JP2007291429A - 硬質炭素被膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】 潤滑油中において特に低い摩擦係数を示し、相対的に簡便なプロセスで製造することができ、潤滑剤・潤滑油の選択の制約が少ない硬質炭素被膜を提供する。
【解決手段】 非晶質炭素を主成分とし、副成分としてコバルトおよび/またはニッケルを合計で1.4原子%以上39原子%以下含有させ、コバルトおよびニッケルの合計含有量が相対的に高い層と、相対的に低い層とが繰り返し重なった積層構造とする。厚み方向の積層数は100nmあたり8回以上、好ましくは14回以上、より好ましくは25回以上とし、潤滑剤中で用いる。潤滑剤はエンジン油が適している。
【選択図】なし

Description

本発明は、低摩擦特性に優れた硬質炭素被膜に係わり、特にエンジンオイル、トラスミッションオイル等の潤滑油中で使用するのに適した低摩擦な硬質炭素被膜に関する。
硬質炭素被膜は、アモルファス状の炭素あるいは水素化炭素から成る膜であって、a−C:H(アモルファスカーボンまたは水素化アモルファスカーボン)、i−C(アイカーボン)、DLC(ダイヤモンドライクカーボンまたはディーエルシー)などとも呼ばれている。
このような硬質炭素被膜を形成するには、炭化水素ガスをプラズマ分解して成膜するプラズマCVD法、あるいは炭素や炭化水素イオンを用いるイオンビーム蒸着法などの気相合成法が用いられる。この硬質炭素被膜は高硬度で表面が平滑であり耐摩耗性に優れ、さらにはその固体潤滑性から摩擦係数が低く、優れた摺動特性を有している。
例えば、通常の平滑な鋼材表面の無潤滑下での摩擦係数が0.5〜1.0であるのに対して、硬質炭素被膜においては、無潤滑下での摩擦係数が0.1程度である。
硬質炭素被膜は、上記のような優れた特性を活かし、ドリルの刃を始めとする切削工具や研削工具等の加工工具や、塑性加工用金型、バルブコックやキャプスタンローラのような無潤滑下での摺動部品等に応用されている。
一方、潤滑油中で摺動する内燃機関などの機械部品においても、エネルギー消費や環境問題の面から、できるだけ機械的損失を低減したいという要望があり、摩擦損失の大きい摺動条件の厳しい部位への硬質炭素被膜の適用が検討されており、摺動部材に硬質炭素被膜を設けると共に、その組成や表面状態を制御し、無潤滑状態だけでなく潤滑油が十分に存在する条件下でも摩擦係数を下げる試みがいくつかなされている。
例えば、このような硬質炭素被膜にIVa、Va、VIa族元素及びSiのうちの1種以上を添加する方法が示されており、この方法によりこれら元素を加えない場合に比べ摩擦係数が低減している(特許文献1参照)。
また、このような硬質炭素被膜にAgのクラスターを設ける方法も示されている(特許文献2参照)。
この他、このような硬質炭素被膜に適宜の金属元素を加えた上、さらに膜中の酸素の含有量を制御することで低い摩擦係数を得ている(特許文献3参照)。
さらに、別の面の技術課題として、このような摺動部材を用いる場合に、相手材の摩耗を抑制したいという要求も当然ながら存在し、この要求も対する解決策としては、摺動部材の表面層を相対的に軟らかい含水素炭素膜で構成し、摩擦低減のために当該含水素炭素膜にV、Cr、Zr、Nb、Ta、Mo、W、Pd、Pt、Ti、Al、Pb、Siのいずれかの元素を加える方法がある(例えば、特許文献4参照)。
特開2003−247060号公報 特開2004−099963号公報 特開2004−115826号公報 特開2003−027214号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、測定方法の違いの影響はあるにせよ、モータリング試験での摩擦係数である0.06からは、もう一段の摩擦係数低減が望まれている。また、特許文献2に記載の方法においても、摩擦係数を往復動試験によって測定しているので、直接の比較はできないが、摩擦係数は最小で0.04であり、同様にもう一段の摩擦係数低減が望まれる。また、当該硬質炭素被膜の上に、大きさや数を制御してAgクラスターを設ける必要があることから、プロセス制御の点で煩雑な面がある。
さらに、上記特許文献3では、金属元素の含有量と、酸素の含有量の双方を制御する必要があることから、より簡便なプロセスが望まれている。また、この場合、潤滑油中にモリブデンジチオカーバメイト(MoDTC)のような極圧添加剤が必要なため、効果を発揮できる潤滑油の種類が限られるという問題があった。
また、相手材の摩耗抑制対策として、上記特許文献42記載の方法においては、含水素炭素膜の潤滑油中での摩擦係数は、水素を実質的に含まない炭素膜の摩擦係数に比べて全般に高く(例えば、特開2000−297373号公報参照)、含水素炭素膜であることに起因して生じる不利を特定の金属元素を添加することによって抑えたとしても、摩擦係数の低減効果が限定的となる懸念が残る。
本発明は、上記の課題に鑑み、摩擦係数の一層の低減を図ると共に、簡便なプロセスで製造することができ、効果の発揮される潤滑油の種類の制約も少ない硬質炭素被膜を提供することを目的としている。さらに、本発明においては、水素を実質的に含まない硬質炭素被膜でありながら、相手材の摩耗を抑制することも目的に含まれる。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、硬質炭素被膜の種類や成膜方法、さらには硬質炭素被膜に、添加成分として金属元素などのドーピングを施す方法などについて鋭意検討を重ねた結果、コバルトやニッケルのドーピングが低摩擦特性及び相手材に対する耐摩耗特性に有効であることを見出した。併せて、これら特性を最大限に引き出すための最適な添加量のほか、該硬質炭素被膜の組成について検討を行い、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は上記知見に基づくものであって、本発明の硬質炭素被膜は、被膜中にコバルト(Co)及びニッケル(Ni)の一方又は両方の元素を合計で1.4原子%以上39原子%以下含んでいることを特徴としており、特に自動車用のエンジンオイルやトラスミッションオイル等の潤滑油中において好適に用いることができる。
コバルト及び/又はニッケルの添加量の特に好ましい範囲として、3原子%以上20原子%以下、その中でも特に好ましい範囲として6原子%以上16原子%以下を挙げることができる。
以上に挙げた硬質炭素被膜を作るにはスパッタリング法、アークイオンプレーティング法など公知のさまざまな方法を応用することができるが、その一つの方法としてアークイオンプレーティング(以下AIP)法と、スパッタリング法を併用するものがある。
AIP法による硬質炭素被膜では、得られる膜内にドロップレットなどと呼ばれる硬い粒子が生成しやすく、これが摺動の相手部材を研磨して平滑にすることにより低い摩擦係数が得られる。またスパッタリング法はAIP法に比べ、原料物質の蒸発量が時間的に安定している特徴がある。
これらのターゲットを同時に使うことで、それぞれの長所を取り入れながら、摩擦係数低減効果がより大きい硬質炭素被膜を構成できる。
例えばAIP用ターゲットは実質的に炭素のみから構成し、スパッタリングターゲットは添加金属で構成した場合、AIP用のターゲットに供給する電流と、スパッタリング用のターゲットに投入する電力をそれぞれ独立に制御することにより、添加する金属元素の組成を任意に制御できる利点もある。
本発明によれば、硬質炭素被膜中にコバルト及び/又はニッケルを添加し、その添加量の範囲(両方を添加した場合にはその合計量)と、コバルト及び/又はニッケルの含有量が相対的に高い層と相対的に低い層の積層構造を最適化したことから、摩擦係数を低減することができ、特に当該硬質炭素被膜を自動車用のエンジン油やトランスミッション油等の潤滑油中で用いた場合にその効果を顕著に発揮することができる。
以下、本発明の硬質炭素被膜について、さらに詳細に説明する。
本発明の硬質炭素被膜は、上記したように、合計で1.4原子%以上39原子%以下のコバルト及び/又はニッケルを含有するものであるが、当該硬質炭素被膜がコバルトやニッケルを含有することによって、低い摩擦係数を示したり、相手材の摩耗を低減したりすることができる理由については、現時点で必ずしも明確でない。しかし、以下のように推測することができる。
すなわち、被膜中にコバルトやニッケルを添加したことによって、硬質炭素被膜の表面が潤滑剤中の基剤(基油)成分やこれに含まれる添加剤成分を吸着する能力が向上し、表面にこれら基油や添加剤から成る薄い膜が形成される。これによって面圧が高い、あるいは摺動速度が遅いような条件、いわゆる境界潤滑条件においても、形成された膜が相手材との直接接蝕を防ぐという機構によって低い摩擦係数が発現するものと考えられる。
このとき、コバルトやニッケルは、硬質炭素被漠の表面から深部までの全てに含有させる必要は、必ずしもなく、少なくとも摺動する表面及び摩耗による減りしろに相当する部分まで含有させることで、本発明の効果は得られる。
コバルトやニッケルの添加量については、合計で1.4原子%未満では上記の吸着効果が十分に発揮されない。吸着の効果を十分に得るためにはできれば3原子%以上、より好ましくは6原子%のコバルトおよび/またはニッケルを添加するとよい。
一方、コバルトおよびニッケルの添加量が合計で39原子%を超えた場合には、推測ではあるが炭素原子のネットワーク構造がコバルトやニッケル原子が存在することによって乱されるために、硬質炭素被膜が本来有する低摩擦性能や硬さが損なわれることになる。このため添加量は39原子%以下、好ましくは20原子%以下、より好ましくは16原子%以下に留めるのがよい。
さて、AIP法とスパッタリング法を併用した場合は、その成膜原理からしてAIP法で堆積した層とスパッタリング法で堆積した層が交互に積み重なった構造となる。好ましい実施形態としてはAIP法のターゲットからは炭素のみを供給し、添加する金属(コバルトおよび/またはニッケル)はスパッタリング法ターゲットから供給する方法が挙げられる。
これにより得られる硬質炭素被膜は、スパッタリングで作られた添加金属の濃度の高い層(以下、高濃度層)とAIPで作られた濃度の低い層(以下、低濃度層)が交互に積み重なった構造となる。この場合は表面からの深さにより、添加金属の濃度に揺らぎがあることになる。請求項に用いた表現の「コバルトおよび/またはニッケルの添加量」については、高濃度層と低濃度層での濃度を巨視的に平均した値を指す。具体的には、X線光電子分光などで深さプロファイルを取り、濃度を算術的に平均すればよい。
添加金属元素をスパッタリング法で添加する場合に、その濃度を調整する方法であるが、例えばAIPターゲットからの炭素供給量はほぼ一定にしておいて、スパッタリングターゲットに供給する電力を変化させる方法や、スパッタリングターゲットで、添加したい金属の占有面積を変える方法などが挙げられる。供給電力を変化させる方法では、プロセス中に動的に供給電力を変化させ、添加量が異なる層を作ることも可能である。
さて発明者らは、高濃度層と低濃度層が交互に積み重なった構造について、どのような構造であると摩擦低減効果が大きく得られるかを検討し、本発明を完成させるに至った。
摩擦低減の機構としては、添加金属であるコバルト及びニッケルが、周囲の炭素原子の電子分布を変化させ、そのことにより潤滑剤中の基油成分や添加剤成分を表面吸着を促進しているものと考えている。この効果をより大きく引き出すためには、添加金属を多く含む高濃度層と、AIP法で作られた低濃度層の接触頻度を上げることが望ましいと推定した。
具体的には、高濃度層と低濃度層の膜厚をそれぞれ薄くすればよい。換言すれば、一定の厚み内で、高濃度層と低濃度層の積層数を増やせばよい。発明者らの検討においては、厚さ方向の100nmあたり積層数が8以上、好ましくは14以上、より好ましくは25以上あると摩擦低減効果が大きいことが分かった。
なお、ここでは、高濃度層1層と、低濃度層1層とが重なった対を「積層数1」と数えることとする。高濃度層が10、低濃度層が10あれば「積層数10」となる。
単位厚さあたりの積層数を増すためには(1)各層の成長速度を遅くする (2)炉内で、試料の回転(公転)速度を上げる (3)真空装置のスロットに取り付けるターゲットの数を複数にする などの方法がある。単位厚さあたりの積層数は多ければ多いほど良いが、(1)の場合には一回の成膜に要する時間が長くなるのでコスト面での跳ね返りがあり、(2)の場合は装置の能力で回転速度には限度がある。(3)は相対的に好ましい方法であるが、真空槽に一度に取り付けられるターゲットの数や、ターゲットを駆動する電源の容量などの制約を受ける。いずれにしてもこれらの現実的制約から、実際には適宜の積層数に設定することになる。
本発明の硬質炭素被膜は、潤滑剤を用いない条件、すなわち、いわゆるドライ条件でも用いることができるが、上記の説明のように、潤滑剤の基剤(基油)や添加剤との吸着が摩擦係数低下の本質であることから、潤滑剤中で用いることでその効果がより一層発揮される。したがって、潤滑剤中で用いることが好ましい。
このような潤滑剤の例としては、自動車用エンジン油が適している。この他用いることのできる潤滑剤としてトランスミッション油やギア油も挙げることができる。
また、このような潤滑油中で低い摩擦係数を得るためには、被膜中の水素原子の量を減らすことが好ましく、その具体的範囲としては6原子%以下、さらには1原子%以下とすることが望ましい。水素量が少ないほど添加剤の吸着が容易になるためと考えられる。
本発明の硬質炭素被膜を得る方法は特に限定されないが、上記で挙げたスパッタリング法やイオンプレーティング法など、水素や水素含有化合物を実質的に使用しないPVD法(物理気相堆積法)であれば比較的容易に得ることができる。
以下、本発明の実施例を比較例と併せ説明する。なお、本発明の請求項を満たす形であれば必ずしも以下の実施形態によらなくてよいことは言うまでもない。
(実施例1)
基材として浸炭鋼(日本工業規格 SCM415)から成る直径30mm、厚さ3mmの円板を準備し、その表面をRa0.020μmに超仕上げ加工した。以下の実施例、比較例においても同規格の円板を基材として共通に用いる。
続いて図1に示す真空成膜装置を用い、この円板の上に硬質炭素被膜を成膜した。円板を回転ステージ4にほぼ垂直に取り付けた。基板にはバイアス電圧として100Vをかけた。真空成膜装置にはスパッタリング法のターゲット2と、AIP法のターゲット3が備えられている。真空成膜装置のスロット5および6はダミーとし、これらのスロットからの原料供給は行わない。
AIP法のターゲット3はグラファイトと、そのほか不可避不純物のみからなる。スパッタリング法のターゲットはコバルトの薄板を、炭素板の上に貼り付けて使用した。
先んじて行った予備実験の結果から、AIP法ターゲットの運転条件を、成膜速度が300nm/時になるように、またスパッタリング法ターゲットの成膜速度も300nm/時になるように調整した。またスパッタリング法のターゲットでは、炭素板上に貼り付けるコバルト薄板の面積を加減し、スパッタリングで成膜された層内のコバルトの濃度が15原子%になるように予め調整した。
この条件で2時間の成膜運転を行った。試料は毎分1回の割合で公転させた。自転は行わなかった。公転は成膜中に合計で120回行われることになる。
成膜終了後サンプルを取り出した。サンプルは(1)摩擦係数 (2)断面の透過型電子顕微鏡(TEM)観察 (3)X線光電子分光(XPS)による添加金属元素濃度測定 の3つの方法で評価した。
まず、XPSについては、試料を測定装置に収めた後に、その表面からアルゴンガスでスパッタしつつ、2.5nmごとに100nmの深さまでコバルトの組成を分析した。そしてこの40点のデータを平均し、コバルトの含有量とした。測定点数が十分に多ければこの値は、低濃度層(AIP)と高濃度層(スパッタリング)の平均の含有量となる。測定の結果、コバルト平均含有量は7原子%と求められた。
続いて、断面のTEM観察を行った。集束イオンビーム装置(FIB)を用い、基板と垂直方向に試料断面を作製しこれをTEMで観察した。観察部の厚さは100nmになるようにした。
コバルトの含有量が高い部分は、TEMでは濃度の高い(黒い)領域として観察される。図2は縞の現れ方を模式的に示した図である。この試料の断面ではAIP層とスパッタリング層に対応すると考えられる濃淡の縞が観察された。縞は当然、基板とほぼ平行に生じている。
なおTEM観察の結果から、膜厚さは1140nmと求められた。
この縞の繰り返しについて、濃部と淡部の1セットを1回と考え、表面から100nmの部分までに、縞の繰り返しが何回あるかを画面上で数えた。その結果、表面から100nmまでに濃淡の縞の繰り返しは9回観察された。
次に、当該試料について、ボールオンディスク法による摩擦特性の評価を行った。試験に際して、潤滑剤として自動車用エンジン油5W−30SLを用いた。試料をこのエンジン油中で回転させ、軸受鋼(日本工業規格 SUJ2)から成る直径6mmのボールを押し当て、このボールを保持しているアームにかかるトルクから摩擦係数を計算した。摺動痕の直径は8mm、油温は80℃とした。また、上記ボールにかけた垂直荷重は20Nである。ボールは固定しており、摺動によって転がることのないようにした。摺動速度は毎秒1.67cmとした。
摩擦係数の算出については、摺動開始直後のなじみ効果を考慮して、試験開始から5分経過した時点の測定値をもって、その材料の摩擦係数とみなした。本例の硬質炭素被膜の摩擦係数は、0.028であった。なお測定前の試料の表面粗さはRa 0.017μmであった。
(実施例2)
実施例1と同様の方法で硬質炭素被膜を成膜した。実施例2ではスパッタリングターゲット上で、炭素板の上にニッケル板を配置し、スパッタリング層中のニッケル含有量が70原子%になるよう、ニッケル板の面積を加減した。AIP法のターゲットは炭素のみである。その他の成膜条件、評価条件は実施例1と同じである。
実施例2においてはニッケルの平均含有量が36原子%、表面から100nmの積層数が9、膜厚が1050nm、表面粗さがRa 0.019μmであった。摩擦係数は0.029であった。
(実施例3)
実施例1と同様の方法で硬質炭素被膜を成膜した。実施例3ではスパッタリングターゲット上で、炭素板の上にコバルト板を配置し、スパッタリング層中のニッケル含有量が30原子%になるよう、コバルト板の面積を加減した。AIP法のターゲットは炭素のみである。成膜中の回転速度は毎分2回転とし、2時間の運転を行った。その他の成膜条件、評価条件は実施例1と同じである。
実施例3においてはコバルトの平均含有量が12原子%、表面から100nmの積層数が16、膜厚が990nm、表面粗さがRa 0.020μmであった。摩擦係数は0.025であった。
(実施例4)
実施例1と同様の方法で硬質炭素被膜を成膜した。実施例4ではスパッタリングターゲット上で、炭素板の上にコバルト板を配置し、スパッタリング層中のニッケル含有量が30原子%になるよう、コバルト板の面積を加減した。AIP法のターゲットは炭素のみである。成膜中の回転速度は毎分3回転とし、2時間の運転を行った。その他の成膜条件、評価条件は実施例1と同じである。
実施例4においてはコバルトの平均含有量が14原子%、表面から100nmの積層数が26、膜厚が1090nm、表面粗さがRa 0.018μmであった。摩擦係数は0.020であった。
(実施例5)
実施例1と同様の方法で硬質炭素被膜を成膜した。実施例5ではスパッタリングターゲット上で、炭素板の上にコバルト板を配置し、スパッタリング層中のニッケル含有量が30原子%になるよう、コバルト板の面積を加減した。ただし、AIPターゲットに供給する電流、スパッタリングターゲットに供給する電力を減らし、成膜レートがどちらも100nm/時になるようにした。成膜中の回転速度は毎分3回転とし、2時間の運転を行った。その他の成膜条件、評価条件は実施例1と同じである。
実施例5においてはコバルトの平均含有量が15原子%、表面から100nmの積層数が24、膜厚が1160nm、表面粗さがRa 0.018μmであった。摩擦係数は0.021であった。
(実施例6)
実施例1と同様の方法で硬質炭素被膜を成膜した。実施例6ではスパッタリングターゲット上で、炭素板の上にコバルト板を配置し、スパッタリング層中のニッケル含有量が20原子%になるよう、コバルト板の面積を加減した。AIPターゲットに供給する電流、スパッタリングターゲットに供給する電力は実施例1から変更し、AIPの成膜レートが200nm/時、スパッタリングの成膜レートが400nm/時になるように設定した。成膜中の回転速度は毎分3回転とし、2時間の運転を行った。その他の成膜条件、評価条件は実施例1と同じである。
実施例6においてはコバルトの平均含有量が8原子%、表面から100nmの積層数が10、膜厚が1180nm、表面粗さがRa 0.020μmであった。摩擦係数は0.027であった。
(比較例1)
実施例1と同様の方法で硬質炭素被膜を成膜した。比較例1ではスパッタリングターゲット上で、炭素板の上にコバルト板を配置し、スパッタリング層中のニッケル含有量が30原子%になるよう、コバルト板の面積を加減した。ただし、AIPターゲットに供給する電流、スパッタリングターゲットに供給する電力を調整し、成膜レートがどちらも500nm/時になるようにした。成膜中の回転速度は毎分1回転とし、1時間の運転を行った。その他の成膜条件、評価条件は実施例1と同じである。
比較例1においてはコバルトの平均含有量が14原子%、表面から100nmの積層数が6、膜厚が1030nm、表面粗さがRa 0.020μmであった。摩擦係数は0.035であった。積層数が不足するためか、摩擦係数は高めとなった。
(比較例2)
実施例1と同様の方法で硬質炭素被膜を成膜した。比較例2ではスパッタリングターゲット上で、炭素板の上にニッケル板を配置し、スパッタリング層中のニッケル含有量が20原子%になるよう、ニッケル板の面積を加減した。ただし、AIPターゲットに供給する電流、スパッタリングターゲットに供給する電力を調整し、成膜レートがどちらも500nm/時になるようにした。成膜中の回転速度は毎分1回転とし、1時間の運転を行った。その他の成膜条件、評価条件は実施例1と同じである。
比較例2においてはコバルトの平均含有量が9原子%、表面から100nmの積層数が7、膜厚が960nm、表面粗さがRa 0.022μmであった。摩擦係数は0.037であった。積層数が不足するためか、摩擦係数は高めとなった。
(比較例3)
実施例1と同様の方法で硬質炭素被膜を成膜したが、比較例3ではスパッタリングターゲットのみを用い、AIP法は併用しなかった。スパッタリングターゲット上には炭素板の上にコバルト板を配置し、スパッタリング層中のコバルト含有量が5原子%になるよう、コバルト板の面積を加減した。
成膜レートは300nm/時になるようにした。成膜中の回転速度は毎分3回転とし、3時間の運転を行った。その他の成膜条件、評価条件は実施例1と同じである。
比較例3においてはコバルトの平均含有量は4原子%であった。TEM観察の結果では濃淡の縞は現れず、表面から100nmの積層数は0とみなした。膜厚は920nm、表面粗さはRa 0.016μmであった。摩擦係数は0.036であった。積層構造がないためか、摩擦係数は高めとなった。
(比較例4)
実施例1と同様の方法で硬質炭素被膜を成膜したが、比較例4ではAIP法ターゲットのみを用い、スパッタリング法は併用しなかった。AIP法ターゲットは炭素のみからなるので、この例では実質的に膜中への金属添加は行われない。成膜レートは300nm/時になるようにした。成膜中の回転速度は毎分3回転とし、3時間の運転を行った。その他の成膜条件、評価条件は実施例1と同じである。
比較例3においてはコバルト、ニッケルの平均含有量はノイズレベルであった。TEM観察の結果では濃淡の縞は現れず、表面から100nmの積層数は0とみなした。膜厚は940nm、表面粗さはRa 0.025μmであった。摩擦係数は0.044であった。積層構造がないためか、摩擦係数は高めとなった。
以上の結果から明らかなように、コバルトやニッケルを含有させた硬質炭素被膜において、コバルトおよびニッケルの含有量が多い層と少ない層を交互に積層させ、単位厚さあたりの積層数を一定以上とすることで低摩擦の硬質炭素被膜を得ることができた。 好ましい実施例としては、摩擦係数の低い実施例4が挙げられる。実施例5は摩擦係数が低いが、成膜速度を落としているためにコスト面でやや不利となる。コバルトおよびニッケルの含有量が多い層と少ない層の厚さは揃っている必要はなく、実施例6のように、層の厚さが不揃いになっても構わない。
成膜装置の真空槽部分を模式的に示した図である。 TEM観察で見られる濃淡の縞を模式的に示した図である。
符号の説明
1 真空槽壁面
2 スパッタリングターゲット
3 AIPターゲット
4 回転ステージ
5、6 ターゲット用スロット(不使用)
7 黒く現れている部分(添加金属の濃度が高い)
8 白く現れている部分(添加金属の濃度が低い、または実質的に含まない)

Claims (7)

  1. 非晶質炭素を主成分とし、副成分としてコバルトおよび/またはニッケルを合計で、1.4原子%以上39原子%以下含有し、
    コバルトおよびニッケルの合計含有量が相対的に高い層と、相対的に低い層とが繰り返し重なった積層構造を有し、
    コバルトおよびニッケルの合計含有量が相対的に高い層と、相対的に低い層の厚み方向の積層数が、100nmあたり8回以上であることを特徴とする、硬質炭素被膜。
  2. コバルトおよびニッケルの合計含有量が相対的に高い層と、相対的に低い層の厚み方向の積層数が、100nmあたり14回以上であることを特徴とする、請求項1に記載の硬質炭素被膜。
  3. コバルトおよびニッケルの合計含有量が相対的に高い層と、相対的に低い層の厚み方向の積層数が、100nmあたり25回以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の硬質炭素被膜。
  4. コバルトおよびニッケルの合計含有量が相対的に低い層は、アークイオンプレーティング法で成膜されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬質炭素被膜。
  5. 潤滑剤中で使用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬質炭素被膜。
  6. 前記潤滑剤が自動車用エンジン油であることを特徴とする、請求項5に記載の硬質炭素被膜。
  7. 請求項1〜6項のいずれか1項に記載の硬質炭素被膜を備えたことを特徴とする、硬質炭素被膜摺動部材。
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