JP2007302975A - 窒化処理鋼材の製造方法及び窒化処理鋼材 - Google Patents
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Abstract
【課題】自動車車体等の鋼板等に利用される塑性加工された鋼材を窒化処理することにより、高強度、高靭性を同時に満足しうる窒化処理鋼材を提供する。
【解決手段】塑性加工が施された鋼材を、アンモニアガスの含有量が、38%以上、90%未満である混合ガス雰囲気下、655℃以上、665℃以下の窒化温度で窒化する窒化処理工程を有する窒化処理鋼材の製造方法。アンモニアガスの含有量は、38%以上、71%以下が好ましく、45%以上、60%以下がより好ましい。
【選択図】図1
【解決手段】塑性加工が施された鋼材を、アンモニアガスの含有量が、38%以上、90%未満である混合ガス雰囲気下、655℃以上、665℃以下の窒化温度で窒化する窒化処理工程を有する窒化処理鋼材の製造方法。アンモニアガスの含有量は、38%以上、71%以下が好ましく、45%以上、60%以下がより好ましい。
【選択図】図1
Description
本発明は、窒化処理鋼材の製造方法及びその製造方法によって製造される窒化処理鋼材に関し、特に高強度、高靭性が要求される自動車車体等の鋼板等に利用される窒化処理鋼材の製造方法及びその窒化処理鋼材に関する。
自動車等の車両については、車両運行上の経済性向上の要求に加えて環境問題の観点から燃費性能の向上が強く求められており、特に、車両重量の大部分を占める車体についてはより一層の軽量化が要求されている。一方、車両衝突時における乗員保護性能を維持・向上させるためには、一定以上の車体強度および車体剛性を確保する必要がある。このため、自動車の車体には、衝突時の安全性向上のための車体強度および剛性の確保と燃費性能向上のための軽量化とを、両立して達成することが求められている。
鋼材を高強度化する処理方法の1つとして窒化方法が知られており、ガス窒化法、ガス軟窒化法、塩浴窒化法、イオン窒化法等の処理方法が利用されている。例えば、特許文献1では、アンモニアと窒素と水素を含む混合ガス雰囲気中での熱処理によって鋼材の表面部に窒素を含有させるに際し、雰囲気中に導入されるガス流量の内訳として窒素ガスを20%以上、水素ガスを1.0%以上とし、窒素ガス流量/(窒素ガス流量+水素ガス流量)を0.60以上とするガス窒化法を利用することにより、高い窒化効率が得られることが開示されている。
特開2003−286561号公報
ところで、自動車車体等に使用される鋼材、特に高強度鋼板はプレス加工等の成形加工によって所定の形状に加工されることが多い(なお、以下では鋼材の例として鋼板ということがある)。このため、高強度鋼板には優れた加工性が要求される。しかしながら、一般に、鋼板の強度が上昇するに伴い延性が低下するため、複雑な形状にプレス成形することが困難になってくる。また、単純な形状であっても、プレス成形後の成形体の弾性回復量(スプリングバック)は、鋼板の高強度化に伴って大きくなり、所定の形状精度を得ることが困難となる。
プレス成形性と高強度化を両立させるために、軟質で延性と深絞り性に優れた鋼板をプレス成形した後に焼入れ又は窒化することが考えられるが、従来の鋼板への窒化処理は、表面に形成される化合物層により耐摩耗性を向上させたり、化合物層の直下に形成される拡散層により疲労強度を向上させることが主たる目的であったため、窒化処理によって鋼板の内部まで強化することはなく、脆性の観点からは内部はむしろ強化させないのが一般的であった。
このため、特許文献1で検討されているようなガス窒化法の窒化処理の条件では、鋼板内部まで十分な窒化が行えず、高強度と高靭性の両立は困難であり、得られる窒化処理鋼材は強度不足による変形あるいは靭性不足によって脆性的な破壊が発生しやすいという問題があった。また、特許文献1に記載されている窒化処理の条件で内部まで窒化処理を行う場合、長時間を要し、生産効率の低下を招くこととなる。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、塑性加工された鋼材を窒化処理する場合に、窒化処理後に高強度と高靭性を同時に満足しうる窒化処理鋼材を製造するための窒化処理方法及びその窒化処理鋼材を提供することを目的とする。
上記課題を解決した本発明とは、塑性加工が施された鋼材を、アンモニアガスの含有量が、38%以上、90%未満である混合ガス雰囲気下、655℃以上、665℃以下の窒化温度で窒化する窒化処理工程を有する窒化処理鋼材の製造方法である。上記構成によれば、窒化処理条件が最適化されているため、高強度、高靭性の両立した窒化処理鋼材を得ることができる。
本発明の窒化処理鋼材の製造方法において、前記混合ガス雰囲気中のアンモニアガスの含有量は、38%以上、71%以下であることが好ましい。上記構成によれば、高強度を確保しつつ、靭性のより優れた窒化処理鋼材が得られる。
また、前記混合ガス雰囲気中のアンモニアガスの含有量は、45%以上、60%以下であることがさらに好ましい。上記構成によれば、さらに強度と靭性のバランスの取れた窒化処理鋼材が得られる。
さらに、本発明の窒化処理鋼材の製造方法は、前記窒化処理工程後に焼入れ処理工程を有し、前記焼入れ処理工程の焼入れ開始温度が、580℃以上であることが好ましい。上記構成によれば、粗大窒化鉄の析出を防止して、耐脆性に優れた窒化処理鋼板が得られる。
そして、本発明は、上記の製造方法によって製造される窒化処理鋼材である。
本発明によれば、アンモニアガスの含有量が一定範囲の混合ガス雰囲気下、一定範囲の高温で鋼材が窒化処理されるため、靭性を確保しつつ鋼材内部まで窒化することができる。このため得られる窒化処理鋼材は高強度と高靭性とを兼備している。従って、例えば、塑性加工された鋼材を窒化処理する自動車車体等の構造部材に上記窒化処理を適用した場合、軽量化のために薄肉化された鋼板が用いられる場合でも、高強度及び高靭性を両立することができる。
本発明の窒化処理は、塑性加工が施された鋼材を、アンモニアガスの含有量が、38%以上、90%未満である混合ガス雰囲気下、655℃以上、665℃以下の窒化温度で窒化することにより行われる。
従来の窒化処理条件では、混合ガス雰囲気中のアンモニアガスの含有量が増加するに従って鋼材中の含有窒素量が増加するが、含有窒素量が多くなると強度は向上するのに対して、衝撃に対しては脆弱となり靭性が低下してくる。また、窒化温度についても、高温になるに従って窒化が内部まで進行し、強度が向上するが、反対に靭性は低下してくる。従って、アンモニアガスの含有量及び窒化温度の窒化処理の両条件には最適条件が存在するとの観点から本発明は検討されたものである。
本発明において、混合ガス雰囲気中のアンモニアガスの含有量は38%以上、90%未満である。アンモニアガスの含有量が38%未満では、窒化ガスの窒化能力が低下し、処理鋼材中の含有窒素量が低すぎて十分な強度が得られない。本発明者等の検討によれば、アンモニアガスの含有量が38%以上であれば、鋼材中の含有窒素量が0.06%以上となり、引張強度が780MPa以上の高張力鋼板が得られることが見出された。一方、アンモニアガスの含有量が90%以上の場合、鋼材中の含有窒素量は0.09%を超えるが、この場合窒素は粗大な窒化物の生成に費やされるだけで、強度への寄与は飽和する。このため、含有窒素量は0.09%以下となる程度に抑えることが好ましい。強度と靭性のバランスを考慮すれば、アンモニアガスの含有量は38%以上、71%以下とすることが好ましい。この場合、含有窒素量が0.06%以上、0.08%以下の窒化処理鋼材が得られ、衝撃試験においても、優れた靭性が得られる。さらに、アンモニアガスの含有量が45%以上、60%以下であれば、含有窒素量が、0.064%以上、0.073%以下の窒化処理鋼材が得られ、両特性のバランスが最適化される。
本発明において、混合ガス中の他のガスとしては、従来から公知の窒化処理に使用されるガス、例えば、吸熱型のRXガス(CO:20%、H2:40%、N2:20%を含有)等を用いることができる。
本発明において、窒化温度は、655℃以上、665℃以下である。窒化処理は、一般に高温になるほど窒素の拡散が速くなり、窒化処理時間を短縮できる。しかしながら、本発明者等の検討によれば、窒化温度は一定温度以上であれば、それ以上に温度を上げても強度の増加は飽和するのに対し、靭性は直線的に低下することが確認された。このため、上記のアンモニアガスの含有量の範囲の混合ガス雰囲気下で、高強度を確保しながら、その範囲で最も高い靭性が得られる条件について検討を行った結果、窒化温度が655℃より低いと、短時間の窒化処理では内部まで窒化が十分に行われず、靭性は高いが、強度が不足し、アンモニアガスの含有量が上記範囲であっても引張強度が780MPa以上の高張力鋼板が得られず、一方、窒化温度が665℃より高いと、強度は大きく向上しないのに対し、靭性が顕著に低下することが見出された。従って、高強度と高靭性の両立を図るには、窒化温度は655℃以上、665℃以下とする必要があり、660℃近辺がより好ましい。
本発明において、窒化処理の処理時間は特に限定されるものではないが、例えば、厚みが0.8〜1.0mmの鋼板の場合、20分以上、30分以下が好ましく、25分以上、30分以下がより好ましい。本発明の窒化処理の条件によれば、上記のような短時間の処理でも鋼材内部まで窒化することができる。なお、窒化処理の際、窒素は鋼材の表面から内部に拡散して行くため、窒化処理時間が短い場合には、化合物層を除いた表面部の硬さが板厚中心の硬さより高い硬度分布となるが、表面部の硬さが大きすぎると、硬さの差が大きい界面を起点として破壊が生じることがある。
本発明の窒化処理鋼材の製造方法は、上記の窒化処理工程の後に連続あるいは時間間隔をおいて焼入れ処理工程を設けてもよい。
焼入れ処理を行う場合、焼入れ開始温度は580℃以上が好ましく、より好ましくは600℃以上であり、上限は窒化温度である665℃以下である。焼入れ開始温度が580℃未満の場合、冷却中に窒化処理鋼材の結晶粒界に沿って粗大窒化鉄が生成しやすくなり、脆化しやすい。
本発明で窒化処理される窒化処理用鋼材としては、特に限定されるものではないが、例えば、質量%で、C:0.01%以下、Si:0.001〜0.5%、Mn:0.01〜0.5%、P:0.001〜0.1%、S:0.01%以下、Al:0.001〜0.5%、Ti:0.04〜0.2%、Nb:0〜0.05%、B:0〜0.005%、N:0.005%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成を有する鋼材が好ましい。上記のような窒化処理用鋼材であれば、良好な加工性を確保しつつ、窒化処理後に高強度と高靭性を両立することができる。
窒化処理用鋼材の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、自動車車体の鋼板の場合、1.6mm以下、好ましくは1.0mm以下である。
鋼材から所定形状の部材(部品)を得るための成形加工方法は、プレス成形、曲げ成形といった塑性加工が挙げられる。塑性加工を行ってから窒化処理して強化することで、優れた成形性と高強度とを両立させることが可能である。
以下、試験例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
試験例
(試験例1)
質量%で、C:0.002%、Si:0.01%、Mn:0.11%、P:0.01%、S:0.004%、Al:0.04%、N:0.002%、Ti:0.1%、B:0.0007%、残部がFeの組成を有する板厚1.0mmの冷間圧延鋼板を所定形状にプレス加工した窒化処理用鋼板を使用して、表1に示す条件で窒化処理した。
(試験例1)
質量%で、C:0.002%、Si:0.01%、Mn:0.11%、P:0.01%、S:0.004%、Al:0.04%、N:0.002%、Ti:0.1%、B:0.0007%、残部がFeの組成を有する板厚1.0mmの冷間圧延鋼板を所定形状にプレス加工した窒化処理用鋼板を使用して、表1に示す条件で窒化処理した。
混合ガスとして、アンモニアガスとRXガス(CO:20%、H2:40%、N2:20%を含有)とが用いられ、アンモニアガスの含有量(体積%)が表1に示す各割合となるように調整されたものが各窒化処理で使用された。処理前の窒化処理用鋼板及び処理後の窒化処理鋼板について、MHv硬度、引張特性、化学組成、及び靭性が評価された。
引張特性は、各鋼板から圧延方向が引張方向となるようにJIS13号B引張試験片を採取し常温で引張試験を行って引張特性を調査した。また、試験荷重9.8Nで板厚中心のマイクロビッカース硬度(MHv)の測定を行った。さらに、鋼板の靭性を評価するために、縦、横5cm四方で、高さ20cmの閉断面形状の試験片を圧縮試験により高さ10cmになるまで潰し、目視により割れを観察して、割れの発生のない場合を、◎、大きな進展はないが、コーナー部等に割れが発生している場合を、△として評価した。
表1は、各処理条件での窒化処理鋼板の試験結果である。表1中、MHvは硬度、TSは引張強さ、ELは伸びを意味する。なお、いずれの鋼板においても、板厚中心の硬度と鋼板表面から板厚の10%の深さの部位における硬度の差は50以下であったことから各鋼板はいずれも板厚方向に内部まで均一に窒化されていると判断した。
図1は、含有窒素量が強度(TS)に及ぼす影響を示す図である。また、図2は、処理雰囲気中のアンモニアガスの含有量が窒化処理鋼板の化学組成に及ぼす影響を示す図である。図3は、靭性試験を行って変形させた後の鋼板B、C、及びDを観察した写真であり、(a)が鋼板B、(b)が鋼板C、及び(c)が鋼板Dである。
図1に示されるように、鋼板中の含有窒素量が多くなるほど引張強さが増加し、0.06%程度までは急激に強度が増加するが、それ以降は含有窒素量が増加してもそれほど大きく強度は増加せず、含有窒素量が0.08%を超えると、靭性が低下しはじめる。図3に示されるように、靭性の評価試験で、アンモニアガスの含有量が90%で窒化処理された鋼板C(図3(b))は、同量のアンモニアガス量で低温で窒化処理された鋼板D(同(c))よりも割れが少なかったが、アンモニアガスの含有量が50%で窒化処理された鋼板B(同(a))に比べて割れが大きくなる。このため、アンモニアガスの含有量の上限は90%未満に抑える必要がある。高強度と高靭性が両立する好ましい範囲の窒化量としては、図1の破線で示された含有窒素量が0.06〜0.08%の範囲となるように調整することが望まれる。
図2は、アンモニアガスの含有量と、窒素及び炭素の各含有量との関係を示す図である。図2に示されるように、含有窒素量を0.06%以上とするための混合ガス雰囲気中のアンモニアガスの含有量は38%程度であることが分かる。また、含有窒素量を0.08%とするための範囲はアンモニアガスの含有量が71%程度であることが分かる。さらに、アンモニアガスの含有量が45%以上、60%以下の場合、含有窒素量は0.064〜0.073%となり、この含有窒素量における窒化処理鋼板の強度は780MPaを超え、また靭性試験でも割れのない窒化処理鋼板が得られるため特に好ましい。
なお、図1に示されるように、570℃の窒化処理では、アンモニアガスの含有量を多くして長時間の窒化を行った場合、含有窒素量は増加するが、強度も高強度の780MPaレベルまで向上せず、靭性も改善できていない。
以上のことから、660℃の窒化温度において、アンモニアガスの含有量が増加するに従って含有窒素量が増加し、強度が向上することが分かる。そして、強度の向上により靭性が低下するため割れが発生しやすいが、本発明の処理条件によれば、低温での窒化量と同程度の窒化が行われているにも拘らず、靭性が向上できており、最適範囲で窒化が行われていることが分かる。
(試験例2)
試験例1の窒化処理条件において、アンモニアガスの含有量を50%に固定し、温度を640〜680℃の範囲で変更して、強度と靭性について同様に試験を行った。
試験例1の窒化処理条件において、アンモニアガスの含有量を50%に固定し、温度を640〜680℃の範囲で変更して、強度と靭性について同様に試験を行った。
表2は、各窒化処理条件の試験結果である。図4は、窒化温度が強度(TS)及び靭性に及ぼす影響を示す図である。なお、表2中の硬度(MHv)、強度(TS)、及び伸び(EL)は、試験例1と同様の方法で、靭性は、JIS13号B引張試験片で平行部の中央に深さ2mm、角度45度、R0.25の切欠きを形成した試験片を用いて切欠き引張試験を行ったときの全伸びで評価された。
図4に示されるように、靭性は窒化温度が高温になるに従って、略直線的に低下する。一方、強度は640℃と660℃の間で大きく変化するのに対し、660℃を超えると向上は見られないことが分かる。
このため、鋼板Bの窒化温度近辺の破線の範囲、655℃以上、665℃以下の窒化温度の範囲であれば、780MPaレベル以上の高い引張強さと、靭性のバランスが取れた窒化処理鋼板が得られる。
以上から、アンモニアガスの含有量が38%以上、90%未満、好ましくは38%以上、71%以下、より好ましくは45%以上、60%以下で、窒化温度が655℃以上、665℃以下の条件で窒化処理することにより、高強度と高靭性の両方を兼備した鋼板が得られることが確認された。
(試験例3)
次に、上記の条件で得られた窒化処理鋼板の焼入れ処理工程における焼入れ開始温度及びそのときの油槽温度の影響について検討した。試験用の窒化処理鋼板には、窒化温度660℃、アンモニアガスの含有量50%の条件で窒化処理されたものを660℃で1時間再加熱して用いた。
次に、上記の条件で得られた窒化処理鋼板の焼入れ処理工程における焼入れ開始温度及びそのときの油槽温度の影響について検討した。試験用の窒化処理鋼板には、窒化温度660℃、アンモニアガスの含有量50%の条件で窒化処理されたものを660℃で1時間再加熱して用いた。
図5は、各焼入れ処理の条件を示す図である。図5に示されるように、焼入れ開始温度は、660℃から、炉冷却を行って、640℃、620℃、600℃、580℃、550℃、及び500℃に変更し、油槽温度は、60℃、100℃、及び140℃に変更して、焼入れ処理後に170℃で30分間焼き戻しを行った。
図6は、焼入れ処理の条件が断面平均硬さ(MHv)に及ぼす影響を示す図であり、(a)は油槽温度が60℃の場合、(b)は油槽温度が100℃の場合、(c)は油槽温度が140℃の場合をそれぞれ示す。また、図7は、焼入れ処理後の窒化処理鋼板の金属組織を観察した光学顕微鏡写真であり、(a)は焼入れ開始温度が660℃で、油槽温度が60℃で処理された窒化処理鋼板の場合、(b)は焼入れ開始温度が500℃で、油槽温度が60℃で処理された窒化処理鋼板の場合である。
図6から分かるように、いずれの焼入れ開始温度及び油槽温度においても、再加熱後と、焼き戻し後とでは硬度に若干の差が見られるが、再加熱後、焼き戻し後いずれも、焼入れ開始温度による硬度差は小さいことが分かる。
しかしながら、組織としては、図7の光学顕微鏡写真に示されるように、焼入れ開始温度が660℃の場合には明確な窒化鉄は確認されなかったのに対して、焼入れ開始温度が500℃の場合には、結晶粒界に沿って粗大窒化鉄の析出が確認された。この粗大窒化鉄の析出は、焼入れ開始温度が580℃より低くなると現れる傾向が確認された。結晶粒界への粗大窒化鉄の析出は破壊起点となり、鋼板が脆化しやすい。
以上の結果から、本発明の窒化処理を行った後、焼入れ処理する場合、焼入れ開始温度を580℃以上とすることが好ましい。
Claims (5)
- 塑性加工が施された鋼材を、アンモニアガスの含有量が、38%以上、90%未満である混合ガス雰囲気下、655℃以上、665℃以下の窒化温度で窒化する窒化処理工程を有することを特徴とする窒化処理鋼材の製造方法。
- 前記混合ガス雰囲気中のアンモニアガスの含有量が、38%以上、71%以下であることを特徴とする請求項1に記載の窒化処理鋼材の製造方法。
- 前記混合ガス雰囲気中のアンモニアガスの含有量が、45%以上、60%以下であることを特徴とする請求項1に記載の窒化処理鋼材の製造方法。
- 前記窒化処理工程後に焼入れ処理工程を有し、前記焼入れ処理工程の焼入れ開始温度が、580℃以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化処理鋼材の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法によって製造される窒化処理鋼材。
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Cited By (2)
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CN102477525A (zh) * | 2010-11-25 | 2012-05-30 | 马建平 | 提高压裂车的阀箱、泥浆泵液缸使用寿命的方法 |
JP2013108145A (ja) * | 2011-11-22 | 2013-06-06 | Jtekt Corp | 摺動部材、クラッチプレートおよびそれらの製造方法 |
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