JP2007298160A - 高強度冠型保持器およびそれを用いた転がり軸受 - Google Patents

高強度冠型保持器およびそれを用いた転がり軸受 Download PDF

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健太郎 田中
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Abstract

【課題】 グリースや油などが使用できない特殊環境下で使用できる固体潤滑複合材料からなる冠型保持器を組み込んだ転がり軸受において、保持器が高強度を有し、破損することなく、長期間、安定した回転性能を維持することのできる転がり軸受を提供する。
【解決手段】 特殊環境下において潤滑性能に優れた固体潤滑剤と金属よりなる固体潤滑複合材料により作製された冠型保持器1の内部に、強度および靭性に優れた金属補強板材2を埋設して、冠型保持器を補強する。
【選択図】図1

Description

本発明は、固体潤滑複合材料製の冠型保持器およびそれを用いた転がり軸受に関する。
従来、グリースや油を使用することができない高温や溶液中などの特殊環境下で用いられる転がり軸受において、グラファイト、二硫化タングステンおよび六方晶窒化ホウ素(h−BN)などの固体潤滑剤を主成分とした固体潤滑複合材料によって作製された冠型保持器が採用されてきた(例えば、特許文献1、2)。しかし、固体潤滑剤の強度が低いため、冠型保持器自体の強度も低くなり、軸受の取付け時や使用中に保持器の薄肉部より割損することが多く、問題があった。
その対策として、転動体(ボール)間にスペーサーを挿入するセパレーター型保持器を用いることが提案されている(例えば、特許文献3、4)。
特開平10−298582号公報 特開2001−221235号公報 特開平8−4773号公報 特開2000−320548号公報
特許文献3に開示されているセパレーター形状は円柱状および鼓形状であり、これらが転がり軸受の内・外輪間の肩部により案内されるものであるが、転がり軸受の回転に伴い、全てのボールと全てのセパレーターが同一方向に回転するため、セパレーターがボールの回転動作を阻害し、転がり回転性能が低下する問題がある。
また、特許文献4に開示されているセパレーター形状は、角柱形状であり、回転動作がないため、ボールの回転動作を阻害しない設計になっている。しかし、冠型保持器形状は、転がり軸受の回転時には、内輪のみに案内されるのに対し、セパレーターを用いる場合は、各ボール間にセパレーターがそれぞれ装填され、回転時にはそれぞれのセパレーターが内・外輪に案内されるため、冠型保持器を用いる場合に比べて内外輪との接触面積が増加することになり、セパレーターの摩耗が促進される。
固体潤滑複合材料による潤滑機構は、冠型保持器またはセパレーターからそれらに接触するボール表面に固体潤滑剤皮膜が供給され、更にボールから内・外輪の軌道輪にもその潤滑剤が移着し、潤滑作用が生じるのが特徴である。その際、冠型保持器を用いる場合、ポールとの接触部は使用条件に左右されるものの多少の摩耗は生じるが、冠型保持器が一体物であるためボールの等配性は変わらない。しかし、セパレーターを用いる場合は、各セパレーターのボールとの接触部が摩耗することでボールとセパレーター間に隙間が生じ、ボールの等配性が悪化して軸受の精度が確保できなくなり、回転性能が低下してしまう問題がある。
このように、グリースや油を使用することができない特殊環境下においては、固体潤滑複合材料による潤滑は必要不可欠であるが、材料自体が脆弱であるが故に、上記のように冠型保持器をセパレーターに代えるなどの設計変更が余儀なくされているが、本来の回転性能が十分発揮できていないのが実情である。
これらの問題を解決するため、本発明は、脆弱な固体潤滑複合材料を用いても、割損することなく、長期間、安定した回転性能を発揮する転がり軸受用冠型保持器およびそれを用いた転がり軸受の提供を目的としている。
上記の目的を達成するため、本発明の転がり軸受用冠型保持器は、固体潤滑複合材料により作製されているが、該冠型保持器の内部に、金属または合金の補強材を埋設するものである。
本発明の冠型保持器に用いられる固体潤滑複合材料は、材質的に限定されるものではないが、例えば、グラファイト、二硫化タングステンおよびh−BNなどから選ばれる1種または2種以上の固体潤滑剤とNi、Cu、Wなどの金属または合金との焼結材料が挙げられる。また、冠型保持器の内部に埋設される補強材も、材質的に限定されるものではないが、例として、鉄、ステンレス、Cu、Niなどが挙げられる。
冠型保持器の内部に埋設される補強材の形状は、図1に示すようにリング板状が好ましく、埋設する個数は1枚以上とする。補強材の形状は図2に例示するようにリング板状補強材に更に骨組みを付加した形状などでもよい。
本発明によれば、冠型保持器に脆弱な固体潤滑材料を用いても、該保持器が破損することなく、長期間、安定した回転性能を維持できる転がり軸受が得られる。
これまで、グリースや油が使用できない特殊環境下では、固体潤滑複合材料を用いた転がり軸受は優れた特性を示すことが確認されていたが、強度面で冠型保持器を採用できなかった実情がある。本発明により、この問題が解決され、従来品より安定した高回転性能を有する転がり軸受を得ることが可能となる。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照し説明する。
図1は、本発明に係るリング板状の補強材と冠型保持器を個別に示した斜視図(a)およびそれを埋設した冠型保持器の斜視図(b)である。図3はリング板状の補強材を埋設した冠型保持器の正面図(a)およびそのX−X断面図(b)である。
冠型保持器1は、その材質が、グラファイト、二硫化タングステンおよびh−BNなどを主成分とする固体潤滑剤とNi、Cu、Wなどの金属または合金との焼結体である固体潤滑複合材料により作製され、その内部に、リング状の金属補強板材2が埋設されている。
その製造方法は、以下のようにすればよい。すなわち、プレス金型に冠型保持器1(例えば、外径φ51.0mm、内径φ41.0mm、高さ13.0mm)を作製するのに必要な固体潤滑複合材料の粉末を充填し、その後、金属補強板材2(例えば、外径φ45.5mm、内径φ41.5mm、厚み0.5mm)をその粉末の上に置く。次に、手動にて金属補強板材2を粉末内部まで押し込み、成形圧500MPaで成形を行う。その後、真空焼結炉を用いて非酸化性雰囲気で1000〜1200℃の温度で焼結を行い、固体潤滑複合材料と金属補強板材2とが密着される。また、その際、材料自体の収縮率を考慮することで、冠型保持器の製品寸法内にいれることが可能となる。
このような構成にした冠型保持器に対して、図4に示すように冠型保持器1を設置し、上方からロードセルにより圧縮し、冠型保持器1の破壊荷重を測定した結果を表1に示す。
Figure 2007298160
表1において、本発明品1、2は、グラファイト(C)およびh−BNの2種類の固体潤滑剤(それぞれC:45体積%、h−BN:5体積%およびC:55体積%、h−BN:5体積%)とNi系合金からなる固体潤滑複合材料を用い、金属補強板材2としてSUS304製のリング板を埋設したものである。一方、比較品1、2は、金属補強板材2が埋設されていないものである。本発明品と比較品を比較すると、金属板で補強することより破壊強度が大幅に向上することが分かる。また、今まで固体潤滑剤添加量を合計60体積%とした比較品2は、潤滑性能に優れているが強度不足のため使用しにくいとされていたが、本発明品2のように金属補強板材2が埋設されたことで、約200%破壊強度が向上する。
また、破壊試験後の保持器の状態は、金属補強板材2を埋設していない保持器は複数個の破片となるのに対し、金属補強板材2を埋設した保持器は、破壊荷重に達しても座屈するのみで割損しないことが分かった。また、万が一固体潤滑複合材料が破壊しても、固体潤滑複合材料と金属補強板材2は焼結により密着されているため、固体潤滑複合材料が剥落しにくく、それによる回転性能低下の影響は少ない。
本発明の一事例に係るリング状板材と冠型保持器の斜視図(a)およびリング状板材を埋設した高強度冠型保持器の斜視図(b)である。 本発明の一事例に係る骨組みを付加したリング状板材と冠型保持器の斜視図(a)および骨組みを付加したリング状板材を埋設した高強度冠型保持器の斜視図(b)である。 本発明のリング状板材を埋設した高強度冠型保持器の正面図(a)および断面図(b)である。 保持器の破壊強度を試験評価するための方法を示す図である。
符号の説明
1 冠型保持器
2 金属補強材
P 荷重

Claims (2)

  1. グラファイト、二硫化タングステンおよび六方晶窒化ホウ素などを主成分とする固体潤滑剤と金属または合金とよりなる固体潤滑複合材料で作製された冠型保持器の内部に、金属の補強材を埋設することを特徴とする転がり軸受用冠型保持器。
  2. 請求項1に記載の冠型保持器を組込んだ転がり軸受。
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