次に本発明の実施形態を具体的に説明する。第1の実施形態の結晶化方法は、基板に直接的または間接的に形成された非単結晶半導体薄膜に逆ピークパターンを有する周期的な光強度分布を形成する前記結晶化用レーザ光を照射して、幅より結晶成長方向に長い形状で結晶化された結晶粒が前記幅方向に隣接して配列された結晶化粒列を形成するにあたり、上記逆ピークパターンを有する光強度分布の周期を変化させて、光強度勾配を制御することにより結晶粒の横方向成長距離を制御することができる結晶化方法にある。この一実施例は、上記逆ピークパターンを有する光強度分布を、極大値の相対光強度を1としたとき、光強度勾配を0.02μm−1乃至0.25μm−1の範囲に選択する方法である。
第2の実施形態の結晶化方法は、第1の実施形態の結晶化方法と同様の光学系に上記逆ピークパターンを有する光強度分布を、極大値の相対光強度を1としたとき、光強度勾配を0.02μm−1乃至0.04μm−1の範囲に選択した結晶化用レーザ光を膜厚が40nm乃至70nmの上記非単結晶半導体薄膜に照射することにより、被照射領域の結晶成長方向の面方位を{100}に優先配向させる方法である。
先ず、第1の実施形態の光強度分布の光強度勾配を選択することによりバラツキの少ない特性の薄膜トランジスタを形成することができる結晶化方法の実施例を図1乃至図8を参照して説明する。各図において、同一部分には、同一符号を付与し、重複する説明を省略する。
実施例1
結晶化方法を説明するための結晶化粒列の製造装置(結晶化装置)について図1を参照して説明する。図1は、PMELA法により図2に示すような細長い形状の結晶化粒1が幅方向に配列された結晶化粒列2を製造する結晶化装置の実施例である。本実施形態ではエネルギー線としてレーザ光を用いたレーザアニール装置11である。
レーザアニール装置11はプロジェクション方式の光学系12を備えている。この光学系12は、レーザ光軸13に沿ってXeClエキシマレーザ発振器14、ホモジナイザ15、第1コンデンサレンズ16、第2コンデンサレンズ17、マスク18、位相シフタ19、テレセントリック型の縮小レンズ20、が設けられた構成である。テレセントリック縮小レンズ20の結像位置には、被処理基板21が位置合わせされるように、XYZθステージ22が配置されている。XYZθステージ22内には、必要に応じて被処理基板21を結晶化する際、加熱することができるようにヒータ23が内蔵されている。このようにしてレーザアニール装置11が構成されている。
位相シフタ19は、例えば図3(a)に示すように面積変調型位相シフタであり、マスク18と縮小レンズ20との間に配置されている。位相シフタ19は、ホモジナイザ15で光強度分布が均一化された入射光のレーザ光を位相変調してレーザ光の断面内において図3(d)に示すようなV字型の光強度分布、すなわち極小の光強度の逆ピークパターンを有する光強度分布を形成する。位相シフタ19は、透光性基板に段差を設け、この段差部で入射光を回折させて変調する光学素子である。
位相シフタ19は、例えば図3の(a)と(b)に模式的に示すように、石英基材31を図3の(a)に示すパターンをマスクとしてエッチング加工して溝32のパターンを作製したものである。即ち、図3(a)の位相シフタ19は、周期的に寸法(面積)の異なるドット段差からなる繰り返しパターンの面積変調したマスクである。ドット段差は、ドット部がエッチング加工された溝32により段差が形成されている。本実施形態の位相シフタ19では、図3(d)に示すように周期T、極小値B(0.4〜0.8)、光強度勾配Gの光強度分布を形成するように、連続的に寸法(面積)の異なるドット段差が配列されている。位相シフタ19の溝32は、レーザ発振器14からのレーザ光の波長が308nmのときに例えば90°の位相差になるように段差154nmに加工されている。
図3の(a)は、位相シフタ19の平面図であり、面積変調された状態を説明するための1単位を拡大して示す図である。図3の(b)は、(a)の断面図である。図3の(c)は、被処理基板21の断面図である。図3の(d)は、(a)の位相シフタ19により光強度変調されたレーザ光の断面内の光強度分布を図3の(a)に関連付けて示す波形図である。図3の(d)に示す光強度分布の周期Tは、図3の(a)に示すドットパターンの配置の周期を変えることで制御することができる。また図3の(d)に示すレーザ光強度の極小値Bは、ドット段差の深さを変えることで制御することができる。また周期Tと極小値の相対値Bが決まると光強度勾配Gが決まる。
光強度分布の周期Tは、4μm以上80μm以下の範囲にあるのが望ましい。周期Tが4μm未満では、結晶粒が横方向成長できる範囲が短く、すなわち粒長が短くなってしまう。一方、周期Tが80μmを超えると、光強度勾配Gが緩やかになりすぎて、レーザ照射領域における横方向成長領域の面積割合が少なくなってしまう。適した周期T値はキャップ膜の種類、半導体層の膜厚等により決まる。好ましい周期T値は8μm以上30μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上20μm以下である。
光強度分布の極小値Bの相対強度は、0.4以上0.8以下の範囲にあるのが望ましい。極小値Bの相対強度が0.4より小さくなると、レーザ照射領域内にアモルファス領域や微細結晶領域などの、横方向成長領域以外の領域の面積割合が多くなってしまう。一方、極小値Bの相対強度が0.8より大きくなると、光強度勾配Gが緩やかになりすぎて、温度勾配による横方向成長の駆動力が得られない。適した光強度分布の極小値Bの相対強度値は、後述するキャップ膜の種類や結晶化対象膜の膜厚により決まる。好ましい光強度分布の極小値Bの相対強度値は0.5以上0.7以下である。
光強度勾配Gは、0.02μm−1以上0.25μm−1以下の範囲とする。光強度勾配Gが0.02μm−1未満になると、温度勾配が緩やかになり、横方向成長の十分な駆動力が得られない。一方、光強度勾配Gが0.25μm−1を超えると、横方向成長できる範囲が短くなり、その結果として粒長が短くなる。光強度勾配Gは、必要とする結晶化半導体層の結晶形態や方位、またキャップ膜の種類、半導体層の膜厚によって適切な値が決まる。
光吸収性のキャップ膜を用いた膜構造で、結晶成長方向(長手方向)の結晶方位を{100}に優先配向させる場合は、光強度勾配Gを0.02μm−1以上0.04μm−1以下の範囲とする。光強度勾配Gが0.02μm−1未満になると、温度勾配が緩やかになり、横方向成長の十分な駆動力が得られない。一方、光強度勾配Gが0.04μm−1を超えると、後述するように結晶粒の成長速度が小さくなってしまい、結晶成長方向の面方位が{100}配向となる割合が小さくなってしまう。さらに好ましい光強度勾配Gは0.030μm−1以上0.035μm−1以下の範囲である。
光透過性のキャップ膜を用いた膜構造で、結晶成長方向(長手方向)の結晶方位を{100}に優先配向させる場合は、光強度勾配Gが、0.05μm−1未満になると、温度勾配が緩やかになり、横方向成長の十分な駆動力が得られない。一方、光強度勾配Gが0.25μm−1を超えると、横方向成長できる範囲が短くなり、その結果として粒長が短くなる。光強度勾配Gは0.10μm−1以上0.25μm−1以下の範囲が好ましい。
次に、このレーザアニール装置11による結晶化プロセスの実施形態を説明する。XYZθステージ22上に載置される被処理基板21として、種々の半導体膜が成膜された透過性絶縁基板(例えばガラス基板)が用いられる。透過性絶縁基板41上には、下地絶縁膜42、非晶質半導体層43、キャップ膜44がこの順に積層されている。下地絶縁膜42は、例えば酸化シリコン膜である。非晶質半導体層43は、例えば膜厚50nmの非晶質シリコン膜である。
キャップ膜44は、入射光の一部の光を吸収する光吸収性の材料、または入射光の大部分の光を透過させる光透過性の材料からなる。キャップ膜44に用いられる光吸収性の材料は、例えばSiOx膜であり、X=2未満の膜である。上記Xは、好ましくは1.4以上1.9以下であり、さらに好ましくは1.4以上1.8以下である。SiOx膜は、SiとOとの組成比が異なるシリコン酸化膜である。キャップ膜44が光透過性の場合は、例えばSiO2膜である。
基板41は、液晶などの表示装置用であればガラス基板やプラスチック基板などの透過性絶縁基板である。下地絶縁膜42は、基板41からの不純物の拡散を防止する機能と、結晶化プロセス時に基板41を熱から保護する機能とを有する。非晶質シリコン膜43は、大結晶化粒アレイ化して薄膜トランジスタなど機能素子を形成する半導体層である。
キャップ膜44は、非晶質シリコン膜43(半導体層43)が結晶化用入射レーザ光を吸収することにより得た熱を所定期間蓄熱して、大きな結晶化粒を成長させるための保温効果を持たせた絶縁層である。キャップ膜44が光吸収性の場合は、キャップ膜44自体が入射光の一部を吸収して発熱し、上記の蓄熱効果が大きくなる。キャップ膜44は、非晶質シリコン膜43を結晶化する際に粒長を長くするために必要な膜である。このようにして被処理基板21が作製される。
次に、位置決めされた上記被処理基板21は、XYZθステージ22上の予め定められた位置に載置される。XeClエキシマレーザ発振器14は、被処理基板21の非晶質シリコン層43の吸収特性が良好な波長のレーザ光を出射し、照射領域の定められた範囲を溶融するのに十分なエネルギーのパルスレーザ光を出射する。レーザ光のエネルギー密度は、光吸収性のキャップ膜を有する膜構造の場合は、被処理基板21上で例えば0.3〜0.7J/cm2である。
光透過性のキャップ膜を有する膜構造の場合は、被処理基板21上で例えば0.5〜1J/cm2である。1ショットのパルス継続時間は、例えば30ナノ秒である。XeClエキシマレーザ発振器14から出射される波長308nmの長尺ビームのレーザ光25は、まず2組(それぞれX方向とY方向)の小レンズ対からなるホモジナイザ15によって発散ビームに分割される。ホモジナイザ15は、上記レーザ発振器14からのレーザ光の断面内光強度分布を均一化するための光学部品である。
第1コンデンサレンズ16は、ホモジナイザ15からの分割されたビームの各中軸光線のレーザ光を集光し、第2コンデンサレンズ17と共役関係に配置される。第2コンデンサレンズ17の出射光路には、マスク18が設けられ、このマスク18は周辺部の非有効レーザ光を遮断する。即ち、分割されたビームの各中軸光線は、コンデンサレンズ16(凸レンズ♯1)によってマスク18の中心に集光される。また、それぞれのレーザビームは、僅かに発散型になっているために、マスク18の全面を照明する。
分割された微小出射領域を出た全ての光線群が、それぞれマスク18上の全ての点を照射するので、レーザ出射面上の光強度に面内揺らぎがあっても、マスク18の光強度は均一になる。マスク18の各領域を通過する光線群の中心光線、すなわちホモジナイザ15の中心部分のレンズ対を通ってきた発散光線群は、マスク18近傍のコンデンサレンズ17(凸レンズ♯2)によって平行光線になる。この平行光線のレーザ光は、位相シフタ19を介してテレセントリック型の縮小レンズ20(結像レンズ)を通って、XYZθステージ22上に置かれた被処理基板21に垂直に入射する。
また、マスク18の同一箇所を通過した光線群25は、図1に示されているように被処理基板21の表面の一点に集束する。すなわち、マスク18の縮小像が、均一光強度で被処理基板21の表面上に形成される。上記基板21表面の任意の点を照射する光線群25は、中心光線を含めて分割された光線から作られる。或る光線と中心光線13のなす角度は、ホモジナイザ15の幾何学的形状で決まる角度、すなわちマスク18での当該光線と中心光線とが作る角の角度に、テレセントリック型レンズ20の倍率を掛けた値になる。
位相シフタ19は、入射したレーザ光25を位相変調して、逆ピークパターンの光強度分布を有する光とする。位相シフタ19には例えば図3(a),図3(b)に示す面積変調型を用いることができる。
レンズ20は、位相シフタ19により作られた像を被処理基板21の表面に投影するための光学系である。レンズ20は、パターン像を1/1〜1/20倍、例えば1/5倍に縮小するレンズであり、被処理基板21の表面と共役関係に配置される。縮小レンズ20は、逆ピークパターンを有する光強度分布の透過光像を被処理基板21の表面に結像する。
プロジェクション法によるレーザアニールは、位相シフタ19のパターンの周期と縮小レンズ20の倍率とを掛けた値が4〜80μmの範囲であることが望ましい。この値が大きすぎると、結晶化粒1の横方向成長が途中で止まってしまい、照射領域全面を結晶化粒1で充填することができなくなる。一方、この値が小さすぎると、結晶化粒1の粒長が短くなり、大粒径化に寄与しない。
XYZθステージ22は、予め制御装置に記憶されたプログラムにより自動的にXYZの各軸方向およびZ軸まわりにθ回転可能に位置調整できるようになっている。XYZθステージ22は、パルスレーザ光が出射される都度、予め記憶されたプログラムにより自動的に被処理基板21を次の照射位置にステップ移動させることができる。
プロジェクション法では、XYZθステージ22により基板21をステップ&リピート移動させるのが比較的簡単であり大量生産のプロセスとして有効である。また、レーザアニールの際における基板21の膜構造は、入射するパルスレーザ光をキャップ膜44を介して受光した非晶質シリコン膜43が吸収して溶融するときに、非晶質シリコン膜43中に熱を保持するため、上層に光吸収性または光透過性のキャップ膜44を、下層を絶縁性の膜42を設けた膜構造にする必要がある。
キャップ膜44は、光吸収性の場合は入射したレーザ光に感光して一部を吸収する。光透過性の場合は一部を反射し、残部光の全てを透過する。光吸収性のキャップ膜44の場合は、残部光のほとんどは、非晶質シリコン層43に吸収される。光透過性のキャップ膜44の場合は残部光の一部を反射し、残部は非晶質シリコン層43に吸収される。この結果、非晶質シリコン層43の受光領域は、図3(a)に示す光強度分布のレーザ光を吸収し溶融する。
パルスレーザ光が、遮光されたとき溶融領域は、降温期間に入るがキャップ膜44の存在によりゆっくり降温する。光吸収性の場合はその効果が大きい。非晶質シリコン層43は、図3(d)に示す逆ピークパターン状の光強度分布は、光強度分布の極小光強度部から漸次結晶化凝固点を通過し、この結晶化点の横方向への移動にともなって結晶成長が行われる。
図3(d)における最初に結晶化凝固点を通過する極小光強度部Bは、図2(a)における結晶化開始位置3となる。この極小光強度部Bと極大光強度部U間の距離、すなわち半周期T/2は、結晶化粒1の粒長を決定する。
このような結晶化プロセスは、レーザ発振器14からのパルスレーザ光の出射タイミングに合わせてXYZθステージ22を所定ピッチ距離ずつステップ移動させることにより、照射領域をシフトさせてアニールプロセスを実行する。このアニールプロセスは、予め定められた手順で繰り返すことにより、基板41上の非晶質シリコン層43の照射領域を次々に結晶化させる。このような結晶化プロセスは、例えば一辺が1m(1000mm)を超えるような大面積LCD用基板41上の非晶質シリコン層43を結晶化することが可能である。照射領域をシフトさせる手段は、レーザ光と上記ステージ22を相対的に移動させればよい。
次に、図2(a)に示す結晶化粒列2について具体的に説明する。結晶化粒1の成長開始点3からの距離と平均粒幅との関係、あるいはシリコン膜厚と平均粒幅との関係は、図4に示されている。シリコン膜厚100〜30nmについて、粒長が7〜8μmの場合について示している。
図4からわかるように、非晶質シリコン膜43の膜厚が薄くなるに従い平均粒幅は狭くなり、図2(a)に示すような細長い結晶化粒1の結晶化粒列(アレイ)2になることがわかる。なお、中央領域5は非晶質薄膜シリコン、中央領域5と結晶成長開始点3との間の領域3aは微結晶である。また、図4は、非晶質シリコン膜43の膜厚が薄くなると、平均粒幅の増加が飽和する位置が結晶成長開始位置3に近くなり、後述するTFT6のチャネル領域Cを形成できる領域が広くなることを示している。換言すれば、平均粒幅が一定となる領域が広いことは、結晶化領域のより広い範囲に移動度や閾値電圧特性のバラツキの無いTFT6を形成することができることを意味する。図4に示すように、結晶形態はシリコン膜厚により制御することができる。
非晶質シリコン膜43の膜厚が100nmのときの粒長・粒幅は、図5(a)と図5(b)から半周期(T/2)の値が15μm程度まで直線的に比例して長くなり、さらに半周期の値が大きくなると緩やかに粒長も増大する。しかし、粒長は15μmより長く成長しない。さらに、非晶質シリコン膜43の膜厚が100nmのときの粒長は、光強度勾配Gの値が0.2μm−1以下で粒長が2μm以上に長く成長することを示す。粒幅は、光強度勾配Gの値が0.2μm−1以下で0.2μm以上になる。
他方、非晶質シリコン膜43の膜厚が50nmのときの粒長は、図6(a)と図6(b)から半周期(T/2)の値が28μm程度まで直線的に比例して長く成長する。これに対して粒幅は半周期約10μmより飽和特性を示す。光強度勾配Gの特性は、0.25μm−1以下で粒長が直線的に増加し、粒幅は、光強度勾配Gが0.1μm−1以下で飽和特性を示す。
図5(a)(b)および図6(a)(b)の結果は、図3の(d)に示す光強度分布において、レーザ光強度の極小値が0、極大値が1の場合について示している。半周期(T/2)の値が大きくなるということは光強度勾配Gが小さく、すなわち緩やかになるということを意味する。
図5の(a)(b)によれば、非晶質シリコン膜43の膜厚が100nmの場合は、光強度分布の半周期T/2の値が大きくなる、すなわち光強度勾配Gが緩やかになると、粒長、平均粒幅ともに増加することが分かる。
図6の(a)(b)によれば、非晶質シリコン膜43の膜厚が50nmの場合は、光強度分布の半周期T/2の値が大きくなる、すなわち光強度勾配Gが緩やかになると、粒長は増加するが、平均粒幅は飽和することを示す。また非晶質シリコン膜43の膜厚100nmの場合と比較すると、粒長が伸び、粒幅の増加が飽和するので、図2(a)に示すような細長い結晶粒のアレイを形成しやすい。
図5(a)、図5(b)、図6(a)、図6(b)から、非晶質シリコン膜43の膜厚と同様に光強度勾配Gも結晶形態を決める重要な要素であり、光強度勾配Gを変化させることにより結晶形態を制御することができることが分かった。
図7、図8はそれぞれ、非晶質シリコン膜43の膜厚が100nm、50nmの場合において、横方向成長を開始する相対光強度を示す。光強度分布の半周期分を図示し、横方向成長にかかわる部分を太線で示し、横方向成長を開始する相対強度と粒長を示してある。また光強度勾配Gの値も各半周期T/2の値について、併せて示してある。ここで、光強度分布の極大値は、レーザーアブレーションせずに入射できるレーザ光の強度である。ここでは、光強度分布の極大値を基準値1とする。
図7から、非晶質シリコン膜43の膜厚が100nmの場合は、横方向成長を開始する相対光強度が0.56以上0.67以下の範囲であることが分かる。また、図7は、光強度勾配Gが急になる(G値が大きくなる)と、横方向に結晶成長を開始する相対光強度が下がることを示している。
図8から、非晶質シリコン膜43の膜厚が50nmの場合は、横方向成長を開始する相対光強度が0.64以上0.74以下の範囲であることが分かる。また、非晶質シリコン膜43の膜厚が100nmの場合と比較して、横方向成長を開始する相対光強度が高いことがわかる。
図7と図8の結果は、条件により横方向成長を開始する相対光強度の範囲が決まっていて、その値はシリコン膜厚や光強度勾配により変化することを意味する。これは膜面方向の熱流の効果である。すなわち図2(a)に示すような細長い結晶粒を高い充填率で形成するためには、図3(d)に示す光強度分布の極小値Bの値は、定められた条件において横方向成長を開始する相対光強度と等しいことが望ましい。
図4に示すように、平均粒幅の成長が飽和特性を示す領域にTFT6を形成することは、チャネル領域C内を移動する電子又は正孔が結晶粒界4と平行に移動する領域を示している。電子又は正孔が結晶粒界4と平行に移動することは、結晶粒界4を横切らないため当該TFT6の移動度を高くする。さらに、移動度特性(μFE)や閾値電圧特性(Vth)のバラツキを小さくすることができる。
品質の良いTFT6を作製するためには、一つのTFT6を形成するチャネル領域Cの結晶化粒数を増加することである。結晶化粒数の増加は、同様に当該TFT6の移動度特性(μFE)や閾値電圧特性(Vth)のバラツキを小さくすることができることがわかった。
例えば、非晶質シリコン膜43の膜厚が50nmの結晶化粒幅の飽和開始位置は、図4の場合は結晶成長開始位置3から0.5μmの位置である。また、図6(a)に示すように、光強度分布の半周期T/2が28μmのときに結晶粒の粒長は8μmとなる。また、図6(b)に示すように、光強度分布の半周期T/2が28μmのときに結晶粒の平均粒幅は0.4μmとなる。このような結晶粒は、一方向に細長く延び出し、かつ幅狭の形状を呈する。細長い結晶化粒1が隣り合って並ぶことにより、図2(a)に示すような結晶化粒列(アレイ)2が形成される。このような条件で、結晶化領域のより広範囲に移動度特性(μFE)や閾値電圧特性(Vth)のバラツキの小さいTFT6を製造することができる。結晶化粒1は、粒長が2μm以上15μm以下において、粒幅が0.2以上0.8μm以下の範囲で移動度特性(μFE)や閾値電圧特性(Vth)のバラツキの小さいTFT6を製造することができる。
即ち、この実施例のTFT6は、基板41に直接的または間接的に非単結晶半導体薄膜を設け、この半導体薄膜にレーザ光などのエネルギー光を照射して結晶種から横方向に結晶成長させ幅方向より結晶成長方向に長い形状の結晶化粒1を形成し、図2(a)に示すようにこの結晶化粒1を前記幅方向に隣接させて配列した結晶化粒列2を設け、この結晶化粒列2の複数の結晶化粒1に跨がって結晶成長方向に電流が流れるようにソース領域Sおよびドレイン領域Dを設けて製造される。
次に、図2(a)と図2(b)を参照して薄膜トランジスタ(TFT)6の製造方法をさらに具体的に説明する。
基板41例えばガラス基板上には、下地絶縁膜例えばSiO2膜42が設けられている。このSiO2膜42上には非単結晶半導体膜例えば非晶質シリコン膜43が設けられている。非晶質シリコン膜43は、細長い結晶化粒1を形成するために膜厚、例えば30nm以上100nm以下に成膜されている。非晶質シリコン膜43の膜厚が30nmよりも薄くなると、横方向成長距離が短くなってしまいTFT配置の自由度が狭くなってしまう。またデバイス作製がプロセス上困難になる。100nmよりも厚くなると、結晶終了点における粒幅が広くなってしまい、細長い結晶化粒1のアレイ2とならない。
次に、第2の実施形態の結晶化方法を逆ピークパターン状光強度分布の光強度勾配を選択することにより被照射領域の結晶成長方向の面方位を{100}に優先配向させることができる実施例を説明する。
実施例2
第2の実施形態の結晶化方法は、第1の実施形態の結晶化方法と同様の光学系に上記逆ピークパターンを有する光強度分布を、光吸収性のキャップ膜を用いた膜構造において極大値の相対光強度を1としたとき、光強度勾配Gを0.02μm−1以上0.04μm−1以下の範囲に選択した結晶化用レーザ光を膜厚が40nm以上70nm以下の上記非単結晶半導体薄膜に照射することにより、被照射領域の結晶成長方向の面方位を{100}に優先配向させる方法である。
また、光透過性のキャップ膜を用いた膜構造においては、上記光強度勾配Gが0.05μm−1以上0.25μm−1以下の範囲に選択し、膜厚40nm以上100nm以下に選択することにより、結晶成長方向すなわち粒長方向の結晶方位を{100}に優先配向させる方法である。
次に、結晶成長方向すなわち粒長方向の結晶方位を{100}に優先配向させる結晶化方法の実施例を説明する。図9(a)(b)(c)は、図2(a)のような細長い結晶化粒1のアレイ2を形成する際に、結晶成長方向すなわち粒長方向の結晶方位を{100}に優先配向させるための概念図である。
各結晶面の成長速度は、例えば低指数面を例に挙げると{100}>{110}>{111}の順になることが知られている。シリコンのように結晶構造がダイヤモンド構造である場合、原子の最密面である{111}面の結晶成長速度は最も小さく、疎な面である{100}面の結晶成長速度は最も大きい。逆に言えば、一方向に結晶成長する系において、非晶質シリコン層43と下地絶縁膜42層との界面エネルギー等の他の影響が無視できる条件で、結晶成長速度が大きくなるレーザ結晶化条件を設定すれば、成長方向の結晶方位が{100}に優先配向すると期待できる。
図9(a)(b)(c)は、パルスレーザ光が基板表面に入射した直後のV字型光強度分布すなわち温度分布を実線で、パルスレーザ光遮断後の予め定めた一定時間xナノ秒(ns)後の温度分布をV字状に点線で示している。V字状点線の温度分布は、入射光のV字状光強度分布を維持した状態で降温していることを示している。V字状点線の降温特性は、キャップ膜44と下地絶縁膜42の蓄熱効果により緩速化され横方向に結晶成長することを可能にする。図9(a)(b)は、キャップ膜44が光吸収性の材料SiOxであり、図9(c)は光透過性の材料SiO2である。
図9(a)は、光吸収性の材料をキャップ膜に用いた場合の基準条件を示し、その基準条件と比較して図9(b)は光強度勾配Gを緩やかにした場合と、光強度勾配Gは同じで、図9(c)は光透過性の材料をキャップ膜44に用いた場合について示している。図9(a)(b)(c)において横点線Cは、降温期間に結晶化領域が順次横方向に成長する臨界温度(結晶化終点)を示している。図9(a)(b)(c)において、V字状温度分布A.Bが横点線Cと交差する白矢印で示す区間は、X(ns)の間に成長した距離を示している。
x(ns)後の温度分布は、パルスレーザ光遮断後であるため非晶質シリコン層43が冷えるために照射直後と比較して全体的に温度が下がる。また非晶質シリコン膜43の膜面方向の熱伝導のため温度勾配が緩やかになる。臨界温度Cは結晶粒が横方向に成長を開始する温度を示しており、xナノ秒(ns)後にはA点からB点まで、図中の白矢印に示しただけ横方向に結晶成長が進む。基準条件と比較して光強度勾配が緩やかになった場合は、x(ns)後の温度の下がり方が基準条件と同じとすれば、図9(b)に示すように横方向成長距離が長くなる。すなわち結晶成長速度が大きくなる。
後述するように、光吸収性のキャップ膜44を用いた膜構造で、結晶成長方向すなわち粒長方向の結晶方位を{100}に優先配向させる場合、非晶質シリコン膜3の膜厚は40nm乃至70nmである。40nmよりも薄くなると、膜厚が薄くなる効果すなわち半導体層と下地層との界面の影響が結晶化の際に大きくなり、粒長方向の結晶方位が{110}になりやすく{100}配向しなくなってしまう。また70nmよりも厚くなると、結晶終了点における粒幅が広くなってしまい、細長い結晶粒のアレイとならない。つまり、一方向の結晶成長とならずに結晶方位が定まりにくい。好ましくは50nm以上60nm以下である。
また、光透過性のキャップ膜44を用いた場合は、光吸収性のキャップ膜44を用いた場合よりも上記シリコン層43が冷えやすい膜構造になっているので、x(ns)後の温度分布は基準条件よりも全体的に下がる。従って、図9(c)に示すように、横方向成長距離が長くなる。すなわち、結晶成長速度が大きくなる。なお、この場合、光吸収性のキャップ膜を用いた場合よりもシリコン層43の冷却速度が大きくなる。このため、光透過性のキャップ膜を用いた場合は、結晶成長時間が短くなり、結果として粒長も短くなってしまう。
また、光透過性のキャップ膜を用いた膜構造で、結晶成長方向すなわち粒長方向の結晶方位を{100}に優先配向させる場合、非晶質シリコン膜43の膜厚は40nm以上100nm以下である。40nmよりも薄くなると、膜厚が薄くなる効果すなわち半導体層と下地層との界面の影響が結晶化の際に大きくなり、粒長方向の結晶方位が{110}になりやすく{100}配向しなくなってしまう。また100nmよりも厚くなると、結晶終了点における粒幅が広くなってしまい、細長い結晶粒のアレイとならない。つまり、一方向の結晶成長とならずに結晶方位が定まりにくい。好ましくは50nm以上60nm以下である。
図10から、非晶質シリコン膜43の膜厚が50nmの場合、どの半周期T/2の値すなわちどの光強度勾配においても、粒長方向即ち結晶成長方向の面方位は{100}または{110}に優先配向していることがわかるが、半周期T/2の値が30μm程度に大きくなり光強度勾配が緩やかになると、{100}のみの配向に変化する。なお、図中の領域Sは強い配向の領域を示し、領域Wは弱い配向の領域を示す。
この結果は図9B(実施条件1)に示したように、光強度勾配を緩やかにすることで結晶成長速度が大きくなり、成長方向の面方位が{100}に優先配向したことを意味する。すなわち光強度勾配を制御することによって、成長方向の面方位を制御することができることがわかる。このようにして成長方向の結晶方位を制御した細長い結晶粒アレイに、TFT6を形成することにより移動度が大きく、かつTFT特性のバラツキが小さいTFT6を製造できる。
図11は、光透過性のSiO2キャップ膜を用いた場合における、成長方向の結晶方位を示す逆極点図である。非晶質シリコン膜43の膜厚は100nmであり、光強度分布の半周期T/2の値は5μmである。光強度勾配Gの値は0.2μm−1である。粒長は2.7μmである。成長方向の結晶方位が{100}に優先配向していることがわかる。この結果は図9C(実施条件2)に示したように、冷却速度を大きくすることで結晶成長速度が大きくなり、成長方向の面方位が{100}に優先配向したことを意味する。すなわちキャップ膜44の材料を変えることによっても、成長方向の面方位を制御することができることがわかる。このようにして成長方向の結晶方位を制御した細長い結晶粒アレイに、TFT6を形成することにより移動度が大きく、かつTFT特性のバラツキが小さいTFT6を製造できる。しかし、粒長が短くなってしまうため、TFT6の配置に制限が生じる。
上記非晶質シリコン膜43の薄膜には、PMELA法により図2(a)に示すように細長い形状の結晶化粒1が幅方向に配列された結晶化粒列2が形成されている。結晶化粒1は、幅より結晶成長方向に長い形状の粒1で、粒長が例えば2μm以上15μm以下、平均粒幅が例えば0.2μm以上0.8μm以下である。粒長が2μm未満になると、移動度を高くするためのTFT6の配置の自由度が狭くなってしまう。粒長が15μmを超えると、結晶粒内の欠陥密度が増えて結晶性が悪くなってしまう。平均粒幅が0.2μmよりも狭くなると、粒界の影響が大きくなり高移動度TFT6とならなくなる。平均粒幅が、0.8μmよりも広くなると、結晶化粒1毎のばらつきの影響を緩和するためにTFT6のチャネル幅を広くしなければならない。結晶化粒1の結晶成長方向すなわち粒長方向の面方位は、{100}から{110}の範囲に配向しているか、または{100}に優先配向している。
図2(a)に示されているように、上記結晶化粒列2は、結晶化粒1が幅方向に配列されたものである。この結晶化粒列2には、TFT6が形成されている。このTFT6は、各結晶粒界4と平行に電子および正孔が移動するようにソース領域Sおよびドレイン領域Dが設けられている。換言すれば、ソース領域Sおよびドレイン領域Dは、電流(正孔の移動方向)が結晶成長方向に流れるように形成されている。
ソース領域Sおよびドレイン領域D間に形成されるチャネル領域Cは、図2(b)に示すように複数例えば隣接する4〜5の結晶化粒1に跨って形成されている。チャネル領域において、結晶化粒1の粒幅は、その粒長方向の位置にかかわらずほぼ一定である。ソース領域Sおよびドレイン領域D間に形成されるチャネル領域C上には、ゲート絶縁膜8例えばチャネル領域C表面の酸化膜およびSiO2膜の積層膜が設けられている。
ゲート絶縁膜8上には、ゲート電極9が設けられている。このようにしてTFT6が構成されている。図2(a)において、3は、結晶成長開始位置(点)を示している。
図10には、非晶質シリコン膜43の膜厚が50nmの場合について光強度分布の半周期T/2の値と成長方向の結晶方位との関係が図示されている。図10は、各条件における結晶組織を、Electron Back Scattered Diffraction Pattern(以下、EBSPという)により解析し、その結果を逆極点図で示して、その配向がわかるようにしてある。逆極点図上の黒い部分は強く配向していて、灰色の部分は弱く配向していることを示す。
上記の結晶化プロセスを経て、結晶化の条件により図2(a)に示すような細長い結晶粒のアレイを作製できること、さらには非晶質シリコン膜43の、結晶成長方向すなわち粒長方向の結晶方位を制御できることを見出した。
実施例3
次に、図1のレーザアニール装置11(結晶化装置40)を用いて被処理基板21の非晶質シリコン膜43を結晶化する結晶化方法の実施例を説明する。
先ず、結晶化工程用の被処理基板21を製造する。結晶化の条件として、図3(c)に示すような被処理基板21の膜構造は、基板41上に下地絶縁膜42、非単結晶半導体膜、キャップ膜44を順次成膜たとえばプラズマCVD法で形成したものである。最上層の入射光側にキャップ膜44としては、SiOx(例えば膜厚370nm)および必要に応じてSiO2(例えば膜厚30nm) 膜の積層膜を成膜する。非単結晶半導体膜としては、非晶質シリコン膜43(a-Si層)を成膜する。/下地絶縁膜42としては、SiO2(膜厚1000nm)膜および必要に応じてSi3N4(膜厚1000nm)膜の積層膜を成膜する。基板41としては、ガラス基板である。この被処理基板21の非晶質シリコン膜43の膜厚は、100nmとして被処理基板21をそれぞれ製造した。
SiOx膜は、SiとOの組成が二酸化シリコン膜と異なるシリコン酸化膜で、例えば消衰係数k=0.01の膜である。SiOx膜は、x<2.0であり、理想的には、Si(〜1.1eVv:x=0)からSiO2(〜9eV:x=2)まで光学的ギャップを変化させることが可能である。結晶化のために使用するレーザ例えばエキシマレーザの波長は、吸収係数を0〜105cm−1程度まで制御可能である。特に、xが1.4≦x≦1.9の範囲にある場合、良好な結晶成長が確認される。
図1のレーザアニール装置11は、位相シフタ19の位置をマスク18の付近に配置し、位相シフタ19の像を被処理基板21の入射面に結像させる光学系である。即ち、レーザアニール装置11は、位相シフタ19を被処理基板21の表面に投影した光学系で共役関係にある光学系である。なお位相シフタ19のパターンは、1/5倍のテレセントリック縮小レンズ20により、被処理基板21上に1/5に変換(縮小)される。
上記位相シフタ19は、図3(a)に示すように面積の異なるドットパターン段差(高段52、低段51)を配置したものである。図3の(a)に示すパターンの位相シフタ19を介してレーザ光25は、上記被処理基板21を照射する。このレーザ光25は、位相シフタ19により位相変調されて図3(d)に示すような逆ピークパターンを有するV字型の周期的な光強度分布を形成する。図3(d)には、光強度分布の一周期が拡大して示されている。
位相シフタ19は、V字型光強度分布の周期が10、20、30、40、76μmとなるように、ドットパターンの配置の周期を変化させた。また位相シフタ19の位相差は180゜であり、光強度分布の極大値の相対強度を1としたときに極小値の相対強度は0である。よって光強度勾配Gはそれぞれ0.2、0.1、0.067、0.05、0.026μm−1となる。位相シフタ19とは、レーザ光の位相を変調するための空間強度変調光学素子のことをいう。非晶質シリコン膜(a・Si層)43を結晶化するために照射するレーザフルエンスは、例えば0.6J/cm2である。
レーザ光源14は、例えば波長が308nmのXeClエキシマレーザであり、1ショットのパルス継続時間は30ナノ秒である。フルエンスとは、結晶化のためのレーザ光のエネルギー密度を表わす尺度であり、単位面積当たりのエネルギー量をいい、具体的には光源または照射領域(照射野)において計測されるレーザ光の平均光強度のことをいう。
このようにして作製した図2に示すような結晶化粒列2は、図5に示す粒長、平均粒幅の結晶形態のものが得られた。非晶質シリコン膜43の膜厚が100nmの場合、光強度勾配Gを変化させることにより、図5のように結晶形態を制御することができる。
実施例4
被処理基板21の膜構造は、最上層の入射光側のキャップ膜44としては、SiOx(膜厚370nm)およびSiO2(膜厚30nm)膜の積層膜である。非単結晶半導体膜としては、非晶質シリコン膜43(a-Si層)である。下地絶縁膜42としては、SiO2(膜厚1000nm)膜およびSi3N4(膜厚1000nm)膜の積層膜である。基板41としては、例えばガラス基板である。非晶質シリコン膜43の膜厚が50nmである被処理基板21をそれぞれ製造した。
図1のレーザアニール装置11は、位相シフタ19の位置をマスク18の付近に配置し、位相シフタ19の像を被処理基板21の入射面に結像させる光学系である。即ち、レーザアニール装置11は、位相シフタ19を被処理基板21の表面に投影した光学系で共役関係にある光学系である。なお位相シフタ19のパターンは、1/5倍のテレセントリック縮小レンズ20により、被処理基板21上に1/5に変換(縮小)される。
上記位相シフタ19は、図3(a)に示すように面積の異なるドットパターン段差を配置したものである。図3の(a)に示すパターンの位相シフタ19を介してレーザ光25は、上記被処理基板21を照射する。このレーザ光25は、位相シフタ19により位相変調されて図3(d)に示すような逆ピークパターンを有するV字型の周期的な光強度分布を形成する。図3(d)には、光強度分布の一周期が拡大して示されている。
位相シフタ19は、V字型光強度分布の周期が10、20、30、40、50、56、60μmとなるように、ドットパターンの配置の周期を変化させた。また位相シフタ19の位相差は180゜であり、光強度分布の極大値の相対強度を1としたときに極小値の相対強度は0である。よって光強度勾配はそれぞれ0.2、0.1、0.067、0.05、0.04、0.036、0.033μm−1となる。非晶質シリコン膜(a・Si層)43を結晶化するために照射するレーザフルエンスは、0.5J/cm2である。
レーザ光源14は、例えば波長が308nmのXeClエキシマレーザであり、1ショットのパルス継続時間は30ナノ秒である。このようにして作製した図2に示すような結晶化粒列2は、図6に示す粒長、平均粒幅の結晶形態のものが得られた。非晶質シリコン膜43の膜厚が50nmの場合であっても、光強度勾配を変化させることにより、図6(a)(b)のように結晶形態を制御することができる。
実施例5
結晶化装置は、実施例4と同様に図1のプロジェクション方式の光学系である。位相シフタ19は、図3(d)に示すV字状光強度分布の周期が16μmとなるようにドットパターンを配置した。段差深さtは133nmで、位相差は78°である。このときに形成する周期的なV字状光強度分布の強度の最大値は相対値で1、最小値は相対値で0.6である。光強度勾配Gの値は0.05μm−1となる。
結晶化の条件として、被処理基板21の膜構造は、キャップ膜44がSiOx(370nm)/ SiO2(30nm)の積層構造であり/非晶質シリコン膜43がa・Si(50nm)であり/下地絶縁膜42がSiO2(膜厚1000nm)膜/Si3N4(膜厚1000nm)膜の積層膜であり/基板41がガラス基板、である。レーザ光の照射フルエンスは0.5J/cm2である。このレーザ光のレーザ光源14は、実施例1と同様に波長が308nmのXeClエキシマレーザであり、1ショットのパルス継続時間は30ナノ秒である。
この結晶化プロセスで得られた結晶化粒列は、結晶化粒1の粒長が8μm、平均粒幅が0.4μmであり、図2に示すような細長い棒状の結晶化粒1のアレイ2を照射領域全面に作製できた。粒長方向すなわち結晶成長方向の面方位は、{100}または{110}に優先配向している。
実施例6
結晶化装置は、実施例3と同様に図1のプロジェクション方式の光学系である。位相シフタ19は、V字状型光強度分布の周期が10μmとなるようにドットパターンを配置した。段差深さtは154nmで、位相差は90°である。このときに形成する周期的なV字状型光強度分布の強度の最大値は相対値で1、最小値は相対値で0.5である。光強度勾配Gの値は0.1μm−1となる。
結晶化の条件として、被処理基板21の膜構造は、キャップ膜44がSiOx(370nm)/ SiO2(30nm)の積層構造であり/非晶質シリコン膜43がa・Si(100nm)であり/下地絶縁膜42がSiO2(膜厚1000nm)膜/Si3N4(膜厚1000nm)膜の積層膜であり/基板41がガラス基板、である。レーザ光の照射フルエンスは0.6J/cm2である。このレーザ光のレーザ光源14は、実施例1と同様に波長が308nmのXeClエキシマレーザであり、1ショットのパルス継続時間は30ナノ秒である。
この結晶化プロセスで得られた結晶化粒列2は、結晶化粒1の粒長が5μm、平均粒幅が0.7μmであり、図2に示すような細長い棒状の結晶粒1のアレイ2を照射領域全面に作製できた。粒長方向すなわち結晶成長方向の面方位は、{100}または{110}に優先配向している。
実施例7
この実施例7は、上記実施例と同様に、図1のプロジェクション方式の光学系を用い、また図3に示したような、周期的に寸法の異なるドットパターンからなる位相シフタ19を用いた。位相シフタ19はV字状光強度分布の周期が16μmになるようにパターンを配置した。段差深さtは113nmであり、位相差は66°である。このときに形成する光強度分布の強度の最大値は相対値で1、最小値は相対値で0.7である。光強度勾配Gの値は0.0375μm−1となる。
結晶化の条件として、被処理基板21の膜構造は、キャップ膜44がSiOx(370nm)/ SiO2(30nm)の積層構造であり/非晶質シリコン膜43がa・Si(50nm)であり/下地絶縁膜42がSiO2(膜厚1000nm)膜/Si3N4(膜厚1000nm)膜の積層膜であり/基板41がガラス基板、である。レーザ光の照射フルエンスは0.5J/cm2である。このレーザ光のレーザ光源14は、実施例1と同様に波長が308nmのXeClエキシマレーザであり、1ショットのパルス継続時間は30ナノ秒である。
この結晶化プロセスで得られた結晶化粒列2は、結晶化粒1の粒長が8μm、平均粒幅が0.4μmであり、図2に示すような細長い棒状の結晶化粒1のアレイ2を照射領域全面に作製できた。さらに粒長方向すなわち結晶成長方向の面方位が{100}に優先配向した結晶化粒1のアレイ2を作製できた。
実施例8
この実施例8は、上記実施例と同様に、図1のプロジェクション方式の光学系を用い、また図3に示したような、周期的に寸法の異なるドットパターンからなる位相シフタ19を用いた。位相シフタ19はV字型光強度分布の周期が6μmになるようにパターンを配置した。段差深さtは141nmであり、位相差は102°である。このときに形成する光強度分布の強度の最大値は相対値で1、最小値は相対値で0.4である。光強度勾配Gの値は0.2μm−1となる。
結晶化の条件として、被処理基板21の膜構造は、キャップ膜44がSiO2(300nm)であり/非晶質シリコン膜43がa・Si(100nm)であり/下地絶縁膜42がSiO2(膜厚1000nm)膜/Si3N4(膜厚1000nm)膜の積層膜であり/基板41がガラス基板、である。レーザ光の照射フルエンスは1J/cm2である。このレーザ光のレーザ光源14は、波長が248nmのKrFエキシマレーザであり、1ショットのパルス継続時間は20ナノ秒である。
この結晶化プロセスで得られた結晶化粒列2は、結晶化粒1の粒長が3μm、平均粒幅が0.4μmであり、図2に示すような細長い棒状の結晶化粒1のアレイ2を照射領域全面に作製できた。さらに粒長方向すなわち結晶成長方向の面方位が{100}に優先配向した結晶化粒1のアレイ2を作製できた。本実施例の結晶化方法では実施例31乃至75と比較して高レーザフルエンスが必要であり、結晶化粒アレイ2の粒長も短くなってしまうが、実施例7と同様に成長方向の面方位をそろえることができる。
実施例9
次に、上記実施例により製造された結晶化半導体膜にTFT6を形成する実施例を、図12を参照して説明する。なお、本実施例では、TFT6例えばNチャネル型のTFTに適用した実施例を説明する。本発明は、Nチャネル型のTFTに限定されることなく、Pチャネル型でも不純物種(ドーパント種)を変えるだけで他は実質的に同様に形成することができる。本実施例では、ボトムゲート構造のTFTの製造方法について説明する。
図12の(a)に示すように、基板1例えばガラスなどからなる絶縁基板上にゲート電極用材料例えばAl,Ta,Mo,W,Cr,Cu少なくとも1種又はこれらの合金膜を膜厚100〜300nmに形成し、この金属膜をパターニングしてボトム型のゲート電極61に加工する。
次いで、図12の(b)に示すように、ゲート電極61および露出した絶縁基板41上にゲート絶縁膜62,63を成膜する。このゲート絶縁膜62,63は、例えば窒化膜(SiNx )と酸化膜(SiO2 )の二層構造である。ゲート絶縁膜62のゲート窒化膜は、例えばSiH4 ガスとNH3 ガスの混合物を原料気体として用い、プラズマCVD法(PE-CVD法)で成膜することができる。なお、このト窒化膜の成膜は、プラズマCVDに代えて常圧CVDあるいは減圧CVDを用いても成膜することができる。
窒化膜の膜厚は、例えば50nmである。窒化膜上には、ゲート絶縁膜63として酸化膜を膜厚例えば200nm成膜する。この酸化膜上に連続的に非単結晶膜例えば非晶質シリコン膜43を40nm乃至100nm成膜する。また、さらに非晶質シリコン膜43上に例えばSiO2/SiOxあるいはSiO2からなるキャップ膜44を、積層膜の場合はこの順にそれぞれ、膜厚例えば30nm、420nm、SiO2の場合は100乃至300nm成膜する。二層構造のゲート絶縁膜62,63と非晶質シリコン膜43とキャップ膜44は成膜チャンバの真空系を破らず(大気に晒すことなく)連続成膜する。
以上の成膜プロセスにおいてプラズマCVD法を用いた場合には、550℃の温度で窒素雰囲気中2時間程度の加熱処理により脱水素アニールし、非晶質シリコン膜43に含まれる水素を非晶質シリコン膜43から放出させることができる。このようにして結晶化用被処理基板21を製造する。
次に、結晶化用被処理基板21の非晶質半導体薄膜43の結晶化プロセスを行う。結晶化プロセスは、例えば図1のレーザアニール装置11を用いて実施することができる。例えば上記実施例1〜6に示した方式の方法に従って、レーザ光25をキャップ膜44に照射し、非晶質半導体薄膜43の照射領域を結晶化する。
レーザ光25としてはエキシマレーザビームを用いることができる。レーザ光25の照射領域を調整した後、照射領域に位相シフタ19の周期的なパターンを転写可能なようにレーザ光25の焦点を合わせて照射し、さらに重複しないように照射領域をずらして繰り返し1ショットずつ照射して、照射領域内の所定の面積を結晶化する。このように
して非晶質半導体薄膜43の予め定められた領域が結晶化された多結晶半導体薄膜65を形成する。
次いで、表面のキャップ絶縁膜44をエッチング等の方法により剥離して結晶化領域が形成された非晶質半導体薄膜43の表面が露出する。非晶質半導体薄膜43の結晶化された領域の表面は、上記したように図2に示すような幅より結晶成長方向に長い形状の結晶化粒1の結晶化粒列2が形成される。また、結晶化粒1の結晶成長方向の面方位は{100}に優先配向させることもできる。
図12の(c)に示すように、TFT6の閾値電圧Vthを制御する目的で、所望するVthを得るためのイオンインプランテーションを必要に応じて行なう。本実施例では、ボロンB+をドーズ量が5×1011〜4×1012/cm2 程度となるようにイオン注入した。このVthイオンインプランテーションでは10KeVで加速されたイオンビームを用いた。
続いて、前工程で結晶化された多結晶半導体薄膜65の上に例えばプラズマCVD法でSiO2 を膜厚例えば約100nm〜300nm成膜する。本実施例では、シランガスSH4 と酸素ガスをプラズマ分解してSiO2 を堆積した。このようにして成膜されたSiO2 を所定の形状にパターニングしてストッパ膜66に加工する。
この場合、裏面露光技術を用いてゲート電極61と整合する様にストッパ膜66をパターニングする。ストッパ膜66の直下に位置する多結晶半導体薄膜65の部分は、チャネル領域Chとして保護される。前述した様に、チャネル領域Chには、予め高い閾値電圧Vthを得るためのイオンインプランテーションによりB+イオンが比較的低ドーズ量で注入されている。
続いて、ストッパ膜66をマスクとしてイオンドーピングにより不純物(例えばP+イオン)を半導体薄膜65に注入し、LDD領域を形成する。この時のドーズ量は、例えば5×1012 〜1×1013/cm2 であり、加速電圧は例えば10KeVである。
さらに、ストッパ膜66及びその両側のLDD領域を被覆するようにフォトレジストをパターニング形成した後、これをマスクとして不純物(例えばP+イオン)を高濃度で注入し、ソース領域S及びドレイン領域Dを形成する。不純物注入には、例えばイオンドーピング(イオンシャワー)を用いることができる。これは質量分離を掛けることなく電界加速で不純物を注入するものであり、本実施例では1×1015/cm2 程度のドーズ量で不純物を注入し、ソース領域S及びドレイン領域Dを形成した。イオン注入の加速電圧は例えば10KeVである。
なお、図示しないが、PチャネルのTFTを形成する場合には、Nチャネル型TFTの領域をフォトレジストで被覆した後、不純物をP+イオンからB+イオンに切り換えドーズ量1×1015/cm2 程度でイオンドーピングすればよい。なお、ここでは質量分離型のイオンインプランテーション装置を用いて不純物を注入してもよい。
この後、RTA(急速熱アニール)104により、多結晶半導体薄膜65に注入された不純物を活性化する。場合によっては、エキシマレーザを用いたレーザ活性化アニール(ELA)を行なっても良い。この後、上記半導体薄膜65とストッパ膜66の不要な部分を同時にパターニングし、素子領域毎にTFTを分離する。
最後に図12の(d)に示すように、SiO2 を約100〜200nmの厚みで成膜し、これを層間絶縁膜67とする。層間絶縁膜67の形成後、SiNx をプラズマCVD法で約200〜400nm成膜し、パシベーション膜68とする。この段階で窒素ガス又はフォーミングガス中又は真空中雰囲気下において350〜400℃程度で1時間加熱処理し、層間絶縁膜67に含まれる水素原子を半導体薄膜65中に拡散させる。
この後、ソースS電極を形成するためのコンタクトホールを開口し、Mo,Alなどの電極材料層を100〜200nmの厚みでスパッタする。次に、電極材料層を所定の形状にパターニングして配線電極69に加工する。さらに、アクリル樹脂などからなる平坦化層70を1μm程度の厚みで塗布した後、ドレインD電極用コンタクトホールを開口する。平坦化層70の上にITOなどからなる透明導電膜をスパッタした後、所定の形状にパターニングして画素電極71に加工する。このようにしてTFT112が製造される。
実施例10
次に、図13を参照して上記実施例により製造された結晶化半導体膜にトップゲート構造のTFTの製造に適用した実施例を説明する。先ず図13の(a)に示すように、絶縁性の基板1上にバッファ層となる二層の下地膜81,82をプラズマCVD法により連続成膜する。
一層目の下地膜81はSiNx 膜からなり(X=2を含まない2以下)、その膜厚は100〜1000nmである。また二層目の下地膜82はSiO2 膜からなり、その膜厚は同じく100nm〜1000nmである。このSiO2 膜からなる下地膜82の上に膜厚40乃至100nmの非晶質シリコンからなる非単結晶半導体薄膜4をプラズマCVD法もしくはLPCVD法により成膜する。
さらに、非単結晶半導体薄膜4上にSiO2/SiOxあるいはSiO2から成るキャップ膜37を、積層膜の場合はこの順にそれぞれ、膜厚例えば30nm、320nm、SiO2の場合は100乃至300nm成膜する。非晶質シリコンからなる非単結晶半導体薄膜4の成膜にプラズマCVD法を用いた場合には、膜中の水素を脱離させるために、窒素雰囲気中で400〜450℃の条件で1時間程度アニールする。
次に、例えば上記実施例1〜6の結晶化方法により、非晶質半導体薄膜4を結晶化する。レーザ光25の照射領域を調整した後、照射領域に位相シフタ36の周期的なパターンの配列を転写可能なようにレーザ光25の焦点を合わせて照射し、さらに重複しないようにレーザ光25の照射領域をずらして繰り返し照射して、非晶質半導体薄膜4の所定の面積を結晶化する。
続いて、キャップ膜37をエッチング等の方法で剥離する。ここで必要ならば、上記実施例と同様に予め高い閾値電圧Vthを得るためのイオンインプランテーションを行ない、B+イオンを例えばドーズ量5×1011〜4×1012/cm2 程度で半導体薄膜4に注入する。この場合の加速電圧は10KeV程度である。
続いて図15(b)に示すように結晶化したシリコン半導体薄膜85をアイランド状にパターニングする。この上に、プラズマCVD法、常圧CVD法、減圧CVD法、ECR−CVD法、スパッタ法などでSiO2 を100〜400nm成長させ、ゲート絶縁膜83とする。本実施例ではゲート絶縁膜83の厚みを100nmにした。
次いで、ゲート絶縁膜83の上にAl,Ti,Mo,W,Ta,ドープト多結晶シリコンなど、あるいはこれらの合金を200〜800nmの厚みで成膜し、所定の形状にパターニングしてゲート電極88に加工する。
次いでP+イオンを質量分離を用いたイオン注入法で結晶化半導体薄膜85に注入し、LDD領域を設ける。このイオン注入はゲート電極88をマスクとして絶縁基板1の全面に対して行なう。ドーズ量は6×1012〜5×1013/cm2 である。加速電圧は例えば90KeVである。なお、ゲート電極88の直下に位置するチャネル領域Chは保護されており、Vthイオンインプランテーションで予め注入されたB+イオンがそのまま保持されている。
LDD領域に対するイオン注入後、ゲート電極88とその周囲を被覆するようにレジストパターンを形成し、P+イオンを質量非分離型のイオンシャワードーピング法で高濃度に注入し、ソース領域S及びドレイン領域Dを形成する。この場合のドーズ量は例えば1×1015/cm2 程度である。加速電圧は例えば90KeVである。ドーピングガスには水素希釈の20%PH3 ガスを用いた。
CMOS回路を形成する場合には、PチャネルTFT用のレジストパターンを形成後、ドーピングガスを5〜20%のB2 H6 /H2 ガス系に切り換え、ドーズ量を1×1015〜3×1015/cm2 程度、加速電圧は例えば90KeVでイオン注入すればよい。なお、ソース領域S及びドレイン領域Dの形成は質量分離型のイオン注入装置を用いてもよい。
この後、結晶化半導体薄膜85に注入されたドーパントの活性化処理となる。この活性化処理は上記第4実施例と同様に、紫外線ランプを使ったRTA104を用いることができる。
最後に、図13の(c)に示すように、ゲート電極89を被覆するようにPSGなどからなる層間絶縁膜90を成膜する。この層間絶縁膜90の成膜後、SiNx をプラズマCVD法で約200〜400nm堆積しパシベーション膜91とする。
この段階で窒素ガス中350℃の温度で1時間程度アニールし、層間絶縁膜91に含有された水素を半導体薄膜85中に拡散させる。この後コンタクトホールを開口する。さらにパシベーション膜91の上にAl−Siなどをスパッタリングで成膜した後所定の形状にパターニングして配線電極92に加工する。
さらにアクリル樹脂などからなる平坦化層93を約1μmの厚みで塗工後、これにコンタクトホールを開口する。平坦化層93の上にITOなどからなる透明導電膜をスパッタリングし、所定の形状にパターニングして画素電極94に加工する。
図13に示した薄膜トランジスタまたは半導体装置では、図12に示した薄膜トランジスタまたは半導体装置で説明した方法と同様にして非単結晶半導体薄膜4を結晶化させる。但し、トップゲート構造である本実施例10の薄膜トランジスタまたは半導体装置はボトムゲート構造である実施例9の薄膜トランジスタまたは半導体装置と異なり、ゲート電極89のパターンが形成される前の段階で結晶化を行なうため、ガラスなどからなる絶縁基板の収縮についてはボトムゲート構造の半導体装置よりも許容度が大きい。そのため、より大出力のレーザ照射装置を用いて結晶化処理を行なえる。このようにしてTFT113が製造される。
TFTのチャネル領域における移動度とチャネル領域が形成される結晶面(配向面)との関係には、図14に示す関係にあることを見出した。図14には、形成されたTFTのソース領域がSで、ドレイン領域がDで示され、SとD間の電流の向きが矢印で示めされている。
上段に示されている特性は、非晶質シリコン膜にレーザ光を照射し、横方向に結晶成長させたときの結晶成長方向が<110>のときの結晶化領域にTFT6を形成したときのTFTの移動度特性である。TFTのゲート絶縁膜と接するチャネル領域表面の結晶方位が{001}〜{112}のとき、移動度μFEは、最高に高く685〜500{cm2/Vs}である。チャネル領域表面の結晶方位が{110}のとき、移動度μFEは、450〜300{cm2/Vs}である。チャネル領域表面が{111}のとき、移動度μFEは、300〜230{cm2/Vs}である。
また、結晶成長方向が<100>のときの、結晶化領域にTFTを形成したときの移動度特性は、下段の通りである。チャネル領域表面の結晶方位が{001}のとき、移動度μFEは、500{cm2/Vs}である。チャネル領域表面の結晶方位が{010}のとき、移動度μFEは、346{cm2/Vs}である。
上記データから結晶成長方向が<100>のとき、移動度μFEのばらつきを346から500{cm2/Vs}の範囲に抑えることができ、かつ高移動度のTFTを製造できることがわかった。
実施例11
次に、実施例9又は実施例10に係るTFTを用いたアクティブマトリクス型表示装置に適用した実施例を図14を参照して説明する。表示装置100は一対の絶縁基板101,102と両者の間に保持された電気光学物質103とを備えたパネル構造を有する。電気光学物質103としては液晶材料が広く用いられている。下側の絶縁基板101には画素アレイ部104と駆動回路部とが集積形成されている。駆動回路部は垂直駆動回路105と水平駆動回路106とに分かれている。
また、絶縁基板101の周辺部上端には外部接続用の端子部107が形成されている。端子部107は配線108を介して垂直駆動回路105及び水平駆動回路106に接続している。画素アレイ部104には行状のゲート配線109と列状の信号配線110が形成されている。両配線109、110の交差部には画素電極111とこれを駆動するTFT112(または113)が形成されている。
TFT112(または113)のゲート電極61、89は対応するゲート配線109に接続され、ドレイン領域Dは対応する画素電極111に接続され、ソース領域Sは対応する信号配線110に接続している。ゲート配線109は垂直駆動回路105に接続する一方、信号配線110は水平駆動回路106に接続している。
画素電極111をスイッチング駆動するTFT112(または113)及び垂直駆動回路105と水平駆動回路106に含まれるTFTは、本発明の実施例に従って作製されたものであり、従来に比較して移動度が高くなっている。従って、駆動回路ばかりでなく更に高性能な処理回路を集積して形成することができる。
以上説明したように、上記実施例によれば高い移動度と移動度や閾値電圧特性のバラツキの小さいTFTを得ることができる。
1:結晶化粒、 2:結晶化粒列、 3:結晶成長開始位置非晶質シリコン膜、 4:結晶化粒、 5:結晶化粒列、 6:TFT、 7:結晶粒界、 8:ゲート絶縁膜、 9:ゲート電極、 11:レーザアニール装置、 12:光学系、 13:レーザ光軸、 14:エキシマレーザ発振器、 19:位相シフタ、 21:被処理基板、 41:基板、 42:下地絶縁膜、 43:非晶質シリコン膜 100:表示装置