以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
[実施の形態1]
(コイルの構成)
図1は、本発明の実施の形態1にかかるコイル1の正面図である。図2は、図1の断面E−Eを示す断面図である。図3は、図1に示す固定部材8を示す斜視図である。図4は、図3に示す固定部材8の、端子挿入孔8a、8b、リード線挿入孔8e、8fおよび収納孔8g、8hが形成された部分の断面を説明するための模式図である。なお、図1は、図2のF−F方向からコイル1を示している。また、図1では、外装テープ10等の図示を省略している。さらに、図4では、端子挿入孔8a、8bに端子4、5が圧入され、リード線挿入孔8e、8fにリード線6、7が挿入され、かつ、収納孔8g、8kに半田付け部12、13が収納された状態を図3の紙面手前側から示している。
実施の形態1のコイル1は、図1および図2に示すように、絶縁性の樹脂材料から形成されるボビン2に導線3が巻回されて形成されたボビン付のコイルであり、DCソレノイドやステッピングモータ等の駆動用コイルとして使用される。このコイル1は、ボビン2および導線3の他に、図1から図4に示すように、導線3の先端部3aが巻回される巻回部4aを有する第1の端子4(以下、第1端子4とする)と、導線3の後端部3bが巻回される巻回部5aを有する第2の端子5(以下、第2端子5とする)と、第1端子4の巻回部4aに半田付けされる第1のリード線6(以下、第1リード線6とする)と、第2端子5の巻回部5aに半田付けされる第2のリード線7(以下、第2リード線7とする)と、第1端子4が圧入される第1の端子挿入孔8a(以下、第1端子挿入孔8aとする)および第2端子5が圧入される第2の端子挿入孔8b(以下、第2端子挿入孔8bとする)が形成され巻回後の導線3の外周側に固定される固定部材8と、導線3と固定部材8との間に配設される絶縁シート9と、固定部材8を固定するとともに導線3の外周側を覆う外装テープ10とを備えている。
ボビン2は、図1および図2に示すように、貫通孔2aが形成されたフランジ付の円筒状部材である。具体的には、ボビン2は、円筒状の胴部2bと、胴部2bの一端(図2では左端)に形成された円板状の第1フランジ部2cと、胴部2bの他端(図2では右端)に形成された角板状の第2フランジ部2dとから構成されている。なお、ボビン2の形状は円筒形状には限定されず、角筒形状であっても良い。また、第1フランジ部2cは角板状に形成されても良いし、第2フランジ部2dは円板状に形成されても良い。
導線3は、銅等の導電性の線材が絶縁被膜で覆われて形成された被覆線である。この導線3は、図2に示すように、ボビン2の胴部2bに巻回されている。また、第1端子4の巻回部4aに巻回される導線3の先端部3a、および、第2端子5の巻回部5aに巻回される導線3の後端部3bは、図2における胴部2bの右端側から引き出されている。なお、以下では、先端部3aおよび後端部3bをまとめて表す場合には、端部3a、3bと表記する。
第1端子4は、導電性を有する材料(たとえば、鉄系材料や鉄系合金材料)で形成された細長い円柱状の部材である。図4に示すように、第1端子4の先端部(図4の上端部)は、導線3の先端部3aが巻回される巻回部4aとなっている。また、第1端子4の先端には、径方向外側に広がる拡径部4bが形成されている。この拡径部4bは、巻回部4aに巻回された導線3の先端部3aの巻回部4aからの抜けを防止する機能を果たしている。第2端子5も、第1端子4と同様に、導電性材料で形成された細長い円柱状の部材であり、第2端子5の先端部(図4の上端部)は、導線3の後端部3bが巻回される巻回部5aとなっている。また、第2端子5の先端には、巻回部5aに巻回された導線3の後端部3bの巻回部5aからの抜けを防止する拡径部5bが形成されている。なお、以下では、第1端子4および第2端子5をまとめて表す場合には、端子4、5と表記する。
第1リード線6は先端側(図4の上端側)を除いて、絶縁被膜で覆われている。第1リード線6の先端側の絶縁被膜が除去された部分は、芯線が露出した導通部6aとなっている。また、第1リード線6の絶縁被膜の先端側の端部は、導通部6aとの境界部6bとなっている。同様に、第2リード線7も先端側(図4の上端側)を除いて、絶縁被膜で覆われており、先端側の絶縁被膜が除去された部分は、芯線が露出した導通部7aとなっている。また、第2リード線7の絶縁被膜の先端側の端部は、導通部7aとの境界部7bとなっている。なお、以下では、第1リード線6および第2リード線7をまとめて表す場合には、リード線6、7と表記する。
導線3の先端部3aが巻回される巻回部4aと第1リード線6の導通部6aとは半田付けされている。図4に示すように、巻回部4aと導通部6aとが半田付けされることで、第1の半田付け部12(以下、第1半田付け部12とする)が形成されている。同様に、導線3の後端部3bが巻回される巻回部5aと第2リード線7の導通部7aとは半田付けされ、巻回部5aと導通部7aとが半田付けされることで、第2の半田付け部13(以下、第2半田付け部13とする)が形成されている。なお、図4に示すように、巻回部4aと導通部6aとの間、および、巻回部5aと導通部7aとの間には、半田14が介在する。また、半田14は、巻回部4a、5aおよび導通部6a、7aの各周囲にも付着している(図示省略)。また、以下では、第1半田付け部12および第2半田付け部13をまとめて表す場合には、半田付け部12、13と表記する。
固定部材8は、絶縁性の樹脂材料で形成された薄い板材である。この固定部材8は、円筒状のボビン2の胴部2bに巻回された導線3の外周側に固定される。そのため、図3に示すように、固定部材8は、導線3の外周側の曲率に応じた曲率に、かつ、図3の紙面手前側に略矩形の板材が湾曲させられた形状となるように構成されている。また、固定部材8は、図3において上面となる第1の端面8c(以下、第1端面8cとする)と、第1端面8cと平行で、かつ、図3において下面となる第2の端面8d(以下、第2端面8dとする)とを備えている。固定部材8は、図2に示すように、第1端面8cが図2の右方向を向いた状態で、導線3の外周側に固定されている。具体的には、固定部材8は、第2フランジ部2d側における導線3の外周側に固定されている。なお、ボビン2が角筒状の形成される場合には、固定部材8は平板状に形成すれば良い。
固定部材8には、上述の第1端子挿入孔8aおよび第2端子挿入孔8bの他、第1リード線6が挿入される第1のリード線挿入孔8e(以下、第1リード線挿入孔8eとする)と、第2リード線7が挿入される第2のリード線挿入孔8f(以下、第2リード線挿入孔8fとする)と、第1半田付け部12が収納される第1の収納孔8g(以下、第1収納孔8gとする)と、第2半田付け部13が収納される第2の収納孔8h(以下、第2収納孔8hとする)とが形成されている。なお、以下では、第1端子挿入孔8aおよび第2端子挿入孔8bをまとめて表す場合には、端子挿入孔8a、8bと表記し、第1リード線挿入孔8eおよび第2リード線挿入孔8fをまとめて表す場合には、リード線挿入孔8e、8fと表記し、第1収納孔8gおよび第2収納孔8hをまとめた表す場合には、収納孔8g、8hと表記する。
収納孔8g、8hは、図3に示すように、第2端面8dに達しないように、第1端面8cから所定の深さで窪む窪み孔であり、第1収納孔8gと第2収納孔8hとは、図3の左右方向に所定の間隔だけ離れた状態で形成されている。すなわち、第1収納孔8gの開口部8jおよび第2収納孔8hの開口部8kが第1端面8cに形成されるとともに、第1収納孔8gと第2収納孔8hとは間隔をあけて平行状態となるように形成されている。また、収納孔8g、8hには、端子挿入孔8a、8bとリード線挿入孔8e、8fとが連通している。すなわち、収納孔8g、8hの底面から図3の下方向に向かって端子挿入孔8a、8bとリード線挿入孔8e、8fとが形成されている。なお、図4に示すように、第1端子4の拡径部4bおよび第2端子5の拡径部5bが収納可能となるように、収納孔8g、8hの、拡径部4b、5bに対応する部分は、他の部分に比べて若干大きく形成されている。
端子挿入孔8a、8bは、図3に示すように、第2端面8dに達しないように、収納孔8g、8hの底面から所定の深さで窪む窪み孔である。すなわち、端子挿入孔8a、8bは、第2端面8dまで貫通しない窪み孔である。この端子挿入孔8a、8bは、図3の左右方向において、収納孔8g、8hの底面の外側部分に連通している。
リード線挿入孔8e、8fは、図3に示すように、収納孔8g、8hの底面から第2端面8dまで貫通する貫通孔である。このリード線挿入孔8e、8fは、図3の左右方向において、収納孔8g、8hの底面の内側部分に連通している。また、リード線挿入孔8e、8fはそれぞれ、リード線6、7の導通部6a、7aに対応して形成された小径孔部8m、8nと、小径孔部8m、8nよりも大きな径に、かつ、リード線6、7の絶縁被膜で覆われた部分に対応して形成された大径孔部8p、8qとから構成されている。図3等に示すように、小径孔部8m、8nと大径孔部8p、8qとは、収納孔8g、8hの底面から第2端面8dに向かってこの順番で形成されている。また、小径孔部8m、8nと大径孔部8p、8qの間には、段差面8r、8sが形成されている。
本形態では、収納孔8g、8hの深さと端子挿入孔8a、8bの深さの合計が、端子4、5の長さとほぼ等しくなるように、収納孔8g、8hおよび端子挿入孔8a、8bが形成されている。また、収納孔8g、8hの深さと小径孔部8m、8nの深さの合計が、導通部6a、7aの長さより小さくなるように、収納孔8g、8hおよび小径孔部8m、8nが形成されている。なお、収納孔8g、8hの深さと端子挿入孔8a、8bの深さの合計が、端子4、5の長さよりも大きくなるように、収納孔8g、8hおよび端子挿入孔8a、8bが形成されても良い。
上述のように、端子挿入孔8a、8bに端子4、5が圧入されている。具体的には、図4に示すように、端子4、5の図4の下端が端子挿入孔8a、8bの底面に当接するまで、端子挿入孔8a、8bに端子4、5が圧入されている。なお、端子4、5の下端と、端子挿入孔8a、8bの底面との間に隙間をあけた状態で、端子挿入孔8a、8bに端子4、5が圧入されても良い。また、図4では、便宜上、端子挿入孔8a、8bの内周面と端子4、5の外周面との間に隙間が形成されているが、端子4、5は端子挿入孔8a、8bに圧入されているため、実際には、端子4、5の外周面と端子挿入孔8a、8bの内周面とは当接している。後述の図6(B)、図7(B)および図8についても同様である。
リード線6、7は、図4に示すように、導通部6a、7aが第1端面8c側に配置されるように、リード線挿入孔8e、8fに挿入されている。すなわち、リード線6、7は、第2端面8d側に引き出されている。また、導通部6a、7aの基端側部分(図4の下側部分)は、大径孔部8p、8qの中に配置されている。すなわち、リード線6、7の境界部6b、7bは、段差面8r、8sに当接していない。
半田付け部12、13は、収納孔8g、8hに収納されている。具体的には、図4に示すように、端子4、5の先端、リード線6、7(導通部6a、7a)の先端および半田14が第1端面8cから突出しないように、半田付け部12、13が、収納孔8g、8hに収納されている。
絶縁シート9は、絶縁性を有する材料から形成された薄いシートである。この絶縁シート9は、図2に示すように、導線3の外周に巻回され、導線3と固定部材8との間に配置されている。具体的には、図2に示すように、固定部材8の配置位置に対応する導線3の外周にのみ絶縁シート9が巻回されている。この絶縁シート9は、固定部材8によって生じうる導線3の絶縁被膜の損傷を防止する機能を果たしている。また、絶縁シート9は、半田付け部12、13(具体的には、端子4、5の先端部分、導通部6a、7aの先端部分および半田14)と導線3との短絡を防止する機能を果たしている。さらに、絶縁シート9は、図2における胴部2bの右端側から引き出される導線3の端部3a、3bの引出し部の位置決めをする機能も果たしている。なお、絶縁シート9は、導線3の外周全体を覆うように、導線3の外周に巻回されても良い。また、固定部材8が固定される導線3の外周側の一部にのみ絶縁シート9を貼り付けても良い。
外装テープ10は、絶縁性を有する材料(たとえば、絶縁性の布)で形成された薄いテープである。図2に示すように、外装テープ10は、導線3、固定部材8および絶縁シート9の全体を覆うように巻回されている。すなわち、固定部材8は、外装テープ10によって、導線3の外周側に固定されている。この外装テープ10は、コイル1を構成する導電性の部材(導線3、端子4、5等)と、コイル1の外部の部材との短絡を防止する機能を果たしている。また、外装テープ10は、図2に示すように、リード線6、7の一部を導線3の外周等に固定しており、固定部材8からのリード線6、7の抜け強度を上げる機能も果たしている。
(コイルの製造方法)
図5は、図1に示すコイル1の製造方法のフローチャートである。図6は、図5に示す巻線工程S4の状態を示す図であり、(A)はコイル1の側面からの状態を示し、(B)は固定部材8の内部の状態を示す。図7は、図5に示す絶縁シート巻回工程S6の状態を示す図であり、(A)はコイル1の側面からの状態を示し、(B)は固定部材8の内部の状態を示す。図8は、図5に示す半田付け工程S8における固定部材8の内部の状態を示す図である。図9は、図5に示す位置決め工程S10の状態をコイル1の側面から示す図である。なお、図6(B)、図7(B)および図8では、図4に図示された固定部材8の断面に対応する断面が図示されている。
以上のように構成されたコイル1の製造方法を以下に説明する。
まず、図示を省略する自動巻線機の固定治具にボビン2を固定する(ボビン固定工程S1)。このボビン固定工程S1では、固定部材8も自動巻線機の固定治具に固定する。具体的には、図6(A)に示すように、第1端面8cを上に向けた状態で、かつ、図4の紙面手前側の曲面よりも曲率の小さな図4の紙面奥側の曲面を第2フランジ部2dに対向させた状態で、第2フランジ部2dの側方に固定部材8を固定する。
その後、端子挿入孔8a、8bに端子4、5の一部を圧入する(端子圧入工程S2)。具体的には、図6(B)に示すように、巻回部4a、5aとなる端子4、5の先端部が第1端面8cから突出するように、第1端面8c側から端子挿入孔8a、8bに端子4、5を圧入する。
その後、第1端子4の巻回部4aに導線3の先端部3aを巻回する(先端部巻回工程S3)。巻回部4aへの先端部3aの巻回は、自動巻線機によって自動で行われる。その後、ボビン2の胴部2bに導線3を巻回する(巻線工程S4)。この巻線工程S4では、固定治具とともに、ボビン2および固定部材8が回転して、胴部2bへの導線3の巻回は、自動巻線機によって自動で行われる。すなわち、本形態のボビン2の胴部2bは、巻線工程S4で固定部材8とともに回転する被巻付部材となっている。
ボビン2への導線3を巻回が終了すると、図7(B)に示すように、第2端子5の巻回部5aに導線3の後端部3bを巻回する(後端部巻回工程S5)。巻回部5aへの後端部3bの巻回も、自動巻線機によって自動で行われる。
その後、図7(A)に示すように絶縁シート9を導線3の外周に巻回する(絶縁シート巻回工程S6)。具体的には、固定部材8の配置位置に対応する導線3の外周(すなわち、第2フランジ部2d側の外周)に絶縁シート9を巻回する。
その後、リード線6、7をリード線挿入孔8e、8fに挿入する(リード線挿入工程S7)。具体的には、図8に示すように、リード線6、7の境界部6b、7bが段差面8r、8sに当接して、導通部6a、7aの先端側が第1端面8cから突出するように、第2端面8d側からリード線挿入孔8e、8fにリード線6、7を挿入する。
その後、自動巻線機の固定治具から固定部材8とボビン2とを取り外して、導線3の先端部3a、巻回部4aおよび導通部6aを半田付けするとともに、導線3の後端部3b、巻回部5aおよび導通部7aを半田付けする(半田付け工程S8)。すなわち、先端部3aが巻回された巻回部4aに導通部6aを半田付けするとともに、後端部3bが巻回された巻回部5aに導通部7aを半田付けする。この半田付け工程S8で、半田付け部12、13が形成される。また、この半田付け工程S8で、導線3の絶縁被膜が破れ、導線3と巻回部4a、5aと導通部6a、7aとが電気的に導通する。なお、半田付け工程S8では、固定部材8から突出している巻回部4a、5a等を半田槽につけるいわゆるどぶ付けによって、半田付け作業が行われているが、その他の方法を採用して半田付けを行っても良い。
その後、リード線6、7を第2端面8d側(図8では下側)に引っ張って、半田付け部12、13を収納孔8g、8hに収納する(収納工程S9)。具体的には、図4に示すように、端子4、5の下端が端子挿入孔8a、8bの底面に当接して、端子4、5の先端、導通部6a、7aの先端および半田14が第1端面8cから突出しないように、半田付け部12、13を収納孔8g、8hに収納する。
その後、図9に示すように、絶縁シート9の外周側に固定部材8を位置決めする(位置決め工程S10)。その際には、固定部材8を、図7に示す状態から反時計方向へ270°回転させる。その後、図4に示すように、導線3、固定部材8および絶縁シート9の全体を覆うように外装テープ10を巻回する(外装テープ巻回工程S11)。この外装テープ巻回工程S11で、位置決めされた固定部材8を導線3の外周側に固定する。すなわち、外装テープ巻回工程S11は固定部材8の固定工程となっている。外装テープ10の巻回が終了すると、コイル1の製造工程が終了する。
(実施の形態1の主な効果)
以上説明したように、実施の形態1では、先端部巻回工程S3で第1端子4の巻回部4aにのみ導線3の先端部3aを巻回するとともに、後端部巻回工程S5で第2端子5の巻回部5aにのみ導線3の後端部4aを巻回している。すなわち、導線3の端部3a、3bは、端子4、5にのみ巻回されている。そのため、鉄系合金材料等の所定の剛性を有する導電性材料で端子4、5を形成することで、特許文献2に記載されているようなリード線の予備半田の工程が不要になる。また、実施の形態1では、導線3の端部3a、3bが巻回される端子4、5は、固定部材8に圧入されている。そのため、特許文献2に記載されているような固定部材の加熱、加圧が不要となる。さらに、実施の形態1では、半田付け工程S8で、第1端子4の巻回部4aと導線3の先端部3aとを半田付けするとともに、第2端子5の巻回部5aと導線3の後端部3bとを半田付けしている。そのため、特許文献1に記載されているような、導線の端部をピンから取り外す作業およびリード線の先端部へ導線の端部を挿入する作業が不要になる。その結果、実施の形態1では、コイル1の製造工程の簡素化を図ることができる。
実施の形態1では、リード線挿入工程S7で、導通部6a、7aの先端側が第1端面8cから突出するように、第2端面8d側からリード線挿入孔8e、8fにリード線6、7を挿入している。また、半田付け工程S8では、先端部3aが巻回された巻回部4aに導通部6aを半田付けするとともに、後端部3bが巻回された巻回部5aに導通部7aを半田付けしている。そのため、導通部6a、7a、導線3の端部3a、3bおよび端子4、5を同時に半田付けできる。したがって、リード線6、7が導線3の端部3a、3bに電気的に接続される実施の形態1のコイル1であっても、製造工程を簡素化できる。
実施の形態1では、固定部材8に間隔をあけて収納孔8g、8kが形成され、この収納孔8g、8kに半田付け部12、13が収納されている。そのため、半田付け部12、13と導線3との間の絶縁を確実に行うことができる。すなわち、半田付け部12、13と導線3との短絡を防止できる。また、コイル1の外部の部材と半田付け部12、13と間の絶縁を確実に行うこともできる。さらに、固定部材8によって、半田付け部12、13を外部の衝撃から保護することが可能になる。したがって、外装テープ10を厚く巻かなくても、すなわち、外装テープ10の巻回数を多くしなくても、半田付け部12、13の絶縁を図るとともに、半田付け部12、13を外部の衝撃から保護することができる。その結果、コイル1の製造工程が簡素化される。
実施の形態1では、端子挿入孔8a、8bは、第2端面8dに達しないように、収納孔8g、8hの底面から所定の深さで窪む窪み孔となっている。また、端子4、5の図4の下端は端子挿入孔8a、8bの底面に当接している。そのため、リード線6、7が引き出されている第2端面8d側に、リード線6、7が引っ張られた場合であっても、リード線6、7は抜けにくくなる。すなわち、固定部材8からのリード線6、7の抜け強度を上げることができる。
(実施の形態1の変形例)
図10は、本発明の実施の形態1の変形例にかかる固定部材18を示す斜視図である。図11は、図10に示す固定部材18を用いた場合の外装テープ巻回工程S11の状態を示す図であり、(A)は外装テープ10の1次巻き時の状態を示し、(B)は外装テープ10の2次巻き時の状態を示す。
上述した実施の形態1の固定部材8に代えて、図10に示す固定部材18を用いて、コイル1を構成しても良い。以下、固定部材18の構成を説明するとともに、固定部材18を用いた場合のコイル1の製造方法を説明する。なお、図10および図11では、実施の形態1と共通する構成については、共通の符号を用いる。また、以下の説明では、実施の形態1と共通する構成および製造工程については、その説明を簡略化または省略する。
固定部材18は、固定部材8よりも若干厚く形成され、図10に示すように、第1端面8cおよび第2端面8dを有する基部18aと、基部18aの厚さよりも薄く形成され、第2端面8dから図示下方向へ突出する2つの突出部18b、18bとを備えている。
突出部18b、18bは、図10における紙面手前側の曲面(すなわち、図10の紙面奥側の曲面よりも曲率が大きな曲面)が、図10における基部18aの紙面手前側の曲面(すなわち、図10の紙面奥側の曲面よりも曲率が大きな曲面)と同じ面となるように形成されている。また、突出部18b、18bは、図10における左右両側の平面のそれぞれが、図10における基部18aの左右両側の平面と同じ面となるように形成されている。
さらに、突出部18b、18bは、図10の左右方向に離間した状態で形成されており、突出部18b、18bの間には、空間18cが形成されている。具体的には、図10の左右方向では、リード線挿入孔8e、8fよりも外側に突出部18b、18bが形成されている。すなわち、図10の左右方向では、リード線挿入孔8e、8fに対応する位置に、空間18cが形成されている。なお、2つの突出部18b、18bが図10の左右方向でつながって(すなわち、空間18cが形成されないように)1つの突出部18bが形成されても良い。
この固定部材18を用いたコイル1では、外装テープ巻回工程S11において、まず、図11(A)に示すように、突出部18bに外装テープ10を巻回する。すなわち、外装テープ10の1次巻きとして、突出部18bおよび突出部18bよりも図示右側の導線3の外周を覆うように外装テープ10を巻回する。この外装テープ10の1次巻きによって、位置決め工程S10で位置決めされた固定部材18が仮固定される。なお、図11(A)に示すように、外装テープ10の1次巻きは、リード線6、7を持ち上げた状態で行われる。
また、外装テープ巻回工程11では、外装テープ10の1次巻きが終了すると、図11(B)に示すように、外装テープ10の2次巻きとして、1次巻きされた外装テープ10、固定部材8および絶縁シート9の全体を覆うように外装テープ10を巻回する。この外装テープ10の2次巻きで固定部材18は本固定される。また、図11(B)に示すように、リード線6、7の、固定部材18から引出部分は外装テープ10に覆われる。
以上のように、実施の形態1の変形例では、固定部材18が、基部18aと突出部18b、18bとを備えている。また、外装テープ巻回工程S11では、外装テープ10の1次巻きとして、突出部18bおよび突出部18bよりも図示右側の導線3の外周を覆うように外装テープ10を巻回して、固定部材18を仮固定する。そのため、固定部材18の本固定作業が容易になる。すなわち、固定部材18を仮固定して安定させることができるため、本固定作業に、たとえば、自動テープ巻機を用いて、外装テープ10を自動で固定部材18上に巻いて、本固定することが可能になる。
また、図10における紙面手前側に形成された突出部18b、18bの厚さは、基部18aの厚さよりも薄いため、1次巻きで外装テープ10を突出部18b、18bに巻回しても、固定部材18の厚さ方向でコイル1の小型化を図ることが可能となる。さらに、固定部材18には、図10の左右方向でリード線挿入孔8e、8fに対応する位置に、空間18cが形成されているため、外装テープ10の1次巻きの際のリード線6、7の引き回しや外装テープ10の1次巻きが容易になる。
[実施の形態2]
(コイルの構成)
図12は、本発明の実施の形態2にかかるコイル21の背面図である。図13は、図12の断面G−Gを示す断面図である。図14は、図12に示す固定部材28を示す斜視図である。図15は、図14に示す固定部材28の、端子挿入孔28a、28bが形成された部分の断面を説明するための模式図である。なお、図12は、図13のH−H方向からコイル21を示している。また、図12では、外装テープ10等の図示を省略している。さらに、図15では、端子挿入孔28a、28bに端子24、25が圧入された状態を図14の紙面手前側から示している。
実施の形態2にかかるコイル21では、固定部材28の構成が、実施の形態1の固定部材8の構成と相違する。また、固定部材28の構成が相違するため、実施の形態2にかかるコイル21の製造工程と実施の形態1にかかるコイル1の製造工程とが相違する。以下では、この相違点を中心に実施の形態2にかかるコイル21の構成およびその製造方法を説明する。なお、図12から図15および図17においては、実施の形態1と共通する構成については、共通の符号を用いる。また、以下の説明では、実施の形態1と共通する構成については、その説明を簡略化または省略する。
実施の形態2のコイル21は、コイル1と同様に、絶縁性の樹脂材料から形成されるボビン22に導線3が巻回されて形成されたボビン付のコイルであり、DCソレノイドやステッピングモータ等の駆動用コイルとして使用される。このコイル21は、ボビン22および導線3の他に、図12から図15に示すように、導線3の先端部3aが巻回される巻回部24aを有する第1の端子24(以下、第1端子24とする)と、導線3の後端部3bが巻回される巻回部25aを有する第2の端子25(以下、第2端子25とする)と、第1端子24が圧入される第1の端子挿入孔28a(以下、第1端子挿入孔28aとする)および第2端子25が圧入される第2の端子挿入孔28b(以下、第2端子挿入孔28bとする)が形成され巻回後の導線3の外周側に固定される固定部材28と、導線3と固定部材8との間に配設される絶縁シート9と、固定部材8を固定するとともに導線3の外周側を覆う外装テープ10とを備えている。
ボビン22は、図12および図13に示すように、実施の形態1のボビン2の胴部2b、第1フランジ部2cおよび第2フランジ部2dにそれぞれ相当する胴部22b、第1フランジ部22cおよび第2フランジ部22dを備えている。このボビン22は、第2フランジ部22dの外形が、ボビン2の第2フランジ部2dの外形よりも小さく形成されている点を除いて、ボビン2と同様に形成されている。
第1端子24は、導電性を有する材料(たとえば、鉄系材料や鉄系合金材料)で形成された細長い円柱状の部材である。図15に示すように、第1端子24は、小径部24bと、小径部24bよりも径の大きな大径部24cとから構成されている。小径部24bと大径部24cとの境界は段差部24dとなっている。また、小径部24bの先端部(図15の上端部)は、導線3の先端部3aが巻回され半田付けされる巻回部24aとなっている。巻回部24aに巻回される導線3の先端部3aは、図13に示すように、絶縁シート9の図示左側から引き出されている。
第2端子25も、第1端子24と同様に、導電性材料で形成された細長い円柱状の部材であり、小径部25bと大径部25cとから構成されている。また、小径部25bと大径部25cとの境界は段差部25dとなっており、小径部25bの先端部(図15の上端部)は、導線3の後端部3bが巻回され半田付けされる巻回部25aとなっている。巻回部25aに巻回される導線3の後端部3bも、先端部3aと同様に、絶縁シート9の図示左側から引き出されている。なお、以下では、第1端子24および第2端子25をまとめて表す場合には、端子24、25と表記する。また、端子24、25は角柱状に形成されても良い。
固定部材28は、固定部材8と同様に、絶縁性の樹脂材料で形成された薄い板材である。図14に示すように、固定部材28は、導線3の外周側の曲率に応じた曲率に、かつ、図14の紙面手前側に略矩形の板材が湾曲させられた形状となるように構成されている。また、固定部材28は、図14において上面となる第1の端面28c(以下、第1端面28cとする)と、第1端面28cと平行で、かつ、図14において下面となる第2の端面28d(以下、第2端面28dとする)とを備えている。固定部材28では、第2端面28d側の、図14の左右方向の両端部分および紙面手前側部分が切り欠かれている。すなわち、第2端面28d側の、図14の左右方向の中心かつ紙面奥側の部分は、図14の下側に突出する突出部28eとなっている。
また、固定部材28は、図13に示すように、第1端面28cが図13の左方向を向いた状態で導線3の外周側に固定されている。具体的には、図13に示すように、第2端面28dが第2フランジ部22dより図示右方向に突出するように、かつ、図12に示すように、突出部28eが第2フランジ部22dの一辺の略中心部分に配置されるように、固定部材28は、導線3の外周側に固定されている。また、この状態では、図12および図13に示すように、突出部28eは、ボビン2の径方向において、第2フランジ部22dの外側に配置される。
第1端子挿入孔28aおよび第2端子挿入孔28b(以下、まとめて表す場合には、端子挿入孔28a、28bとする)は、図14に示すように、第1端面28cから第2端面28dまで貫通する貫通孔である。第1端子挿入孔28aと第2端子挿入孔28bとは、図14の左右方向に所定の間隔だけ離れた状態で形成されている。また、端子挿入孔28a、28bはそれぞれ、端子24、25の小径部24b、25bに対応して形成された小径孔部28f、28gと、小径孔部28f、28gよりも大きな径で、かつ、端子24、25の大径部24c、25cに対応して形成された大径孔部28h、28jとから構成されている。図14等に示すように、小径孔部28f、28gと大径孔部28h、28jとは、第1端面28cから第2端面28dに向かってこの順番で形成されている。また、小径孔部28f、28gと大径孔部28h、28jの間には、段差面28k、28mが形成されている。
端子24、25は、図15に示すように、段差部24d、25dが端子挿入孔28a、28bの段差面28k、28mに当接するように、端子挿入孔28a、28bに圧入されている。図15では、便宜上、端子挿入孔28a、28bの内周面と端子24、25の外周面との間に隙間が形成されているが、端子24、25は端子挿入孔28a、28bに圧入されているため、実際には、端子24、25の外周面と端子挿入孔28a、28bの内周面とは当接している。なお、小径孔部28f、28gおよび大径孔部28h、28jの少なくともいずれか一方に端子24、25が圧入されていれば良い。すなわち、小径孔部28f、28gにのみ小径部24b、25bが圧入され、大径孔部28h、28jに大径部24c、25cが圧入されていなくても良いし、大径孔部28h、28jにのみ大径部24c、25cが圧入され、小径孔部28f、28gに小径部24b、25bが圧入されていなくても良い。また、小径孔部28f、28gに小径部24b、25bが圧入されるとともに、大径孔部28h、28jに大径部24c、25cが圧入されても良い。
また、本形態では、小径孔部28f、28gの深さが、小径部24b、25bの長さよりも浅くなるように、かつ、大径孔部28h、28jの深さが、大径部24c、25cの長さよりも深くなるように、端子挿入孔28a、28bが形成されている。そのため、段差部24d、25dが段差面28k、28mに当接するように、端子24、25が端子挿入孔28a、28bに圧入されると、小径部24b、25bの巻回部24a、25aが第1端面28cから突出する。また、大径部24c、25cの第2端面28d側の端面は、第2端面28dよりも窪む。
この第2端面28dよりも窪んだ端子挿入孔28a、28bには、図示を省略するオス型のコネクタが差し込めるようになっている、また、端子挿入孔28a、28bにオス型のコネクタが差し込まれると、大径部24c、25cの第2端面28d側の端面と、図示を省略するオス型のコネクタの端子とが接触する。すなわち、本形態では、端子24、25の大径部24c、25cと、固定部材28に形成された大径孔部28h、28jによって、第2端面28d側にメス型のコネクタ31が形成されている。
絶縁シート9は、実施の形態1と同様に、固定部材28の配置位置に対応する導線3の外周にのみ巻回されている。また、外装テープ10は、実施の形態1と同様に、導線3、固定部材28および絶縁シート9の全体を覆うように巻回されている。
(コイルの製造方法)
図16は、図12に示すコイル21の製造方法のフローチャートである。図17は、図16に示す絶縁シート巻回工程S27の状態をコイル21の側面から示す図である。
以上のように構成されたコイル21の製造方法を以下に説明する。
実施の形態1と同様に、図示を省略する自動巻線機の固定治具にボビン22を固定する(ボビン固定工程S21)。また、この工程では、図17の二点鎖線に示すように、第1端面28cを上に向けた状態で、かつ、図14の紙面奥側の曲面よりも曲率の大きな図14の紙面手前側の曲面を第2フランジ部22dに向けた状態で、第2フランジ部22dの側方に固定部材28を固定する。
その後、端子挿入孔28a、28bに端子24、25を圧入する(端子圧入工程S22)。具体的には、図15に示すように、段差部24d、25dが端子挿入孔8a、8bの段差面28k、28mに当接するように、第2端面28d側から端子挿入孔28a、28bに端子24、25を圧入する。
その後、第1端子24の巻回部24aに導線3の先端部3aを巻回し(先端部巻回工程S23)、その後、ボビン22の胴部22bに導線3を巻回する(巻線工程S24)。また、巻線工程S24が終了すると、第2端子25の巻回部25aに導線3の後端部3bを巻回する(後端部巻回工程S25)。巻回部24aへの先端部3aの巻回、胴部22bへの先端部3aの巻回および巻回部25aへの後端部3bの巻回は、自動巻線機によって自動で行われる。なお、この巻線工程S24では、固定治具とともに、ボビン22および固定部材28が回転する。すなわち、本形態のボビン22の胴部22bは、巻線工程S24で固定部材28とともに回転する被巻付部材となっている。
その後、導線3の先端部3aと巻回部24aとを半田付けするとともに、導線3の後端部3bと巻回部25aとを半田付けする(半田付け工程S26)。また、自動巻線機の固定治具から固定部材28およびボビン2を取り外して、図17に示すように絶縁シート9を、固定部材8の配置位置に対応する導線3の外周に巻回する(絶縁シート巻回工程S27)。
その後、絶縁シート9の外周側に固定部材28を位置決めする(位置決め工程S28)。具体的には、図13に示すように、第2端面28dが第2フランジ部22dより図示右方向に突出するように、かつ、図14に示すように、突出部28eが第2フランジ部22dの一辺の略中心部分に配置されるように、固定部材28を位置決めする。その後、図13に示すように、導線3、固定部材28および絶縁シート9の全体を覆うように外装テープ10を巻回する(外装テープ巻回工程S29)。この外装テープ巻回工程S29で、固定部材28を導線3の外周側に固定する。すなわち、外装テープ巻回工程S29は固定部材28の固定工程となっている。外装テープ10の巻回が終了すると、コイル21の製造工程が終了する。
(実施の形態2の主な効果)
以上説明したように、実施の形態2では、実施の形態1と同様に、導線3の端部3a、3bは、端子24、25にのみ巻回されている。そのため、所定の剛性を有する導電性材料で端子24、25を形成することで、特許文献2に記載されているようなリード線の予備半田の工程が不要になる。また、導線3の端部3a、3bが巻回される端子24、25は、固定部材28に圧入されているため、特許文献2に記載されているような固定部材の加熱、加圧が不要となる。さらに、半田付け工程S26で巻回部24aと導線3の先端部3aとを半田付けするとともに、巻回部25aと導線3の後端部3bとを半田付けしている。そのため、特許文献1に記載されているような、導線の端部をピンから取り外す作業およびリード線の先端部へ導線の端部を挿入する作業が不要になる。その結果、実施の形態2では、コイル21の製造工程の簡素化を図ることができる。
実施の形態2では、端子24、25の大径部24c、25cと、固定部材28に形成された大径孔部28h、28jによって、第2端面28d側にメス型のコネクタ31が形成されている。そのため、リード線等の接続線と端子24、25とを半田付け等によって電気的に接続する必要がなくなり、コイル21の製造工程が簡素化される。
[実施の形態3]
(コイルの構成)
図18は、本発明の実施の形態3にかかるコイル51の平面図である。図19は、図18に示す固定部材58を示す斜視図である。図20は、図19に示す固定部材58の、端子挿入孔58a、58b、リード線挿入孔58e、58fおよび収納孔58g、58hが形成された部分の断面を説明するための模式図である。なお、図20では、端子挿入孔58a、58bに端子54、55が圧入され、リード線挿入孔58e、58fにリード線6、7が挿入され、かつ、収納孔58g、58kに半田付け部62、63が収納された状態を図19の上側から示している。
実施の形態3にかかるコイル51では、固定部材58がボビン52に一体で形成されている点が、実施の形態1の構成と相違する。また、実施の形態3にかかるコイル51の製造工程と実施の形態1にかかるコイル1の製造工程とが相違する。以下では、この相違点を中心に実施の形態3にかかるコイル51の構成およびその製造方法を説明する。なお、図18から図20および図22から図28においては、実施の形態1と共通する構成については、共通の符号を用いる。また、以下の説明では、実施の形態1と共通する構成については、その説明を簡略化または省略する。
実施の形態3のコイル51は、コイル1と同様に、絶縁性の樹脂材料から形成されるボビン52に導線3が巻回されて形成されたボビン付のコイルであり、DCソレノイドやステッピングモータ等の駆動用コイルとして使用される。このコイル51は、ボビン52および導線3の他に、図18から図20に示すように、導線3の先端部3aが巻回される巻回部54aを有する第1の端子54(以下、第1端子54とする)と、導線3の後端部3bが巻回される巻回部55aを有する第2の端子55(以下、第2端子55とする)と、第1端子54の巻回部54aに半田付けされる第1リード線6と、第2端子55の巻回部55aに半田付けされる第2リード線7と、第1端子54が圧入される第1の端子挿入孔58a(以下、第1端子挿入孔58aとする)および第2端子55が圧入される第2の端子挿入孔58b(以下、第2端子挿入孔58bとする)が形成された固定部材58と、導線3の外周側全面を覆う外装テープ10とを備えている。
ボビン52は、図18および図19に示すように、実施の形態1のボビン2の胴部2b、第1フランジ部2cおよび第2フランジ部2dにそれぞれ相当する胴部52b、第1フランジ部52cおよび第2フランジ部52dを備えている。また、本形態では、角板状の第2フランジ52dの一辺の略中心部分に、固定部材58が樹脂成型で一体に形成されて固定されている。具体的には、図19における第2フランジ部52dの上面から突出するように、かつ、胴部2bの反対側(図19の紙面奥側)へ突出するように、固定部材58が形成されている。
第2フランジ部52dの、固定部材58が形成された部分には、図18および図19に示すように、導線3の先端部3a側を引き回すための案内溝52eと、導線3の後端部3b側を引き回すための案内溝52fとが形成されている。具体的には、図19に示すように、固定部材58の図示左右外側部分に、第2フランジ部52dの紙面手前側の面から窪むとともに上面から窪む略L形状の案内溝52e、52fが形成されている。
第1端子54は、導電性を有する材料(たとえば、鉄系材料や鉄系合金材料)で形成された細長い円柱状の部材であり、その先端部(図20の下端部)は、導線3の先端部3aが巻回される巻回部54aとなっている。第2端子55も、導電性材料で形成された細長い円柱状の部材であり、その先端部(図20の下端部)は、導線3の後端部3bが巻回される巻回部55aとなっている。なお、以下では、第1端子54および第2端子55をまとめて表す場合には、端子54、55と表記する。
実施の形態1と同様に、導線3の先端部3aが巻回される巻回部54aと第1リード線6の導通部6aとは半田付けされている。また、巻回部54aと導通部6aとが半田付けされることで、第1の半田付け部62(以下、第1半田付け部62とする)が形成されている。同様に、導線3の後端部3bが巻回される巻回部55aと第2リード線7の導通部7aとは半田付けされ、巻回部55aと導通部7aとが半田付けされることで、第2の半田付け部63(以下、第2半田付け部63とする)が形成されている。なお、以下では、第1半田付け部62および第2半田付け部63をまとめて表す場合には、半田付け部62、63と表記する。
固定部材58は、上述のように、ボビン52と一体に形成された薄い板材またはブロック部材である。この固定部材58の、図19における紙面手前側には、図示上面から略L形状に窪む2個の凹部58u、58vが図示左右方向に離間した状態で形成されている。また、本形態では、この凹部58u、58vの奥側に形成される2つの面が、第1の端面58c、58c(以下、第1端面58cとする)となり、第1端面58cと平行で、かつ、図19において紙面奥側に形成される固定部材58の面が第2の端面58d(以下、第2端面58dとする)となっている。
凹部58uは、図19に示すように、導線3の先端部3a側を引き回すため、固定部材58の図示左側面から右側に向かって形成された案内溝58u1と、後述のように、第1端子54を挿入するためおよび後述の導通部折り曲げ工程S58でリード線6の導通部6aを折り曲げるために、固定部材58の図示手前側の面から奥側に向かって形成された空間58u2とから構成されている。凹部58vは、図19に示すように、導線3の後端部3b側を引き回すため、固定部材58の図示右側面から左側に向かって形成された案内溝58v1と、後述のように、第2端子55を挿入するためおよび後述の導通部折り曲げ工程S58でリード線7の導通部7aを折り曲げるために、固定部材58の図示手前側の面から奥側に向かって形成された空間58v2とから構成されている。図19等に示すように、案内溝52eと案内溝58u1とが連通し、案内溝52fと案内溝58v1とが連通している。
固定部材58には、第1端子挿入孔58aおよび第2端子挿入孔58bの他、実施の形態1の第1リード線挿入孔8eに相当する第1のリード線挿入孔58e(以下、第1リード線挿入孔58eとする)と、第2リード線挿入孔8fに相当する第2のリード線挿入孔58f(以下、第2リード線挿入孔58fとする)と、第1収納孔8gに相当する第1の収納孔58g(以下、第1収納孔58gとする)と、第2収納孔8hに相当する第2の収納孔58h(以下、第2収納孔58hとする)とが形成されている。なお、以下では、第1端子挿入孔58aおよび第2端子挿入孔58bをまとめて表す場合には、端子挿入孔58a、58bと表記し、第1リード線挿入孔58eおよび第2リード線挿入孔58fをまとめて表す場合には、リード線挿入孔58e、58fと表記し、第1収納孔58gおよび第2収納孔58hをまとめた表す場合には、収納孔58g、58hと表記する。
収納孔58g、58hは、収納孔8g、8hと同様に、第2端面58dに達しないように、第1端面58cから所定の深さで窪む窪み孔であり、第1収納孔58gと第2収納孔58hとは、図19の左右方向に所定の間隔だけ離れた状態で形成されている。すなわち、第1収納孔58gの開口部58jが凹部58uの奥側の第1端面58cに形成され、第2収納孔58hの開口部58kが凹部58vの奥側の第1端面58cに形成されるとともに、第1収納孔58gと第2収納孔58hとは間隔をあけて平行状態となるように形成されている。また、収納孔58g、58hには、端子挿入孔58a、58bとリード線挿入孔58e、58fとが連通している。また、開口部58jが空間58u2に対して開口するように収納孔58gが形成され、開口部58kが空間58v2に対して開口するように収納孔58hが形成されている。
端子挿入孔58a、58bは、端子挿入孔8a、8bと同様に、第2端面58dに達しないように、収納孔58g、58hの底面から所定の深さで窪む窪み孔である。この端子挿入孔58a、58bは、図19の左右方向において、収納孔58g、58hの底面の外側部分に連通している。
リード線挿入孔58e、58fは、リード線挿入孔8e、8fと同様に、収納孔58g、58hの底面から第2端面58dまで貫通する貫通孔である。このリード線挿入孔58e、58fは、図19の左右方向において、収納孔58g、58hの底面の内側部分に連通している。また、リード線挿入孔58e、58fはそれぞれ、実施の形態1の小径孔部8m、8nおよび大径孔部8p、8qに対応する小径孔部58m、58nおよび大径孔部58p、58qとから構成されている。また、小径孔部58m、58nと大径孔部58p、58qの間には、段差面58r、58sが形成されている。
実施の形態1と同様に、収納孔58g、58hの深さと端子挿入孔58a、58bの深さの合計が、端子54、55の長さとほぼ等しくなるように、収納孔58g、58hおよび端子挿入孔58a、58bが形成されている。また、収納孔58g、58hの深さと小径孔部58m、58nの深さの合計が、導通部6a、7aの長さより小さくなるように、収納孔58g、58hおよび小径孔部58m、58nが形成されている。
また、実施の形態1と同様に、端子54、55の図20の上端が端子挿入孔58a、58bの底面に当接するまで、端子挿入孔58a、58bに端子54、55が圧入されている。なお、図20では、便宜上、端子挿入孔58a、58bの内周面と端子54、55の外周面との間に隙間が形成されているが、端子54、55は端子挿入孔58a、58bに圧入されているため、実際には、端子54、55の外周面と端子挿入孔58a、58bの内周面とは当接している。後述の図22、図26および図28についても同様である。
リード線6、7は、実施の形態1と同様に、導通部6a、7aが第1端面58c側に配置され、第2端面58d側に引き出されている。また、導通部6a、7aの基端側部分(図20の上側部分)は、大径孔部58p、58qの中に配置されている。半田付け部62、63は、実施の形態1と同様に、端子54、55の先端、導通部6a、7aの先端および半田14が第1端面58cから突出しないように、収納孔58g、58hに収納されている。
(コイルの製造方法)
図21は、図18に示すコイル51の製造方法のフローチャートである。図22は、図21に示す端子圧入工程S51における固定部材58の内部の状態を示す図である。図23は、図21に示す端子圧入工程S51において固定部材58に圧入される端子54、55を示す側面図である。図24は、図21に示す巻線工程S54における固定部材58をボビン52の胴部52b側から示す図である。図25は、図21に示す後端部巻回工程S55における固定部材58をボビン52の胴部52b側から示す図である。図26は、図21に示すリード線挿入工程S57における固定部材58の内部の状態を示す図である。図27は、図21に示す半田付け工程S59における固定部材58をボビン52の胴部52b側から示す図である。図28は、図21に示す半田付け部矯正工程S60における固定部材58の内部の状態を示す図である。なお、図22、図26および図28では、図20に図示された固定部材28の断面に対応する断面が図示されている。
以上のように構成されたコイル51の製造方法を以下に説明する。
まず、端子挿入孔58a、58bに端子54、55の一部を圧入する(端子圧入工程S51)。ここで、端子圧入工程S51において、端子挿入孔58a、58bに圧入される端子54、55は、図23に示すように、巻回部54a、55aとなる先端部が略90°折り曲げられた状態となっている。端子圧入工程S51では、図22に示すように、折り曲げられた巻回部54a、55aが第1端面58cから突出するように、第1端面58c側から端子挿入孔58a、58bに端子54、55を圧入する。また、端子圧入工程S51では、折り曲げられた巻回部54a、55aが図19における上方向を向くように、端子挿入孔58a、58bに端子54、55を圧入する。
その後、図示を省略する自動巻線機の固定治具にボビン52を固定する(ボビン固定工程S52)。自動巻線機の固定治具には、図24に示すように、予め、後述の巻回工程S54での導線3のたるみを防止するためのたるみ取り棒71、72が取り付けられている。具体的には、図19の二点鎖線および図24に示すように、ボビン52が固定治具に固定されたとき、固定部材58の図示左右両側のそれぞれに、かつ、案内溝58u1、58v1に隣接するように、たるみ取り棒71、72が自動巻線機の固定治具に取り付けられている。
その後、第1端子54の巻回部54aに導線3の先端部3aを巻回する(先端部巻回工程S53)。巻回部54aへの先端部3aの巻回は、自動巻線機によって自動で行われる。その後、ボビン52の胴部52bに導線3を巻回する(巻線工程S54)。具体的には、図24に示すように、巻回部54aに先端部3aが巻回された導線3を、まず、案内溝58u1を通過させて、たるみ取り棒71に引っ掛け、その後、案内溝52eを通過させてから、胴部52bに巻回する。このように、たるみ取り棒71に導線3を引っ掛けた状態で、胴部52bへの巻線を行うことで、胴部52bに巻回される導線3のたるみが防止される。この巻線工程S54では、固定治具とともにボビン52が回転して、胴部52bへの導線3の巻回は、自動巻線機によって自動で行われる。
ボビン52への導線3を巻回が終了すると、第2端子55の巻回部55aに導線3の後端部3bを巻回する(後端部巻回工程S55)。具体的には、図25に示すように、胴部2bに巻回された導線3の後端部3bを、まず、案内溝52fを通過させて、たるみ取り棒72に引っ掛け、その後、案内溝58v1を通過させてから、巻回部55aに巻回する。このように、たるみ取り棒72に導線3を引っ掛けた状態で、巻回部55aに後端部3bを巻回することで、巻回部55aに巻回される導線3の後端部3b側のたるみが防止される。巻回部55aへの後端部3bの巻回も、自動巻線機によって自動で行われる。
その後、自動巻線機の固定治具からボビン52を取り外して、導線3の外周側の全体を覆うように外装テープ10を巻回する(外装テープ巻回工程S56)。この外装テープ巻回工程S56では、図18に示すように、導線3の引出し位置が胴部52bの図示右端側に位置決めされる。
その後、リード線6、7をリード線挿入孔58e、58fに挿入する(リード線挿入工程S57)。具体的には、図26に示すように、リード線6、7の境界部6b、7bが段差面58r、58sに当接して、導通部6a、7aの先端側が第1端面58cから突出するように、第2端面58d側からリード線挿入孔58e、58fにリード線6、7を挿入する。
その後、図27に示すように、リード線6、7の導通部6a、7aの先端側を、巻回部54a、55aと同じ方向へ折り曲げる(導通部折り曲げ工程S58)。この導通部6a、7aの先端側の折り曲げは、空間58u2、58v2を利用して行う。そして、導線3の先端部3a、巻回部54aおよび導通部6aを半田付けするとともに、導線3の後端部3b、巻回部55aおよび導通部7aを半田付けする(半田付け工程S59)。この半田付け工程S59で、端子54、55およびリード線6、7の先端側に半田付け部62、63が折れ曲がった状態で形成される。
その後、図28に示すように、導通部6a、7aが直線状になるとともに、巻回部54a、55aを含む端子54、55の全体が直線状になるように、折れ曲がっている半田付け部62、63を矯正する(半田付け部矯正工程S60)。より具体的には、後述の収納工程S61で、収納孔58g、58hへの半田付け部62、63の収納が可能となるように、半田付け部62、63を矯正する。
その後、リード線6、7を第2端面58d側(図28では上側)に引っ張って、半田付け部62、63を収納孔58g、58hに収納する(収納工程S61)。具体的には、図20に示すように、端子54、55の上端が端子挿入孔58a、58bの底面に当接して、端子54、55の先端、導通部6a、7aの先端および半田14が第1端面58cから突出しないように、半田付け部62、63を収納孔58g、58hに収納する。この収納工程S61が終了すると、コイル51の製造工程が終了する。
(実施の形態3の主な効果)
以上説明したように、実施の形態3では、上述した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。すなわち、実施の形態3では、実施の形態1と同様に、コイル51の製造工程の簡素化を図ることができる。また、リード線6、7が導線3の端部3a、3bに電気的に接続されるコイル51であっても、製造工程を簡素化できる。さらに、半田付け部62、63と導線3との間の絶縁を確実に行うことができる。さらにまた、コイル51の外部の部材と半田付け部62、63と間の絶縁を確実に行うこともできる。また、固定部材58からのリード線6、7の抜け強度を上げることができる。
[他の実施の形態]
上述した各形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形可能である。
上述した各形態では、コイル1、21、51は、ボビン2、22、52に巻回されたボビン付のコイルである。この他にもたとえば、本発明が適用されるコイルは、導線3が空芯状に巻回されて形成された空芯コイルであっても良い。この場合には、空芯コイルを形成するために導線3を巻回させる巻回用の芯部材(巻回用治具)が、巻線工程S4、S24、S54で固定部材8、28、58とともに回転する被巻付部材になる。
また、上述した実施の形態1、2では、導線3の外周と固定部材8、28との間に絶縁シート9が配設されている。この他にもたとえば、導線3と半田付け部12、13との絶縁や、導線3と端子24、25との絶縁等を確実に行うことができるのであれば、導線3の外周と固定部材8、28との間に絶縁シート9は配設しなくても良い。
さらに、上述した実施の形態1、3では、端子4、5、54、55の先端、リード線6、7の先端および半田14が第1端面8c、58cから突出しないように、半田付け部12、13、62、63が収納孔8g、8h、58g、58hに収納されている。すなわち、半田付け部12、13、62、63は収納部8g、8h、58g、58hに完全に収納されている。この他にもたとえば、半田付け部12、13、62、63の一部が収納部8g、8h、58g、58hに収納されなくても良い。
さらにまた、上述した実施の形態2では、固定部材28の第2端面28d側にメス型のコネクタ31が形成されている。この他にもたとえば、固定部材28の第2端面28d側にオス型のコネクタを形成しても良い。この場合には、たとえば、端子24、25の大径部24c、25cを第2端面28dよりも突出させれば良い。
また、上述した実施の形態1、3において、リード線挿入工程S7、S57は、後端部巻回工程S5、S55の前に行っても良い。また、上述した実施の形態1において、絶縁シート巻回工程S6は、リード線挿入工程S7の後、または、半田付け工程S8の後に行っても良い。