JP2007296725A - 導電性射出成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】極細導電繊維を含有する熱可塑性樹脂組成物を通常の射出成形条件で成形しても、良好な表面抵抗率を有する導電性射出成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物を成形金型46内に射出して得た射出体4を、成形金型46内に保持したまま保温し続け、その後、冷却して取出す。保温することにより、極細導電繊維は射出体4の表面に露出するか又はその表面から100nm未満の内部に含有されて導電層を形成でき、導電性射出成形体となすことができる。この保温は、前記組成物がそのガラス転移温度の温度から融点温度よりも30℃高い温度の温度範囲及び/又は粘度が5.0×103Pa・s以上1.0×107Pa・s未満の範囲となるようになされる。
【選択図】図3
【解決手段】極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物を成形金型46内に射出して得た射出体4を、成形金型46内に保持したまま保温し続け、その後、冷却して取出す。保温することにより、極細導電繊維は射出体4の表面に露出するか又はその表面から100nm未満の内部に含有されて導電層を形成でき、導電性射出成形体となすことができる。この保温は、前記組成物がそのガラス転移温度の温度から融点温度よりも30℃高い温度の温度範囲及び/又は粘度が5.0×103Pa・s以上1.0×107Pa・s未満の範囲となるようになされる。
【選択図】図3
Description
本発明は、カーボンナノチューブなどの極細導電繊維を含有する導電層を形成した導電性射出成形体の製造方法に関する。
従来より、ICチップ、ハードディスクなどの電子部品やシリコンウェハや半導体などを搬送するトレー、ICソケット、コネクタ、ウェハピンセットなどは、静電気を帯びると電気破壊を起こすことが問題となっている。この静電気による電気破壊を防止するために、カーボンブラックやケッチェンブラックやアセチレンブラックなどを添加した樹脂組成物を用いた制電性成形体を用いている。
また、最近はカーボンナノチューブを用いて制電性ないし導電性を付与した成形体も開発されていて、カーボンナノチューブと熱可塑性樹脂との混合組成物を射出成形して101〜109Ω/□の表面抵抗値を有する導電性材料も知られている(特許文献1)。
特開2003−100147号公報
また、最近はカーボンナノチューブを用いて制電性ないし導電性を付与した成形体も開発されていて、カーボンナノチューブと熱可塑性樹脂との混合組成物を射出成形して101〜109Ω/□の表面抵抗値を有する導電性材料も知られている(特許文献1)。
しかしながら、上記カーボンブラックなどを含有する成形体は、その分散性が悪くて均一な制電機能を発揮させることができないし、導電性を得るためにはカーボンブラックなどを多量に含有させる必要があった。さらに、カーボンブラックなどが脱落する恐れがあり、この脱落したカーボンブラックなどが付着して電子部品などが損傷するという問題もあった。
一方、上記特許文献1の導電性材料は、その成形前の混合組成物を通常の加熱温度よりも20〜100℃高く加熱して低速度で射出することで導電性を得ることが可能であるとしているが、導電性を充分に発揮させることができないし、過熱により樹脂が劣化・分解するという問題もあった。
一方、上記特許文献1の導電性材料は、その成形前の混合組成物を通常の加熱温度よりも20〜100℃高く加熱して低速度で射出することで導電性を得ることが可能であるとしているが、導電性を充分に発揮させることができないし、過熱により樹脂が劣化・分解するという問題もあった。
本発明は上記の問題に対処するためになされたもので、その目的とするところは、カーボンナノチューブなどの極細導電繊維を含有する樹脂組成物を用いて、充分に導電性を発揮できる導電性射出成形体の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の第1の導電性射出成形体の製造方法は、射出成形により導電性射出成形体を製造する方法であって、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物を成形金型内に射出して射出体となし、該射出体を成形金型内に保持したまま保温して、該射出体に含有される極細導電繊維を射出体の表面に露出させるか、又はその表面から100nm未満の内部に含有させて、表面抵抗率を低下させた導電層を形成した導電性射出体となした後に、該成形金型を冷却して導電性射出成形体を取出すことを特徴とするものである。
本発明の第2の導電性射出成形体の製造方法は、射出成形により導電性射出成形体を製造する方法であって、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物を成形金型内に射出した後に、さらに合成樹脂を前記成形金型内に射出して、合成樹脂からなる基材層に極細導電繊維含有熱可塑性樹脂からなる表面層を積層するか又は前記基材層の周りを前記表面層で覆った射出体となし、該射出体を成形金型に保持したまま保温して、前記表面層に含有される極細導電繊維を射出体の表面に露出させるか、又はその表面から100nm未満の内部に含有させて、表面抵抗率を低下させた導電層を形成した導電性射出体となした後に、該成形金型を冷却して導電性射出成形体を取出すことを特徴とするものである。
本発明の第3の導電性射出成形体の製造方法は、射出成形により導電性射出成形体を製造する方法であって、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物からなる表面層が形成された転写フィルム若しくはラミネート用フィルム、又は極細導電繊維を含有するラミネート用フィルムを予め作製し、前記転写フィルム又はラミネート用フィルムを成形金型内に配置した後に、その金型内に合成樹脂を射出して前記フィルムが表面に積層された射出体となし、該射出体を成形金型内に保持したまま保温して、前記フィルムの表面層に含有される極細導電繊維を射出体の表面に露出させるか、又はその表面から100nm未満の内部に含有させて、表面抵抗率を低下させた導電性射出体となした後に、該成形金型を冷却して導電性射出成形体を取出すことを特徴とするものである。
本発明の第4の導電性射出成形体の製造方法は、射出成形により導電性射出成形体を製造する方法であって、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物からなる塗液を予め作製し、該塗液を成形金型内に塗布して塗膜を形成した後に、その成形金型内に合成樹脂を射出して前記塗膜が表面に転写されて表面層となされた射出体となし、該射出体を成形金型内に保持したまま保温して、前記表面層に含有される極細導電繊維を射出体の表面に露出させるか、又はその表面から100nm未満の内部に含有させて、表面抵抗率を低下させた導電性射出体とした後に、該成形金型を冷却して導電性射出成形体を取出すことを特徴とするものである。
上記の各製造方法において、保温が極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度の温度から融点温度より30℃高い温度の温度範囲で1〜20分間行なわれること、上記保温が極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物の粘度が5.0×103Pa・s以上1.0×107Pa・s未満の範囲で行われることが好ましい。また、保温により成形体の少なくとも表面に、表面抵抗率を低下させた導電層が形成されることも好ましい。また、上記冷却が、冷却中の平均冷却速度が30℃/分未満で行なわれることが好ましい。また、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物に含有される極細導電繊維がカーボンナノチューブであって、該カーボンナノチューブが前記組成物に0.01〜12.0質量%含有され、導電性射出成形体の表面抵抗率が101Ω/□以上1012Ω/□未満であることも好ましい。
本発明において、「表面抵抗率を低下させた導電層」又は「表面抵抗率が低下した導電層」とは、保温前の射出成形体の表面抵抗率が1012Ω/□以上であれば、これを1012Ω/□未満の表面抵抗率に低下させることを意味し、射出成形体の表面抵抗率が1012Ω/□未満であれば、これをさらに低下させた表面抵抗率となすことを意味する。
また、極細導電繊維は、溶融成形体の表面全体に露出した状態、又は表面から100nm未満の内部に含有されている状態になっている場合の他に、溶融成形体の表面の部位により上記の状態が異なり上記2つの状態が混在した状態になっている場合も含まれる。
さらに、加熱により、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物が上記ガラス転移温度の温度から融点温度よりも30℃高い温度の温度範囲になされると、その粘度は上記範囲内になる場合が多く該場合は両範囲が一部で一致するが、異なる場合はいずれの範囲となるように加熱すればよい。
また、極細導電繊維は、溶融成形体の表面全体に露出した状態、又は表面から100nm未満の内部に含有されている状態になっている場合の他に、溶融成形体の表面の部位により上記の状態が異なり上記2つの状態が混在した状態になっている場合も含まれる。
さらに、加熱により、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物が上記ガラス転移温度の温度から融点温度よりも30℃高い温度の温度範囲になされると、その粘度は上記範囲内になる場合が多く該場合は両範囲が一部で一致するが、異なる場合はいずれの範囲となるように加熱すればよい。
なお、上記極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度と融点は、該組成物の示差走査熱量を測定することにより求めることができ、ガラス転移温度は、転移前の基線の直線部分と転移領域の変曲点の接線を外挿して得られる交点の温度を示し、融点は、融解ピークの両側の最大傾斜の点で引いた接線の交点の温度を示す。
また、上記粘度は、動的粘弾性測定装置にて剪断速度1sec-1の剪断速度で得られた粘度を示す。
上記の融点は、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物に使用される樹脂が結晶性であれば上記示差走査熱量を測定することで求めることができるが、非晶性であれば示差走査熱量で測定することができないので、上記粘度となるように加熱すればよい。
また、上記粘度は、動的粘弾性測定装置にて剪断速度1sec-1の剪断速度で得られた粘度を示す。
上記の融点は、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物に使用される樹脂が結晶性であれば上記示差走査熱量を測定することで求めることができるが、非晶性であれば示差走査熱量で測定することができないので、上記粘度となるように加熱すればよい。
本発明の第1の導電性射出成形体の製造方法は、射出された射出体が成形金型内に保持されたまま保温されるので、この射出体に含有されている極細導電繊維が表面に露出するか、又は表面から100nm未満の内部に含有されるようにランダムに三次元方向に動き、これら同士の接触が行なわれると共に、露出した極細導電繊維により表面の導通がなされるし、また、100nm未満の内部に含有された極細導電繊維により表面に帯電した静電気や印加電荷をトンネル効果により該内部の極細導電繊維にまで伝えることができて、少なくとも表面部分に表面抵抗率を低下させた導電層を形成できるのであり、該導電層により表面抵抗率を良好にできて制電機能や導電機能を発揮する導電性射出成形体を製造することができる。
この極細導電繊維が、保温により表面に露出するか又は表面から100nm未満の内部に含有されるように動く理由は、現時点では定かでないが、出願人は次のように推測している。即ち、射出成形された射出体の表面近傍に含まれている極細導電繊維は、射出成形時にノズルやゲートや成形金型などから剪断力を受けて成形流れに沿って強制的に配列・配向させられるために歪を有して含有されている。そのために、該射出体に含有される極細導電繊維の含有量が少ないか又は/及び分散が悪いと、該繊維同士の接触が余り得られず1012Ω/□以上の表面抵抗率を示す。しかし、極細導電繊維の含有量が多いか又は/及び分散が良好であると、歪を有した状態で配列・配向しても該繊維同士の接触がある程度得られて、1012Ω/□未満の表面抵抗率を示す。
そして、このような射出体を保温すると、極細導電繊維が前記歪を解消しようとして、保温されて軟化した組成物に抗して、ランダムに3次元的方向に動いて無配向状態となり、近接して含有されていた極細導電繊維同士がお互いに接触する機会が著しく増加すると共に、動きを抑制する軟化樹脂組成物量が少ない表面方向に動いて、表面まで動いた極細導電繊維は成形金型面に突き当たって、それ以上は動くことができずに表面に露出することとなるし、また、表面に露出するまでは動かないが、表面から100nm未満の内部まで動いて歪が解消されると該場所で動きを止めて、表面から100nm未満の内部に含有されると推測している。
また、特開2004−339484などにも知られるように極細導電繊維は、非晶性樹脂の結晶促進剤ともなり得る。これらの結晶は、極細導電繊維の近傍から発生することが知られており、この微結晶成長に伴い、極細導電繊維が動き導電性を向上させるとも思われる。
また、特開2004−339484などにも知られるように極細導電繊維は、非晶性樹脂の結晶促進剤ともなり得る。これらの結晶は、極細導電繊維の近傍から発生することが知られており、この微結晶成長に伴い、極細導電繊維が動き導電性を向上させるとも思われる。
そのため、射出体を保温せずに取出した射出成形体が1012Ω/□以上の表面抵抗率を示しても、射出体を保温した後に取出すことにより1012Ω/□未満の表面抵抗率を有する射出成形体とすることができる。また、保温しないで取出した射出成形体が1012Ω/□未満の表面抵抗率を示しても、該射出体を保温することにより、さらに表面抵抗率を低下させた射出成形体とすることが可能となる。この保温による表面抵抗率の低下は、保温しなかった場合の表面抵抗率より1桁乃至12桁低下した表面抵抗率とすることができる。具体的には、例えば、表面抵抗率が保温しなかつた場合に1013Ω/□であるとすれば、保温することにより1012Ω/□乃至101Ω/□に低下する。
そして、極細導電繊維が上記の状態で固定されるとお互いが接触し、表面に露出すれば直接導通するし、表面から100nm未満の内部に含有されていればトンネル効果で導通するので、該部分に表面抵抗率を低下させた導電層が形成されて、表面抵抗率を良好にすることができる。そのために、射出成形体が、保温前は1012Ω/□以上の表面抵抗率を示すのであれば1012Ω/□未満の表面抵抗率の導電層が、また保温前に1012Ω/□未満の表面抵抗率であれば更に低下した表面抵抗率の導電層が形成された導電性射出成形体とすることができる。
また、内部まで加熱されて、該内部樹脂組成物も軟化すると、内部の極細導電繊維も同様な歪を有しているので、該内部でもランダムな三次元方向に動いてお互いが接触して導通路を形成して表面抵抗率が低下し、導電性を発揮する。そのために、表面抵抗率のみならず、体積抵抗率も良好にならしめることができる。
また、内部まで加熱されて、該内部樹脂組成物も軟化すると、内部の極細導電繊維も同様な歪を有しているので、該内部でもランダムな三次元方向に動いてお互いが接触して導通路を形成して表面抵抗率が低下し、導電性を発揮する。そのために、表面抵抗率のみならず、体積抵抗率も良好にならしめることができる。
このように、上記保温は、極細導電繊維が動くことができる状態に樹脂組成物を軟化させる必要があるので、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度の温度から融点より30℃高い温度の温度範囲で1〜20分間保温を行なうことが好ましいのである。また、上記保温により極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物の粘度が5.0×103Pa・s以上1.0×107Pa・s未満の範囲とすることも好ましく、このような低粘度であると、極細導電繊維が低下した組成物中を動くことができるようになる。
特に、前記組成物の融点より30℃低い温度から融点温度より30℃高い温度の温度範囲及び/又は粘度が1.0×104Pa・s以上5.0×106Pa・s未満の範囲となるようにすると、極細導電繊維の動きを良好に行なわせることができるので、該極細導電繊維が露出又は100nm未満の内部に含有され易くなって、表面抵抗率を充分に低下させた導電層を形成でき、制電機能や導電機能を発揮する導電性射出成形体とすることができる。
また、射出体は、それが保温されている間は成形金型内に保持されているので、射出体が保温により軟化して変形するのを防止でき、良好な外観を有する導電性射出成形体を取出すことができる。特に、極細導電繊維の動きを良くするために、融点温度より30℃低い温度から融点温度より30℃高い温度の温度範囲で、及び/又は粘度が5.0×103Pa・s以上1.0×107Pa・s未満の範囲で行われる場合は、射出体に変形が生じる可能性が高いが、成形金型内に保持されていることにより変形を防止できて、外観の良好な制電ないし導電機能を有する導電性射出成形体を得ることができる。
このようにして、極細導電繊維が露出又は100nm未満の内部に含有されて表面抵抗率が低下した導電層を形成すると、該極細導電繊維が導電性射出成形体内部に含有される極細導電繊維とも接触して、導電路を良好に形成できる。そのため、導電性射出成形体の表面抵抗率は、保温されることにより保温前よりも低下して、より低抵抗の導電性射出成形体とすることができる。そして、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物中に極細導電繊維としてのカーボンナノチューブが0.01〜12.0質量%含有されていれば、該カーボンナノチューブが長くて細いので、保温による動きも良好で、お互いの接触が容易に行なわれ、その表面抵抗率を101Ω/□以上1012Ω/□未満にすることができる。
本発明の第2の導電性射出成形体の製造方法は、合成樹脂よりなる基材層に極細導電繊維含有熱可塑性樹脂よりなる表面層が積層された射出体又は前記基材層の周りを前記表面層で覆った射出体を成形金型内に保持したまま保温されるので、表面層に含有されている極細導電繊維が、前記と同様に、表面に露出するか又は表面から100nm未満の内部に含有されるようにランダムに三次元方向に動き、これら同士の接触が行なわれると共に、露出した極細導電繊維により表面の導通がなされるし、また、100nm未満の内部に含有された極細導電繊維のトンネル効果により、少なくとも表面部分に表面抵抗率を低下させた導電層が形成され、制電機能や導電機能を発揮する導電性射出成形体を製造することができる。
該射出体の表面層は、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物が高速で射出・充填されて、基材層よりも強い剪断力を受けて、極細導電繊維が成形流れ方向に強く配列・配向する。そのため、極細導電繊維の含有量が少ないか又は/及び分散が悪いと、該繊維同士の接触が余り得られず1012Ω/□以上の表面抵抗率を示す。しかし、極細導電繊維の含有量が多いか又は/及び分散が良好であると、歪を有した状態で配列・配向しても該繊維同士の接触がある程度得られて、1012Ω/□未満の表面抵抗率を示す。そして、このような射出体を成形金型内に保持したまま保温すると、強く配列・配向し歪を有していた極細導電繊維が、前記と同様に、ランダムに三次元方向に動いて無配向状態となってお互いが接触して、射出体が保温前は1012Ω/□以上の表面抵抗率であれば1012Ω/□未満の表面抵抗率の導電層が、加熱前に1012Ω/□未満の表面抵抗率であれば更に低下した表面抵抗率の導電層が形成されるのである。特に、表面層の極細導電繊維は強く配列・配向している分だけ、歪を解消として動く力も強くて容易に露出又は100nm未満の内部に含有された状態になる。
一方、基材層は、導電性射出成形体に必要な機械的強度などの諸機能を付与できるし、導電性射出成形体に含有される極細導電繊維量を少なくできるので、安価な導電性射出成形体を提供することもできる。
本発明の第3の導電性射出成形体の製造方法は、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物からなる表面層が形成された転写フィルム若しくはラミネート用フィルム、又は極細導電繊維を含有するラミネート用フィルムが積層された射出体を成形金型内に保持したまま保温されるので、フィルムの表面層に又はフィルム自体に含有されている極細導電繊維が、前記と同様に、表面に露出するか、又は表面から100nm未満の内部に含有されるようにランダムに三次元方向に動いて、これら同士の接触が行なわれると共に露出した極細導電繊維により表面の導通がなされるし、また、100nm未満の内部に含有された極細導電繊維のトンネル効果により、少なくとも表面部分に表面抵抗率を低下させた導電層が形成でき、制電機能や導電機能を発揮する導電性射出成形体を製造することができる。
この射出体に積層された転写フィルム又はラミネート用フィルムは、表面層が塗布などで形成される際に塗布方向に配列・配向して歪を有した状態で含有されるし、ラミネート用フィルムの作製時に押出方向などに力を受けて配列・配向して歪を有した状態で含有され、極細導電繊維の含有量が少ないか又は/及び分散が悪いと1012Ω/□以上の表面抵抗率を示し、極細導電繊維の含有量が多いか又は/及び分散が良好であると1012Ω/□未満の表面抵抗率を示す各フィルムとなる。そして、このフィルムが積層された射出体を成形金型内に保持されたまま保温されると、配列・配向し歪を有した極細導電繊維がランダムに三次元方向動いて無配向状態となってお互いが接触して、表面抵抗率を低下させた導電層が形成され、制電ないし導電機能を発揮する導電性射出成形体を製造することができる。
本発明の第4の導電性射出成形体の製造方法は、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物からなる塗膜が転写されて表面層が形成された射出体が成形金型内に保持したまま保温されるので、表面層に含有されている極細導電繊維が、前記と同様に、表面に露出するか、又は表面から100nm未満の内部に含有されるようにランダムに三次元方向に動いて、これら同士の接触が行なわれると共に露出した極細導電繊維により表面の導通がなされるし、また、100nm未満の内部に含有された極細導電繊維のトンネル効果により、少なくとも表面部分に表面抵抗率を低下させた導電層が形成でき、制電機能や導電機能を発揮する導電性射出成形体を製造することができる。
この射出体に転写されて形成された表面層は、この表面層が塗液の塗布時に塗布方向に配列・配向して歪を有した状態で含有され、極細導電繊維の含有量が少ないか又は/及び分散が悪いと1012Ω/□以上の表面抵抗率を示し、極細導電繊維の含有量が多いか又は/及び分散が良好であると1012Ω/□未満の表面抵抗率を示すこととなる。そして、この表面層を有する射出体を成形金型内に保持されたまま保温されるので、配列・配向し歪を有している極細導電繊維がランダムに三次元方向動いて表面抵抗率を低下させた導電層が形成されるのである。
上記の各製造方法において、各射出体を成形金型内に保持したまま冷却する速度を、30℃/分未満の平均冷却速度で行うと、表面に露出するか又は表面から100nm未満の内部に含有された極細導電繊維が、その状態を保ったまま固定されて導電路を維持できる。平均冷却速度が30℃/分以上であると、極細導電繊維2同士の接触がない状態で急冷されるため、接触頻度が減少して、制電ないし導電機能を良好に発揮できなくなるという問題が発生して好ましくない。
なお、上記平均冷却速度は、射出された射出体を金型内で保持するための保温開始時の樹脂温度と導電性射出成形体を取出した直後の該成形体の表面温度との温度差を、冷却するに要した時間で除した値である。
なお、上記平均冷却速度は、射出された射出体を金型内で保持するための保温開始時の樹脂温度と導電性射出成形体を取出した直後の該成形体の表面温度との温度差を、冷却するに要した時間で除した値である。
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は本発明の製造方法で作製された導電性射出成形体を示す断面図、図2はその拡大断面図、図3は本発明の導電性射出成形体の製造方法を示す説明図である。
本発明の製造方法を説明するにあたり、まず、本製造方法により作製された導電性射出成形体Aを図1、図2に基づいて説明する。
図1に示す導電性射出成形体Aは、電子部品などを搬送する導電性トレーであって、該導電性射出成形体Aは極細導電繊維を含有する樹脂組成物の単一層からなり、平面視略矩形形状をなして、その中央部を凹ませて電子部品などを収容する収納部A1となすと共に、周囲を鍔A2となしたものである。この導電性トレー成形体Aの肉厚は0.3〜3.0mmで、大きさは500×500mmとなされている。
図1に示す導電性射出成形体Aは、電子部品などを搬送する導電性トレーであって、該導電性射出成形体Aは極細導電繊維を含有する樹脂組成物の単一層からなり、平面視略矩形形状をなして、その中央部を凹ませて電子部品などを収容する収納部A1となすと共に、周囲を鍔A2となしたものである。この導電性トレー成形体Aの肉厚は0.3〜3.0mmで、大きさは500×500mmとなされている。
なお、A3は樹脂フィルムからなる蓋体であるが、この蓋体A3も本発明で得られる導電性射出成形体で作製することもできる。
また、導電性射出成形体Aの形状や厚みが限定されないことは言うまでもないが、厚みは通常は0.1〜30.0mm程度にて使用される。
また、導電性射出成形体Aの形状や厚みが限定されないことは言うまでもないが、厚みは通常は0.1〜30.0mm程度にて使用される。
この導電性トレーである導電性射出成形体Aは、熱可塑性合成樹脂に、射出成形に必要な公知の添加剤を加えると共に極細導電繊維2を添加した極細導電繊維含有熱可塑性合成樹脂組成物を用いて、射出成形法にて成形された導電層1からなるものである。
上記熱可塑性合成樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアセテート、ポリスチレン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート、結晶性/非晶質ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリブチレンテレフタレート、芳香族ポリエステル等のエステル系樹脂、ABS樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリアセタール、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ボリスチレン、ポリアミド、液晶ポリマー、トリアセチルセルロース、これらの樹脂の共重合体樹脂などの熱可塑性樹脂、又はこれらの樹脂が混合された混合樹脂などが用いられる。また、これらの樹脂に加えられる添加剤としては、抗酸化剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、抗菌剤、難燃剤、顔料 、染料などの各樹脂に一般に使用されるものが使用される。
上記極細導電繊維2としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノワイヤー、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリルなどの極細長炭素繊維、白金、金、銀、ニッケル、シリコンなどの金属ナノチューブ、金属ナノワイヤーなどの極細長金属繊維、酸化亜鉛などの金属酸化物ナノチューブ、金属酸化物ナノワイヤーなどの金属酸化物などの極細長金属酸化物繊維などの、直径が0.3〜100nmで、長さが0.1〜20μm、好ましくは長さが0.1〜10μmの各繊維が用いられる。これらの極細導電繊維2は均一に凝集することなく分散されて、お互いに接触して導電層1のなかに含まれていることが好ましい。
これらの極細導電繊維2のなかで、極細長炭素繊維が好ましく、特にカーボンナノチューブが最も好ましく用いられる。該カーボンナノチューブは繊維直径が0.3〜80nmと細いので、凝集することなく分散して互いに接触させることができるので望ましのである。このカーボンナノチューブには、中心軸線の周りに直径が異なり円筒状に閉じた複数のカーボン壁を同心的に備えた多層カーボンナノチューブや、中心軸線の周りに単層の円筒状に閉じたカーボン壁を備えた単層カーボンナノチューブがあるが、いずれのカーボンナノチューブも好ましく用いられる。そして、多層カーボンナノチューブは1本ずつ分散させることができるが、単層カーボンナノチューブは現時点では1束ずつではなく複数本が集まって束になったものを1束ずつ分散させることができ、このように分散させることが最も好ましい。なお、単層カーボンナノチューブが1本ずつ分離して分散したものを除外するものではない。
これらの極細導電繊維は、導電層1の中に0.01〜20質量%、好ましくは0.01〜12.0質量%、更に好ましくは0.1〜5.0質量%含有されて、均一に分散されている。極細導電繊維の含有量が多くなると、成形性や機械的強度が悪くなり、またコストも高くなる。そのため、出来るだけ分散を良くして、少ない含有量で表面抵抗率を良好にすることが好ましく、極細導電繊維がカーボンナノチューブであれば0.01〜12.0質量%含有させることが望ましい。特に、上記単層カーボンナノチューブであれば0.01〜8.0質量%、多層カーボンナノチューブであれば0.01〜12.0質量%含有させることが望ましい。
上記極細導電繊維2は、図2(1)(2)の拡大断面図で示すように、導電層1の内部ではランダムに均一に分散してお互いが三次元方向に向いてお互いが接触し導通して導電層1を形成している場合と、図2(3)(4)の拡大断面図で示すように、導電層1の内部では成形流れ方向に配列・配向しお互いの接触が少なくて1012Ω/□以上の表面抵抗率しか有さずに導電層を形成していない場合と、図2(5)(6)の拡大断面図で示すように、導電層1の内部では配列・配向しているが或る程度接触が得られて1012Ω/□未満の表面抵抗率を有している場合とがある。
しかし、導電層1の表面及び/又は表面近傍では、内部とは異なり、いずれの場合であっても、図2(1)(3)(5)に示すように、導電層1の表面にランダムに露出しているか、又は図2(2)(4)(6)に示すように、導電層1の表面に露出していないが表面から100nm未満の内部に含有され、換言すれば表面から100nm未満の深さtには極細導電繊維が含有されずに樹脂層となっているかの、何れかの状態で分散している。即ち、表面近傍の極細導電繊維2の端部又は中間部が配列・配向することなくランダムに三次元的に分散して湾曲して、表面に露出又は100nm未満の内部に含有され、他の部分が導電層1の内部に埋没して固定されていると共に内部の極細導電繊維2と接触して導電路を形成している。
そして、図2(1)(2)の状態であると、表面抵抗率が低下した導電層1が全厚さに形成されて表面抵抗率も体積抵抗率も良好にすることができ、図2(3)(4)の状態であると、表面抵抗率が低下した導電層1が表面及び/又は表面近傍に形成されて表面抵抗率を良好にすることができ、図2(5)(6)の状態であると、表面に表面抵抗率の低下した導電層1が形成され、内部は射出成形体の抵抗率を有したものとなり、表面抵抗率を良好にできるし、体積抵抗率もある程度良好にできる。
このように極細導電繊維2を分散させて良好な導電路を形成させるためには、その分散度を高め、接触頻度を高めることが好ましい。そのために、各極細導電繊維2が絡み合うことなく1本ずつ分離した状態で、又は、複数本集まって束になったものが1束ずつ分離した状態で導電層1に均一に分散させることが望ましく、このように分散させると、少ない含有量であっても、広い範囲に極細導電繊維2が分散して存在し、お互いが接触し易くなる。そのために、極細導電繊維2の含有量を0.01〜20.0質量%、好ましくは0.01〜12.0質量%とすることで、お互いが接触して充分な導電路が形成される。
この導電性射出成形体Aのように、極細導電繊維2が導電層1の表面にランダムな状態で露出したり、又は表面から100nm未満の内部にランダムな状態で含有されていると、その表面抵抗率を低下させて101Ω/□以上1012Ω/□未満とすることができる。表面抵抗率が105Ω/□以上1012Ω/□未満であると制電機能を発揮し、表面に帯電した静電気は露出している極細導電繊維2に接触し、表面及び/又は内部の極細導電繊維同士が接触して形成された導電路を流れて導電層1の端部にまで達し、該端部で放電して除電することができる。また、表面抵抗率が101Ω/□以上105Ω/□未満であると導電体としての作用をなし、電気を流すことができるようになる。また、極細導電繊維2が表面から100nm未満の内部に含有されていると、トンネル効果により表面に帯電した静電気が表面内部の該極細導電繊維2にまで達して制電機能を発揮するし、電気が通電されるとトンネル効果で同様に内部の該極細導電繊維にまで通電して導電層1を流れて、導電体としての作用を発揮するのである。
このような導電性射出成形体Aは、例えば図3に示す本発明の製造方法により製造することができる。
まず、予め、熱可塑性樹脂と極細導電繊維2と、必要なら射出成形に必要な添加剤とを、均一に混合して極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物を作製する。
まず、予め、熱可塑性樹脂と極細導電繊維2と、必要なら射出成形に必要な添加剤とを、均一に混合して極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物を作製する。
そして、図3に示すように、該極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物を射出成形機に供して射出し、射出体4を作製する。
即ち、射出成形機41に前記極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物を供し、スクリュー42で可塑化・溶融し、ノズル43、スプルー流路44、ゲート45を通して成形金型46の成形空間47に射出し、該空間47を充填することで射出体4となし、しかる後に、該射出体4を成形金型46から取り出すことなく、成形金型46内に保持したまま保温することで、表面抵抗率を低下させた導電層1を形成した導電性射出体とした後に、冷却して導電性射出成形体となし、これを取出すことにより、導電性射出成形体Aを製造することができる。
即ち、射出成形機41に前記極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物を供し、スクリュー42で可塑化・溶融し、ノズル43、スプルー流路44、ゲート45を通して成形金型46の成形空間47に射出し、該空間47を充填することで射出体4となし、しかる後に、該射出体4を成形金型46から取り出すことなく、成形金型46内に保持したまま保温することで、表面抵抗率を低下させた導電層1を形成した導電性射出体とした後に、冷却して導電性射出成形体となし、これを取出すことにより、導電性射出成形体Aを製造することができる。
前記射出成形された状態の射出体4は、上記組成物が射出成形機41のノズル43やスプルー流路44やゲート45を高速で通過し、成形金型46の比較的狭い成形空間47を流れて充填されるので、ノズル面やスプルー流路面やゲート面や成形空間面から強い剪断力を受けて成形流れ方向に力を受け、極細導電繊維2の含有量が少ないか又は/及び分散が悪いと、図4(1)に示すように、極細導電繊維2も成形流れ方向に強制的に配列・配向させられて、歪を有した状態で含有され、極細導電繊維2同士の接触が得られずに、1012Ω/□以上の表面抵抗率を示して、導電性を有することはない。しかし、極細導電繊維2の含有量が多いか又は/及び分散がよいと、図4(2)に示すように、極細導電繊維2が例え成形流れ方向に強制的に配列・配向させられても、該繊維2同士の接触がある程度得られて、1012Ω/□未満の表面抵抗率を示す。この配列・配向の傾向はノズルなどの内面に接する射出体4の表面側ほど大きく配向させられて、大きな歪を有している。
続いて、該射出体4を成形金型46内に保持したまま保温することで、射出体4の形状を成形空間47の形状に維持でき、しかも射出体4の少なくとも表面を一定温度に保つことができる。この保温状態を保たせることで、射出体4の少なくとも表面近傍を、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度以上の温度から融点より30℃高い温度の温度範囲又は/及び前記組成物の粘度が5.0×103Pa・s以上1.0×107Pa・s未満の粘度範囲となるようにして軟化させると、射出体4の表面近傍に含有され且つ歪を有して強制的に配列・配向されていた極細導電繊維2は、歪を解消しようとして軟化した樹脂組成物中をランダムに三次元方向に動き、より軟化して動き易く且つ該動きを抑制する軟化樹脂組成物量が少ない表面側に動いて、成形金型表面にまで達した極細導電繊維2はそれ以上は成形金型46の表面に当たって動くことができずに射出体4の表面に露出した状態となるし(図2(1)(3)(5)の拡大断面図を参照)、また、露出するまでの歪がなくて表面から100nm未満の内部にまで動いて歪が解消されると、極細導電繊維2は該場所に留まり、表面から100nm未満の内部に含有されることとなる(図2(2)(4)(6)の拡大断面図を参照)。
そして、これらの極細導電繊維2はお互いが接触して、露出した極細導電繊維2により表面の導通をなさしめるし、また、100nm未満の内部に含有される極細導電繊維2によりトンネル効果を奏しめて、少なくとも表面部分に表面抵抗率が低下された導電層1を形成することができる。その結果、表面抵抗率を101Ω/□以上1012Ω/□未満の範囲となされた導電性射出成形体Aを製造することができる。
このような成形を行う成形金型46は、射出体4の少なくとも表面近傍を軟化させる保温のための加熱が必要であるし、表面抵抗率が低下された導電層1が形成された後は導電性射出体を冷却することが必要であるので、加熱と冷却を行なうことができる成形金型46を用いることが好ましい。
該成形金型46の1例として、図3に示す成形金型は、固定金型48と移動金型49とからなり、これらが型締めされた状態では、これら金型48、49の間に成形空間47が形成されるようになされている。この成形空間47は所望の射出成形体の形状になるようになされていて、図3においては導電性トレーの形状をなしている。
そして、固定金型48と移動金型49との接合面近傍には、複数の流路5が設けられている。これらの流路5のうち、成形空間47の接合近傍に設けられている流路5は、加熱媒体と冷却媒体とを流すことができる加熱冷却流路51であり、該加熱冷却流路51は加熱媒体供給源(不図示)と冷却媒体供給源(不図示)とに接続されていて、これらが弁などで交互に切り替えられて供給できるようになされている。一方、成形空間47以外の接合面即ちパーティング面の近傍に設けられている流路5は冷却媒体を流すことができる冷却流路52であり、冷却媒体供給源(不図示)に接続されていて、必要に応じて供給できるようになされている。上記の加熱媒体としては、熱水、水蒸気、加圧水蒸気、加熱油などが用いられ、また冷却媒体としては、水、冷却水、冷却ガスなどが用いられる。
このような構成の成形金型46を用いて本発明の製造方法を行なうには、まず、図3に示すように、固定金型48に移動金型49を移動・密着させて成形空間47を形成し、加圧機構(不図示)による型締め圧力で保圧する。この際は、加熱冷却流路51には加熱媒体が流されて成形金型46が、射出される極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物の溶融温度以上の温度範囲に加熱された高温状態にしてあるが、冷却流路52には冷却媒体が流されてパーティング面近傍は溶融温度以下の低温になされている。この状態の成形空間47に極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物が射出されると、高温に保たれている成形金型46の成形空間47には前記組成物が流動し易いので充填が充分なされるが、パーティング面にまで流動した前記組成物は低温になされたパーティング面で流動し難くなり、パーティング面間から流れ出すことが抑制されて、バリを生じることがない射出体4を得ることができる。
そして、この射出体4に含まれる極細導電繊維2の状態は、ノズル43、スプルー流路44、ゲート45、成形空間47などの狭い流路を高速で流れるために、各流路面からの強い剪断力を受けて成形流れ方向に力を受け、図4(1)に示すように、成形流れ方向に歪を有した状態で強制的に配列・配向していてお互いが接触することがない状態となっていると該射出体4は1012Ω/□以上の表面抵抗率を示し、図4(2)に示すように、配列・配向していても或る程度はお互いが接触した状態となっていると該射出体4は1012Ω/□未満の表面抵抗率を示すこととなる。
続いて、この射出体4を成形金型46から取出すことなく、型締め圧力で加圧を続けながら、加熱冷却流路51に加熱媒体を流し続けて成形金型46を保温し、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度の温度から融点より30℃高い温度の温度範囲となすか、又は/及び前記組成物の粘度が5.0×103Pa・s以上1.0×107Pa・s未満の範囲となして、1〜20分間保温、好ましくは5〜20分間保温を行なうと、射出体4の少なくとも表面近傍の樹脂組成物が軟化して流動性を有し、歪を有していた極細導電繊維2が歪を解消するように動くことが可能となって、該極細導電繊維2はランダムに三次元方向に動き、動きを抑制する軟化樹脂組成物量が少ない表面側に動いて、前記のようにして、表面に露出するか、又は表面から100nm未満の内部に含有されて、表面抵抗率を低下させた導電層1が形成された導電性射出体4となる。
続いて、加熱冷却流路51への加熱媒体への供給を停止すると共に、該流路51に冷却媒体を流して成形金型46を冷却すると、極細導電繊維2が上記導電層1を形成した状態で固定されて導電性射出成形体となり、その後、該導電性射出成形体を成形金型46から取出すことにより、表面抵抗率を低下させた導電層1を有する導電性射出成形体Aを製造することができる。
上記保温は、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物を上記温度範囲及び/又は上記粘度範囲となる温度で1〜20分間行なわせて、射出体4の少なくとも表面を軟化させて粘度を低下させることが必要にあるので、熱可塑性樹脂により保温温度を異ならせる必要がある。より好ましい保温は、極細導電繊維2が軟化樹脂組成物中を短時間で良好に動くようにする必要から、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物の融点温度より30℃低い温度から融点温度より30℃高い温度の温度範囲又は/及び前記組成物の粘度が1.0×104Pa・s以上5.0×106Pa・s未満の範囲することである。また、保温時間は、極細導電繊維2が軟化樹脂組成物中を動いて三次元方向にランダムになるのに必要な時間が必要であり、保温温度により異なるものの1〜20分間、好ましくは5〜20分間保温されることが好ましい。
さらに、導電層1が形成された射出体4を冷却する冷却速度は、30℃/分未満の平均冷却速度で行なわれることが望ましい。平均冷却速度が速すぎると、極細導電繊維2同士の接触がない状態で急冷されるために接触頻度が減少して、制電ないし導電機能を良好に発揮できなくなる。このような冷却を行なわせるには、冷却媒体を例えば水、冷却水、冷却ガスを使用したり、加熱冷却流路51を多数設けたりするなどの方法で行なうことで可能となる。
なお、上記平均冷却速度は、射出された射出体を金型内で保持するための保温開始時の樹脂温度と導電性射出成形体を取出した直後の該成形体の表面温度との温度差を、冷却するに要した時間で除した値であり、簡便的には、これらの各温度は成形金型温度で代用することもできる。
なお、上記平均冷却速度は、射出された射出体を金型内で保持するための保温開始時の樹脂温度と導電性射出成形体を取出した直後の該成形体の表面温度との温度差を、冷却するに要した時間で除した値であり、簡便的には、これらの各温度は成形金型温度で代用することもできる。
図5は他の成形金型を用いた本発明の製造方法の説明図である。
該成形金型60も、固定金型61と移動金型62とからなり、これらが型締めされた状態では、これら金型61、62の間に成形空間63が形成されるようになされている。そして、固定金型61と移動金型62との接合面近傍には、複数の流路64、65が交互に設けられている。これらの流路のうち、流路64は加熱媒体供給源(不図示)に接続されて加熱媒体を流す加熱流路であり、流路65は冷却媒体供給源(不図示)に接続されて冷却媒体を流す冷却流路であって、これらが交互に設けられている。これらの加熱媒体と冷却媒体とは弁などにより、必要に応じて供給できるようになされている。
該成形金型60も、固定金型61と移動金型62とからなり、これらが型締めされた状態では、これら金型61、62の間に成形空間63が形成されるようになされている。そして、固定金型61と移動金型62との接合面近傍には、複数の流路64、65が交互に設けられている。これらの流路のうち、流路64は加熱媒体供給源(不図示)に接続されて加熱媒体を流す加熱流路であり、流路65は冷却媒体供給源(不図示)に接続されて冷却媒体を流す冷却流路であって、これらが交互に設けられている。これらの加熱媒体と冷却媒体とは弁などにより、必要に応じて供給できるようになされている。
この成形金型60を用いて本発明の製造方法を行なうには、前記成形金型46を使用して製造する場合と同様に、固定金型61に可動金型62を移動・密着して型締め圧力で保圧し、加熱流路64に加熱媒体を流して成形金型60を加熱して高温になされた後に、成形空間63に極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物を射出して、射出体6を得る。この射出体6は、極細導電繊維2が前記の理由で配列・配向して、射出体4と同様の表面抵抗率を示す。
なお、66は射出成形機を示す。
なお、66は射出成形機を示す。
続いて、この射出体6を成形金型60から取出すことなく成形金型60内に保持したまま、加熱流路64に加熱媒体を流し続けて成形金型60を加熱して保温し、射出体6の少なくとも表面近傍を前記の温度範囲又は/及び前記粘度範囲となる温度範囲に保温して、射出体6の表面近傍の樹脂を軟化させて粘度を低下させ、歪を有して含有されている極細導電繊維2が該歪を解消できるように動くことが可能にすると、該極細導電繊維2はランダムに三次元方向に動き、前記した理由により、表面に露出するか、又は表面から100nm未満の内部に含有されて、表面抵抗率が低下した導電層1が形成された導電性射出体6となる。続いて、加熱流路64への加熱媒体の供給を停止すると共に、冷却流路65に冷却媒体を流して成形金型60を冷却すると、極細導電繊維2が上記導電層1を形成した状態で固定され、その後、該導電性射出成形体を成形金型60から取出すと、101Ω/□以上1012Ω/□未満の範囲の表面抵抗率を有する導電性射出成形体Aを製造することができる。
なお、保温条件や冷却速度などは前記製造方法の各条件と同じであるので、説明を省略する。
なお、保温条件や冷却速度などは前記製造方法の各条件と同じであるので、説明を省略する。
図6は本発明の製造方法で製造された他の導電性射出成形体を示す拡大断面図である。
図6に示す導電性射出成形体Bは、熱可塑性樹脂又は熱や紫外線や電子線などで硬化する硬化性合成樹脂からなり且つ極細導電繊維を含有してない基材層3と、その両面に積層された極細導電繊維2を含有する熱可塑性樹脂からなる表面抵抗率を低下させた導電層1、1とからなる3層構造の導電性射出成形体である。そして、極細導電繊維2は図6(1)に示すように表面に露出して表面抵抗率を低下させた導電層1を形成しているか、又は図6(2)に示すように表面から100nm未満の内部に含有されて表面抵抗率を低下させた導電層1を形成しており、いずれの成形体Bも101Ω/□以上1012Ω/□未満の範囲の表面抵抗率を発揮させている。
なお、導電層1は基材層3の片面のみに形成されていてもよいし、基材層3の周囲の全表面に形成されていてもよい。
なお、導電層1は基材層3の片面のみに形成されていてもよいし、基材層3の周囲の全表面に形成されていてもよい。
上記基材層3は、熱可塑性合成樹脂又は硬化性合成樹脂を、必要なら該合成樹脂の射出成形に必要な添加剤が添加された組成物を射出成形して形成された層であり、極細導電繊維は含有していない。
該基材層3に用いられる熱可塑性樹脂としては、前記導電性射出成形体Aに使用された熱可塑性樹脂が使用される。また、硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、硬化性アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが使用される。しかし、導電層1と積層一体化させる必要があるので、導電層1に使用される熱可塑性樹脂と同一系、相溶性のある熱可塑性樹脂が相互の密着接合性を高めることが好ましい。これらの樹脂には、抗酸化剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、抗菌剤、難燃剤、顔料 、染料などの各樹脂に一般に使用される添加剤が適宜添加されて形成される。この基材層3の厚さは0.1〜30.0mm程度にされることが好ましい。
該基材層3に用いられる熱可塑性樹脂としては、前記導電性射出成形体Aに使用された熱可塑性樹脂が使用される。また、硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、硬化性アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが使用される。しかし、導電層1と積層一体化させる必要があるので、導電層1に使用される熱可塑性樹脂と同一系、相溶性のある熱可塑性樹脂が相互の密着接合性を高めることが好ましい。これらの樹脂には、抗酸化剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、抗菌剤、難燃剤、顔料 、染料などの各樹脂に一般に使用される添加剤が適宜添加されて形成される。この基材層3の厚さは0.1〜30.0mm程度にされることが好ましい。
また、上記導電層1、1は、前記導電性射出成形体Aの導電層1と同じであり、これに含有されている極細導電繊維2、その分散状態、表面への露出又は表面から100nm未満の内部に含有されて表面抵抗率を低下させたことも同じであるので、同一符号を付して説明を省略する。しかし、導電層1の厚さは、表面に積層されて101Ω/□以上1012Ω/□未満の範囲の表面抵抗率を発揮させるためのものであるので、0.01〜5.0mm程度の薄い層になされるのが好ましい。
そして、導電層1は、射出成形された基材層3と極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物からなる表面層との3層構造の射出体を、成形金型より取出すことなく成形金型に保持したまま保温されることで、表面層に含有され且つ歪を有していた極細導電繊維2が表面層の表面に露出するか、又は表面から100nm未満の内部に含有された状態となされて、表面抵抗率が低下した導電層1が形成されたものであり、制電ないし導電機能を発揮させることができる。
極細導電繊維2が、保温により上記状態になる詳細な理由は、前記導電性射出成形体Aの導電層1と同様であるので説明を省略する。
極細導電繊維2が、保温により上記状態になる詳細な理由は、前記導電性射出成形体Aの導電層1と同様であるので説明を省略する。
このような導電性射出成形体Bは、基材層3が熱可塑性樹脂でも硬化性合成樹脂であってもよいし、絶縁性であっても導電性を有してもよく、また、機械的強度を高めた組成物で形成されてもよいし、樹脂再生品を使用して形成されてもよいし、更にはガラス繊維などの補強材を添加した組成物で形成されてもよいし、基材層を多層にしてもよいし、その他の如何なる構成にしてもよいので、該基材層3により導電性射出成形体Bに必要な導電性以外の性能を付与することができる。
また、導電層1は導電性射出成形体Bに制電ないし導電機能を付与するための層であるので、必要以上に厚くする必要はなく、薄くなった分、極細導電繊維2の含有量を少なくでき、安価な導電性射出成形体Bを製造することもできる。
また、導電層1は導電性射出成形体Bに制電ないし導電機能を付与するための層であるので、必要以上に厚くする必要はなく、薄くなった分、極細導電繊維2の含有量を少なくでき、安価な導電性射出成形体Bを製造することもできる。
この導電性射出成形体Bは、例えば図7に示す本発明の製造方法により製造することができる。
この製造方法は、基材層3の周囲の全表面が導電層1で被覆された導電性射出成形体Bの方法である。
この製造方法は、基材層3の周囲の全表面が導電層1で被覆された導電性射出成形体Bの方法である。
この導電性射出成形体Bは、図7に示すように、前記成形金型46と同様な成形金型70が用いられて射出成形される。該成形金型70は固定金型71と移動金型72とからなり、これら金型71、72との間に成形空間73が形成されるようになされている。そして、該固定金型71と移動金型72の成形空間47の接合面近傍には、加熱媒体と冷却媒体とを流すことができる加熱冷却流路74が設けられ、成形空間47以外の接合面即ちパーティング面近傍には冷却媒体を流すことができる冷却流路75とからなる複数の流路が設けられている。
この成形金型70を用いて導電性射出成形体Bを製造するには、まず予め、熱可塑性樹脂と極細導電繊維2と、必要なら樹脂の射出成形加工に必要な上記添加剤とを、均一に混合して極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物を作製する。一方、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂に、必要なら上記添加剤を均一に混合した合成樹脂組成物を作製する。
そして、上記成形金型70の成形空間73に、まず、上記極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物を一方の射出成形機76から射出し、続いて、該極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物が溶融状態の間に上記合成樹脂組成物を他の射出成形機77から射出することにより、溶融状態の極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物の中心に合成樹脂組成物を充填して、合成樹脂組成物からなる基材層3の周りの全表面を極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物からなる表面層78で被覆された被覆射出体7を得る。
このような被覆射出体7の表面層78に含有されている極細導電繊維2は、成形方向に配列・配向し、特に、表面に近い表面層78は成形金型70の成形空間73の内面に接しながら成形されるので、極細導電繊維2の配列・配向はより強制的になされて大きな歪を有している。そのため、極細導電繊維2の含有量が少ないか及び/又は分散が悪いと1012Ω/□以上の表面抵抗率を示し、極細導電繊維2の含有量が多いか及び/又は分散が良好であると1012Ω/□未満の表面抵抗率を示す被覆射出体7となる。
続いて、前記と同様に、この被覆射出体7を成形金型70から取出すことなく成形金型70内に保持したまま、加熱冷却流路74に加熱媒体を流し続けて成形金型70を加熱・保温して被覆射出体7の表面層78の少なくとも表面近傍を極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度の温度から融点温度より30℃高い温度の温度範囲及び/又は前記組成物の粘度が5.0×103Pa・s以上1.0×107Pa・s未満の範囲となるように、好ましくは融点よりも30℃低い温度から融点よりも30℃高い温度の温度範囲及び/又は粘度が1.0×104Pa・s以上5.0×106Pa・s未満の範囲となるように、高温に保たせて保温し、表面層78の表面近傍の樹脂組成物を軟化させて粘度を低下させ、歪を有して含有されていた極細導電繊維2が該歪を解消するように動くことができるようにすると、前記と同様に、該極細導電繊維2はランダムに三次元方向に動き、表面に露出するか、又は表面から100nm未満の内部に含有されて、表面抵抗率が低下した導電層1が形成された被覆射出体7となる。
この被覆射出体7は、保温しなかった場合に表面抵抗率が1012Ω/□以上であれば保温することにより1012Ω/□未満となり、保温しなかった場合に表面抵抗率が1012Ω/□未満であれば保温することにより該表面抵抗率を更に低下させた導電層を有するものとなる。この表面抵抗率の低下は前述のとおり、1桁乃至12桁の範囲で低下する。
続いて、加熱冷却流路74への加熱媒体の供給を停止し、弁などを操作して冷却媒体を流して成形金型70を冷却すると、極細導電繊維2が上記導電層1を形成した状態で固定されて導電性被覆射出体となされ、その後、該導電性被覆射出体を成形金型70から取出すと、基材層3の周りの全表面を導電層1で覆った導電性射出成形体Bを製造することができる。
なお、極細導電繊維2が、保温により上記状態になる詳細な理由は、前記と同様であるので説明を省略する。また、保温条件や冷却速度などは前記製造方法の各条件と同じであるので、説明を省略する。
なお、極細導電繊維2が、保温により上記状態になる詳細な理由は、前記と同様であるので説明を省略する。また、保温条件や冷却速度などは前記製造方法の各条件と同じであるので、説明を省略する。
本製造方法では、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物からなる表面層78は、基材層3の表面を被覆するための層であるので薄くすることができ、成形金型70の中に保持したまま保温する際に表面層78の略全厚が上記温度範囲及び/又は上記粘度範囲の低粘度になされるので、表面層78の全厚さが表面抵抗率の低下した導電層1になる。
また、基材層3は保温する必要がないために、該基材層3に使用する樹脂を表面層とは異なる溶融温度の高い熱可塑性樹脂や硬化性樹脂を使用することができ、表面層78の樹脂組成物を軟化させやすくなる。さらに、基材層3を加熱保温する必要がなくて表面層78のみの保温で導電層1を形成できるので、被覆射出体7の形状保持がなされ易い。
また、基材層3は保温する必要がないために、該基材層3に使用する樹脂を表面層とは異なる溶融温度の高い熱可塑性樹脂や硬化性樹脂を使用することができ、表面層78の樹脂組成物を軟化させやすくなる。さらに、基材層3を加熱保温する必要がなくて表面層78のみの保温で導電層1を形成できるので、被覆射出体7の形状保持がなされ易い。
図8は導電性射出成形体Bの他の製造方法を示す説明図である。
この製造方法は、基材層3の片面にのみ導電層1が積層された2層構造の導電性射出成形体Bの方法である。
この製造方法は、基材層3の片面にのみ導電層1が積層された2層構造の導電性射出成形体Bの方法である。
この導電性射出成形体Bは、図8に示す成形金型80が用いられて射出成形される。該成形金型80は、固定金型81と可動金型82とに、一次側金型83と二次側金型84とが固定され、これら金型83、84には各雄金型と雌金型との間に成形空間851、852がそれぞれ形成されていると共に、該金型83、84の成形空間851、852の接合面近傍には加熱媒体と冷却媒体とを流すことができる加熱冷却流路86が設けられると共に、成形空間851、852以外の接合面即ちパーティング面の近傍には冷却媒体を流すことができる冷却流路87が設けられている。
そして、一次側金型83に上記極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物を射出して表面層88となる射出体89を成形する。続いて、型開きした後に、該射出体89を取出さずに、可動金型82を回転させて二次側金型側に移動させて、型締めし、射出体89と二次側金型84の雌型との間に成形空間853を形成し、該成形空間853に上記合成樹脂組成物を射出成形することにより、合成樹脂組成物よりなる基材層3の内面に極細導電繊維含有樹脂組成物よりなる表面層88が積層された二層射出体8を作製する。
続いて、前記と同様に、この二層射出体8を成形金型80(二次側金型84)から取出すことなく成形金型80内に保持したまま、加熱冷却流路86に加熱媒体を流し続けて成形金型80(二次側金型84)を加熱して二層射出体8の表面層88の表面近傍を上記温度範囲及び/又は上記粘度範囲となる温度に保たせて保温して、歪を有して含有されていた極細導電繊維2が歪を解消できるように動くことができるようにすると、該極細導電繊維2がランダムに三次元方向に動いて、表面に露出するか、又は表面から100nm未満の内部に含有されて、表面抵抗率が低下した導電層1が形成されて、導電性二層射出体8となる。
続いて、加熱冷却流路86への加熱媒体の供給を停止し、弁などを操作して冷却媒体を流して成形金型80(二次側金型84)を冷却すると、極細導電繊維2が上記導電層1を形成した状態で固定されて導電性射出成形体となされ、その後、該導電性射出成形体を成形金型80(二次側金型84)から取出すと、上記導電層1を片面に有する2層構造の導電性射出成形体Bを製造することができる。
なお、極細導電繊維2が、保温により上記状態になる詳細な理由は、前記と同様であるので説明を省略する。また、保温条件や冷却速度などは前記製造法の各条件と同じであるので、説明を省略する。
なお、極細導電繊維2が、保温により上記状態になる詳細な理由は、前記と同様であるので説明を省略する。また、保温条件や冷却速度などは前記製造法の各条件と同じであるので、説明を省略する。
図9は導電性射出成形体Bの他の製造方法を示す説明図である。
この導電性射出成形体Bの射出成形には、図示の成形金型93が用いられるが、該金型93は前記成形金型46と同じ形状・構造であって、図9に付した94は固定金型、95は移動金型、96は加熱冷却流路、97は冷却流路を示しているが、図3に示す成形金型46の固定金型、移動金型、加熱冷却流路、冷却流路と同じであるので、説明を省略する。
この導電性射出成形体Bの射出成形には、図示の成形金型93が用いられるが、該金型93は前記成形金型46と同じ形状・構造であって、図9に付した94は固定金型、95は移動金型、96は加熱冷却流路、97は冷却流路を示しているが、図3に示す成形金型46の固定金型、移動金型、加熱冷却流路、冷却流路と同じであるので、説明を省略する。
まず、製造に先立って、図9(1)に拡大して示すように、ポリエチレンテレフタレートなどの剥離フィルム91に、上記極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物を溶剤に溶解して得た塗液を塗布固化した極細導電繊維2を含有する表面層92が形成された転写フィルム90を作製する。必要なら、接着性樹脂を溶剤に溶解して得た接着塗液を作製し、上記表面層92の表面に塗布固化して接着層が形成された転写フィルムを作製する。
この転写フィルム90の表面層92の極細導電繊維2は、塗布する際に塗布方向に力を受けて、その方向に強制的に配列・配向して歪を有した状態で含有されている。そのため、極細導電繊維2の含有量が少ないか又は/及び分散が悪いと、図9(1)に拡大して示すように、極細導電繊維2も塗布圧力方向に配列・配向させられて1012Ω/□以上となるし、極細導電繊維2の含有量が多いか又は/及び分散がよいと、塗布圧力方向への剪断力が小さいことと相まって、該繊維2同士の接触がある程度得られて、1012Ω/□未満の表面抵抗率を示すこととなる。しかし、塗布による配列、配向は射出成形や押出成形時の配列、配向に比べて小さいので、該転写フィルム90の表面抵抗率は1012Ω/□未満となることが多く、極細導電繊維としてのカーボンナノチューブを0.01〜12.0質量%含有させると、107Ω/□程度まで低下する場合がある。
そして、当該転写フィルム90を、図9(1)に示すように、成形金型93に供して、剥離フィルム91が雄金型側となるように成形金型93の内部に配置する。続いて、該金型93の成形空間に上記合成樹脂組成物を射出することにより、表面に転写フィルム90が一体化した転写射出体9となる。この転写射出体9における表面層92に含有される極細導電繊維2は、図9(2)の拡大図に示すように、転写フィルム90の作製時に強制的に配列・配向させられた状態で含有されていて、転写フィルム90と同様の表面抵抗率を有している。
続いて、前記と同様に、この転写射出体9を成形金型93から取出すことなく成形金型93内に保持したまま、加熱冷却流路96に加熱媒体を流し続けて成形金型93を加熱して転写射出体9の表面層92の表面近傍を上記温度範囲及び/又は上記粘度範囲となる温度の高温に保たせて保温して、歪を有して含有していた極細導電繊維2が歪を解消できるように動くことができるようにすると、該極細導電繊維2がランダムに三次元方向に動いて、表面に露出するか又は表面から100nm未満の内部に含有され、表面抵抗率を低下させた導電層1を形成した導電性転写射出体9となる。
続いて、加熱冷却流路96への加熱媒体の供給を停止し、弁などを操作して冷却媒体を流して成形金型93を冷却すると、極細導電繊維2が上記導電層1を形成した状態で固定され、その後、該導電性射出成形体を成形金型93から取出し、図9(3)の拡大図に示すように、剥離フィルム91を剥離すると、表面抵抗率が低下して101Ω/□以上1012Ω/□未満の範囲となされた導電層1を有する2層構造の導電性射出成形体Bを製造することができる。
図10は二層構造の導電性射出成形体Bの他の製造方法を示す説明図である。
この導電性射出成形体Bの射出成形には、図示の成形金型103が用いられるが、該金型103は前記成形金型46と同じ形状・構造であって、図10に付した104は固定金型、105は移動金型、106は加熱冷却流路、107は冷却流路を示しているが、図3に示す成形金型46の固定金型、移動金型、加熱冷却流路、冷却流路と同じであるので、説明を省略する。
この導電性射出成形体Bの射出成形には、図示の成形金型103が用いられるが、該金型103は前記成形金型46と同じ形状・構造であって、図10に付した104は固定金型、105は移動金型、106は加熱冷却流路、107は冷却流路を示しているが、図3に示す成形金型46の固定金型、移動金型、加熱冷却流路、冷却流路と同じであるので、説明を省略する。
まず、製造に先立って、図10(1)に拡大して示すように、アクリルフィルムなどの接着性フィルム101に、上記極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物を溶剤に溶解して得た塗液を塗布固化した極細導電繊維2を含有する表面層102が形成されたラミネート用フィルム100を作製する。
このラミネート用フィルム100の表面層102の極細導電繊維2は、前記転写フィルムと同様に、塗布する際に塗布方向に力を受けて、その方向に強制的に配列・配向して歪を有した状態で含有されている。このラミネート用フィルム100は、前述の転写フィルムと同様に、1012Ω/□以上の、又は1012Ω/□未満の表面抵抗率を示すこととなるが、該ラミネート用フィルム100の表面抵抗率も1012Ω/□未満となることが多く、カーボンナノチューブを0.01〜12.0質量%含有させると、107Ω/□程度まで低下する場合がある。
そして、当該ラミネート用フィルム100を、図10(1)に示すように、成形金型103に供して、接着性フィルム101が雌金型側となるように成形金型103の内部に配置した後に、その金型103の成形空間に上記合成樹脂組成物を射出することにより、図10(2)の拡大図に示すように、合成樹脂組成物からなる基材層3の表面にラミネート用フィルム100が積層一体化したラミネート射出体10となす。
続いて、前記と同様に、このラミネート射出体10を成形金型103から取出すことなく成形金型内に保持したまま、加熱冷却流路106に加熱媒体を流し続けて成形金型103を加熱保温して、ラミネート射出体10の表面層102の表面近傍を上記温度範囲及び/又は上記粘度範囲となる温度の高温に保たせて保温し、歪を有して含有していた極細導電繊維2が歪を解消できるように動くことができるようにすると、該極細導電繊維2がランダムに三次元方向に動いて、表面に露出するか、又は表面から100nm未満の内部に含有され、表面抵抗率が低下して導電層1が形成された導電性ラミネート射出体10となる。
続いて、加熱冷却流路106への加熱媒体の供給を停止し、弁などを操作して冷却媒体を流して成形金型103を冷却すると、図10(3)の拡大図に示すように、極細導電繊維2が上記導電層1を形成した状態で固定され、その後、該導電性射出成形体を成形金型103から取出すと、表面抵抗率が低下して101Ω/□から1012Ω/□未満の表面抵抗率を有する導電層1を片面に積層された2層構造の導電性射出成形体Bを製造することができる。
上記のラミネート用フィルム100は、接着性フィルム101に極細導電繊維を含有する表面層102を形成させてなるものであるが、これに代えて、上記極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物からなるラミネート用フィルムを押出成形やブロー成形などの溶融成形法にて予め作製し、これを同様に用いても、導電性射出成形体Bを製造することができる。この場合、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物の樹脂と基材層との樹脂とは同一化相溶性のある樹脂を選択することが好ましい。
上記各導電性射出成形体Bの製造方法において、加熱条件や加熱時間や加熱方法や冷却速度などは、前記導電性射出成形体Aと同じであるので、説明を省略する。
図11は二層構造の導電性射出成形体Bの他の製造方法を示す説明図である。この導電性射出成形体Bの射出成形には、図示の成形金型114が用いられるが、該金型114は前記成形金型46と同じ形状・構造であって、図11に付した115は固定金型、116は移動金型、117は加熱冷却流路、118は冷却流路を示しているが、図3に示す成形金型46の固定金型、移動金型、加熱冷却流路、冷却流路と同じであるので、説明を省略する。
この製造方法は、まず、図11(1)に示すように、成形金型114の移動金型116の内面に、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物を溶剤に溶解させた塗液をスプレー等の塗布装置119で塗布し、乾燥させることにより、極細導電繊維2を含有する塗膜112を形成する。
この塗膜112に含有されている極細導電繊維2は、塗布する際に塗布圧や塗布方向に力を受けて、その方向に強制的に配列・配向して歪を有した状態で含有されている。そのために、前記と同様に、この塗膜112は1012Ω/□以上の、又は1012Ω/□未満の表面抵抗率を示すこととなるが、該塗膜112の表面抵抗率も1012Ω/□未満となることが多く、カーボンナノチューブを0.01〜12.0質量%含有させると、107Ω/□程度まで低下する場合がある。
そして、図11の(2)に示すように、移動金型116と固定金型115とを型締めして成形空間を形成した後に、該成形空間に前記合成樹脂組成物を射出すると、前記塗膜112が合成樹脂組成物からなる基材層113の表面に転写されて表面層111となった塗膜射出体11となす。この塗膜射出体11における表面層111(塗膜112)に含有される極細導電繊維2は、塗膜112と同じ状態となっていて、同じ表面抵抗率を示す。
続いて、前記と同様に、この塗膜射出体11を成形金型114から取出すことなく成形金型内に保持したまま、加熱冷却流路117に加熱媒体を流し続けて成形金型114を加熱して、塗膜射出体11の表面層111の表面近傍を上記温度範囲及び/又は上記粘度範囲となる温度の高温に保たせて保温し、歪を有して含有していた極細導電繊維2が歪を解消できるように動くことができるようにすると、該極細導電繊維2がランダムに三次元方向に動いて、表面に露出するか、又は表面から100nm未満の内部に含有させ、表面抵抗率を低下させた導電層1が形成された導電性塗膜射出体11となる。
続いて、加熱冷却流路117への加熱媒体の供給を停止し、弁などを操作して冷却媒体を流して成形金型114を冷却すると、極細導電繊維2が上記導電層1を形成した状態で固定され、その後、該成形体を成形金型114から取出すと、表面抵抗率が低下して101Ω/□から1012Ω/□未満の表面抵抗率を有する導電層1を片面に積層された2層構造の導電性射出成形体Bを製造することができる。
なお、塗膜112を雄金型の表面のみに設けたが、雌金型の内面に形成されてもよい。また、雄金型と雌金型の両表面に形成すれば、基材層の周囲の全表面に導電層が形成された導電性射出成形体Bとすることができる。
なお、塗膜112を雄金型の表面のみに設けたが、雌金型の内面に形成されてもよい。また、雄金型と雌金型の両表面に形成すれば、基材層の周囲の全表面に導電層が形成された導電性射出成形体Bとすることができる。
上記導電性射出成形体Bの各製造方法において、加熱条件や加熱時間や加熱方法や冷却速度などは、前記導電性射出成形体Aと同じであるので、説明を省略する。
次に、本発明に係る導電性射出成形体の更に具体的な実施例を説明する。
[実施例1]
市販のポリカーボネート樹脂と、直径が10〜20nmである多層カーボンナノチューブ(シンセンナノテクポート社製)とを均一に混合して、多層カーボンナノチューブが2.5質量%含有された多層カーボンナノチューブ含有ポリカーボネート樹脂組成物を作製した。このポリカーボネート樹脂は非晶質で融点を有さないが、このポリカーボネート樹脂は非晶質で融点を有さないが、5.0×104Pa・sの粘度を示す樹脂温度は220℃であった。
市販のポリカーボネート樹脂と、直径が10〜20nmである多層カーボンナノチューブ(シンセンナノテクポート社製)とを均一に混合して、多層カーボンナノチューブが2.5質量%含有された多層カーボンナノチューブ含有ポリカーボネート樹脂組成物を作製した。このポリカーボネート樹脂は非晶質で融点を有さないが、このポリカーボネート樹脂は非晶質で融点を有さないが、5.0×104Pa・sの粘度を示す樹脂温度は220℃であった。
この組成物を、図5に示す加熱流路と冷却流路とを有し、50× 80mm、深さ30mmの長方形成形空間を形成できる成形金型を取り付けた射出成形機に供して、加熱された成形金型内に射出成形した。そして、この射出板を取出すことなく保圧したまま、成形金型の加熱流路に加熱油を流して成形金型を230℃に加熱し、8分間流し続けて保温した。その後、加熱油の供給を止め、冷却流路に冷却水を10分間流して成形金型を冷却した後に、射出成形板を取り出して、実施例1の射出成形板を得た。
この多層カーボンナノチューブ含有ポリカーボネート樹脂組成物の230℃における粘度を、動的粘弾性測定装置(Pear社製Modular Compact Rheameter MCR300)にて測定を行なったところ、剪断速度1sec-1のとき3.0×104Pa・sであった。
また、射出成形板を取出した直後の成形金型の温度を接触温度計で測定すると、30℃であったので、平均冷却速度は20℃/分であった。
また、射出成形板を取出した直後の成形金型の温度を接触温度計で測定すると、30℃であったので、平均冷却速度は20℃/分であった。
[比較例1]
上記の組成物を同じ成形金型内に射出成形した後に、保温せずに直ちに冷却水を流して成形金型を冷却し、射出成形板を取り出して、比較例1の成形板を得た。
上記の組成物を同じ成形金型内に射出成形した後に、保温せずに直ちに冷却水を流して成形金型を冷却し、射出成形板を取り出して、比較例1の成形板を得た。
これらの実施例1と比較例1との各射出成形板について、それぞれ表面抵抗率を測定した。その結果、実施例1の射出成形板は1.5×103Ω/□の表面抵抗率を示し導電機能を発揮したが、保温しなかった比較例1の成形板は9.5×1013Ω/□の表面抵抗率しか示さずに、制電機能も導電機能も示さなかった。
尚、表面抵抗率は三菱化学(株)製の低抵抗測定器とロレスタGPと高抵抗測定器ハイレスタUPで測定した値である。ロレスタGPは10-2〜107Ω/□の、ハイレスタUPは106〜1014の範囲の表面抵抗率の測定に用いる測定器であり、それぞれの表面抵抗率に応じて使い分けた。
尚、表面抵抗率は三菱化学(株)製の低抵抗測定器とロレスタGPと高抵抗測定器ハイレスタUPで測定した値である。ロレスタGPは10-2〜107Ω/□の、ハイレスタUPは106〜1014の範囲の表面抵抗率の測定に用いる測定器であり、それぞれの表面抵抗率に応じて使い分けた。
[実施例2]
市販の非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂と、直径が10〜20nmである多層カーボンナノチューブ(CNT社製)とを均一に混合して、多層カーボンナノチューブを2.5質量%均一に含有させて混合した、多層カーボンナノチューブ含有非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を作製した。この非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂は融点を有さないが、1.0×104Pa・sの粘度を示す樹脂温度は190℃であった。
市販の非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂と、直径が10〜20nmである多層カーボンナノチューブ(CNT社製)とを均一に混合して、多層カーボンナノチューブを2.5質量%均一に含有させて混合した、多層カーボンナノチューブ含有非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を作製した。この非晶質ポリエチレンテレフタレート樹脂は融点を有さないが、1.0×104Pa・sの粘度を示す樹脂温度は190℃であった。
この組成物を、実施例1と同様に射出成形し、同じ形状の射出体を得た。そして、この射出板を取出すことなく型締めしたまま、加熱流路に加熱油を10分間流して成形金型を200℃に保温し続けた。その後、加熱油の供給を止め、冷却流路に冷却水を8分間流して成形金型を冷却した後に、射出成形板を取り出して、実施例2の射出成形板を得た。
この多層カーボンナノチューブ含有非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の200℃における粘度を、実施例1と同様に測定したところ、9.5×103Pa・sであった。
また、射出成形板を取出した直後の成形金型の温度を接触温度計で測定すると、50℃であったので、平均冷却速度は18.8℃/分であった。
また、射出成形板を取出した直後の成形金型の温度を接触温度計で測定すると、50℃であったので、平均冷却速度は18.8℃/分であった。
[比較例2]
上記の組成物を同じ成形金型に射出成形した後に、直ちに冷却水を流して成形金型を冷却し、射出成形板を取り出して、比較例2の射出成形板を得た。
上記の組成物を同じ成形金型に射出成形した後に、直ちに冷却水を流して成形金型を冷却し、射出成形板を取り出して、比較例2の射出成形板を得た。
これらの実施例2と比較例2との各射出成形板について、実施例1と同様に、表面抵抗率を測定した。その結果、実施例2の射出成形板は3.6×103Ω/□の表面抵抗率を示し導電機能を発揮したが、保温しなかった比較例2の射出成形板は9.2×1013Ω/□の表面抵抗率しか示さずに、制電機能も導電機能も示さなかった。
[実施例3]
市販のポリプロピレン樹脂と、実施例2で使用した多層カーボンナノチューブを4.5質量%含有させて均一に混合した多層カーボンナノチューブ含有ポリプロピレン樹脂組成物を作製した。このポリプロピレン樹脂の融点温度は172℃であった。
市販のポリプロピレン樹脂と、実施例2で使用した多層カーボンナノチューブを4.5質量%含有させて均一に混合した多層カーボンナノチューブ含有ポリプロピレン樹脂組成物を作製した。このポリプロピレン樹脂の融点温度は172℃であった。
この組成物を、実施例1と同様に射出成形し、同じ形状の射出成形板を得た。そして、この射出成形板を取出すことなく型締めしたまま、加熱油を7分間流して成形金型を190℃に保温し続けた。その後、加熱油の供給を止め、冷却流路に冷却水を5分間流して成形金型を冷却した後に、射出成形板を取り出して、実施例3の射出成形板を得た。
この多層カーボンナノチューブ含有ポリプロピレン樹脂組成物の190℃における粘度を、実施例1と同様に測定したところ、9.5×103Pa・sであった。
また、射出成形板を取出した直後の成形金型の温度を接触温度計で測定すると、50℃であったので、平均冷却速度は28℃/分であった。
また、射出成形板を取出した直後の成形金型の温度を接触温度計で測定すると、50℃であったので、平均冷却速度は28℃/分であった。
[比較例3]
上記の組成物を同じ成形金型に射出成形した後に、直ちに冷却水を流して成形金型を冷却し、射出成形板を取り出して、比較例3の射出成形板を得た。
上記の組成物を同じ成形金型に射出成形した後に、直ちに冷却水を流して成形金型を冷却し、射出成形板を取り出して、比較例3の射出成形板を得た。
これらの実施例3と比較例3との各射出成形板とについて、実施例1と同様にして表面抵抗率を測定した。その結果、その結果、実施例2の射出成形板は2.4×102Ω/□の表面抵抗率を示し導電機能を発揮したが、保温しなかった比較例2の射出成形板は5.0×1012Ω/□の表面抵抗率しか示さなかった。
[実施例4]
実施例1で使用したポリカーボネート樹脂と、単層カーボンナノチューブ[文献Chemical Physics Letters,323(2000),P580−585に基づいて合成したもの、直径1.3〜1.8nm]とを均一に混合して、単層カーボンナノチューブが1質量%である単層カーボンナノチューブ含有ポリカーボネート樹脂組成物を作製した。
実施例1で使用したポリカーボネート樹脂と、単層カーボンナノチューブ[文献Chemical Physics Letters,323(2000),P580−585に基づいて合成したもの、直径1.3〜1.8nm]とを均一に混合して、単層カーボンナノチューブが1質量%である単層カーボンナノチューブ含有ポリカーボネート樹脂組成物を作製した。
この組成物を、実施例1と同様に射出成形して、同じ形状の射出成形体を得た。そして、この射出成形板を取出すことなく型締めしたまま、加熱油を12分間流して成形金型を220℃に保温し続けた。その後、加熱油の供給を止め、冷却流路に冷却水を10分間流して成形金型を冷却した後に、射出成形板を取り出して、実施例4の射出成形板を得た。
[比較例4]
上記の組成物を同じ成形金型に射出成形した後に、直ちに冷却水を流して成形金型を冷却し、射出成形板を取り出して、比較例4の射出成形板を得た。
また、射出成形板を取出した直後の成形金型の温度を接触温度計で測定すると、50℃であったので、平均冷却速度は17℃/分であった。
上記の組成物を同じ成形金型に射出成形した後に、直ちに冷却水を流して成形金型を冷却し、射出成形板を取り出して、比較例4の射出成形板を得た。
また、射出成形板を取出した直後の成形金型の温度を接触温度計で測定すると、50℃であったので、平均冷却速度は17℃/分であった。
これらの実施例4と比較例4との各射出成形板とについて、実施例1と同様にして表面抵抗率を測定した。その結果、その結果、実施例4の成形板は8.5×104Ω/□の表面抵抗率を示し導電機能を発揮したが、保温しなかった比較例4の成形板は9.0×1013Ω/□の表面抵抗率しか示さずに、制電機能も導電機能も示さなかった。
この多層カーボンナノチューブ含有ポリカーボネート樹脂組成物の230℃における粘度を、実施例1と同様に測定したところ、3.5×104Pa・sであった。
この多層カーボンナノチューブ含有ポリカーボネート樹脂組成物の230℃における粘度を、実施例1と同様に測定したところ、3.5×104Pa・sであった。
以上のことより、射出成形板を成形金型から取り出すことなく保温することにより、該射出成形板に表面抵抗率を低下させた導電性を付与できることがわかる。
1 導電層
2 極細導電繊維
3 基材層
4 射出体
41 射出成形機
46 成形金型
5 流路
51 加熱冷却流路
52 冷却流路
6 射出体
60 成形金型
7 被覆射出体
70 成形金型
8 二層射出体
80 成形金型
9 転写射出体
90 転写フィルム
93 成形金型
10 ラミネート射出体
100 ラミネート用フィルム
103 成形金型
11 塗膜射出体
112 塗膜
A、B 導電性射出成形体
2 極細導電繊維
3 基材層
4 射出体
41 射出成形機
46 成形金型
5 流路
51 加熱冷却流路
52 冷却流路
6 射出体
60 成形金型
7 被覆射出体
70 成形金型
8 二層射出体
80 成形金型
9 転写射出体
90 転写フィルム
93 成形金型
10 ラミネート射出体
100 ラミネート用フィルム
103 成形金型
11 塗膜射出体
112 塗膜
A、B 導電性射出成形体
Claims (9)
- 射出成形により導電性射出成形体を製造する方法であって、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物を成形金型内に射出して射出体となし、該射出体を成形金型内に保持したまま保温して、該射出体に含有される極細導電繊維を射出体の表面に露出させるか、又はその表面から100nm未満の内部に含有させて、表面抵抗率を低下させた導電層を形成した導電性射出体となした後に、該成形金型を冷却して導電性射出成形体を取出すことを特徴とする導電性射出成形体の製造方法。
- 射出成形により導電性射出成形体を製造する方法であって、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物を成形金型内に射出した後に、さらに合成樹脂を前記成形金型内に射出して、合成樹脂からなる基材層に極細導電繊維含有熱可塑性樹脂からなる表面層を積層するか又は前記基材層の周りを前記表面層で覆った射出体となし、該射出体を成形金型内に保持したまま保温して、前記表面層に含有される極細導電繊維を射出体の表面に露出させるか、又はその表面から100nm未満の内部に含有させて、表面抵抗率を低下させた導電層を形成した導電性射出体となした後に、該成形金型を冷却して導電性射出成形体を取出すことを特徴とする導電性射出成形体の製造方法。
- 射出成形により導電性射出成形体を製造する方法であって、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物からなる表面層が形成された転写フィルム若しくはラミネート用フィルム、又は極細導電繊維を含有するラミネート用フィルムを予め作製し、前記転写フィルム又はラミネート用フィルムを成形金型内に配置した後に、その成形金型内に合成樹脂を射出して前記フィルムが表面に積層された射出体となし、該射出体を成形金型に保持したまま保温して、前記フィルムの表面層に含有される極細導電繊維を射出体の表面に露出させるか、又はその表面から100nm未満の内部に含有させて、表面抵抗率を低下させた導電性を向上させた導電性射出体となした後に、該成形金型を冷却して導電性射出成形体を取出すことを特徴とする導電性射出成形体の製造方法。
- 射出成形により導電性射出成形体を製造する方法であって、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物からなる塗液を予め作製し、該塗液を成形金型内に塗布して塗膜を形成した後に、その成形金型内に合成樹脂を射出して前記塗膜が表面に転写されて表面層となされた射出体となし、該射出体を成形金型内に保持したまま保温して、前記表面層に含有される極細導電繊維を射出体の表面に露出させるか、又はその表面から100nm未満の内部に含有させて、表面抵抗率を低下させた導電性を向上させた導電性射出体とした後に、該成形金型を冷却して導電性射出成形体を取出すことを特徴とする導電性射出成形体の製造方法。
- 上記保温が、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度の温度から融点より30℃高い温度の温度範囲で、1〜20分間行なわれることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の導電性射出成形体の製造方法。
- 上記保温が、極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物の粘度が5.0×103Pa・s以上1.0×107Pa・s未満の範囲で行われることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の導電性射出成形体の製造方法。
- 上記保温により射出体の少なくとも表面に、表面抵抗率を低下させた導電層が形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の導電性射出成形体の製造方法。
- 上記冷却が、冷却中の平均冷却速度が30℃/分未満で行なわれることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の導電性射出成形体の製造方法。
- 極細導電繊維含有熱可塑性樹脂組成物に含有される極細導電繊維がカーボンナノチューブであって、該カーボンナノチューブが前記組成物に0.01〜12.0質量%含有され、導電性射出成形体の表面抵抗率が101Ω/□以上1012Ω/□未満であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の導電性射出成形体の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006126043A JP2007296725A (ja) | 2006-04-28 | 2006-04-28 | 導電性射出成形体の製造方法 |
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---|---|---|---|---|
JP2010284859A (ja) * | 2009-06-11 | 2010-12-24 | Fujitsu Component Ltd | 薄肉成型部材 |
KR101445601B1 (ko) * | 2012-07-24 | 2014-10-06 | 비아이 이엠티 주식회사 | 반도체 칩 트레이 제조장치 및 그 제조방법 |
-
2006
- 2006-04-28 JP JP2006126043A patent/JP2007296725A/ja not_active Withdrawn
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