましい。
技術的には、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素は問題なく使用できるが、地球環境や作業環境の観点では、有機溶媒はハロゲン化炭化水素を実質的に含まないことが好ましい。
ここで、「実質的に含まない」とは、有機溶媒中のハロゲン化炭化水素の割合が5質量%未満(好ましくは2質量%未満)であることを意味する。また、製造した透明支持体から、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素が全く検出されないことが好ましい。
本発明に使用する有機溶媒は、具体的には、例えば特開2002−146043号公報の段落番号〔0021〕〜〔0025〕、及び特開2002−146045号公報の段落番号〔0016〕〜〔0021〕等に記載の有機溶媒の例が挙げられる。
また、本発明に用いるドープには、上記本発明の有機溶媒以外に、フルオロアルコールやメチレンクロライドを本発明の全有機溶媒量の10質量%以下、より好ましくは、5質量%以下含有させることもフィルムの透明性を向上させたり、溶解性を早めたりする上で好ましい。
該フルオロアルコールとしては例えば、特開平8−143709号公報の段落番号[0020]、特開平11−60807号公報の段落番号[0037]等に記載の化合物が挙げられる。これらのフルオロアルコールは一種又は二種以上使用してもよい。
本発明のセルロースアシレート溶液を調製する際に、容器内に窒素ガスなどの不活性ガスを充満させてもよい。
また、セルロースアシレート溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際、流延可能な範囲であればよく、通常10〜2,000ps・sの範囲に調製されることが好ましく、特に30〜400ps・sが好ましい。
本発明に係るセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温溶解法でもよく、冷却溶解法、又は高温溶解方法、更には、これらの組み合わせで実施される。
これらの溶解方法に関しては、例えば特開平5−163301公報、特開昭61−106628公報、特開昭58−127737公報、特開平9−95544公報、特開平10−95854公報、特開平10−45950公報、特開2000−53784公報、特開平11−322946公報、特開平11−322947公報、特開平2−276830公報、特開2000−273239公報、特開平11−71463公報、特開平04−259511公報、特開2000−273184公報、特開平11−323017公報、及び特開平11−302388公報等に記載されたセルロースアシレート溶液の調製法が挙げられる。
また、これらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明の範囲であれば、適宜これらの技術を適用できる。
更に、セルロースアシレートのドープ溶液は、溶液の濃縮と濾過が通常実施され、同様に前記発明協会公開技報公技番号公技01−1745号に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
次に、本発明において、セルロースアシレート溶液を用いた透明支持体の製造方法について説明する。
透明支持体を製造する方法、及び設備は、透明支持体製造に供するドラム方法、又はバンド方法と称される、従来公知の溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。
ここで、前記バンド法を例として製膜の工程を説明すると、溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜に一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。
次に、調製されたドープは、精密濾過により異物を除去することが重要である。具体的には、濾過に用いるフィルターは、ドープ液中の成分が除去されない範囲でできるだけ孔径の小さいものを使うことが好ましい。
また、濾過には絶対濾過精度が0.1〜100μmのフィルターが用いられ、更には絶対濾過精度が0.1〜25μmであるフィルターを用いることが好ましく用いられる。
ここで、フィルターの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、0.2〜2mmが更に好ましい。その場合、1.47MPa以下の濾過圧力で濾過することが好ましく、0.98MPa以下の濾過圧力で濾過することがより好ましく、0.20MPa以下の濾過圧力で濾過することが更に好ましい。
また、精密濾過を行うために、フィルターの孔径を順次小さくして濾過を数回行うことも好ましい。
精密濾過を行うための濾材のタイプは、上記性能を有していれば特に限定されないが、例えばフィラメント型、フェルト型、及びメッシュ型が挙げられる。
また、分散物を精密濾過するための濾材の材質は上記性能を有し、かつ塗布液に悪影響を及ばさなければ特に限定はされないが、例えばステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びナイロン等が挙げられる。
調製したドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延し、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも称する)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。
これらの各製造工程(流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類される)については、前記発明協会公開技報公技番号01−1745号のp.25〜30に詳細に記載された内容が挙げられる。
流延工程では1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時、及び/又は逐次共流延してもよい。
流延工程では流延方向(縦方向)等の一方向のみの1軸延伸、或いは流延方向及び他の方向(横方向)の2軸延伸等が行われることが好ましい。
流延工程で用いる金属支持体は、その表面が算術平均粗さ(Ra)が0.015μm以下で、十点平均粗さ(Rz)が0.05μm以下であることが好ましく、算術平均粗さ(Ra)が0.001〜0.01μmであり、十点平均粗さ(Rz)が、0.001〜0.02μmであることがより好ましく、(Ra)/(Rz)比が0.15以上であることが更に好ましい。
このように、金属支持体の表面粗さを所定の範囲とすることで、製膜後の透明支持体の表面形状を、後述する好ましい範囲内に制御できる。
更に本発明のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延してもよい。
<透明支持体の特性>
<<表面の性状>>
本発明に用いる透明支持体の表面は、JIS B0601−1994に基づく該膜の表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.0001〜0.05μm、及び最大高さ(Ry)が0.0002〜0.2μmであることが好ましい。
膜表面の凹と凸の形状は、原子間力顕微鏡(AFM)により評価することができる。
本発明の透明支持体の表面状態を上記の凹凸の大きさ内とすることで、後述する透明支持体の表面への密着性付与の塗設において、透明支持体の全面が安定して均一に処理され、処理ムラや塗布ムラ等による光学的な欠陥が解消される。
また、本発明に用いる透明支持体の動摩擦係数は、0.4以下であることが好ましく、0.3以下であることが特に好ましい。動摩擦係数が大きいと搬送ロールとの間で強く擦られる結果透明支持体から発塵しやすくなり、透明支持体上への異物付着が多くなり、光学補償シートの点欠陥や塗布スジの頻度が許容値を超えてしまう。
動摩擦係数は5mmφの鋼球を用いる鋼球法により測定することができる。
また、本発明に用いる透明支持体の表面抵抗率は、1.2x1012Ω/□以下であることが好ましく、1.0x1012Ω/□以下であることがより好ましく、0.8x1012Ω/□以下であることが特に好ましい。表面抵抗率を本発明の範囲内とすることにより透明支持体や光学補償シートへの異物の付着が抑えられ、光学補償シートの点欠陥や塗布スジを少なくすることができる。
<<透明支持体の機械的特性>>
本発明に用いる透明支持体の幅方向のカール値は、全工程を通じて、表面側に+10m−1以下であることが好ましく、透明支持体が、125℃で5分間加熱処理した後に、所定の測定方法に従って測定したカール値が、表面側に+10m−1以下の範囲であることが更に好ましく、125℃で5分間加熱処理した後のカール値が表面側に+7m−1以下の範囲であることが特に好ましい。
本発明の透明支持体には、後述する表面処理、ラビング処理の実施や配向膜、光学異方性層の設置などを長尺で広幅の透明支持体に対し行う。
これらのなかで、カール値の悪化に最も大きく影響するのが、高温での加熱処理であり、透明支持体の幅方向のカール値が前述の範囲外では、光学異方性層の形成時に必要な加熱ゾーンや紫外線硬化ゾーン等、透明支持体の温度が高温になるゾーンの前後における透明支持体のハンドリングに支障をきたし、透明支持体の切断が起きることがある。
また、透明支持体のエッジや中央部などで、透明支持体が搬送ロールと強く接触するために発塵しやすくなり、透明支持体上への異物付着が多くなり、光学補償シートの点欠陥や塗布スジの頻度が悪化することが明らかとなった。
また、カールを本発明の範囲とすることで光学異方性層を設置するときに発生しやすい点欠陥、塗布スジや色斑故障を低減できるほか、偏光膜貼り合せ時に気泡が入ることを防ぐことができ、好ましい。
[カール値]
前記カール値は、ANSI(American National Standards Institute;アメリカ国家規格協会)が規定する測定方法(ANSI/ASC PH1.29−1985)に従い、以下のようにして測定することができる。
透明支持体を、幅方向に35mm、長手方向に2mmの大きさに切り取った後、カール板に設置する。これを温度25℃、相対湿度65%の環境下に1時間調湿後カール値を読みとる。そして同様に、透明支持体を、幅方向に2mm、長手方向に35mmの大きさに切り取った後、カール板に設置する。これを温度25℃、相対湿度65%の環境下に1時間調湿後カール値を読みとる。一般にカールは、幅方向、長手方向の二方向で測定するが、本明細書中、カール値とは、両者のうちの大きい値を意味する。カール値は、曲率半径R(m)の逆数(1/R)で表される。透明支持体を偏光板と貼り合せる際に偏光子と接する面の反対側の面が内巻きになるカールを+(プラス)、外巻きになるカールを−(マイナス)で表示する。
[引き裂き強度]
透明支持体の引き裂き強度は、30℃、85%RH(相対湿度)において3〜50gであることが好ましい。
[引掻き強度]
また、引掻き強度は1g以上であることが好ましく、5g以上であることがより好ましく、10g以上であることが特に好ましい。
これらの範囲において、透明支持体の表面の耐傷性、ハンドリング性が問題なく保持される。
引掻き強度は円錐頂角が90度で先端の半径が0.25mのサファイヤ針を用いて透明支持体表面を引掻き、引掻き跡が目視にて確認できる荷重(g)をもって評価することができる。
<<透明支持体の吸湿膨張係数>>
本発明の光学補償シートに用いる透明支持体の吸湿膨張係数を30×10−5/%RH以下とすることが好ましい。吸湿膨張係数は、15×10−5/%RH以下とすることが好ましく、10×10−5/%RH以下であることが更に好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10−5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。
この吸湿膨張係数を調節することで、光学補償シートの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇、すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
ここで、本実施形態における吸湿膨張係数の測定方法について以下に説明する。
まず、作製した透明支持体から幅5mm、長さ20mmの試料を切り出し、片方の端を固定して25℃、20%RH(R)の雰囲気下にぶら下げた。他方の端に0.5gの重りをぶら下げて、10分間放置し長さ(L)を測定した。次に、温度は25℃のまま、湿度を80%RH(R)にして、長さ(L)を測定した。吸湿膨張係数は下式により算出した。測定は同一試料につき10サンプル行い、平均値を採用した。
吸湿膨張係数[/%RH]={(L−L)/L}/(R−R)・・・・式(f)
作製した透明支持体の吸湿による寸度変化を小さくするには、疎水基を有する化合物或は微粒子等を添加することが好ましい。疎水基を有する化合物としては、分子中に脂肪族基や芳香族基のような疎水基を有する可塑剤や劣化防止剤の中で該当する素材が特に好ましく用いられる。これらの化合物の添加量は、調整する溶液(ドープ)に対して0.01〜10質量%の範囲にあることが好ましい。
<<透明支持体の残留溶剤量>>
本発明に用いる透明支持体の残留溶剤量は1.5%以下とすることでカールを抑制できる。該残留溶剤量が1.0%以下であることがより好ましい。
これは、前述のソルベントキャスト方法による成膜時に残留溶剤量を少なくすることで自由体積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。
具体的には、透明支持体に対する残留溶剤量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましく、0.01〜1.0質量%の範囲となる条件で乾燥することがより好ましい。
本発明において、残留溶剤量とは、対固形分質量に対する揮発分のことで、以下の式(g)で表される値とする。なお、下記式(g)において、Wは、試料軟膜質量を示し、Wは、試料軟膜Wを110℃で、2時間乾燥した後の試料質量を示す。
残留溶剤量(質量%)=((W−W)/W)×100・・・・・・・・・式(g)
<<光学補償シートの透湿度及び含水量>>
ここで、本発明の光学補償シートの透湿度は、JIS規格JISZ0208、B条件(温度40℃、湿度90%RH)において、2〜150g/m・24hである。10〜120g/m・24hであることがより好ましく、10〜100g/m・24hであることが特に好ましい。150g/m・24hを越えると、透明支持体のRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなる。
また、透明支持体に光学異方性層を積層させた光学補償シートとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.3nm/%RHを超える傾向が強くなってしまい、好ましくない。
この光学補償シートや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こす。
また、透明支持体の透湿度が2g/m・24h未満では、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、透明支持体により接着剤の乾燥が妨げられ、接着不良を生じる。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)p.285−294:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができる。
本発明の光学補償シートを構成する透明支持体の含水量は、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚の寸法に関わらず、30℃、85%RH下で0.3〜12g/mであることが好ましく、0.5〜5g/mであることがより好ましい。ここで、12g/mより大きいとレターデーションの湿度変化による依存性も大きくなりすぎてしまい、好ましくない。
<<透明支持体の可塑剤分布>>
本発明の透明支持体の表層においては、前記可塑剤に対応する赤外線吸収スペクトルで最も高いピークの高さAと、前記透明樹脂に対応する赤外線吸収スペクトルで最も高いピークの高さBとの比(A/B)が、125℃で5分間加熱処理した前後で0.1以上増加しないことがより好ましい。
前述したように、ここにいう「透明支持体の表層」は、該透明支持体の厚みを13分割し、「表面」側から透明支持体の厚み方向に1/13程度までの深さの領域をいう。したがって、前記「表面」から深さ10%(厚さ寸法に対して10%)近辺までの領域をいい、好ましくは、「表面」から深さ8%(厚さ寸法に対して8%)近辺までの領域である。
図1及び図2は、本実施形態における透明支持体の表層における赤外線吸収スペクトルの測定結果を示す図であり、図1は、透明樹脂にセルロースアシレートフィルムを採用し、可塑剤に、トリフェニルフォスフェートと、ビフェニルジフェニルフォスフェートとの混合物(混合比(質量比)=トリフェニルフォスフェート:ビフェニルジフェニルフォスフェート=2:1)を採用した場合の、加熱処理前の透明支持体の赤外線吸収スペクトルの測定結果を示す図であり、図2は、透明支持体を加熱処理(125℃で5分間)した後の該透明支持体の赤外線吸収スペクトルの測定結果を示す図である。
図1及び図2に示すように、透明樹脂が、セルロースアシレートフィルムである場合には、好ましい可塑剤として、トリフェニルフォスフェートや、ビフェニルジフェニルフォスフェート等の複数の単環芳香族化合物がある。これらは赤外線吸収スペクトルの波数が1,400〜1,500cm−1の間に芳香族環の炭素−炭素結合の伸縮による骨格振動に起因する吸収を有し、特に他のピークとオーバーラップしない、1,450〜1,500cm−1の波数の間で最も高いピークの高さを可塑剤のピークAとして用いることができる。
一方、セルロースアシレートに対応する赤外線吸収スペクトルは、波数が1,350〜1,400cm−1の間となるので、1,350〜1,400cm−1の波数の間で最も高いピークの高さをセルロースアシレート(透明樹脂)のピークBとして用いることができる。
したがって、図1及び図2に示すように、前記可塑剤に対応する赤外線吸収スペクトルの波数が1,450〜1,500cm−1で最も高いピークの高さAと、セルロースアシレートに対応する赤外線吸収スペクトルの波数が1,350〜1,400cm−1で最も高いピークの高さBとの比(A/B)は、125℃で5分間加熱処理した前後で0.1以上増加しないことが好ましい。
ここで、加熱前後での可塑剤とセルロースアシレートとの相対比に比例するA/Bが、加熱後に0.1以上増加した場合、可塑剤が相対的に表面に移動すること(ブリードアウト)に伴い、透明支持体の表面側の弾性率が相対的に低下して、透明支持体の表面側の収縮量が大きくなり、カール値が悪化するためと推定される。
上記のような加熱前後でのA/Bの変化は、透明支持体を流延する際の乾燥条件等によって影響を受けることが経験的に分かったが、その詳細のメカニズムについては、鋭意研究中である。
[可塑剤分布の測定]
透明支持体内における可塑剤分布は、以下の方法で測定できる。
まず、透明支持体の幅方向の端部から30mm内側の位置で、幅方向に35mm、長手方向に2mmの大きさに切り取った後に、厚み方向に45°の角度で厚み2μmに斜め切削する。
切削した試料について、表面側から裏面側まで、等間隔で13箇所を、アパーチャ径10μm×50μm、測定範囲1,600〜600cm−1、及び積算80回の条件で赤外線吸収スペクトルを測定する。
例えば、透明樹脂がセルロースアシレート、可塑剤がトリフェニルフォスフェートの場合には、得られた吸収スペクトルから、可塑剤に対応する、1,488cm−1の波数のピーク高さA、セルロースアシレートに対応する、1,370cm−1の波数のピーク高さBをそれぞれ読み取り、A/Bを算出する。
<<透明支持体の光学異方性>>
本発明に用いる透明支持体は、光学異方性を示し、その程度を表すReレターデーション値(面内のレターデーション値)、及びRthレターデーション値(厚さ方向のレターデーション値)は、それぞれ、下記式(a)及び(b)で定義される。なお、下記式(a)、及び式(b)中、nxは、前記透明支持体の面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは、前記透明支持体の面内の進相軸方向の屈折率であり、nzは、前記透明支持体の厚み方向の屈折率であり、dは、前記透明支持体の厚さである。
Re=(nx−ny)×d・・・・・・・・・・・・・・・・・式(a)
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d・・・・・・・・・式(b)
本発明では、透明支持体のReレターデーション値は、10〜70nmが好ましく、20〜60nmがより好ましい。また、Rthレターデーション値は、70〜400nmが好ましく、100〜300nmの範囲であることがより好ましい。
なお、透明支持体の複屈折率(Δn:nx−ny)は、波長550nmに対して0.000025〜0.0088であることが好ましく、0.0003〜0.005がより好ましい。
また、厚み方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、波長550nmに対して0.0006〜0.02であることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.007である。
特にTNモードに用いる光学補償シートの透明支持体としては、Reレターデーション値が4〜40nm、そしてRthレターデーション値は50〜200nmの範囲である事が好ましく、OCB、HAN、VAN、ホモジニアス配向モード等のECBモードに用いる光学補償シートの透明支持体としては、Reレターデーション値が10〜70nm、そしてRthレターデーション値は70〜400nmの範囲であることが好ましい。
<透明支持体の密着性付与の方法>
本発明の透明支持体は、配向膜を塗布方式で設ける場合には、該透明支持体の表面に密着性を付与し、配向膜用塗布液が均一に塗工されるように表面処理を施すことが好ましい。
表面処理の方法としては、配向膜の下塗り層を設ける方法が挙げられる。配向膜の下塗り層を設ける方法としては、例えば、特開平7−333433号公報に記載の下塗り層、或いは、疎水性基と親水性基との両方を含有するゼラチン等の樹脂層を一層のみ塗布する単層法が挙げられる。
その他にも、第1層として高分子フィルムによく密着する層(以下、下塗第1層とする。)を設け、その上に第2層として配向膜とよく密着するゼラチン等の親水性の樹脂層(以下、下塗第2層と略す)を塗布する所謂重層法が挙げられる。この重層法は、例えば、特開平11−248940号公報に記載されている。
<透明支持体の表面処理>
本発明の透明支持体は、薄層フィルムであることから、透明支持体の表面に直接親水化処理を施すことが好ましい。
表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、オゾン処理、酸処理、アルカリ鹸化処理等が挙げられる。アルカリ鹸化処理がより好ましい。
<<アルカリ鹸化処理>>
アルカリ鹸化処理は、アルカリ溶液を透明支持体に浸漬、噴射若しくは塗布することで行い、塗布で鹸化処理することが好ましい。
[アルカリ溶液]
本発明においてアルカリ鹸化処理に用いるアルカリ溶液は、pH11以上であることが好ましい。より好ましくはpH12〜14である。
アルカリ溶液に用いられるアルカリ剤の例としては、無機アルカリ剤として、水酸化ナトリウム、同カリウム、同リチウム等が挙げられ、有機アルカリ剤として、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルブチルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
これらのアルカリ剤は、単独又は二種以上を組み合わせて併用することもでき、一部を例えばハロゲン化したような塩の形態として添加してもよい。
これらのアルカリ剤の中でも、水酸化ナトリウム或は水酸化カリウムが、これらの量を調整することにより広いpH領域でのpH調整が可能となるため好ましい。
また、アルカリ溶液の濃度は、使用するアルカリ剤の種類、反応温度及び反応時間に応じて決定されるが、アルカリ剤の含有量は、アルカリ溶液中の0.1〜5mol/Kgが好ましく、0.5〜3mol/Kgがより好ましい。
本発明のアルカリ溶液の溶媒は、水及び水溶性有機溶媒の混合溶液を含有することからなることが好ましい。
有機溶媒としては、水と混和可能な有機溶媒であればいずれも用いることができ、沸点が120℃以下の有機溶媒が好ましく、沸点が100℃以下の有機溶媒が特に好ましい。
その中でも好ましい有機溶媒は、無機性/有機性値(I/O値)が0.5以上、かつ溶解度パラメーターが16〜40(mJ/m)の範囲のものが好ましい。
より好ましくは、I/O値が0.6〜10、且つ溶解度パラメーターが18〜31(mJ/m)である。
I/O値がこの範囲よりも無機性が強いか、又は溶解度パラメーターが低いと、アルカリ鹸化速度が低下し、また鹸化度の全面均一性も不満足となる。
一方、I/O値が上記範囲よりも有機性が強いか、又は溶解度パラメーターが高いと、鹸化速度は速いが、ヘイズを生じ易く、したがって、全面均一性の点では同様に不満足となる。
また、有機溶媒、特に、有機性と溶解性の各範囲の有機溶媒を後述する界面活性剤や、相溶化剤等と組み合わせて用いると高い鹸化速度が維持されて、かつ全面に亘る鹸化度の均一性が向上する。
好ましい特性値を有する有機溶媒は、例えば、有機合成化学協会編、「新版溶剤ポケットブック」((株)オーム社、1994年刊)等に記載されている。また、有機溶媒の無機性/有機性値(I/O値)については、例えば、甲田善生著「有機概念図」(三共出版社1983年刊)p.1〜31に記載されている。
具体的には、一価脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール等)、ニ価脂肪族アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール等)、脂環式アルカノール(シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、メトキシシクロヘキサノール、シクロヘキシルメタノール、シクロヘキシルエタノール、シクロヘキシルプロパノール等)、フェニルアルカノール(べンジルアルコール、フェニルエタノール、フェニルプロパノール、フェノキシエタノール、メトキシベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール等)、複素環式アルカノール類(フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等)、グリコール化合物のモノエーテル類(メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピルセルソルブ、ブチルセルソルブ、ヘキシルセルソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、メトキシトリグリコール、エトキシトリグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3ジメチルイミダゾリジノン等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)及びエーテル類(テトラヒドロフラン、ピラン、ジオキサン、トリオキサン、ジメチルセルソルブ、ジエチルセルソルブ、ジプロピルセルソルブ、メチルエチルセルソルブ、ジメチルカルビトール、ジメチルカルビトール、メチルエチルカルビトール等)等が挙げられる。用いる有機溶媒は、単独若しくは2種以上を混合して用いてもよい。
有機溶媒を単独或いは2種以上を混合する場合の少なくとも一種の有機溶媒は、水への溶解性が大きなものが好ましい。有機溶媒の水の溶解度は、50質量%以上が好ましく、水と自由に混合するものがより好ましい。これによりアルカリ剤、鹸化処理で副生する脂肪酸の塩、空気中の二酸化炭素を吸収して生じた炭酸の塩等への溶解性が充分なアルカリ溶液を調製できる。
有機溶媒の溶媒中の使用割合は、溶媒の種類、水との混和性(溶解性)、反応温度及び反応時間に応じて決定する。
水と有機溶媒の混合比(質量比)は、3/97〜85/15が好ましく、5/95〜60/40がより好ましく、15/85〜40/60が更に好ましい。これらの範囲において、アシレートフィルムの光学特性を損なうことなく容易に、透明支持体の全面が均一に鹸化処理される。
本発明に用いるアルカリ溶液が含有する有機溶媒として、上記した好ましいI/O値を有する有機溶媒とは異なる有機溶媒(例えば、フッ化アルコール等)を、後述の界面活性剤、相溶化剤の溶解助剤として併用してもよい。その含有量は、使用液の総重量に対して0.1〜5%が好ましい。
本発明に用いるアルカリ溶液は、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤を添加することによって表面張力を下げて塗布を容易にしたり、塗膜の均一性を上げてハジキ故障を防止し、かつ有機溶媒が存在すると起こり易いヘイズを抑止し、更に鹸化反応が均一に進行する。
その効果は、後述する相溶化剤の共存によって特に顕著となる。
なお、用いられる界面活性剤には特に制限はなく、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等のいずれであってもよい。
具体的には、例えば、吉田時行著「界面活性剤ハンドブック(新版)」(工学図書、1987年刊行)、「界面活性剤の機能創製・素材開発・応用技術」第1編(技術教育出版、2000年刊行)等記載の公知の化合物が挙げられる。
これらの界面活性剤の中でも、カチオン性界面活性剤としての4級アンモニウム塩類、ノニオン性界面活性剤としての各種のポリアルキレンレングリコール誘導体類、各種のポリエチレンオキサイド付加物類等のポリエチレンオキサイド誘導体類、両性界面活性剤としてのベタイン型化合物類が好ましい。
アルカリ溶液には、ノニオン活性剤とアニオン活性剤、又はノニオン活性剤とカチオン活性剤を共存させて用いることも本発明の効果が高められて好ましい。
これらの界面活性剤のアルカリ溶液に対する添加量は、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
本発明に用いられるアルカリ溶液は、相溶化剤を含有させることも好ましい。本発明において、「相溶化剤」とは、温度25℃において、相溶化剤100gに対して水の溶解度が50g以上となる親水性化合物をいう。相溶化剤の水の溶解度は、相溶化剤100gに対して、80g以上であるのが好ましく、100g以上であるのがより好ましい。また、相溶化剤が液状化合物である場合は、沸点が100℃以上であるのが好ましく、120℃以上であるのがより好ましい。
相溶化剤は、アルカリ溶液を貯留する浴等の壁面に付着したアルカリ溶液の乾燥を防止し、固着を抑制し、アルカリ溶液を安定に保持させる作用を有する。また、透明支持体の表面にアルカリ溶液を塗布して一定時間保持した後、鹸化処理を停止するまでの間に、塗布されたアルカリ溶液の薄膜が乾燥し、固形物の析出を生じ、水洗工程での固形物の洗い出しを困難にすることを防止する作用を有する。更には、溶媒となる水と有機溶剤との相分離を防止する。
特に、界面活性剤と有機溶剤と上述した相溶化剤との共存によって、処理された透明支持体は、ヘイズが少なく、かつ、長尺の連続鹸化処理の場合であっても安定して全面均一な鹸化度となる。
相溶化剤は、上記の条件を満たす材料であれば、特に限定されず、例えば、ポリオール化合物、糖類等のヒドロキシル基、及び/又はアミド基を有する繰り返し単位を含む水溶性重合体が好ましく挙げられる。
ポリオール化合物は、低分子化合物、オリゴマー化合物及び高分子化合物のいずれも用いることができる。ポリオール化合物の具体例を以下に挙げる。
脂肪族ポリオール類としては、例えば、炭素数2〜8のアルカンジオール、及びヒドロキシル基を3個以上含有する炭素数3〜18のアルカン類が挙げられる。
前記炭素数2〜8のアルカンジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリンモノメチルエーテル、グリセリンモノエチルエーテル、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
また、前記ヒドロキシル基を3個以上含有する炭素数3〜18のアルカン類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール、イノシットール等が挙げられる。
ポリアルキレンオキシポリオール類としては、上記のような同じアルキレンジオール同士が結合していてもよく、異なるアルキレンジオールが互いに結合していてもよいが、同じアルキレンジオール同士が結合したポリアルキレンポリオールがより好ましい。
いずれの場合でも、結合数は3〜100であるのが好ましく、3〜50であるのがより好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)が挙げられる。
糖類としては、例えば、高分子学会高分子実験学編集委員会編「天然高分子」第二章(共立出版(株)、1984年刊)、小田良平等編「近代工業化学22、天然物工業化学II」((株)朝倉書店、1967年刊)等に記載されている水溶性化合物が挙げられる。その中でも、遊離のアルデヒド基及びケトン基を持たず、還元性を示さない糖類が好ましい。
前記糖類は、一般に、グルコース、スクロース、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体、及び糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類されるが、いずれも本発明に好適に用いることができる。
前記糖類としては、例えば、サッカロース、トレハロース、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシット、アロズルシット、及び還元水あめが挙げられる。これらの糖類は、単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記ヒドロキシル基、及び/又はアミド基を有し、繰り返し単位を有する水溶性重合体としては、例えば、天然ガム類(例えば、アラビアガム、グアーガム、トラガンドガム等)、ポリビニルピロリドン、ジヒドキシプロピルアクリレート重合体、セルロース類、又はキトサン類とエポキシ化合物(エチレンオキサイド、又はプロピレンオキサイド)との付加反応体が挙げられる。
それらの中でも、アルキレンポリオール、ポリアルキレンオキシポリオール、糖アルコール等のポリオール化合物が好ましい。
また、相溶化剤の含有量は、アルカリ溶液に対して、0.5〜25質量%であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましい。
本発明に用いられるアルカリ溶液は、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、消泡剤、アルカリ溶液安定化剤、pH緩衝剤、防腐剤、及び防菌剤等の公知のものが挙げられる。
<<アルカリ鹸化方法>>
上記のアルカリ溶液を用いた透明支持体の表面処理方法は、従来公知のいずれの方法でもよく、アルカリ溶液に浸漬すること、又はアルカリ溶液を塗布することが好ましく、特に、透明支持体の片面のみをムラ無く均一に鹸化処理する場合は、塗布方式が好ましい。
塗布の方法としては、従来公知の塗布方法が利用でき、例えば、ダイコーター(エクストルージョンコーター、スライドコーター、スリットコーター)、ロールコーター(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、ロッドコーター、ブレードコーター等が好ましく利用できる。
鹸化処理は、処理する透明支持体の変形、処理液の変質等が生じない温度120℃を越えない範囲の処理温度で行うことが好ましい。
更に、当該処理温度は10〜100℃の範囲が好ましく、20〜80℃度が更に好ましい。
また、鹸化処理の時間は、アルカリ溶液、処理温度により適宜調整して決定するが、1〜60秒の範囲で行われるのが好ましい。
更に、透明支持体をその表面が少なくとも10℃以上の温度でアルカリ溶液で鹸化処理する工程、透明支持体の温度を少なくとも10℃以上に維持する工程、そして、アルカリ溶液を透明支持体から洗い落とす工程によりアルカリ鹸化処理を実施することが好ましい。
透明支持体の表面を、所定の温度にてアルカリ溶液で鹸化する処理には、塗布する前に予め所定の温度に調整する工程、アルカリ液を予め所定の温度に調整しておく工程、或いはこれらを組み合わせた工程等が挙げられる。それらの中でも、塗布する前に予め所定の温度に調整する工程と組み合わせることが好ましい。
鹸化処理の反応工程は、アルカリ溶液の炭酸ガスによる劣化の抑制及び液の長寿命化等から、処理工程を半密閉若しくは密閉構造にする、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス等)の導入等を行うことが好ましい。
鹸化反応後は、水洗、中和し、水洗等で、透明支持体の表面からアルカリ溶液、及び鹸化処理の反応物とを洗浄し、除去することが好ましい。
表面処理後の透明支持体の水との接触角は、20〜55℃が好ましく、25〜45℃がより好ましい。また、表面エネルギーは、55mN/m以上であることが好ましく、55〜75mN/mであることがより好ましい。
透明支持体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社、1989.12.10発行)に記載のように、接触角法、湿潤熱法、及び吸着法により求めることができる。その中でも、接触角法を用いることが好ましい。
この接触角法は、具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液を透明支持体に滴下し、液滴の表面と透明支持体表面との交点において、液滴に引いた接線と透明支持体表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算により透明支持体の表面エネルギーを算出する方法である。
<配向膜>
本発明の配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)塗布液を塗布して形成される配向膜が好ましい。配向膜の膜自身の強度、下層或は上層となる光学異方性層との密着性の観点から硬化されたポリマー膜であることが好ましい。配向膜は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するために設けられる。配向規定の方法としては、従来公知のラビング、磁場或は電場の付与、光照射等の方法が挙げられる。
本発明に供される配向膜は、液晶セルの表示モードの種類に応じることができる。
VA、OCB、HAN等の、液晶セル内の棒状液晶性分子の多くが実質的に垂直に配向している表示モードでは、光学的異方性層の液晶性分子を実質的に水平に配向させる機能を有する。
一方、STN等の、液晶セル内の棒状液晶性分子の多くが実質的に水平に配向している表示モードでは、光学的異方性層の液晶性分子を実質的に垂直に配向させる機能を有する。
また、TN等の、液晶セル内の棒状液晶性分子の多くが実質的に斜めに配向している表示モードでは、光学的異方性層の液晶性分子を実質的に斜めに配向させる機能を有する。
本発明の配向膜に使用される具体的なポリマーの種類については、前述した様々な表示モードに対応するディスコティック液晶性分子を用いた光学補償シートについての文献に記載がある。
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。
前記ポリマーの例として、例えば特開平8−338913号公報の段落番号[0022]に記載された化合物が挙げられる。その中でも、水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、その中でも、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが更に好ましく、更には、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100mol%が好ましく、80〜100mol%が更に好ましく、85〜95mol%が最も好ましい。また、ポリビニルアルコールの重合度は、100〜3,000であることが好ましい。
変性ポリビニルアルコールの変性基は、共重合変性、連鎖移動変性、又はブロック重合変性により導入できる。
前記変性基の例としては、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。
これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば、特開2000−56310号公報の段落番号[0074]、特開2000−155216号公報の段落番号[0022]〜[0145]、特開2002−62426号公報の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
前記配向膜に使用するポリマー(好ましくは水溶性ポリマー、更に好ましくはポリビニルアルコール、又は変性ポリビニルアルコール)の架橋剤の例には、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾール及びジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば、特開2002−62426号公報の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。その中でも、反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%が更に好ましい。
また、配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。配向膜中に1.0質量%を超える量で架橋剤が残存していると、充分な耐久性が得られない。そのような配向膜を液晶表示装置に使用すると、長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合にレチキュレーションが発生することがある。
配向膜は、基本的に、配向膜形成用組成物である前記ポリマー、架橋剤及び特定のカルボン酸を含む塗布液を透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥し(架橋させ)、配向処理することにより形成することができる硬化膜である。
架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行なってよい。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを、配向膜形成用組成物として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることが更に好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方性層の層表面の欠陥が著しく減少する。
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、ダイコーティング法(エクストルージョンコーティング法、スライドコーティング法、スリットコーティング法等)、ロッドコーティング法、又はロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法、ダイコーティング法が好ましい。
また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには、60℃〜100℃が好ましく、80℃〜100℃が特に好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分〜30分である。
更に、本発明の配向膜形成用組成物を含有する塗布液を透明支持体に塗布、乾燥し、配向手段で配向させた後に、光学異方性層用塗布液が塗布されるときに、該配向膜の表面がpH2.0〜6.9の範囲に保持されることが好ましく、pH2.5〜5.0の範囲に保持されることがより好ましい。
また、該光学異方性層用塗布液を塗布する際に、塗布の幅方向での配向膜表面のpHの変動幅△pHが±0.30の範囲で行われることが好ましく、△pHが±0.15の範囲で行われることがより好ましい。
配向膜の表面のpH値の測定方法は、該配向膜を塗設した試料を(温度25℃/湿度65%RH)の環境下に1日静置した後、窒素雰囲気下で純水を10mL乗せて速やかにpHメーターでpH値を読み取ることによって行う。
本発明の配向膜の表面のpH値を特定とし、かつ塗布幅方向での△pHを制御するには、上記のロッドコーティング方式による塗布により達成される。更には、配向膜の表面の乾燥温度、乾燥風を用いる場合のその風量、風向等を適宜調節することも有効である。
<<ラビング処理>>
ラビング処理は、配向膜の表面を、紙や布で一定方向に、数回こすることにより実施する。このとき、長さ及び太さが均一な繊維を均一に植毛した布を用いることが好ましい。
本発明においてラビング処理は、上記の布を貼りつけたロールを、配向膜を設けた透明支持体の搬送方向と任意の角度で配置し、布を植毛した毛先が前記配向膜に接触する状態で、透明支持体を1〜100m/分の速度で送りながら、ロールを100〜100,000回/分の速度で回転させることで行われる。
また、前記ロールと透明支持体の搬送方向(長手方向)とのなす角度は、任意に調整して行うことができ、当該角度は、45〜90°の範囲が好ましく、その調整された角度を±5°の範囲内で制御することが更に好ましい。
本発明の配向膜のラビング処理において、均一で安定した配向状態にラビングするには温度と湿度を一定に制御して行うことが好ましい。具体的には、当該温度が20〜28℃、当該湿度が35〜60%RH未満に制御することが好ましい。特に、当該湿度を35〜50%RHで行うことが好ましい態様として挙げられる。
また、配向膜の表面をラビング布でラビング処理する場合、ラビング布と配向膜との摩擦によって静電気が発生し、発生した静電気が配向膜の表面に帯電するため、空気中の浮遊塵埃を前記配向膜の表面に吸着する原因となる。前記配向膜の表面に塵埃が付着すると、前記配向膜による液晶の配向状態が不均一になったり、光学的な点状欠陥等の視認性の悪化が生じる。
上記静電気に対する対策としては、前記配向膜に帯電する静電気に対して逆極性のイオンを発生するイオンバー、軟X線の照射等の除電装置を用いて、静電気の除去と、ラビングで生じた微粉や付着した塵埃等を超音波除塵装置により除去とを、前記配向膜に対してラビング処理の前後で行うことが好ましい。この方法は、例えば、特開平7−333613号公報、及び特開平11−305233号公報に記載されている。
更には、長尺ロールを連続して処理する場合において、ラビング布の帯電電位が|1|KVを越えないように表面電位を検知して、この帯電量を超えないようにラビング布を除電することが好ましい。好ましくは、ラビング布の帯電電位が|0.5|KV以下、更には、0〜|0.2|KVで行うことが好ましい。なお、電荷の正負は配向膜とラビング材料との組み合わせにより決まる。
また、湿式方法として、特開2001−38306号公報記載されている、ラビングを行ったウェブが走行している状態で、液体、好ましくは配向膜を膨潤させないフロリナート、ヘキサン、トルエン等の溶剤で濡らした弾性体に擦った後、該弾性体で連続的に擦った面に液体、好ましくは前に使用した溶剤を噴射する湿式の除塵処理を行う方法(ラビング後の除塵方法)を適用する事も好ましい。
上記の方法により、配向の乱れ及び異物付着等による光学的な欠陥が軽減若しくは解消される。
<光学異方性層>
光学異方性層を有する光学補償シートはベンド配向、ハイブリッド配向などを示すネマチック液晶からなる液晶セルの複屈折をキャンセルするために好ましく用いられ、構成、原理については、特許第3118197号明細書などに詳細が示されている。
光学異方性層を有する光学補償シートは、液晶セルに起因する複屈折をキャンセルするため、液晶セル内のネマチック液晶のラビング方向と、光学補償シートの、光学異方性層のレターデーションが最小値となる方向をシート面上へ正射影した方向とを平行にすることが好ましい。
光学異方性層に使用する液晶性化合物としては、棒状液晶性化合物や円盤状液晶性化合物(ディスコティック液晶性化合物とも称する)を用いることができる。
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。これら低分子液晶化合物は重合性基を分子内に有することが好ましい(例えば、特開2000−304932号公報段落番号[0016]等記載)。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。高分子液晶性化合物は、以上のような低分子液晶性化合物に相当する側鎖を有するポリマーである。高分子液晶性化合物を用いた光学補償シートについては、特開平5−53016号公報に記載がある。
また、液晶性化合物は、高分子液晶でも低分子液晶であってもよい。更に、低分子液晶性化合物が層を形成する際に架橋され、もはや液晶性を失ったものも含まれる。
液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物が好ましい。更に、ディスコティック液晶性化合物の円盤状構造単位の面が、透明支持体の表面に対して傾き、かつ円盤状構造単位の面と透明支持体の表面とのなす角度が、光学異方性層の深さ方向に変化していることが好ましい。このような光学異方性層は、透明支持体上に配向膜を設け、その上に液晶性化合物からなる層を積層させ、ディスコティック液晶性化合物を例えば重合させるなどして、液晶性分子の配向を固定することで形成することができる。
ディスコティック液晶性化合物は、様々な文献に記載されている。例えば、「C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst., vol.71,page 111 (1981)」、「日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994)」、「B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985)」、及び「J.Zhang et al.,J.Am. Chem.Soc., vol. 116,page 2655 (1994)」に記載されている。なお、ディスコティック液晶の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
ディスコティック液晶性化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性化合物の円盤状構造単位に、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状構造単位と重合性基は、連結基を介して結合するディスコティック液晶性化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことができる。
重合性基は、ラジカル重合性基、又はカチオン重合性基から選ばれる重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和重合性基(アクリロイルオキシ基、メタクロイルオキシ基等)、エポキシ基であることが最も好ましい。このような化合物については、例えば、特開2000−155216号公報段落番号[0151]〜「0168」記載の化合物等が挙げられる。
なお、STNモードのような棒状液晶性分子がねじれ配向している液晶セルを、光学的に補償するためには、ディスコティック液晶性分子もねじれ配向させることが好ましい。上記連結基に、不斉炭素原子を導入すると、ディスコティック液晶性分子を螺旋状にねじれ配向させることができる。また、不斉炭素原子を含む光学活性を示す化合物(カイラル剤)を光学的異方性層に添加しても、ディスコティック液晶性分子を螺旋状にねじれ配向させることができる。
二種類以上のディスコティック液晶性化合物を併用してもよい。例えば、上述したような重合性ディスコティック液晶性化合物と非重合性ディスコティック液晶性化合物とを併用することができる。
非重合性ディスコティック液晶性化合物は、重合性ディスコティック液晶性化合物の重合性基を、水素原子、又はアルキル基に変更した化合物であることが好ましい。すなわち、非重合性ディスコティック液晶性化合物としては、例えば特許第2640083号明細書に記載の化合物等が挙げられる。
<<光学異方性層の他の添加剤>>
光学異方性層には、上記の液晶性化合物と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶性化合物の配向性等を向上させることができる。これらの添加剤は、液晶性化合物と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角(例えば、ディスコティック液晶性化合物の場合、円盤状構造単位の面の透明支持体の表面からの傾斜角)の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶性化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報の段落番号[0018]〜[0020]に記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、ディスコティック液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
ディスコティック液晶性化合物とともに使用するポリマーは、ディスコティック液晶性分子に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
ポリマーの例としては、セルロースアシレートを挙げることができる。セルロースアシレートの好ましい例としては、特開2000−155216号公報の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。
なお、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子の配向を阻害しないように、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
また、ディスコティック液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がより好ましい。
光学的異方性層は、液晶性化合物、更に下記の重合性開始剤や任意の添加剤(例、可塑剤、モノマー、界面活性剤、セルロースアシレート、1,3,5−トリアジン化合物、カイラル剤)を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成する。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、トルエン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド及びケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、ワイヤーバーコーティング法)により実施できる。
[液晶性分子の配向状態の固定]
前記液晶性分子は、実質的に均一に配向していることが好ましく、実質的に均一に配向している状態で固定されていることが更に好ましく、重合反応により液晶性分子の配向が固定されていることが最も好ましい。重合反応としては、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが挙げられる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号明細書、及び米国特許第2367670号明細書に記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書に記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書に記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号明細書、及び米国特許第2951758号明細書に記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書に記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、及び米国特許第4239850号明細書に記載)、及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書に記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることが更に好ましい。
ディスコティック液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20〜5,000mJ/cmであることが好ましく、100〜800mJ/cmであることが更に好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。光照射による光ラジカル重合の場合は空気、又は不活性気体中で行うことができ、ラジカル重合性モノマーの重合の誘導期を短くするか、又は重合率を十分に高める等のためにできるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。
光学異方性層の厚さは、0.5〜100μmであることが好ましく、0.5〜30μmであることが更に好ましい。0.5〜5μmであることが更に好ましい。但し、液晶セルのモードによっては、高い光学的異方性を得るために、光学的異方性層を厚く(3〜10μm)する場合がある。
光学的異方性層内での液晶性分子の配向状態は、前述したように、液晶セルの表示モードの種類に応じて決定される。液晶性分子の配向状態は、具体的には、液晶性分子の種類、配向膜の種類及び光学異方性層内の添加剤(例、可塑剤、バインダー、界面活性剤)の使用によって制御される。
[レターデーションの測定方法]
ここで、本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。
・・・・・・式(1)
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
また、式(1)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(2)
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
[光学補償シートの遅相軸角度]
本発明の光学補償シートは面内異方性を有し、その光学異方性は透明支持体、又はレターデーション調整剤をあらかじめ添加した透明支持体を延伸する、あるいは透明支持体上に配向膜を塗布し、ラビング後液晶を配向させる等により発現させることができる。
この場合、面内で屈折率の最も大きい方向(遅相軸の方向)と長尺ロール形態の光学補償シートの長手方向(搬送方向)とのなす角度(遅相軸角度)は、延伸の角度、あるいはラビングの角度によって0°〜90°まで任意に制御することができる。
また、この遅相軸角度の面内でのばらつきは、遅相軸角度の平均値に対し3°以下であることが好ましく、2°以下であることが更に好ましく、1°以下であることが最も好ましい。
延伸により、透明支持体の遅相軸の方向を、透明支持体の搬送方法に対し所望の角度に傾斜させる方法については、特開昭60−157831号公報、特開平2−113920号公報、特開平3−124426号公報、特開平3−182701号公報、特開平4−164626号公報、及び特開2000−9912号公報に記載されている。
[光学補償シートの表面処理]
本発明では、光学補償シートの偏光膜側の面を表面処理することにより、光学補償シートと偏光膜との接着を改善する。表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、酸処理又はアルカリ鹸化処理を用いる。
コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、酸処理等の処理方法は、例えば、発明協会公開技報公技番号公技01−1745号に記載の内容が挙げられる。本発明は、アルカリ鹸化処理することが好ましく、前述の[透明支持体の表面処理]の[アルカリ鹸化処理]と同様の内容のものが挙げられる。
<偏光板>
<<透明保護膜>>
偏光板の透明保護膜としては、本発明の光学補償シートと、対になるもう一方の透明支持体が用いられる。ここで、保護膜が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。透明保護膜としては、一般にセルロースアシレートフィルムが用いられる。
透明保護膜として用いるセルロースアシレートフィルムは、前述した透明支持体の製造方法の説明におけるソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明保護膜の厚さは、10〜200μmであることが好ましく、20〜100μmであることが更に好ましく、60〜100μmが特に好ましい。
<<偏光膜>>
本発明の偏光板に用いられる偏光膜(偏光子)は、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜などを用いることができる。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造される。
偏光膜としては、いかなる製法の偏光膜をも適用することができる。例えば、ポリビニルアルコール系フィルムを連続的に供給し、その両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸する際に、フィルムの一方端の実質保持開始点から実質保持解除点までの保持手段の軌跡Lと、もう一端の実質保持開始点から実質保持解除点までの保持手段の軌跡Lが、左右の実質保持解除点の距離Wに対し、下記式(h)の関係にあると共に、左右の実質保持開始点を結ぶ直線は、保持工程に導入されるフィルムの中心線と略直交するものとし、左右の実質保持解除点を結ぶ直線は、次工程に送り出されるフィルムの中心線と略直交するようにして延伸したものであってもよい(米国特許出願公開第2002/8840号明細書参照。)
|L−L|>0.4W・・・・・・・・・・・式(h)
偏光膜は機械的強度が弱く、また、吸湿性を有するなどの特性を持つため保護能を有するフィルム(保護膜)を両側に配置することにより保護して偏光板を得ることができる。本発明の偏光板用の偏光膜の保護膜としては、前述のとおり本発明の光学補償シートとセルローストリアセテートなどを一対にして用いることができる。
本発明の偏光板の保護膜の遅相軸と偏光膜の透過軸のなす角度は3°以下になるように配置することが好ましく、2°以下になるように配置することが更に好ましく、1°以下になるように配置することが最も好ましい。
光学補償シートと対になる保護膜としては、他にもハードコート層付基材フィルムや機能性薄膜付フィルムなどを併用することもできる。例えば、その最表面が防汚性及び耐擦傷性を有する反射防止膜を設けてなることも好ましい。反射防止膜は、従来公知のいずれのものも用いることができる。
特に上記の偏光板保護膜の空気側面の上に反射防止膜を設けてなることが好ましい。前記空気側面とは、偏光膜の保護膜として本発明のセルロースアシレート光学補償シートを用いた面とは変更膜をはさんで反対側の面であり、視認側の面をいう。これにより、液晶表示装置の描画画像は外光の写り込みや、ギラツキ感の無い鮮明な画像が得られ、好ましい。
[反射防止膜]
反射防止膜は、防汚性層でもある低屈折率層を透明支持体上に設けてなることが好ましく、低屈折率層、及び低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層等)とを透明支持体上に設けてなることが更に好ましい。
前記反射防止膜の形成方法としては、屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜を、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法で、コロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理して薄膜を形成する方法が挙げられる。
この後処理としては、紫外線照射やプラズマ処理が挙げられ、前記紫外線照射については、特開平9−157855号公報に記載された技術を用いることができる。
また、前記プラズマ処理については、特開2002−327310号公報に記載された技術を用いることができる。
また、生産性が高い反射防止膜として、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗布してなる反射防止膜が挙げられる。
更には、上述したような塗布による反射防止膜に最上層表面が微細な凹凸の形状を有することにより防眩性を付与した反射防止膜も挙げられる。
−塗布型反射防止膜の層構成−
反射防止膜は、前述のとおり、透明支持体上に低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(高屈折率層)、及び低屈折率層(最外層)の順序の層構成からなることが好ましい。
低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層を二層とする場合には、透明支持体上に中屈折率層、高屈折率層、及び低屈折率層(最外層)の順序の層構成からなることが好ましい。このような構成の反射防止膜は、「高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率」の関係を満足する屈折率を有するように設計される。なお、各屈折率層の屈折率は相対的なものである。
また、透明支持体と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、反射防止膜は、中屈折率ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層からなってもよい。
反射防止膜は、例えば、特開平8−122504号公報、特開平8−110401号公報、特開平10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等に記載のものが挙げられる。
また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜のヘイズ値は、5%以下あることが好ましく、3%以下が更に好ましい。又膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
−反射防止膜に用いる透明支持体−
透明支持体の光透過率は、80%以上であることが好ましく、86%以上であることが更に好ましい。透明支持体のヘイズ値は、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることが更に好ましい。透明支持体の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。
透明支持体としてプラスチックフィルムを用いることが好ましい。このプラスチックフィルムの材料の例としては、セルロースアシレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等、)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリエーテルケトン等が挙げられる。特に偏光板に反射防止膜を設ける場合には、セルロースアシレートフィルムが好ましい。
――高屈折率層及び中屈折率層――
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子及びマトリックスバインダーを含有する硬化性膜から成ることが好ましい。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
特に好ましくは、Co、Zr、ALから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子(以降、「特定の酸化物」と称することもある)が挙げられ、特に好ましい元素はCoである。
Tiに対する、Co、Al、Zrの総含有量は、Tiに対して0.05〜30質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.2〜7質量%が更に好ましく、0.3〜5質量%が特に好ましく、0.5〜3質量%が最も好ましい。
Co、Al、Zrは、二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部や表面に存在する。Co、Al、Zrが二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部に存在することがより好ましく、内部と表面の両方に存在することが最も好ましい。これらの特定の金属元素は、酸化物として存在してもよい。
また、他の好ましい無機粒子として、チタン元素と酸化物が屈折率1.95以上となる金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「Met」とも略称する)との複合酸化物の粒子で、かつ該複合酸化物は、Coイオン、Zrイオン、及びAlイオンから選ばれる金属イオンの少なくとも1種がドープされてなる無機微粒子(「特定の複酸化物」と称することもある)が挙げられる。
ここで、該酸化物の屈折率が1.95以上となる金属酸化物の金属元素としては、Ta、Zr、In、Nd、Sb,Sn、及びBiが好ましく、Ta、Zr、Sn、及びBiが特に好ましい。
複合酸化物にドープされる金属イオンの含有量は、複合酸化物を構成する全金属[Ti+Met]量に対して、25質量%を越えない範囲で含有することが屈折率維持の観点から好ましく、0.05〜10質量%がより好ましく、0.1〜5質量%が更に好ましく、0.3〜3質量%が最も好ましい。
ドープした金属イオンは、金属イオン、金属原子の何れで存在してもよく、複合酸化物の表面から内部まで適宜に存在することが好ましい。表面と内部との両方に存在することがより好ましい。
上記のような超微粒子とするには、粒子表面を表面処理剤で処理する方法、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とする方法、及び、特定の分散剤を併用する方法等が挙げられる。
粒子表面を表面処理剤で処理する方法に挙げられる表面処理剤としては、例えば、特開平11−295503号公報、特開平11−153703号公報、及び特開2000−9908号公報に記載されたシランカップリング剤等、特開2001−310432号公報等に記載されたアニオン性化合物或は有機金属カップリング剤が開示されている。
また、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とする方法としては、特開2001−166104、及び米国特許公開2003/0202137号公報等に記載の技術を用いることができる。
更に、特定の分散剤を併用する方法は、特開平11−153703号公報、米国特許第6210858明細書、及び特開2002−2776069号公報等に記載の技術が挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
更に、ラジカル重合性、及び/又はカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物及びその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、特開2001−315242号公報、特開2001−31871号公報、特開2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキシドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されているものが挙げられる。
高屈折率層の屈折率は、1.70〜2.20であることが好ましい。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることが更に好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。中屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであること
が更に好ましい。
――低屈折率層――
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成ることが好ましい。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50がより好ましい。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性、若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報の明細書の段落番号[0018]〜[0026]、特開平11−38202号公報の明細書の段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報の明細書の段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報、及び特開2004−45462号公報の明細書等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋又は重合性基を有する含フッ素及び/又はシロキサンのポリマーの架橋又は重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時又は塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。重合開始剤、増感剤としては、従来公知のものを用いることができる。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物又はその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、特開昭58−147483号公報、特開昭58−147484号公報、特開平9−157582号公報、特開平11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、特開2001−48590号公報、特開2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物を含有することが好ましい。
特に、上記低屈折率層はその屈折率上昇をより一層少なくするために、中空の無機微粒子を用いることが好ましい。中空の無機微粒子は屈折率が1.17〜1.40、好ましくは1.17〜1.37、更に好ましくは1.17〜1.35である。ここでの屈折率は粒子全体としての屈折率を表し、中空の無機微粒子を形成している外殻のみの屈折率を表すものではない。
この時、粒子内の空腔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると、下記式(i)で表される空隙率w(%)は以下の通り計算される。
w=(4πa/3)/(4πb/3)×100・・・・・・・・・・式(i)
空隙率は、10〜60%が好ましく、20〜60%が更に好ましく、30〜60%が最も好ましい。また、中空粒子の屈折率は、粒子の強度及び該中空粒子を含む低屈折率層の耐擦傷性の観点から、1.17以上とすることが好ましい。
該低屈折率層中の中空の無機微粒子の平均粒径は、該低屈折率層の厚みの30%以上、100%以下であることが好ましく、前記低屈折率層の厚みの35%以上80%以下がより好ましく、前記低屈折率層の厚みの40%以上60%以下が更に好ましい。
即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、無機微粒子の粒径は30nm以上100nm以下が好ましく、35nm以上80nm以下がより好ましく、40nm以上60nm以下が更に好ましい。
なお、これら中空の無機微粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定をおこなうことができる。
他の添加剤としては、特開平11−3820公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されてもよい。
安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることが更に好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
[反射防止膜の他の層]
反射防止膜には更に、ハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
−ハードコート層−
ハードコート層は、反射防止膜に物理強度を付与することができ、透明支持体の表面に設けることが好ましい。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光及び/又は熱の硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。
硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、又は加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、特開2000−9908号公報、国際公開WO00/46617号公報等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒径0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能(後述))を付与した防眩層を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。又、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
−前方散乱層−
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合に、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与することができ、好ましい。上記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。
前方散乱層としては、例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等に記載のものが挙げられる。
[反射防止膜の形成]
反射防止膜の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。
−アンチグレア機能−
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア
機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜50%であることが好ましく、5〜30%であることが更に好ましく、5〜20%であることが最も好ましい。
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。
例えば、低屈折率層中に微粒子を使用して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層又はハードコート層)に比較的大きな粒子(粒径0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、特開2000−95893号公報、特開2001−100004号公報、特開2001−281407号公報等)、最上層(防汚性層)を塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等が挙げられる。
本発明の反射防止膜を設けた偏光板は、反射防止膜を設けた透明支持体が偏光板の保護フィルムを兼ねることが好ましい。
ここで、透明支持体(好ましくはセルロースアシレートフィルム)の反射防止膜を設けた側とは、反対側のセルロースアシレートフィルム表面を親水化処理して、偏光膜と接着剤で貼りあわせて作製することが好ましい。
該親水化処理としては、上述の[光学補償シートの表面処理]と同様のものが挙げられる。
偏光膜の反射防止膜とは偏光膜をはさんで反対側の面には、前記したとおり、本発明の光学補償シートを、保護膜を兼ねたフィルムとして用いる。
ここで、光学補償シートの透明支持体の光学異方性層を設けたとは、反対側の表面を親水化処理して、偏光膜と接着剤で貼りあわせて作製することが好ましい。
これにより偏光板の厚みが薄くなり、液晶表示装置の軽量化が可能となり、好ましい。
(液晶表示装置)
本発明の液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された二枚の偏光板を含有することからなる。液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
光学補償シートは、液晶セルと一方の偏光板との間に、一枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置する。
<具体例>
本発明の液晶表示装置の一例を、図3に示す。前記液晶表示装置は、電圧印加時、すなわち黒表示時に、液晶が基板面に対してベンド配向する液晶層7と、それを挟む基板6及び8からなる液晶セルとを有する。
前記基板6及び8は、液晶面に配向処理が施してあり、矢印RDの方向がラビング方向となっている。なお、前記矢印RDは、裏面の場合は破線矢印で示してある。
前記液晶セルを挟持して、偏光膜1及び101が配置されている。偏光膜1及び101は、それぞれの透過軸2及び102を、互いに直交に、かつ液晶セルの液晶層7のRD方向と45度の角度に配置される。
前記偏光膜1及び101と液晶セルとの間には、セルロースアシレートフィルム3a、及び103aと、光学異方性層5、及び9がそれぞれ配置されている。セルロースアシレートフィルム3a(103a)は、その遅相軸4a(14a)が、それぞれに隣接する偏光膜1(101)の透過軸2(102)の方向と平行に配置されている。また、光学異方性層5及び9は、液晶性化合物の配向によって発現された光学異方性を有する。
前記基板6及び8の液晶分子7に接触する表面(以下、「内面」と称することもある。)には、配向膜(不図示)が形成されていて、電圧無印加状態又は低印加状態における液晶分子7の配向が、プレチルト角をもった平行方向に制御されている。また、前記基板6及び8の内面には、液晶分子7からなる液晶層に電圧を印加可能な透明電極(不図示)が形成されている。
本発明では、液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・dは、0.1〜1.5μmとするのが好ましく、0.2〜1.5μmとするのがより好ましく、0.2〜1.2μmとするのが更に好ましく、0.6〜0.9μmとするのが特に好ましい。これらの範囲では、白電圧印加時における白表示輝度が高いことから、明るくコントラストの高い表示装置が得られる。
用いる液晶材料としては、特に制限はないが、例えば、基板6及び8間に電界が印加される態様では、電界方向に平行に液晶分子7が応答するような、誘電率異方性が正の液晶材料を使用することが好ましい。
例えば、前記液晶セルをOCBモードの液晶セルとする場合は、基板6及び8間に、誘電異方性が正で、Δn=0.08、Δε=5程度のネマチック液晶材料などを用いることができる。液晶層の厚さdについては特に制限はないが、前記ネマチック液晶材料を用いる場合、例えば6μm程度に設定することができる。前記厚さdと、白電圧印加時の屈折率異方性Δnの積Δn・dの大きさにより白表示時の明るさが変化するので、白電圧印加時において十分な明るさを得るためには、無印加状態における液晶層のΔn・dは0.6〜1.5μmの範囲になるように設定するのが好ましい。
なお、OCBモードの液晶表示装置では、TNモードの液晶表示装置で一般的に使われているカイラル剤の添加は、動的応答特性の劣化させるため用いることは少ないが、配向不良を低減するために添加されることもある。また、マルチドメイン構造とする場合には、各ドメイン間の境界領域の液晶分子の配向を調整するのに有利である。
ここで、「マルチドメイン構造」とは、液晶表示装置の一画素を複数の領域に分割した構造をいう。
例えば、OCBモードにおいて、前記マルチドメイン構造にすると、輝度や色調の視野角特性が改善されるので好ましい。具体的には、画素のそれぞれを液晶分子の初期配向状態が互いに異なる2以上(好ましくは4又は8)の領域で構成して平均化することで、視野角に依存した輝度や色調の偏りを低減することができる。また、それぞれの画素を、電圧印加状態において液晶分子の配向方向が連続的に変化する互いに異なる2以上の領域から構成しても同様の効果が得られる。
前記セルロースアシレートフィルム3a及び103aは、波長450nmにおける面内レターデーション(Re)と厚み方向のレターデーション(Rth)との比Re/Rth(450nm)が、波長550nmにおけるRe/Rth(550nm)の0.4〜0.95倍であり、波長650nmにおけるRe/Rth(650nm)が、Re/Rth(550nm)の1.05〜1.9倍の関係を満たし、かつRthが70〜400nmであることが好ましい。前記セルロースアシレートフィルム3a及び103aは、光学異方性層5及び9の支持体として機能していてもよいし、偏光膜1と偏光膜101の保護膜としても機能していてもよいし、双方の機能を有していてもよい。すなわち、偏光膜1、セルロースアシレートフィルム3a、及び光学異方性層5、又は、偏光膜101、セルロースアシレートフィルム103a、及び光学異方性層9は、一体化された積層体として液晶表示装置内部に組み込まれていてもよいし、それぞれ単独の部材として組み込まれていてもよい。また、セルロースアシレートフィルム3aと偏光膜1との間、又はセルロースアシレートフィルム103aと偏光膜101との間に、別途、偏光膜用の保護膜が配置された構成であってもよいが、該保護膜は配置されていないのが好ましい。
前記セルロースアシレートフィルム3aの遅相軸4a、セルロースアシレートフィルム103aの遅相軸104aは、互いに実質的に平行又は直交しているのが好ましい。前記セルロースアシレートフィルム3a、103aの遅相軸4a及び104aが互いに直交していると、それぞれのセルロースアシレートフィルムの複屈折を互いに打ち消すことにより、液晶表示装置に垂直入射した光の光学特性が劣化するのを低減することができる。また、遅相軸4a及び104aが互いに平行する態様では、液晶層に残留位相差がある場合には保護膜の複屈折でこの位相差を補償することができる。
前記偏光膜1及び101の、透過軸2及び102、セルロースアシレートフィルム3a、103aの遅相軸方向4a及び104a、並びに液晶分子7の配向方向については、各部材に用いられる材料、表示モード、部材の積層構造等に応じて最適な範囲に調整する。すなわち、前記偏光膜1の透過軸2、及び偏光膜101の透過軸102が、互いに実質的に直交しているように配置する。ただし、本発明の液晶表示装置は、この構成に限定されるものではない。
前記光学異方性層5及び9は、セルロースアシレートフィルム3a及び103aと、液晶セルとの間に配置される。
前記光学異方性層5及び9は、液晶性化合物、例えば、棒状液晶性化合物又は円盤状液晶性化合物を含有する組成物から形成された層である。光学異方性層において、液晶性化合物の分子は、所定の配向状態に固定されている。前記光学異方性層5及び9中の液晶性化合物における分子対称軸の、少なくともセルロースアシレートフィルム3a、103a側の界面における配向平均方向5a及び9aと、セルロースアシレートフィルム3a、103aの面内の遅相軸4a及び104aは、略45°で交差している。このような関係で配置すると、前記光学異方性層5又は9が、法線方向からの入射光に対してレターデーションを生じさせて、光漏れを生じさせることがない。同様に、前記液晶セル側の界面においても、光学異方性層5及び9の分子対称軸の配向平均方向は、セルロースアシレートフィルム3a、103aの面内の遅相軸4a及び104aは略45°であるのが好ましい。
また、前記光学異方性層5の液晶性化合物における分子対称軸の偏光膜側(セルロースアシレートフィルム界面側)の配向平均方向5aは、より近くに位置する偏光膜1の透過軸2と略45度に配置するのが好ましい。同様に、光学異方性層9の液晶性化合物の分子対称軸の偏光膜側(セルロースアシレートフィルム界面側)の配向平均方向9aが、より近くに位置する偏光膜101の透過軸102と略45度に配置するのが好ましい。このような関係で配置すると、前記光学異方性層5又は9が発生するレターデーションと液晶層で発生するレターデーションとの和に応じて光スイッチングをすることができる。
本発明の液晶表示装置は、印加電圧が低い時に明表示、高い時に暗表示であるノーマリーホワイトモードでも、印加電圧が低い時に暗表示、高い時に明表示であるノーマリーブラックモードでも用いることができる。
本発明の透過型、反射型及び半透過型液晶表示装置の駆動方式については単純マトリックス方式よりも、アクティブマトリックス方式が好ましく、TFT(Thin Film Transistor)、TFD(Thin Film Diode)又はMIM(Metal Insulator Metal)を使うことがより好ましい。TFTについては低温ポリシリコン、又は連続粒界シリコンを使うことがより好ましい。
詳細については、「液晶デバイスハンドブック」日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、「液晶 応用編」岡野光治他、培風館、「カラー液晶ディスプレイ」小林俊介他、産業図書、「次世代液晶ディスプレイ技術」内田龍男、工業調査会、「液晶ディスプレイの最先端」液晶若手研究会編、シグマ出版、「液晶:LCDの基礎と新しい応用」液晶若手研究会編、シグマ出版等に記載されている。
本発明の液晶表示装置には、例えばTNモード、STNモード、ECBモード等、ECBモードとしては例えばOCBモード、HANモード、VAモード、MVAモード、ホモジニアス配向モード等各種のモードの液晶セルが用いられるが、中でもTNモード並びにOCBモード、HANモード、VAモード、MVAモード及びホモジニアス配向モード等
のECBモードの液晶セルが好ましい。液晶セルについては、「´99PDP/LCD構
成材料・ケミカルスの市場」1999年7月30日、シーエムシー、「EL,PDP,LCDディスプレイ技術と市場の最新動向−」2001年3月、東レリサーチセンター等に記載されている。
各液晶モードにおける光学異方性層の好ましい形態について、以下で説明する。
<<TNモード液晶表示装置>>
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
<<OCBモード液晶表示装置>>
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4,583,825号、米国特許5,410,422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
<<VAモード液晶表示装置>>
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)及び(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
(その他の液晶表示装置)
ECBモード及びSTNモードの液晶表示装置に対しては、上記と同様の考え方で光学的に補償することができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
(透明支持体の作製)
<セルローストリアセテート溶液の調製>
下記の成分をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌し、各成分を溶解してセルローストリアセテート溶液を調製した。
セルローストリアセテート(酢化度60.1%)・・・・・・・・・・100質量部
トリフェニルホスフェート・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート・・・・・・・・・・・・・・・・・・4質量部
微粒子(シリカ(粒径20nm))・・・・・・・・・・・・・・・0.15質量部
メチレンクロライド・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・300質量部
メタノール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55質量部
n−ブタノール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15質量部
<レターデーション調整剤溶液の調製>
別のミキシングタンクに、下記の成分を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション調整剤溶液を調製した。
下記構造式(I)に記載のレターデーション調整剤 160質量部
メチレンクロライド 80質量部
メタノール 190質量部
<調整工程>
上記セルローストリアセテート溶液4,770質量部に、レターデーション調整剤溶液167質量部を混合し、攪拌した後に、室温(25℃)にて3時間放置し、得られた不均一なゲル状溶液を、70℃にて6時間加熱した後、50℃にて攪拌して完全に溶解したドープを得た。これをフィルター濾過、及び脱泡を行ってドープを調製した。
<流延工程>
調整工程後、得られたドープをバンド流延機のバンド上に流延し、100℃のゾーン中を3分間通過させた後、残留溶剤量が60質量%の状態の透明支持体をバンドから剥離し、140℃の条件でテンターを用いて19.8%の延伸倍率で延伸し、以後幅を一定に保ちつつ、100℃で40秒間保持した。
<乾燥工程>
その後、テンターを離脱して、125℃の条件で35分間乾燥して、遅相軸がフィルムの搬送方向(長手方向)に対し90°の角度を有するセルロースアシレートフィルム(CA−1)ロール(長さ3,500m、幅1,300mm、厚み85μm)を製造した。
得られたフィルムのバンド側の面に光学異方性層を形成するので、こちらを表面側と定義した。
<透明支持体の光学特性の測定>
得られたフィルム(CA−1)を125℃の条件で5分間加熱し、カール値、可塑剤に対応する赤外線吸収スペクトルの波数が1,488cm−1のピーク高さAと、セルロースアシレートに対応する赤外線吸収スペクトルの1,370cm−1の波数がピーク高さBとの比(A/B)値、を加熱前後でそれぞれ測定した。
作製したセルロースアシレートフィルム(CA−1)について、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用い、波長550nmにおけるReレターデーション値、及びRthレターデーション値を測定した。また、自動複屈折計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)製)で延伸方向(フィルムのTD方向)に対する遅相軸角度を測定した。測定は幅方向に10点とり、その平均値を算出し、結果を加熱前後のカール値、A/B値と併せて表1に示した。
(比較例1)
(透明支持体の作製)
実施例1におけるバンド上に流延した後のゾーン温度を140℃に変えた以外は、実施例1と同様にして、セルロースアシレートフィルム(CA−2)ロール(長さ3,500m、幅1,300mm、厚み85μm)を製造した。得られたフィルム(CA−2)を実施例1と同様にして測定した。
<透明支持体の光学特性の測定>
得られたフィルム(CA−1)を125℃の条件で5分間加熱し、カール値、可塑剤に対応する赤外線吸収スペクトルの波数が1,488cm−1のピーク高さAと、セルロースアシレートに対応する赤外線吸収スペクトルの1,370cm−1の波数がピーク高さBとの比(A/B)値、を加熱前後でそれぞれ測定した。
作製したセルロースアシレートフィルム(CA−2)について、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用い、波長550nmにおけるReレターデーション値、及びRthレターデーション値を測定した。また、自動複屈折計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)製)で延伸方向(フィルムのTD方向)に対する遅相軸角度を測定した。測定は幅方向に10点とり、その平均値を算出し、結果を加熱前後のカール値、A/B値と併せて表1に示した。
(実施例2)
(光学補償シートの作製)
<鹸化処理>
セルロースアシレートフィルム(透明支持体CA−1)ロールのバンド面側に、1.0モル/Kgの水酸化カリウム溶液(溶剤:イソプロパノール(沸点82.4℃)/プロピレングリコール/水=75/13/12質量%)を#6バーで塗布し、45℃で10秒間加熱した後、濡れたままの塗布面に#1.6バーで水を塗布し、すぐに40℃の洗浄水500mL/mをノズルから吹き付け、エアナイフでフィルム表面の洗浄水を吹き飛ばす処理を三回連続して行い、100℃の温風で乾燥して、表面が鹸化されたセルロースアシレートフィルムロールを作製した。
なお、鹸化処理面の水との接触角は、各フィルムともに35〜36度の範囲であった。
(配向膜の形成)
この表面処理した各フィルム上に、下記の組成の配向膜塗布液をロッドコーターで28mL/mの塗布量で塗布した。60℃の温風で60秒、更に90℃の温風で150秒乾燥した。
乾燥後の塗布面のpHを測定した所、各フィルムともその値は4.1であった。又、塗布幅方向での中央と左右両端の位置のpH値は各フィルムとも、4.00〜4.20の範囲であった。
下記構造式(II)に記載の変性ポリビニルアルコール・・・・・・・・20質量部
下記構造式(A−1)に記載のカルボン酸化合物・・・・・・・・・0.07質量部
グルタルアルデヒド・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.5質量部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・360質量部
メタノール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・120質量部
<配向膜面のラビング処理>
次に、環境条件(25℃/45%RH)のもとに、各フィルムの長手方向に配向膜面に、市販のラビング布を貼り付けたラビングロールで搬送方向に対し反時計回りに45°にラビング処理を実施した。ラビング処理の前後に特開平7−333613号公報に記載されたと同様の静電気除電装置及び超音波除塵装置を設置して行った。
更に、ラビングロール部の表面電位を表面電位計(Trek社製、Electrostatic Voltmeter MODEL344型)で計測してラビングロール布表面を静電気除電しつつ、−100V未満で処理した。
<光学異方性層用塗布液の作製>
SUS製のタンク中に、下記組成物をメチルエチルケトンに溶解して固形分濃度32.6%のメチルエチルケトン溶液とし、光学異方性層用の塗布液を作製した。
[光学異方性層用の塗布液]
・下記構造式(III)に示すディスコティック液晶DLC−A・・・・9.1質量部
・エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレート(V#360、大阪有機化学(株))・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.9質量部
・セルロースアセテートブチレート(CAB531−1 イーストマンケミカル)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.15質量部
・イルガキュアー907・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0・3質量部
・カヤキュアーDETX(日本化薬(株)製)・・・・・・・・・・・・0.1質量部
・下記構造式(P−1)に示すフルオロ脂肪族基含有ポリマー化合物・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.05質量部
・下記構造式(P−2)に示すフルオロ脂肪族基含有ポリマー化合物・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.005質量部
上記の各フィルムの配向膜面側に上記の塗布液を塗布し、これを125℃の恒温槽中で2分間加熱し、モノドメインのディスコティックネマティック相をとらせ、次に、125℃で120W/cm高圧水銀灯で1分間UV照射し、ディスコティック液晶を重合させ、その後、室温まで放冷し、膜厚1.8μmからなる光学異方性層を有する本発明の光学補償シート(OC−1)を2,600mの長さで作製した。
実施例1のセルロースアシレートフィルム(CA−1)を用いた光学補償シート(OC−1)は、上記の高温加熱ゾーンにおけるフィルムのハンドリングが良好であり、カールによるフィルムの擦れ、切断等は一切発生しなかった。
(光学補償シートの評価)
<レターデーション値の測定>
作製した光学補償シート(OC−1)について、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用い、波長550nmにおけるReレターデーション値、及びRthレターデーション値を測定した。また、該光学補償シート(OC−1)のカール値を測定した。評価結果を表2に記載した。
(比較例2)
(光学補償シートの作製)
上記実施例2において、セルロースアシレートフィルム(透明支持体CA−1)ロールを、セルロースアシレートフィルム(透明支持体CA−2)ロールに代えた以外は、実施例2と同様にして、光学補償シート(OC−2)を100mの長さで作製した。
比較例1のセルロースアシレートフィルム(CA−2)を用いた光学補償シート(OC−2)は、上記の高温加熱ゾーンの途中から巻取りまでの工程で端部のカールが大幅に悪化し、一部でライン中の製造装置と接触し、発塵原となったほか、切断の恐れがあったため、100m以上は連続で作製できなかった。
(光学補償シートの評価)
作製した光学補償シート(OC−1)について、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用い、波長550nmにおけるReレターデーション値、及びRthレターデーション値を測定した。また、該光学補償シート(OC−1)のカール値を測定した。評価結果を表2に記載した。
表2に示すように、実施例2の光学補償シート(OC−1)はカール値が小さく、後述する偏光板の製造工程でも問題なくハンドリングできた。一方、比較例2の光学補償シート(OC−2)は、カール値が大きく悪化したため、偏光板の製造工程でハンドリング不良、貼り合わせ不良が起こり、偏光板を作製できなかった。
(実施例3)
<偏光子の作製>
PVAフィルムをヨウ素2.0kg/kL、ヨウ化カリウム4.0kg/kLの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、更にホウ酸10kg/kLの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、テンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、テンター幅を一定に保ち、収縮させながら80℃雰囲気で乾燥させた後、テンターから離脱して巻き取った。
延伸開始前のPVAフィルムの含水率は31%で、乾燥後の含水率は1.5%であった。
得られた偏光子の透過軸方向は、テンターの搬送方向(長手方向)に対しプラスマイナス1.0°未満の角度、550nmにおける透過率43.7%、偏光度99.97%であった。
<偏光板の作製>
防眩性反射防止フィルムとして、CVL02E80(富士フイルム(株)製)を幅1,300mm、ロール長2,600mのロール形態で用意した。
この防眩性反射防止フィルム及び上記の各光学補償シート(OC−1)を、55℃の1.5モル/L NaOH水溶液に1分間浸漬してセルロースアシレートの表面を鹸化した後、希硫酸及び水で十分洗浄し、乾燥後それぞれのセルロースアシレート側にポリビニルアルコール系粘着材を約30μの厚みに塗布し、上記偏光子の両側にロールtoロールで貼り合わせ、更に80℃で乾燥して偏光板(P−1)を作製した。
また、上記の防眩性反射防止フィルムの代わりに、フジタック(TD80U、商品名:富士フイルム(株)製)を用いた以外はP−1と同様にして、偏光板(P−2)を作製した。
(実施例4)
(液晶表示装置の作製)
OCBモードの液晶セル((株)ナナオ製、VT23XD1)のバックライト側に実施例3で作製した偏光板P−2をパネルのガラス基板と光学異方層が接するように貼り合わせ、観察側に実施例3で作製した偏光板P−1を同様に貼り合せて液晶表示装置に組み込み、ベンド配向モードの透過型液晶表示装置を作製した。
この液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、正面コントラスト比を測定した。更に左右方向(セルのラビング方向と直交方向)の視野角(コントラスト比が10以上となる角度範囲)を調べたところ、正面コントラスト300、左右視野角160°であり、良好な特性であることがわかった。
(実施例5)
実施例1中のレターデーション調整剤溶液167質量部を223重量部に、19.8%の延伸倍率を25.4%に変更した以外は、実施例1と同様にして、セルロースアシレートフィルム(透明支持体CA−3)ロール(長さ3,500m、幅1,300mm、厚み85μm)を製造した。
得られたセルロースアシレートフィルム(透明支持体CA−3)を、実施例1と同様に評価したところ、Re=55(nm)、Rth=195(nm)であり、加熱後のカール値は、2(m−1)であった。
また、このようにして作製した光学補償シートを実施例3と同様にして保護膜の片面として偏光板を作製したところ、工程中でのカールが小さく、良好な加工適性を示した。
得られた偏光板をVAモードの液晶セル((株)ナナオ製、SC26XD1)に実施例4と同様にして液晶表示装置に組み込み、VAモードの液晶表示装置を作製し、同様の表示特性を測定したところ、正面コントラスト400、左右視野角170°であり、良好な特性であることがわかった。
本発明の光学補償シートは、製造工程中に課される加熱条件に対しても、光学的欠陥が実用上問題の無い、カール特性に優れた光学補償シートを生産性よく製造することができるので、液晶表示装置における偏光板に好適に用いることができ、特に本発明の液晶表示装置に好適に用いることができる。
本発明の液晶表示装置は、液晶セルを光学的に補償し、コントラストの改善及び視角方向に依存したカラーシフトを軽減でき、携帯電話、パソコン用モニタ、テレビ、液晶プロジェクタなどに好適に使用することができる。
図1は、加熱処理前の支持体の表面における赤外線吸収スペクトルの計測結果を示す図である。 図2は、加熱処理後の支持体の表面における赤外線吸収スペクトルの計測結果を示す図である。 図3は、液晶表示装置の一例を示す概略図である。
符号の説明
1、101・・・偏光板
2、102・・・透過軸
3a、103a・・・透明支持体(セルロースアシレートフィルム)
4a、104a・・・遅相軸
5、9・・・光学異方性層

Claims (12)

  1. 少なくとも透明樹脂、及び可塑剤を含有する透明支持体を有し、前記透明支持体を125℃で5分間加熱処理し、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASC PH1.29−1985、Method−A)に従って測定した前記透明支持体の表面側におけるカール値が、+10(m−1)以下であることを特徴とする光学補償シート。
  2. 透明支持体の表層において測定した赤外線吸収スペクトルのうち、可塑剤に対応する赤外線吸収スペクトルで最も高いピークの高さAと、透明樹脂に対応する赤外線吸収スペクトルで最も高いピークの高さBとの比(A/B)が、125℃で5分間加熱処理した前後で0.1以上増加しない請求項1に記載の光学補償シート。
  3. 可塑剤が単環芳香族構造を有する化合物を主成分として含み、透明樹脂がセルロースアシレートを主成分として含み、前記可塑剤に対応する赤外線吸収スペクトルの波数が1,450〜1,500cm−1で最も高いピークの高さAと、前記透明樹脂に対応する赤外線吸収スペクトルの波数が1,350〜1,400cm−1で最も高いピークの高さBとの比(A/B)が、100〜140℃の温度で5分間加熱処理した前後で、0.1以上増加しない請求項2に記載の光学補償シート。
  4. 透明支持体の表面に、更に光学異方性層が設けられた請求項1から3のいずれかに記載の光学補償シート。
  5. 光学異方性層が液晶性化合物を含む請求項4に記載の光学補償シート。
  6. 液晶性化合物がディスコティック液晶である請求項5に記載の光学補償シート。
  7. 光学補償シートを125℃で5分間加熱処理し、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASC PH1.29−1985、Method−A)に従って測定した前記透明支持体の前記表面側におけるカール値が、−15(m−1)〜+15(m−1)の範囲であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の光学補償シート。
  8. 波長550nmの光に対して、下記式(a)で定義されるRe値が、2〜200nmの範囲であり、下記式(b)で定義されるRth値が、50〜400nmの範囲である請求項1から7のいずれかに記載の光学補償シート。
    なお、下記式(a)、及び式(b)中、nxは、前記透明支持体の面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは、前記透明支持体の面内の進相軸方向の屈折率であり、nzは、前記透明支持体の厚み方向の屈折率であり、dは、前記透明支持体の厚さである。
    Re=(nx−ny)×d・・・・・・・・・・・・・式(a)
    Rth={(nx+ny)/2−nz}×d・・・・・式(b)
  9. 透明支持体の膜厚が60〜120μmである請求項1から8のいずれかに記載の光学補償シート。
  10. 偏光膜及びその両側に配置された2枚の透明保護フィルムからなる偏光板であって、該透明保護フィルムの少なくとも一方が請求項1から9のいずれかに記載の光学補償シートであることを特徴とする偏光板。
  11. 液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を含み、該偏光板のうちの少なくとも1つが、請求項10に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
  12. 液晶セルが、ベンド配向モードの液晶セルである請求項11に記載の液晶表示装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017191153A (ja) * 2016-04-12 2017-10-19 コニカミノルタ株式会社 偏光板および液晶表示装置
JP2017194620A (ja) * 2016-04-22 2017-10-26 コニカミノルタ株式会社 偏光板および液晶表示装置

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