JP2007295830A - 安定性に優れた流動食 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】平均粒径が1μm以下の微粒リン酸三カルシウムを使用することで、流動食中成分の凝集又は沈降を抑制し、外部視認性の包装形態において外観上の見た目の悪さが改善され、カルシウムを高濃度に含有する懸濁安定性に優れた流動食を取得することができ、上記課題が解決できた。
【選択図】なし
Description
上記栄養素の1つであるミネラル類の一種にカルシウムがある。カルシウムは骨を強くし、体を正常に機能させるのに重要な働きをするため、流動食中に必要な栄養素として含有される。通常、カルシウム源としては水溶性カルシウム塩を使用することが多い。成人が一日に必要なカルシウム量は600mg以上と言われており、必要量のカルシウムを摂取する上で流動食中に高濃度にカルシウムを含有させることが重要である。
すなわち、本発明は以下のものに関する。
〔2〕平均粒径が1μm以下である微粒リン酸三カルシウムの含量がリン酸三カルシウムとして0.6〜2.0g/Lである前記〔1〕に記載の流動食;
〔3〕平均粒径が1μm以下である微粒リン酸三カルシウムの含量がリン酸三カルシウムとして0.6〜1.5g/Lである前記〔1〕に記載の流動食;
〔4〕リン酸三カルシウムの含量がリン酸三カルシウムとして0.6〜2.0g/Lである前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の流動食;
〔5〕エネルギーが0.9〜2.2kcal/mLである前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の流動食;
〔6〕以下のa)〜d)の工程により製造される流動食;
a)平均粒径が1μm以下である微粒リン酸三カルシウムを流動食に対して0.6〜2.0g/Lの分量で水に投入する工程
b)流動食中のリン酸三カルシウムとして合計0.6〜2.0g/Lとなるように、平均粒径が1.1〜10μmの通常リン酸三カルシウムを前記a)の水に投入する工程
c)蛋白質、炭水化物、脂質、ミネラルを投入する工程
d)高圧ホモジナイザーにて均質化する工程
〔7〕カルシウム含量が600〜800mg/Lである前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の流動食;
〔8〕平均粒径が1μm以下である微粒リン酸三カルシウムを流動食に対して0.6〜2.0g/Lの分量で用いることによる、懸濁状態の安定した流動食の製造方法;
〔9〕平均粒径が1μm以下である微粒リン酸三カルシウムを流動食に対して0.6〜2.0g/Lの分量で用いることによる、流動食の安定化方法。
本発明においてg/Lとは流動食単位体積あたりの成分含量(重量)を意味している。また、本発明において通常リン酸三カルシウムとは、平均粒径1.1〜10μmのリン酸三カルシウムを意味し、さらに本発明において微粒リン酸三カルシウムとは平均粒径1μm以下の微細なリン酸三カルシウムを意味する。
流動食に対する蛋白質の配合比率は、上限としては、100g/L以下であることが好ましく、70g/L以下であることがより好ましく、下限としては、20g/L以上であることが好ましく、30g/L以上であることがより好ましい。
炭水化物は、一般的に食用として利用されているものが使用できる。例えば、澱粉、デキストリン、砂糖、オリゴ糖、又は食物繊維が挙げられる。炭水化物の配合割合は、上限としては、400g/L以下であることが好ましく、300g/L以下であることがより好ましく、下限としては、100g/L以上であることが好ましく、150g/L以上であることがより好ましい。
ミネラルは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄等は食品添加物扱いの塩の形で添加することができる。これらは1種のみを使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて用いることもできる。ミネラルの量は、『日本人の食事摂取基準[2005年度版]』に記載の推奨量、目安量、目標量、又は上限量に従い適宜設定することができる。
本発明の流動食において、カルシウム源として使用される微粒リン酸三カルシウムは、その平均粒径が1μm以下であれば特に限定されないが、凝集又は沈降を抑制し、懸濁安定性を改善するという観点で好ましい平均粒径は、上限としては、1.0μm以下であることが好ましく、0.9μm以下であることがより好ましく、0.7μm以下であることがさらに好ましく、0.5μm以下であることが特に好ましく、0.3μm以下であることが最も好ましく、下限としては、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることがさらに好ましい。また、このような平均粒径にすることで長期保管においても凝集又は沈降を防止することができ、例えば6ヶ月間保管しても凝集又は沈降を起こすことがない。
本発明の流動食において使用する平均粒径1μm以下の微粒リン酸三カルシウムの流動食に対する含量は、0.55g/L以上であれば特に限定されないが、リン酸三カルシウムとして、上限としては、2.0g/L以下であることが好ましく、1.5g/L以下であることがより好ましく、1.3g/L以下であることがさらに好ましく、1.1g/L以下であることが特に好ましく、0.9g/L以下であることが最も好ましく、下限としては0.55g/L以上であることが好ましく、0.6g/L以上であることがより好ましく、0.65g/L以上であることがさらに好ましく、0.7g/L以上であることが特に好ましい。
本発明により以下のa)〜d)の工程により製造される流動食が提供される。すなわち、
a)平均粒径が1μm以下である微粒リン酸三カルシウムを流動食に対して0.6〜2.0g/Lの分量で水に投入する工程
b)流動食中のリン酸三カルシウムとして合計0.6〜2.0g/Lとなるように、平均粒径が1.1〜10μmの通常リン酸三カルシウムを前記a)の水に投入する工程
c)蛋白質、炭水化物、脂質、ミネラルを投入する工程
d)高圧ホモジナイザーにて均質化する工程
である。
高圧ホモジナイザーにおける圧力は均質化可能圧力であれば特に限定されないが、好ましくは20MPa以上、より好ましくは30MPa以上である。
また、以下に示す方法によっても本発明の流動食を製造することができる。約60℃の温水に、上記の好ましい量の微粒リン酸三カルシウム及び通常リン酸三カルシウム、また、必要に応じて食物繊維及びミネラル酵母を添加し高圧ホモジナイザーにて30MPaで分散処理する。続いてカゼインカルシウム等の蛋白質、炭水化物、ミネラル、又はビタミンを添加溶解した約60℃温水を別途用意し、これと前記分散処理液とを混合させ、さらに油脂類を添加した後、高圧ホモジナイザーにて50MPaで均質化処理することにより本発明の流動食を製造することができる。
本発明の流動食をプラスチック製の袋に入れることでプラスチック製袋封入流動食となすことができる。特に該プラスチック製袋が外部視認性である場合に、本発明の流動食は成分の凝集又は沈降を生じず、成分が偏在しないため、本発明の効果を発揮することができる。プラスチック製袋は外部視認性であることが好ましく、外部視認性であれば特に限定されない。
本発明において、平均粒径とは、種々の大きさの粒子の粒径の平均であり、レーザー回折法により測定することができる。また、平均粒径を測定における粒径基準として体積パラメーターを用いることができる。ピーク分布の計算方法としては平均径を用いることができる。屈折率の値としては1.30−0.00iを用いることができる。
以下に実施例、比較例、及び試験例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
1Lの60℃蒸留水に、通常リン酸三カルシウム(太平化学産業製、リン酸三カルシウム含量98g以上/100g)を16g加え、高圧ホモジナイザーにて圧力20MPaで均質化処理したもの、及び1Lの60℃蒸留水に、微粒リン酸三カルシウム(マリンサイエンス、製品名フォスカルシウムP−24、リン酸三カルシウム含量64g/100g)を25g(リン酸三カルシウム16g含有)加え、高圧ホモジナイザーにて圧力20MPaで均質化処理したもの用い、通常リン酸三カルシウム及び微粒リン酸三カルシウムそれぞれの平均粒径を粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA910型)を用いて測定した。その際、粒径基準を体積、ピーク分布の計算方法を平均径、屈折率を1.30−0.00iに設定して測定を行った。
その結果、通常リン酸三カルシウムの平均粒径は4.2μmであったのに対し、微粒リン酸三カルシウムは0.42μmであった。
60℃蒸留水0.6Lに、微粒リン酸三カルシウム(マリンサイエンス、製品名フォスカルシウムP−24、リン酸三カルシウム含量64重量%、平均粒径0.42μm)2.0g(リン酸三カルシウム1.28g含有)、通常リン酸三カルシウム(太平化学産業製、リン酸三カルシウム含量98重量%以上)1.27g、ミネラル酵母1.4g、食物繊維21gを加え高圧ホモジナイザーにて圧力30MPaで分散処理した。続いて60℃蒸留水1.2Lを加え、さらに乳蛋白110g(うちカゼインカルシウム37g)、コラーゲンペプチド20g、デキストリン440g、ミネラル類(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、及び鉄)25g、ビタミン類(ビタミンA、B1、B2、B6、B12、C、D3、E、葉酸、パントテン酸、及びナイアシン)2gを加え溶解した後、植物油脂73g、界面活性剤9gを入れて攪拌乳化し、蒸留水にて全量を2Lに調製した。この調製液を、高圧ホモジナイザーにて圧力50MPaで均質化処理後を行うことで流動食を取得した。該流動食200mlをプラスチック製袋に入れ、121℃20分間レトルト滅菌処理した。
微粒リン酸三カルシウム2.38g(リン酸三カルシウム1.52g含有)、通常リン酸三カルシウム1.02gを用いる以外は実施例1と同様の方法により流動食を取得した。
[実施例3]
微粒リン酸三カルシウム2.78g(リン酸三カルシウム1.78g含有)、通常リン酸三カルシウム0.76gを用いる以外は実施例1と同様の方法により流動食を取得した。
[実施例4]
微粒リン酸三カルシウム3.18g(リン酸三カルシウム2.04g含有)、通常リン酸三カルシウム0.51gを用いる以外は実施例1と同様の方法により流動食を取得した。
[実施例5]
通常リン酸三カルシウムは使用せず、微粒リン酸三カルシウム3.97g(リン酸三カルシウム2.54g含有)を使用する以外は実施例1と同様の方法により流動食を取得した。
実施例1〜5についてはいずれもカルシウム含量が700〜800mg/Lの範囲内であった。
微粒リン酸三カルシウムは使用せず、通常リン酸三カルシウム2.54gを使用する以外は実施例1と同様の方法により流動食を取得した。
[比較例2]
微粒リン酸三カルシウム1.60g(リン酸三カルシウム1.02g含有)、通常リン酸三カルシウム1.52gを用いる以外は実施例1と同様の方法により流動食を取得した。
実施例1〜5及び比較例1、2の流動食を室温にて1ヶ月静置保管し、生じる沈降物の重量の測定及び沈降物の目視観察判定を行った。
沈降物の重量は、200ml入りの袋を開封し静かに液部を廃棄した後、沈降物を回収し、これを105℃で恒量になるまで乾燥し重量測定した。その結果を表1に示した。
表1に示すように、実施例1〜5については懸濁安定性に優れ、流動食中成分の分散性も良好であり、流動食中に異物も確認されなかった。それに対し比較例1及び2については分散性が悪く、軽く振っても再分散せず沈降物が残ったままの状態であった。
Claims (8)
- リン酸三カルシウムの平均粒径が1μm以下である微粒リン酸三カルシウムを含有する流動食。
- 平均粒径が1μm以下である微粒リン酸三カルシウムの含量がリン酸三カルシウムとして0.6〜2.0g/Lである請求項1に記載の流動食。
- リン酸三カルシウムの含量がリン酸三カルシウムとして0.6〜2.0g/Lである請求項1又は2に記載の流動食。
- エネルギーが0.9〜2.2kcal/mLである請求項1〜3のいずれかに記載の流動食。
- 以下のa)〜d)の工程により製造される流動食。
a)平均粒径が1μm以下である微粒リン酸三カルシウムを流動食に対して0.6〜2.0g/Lの分量で水に投入する工程
b)流動食中のリン酸三カルシウムとして合計0.6〜2.0g/Lとなるように、平均粒径が1.1〜10μmの通常リン酸三カルシウムを前記a)の水に投入する工程
c)蛋白質、炭水化物、脂質、ミネラルを投入する工程
d)高圧ホモジナイザーにて均質化する工程 - カルシウム含量が600〜800mg/Lである請求項1〜5のいずれかに記載の流動食。
- 平均粒径が1μm以下である微粒リン酸三カルシウムを流動食に対して0.6〜2.0g/Lの分量で用いることによる、懸濁状態の安定した流動食の製造方法。
- 平均粒径が1μm以下である微粒リン酸三カルシウムを流動食に対して0.6〜2.0g/Lの分量で用いることによる、流動食の安定化方法。
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